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転移大腸がん1次治療のニボルマブ+イピリムマブ、PFS2も良好(CheckMate 8HW)/ASCO2024

 肺がん、胃がんなど幅広い固形がんで有用性が報告されているニボルマブ+イピリムマブのレジメン。本レジメンの転移大腸がん1次治療における有用性を検証するCheckMate 8HW試験では、2024年1月に行われたASCO-GIにおいて、ニボ+イピが化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長したことがすでに報告されている。5月31日~6月4日に行われた米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)では、米国・南カリフォルニア大学のHeinz-Josef Lenz氏が本試験のPFSの追加解析結果を報告した。・試験デザイン:多施設共同ランダム化非盲検第III相試験・対象:高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)切除不能または転移大腸がん(mCRC)、ECOG 0~1・試験群(ニボ+イピ群):ニボルマブ(240mg)+イピリムマブ(1mg/kg)を3週ごとに4サイクル後、ニボルマブ(480mg)を4週ごと投与 202例・対照群(化学療法群):医師選択による化学療法±標的療法 101例病勢進行または許容できない毒性が認められるまで(全群)、または最長2年間(ニボ+イピ群)継続。化学療法中に進行した患者はニボ+イピへのクロスオーバーを許可(試験にはニボ単剤群も設定されているが、今回の解析には含まれない)。・評価項目:[主要評価項目]PFS:1次治療におけるニボ+イピ群vs.化学療法群(今回の発表)、全期間におけるニボ+イピ群vs.ニボ単剤群[副次評価項目]安全性、PFS2(無作為化から後続全身療法後の病勢進行、2番目の後続全身療法の開始、あるいは死亡までの期間:今回の発表)、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・ニボ+イピ群(202例)または化学療法群(101例)に無作為に割り付けられた303例のうち、ニボ+イピ群171例、化学療法群84例がMSI-H/dMMRと確認された。・追跡期間中央値31.5ヵ月(SD 6.1~48.4)時点のPFS中央値は、ニボ+イピ群が未到達(95%信頼区間[CI]:38.4~未到達)、化学療法群が5.9ヵ月(95%CI:4.4~7.8)、ハザード比(HR)は0.21(97.91%CI:0.13~0.35、p<0.0001)で、ニボ+イピ群が有意に延長した。設定されたすべてのサブグループでも同様の結果だった。・ニボ+イピ群20例(12%)、化学療法群57例(68%)が後続全身療法に移行した。化学療法群は56例(67%)が免疫療法を受け、うち39例(46%)は試験中にニボ+イピにクロスオーバーし、17例(20%)は試験外の免疫療法を受けた。・後続全身療法を含めたPFS2中央値はニボ+イピ群で未到達、化学療法群で29.9ヵ月、HRは0.27(95%CI:0.17~0.44)とクロスオーバー後もニボ+イピ群が優位であり、1次治療でニボ+イピを実施する有用性が示された。1年PFS2率はニボ+イピ群89%、化学療法群65%、2年PFS2率はニボ+イピ群83%、化学療法群52%だった。・Grade3/4の治療関連有害事象はニボ+イピ群で46例(23%)、化学療法群で42例(48%)発生し、ニボ+イピ群で2例の治療関連死亡があったが、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 Lenz氏は「化学療法と比較した1次治療のニボ+イピの臨床的利点は、その後の治療後も維持され、新たな安全性の懸念は確認されなかった。これらの結果により、MSI-H/dMMR大腸がん患者に対する1次治療としてニボ+イピがさらに支持される」とした。ニボ+イピ群とニボ単剤群との比較データは今後発表される。

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2型糖尿病患者は疾患知識が不十分

 2型糖尿病患者の疾患に関する知識は十分とは言えず、患者教育に改善の余地があるとする研究結果が報告された。コインブラ大学(ポルトガル)のPedro L. Ferreira氏らが、同国の外来2型糖尿病患者を対象に行った調査から明らかになったもので、詳細は「Frontiers in Public Health」に3月8日掲載された。質問項目の中では、ケトアシドーシスの兆候に関する理解が最も不足していたという。 糖尿病の合併症抑止には患者の自己管理が重要であり、自己管理のためには疾患や治療法に関する正しい知識が必要とされる。知識の不足や誤解は適切な糖尿病治療の障壁となり、合併症リスクの増大につながる可能性がある。これを背景にFerreira氏らは、合併症抑止に必要とされる疾患情報の認知や理解レベルの実態を把握するため、患者対象の横断的研究を行った。 対象は、ポルトガル国内の医療機関5施設の外来に通院している2型糖尿病患者のうち、18歳以上で診断後1年以上経過しており、過去3カ月以内の受診記録のある患者とした。認知機能低下や精神疾患を併発している患者を除外し、解析対象は1,200人となった。主な特徴は、平均年齢65.6±11.4歳(範囲24~94歳)、女性50.1%、BMI29.5±5.1、罹病期間10.7±9.2年、HbA1c7.2±1.3%、インスリン療法患者39.9%、合併症有病率39.4%。 調査には、米ミシガン大学で開発された糖尿病知識テスト(Diabetes Knowledge Test;DKT)のポルトガル語版を用いた。DKTは2部構成で、前半は全ての糖尿病患者に対する14項目の質問、後半はインスリン療法を行っている患者に対する9項目の質問から成る。全体的な正答率は、インスリン療法を行っていない患者は51.8%、インスリン療法中の患者は58.7%で、後者が有意に高かった(P<0.05)。 正答率が15%に満たない質問項目が三つあり、そのうちの一つはケトアシドーシスの兆候に関するもので、正答率はわずか4.4%(震え、発汗、嘔吐、低血糖の四者択一で嘔吐を選択した割合)だった。 低血糖時に摂取しても役立たない食品の正答率は11.9%(飴、オレンジジュース、ダイエット飲料、スキムミルクの四者択一でダイエット飲料を選択した割合)だった。この質問では全体の56.9%がスキムミルクと誤答していたが、その割合は、インスリン療法を行っていない患者では53.1%であるのに対して、インスリン療法患者では62.6%であり、低血糖リスクがより高いことの多い後者の群の方がむしろ高値だった(P<0.001)。 摂取量をあまり気にしなくてよい食品の正答率は13.3%(甘くない食品、糖尿病食、「砂糖不使用」と表示されている食品、1食分20kcal未満の食品の四者択一で、1食分20kcal未満の食品を選択した割合)。この質問に関しては、インスリン療法中の患者の正答率が有意に高かった(10.8対17.1%、P<0.01)。 著者らは、「われわれの研究結果は、2型糖尿病の予後改善のために、患者の疾患知識を向上させる必要があることを示している。より的を絞り込んだ教育介入が有用ではないか」と述べている。

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人間の精巣からマイクロプラスチックを検出

 マイクロプラスチックが男性に特殊な危険をもたらす可能性を示唆する新たな知見が、米ニューメキシコ大学薬学部指導教授のMatthew Campen氏らの研究によって得られた。この研究では、人間の精巣の中には動物の精巣や人間の胎盤と比べて3倍ものマイクロプラスチックが存在していることが示された。この研究の詳細は、「Toxicological Sciences」5月15日号に掲載された。 Campen氏はCNNの取材に対して、「これは警戒すべき状況であり、注意深く見ていく必要がある」と語り、「われわれの体内にどれほど多くのプラスチックが存在しているのかが分かりつつあるところだ。この問題について重点的に研究して、マイクロプラスチックが不妊や精巣がん、その他のがんの発生に何らかの影響を与えているのかどうかを確認する必要がある」と語っている。 マイクロプラスチックの体内での動態に関するエビデンスはすでに蓄積が進んでいる。例えば、体内に取り込まれたマイクロプラスチックが主要な臓器の細胞や組織に侵入して細胞プロセスを阻害する可能性のあることや、マイクロプラスチックにビスフェノール類、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)、重金属などの内分泌かく乱化学物質が吸着する可能性のあることが、エビデンスとして示されている。 米国内分泌学会によれば、内分泌かく乱化学物質は、性器の奇形や生殖異常、女性の不妊や男性の精子数の減少を引き起こす可能性がある。特に男性の精子数に関しては、米国を含む世界の国々で過去50年間に50%以上減少したことが報告されている。 今回の研究でCampen氏らは、47匹の犬と、死亡時の年齢が16歳から88歳だった男性23人の精巣サンプルを用いて、12種類のマイクロプラスチックの量を調べて比較した。その結果、全てのサンプルからマイクロプラスチックが検出され、人間でのその濃度は犬の約3倍であることが明らかになった(犬:平均122.63μg/g、人間:328.44μg/g)。Campen氏は、犬は床に落ちたものを食べることを指摘した上で、「この結果から、われわれが自分たちの体の中に何を取り込んでいるのかが良く分かる」と話している。 また、研究グループは今回の研究で、男性が高齢になるほどより多くのマイクロプラスチックが見つかると予測していたが、実際にはそうではないことも示された。Campen氏は、「男性の生殖のピークである20歳から45歳までの間はマイクロプラスチック濃度が高く、55歳を過ぎると濃度は低下し始めるようだ。このことは、人体がこれらのマイクロプラスチックを除去できることを示唆している」と述べている。ただ、この結果のポジティブとはいえない側面として、若い人の精巣はエネルギー必要量が多いため、「精巣に、より多くのマイクロプラスチックが引き込まれる可能性がある」とCampen氏は付け加えている。 Campen氏らはさらに、今回の研究で確認された精巣組織中のマイクロプラスチック濃度を、同氏らの先行研究で確認された、62人の人間の胎盤中のマイクロプラスチック濃度と比較した。この研究では、調べた全ての胎盤サンプルから組織1g当たり6.5~790μg(平均126.8μg/g)のマイクロプラスチックが検出されていた。その結果、「精巣中のマイクロプラスチック濃度は胎盤で確認された濃度の3倍であった」とCampen氏はいう。ただし、同氏は「胎盤の寿命は約8カ月程度であることを考慮する必要がある」と付け加えている。 これらの結果を踏まえてCampen氏は、「われわれがさらされているプラスチックの数は、10~15年ごとに倍増しているのが現状だ。15年後に2倍、30年後に4倍の量にさらされたとき、何が起こるのだろうか。それが、今すぐに対策が必要な理由だ」と話し、警鐘を鳴らしている。

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禁煙のためのアプローチ法を伝授(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者医師今、禁煙のほうはいかがですか?(Ask:尋ねる)まだ、始められていません…。(申し訳なさそうな顔)なるほど。食事や運動にも気を付けておられますし、あと禁煙が達成できたら最高ですね!(Advice:忠告)患者 そうなんですが、なかなか…。医師 本当のところはどうですか? 次回の受診日までに、画 いわみせいじタバコをやめる気持ちはどのくらいありますか?(Assess:つもりを評価)患者 そうですね、…半々ですかね。医師 それはよかったです。ニコチンパッチや飲み薬など禁煙補助薬もありますし、禁煙成功に向けてお手伝いしますよ!(Assist:手伝う)患者 ありがとうございます。医師 それでは次回、禁煙の開始日を決めましょう。それまでに、心の準備をお願いできますか?(Arrange:取り決める)患者 はい。わかりました。(うれしそうな顔)ポイント5Aアプローチは、た行(尋ねる、忠告、つもりを評価、手伝う、取り決める)で覚えておくと便利ですよ。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)表.一般的な禁煙の5Aアプローチ5A内容Ask(た:尋ねる)あらゆる機会に患者の喫煙状況を尋ねるAdvice(ち:忠告)すべての喫煙者に禁煙するよう忠告するAssess(つ:つもりを評価)禁煙するつもりがあるかを確かめる(意思の確認)Assist(て:手伝う)禁煙するのを手伝うArrange(と:取り決める)禁煙外来への相談日や禁煙開始日を取り決める参考:川根博司, 工藤翔二, ほか編. 南江堂. 禁煙指導の実際. 呼吸器疾患 最新の治療 2007-2009. 2007:464-466.Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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6月5日 ロコモ予防の日【今日は何の日?】

【6月5日 ロコモ予防の日】〔由来〕「ロ(6)コ(5)モ」と「ろ(6)うご(5)」(老後)と読む語呂合わせから、ロコモティブ・シンドロームの認知度を高め、その予防に関する正しい理解を広めることを目的に「ロコモティブ・シンドローム予防推進委員会」が制定。関連コンテンツ“ロコトレ”とは?【患者説明用スライド】7つの“ロコモチェック”【患者説明用スライド】ロコモティブ・シンドローム【診療よろず相談TV】20代より身長4cm以上低下、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会終末期の運動機能の低下は死亡と関連するか/BMJ

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歯の外傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第15回

今回は歯の外傷の対処法についてです。「内科医が歯を診るの?」と思われるかもしれませんが、施設でも救急外来でも転倒して歯がぐらついている、歯が抜けてしまった、という症例はたまに経験します。しかし、医師が歯について勉強することは、恐らく学生以降あまりありません。かくいう私も、外傷で搬送されてきた前歯が抜けかけている患者さんを歯科にコンサルトする際に、「右の上の前歯がぐらぐらしていて…」という専門用語の出てこない説明しかできませんでした。医師であればやはり専門用語をある程度理解し、緊急性がどの程度あるかを判断してコンサルトする必要があると実感しました。とはいえ、歯科領域は医師が学ぶ機会は乏しいので、今回は主に歯についての基本的な知識と、プライマリケア医が困る機会が多いであろう歯肉からの出血に対する簡易な対処法を示します。なお、今回の用語と治療は日本外傷歯科学会のガイドラインに沿って行います1)。<症例>78歳、男性施設入所中、転倒し、顔面を打撲した。本人はけろっとしているが口腔内から出血しており往診依頼。歯は入れ歯などではなく、全部自分のものである。歯の名称頭部は大丈夫と判断したという前提で口腔内を診察していきます。まず、歯の名称からおさらいしましょう。図1 歯の名称画像を拡大する必ずしも覚える必要はありませんので、診察する際にインターネットなどで調べてください。この患者さんは上の右の前歯とその横の歯の歯肉から出血がありました。これは「上顎右側中切歯と側切歯」に該当します。歯の解剖私は広島大学卒業で、学生時代に細胞の絵を描いて説明する授業がありました。卒業生はわかると思いますが、絵心のない人は非常に苦労します。重要なのは絵の上手さではありませんでしたが、歯の絵を描いた際に、歯も複雑なのだなと思った記憶があります。さて下記がその歯の解剖です。図2 歯の解剖画像を拡大する「破折」と「露髄」歯が欠損したときの重要なワードは破折と露髄です。「歯が折れたときの正式名称は?」と聞かれて答えられる医師はあまり多くはないかもしれませんが、歯が割れたり、折れたりすることを破折と表現します。この患者を診察すると、上顎右側中切歯が欠損していましたので、「上顎右側中切歯の破折」と表現します。では露髄とは何でしょうか。これは歯髄という神経が破折によって見えることです。歯が欠損した場合、この歯髄が見えるかどうかが非常に重要になります。というのも、この部位は感染に弱く、可能な限り早くセメントなどで保護する必要があるからです。よって、露髄の情報も加えて「上顎右側中切歯の露髄を伴う破折」となります。歯が抜ける?ぐらぐらする?この患者さんの上顎右側側切歯はぐらぐらして少し飛び出していまました。ではこれはどのような表現でしょうか? 図3を参照してください。図3 歯の脱臼画像を拡大する歯を打撲したことを「振とう」、ぐらぐらしていることを「亜脱臼」、飛び出していることを「挺出性脱臼」、めり込んでいることを「陥入(埋入)」、完全に抜けていることを「完全脱臼」と表現します。本症例では、上顎右側中切歯は振とう、上顎右側側切歯は挺出性脱臼になります。この患者について歯科に電話で相談したところ、そのまま歯科受診となりました。その後、中切歯はセメントで処置を受け、側切歯は抜歯されました。歯肉からの出血次に、歯肉からの出血について紹介します。歯が抜けると出血することが多いです。その際に抗凝固薬を飲んでいるとなかなか止血しないことがあります。基本は圧迫止血になりますが、それでも止血しない場合はボスミンガーゼや局所止血剤を用いて圧迫止血を行います。これでほぼ止まりますが、それでも止まらない場合は縫合が必要になります。自力で縫合できればよいのですが、難しい場合は歯科に相談しましょう。ただ、ボスミンガーゼや局所止血剤を用いても止まらない場合は、高度の凝固異常がある可能性があるため、歯科に相談するとともに血液検査で凝固障害の有無を調べましょう。すでに抜けていた場合歯が完全脱臼してしまっている場合は、歯を生理食塩水か牛乳につけましょう。また、歯が汚れていたとしても磨いたりしてはいけません。歯の周囲には生着するために必要な歯根膜があり、磨くことで歯根膜を障害してしまうからです。水で洗う程度にしてください。以上が歯科に関する基礎知識のおさらいでした。歯はどうしても学ぶ機会が乏しいので、コンサルトするときの参考にしてください。1)日本外傷歯科学会. 歯の外傷治療のガイドライン. 2023.

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第215回 乱立する一般社団法人の美容クリニック、院長の名義貸しも常態化、見て見ぬふりの厚労省も規制にやっと本腰か?

NHKが先頭に立って報道してきた美容医療のトラブル問題こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。最近気になっていることに電動キックボードがあります。東京の中心部の道路では、企業が貸し出すタイプ(シェアリングサービス)や個人所有の電動キックボードが増えており、素足むき出しの若者(とくに女子)などがヘルメットも被らずに疾走しています。学生時代からヘルメットにブーツでオートバイに乗ってきた私(最近では胸部ガードもしています)としては、危なっかしくて見ていられません。2023年7月の法改正では、個人所有、貸し出しにかかわらず、時速20km以下の電動キックボード(特定小型原付)は免許不要で、ヘルメットも努力義務となりました。いわゆる規制緩和ということでしょうが、交差点での直進・左折優先の常識も知らない輩が車道、歩道の区別なく走り回るというのはどうなんでしょう。おそらく、事故が多発して、再び何らかの規制がかかるのではないでしょうか。そもそもあの小さなタイヤ径だと、多少大きな石や障害物、段差にぶつかると簡単に転倒してしまいます。素足だと即、血だらけです。なお、個人的には子供を乗せて猛スピードで走る母親運転の電動ママチャリ(電動アシスト自転車)や、若者がしたり顔で無免許運転するペダル付き原動機付自転車が電動キックボード以上に恐いのですが、それについてはまた日を改めて。さて今回は、NHKが先頭に立って報道している美容医療のトラブル問題について書いてみたいと思います。こちらは公益法人制度改革という規制緩和によって、少々やっかいなことになっているようです。専門の医師などによる検討会を立ち上げ、適切な美容医療のあり方や対策を協議へ5月30日朝、NHKは「美容医療でトラブル増加 厚労省 検討会立ち上げ対策など協議へ」と題するニュースを放送、「脱毛や薄毛治療など自由診療で行われる美容医療をめぐって健康被害などの相談や契約上のトラブルが増加していることを受け、厚生労働省は専門家などによる検討会を立ち上げ、対策などを協議していくことになりました」と報じました。NHKニュースによれば、「保険診療の場合は、地方厚生局や診療報酬の審査支払機関による確認が行われているが、自由診療の場合、第三者が確認する制度がない」とのことです。自由診療であり、保険財政には直接影響が及ばない美容医療は、長年厚労省が放置してきた問題でもあります。NHKの報道が事実ならば、何らかの“規制”や“ガイドライン”導入などが行われるかもしれません。近年開設の多くの美容医療のクリニックが医療法人ではなく一般社団法人実は、NHKのこの報道には前段がありました。前日、5月29日の午後7時のニュースで、「一般社団法人のクリニック 都市部で増 医師『名義貸し』証言も」のニュースを放送、それに続く「クローズアップ現代」でも「追跡“自由診療ビジネス”の闇 相次ぐ美容・健康トラブルの深層」のタイトルで、その実態を詳細に報道しました。「厚労省 検討会立ち上げ」のニュースは、そうした一連の報道の最後に発信されたスクープだったわけです。5月29日のニュースと「クローズアップ現代」を観て驚いたのは、「国民生活センターによると美容医療をめぐるトラブルの相談件数は昨年度が5,833件で、5年前のおよそ2.9倍に増加」したという実態に加え、多くの美容医療のクリニックが医療法人ではなく、一般社団法人で開設されており、理事長は医師以外であるケースが少なくない、という事実です。「クローズアップ現代」では、取材班が東京23区や大阪市内の一般社団法人のクリニックを独自に調査した結果も報道していました。それによれば、「一般社団法人が運営するクリニックは298件、ほとんどがコロナ禍前後に設立され、6割以上が美容医療を行っている」とのことでした。管理者となる医師の「名義貸し」が疑われるケースもさらに、管理者となる医師(いわゆる院長)の「名義貸し」が疑われるケースもあるとのこと。大阪市内の美容クリニックの管理医師となっていた医師の「保健所の職員が来た時に1度だけクリニックに行ったが、それ以降は1度も出勤しておらず、“名義貸し”状態だった。管理医師をやっていたときは給料をもらっていた」というショッキングなコメントを紹介していました。つまり、医師以外、異業種のオーナーが医師にお金を払って院長の名義を貸してもらい、一般社団法人で美容外科のクリニックを開設、実際の美容外科の施術は形成外科が専門でもない医師をアルバイトで雇って対応――、というのが基本的なビジネススキームのようです。院長の名義貸しは、ほかの医療機関の院長や病院の常勤医などではできないため、「医師免許がある大学院生」や「病院の研修医」などを専門業者が仲介して紹介してもらうケースが多い、とのことでした。また、「クローズアップ現代」では、実際に施術を行う医師について、飲食店オーナーが経営するクリニックの元職員の「小児科や放射線科などが専門で美容医療の経験のない30人ほどの医師がアルバイトで集められシフトを回していた。トラブルが起きた際のマニュアルなどは整備されていなかった」という証言も紹介していました。監督官庁がなく野放しの一般社団法人クリニック一般社団法人は2008年の公益法人制度改革にともなって創設された新しい法人類型です。原則、医師が理事長となる医療法人とは違い、管理者となる医師(いわゆる雇われ院長)が用意できれば誰でも経営に参入することができるほか、都道府県の認可も不要で登記のみで設立できます。診療所という業態の開設は管轄する保健所の認可が必要となりますが、保健所の管轄地域にすでに一般社団法人の診療所があれば、ほぼ認可されるようです。つまり、すでに一般社団法人の美容外科が乱立している大都市部ならば、その開設は極めて容易と言えます。医療法人であったり、保険診療を行ったりしているのであれば、そのクリニックは厚生労働省の管轄となります。しかし、一般社団法人は監督官庁がなく、事業の報告義務もありません。文字通り“野放し”なのです。自由診療で行われる“アコギな医療”に鋭いメスを問題は、美容医療だけではありません。「クローズアップ現代」では、一般社団法人の自由診療クリニックが、がん免疫療法や再生医療の世界にも積極的に進出し始めているとも報じていました。法律の力が及ばず監督外、管轄外になることについて、役所は往々にして無関心かつ放置しがちです。臨床効果が確立していないにもかかわらず、自由診療で法外な治療費をふっかけてきた一部のがん免疫療法についても、これまでとくに明確な規制を設けることはしませんでした。今回、厚労省は、美容医療について専門家などによる検討会を立ち上げ、対策などを協議する、とのことです。電動キックボードやペダル付き原動機付自転車などは、被害が交通事故という「目に見えるかたち」で現れるので対策も比較的講じやすいですが、広く自由診療で行われる“アコギな医療”の多くは、根拠となる法律や規制も曖昧なため、実際の被害がなかなか表沙汰になりません。せっかくの機会ですから、そうした“アコギな医療”にもぜひ鋭いメスを入れてほしいですし、さらに言えば、「第184回 線虫がん検査『N-NOSE』、検査精度の疑惑が再燃、日本核医学会の中にあるPET核医学分科会・PETがん検診ワーキンググループが本格調査へ」で書いたような、臨床的な評価が定まっていないにもかかわらず、一般向け検査で荒稼ぎする一部の検査法も、そろそろ“放置”するのはやめていただきたいと思います。

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治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニストの用量別比較

 治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニスト(アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazine)による抗うつ効果増強療法は、これまでのネットワークメタ解析において比較されている。しかし、これら薬剤の用量反応の有効性比較は、十分に行われていなかった。iこころクリニック日本橋の寺尾 樹氏らは、用量反応関係を推定し、各ドパミンパーシャルアゴニストの効果を、用量別に比較した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年4月19日号の報告。 2023年1月1日までに公表された研究を、各種データベース(Cochrane Library、PubMed、CINHAL、ClinicalTrials.gov)より、システマティックにレビューした。対象には、治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineを評価した二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を含めた。変量効果用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・各薬剤の最大有効用量は、アリピプラゾールで5.5mg、ブレクスピプラゾールで1.6mg、cariprazineで1.5mgであった。・3剤すべての用量において、プラセボと比較し、有意に有効であった。・アリピプラゾール5.5〜12.5mgは、ブレクスピプラゾール0.5mgおよびcariprazine 0.5〜1mgよりも有意に有効であった。・アリピプラゾール7.5〜12.5mgは、cariprazineのすべての用量よりも有意に有効であった。・ブレクスピプラゾール1〜3mgは、cariprazine 0.5mgよりも有意に有効であり、ブレクスピプラゾール1.6〜2.5mgは、cariprazine 1mgよりも有意に有効であった。・ブレクスピプラゾールは、アリピプラゾールより優れた用量はなく、cariprazineは、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールよりも優れた用量はなかった。 著者らは「治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニストは、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineの順で有効であり、最大有効用量は、それぞれ5.5mg、1.6mg、1.5mgであった」としている。

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週末の短時間の「寝だめ」、うつ病改善に役立つ可能性

 週末にまとまった睡眠をとる、いわゆる「寝だめ」は疲労回復や心身の健康に役立つのか。賛否が分かれる議論であったが、寝だめがうつ病の改善に一定の効果があるとする研究結果が発表された。中国・中南大学湘雅医院のZhicheng Luo氏らによる本研究はJournal of Affective Disorders誌2024年6月1日号「Research paper」に掲載された。 研究者らは、米国成人における「週末の寝だめ」(Weekend Catch-up Sleep:WCS、週末の睡眠時間から平日の睡眠時間を引いた時間/1日当たり)が米国の成人のうつ症状に与える影響を調査した。2017~20年の国民健康栄養調査(NHANES)から7,719人の参加者を登録した。睡眠時間とうつ症状に関する情報は、自己申告による質問とPHQ-9スコアで評価し、回帰分析を使用してWCSと抑うつ症状の関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・WCSのうつ症状に対するオッズ比は0.746(95%信頼区間[CI]:0.462~1.204、p=0.218)、PHQ-9スコアの変化は-0.429(95%CI:-0.900~0.042、p=0.073)であり、有意な相関性は見出せなかった。・WCSとうつ病の相関は滑らかなL字型を示し、持続時間0~2時間のWCSのみ、うつ症状やPHQ-9スコアと統計的有意に関連していた。・サブグループ分析では、WCSとうつ症状は、男性、65歳未満、および平日の睡眠時間が短い人でマイナスの関連がより強かった(相互作用のp<0.05)。 研究者らは、「本研究は適度なWCSがうつ症状の発生率の低下と関連していることを示唆しているが、この研究は横断的デザインであるため因果関係を確定することはできない。将来的には縦断的研究を通じて、より詳細な因果関係を解明する必要がある」としている。

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症例発見法によるCOPD・喘息の早期診断、医療利用の低減に/NEJM

 未診断の慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の成人を特定するための症例発見法(case-finding method)によって呼吸器専門医の指示による治療を受けた患者は、通常治療の患者と比較して、その後の呼吸器疾患による医療利用が少なくなることが、カナダ・オタワ大学のShawn D. Aaron氏らUCAP Investigatorsが実施した「UCAP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月19日号に掲載された。カナダ17施設の無作為化対照比較試験 研究グループは、未診断のCOPDまたは喘息を有する患者では、症例発見法を用いた早期の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療利用が低減し、健康アウトカムが改善するかを検証する目的で無作為化対照比較試験を実施し、2017年6月~2023年1月にカナダの17施設で参加者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 症例発見法により、肺疾患の診断を受けていないが呼吸器症状を呈する成人を特定した。被験者を、ガイドラインに基づく治療を開始するよう指示された呼吸器専門医と喘息/COPD指導員による評価を受ける群(介入群)、またはプライマリケア医による通常治療を受ける群(通常治療群)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、呼吸器疾患に対する参加者の自主的な医療利用の年間発生率とした。SGRQ、CAT、FEV1も良好 受診した3万8,353例中595例で未診断のCOPDまたは喘息を発見し、このうち508例を無作為化の対象とした。253例が介入群(平均年齢63.4[SD 13.4]歳、男性64%)、255例が通常治療群(62.8[13.6]歳、58%)に割り付けられた。 主要アウトカムのイベントの年間発生率は、通常治療群に比べ介入群で有意に低かった(0.53件vs.1.12件/人年、発生率比:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.63、p<0.001)。 St. George Respiratory Questionnaire(SGRQ、0~100点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した疾患特異的QOLは、通常治療群ではベースラインから6.8点低下したのに対し、介入群では10.2点の低下と良好であった(群間差:-3.5点、95%CI:-6.0~-0.9)。 COPD評価テスト(CAT、0~40点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した症状負担は、通常治療群ではベースラインから2.6点低下したのに比べ、介入群では3.8点低下し良好であった(群間差:-1.3点、95%CI:-2.4~-0.1)。 また、1秒量(FEV1)は、通常治療群ではベースラインから22mL増加したのに対し、介入群では119mLの増加であった(群間差:94mL、95%CI:50~138)。有害事象は両群で同程度 有害事象の発生は両群で同程度であり、介入群では21例に24件、通常治療群では14例に16件発生した。めまいや失神(スパイロメトリー検査による)、筋肉のけいれん(処方された呼吸器疾患治療薬による可能性がある)に関連するものが多かった。入院に至る重篤な有害事象は、介入群で5件、通常治療群で7件報告された。12ヵ月の追跡期間中に、介入群で2例(心停止、肺がん)、通常治療群で2例(心停止、肝不全)の死亡が発生した。 著者は、「この症例発見法は、多くの医療システムに導入可能であり、未診断のCOPDまたは喘息患者における診断と治療の改善に寄与する可能性がある」としている。

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CDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行したHR+/HER2-乳がん、アベマシクリブ併用でPFS改善(postMONARCH)/ASCO2024

 HR+/HER2-進行乳がんの標準的な1次治療であるCDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行した患者を対象に、アベマシクリブ+フルベストラントをフルベストラント単独と比較した第III相postMONARCH試験で、アベマシクリブ併用による無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示された。米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのKevin Kalinsky氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 CDK4/6阻害薬+内分泌療法で病勢進行したHR+/HER2-進行乳がんに対する最適な治療法はまだ不明である。本試験は、CDK4/6阻害薬を含む治療で病勢進行した後、CDK4/6阻害薬継続の有用性を示した初の第III相無作為化プラセボ対照試験である。・対象:HR+/HER2-進行乳がんの男性もしくは閉経前/後の女性で、進行乳がんの1次治療としてCDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬で病勢進行した患者、または早期乳がんの術後補助療法としてCDK4/6阻害薬+内分泌療法で再発した患者 368例・試験群: アベマシクリブ+フルベストラント(アベマシクリブ群)・対照群: プラセボ+フルベストラント(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、奏効率(ORR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・368例をアベマシクリブ群に182例、プラセボ群に186例、無作為に割り付けた。・前治療でのCDK4/6阻害薬は、パルボシクリブが両群とも59%、ribociclibがアベマシクリブ群34%/プラセボ群33%、アベマシクリブが両群とも8%であった。・主要評価項目の治験責任医師評価によるPFSは、プラセボ群に対しアベマシクリブ群で有意な改善が認められ、PFSイベント発生リスクが27%低下した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.95、名目上のp=0.02)。事前に規定された臨床的に関連する複数のサブグループでも効果は一貫していた。・BICRによるPFSもアベマシクリブ群で有意な改善が認められ、PFSイベント発生リスクが45%低下した(HR:0.55、95%CI :0.39〜0.77、名目上のp=0.0004)。・治験責任医師評価によるORR、BICRによるORRとも、アベマシクリブ併用で改善した。・治験責任医師評価によるPFSにおいて、前治療のCDK4/6阻害薬投与期間別にみたHRは、12ヵ月未満で0.80(95%CI:0.50~1.29)、12ヵ月以上で0.70(同:0.52~0.94)だった。また、内臓転移の有無別にみたHRは、転移なしで0.53(同:0.34~0.83)、転移ありで0.87(同:0.64~1.17)だった。・バイオマーカーによる探索的解析において、ベースラインのESR1変異またはPIK3CA / AKT1 / PTEN変異の有無にかかわらず、一貫した効果が認められた。・安全性はアベマシクリブの既知のプロファイルと一致した。アベマシクリブ群において、Grade3以上の下痢は4%、好中球減少症は25%に認められた。なお、有害事象による投与中止例はアベマシクリブ群で6%、プラセボ群ではいなかった。 Kalinsky氏は、「HR+/HER2-進行乳がんでCDK4/6阻害薬で進行した患者において、バイオマーカーでは選択されない患者に、アベマシクリブ+フルベストラントは標的治療の選択肢となる」と結論した。

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ドセタキセル後のアビラテロン+カバジタキセル、転移を有する去勢抵抗性前立腺がんでPFS改善(CHAARTED2)/ASCO2024

 ドセタキセル治療歴のある、転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、アビラテロンとカバジタキセルの併用療法が無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。米国・ウィスコンシン大学カーボンがんセンターのChristos Kyriakopoulos氏が、第II相無作為化非盲検EA8153(CHAARTED2)試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で報告した。・対象:去勢感受性前立腺がん(CSPC)に対する3サイクル以上のドセタキセル治療歴のあるmCRPC患者(ECOG PS>2、CRPCに対する治療歴、Grade≧2の末梢性ニューロパチーを有する患者は除外)・試験群(カバジタキセル併用群):カバジタキセル(25mg/m2を3週ごとに最大6サイクルまで静脈内投与)+アビラテロン(1,000mgを1日1回)+prednisone(5mgを1日2回) 111例・対照群(アビラテロン単独群):アビラテロン+prednisone 112例・評価項目:[主要評価項目]PFS[主要な副次評価項目]PSA反応、PSA増悪までの時間(TTPP)、全生存期間(OS)、安全性と忍容性 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値は64(41~80)歳、PS 0が58.3%、Gleasonスコア8~10が83.1%、アンドロゲン除去療法(ADT)開始からCRPCへの進行までの期間≦12ヵ月が50.9%、high-volume diseaseが76.0%、診断時に内臓転移ありが24.2%であった。・追跡期間中央値47.3ヵ月において、PFS中央値はカバジタキセル併用群14.9ヵ月vs.アビラテロン単独群9.9ヵ月となり、カバジタキセル併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.73[80%信頼区間[CI]:0.59~0.90]、p=0.049)。・PFSのサブグループ解析の結果、65歳未満(15.6ヵ月vs.9.8ヵ月、HR:0.65)、PS 0(20.9ヵ月vs.10.1ヵ月、HR:0.56)、CRPCへの進行までの期間≦12ヵ月の患者(12.9ヵ月vs.5.1ヵ月、HR:0.56)、および内臓転移のない患者(18.1ヵ月vs.10.1ヵ月、HR:0.62)でより顕著なベネフィットがみられた。・ベースラインから12週のPSAの変動について、カバジタキセル併用群の89%、アビラテロン単独群の77%で減少がみられた(p=0.03)。治療中のPSA nadir中央値はカバジタキセル併用群1.0ng/mL vs.アビラテロン単独群3.7ng/mLであった(p=0.002)。・TTPP中央値は、カバジタキセル併用群10.0ヵ月vs.アビラテロン単独群6.1ヵ月となり、カバジタキセル併用群で良好であった(HR:0.60[95%CI:0.44~0.83]、p=0.002)。・OS中央値は、カバジタキセル併用群25.0ヵ月vs.アビラテロン単独群26.9ヵ月となり、両群で差はみられなかった(HR:0.93[95%CI:0.68~1.29]、p=0.67)。ただし、本研究はOSに対する検出力が不足していた。・カバジタキセル併用群で多くみられたGrade3以上の治療関連毒性は、好中球数減少(10.1% vs.0%)、白血球数減少(8.3% vs.0%)、貧血(6.4% vs.0.9%)、疲労(5.5% vs.1.9%)であった。 Kyriakopoulos氏は、アビラテロンおよびプレドニゾンにカバジタキセルを追加することでPFSを有意に改善し、併用による安全性上の新たな懸念は確認されなかったが、mCSPCに対する2剤および3剤併用療法の導入による治療環境の変化で、今回の結果の適用は限定的な可能性があるとまとめている。

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食道腺がん、周術期化学療法が術前化学放射線療法を上回る(ESOPEC)/ASCO2024

 切除可能な局所進行食道腺がんに対する世界的な標準治療は、術前化学放射線療法(CROSS療法)+手術とされてきた。一方、切除可能な胃がんに対しては、周術期化学療法(FLOT療法)+手術といった新たな治療戦略の開発が進められている。これらの両治療戦略を直接比較した第III相ESOPEC試験の結果、FLOT療法がより優れた治療成績を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)のPlenary Sessionにおいて、ドイツ・ビーレフェルト大学のJens Hoeppner氏が本試験の詳細を報告した。・試験デザイン:多施設共同前向きランダム化比較試験・対象:cT1N+またはcT2-4a、cN0/+、cM0の切除可能食道線がん患者・試験群(FLOT群):術前化学療法(5-FU/ロイコボリン/オキサリプラチン/ドセタキセル、8週ごと4サイクル)+手術+術後化学療法 221例・対照群(CROSS群):術前化学放射線療法(41.4Gy、カルボプラチン/パクリタキセル、5週ごと5サイクル)+手術 217例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、術後病理学的病期、術後合併症など 主な結果は以下のとおり。・2016年2月~2020年4月、ドイツの25施設から438例が2群にランダムに割り当てられた(FLOT群221例、CROSS群217例)。ベースライン時の特性は男性89.3%、年齢中央値63歳(SD 30~86)、cT3/4 80.5%、cN+79.7%だった。・術前補助療法は403例(FLOT群207例、CROSS群196例)、手術は371例(FLOT群191例、CROSS群180例)で行われた。うち351例(FLOT群180例、CROSS群171例)でR0切除が達成された。・術後90日死亡率は4.3%(FLOT群3.2%、CROSS群5.6%)であった。追跡期間中央値55ヵ月時点で218例が死亡した(FLOT群97例、CROSS群121例)。・OS中央値は、FLOT群66ヵ月(95%信頼区間[CI]:36~推定不能)、CROSS群37ヵ月(95%CI:28~43)であった。・3年OS率は、FLOT群57.4%(95%CI:50.1~64.0)、CROSS群50.7%(95%CI:43.5~57.5)であった(HR:0.70、95%CI:0.53~0.92、p=0.012)。・腫瘍縮小グレードが判明している359例のうち、FLOT群35例(18.3%)、CROSS群24例(13.3%)で病理学的完全奏効(pCR)が達成された。 Hoeppner氏は「FLOT療法+手術はCROSS療法+手術と比較して、OSを改善した。今後はFLOT療法を優先して選択すべきだろう」とした。日本では現在の標準治療が欧米とは異なるため、即時の治療戦略変更につながることはなさそうだが、食道がんにおいて術前化学療法の有用性が検証されたことは、今後の上部消化管腫瘍領域における治療戦略の検討に影響を与えそうだ。

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致死率がより高いエムポックスウイルスの感染がコンゴで拡大

 コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)は、エムポックス(サル痘)ウイルス(MPXV)の感染者数の記録的な増加に直面している。その背景にあるのは、2022年に欧米で感染が拡大した型のMPXVよりも致死率が高いクレード(系統群)のウイルスである「クレードI」の発生だ。米疾病対策センター(CDC)のChristina Hutson氏らは、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」5月16日号に掲載された報告書で、「クレードIのコンゴでの感染拡大は、このウイルスが国外にも拡大する可能性を懸念させるものであり、ウイルスを封じ込めるためのコンゴの取り組みを全世界で協調的かつ緊急に支援することの重要性を示している」と主張している。 2年前にアフリカから欧州や北米へと広がったMPXVは、クレードIIと呼ばれるものであった。エムポックスは痛みを伴い、重症化することもあるが、死亡率は0.1~3.6%程度であることがさまざまな研究で示されている。しかし、Hutson氏らによると、クレードIのMPXVは致死率がより高く、その死亡率は1.4~10%に上るという。 コンゴで流行中のクレードIのMPXVは、すでに多くの犠牲者を出している。同国の報告によると、2023年初頭から2024年4月14日までに「複数の地方でアウトブレイクが発生」し、推定患者数は1万9,919人、死亡者数は975人に上り、患者20人当たり1人程度が死亡したと推定されている。 今回のアウトブレイクはおそらく最も広範囲に及んでおり、「2023年から2024年にかけて、26州中25州から、そして初めて首都キンシャサからもクレードIのMPXVの症例が報告された」とHutson氏らは指摘している。特に、小児はエムポックスに対して脆弱で、報告書によると「MPXVの感染が疑われる症例の3分の2(67%)と、MPXVによる死亡が疑われる症例の4分の3以上(78%)を15歳以下の小児が占めている」という。 MPXVは密接な接触を介して感染する。通常、感染には皮膚と皮膚の接触が伴うため、性行為が感染経路となることが多い。初期症状は発熱、悪寒、疲労感、頭痛、筋力低下などで、多くの場合、こうした症状の発現後に病変を伴う発疹ができ、かさぶたになって数週間のうちに徐々に治癒する。感染する可能性は誰にでもあるが、特に男性と性行為をする男性はリスクが高く、またHIV感染者は重症化しやすい。 MPXVはサルなどの動物との接触を介してヒトに感染する可能性があり、長い間アフリカの風土病であった。最近コンゴで発生したアウトブレイクに関しては、「動物宿主からの複数回にわたるウイルスの伝播がアウトブレイクに関与していることがデータから示唆された」とHutson氏らは説明している。ただ、幸いなことに、Jynneosという商品名で製造されているMPXVのワクチンがある。同ワクチンは約1カ月の間隔を空けて2回接種する。 Hutson氏らによると、CDCは長年にわたってコンゴのMPXVのアウトブレイクとの闘いを支援する取り組みを続けてきた。今回のアウトブレイクに関しては、コンゴおよびその周辺国におけるMPXVの封じ込めとともに、米国人の間にクレードIのMPXVの感染者が発生した場合の備えを強化するための取り組みも行っているという。 Hutson氏らは、「米国や、MPXVの流行が発生していない他の国では、クレードIのMPXVの症例は報告されていない」と述べている。また、米国では動物がMPXVを保有していないこと、米国の一般的な家庭ではコンゴの家庭よりも衛生状態が良好であることなどから、米国の小児がクレードIのMPXVに感染するリスクは低いと強調している。ただし、「ゲイやバイセクシュアルの男性などのハイリスク集団では、米国においてもクレードIのMPXV感染者が発生するリスクはある」と同氏らは指摘している。

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女性は日常的な飲酒でHDLコレステロールが低下?

 大規模な保健医療データを用いて、40~64歳の日本人女性の習慣的な飲酒とHDLコレステロール(HDL-C)の関連を検討する研究が行われた。その結果、飲酒量が中等量以上の女性では、HDL-C値が10年間で有意に低下していることが明らかとなった。日本女子大学家政学部食物学科 臨床医学・代謝内科学研究室の関根愛莉氏らによる研究結果であり、「Cureus」に3月4日掲載された。 HDL-Cは善玉コレステロールと呼ばれ、HDL-Cが低いことはメタボリックシンドロームの診断基準の1つである。一方で、HDL-Cが極端に高いことは、心血管疾患による死亡に関連することも報告されている。適度な飲酒を行うことでHDL-Cが上昇することを示す研究もあるが、飲酒の影響は、性別や年齢、飲酒期間などにより異なる可能性がある。国内外の研究では、男性のみ、あるいは両性を合わせた研究がほとんどであり、女性の習慣的な飲酒とHDL-Cとの長期的な関連については不明な点が多い。 そこで著者らは、厚生労働省の「レセプト情報・特定健診等情報データベース」のうち、関東1都6県で特定健診を受けた40~64歳の女性のデータを用いて後方視的コホート研究を行い、ベースライン(2008年度)から10年後(2018年度)の血清HDL-C値の変化と、飲酒量や飲酒頻度などとの関連を評価した。1回あたりの飲酒量(エタノール量換算)で、少量(23g/日未満)、中等量(23~45g/日)、多量(46g/日以上)に分類した。なお、エタノール量23gは、ビールの中瓶1本(500mL)やワインのグラス2杯(240mL)に相当する。 対象期間中に飲酒量・飲酒頻度が大きく変化した人や、ベースラインのHDL-Cが基準値(50~90mg/dL)から外れていた人、最初の2年間または最後の2年間にHDL-Cが10%以上変化した人などを除く、9万53人を解析対象とした。 ベースラインの飲酒量は、少量の人の割合が74.2%、中等量が21.5%、多量が4.3%だった。10年後のHDL-C値について、10mg/dL以上低下した人の割合は11.3%、10%以上の低下は17.9%であり、10mg/dL以上の上昇は17.3%、10%以上の上昇は25.6%だった。 次に、影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、BMI、生活・運動習慣、脂質異常症に対する薬物療法、脂質・糖代謝などの血液検査値)やベースラインのHDL-Cを統計的に調整して、HDL-C低下と飲酒量の関連を解析した。その結果、中等量以上の飲酒は10年後のHDL-C低下と有意に関連することが明らかとなり、10mg/dL以上の低下に対するオッズ比(少量の飲酒と比較)は、中等量が1.15(95%信頼区間1.08~1.22)、多量が1.23(同1.10~1.39)で、10%以上の低下では同順に1.09(同1.04~1.15)、1.23(同1.11~1.36)だった。今回の検討では、飲酒頻度については、HDL-C低下との関連は認められなかった。 さらに、人工知能(AI)を用いて、HDL-C低下(10mg/dL以上)に対する正の寄与因子を検討した。その結果、影響の大きい順に、ベースラインのHDL-C高値(77mg/dL以上)、LDL-C高値(133mg/dL以上)、BMI高値(23.1kg/m2以上)、脂質異常症に対する薬物療法、トリグリセライド高値(70mg/dL以上)、年齢44~64歳、喫煙と続き、飲酒量はその次の8番目の因子であることが判明した。 以上の結果から著者らは、「日本人の中高年女性における中等量以上の習慣的な飲酒は、10年後のHDL-Cを有意に低下させる可能性が示されたが、HDL-Cの有意な上昇は引き起こさなかった」と結論。一方、日本人の中高年男性を対象とした結果では、中等量以上の飲酒はHDL-Cの低下と同時にHDL-Cの上昇とも関連していたことから、飲酒量とHDL-C低下に関連するメカニズムやその性差については、さらなる研究が必要だとしている。

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INSPIRE Pneumonia Trial:肺炎に対する抗菌薬選択改善を促すオーダーエントリーシステム(解説:小金丸博氏)

 肺炎は入院を要する最も一般的な感染症であり、米国では毎年150万人以上の成人が肺炎で入院している。肺炎で入院した患者の約半数で不必要に広域なスペクトラムの抗菌薬を投与されていると推定されており、広域抗菌薬の過剰使用を抑制するための効果的な戦略を特定することが求められている。 今回、患者ごとの多剤耐性菌感染リスク推定値を提供するコンピュータ化されたプロバイダーオーダーエントリー(CPOE)システムが、非重症肺炎で入院した患者における経験的広域抗菌薬の使用を減らすことができるかを検討したランダム化比較試験の結果がJAMA誌オンライン版2024年4月19日号に報告された。CPOE介入群では通常の抗菌薬適正使用支援に加えて、多剤耐性菌による肺炎のリスクが10%未満と推定された症例に対して標準的なスペクトラムの抗菌薬を推奨した。また臨床医に対して教育とフィードバックも同時に行った(有効と考えられる複数の方法を組み合わせて行うバンドルといわれる戦略を採用)。その結果、入院最初の3日間の広域抗菌薬の投与日数は通常介入群と比較して28.4%減少した(リスク比:0.72、95%信頼区間:0.66~0.78)。両群においてICU転室までの日数や入院期間に関して差を認めず、安全に広域抗菌薬の使用を抑制できることが示された。 これまで肺炎に対する抗菌薬処方を改善する戦略は、微生物検査の結果が得られて患者の状態が安定した後に、抗菌薬の投与期間を短縮するか、または広域抗菌薬を狭域抗菌薬に変更することに焦点が当てられてきた。しかし、そのような戦略では微生物検査の結果が得られる前に使用された不必要な広域抗菌薬には対処できていなかった。広域抗菌薬に短期間曝露しただけでも、多剤耐性菌感染症、クロストリディオイデス・ディフィシル感染症、その他の抗菌薬に関連した副作用のリスクが高まる可能性がある。本試験は、微生物検査の結果が得られる前に広域抗菌薬の使用を減らすことに焦点を当てているのが新しい視点である。 肺炎で入院する患者のほとんどは、緑膿菌や多剤耐性菌をカバーしない標準的なスペクトラムの抗菌薬で安全に治療できると考えられるが、耐性菌に感染している可能性があるという懸念から広域抗菌薬を選択してしまう臨床医も多く存在する。CPOEシステムを導入することによって、おそらく臨床医が人口全体における薬剤耐性菌の感染リスクが比較的低いことをより明確に認識できるようになり、最初の抗菌薬の選択が広域から標準スペクトラムの抗菌薬へ変更された。本試験では、多剤耐性菌感染症の「低リスク」に分類するための閾値が10%未満に設定されたが、適切な閾値ははっきりしていないと思われる。耐性菌による肺炎のリスクが低い患者をリアルタイムで特定することによって広域抗菌薬の投与が減少する可能性があり、本試験で有効性が示されたCPOEシステムによる介入の効果を本邦でも評価されることを期待したい。

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臨床留学通信、ニューヨーク最終章【臨床留学通信 from NY】第61回

第61回:臨床留学通信、ニューヨーク最終章ニューヨークからボストンのハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院(MGH)に移るに当たって、書類処理に追われています。まず、アメリカの病院で働く際には、健康診断がかなりきっちりしています。過去のワクチンの証明書やMMRなどの抗体価、日本人だとツベルクリン反応が陽性になってしまうので、クォンティフェロンの採血結果(3ヵ月以内)の提出などです。日本で働いてると、友達に採血オーダーしてもらってちょっとした合間に採血して、ということは簡単ですが、こちらだとそうはいきません。自身のプライマリケアにMyChartと呼ばれるウェブサイトから、その都度ラインのように担当医に連絡してオーダーしてもらい、通ってるプライマリケアまで行って採血をする形で、結構不便です。多くの場合、かかりつけの病院と自身の勤務先の病院は離れているため、勤務先の病院で採血、というわけにはいかないのです。今回、ニューヨーク州からマサチューセッツ州へ州が変わることもあり、州用のライセンス取得のために申請が必要で、過去のUSMLEの合格証明を、発行機関にお金を払って送ってもらったりします。新しい病院で働く場合多くはHIPPA(Health Insurance Portability and Accountability Act)と呼ばれる、病院で働く際の医者の守秘義務等を履行するために、オンラインコースを延々と受けなければいけません。そのほかに、もし銃撃事件に巻き込まれたら、といった恐ろしいシミュレーションを想定したオンラインコースもあります。隠れることもできず、退路を断たれたらどうする?という質問に対して、“Fight”という選択肢をどうしても選ぶことはできませんでしたが、どうやらそれが正解のようです…。ACLS/BLSも必要で、コースを受けなければいけませんが、病院側が用意してくれたコースがあるのでお金は掛かりません。引っ越しもなかなか大変で、不動産会社を経由して、古くて狭い2LDKが現在とほぼ同等の1ヵ月2800ドル、光熱費込みで約3,000ドル(45万円)です。引っ越し料金は、引っ越し業者に頼むと1,800ドル(27万円)も掛かります。米国では小学校の格差が激しく、学区の良い地域に住むと、どうしても古くて狭くても家賃が高くなってしまうのです。現在のニューヨーク郊外も、今度のボストン郊外も、そこだけはなんとか守るようにしています。なお、皇后雅子さまが住まわれたBelmontと呼ばれる地域の近くで、この地域の公立の高校からハーバード大学に入ることも多いようです。なお、6月下旬に引っ越すのですが、家賃を6月1日から払わないとなかなか良い物件は借りられないと不動産会社に言われたこともあり、6月はほぼ2倍の家賃を払うことになってしまいます。また夏休みに日本に一時帰国するのですが、ボストンから東京への直航便は、ニューヨークより便が少ないせいか高額で、エコノミークラスでも往復で3,200ドル(48万円)もして、なんじゃこりゃと言いたいところです。フェローの給料ではなかなか厳しいものです。そんなこんなで日々追われていますが、ニューヨークのNプログラム※の会合でBBQなどがあり、最後のニューヨークステイを楽しみたいと思います。アイコンの自由の女神のあるリバティ島には大学生の時に行きましたが、この6年間は行かずじまいになりそうです。7月以降は、施設を変わると最初はどうしても大変だったりしますが、comfort zoneに甘んじることなく、いろいろな施設の違いを感じ、世界最高峰の病院の1つと呼ばれるMGHを楽しんでいきたいと思います。※Nプログラムは、東京海上日動火災保険株式会社が実施する、米国の教育病院における臨床医学レジデンシー・プログラムに日系の若手医師を派遣するプログラム。

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医療用麻薬って、一生飲み続けるのですか?【非専門医のための緩和ケアTips】第77回

第77回 医療用麻薬って、一生飲み続けるのですか?患者さんから、そして医療者向けのレクチャーにもしばしば聞かれる質問の1つに、「医療用麻薬って一生飲むのですか?」というものがあります。そんな時、どう答えるのがよいでしょう? 一緒に考えてみたいと思います。今回の質問先日、がん疼痛が強くなってきた患者さんにオピオイドを処方しようとした際のこと。不安にならないよう丁寧に説明して、必要性は理解してもらいました。その際、「この薬って一生飲み続けるのでしょうか?」と尋ねられました。比較的全身状態の保たれた患者さんでしたが、病状は進行すると考え、「そうです」とは答えたのですが、これでよかったのでしょうか?終末期に近い病状の患者さんを診ている場合、オピオイドの減量や中止を経験することは、あまりないかもしれません。この中であり得るパターンとしては、「内服で継続していたオピオイドが身体状況の悪化で飲めなくなり、痛みも訴えていないことや投与量自体があまり多くないことから、そのまま中止」というものがあります。このような場合、多くは1週間程度で亡くなる経過をたどります。こうした場合以外は、それなりの投与量のオピオイドを急に中止してしまうと、退薬症状が生じる懸念があります。そのため、「内服できない」といった状況が生じれば、皮下投与や静脈投与に投与経路を変更して投与を継続することが一般的です。では、「がん疼痛自体が軽減したので、オピオイドを減量・中止する」という機会はあるのでしょうか? 悪性疾患の特性上、病状の進行に伴い症状も強くなる場合が大半ですが、少ないながらもオピオイドが不要になるケースは存在します。具体的な例としては、「がん疼痛が強く、大量のオピオイドが必要だったが、オピオイド“以外”の介入によって、症状が改善した」というケースです。たとえば、「放射線治療や化学療法が奏効し、痛みの主要因であった病変が縮小・消失した」場合には、オピオイドの中止の可能性が出てきます。この場合、オピオイドは「鎮痛薬以外の治療を行うために一時的に使用した」という役割になります。さらに、痛みは改善しているのにそのままの量を処方し続ければ、過量投与になる恐れがあります。「放射線治療をしていたら、傾眠傾向になってきた…」といった時には、オピオイドが過量になってないかを検討しましょう。さて、最初の質問に対して、私はどのように答えているでしょうか?私自身は上記のような医学的な説明をする前に、「どういった気掛かりからの質問なのか」を確認しています。こうした質問が出る場合、相手には何らかの懸念があることが一般的です。たとえば、「長期間使用すると依存症になってしまうのではないか?」「医療費がずっとかかるのではないか?」といったことです。相手の気掛かりを確認したうえで、「病状や症状によっては、オピオイドの減量や中止に至るケースもあります」と説明することもあります。ただ、こうした場合でも「あまり多くはないですが…」といった枕詞を置くなど、過度に期待させないよう配慮します。そのうえで、「できるだけ症状が和らぐように、ベストだと思われる調整を提案します」とお伝えします。今回のTips今回のTipsオピオイドの減量・中止が必要となるケースを知り、患者さんの気掛かりに対応しよう。

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6月4日 水虫治療の日【今日は何の日?】

【6月4日 水虫治療の日】〔由来〕「水虫」の「む(6)し(4)」の語呂合わせと、水虫を患う人が急増する入梅の時期であることから、水虫の早期治療の大切さや治療啓発を目的に大源製薬株式会社(兵庫・尼崎市)が制定。関連コンテンツ知っておきたい皮膚真菌症の診療とガイドライン【診療よろず相談TV】相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】水虫の直接鏡検で菌体を見つけるコツ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】爪白癬【患者説明用スライド】「爪白癬は外用薬で治す」は誤解?

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