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HIV感染例の平均余命が改善、高所得国の併用抗レトロウイルス療法施行例

 併用抗レトロウイルス療法(CART)を受けているHIV感染例の平均余命は1996年から2005年の間に延長しており、高所得国における20歳時の平均生存例数は一般人口の約2/3であることが、国際的なコホート研究(ART-CC)で明らかにされた。CARTはHIV感染例の生存率およびQOLを有意に改善するが、一般集団レベルにおける余命への影響は明確でなかったという。カナダBritish Columbia Centre for Excellence in HIV/AIDS のRobert Hogg氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。欧米で実施された14のHIVコホートに関する国際的な共同研究 ART-CC(Antiretroviral Therapy Cohort Collaboration)は、ヨーロッパと北米で実施された14のHIVコホートに関する国際的な共同研究。解析の対象は、年齢16歳以上、CART導入時に抗レトロウイルス療法未治療の症例とした。 CART施行例の平均余命を推算する略式生命表を1996~99年、2000~02年、2003~05年に分けて作成し、性別、ベースライン時のCD4細胞数、注射による薬物使用歴で層別化した。20歳および35歳時にCARTを施行されていた症例のそれ以降の平均生存年数を推算した。20~64歳の間に失われた生存年数および粗死亡率を算出した。粗死亡率が低下、20歳時の平均余命は36.1から49.4歳に延長 CARTが導入されたのは、1996~99年が1万8,587例、2000~02年が1万3,914例、2003~05年は1万854例で、合計4万3,355例であった。試験期間中に2,056例(4.7%)が死亡し、粗死亡率は1996~99年の1,000人・年当たり16.3例から2003~05年には10.0例にまで低下した。同じ期間に失われた生存年数も、1,000人・年当たり366年から189年に低下した。 20歳時の平均余命は、1996~99年の36.1(SE 0.6)歳から2003~05年には49.4(SE 0.5)歳まで延長した。女性の余命は男性よりも長かった。注射による薬物使用を介して感染したと推定される症例は他の感染経路の症例よりも余命が短かった[2003~05年の年齢:32.6(SE 1.1) vs. 44.7(SE 0.3)]。ベースライン時のCD4細胞数が多い症例よりも、少ない症例のほうが余命は短かった[<100個/μL:32.4(SE 1.1)歳 vs. ≧200個/μL:50.4(SE 0.4)歳)]。 研究グループは、「CARTを施行されたHIV感染例の平均余命は1996年から2005年の間に延長したが、特に注射による薬物使用歴の有無、CD4細胞数別のサブグループではかなりのばらつきが見られた。高所得国における20歳時の平均生存例数は一般人口の約2/3であった」と結論している。 また、「1996年以降の顕著な余命の延長は、高所得国ではCARTの効果が徐々に発揮され全体としては治療が成功していることの証左であるが、一般人口との間にはいまだに大きな乖離があるため、今回のデータをHIV感染者の健康サービスの改善に役立ててほしい」としている。

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抗レトロウイルス治療が有効でも、HIVはパートナーに感染する

有効な治療が行われていれば、異性間性交渉によるHIV感染リスクは低いがまったくないとはいえず、男性の同性間性交渉における感染リスクは曝露を繰り返す間に高くなることが、数学的モデルによる解析で判明した。Swiss Federal Commission for HIV/AIDSのコンセンサスでは、有効な抗レトロウイルス療法によって血漿HIV RNAが検出されなくなった症例(<40コピー/mL)からは性交によるHIV感染はないとされていたが、これを覆す知見が得られたことになる。オーストラリアNew South Wales大学、国立HIV疫学・臨床研究センターのDavid P Wilson氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。一方がHIV感染例のカップルでパートナーへの長期的な感染リスクを推算本試験は、Swiss Federal Commission for HIV/AIDSのコンセンサスの一般集団における意義を解析する目的で行われた。研究グループは、単一の数学的モデルを使用して、有効な治療を受けているHIV感染例(HIV RNA<10コピー/mL)からの長期にわたる累積HIV感染率を推算した。対象は、いずれか一方のみがHIVに感染しているカップル(serodiscordant couple)とし、1回の無防備な性交ごと、および多くの性交の累積におけるHIV感染リスクを調査した。有効な治療を受けていても、感染率はコンドーム使用時の4倍に個々のカップルが年に100回の性交渉をもつと仮定すると、HIV非感染のパートナーへの年間累積感染率は、女性から男性への感染の場合は0.0022(uncertainty bounds:0.0008~0.0058)、男性から女性の場合は0.0043(0.0016~0.0115)であった。1万のserodiscordant coupleの集団において、10年間に非感染パートナーがHIV抗体陽性化(seroconversion)する予測数は、女性から男性への感染の場合は215(80~564)、男性から女性の場合は425(159~1,096)であり、男性から男性では3,524(1,477~6,871)であった。これは、コンドームを使用した場合の感染率の4倍に相当する。Wilson氏は、「有効な治療が行われていれば、異性間性交渉によるHIV感染リスクは低いがまったくないとはいえず、男性の同性間性交渉における感染リスクは曝露を繰り返す間に高くなる」と結論し、「有効な治療によってHIV RNAが検出限界を下回る非感染状態にあることが広く受け入れられる場合でも、そのためにコンドームの使用が減少すれば、HIV感染は実質的に増加する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。(菅野守:医学ライター)

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薬剤耐性HIV-1にraltegravirと至適基礎療法の併用が有効

既存の抗レトロウイルス薬に感受性または耐性を示す活性ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対しても、HIV-1インテグレース阻害剤のraltegravir(MK-0518)は活性を示す。raltegravirの国際的第III相臨床試験BENCHMRKにおいて、抗レトロウイルス療法に失敗し治療の選択肢が限られた3クラス薬剤耐性HIV-1感染患者に、raltegravirを至適基礎療法と併用することで良好なウイルス抑制効果があることが報告された。ニューヨーク州立大学Roy T. Steigbigel氏らによる報告は、NEJM誌2008年7月24日号にて掲載された。2地域699例で有効性と安全性を比較raltegravir+至適基礎療法の併用による安全性と有効性をプラセボとの比較評価で検討するために、異なる地域で2つの同一試験を行った。試験対象患者(703例中699例)は、raltegravir群とプラセボ群に2対1の比率で無作為に割り付けられ試験薬が投与された(raltegravir群462例、プラセボ群237例)。699例中17例(2.4%)は16週以前に試験中止となった。そのうち中止理由が治療に関係していたのは13例(raltegravir群7例;同群全体の1.5%、プラセボ群6例:同2.5%)。なお2つの試験結果の整合性はとれている。48週時点でもHIV-1 RNAレベルを有意に抑制試験中止例を治療失敗例とし、16週時点での結果を比べてみると、HIV-1 RNA量が400コピー/mL未満に抑制されたのは、プラセボ群では236例中99例(41.9%)だったのに対して、raltegravir群は458例中355例(77.5%)だった(P

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ソラフェニブは進行性肝細胞患者の生存期間を延長する

進行性の肝細胞患者に有効な全身療法はないが、これまでの予備試験の結果、分子標的薬のソラフェニブ(商品名:ネクサバール、本年1月承認で国内では腎のみ適応)が、肝細胞にも有効である可能性が示されている。本論は、スペイン・バルセロナ大学のJosep M. Llovet氏らによる報告で、ソラフェニブの国際共同第III相臨床試験SHARPの結果。「ソラフェニブは生存期間を延長する」と報告されている。NEJM誌2008年7月24日号より。602例の生存率と症状進行の時間を比較評価全身療法を受けていない進行性肝細胞患者602例を、1日2回400mgのソラフェニブかプラセボの投与を受ける多施設共同二重盲検プラセボ試験に無作為に割り付けた。主要項目は全生存率と症状進行の時間、副次的転帰は放射線学的な進行と安全性。予定された第2回中間解析の時点で、被験者のうち321例が死亡したため試験は中止されている。生存期間と症状進行時間は3ヵ月延長全生存率の中央値は、ソラフェニブ群10.7ヵ月に対してプラセボ群は7.9ヵ月だった(ソラフェニブ群のハザード比:0.69、95%信頼区間:0.55~0.87、P

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うつ病治療に伴う女性の性機能障害にもバイアグラが有効

抗うつ薬の選択的・非選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)治療に関連する一般的な副作用として性機能障害があり、しばしば抗うつ薬による治療を早期に中断せざるを得ない要因ともなっている。これまでSRIによる性機能障害に、シルデナフィル(商品名:バイアグラ)が有効なことは知られていたが、米国ニューメキシコ大学医学部のH. George Nurnberg氏らは、女性にも同様に効果があると報告した。JAMA誌2008年7月23日号より。閉経前の女性98例に対して性行為前に服用させ比較2003年9月1日から2007年1月1日の間、米国内の7つの研究施設において、大うつ病がSRI治療で沈静化したものの、性機能障害も経験した閉経前の女性98人(平均年齢37.1歳)を対象に、8週間の前向き・2群並行・無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した。患者は49例ずつ無作為に、性行為の前にシルデナフィルまたはプラセボを50~100mgまで増減して服用するよう割り付けられた。主要評価項目は、研究終了時点で、Clinical Global Impression性機能スケールによるベースラインからの変化の平均差とした。副次的評価項目は、Female Sexual Function Questionnaire、アリゾナSexual Experience scale(女性版)、ニューメキシコ大学Sexual Function Inventory(女性版)および性行為記録、ハミルトンうつ病評価スケールとした。内分泌レベルも評価が行われた。性機能スコアは改善、深刻な副作用は見られずClinical Global Impression性機能スコアは、シルデナフィル群が平均1.9(95%信頼区間:1.6~2.3)だったのに対して、プラセボ群は同1.1(0.8~1.5)で、終了時点の平均差は0.8(0.6~1.0、P=0.001)だった。ベースライン登録患者の22%は、早期に中断する結果になったが、シルデナフィル群の平均エンドポイントは性機能スコア1.5(1.1~1.9)であり、プラセボ群は同0.9(0.6~1.3)、終了時点の平均差は0.6(0.3~0.8、P=0.03)と有意な差があった。ベースラインにおける内分泌レベルは正常範囲内で、群間差はなかった。うつ病のハミルトン・スコアは平均値4.0(SD 3.6)で、両群の寛解度は同程度だった(P=0.90)。治療期間中に頭痛、潮紅、消化不良はしばしば報告されたが、深刻な副作用で脱落した患者はいなかった。このためNurnberg氏は、「SRI服用で性機能障害になった女性に対するシルデナフィル治療は、有害な性的効果を減少させる」と結論した。(朝田哲明:医療ライター)

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外国生まれの米国居住者における結核感染状況

アメリカでは結核対策の強化によって感染者が減少している。しかし、外国生まれの米国居住者の患者数は、2006年における全米の患者数の57%を占めていた。現行の対策では、入国者における高い結核感染率と潜在的な結核感染症への対処が不十分だとして、米国疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らが、入国者集団の感染状況およびスクリーニング法を評価。JAMA誌2008年7月23日号に結果が掲載された。2001~2006年の入国者の感染状況を調査2001~2006年の間に結核と診断された、米国入国者の記述疫学的な分析によって、入国者集団における結核感染率と薬剤耐性菌リスクを評価し、入国者が出身国で受けるスクリーニング法に培養法を加えた場合の影響を検証した。主要評価項目は、入国後の時間、出身国、入国時の年齢によって階層化した結核感染率と、抗結核薬耐性パターン、入国後3ヵ月以内に結核と診断されたケースの特徴とした。アフリカ南部と東南アジア出身者が高リスク期間中入国者のうち4万6,970例が結核と診断された。このうち1万2,928例(28%)は入国後2年以内だった。入国後の時間が経過するほど結核感染率は低下するものの、入国後20年以上の集団でさえ、米国生まれの人より感染率は高いことが判明した。サハラ以南のアフリカと東南アジア出身者は入国者全体の22%だが、結核患者数の比率ではこれら出身者で53%を占めていた。最近のベトナムからの入国者の20%が、ペルーからの入国者の18%が、結核治療薬イソニアジド(商品名:イスコチン、ネオイスコチン、ヒドラ錠)に対する耐性が高かった。平均すると1年に250人は、米国入国後3ヵ月以内に、塗抹検査陰性、培養検査陽性で結核と診断され、このうち46%がフィリピンとベトナムからの入国者だった。Cain氏は、「サハラ以南のアフリカと東南アジア諸国からの入国者に、潜在的結核感染者が多く、治療することになる比率が特に高い」と報告している。(朝田哲明:医療ライター)

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企業人のメンタルヘルスを考える 「ワーク・ライフバランス チャリティ健康セミナー」を開催

年間の自殺者が3万人を越え、自殺対策基本法の制定(2006年6月)、自殺総合対策大綱の策定(2007年6月)など、自殺対策・予防が大きな社会問題となっているが、 1)社会や企業などの各種団体の担当者や管理者への啓蒙活動 2)セミナー参加者の心と身体の健康つくりへの貢献 3)自殺予防に関する団体の支援(研修会の収益の寄付など) 4)官、民、学の枠を超えた連携基盤を構築することを目的に、今秋、軽井沢でセミナーが開催される。現代日本で増え続けるメンタル関連疾患を社会全体で理解するため、各界の有名講師が集まるとともに、セミナーの収益はすべて日本いのちの電話連盟など自殺予防の活動を行っている民間団体に寄付される。 ワーク・ライフバランス チャリティ健康セミナー(第1回) ●日 時:2008年(平成20年)10月9・10日(木、金) ●会 場:万平ホテル(長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢旧軽井沢925)●主 催:ワーク・ライフバランス チャリティ健康セミナー ●詳細・問い合わせはホームページをご覧くださいhttp://www.occn.zaq.ne.jp/cuakf809/ ●お問い合わせ先:〒168-0081 東京都杉並区宮前3-8-3-105(有)ケイ・マーケティング・コミュニケーションズ  河村久美子 (kumik@yk9.so-net.ne.jp)Phone:03-3247-6248 / Fax:03-3247-6271

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プライマリ・ケアにおける急性腰痛症は回復に時間がかかる

オーストラリアの開業医によって管理される急性腰痛症患者の予後を評価する研究が、ジョージ国際健康研究所筋骨格部門(オーストラリア)のNicholas Henschkeらによって行われた。「診療ガイドラインにあるほど予後良好ではない」と報告されている。BMJ誌オンライン版2008年7月7日号より。170人の開業医らから集められた患者973例を1年間追跡試験は1年間の患者コホート追跡調査で、オーストラリア・シドニーにあるプライマリ・ケア・クリニックから患者が集められ行われた。追跡対象となった参加者は973例。市内170人の開業医、理学療法士、カイロプロテクターから、2003年11月から2005年7月までの間に、2週間以上痛みが持続し非特異的な腰痛症と診断された患者が集められた。平均年齢43.3歳、男性54.8%。主要転帰は、参加者記入による初診時アンケートの結果を基線に、6週間後、3ヵ月後、12ヵ月後に回復度について聞き取りが行われた。回復度は仕事への復帰、機能回復、痛みの消散によって評価された。予後因子と回復までの時間の関連はCox回帰分析で検定された。1年以内に回復したのは72%12ヵ月時点まで追跡調査ができたのは97%。そのうち基線で仕事ができない状態だった患者で2週間以内に仕事復帰できたのは約半数。3ヵ月時点で仕事復帰できていたのは83%だった。機能および痛みについてはより時間がかかり、機能回復までの時間の中央値は31日(25~37日)、痛みの消散までの時間の中央値は58日(53~63日)だった。そして12ヵ月以内に完全に回復していたのは72%にすぎなかった。高齢になるほど、また障害の程度、痛みの程度が重篤なほど、その持続期間は増す傾向にあり、回復により時間を要することも明らかとなっている。うつ感情やその持続の危険は、回復までにかかる時間と相関していた。「プライマリ・ケアで急性腰痛症を管理されているこの患者コホートにおける予後は、診療ガイドラインで示されているほど良好ではない。大半の患者は回復までに時間がかかり、3分の1は1年以内に回復には至らないことが明らかとなった」と結論している。

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喘息情報サイト「Zensoku.jp」で「二宮清純のゼンソク人間学」スタート

グラクソ・スミスクライン株式会社が運営する喘息情報ウェブサイト「Zensoku.jp」(http://zensoku.jp)の新企画として、対談シリーズ「二宮清純のゼンソク人間学」がスタートした。スポーツジャーナリストの二宮清純さんがナビゲーターを務め、喘息とかかわりの深い著名人やスポーツ選手をゲストに、喘息について語り合うというもの。二宮さんは幼い頃から喘息で、長年つらい症状に悩まされたという。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_07/P1000497.html

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「キッザニア東京」の『病院パビリオン』に「薬局」がオープン

ヤンセンファーマ株式会社は、体験を通して楽しく社会を学べる“こどもが主役のこどもの街”「キッザニア東京」の『病院パビリオン』に新設される「薬局」オープンにあたり、製薬企業ならではのノウハウや物品の提供に協力すると発表した。「薬局」は8月1日にオープンし、こども達は薬剤師の仕事を体験することができるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.janssen.co.jp/inforest/public/home/?paf_gear_id=2100029&paf_gm=content&paf_dm=full&vid=v11&cid=cnt50608

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末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行う必要はない

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行うべきか、それとも臨床適応となった場合にだけ行えばよいか。CDC(疾病予防管理センター)では感染対策の観点から72~96時間ごとに変えるべきとしているが、そのエビデンスは乏しく、また近年、ルーチンに変えるほうが静脈炎の発症率が高いといった報告もある。そうしたなか王立ブリスベーン&ウーマンズ病院(オーストラリア)臨床看護センターのJoan Webster氏らは、静脈炎発症率とコストの面で検討を行い、「臨床適応の場合だけ行えばいいようだ」と報告した。BMJ誌オンライン版2008年7月8日号より。オーストラリアの3次機能病院から755例を集め無作為化試験試験はオーストラリアの3次機能病院(Tertiary hospital)を対象に行われた。対象者はmedical and surgical患者755例。379例が臨床適応の場合にのみカテーテルの交換が行われる群に(介入群)、376例がルーチンに交換する群(対照群)に無作為に割り付けられ検討された。主要転帰は、静脈炎や感染症発症によるカテーテル不全の複合的な度合い。ルーチン交換群と臨床適応群にカテーテル不全の有意差なし静脈炎や感染症発症によってカテーテルが取り外されたのは、対照群は123例(33%)、介入群は143例(38%)で有意な違いはなかった(相対リスク1.15、95%信頼区間:0.95~1.40)。留置1,000日間につき生じたカテーテル不全の割合に基づき比較しても、有意な違いは見出せなかった(0.98、0.78~1.24)。手技に関するコストは、対照群のほうが高く、平均41.02オーストラリアドル。介入群は平均36.40オーストラリアドルだった。静脈炎の発症率は、介入群4%、対照群3%で両群とも低かった。Webster氏は「臨床適応のときだけ交換を行ってもカテーテル不全の発生に影響はなかった。ただし今回の知見を検証するため、またより臨床的意義あるアウトカムを静脈炎単独で検証するなど、より大規模な試験を行う必要がある」と結論している。

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急性心筋梗塞の最良の脂質関連リスク因子が解明された:INTERHEART試験

急性心筋梗塞(AMI)の最も優れた脂質関連のリスク予測因子は非空腹時のアポリポ蛋白B100(Apo B)/Apo A1比であることが、国際的な症例対照研究(INTERHEART試験)で明らかとなった。同試験では、修正可能な9つのリスク因子(喫煙、運動、果物/野菜、アルコール、高血圧、糖尿病、腹部肥満、心理社会的状態、Apo B/Apo A1比)で心筋梗塞の人口寄与リスク(PAR)のほとんどを説明できることがすでに示されており、なかでもApo B/Apo A1比はPARの半分に関与しているという。カナダMcMaster大学のMatthew J McQueen氏がLancet誌2008年7月19日号で報告した。52ヵ国から約2万7,000人が登録された大規模な症例対照研究INTERHEART試験は標準化された大規模な症例対照研究であり、世界52ヵ国からAMI 1万2,461例と、年齢、性をマッチさせた対照1万4,637人が登録された。非空腹時の血液サンプルはAMI群 9,345例、対照群1万2,120人から得られた。脂質、リポ蛋白、アポリポ蛋白の血漿濃度を測定し、コレステロールおよびアポリポ蛋白の比を計算した。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、PARは個々の測定項目ごとに算出し、五分位の上位4群と最下位群を比較することで人種ごとに推算した。非空腹時Apo B/Apo A1比をAMIの実地診療に導入すべきApo B/Apo A1比のPAR(54%)が最も高く、ORも最高値を示した(1.59、95%CI:1.53~1.64)。LDLコレステロール(LDL-C)/HDL-C比のPARは37%であった。総コレステロール(TC)/HDL-C比のPARは32%であり、Apo B/Apo A1比に比べ有意に低値であった(p<0.0001)。これら結果は、すべての人種、男性および女性、全年齢層において一致していた。McQueen氏は、「非空腹時のApo B/Apo A1比は、全人種、男女、全年齢層でAMIのリスク予測因子として、いずれのコレステロール比よりも優れていた」と結論し、「世界中でAMIの実地診療に導入すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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アミロイドβペプチドワクチンはアルツハイマー病の神経変性を予防しない

 全長アミロイドβペプチド(Aβ42)ワクチン(AN1792)はアルツハイマー病のアミロイド斑を除去するが、進行性の神経変性は予防しないことが、開発中止後の長期的な事後検証試験の結果から明らかとなった。Aβ42ワクチンの第I相試験では、アミロイド斑の除去効果に加え、多様性が高く広範な非用量依存性を示す抗体反応が確認されていた。イギリスSouthampton大学臨床神経科学部のClive Holmes氏が、Lancet誌2008年7月19日号で報告した。第I相試験の登録例を長期フォローアップ 2000年9月にAβ42ワクチンによる免疫療法のプラセボ対照無作為化第I相試験に登録されたアルツハイマー病の80例(もしくは介護者)から、2003年6月に長期的な臨床的フォローアップ、開発中止後の神経病理学的な検証試験あるいはその両方に関する承諾を得た。フォローアップ試験は2006年9月に終了した。 アミロイド斑の評価は、皮質のAβ免疫染色法(Aβ負荷)およびアミロイド斑の除去を反映する固有の組織学的特徴について行った。重篤な認知症あるいは死亡までの生存率はCox比例ハザードモデル用いて評価した。アミロイド斑は有意に除去、生存期間、重篤な末期認知症発症までの期間は改善せず フォローアップ開始前に20例(ワクチン群15例、プラセボ群5例)が、フォローアップ期間中に22例(ワクチン群19例、プラセボ群3例)が死亡した。死亡例のうち9例(いずれもワクチン群)は検証試験に同意していたが、アルツハイマー病以外で死亡した1例は解析から除外した。 ワクチンを投与され神経病理学的な検査を受けた8死亡例では、Aβ負荷が死亡時の年齢でマッチさせた対照群よりも有意に低かった(2.1% vs. 5.1%、p=0.02)。ワクチン群のAβ負荷およびアミロイド斑除去の程度にはばらつきが見られたが、治療期間中に達成された平均抗体反応が高いほどアミロイド斑除去の程度も高かった(Kruskal-Wallis検定:p=0.02)。 ワクチン群の8例中7例(事実上アミロイド斑が完全に除去された例も含まれる)は死亡前に重篤な末期認知症を呈していた。全体では、生存期間(ハザード比:0.93、95%信頼区間:0.43~3.11、p=0.86)あるいは重篤な認知症に至るまでの期間(1.18、0.45~3.11、p=0.73)について、ワクチン群の改善効果を示すエビデンスは得られなかった。 Holmes氏は、「Aβ42ワクチンはアルツハイマー病のアミロイド斑を除去する効果を有するが、進行性の神経変性の予防効果はない」と結論し、「最近の免疫修飾療法の臨床試験ではアミロイド斑の除去効果と高い安全性が証明されているが、今回の試験からはアルツハイマー病の進行性の神経変性を予防するにはAβの除去だけでは不十分なことが示唆される」と指摘している。

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エビデンスある高齢者の転倒防止対策を普及させよう

米国エール大学医学部のMary E. Tinetti氏らは、「転倒は高齢者によくみられる一般的な病的状態である。またその効果的な予防対策は明らかになっているにもかかわらず、十分に活用されていない」として、コネティカット州において、地域医療や看護・介護関係者に転倒防止対策を採るよう介入を行った。結果、転倒関連の外傷を減らすことができたと報告している。NEJM誌2008年7月17日号より。介入で投薬量減少やバランス・歩行訓練などを推奨調査は非無作為化デザインにより、プライマリ・ケア医師の臨床実践が変わるように介入した「介入地域」と、介入しなかった「通常ケア地域」で、転倒による外傷の発生率を比較した。介入の内容は、医師および在宅看護・外来リハビリテーション・高齢者施設に勤務するスタッフに対して、転倒予防の効果的リスクアセスメントと戦略(例えば投薬量の減少、バランス・歩行訓練)の採用を奨励することだった。転帰は、転倒による重症外傷(股関節等の骨折、頭部外傷、関節脱臼)の発生率と、70歳以上の転倒による医療サービス利用(千人年当たり)とした。介入は2001~2004年に行い、2004~2006年に評価した。重症外傷発生率、医療利用率比ともに低下介入前における、転倒による重症外傷の補正発生率(千人年当たり)は、「通常ケア地域」で31.2、「介入地域」では31.9だったが、評価期間中の補正発生率は、「通常ケア地域」の31.4から「介入地域」は28.6へ低下(補正率比0.91、95%ベイズ信用区間:0.88~0.94)。介入前と評価期間を比較すると、転倒関連の医療利用率(千人年当たり)は、「通常ケア地域」では68.1から83.3へ上昇したが、「介入地域」では70.7から74.2への上昇にとどまった(補正率比:0.89、95%信頼区間:0.86~0.92)。今回の試験で介入を受けた医師の比率は、62%(プライマリ・ケア診療所212ヵ所中131ヵ所)から100%(在宅医療機関26ヵ所すべて)まで幅があった。以上を踏まえTinetti氏は、「転倒防止に関するエビデンスの普及と、臨床実践を変える介入を組み合わせて行うことが、高齢者の転倒による外傷を減らすことを可能とする」と結論した。(武藤まき:医療ライター)

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在胎期間が短いほど成人後のリスクは増大

周産期医療の進歩によって、早産児の生存数は増加しているが、こうした早産児が成人期に必要とする能力については懸念がある。ノルウェー・ベルゲン大学のDag Moster氏らは全国民を対象とした登録制度に基づき長期追跡調査を行った結果、「早産児は成人後も、在胎期間が短いほど医学的・社会的リスクが増大する」と報告した。NEJM誌2008年7月17日号より。ノルウェーで1967~1983年出生の90万3,402例を追跡調査ノルウェーにおける全員加入の登録制度「Medical Birth Registry of Norway(MBRN)」に基づいて、1967~1983年に生まれた、在胎週の異なる小児を特定し、その後の社会的能力を示す転帰と、医学的障害について、2003年まで継続して詳細に記録し検討した。対象となったのは、先天奇形のない生産児90万3,402例(在胎23~27週1,822例、28~30週2,805例、31~33週7,424例、34~36週3万2,945例、37週以降85万8,406例)で、それぞれの在胎期間で、生存し成人期まで経過観察できた対象者の比率は17.8%、57.3%、85.7%、94.6%、96.5%だった。在胎期間は有病率、教育・収入レベルなどと関連この結果、脳性麻痺の有病率は、正期産児の0.1%に対して、在胎23~27週児では9.1%(在胎23~27週の出生相対リスク:78.9、95%信頼区間:56.5~110.0)、精神遅滞の有病率は、同0.4%に対して4.4%(相対リスク:10.3、6.2~17.2)、障害年金受給率は同1.7%に対して10.6%(相対リスク:7.5、5.5~10.0)と高かった。医学的障害がない早産児でも、在胎期間の短さは、到達した教育水準、収入、社会保障の受益率、家庭の構築と関係していた。しかし失業率や犯罪活動とは関連がない。Moster氏は「1967~1983年に生まれたノルウェー人コホートでは、成人期の医学的・社会的障害リスクは、在胎期間が短いほど増大していた」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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シンバスタチンは神経線維腫症1型の認知機能障害を改善しない

神経線維腫症1型(NF1)は、学習障害(LD)の発症頻度が最も高い遺伝病の1つだが、近年、NF1マウス・モデルで、HMG-CoA還元酵素(3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase)のスタチンが認識欠損を修復できることが示された。このため、オランダ・ロッテルダムのエラスムス大学NF1研究チームのLianne C. Krab氏らが、NF1の小児におけるスタチン系薬剤シンバスタチンの効果を検証する無作為化試験を行ったが、結果は「認知機能障害は改善されなかった」と報告されている。JAMA誌2008年7月16日号より。62例について12週間にわたり無作為化二重盲検プラセボ対照試験オランダの大学病院で2006年1月20日~2007年2月8日に、無作為二重盲検プラセボ対照試験登録されたNF1患児114例のうち62例(54%)に、12週間にわたり1日1回、シンバスタチンまたはプラセボが投与された。主要評価項目は、Rey complex figure testによる記憶想起の遅延度、cancellation testによる記憶速度、プリズム適応、MRIによる平均脳ADC(apparent diffusion coefficient)の各スコア。副次評価項目を、cancellation testの標準偏差値、認知機能のためのStroop color word test、block design、object assembly、RCFTによる模写、Beery発達機能検査による視覚統合などのスコアとして、各スコアを基線パフォーマンスと年齢、性別で補正した。有意な改善はobject assemblyスコアのみシンバスタチン群とプラセボ群の間では、Rey complex figure test(β=0.10、95%信頼区間:-0.36~0.56)、cancellation test(β=-0.19、-0.67~0.29)、プリズム適応(オッズ比:2.0、0.55~7.37)、平均脳ADC(β=0.06、-0.07~0.20)のいずれの主要評価尺度でも、全く有意差は観察されなかった。副次評価項目では、シンバスタチン群でobject assemblyスコアのみ有意な改善が見られ(β=0.54、0.08~1.01)、その傾向は、基線パフォーマンスの貧弱な小児で特によく観察された(β=0.80、95%CI:0.29~1.30)。しかし、ほかの副次評価項目は、シンバスタチン投与による有意な効果は明らかにならなかった。Krab氏は「12週間の試験では、シンバスタチンはNF1の患児の認知機能を改善しなかった」と結論付けている。(朝田哲明:医療ライター)

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子供の運動不足は10代前半で急速に進行する

運動不足は小児肥満症の増加と重要な関係がある。米国農務省は、1日最低60分間の「中程度から強度の身体活動」(MVPA)を推奨しているが、実際に最近の子供たちがどのように運動しているかを検証した継続的研究はほとんどなかった。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部小児科のPhilip R. Nader氏らは、9~15歳の追跡調査。10代前半で運動量が急激に減少していると警告した。JAMA誌2008年7月16日号より。9歳から15歳の1,032例を追跡調査米国立小児保健発達研究所(National Institute of Child Health Human Development)が1991~2007年に行い、1,032例が参加した長期研究Study of Early Child Care Youth Developmentから、9歳(2000年)、11歳(2002)、12歳(2003)、15歳(2006)の各年齢におけるMVPA時間を調べた。MVPAは身体に装着した加速度計によって分単位で記録した。参加者のうち男児は517例(50.1%)、女児は515例(49.9%)で、 白人は76.6%(n=791)、低所得世帯は24.5%(n=231)だった。主要評価項目は、参加者が加速度計を4~7日間装着して計測した時間数から割り出した、1日当たりの平均MVPA時間(分)。女児13歳、男児14歳ごろ基準を下回るこの結果、MVPA時間は、 9歳児では週末も平日も1日に約3時間だった。しかしMVPA時間は年々短縮し、週末で毎年41分間、平日でも38分間ずつ減少。15歳までに、週末で平均35分間、平日で平均49分間となっていた。男児は女児より週末で平均13分間、平日で平均18分間だけ長かったが、MVPA時間の減少率は、男女とも同じだった。推奨されたMVPA時間(平日60分間)を下回ったのは、女児では13.1歳前後。男児では14.7歳前後と推定される。週末推奨時間を回ったのは、女児が12.6年、男児が13.4歳だったとみられる。この研究コホートでは、身体活動は9歳から15歳の間に有意に減少した。(朝田哲明:医療ライター)

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オリンピックレベルの選手の突然死を防ぐために

心血管異常を見つけ突然死や症状悪化を防ぐために、スポーツ選手への事前スクリーニングは有効だとされる一方、ここ数十年にわたり臨床有用性が議論されてもいる。米国心臓協会は不支持の態度を示しているが、ヨーロッパ心臓病学会と国際オリンピック委員会は、イタリアで25年以上前から行われていることに注目し、若いアスリートへの事前スクリーニングは必要であるとの態度を表明した。本論は、イタリア・フィレンツェにあるスポーツ医学研究所のデータをフローレンス大学血栓治療センターFrancesco Sofiらが分析・検討した結果で、臨床有用性はあると報告された。BMJ誌2008年7月3日号より。アスリート30,065例(男性23,570例)の5年間のデータを横断的研究本研究は、スポーツ参加者に対して事前に心血管スクリーニングを実施することの臨床有用性を、大規模コホートで検討することを目的とした30,065例(男性23,570例)のアスリートを対象とする、5年間のデータの横断的研究。主要評価項目は、12心電図の安静時と運動負荷時の結果とした。30歳以上のアスリートで運動負荷試時の異常発見とリスク増加とに有意な関連12心電図結果が異常だったアスリートは、安静時は1,812例(6%)、運動負荷時は1,459例(4.9%)。1,227例に、安静時は正常だったものの運動負荷時に異常が示された。スクリーニング結果から、競技スポーツには不適格だとみなされるアスリートは196例(0.6%)だった。心臓を理由に競技スポーツが不適格とされた159例の対象者のうち一定の割合の者について(n=126、79.2%)、安静時の12心電図では良性あるいはネガティブな所見だったが、運動負荷によって明らかな病理学的変化が示された。影響を及ぼす可能性のある交絡因子を調整後にロジスティック回帰分析を行った結果、30歳以上の者について、運動負荷試験中に不適格な心臓所見が見出されたこととリスク増加とに有意な関連が認められた。Sofi氏は、「競技スポーツに参加しようとしている選手への運動負荷試験は、心血管異常者の同定を可能とする」と結論するとともに、「スポーツマンの心血管イベント発生率を低下させるかどうかは、検査によって資格を剥奪された人々を追跡調査することによって示されるだろう」とした。

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筋力アップが死亡率低下に結びつく

慢性疾患予防や健康増進に有効であるとしてフィットネスが推奨されている。筋力と全死亡率の負の相関はこれまでにも報告されていたが、男性における、筋力と全死因・心血管疾患・の死亡率に関する大規模な前向きコホート研究が行われ、筋力と全死因・の死亡率は独立した負の相関関係にあることが、BMJ誌2008年7月1日号で公表された。スウェーデン王立カロリンスカ研究所のJonatan R Ruiz氏らによる報告。男性20歳~80歳8,762例を18.9年追跡アメリカ・テキサス州ダラスにあるCooper Clinicのエアロビクスセンターに、1980年~1989年の間に登録された男性(20歳~80歳)8,762例について追跡調査が行われた。主要評価項目は、2003年12月31日までの全死因死亡率、筋力、心肺フィットネス(トレッドミル運動負荷試験による)。筋力は、反復跳び、ベンチ・プレスの結果を、年齢特異的に三分位(Lower、Middle、Upper)に分類した。平均追跡調査期間は18.9年。死亡は503例(心血管疾患145、199含む)。筋力と死亡率は負の相関死亡率/1万人年は、全死因はLower:38.9、Middle:5.9、Upper:26.6、心血管疾患はLower:12.1、Middle:7.6、Upper:6.6、はLower:6.1、Middle:4.9、Upper:4.2だった(P

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手術の世界的な年間施行数はどれくらい?

 世界全体では毎年、膨大な数の手術が行われ、大手術(major surgery)の手技に起因する高い死亡率および合併症発生率ゆえに、いまや手術の安全性は国際的な公衆衛生学の実質的な懸案事項とすべきことが、「WHO患者安全プログラム」の一環として実施された調査で明らかとなった。手術のニーズは工業化に伴う疾病パターンの転換に伴って医療資源の多寡にかかわらず急激に増加した。この、いわゆる「疫学的な過渡期」ゆえに公衆衛生における手術の役割も増大してきたが、その安全性の改善やサービスの不足を補うためにも、手術的介入の総数、配分状況を把握する必要があるという。米国Harvard大学公衆衛生学部のThomas G Weiser氏がLancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年6月24日号)で報告した。WHO加盟192ヵ国を対象に手術の総量を計算 研究グループは、世界で施行されている大手術の数を推定してその配分状況を記述し、公衆衛生学の国際的な施策における手術の重要度を評価するための検討を行った。 WHO加盟192ヵ国の人口、健康、経済データを収集。手術施行率のデータは、政府機関、統計や疫学の研究機関、既報の研究、手術に関する施策を主導する個人などに当たることで集めた。また、2004年に行われた解析から、国民一人当たりの医療費データを入手した。 大手術は、「病院の手術室で行われる切開、切除、操作、組織の縫合からなる介入で、一般に局所あるいは全身麻酔もしくは鎮静を要するもの」と定義した。データがない国の大手術の施行率を推計するモデルを作成し、人口学的な情報を使用して世界的な手術の総数を計算した。世界的な大手術の年間施行数は2億3,420万件、医療費の高低で格差が 手術データは56ヵ国(29%)から得られた。世界では毎年、2億3,420万件(95%信頼区間:1億8,720~2億8,120万件)の大手術が実施されていると推算された。10万人当たりの大手術の年間平均施行率は、一人当たりの医療費が100ドル以下の国(47ヵ国)では295件(SE 53)であったのに対し、1,000ドル以上の国(38ヵ国)では平均1万1,110件(SE 1,300)であった(p<0.0001)。 2004年の手術件数は、人口が世界の30.2%に当たる医療費が平均点な国(401~1,000ドル)と高額な国(1,000ドル以上)が1億7,230万件(73.6%)を占めたのに対し、人口が34.8%に相当する低額の国(100ドル以下)は810万件(3.5%)にすぎなかった。 Weiser氏は、「世界では毎年、膨大な数の手術が行われており、その安全性は国際的な公衆衛生学の実質的な懸案事項とすべき」と結論し、「低収入国における手術へのアクセス機会の過度な不足が示唆するのは、対策が講じられていない世界的な疾病負担の大きさである。手術に対する公衆衛生学的な戦略の確立は最優先事項である」と指摘している。

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