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HPVワクチンの子宮頸予防効果を確認、PATRICIA studyの中間解析から

子宮頸の主要な原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)感染が注目を集め、その対策としてHPVワクチンの予防投与への期待が高まっている。子宮頸の発症率が高いアフリカ、南アジア、南米の途上国における普及が急がれる一方で、先進国では女児への予防投与によって若者の性道徳が乱れるのではないかとの懸念の声が上がるなど、一般市民レベルの議論もさかんだ。 発性を有するHPVは15のタイプが確認されており、そのうちHPV16およびHPV18が子宮頸の70%以上に関連することが国際的な調査で示されている。フィンランド・ヘルシンキ大学産婦人科のPaavonen氏らは、子宮頸の予防法としてのHPV16/18 L1ウイルス様粒子ワクチン投与の有用性を評価するための国際的な無作為化第III相試験(PATRICIA study)を実施しており、6月30日付Lancet誌上でその中間解析の結果を報告した。途上国を含む14ヵ国が参加する大規模臨床試験2004年5月~2005年6月の間に、途上国を含む14ヵ国において15~25歳の若年女性18,525名が、HPV16/18ワクチン群(9,258名)あるいは対照群(A型肝炎ワクチン、9,267名)に無作為に割り付けられた。これらの対象には、すでに軽度の細胞学的異常でワクチン投与を受けているものや、HPV16、HPV18以外の発性HPVに感染(多くの症例が複数種のウイルスに感染)しているものが含まれた。子宮頸部の細胞診および生検を行い、PCR法にて14の発性HPVタイプの有無を評価した。子宮頸の予防の指標は、HPV16あるいはHPV18を伴うgrade 2~3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2+)に対する抑制効果とした。今回の中間解析は、病変部にHPV16あるいはHPV18が確認されたCIN2+の患者が23例に達した時点で開始した。平均フォローアップ期間は14.8ヵ月であった。HPV16/18ワクチンはCIN2+の発症を有意に抑制23例のCIN2+のうち、2例はHPV16/18ワクチン群であったが、21例は対照群であった。複数のHPV タイプに感染していた症例は14例であり、2例がHPV16/18ワクチン群、12例が対照群であった。これらのデータを解析したところ、CIN2+に対するHPV16/18ワクチンの有効性は90.4%(97.9%信頼区間:53.4-99.3、p<0.0001)であった。安全性については、両群間に臨床的に意味のある差は認めなかった。Paavonen氏は、「HPV16/18ワクチンを用いた補助療法は、HPV16あるいはHPV18感染によるCIN2+の発症に対して有意な予防効果を示したことから、子宮頸の予防法として有用と考えられる」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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自家細胞注入法は女性の腹圧性尿失禁の標準的治療法となるか

尿失禁のうち、急迫性尿失禁は排尿筋の過活動によって起き、腹圧性尿失禁は尿道括約筋複合体の機能障害を原因とする。女性の尿失禁の8割近くが腹圧性あるいは混合性であることから、尿道括約筋複合体(尿道、横紋筋性括約筋)を治療ターゲットとしたアプローチは有望と考えられている。 前臨床試験では、自家筋芽細胞の経尿道的注入により横紋筋性括約筋の再生が促進され、線維芽細胞は尿道粘膜下層の再建に有効なことが示されている。オーストリア・インスブルック医科大学泌尿器科のStrasser氏らは、腹圧性尿失禁に対する経尿道的超音波ガイド下自家筋芽細胞/線維芽細胞注入法と従来の内視鏡的コラーゲン注入法の有効性と認容性を比較する無作為化試験を実施、その結果を6月30日付Lancet誌上で報告した。尿失禁スコア、横紋筋性括約筋の収縮性などを従来法と比較2002~04年の間に、腹圧性尿失禁の女性患者63例が登録された。42例が経尿道的超音波ガイド下自家筋芽細胞/線維芽細胞注入法(自家細胞注入群)に、21例が内視鏡的コラーゲン注入法(従来法群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、24時間排尿日誌、24時間パッドテスト、患者質問票に基づく尿失禁スコア(0~6点)および横紋筋性括約筋の収縮性、尿道と横紋筋性括約筋の厚さとした。自家細胞注入群で尿失禁スコアが著明に改善フォローアップ期間12ヵ月の時点で尿失禁が完全に解消された症例は、自家細胞注入群が38例(90%)であったのに対し、従来法群は2例(10%)にすぎなかった。尿失禁スコア(中央値)は、ベースラインの6点から自家細胞注入群は0点へと著明な改善を示したのに対し、従来法群は6点のままであり、有意な差が認められた(p<0.0001)。横紋筋性括約筋の平均厚は、ベースラインの2.13mm(全症例の平均)から自家細胞注入群が3.38mmへと増加したのに対し、従来法群は2.32mmにとどまった(p<0.0001)。また、横紋筋性括約筋の収縮性はベースラインの0.58mmから自家細胞注入群は1.56mmへ増加したが、従来法群は0.67mmにすぎず、有意差が見られた(p<0.0001)。治療後の尿道厚の変化は両群で同等であった。フォローアップ期間3年の時点においても、自家細胞注入法による重篤な有害事象や瘢痕の報告はなく、術後の有効性に変化は見られないという。Strasser氏は、「自家細胞の経尿道的注入法を尿失禁の標準的治療法として確立するには、多くの症例を対象とした長期にわたるプロスペクティブな多施設共同比較試験を実施する必要がある」としている。(菅野 守:医学ライター)

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妊婦のSSRI使用と先天異常リスク増加に関連性は見られなかった

6月中旬に厚労省から「若年成人で自殺行動リスクが高くなる恐れがある」と注意喚起が促されたパキシル(塩酸パロキセチン水和物)を含む、うつ病治療薬として最も頻繁に使用されるSSRIの妊婦服用リスクに関する報告が、NEJM誌6月28日号に寄せられた。先天異常9,622例の母親に電話インタビュー妊娠可能な年齢にある女性の大うつ病の有病率はピーク時で10~25%に達するが、SSRIの妊婦服用に関する安全性情報は乏しい。カナダ、バンクーバーにあるBritish Columbia大学のSura Alwan氏らは、妊婦のSSRIをめぐって懸念が示されている先天異常、特に先天性心欠損との関連性について調査を行った。研究対象はNational Birth Defects Prevention Study(全米先天異常予防研究:NBDPS)から、重い先天異常を有する乳児9,622例のデータを使用。症例児は8つの州で奇形児サーベイランスシステムを通じて確認された1997年から2002年の間の誕生児。対照群として同じ地区からランダムに4,092例が選択された。各母親に電話で妊娠前後の服薬を含む危険因子に曝された可能性に関してインタビューを行い、SSRI治療[プロザック(フルオキセチン)、 ゾロフト(セルトラリン)、パキシル(塩酸パロキセチン水和物)]が受胎前1ヵ月から受胎3ヵ月後の間に行われていた場合をSSRI曝露と定義した。先天異常の分類は26のカテゴリーとサブカテゴリーで行った。先天性心欠損ほか大半の先天異常との関連性に有意差見られず結果は、無脳症[214例、曝露9例、補正オッズ比2.4(95%信頼区間1.1-5.1)]、頭蓋骨癒合症[432例、曝露24例、補正オッズ比2.5(95%信頼区間1.5-4.0)]、臍ヘルニア[181例、曝露11例、補正オッズ比2.8(95%信頼区間1.3-5.7)]の3種類で関連性が見られたが、先天性心欠損ほか大半の先天異常については有意な関連性は見られなかった。また、前記3種類についても絶対危険度は低く、Alwan氏らは「これらについてはさらなる研究で確認をする必要がある」と提言した。なおNEJM同日号で、Carol Louik氏らによる同様のSlone Epidemiology Center先天異常研究を対照とした研究報告が寄せられている。合わせて参照するとより興味深いだろう。(武藤まき:医療ライター)

33404.

99%の外科医が研修中に針刺し事故を経験

研修中の外科医が針刺し事故を被るリスクは高く、事故の報告を適切に行うことが、早めの予防処置あるいは治療開始に重要なステップとなる。米国ジョンズ・ホプキンズ大学のMartin A. Makary氏らは、その実態調査を行った。NEJM誌6月28日号からの報告。アンケート回答率は95%調査は17の医療センターで研修中の外科医に、これまでに被った針刺し事故について、回答用紙を郵送で返送してもらう方法で行われた。調査内容は、最新の事故が被雇用者保健サービス(employee health service)に報告されていたかどうか、およびハイリスク患者(すなわちHIV・B型肝炎・C型肝炎ウイルスの感染既往歴がある、あるいは注射薬使用のいずれか1つに該当する)に関与したかどうかについて。また、事故原因と周囲の状況についても調べられた。回答率は95%だった。卒後年数が増すほど事故件数が増加回答者699人のうち582人(83%)が針刺し事故を被っていた。また平均事故件数が、卒後1年目では1.5件、2年目では3.7件、3年目では4.1件、5年目では7.7件と、卒後年数(PGY)が増すほど増える傾向にあることが明らかとなった。研修期間の最終年までに研修医の99%が事故を被り、そのうち53%はハイリスク患者に関与するものだった。半数以上が未報告一方、報告状況については、最新の578件中297件(51%)が被雇用者保健サービスに報告されていなかった。その理由として最も多かったのが「時間がない」(42%)。未報告の事故について本人以外で誰が知っているかについては、最も多かったのは指導医(51%)、最も少なかったのは配偶者や恋人などの身内(13%)だった。以上の結果を踏まえMakary氏らは、「針刺し事故は研修中の外科医の間でごく普通のことで、報告されていないことが多い。予防・報告ストラテジーを改善することが、外科医療提供者の職業安全を向上するために必要である」とした。(武藤まき:医療ライター)

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肥満児への体重管理プログラム介入の成果

米国では小児肥満が「蔓延」している状況にあり、2型糖尿病を含む共存症の原因となっている。肥満児の大半は肥満したまま成人になるため、若年で重篤な代謝性疾患を来すことも懸念される。この重大な健康問題に対処するため効果的な小児科学的介入が欠かせなくなっている。 エール大学医学部臨床研究センターのMary Savoye氏らは、肥満児に対する体重管理プログラムの介入を集中的に行った結果、体重、BMI、体脂肪、HOMA-IRなどで改善効果が得られたとする発表を行った。JAMA誌6月27日号からの報告。 体重管理プログラムと臨床的カウンセリングを無作為割り付けMary Savoye氏らは、体重管理プログラム(Bright Bodies)介入が肥満児の体脂肪蓄積と代謝性疾患に及ぼす影響を、対照群と比較しながら無作為化臨床試験を行った。参加者の募集と追跡調査はコネチカット州ニューヘーヴン市にあるエール小児肥満クリニックが担当、運動プログラムには日本製のダンスゲームが使われた。対象は、8歳から16歳までの様々な人種から、年齢・性別でBMI値が 95パーセンタイル値以上の者が選ばれ、体重管理群と対照群に割り付けられた。トータルで135例(60%)が6ヵ月間、119例(53%)が12ヵ月間の介入・追跡調査を受けた。介入は、体重管理群(n=105)は運動、栄養改善と行動変容を目的とした家族ぐるみの集中的なプログラムを、対照群(n=69)は従来型の臨床的体重管理カウンセリングを受けた。最初の6ヵ月は隔週で、その後は隔月に実施された。12ヵ月継続で体成分、インスリン抵抗性など改善の有効性を確認体重管理群と対照群の体重、BMI、体脂肪、HOMA-IRの変化を12ヵ月時点で測定した結果は次の通りで(平均値、[95%信頼区間])、Savoye氏らは、「Bright Bodies体重管理プログラムを12ヵ月継続した肥満児で、体成分やインスリン抵抗性の改善効果が得られた」と報告した。・体重(+0.3kg[-1.4~2.0]対+7.7kg[5.3~10.0])・BMI(-1.7[-2.3~-1.1]対+1.6[0.8~2.3])・体脂肪(-3.7kg[5.4~-2.1]対+5.5kg[3.2~7.8])・HOMA-IR(-1.52[-1.93~-1.01]対+0.90[-0.07~2.05])(朝田哲明:医療ライター)

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30年間にわたる超早産児の脳性麻痺出現率の変化

超早産児においては極めて高率で脳性麻痺(CP)が見られることは報告されてきたが、公表されているCP有病率は、出生年代が異なるさまざまな臨床現場からの報告で、その点での比較に限界が指摘されていた。カナダ・アルバータ大学のCharlene M. T. Robertson氏らは、30年間にわたる超早産児のCP有病率の変化を、域内人口動態および在胎月齢に着目して評価を試みた。JAMA誌6月27日号に掲載。域内人口動態に基づく前向き縦断アウトカム研究を実施カナダ・アルバータ州北部では、1974年から2003年までの30年間に、在胎齢20~27週で出生時体重500~1249gの超早産児2,318例の生産があった。そのうち1,437例(62%)は2歳までに死亡、23例(1%)は追跡不能、858例(37%)が神経発達面での集学的評価を受けている。そこで、域内人口動態をベースとしたCP有病率を主要評価項目とし、CP有病率の経年変化の評価を、スプライン平滑化ロジスティック回帰分析で行った。生存率上昇とCP有病率の関連性に疑問を提示生存2歳児858例のうち122例(14.2%)がCPで、診断は3歳あるいはそれ以上の年齢になってから確定されていた。在胎月齢20~25週グループでは、2年生存率は4%から31%まで向上した(P<0.001)が、生産1000対CP有病率は1974-1976年から1992-1994年にかけては0から110まで単調に増加し(P<0.001)、その後2001-2003年に22に減少(P<0.001)していた。一方、在胎月齢26~27週グループの2年生存率は23%から75-80%の間で増加し(P<0.001)、CP有病率も1992-1994年まで15~155まで単調に増加(P<0.001)、その後2001-2003年には16に減少した(P<0.001)。2001-2003年に生まれた全生存例のCP有病率は生産1000対19であった。直近の10年間における在胎月齢20~27週、出生時体重500~1249gの超早産児におけるCP有病率は、確実な減少傾向を示しており、また死亡率も1992-1994年をピークに安定もしくは減少に転じていた。これらからRobertson氏らは、低体重児の生存率上昇とCP有病率を結びつけた従来の報告には限界があり、NICUにおける積極的な治療の功罪を踏まえた新生児学の進展など重要なファクターを見落としている可能性があると注意を促している。(朝田哲明:医療ライター)

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意思決定支援で、第2子を経膣分娩で出産する女性増加

帝王切開は一般的な分娩法として施行機会が増加している。英国では、1980年の9%から2001年には21%に増え、最近では23%と報告されている。米国やオーストラリアも同様の傾向にある。しかし、帝王切開の頻度の上昇に従って、母子ともに分娩時の合併症が増加しているとの報告があり、医療コスト面での問題もあることから、第2子を経膣分娩で出産する「帝王切開分娩後の経膣分娩(VBAC)」の見直しが進められている。 第1子を帝王切開で出産し、第2子を妊娠中の女性は、計画的経膣分娩と選択的反復帝王切開のいずれかの選択を迫られるが、このような意思決定に関して葛藤状態にある妊婦に対する最適な意思決定アプローチは明確でない。ブリストル大学地域医療学科のAlan A. Montgomery氏らは、第2子を妊娠中の女性において、コンピュータを用いた2つの意思決定支援法と従来のケアが、意思決定に関する葛藤と分娩法の選択に及ぼす効果を評価する無作為化試験を実施した。BMJ誌5月31日付オンライン版、6月23日付本誌掲載の報告から。 妊婦の意思決定に関する葛藤への支援と分娩法の選択を評価対象は、子宮下部帝王切開にて第1子を出産し第2子を妊娠中の女性で、37週以降の出産が見込まれるものとした。2004年5月~2006年8月の間に、英国南西部およびスコットランドの4施設に742名の妊婦が登録された。これらの妊婦を以下の3つの群に無作為に割り付けた。(1)通常ケア群:産科医および助産師による標準的なケアを受ける。(2)情報プログラム群:計画的経膣分娩、選択的帝王切開、緊急帝王切開に関して、予想される母子の臨床的アウトカムの説明を受ける。(3)意思決定分析群:予想される臨床的アウトカム情報とともに、妊婦自身が効用評価を行い、それ基づいて分娩法が推奨される。(2)(3)の妊婦は簡単な説明ののちコンピュータを用いたインターベンションを受けた。意思決定に関する葛藤は、decisional conflict scale(DCS)で測定した。葛藤や不安が軽減、経膣分娩による出産が増加意思決定に関する葛藤は、通常ケア群に比べ情報プログラム群および意思決定分析群において有意に軽減されていた。経膣分娩による出産の割合は、通常ケア群に比し意思決定分析群で多かった。意思決定支援法は、第1子を帝王切開で分娩した妊婦が第2子の分娩法を決める際の支援として有用であった。Montgomery氏は、「コンピュータによる意思決定支援法は、妊婦の意思決定に関する葛藤や不安を軽減し、分娩の知識を増加させる。この介入法により、経膣分娩で出産する女性が実質的に増加する可能性がある」としている。なお、日本も同じ背景をかかえており、経膣分娩をふやす努力が払われているが、設備および人材のそろった施設を要するなどの課題をかかえている。折しも、産科医不足の状況が、この問題にも影響を及ぼしていることは想像にかたくない。(菅野 守:医学ライター)

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どうすれば、貧困層も地域健康保険のベネフィットを平等に享受できるか

途上国では、貧困層は病気になってもケアを受けようとしない傾向がある。医療費負担によりさらなる貧困に陥るからだ。一方、地域社会的な健康保険は、途上国における医療への近接性の改善や財政保護の手段として語られることが多い。しかし、現在の一般的な地域保健のスキームでは、会員が少ない、最貧層が除外されている、ベネフィットの活用における不平等などにより、資源の平等な再配分には限界がある。 では、最貧層が地域健康保険のベネフィットを獲得できるようにするためにはどうすればよいか。ロンドン衛生学熱帯医学校・医療経済学/財政計画科のM. Kent Ranson氏らは、スキームを改善する新たな介入戦略について検討した。BMJ誌5月25日付オンライン版、6月23日付本誌掲載の報告から。 SEWA会員を対象に、地域健康保険受給の公正化を目的に介入女性自営者協会(SEWA、http://www.sewa.org/)は、インド西部のグジャラート州を基盤とするインフォーマル部門(小規模な労働集約的作業所)に従事する貧困女性労働者の組合組織で、現在50万人以上の会員をかかえる。1992年から、会員向けに健康保険を含む家族保険を発行している。Ranson氏らは、保険申請の公正化を目的に2つの介入法と標準的スキームを比較するプロスペクティブなクラスタ無作為化対照比較試験を実施した。2003年に、16地区のSEWA会員を(1)アフターサービス+サポート管理、(2)退院時払い戻し、(3)(1)+(2)、(4)標準的スキームの4つの群に割り付け、2年間のフォローアップを実施した。全体の保険受給率は改善したが、介入による効果は認めなかった2003~2005年の間に、SEWA保険会員の平均的な社会経済状況が有意に改善しており(グジャラート州在住者との比較)、平均受給率も有意に改善した(p<0.001)。しかし、介入群と標準的スキーム群の間には有意な差は見られなかった。また、同一地区の会員と比較して、受給者の社会経済状況に対する介入の系統的な効果は認められなかった。Ranson氏は、「各地区の貧困層が地域健康保険のベネフィットをより多く享受できるようにするには、これらの介入法では不十分であった」と結論した上で、「介入の結果として受給の申し込みが増加したことから、地域健康保険の認知度および信頼度は強化されたと考えられる」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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高血圧患者の拡張障害に対するRA系抑制の有用性確認できず:VALIDD試験

高血圧患者では拡張障害の結果、心不全発症に至るケースが多いと考えられている。そこでLancet誌6月23日号に掲載されたVALIDD試験では、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を含まない降圧薬とRA系抑制薬の間で、高血圧患者の拡張障害改善作用が比較されたが、有意差はなかった。試験期間は38週間本試験の対象は、左室駆出率50%超にもかかわらず心不全が認められた本態性高血圧患者384例。試験開始時の血圧はおおむね144/86mmHgだった。RA系阻害薬とアルドステロン拮抗薬を服用していた患者は服用を停止した上、バルサルタン320mg/日追加群(186例)とプラセボ追加群(198例)に無作為化された。血圧が135/80mmHg未満に達しない場合、RA系抑制薬・アルドステロン拮抗薬以外の降圧薬を自由に追加できた。拡張能改善作用に有意差なし二重盲検法にて38週間追跡した結果、1次評価項目である「拡張弛緩速度」はバルサルタン追加群で0.60cm/秒試験開始時に比べ有意(p

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進行パーキンソン病の遺伝子治療、世界的に注目を集める試験で一定の成果が

掲載誌の発行前からその成果が伝えられ、発表後は日本でも一般紙などがさかんに報じている注目の研究。 パーキンソン病では黒質のドパミン作動性ニューロンの消失によって基底核回路に変化が起き、視床下核への抑制性のγ-アミノ酪酸(GABA)作動性インプットの低下などをきたす。そのため、運動開始困難、筋硬直、振戦を特徴とする運動障害が起きる。ドパミン作動性神経伝達薬の有効性は確立されているが、進行パーキンソン病ではジスキネジアやmotor fluctuationなど許容しえない薬剤関連合併症が多くみられる。 アメリカNYにあるコーネル大学Weill 医学部脳神経外科のMichael G. Kaplitt氏らは、運動回路内に正常な脳活性を再確立すれば、パーキンソン病の運動障害は回復するとの仮説のもと、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてGABAの産生を促進するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)遺伝子を視床下核ニューロンへ直接導入する遺伝子治療を試みた。Lancet誌6月23日号の報告。高、中、低用量のAAV-GADを視床下核の片側に手術的に注入Kaplitt氏らは、パーキンソン病12例(男性11例、女性1例、平均年齢58.2歳)を対象に、GAD遺伝子を移入したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-GAD)を視床下核の片側(対側半身の運動機能に対応)に手術的に注入し、その安全性および認容性を検討するオープンラベル試験を実施した。症例選択基準は、Hoehn and Yahr stage 3以上で、少なくとも5年以上の病歴があり、薬剤効果非発現時にmotor fluctuationがみられる70歳以下の症例とした。AAV-GADを低、中、高用量投与する3群に分け、それぞれに4例ずつを登録した。臨床評価は、ベースライン(併用薬の効果発現時、非発現時)、術後1、3、6、12ヵ月後に行い、日常生活動作(ADL)の評価にはUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)を用い、神経心理学的検査、PET検査を施行した。治療関連有害事象は認めず、3ヵ月後に運動能が有意に改善、1年後も持続全登録例が手術を受け、脱落例やフォローアップ不能例はなかった。治療に関連した有害事象は認めなかった。遺伝子治療3ヵ月後には、視床化核のAAV-GAD注入側とは対側半身の運動関連UPDRSスコアが有意に改善し(併用薬効果非発現時:p=0.0015、同発現時:p=0.01)、その効果は12ヵ月後も持続していた。PET検査では、治療側に限定的な視床部代謝の減少が確認され、臨床的運動スコアと補足運動野の脳代謝に相関が認められた。以上の結果により、Kaplitt氏は「進行パーキンソン病において、視床下核のAAV-GAD遺伝子治療は安全で良好な認容性を示し、成人脳に対するin vivo遺伝子治療は種々の神経変性疾患に対し安全に施行可能なことが示唆された」と結論した。なお、現在、日本で進められている遺伝子治療(自治医大神経内科・中野今治氏)では、hAADC遺伝子を組み込んだAAV-2ベクターを線条体に注入するとともにL-DOPAを経口投与する方法が採用されている。(菅野 守:医学ライター)

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くすぶり型多発性骨髄腫について3つのリスク層化モデルが報告

これまで、進行や転帰の因子が明らかにされていなかった「くすぶり型多発性骨髄腫」について、新たな知見が報告された。同疾患は形質細胞の増殖異常疾患で自覚症状に乏しく、症候性多発性骨髄腫やアミロイドーシスへの進行リスクが高いとされてきたが、その進行リスクの度合いと診断基準の指標である骨髄形質細胞の割合および血清Mタンパク量との関連が見出され、予後の異なる3つのリスク層化モデルが作成できたことを、Robert A. Kyle氏らメイヨークリニックの研究グループが報告した。詳細はNEJM誌6月21日号に掲載された。276例の全経過を追跡調査この研究は、骨髄腫の国際的な研究グループIMWG(International Myeloma Working Group)が策定した、くすぶり型多発性骨髄腫の診断基準を満たした患者の診療記録を検討したもの。対象は、メイヨークリニックで1970~1995年の26年間に多発性骨髄腫と診断された3,549例のうち、くすぶり型の診断指標である骨髄形質細胞≧10%あるいは血清Mタンパク量≧3g/dLを満たす276例(8%)。診断時の年齢中央値64歳(範囲:26~90歳)、40歳以下8例、男女比62%対38%。診断指標に基づき3つのグループ(下記参照)を作り、骨髄穿刺液と生検検体の調査、および死亡に至る疾患の全過程の経過が調べられた。・グループ1(骨髄形質細胞≧10%、血清Mタンパク量≧3g/dL)・グループ2(≧10%、<3g/dL)・グループ3(<10%、≧3g/dL)骨髄形質細胞割合と血清Mタンパク量が予後に関係追跡調査は累積2131人-年行われ(範囲:0~29、中央値6.1)、そのうち163例(59%)が、症候性多発性骨髄腫(57%)またはアミロイドーシス(2%)を発症していた。疾患の全体的な進行の危険度は、最初の5年が10%/年、次の5年が3%/年、最後の10年が1%/年。進行の累積確率は、5年時51%、10年時66%、15年時73%だった。進行に関与する重大なリスク因子は、血清Mタンパクの量とタイプ、尿中L鎖の存在、骨髄形質細胞の割合、免疫グロブリンの減少にあることが明らかとなった。そして、くすぶり型から症候性への疾患進行リスクの度合いは、グループ1(106例)の進行の累計確率が15年時87%、進行までの時間は2年(中央値)、グループ2(142例)は70%、8年、グループ3(27例)は39%、19年だった。(武藤まき:医療ライター)

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小児期発症の多発性硬化症は緩徐に進行

小児期発症の多発性硬化症(MS)は、成人期発症型よりもゆるやかに進行することが、Christel Renoux氏らKIDMUSの研究グループによって報告された。KIDMUSは、ヨーロッパの多発性硬化症データベース「EDMUS」(European Database for Multiple Sclerosis)の研究プロジェクトの1つ。一般に20~40歳の若年成人期に発症するとされているMSの、16歳以下で発症した患者(0.4~10.5%)の経過や予後を明らかにすることを目的とする。今回研究グループはEDMUSのデータベースを活用し、成人期発症型と比較しての解析を行った。詳細はNEJM誌6月21日号に掲載。EDMUS登録の小児394例と成人1,775例を比較本研究は、EDMUSネットワークに参加しているフランスとベルギーの13の施設の神経科の患者データから、1976年から2001年の間に登録された患者で、16歳以下で発症した患者394例、16歳以後の発症1,775例を対象に、それぞれの初期の臨床像や発症日、再発、二次進行型への転換、不可逆的障害への転帰について調査された。不可逆的障害の判定は、Kurtzkeの機能障害評価尺度を使用。同尺度は1~10段階で、数値が高いほど障害の度合いが高いことを示す。このうち、スコア4(歩行能力に制限はあるが介助なしあるいは休まずに500m以上歩ける)、スコア6(片側から支えてもらっても休まずに100m以上歩けない)、スコア7(壁や家具など身体の支えながら休まずに10m以上歩けない)が用いられた。小児と成人の経過差は10年以上小児期発症MS患者の二次進行型への転換時期は、発症から推定28年、41歳時だった。障害転帰への時期は、スコア4へは発症から20.0年、34.6歳時、スコア6へは28.9年、42.2歳時、スコア7へは37.0年、50.5歳時(いずれも中央値)。また、女性患者の比率が成人型発症MSと比べると高く(男女比1.8対2.8)、初期に再発寛解を繰り返す割合が98%と高いこと(成人期発症型は84%)、二次進行型もしくは不可逆的障害への転換・転帰へ至る期間が成人期発症型より10年以上長くかかっていた。そして転換・転帰時の年齢は両者間で約10歳の開きがあることが明らかとなった(すべての比較でP<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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のリスク評価は十分に大きな家系構造の分析と遺伝子検査で

シティ・オブ・ホープのJeffrey N. Weitzel氏らは、家族性ではないと診断された早発型乳患者の家系構造とBRCA遺伝子異常の有無について調査を行った結果、これまで用いられてきた遺伝性乳のリスク評価モデル(Couch、Myriad、BRCAPRO)では、女性親族の少ない乳患者における再発や卵巣のリスクを正確に予測することはできないとし、50歳以下で散発性と思われた乳女性患者に対して遺伝子検査をすすめるべきだと報告した。JAMA誌6月20日号に掲載。早発型乳のリスク予測に異議遺伝性乳の常染色体優性遺伝のパターンは、親族が少なかったり、父親から受け継ぐことでマスキングされている可能性がある。米カリフォルニア州の臨床遺伝学研究・治療施設シティ・オブ・ホープのWeitzel氏らは、それならば早発型乳では、現行のリスク評価モデルよりも家系構造を把握することが、リスク予測に有用だとする仮説を立てて検証した。研究は1997年4月から2007年2月にかけて、ハイリスク患者の遺伝発リスク評価とBRCA遺伝子テストを行う全米のクリニックで、前向きレジストリ研究に参加した女性乳患者1543例。その中から発症が50歳前で、第1度および第2度近親に乳または卵巣に罹患した親族がいない306例を選んで行われた。主要評価項目は、BRCA遺伝子の変異状態の予測が大規模家系(第3度近親以上)による評価かどうかとした。その際、母方・父方それぞれの第1度および第2度近親者に45歳以上の存命中の女性親族が2人以下の場合は「女性親族の少ない家系」の例と定義。3つのリスク評価モデル(Couch、Myriad、BRCAPRO)を使って家系構造の影響と突然変異確率を、段階的な重回帰分析によって評価し、感度と特異度を測定し、描かれたROC曲線を評価した。家系構造がBRCA遺伝子の変異リスクを予測半数の153例(50%)は女性親族の少ない家系群で、そのうち、BRCA遺伝子の変異は13.7%で検出された。一方、女性親族が多い家系群のBRCA遺伝子変異は5.2%で、家系構造が変異リスクの重要な予測因子であることが明らかとなった(オッズ比2.8、95%信頼区間1.19-6.73、P=0.02)。3つのリスク評価モデルとも顕著な特徴を示さなかったが、ROC曲線から、BRCAPROモデルからの補正が、最も正確な予測因子であることを示していた(曲線下面積0.72、95%信頼区間0.63-0.81、P=0.001)。(朝田哲明:医療ライター)

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メディケア・パートDの処方薬リストから広適用薬を探し出せ

65歳以上の高齢者を対象とした米国の医療保険メディケアは2006年1月から、それまで保険給付外だった外来患者の処方薬を給付対象とした。これはメディケア・パートDと呼ばれ、メディケア発足以来の大改革と言われているが、薬代を給付する民間保険会社と契約している患者ごとに処方薬リストが異なるため、少なからず混乱を招いている。 ハワイ大学医学部のチェン・ウエン・ツェン氏らは、カリフォルニア州とハワイ州をサンプルに、各保険会社の処方薬リストがどのような薬をカバーしているのかを調査した。その結果、各リスト間には多くの相違があり、開業医が処方薬を把握するのは容易でないことが明らかになった。JAMA誌2007年6月20日号に掲載。115処方薬リストから8療法の広適用薬を調査メディケア受給者が全米で最も多いカリフォルニア州(72の処方薬リストがある)と、受給者数が少ないハワイ州(43リスト)の2州で、処方頻度の高い治療薬それぞれにおいて、大多数のパートDで適用される広適用薬が少なくとも1つあり、それを医師が確認できるかどうかを調べた。両州のパートD処方薬リストの適用範囲を調べるため、2006年3月1日から4月15日にかけてメディケアのウェブサイトで、高血圧、高脂血症、うつ病治療で使われる8療法(〔1〕ACE阻害薬、〔2〕ARB、〔3〕β遮断薬、〔4〕カルシウムチャネル遮断薬、〔5〕ループ利尿薬、〔6〕SSRI、〔7〕スタチン、〔8〕チアジド利尿薬)を調査(保険の事前承認なし、患者負担≦$35、リスト収載率≧90%)。主要評価項目は、広適用薬を少なくとも1つ持つとした。ジェネリック73%、ブランド薬6%が広適用薬カリフォルニア州では、確認できた薬が75例で、それぞれの適用範囲は7%から100%まで幅があった。しかしこうした変動幅はあったが、8療法のうちARBを除く7療法には、少なくとも1つの広適用薬が含まれていた。そして34例の広適用薬(45%)のうち、2例以外はジェネリック医薬品だった。リスト収載率を≧95%、患者負担≦$15に制限しても、8療法中7つには最低1つの広適用薬が含まれていた。また全体として、73%のジェネリック薬と6%のブランド薬は広適用薬と言えた。この所見はハワイにおいても同様で、処方薬リストはかなり異なっていたが、ARBを使った療法以外は少ない患者負担分で1つ以上の広適用薬があった。ツェン氏らはこの結果を受け、「医師にとって容易ではないが、ジェネリック薬品のすべてが広適用薬ではないこと、また、ブランド薬の多くは広適用薬ではないことを認識し、処方を書く前にどの薬が広適用薬であり、どこまでが適用範囲かを確認する必要があるようだ」と述べている。(朝田哲明:医療ライター)

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下肢末梢動脈疾患の診断に最適なのはMRA

下肢末梢動脈疾患の診断には、MR血管造影(MRA)がCT血管造影(CTA)や超音波ドプラ法よりも適している可能性が示唆された。University of YorkのRos Collins氏らが体系的レビューとしてBMJ誌6月16日号で報告した107研究を対象にレビューCollins氏らは11の文献データベース(1996~2005年)、血管病画像診断を扱う主たる6雑誌、非公表データを含む文献リストから、下肢末梢動脈疾患の診断にMRA、CTAあるいは超音波ドプラ法を用いた研究を抽出した。末梢動脈疾患はすべて症候性とし、有害事象報告以外の論文では、20例以上を対象とした論文に限った。また、診断の正確性を比較した研究では、感度と特異度を算出できる論文だけを対象とした。その結果、107研究が本レビューの対象となった。感度、特異度ともMRAが最も高いまず、診断の正確性を検討した58試験において、「全下肢における50%以上の血管狭窄の検出」を比較すると、MRAは感度(中央値:95%、範囲:92~99.5%)、特異度(中央値:97%、範囲:64~99%)とも最も高かった。CTAは感度91%(中央値、範囲:89~99%)、特異度91%(中央値、範囲:83~97%)、ドプラ法は特異度こそ96%(中央値:範囲:89~99%)と高かったものの感度が88%(中央値、範囲:80~98%)と優れなかった。一方、完全閉塞ではCTAの感度と特異度が最も高く(97%、99.6%)、次いでMRA(94%、99.2%)、ドプラ法(90%、99%、いずれも中央値)となった。一方、有害事象が最も多く報告されていたのはMRAだったが、重篤なものはなかった。またMRA、CTA、ドプラ法のいずれも、従来の血管造影より好ましいと患者は考えていた。(宇津貴史:医学レポーター)

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医療状況の異なる国の比較から見えるプライマリ・ケアの実像とは

プライマリ・ケアが公正で過不足のない効果的な医療システムの構築に最大限に貢献するにはどうすればよいか……。各国の事情がいかに異なろうと、プライマリ・ケアの役割に関する根本的な命題は同じだ。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3ヵ国は、プライマリ・ケア医の供給、健康保険によるプライマリ・ケアへの近接性、専門医療へのゲートキーパーとしてのプライマリ・ケア医の役割が大きく異なる。University of California San FranciscoのAndrew B. Bindman氏は、これら3ヵ国のプライマリ・ケアにおける患者構成、診療の範囲、診療時間などを比較検討することで、プライマリ・ケアの将来像を探った。5月15日付BMJオンライン版、6月16日付本誌で掲載された報告。質問票を用いた合計10万件以上に及ぶcross sectional調査Bindman氏らは、2001~2002年にオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3ヵ国におけるプライマリ・ケアの診療状況を比較検討するために、患者背景、診断、診療時間などに関する質問票を用いたcross sectional調査を実施した。オーストラリアは7万9,790件、ニュージーランドは1万64件、アメリカは2万5,838件の外来受診が解析の対象となった。診断コードはJohns Hopkins expanded diagnostic clustersに準拠し、診療の範囲は疾患に関連する全問題の75%を説明しうるexpanded diagnostic clustersの診断名数として定義された。診療所要時間は医師が記録した外来診療時間などから計算した。プライマリ・ケア医による診療の多くの局面は各国間でよく類似プライマリ・ケア医が管理する1回の外来診療ごとの疾患関連問題数は平均1.4件であった。問題の75%を説明しうるexpanded diagnostic clustersの診断名数は、オーストラリアが52、ニュージーランドが57、アメリカは46であった。健康関連問題の頻度は各国間で高い相関を示した。最も大きな違いは診療時間であり、1患者当たりの年間診療時間はアメリカがもっとも短く、オーストラリアの半分、ニュージーランドの1/3であった。これらの結果を踏まえ、Bindman氏は「3ヵ国はそれぞれプライマリ・ケアの供給および財政の状況が異なるが、プライマリ・ケア医による診療の多くの局面は各国間でよく類似している」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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夭折するロシア男性、その原因とは?

先進工業国の中でロシアは例外的に平均寿命が短い。2004年のデータでは男性59歳、女性72歳、男女とも働き盛りの死亡率の高さが際立つ。25~65歳のロシア男性の死亡率はじつに55%にも及ぶが、イングランド/ウェールズの15%と比べるといかに高い数値かがわかる。また、死亡率には大きな変動が見られ、特に男性で変動が激しいが、就労女性にも同様の傾向が見られる。そして、これらの問題にはアルコールの関与が示唆されている。 London School of Hygiene and Tropical MedicineのDavid A. Leon氏は、ロシア男性の若死に傾向とアルコールの関連を調査、その結果を6月16日付のLancet誌で報告している。典型的なロシアの都市において25~54歳の死亡男性の飲酒状況を調査Leon氏らは、イジェフスク市(ロシア連邦ウドムルト共和国の首都、2002年時の人口約63万2,000人)に居住し、2003年10月20日~2005年10月3日の間に死亡した25~54歳の男性の飲酒状況などについて調査した。対照群は市民の中から無作為に抽出した。死亡男性の生活環境を知る情報提供者に、死亡後6~8週以内にインタビューを行った。死亡男性1,468名、対照群1,496名について、飲酒状況(酒の種類、頻度、量)、工業用エタノールを原料とする非飲用アルコールの飲用頻度、学歴、喫煙歴に関する情報を収集した。就労年齢ロシア男性の死因の約半数が有害な飲酒と密接に関連対照群のうち問題のある飲酒者あるいは非飲用アルコールの飲用者の割合は13%であったのに対し、死亡男性では51%にも達していた。禁酒者や通常飲酒者と比較して、これらの死亡男性の死亡オッズ比は6.0(95%信頼区間:5.0-7.3)と高値であり、過去に非飲用アルコールの飲用歴がある者の年齢補正死亡オッズ比は9.2(95%信頼区間:7.2-11.7)にも達した。さらに、死因の43%が有害な飲酒(問題のある飲酒もしくは非飲用アルコールの飲用)に起因していた。これらの結果は、典型的なロシアの都市に居住する就労年齢男性の死因の約半数が有害な飲酒で説明可能なことを示唆する。Leon氏は、「ソビエト連邦崩壊後の1990年初頭のロシアに見られる急激な死亡率の変動は、非飲用アルコールなどの有害物質の飲用と関連するとの説があるが、今回の解析結果はこの主張を間接的に支持するもの」としている。(菅野 守:医学ライター)

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無煙の嗅ぎタバコへの切り替えが、喫煙による健康被害を集団レベルで抑制

喫煙に起因する死亡者数は、2005年の540万人から2015年には640万人、2030年には830万人に達すると予測されている。Lancet誌は慢性疾患による死亡率を毎年2%ずつ低減させるという大きな目標の実現を呼び掛けているが、その主要原因である喫煙率を抑制するには、世界中が一致団結して努力する必要がある。オーストラリアのクイーンズランド大学のCoral E. Gartner氏らは、紙巻きタバコの害を低下させるとの指摘があるスウェーデン製の無煙の嗅ぎタバコであるスヌース(snus、上唇と歯茎の間に挟んで使用する)に着目、その集団レベルの健康増進効果を評価するための疫学研究を実施した。Lancet誌6月16日号にその結果が報告された。禁煙者とスヌース切り替え者の平均余命はほとんど同じGartner氏は、オーストラリアにおけるスヌースによる集団レベルの健康増進効果を評価するために、多次元生命表(multistate life table)を用いて喫煙未経験者およびスヌースへの切り替えを含む喫煙者の健康調整平均余命について検討した。また、スヌース使用率が異なる喫煙者、元喫煙者、喫煙未経験者が集団レベルの健康被害に及ぼす影響について評価を行った。喫煙未経験者と喫煙者の健康調整平均余命の差は、男性では2.4~5.0年、女性の場合は1.9~4.1年であった。喫煙未経験者と喫煙未経験のスヌース使用者の差は、男性0.2~0.5年、女性0.2~0.3年とわずかであった。同様に、タバコをやめた禁煙者とスヌースに切り替えた喫煙者の健康調整平均余命はほとんど差を認めず、禁煙および切り替えの時期の影響のほうが大きかった。スヌースへの切り替えが集団レベルの健康状態にベネフィットをもたらす紙巻きタバコよりもスヌースの使用量を増やした喫煙者は、本質的な健康の増進効果を実感しているという。Gartner氏は「常習的喫煙者が十分な量のスヌースを使用すれば、集団レベルの健康状態に本質的なベネフィットがもたらされるだろう。現行の制限を緩和すれば、より多くの本質的ベネフィットが生み出されると考えられる」と指摘し、「ベネフィットの大きさは、どれだけの常習的喫煙者がスヌースに切り替えるかにかかっている」と述べている。(菅野 守:医学ライター)

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メタ解析でロシグリタゾンの心血管リスク関与を確認

2型糖尿病患者の治療に広く使われているロシグリタゾンについて、米国オハイオ州クリーブランド・クリニックのSteven E. Nissen氏らが行ったメタ解析では、「心血管系への重篤な有害作用をもたらす可能性がある」と結論付けられている。本論文は、5月21日付NEJMオンライン版で発表され、本誌では6月14日号で収載された。心筋梗塞オッズ比1.43、心血管死亡オッズ比1.64Nissen氏らのメタ解析は、既存の発表論文、食品医薬品局のウェブサイト、製薬メーカーのグラクソ・スミスクラインが管理する臨床試験記録を対象に行われた。対象基準として、試験継続期間が24週以上であること、ロシグリタゾンが投与されない対照群が無作為抽出されていること、心筋梗塞と心血管死亡の転帰データがあること、などを規定し42件の臨床試験を採択。その中から心筋梗塞発生例と心血管死亡例をリストアップし解析を行った。対象患者は27,847例。被験者の平均年齢は約56歳、ベースライン時のグリコヘモグロビン濃度は平均約8.2%。データは固定効果モデルによって統合された。解析の結果、ロシグリタゾン群は対照群と比較して、心筋梗塞発生のオッズ比は1.43(95%信頼区間1.03-1.98、P=0.03)、心血管死亡のオッズ比は1.64(95%信頼区間0.98-2.74、P=0.06)で、ロシグリタゾンが心筋梗塞リスク、および境界線上の心血管死亡リスクいずれの増加にも有意に関与していることが示された。患者と医療提供者に注意を喚起本研究には、心イベントの時間分析が可能なオリジナルデータを入手できないという制約があった。しかしNissen氏らは、そうした解析上の限界・不備を指摘しつつも、今回の結果はロシグリタゾンと心血管リスクの関連性を示すもので、ロシグリタゾン投与による2型糖尿病治療を受ける患者に、心血管系への重篤な有害作用などをもたらす可能性があり、そのことを患者および医療提供者ともに慎重に考慮しなければならない、と注意を喚起している。(武藤まき:医療ライター)

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低出生体重児へのフルコナゾール予防投与で真菌定着を抑制

早産児の疾病および死亡の主原因である侵襲性カンジダ感染症を回避する手法について、イタリア・トリノの聖アンナ病院のPaolo Manzoni氏らのグループは、フルコナゾールの予防投与による効果を検証した。超低出生体重児における真菌定着と感染症予防について、多施設共同での無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施。その結果、フルコナゾールの予防投与が、出生時体重1500g未満の新生児で、真菌の定着と侵襲性感染症の発病率を低下させることが明らかになったという。NEJM誌6月14日号で報告された。6mg投与群、3mg投与群とプラセボに割り付け試験方法は、イタリアにある8つの第三次新生児集中治療施設を対象に、15ヵ月の間に出生した体重1500g未満の新生児322例を、ランダムに30日間(出生時体重1000g以下の新生児は45日間)、フルコナゾール投与群(体重kg当たり6mg投与群と3mg投与群)とプラセボ群に割り付け、菌の監視培養と系統的な感受性試験を毎週実施した。真菌定着、感染症発生ともに有意に低く予防投与は有効その結果、フルコナゾール投与群における真菌の定着率は、6mg投与群が9.8%、3mg投与群は7.7%で、いずれもプラセボ投与群の29.2%と比較して有意に低いことがわかった(いずれもP

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