サイト内検索|page:266

検索結果 合計:36520件 表示位置:5301 - 5320

5302.

第243回 ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連

ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連勃起不全(ED)薬としてよく知られるタダラフィルやシルデナフィル使用と死亡、心血管疾患、認知症の減少との関連がテキサス大学医学部(UTMB)のチームの研究で示されました1,2)。タダラフィルとシルデナフィルはどちらもPDE5阻害薬であり、血流改善・血圧低下・内皮機能向上・抗炎症作用により心血管の調子をよくすると考えられています。それら成分は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療にも使われ、タダラフィルは前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の治療薬としても発売されています。UTMBのDietrich Jehle氏らの今回の研究は世界中の2億7,500万例超の臨床情報を集めるTriNetXに収載の米国男性5千万例の記録を出発点としています。それら5千万例から、ED診断後のタダラフィルかシルデナフィル処方、または下部尿路症状診断後のタダラフィル処方があった40歳以上の男性が同定されました。3年間の経過を比較したところ、タダラフィルかシルデナフィルが処方されたED患者は、非処方患者に比べて死亡、心血管疾患、認知症の発生率が低いことが示されました。具体的には50万例強の解析で以下のような結果が得られており、血中でより長く活性を保つタダラフィルがシルデナフィルに比べて一枚上手でした。全死亡率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは24%低下心臓発作発生率タダラフィルは27%低下、シルデナフィルは17%低下脳卒中発生率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは22%低下静脈血栓塞栓症(VTE)発生率タダラフィルは21%低下、シルデナフィルは20%低下認知症発生率タダラフィルは32%低下、シルデナフィルは25%低下下部尿路症状患者のタダラフィル使用は一層有益でした。40歳以上の下部尿路症状患者100万例超のうち、タダラフィル使用群の死亡、心臓発作、脳卒中、VTE、認知症の発生率はそれぞれ56%、37%、35%、32%、55%低くて済んでいました。やはり米国のED男性を調べた別の観察試験3,4)でもPDE5阻害薬やタダラフィルと死亡や心血管疾患の減少の関連が示されています。今春2月にClinical Cardiology誌に結果が掲載されたその1つ3)ではEDと診断されてタダラフィルが処方された男性8千例強(8,156例)とPDE5阻害薬非処方の2万例強(2万1,012例)が比較され、タダラフィル使用群の心血管転帰(心血管死、心筋梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症、心不全、脳卒中)の発生率がPDE5阻害薬非使用群に比べて19%低いことが示されました。また、タダラフィル使用患者の死亡率は44%低くて済んでいました。タダラフィルと心血管転帰の発生率低下の関連は用量依存的らしく、同剤の使用量が上位4分の1の患者は心血管転帰の発生率が最小でした。有望ですがあくまでもレトロスペクティブ試験の結果であり、次の課題として男性と女性の両方でのプラセボ対照無作為化試験が必要だと著者は言っています3)。参考1)Jehle DVK, et al. Am J Med. 2024 Nov 10. [Epub ahead of print]2)Study finds erectile dysfunction medications associated with significant reductions in deaths, cardiovascular disease, dementia / The University of Texas Medical Branch 3)Kloner RA, et al. Clin Cardiol. 2024;47:e24234.4)Kloner RA, et al. J Sex Med. 2023;1:38-48.

5303.

ワクチン同時接種、RSV+インフルエンザ/新型コロナの有効性は?

 高齢者における呼吸器疾患、とくにRSウイルス(RSV)、インフルエンザ、新型コロナ感染症は重症化リスクが高く、予防の重要性が増している。mRNA技術を用いたRSVワクチンとインフルエンザワクチン(4価)または新型コロナワクチンの同時接種の安全性と免疫原性を評価した研究結果が、The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年11月25日号に掲載された。 本研究は、50歳以上の健康な成人を対象とし、2部構成でそれぞれ下記の3群に分けて接種した。主要評価項目は同時接種群の単独接種群に対するRSVの免疫反応(Geometric Mean Ratio:GMRの95%信頼区間[CI]>0.667、血清反応率の差の95%CI>-10%)と安全性の非劣性だった。【パートA】2022年4月1日~6月9日:1,623例1)RSVワクチン(mRNA-1345:モデルナ)+インフルエンザワクチン(4価):685例(42%)2)RSVワクチン+プラセボ:249例(15%)3)インフルエンザワクチン+プラセボ:689例(42%)【パートB】2022年7月27日~9月28日:1,681例1)RSVワクチン+新型コロナワクチン(mRNA-1273.214:モデルナ):564例(34%)2)RSVワクチン+プラセボ:558例(33%)3)新型コロナワクチン+プラセボ:559例(33%) 主な結果は以下のとおり。・【パートA】RSV-Aに対する抗体価の比較では、併用群の単独群に対するGMRは0.81(95%CI:0.67~0.97)、血清反応率の差は-11.2%(95%CI:-17.9~-4.1)であった。・【パートB】RSV-A に対する抗体価の比較では、併用群の単独群に対するGMRは0.80(95%CI:0.70~0.90)、血清反応率の差は-4.4%(95%CI:-9.9~1.0)であった。・同時接種の安全性プロファイルは、単独接種の場合とおおむね一致した。・接種後7日以内の局所反応(注射部位の痛みなど)や全身反応(倦怠感、頭痛など)は軽度から中等度が大半だった。深刻な副反応や接種に関連した死亡例は報告されなかった。 研究者らは「RSVワクチン+インフルエンザワクチン、またはRSVワクチン+新型コロナワクチンの同時接種は、50歳以上の成人において、各ワクチンの単独接種と比較して許容できる安全性プロファイルを示し、ほとんどの場合で免疫反応は非劣性だった。ただし、RSVワクチン+インフルエンザワクチンにおける血清反応率の差は、非劣性の基準を満たさなかった。全体として、これらのデータは、この集団における同時接種を支持するものであり、本研究の継続でより長期の評価がされる」とした。

5304.

自覚症状に乏しい糖尿病性腎症に早く気付いて/バイエル

 バイエルは、11月14日の「糖尿病の日」に合わせ、糖尿病と合併症に関する啓発イベントを開催した。イベントでは、糖尿病専門医による糖尿病に関するプレスセミナーとお笑いコンビ「ガンバレルーヤ」をゲストに迎えての市民向けの疾患啓発が行われた。糖尿病の合併症の腎臓病では透析導入になりやすい 「糖尿病と合併症ってどんな病気? 患者さん中心の医療について考える」をテーマに坊内 良太郎氏(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター/糖尿病内分泌代謝科)が、糖尿病の病態、診療、合併症を抑えるポイントを解説した。 わが国の糖尿病と疑われる人の数は約2,000万人にのぼり、国民の5~6人に1人は糖尿病の危険があるとされる国民病となっている。 糖尿病は「インスリンの作用不足により起こる血糖値が高い状態が続く疾患」であり、診断では空腹時血糖値が126mg/dL以上、食後血糖値、ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上あれば糖尿病が強く疑われ、再度の検査で確定診断となる。また、健康診断などでよく話題になるHbA1cも6.5%以上は糖尿病が強く疑われる指標となる。 糖尿病にはI型、II型、妊娠、そのほか(薬剤性、肝臓疾患など)の4種類があり、その症状として「のどの渇き、水分の多飲」「日中・夜間の頻尿」「疲れやすい」「体重減少」などがある。そして、これらの症状は自覚症状に乏しく放置しがちであり、医療機関を受診しないことで合併症のリスクが高まる。 糖尿病合併症では、脳卒中、心筋梗塞、壊疽(神経障害)などの大血管障害と網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害がある。また、併存症として肺炎などの感染症、肝臓・膵臓などの悪性腫瘍、歯周病なども糖尿病患者では起こりやすく、重症化しやすい。 とくに糖尿病性腎症は、慢性腎臓病(CKD)の代表的な疾患であり、病期がかなり進行するまで自覚症状に乏しいために、診断がされたときには腎不全で透析導入になるケースが多い。実際、日本透析医学会の調査では、糖尿病性腎症は透析導入の約4割を占めていると報告されている。糖尿病合併症の抑制には血糖、血圧、脂質の厳格な管理が求められる 現在、日本糖尿病学会では、診療ガイドラインなどで糖尿病治療の目標として、「健康な人と変わらない寿命と生活の質(QOL)の達成」を示している。糖尿病の根治が難しい以上、合併症を抑えることが重要となる。 糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法だが、これでも効果が不十分な場合に薬物療法が追加される。いずれも患者の自主的な取り組みなしには成功しない治療である。また、HbA1cを7%未満に抑えれば網膜症や腎症の悪化リスクを抑えことができるという研究報告1)のほか、血圧を130/80mmHg未満に抑えたり、LDLコレステロールを適切に管理したりすれば合併症のリスク低減が期待できるため、ガイドラインなどで推奨されている。そのほか、わが国のJ-DOIT3の研究結果から血糖、血圧、脂質の厳格な管理が糖尿病の合併症予防につながり、とくに脳血管合併症や腎症に効果があるとされている2)。 最後に坊内氏は、糖尿病やCKDの治療において大切なこととして、「医師やメディカルスタッフとのコミュニケーションが重要である。共同意思決定(SDM)として治療のゴールを決めるために、患者さんが価値観や好みをきちんと医師などに伝えることで、患者さん個々に合った治療法の提案をすることができる」と語り、講演を終えた。 この後開催された疾患啓発イベント「体験型ボードゲームで学ぶ糖尿病と合併症 ~腎臓の声に耳を傾けよう~ in 丸の内」のオープニングイベントでは、先の講演者の坊内氏が糖尿病の3大合併症として、網膜症、腎症、神経障害を挙げたうえで、糖尿病性腎症はかなり進行するまで自覚症状に乏しいことに言及。「定期的な検査、とくに尿検査を行い、このイベントのタイトルにもなっている『腎臓の声』にしっかり耳を傾けよう」と呼びかけ、ゲストのガンバレルーヤの2人は「自覚症状が出にくいからときちんと病院に行って定期的に検査を受けることが大事なんですね」と早期発見の大切さに納得していた。また、会場では、特大サイズのボードゲームが人気で、多くの参加者が糖尿病とその合併症について学んでいた。

5305.

飽和脂肪酸摂取量がアルツハイマー病リスクと関連

 食事中の脂肪摂取とアルツハイマー病との関連は、観察研究において議論の余地のある関係が示されており、その因果関係も不明である。中国・北京大学のYunqing Zhu氏らは、総脂肪、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取がアルツハイマー病リスクに及ぼす影響を評価し、その因果関係を調査した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年10月11日号の報告。 UKバイオバンクとFinnGenコンソーシアムから得られたゲノムワイド関連研究(GWAS)の要約統計を用いて、2サンプルメンデルランダム化分析を実施した。UKバイオバンクの各種脂肪摂取の研究には、5万1,413例が含まれた。FinnGenコンソーシアムの遅発性アルツハイマー病(4,282例、対照群:30万7,112例)、すべてのアルツハイマー病(6,281例、対照群:30万9,154例)のデータを分析に含めた。さらに、炭水化物とタンパク質の摂取量とは無関係の影響を推定するため、多変量メンデルランダム化(MVMR)分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・総脂肪、飽和脂肪酸の摂取量の標準偏差当たりの遺伝的に予測される増加率は、遅発性アルツハイマー病で、それぞれ44%(オッズ比[OR]:1.44[95%信頼区間[CI]:1.03〜2.02])、38%(OR:1.38[95%CI:1.002〜1.90])高いこととの関連が認められた(p=0.049)。・MVMR分析でも、この関連性は有意なままであった(総脂肪のOR:3.31[95%CI:1.74〜6.29]、飽和脂肪酸のOR:2.04[95%CI:1.16〜3.59])。・MVMR分析では、総脂肪および飽和脂肪酸の摂取は、すべてのアルツハイマー病リスク上昇との関連が認められた(総脂肪のOR:2.09[95%CI:1.22〜3.57]、飽和脂肪酸のOR:1.60[95%CI:1.01〜2.52])。・多価不飽和脂肪酸の摂取量は、遅発性アルツハイマー病およびすべてのアルツハイマー病との関連が認められなかった。 著者らは「食事中の総脂肪摂取、とくに飽和脂肪酸の摂取は、アルツハイマー病リスクに寄与し、その影響は他の栄養素とは無関係であることが示唆された。食事中の飽和脂肪酸摂取量を減らすことは、アルツハイマー病の予防戦略およびマネジメントに役立つであろう」と結論付けている。

5306.

虚血性心筋症の心室頻拍、カテーテルアブレーションは有効か/NEJM

 虚血性心筋症で心室頻拍を有する患者において、抗不整脈薬治療と比較してカテーテルアブレーションによる初期治療は、複合エンドポイント(全死因死亡、心室頻拍発作、適切な植込み型除細動器[ICD]ショック、内科的治療を受けた持続性心室頻拍)のイベントリスクを有意に低下したことが、カナダ・ダルハウジー大学のJohn L. Sapp氏らVANISH2 Study Teamが実施した「VANISH2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号で報告された。欧米3ヵ国の医師主導型無作為化試験 VANISH2試験は、3ヵ国(カナダ、米国、フランス)の22施設で実施した医師主導の非盲検(エンドポイントのイベント判定は盲検下)無作為化試験であり、2016年11月~2022年6月に患者を登録した(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。 心筋梗塞の既往があり、臨床的に重要な心室頻拍(心室頻拍発作、適切なICDショックまたは抗頻拍ペーシングの実施、緊急治療により停止した持続性心室頻拍と定義)を有する患者416例を登録した。これらの患者を、カテーテルアブレーションを受ける群に203例(平均[±SD]年齢67.7±8.6歳、男性95.1%)、抗不整脈薬治療を受ける群に213例(68.4±8.0歳、92.5%)を無作為に割り付けた。 全例がICDを装着していた。カテーテルアブレーションは無作為化から14日以内に施行し、抗不整脈薬治療は事前の規定に従ってソタロールまたはアミオダロンを投与した。 主要エンドポイントは、追跡期間中の全死因死亡と、無作為化から14日以降の心室頻拍発作・適切なICDショック・内科的治療を受けた持続性心室頻拍の複合とした。死亡、心室頻拍発作、ICDショックには差がない 追跡期間中央値4.3年の時点で、主要エンドポイントのイベント発生率は、抗不整脈薬群が60.6%(129/213例)であったのに対し、カテーテルアブレーション群は50.7%(103/203例)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.58~0.97、p=0.03)。 追跡期間中の全死因死亡(カテーテルアブレーション22.2% vs.抗不整脈薬群25.4%、HR:0.84[95%CI:0.56~1.24])、無作為化から14日以降の心室頻拍発作(21.7% vs.23.5%、0.95[0.63~1.42])、無作為化から14日以降の適切なICDショック(29.6% vs.38.0%、0.75[0.53~1.04])には両群間に差を認めず、無作為化から14日以降の内科的治療を受けた持続性心室頻拍(4.4% vs.16.4%、0.26[0.13~0.55])はカテーテルアブレーション群で少なかった。重篤な非致死的有害事象の頻度は同程度 重篤な非致死的有害事象は、カテーテルアブレーション群28.1%(57例)、抗不整脈薬群30.5%(65例)で発現した。また、カテーテルアブレーション群では、術後30日以内の有害事象として死亡が2例(1.0%)で発生し、非致死的有害事象は23例(11.3%)に認めた。抗不整脈薬群では、抗不整脈薬に起因する有害事象として肺毒性による死亡が1例(0.5%)で発生し、非致死的有害事象は46例(21.6%)に発現した。 著者は、「これまでの研究で、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬治療は心室頻拍の再発とICDショックのリスクを減少させることが知られているが、両方とも有害事象を伴い、有効性は完全ではないため、これらの治療法をいつ使用するかが重要な臨床的判断となる」「初期治療として薬物を使用し、薬物療法が無効であればアブレーションを行うというのが一般的な方法であり、現行のガイドラインにも合致する」としている。

5307.

妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。 ビタミンDは、人間の皮膚が日光(紫外線)を浴びると生成されるため「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の発達と健康に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、ビタミンDは、丈夫な骨、歯、筋肉の健康に必要なミネラルであるカルシウムとリン酸のレベルを調節する働きを持つ。 今回の研究では、妊娠14週未満で単胎妊娠中の英国の妊婦(体内でのビタミンDの過不足の指標である血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25~100nmol/L)を対象に、妊娠中のビタミンD摂取と子どもの骨の健康との関連がランダム化比較試験により検討された。対象とされた妊婦は、妊娠14~17週目から出産までの期間、1日1,000IUのコレカルシフェロール(ビタミンDの一種であるビタミンD3)を摂取する群(介入群)とプラセボを摂取する群(対照群)にランダムに割り付けられた。これらの妊婦から生まれた子どもは、4歳および6~7歳のときに追跡調査を受けた。 6〜7歳時の追跡調査を受けた454人のうち447人は、DXA法(二重エネルギーX線吸収法)により頭部を除く全身、および腰椎の骨の検査を受け、骨面積、骨塩量(BMC)、BMD、および骨塩見かけ密度(BMAD)が評価された。解析の結果、介入群の子どもではプラセボ群の子どもと比較して、6〜7歳時の頭部を除く全身のBMCが0.15標準偏差(SD)(95%信頼区間0.04~0.26)、BMDが0.18SD(同0.06~0.31)、BMADが0.18SD(同0.04~0.32)、除脂肪体重が0.09SD(同0.00~0.17)高いことが明らかになった。 こうした結果を受けてMoon氏は、「妊婦に対するビタミンD摂取による早期介入は、子どもの骨を強化し、将来の骨粗鬆症や骨折のリスク低下につながることから、重要な公衆衛生戦略となる」と述べている。 では、妊娠中のビタミンD摂取が、どのようにして子どもの骨の健康に良い影響を与えるのだろうか。Moon氏らはサウサンプトン大学のニュースリリースで、2018年に同氏らが行った研究では、子宮内の余分なビタミンDが、「ビタミンD代謝経路に関わる胎児の遺伝子の活動を変化させる」ことが示唆されたと述べている。さらに、2022年に同氏らが発表した研究では、妊娠中のビタミンD摂取により帝王切開と子どものアトピー性皮膚炎のリスクが低下する可能性が示されるなど、妊娠中のビタミンD摂取にはその他のベネフィットがあることも示唆されているという。

5308.

喘息は子どもの記憶能力に悪影響を及ぼす

 子どもの喘息は記憶能力の低下と関連し、特に、喘息を早期発症した子どもではその影響が顕著であることが、米カリフォルニア大学デービス校心と脳センターのSimona Ghetti氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。Ghetti氏らは、「この研究は、子どもの喘息と記憶能力の問題との関連を示した初めてのものだ」と述べている。 米国では、子どもの喘息患者数は460万人程度と見積もられている。論文の筆頭著者である同大学デービス校心理学分野のNicholas J. Christopher-Hayes氏は、「幼少期は記憶能力、より一般的には認知能力が急速に向上する時期だ。子どもに喘息があると、その向上が遅れることが考えられる」と大学のニュースリリースで述べている。 この研究では、9歳から10歳の子ども約1万1,800人を登録して2015年に開始された、思春期脳認知発達(Adolescent Brain Cognitive Development;ABCD)研究の観察データを用いて、喘息が記憶能力に及ぼす影響が縦断的および横断的に検討された。 縦断的な分析では、喘息のある子どもおよび喘息のない子ども(対照群、平均年齢9.89歳、男子51%)237人ずつが対象とされた。喘息のある子どものうち、135人(平均年齢9.90歳、男子56%)は試験開始時に、102人(平均年齢9.88歳、女子53%)は2年後の追跡調査時に、親により喘息のあることが報告されていた(それぞれ、早期発症群、後期発症群)。分析の結果、主要評価項目としたエピソード記憶(個人が経験した出来事に関する記憶)は全体的に向上していたものの、早期発症群では対照群に比べてその向上率が有意に低かったことが明らかになった。後期発症群と対照群との間に有意な差は認められなかった。 横断的な分析では、研究期間のいずれかの時点で喘息があった子ども(1,031人、平均年齢11.99歳、男子57%)と喘息歴のない子ども(1,031人、平均年齢12.00歳、女子54%)が対象とされた。分析の結果、喘息のある子どもでは喘息のない子どもに比べて、エピソード記憶、副次評価項目とした処理速度、抑制力、注意力の全ての指標において、スコアが有意に低いことが示された。 こうした結果を受けてGhetti氏は、「この研究結果は、子どもの認知能力を低下させ得る原因として喘息を考慮することの重要性を強調している」と話す。同氏はさらに、「喘息だけでなく、糖尿病や心臓病などの慢性疾患が子どもの認知能力に問題が生じるリスクを上昇させ得ることに対する認識は高まりつつある。リスクを高める要因やその保護要因について理解する必要がある」と述べている。 研究グループは、本研究で認められたような記憶能力の低下は、長期的な影響を及ぼす可能性があるとの見方を示し、高齢者の喘息が、認知症やアルツハイマー病のリスク増大と関連付けられていることを指摘する。Christopher-Hayes氏は、「喘息は、子どもが大人になってから認知症のようなより深刻な病気を発症するリスクを高める可能性がある」と話す。研究グループはまた、このような記憶能力の低下は、喘息による長期にわたる炎症、あるいは喘息発作による脳への酸素供給の度重なる中断が原因となっている可能性があると推測している。

5309.

トリプルネガティブ乳がんの治療にDNAワクチンが有望か

 悪性度が高く、治療も困難なトリプルネガティブ乳がんの女性に新たな希望をもたらす可能性のある、DNAワクチンに関する第1相臨床試験の結果が報告された。ワクチンを接種した18人の患者のうち16人が、接種から3年後もがんを再発していないことが確認されたという。米ワシントン大学医学部外科分野教授のWilliam Gillanders氏らによるこの研究の詳細は、「Genome Medicine」に11月14日掲載された。 トリプルネガティブ乳がんは、他のタイプの乳がんの典型的な原因である、ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)とHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)がいずれも陰性であるため、これらの受容体を標的にした治療法が効かない。そのため、手術、化学療法、放射線療法などで対処するより他ないのが現状である。全米乳がん財団によると、米国で発生する乳がんの約10〜15%はトリプルネガティブ乳がんであるという。 今回の試験は、補助化学療法後もがんが残存している非転移性トリプルネガティブ乳がん患者18人を対象に実施された。このような患者は、がんを外科的に切除した後も再発リスクが高いという。研究グループは、患者のがん細胞と健康な組織を比較・分析し、それぞれの患者のがんに特有の遺伝子変異を特定した。このような遺伝子変異により、がん細胞では変異したタンパク質(ネオアンチゲン)が生成される。ネオアンチゲンは、免疫系によって異物として認識されるため、健康な組織に影響を与えることなく、変化したタンパク質のみを認識して攻撃するように免疫系を訓練できる可能性がある。 研究グループは、自分たちで設計したソフトウェアを用いて、患者のがん細胞内で生成され、強力な免疫反応を引き起こす可能性が最も高いと目されるネオアンチゲンを選び出し、その情報(設計図)をDNAワクチンの中に組み込んだ。対象者のそれぞれのワクチンには、平均11個(最小4個から最大20個)のネオアンチゲンの情報が含まれていた。対象者は、1回4mgのDNAワクチンを計3回(1日目、29±7日目、57±7日目)接種した。 その結果、ワクチン接種後に生じた有害事象は比較的少なく、認容性は良好であることが示された。また、Enzyme-Linked ImmunoSpot(ELISpot)アッセイおよびフローサイトメトリーによる測定の結果、18人中14人でネオアンチゲン特異的T細胞応答が誘導されたことが確認された。中央値36カ月間の追跡期間における対象者の無再発生存率は87.5%(95%信頼区間72.7〜100%)であった。 Gillanders氏は、「この試験の結果は予想以上に良かった」と話す。研究グループが、標準治療のみで治療されたトリプルネガティブ乳がん患者の過去のデータを分析したところ、治療から3年後も無再発で生存していた患者の割合は約半数と推測されたという。同氏は、「われわれは、このネオアンチゲンワクチンの可能性に興奮している。この種のワクチン技術をより多くの患者に提供し、悪性度の高いがんに罹患した患者の治療成績の向上に貢献できることを期待している」と話している。 ただし、研究グループは、今後はより大規模な臨床試験でこのワクチンの有効性を証明する必要があると述べている。Gillanders氏は、「この種の分析に限界があることは承知している。しかし、われわれはこのワクチン戦略を追求し続けており、標準治療とワクチン接種による併用療法と標準治療のみの場合の有効性を直接比較するランダム化比較試験を現在も行っている最中だ。現時点では、併用療法に割り当てられた患者で確認されている結果に勇気付けられている」と述べている。

5310.

前立腺肥大症治療薬のタダラフィルが2型糖尿病リスクを抑制

 前立腺肥大症(BPH)の治療に用いられているタダラフィルが、2型糖尿病(T2DM)発症リスクを低下させる可能性が報告された。京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野の高山厚氏らによる研究の結果であり、論文が「Journal of Internal Medicine」に9月17日掲載された。 タダラフィルはホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)と呼ばれるタイプの薬で、血管内皮細胞からの一酸化窒素の放出を増やして血管を拡張する作用があり、BPHのほかに勃起障害(ED)や肺高血圧症の治療に用いられている。近年、T2DMの発症に血管内皮機能の低下が関与していることが明らかになり、理論的にはPDE5iがT2DMリスクを抑制する可能性が想定される。ただし、そのエビデンスはまだ少ない。これを背景として高山氏らは、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)し、観察研究でありながら介入効果を予測し得る、ターゲットトライアルエミュレーションによる検証を行った。 研究には、日本の人口の約13%をカバーする医療費請求データベースの情報を用いた。2014年5月~2023年1月にBPHと診断され、タダラフィル(5mg/日)の処方、またはα遮断薬の処方の記録がある40歳以上の男性患者から、糖尿病の既往(診断、血糖降下薬の処方、HbA1c6.5%以上の検査値で把握)、タダラフィルとα遮断薬の併用、薬剤使用禁忌症例などを除外。タダラフィル群5,180人、α遮断薬群2万46人を特定し、T2DMの発症、処方中止・変更、死亡、保険脱退、または最長5年経過のいずれかに該当するまで追跡した。なお、α遮断薬はBPH治療薬として広く使われている薬で、T2DMリスクには影響を及ぼさないとされている。 ベースライン時点において、タダラフィル群の方がわずかに若年でHbA1cが低かったものの有意差はなく、その他の臨床指標もよく一致していた。追跡期間は、タダラフィル群が中央値27.7カ月、α遮断薬群は同31.3カ月だった。T2DMの発症率は、タダラフィル群では1,000人年当たり5.4(95%信頼区間4.0~7.2)、α遮断薬群は同8.8(7.8~9.8)と計算され、タダラフィルの処方はT2DM発症リスクの低下と関連していた(リスク比〔RR〕0.47〔0.39~0.62〕、5年間の累積発症率差-0.031〔-0.040~-0.019〕)。 前糖尿病(HbA1c5.7%以上)に該当するか否かで二分した上での解析(前糖尿病ではRR0.49〔0.40~0.69〕、HbA1c5.7%未満ではRR0.34〔0.20~0.63〕)や、肥満(BMI25以上)の有無で二分した解析(肥満ではRR0.61〔0.43~0.80〕、非肥満ではRR0.38〔0.24~0.62〕)でも、全てのサブグループで全体解析同様の結果が示された。また、感度分析として、T2DM発症の定義などを変更した15パターンでの解析を行ったが、結果は一貫していた。 著者らは、保険非適用のPDE5i処方(ED治療目的)が把握されていないことや残余交絡が存在する可能性などを研究の限界点として挙げた上で、「BPH男性の治療におけるタダラフィルの処方はα遮断薬の処方と比較して、T2DM発症リスクの低下と関連しているようだ。この関連のメカニズムを明らかにし、同薬のメリットを得られる集団の特徴をより詳細かつ明確にする必要がある」と述べている。

5311.

GLP-1受容体アゴニストの減量に対する長期の効果と糖尿病予防効果の強固さ(解説:名郷 直樹氏)

 GLP-1受容体アゴニストを72週投与し、体重減少を1次アウトカムとした二重盲検ランダム化比較試験SURMOUNT-1研究1)の対象者に対し、176週まで治療を継続し、さらに治療中止後に17週の追跡を追加した2次解析結果の報告である2)。 BMI 30以上、または糖尿病以外の肥満関連のリスクを持つBMI 27以上の肥満者を対象として、チルゼパチド5mg、10mg、15mgの週1回投与とプラセボを比較して、176週後、193週時点の体重変化と糖尿病の発症をアウトカムに設定している。 176週時点で、チルゼパチド群の体重の平均変化率は、5mg投与群で-12.3%、10mg投与群で-18.7%、15mg投与群で-19.7%に対し、プラセボ群では-1.3%である。それぞれの変化率の差は、5mg用量で-11.1%(95%信頼区間[CI]:-14.4〜-7.8)、10mg用量で-17.5%(95%CI:-23.6〜-11.3)、15mg用量で-18.4%(95%CI:-22.2〜-14.7)と報告されている。 2型糖尿病の診断を受けた患者は、176週時点でチルゼパチド群1.3%、プラセボ群13.3%、ハザード比0.07(95%CI:0.0~0.1)、さらに治療中止の17週後でもハザード比0.12(95%CI:0.1~0.2)と同様の結果である。 統計学的には仮説生成的解析である2次解析の結果とはいえ、体重の変化率の差で10%を超える効果があり、投与量の増加に比例した効果の増大を示す量反応関係も示されており、3年程度の長期にわたる効果も十分認められると解釈できる結果である。 また糖尿病と診断された患者の率も、176週時点のハザード比で0.07、95%CIの上限でも0.1、同様に17週の治療中止後でもハザード比0.12、95%CIの上限でも0.2と大きな効果を示している。その反面、量反応関係では、投与量の増加に対する効果の増大は示されていないが、95%CIの上限でもハザード比0.2という大きな効果は、この結果の妥当性を強固なものにしている。 統計学的な解釈としては、1次アウトカムの結果以外は仮説生成的であるというのが一般的であるが、この論文で示された2次解析結果は、体重減少の変化率に対する量反応関係を伴う大きな効果と、糖尿病診断減少の大きな効果を考えれば、BMIが30を超える高度肥満者、高リスクのBMI 27を超える対象に対する臨床的な効果は、十分妥当な結果と言っていいと思われる。ただ、より痩せを志向する日本の現状では、その適用が軽度の肥満やむしろ痩せの人に拡大されることに注意が必要かもしれない。

5312.

日本人の主な死因(2023年)

日本人の主な死因その他食道 2.8%21.0%前立腺 3.5%肺および気管・気管支19.8%大腸(結腸・直腸)13.9%悪性リンパ腫3.8%アルツハイマー病1.6%その他悪性新生物(腫瘍)25.0%24.3%乳房 4.1%膵胃胆のう・胆道 4.5%10.5%10.1%肝・肝内胆管 6.0%n=38万2,504人腎不全 1.9%心疾患新型コロナウイルス感染症 2.4%不慮の事故2.8%誤嚥性肺炎3.8%(高血圧性を除く)心疾患14.7%老衰脳血管疾患 12.1%6.6%肺炎慢性リウマチ性4.8%心筋症 1.5%0.8%慢性非リウマチ性心内膜疾患5.2%くも膜下出血n=157万6,016人10.7%31.3%n=10万4,533人20.6%心不全42.9%急性心筋梗塞13.4% 不整脈および伝導障害15.6%その他 2.9%脳内出血その他n=23万1,148人脳梗塞55.1%厚生労働省「人口動態統計」2023年(確定数)保管統計表 都道府県編 死亡・死因「第4表-00(全国)死亡数,都道府県・保健所・死因(死因簡単分類)・性別」より集計注:死因順位に用いる分類項目(死因簡単分類表から主要な死因を選択したもの)による順位Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

5313.

第219回 外科医確保へ処遇改善、長時間労働是正など包括的な対策を検討/厚労省

<先週の動き>1.外科医確保へ処遇改善、長時間労働是正など包括的な対策を検討/厚労省2.医療機関の経営危機に緊急支援、1,311億円の対策パッケージ/政府3.ED治療薬のスイッチOTC化を検討、意見募集を開始/厚労省4.美容医療の規制強化の対策案公表、情報公開と行政指導を強化/厚労省5.マイナ保険証対応の義務化は「適法」医師らの訴え棄却/東京地裁6.建設費高騰で新病院建設を断念、埼玉県の医師不足解消に暗雲/順天堂大1.外科医確保へ処遇改善、長時間労働是正など包括的な対策を検討/厚労省厚生労働省は11月29日、「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、外科医不足が深刻化する中、外科医の業務負担軽減と処遇改善に取り組む方針を固めた。外科医は長時間労働や休日出勤が多く、私生活との両立が難しいことから、若手の医師などに敬遠されがちな診療科となっている。厚労省は、外科医のなり手を増やすため、業務負担の軽減、報酬の引き上げ、研修制度の見直しなどを検討する。具体的な対策としては、手術支援ロボットの導入や医師事務作業補助者の配置による業務効率化、外科医の給与増額などが考えられている。また、若手医師の外科離れを防ぐため、研修制度の見直しも検討される。医師の偏在対策を議論する有識者検討会では、外科医の処遇改善に向けた「手厚い評価」について議論が行われた。この中で、病院経営の観点から外科医の給与増額を提案する意見や、大学病院の医局制度の見直しを求める意見などが出された。厚労省は、これらの意見を踏まえ、年末に取りまとめる医師偏在対策の総合的な対策パッケージに反映させる方針。参考1)第8回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)外科医確保へ処遇改善 厚労省方針、負担軽減や報酬増(日経新聞)3)医師偏在是正に向け「外科医の給与増」・「総合診療能力を持つ医師」養成・「広域連携型の医師臨床研修」制度化等が重要-医師偏在対策等検討会(Gem Med)4)広域連携型プログラムの検証制度、早期検討を 医師偏在対策で複数意見 厚労省検討会(CB news)2.医療機関の経営危機に緊急支援、1,311億円の対策パッケージ/政府高齢化やコロナ禍による受診行動の変化で経営状況が悪化している医療機関に対し、政府は2024年度補正予算案で1,311億円規模の緊急支援パッケージを盛り込んだ。この支援策は、医療機関の賃上げ支援、病床削減を実施する医療機関への支援、医師不足地域への支援、医療DX推進などが柱となっている。賃上げ支援では、病院や有床診療所には1床当たり4万円、無床診療所と訪問看護ステーションには1施設に付き18万円の給付金を支給するほか、病床削減を進める医療機関には、1床当たり410万4,000円の給付金を交付し、診療体制の変更を支援する。また、医師不足地域に対しては、診療所の承継や開業、医師の派遣、専門医に対するリカレント教育などを支援する。医療DX関連では、全国医療情報プラットフォームの構築や電子処方箋の普及促進、マイナ保険証の利用促進などに予算が計上された。一方、財務省は11月29日に財政制度等審議会を開き、2025年度予算編成に向けた建議をまとめ、医療費総額の伸びを抑制するため、不断の制度改革を求めた。福祉医療機構の調査によると、今年春の診療報酬改定による施設基準の厳格化の影響が大きく、急性期病院の約45%が2024年度診療報酬改定後に減益となっていることが明らかになっており、財務省側は補助金による財政措置に歯止めを求めている。政府の緊急支援パッケージは、医療機関の経営安定化に一定の役割を果たすと期待される一方、財政状況の悪化や高齢化に伴う医療ニーズの変化に対応した抜本的な改革も求められている。参考1)医療・介護の賃上げに1,800億円 24年度補正予算案(日経新聞)2)賃上げ支援1床当たり4万円、病院と有床診 無床診と訪看は1施設18万円 補正予算案(CB news)3)急性期163病院の45%が減益 24年度報酬改定後 増収分を費用が上回る 福祉医療機構(同)4)令和7年度予算の編成等に関する建議(財務省)3.ED治療薬のスイッチOTC化を検討、意見募集を開始/厚労省厚生労働省は11月25日、勃起不全(ED)治療薬のタダラフィル(商品名:シアリス)について、医師の処方箋なしで購入できる一般用医薬品(OTC)への転用(スイッチOTC化)を検討するため、意見募集を開始した。ED治療薬がOTC化されれば、国内では初めてのケースとなる。現在、ED治療薬は医療用医薬品として医師の処方箋が必要となっている。しかし、医師への受診をためらい、インターネットなどを利用して個人輸入で海外から薬を購入するケースが増加し、偽造薬のリスクなどが懸念されている。タダラフィルがOTC化されれば、薬局やドラッグストアで購入できるようになり、正規品の入手機会の拡大と、偽造薬による健康被害の防止が期待される。厚労省は、意見募集の結果を踏まえ、専門家による検討会で課題や対応策を議論し、最終的には薬事審議会の部会で承認を判断する。参考1)候補成分のスイッチOTC化に関する御意見の募集について(厚労省)2)スイッチOTC医薬品の候補となる成分の検討結果について(同)3)タダラフィルなど3成分、スイッチで意見募集 厚労省、「時短スキーム」第1弾(日刊薬業)4)ED治療薬、処方箋不要に 厚労省検討、正規品入手しやすく(日経新聞)5)医療用医薬品から要指導・一般用医薬品への転用(スイッチOTC化)の促進(日本OTC医薬品協会)4.美容医療の規制強化の対策案公表、情報公開と行政指導を強化/厚労省厚生労働省は、11月28日に社会保障審議会医療部会を開き、美容医療のトラブル増加を受け、規制強化に向けた対策案を公表した。この対策案は、6月から開催されてきた「美容医療の適切な実施に関する検討会」で議論されてきた内容をまとめたもの。背景には、美容医療に関するトラブル相談が急増している現状があり、国民生活センターの報告によると、美容医療に関する相談件数は2023年度に5,507件となり、5年間で3倍以上に増加した。厚労省は、美容医療を提供する医療機関に対し、安全管理体制や医師の専門医資格の有無、相談窓口の設置状況などを都道府県へ報告することを義務付けるほか、保健所による指導の明確化のほか、診療録の記載の徹底、オンライン診療のルール整備、関係学会によるガイドライン策定、医療広告規制の強化のほか、国民へ美容医療についてのリスクの情報提供の強化を行うこととした。さらに、一般社団法人が開設する医療機関に対し、安全管理体制や医師の専門医資格の有無、相談窓口の設置状況などを都道府県に事業報告書などの書類提出を義務付ける方針を固めた。一般社団法人は、医師が代表となる医療法人と異なり、管理者となる医師がいれば異業種でも医療に参入できる。近年、美容クリニックを中心に、一般社団法人が開設する医療機関が増加しており、2023年には780ヵ所に達している。しかし、一般社団法人は医療法人と比べて規制が緩く、営利目的での運営や医療の質の低下などが懸念されてきているため対応が急がれていた。厚労省は、一般社団法人に対しても医療法人と同等の報告を義務付けることで、経営実態の把握を強化し、非営利性の徹底を図る考え。参考1)美容医療の適切な実施に関する検討会報告書(厚労省)2)「一般社団法人」クリニック 経営や事業の内容確認 厳格化へ(NHK)3)一般社団法人の医療機関、報告対象に 美容医療が念頭(日経新聞)5.マイナ保険証対応の義務化は「適法」医師らの訴え棄却/東京地裁医師らがマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への対応を義務付ける厚生労働省の省令は違法だとして、国に義務がないことの確認を求めた訴訟で、東京地裁は11月28日、医師側の請求を棄却した。判決は、マイナ保険証への対応義務化について「制度運営の効率化や、正確なデータに基づいたより良い医療のためと認められる」と指摘。医療機関への経済的負担が生じても「事業継続を困難にするとは言えず、医療活動の自由に重大な制限を課すものではない」として、国側の主張を認めた。原告の医師らは、機器導入費用や維持費、情報漏えいのリスクなどを訴えたが、判決では、システム導入には財政的な補助があり、廃業を余儀なくされるほどの負担ではないと判断した。この判決を受け、原告団は控訴する意向を示している。一方、政府は12月2日に現行の健康保険証の新規発行を停止し、マイナ保険証への移行を進める方針。平 将明デジタル相は、マイナ保険証は医療費適正化や新たな価値創出に不可欠であり、移行を予定通り進める必要があると強調した。マイナ保険証の導入を巡っては、医療現場の混乱や患者情報の取り扱いなど、さまざまな課題が指摘されている。政府は、これらの課題に対応しながら、マイナ保険証の普及促進を目指していく考え。参考1)マイナ保険証対応の義務化は適法、医師らの訴えを退ける 東京地裁(朝日新聞)2)マイナ保険証導入義務化 違法と言えず 医師ら訴え退ける判決(NHK)3)マイナ保険証システム義務化は適法 医師の違法確認を棄却 東京地裁(毎日新聞)6.建設費高騰で新病院建設を断念、埼玉県の医師不足解消に暗雲/順天堂大埼玉県さいたま市への新病院建設を計画していた順天堂大学は、11月29日、計画を中止すると埼玉県に伝えた。2015年に埼玉県が公募した病院誘致計画で、順天堂大学は800床規模の新病院建設を提案し、採択されていた。しかし、建設費や資材費の高騰により、総事業費が当初の834億円から2,186億円に膨れ上がったこと、コロナ禍以降の病院経営の悪化、医師の働き方改革への対応などを理由に、計画を断念するにいたった。埼玉県の公募に応える形で、新病院の建設が決まったのは2015年3月。当初は2020年度に開院としていたが、その後、何度もその時期が先送りされてきた。大学側は、事業費を抑えるために看護系学部の開設や宿舎の整備・大学院棟の建設を先送りにし、病院の規模も当初予定していた800床から500床程度に縮小する計画案を検討した。しかし、建築費の高騰や医療を取り巻く厳しい環境を鑑みると、計画の見直しなどによっても、埼玉県民に貢献できる最先端医療機能を備え、かつ、DXを活用した未来型基幹病院の開設は困難と判断した。埼玉県の大野 元裕知事は、「大変遺憾」と述べ、「県民の期待が大きかっただけに残念だ」と語っている。順天堂大学は、計画中止をさいたま市にも報告し、清水 勇人市長は「大変残念」とコメントした。新病院の建設予定地は、県有地とさいたま市有地で、約7万7,000平方メートル。県は土地取得に55億5,000万円を投じていた。今後の土地活用については、埼玉県は「病院誘致の可能性も含め、総合的に判断する」としている。順天堂大学の新病院は、埼玉県が抱える医師不足の課題解決に向けても期待が寄せられていた。埼玉県は、人口10万人当たりの医師数が全国で最も少なく、医師不足が課題となっていた。このため、埼玉県は新病院の公募の条件に、医師不足の地域に大学が医師を派遣することを挙げており、現在、順天堂大学からは県北部と西部の病院に2人の医師が派遣されている。新病院の開院後は段階的に人数を増やし、年間20人の医師が派遣される予定だった。今回の計画中止は、埼玉県の医師不足解消に大きな影響を与える可能性がある。参考1)埼玉県浦和美園地区病院の整備計画中止について(順天堂大学)2)順天堂大学 800床の病院整備計画を中止 埼玉県に伝える(NHK)3)順天堂大、さいたま市への新病院建設を断念 資材高騰で資金不足(毎日新聞)4)順天堂大の新病院、建設決定から9年半で計画中止に…「青天の霹靂」「裏切られた気持ちだ」(読売新聞)

5314.

人工股関節置換術前の検査【日常診療アップグレード】第18回

人工股関節置換術前の検査問題73歳女性。変形性股関節症の治療のため入院中である。3日後に左の人工股関節置換術が予定されている。出血量は300~500mLと予想される。既往歴として高血圧と甲状腺機能低下症がある。エナラプリル(ACE阻害薬)、アムロジピン(Ca拮抗薬)、レボチロキシン(甲状腺ホルモン薬)、アセトアミノフェン(鎮痛薬)を内服している。バイタルサインは異常なし。疼痛のため、左股関節の可動域に制限がある。2ヵ月前にTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定していて異常はない。術前検査として、全血球計算(CBC)と腎機能に加えTSHとFT4をオーダーした。

5315.

糖尿病を有する終末期がん患者におけるシックデイ時の薬物療法を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第63回

 今回は、胃がん終末期の患者に関して、食事摂取量低下時の重篤な副作用を予防するために薬剤師から能動的に処方調整を提案した事例を紹介します。終末期がん患者では、病勢の進行に伴う全身状態の変化に応じたきめ細やかな薬物療法の調整がとくに重要となります。患者情報85歳、男性基礎疾患胃底部がん(門脈腫瘍塞栓あり)、2型糖尿病(罹患歴35年)、第12腰椎圧迫骨折ADL移乗・移動は全介助、食事は自立、オムツ使用生活環境ホスピス入所中、24時間看護体制下で療養食事摂取量通常の2割程度(1週間前は5割)介入時の検査値HbA1c 7.1%処方内容1.メトホルミン錠500mg 1錠 分1 朝食後2.シタグリプチン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.デキサメタゾン錠4mg 1錠 分1 朝食後4.ランソプラゾール錠15mg 1錠 分1 朝食後5.アンブロキソール錠15mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイント終末期がんによる全身状態の悪化に伴い、食事摂取量が5割から2割へと急激に低下しました。現行処方を確認したところ、以下の懸念点が浮かび上がりました。メトホルミンによる乳酸アシドーシスのリスク高齢(85歳)食事摂取量の著明な低下がん終末期による全身状態悪化血糖コントロールに影響を与える因子デキサメタゾンによる血糖上昇作用食事摂取量低下による血糖値の変動リスク終末期における治療方針の検討QOLを重視した血糖管理目標の設定低血糖リスクの回避医師への提案と経過以下の内容について情報提供を行いました。【現状報告】食事摂取量:5割→2割に低下がんの進行状況(門脈腫瘍塞栓あり)デキサメタゾン併用による血糖変動リスク【懸念事項】乳酸アシドーシスのリスク因子→食事摂取量低下、がん終末期による代謝異常、高齢終末期における治療方針→症状緩和優先の方針、QOLを考慮した血糖管理目標の設定【提案内容】メトホルミンの中止シタグリプチンによる血糖管理の継続症状観察の強化・継続医師には提案を採用いただき、メトホルミンの中止が決定しました。施設スタッフに状況を説明し、食事摂取状況や血糖値の推移、全身状態の変化、苦痛症状がないかどうかを観察いただくよう伝えました。中止1週間後でも重篤な血糖上昇や乳酸アシドーシス症状はなく、QOLは維持していました。考察本症例では、以下の点が適切な介入につながったと考えています。1.終末期における薬物療法の考え方:QOLを重視した処方調整、リスク・ベネフィットバランスの見直し、過少・過剰医療の回避2.多職種連携の重要性:医師との適切な情報共有、施設スタッフとの密な連携、観察ポイントの明確化3.先制的な介入の意義:重篤な副作用の予防、終末期QOLの維持、安全な薬物療法の実現終末期がん患者の薬物療法管理では、病勢の進行に応じた柔軟な対応が求められます。とくに食事摂取量の変化など、全身状態に影響を与える因子については、早期に気付いて対応することが重要です。本事例は、薬剤師による予防的な処方調整提案が、終末期患者のQOL維持に貢献した例と言えます。ホスピスにおける薬剤師の役割として、患者の状態変化を予測した先制的な介入の重要性を再認識させられた症例となりました。

5316.

酒で赤くなる人は睡眠満足度が低い?

 飲酒後に顔や首が赤くなる症状はアジアンフラッシュとして知られ、東アジア人の約36%がアジアンフラッシュの特徴を持っている。アジアンフラッシュに関連する遺伝的因子は睡眠時間と逆相関することが報告されているが、アジアンフラッシュと睡眠満足度との関連を報告した研究はない。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らがインターネット調査による横断研究で検討したところ、アルコール曝露に対する身体的反応の遺伝的特徴が睡眠の質にも影響を及ぼす可能性が示唆された。Medical Science誌2024年11月8日号に掲載。 本研究は、インターネット調査会社に登録している大阪府在住の一般モニターのうち20~64歳の日本人3,823人(男性1,907人、女性1,916人)を対象とし、2023年11月27~30日にインターネット調査を実施した。睡眠の満足度については、「満足」「少し不満」「かなり不満」「非常に不満またはまったく眠れなかった」のうち「満足」と回答した参加者を満足のいく睡眠をとっているとみなした。アジアンフラッシュについては、「飲酒し始めた年齢で、少量のアルコール摂取(ビールコップ1杯程度)ですぐに顔が赤くなりましたか?」という質問に「はい」と回答した参加者をアジアンフラッシュを経験していると分類した。飲酒したことのない参加者と過去に飲酒していた参加者を非飲酒者と定義した。 主な結果は以下のとおり。・アジアンフラッシュと睡眠満足度の間に有意な逆相関が認められた。潜在的交絡因子を補正した睡眠満足度のオッズ比(OR)は0.81(95%信頼区間[CI]:0.69~0.96)であった。・飲酒者と非飲酒者で基本的に同様の関連が認められた。補正後のORは、非飲酒者で0.81(95%CI:0.65~0.997)、飲酒者で0.80(同:0.61~1.05)であった。 著者らは、この結果が与える新たな臨床的意味合いとして「日常診療や毎年の健康診断に簡単に導入できる質問票が、睡眠不足の危険因子を特定するために役立つ可能性がある。また、飲酒しない人でもアジアンフラッシュは睡眠時間だけでなく睡眠満足度に関しても睡眠障害のリスクであることが明らかになった」としている。

5317.

HBV母子感染予防、出生時HBIG非投与でもテノホビル早期開始が有効か/JAMA

 B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染は新規感染の主要な経路であり、標準治療として母親への妊娠28週目からのテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)投与開始と、新生児への出生時のHBVワクチン接種およびHBV免疫グロブリン(HBIG)投与が行われるが、医療資源が限られた地域ではHBIGの入手が困難だという。中国・広州医科大学のCalvin Q. Pan氏らは、妊娠16週からのTDF投与とHBVワクチン接種(HBIG非投与)は標準治療に対し、母子感染に関して非劣性であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年11月14日号で報告された。中国の無作為化非劣性試験 研究グループは、妊婦へのTDF早期投与開始と新生児への出生時HBIG投与省略がHBVの母子感染に及ぼす影響の評価を目的とする非盲検無作為化非劣性試験を行い、2018年6月~2021年2月に中国の7施設で参加者を募集した(John C. Martin Foundationの助成を受けた)。 年齢20~35歳、HBe抗原陽性の慢性B型肝炎でHBV DNA値>20万IU/mLの妊婦280例(平均年齢28[SD 3.1]歳、平均妊娠週数16週、HBV DNA値中央値8.23[7.98~8.23]log10 IU/mL)を登録した。 これらの妊婦を、妊娠16週目から出産までTDF(VIREAD[Gilead Sciences製]、300mg/日)を投与する群(実験群)に140例、妊娠28週目から出産までTDFを投与する群(標準治療群)に140例を無作為に割り付けた。すべての新生児は生後12時間以内にHBVワクチンの接種を受け、1ヵ月および6ヵ月後に追加接種を受けた。加えて、標準治療群の新生児のみ、出生時にHBIG(100 IU)を投与された。 主要アウトカムは母子感染とし、生後28週時の乳児における20 IU/mL以上の検出可能なHBV DNA値またはHBs抗原陽性の場合と定義した。母子感染率が、標準治療群と比較して実験群で3%以上増加しなかった場合に非劣性と判定することとし、90%信頼区間(CI)の上限値で評価した。ITT集団、PP集団とも非劣性基準を満たす 全生産児273例(ITT集団)における母子感染率は、実験群が0.76%(1/131例)、標準治療群は0%(0/142例)であった。また、per-protocol(PP)集団の生産児(プロトコールの非順守がなく28週時点のデータが入手できた)265例の母子感染率は、それぞれ0%(0/124例)および0%(0/141例)だった。 母子感染率の群間差は、ITT集団で0.76%(両側90%CIの上限値1.74%)、PP集団で0%(1.43%)と、いずれも非劣性の基準を満たした。 また、母親における分娩時のHBV DNA値<20万IU/mLの達成率は、実験群で有意に高かった(99.2%[130/131例]vs.94.2%[130/138例]、群間差:5%、両側95%CI:0.1~10.0、p=0.02)。 先天異常/奇形は、実験群で2.3%(3/131例)、標準治療群で6.3%(9/142例)に発生した(群間差:4%、両側95%CI:-8.8~0.7)。忍容性は全般的に良好 母親へのTDF治療は全般的に忍容性が高く、投与中止は吐き気による1例(0.36%)のみであった。コホート全体で最も頻度の高かった有害事象として、母親のALT値上昇が25%(実験群23.6% vs.標準治療群26.4%)、上気道感染症が14.6%(11.4% vs.17.8%)、嘔吐が12.9%(16.4% vs.9.3%)で発生した。 実験群では、妊娠中絶1件(ファロー四徴症)、胎児死亡4件(流産1件、死産3件)を認めた。新生児におけるグレード3/4の有害事象の頻度は両群で同程度だった。 著者は、「これらの結果は、とくにHBIGを使用できない地域では、HBV母子感染の予防において、妊娠16週目から妊婦へのTDFを開始し、新生児へのHBVワクチン接種を併用する方法を支持するものである」「新生児へのHBIG使用を最小限に抑えるための母親へのTDF療法の最適な期間はいまだ不明である」としている。

5318.

アブレーション後のAF患者における左心耳閉鎖術の安全性・有効性/NEJM

 カテーテルを用いた心房細動アブレーションを受け、脳卒中リスクが中等度~高度の患者において、経口抗凝固薬投与と比較して左心耳閉鎖術は、36ヵ月後の手技に関連しない出血(大出血および臨床的に重要な非大出血)のリスクが有意に低く、全死因死亡、脳卒中、全身性塞栓症の複合に関して非劣性であることが、米国・クリーブランド・クリニックのOussama M. Wazni氏らが実施した「OPTION試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号に掲載された。国際的な無作為化臨床試験 OPTION試験は、カテーテルアブレーションを受けた心房細動患者における左心耳閉鎖術の安全性と有効性の評価を目的とする国際的な無作為化臨床試験であり、2019年11月~2021年6月の期間に10ヵ国106施設で参加者を募集した(Boston Scientificの助成を受けた)。 CHA2DS2-VAScスケール(0~9点、高スコアほど脳卒中のリスクが高い)のスコアが男性≧2点、女性≧3点で、カテーテルアブレーションを受けた心房細動患者1,600例を登録した。これらの患者を、左心耳閉鎖術を受ける群(803例)、経口抗凝固薬の投与を受ける群(797例)に無作為に割り付けた。 ベースラインの全体の平均[±SD]年齢は69.6±7.7歳、女性が34.1%で、平均CHA2DS2-VAScスコアは3.5±1.3点、平均HAS-BLED(0~9点、高スコアほど出血のリスクが高い)スコアは1.2±0.8点であった。左心耳閉鎖術群は、98.8%(753/762例)でデバイスの留置に成功した。副次エンドポイントも非劣性を達成、デバイス/手技関連合併症は23例 36ヵ月の時点でのITT集団におけるKaplan-Meier法による安全性の主要エンドポイント(手技に関連しない出血[ISTH基準の大出血および臨床的に重要な非大出血]、優越性を評価)の推定発生率は、経口抗凝固薬群が18.1%(137例)であったのに対し、左心耳閉鎖術群は8.5%(65例)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.33~0.59、優越性のp<0.001)。 また、36ヵ月時のITT集団におけるKaplan-Meier法による有効性の主要エンドポイント(全死因死亡、脳卒中、全身性塞栓症の複合、非劣性[非劣性マージン5%ポイント]を評価)の推定発生率は、左心耳閉鎖術群5.3%(41例)、経口抗凝固薬群5.8%(44例)であり、左心耳閉鎖術群の非劣性が示された(HR:0.91、95%CI:0.59~1.39、片側97.5%CIの上限値:1.8、非劣性のp<0.001)。 36ヵ月時の副次エンドポイント(ISTH基準による大出血[手技関連出血を含む]、非劣性[非劣性マージン5.25%ポイント]を評価)の発生率は、左心耳閉鎖術群3.9%(30例)、経口抗凝固薬群5.0%(38例)と、左心耳閉鎖術群の非劣性が示された(HR:0.77、95%CI:0.48~1.24、片側97.5%CIの上限値:1.0、非劣性のp<0.001)。 デバイスまたは手技に関連する合併症は、左心耳閉鎖術群の23例(うち1例は経口抗凝固薬群からのクロスオーバー)で発現した。12ヵ月後のデバイス関連血栓の発生率は1.9%だった。 著者は、「心房細動アブレーション施行時に左心耳閉鎖術を安全に行えるという事実は、長期間の経口抗凝固薬投与に代わる新たな選択肢をもたらす可能性がある」としている。

5319.

大戦中の砂糖配給制の影響を胎児期に受けた人は糖尿病や高血圧が少ない

 第二次世界大戦中と終戦後しばらく、砂糖が配給制だった時期に生まれた人には、2型糖尿病や高血圧が少ないとする、米南カリフォルニア大学(USC)ドーンサイフ経済社会研究センターのTadeja Gracner氏らの研究結果が「Science」に10月31日掲載された。2型糖尿病リスクは約35%、高血圧リスクは約20%低いという。この結果は、現代の人々が砂糖のあふれた環境によって、いかに大きな健康被害を受けているかを示しているとも言えそうだ。 この研究では、第二次世界大戦中に英国で行われた砂糖配給制に焦点が当てられた。英国では1942年に砂糖が配給制となり、国民の砂糖摂取量は1日当たり平均40g(ティースプーンで約8杯分)となった。ちなみに、現在流通している一般的な加糖飲料の中には50gほどの砂糖が使われているものもある。英国の砂糖配給制は戦後もしばらく継続され、1953年9月になって終了した。それとともに砂糖の摂取量は平均80gへと倍増した。 このように、配給制度下で砂糖摂取量が限られていた時期に胎児期から乳幼児期(受胎後の最初の1,000日)を過ごした人と、配給制が終了して砂糖摂取量が急増した時期に、受胎後の最初の1,000日を過ごした人とで、成人後の糖尿病や高血圧のリスクに差があるかが検討された。検討には、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。 解析の結果、砂糖摂取量が少ない環境で受胎後の最初の1,000日を過ごした人は、そうでない人に比べて、2型糖尿病のリスクが約35%低く、高血圧リスクは約20%低いことが明らかになった。また、それらを発症した人の発症年齢は、前者の群で2型糖尿病については4年、高血圧については2年遅かった。この結果から、砂糖摂取量の少ない母親の子宮内環境への暴露は、糖尿病や高血圧に対する保護効果を持つと考えられた。また、出生後に固形食が始まったと思われる、生後6カ月以降に砂糖摂取量が限られていたことで、その保護効果はより強化されていた。子宮内環境のみによるリスク低減効果は、全体の約3分の1を占めていた。 Gracner氏は、「胎児期から乳幼児期の栄養摂取の影響を調査するランダム化比較試験の実施には高いハードルがあり、かつ、50年後、60年後にその差を検証することも困難だ」と解説。その上で、「われわれは、配給制の実施と終了という社会的な変化を利用してそれらの課題をクリアし、自然実験を行った」と述べている。また、論文の共著者の1人である米シカゴ大学およびマギル大学(カナダ)のClaire Boone氏は、「この研究は、幼い頃の砂糖摂取を減らすことが、子どもの生涯にわたる健康増進に向けた強力な一歩であるという因果関係を指し示す、初のエビデンスである」としている。

5320.

日中の眠気と熱意の低下は認知症の前段階と関連

 日中に眠気があり、活動への熱意を奮い起こすことが困難な高齢者は、そうした症状のない高齢者に比べて、認知症の前段階の一形態である運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome;MCR)になるリスクが3倍以上高いことが、新たな研究で明らかになった。MCRは主観的認知機能の低下と歩行速度の低下が併存した状態を指す。米アルバート・アインシュタイン医科大学のVictoire Leroy氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月6日掲載された。 今回の研究でLeroy氏らは、認知症のない65歳以上の高齢者445人(平均年齢75.9歳、女性56.9%)を対象に、悪い睡眠の質とMCRとの関連を調査した。MCRは、標準化された質問票を通じて報告された認知機能の低下と、電子トレッドミルで記録された歩行速度の低下が同時に認められる場合と定義し、試験開始時と年に1回の追跡調査時に評価された。睡眠の質はピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で評価し、5点以下の「良い睡眠の質」と5点超の「悪い睡眠の質」に分類した。 試験開始時にMCRが認められなかった対象者は403人だったが、そのうちの36人が、中央値2.9年の追跡期間中にMCRに該当すると判定された。解析の結果、睡眠の質が悪い人は、睡眠の質が良い人と比べてMCRリスクが2.7倍高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕2.7、95%信頼区間〔CI〕1.2〜5.2)。しかし、抑うつ症状を考慮すると、この関連は統計学的に有意ではなくなった(調整HR 1.6、95%CI 0.7〜3.4)。完全調整モデルを用いた解析では、PSQIを構成する7つの要素のうち、日中の機能障害(過度の眠気と熱意の低下)だけが、MCRリスクと有意な関連を示した(調整HR 3.3、同1.5〜7.4)。一方、試験開始時にすでにMCRが認められた人では、MCRと悪い睡眠の質との間に有意な関連は認められなかった(オッズ比1.1、95%CI 0.5〜2.3)。 研究グループは、この研究では睡眠障害とMCRとの関連が示されただけで、因果関係が証明されたわけではないと指摘している。また、Leroy氏は、「さらなる研究により、睡眠障害と認知機能低下との関係、およびその関係にMCRが果たしている役割を調べる必要がある。さらに、睡眠障害をMCRおよび認知機能低下に結び付けるメカニズムを説明するための研究も必要だ」と述べている。 その一方で研究グループは、「それでも本研究結果は、良質な睡眠により老後の脳の健康が守られる可能性が高いことを示している」との見方を示す。Leroy氏は、「われわれの研究結果は、睡眠障害のスクリーニングの必要性を強調するものだ。睡眠に問題がある人は、その治療を受けることで、老後の認知機能低下を予防できる可能性がある」と話している。

検索結果 合計:36520件 表示位置:5301 - 5320