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重度のBPSDに対する抗精神病薬の投与量の軌跡

 抗精神病薬は、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対し、適応外で使用されることが多いが、これら薬剤の重要な副作用は懸念となる。杏林大学の多田 照生氏らは、重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の長期使用状況、時間の経過とともに使用状況がどのように変化するかを調査した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2024年6月25日号の報告。 2012年10月〜2021年9月の山梨県・日下部記念病院のカルテデータをレトロスペクティブにレビューした。この研究では、認知症診断後、BPSDのために入院し、入院3ヵ月時点で抗精神病薬を使用していた患者を対象とした。抗精神病薬の投与量は、クロルプロマジン等価換算に基づき高用量群(300mg/日以上)、中用量群(100〜300mg/日)、低用量群(100mg/日未満)に分類し、入院15ヵ月までフォローアップを行った。3〜6ヵ月目における投与量の減量と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は188例、平均年齢は81.2歳、アルツハイマー型認知症の割合は67%であった。・3ヵ月時点での抗精神病薬の投与量は、高用量群15.4%、中用量群44.1%、低用量群40.4%であった。・平均投与量は3ヵ月目で最高に達し、その後は時間の経過とともに減少していた。・12ヵ月目までにすべての群において、20〜30%の患者は、抗精神病薬の使用が中止されていた。・投与量減少に対する重要な因子は、最初の投与量が高い(オッズ比[OR]:1.003、95%信頼区間[CI]:1.001〜1.006、p=0.01)、男性(OR:2.481、95%CI:1.251〜4.918、p=0.009)であった。 著者らは「重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の投与量の軌跡は、これまで報告されていなかった。今回の研究により、脆弱な患者群に対する長期薬物療法のマネジメントにおいて、個別化した治療戦略の必要性が明らかとなった」としている。

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両側乳房切除と乳がん死亡率/JAMA Oncol

 片側乳がん患者に対する両側乳房切除の乳がん死亡率におけるベネフィットは示されていない。今回、カナダ・Women's College HospitalのVasily Giannakeas氏らによるコホート研究において、両側乳房切除で対側乳がんリスクは有意に低下したが乳がん死亡率は低下しなかったことが報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2024年7月25日号に掲載。 このコホート研究では、SEERプログラムの登録データベースから、2000~19年に診断されたStage0~III片側乳がん(浸潤性乳がんおよび非浸潤性乳がん)の女性を同定し、手術の種類(乳房部分切除、片側乳房切除、両側乳房切除)によりマッチングを行い、対側乳がんおよび乳がん死亡率を20年間追跡した。 主な結果は以下のとおり。・研究サンプルは、片側乳がん女性66万1,270例(平均年齢:58.7歳)で、マッチング後、3つの治療群はそれぞれ3万6,028例であった。・20年間の追跡期間中、対側乳がんが認められたのは乳房部分切除群で766例、片側乳房切除群で728例、両側乳房切除群で97例だった。20年対側乳がんリスクは、乳房部分切除群・片側乳房切除群で6.9%(95%信頼区間[CI]:6.1~7.9)であった。・累積乳がん死亡率は、対側乳がん発症後15年で32.1%、対側乳がんを発症しなかった患者では14.5%であった(ハザード比:4.00、95%CI:3.52~4.54)。・乳がん死亡は、乳房部分切除群で3,077例(8.54%)、片側乳房切除群で3,269例(9.07%)、両側乳房切除群で3,062例(8.50%)であった。 この研究は、対側乳がんを発症すると乳がん死亡リスクが大幅に増加することを示している。一方、両側乳房切除を受けた患者は対側乳がんのリスクが大幅に減少したが、乳房部分切除または片側乳房切除を受けた患者と乳がん死亡率が同程度だった。

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熱中症診療ガイドラインの分類に最重症群「IV度」を追加

 7月25日、日本救急医学会の熱中症および低体温症に関する委員会が『熱中症診療ガイドライン2024』を公表した。本ガイドラインの改訂は10年ぶり。熱中症診療ガイドライン2024では熱中症の診療と予防の全般をカバーし、定義・重症度・診断、予防・リスク、冷却法、冷却法以外の治療(補液、DIC治療薬)、小児関連の5分野より24個のClinical Question(CQ)が設定されている。熱中症診療ガイドラインの重症度分類、最重症群がIII度からIV度へ これまで熱中症診療ガイドライン2015年版でIII度としてきた重症群の分類の中にさらに注意を要する最重症群が含まれていたが、改訂版である熱中症診療ガイドライン2024年版ではこの最重症群を「IV度」と同定し、Active Coolingを含めた集学的治療を早急に開始するよう提唱している。これにより、IV度は膀胱温や直腸温などの深部体温を用いて「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」*と定義し、Bouchama基準の重症が2024年版の分類でIV度に該当することになる。熱中症診療ガイドライン2024でのIII度の分類は「IV度に該当しないIII度(2015)」となった。 さらに、IV度の可能性がある患者を現場や搬送中、あるいは来院直後に把握する基準としてqIV度(quick IV度)「表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)**【深部体温の測定不要】」を設け、併せて提唱している。もし、表面体温にてqIV度と考えた場合は、深部体温測定を行い、速やかに重症度を判断する。深部体温が40.0℃以上でIV度と判断された場合には、早急にActive Coolingを含めた集学的治療を実施する。*Glasgow Coma Scale  **Japan Coma Scale熱中症診療ガイドライン2024では用語統一にも注意 熱中症診療ガイドライン2024ではActive Coolingについて、何らかの方法で熱中症患者の身体を冷却することと定義し、熱中症診療ガイドライン2015にて「体温管理」「体内冷却」「体外冷却」「血管内冷却」「従来の冷却法(氷嚢、蒸散冷却、水式ブランケット)」「ゲルパッド法」「ラップ法」などと記載していた方法をActive Coolingとして包括的な記載に統一されている。ただし、2015版で記載されていた「冷所での安静」はPassive Cooling(冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することや、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩すること)とし、これに該当するものはActive Coolingに含まない(CQ3-01、CQ3-02、BQ4-01、CQ4-02、FRQ4-03、CQ5-02)。また、Active Coolingと“集中治療、呼吸管理、循環管理、DIC治療”はActive Coolingを含めた集学的治療と表現される。なお、冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することは、薬剤メーカーが推奨する投与方法ではなく、重症熱中症患者への有効性を示すエビデンスはないと示している(p.5)。熱中症診療ガイドライン2024の分類における診断基準と治療方法 熱中症診療ガイドライン2024での熱中症の診断基準は「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、以下のように分類され、推奨される治療方法が記載されている(p.7、実際はアルゴリズムとして明記)。I度 めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)があるも意識障害を認めないもの。通常は現場で対応可能と判断する。Passive Coolingを行い、不十分であればActive Cooling、経口的に水分と電解質の補給を行う。II度 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS1)を認める。医療機関での診察を必要とし、Passive Cooling、不十分ならActive Cooling、十分な水分と電解質の補給(経口摂取が困難なときは点滴)を行う。III度 (1)中枢神経症状(意識障害JCS2、小脳症状、痙攣発作)、(2)肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)、(3)血液凝固異常(急性DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)の3つのうちいずれかを含む場合、入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する。IV度 深部体温40.0℃以上かつGCS≦8の場合、Active Coolingを含めた集学的治療を行う。 重症例(III~IV度)の治療法としては、Active Coolingを含めた集学的治療を行うことを推奨しているが、Active Cooling の中の個別の冷却方法を推奨はしない。一方、軽症例(I~II度)は、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩するPassive Coolingと水分・電解質の補給で症状が軽快しうるが、改善に乏しい場合は、深部体温を測定したうえで、Active Coolingを行うべきである、と記されている。 検討課題として、経口補水液、DIC治療薬、暑熱順化については十分な研究成果が得られていない点も記されている(p.5)。熱中症の疫学的特徴 厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、熱中症の死亡者数は毎年1,000例を超え、全国の熱中症搬送者数は9万1,467例に上る。年齢区分別では、高齢者(満65歳以上)が最も多く、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)、少年(満7歳以上満18歳未満)、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)の順となっており、発生場所は住居が最も多く、次いで道路、公衆(屋外)、仕事場(道路工事現場、工場、作業所など)の順となっている。他方で、全国の救命救急センターの入院症例を対象とした日本救急医学会の熱中症の調査Heatstroke STUDY(HsS)2020-21では、65歳以上が60%強、男性が70%弱、屋外発生が50%(日常生活が60%、労働が30%、スポーツが10%)、マスク着用は少数(不明例が多数)であった。  最後に同委員会担当理事の横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 教授)ならびに委員長の神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター)らは、「HsSによると、IV度におけるActive Cooling実施率は90%以上であるにもかかわらず、院内死亡率が20%以上と重篤な状況にある。さらにIV度の可能性が高いqIV度のなかでも、深部体温の不明・未測定例が25%に上り、その不明・未測定例でのActive Coolingの実施状況は60%程度で、院内死亡率は37.0%であった。この状況を踏まえ、最重症であるIV度の熱中症が重篤である点、重症化が懸念されるqIV度での深部体温測定とActive Coolingの徹底が重要」としている。

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シス女性のHIV曝露前予防、レナカパビル年2回投与が有効/NEJM

 レナカパビル年2回皮下投与によりHIV感染の発生は認められず、バックグラウンドおよびエムトリシタビン/テノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(F/TDF)と比較してHIV感染の発生率を100%低下させることが、南アフリカ・ケープタウン大学のLinda-Gail Bekker氏らPURPOSE 1 Study Teamによる第III相無作為化二重盲検実薬対照比較試験「PURPOSE 1試験」において示された。シスジェンダー女性におけるHIV曝露前予防は、予防薬の服薬、服薬アドヒアランスおよび服薬継続に限界があり、新たな選択肢の開発が望まれていた。NEJM誌オンライン版2024年7月24日号掲載の報告。16~25歳のシス女性5,368例をレナカパビル群、F/TAF群、F/TDF群に無作為化 PURPOSE 1試験は、最近の試験で曝露前予防(PrEP)を受けていない思春期および若年女性のHIV罹患率が100人年当たり3.5以上である南アフリカおよびウガンダで実施された。 研究グループは、PrEPを用いておらず、HIV感染状況が不明で過去3ヵ月以内にHIV検査を受けていない16~25歳のシスジェンダー女性をスクリーニングし、中央検査にてHIV陰性が確認された女性を、レナカパビル群(927mgを26週間ごとに2回皮下投与、プラセボ経口投与)、F/TAF群(エムトリシタビン200mgとテノホビル・アラフェナミド25mgを1日1回経口投与、プラセボ皮下投与)、F/TDF群(エムトリシタビン200mgとTDF 300mgを1日1回経口投与、プラセボ皮下投与)に、2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、HIV感染の発生であった。有効性の主要解析は、スクリーニングでHIV陽性が確認された女性集団に基づくHIV感染発生率をバックグラウンドHIV感染発生率として、レナカパビル群およびF/TAF群のHIV感染発生率と比較した。また、有効性の副次解析として、レナカパビル群およびF/TAF群のHIV感染発生率をF/TDF群と比較した。 2021年8月30日~2023年8月31日に、8,402例がスクリーニングを受け、中央検査を実施した8,094例中504例(6.2%)がHIV感染と診断され、うち92例(18.3%)が最近の感染であった。8,094例におけるバックグラウンドHIV感染発生率は、100人年当たり2.41(95%信頼区間[CI]:1.82~3.19)であった。 8,094例のうちHIV陰性で適格基準を満たした5,368例が無作為化された。このうち試験薬が少なくとも1回投与され、無作為化日にHIV感染が判明した症例を除く5,338例が有効性の解析対象となった(レナカパビル群2,134例、F/TAF群2,136例、F/TDF群1,068例)。レナカパビル群でHIV感染の発生はゼロ、F/TDF群よりHIV予防効果が有意に高い 解析対象5,338例のうち、55例のHIV感染の発生が観察された。レナカパビル群は0例(発生率:0/100人年、95%CI:0.00~0.19)、F/TAF群は39例(2.02/100人年、1.44~2.76)、F/TDF群は16例(1.69/100人年、0.96~2.74)であった。 レナカパビル群のHIV感染発生率は、バックグラウンド(発生率比:0.00、95%CI:0.00~0.04、p<0.001)およびF/TDF群(0.00、0.00~0.10、p<0.001)と比較して100%減少した。 F/TAF群のHIV感染発生率は、バックグラウンドと有意差はなく(発生率比:0.84、95%CI:0.55~1.28、p=0.21)、F/TDF群との間でHIV感染発生率に意味のある差は確認されなかった(発生率比:1.20、95%CI:0.67~2.14)。F/TAFとF/TDFの服薬アドヒアランスは低かった。 安全性に関する懸念は認められなかった。注射部位反応はレナカパビル群(68.8%)でF/TAF群およびF/TDF群のプラセボ投与(併合で34.9%)より多く発現した。レナカパビル群では4例(0.2%)が注射部位反応により投与を中止した。

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院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/BMJ

 非外傷性院外心停止成人患者において、骨髄路確保は静脈路確保と比較して、生存退院、病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開、良好な神経学的アウトカムのいずれについても差はなかった。台湾・国立台湾大学病院のYing-Chih Ko氏らが、クラスター無作為化比較試験「Venous Injection Compared To intraOsseous injection during Resuscitation of patients with out-of-hospital cardiac arrest trial:VICTOR試験」の結果を報告した。蘇生に関するガイドラインでは、院外心停止時の薬物投与には静脈路を優先し、静脈路が確保できない場合は骨髄路を使用することが推奨されているが、これまでの後ろ向き研究には限界があった。著者は、今回の前向き試験の結果に基づき、「骨髄路確保は、静脈路確保の代替ではなく第1選択として考慮しうるもので、患者や救急医療システムのさまざまな特徴に基づいた血管アクセスの最適な意思決定プロセスを検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2024年7月23日号掲載の報告。4つの高度救命救急チームを隔週で骨髄路群または静脈路群に無作為化 VICTOR試験は、2020年7月6日~2023年6月30日に、台北市消防局に所属する4つの高度救命救急チームが参加し、台北市内のすべての救急責任病院で実施された(2021年5月20日~2021年7月31日はCOVID-19流行のため一時中断)。 研究グループは、非外傷性院外心停止成人患者(20~80歳)を対象とし、4つの高度救命救急チームをそれぞれ2週ごとに骨髄路群または静脈路群に割り付け(クラスター比率は1対2)、骨髄路群の患者には機械的骨髄内穿刺、静脈路群の患者には上肢の静脈内穿刺が行われた。両群とも血管アクセスが確保された後、アドレナリン(エピネフリン)1mg、続いて生理食塩水10mLを急速注入した。 主要アウトカムは生存退院、副次アウトカムは病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開(2時間以上)、退院時の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリースコア≦2の生存)などであった。骨髄路群と静脈路群で、生存退院、病院到着前自己心拍再開などに有意差なし 適格基準を満たした1,771例が登録され、主要アウトカムのデータが得られた1,732例(骨髄路群741例、静脈路群991例)が解析対象となった。患者は、年齢中央値65.0歳、男性1,234例(71.2%)であった。 生存退院は、骨髄路群では79例(10.7%)であったのに対し、静脈路群では102例(10.3%)であった(オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.76~1.42、p=0.81)。 副次アウトカムについても、病院到着前自己心拍再開(OR:1.23、95%CI:0.89~1.69、p=0.21)、持続的自己心拍再開(0.92、0.75~1.13、p=0.44)、良好な神経学的アウトカム(1.17、0.82~1.66、p=0.39)のいずれも、両群間に有意差は認められなかった。

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強い骨の形成を促す新しいホルモンを発見

 骨粗鬆症と闘い、骨折を早く治すのに役立つ可能性を秘めたホルモンが、マウスを用いた実験で発見された。それは、CCN3(cellular communication network factor 3)と呼ばれるホルモンで、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度の維持に役立っていることから「母体脳ホルモン(maternal brain hormone)」とも呼ばれている。実験では、CCN3が、年齢や性別にかかわりなく全てのマウスの骨を強化することが確認された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のHolly Ingraham氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に7月10日掲載された。 骨粗鬆症患者の数は世界で2億人に上る。女性では、特に閉経後に骨の形成を促す女性ホルモンであるエストロゲンレベルが低下するため、骨粗鬆症リスクが上昇する。エストロゲンは授乳中にも低下するが、この時期に骨粗鬆症や骨折が生じることはまれである。このことから、授乳期にはエストロゲン以外の何かが骨の形成を促していると考えられている。 Ingraham氏らは過去の研究で、雌マウスの脳の狭い領域にある特定のニューロンのエストロゲン受容体を遮断することで、骨量が増加することを確認していた。このことから研究グループは、血液中のホルモンが骨の増強に役立っている可能性を考えていたが、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響を受けて、研究は中断されていた。 今回の研究では、特定の遺伝子操作により意図的に遺伝子を変異させた雌マウスを用いて、骨の形成を促すこのホルモンを突き止めるために徹底的な調査が行われた。その結果、CCN3が特定された。CCN3は、ニューロンから分泌されるホルモンの典型的な特徴が該当しないため、Ingraham氏らはこの結果に驚いたと話す。 しかし、この疑問は、授乳中の雌マウスの同じ脳領域でCCN3が発見されたことにより解消されたという。これらの特定のニューロンでCCN3が生成されなければ、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度が急速に低下し、子マウスの体重も減り始めることが確認されたからだ。これは、CCN3が授乳中の母マウスの骨の健康維持に重要な役割を果たしていることを意味する。 さらに、若年成体や高齢の雌雄のマウスを対象に、体内を循環するCCN3の量を増加させたところ、数週間のうちに骨量と骨の強度が劇的に増加することが確認された。また、CCN3を2週間かけてゆっくりと放出するハイドロゲルパッチを作成して、高齢マウスの骨折部位に貼り付けた。その結果、骨の形成が促進され、高齢マウスで通常見られるよりも早いプロセスで治癒することも示された。 論文の責任著者の1人である米カリフォルニア大学デイビス校のThomas Ambrosi氏は、「これまで、このような骨の石灰化と治癒を達成した方法は他になかった」と述べ、「われわれは今後も、このホルモンについての研究を進めること、また、軟骨再生など他の問題に応用する可能性を探ることを心から楽しみにしている」と述べている。

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睡眠時間が乱れている人は糖尿病リスクが高い

 睡眠時間が日によって長かったり短かったりすることが、糖尿病発症リスクの高さと関連があることを示すデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に7月17日掲載された。論文の筆頭著者であるKianersi氏は、「われわれの研究結果は、2型糖尿病予防のために、睡眠パターンの一貫性を保つことの重要性を表している」と述べている。 この研究には、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。UKバイオバンク参加者のうち、2013~2015年に加速度計の計測データがあり睡眠時間を把握可能で、その時点で糖尿病でなかった8万4,421人(平均年齢62歳、男性43%、白人97%)を2022年5月まで追跡して、睡眠時間の乱れと糖尿病発症リスクとの関連を検討した。睡眠時間の乱れは、7晩連続で計測した睡眠時間の標準偏差(SD)で評価した。 7.5年間(62万2,080人年)の追跡で2,058人が糖尿病を発症。年齢、性別、人種を調整後、睡眠時間のSDが30分以下の群と比較して、SDが31~45分の群の糖尿病発症ハザード比(HR)は1.15(95%信頼区間0.99~1.33)と非有意だった。しかし、SDが46~60分の群ではHR1.28(同1.10~1.48)、61~90分ではHR1.54(1.32~1.80)、91分以上ではHR1.59(1.33~1.90)と有意にハイリスクであり、睡眠時間のSDが大きいほど糖尿病発症リスクが高いという関連が認められた(傾向性P<0.0001)。 SDが60分以下/超の2群間での比較では、後者の方が34%ハイリスクだった(HR1.34〔1.22~1.47〕)。調整因子として、生活習慣、併存疾患、肥満などを追加すると関連性は弱まったが、60分以下/超の2群間での比較では引き続き有意な差が観察された(HR1.11〔1.01~1.22〕)。 糖尿病の多遺伝子リスクスコアの高低で層別化した解析では、遺伝的背景が弱い人ほど睡眠時間の乱れの影響が強く現れていた(交互作用P=0.0221)。また、睡眠時間で層別化した解析では、睡眠時間が長い人ほど睡眠時間の乱れの影響が強く現れていた(交互作用P<0.0001)。 なぜ、睡眠時間の乱れが糖尿病発症リスクにつながるのだろうか? 今回の研究からはその答えに迫ることはできないが、研究グループでは、「概日リズム(1日24時間周期の生理活動)の乱れや睡眠障害が関与しているのではないか」と述べている。 なお、本研究の限界点として、生活習慣に関する情報は加速度計で睡眠時間の乱れを把握したのと同じ時期ではなく、それよりも5年ほど前に収集されていたこと、および、7日間という評価期間が睡眠時間の日常的な乱れを把握するには短すぎる可能性のあることなどが、ジャーナル発のリリースに記されている。

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肺の空洞性病変の鑑別診断(2)[感染症編]【1分間で学べる感染症】第8回

画像を拡大するTake home message肺の空洞性病変の感染症の鑑別診断は多岐にわたる。抗酸菌:結核、非結核性抗酸菌(M. avium、M. kansasiii、M. abscessusなど)細菌:黄色ブドウ球菌、緑色連鎖球菌、ノカルジア、放線菌、クレブシエラ、緑膿菌、Stenotrophomonas、口腔内の嫌気性菌、Legionella non-pneumophila真菌:アスペルギルス、ムーコル、クリプトコッカス寄生虫:エキノコックス、肺吸虫など今回のテーマは、肺の空洞性病変の鑑別診断「感染症編」です。肺の空洞性病変の総論については、前回「CAVITY」で学習しました。今回はその中でも感染症の鑑別診断について深く学習していくことにします。肺の空洞性病変を見たら、まずは肺結核を否定することが何より重要です。しかし、それ以外にも、あらゆる微生物が肺の空洞性病変を呈することが知られています。肺結核以外にも、非定型抗酸菌、具体的にはM.aviumやM. kansasiii、M. abscessusなどが有名です。細菌では、黄色ブドウ球菌、緑色連鎖球菌などのグラム陽性球菌、ノカルジアや放線菌などのグラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌ではクレブシエラ、とくに免疫不全者では緑膿菌、Stenotrophomonasなどを鑑別に入れる必要があります。また口腔内の嫌気性菌やレジオネラのnon pneumophilaのタイプが原因となることもあります。真菌では、とくに好中球減少者においてアスペルギルスやムーコル症、またHIVやがんで細胞性免疫が低下している患者ではクリプトコッカスが問題になることがあります。寄生虫では、まれですがエキノコックスや東南アジアからの帰国者では肺吸虫などがあります。肺の空洞性病変を見た際には、疫学的なリスクを考慮しながら結核だけではなく、これらの幅広い病原微生物を考慮することが重要です。1)Harding MC, et al. Fed Pract. 2021;38:465-467.2)Parkar AP, et al. J Belg Soc Radiol. 2016;100:100.

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遺伝性乳卵巣(HBOC)診療ガイドライン 2024年版 第3版

エビデンスをアップデート! 最新HBOC診療指針!多診療科・多職種・当事者がガイドライン作成に加わることで多くの意見を収集し、一人ひとりが納得のいく選択を行えるよう推奨決定に至るまでの議論をわかりやすく記載。総論・遺伝領域では多遺伝子パネル検査(MGPT)のさらなる普及を踏まえBRCA遺伝子に限定せず解説。乳がん・卵巣がん領域では領域をまたがるクエスチョン(RRSO、ART等)を統合し推奨を明瞭化。前立腺がん・膵がん・皮膚がんにおいても最新エビデンスを反映した。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する遺伝性乳卵巣(HBOC)診療ガイドライン 2024年版 第3版定価4,180円(税込)判型B5判頁数344頁発行2024年7月編集日本遺伝性乳卵巣総合診療制度機構ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第223回 厚労省ヘルスケアスタートアップPT報告書を読む(後編) あの一般向けがんリスク判定会社もターゲットか?消費者向けの各種検査サービス、医師法に照らし合わせて総点検へ

ヘルスケアスタートアップの振興・支援に向けて25の提言こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この日曜は、凝りもせずに全国高等学校野球選手権大会の埼玉県大会決勝の花咲徳栄対昌平戦の観戦に、県営大宮公園球場まで行って来ました。同行した野球仲間の1人は早稲田実業の出身ですが、同じ日曜に行われた西東京大会決勝、日大三高対早稲田実業の試合観戦を蹴ってまで、わざわざ暑い埼玉までやって来ました。試合は花咲徳栄が勝ったのですが、10回タイブレークでの決着でした。近年力を付けて来た昌平は、10回表の拙いバント処理さえなければ初甲子園だったかもしれません。日々の基礎練習の大切さを再認識した次第です。さて、今回も前回に続き、6月27日に厚生労働省の「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討に関するプロジェクトチーム(PT)」が公表した最終報告書を取り上げます。2024年2月に厚労省が立ち上げた同PTは、海外と比べてヘルスケア分野のスタートアップ企業がなかなか出てこない日本の現状を打破すべく、その振興・支援策などについて多面的に検討してきました。同PTは最終報告書として、(1)総論、(2)バイオ・再生、(3)医療機器・SaMD、(4)医療DX・AI、(5)介護テックの領域別に合計25の提言を盛り込んだ「ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー -健康・医療・介護の未来を拓く起業大国へ-」を公表1)しました。前回は2024年診療報酬改定で往診の報酬が大幅に減額されたことで、夜間や休日の往診サービスを手掛ける医療スタートアップの事業の撤退・縮小が相次いでいる現状を伝えるとともに、診療報酬や介護報酬に大きく依存するビジネスモデルを採るスタートアップの経営の難しさを指摘、25の提言の中の「提言3)ヘルスケアスタートアップ関係者からの診療報酬改定等の要望を受け付け、検討を行う新たな一元窓口を設置する」の内容について紹介しました。今回は、25の提言の中で私がとくに気になった「提言10)非臨床の消費者向け検査サービスに関する法規制の明確化を図る」について書いてみたいと思います。「医療機関では基本実施されず、医療には当たらない(非臨床)とされる消費者向け(Direct to Consumer:DTC)の検査サービスについて、法規制の明確化を図る」というのがその内容です。この提言によって、これまでほぼほぼ“野放し”状態だった消費者向け検査サービス対する規制が強まると見られます。いくつかのスタートアップや関連企業は戦々恐々としているのではないでしょうか。管轄する省庁、法律上の位置づけが不明確なため「リスク判定」という名目の曖昧な検査が“野放し”「非臨床の消費者向け検査サービス」とはどんなものでしょうか。具体的には、本連載の「第88回 がんが大変だ! 検診控え依然続き、話題の線虫検査にも疑念報道(前編)」、「第89回 同(後編)」などでも繰り返し書いてきた、民間企業が検体(血液、尿、唾液など)を基に病気のリスクなどを判定する検査サービスを指します。第88回で詳しく書いたように、臨床検査には、「分析学的妥当性」「臨床的妥当性」「臨床的有用性」の3つの評価基準を満たしているというデータを、きちんとしたプロトコールによって行った臨床試験等で出す必要があります。それがクリアしていれば、保険診療での使用が認められますし、海外で導入されることもあります。しかし、こうした「病気(がんなど)のリスクを判定する」と喧伝する一般向け検査(広告などで知名度の高い「N-NOSE」のほか、「アミノインデックス」、「テロメアテスト」などがあります)の多くは、お金と時間が膨大にかかる臨床試験を敢えて避けて商品化し、日本だけで通用する一般向け検査でお茶を濁しているケースが少なくありません。そうした検査がはびこっている最大の理由は、管轄する省庁、法律上の位置付けが不明確なためです。その結果、「リスク判定」(あえて「診断」とは言わない)という名目の曖昧な検査が“野放し”になってきたわけです。今回のPTの最終報告書は「振興・支援策の提言」のはずなのに、この「提言10」は「規制ではないか」と言われそうです。しかし、これまで監督官庁も曖昧で規制する法律もなかったこの分野に明確なルールを設け、スタートアップ企業として健全な育成を図っていくというのがその狙いなので、振興・支援策だと言えなくもありません。検査サービスの品質や信憑性等についてガバナンスの仕組みの構築を求める声「提言10」の「問題の所在」の項では、「遺伝子検査、血液検査、尿検査等非臨床の消費者向け(DTC)の各種検査サービスが国内外で広がっている。2020年以降の国内市場は100億円規模と予想されており、ヘルスケアスタートアップにとっても魅力的な成長市場として期待されている」としつつ、「一般消費者の利用が拡大する中で検査サービスの品質や信憑性等についてガバナンスの仕組みの構築を求める声がある」と、その問題点を指摘しています。その上で、「米国及び欧州では非臨床の消費者向け検査サービスについてすでに具体的な法的規制が設けられているところ、日本ではこれら非臨床の消費者向け検査サービス特有の法規制は設けられておらず、結果として検査の信憑性に問題があったとしても、行政側による関与が難しい状況にあると指摘されている」として、今後、国が取り組む具体的対策を「提言」として記しています。医師法違反に該当する恐れがある事例等につき解釈を明確化その「提言」によれば、「医師法等を所管する立場から、厚生労働省において、医行為と非臨床の消費者向け検査サービスに係る法的な課題の検討を進め、非臨床の消費者向け検査サービスの外縁の明確化に取り組む」として、2024年度中に次の2つのアクションを起こすとしています。1)不適切な検査結果通知を適正化するため、「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」(平成26年厚生労働省・経済産業省連名通知)において示している「検査(測定)結果の事実や検査(測定)項目の一般的な基準値を通知することに留めなければならない」という医師法第17条の考え方に関して、関連Q&Aや事務連絡を発出するなどして、解釈の明確化を図る。2)消費者に通知される検査結果等が公知の科学的根拠に欠ける場合など、無資格者が独自の医学的判断を行っているものとして医師法違反に該当する恐れがある事例等につき解釈を明確化する。厚労省などが起こすアクションによっては事業構造の大幅な見直しが必要につまり、消費者向けの各種検査サービスについて、医師法を管轄する厚労省が主導権を取り、医師法違反という観点から法令違反の恐れがある事例をまとめ、事務連絡などで周知徹底する、としたのです。これまで消費者向けの各種検査サービスは、遺伝子検査については経済産業省が「DTC遺伝子検査ビジネス事業者に対するガイダンス」を策定し、業界は基本これに則った事業展開をしています。しかし、遺伝子検査以外の分野は規制する法律やガイドラインもないことから、エビデンスも不確かでいい加減な判定結果を消費者に報告するなど、まさにやりたい放題でした。そうした検査サービス会社はこの提言を踏まえ、厚労省などが起こすアクションによっては、事業構造の大幅な見直しが必要になってくるでしょう。超多忙な「厚労省は担当したくなかった」という声もところで、こうした方向性が打ち出されるまでには、結構な紆余曲折があったと聞いています。一部には「厚労省は担当したくなかった」という声も漏れ聞こえて来ます。マイナ保険証、「かかりつけ機能」の整備化、次期地域医療構想……等々、ただでさえ超多忙な中、またまた厄介な問題は引き受けたくない、というのが本音だったようです。現状では大きな“被害”は報告されておらず、当面は法律で規制することなく“野放し”のままでいい、と考えていた節もあります。そうした状況の中、「医師ではない者が独自の医学的判断をして、不適切な結果通知を行っているとすれば、医師法違反の恐れがある」として規制の必要性を強く訴えたのは国会議員筋だという情報もあります。いずれにせよ、医師法違反という観点から法令違反の恐れがある事例がまとめられ、検査の結果(リスク判定)を消費者にフィードバックする際の表現についてもガイドラインが設けられる可能性があります。また、検査の品質や信頼性についても、より客観的なデータや再現性が求められるようになるかもしれません。「線虫検査」の広告は、相変わらず一般メディアでよく見かけます。お金をかけた派手な広告を見れば見るほど、「最後の悪あがき」のように感じます。参考1)ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー/厚生労働省

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顔の表面温度、脂肪肝や生活習慣病のスクリーニングに有用か

 体温とは、細胞機能と生物の生存に影響を与える、つまり健康状態を知るための重要なパラメータであり、老化と寿命にとっても重要な要素である。そこで今回、中国・北京大学のZhengqing Yu氏らは顔の皮膚温を捉えた熱画像(以下、サーマル画像)を用い、老化と代謝疾患の定量的特徴を明らかにすることで、サーマル画像が老化と代謝状態の迅速スクリーニングに有用な可能性を示唆した。Cell Metabolism誌2024年7月2日号掲載の報告。 研究者らは、2020~22年の期間に21〜88歳の成人2,811人(女性:1,339人、男性:1,472人)の顔のサーマル画像を収集し、赤外線サーモグラフィによる顔のメッシュ認識および領域分割アルゴリズムを用いたThermoFaceを開発、自動処理・分析にて生物学的年齢を測定するなどして、サーマル顔画像年齢による疾患予測モデルを生成し、AgeDiff(予測年齢と実年齢の差)と代謝パラメータや睡眠時間との関連を検証した。 主な結果は以下のとおり・各年代のThermoFaceパターンを調べた結果、男女ともに鼻、頬、眉毛ゾーンの皮膚温が加齢とともに低下していた。ただし、女性は50代から、男性は60代から低下がみられた。・また、皮膚温と代謝疾患との関連について、糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患を有する人は健康な人に比べて目の周囲の皮膚温が高く、高血圧の人では頬の皮膚温が高かった。・ThermoFaceは、脂肪肝などの代謝疾患を高い精度(AUC>0.80)で予測し、予測された疾患確率は代謝パラメータと相関していた。・AgeDiffは、BMI、空腹時血糖値、アポリポ蛋白Bなどの代謝性疾患パラメータ、睡眠時間、血液検体のトランスクリプトーム解析によるDNA修復、脂肪分解、ATPaseなどの遺伝子発現経路との関連が高かった。・サーマル画像の皮膚温分布は老化や代謝状態を反映しており、迅速なスクリーニングへの有効性が示された。 研究者らは、「顔のサーマル画像分析が加齢や代謝疾患の迅速な評価に有用であることを示しており、ThermoFaceはデータ取得の速さと利便性、大規模コホートに基づく精度の高さから、健康的な加齢に関するモニタリングや評価ツールとして有用な可能性がある」としている。

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脳転移/髄膜がん腫症を伴うHER2+乳がんへのT-DXd、長期の有効性を評価(ROSET-BM)/日本乳学会

 脳転移や髄膜転移を有するHER2+乳がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の長期の有効性を検討したわが国のレトロスペクティブチャートレビュー研究であるROSET-BM試験において、前回の発表から追跡期間を1年延長したデータ(データカットオフ:2022月10月31日)を、北海道がんセンターの山本 貢氏が第32回日本乳学会学術総会で発表した。 本試験には2020年5月25日~2021年4月30日にT-DXd治療を開始した患者が登録された。評価項目は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、治療成功期間(TTF)で、さらにOSと関連する背景因子を探索するために、Cox比例ハザードモデルを用いて単変量解析および多変量解析を実施した。対象は20歳以上の脳転移または髄膜がん腫症(LMC)を有するHER2+乳がん患者で、臨床試験でT-DXd治療を受けた患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・国内62施設で適格基準を満たした104例を解析対象とした。前治療は、2レジメン以下が24%、3レジメン以上が76%、中央値は4レジメンであった。また、PSは2以上が約15%、脳転移は症候性が30.8%であった。・追跡期間中央値は20.4ヵ月(前回:11.2ヵ月)であった。・OS中央値は前回と同様に未達であった。1年OS率は74.8%(前回:74.9%)、2年OS率は56.0%(前回:NA)であった。サブグループ解析では、Analytical active脳転移群のOS中央値は27.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.4~NA)で、Analytical stable脳転移群およびLMC群のOSは中央値に達しなかった(2年OS率:Analytical stable 脳転移群71.6%、LMC群61.6%)。・PFS中央値は14.6ヵ月(前回:16.1ヵ月)、TTF中央値は9.3ヵ月(前回:9.7ヵ月)と若干減少した。・ILDによるT-DXdの中止は23.1%(前回:18.3%)と若干増加した。中止までの期間の中央値は5.3ヵ月(95%CI:4.0~8.8)であった。・多変量解析の結果、OSと有意に相関する背景因子はみつからなかった。 山本氏は「今回の更新データの解析から、前治療の多い脳転移や髄膜転移のあるHER2+乳がん患者に対するT-DXdの長期の有効性が証明された」と結論した。

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統合失調症患者の代謝パラメータに対する非定型抗精神病薬の影響

 3種類の非定型抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾール)のいずれかを服用している患者と健康対照者の空腹時血清アスプロシン濃度と代謝パラメータを比較するため、イラン・Hamadan University of Medical SciencesのKiumarth Amini氏らは、横断的研究を実施した。Human Psychopharmacology誌オンライン版2024年6月28日号の報告。 対象は、統合失調症成人外来患者62例および年齢、性別が一致した健康対照者22例。患者は、寛解状態にあり、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールのいずれかの非定型抗精神病薬による単剤治療を6ヵ月以上実施していた。BMI、空腹時血清アスプロシン、グルコース、HbA1c、インスリン、脂質プロファイルを両群間で比較した。さらに、インスリン抵抗性の基準を満たした人(HOMA-IR:2.5超)およびBMIレベルが高い人(男性:27kg/m2超、女性:25kg/m2超)について両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン群またはリスペリドン群は、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、BMI、空腹時血清グルコース、HbA1c、インスリン、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール、アスプロシンに統計学的に有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、健康対照者と同等の値を示したが、リスペリドン群またはオランザピン群は有意に高い値を示し、オランザピン群では、最も高値であった。・インスリン抵抗性および高BMIの有病率は、オランザピン群またはリスペリドン群において、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、高かった。・血清アスプロシン値は、BMI、HbA1c、空腹時インスリン、HOMA-IR、TGなどいくつかの代謝パラメータと有意な正の相関が認められた。・総コレステロールおよびLDLコレステロールに関しては、有意な差が認められなかった。 著者らは「オランザピンおよびリスペリドンで治療された患者では、アスプロシン値の上昇、体重増加、代謝障害との関連が認められた。血清アスプロシンレベルは、これらの代謝障害と双方向性の関連が示唆されており、潜在的な原因経路を解明するためにもさらなる研究が求められる」としている。

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80歳以上も健康的なライフスタイルでさらなる長寿に

 これまでの研究で、生活習慣因子が寿命や死亡率と関連していることが多数報告されているが、そのほとんどは中高年層(60歳以上)を対象としており、80歳以上を対象とした研究はほとんどない。中国上海市・復旦大学のYaqi Li氏らによる、中国の80歳以上を対象とした、健康的なライフスタイルと100歳以上まで生きる可能性を検討した研究結果がJAMA Network Open誌2024年6月20日号に掲載された。 研究者らは、1998年に設立された80歳以上を対象とした全国的かつ最大規模のデータベース・中国縦断健康長寿調査(Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey:CLHLS)を用いて、地域ベースの前向き対照研究を実施した。データは2022年12月1日~2024年4月15日に解析された。 5つの生活習慣(喫煙、飲酒、運動、食事の多様性、BMI)に基づく総合的な健康的生活習慣スコア100(HLS-100)を作成し、スコア(0~6)と100歳以上となる可能性、健康転帰が良好である可能性との関連をみた。主要アウトカムは2018年(追跡終了時)までに100歳以上となる人の生存率であった。多変量ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定、社会人口統計学的因子(居住地、教育年数、配偶者の有無)および自己報告による慢性疾患の既往(高血圧、糖尿病、心血管疾患、がん)で調整した。 主な結果は以下のとおり。・計5,222例(女性61.7%、平均年齢94.3[SD 3.3]歳)が組み入れられ、その内訳は100歳以上1,454例と、対照群3,768例(年齢・性別・組み入れ年でマッチ、100歳になる前に死亡)であった。・追跡中央値5年(四分位範囲[IQR]:3~7)のあいだに100歳以上になったのは、HLS-100が最も低い群(0~2)では373/1,486例(25%)、最も高い群(5~6)では276/851例(32%)だった。・最高群と最低群を比較した調整オッズ比(aOR)は1.61(95%CI:1.32~1.96、p<0.001)であった。さらに自己報告による慢性疾患、身体的・認知的機能、精神的健康で評価される「比較的健康な状態の100歳以上」をアウトカムとした場合もHLS-100との関連が認められた(aOR:1.54、95%CI:1.05~2.26)。 著者らは「中国の高齢者を対象としたこの症例対照研究では、健康的な生活習慣を守ることは後期高齢者であっても重要であり、すべての高齢者において生活習慣を改善するための戦略的計画を構築することが、健康的な加齢と長寿を促進するうえで重要な役割を果たす可能性が示唆された」としている。

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妊娠初期のコロナ感染・ワクチン接種、児の先天異常と関連せず/BMJ

 妊娠第1三半期(13週+6日)における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種は、生児の先天異常のリスクに大きな影響を及ぼさないことが、ノルウェー・公衆衛生研究所のMaria C. Magnus氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年7月17日号で報告された。北欧3ヵ国のレジストリベース前向き研究 研究グループは、妊娠第1三半期における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種による主要な先天異常のリスクへの影響の評価を目的に、北欧の3ヵ国でレジストリベースの前向き研究を行った(ノルウェー研究会議[RCN]などの助成を受けた)。 2020年3月1日~2022年2月14日に妊娠したと推定され、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの全国的なレジストリに登録された単胎の生児34万3,066例を対象とした。 先天異常は、欧州先天異常サーベイランス(EUROCAT)の定義に基づいて分類した。妊娠第1三半期における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種後のリスクを、母親の年齢、経産回数、教育歴、収入、出身国、喫煙状況、BMI値、慢性疾患、妊娠開始の推定日で補正したロジスティック回帰モデルで評価した。ウイルス変異株によるリスクの違いの解明が必要 1万7,704例(5.2%、516/1万人)の生児が先天異常と診断された。このうち737例(4.2%)では2つ以上の先天異常を認めた。 妊娠第1三半期の新型コロナウイルス感染に関連するリスクの評価では、補正後オッズ比(OR)は、眼球異常の0.84(95%信頼区間[CI]:0.51~1.40)から口腔顔面裂の1.12(0.68~1.84)の範囲であった。 同様に、妊娠第1三半期のCOVID-19ワクチン接種に関連するリスクのORは、神経系異常の0.84(95%CI:0.31~2.31)から腹壁破裂の1.69(0.76~3.78)の範囲だった。 また、先天異常の11のサブグループのうち10のORの推定値は1.04未満であり、顕著なリスク増加はみられなかった。 著者は、「今後、新型コロナウイルスの変異株による先天異常のリスクの違いを解明するための検討を進める必要がある」としている。

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最適な食物繊維は人それぞれ

 これまで長い間、食物繊維の摂取量を増やすべきとするアドバイスがなされてきているが、食物繊維摂取による健康上のメリットは人それぞれ異なることが報告された。単に多く摂取しても、あまり恩恵を受けられない人もいるという。米コーネル大学のAngela Poole氏らの研究によるもので、詳細は「Gut Microbes」に6月24日掲載された。 食物繊維は消化・吸収されないため、かつては食品中の不要な成分と位置付けられていた。しかし、整腸作用があること、および腸内細菌による発酵・利用の過程で、健康の維持・増進につながる有用菌(善玉菌)や短鎖脂肪酸の増加につながることなどが明らかになり、現在では「第六の栄養素」と呼ばれることもある。また糖尿病との関連では、食物繊維が糖質の吸収速度を抑え、食後の急激な血糖上昇を抑制するように働くと考えられている。そのほかにも、満腹感の維持に役立つことや、血圧・血清脂質に対する有益な作用があることも知られている。 本研究では、食物繊維の一種である難消化性でんぷん(resistant starch;RS)を摂取した場合に、腸内細菌叢の組成や糞便中の短鎖脂肪酸の量などに、どのような変化が現れるかを検討した。59人の被験者に対するクロスオーバーデザインで行われ、試行条件として、バナナなどに含まれている難消化性でんぷん(RS2と呼ばれるタイプ)と化学的に合成された難消化性でんぷん(RS4と呼ばれるタイプ)、および易消化性でんぷんという3条件を設定。5日間のウォッシュアウト期間を挟んで、それぞれ10日間摂取してもらった。 解析の結果、難消化性でんぷんの摂取によって腸内細菌叢や短鎖脂肪酸などに大きな変化が生じた人もいれば、あまり変化がない人、または全く変化がない人もいた。それらの違いは、腸内細菌叢の組成や多様性と関連があることが示唆された。研究者らは、「結局のところ、ある人の健康状態を腸内細菌叢へのアプローチを介して改善しようとする場合、どのような種類の食物繊維の摂取を推奨すべきか個別にアドバイスしなければならない」と述べている。 論文の上席著者であるPoole氏は、「過去何十年もの間、全ての人々に対して一律に食物繊維の摂取を推奨するというメッセージが送られてきた。しかし今日では、個人個人にどのような食物繊維の摂取を推奨すべきかを決定する上で役立つであろう、精密栄養学という新しい学問領域が発展してきている」と述べている。今回の研究でも、食物繊維の摂取によって短鎖脂肪酸の産生が増えるか否かは、その人の腸内細菌叢によって左右される可能性が浮かび上がった。また意外なことに、難消化性でんぷんではなく易消化性でんぷんの摂取によって、短鎖脂肪酸が最も増加していた。短鎖脂肪酸は、血糖値やコレステロールの改善に寄与することが明らかになりつつある。 研究者らは、個人の腸内細菌叢の組成を把握することで、その人がどのようなタイプの食物繊維に反応するのかを事前に予測でき、その結果を栄養指導に生かせるようになるのではないかと考えている。「食物繊維や炭水化物にはさまざまなタイプがある。一人一人のデータに基づき最適なアドバイスを伝えられるようになればよい」とPoole氏は語っている。

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終末期間近の患者のホスピス移行を促す新プログラムとは?

 終末期にさしかかった患者を救急外来(ED)からホスピスに移行させるプログラムを推進している米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院において、ED受診から96時間以内にホスピスへ移された患者の割合が、プログラム導入前の22.6%から導入後には54.1%に上昇したことが報告された。このようなプログラムが、終末期間近にEDを受診した患者に対するホスピスケアの遅れや見逃しの回避に役立つ可能性を示唆する結果だ。同病院のEDの医師であるChristopher Baugh氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月8日掲載された。 ホスピスケアでは、病気を治そうとする試みは中止され、患者への安全で快適かつ尊厳のあるケアの提供と家族のサポートに重点が移される。しかし、研究グループによると、病気や治療が複雑な患者はEDに運ばれることが多く、そこで死亡するか入院後に死亡するケースが少なくないという。 Baugh氏は、「終末期間近の患者がEDを受診した場合、まずは患者を入院させ、終末期のケアや目標について話し合ってからホスピスへ移行させるのが一般的な流れだ。しかし、ホスピスに移行させるまでには長い時間がかかるため、移行前に患者の余命が尽きてしまうこともある」と話す。 ブリガム・アンド・ウイメンズ病院が導入した新規のホスピス移行プログラムは、医師がホスピスケアの対象となる患者を迅速に特定し、より早くホスピスに移行させるために考案されたもので、人工知能(AI)のアルゴリズムを活用している。AIは、電子健康記録(EHR)を分析して、ホスピスへ移すべき候補者を特定する。移行候補者は、入院せずに外来で観察状態に置かれ、ホスピスへ移行するかどうかの最終的な決定は、緩和ケアチームやがん専門医、神経外科専門医などの病院スタッフの指導を受けながら、患者とその家族または介護者が下す。 今回の研究では、このプログラム導入前の2018年9月1日から2020年1月31日までを対照期間、導入後の2021年8月1日から2022年12月31日までを介入期間として、入院を経ずにホスピスへ移された患者、および/または、ED受診から96時間以内にホスピスへ移された患者の割合が比較された。ED受診から96時間以内のホスピス移行が適格と判断された患者は、対照期間で270人(年齢中央値74.0歳、女性49.3%)、介入期間で388人(年齢中央値73.0歳、女性53.6%)であった。このうち、実際に96時間以内にホスピスへ移された患者は、前者で22.6%であったのに対し、後者では54.1%に達した。 論文の上席著者である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のMallika Mendu氏は、「われわれが考案した、多分野連携プログラムにより提供されるケアと、そのケアが患者や家族に与える影響を目の当たりにして、信じられないほどの感動を覚えた。このプログラムは、患者とその家族の人生の重要な時期に有意義なサポートを提供し、遺された人に永続的な影響を与え得る。重要なのは、このプログラムによって、患者がEDを受診した早期の段階でホスピスに移行させることができることだ」と話している。 ただし研究グループは、「このプログラムだけでは、患者の終末期の目標とケアを一致させ、尊厳ある死を支援するという課題に完全には対処できない」と強調する。その上で、本研究において、患者の終末期ケアに関する目標を成文化した「生命維持治療に関する医師の指示書(MOLST)」と呼ばれる法的文書の存在が、介入期間の患者と対照期間の患者の双方において、ホスピスへの速やかな移行と関連していたことに言及している。

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長時間労働者に面接するときのコツ【実践!産業医のしごと】

「過重労働面接」とは、長時間働いている労働者に対し、産業医が面談をして状況改善を図ることです。心身の健康リスクの早期発見、職場の環境改善など、労働者の健康を守り、安心して働ける職場のために重要な業務です。さらに、長時間労働は産業医の面接だけで解決するものではなく、組織を巻き込んで解決していくことが必要です。今回は、過重労働面接におけるコツと留意点について解説します。1. 事前の情報収集面接を適切かつ効率よく行うために、事前に可能な範囲で情報を集めます。人事等に依頼して、〈表1〉に示した必要な情報を会社側で用意してもらいます。〈表1〉過重労働面接に必要な事前情報一覧2. 面接の進め方最初の関係構築が大切過重労働面接の対象となる労働者は、多忙な業務の合間を縫って面接に来ます。積極的に面接を希望する人は少なく、会社からの指示で面接に来る場合も多くあります。面接をスタートするときには、「忙しい中、時間を割いてくださってありがとうございます」と謝意を伝え、部屋に迎え入れます。こうした最初の関係構築は、その後の面接を円滑に進めるためにも非常に重要です。「心身および生活の状況」と「業務の過重性」を重点的に過重労働面接では、心身の健康と業務の過重性の2点を重点的に確認します。1)心身および生活の状況長時間労働は、脳心血管疾患や抑うつ、不安などの精神的な問題のリスクを高めます。また、睡眠に影響が出ていると、ミスや事故の発生率が高まり、企業全体の効率や安全性にも悪影響を及ぼしかねません。面接では、食事や睡眠の変化、気分や意欲の状態、休日の過ごし方など、多面的な質問をして心身および生活の状況を評価します。2)業務の過重性業務の過重性についても詳細に確認します。今後の業務の見通し、労働時間や質的な負荷、さらに職場の人間関係、職場コミュニケーションなど、多角的な視点から労働環境を評価します。以上の情報を総合して、通常勤務が可能か、または就業制限等が必要かを判断します。さらに詳細な面接方法については、「医師による長時間労働面接指導実施マニュアル」2)に記載されているので参考にしてください。〈表2〉「心身および生活の状況」と「業務の過重性」に関する情報画像を拡大する出典:医師による長時間労働面接指導実施マニュアル(一部改変)3. 面接結果の報告過重労働面接が終わったら、面接結果を報告書へまとめ、会社へ提出します。報告書には、就業区分と就業上の措置の有無に関する意見を述べます。仮に、体調等に問題がなく通常勤務が可能であったとしても、それで長時間労働が解決するわけではありません。職場の上司や人事部に向けた長時間労働抑制の対策を記載する欄を報告書に設けるなど、職場関係者に過重労働の是正を意識させる仕組みをつくりましょう。4. 面接でやりがちな「間違い」産業医の過重労働面接でよくある間違いを紹介します。1)医学的な問題だけで、組織に働き掛けない過重労働面接と過重労働対策が同一視されることがあります。繰り返しになりますが、長時間労働は産業医だけで解決するものではありません。長時間労働を減らすには、人員配置やコストが関わるため、意思決定できる人事や上司の理解が必須です。産業医には、健康リスクの側面から面接を行い、労働災害や安全配慮義務違反等の法的リスクを企業側に伝え、環境改善のための働き掛けを行う熱意が求められます。2)就業上の措置を関係者と調整しない面接後、本人の同意なく意見を述べることでトラブルの原因となり、職場の混乱を招くことがあります。面接の最初に対象者へ、面接結果は会社(人事等)へ提出することを伝え、面接後には記載内容の確認を取りましょう。また、報告書に「残業禁止」と意見を書いても関係者が理解していなければ就業制限は守られず、「絵に描いた餅」になってしまいます。報告書に意見を書くだけではなく、本人や上司、人事関係者も交えて就業制限が必要な理由を伝え、関係者の合意を得る手続きを踏むようにしましょう。5. 過重労働対策は企業のメリットにもなる長時間労働は、ワークエンゲージメントの低下や離職率の上昇を招き、パフォーマンス低下や採用コストの増加につながります。過重労働の是正は、企業にとっても従業員の満足度やモチベーションの向上、業務の効率化など、多くのメリットをもたらします。過重労働対策を企業全体の問題として捉え、労働者の過重労働を防ぐことは、結果的に企業の利益にもつながります。産業医は、労働者の健康と企業の健全な発展のために、過重労働の問題に積極的に関与し、働きやすい労働環境を実現しましょう。参考1)労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)/厚生労働省2)医師による長時間労働面接指導実施マニュアル/厚生労働省

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英語で「最後に食事をしたのはいつですか」は?【1分★医療英語】第141回

第141回 英語で「最後に食事をしたのはいつですか」は?《例文1》When was the last time you ate?(最後に食事をしたのはいつですか?)《例文2》You have nothing by mouth after midnight.(深夜12時以降は絶飲食です)《解説》救急医療の現場などで、手術や検査が行えるかどうかを確認するために、「最後に食事をしたのはいつですか?」と聞く場面は多いかと思います。英語ではシンプルに、“When did you last eat?”や“When was the last time you ate?”と質問することができます。頻繁に使うフレーズなので、丸ごと覚えてしまいましょう。また、手術や検査に備えて絶飲食することを、医療者の間では“NPO”と表現します。これは、「口から何も入れない」ことを意味するラテン語の“nil per os”の頭文字を取ったものです。患者さんに説明する場合は“NPO”では伝わらないため、“nothing by mouth”や、“nothing to eat or drink”、“no food or drink”といったフレーズを使うようにします。講師紹介

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魚を焼いて食べたら腹痛と紅斑【これって「食」中毒?】第3回

今回の症例年齢・性別45歳・男性患者情報アレルギー歴・常用薬・特記すべき既往歴はない。7月上旬に遊漁船でキハダマグロ(図1)を釣り、すぐに血抜きをしてクーラーボックスの中で氷漬けにした。夕方に行きつけの寿司屋に持ち込み、刺身(図2)や握り寿司などにしてもらって、釣り仲間5人と一緒に食べた。余った魚肉を柵にしてもらい持ち帰ったが、酔っていたため冷蔵庫に入れ忘れて常温で一晩放置してしまった。翌日の9時頃に、火を通せば大丈夫だと考えて、ステーキ(図3)にして食べたが、口腔内が焼けるような感じがあった。およそ40分後より悪心・嘔吐、著しい上腹部痛および全身の掻痒感が生じたため救急要請して、摂取2時間後に某病院救急センターに搬送された。画像を拡大する初診時は気道開通、呼吸数22/分、SpO2 98%(室内気)、血圧138/76mmHg、心拍数118bpm(整)、意識レベルJCS 0、体温37.6℃であった。頭痛、嘔気、動悸、胸部絞扼感、心窩部痛、全身の掻痒感を訴えていた。また、全身の発汗、顔面・頚部・胸腹部・鼠径部を中心に紅斑を認めた。なお、前日に夕食を共にした釣り仲間はすべて無症状であった。検査値・画像所見血液検査では白血球増多(9,200/µL)以外に特記すべき異常を認めなかった。胸腹部造影CTでは局在性の胃の浮腫を認めた。問題

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