サイト内検索|page:213

検索結果 合計:35104件 表示位置:4241 - 4260

4241.

何はさておき記述統計 その8【「実践的」臨床研究入門】第47回

仮想データ・セットを用いて論文の表1を作成してみる前回は仮想データ・セットを用い、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)の操作手順も交えて、変数の型とデータ・セット記述方法の使い分けについて解説しました(連載第46回参照)。今回は、前回同様に仮想データ・セットからEZRを操作して、表1(患者背景表)を実際に作成してみます。まず、下記の手順で仮想データ・セットをEZRに取り込みます。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」次に、「グラフと表」→「サンプルの背景データのサマリー表の出力」を選択すると、下記のポップアップウィンドウが開きます。画像を拡大する上段の「群別する変数」とは、treatとしたカテゴリ変数(1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)でしたので、こちらを選択します(連載第46回参照)。中段の「カテゴリー変数」にはdm(糖尿病の有無)とsex(性別)を選択します(連載第46回参照)。前回、連続変数を記述する際にはまずヒストグラム(度数分布図)を描き、その分布がおおむね正規分布に近似しているかどうかを確認しましょう、と説明しました。UP(蛋白尿定量)は右に裾を引いたような非正規分布でしたので(連載第46回参照)、「連続変数(非正規分布)」として選択します。age(年齢)、albumin(血清アルブミン値)、eGFR、hemoglobin(ヘモグロビン値)、sbp(収縮期血圧)は「連続変数(正規分布)」とします。その他の設定はデフォルトのままでOKですが、下記の項目は以下のように変更してください。正規分布しない連続変数の範囲表示:四分位数範囲(Q1-Q3)※これは好みですので最小値と最大値のままでも可(連載第46回参照)。連続変数の表示の注釈を加える:Yes出力先:CSVファイル出力設定が完了したらOKをクリックしてみましょう。EZRの出力ウィンドウに下図の表が作成されたでしょうか。画像を拡大するtreat群別に下記のようにそれぞれの背景データのサマリーが表で示されています(連載第46回参照)。カテゴリ変数は群別に実数とその割合で連続変数(正規分布)は平均値(Mean)と標準偏差(SD)で連続変数(非正規分布)は中央値(Median)と四分位範囲(Inter-quartile range:IQR)でこの表はCSVファイルとしても出力されています。CSVファイルを英文論文の表1として使えるように成形したものを以下に示します。画像を拡大する可読性を高めるために、数値は四捨五入して有効数字3桁で丸めています。また、脚注(footnote)で略語をスペルアウトなどして、表だけで独立して理解できるように作成することが重要です。表1でp値を記載するかどうかですが、筆者はどちらかというと「記載しない派」です。なぜなら、表1の主な目的は、解析対象となった参加者の記述統計を示すことだからです。場合によっては、表1で異なる群間の比較を示すという意味合いもあることがあります。けれども、p値はあくまで統計的な有意性を示す指標であり、臨床的に意味のある差を示すものではないことに留意が必要です(連載第44回参照)。たとえば、今回作成した表1をみてみましょう。低たんぱく食厳格遵守群と低たんぱく食厳格非遵守群で、性別以外の患者背景にはいずれも統計学的有意差(p<0.05)がついています。両群間で年齢は4歳以上、糖尿病の有病割合は10%以上、収縮期血圧も5mmHg以上差があるので、これらの要因については臨床的にも意味がある差異なのかもしれません。しかし、血清アルブミン値やヘモグロビン値の1ポイントにも満たないわずかな差は臨床的に大きな意味を持つでしょうか。サンプルサイズがそこそこ大きい場合、臨床的にはごくわずかな差でも統計学的には有意差が出ることがあります。というわけで、筆者は投稿時点では表1にp値を示さないことが多いです。ただ、査読の段階でエディターやレビュワーからp値も記載するように指摘されることもあり、その際は素直に従います(笑)。

4242.

アニメ「インサイド・ヘッド2」(その1)【なんで恥ずかしくなるの?なんで恥ずかしさは「ある」の?(社会的感情)】Part 1

今回のキーワード恥ずかしさ(羞恥心)悔しさ(後悔)うらやましさ(羨望)ねたましさ(嫉妬心)うぬぼれ(傲慢)誇り(自慢)あわれみ(同情)さげすみ(軽蔑)自分を恥ずかしく思う一方で、そうじゃない人をうらやましく思ったり…逆に自分はモテると思う一方で、そうじゃない人を気の毒に思ったり…このように、皆さんは人間関係で沸き起こる感情に日々とらわれていませんか? この感情は、社会的感情と呼ばれています。なぜこのような感情は出てくるのでしょうか? そもそもなぜこのような感情は「ある」のでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、アニメ「インサイド・ヘッド2」を取り上げます。このアニメに新たに登場する「大人の感情」のキャラクターを通して、社会的感情の機能とその起源を掘り下げてみましょう。なお、すでに「インサイド・ヘッド1」の記事で、基本感情について解説しました。また、この続編記事では自由意志について解説しました。詳細は関連記事1、関連記事2をご覧ください。社会的感情の機能とは?インサイド・ヘッド1に引き続き、舞台は再びライリーの頭の中。そこでは、ヨロコビ、ビビリ、イカリ、ムカムカ、そしてカナシミの5つの感情のキャラクターたちが、変わらず彼女をずっと見守り続けていました。そんな中、ライリーが13歳になり思春期に入った時、さらに4つの「大人の感情」のキャラクターが現れます。それではまず、そのうちの2つの「大人の感情」のキャラクターの特徴を通して、私たちの社会的感情の機能をまとめてみましょう。(1)ハズカシ―羞恥心ハズカシは、大柄でショッキングピンクの色。パーカーを着ており、恥ずかしくなった際にはそのパーカーのフードで顔を隠す癖があります。ヨロコビと握手する時、緊張から手汗がかなりありました。ライリーがホッケー合宿で憧れの先輩ヴァルに初めて会った時、舞い上がってぎこちないダンスをしてしまいますが、この時にハズカシはライリーの顔を赤くさせます。この社会的感情は、まさに恥ずかしさ(羞恥心)です。顔を隠すのは、いわゆる「穴があったら入りたい」「その場から消えたい」という気持ちで、自己縮小感と呼ばれています1)。大柄なハズカシだからこそ、小さくなろうとするギャップがおもしろいです。これは、社会的な欲求の1つである、相手(社会)から好かれたいという愛情欲求(自己肯定感)が満たされていないことへの反応です。つまり、羞恥心とは、とくに見た目や立ち振る舞いなどのもともとの資質において、相手(集団)から受け入れられない状況への不快感です。逆に言えば、そうならないようにするため、相手に好かれるような見た目や立ち振る舞いをするようになります。これが、恥ずかしさの心理の機能です。恥ずかしさとよく似た社会的感情として、悔しさ(後悔)があります。これは、もう1つの社会的な欲求である、相手(社会)に期待されたいという承認欲求(自己効力感)が満たされないことへの反応です。とくに能力や努力において、相手(集団)から受け入れられない状況への不快感です。逆に言えば、そうならないようにするため、相手の期待に応えようと努力するようになります。これが、悔しさの心理の機能です。また、時として申し訳なさという罪悪感に発展します。たとえば、ライリーは更衣室で一緒にいた仲良しの友達とついはしゃいでしまい、気が抜けているとコーチに目を付けられたシーン。そのために、チームメンバー全員がラインダッシュさせられますが、その後にライリーはヴァルに謝りに行きます。これがまさに気が抜けていた後悔からの罪悪感です。この感情に特化したキャラクターは今回の映画には登場しておらず、この先で説明するシンパイが掛け持ちしていました。なお、恥ずかしさと悔しさは、得られないのが愛情欲求か承認欲求かという違いがありますが、日常的にはかぶっています。このシーンにしてもそうでしたが、一緒になって使われていることが多いです。(2)イイナー―羨望イイナーは、小柄で緑色。うるうるした大きな目で上目遣いをしており、まるで物欲しげな子犬のようです。ライリーがヴァルに初めて会った時、憧れのあまり、イイナーは、ヴァルのハイライトにしてある赤い髪にライリーの手を伸ばさせます。この社会的感情は、まさに「いいなあ」といううらやましさ(羨望)です。これは、相手の承認欲求が満たされていることへの反応です。相対的に言えば、自分の承認欲求が満たされていないことへの反応です。そうならないようにするため、期待に応えようと私たちは努力するようになります。これが、うらやましさの心理の機能です。そして、好感が伴えば、賞賛の心理に発展します。うらやましさとよく似た社会的感情として、ねたましさ(嫉妬心)があります。うらやましさは自分が持っていないもの(持つべきもの)を相手が持っていることへの反応であるのに対して、ねたましさは自分がもともと持っているもの(持つべきもの)を相手に取られることへの反応です。その多くがパートナーの愛情であることから、この記事では、わかりやすさを優先して、ねたましさは相手の愛情欲求が満たされてしまうことへの反応と分類します。同じく、この心理のおかげで、そうならないようにするために、パートナーなどの親しい人により好かれるかかわりをするようになります。これが、ねたましさの心理の機能です。うらやましさとねたましさの違いも、得られないのが愛情欲求か承認欲求かで分けましたが、実際はごっちゃになって使われることが多いです。ちなみに、うらやましさはポジティブなニュアンスがありますが、ねたましさはネガティブなニュアンスがあります。この点で、ねたましさのキャラクターは、今回の映画には登場していないのですが、名付けるとしたらイイナーに対して「ヤダナー」でしょう。ちょうど、仲良しの2人がライリーとは違う高校に揃って行くことを知った時の裏切られたような感情です。ねたましく、恨めしくも思うシーンですが、基本感情のカナシミが代わりに動こうとしていました。なお、ねたましさの心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。次のページへ >>

4243.

アニメ「インサイド・ヘッド2」(その1)【なんで恥ずかしくなるの?なんで恥ずかしさは「ある」の?(社会的感情)】Part 2

社会的感情の相互関係とは?この映画に登場する社会的感情のキャラクターはハズカシとイイナーの2つだけですが、表1に示したように、全部で8つあります。これは、バックによる社会的感情2)を参照しています。うぬぼれ(傲慢)は自分の愛情欲求が満たされることへの反応で、誇り(自慢)は自分の承認欲求が満たされることへの反応です。この2つも実際はごっちゃになって使われることが多いです。たとえば、ライリーがヴァルから特別に夜のパーティに誘われたと思ったシーンが当てはまります。この時は、代わりにイイナーがはしゃいでいました。一方、あわれみ(同情)は、かわいそうと相手の愛情欲求が満たされていないことへの反応で、さげすみ(軽蔑)は、相手の承認欲求が満たされなかった、つまり期待に応えることをしないことへの反応です。あわれみが援助行動を促すのに対して、さげすみは罰したいという制裁行動(正義感)を促します。たとえば、ヴァルが新人のライリーに何かとフォローしてかわいがろうとしているのは、援助行動です。一方、ヴァルの親しいチームメイトのダニが「ったく、あのミシガンちゃん(ライリー)、いきなりミスったね」と、コーチを怒らせたライリーの悪口(バッシング)を言うのは、制裁行動です。そして、これらの社会的感情には相互関係もあります。たとえば、自分の愛情欲求が満たされていないと、相対的に相手の愛情欲求が満たされているように思えてきます。これが、冒頭で触れた「自分を恥ずかしく思う一方で、そうじゃない人をうらやましく(ねたましく)思う」状態です。逆に、自分の愛情欲求が満たされると、相対的に相手の愛情欲求が満たされていないように思えてきます。これが、冒頭で触れた「自分はモテる(うぬぼれる)と、そうじゃない人を気の毒に思う(あわれむ)状態です。さらに、相手を「かわいそう」(あわれ)と決めつけたり、そのようなセリフを連発する人は、実は自分が無意識に優越感(うぬぼれ)に浸ろうとしていることもわかります。同じように、相手の承認欲求が満たされていると、相対的に自分の承認欲求が満たされていないように思えてきます。つまり、相手をうらやましく思うと、自分は悔しくなります。逆に、相手の承認欲求が満たされないと、相対的に自分の承認欲求が満たされているように思えてきます。つまり、正義感を発揮する(さげすむ)と、誇らしい気分になります。これがいわゆる「メシウマ」であり、バッシングの心理です。関係性として整理すると、うぬぼれと誇りは明らかな快感情ですが、あわれみとさげすみは相対的な快感情であることがわかります。そして、恥ずかしさと悔しさは明らかな不快感情ですが、ねたましさとうらやましさは相対的な不快感情であることがわかります。なお、バッシングの心理の詳細については、関連記事4をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

4244.

アニメ「インサイド・ヘッド2」(その1)【なんで恥ずかしくなるの?なんで恥ずかしさは「ある」の?(社会的感情)】Part 3

社会的感情の起源とは?社会的感情の機能とは、自分(または相手と比べた相対的な自分)の愛情欲求と承認欲求が満たされるように行動を促す心理であることがわかりました。そして、このような行動を練習するのは、とくに大人(社会)の仲間入りをする直前の思春期であることもわかります。それでは、そもそもなぜこのような感情は「ある」のでしょうか?ここから、進化心理学の視点で、恥ずかしさを例に挙げて、社会的感情の起源を掘り下げてみましょう。約700万年前に、人類が誕生しました。そして、約300万年前には、人類はアフリカの森からサバンナに出ていきました。そして、猛獣から身を守り、限られた食料を分け合うために、血縁の家族同士が集まり部族をつくるようになりました。この時、思春期になると男子は狩りの集団に、女子は子育ての集団にそれぞれ入っていくわけですが、その集団でうまくやっていこうとする社会脳が進化しました。そして、集団に受け入れられないことへの不快感情が出てくるようにも進化しました。これが羞恥心の起源です。逆に、この心理がないと、集団で身勝手なことをしてしまい、仲間外れにされます。当時の仲間外れは死を意味します。つまり、羞恥心がない人(遺伝素因)は、現代に存在していないということです。ちなみに、「恥」という漢字は、恥ずかしくなると耳が赤くなることから、「耳に心がある」という語源から来ています。そして、この赤面のメカニズムも進化心理学的に説明できます。現代では、緊張して顔を赤らめるのは、恰好悪いと思われがちです。しかし、これは原始の時代には必要でした。なぜなら、人類が言葉を話すようになったのは、せいぜい約20万年前だからです。それまでの280万年の間、人類は、言葉なしで表情や身振り手振りでコミュニケーションをしていました。そんな中、新しく集団に入る時、現代のように「ちょっと緊張していますが、仲良くしてください。よろしくお願いします」という言葉の代わりに、顔を赤らめてもじもじすることは、まさにこの言葉を非言語的なメッセージとして送っていることになり、好感が待たれてとても適応的です。つまり、現代では言葉があるために不要な赤面反応は、原始の時代には必要であったというわけです。なお、人類の起源地であるアフリカにいる黒い肌の人種の赤面はわかりにくいです。だからこそ顔の中で肌が比較的に薄い(毛細血管が見えやすい)耳がとくに赤くなるように進化したのでしょう。もちろん、恥ずかしさによる顔の火照り感から、もじもじするという反応は確実に伝わります。また、ハズカシのように手が緊張で汗ばむのは、約数千年前に類人猿が誕生してから、森の中でより素早く枝から枝へと移動するためのすべり止めの役割がもともとありました。現代ではとても困る手汗反応は、原始の時代には新しい集団に入ってさっそく動き回って活躍するためにはやはり必要であったというわけです。恥ずかしさと同じように、その他の7つの社会的感情も、原始の時代の部族集団(社会)で助け合って生き残り子孫を残すため、つまり生存と生殖の適応度を上げるように約300万年間で進化した心理機能であることがわかります。そして、社会的感情における相互関係も、その助け合いにおける平等と公平のバランスを取るように促すため、つまり個人としてだけでなく集団としても適応度を上げるように進化した心理機能であることもわかります。ちなみに、ねたましさ(嫉妬)の心理の起源については、すでに関連記事5で詳しく解説していますので、ご覧ください。1)「進化と感情から解き明かす社会心理学」p.196:北村英哉・大坪康介、有斐閣アルマ、20122)「感情心理学・入門」p.145、p.175:大平英樹、有斐閣アルマ、2010<< 前のページへ■関連記事インサイド・ヘッド【なんで悲しみは「ある」の?どうすれば?(感情心理学)】Part 1インサイド・ヘッド(続編・その1)【やったのは脳のせいで自分のせいじゃない!?】Part 1カインとアベル(前編)【なんで嫉妬をするの?】苦情殺到!桃太郎(前編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1カインとアベル(後編)【なんで嫉妬は「ある」の?どうすれば?】Part 1

4245.

男性のがん罹患状況、2022年データから2050年を予測

 男性は飲酒や喫煙など、がんの修正可能なリスク因子を有する割合が高く、結果としてがんの発症率が高く、生存率が低くなる。年齢層や国による差異を含め、男性におけるがん負担に関する包括的なエビデンスは乏しい。オーストラリア・クイーンズランド大学のHabtamu Mellie Bizuayehu氏らは、がんの罹患や死亡に関する2022年の世界的な統計データ(GLOBOCANデータ)を用いて2050年の予測値を算定、Cancer誌オンライン版2024年8月12日号で報告した。 本研究では、国際がん研究機関(IARC)による日本を含む185の国と地域対象の2022年のGLOBOCAN推定値を用いて、30種類のがんについて死亡率罹患率比(MIR、年齢調整死亡率/罹患率)を算定した。2050年の予測値については、人口動態予測を用いて計算された。労働年齢(15~39歳と40~64歳)および高齢者(≧65歳)に分類され、185の国と地域は人間開発指数(HDI)に基づき4分類された(低、中、高、非常に高)。 主な結果は以下のとおり。・2022年、世界の男性におけるがん罹患数は1,030万例、がんによる死亡数は540万例と推定され、罹患数と死亡数の約3分の2が高齢者(≧65歳以上)であった。・罹患数と死亡数でみると肺がんが最も多かったが、年齢層によって若干のばらつきがみられた(例:15~39歳では、罹患数は精巣がん、死亡数は白血病が最も多い)。・2022年、世界の男性におけるがんのMIRは54.9%と推定された。がん種別にみると甲状腺がんの7.6%から膵臓がんの90.9%までの範囲で、MIRが高かった3つのがん種は、膵臓がん、肝臓がん、食道がんであった。・MIRはHDIと逆相関しており、HDIが低い国で最も推定値が高く(73.5%)、HDIが非常に高い国で最も低かった(41.1%)。世界中の国と地域間でMIRに大きな差(約3倍)があり、ノルウェーの28.0%からガンビアの86.6%までの範囲であった(日本は32.7%)。・2050年までに世界の男性におけるがん罹患数は1,900万例に達すると予測され、2022年の推定値と比較して変化率は84.3%増となる。また、がんによる死亡数は1,050万例に達すると予測され、93.2%増となる。肺がんは引き続き最も一般的ながん種であり、罹患数と死亡数は2022年と比較して87%超の増加と予測された。・2022年から2050年の間に最も大きな増加が見込まれるがん種は、罹患数では中皮腫(105.5%増)、死亡数では前立腺がん(136.4%増)であった。・2022年から2050年の間にHDIの低い国や地域ではがんの罹患数と死亡数が2倍超(140%増)になると予測された一方、HDIの非常に高い国や地域では罹患数が50.2%増、死亡数が63.9%増と予測された。また、HDIが高いおよび非常に高い国・地域の15~39歳においては、罹患数と死亡数が約11%減少すると予測された。 著者らは、2022年に確認された男性におけるがん罹患数と死亡数の格差は、2050年までに拡大すると予測され、健康インフラの確保や国内外の協力、国民皆保険の推進などが極めて重要としている。

4246.

緑内障による認知機能障害や認知症リスク~メタ解析

 緑内障と認知症に関して、病理学的メカニズムおよび病因的因子が共通していることを裏付ける十分なエビデンスが報告されている。しかし、緑内障、認知症、認知機能障害の関連性は十分に解明されていない。中国・河南中医薬大学のXiaoran Wang氏らは、緑内障が認知症または認知機能障害のリスク上昇に及ぼす影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Aging Clinical and Experimental Research誌2024年8月20日号の報告。 2024年3月10日までに公表されたコホート研究および症例対照研究を、PubMed、Cochrane Library、Web of Science、EMBASEのデータベースより検索した。バイアスリスクの評価には、ニューカッスル・オタワスケール(NOS)を用いた。異質性はI2検定を用いて厳密に評価し、出版バイアスは、ファンネルプロットの目視検査およびEgger検定により評価した。異質性の原因を特定するため、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・27件(906万1,675例)をメタ解析に含めた。・プール解析では、緑内障は、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、認知機能障害のリスク上昇と関連していることが示唆された。・サブグループ解析では、認知症の有病率は、65歳以上で2.90(95%信頼区間[CI]:1.45~5.77)、65歳未満で2.07(95%CI:1.18~3.62)であり、女性の緑内障患者における発症率はいずれも1.46(95%CI:1.06~2.00)であり、男性の患者では統計学的な有意差は認められなかった。・緑内障の中でも、原発開放隅角緑内障(POAG)は、認知症および認知機能障害が発現する可能性が高かった。・地域による差異もみられ、アジアでは有病率が最も高く、欧州および北米では緑内障と認知症の関連は認められなかった。 著者らは「緑内障は、その後の認知症および認知機能障害のリスクを上昇させることが示唆された。緑内障の種類、性別、年齢、地域により、緑内障と認知症の関連は大きく影響を受ける可能性がある」としている。

4247.

喘息・COPD好酸球性増悪へのベンラリズマブ、症状・治療失敗率を改善/ERS2024

 好酸球性増悪は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪の30%、喘息増悪の50%を占めるとされている。治療には経口ステロイド薬(OCS)が用いられることがあるが、治療効果は短く、治療失敗率も高いという課題が存在する。そこで、好酸球を速やかに除去する作用を有するベンラリズマブの好酸球性増悪に対する効果を検討することを目的として、海外第II相無作為化比較試験「ABRA試験」が実施された。その結果、ベンラリズマブはOCSのプレドニゾロンと比較して、28日後における症状と90日後における治療失敗率を改善することが示された。2024年9月7~11日にオーストリア・ウィーンで開催された欧州呼吸器学会(ERS International Congress 2024)において、英国・オックスフォード大学のMona Bafadhel氏が報告した。・試験デザイン:海外第II相無作為化比較試験・対象:過去12ヵ月間に1回以上の増悪があり、好酸球性増悪(増悪時の好酸球数が300cells/μL以上)の認められる喘息またはCOPD患者・試験群1(ベンラリズマブ+プレドニゾロン群):ベンラリズマブ(100mg単回、皮下投与)+プレドニゾロン(30mg×5日、経口投与) 52例・試験群2(ベンラリズマブ群):ベンラリズマブ(同上) 53例・対照群(プレドニゾロン群):プレドニゾロン(同上) 53例・評価項目:[主要評価項目]28日後におけるVASで評価した症状、90日後における治療失敗率(死亡、入院、再治療)[副次評価項目]治療失敗までの期間、MRC息切れスケールで評価した息切れ、呼吸機能など なお、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群とベンラリズマブ群を統合し(ベンラリズマブ統合群)、プレドニゾロン群との比較により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の内訳は、喘息が55.7%(88例)、COPDが32.2%(51例)、喘息とCOPDのオーバーラップが12.0%(19例)であった。・主要評価項目の28日後におけるVASで評価した症状のベースラインからの変化量(平均値)は、プレドニゾロン群が103であったのに対し、ベンラリズマブ統合群は152であり、ベンラリズマブ統合群が有意に改善した(p=0.006)。・28日後におけるVASで評価した症状のベースラインからの変化量のサブグループ解析において、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、ベンラリズマブ群はいずれもプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(それぞれp=0.013、p=0.027)。・主要評価項目の90日後における治療失敗率は、プレドニゾロン群が73.6%(39例)であったのに対しベンラリズマブ統合群は45.2%(47例)であり、ベンラリズマブ統合群が有意に治療失敗率を改善した(オッズ比:0.264、95%信頼区間[CI]:0.125~0.556、p<0.001)。・90日後における治療失敗率のサブグループ解析において、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、ベンラリズマブ群はいずれもプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(それぞれp<0.001、p=0.005)。・治療失敗までの期間は、ベンラリズマブ統合群がプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(ハザード比:0.393、95%CI:0.252~0.612、p<0.001)。・28日後におけるMRCスケールの群間差は0.39(95%CI:0.08~0.69、p=0.013)であり、ベンラリズマブ統合群が有意に改善した。 本研究結果について、Bafadhel氏は「ベンラリズマブ単回投与は、好酸球性増悪に対する標準治療のプレドニゾロンに対し、優越性を示した」とまとめた。

4248.

CABG後のAF予防、カリウム正常上限値の維持は不要/ESC2024

 冠動脈バイパス術(CABG)後の新規発症心房細動(AF)予防としてのカリウム投与について、濃度が正常下限値を下回った場合にのみカリウム投与することが、正常上限値になるまで定期投与することよりも劣らないことが最新の研究で明らかになった。本研究結果はドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBenjamin O'Brien氏らが8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインで発表し、JAMA誌オンライン版2024年8月31日号に同時掲載された。 これまで、心臓手術後の心房細動(AFACS)予防のために血清カリウム濃度を正常値に維持するためのカリウム投与が行われていたが、明確な根拠がない上にリスクや費用を伴うため、疑問視されていた。 本研究は、英国とドイツの心臓外科センター23施設で行われた多施設前向き非盲検ランダム化非劣性試験(TIGHT-K試験)。2020年10月20日~2023年11月16日に、CABG手術を予定し、AF既往歴のない患者を登録した。対象患者は、厳格なカリウム管理群(カリウム補充を行う血清カリウム濃度下限値が4.5mEq/L[正常上限値])と緩やかなカリウム管理群(同:3.6mEq/L[正常下限値])に1対1でランダムに割り当てられた。 主要評価項目は、CABG手術後120時間以内または退院までのいずれか早いタイミングで心電図により確認された新規発症AFACS(30秒以上の持続性AF、心房粗動、頻脈と定義)。また、正常下限値群の非劣性は、新規発症AFACSのリスク差と、それに関連する片側97.5%信頼区間(CI)の上限が10%未満であると定義された。副次評価項目には、心拍リズム関連イベント、臨床転帰、介入に関連するコストが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,690例は、平均年齢65歳、女性256例(15%)、EuroSCORE IIの平均スコア1.5%であった。・主要評価項目である新規発症AFACSは、正常上限値群の26.2%(n=219)および正常下限値群の27.8%(n=231)に発生し、リスク差は1.7%(95%CI:-2.6~5.9)であった。・携帯型心拍リズムモニターなどで検出されたAFACSの1回以上の発生率、AFACS以外の不整脈、入院患者の死亡率、入院期間については、グループ間に差はみられなかった。・正常下限値群でのカリウム投与回数の中央値(IQR)は0回(0~5)であったのに対し、正常上限値群では7回(4~12)で、カリウムの購入や投与にかかる患者1人当たりのコストは、正常下限値群で有意に低かった(平均差:111.89ドル、95%CI:103.60~120.19ドル、p<0.001)。 研究者らは「厳格なコントロールのためにカリウムを定期投与しても、緩やかなコントロールに比べてメリットはなく、コストが高くなることを示すことができた」と結論付けている。

4249.

ACSのPCI後、短期DAPT後チカグレロルvs.12ヵ月DAPT~メタ解析/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者の冠動脈ステント留置後の標準治療は、12ヵ月間の抗血小板2剤併用療法(DAPT)となっている。この標準治療とDAPTからチカグレロルへと段階的減薬(de-escalation)を行う治療を比較したエビデンスの要約を目的に、スイス・Universita della Svizzera ItalianaのMarco Valgimigli氏らSingle Versus Dual Antiplatelet Therapy(Sidney-4)collaborator groupは、無作為化試験のシステマティックレビューおよび個々の患者データ(IPD)レベルのメタ解析を行った。とくにACS患者では、12ヵ月間のDAPT単独療法と比較して、DAPTからチカグレロルへの段階的減薬は、虚血のリスクを増大することなく大出血リスクを軽減することが示された。Lancet誌2024年9月7日号掲載の報告。チカグレロル単独療法の有効性と安全性をIPDレベルメタ解析で評価 研究グループは、冠動脈薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者における短期DAPT(2週~3ヵ月)後チカグレロル単独療法(90mgを1日2回)について、12ヵ月DAPTと比較した有効性と安全性を評価するため、システマティックレビューおよびIPDレベルのメタ解析を行った。 対象試験は、冠動脈血行再建術後のP2Y12阻害薬単独療法とDAPTを比較した中央判定エンドポイントを有する無作為化試験とし、Ovid MEDLINE、Embaseおよび2つのウェブサイト(www.tctmd.comおよびwww.escardio.org)を各データベースの開始から2024年5月20日まで検索した。長期の経口抗凝固薬適応患者を含む試験は除外した。 Cochrane risk-of-biasツールを用いてバイアスリスクを評価。適格試験の主任研究者から匿名化された電子データセットでIPDの提供を受けた。 主要エンドポイントは、主要有害心血管または脳血管イベント(MACCE[全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合]、per-protocol集団で非劣性を検証)、Bleeding Academic Research Consortium(BARC)出血基準タイプ3または5の出血(ITT集団で優越性を検証)、および全死因死亡(ITT集団で優越性を検証)の3つとし、階層的に解析した。すべてのアウトカムは、Kaplan-Meier推定値で報告された。非劣性の検証は片側α値0.025を用い、事前規定の非劣性マージンは1.15(ハザード比[HR]スケール)であった。その後に順位付け優越性の検証を両側α値0.05を用いて行った。とくに女性で、チカグレロル単独療法にベネフィットありの可能性 合計8,361件の文献がスクリーニングされ、うち610件がタイトルおよび要約のスクリーニング中に適格の可能性があるとみなされた。その中で患者をチカグレロル単独療法またはDAPTに無作為化した6試験が特定された。 段階的減薬は介入後中央値78日(四分位範囲[IQR]:31~92)で行われ、治療期間の中央値は334日(329~365)であった。 per-protocol集団(2万3,256例)において、MACCE発生は、チカグレロル単独療法群297件(Kaplan-Meier推定値2.8%)、DAPT群は332件(3.2%)であった(HR:0.91[95%信頼区間[CI]:0.78~1.07]、非劣性のp=0.0039、τ2<0.0001)。 ITT集団(2万4,407例)において、BARC出血基準タイプ3または5の出血(Kaplan-Meier推定値0.9% vs.2.1%、HR:0.43[95%CI:0.34~0.54]、優越性のp<0.0001、τ2=0.079)および全死因死亡(0.9% vs.1.2%、0.76[0.59~0.98]、p=0.034、τ2<0.0001)は、いずれもチカグレロル単独療法群で低減した。 試験の逐次解析で、被験者全体およびACS集団におけるMACCEの非劣性および出血の優越性の強固なエビデンスが示された(z曲線は無益性の境界を越えたりnull値に近づいたりすることなく、モニタリング境界を越えるか必要な情報サイズを満たした)。 治療効果は、MACCE(相互作用のp=0.041)、全死因死亡(0.050)については性別による不均一性がみられ、女性ではチカグレロル単独療法のベネフィットがある可能性が示唆された。また、出血は臨床症状による不均一性がみられ(相互作用のp=0.022)、ACS患者ではチカグレロル単独療法にベネフィットがあることが示唆された。 これらの結果を踏まえて著者は、「チカグレロル単独療法は、とくに女性において生存ベネフィットとも関連する可能性があり、さらなる検討が必要である」と述べている。

4250.

ATTR型心アミロイドーシスへのブトリシラン、全死亡を低下/NEJM

 進行性の致死的疾患であるトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者において、ブトリシランによる治療はプラセボとの比較において、全死因死亡および心血管イベントのリスクを低下させ、機能的能力とQOLを維持することが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMarianna Fontana氏らHELIOS-B Trial Investigatorsが行った二重盲検無作為化試験で示された。ブトリシランは、肝臓のトランスサイレチンの産生を阻害する皮下投与のRNA干渉(RNAi)治療薬である。NEJM誌オンライン版2024年8月30日号掲載の報告。ブトリシランvs.プラセボの無作為化試験 研究グループは、ATTR-CM患者をブトリシラン25mgまたはプラセボの投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付け、12週ごとに最長36ヵ月間投与を行い有効性と安全性を評価した。 主要エンドポイントは、全死因死亡および心血管イベントの再発の複合とした。副次エンドポイントは、全死因死亡、6分間歩行テストの移動距離のベースラインからの変化、カンザスシティ心筋症質問票全体の要約(KCCQ-OS)スコアのベースラインからの変化などであった。 有効性のエンドポイントは全集団および単独療法集団(ベースラインでタファミジス非投与の患者)で評価し、階層的に検証した。全死因死亡・心血管イベントの再発リスクを有意に低下 合計655例が無作為化された(ブトリシラン群326例、プラセボ群329例)。ブトリシラン群は、プラセボ群と比較して全死因死亡および心血管イベントの再発リスクが低下した(全集団のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.93、p=0.01、単独療法集団のHR:0.67、95%CI:0.49~0.93、p=0.02)。また、42ヵ月間の全死因死亡リスクが低下した(HR:0.65、95%CI:0.46~0.90、p=0.01)。主要エンドポイントのイベント発生は、ブトリシラン群163例、プラセボ群202例であった。 全集団において、ブトリシラン群はプラセボ群と比較して、6分間歩行テストの移動距離の短縮が少なく(最小二乗平均差:26.5m、95%CI:13.4~39.6、p<0.001)、KCCQ-OSスコアの低下が少なかった(5.8ポイント、2.4~9.2、p<0.001)。同様のベネフィットは、単独療法集団でも観察された。 有害事象の発現頻度は、両群で類似していた(ブトリシラン群99%、プラセボ群98%)。重篤な有害事象の発現率は、ブトリシラン群62%、プラセボ群67%であった。

4251.

BTK阻害薬ピルトブルチニブが発売、再発難治MCLに新たな選択肢/日本新薬

 2024年8月、日本新薬と日本イーライリリーは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬ピルトブルチニブ(商品名:ジャイパーカ)の発売を開始した。適応はほかのBTK阻害薬に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)。発売に合わせ、9月5日に行われた日本新薬主催のプレスセミナーでは、がん研究会有明病院の丸山 大氏が「マントル細胞リンパ腫に対する既存のBTK阻害剤後のアンメットニーズ」と題した講演を行った。ピルトブルチニブは従来型BTK阻害薬に比べて副作用リスク軽減の可能性 悪性リンパ腫は全がん種のうち男女とも罹患数で10位以内に入る、比較的患者数の多いがんだ。一方で、MCLは悪性リンパ腫全体の2~3%(日本の場合)であり、希少疾患に数えられる。発症年齢中央値は60代半ば、男女比は2対1程度と「高齢の男性」に多いがんと言える。リンパ腫の中には治癒するものもあるが、MCLは治癒が難しいとされ、初回治療は大量化学療法もしくは自家造血幹細胞移植だが治療抵抗性となる率が高く、多くの患者が次治療に移行する。「造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版」では、再発難治MCLにする治療としてイブルチニブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ単剤もしくはリツキシマブとの併用、GDP療法など複数の多剤併用療法が推奨されており、とくにピルトブルチニブと同じBTK阻害薬であるイブルチニブが広く使われている。しかし、イブルチニブにも治療抵抗性となった場合の次治療のレジメンはさらに多岐にわたり、確立されたものはない状態だ。 イブルチニブをはじめとする従来型のBTK阻害薬は、BTKタンパク質のC481位のアミノ酸に共有結合することで作用する「共有結合型阻害薬」に分類される。一方、今回発売されたピルトブルチニブはC481位を介さない「非共有結合型阻害薬」となる。この違いによって、C481変異によって引き起こされる共有結合型阻害薬への耐性を回避するため、従来型BTK阻害薬に耐性となった患者に対しても有効性が期待される。また、ピルトブルチニブは従来型BTK阻害薬に比べBTKに対する選択性が高く、非標的分子への影響を抑えることができるため、副作用のリスクを軽減できる可能性もある。 今回のピルトブルチニブの承認は、国際共同第I/II相BRUIN-18001試験に基づくもの。有効性解析対象となった日本人8例を含む65例を対象にした本試験では、従来型BTK阻害薬の前治療歴がある参加者に対し、ピルトブルチニブは56.9%の奏効率(CR+PR)を示した。奏効が得られた例では、比較的長期間の奏効持続が得られる傾向があった。一方、安全性解析対象集団となったMCL患者164例では89.0%(146例)に有害事象が認められ、発現頻度の高いものとしては疲労29.9%(49例)、下痢21.3%(35例)、呼吸困難16.5%(27例)などがあった。その他の重大な有害事象として感染症、出血および骨髄抑制が報告されている。 丸山氏は「治癒が困難な再発難治MCLに対し、新たな治療選択肢ができたことは喜ばしい」とまとめた。

4252.

末期腎不全の高齢患者に透析は本当に必要か

 末期腎不全を患っているが腎移植の対象とはならない高齢患者に透析を行っても、得られるベネフィットと健康上のリスクのバランスは悪く、透析を行わない選択肢を検討する方が望ましいケースもあるとする研究結果が報告された。この研究によると、腎不全の診断後1カ月以内に透析を開始した高齢患者は、透析開始まで1カ月以上待った患者や透析を受けなかった患者に比べて、生存日数は平均で9日長かったものの、入院日数も13.6日多かったことが明らかになったという。米スタンフォード大学医学部腎臓学分野のMaria Montez-Rath氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月20日掲載された。 この研究でMontez-Rath氏らは、米国退役軍人省(VA)のデータを用いて、2010年から2018年の間に慢性腎不全の診断を受けた65歳以上の患者2万440人(平均年齢77.9歳)の健康記録を評価した。これらの患者は、推算糸球体濾過量(eGFR)が12mL/分/1.73m2以下で、腎臓移植の対象にはされていなかった。Montez-Rath氏らは、患者を診断後30日以内に透析を開始した群(透析群)と、医学的管理を継続した群(医学的管理群)に分けた。 診断から透析開始までの期間中央値は、透析群で8.0日、医学的管理群で3.0年であった。3.0年の追跡期間における平均生存日数は、透析群で770日、医学的管理群で761日であったが、有意な群間差は認められなかった(差9.3日、95%信頼区間−17.4〜30.1日)。その一方で、透析群では医学的管理群に比べて、自宅で過ごした日数が13.6日少なかった。年齢層別に検討すると、65〜79歳では透析群は医学的管理群よりも平均生存日数が16.6日長かったが、自宅で過ごした日数は14.4日少なかった。一方、80歳以上では、透析群は医学的管理群よりも平均生存日数が60.0日長かったが、自宅で過ごした日数は12.9日少なかった。さらに、医学的管理群の中でも、追跡期間中に透析を開始しなかった患者と透析群を対象に検討すると、透析群の方が生存期間は77.6日長かったが、自宅で過ごした日数は14.7日少なかった。 こうした結果を受けてMontez-Rath氏は、「透析は、75歳や80歳の患者が本当に望んでいることなのだろうか」と疑問を呈する。同氏は、「本研究結果は、診断後すぐに透析を開始すれば生存期間は延びるかもしれないが、透析に長い時間を費やすことになり、入院が必要になる可能性も高まることを示している」と付け加えている。 論文の上席著者であるスタンフォード大学医学部腎臓学教授のManjula Tamura氏は、「透析は、けいれんや疲労などの副作用を伴う上に、通常、1回当たり3~4時間の通院が週に3回必要になる、かなり集中的な治療であり、生活習慣の大きな変化を伴う」と指摘する。そして、「全ての患者にとって、特に高齢患者にとって、透析開始により得るものと失うものを理解することは極めて重要だ。患者と医師は、透析を行うかどうかと透析開始のタイミングを慎重に検討すべきだ」と主張する。 Montez-Rath氏は、「患者やその家族は、透析が唯一の選択肢である、あるいは透析により寿命が大幅に延びると考えがちだ。患者は、透析が何を意味するのかをよく理解せずに同意してしまうことが多い」と話す。一方Tamura氏は、医師の方も、患者に希望を与えたい、あるいは透析治療の欠点を十分に理解していないという理由で患者に透析を勧めることがあると指摘する。 Tamura氏は、「医師は、フレイルのある高齢患者に対する透析を、延命の手段ではなく、症状緩和を目的とする治療として説明することを検討する必要があるかもしれない」との考えを示す。同氏は、「現在、透析は、患者にとって生きるか死ぬかの選択肢として捉えられることが多い。このように説明されると、患者には透析が自分の目的に合致するかどうかを考える余裕がなくなる上に、治療により得られるベネフィットやウェルビーイングの過大評価にもつながる。しかし、透析が症状緩和として説明されると、患者は透析により得られるものもあれば失うものもあるということをより理解しやすくなるだろう」と話している。

4253.

大規模ケースシリーズから見る、子宮移植の成功率と安全性(解説:前田裕斗氏)

 この研究は、先天性の子宮欠損や子宮摘出後などの絶対的子宮因子不妊の女性における子宮移植の安全性と有効性を評価する研究であり、患者数が20と単一施設で行われたケースシリーズ研究の中では最多となる。合併症の内訳など、結果の詳細については別記事を参照されたい。 子宮移植の成功率は70%と、同じ臓器移植である腎移植が1年で96~98%生着することを考えると依然として低いといえる。一方、米国で行われた33例をまとめた先行研究でも成功率は74%であり、現在のプロトコルではやはりこのくらいの成功率といえるだろう。特筆すべきは、移植が成功したすべての女性で生児を獲得できている点と、母体・新生児の短期的合併症の頻度が比較的低い点であろう。この研究では、14例中、妊娠高血圧腎症は1例、早産は2例であり、子宮移植期間中に適切な免疫抑制を続ければ比較的安全に管理できることが示された。 今後、問題となるのはドナー側の安全性および長期予後となるだろう。手技的にがんの手術である広汎子宮全摘術よりもさらに広い範囲に術野が及ぶことから、ある程度合併症が起こるのは仕方ないにせよ、1人に尿管内血栓による尿閉、1人に両側尿管熱傷などが生じている。ドナーの安全性がより高い割合で保たれるよう、さらなる手技の洗練が求められる。また、今回の研究では最長6年まで子供の追跡調査が行われており、6歳以降の影響については不明である。この点についても症例の蓄積がなされることを期待したい。

4254.

「偽り」がとりもつ人間関係【Dr. 中島の 新・徒然草】(546)

五百四十六の段 「偽り」がとりもつ人間関係令和の米不足も一息ついたみたいですね。先週土曜日に近所の野菜直販所に行ったら、新米に群がる大勢の人が!もちろんウチも購入しました。ところが、翌日に行ったらまたびっくり。もう値段の高い米は売れ残っていました。野菜直販所にもスーパーにも米がまったくなかった頃を考えると、ずいぶんな違いです。さて先日のこと。脳外科外来にやってきた患者さんは、私と同年代の男性です。大昔に患った病気のせいで呂律が回っていません。が、頭のほうはよく回っているのか、今も会社経営をしています。患者「中島先生。ウチの姉が僕の病気について知りたいと言ってましてね」中島「なるほど」患者「別に僕のことを心配しているわけでもないと思うんですけど」一体、どういう姉弟関係なんですかね。中島「診察の時に一緒に来ていただいたら病状説明しますよ」患者「それが、北海道に住んでいるものですから」中島「ちょっと遠いですね」患者「電話で話してやってくれませんか」中島「そのくらい、いいですよ」この患者さん、やおら携帯を取り出して電話をかけます。患者「ああ僕や、今ええか?」姉「……」患者「あんなあ、中島先生が話をしてくれるって」身内とはいえ、ずいぶん偉そうな物言いです。もうちょっと丁寧にしゃべってもよさそうなもの。患者「ほな、電話代わるからな」そう言って携帯を渡されました。これは人の道を説くチャンスです。中島「もしもしお姉さまですか。私、○○さんの担当をしている中島と申します」姉「あっ先生。いつもお世話になっています」中島「○○さんの病状は安定していて、当分は心配ありません」姉「それを聞いて安心しました」お姉さんはいたって普通の人でした。中島「それでですね。○○さんは『いつもお姉ちゃんには迷惑をかけて申し訳ない』と仰ってましてね」私の正面に座っている○○さん。驚いた顔で「いやいや」と手を振っています。中島「今度大阪に来たときには、何ぞ旨いもんでもご馳走したいって」姉「あの子がそんなことを言うわけないですよ」そう言いながらも、お姉さんはちょっと嬉しそうでした。中島「すき焼きとお鮨のどちらがいいですか?」姉「先生、冗談はやめてください」中島「なにっ、鰻がいいですか、わかりました。ご本人にはそのようにお伝えしておきます、ではまた」私が携帯を戻すと、○○さんは驚愕の表情。患者「先生、何てことを言ってくれるんですか!」私も負けていません。お姉さんの言ったことが聞こえているはずはないですから、何とでも言えます。中島「お姉さんは涙ぐんでましたよ。『あの子がそんなことを言ってくれるなんて』って」患者「いやいや、あいつがそんなことを言うはずがない!」中島「『本当は優しい子なんですよ』とも」患者「そんなアホな」中島「とりあえずは鰻ですね。お好み焼きなんかでごまかしたりしないように」これで姉弟関係をとりもつことができました。めでたし、めでたし。……って何のこっちゃ!最後に1句新米の 季節に輝く 姉弟愛

4258.

LCAT欠損症〔Lecithin-cholesterol acyltransferase deficiency〕

1 疾患概要■ 概念・定義1966年、角膜混濁、貧血、蛋白尿を呈し、慢性腎炎の疑いで33歳の女性がノルウェー・オスロの病院でみつかった。腎機能は正常ではあるが、血清アルブミンはやや低く、血漿総コレステロール、トリグリセリドが高値で、コレステロールのほとんどはエステル化されていなかった。腎生検では糸球体係蹄に泡沫細胞が認められた。その後、患者の姉妹に同様の所見を認め、遺伝性の疾患であることが疑われた。その後、ノルウェーで別の3家系がみつかり、後にこれらの患者は同一の遺伝子異常を保有していた。患者は血中のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)活性を欠損しており、NorumとGjoneによりこの疾患が家族性LCAT欠損症(Familial LCAT deficiency:FLD)と名付けられた。後にCarlsonとPhilipsonによって魚眼病(Fish eye disease:FED)が報告された。LCATは、血漿リポタンパク質上のコレステロールのエステル化反応を触媒し、この反応はHDL上とアポリポ蛋白(アポ)B含有リポ蛋白(LDLとVLDL)上の両方で起こる。前者をα活性、後者をβ活性と呼ぶ。LCAT蛋白のα活性とβ活性の両者を欠損する病態がFLD、α活性のみを欠損する病態がFEDと定義されている。現在これらはいずれもLCAT遺伝子の変異による常染色体潜性遺伝性疾患であることが知られており、LCAT機能異常を原因とする脂質代謝異常とリポ蛋白異常を介してさまざまな合併症を引き起こす1-3)。わが国では、2015年7月1日に指定難病(259)として認定されている。■ 疫学FLDおよびFED症例の大部分はヨーロッパで報告されており、FLD症例報告数は男性が多い。ヘテロ接合体の地理的分布は、FEDとFED患者にみられる分布と同じである。興味深いことに、ヘテロ接合体の性別分布は、FED変異とFLD変異のヘテロ接合体の男女比は同等であると報告されている。角膜混濁はほぼすべてのFLDおよびFED患者に認められる。HDL-C値は、FLDとFEDの両者で一様に低く、ほとんどの患者で10mg/dL未満である。FLD症例の85%以上は報告時に蛋白尿を呈しているが、FED症例では蛋白尿は報告されていない。FLD患者のほとんどは貧血を合併している。臨床学的に明らかな動脈硬化性心血管疾患は、FLD患者の10%程度、FED患者の25%程度で報告されている。■ 病因第16番染色体短腕に存在するLCAT遺伝子の変異が原因である。単一遺伝子(LCAT遺伝子)の変異による先天性疾患であり、常染色体潜性遺伝形式をとり、既報では100万人に1人程度の頻度であると述べられている。わが国において同定されている遺伝子変異は20種類程度ある。■ 症状LCAT欠損症の典型的な臨床所見を表に記載した。表 LCAT欠損症の典型的臨床所見画像を拡大するLCAT活性測定法は外因性(HDL様)基質を用いる方法でα活性を評価できる。内因性基質を用いる方法では、血中の総エステル化活性(Cholesterol esterification rate:CER)が評価できる。これらを併用することで、FLDとFEDの鑑別が可能である。1)脂質代謝異常LCATによる血漿リポ蛋白上のコレステロールのエステル化反応は、アポA-IやEなどのアポリポ蛋白の存在を必要とする。FLDやFEDにおけるLCAT活性の低下はHDL-Cの顕著な減少を引き起こし、未熟なHDLが血漿中に残り、電子顕微鏡観察で連銭形成として現れる。このHDLの成熟や機能の障害に伴ってさまざまな合併症が引き起こされる。2)眼科所見角膜混濁はしばしば本症で認識される最初の臨床所見であり、幼少期から認められる。患者角膜実質に顕著な遊離コレステロールとリン脂質の蓄積が観察される。FLDよりもFEDにおいてより顕著である。本症では中心視力は比較的保たれているものの、コントラスト感度の低下が顕著であり、患者は夜盲、羞明といった自覚症状を訴えることがある。3)血液系異常赤血球膜の脂質組成異常により標的赤血球が出現し溶血性貧血が認められる。赤血球の半減期が健常人の半分程度である。また、溶血のため血糖値と比較してHbA1cが相対的に低値となる。4)蛋白尿、腎機能障害幼少期から重篤になるケースは報告されていないが、蛋白尿から進行性の腎不全を発症する。FEDでは一般に認められない。患者LDL分画に異常リポ蛋白が認められ、それが腎機能障害と関連することが示唆されている。5)動脈硬化前述のように動脈硬化性心血管疾患を合併することがある。しかし、これまでに行われている研究の範囲では、LCAT欠損が動脈硬化性心血管疾患のリスクとなるかどうかはどちらとも言えず、はっきりとした結論は得られていない。■ 予後本症の予後を規定するのは、腎機能障害であると考えられる。特定のFLD変異を有する1家系を中央値で12年間追跡調査した研究によると、ホモ接合体ではeGFRが年平均3.56mL/min/1.73m2悪化したのに対し、ヘテロ接合体では1.33mL/分/1.73m2、対照では0.68mL/min/1.73m2であった4)。また、これまでの症例報告をまとめた最近の総説において、FLD患者は年平均6.18mL/min/1.73m2悪化していると報告されている3)。18例のFLD患者を中央値で12年間追跡調査した研究では、腎イベント(透析、腎移植、腎合併症による死亡)は中央値46歳で起こると報告されている5)。これらの報告から、典型的な症例では、蛋白尿を30歳頃から認め、腎不全を40〜50歳で発症すると考えられる。FLDとFEDに共通して、角膜混濁の進行による患者QOLの低下も大きな問題である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 一般検査角膜混濁、低HDL-C血症が本症を疑うべき主な臨床所見である。さらにFLDでは蛋白尿を認める場合がある。HDL-Cはほとんどの症例で10mg/dL未満である。LCATがコレステロールのエステル化を触媒する酵素であることから、総コレステロールに占めるエステル化コレステロールの割合(CE/TC)が低下する。CE/TCはFLDで著減するのに対し、α活性のみが欠損するFEDは大きく低下することはない。■ 特殊検査1)脂質検査HDLの主要なアポリポ蛋白であるアポA-I、A-IIが低下する。血清または血漿中LCAT活性の低下が認められる。LDL分画を中心として異常リポ蛋白が同定される。2)眼科検査Slit-lamp examination(細隙灯検査)により上皮を除く角膜層に灰白色の粒状斑が観察される。本症の患者の中心視力は、比較的保たれているケースが多い一方で、コントラスト感度検査で正常範囲から逸脱することが報告されている。■ 腎生検FLDが疑われる場合は腎生検が有用である。糸球体基底膜、血管内皮下への遊離コレステロールとリン脂質の沈着が認められる。泡沫細胞の蓄積、ボーマン嚢や糸球体基底膜の肥厚が観察される。電子顕微鏡観察では毛細管腔、基底膜、メサンギウム領域に高電子密度の膜構造の蓄積が認められる。■ 確定診断遺伝子解析においてLCAT遺伝子変異を認める。以下に本症の診断基準を示す。<診断基準>本邦におけるLCAT欠損症の診断基準を難病情報センターのホームページより引用した(2024年7月)。最新の情報については、当該ホームページまたは原発性脂質異常症に関する調査研究班のホームページで確認いただきたい。A.必須項目1.血中HDLコレステロール値25mg/dL未満2.コレステロールエステル比の低下(60%以下)B.症状1.蛋白尿または腎機能障害2.角膜混濁C.検査所見1.血液・生化学的検査所見(1)貧血(ヘモグロビン値<11g/dL)(2)赤血球形態の異常(いわゆる「標的赤血球」「大小不同症」「奇形赤血球症」「口状赤血球」)(3)異常リポ蛋白の出現(Lp-X、大型TG rich LDL)(4)眼科検査所見:コントラスト感度の正常範囲からの逸脱D.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。他の遺伝性低HDLコレステロール血症(タンジール病、アポリポタンパクA-I欠損症)、続発性LCAT欠損症(肝疾患(肝硬変・劇症肝炎)、胆道閉塞、低栄養、悪液質など蛋白合成低下を呈する病態、基礎疾患を有する自己免疫性LCAT欠損症)二次性低HDLコレステロール血症*1(*1 外科手術後、肝障害(とくに肝硬変や重症肝炎、回復期を含む)、全身性炎症疾患の急性期、がんなどの消耗性疾患など、過去6ヵ月以内のプロブコールの内服歴、プロブコールとフィブラートの併用(プロブコール服用中止後の処方も含む))E.遺伝学的検査LCAT遺伝子の変異<診断のカテゴリー>必須項目の2項目を満たした例において、以下のように判定する。DefiniteB・Cのうち1項目以上を満たしDの鑑別すべき疾患を除外し、Eを満たすものProbableB・Cのうち1項目以上を満たしDの鑑別すべき疾患を除外したもの3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 臓器移植腎移植は一時的な腎機能改善には効果があるが、再発のリスクがある。角膜移植も同様である。■ 食事および薬物治療低脂肪食により腎機能障害の進展が遅延した症例がある。腎機能の増悪の予防や改善を目的とした薬物療法が行われた症例がある。いずれも対症療法であり、長期の進展予防効果や再発の可能性は明らかでない。■ 人工HDL(HDL-mimetic)人工HDLの輸注により腎機能の低下が遅延し、腎生検では脂質沈着がわずかに減少したと報告されている。■ 酵素補充療法組換え型LCAT蛋白の輸注によるものと、遺伝子治療による酵素補充療法が考えられる。1)組換え型LCAT製剤米国で組換え型LCATの臨床試験が1例実施され、脂質異常の改善とともに貧血、腎機能の改善が認められたが、その効果は2週間程度であった。繰り返し投与が必須であり、また、臨床試験期間中に組換え型LCATの供給が不足し、当該患者は透析治療に移行したと報告されている。2)遺伝子治療遺伝子治療は、より持続的な酵素補充が可能であると考えられる。LCAT遺伝子発現アデノ随伴ウイルスベクターが動物実験で評価されている。わが国で脂肪細胞を用いたex vivo遺伝子細胞治療が、臨床試験段階にある。投与された1例において、LCAT活性は臨床試験期間を通じて患者血清中に検出されている。これらは長期の有効性が期待される。4 今後の展望FLDとFEDの診断には、代謝内科、眼科、腎臓内科など複数の診療科の関与が必要であること、また、本疾患が自覚症状に乏しいことなどにより診断が遅れる、もしくは診断に至っていない患者がいると考えられる。わが国では、現状LCAT活性の測定や遺伝子検査は保険適用対象外であり、このことも医師が患者を診断することを困難にしている。現在、遺伝子組換え製剤の輸血や遺伝子・細胞治療によるLCAT酵素補充療法が開発中である。近い将来、これらの治療法が実用化され、患者のQOLが改善されることが期待される。5 主たる診療科代謝内科、眼科、腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患政策研究事業(原発性脂質異常症に関する調査研究)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会ガイドライン「低脂血症の診断と治療 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」(2023年6月30日発行)(医療従事者向けのまとまった情報)千葉大学医学部附属病院【動画】LCAT欠損症について【動画】LCAT欠損症の治療について未来開拓センター(いずれも一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報LCAT欠損症患者会(患者とその家族および支援者の会)1)Santamarina-Fojo S, et al. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th edn. 2001;2817-2833.2)Kuroda M, et al. J Atheroscler Thromb. 2021;28:679-691.3)Vitali C, et al. J Lipid Res. 2022;63:100-169.4)Fountoulakis N, et al. Am J Kidney Dis. 2019;74:510-522.5)Pavanello C, et al. J Lipid Res. 2020;61:1784-1788.公開履歴初回2024年9月12日

4259.

近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門【大学医局紹介~がん診療編】

林 秀敏 氏(主任教授)三谷 誠一郎 氏(医学部講師)渡邉 諭美 氏(医学部講師)村岡 未沙子 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴われわれの理念は「がん患者さんの健康と幸福のためにすべてを行う」です。腫瘍に関わる内科診療をすべて自科で行います。肺、消化器、乳房、頭頸部、希少がんなど年間900例の新規患者さんを診療します。病棟は50床、化学療法目的は20%程度でほかは腫瘍救急や緩和ケア、ゲノム診療など内科的力量が鍛えられる環境となります。臨床、橋渡し、基礎研究(Mayoなどへの海外留学も!)も積極的に行っており、卒後10年以内でJAMA oncologyなど一流誌への筆頭著者としての論文発表も可能です。さまざまながんに対する治験も100以上行われており、われわれも研究者として名を連ねるNEJMやLancetなどにある新しい治療を先んじて経験可能です。文字通り、「すべてを行う」ことが可能な環境です。医師の育成方針専攻医は当初病棟にて腫瘍に関わる内科的診療や手技(実は手技が多いのも特徴です)を学びます。習熟度に応じて外来を1年目の下半期から開始とし、化学療法の決定、マネジメントをがん薬物療法専門医(国内大学最大数です)のサポートの元で行います。がんセンターはもちろん、大阪や関東など多くの基幹市中病院より当院で育成された腫瘍内科医が欲しい、という要望があり、実際に300~1,000床クラスの病院へ腫瘍内科を輩出してきました。オンオフははっきりしており、業務時間内はハードな勤務となりますが、いち早く「腫瘍内科医として1人で生きていける」ように支援します。医局における取り組み当科は、肺がん・消化器がん・乳がん・頭頚部がん・原発不明がんを中心として、さまざまな固形腫瘍を1つの科で臓器横断的に診療する点においては、日本で唯一無二と言っても過言ではありません。外来から入院まで途切れることなく診療に携わり、緩和医療にも関わる機会が多くあることも、当科の特徴と考えています。また、カンファレンスだけでなく、普段から若手の先生が質問、発言しやすい雰囲気づくりを心掛けています。医学生/初期研修医へのメッセージ実際に、上記のような点を、当科の魅力として捉えてもらって、本学内外を問わず、2024年度は6名の新入局員(専攻医5名)が加わり、来年度も複数名の先生を、新たな専攻医として迎える予定です。がん診療、とくに薬物療法の領域は、まだまだ発展途上の領域です。今後、ますます多くの仲間を加えて、がん診療の発展に貢献できればと考えています。当医局を選んだ理由私は元々臨床医を志していたのですが、この医局から新しいエビデンスが次々に生み出される様子を目の当たりにし、目の前にいる患者さんだけでなくこれからの患者さんによりよい治療を届けていくための研究の重要性を痛感し、自分も臨床だけでなく研究の側面でもがん治療に貢献していきたいと思い入局しました。医局の雰囲気、魅力産休・育休を二度経験しましたが、時短や日当直免除等その時々の状況に合わせて働き方を決めさせてもらっています。またオンラインカンファレンスを導入し、朝、子供の見送りがある医師が道中でも参加できるようになっています。男性医師も育休を取り、小さいお子さんがいる場合には8~16時といったフレキシブルな働き方も可能で、比較的自由度の高い職場であると感じています。カンファレンスは忌憚のない意見を言い合う雰囲気が良く、切磋琢磨しあえる環境があります。ぜひわれわれの医局に新しい風を吹き込みにやってきてください。当医局を選んだ理由私が腫瘍内科を志望したのは、絶えず進歩している抗がん剤治療を幅広く知りたいという気持ちがきっかけです。抗がん剤治療について調べる中で、近畿大学腫瘍内科の存在を知りました。そこでの多種多様ながん種に対する取り組みや豊富な臨床経験を持つ医師の層の厚さを見学の際に実感しました。その経験が決め手となって、入局を決意しました。現在学んでいること現在は、専攻医の1年目として肺がんや消化器がんをはじめとしたさまざまながん種の治療法や副作用マネジメント、緩和医療などを学んでいます。病棟業務から外来対応まで、多くの患者さんと接する機会があり、1人ひとりの異なるニーズに応えるのはとても難しいですが、上級医のサポートに助けられながら日々診療を行っています。この経験はこれから出会う患者さんへより良い医療を提供するための大きな財産になると思い、日々努力を重ねております。医学生/初期研修医へのメッセージ腫瘍内科に興味がある方には、ぜひ一度見学にお越しいただき当科での診療について、より具体的なイメージを持っていただければと思います。近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門住所〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2問い合わせ先seiichiro.mitani@med.kindai.ac.jp医局ホームページ近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門専門医取得実績のある学会日本内科学会日本臨床腫瘍学会日本緩和医療学会日本呼吸器学会日本呼吸器内視鏡学会日本消化器病学会研修プログラムの特徴(1)臓器横断的な診療を、外来から入院まで主体的に担っており、緩和医療を実践する経験も豊富。(2)全国でも有数の治験実施施設であり、臨床研究が盛んであるだけでなく、橋渡し研究や基礎研究にも従事でき、学位取得も可能。希望者には海外留学を支援。(3)ライフワークバランスを考慮した勤務体制で、産休・育休取得も随時相談可能。

検索結果 合計:35104件 表示位置:4241 - 4260