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asciminib、新規診断の慢性期CMLに有効/NEJM

 新規に慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)と診断された患者の治療において、ABLミリストイルポケットを標的とするBCR::ABL1阻害薬asciminibは、担当医が選択した第2世代チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)やイマチニブと比較して、分子遺伝学的大奏効(MMR)の達成割合が有意に高く、安全性プロファイルも良好であることが、ドイツ・イエナ大学病院のAndreas Hochhaus氏らASC4FIRST Investigatorsが実施した「ASC4FIRST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月31日号に掲載された。第1/2世代TKIと比較する国際的な無作為化第III相試験 ASC4FIRST試験は日本を含む国際的な多施設共同非盲検無作為化第III相試験であり、2021年11月~2022年12月に参加者の無作為化を行った(Novartisの助成を受けた)。 年齢18歳以上、登録前3ヵ月以内に新規の慢性期CMLと診断された患者405例を登録した。これらの患者を、asciminibの投与を受ける群に201例、担当医が選択したTKI(第1世代TKIイマチニブまたは第2世代TKI[ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ])の投与を受ける群に204例(イマチニブ群102例、第2世代TKI群102例)を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、48週時点でのMMR(BCR::ABL1IS≦0.1%)とし、asciminibと担当医選択TKI、asciminibとイマチニブの比較を行った。第2世代TKIとの比較では差がない 追跡期間中央値は、asciminib群が16.3ヵ月、担当医選択TKI群は15.7ヵ月であった。 48週時のMMRの達成割合は、asciminib群が67.7%、担当医選択TKI群は49.0%であり、イマチニブ群との比較ではasciminib群が69.3%、イマチニブ群は40.2%であった。 これらMMR達成割合のasciminib群と担当医選択TKI群の群間差は18.9ポイント(95%信頼区間[CI]:9.6~28.2、補正後両側p値<0.001)、asciminib群とイマチニブ群の群間差は29.6ポイント(16.9~42.2、p<0.001)であり、いずれもasciminib群で有意に優れた。 一方、asciminib群と第2世代TKI群の比較では、48週時のMMR達成割合はそれぞれ66.0%および57.8%と、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:8.2ポイント、95%CI:-5.1~21.5)が、この比較は主要評価項目ではなかった。Grade3以上、投与中止に至った有害事象の頻度は低い 安全性プロファイルは、イマチニブや第2世代TKIに比べasciminib群で良好であった。Grade3以上の有害事象および試験薬の投与中止の原因となった有害事象の頻度は、イマチニブ(それぞれ44.4%、11.1%)、第2世代TKI(54.9%、9.8%)と比較してasciminib群(38.0%、4.5%)で低かった。また、試験薬に関連した死亡例は認めなかった。 著者は、「慢性期CMLの1次治療の選択は微妙であり、患者の目標やその他の患者固有の要因によって異なる。本試験では、無作為化前のTKIの選択は患者の希望を考慮して担当医が行ったため、共有意思決定が可能であった」とまとめ、「asciminibの有益性をさらに明らかにするには、長期の追跡調査を要する」としている。

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セマグルチドの減量効果を遺伝子検査で予測

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使い始めて数週間で減量に成功した人を見て、同薬による治療を開始したあなた。ところが体重計の針は期待したほど下がらない。なぜ? 米国消化器病週間(DDW2024、5月18~21日、ワシントン)で発表された新たな研究によると、その違いには遺伝子が関与しているようだ。 過去にも、セマグルチドによって体重が20%以上減る人がいる一方で、約7人に1人は1年以上使用しても5%以上は減らないという研究結果が報告されており、セマグルチドの減量効果には個人差があることが知られている。その個人差を、遺伝子検査によって事前に知ることができるようになるかもしれない。 この検査は、米メイヨー・クリニックの研究者らによって開発され、昨年その研究者らが設立したPhenomix Sciences社が、「MyPhenome」という名称でライセンスを取得した。CNNの報道によると、価格は350ドルで医家向けに提供される。 主任研究者のMaria Daniela Hurtado Andrade氏は、同社発のリリースの中で、「われわれのデータは、肥満者は個々に異なる遺伝的・生物学的背景を持っていて、肥満の改善には個別化された治療が重要である可能性を示している」と述べている。また、研究グループの一員である同クリニックのAndres Acosta氏は、「この遺伝子検査によって、体重を5%以上減らせられるか否かを95%の精度で予測可能だ」と、CNNの取材に対して語っている。同氏は、「セマグルチドの使用前に治療効果を知ることができれば、時間とコストを節約できる可能性がある。同薬は安価とは言えず、必ずしも保険でカバーされるとは限らないため、自己負担額が高額になる場合もある」とも述べている。 開発された新たな検査は、GLP-1のシグナル伝達経路に関連する遺伝子の変異を調べて、セマグルチドによる空腹感への影響を予測する。この検査の結果が陽性の人は、セマグルチドにシグナルが反応するのに対して、陰性の人は反応が弱く、空腹感が抑制されにくいという。 同クリニックで減量治療を受けた84人の血液または唾液検体を用いた小規模な研究から、この検査が陽性だった人はセマグルチド使用開始1年後に、平均19.5%の減量を達成していたことが分かった。これは、陰性だった人の減量幅である10%のほぼ2倍に相当する。 なお、重要なこととして、この新しい研究の結果は査読システムのある医学誌に未発表であるため、予備的なものと見なす必要がある。Acosta氏は、「薬剤と同じように、有用性を検討するためのゴールドスタンダードである、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で検証する必要がある。ただ、われわれが既に行った研究も、減量治療が行われた時点では陽性か陰性か分かっていなかったため、実質的に盲検化はなされていた」としている。

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超音波で脳の「窓」から脳活動をモニタリング

 米南カリフォルニア大学(USC)ケック医学校と米カリフォルニア工科大学の研究グループが、患者の頭蓋骨の欠損部分にアクリル樹脂製のインプラントを設置し、この「窓」を通して、機能的超音波イメージング(functional ultrasound imaging;fUSI)により高精細の脳画像データを得ることに成功したことを報告した。研究グループは、患者の病状経過のモニタリングや臨床研究において、この感度の高い非侵襲的なアプローチが新たな道を切り開く可能性があるのみならず、脳機能に関する広範な研究にも役立つ可能性があると話している。USCケック医学校臨床神経外科分野のCharles Liu氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に5月29日掲載された。 この透明な頭蓋インプラントを用いた治療を受けたのは、米カリフォルニア州在住のJared Hagerさん39歳だ。スケートボーダーのHagerさんは、2019年4月にスケートボードで事故を起こして外傷性脳損傷を負い、脳への圧迫を和らげるために頭蓋骨の半分を取り除く緊急手術を受けた。Hagerさんの回復後に予定されていた頭蓋形成術は、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響を受けて大幅に遅れ、Hagerさんは2年以上、皮膚と結合組織だけで脳を守っていたという。 この間にHagerさんは、Liu氏らが実施した別の新たな脳イメージング技術であるfPACT(機能的光音響断層撮影)に関する早期研究にボランティアとして参加した。その後、頭蓋骨を再建するに当たり、Hagerさんは再びLiu氏らに協力した。Liu氏らは、fUSIの有用性を研究するために、PMMA(ポリメチルメタクリレート)製の透明な頭蓋インプラントをデザインし、これを用いてHagerさんの頭蓋骨に取り付けた。 研究グループは、頭蓋形成術の前後に、Hagerさんにコンピューターのモニター上で点と点をつなぐパズルを行う、ギターを弾くなどのいくつかのタスクをこなしてもらい、その間にfUSIを実施して脳活動のデータを集めた。その結果、この「窓」が、脳活動を測定するために効果的な方法であることが明らかになった。Liu氏は、「当然ながら、fUSIで得られる画像は他のイメージング技術で得られる画像よりも質は劣るが、重要なのは、それでも十分に有用であることが分かった点だ。また、他の脳-コンピューターインターフェース技術とは異なり、fUSIでは脳内に電極を埋め込む必要がないため、導入の障壁も格段に低い」と話す。 Liu氏はまた、「これは、覚醒した状態で何らかの行動をしている人の頭蓋インプラントを通してfUSIを適用した初めての例だ」と語る。同氏はさらに、「特に、頭蓋骨の再建を必要とする患者の多くは、神経学的障害を持っているか、あるいはこれからそうした障害を発症する可能性があるため、このような『窓』を通して非侵襲的に脳の活動に関する情報を得られることは大きな意味のあることだ」と大学のニュースリリースで語った。 研究グループは、このような「窓」を利用した超音波やCTが、不透明な骨や頭蓋インプラントを介したMRIやEEG(脳波)スキャンよりも有用な情報を得ることができると考えている。Liu氏はさらに、「もし、脳の機能的な情報が診断や治療に役立つのであれば、頭蓋骨にダメージを受けていない患者にも、このような『窓』を手術で埋め込むことも可能だ。もし、患者の頭蓋インプラントを通して機能的な情報を引き出すことができるのなら、より安全で積極的な治療が可能になる」と述べている。

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前立腺がんに対する監視療法の有効性を確認

 前立腺がんの多くは進行が遅いため、医師は患者に積極的な治療ではなく「経過観察」を勧めることが多い。このほど、米フレッドハッチンソンがん研究センターのLisa Newcomb氏らが約2,200人の患者を最長で10年にわたって追跡調査した研究において、医師のこの決断は多くの場合、賢明であることが明らかになった。この研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に5月30日掲載された。Newcomb氏は、「われわれの研究は、定期的なPSA(前立腺特異抗原)検査と前立腺生検を含む監視療法(アクティブサーベイランス)が低リスク(favorable risk)の前立腺がんに対する安全で効果的な管理方法であることを明らかにした」と話している。 数十年前は、前立腺がんと診断された男性の多くが、すぐに手術やホルモン療法などの治療を受けていた。これらの治療には、勃起障害や排尿障害などの副作用を伴うことがあり、生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼす可能性がある。 しかし、過去20年間で前立腺がんの多様な性質に関する理解が深まり、現在では検査により、差し迫った脅威をもたらす可能性のある攻撃的で進行の速い腫瘍と、非常にゆっくりと進行する腫瘍を区別できるようになった。特に患者が高齢の場合には、緩徐進行型のがんが健康にもたらす脅威は、心臓病など他の疾患がもたらす脅威ほど深刻ではない可能性がある。このため、多くの前立腺がん患者では、治療を行わずに定期的な検査により緩徐進行型のがんがより危険な状態に進行していないかどうかをチェックする監視療法が実施されている。 しかし、このような監視療法が患者の生存とQOLにどの程度有効なのかは明らかにされていない。このことを明らかにするためにNewcomb氏らは、監視療法を受けている、低リスクで治療歴のない前立腺がん患者2,155人(診断時の年齢中央値63歳、白人83%)の長期的な転帰を調べた。対象患者は、中央値7.2年、最長10年にわたって追跡されていた。 その結果、追跡期間中に40%(870人)の対象者が治療を受け、このうちの425人では確認生検後に(中央値1.5年後)、396人では監視療法中の生検後に(中央値4.6年後)治療が行われていた。治療後5年間の再発率は、確認生検後に治療を受けた患者で11%、管理療法中の生検後に治療を受けた患者で8%であった。しかし、49%の患者では、監視療法下でがんが進行したり治療の必要性が生じたりすることはなかった。診断から10年後の時点で、対照者の43%で生検により腫瘍グレードが変更され、49%が治療を受け、また、この間のがんの転移率、前立腺がん特異的死亡率、および全死亡率は、それぞれ1.4%、0.1%、5.1%と推定された。 Newcomb氏は、「この研究で得た重要な知見は、数年間の監視療法後に治療を受けた人では、1年間の監視療法後に治療を受けた人と比べて再発や転移などの有害な転帰が悪化しているようには思われないことだ。この結果は、監視療法では治癒の機会を失うのではないかという懸念を緩和するだろう」と述べている。その上でNewcomb氏は、「この研究により、前立腺がんに対しては即時治療ではなく監視療法を実施するということを、より多くの人が受け入れるようになることを期待している」と付け加えている。

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古代人にも動脈硬化、ミイラの調査で判明

 心臓病といえば現代生活の副産物だと思われがちだ。しかし、4,000年以上に及ぶ7つの異なる文化圏の成人のミイラのCT画像を調査した結果、3分の1以上のミイラに動脈硬化の痕跡が見つかり、心臓病が何世紀にもわたって人類を苦しめてきた疾患であることが明らかになった。米セントルークス・ミッドアメリカ心臓研究所のRandall Thompson氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に5月28日掲載された。 この研究では、世界中の成人のミイラのCT画像データを用いて、動脈硬化の有無を調べた。動脈硬化は、動脈と予測される場所にカルシウムの沈着が見られる場合を「ほぼ確実な動脈硬化」、識別可能な動脈の壁にカルシウムの沈着が見られる場合を「確実な動脈硬化」と見なした。調査対象のミイラは、古代エジプト人(161体)、低地の古代ペルー人(54体)、ボリビア高地の古代アンデス人(3体)、19世紀のアリューシャン列島のアレウト族(4体)、16世紀のグリーンランドのイヌイット(4体)、古代プエブロ族(5体)、中世のゴビ砂漠の牧畜民(4体)の7つの文化圏に由来するものに、19世紀のアフリカ系米国人(1体)とオーストラリアの先住民(1体)も加えた計237体であった。これらのミイラの死亡時の平均年齢は40±11.6歳で、58.6%(139体)が男性だった。 調査の結果、全ての文化圏に属する89体(37.6%)のミイラで「確実な動脈硬化」、または「ほぼ確実な動脈硬化」が確認されることが明らかになった。動脈硬化が認められる場所を多い順に並べると、大動脈(51体、21.5%)、腸骨-大腿動脈(49体、20.7%)、膝窩-脛骨動脈(38体、16%)、頸動脈(33体、14%)、冠動脈(9体、0.4%)であった。一方、男性と女性の間(38.1%対38.5%、P=0.36)や、エジプト人と非エジプト人(上流階級に属さない者が多い)との間(39.1%対38.5%、P=0.48)には、動脈硬化が見つかったミイラの割合に有意な差は認められなかった。 Thompson氏は、「古いものでは紀元前2,500年以前に遡る全ての時代、全ての文化圏のミイラにおいて、男女ともに、上流階級の人物であるか否かにかかわりなく、動脈硬化が認められた」とし、「これは、動脈硬化が現代の生活習慣により引き起こされる症状ではないという、われわれが以前の研究で得た知見をさらに裏付ける結果だ」と述べている。 研究グループは、「この結果は、人間には生まれつき動脈硬化のリスクがあることを示している」との見方を示している。またThompson氏は、「この研究は、喫煙、座位で過ごすことの多い生活、栄養バランスの悪い食事などの現代人の抱える心血管系のリスク因子が、加齢による自然なリスク増加に上乗せする形で動脈硬化の程度と影響を増大させる可能性があることを示している。だからこそ、コントロール可能なリスク因子をきちんとコントロールすることが重要なのだ」と話している。

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「高血圧の基準が変わった」と誤解している患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第46回

■外来NGワード「ずっと変わっていません」(頭から行動を否定)「そんなことより、ちゃんと薬を飲んでおきなさい」(話題が違う方向に)「もっと食事に気を付けなさい」(あいまいな食事指導)■解説現代は情報社会で、健康に関する情報が氾濫しています。YouTubeやFacebookやX(旧Twitter)などのSNS(Social networking service)などから健康に関する情報を得ている人も増えてきました。ところが、正しい情報源にたどりつき(検索力)、情報を分析し(分析力)、正しいかどうかを見極めて(批判的吟味力)、自分の目的に活用できる(活用力)という「情報リテラシー」が高い人は必ずしも多くはありません。情報リテラシーが低い人は、間違った情報をあまり吟味せずに、そのまま信じてしまいます。2024年4月から「高血圧の基準が変わった」とする情報を発信している人の元の情報源は高血圧学会のガイドラインではなく、2024年4月から第4期を迎える特定健診の受診勧奨値の記載のようです。受診勧奨判定値への対応が2つに分かれ、血圧が160/100 mmHg以上なら「この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください」、140~159/90~99 mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」となっています。どうも前者だけを取り上げて「高血圧の基準が変わった」と誤った発信をしているようです。それに対して、日本高血圧学会は「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」とした声明を出しています。情報を収集する際は、できるだけ信頼できる媒体(学会や公共放送など)、複数の情報を利用するように患者さんに伝えておくとよいでしょう。そして、検索する際には「学会」「公式」などの検索用語を付け加えておくと良いことを説明しておきます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者高血圧の基準が4月より変わったそうですね。医師えっ、そんな話は初めてですが…どこで聞かれましたか?(情報源を探る)患者YouTubeでそう言っていました。上が160を超えたら、病院で治療が必要とか…それなら、私は上の血圧が160を超えていないのでもう薬を飲まなくても良いのでは?医師なるほど。…それは、高血圧学会のガイドラインではなくて、健診を受けた人への説明文の変更ですね。誤解されている人が多いんですよ。(誤解している人が多いことを指摘し話す)患者えっ、そうなんですか。誤解って、どういうことですか?(興味津々)医師確かに4月から健診で上の血圧が160を超えていたら、「すぐに医療機関の受診を」という説明文になりました。患者「すぐに医療機関の受診を」ですか…。医師そうなんです。それに対して、上の血圧が140~159mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」ということになっています。患者なるほど。生活習慣を改善して、血圧の値が良くならなかったら、医療機関を受診する必要があるということですね。医師その通りです。今、血圧の薬を飲んでいる人が止める基準が決まったわけではありません。ただし、生活習慣を改善すれば、血圧の薬を減らすことはできますよ。患者どんなことに気を付けたらいいですか?医師基本は減塩ですが、身体を動かすこと(運動)、体重を減らすこと(減量)、お酒を減らすこと(節酒)、そして野菜をたっぷり食べて、果物はこぶし1個分くらいを食べるなどがポイントになります。患者なるほど。もう1度、初心に戻って減塩と運動に取り組んでみます。医師それはいいですね。応援しています。患者頑張って、やってみます。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「その情報源はどこですか?」「検索する際には「学会」とか「公式」とかの用語を入れておくといいですよ!」 1)標準的な健診・保健指導プログラム[令和6年度版](厚生労働省)2)特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を(日本高血圧学会)3)Mancia G, et al. J Hypertens. 2023;41:1874-2071.

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英語で「代診をしています」は?【1分★医療英語】第135回

第135回 英語で「代診をしています」は?《例文1》Good morning, I'm Dr. Smith, filling in for Dr. Yamada while he's away at a conference.(おはようございます、スミスと申します。山田医師が会議で不在の間、代診をしています)《例文2》Your usual doctor is on vacation, so Dr. Jones will be filling in today.(いつもの先生は休暇中ですので、今日はジョーンズ医師が代診を務めます)《解説》“I'm filling in for XXX.”は、別の医師が予定されていた担当医師に代わって診察を行うときに使うフレーズです。この“fill in”という表現は、“Please fill in the blank.”といったように、(空欄を)埋めるという意味合いで用いられます。それに“for”という前置詞と人の名前を続ければ、「空欄」ではなく「担当医師が休みで空いてしまった枠」を埋める、すなわち「代診する」という意味になり、臨床現場のコミュニケーションで頻繁に用いられています。このほかにも、“I’m covering for Dr. Yamada.”や“I’m seeing you on behalf of Dr. Yamada.”という表現も(少しニュアンスの違いはあるものの)同様の場面で「代診する」という意味合いで用いることが可能です。担当医師の突然の休養などで、代診を伝えなければいけない場面もあることでしょう。そんなとき、このフレーズを覚えておくとスムーズに伝えられます。講師紹介

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新剤形追加・添付文書改訂:クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬/エンレストに粒状錠小児用規格追加【最新!DI情報】第17回

アレジオン眼瞼クリーム0.5%<対象薬剤>エピナスチン塩酸塩(商品名:アレジオン眼瞼クリーム0.5%、製造販売元:参天製薬)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回塗布のクリーム剤<ここがポイント!>既存のエピナスチン点眼液は1日4回、エピナスチンLX点眼液は1日2回の点眼が必要でしたが、エピナスチン眼瞼クリームは1日1回眼周囲(上下眼瞼)の塗布で、有効性が終日にわたり維持します。点眼が苦手な小児や高齢者に加え、日中の点眼でメイクが落ちるのが気になる人に対しても、就寝前や夜のスキンケア時の塗布で効果が期待できるため、利便性が高いと考えられます。クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬は世界初であり、眼瞼皮膚を通過して眼球・眼瞼結膜に成分が分布します。第III相CAC試験(スギ花粉抗原を用いた結膜抗原誘発試験)において、アレルギー性結膜炎の眼そう痒感および結膜充血スコアをプラセボに比べて有意に抑制しました。また、第III相長期投与試験(環境試験)において、本剤の安全性および有効性が確認されています。エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<対象薬剤>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[追加]規格粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<ここがポイント!>小児慢性心不全は、病状が進むと心肥大や心拡大などが進行し、不整脈や突然死を引き起こすことがあります。サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠50mg/100mg/200mgは2024年2月9日に1歳以上の小児慢性心不全の効能・効果で承認を取得しました。しかし、体重が50kg未満の場合、薬剤師が粉砕懸濁して用量の調整を行う必要がありました。粒状錠小児用12.5mg/31.25mgは、用量を組み合わせることでさまざまな体重に対応することができ、調剤の簡便化が可能になります。粒状錠は、小児でも飲みやすい小さな粒状の錠剤ですので、カプセル型容器から取り出した錠剤を食べ物に混ぜて服用できます。粒状錠小児用は、カプセル型容器に充填したあと、PTP包装しています。パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg<対象薬剤>ペマフィブラート(商品名:パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg、製造販売元:興和)<発売年月>2023年11月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回投与の徐放性製剤<ここがポイント!>高脂血症治療薬のペマフィブラート錠0.1mgは1日2回投与の即放性製剤でしたが、新剤形として1日1回投与のマルチプルユニット型徐放性製剤が2023年11月に販売されました。服用回数の増加は服薬アドヒアランスの低下に関連することが報告されているため、徐放性製剤の発売でアドヒアランスの向上が期待できます。第III相検証試験(K-877-ER-02)において、徐放性製剤0.2mgおよび0.4mgは、既存の即放性製剤と比較し、空腹時血清TGのベースライン値からの変化率が非劣性であることが確認されています。販売名のXRは徐放性(Extended Release)製剤であることを示しています。レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg<対象薬剤>ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:大塚製薬)<改訂年月>2023年12月<改訂項目>[追加]効能又は効果うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)[追加]用法及び用量通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量することができる。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤の併用は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤等による適切な治療を複数回行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤による副作用(アカシジア、遅発性ジスキネジア等の錐体外路症状)や他の治療も考慮した上で、その適否を慎重に判断すること。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又はミルタザピンと併用すること。(本剤単独投与での有効性は確認されていない)<ここがポイント!>本剤の適応症は統合失調症のみでしたが、2023年12月に「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」が追加されました。成人では1日1回1mg投与しますが、忍容性に問題なく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量できます。中等症および重症の大うつ病性障害には、SSRI、SNRI、ミルタザピンが第1選択として用いられますが、これらの薬剤による治療でも十分な効果を示さない症例も多く存在します。本剤は、アリピプラゾールに次ぐ抗うつ効果増強療法に用いる非定型抗精神病薬で、SSRI、SNRIまたはミルタザピンと併用して使用します。

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腫瘍循環器診療 実践トレーニング

症例問題で診療のコツやガイドラインの活かし方をわかりやすく学べる実践書!注目が高まる腫瘍循環器学の新しいガイドラインや知見を臨床現場でどう活かすか、がん種や治療法ごとに具体的なシチュエーションを示しながらエキスパートが解説しています。さらに症例問題を解くトレーニング形式により、注意すべきことやガイドラインに載っていない場合の対応など実臨床に即した知識を習得できる構成となっています。豊富な図解でビジュアルに理解できる紙面に、最新の話題やTips、コラムと内容充実。『腫瘍循環器診療ハンドブック』と併せてご活用いただける1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する腫瘍循環器診療 実践トレーニング定価5,280円(税込)判型B5判2色(一部カラー)、イラスト50点、写真70点頁数240頁発行2024年3月監修小室 一成編集日本腫瘍循環器学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら

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第219回 マラリア薬が世界の数百万人もの女性疾患を治療しうる

マラリア薬が世界の数百万人もの女性疾患を治療しうる植物のヨモギ(artemisia)から単離され、抗マラリア作用を有することでよく知られる化合物群アルテミシニン(artemisinins)の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療効果がマウス/ラットやヒトへの投与試験で判明しました1,2)。世界の数百万人もの女性が被るPCOSは女性の最も一般的な内分泌疾患の1つで、男性ホルモン過剰(高アンドロゲン血症)、排卵を乏しくするかなくならせる卵巣不調、多嚢胞性卵巣を特徴とします。濾胞異形成や排卵/内分泌/代謝障害などのPCOSの病変の数々にアンドロゲン過剰が寄与することが知られています。また、PCOS女性から生まれた女児はPCOSになりやすく、出生前に過剰なアンドロゲンと共に過ごした雌マウスにはPCOS様病態が生じることが示されており、PCOSの影響は子にも及ぶようです3)。よってPCOSを制するにはアンドロゲン過剰を制する必要があります。薬によるPCOSの治療といえば今のところもっぱら個々の症状の手当てを目指すもので、PCOSのすべての病態を相手しうる薬はほとんどありません。経口避妊薬がPCOS成人女性のアンドロゲン過剰や不規則な月経周期の手当てとして推奨されていますが、不妊や多嚢胞性卵巣病変の改善は見込めません。また、経口避妊薬は血栓症などの副作用の心配があります。PCOS女性の多くは肥満などの代謝障害を呈します。中国の上海の復旦大学のチームによる先立つ研究で、アルテミシニン化合物がエネルギー消費を増やして肥満を防ぐ効果を有することが示されています。PCOS発生に代謝経路不調がどうやら寄与しうることとアルテミシニン化合物の代謝恒常性促進作用にヒントを得た同チームのさらなる検討のかいあって、アルテミシニン化合物のPCOS治療効果が今回新たに判明しました。アンドロゲン生成を増やすことが知られるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)やインスリンの動物への投与でPCOSを模す病態が生じることがわかっています。hCGはミトコンドリアプロテアーゼLONP1とアンドロゲン生成の始まりを触媒する酵素CYP11A1の相互作用を妨げてCYP11A1を増やし、アンドロゲン生成を促してPCOSを起こします。アルテミシニンはLONP1とCYP11A1の仲を取り持ってCYP11A1分解を促し、卵巣でのアンドロゲン生成を阻止することを復旦大学のチームは今回新たに突き止めました。PCOSを模すマウスやラットにアルテミシニンの一種であるアルテメテルを投与したところ、血清のテストステロン上昇が抑制され、不規則な発情周期が正常化し、多嚢胞卵巣が減り、不妊病態が改善しました。検討はさらに少人数の臨床試験へと進みます。マラリア治療に実際に使われているアルテミシニンの一種であるdihydroartemisininをPCOS女性19例に投与したところ、マウスやラットでの結果と同様に血中のテストステロンが減り、多嚢胞卵巣病態が改善しました。19例中12例はいつもの生理周期を取り戻しました。長期投与の効果や経過改善を最大限にするための投与手段の最適化がさらなる検討で必要ですが4)、今回の結果によるとアルテミシニンはPCOS治療手段として有望なようです。参考1)Liu Y , et al. Science. 2024;384:eadk5382.2)Antimalarial compounds show promise to relieve polycystic ovary syndrome / Eurekalert 3)Risal S, et al. Nat Med. 2019;25:1894-1904.4)Stener-Victorin E. Science. 2024;384:1174-1175.

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CKD-MBDガイドライン改訂に向けて新たな治療の方向性を議論/日本透析医学会

 日本透析医学会による『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン』の改訂に向けたポイントについて、2024年6月9日、同学会学術集会・総会のシンポジウム「CKD-MBDガイドライン 新時代」にて発表があった。 講演冒頭に濱野 高行氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科・人工透析部)がCKD-MBDガイドライン改訂方針について、「CKD-MBDの個別化医療を目指して、さまざまなデータを解析して検討を積み重ねてきた。新しいガイドラインでは、患者の背景に合わせた診療の実現へつなげるためのユーザーフレンドリーな内容になるよう努めていきたい」とコメント。続いて、6人の医師が今後のCKD-MBDガイドライン改訂のポイントに関して解説した。CKD-MBDガイドライン改訂で実臨床に則したプラクティスポイント作成を目指す 保存期CKD-MBDについて、藤崎 毅一郎氏(飯塚病院 腎臓内科)から低カルシウム血症・高リン血症のプラクティスポイントに関する提案があった。低カルシウム血症では、「まずは補正カルシウム値を確認。その後、低カルシウム血症を誘発する薬剤の確認やintact PTH(iPTH)、リン、マグネシウムを測定し、二次性副甲状腺機能亢進症の確認を行ったうえで、カルシウム製剤または活性型ビタミンD製剤の投与を検討すること」とし、高リン血症に関しても補正カルシウム値の確認を行ったうえで、「低い場合にはカルシウム含有リン吸着薬、正常であれば鉄欠乏の有無を考慮したうえで鉄含有、非含有リン吸着薬の投与を検討すること」とコメントした。最後にガイドラインの改訂に向けて、「実臨床に則したプラクティスポイントの作成を目指して検討を続けていく」と述べた。CKD-MBDへの関心が低い医師でも使えるフローチャートを 血液透析患者における血清カルシウム、リンの管理目標値について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。理事会へ提出された素案によると、血清カルシウムの下限は8.4mg/dL以上のまま、上限に関しては9.5mg/dL未満、血清リンに関しても下限は3.5mg/dL以上のまま、上限は5.5mg/dL未満が管理目標値として検討されている。同氏は、血清カルシウム、リンの管理について、「カルシミメティクスや骨粗鬆症治療薬によってカルシウムが下がりやすい環境にもあるため、低カルシウム血症には注意すること。血清リンに関しては年齢や栄養状態をよく考慮して検討すること。原疾患が糖尿病、動脈硬化性疾患の既往がある場合には目標値の上限を下げて管理することも検討する必要がある」とコメント。また、「CKD-MBDにそれほど関心がない先生方にとっても、フローチャートなどを使って診療の手助けになるものを示していくことが大切である」と述べた。CKD-MBDガイドライン改訂で患者の背景に応じたリン低下薬選択を支援 前回のCKD-MBDガイドライン以降、多くのリン低下薬が登場し、患者に合わせた薬剤選択の重要性が注目されている。山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)からは、患者特性に基づくリン低下薬の選択について提案があった。リン低下薬を選択する際の切り口として、「リン低下だけでなく薬剤による多面的な効果、便秘などの消化器症状、PPIやH2ブロッカーなど胃酸分泌抑制薬による影響、服薬錠数や医療経済など、リン低下薬の特性だけでなく患者背景に合わせて使い分けることが大切である」と改訂に向けたポイントを述べた。プラクティスポイントとして、リン低下薬選択に関するアプローチの仕方を示した「一覧表」の紹介もあった。同氏は一覧表に関して、「基本的には患者と相談してリン低下薬を選択していくことになるが、どうやって患者に合わせて使い分けていくべきか、視覚的にわかりやすいツールがあれば判断しやすいのではないか」とコメントした。PTHの管理・治療の個別化へ向けて 血液透析患者における副甲状腺機能の評価と管理について、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科学)からPTHの管理を中心に提案があった。同氏は、「PTH管理においても治療の個別化が必要である」とし、管理目標値としてiPTH 240pg/mL以下の範囲で症例ごとに個別化すること、とコメントした。具体的には、骨折リスクの高い症例(高齢・女性・低BMI・骨代謝マーカー上昇)では管理目標値を低く設定する、カルシミメティクスを使用する場合にはiPTHの下限値を設けない、活性型ビタミンD製剤を単独で使用する場合は高カルシウム血症を避けるため下限値を60pg/mLとすることなどであった。内科的治療に関しては、PTHが管理目標値より高い場合には、血清カルシウム値や患者背景に基づいて活性型ビタミンD製剤、カルシミメティクスによって管理を検討すること、血清カルシウム値が管理目標値内にあって腫大腺や65歳以上、心血管石灰化、心不全リスク、骨折リスク、高リン血症を有するなど、1つでも該当する場合にはカルシミメティクスの使用や併用をより積極的に考慮することなどを挙げた。また、内科的治療に抵抗する重度の二次性副甲状腺機能亢進症の場合には副甲状腺摘出術の適応となるが、こちらも症例ごとに検討していく必要があると述べた。CKD-MBDにおける骨折リスクの評価・管理のポイントとは CKD-MBDにおける骨折リスクへの介入について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)からプラクティスポイントに関する解説があった。評価・管理のポイントとして、「脆弱性骨折の有無や骨密度検査および血清ALP値による骨代謝の評価を行い、骨折リスクが高い場合には、運動、転倒防止、栄養状態の改善、禁煙指導を実施したうえで、カルシミメティクスの投与を優先してPTHを低く管理することが重要である」とコメント。同氏は、それでも骨密度の改善が得られない、または骨代謝マーカーの亢進が認められる場合には、骨粗鬆症治療薬の投与を検討するよう提案した。また、透析・保存期CKD患者に対する骨粗鬆症治療薬の選択に関しては、使用制限や投与における注意点が薬剤別にまとめられた表を作成し、CKD患者においてリスクの高い骨粗鬆症治療薬もあるため、ヒートマップを活用する形で警鐘を鳴らしていくことなども必要であると述べた。CKD-MBDガイドライン改訂に向けた管理目標値の提案 腹膜透析患者におけるMBDについて、長谷川 毅氏(昭和大学 統括研究推進センター研究推進部門/医学部内科学講座腎臓内科学部門)からCKD-MBDガイドライン改訂に向けたポイントに関する解説があった。同氏は「リン低下薬に関しては十分なシステマティック・レビュー、メタ解析による報告がないため、血液透析患者での推奨に準拠すること。CKD-MBDの管理目標値に関しては、生命予後の観点から、リン、カルシウムを目標値内でも低めの値、残腎機能保護、血液透析への移行防止のために、リン、PTHを目標値内でも低めの値を目標とすること」と提案。また、プラクティスポイントとして、残腎機能のある症例でカルシミメティクスを使用することでリンの管理が難しくなる可能性があること、腹膜透析液のカルシウム濃度は血清カルシウム値、PTH値をみて選択することを挙げた。

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アルツハイマー病のアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性〜メタ解析

 最近のランダム化比較試験(RCT)において、アルツハイマー病患者の行動障害(アジテーション)のマネジメントに対するブレクスピプラゾールの有用性が示唆されている。しかし、その有効性および安全性は、まだ明らかとなっていない。ブラジル・Federal University of CearaのGabriel Marinheiro氏らは、アジテーションを有するアルツハイマー病患者を対象にブレクスピプラゾールとプラセボを比較したRCTのメタ解析を実施した。Neurological Sciences誌オンライン版2024年5月20日号の報告。 アジテーションを有するアルツハイマー病患者を対象にブレクスピプラゾールとプラセボを比較したRCTを、PubMed、Embase、Cochrane Libraryよりシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・3件(1,048例)の研究をメタ解析に含めた。・アジテーションを有するアルツハイマー病患者に対するブレクスピプラゾール治療は、12週間にわたり、いずれの用量(MD:−3.05、95%信頼区間[CI]:−5.12〜−0.98、p<0.01、I2=19%)および2mg(MD:−4.36、95%CI:−7.02〜−1.70、p<0.01、I2=0%)においても、コーエンマンスフィールド行動異常評価尺度(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)総スコアの有意な改善を示した。・同様に、アジテーションに関連する臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアにおいても、ベネフィットが認められた(MD:−0.20、95%CI:−0.36〜−0.05、p<0.01、I2=35%)。・治療中に発生した少なくとも1つの有害事象の発生率(RR:1.14、95%CI:0.95〜1.37、p=0.16、I2=45%)および全死亡率(RR:1.99、95%CI:0.37〜10.84、p=0.42、I2=0%)は、両群間で有意な差は認められなかった。・ブレクスピプラゾール治療により、いずれの用量においても、シンプソンアンガス評価尺度(Simpson-Angus Scale)の有意な増加が認められた(MD:0.47、95%CI:0.28〜0.66、p<0.01)。 著者らは、「アルツハイマー病患者のアジテーション治療において、ブレクスピプラゾールの有用性が示唆された。ブレクスピプラゾールの長期的な効果を確認するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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お酒の種類と血圧の関係

 アルコールの摂取量が血圧と強い正の相関関係を示すことが報告されているが、アルコールの種類が血圧に及ぼす影響についてのデータは十分ではなく、赤ワインは女性において血圧を低下させる可能性、ビールは血管内皮機能に有益な効果を有する可能性が指摘されている。デンマーク・University of Southern DenmarkのGorm Boje Jensen氏らによる10万人以上を対象とした大規模研究の結果、アルコール摂取量は用量依存的に血圧の上昇と関連しており、その影響はアルコールの種類によらず同様であった。The American Journal of Medicine誌オンライン版2024年5月14日号の報告より。 アルコールの種類と摂取量はアンケートにより収集された。参加者は赤ワイン、白ワイン、ビール、スピリッツ、デザートワインの週当たりの摂取量を報告。アルコールの週当たりの総摂取量に応じ、7群に層別化された(0/1~2/3~7/8~14/15~21/22~34/35杯以上、1杯のアルコール量は約12gとして評価)。血圧はデジタル自動血圧計で測定され、週当たりのアルコール摂取量と血圧の関係の評価には、多変量線形回帰モデルを使用。年齢・性別により層別化され、関連する交絡因子が調整された。各アルコールの種類別の評価については、他の種類のアルコールについて調整済みのモデルで解析された。 主な結果は以下のとおり。・Copenhagen General Population Studyから、2003年11月25日~2015年4月28日に20〜100歳の10万4,467人が登録された。・8.0%(8,402人) がまったくアルコールを飲まなかったのに対し、2.6%(2,767人)が週に35杯以上のアルコールを摂取していた。・73.7%(7万6,943人)が週に2種類以上のアルコールを摂取していたのに対し、12.6%(1万2,093人)は赤ワインのみ、4.5%(4,288人)はビールのみ、1.9%(1,815人)は白ワインのみ、1.0%(926人)はスピリッツとデザートワインのみを摂取していた。・週当たりのアルコール総摂取量と収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)の間には用量反応関係が認められた(p<0.001)。・アルコール摂取量が多いグループ(週 35 杯以上)と少ないグループ(週1~2杯)の間で、SBPは11mmHg、DBPは7mmHgの差(crude difference)が確認された。・アルコールの種類がSBPとDBPに与える影響についてみると、系統的な差異は確認されなかった。赤ワイン、白ワイン、ビールの週当たり1杯の摂取により、SBPは0.15~0.17 mmHg、DBPは0.08~0.15 mmHg高くなった。・年齢と性別で層別化した結果、女性と60歳未満では影響がわずかに大きかった。

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造血幹細胞移植後GVHDにROCK2阻害薬ベルモスジル発売開始/Meiji Seikaファルマ

 2024年5月、Meiji Seikaファルマは造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(GVHD)に対する新薬、選択的ROCK2阻害薬ベルモスジル(商品名:レズロック)を発売開始した。本薬剤はKadmon(現サノフィ)が開発したもので米国では2021年に発売されており、今回国内治験が終了し、保険承認、販売開始に至った。6月6日には慢性GVHDと本薬剤についてのプレスセミナーが行われ、北海道大学大学院 血液内科の豊嶋 崇徳氏が「造血幹細胞移植の最新動向と移植後の健康問題」と題した講演を行った。 「造血幹細胞移植には、患者自身の細胞を使う自家移植と、血縁者や白血球の型が合う他人の細胞を使う同種移植があり、近年では自家移植が年間約2,000件超の一方で、同種移植は4,000件弱と倍近く行われている。この背景には、骨髄バンク・さい帯血バンクなどが充実したことや、以前は移植不適とされたHLA(ヒト白血球抗原)が半合致の人からも新たなGVHD予防法の開発によって移植できるようになったことがある。 造血幹細胞移植は化学療法不応の造血器腫瘍、とくに急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病の患者にとって「最後の砦」といえるもので、実際に約30~40%の患者が移植後に治癒に至るという強力な治療法だ。しかし、同種移植後の患者にとってしばしば問題になるのが、ドナー由来の免疫細胞が患者の体を非自己と認識して攻撃することで発症するGVHDだ。移植後数ヵ月内に生じる急性GVHDと3ヵ月~2年程度で発症する慢性GVHDがあり、全身に炎症や組織の線維化など膠原病と同様の症状が出て、患者のQOLを著しく落とす。GVHD予防のため移植後に免疫抑制剤を投与するが、完全に防ぐことはできず、移植後患者の約3分の1が発症する。全身症状に苦しみ、社会復帰も叶わず、「移植などしなければよかった」と訴える患者さんに、対峙するわれわれもつらい状況だった。 慢性GVHDの第1選択は副腎皮質ステロイドによる治療だが、効果があるのは半数程度で、長年ステロイド耐性の慢性GVHD患者には承認された薬剤がない状況だった。しかし、ここ数年で状況が変わった。2021年にBTK/ITK阻害薬イブルチニブ(商品名:イムブルビカ)、2023年にはJAK1/2阻害薬ルキソリチニブ(商品名:ジャカビ)が慢性GVHD薬として承認された。いずれも他疾患の治療薬として開発されたものの転用だ。そして今回ROCK2阻害薬ベルモスジルが加わった。3剤はそれぞれ作用機序が異なり、1剤で効果がなくても他剤を試すことができる。患者にとって選択肢が増えたことは喜ばしい。 ベルモスジルの承認根拠となった国内試験ME3208-2は慢性GVHD 患者21例を対象としたもので、全奏効率85.7%(すべて部分奏効)と高い効果を示した。慢性GVHDは全身に症状が出るため完全奏効例はなかったものの、臓器別では口腔症状や皮膚症状に高い有効性を認めた。重篤な副作用がほとんどなく、とくにほかの免疫抑制剤で頻繁にみられる血球減少、感染症が少ないことが評価できる」。 講演後の質疑応答では、ベルモスジルの1次治療からの投与や小児への適用、先行する2剤との使い分けや併用効果などについて質問が出た。豊嶋氏は「どれもあり得る選択だろうが、まずは臨床現場で使いながら患者ごとの最適な治療法をディスカッションし、今後の開発や承認につなげたい」とした。

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EGFR-TKI治療後の再発NSCLC、ivonescimab追加でPFSが改善/JAMA

 上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療後に病勢が進行したEGFR変異陽性の局所進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、化学療法単独と比較してivonescimab(抗プログラム細胞死-1[PD-1])/血管内皮細胞増殖因子[VEGF]二重特異性抗体)+化学療法は、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、安全性プロファイルは忍容可能であることが、中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らHARMONi-A Study Investigatorsが実施した「HARMONi-A試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年5月31日号で報告された。上乗せ効果を評価する中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 HARMONi-A試験は、中国の55施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2022年1~11月に参加者を登録した(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 年齢18~75歳で、EGFR-TKI療法後に病勢が進行したEGFR変異陽性の局所進行または転移のあるNSCLC(AJCC病期分類[第8版]のStageIIIB、IIIC、IV)の患者322例を登録した。 これらの患者を、ivonescimab+化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン)を受ける群に161例(年齢中央値59.6歳[範囲:32.3~74.9]、女性52.2%)、プラセボ+化学療法を受ける群に161例(59.4歳[36.2~74.2]、50.9%)を無作為に割り付けた。試験薬の投与は3週ごとに4サイクル行い、引き続き維持療法としてそれぞれivonescimab+ペメトレキセド、プラセボ+ペメトレキセドを投与した。 主要評価項目は、独立画像審査委員会(IRRC)の評価によるITT集団におけるPFSとした。今回は、予定されていた初回中間解析の結果を報告した。奏効率も良好 データカットオフ日(2023年3月10日)の時点での追跡期間中央値は7.89ヵ月であった。IRRCの評価によるPFS中央値は、プラセボ群が4.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~5.6)であったのに対し、ivonescimab群は7.1ヵ月(5.9~8.7)と有意に延長した(群間差:2.3ヵ月、ハザード比[HR]:0.46[95%CI:0.34~0.62]、p<0.001)。 事前に規定されたサブグループ解析では、大部分のサブグループにおいてプラセボ群よりもivonescimab群でPFSに関する有益性が示され、たとえば第3世代EGFR-TKIの投与中に病勢が進行した患者のHRは0.48(95%CI:0.35~0.66)、脳転移を有する患者では同0.40(0.22~0.73)といずれも良好だった。 また、IRRC評価による奏効率は、プラセボ群の35.4%(95%CI:28.0~43.3)に対し、ivonescimab群は50.6%(42.6~58.6)と有意に高率であった(群間差:15.6%、95%CI:5.3~26.0、p=0.006)。OSのデータは未成熟 全生存期間(OS)のデータは初回中間解析時には未成熟で、データカットオフ日の時点で69例(21.4%)が死亡した(ivonescimab群32例[19.9%]、プラセボ群37例[23%])。 試験期間中の治療関連有害事象は、ivonescimab群で99例(61.5%)、プラセボ群で79例(49.1%)に発現し、化学療法関連の有害事象が最も多かった。Grade3以上の免疫関連有害事象は、ivonescimab群で10例(6.2%)、プラセボ群で4例(2.5%)に、Grade3以上のVEGF関連の有害事象は、それぞれ5例(3.1%)および4例(2.5%)に認めた。 著者は、「ivonescimab+化学療法は、TKI抵抗性の患者における新たな治療選択肢となる可能性がある」とし、「VEGF阻害薬ベバシズマブはNSCLC患者における脳転移の進行を遅延または予防する可能性があることから、本試験の脳転移患者におけるPFSの改善は、二重特異性抗体ivonescimabによるVEGFの阻害または抗PD-1/VEGFの複合的な効果に起因する可能性がある」と指摘している。 現在、NSCLCの治療においてivonescimab単剤と併用療法を比較する複数の第III相試験が進行中だという。

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糖尿病合併症リスクは男性の方が高い

 男性の糖尿病患者は女性患者よりも合併症のリスクが高いことを示すデータが報告された。研究者らは、男性が女性に比べて自分自身を大切にしないことが一因ではないかと推測している。シドニー大学(オーストラリア)のAlice Gibson氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Epidemiology & Community Health」に5月16日掲載された。 糖尿病の有病率自体には男性と女性とで顕著な差はないが、合併症の罹患率は性別によって異なる可能性があり、特に心血管疾患(CVD)については男性の方がハイリスクであることが知られている。ただし、細小血管合併症のリスク差に関するエビデンスは多くない。Gibson氏らは、オーストラリアの45歳以上の地域住民を対象にした前向きコホート研究のデータを用いて、この点を検討した。 この研究では、参加登録時点で糖尿病を有していた45歳以上の成人2万5,713人(男性57%)を17万7,851人年追跡。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、BMI、野菜・果物の摂取量、喫煙・運動習慣、教育歴、保険の種類、糖尿病の家族歴、心血管疾患の既往歴、高血圧・高コレステロール血症の治療歴など)を調整したCox比例ハザードモデルにより合併症のリスクを解析した。その結果、以下のような性差が観察された。 CVDの罹患率は男性が1,000人年当たり43、女性が30で、女性に対する男性のハザード比(HR)は1.51(95%信頼区間1.43~1.59)、腎臓の合併症の罹患率は男性36、女性26でHR1.55(同1.47~1.64)、下肢の合併症は男性25、女性18でHR1.47(1.38~1.57)であり、いずれも男性が有意にハイリスクだった。 一方、眼の合併症に関しては罹患率が男性52、女性53でありHR0.94(0.89~0.98)と、女性の方がハイリスクだった。ただしこれは主に、白内障手術の施行が男性患者で少ないことの影響によるものであって〔HR0.90(0.86~0.95)〕、糖尿病網膜症のリスクは男性の方が有意に高かった〔HR1.14(1.03~1.26)〕。なお、糖尿病罹病期間(10年未満か以上か)は、合併症リスクに性差があるという本研究の結果に、実質的な影響を及ぼしていなかった。 糖尿病合併症のリスクが性別により異なる一つの理由として研究者らは、「健康リスクを抑えるためにライフスタイルを変えたり、検査を受けたり、必要な薬剤の使用を遵守する割合が、男性は女性よりも低いことが関係しているのではないか」と推測している。ただし、合併症のリスクそのものは、女性だからといって低いものではないことも、本研究の結果は示している。著者らは、「糖尿病の合併症、特にCVDや腎臓、下肢の合併症のリスクは男性の方が高いが、そのリスク自体は男女ともに高いと言える」と結論付けた上で、「糖尿病罹病期間にかかわらず男性は合併症ハイリスクであるものの、性別を問わず、糖尿病診断直後からの合併症スクリーニングと予防のための治療戦略が必要とされる」と総括している。

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末期がん患者に対する全身療法は効果なし

 化学療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法は、がんが進行して終末期に近い状態になったがん患者の生存率を改善しないことが、新たな研究で明らかになった。米イエール大学がんセンターのMaureen Canavan氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に5月16日掲載された。Canavan氏は、「末期がん患者に治療を施しても生存率の改善は認められなかった。がん専門医はこの研究結果を患者に説明し、治療目標に関する話し合いを見直すべきだ」と述べている。 末期がん患者に対する全身性抗がん療法(SACT)は、入院率や集中治療室の利用率の増加、ホスピスへの移行の遅れ、生活の質(QOL)の悪化、医療費の増加と関連することが示されている。米国臨床腫瘍学会(ASCO)と全国品質フォーラム(NQF)は、このことを踏まえ、末期がん患者の終末期ケアを改善するために、「死亡前14日以内に化学療法を受けた患者の数」をNQF 021と呼ぶ指標として設定した。NQF 021の対象は、化学療法以外にも免疫療法や標的療法など全ての全身療法に拡大されつつある。 Canavan氏らは、電子健康記録のデータベースを用いて、死亡前14日以内に末期がん患者に実施されたSACTと患者の全生存期間(OS)との関連を検討した。対象患者は、2015年1月1日から2019年12月31日までの間に米国の280カ所のがんクリニックでステージIVのがん(乳がん、大腸がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、腎細胞がん、尿路上皮がん)の治療を受けた18歳以上の成人患者7万8,446人(平均年齢67.3歳、女性52.2%)であった。患者は、死亡前14日以内および30日以内のSACT実施率に基づき、がん種ごとに、実施率の最も低いQ1群から最も高いQ5群の5群に分類された。 対象患者の中で最も多かったのは非小細胞肺がん患者3万4,201人(43.6%)、次いで多かったのは大腸がん患者1万5,804人(20.1%)であった。解析の結果、がん種にかかわりなく、生存率についてQ1群とQ5群の間に統計学的に有意な差は認められないことが明らかになった。 Canavan氏はイエール大学のニュースリリースの中で、「われわれは、末期がん患者に対する腫瘍学的治療が生存率の改善と関連しているのか、あるいは治療継続は無駄であり、緩和ケアや支持療法に重点を移すべき時期があるのかを調べたかった」と述べている。 研究グループは、2022年に発表した研究で、末期がん患者に対する全身療法では、抗がん薬の使用が徐々に減少しつつある一方で免疫療法の使用が増加していることを報告していた。研究グループは、「SACTの実施状況は全体的には変わっておらず、死期が近い末期がん患者の約17%が、本研究で無駄な可能性が示唆された治療を今も受けている」と述べている。 研究グループは、「医師は、追加治療がいつ無駄になるのかを見極め、終末期近くのケアの目標について患者と話し合うことで、患者により良いサポートを提供することができる」と結論付けている。一方Canavan氏は、「この情報が、がん専門医が治療を継続するのか否か、あるいは転移を有する患者を支持療法に移行させるか否かを決める際に役立つことを願っている」と述べている。

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抹茶うがいが歯周病に有効か

 抹茶には、歯周病を抑える効果があるとする研究結果を、日本大学松戸歯学部と国立感染症研究所の研究グループが発表した。実験室での実験で、抹茶には歯周病の主な原因菌であるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の増殖を抑制する効果のあることが明らかになり、人間を対象にした臨床試験でも、抹茶でうがいをした人では、口腔内のP. gingivalisの数が介入前と比べて減少することが確認された。国立感染症研究所細菌第一部口腔細菌感染症室の中尾龍馬氏らによるこの研究結果は、「Microbiology Spectrum」に5月21日掲載された。 歯周病は、細菌感染により引き起こされる歯茎の炎症性疾患で、歯を失う主な原因であるほか、糖尿病、早産、心臓病、関節リウマチ、がんとも関連することが示されている。P. gingivalisは歯周病の主な原因菌で、歯の表面に歯垢などのバイオフィルムを形成して定住し、歯周ポケットの奥深くで増殖する。 緑茶は、細菌や菌類、ウイルスと闘う力を秘めている可能性があると考えられており、その有効性を検証するための研究がこれまでに複数、実施されている。中尾氏らは今回、3種類のP. gingivalis株を含む16種類の口腔内細菌に対する抹茶溶液の有効性をin vitroで検討した。 細菌を培養して抹茶溶液に曝露させたところ、2時間以内にほぼ全ての、4時間後には全てのP. gingivalisが死滅したことが確認され、抹茶にP. gingivalisに対する抗菌作用のあることが示唆された。 次に、歯周病と診断された45人を対象にランダム化比較試験を実施した。対象者は、1)麦茶のマウスウォッシュ、2)抹茶エキス含有のマウスウォッシュ、3)炎症治療作用のあるアズレンスルホン酸ナトリウム水和物を含むマウスウォッシュのいずれかで、1日2回のうがいを1カ月間行う群にランダムに割り付けられた。 対象者から介入の前後に採取した唾液検体を比較したところ、抹茶エキス含有のマウスウォッシュでうがいをした群では、口腔内のP. gingivalisの数が有意に減少していることが明らかになった。他の2群では、このようなP. gingivalisの減少は認められなかった。 研究グループは、「本研究は、お茶に由来する化合物に抗菌作用があることを示した初めての研究ではないものの、得られた結果は、歯周病治療において抹茶が有効である可能性を裏付けるものだ」と述べている。

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慢性腎臓病を伴う2型糖尿病に対するセマグルチドの腎保護作用 -FLOW研究から何を学ぶ-(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? GLP-1受容体作動薬は、LEADER/SUSTAIN-6/REWINDなど2型糖尿病の大規模研究において心血管主要アウトカムのリスク軽減が報告されている。一方、これらの研究で腎イベントは副次項目として設定されており、肯定論はあるものの正確な評価はされていない。今回のFLOW研究は、セマグルチドの効果を、腎疾患イベントを主要評価項目として評価した初の腎アウトカム研究である。FLOW試験のデザインと経緯 慢性腎疾患(CKD)を有する2型糖尿病の成人を対象として、腎臓を主要評価項目とした。標準治療の補助療法として追加したセマグルチド1.0mg週1回皮下注とプラセボを比較した、無作為割り付け、二重盲検、並行群間、プラセボ対照試験のデザイン。両群のベースラインeGFRは、47mL/min/1.73m2である。複合主要評価項目は、eGFRのベースラインから持続的50%以上の低下、持続的なeGFR 15mL/min/1.73m2未満の発現、腎代替療法(透析または腎移植)の開始、腎死、心血管死、の5項目。本計画書では、事前に規定した数の主要評価項目イベントが発生した時点で中間解析を行うこととした。試験は2019年に開始、28ヵ国、387の治験実施施設で3,533人が組み入れられた。そして、経過中セマグルチドの腎アウトカムの改善効果が明確になったため、2023年10月独立データモニタリング委員会の勧告に基づき試験の早期終了が決定された。FLOW試験の主たる結果 早期終了勧告の際の中間観察期間は3.4年。主要評価項目において、セマグルチド群でのリスク低下は24%(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.66~0.88、p=0.0003)であった。この結果は、主要評価項目の中で腎に特異的な複合項目(HR:0.79、95%CI:0.66~0.94)と心血管死(HR:0.71、95%CI:0.56~0.89)においても同様であった。サブグループ解析において、セマグルチド群のHRが低い要因として、欧州地域、UACRが多い、BMIが大、糖尿病歴が長い、などが挙げられた。以上、本試験から「CKDを有する2型糖尿病患者においてセマグルチドは腎アウトカムを改善し、心血管死を抑制する」、と結論された。GLP-1受容体作動薬による腎保護の想定機序 FLOW試験は、GLP-1受容体作動薬の腎保護の作用機序を議論する研究ではない。しかし、この点は万人にとって興味の的である。GLP-1受容体作動薬には食欲抑制作用がある。その機序には、胃排出遅延作用と中枢における食欲抑制が知られている。食欲抑制は、糖負荷とNa負荷を軽減し、糖代謝や高血圧などを改善し、腎保護に寄与する。さらに腎保護作用のメカニズムには、Na利尿作用、抗酸化作用、抗炎症作用、血管拡張作用など複合的に想定される。腎臓におけるGLP-1受容体は、糸球体、近位尿細管、輸入細動脈、緻密斑(MD)などに分布する。GLP-1受容体作動薬は、近位尿細管でNHE3やNHE3-DPP4複合体の活性化を抑制しNa利尿を亢進させる。GLP-1受容体作動薬が、MDへのNa流入増加から、尿細管・糸球体フィードバック(TGF)を介して糸球体内圧低下を惹起するか否かに関しては、一定の見解は得られていない。本論文の日本での意義付けと注意点 FLOW研究の成果は、糖尿病や腎臓病専門医の日常診療にとってもインパクトは高い。日本糖尿病学会の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」において、ステップ1でGLP-1受容体作動薬が、ステップ3でCKD合併2型糖尿病ではSGLT2阻害薬と共に選択薬剤として推奨されている。また、ADA/KDIGOにおける糖尿病性腎臓病(DKD)に対する腎保護管理2022の推奨においても、GLP-1受容体作動薬はリスクに応じた追加治療としてARB/ACE阻害薬、SGLT2阻害薬、MRAと共に推奨されている(Kidney Int. 2022;102:S1-S54.)。一方、本論文を直接日本人に外挿できるか、には注意が必要である。FLOW研究は、アジア人が20%と少なく、さらにHRが低下した患者層は、BMI>30でUACR≧300であった。このことは、同剤は肥満度が高い顕性蛋白尿を有するDKDで効果が高い可能性を示唆する。さらに、本試験で使用されたセマグルチドは、注射製剤(オゼンピック)であることも注意すべきである。現在、本邦では経口セマグルチド(リベルサス)も使用可能であるが、両者は薬物動態学/薬力学の面で同一ではない。したがって、注射製剤セマグルチドで得られたFLOW試験の腎保護効果を、経口セマグルチドには直接外挿はできない。心血管イベント抑制や腎アウトカム改善を目標とするなら、経口薬ではなく注射薬を選択すべきであろう。慢性腎臓病を伴う2型糖尿病における腎保護療法の未来展望 近年、心不全治療ではファンタスティックフォー(fantastic four:ARNI、SGLT2阻害薬、β遮断薬、MRA)なる4剤の組み合わせが注目され、臨床現場で実践されている。これに追随しDiabetic Kidney Disease(DKD)治療において推奨される4種類の腎保護薬(RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型・MRA[フィネレノン]、GLP-1受容体作動薬)の組み合わせを、新たに腎臓病ファンタスティックフォー(The DKD fantastic four)とする治療アルゴリズムが一部に提唱されている(Mima A. Adv Ther. 2022;39:3488-3500.)。また、腎臓の酸素化や炎症を評価する試験(TREASURE-CKD[NCT05536804]、REMODEL[NCT04865770])が進行中であり、GLP-1受容体作動薬の作用機序の一部が解明される期待がある。今後、「GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など早期から使用することにより、さらなる腎予後改善が望めるかもしれない」、との治療上の作業仮説も注目されつつある。この観点に立ち、将来的にはGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は、糖尿病性腎臓病の早期から開始する「Foundational drug:基礎薬」となり得るのではとの意見もある(Mark PB, et al. Lancet. 2022.400;1745-1747.)。

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