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遺伝性血管性浮腫の新規C1インヒビター製剤の有効性

 遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)は、C1インヒビターの欠損により発症する常染色体優性遺伝性疾患で、「疾患を知っていれば診断は比較的容易で、診断がつけば有効な治療ができる」とされる(補体研究会HAEガイドラインより http://square.umin.ac.jp/compl/HAE/HAEGuideline.html)。一般的に四肢、腹部、外陰部、顔または中咽頭の、反復性の急性発作(一般に局所粘膜腫脹による血管性浮腫)が特徴で、腹部発作はしばしば激しい腹痛、嘔気や嘔吐を伴い、入院や不必要な手術となることがある。また咽頭部発作は、死亡リスクがかなり高い。一方で急性発作時は、C1インヒビター製剤(商品名:ベリナートP)による補充療法が効果的であることが、無作為化試験およびコンセンサスレベルでも支持されている。本論は、最近開発されたナノ濾過濃縮C1インヒビター製剤「Cinryze」(ViroPharma社)の治験報告で、急性発作の期間短縮に有効であったこと、また予防的投与で急性発作の頻度が減少したことが、米国シンシナティ大学Bruce L. Zuraw氏らにより、NEJM誌2010年8月5日号で報告された。有効性と予防的投与を評価する二つの二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施 Zuraw氏らは、HAE治療における新規C1インヒビター製剤「Cinryze」の有効性を評価するため、二つの無作為化試験を行った。いずれも二重盲検プラセボ対照無作為化試験だった。 第一の試験は、急性発作に対する治療の有効性を評価するもので、計68例を無作為に製剤投与群(35例)、プラセボ群(33例)に割り付け、試験薬(各1,000単位)1回または2回を静注投与した(試験薬初回投与後60分までに被験者から無回答あるいは良好の報告がない場合2回目を投与。また4時間までに明らかな寛解が認められない場合、製剤投与によるレスキュー治療が行われた)。主要エンドポイントは、明らかな寛解の開始時間とした。 第二の試験は、週2回12週にわたる予防的投与(1,000単位)の効果を検討する試験で、遺伝性血管性浮腫患者22例を対象とした交差試験だった。2期間の比較で実施され、被験者は第1期間は無作為に製剤もしくはプラセボの予防的投与を、第2期間は第1期間と交差した試験薬投与を受けた。主要エンドポイントは、各々の被験者が予防的投与を受けていた期間中の急性発作の回数とした。2時間以内に寛解、予防的投与で急性発作半減 第一試験の結果、明らかな寛解が認められたまでの時間は、製剤群2時間に対し、プラセボ群は4時間以上だった(P=0.02)。 第二試験の結果は、急性発作の回数は、12週につき製剤群6.26回に対し、プラセボ群は12.73回だった(P

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抗てんかん薬と自殺傾向の関連、てんかん患者では認められず

抗てんかん薬と自殺との関連について、てんかん患者においては自殺リスク増大との関連は認められなかったこと、一方で、うつ病患者、あるいはてんかん、うつ病、双極性障害のいずれでもない患者で抗てんかん薬を服用していた患者ではリスク増大が認められたことが、スペイン・Risk MR Pharmacovigilance ServicesのAlejandro Arana氏らにより明らかにされた。これまでに行われた臨床試験のメタ解析の結果では、抗てんかん薬と自殺傾向(自殺念慮、自殺行動、または両方)との関連が示されていたが、Arana氏らは、一般集団を代表する患者データベースを用い、ケースコントロール試験にて、抗てんかん薬服用の有無と自殺関連イベント(自殺未遂、自殺既遂)との関連を解析した。NEJM2010年8月5日号掲載より。英国民の患者データベースで服薬有無と自殺との関連を解析Arana氏らが解析コホートとしたのは、英国の一般集団を代表する患者データベース「The Health Improvement Network(THIN)」(診療所医師による日々の臨床記録が集約、患者670万人以上を含む)で、そのうちてんかん、うつ病、双極性障害患者の治療データ(1988年7月1日~2008年3月31日に6ヵ月以上治療)を取得し、抗てんかん薬治療の有無を調べ追跡した。また、同コホートから、各症例患者にマッチ(年齢、性、治療内容)する5例ずつを選定しコントロール(対照)群とした。そのうえで抗てんかん薬使用の有無と自殺関連イベント発生率を調べ、交絡因子を補正し、ロジスティック回帰分析法でオッズ比を算出した。うつ病での服用者、疾患を有さない服用者ではリスク増大解析コホートは合計513万795例だった。このうち、いずれの疾患も有さず抗てんかん薬も未服用だったコホート(基準群:451万4,366例)の自殺関連イベント発生率は、10万人・年につき15.0(95%信頼区間:14.6~15.5)だった。これに対し同服用していたコホート(7万7,319例)の同発生率は39.4(32.6~47.1)だった。一方、てんかん患者では、未服用者(1万6,120例)は38.2(同:26.3~53.7)、服用者(3万9,325例)は48.2(同:39.4~58.5)だった。補正後解析の結果、抗てんかん薬の服用と自殺関連イベントのリスク増大との関連は、てんかん患者(オッズ比:0.59、95%信頼区間:0.35~0.98)、双極性障害患者(同:1.13、0.35~3.61)では認められなかったが、うつ病患者(同:1.65、1.24~2.19)と、いずれの疾患も有さないが服薬していた患者(同:2.57、1.78~3.71)では有意な関連が認められた。(武藤まき:医療ライター)

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青少年の飲酒と暴力、救急外来受診時にカウンセリング介入で行動が改善

病院救急外来部門を受診した14~18歳の青少年で、飲酒経験および暴力行動を起こしたことがあると自己申告した者に対しカウンセリングを行うことで、それら行動が改善することが、米国ミシガン大学精神科部門のMaureen A. Walton氏らにより報告された。米国では年間約2,000万人の15~24歳の青少年が救急外来を受診し、青少年への、特に無保険・制限付き被保険者への重要な医療提供の場となっている。Walton氏らは、同部門を利用し、学校にきちんと通っていない、かかりつけ医がいない、年老いすぎた小児科医にしか診てもらっていない、定期健診を受けていない青少年への予防医療が提供可能ではないかと考え、救急外来を受診した3,000人超の青少年を対象に、無作為化試験を行った。JAMA誌2010年8月4日号掲載より。コンピュータor心理療法士によるカウンセリング介入と、パンフレット配布のみの対照群同研究グループは、2006年9月~2009年9月にかけて、ミシガン州Flintにある病院救急外来を訪れた(日時問わず)、14~18歳の3,338人について調査を行った(男性43.5%、アフリカ系アメリカ人55.9%)。そのうち、過去に飲酒および暴力行動があったと自己申告したのは約25%(829人)おり、726人について、無作為化試験「SafERteens」を行った。研究グループは被験者を3群に分け、一群には35分間のコンピュータによるカウンセリングを(コンピュータ群)、別の群には心理療法士によるカウンセリングを(心理療法士群)、残りの一群は対照群としてパンフレットを手渡すのみ(対照群)との介入をそれぞれ行った。 主要評価項目は、仲間への攻撃性(敵意を抱く)、暴力をふるう、暴力転帰(負傷させるなど)と、飲酒、過度な飲酒、飲酒転帰(退学や仲間とトラブルなど)に関する自己報告とした。対照群に比べカウンセリング群、暴力関連3割減、飲酒転帰は半減結果、暴力の項目に関して、介入3ヵ月時点での心理療法士群の、対照群と比べての有意な改善が認められた。仲間への攻撃性についての報告は、心理療法士群-34.3%、対照群-16.4%で相対リスクは0.74(95%信頼区間:0.61~0.90)、仲間に対する暴力は同-10.4%、+4.7%で0.70(同:0.52~0.95)、暴力転帰については同-30.4%、-13.0%で0.76(同:0.64~0.90)だった。また6ヵ月時点での飲酒転帰の報告例は、心理療法士群-32.2%だったのに対し、対照群-17.7%でオッズ比0.56(同:0.34~0.91)と、心理療法士による介入効果がパンフレット配布の対照群と比べて倍近かった。この指標の結果についてはコンピュータによる介入についても、報告例-29.1%対-17.7%でオッズ比0.57(同:0.34~0.95)であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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電話によるDV相談サポート、うつ改善にはつながらず:香港

親しいパートナーからの暴力[intimate partner violence:IPV;一般にドメスティックバイオレンス(DV)と知られる]を受けた女性に対し、暴力からの自衛手段を教えるなどのエンパワメントおよび電話カウンセリングを行っても、被害者のメンタルヘルスへの影響、うつ症状の改善にはつながらないことが報告された。IPV生存者のうつ症状に対する効果的な介入については明らかになっていないことから、アドボカシー的介入の効果を検討するため、中国・香港大学のAgnes Tiwari氏らが、200人の女性を対象に行い無作為化試験を行ったもので、JAMA誌2010年8月4日号で発表した。なお、香港におけるIPV発生率は、4.5~10%に上るという。通常ケアに加え、エンパワメントおよび電話カウンセリング介入同氏らは、2007年2月~2009年6月にかけて、IPVを受けたことのある18歳以上の女性200人について、調査を行った。研究グループは被験者を2群に分け、一方の群(介入群、100人)には、通常のコミュニティサービスの他に、介入開始時に約30分間1対1で「Dutton氏のエンパワメントモデル」に基づいた防御およびよりよい選択と問題解決方法を教示し、その後12週間にわたり週1回の電話によるカウンセリングを行った。もう一方の群(対照群、100人)には、通常のコミュニティサービス、医療的ケア、運動・趣味のサークル活動の提供にとどめる介入を行った。なお被験者全員には、24時間対応の電話ホットラインが提供された。主要評価項目は、9ヵ月後の「中国版ベックうつ病調査表II」によるうつ症状の変化。副次評価項目は、IPV発生率、健康関連QOL、ソーシャルサポート利用についての変化とした。3~9ヵ月後のうつ症状スコア、介入群で対照群に比べ2.66減少したが……その結果、試験開始後3ヵ月後のうつ症状スコア変化の平均値は、介入群が14.9に対し対照群が11.6、9ヵ月後はそれぞれ23.2と19.6で、3ヵ月時点および9ヵ月時点の治療効果の有意差は認められなかった(p=0.86)。また試験開始3~9ヵ月で、うつ症状スコアは、介入群で対照群に比べ、2.66(95%信頼区間:0.26~5.06、p=0.03)有意に減少したものの、臨床的に意味のある変化と規定していた5ポイントには達しなかった。一方、パートナーからの心理的攻撃については有意な減少が認められ、介入群で対照群に比べ、3~9ヵ月で1.87(p=0.01)の有意な減少がみられた。また、ソーシャルサポート利用は同2.18(p=0.01)で有意に増えていた。しかし、身体への暴行や性的暴力、健康関連QOLの変化については、両群で有意差はなかった。なお、IPV被害者に対するサポートの強化が、有用であると回答したのは、対照群で81.7%に対し介入群で93.8%(両群差12.1%、p=0.02)、親しいパートナーとの対立を解決する手助けとなると回答したのは、対照群で84.1%に対し介入群で97.5%(両群差13.4%、p=0.001)と、いずれも介入群の方が有意に高率ではあった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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HPV 4価ワクチンの上皮内腫瘍低グレード病変の予防効果が明らかに

ヒトパピローマウイルス(HPV)の4価ワクチンは、HPV-6、-11、-16、-18を抑制することで上皮内腫瘍の低グレード病変を持続的に予防し、疾病負担を実質的に軽減することが、スウェーデンLund大学のJoakim Dillner氏らが実施した無作為化試験(FUTURE試験)で判明した。HPVはグレードII/IIIの子宮頸部上皮内腫瘍よりもコンジローマやグレードIの上皮内腫瘍の発症に関与しており、これらの疾患に対するHPVワクチンの予防効果に大きな期待が寄せられている。その一方で、4価ワクチンで予防可能な低グレード病変の総疾病負担は明確にされていないという。BMJ誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月20日号)掲載の報告。1万7,622人を登録、フォローアップ期間は42ヵ月研究グループは、HPV 4価ワクチンの子宮頸部、外陰部、膣の上皮内腫瘍グレードI病変や肛門性器疣贅(尖圭コンジローマ)に対する予防効果を検討する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った。二つのプロトコール[protocol 013(FUTURE I試験)、protocol 015(FUTURE II試験)]を用いて4年間にわたる試験が行われ、フォローアップ期間は42ヵ月であった。2001年12月~2003年5月までに、24の国と地域の施設から16~26歳の女性1万7,622人が登録された。主な除外基準は、これまでの性交パートナー数>4人、頸部スミア検査異常の既往歴、妊婦などであった。これらの女性が、3回(初回、2ヵ月後、6ヵ月後)の4価ワクチン接種を行う群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。フォローアップ期間を通じて疾病負担を実質的に軽減3回のワクチン接種をすべて受け、初回接種時の血清学的検査およびPCR法でHPV-6、-11、-16、-18がいずれも陰性で、7ヵ月後のPCR検査も陰性であった女性に関するper-protocol解析では、4価ワクチンによるHPVタイプ別の上皮内腫瘍グレードI病変の抑制率は子宮頸部が96%(95%信頼区間:91~98%)、外陰部が100%(同:74~100%)、膣が100%(同:64~100%)であり、尖圭コンジローマの抑制率は99%(同:96~100%)であった。少なくとも1回のワクチン接種を受け、初回接種時の血清学的検査およびPCR法でHPV-6、-11、-16、-18がいずれも陰性で、さらにPCR法による他の高リスクHPVタイプ(31、33、35、39、45、51、52、56、58、59)および頸部スミア検査のいずれもが陰性であった女性におけるHPVタイプを問わない上皮内腫瘍グレードI病変の抑制率は、子宮頸部が30%(95%信頼区間:17~41%)、外陰部が75%(同:22~94%)、膣が48%(同:10~71%)であり、尖圭コンジローマの抑制率は83%(同:74~89%)であった。著者は、「HPVの4価ワクチンは、HPV-6、-11、-16、-18を抑制することで上皮内腫瘍の低グレード病変を持続的に予防し、42ヵ月のフォローアップ期間を通じて疾病負担を実質的に軽減することが示された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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薬物療法で改善しない2型糖尿病患者、強化食事療法で改善の可能性

 最適な薬物療法を行っても糖化ヘモグロビン(HbA1c)が改善しない2型糖尿病患者は、個別化された強化食事療法アドバイスによって血糖コントロールや体重、BMI、ウエスト周囲長が改善する可能性があることが、ニュージーランドOtago大学のKirsten J Coppell氏らが行った無作為化試験(LOADD試験)で示された。ライフスタイルの改善は2型糖尿病治療の基盤であり、特に適切な食事パターンが推奨されているが、これを遵守するには困難が伴う。また、高血糖で薬物療法を受けている2型糖尿病患者に対する栄養療法のベネフィットを示すエビデンスはないという。BMJ誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月20日号)掲載の報告。通常治療に6ヵ月間の強化食事療法アドバイスを追加 LOADD試験の研究グループは、最適な薬物療法を行っても高血糖が改善しない2型糖尿病患者に対する強化食事療法による介入は、血糖コントロールや心血管疾患のリスク因子に影響を及ぼすか否かについて検討する、無作為化対照比較試験を実施した。 対象は、最適な薬物療法でもHbA1c>7%のままで、過体重あるいは肥満、高血圧、脂質異常のうち二つ以上がみられる、70歳未満の2型糖尿病患者93例。これらの患者が、通常の糖尿病治療に加え欧州糖尿病学会(EASD)の栄養療法に関する勧告に準拠した強化食事療法のアドバイスを6ヵ月間実施する群(45例)、あるいは通常の糖尿病治療のみを行う対照群(48例)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目はHbA1cとし、副次的評価項目は肥満、血圧、脂質プロフィールなどであった。HbA1c、体重、BMI、ウエスト周囲長が低下、飽和脂肪とタンパク質の摂取量が改善 年齢、性別、ベースライン時の各種測定値で補正したところ、対照群に比べ強化食事療法群でHbA1cが有意に低下し(差:-0.4%、95%信頼区間:-0.7~-0.1%、p=0.007)、体重(同:-1.3kg、同:-2.4~-0.1kg、p=0.032)、BMI(同:-0.5、同:-0.9~-0.1、p=0.026)、ウエスト周囲長(-1.6 cm、-2.7~-0.5 cm、p=0.005)も有意に改善した。 強化食事療法群では、飽和脂肪酸の摂取量が対照群に比べ有意に低下し(エネルギー総量の差:-1.9%、95%信頼区間:-3.3~-0.6%、p=0.006)、タンパク質の摂取量が有意に増加しており(同:1.6%、0.04~3.1%、p=0.045)、これらは両群間で摂取量の差が最も大きい栄養素であった。 著者は、「最適な薬物療法を行ってもHbA1cが改善しない2型糖尿病患者は、個別化された強化食事療法アドバイスを行うことで血糖コントロールとともに体重、BMI、ウエスト周囲長が改善する可能性がある」と結論し、「食習慣の改善には、専門家のアドバイスだけでなく、家族によるサポートや適切な食べ物の選択が可能な環境も求められる」と指摘している。

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QLifeが「お薬手帳」機能付き「処方薬&市販薬」検索アプリを無料公開

QLifeは5日、国内初となる「処方薬&市販薬検索アプリ」(iPhone/iPad/iPod touchなどで利用可能)を開発し、App Storeでの無料提供を開始した。今作は、公開1週間で10万ダウンロードのヒットを記録した「病院検索アプリ」に続く第2弾となる。主な特徴は、以下の通り。 ●処方薬と市販薬の同時検索が可能 ●掲載データは、業界団体提供の信頼性高い内容 ●掲載データは、毎日更新されるので常に最新 ●処方薬の9割、市販薬の7割で、製薬会社提供の正式・最新写真を掲載(色などの正確性が高い) ●薬価表示は、剤形に合わせた単位付き(錠剤なら「1錠あたり…」、散剤なら「1gあたり…」、湿布剤なら「1枚あたり…」と、わかりやすい) アプリはApp Store(http://itunes.apple.com/jp/app/id383300064?mt=8)で無料ダウンロードが可能。メディカルカテゴリ、または「お薬検索」で検索する。詳細はこちらhttp://www.qlife.co.jp/news/1351.html

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HDL-C低値は、心血管疾患の治療ターゲットか?:JUPITER試験サブ解析

HDLコレステロール(HDL-C)値の測定は、初回心血管疾患のリスクの評価には有用だが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではないことが、アメリカ・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったJUPITER試験のサブ解析で明らかとなった。HDL-C値は心血管イベントの発症と逆相関を示す。スタチンは心血管疾患の治療薬として確立されているが、スタチン治療を行ってもなお残存する血管リスクはHDL-C値が低いことである程度説明でき、HDL-Cの不足は治療ターゲットとなる可能性が指摘されている。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。JUPITER試験のエンドポイントを、HDL-C値の四分位に分けて解析研究グループは、高用量スタチン治療でLDL-C値が著明に低下した患者においても、HDL-C値と心血管イベントの発症とは逆相関の関係を示すかについて解析を行った。JUPITER試験の対象は心血管疾患の既往歴のない非糖尿病の成人で、ベースライン時のLDL-C値<3.37mmol/L、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)値≧2mg/Lの者であった。これらの参加者が、ロスバスタチン20mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。今回の解析では、対象をHDL-C値とアポリポ蛋白A1値の四分位に分けて、JUPITER試験の主要評価項目である非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術、心血管死について評価した。ロスバスタチン群では、HDL-C値と血管リスクは関連しない17,802例を対象とした主解析では、エンドポイントの発現率はロスバスタチン群がプラセボ群に比べ44%低下した(p<0.0001)。プラセボ群[8,901例(50%)、治療時のLDL-C中央値2.80mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:0.54、95%信頼区間:0.35~0.83、p=0.0039)および治療時(同:0.55、同:0.35~0.87、p=0.0047)ともに有意な逆相関を示した。これに対し、ロスバスタチン群[8,900例(50%)、治療時のLDL-C中央値1.42mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:1.12、95%信頼区間:0.62~2.03、p=0.82)および治療時(同:1.03、同:0.57~1.87、p=0.97)ともに有意な関連はなかった。アポリポ蛋白A1値は、プラセボ群ではエンドポイントの発現率と強い相関を示したのに対し、ロスバスタチン群では関連はほとんど認めなかった。著者は、「HDL-C値の測定は初回心血管疾患のリスクの評価には有用であるが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではない」と結論したうえで、「現在までのところ、この仮説を支持する有望なデータはないが、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬などには可能性が残っているため、無作為化試験で検証する必要があるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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早産児へのNO吸入療法、気管支肺異形成症なしの生存を改善せず

早産児に対し、早期の低用量一酸化窒素(NO)吸入療法を施行しても、気管支肺異形成症や脳障害なしの生存期間は改善しないことが、フランスRobert Debre病院小児救急医療部のJean-Christophe Mercier氏らが実施した無作為化試験(EUNO試験)で示された。周産期医療の進展により早産新生児(在胎期間<28週)の生存率は向上しているが、これらの新生児は気管支肺異形成症などの長期にわたる神経認知的な障害の発症リスクを抱えている。動物モデルでは、NO吸入によりガス交換や肺の構造的な発育が改善されることが報告されているが、気管支肺異形成症の発症リスクがある早産児への使用については相反する知見があるという。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。早産児800例を対象としたプラセボ対照試験EUNO試験の研究グループは、軽度の呼吸不全のみられる早産児に対し早期に低用量NO吸入療法を開始し、長期的に継続するアプローチは気管支肺異形成症の発症を抑制するとの仮説を立て、これを検証する二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。EU加盟9ヵ国の36施設から、在胎期間が24週から28週と6日まで、出生時体重が500g以上、出生後24時間以内に呼吸窮迫症候群のためサーファクタント投与あるいは持続的気道陽圧法を要した早産児800例が登録された。これらの患児をNO吸入群あるいはプラセボ(窒素ガス)群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、修正齢36週の時点における気管支肺異形成症の発症なしの生存率とした。この種の予防治療戦略は無効と考えられるNO吸入群に399例が、プラセボ群には401例が割り付けられ、解析の対象となったのはそれぞれ395例、400例であった。気管支肺異形成症の発症なしの生存率はNO吸入群が65%(258/395例)、プラセボ群は66%(262/400例)であり、有意な差を認めなかった(相対リスク:1.05、95%信頼区間:0.78~1.43、p=0.73)。修正齢36週における生存率はそれぞれ86%(343/399例)、90%(359/401例)で(相対リスク:0.74、95%信頼区間:0.48~1.15、p=0.21)、気管支肺異形成症の発症率は24%(81/339例)、27%(96/358例)であり(同:0.83、0.58~1.17、p=0.29)、いずれも有意差はみられなかった。著者は、「早産児に対し、早期の低用量NO吸入療法を施行しても、気管支肺異形成症や脳障害なしの生存期間は改善しなかったことから、この種の予防治療戦略は無効と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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【お知らせ】5病院合同で「がんに関する市民公開講座」を開催

がん征圧月間に向けて、国立がん研究センター中央病院、東京医科大学病院、東邦大学医療センター大森病院、同大橋病院、同佐倉病院の5病院合同で「がんに関する市民公開講座」を開催する。一定期間内に、多様な講師による講演を市民に提供することで、がんの早期発見、早期治療に関する社会的な関心の喚起することが目的。  開催期間:平成22年8月14日(土)~9月25日(土)入場料はいずれも無料開催一覧 平成22年8月14日(土) 14:00~16:00(開場 13:30)国立がん研究センター中央病院<講演内容>「忘れられたがんに挑む -肉腫診療は医師と患者が手を取り合って-」国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科 科長 牧本 敦氏「日本でのがん治療向上の課題」国立がん研究センター理事長、国立がん研究センター中央病院 院長 嘉山 孝正氏<募集方法>往復はがき、またはFAXで申し込み(往復はがきには返送先の住所・氏名・電話番号を、FAXには返送先の住所・氏名 ・FAX番号を明記のこと)申し込み宛先:国立がん研究センター中央病院 がん医療サポートチーム 角美奈子氏〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1 FAX:03-3248-5267<定員>900人 先着順で締め切り<問い合わせ先>国立がん研究センター中央病院 総務部 03-3542-2511 平成22年9月9日(木)18:30~20:00(開場 18:00)東京医科大学病院<講演内容>「肺がんといわれたら」東京医科大学 呼吸器外科・甲状腺外科 主任教授 池田 徳彦氏<募集方法>事前の申し込み不要<定員>300人<問い合わせ先>東京医科大学病院 企画広報室 03-3342-6111 平成22年9月4日(土) 13:00~ (開場 12:30)東邦大学医療センター大森病院(5号館地下1階 臨床講堂)<講演内容>「乳がん-早期発見の大切さ-」東邦大学医療センター大森病院 乳腺・内分泌外科 講師 緒方 秀昭氏 <募集方法>事前の申し込み不要<定員>130人<問い合わせ先>大森病院 事務部総務課 03-3762-4151(代表) 平成22年9月25日(土) 13:30~ (開場 13:00)東邦大学医療センター大橋病院(教育棟1階 臨床講堂)<講演内容>「消化管のがんについて」東邦大学医療センター大橋病院 消化器内科 助教 掛村 忠義氏<募集方法>事前の申し込み不要<定員>120人<問い合わせ先>大橋病院 事務部総務課 03-3468-1251(代表) 平成22年9月25日(土) 14:00~ (開場 13:30)東邦大学医療センター佐倉病院(7階講堂)<講演内容>「当院における慢性肝疾患の診断」I 慢性肝炎(B型・C型)と肝硬変の治療東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 助教 高田伸夫氏II 肝細胞の画像診断と治療東邦大学医療センター佐倉病院 放射線科 講師 森田英夫氏<募集方法>事前の申し込み不要<定員>200人<問い合わせ先>佐倉病院 事務部総務課 043-462-8811(代表)

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一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その2)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、スウェーデン・ストックホルム・プレホスピタルセンターのLeif Svensson氏らは、「心停止で倒れている人と遭遇した場合の一般市民によるCPRは、より簡単に学べ実行できる胸骨圧迫のみを実行すべきという仮説を、後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した前向き無作為化試験の結果を報告した。30日生存率について検討した結果、両群間で有意差が認められなかったという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。通報者へのCPR指示を、胸骨圧迫単独実施群、+人工呼吸実施群に無作為化し検討救急医療サービス(EMS)隊員が到着する前に、通報を受けた通信隊員は心停止が疑われる患者に対し、通報をしてきた現場に居合わせた一般市民に電話で、CPRを実行するよう指示を与える。その指示方法についてこれまでの試験で、胸骨圧迫だけのCPR実行指示の治療有効性が、標準とされているCPR実行(胸骨圧迫+人工呼吸)とほとんど変わらない、むしろ胸骨圧迫だけの方が優れているとする報告もあったが、それら試験結果は、生存の違いを評価する原動力とまではなっていなかった。そこで、Svensson氏らは、胸骨圧迫単独実施の優位性を評価する前向き無作為化試験(人口900万人のスウェーデン国内にある18の救急医療派遣センター、1センターのコール件数は約1万件/日)を行った。試験は、院外心停止が疑われ証言者がいるケースを、胸骨圧迫単独実施群と、胸骨圧迫+人工呼吸の標準実施群とに無作為化し、30日生存率を主要エンドポイントとして実行された。両群の30日生存率に有意差認められず主要エンドポイント解析対象となるデータは、2005年2月~2009年1月の間に、1,276例あった。そのうち、620例が胸骨圧迫単独実施群に割り付けられ、652例が併用の標準実施群に割り付けられた。結果、両群の30日生存率は同等だった。単独群は8.7%(54/620例)、標準群は7.0%(46/656例)、絶対差1.7ポイント(95%信頼区間:1.2~4.6、P=0.29)で有意差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その1)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、米国ワシントン大学のThomas D. Rea氏らは、「胸骨圧迫を重視させるべきとの戦略を後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した無作為化試験の結果を報告した。全体的な生存率改善に関しては両群で有意な差はみられなかったが、発作時の臨床症状別で解析した結果で、単独実施群の生存率の方が高い傾向がみられたという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。通報者へのCPR指示を、胸骨圧迫単独実施群、+人工呼吸実施群に無作為化し検討一般市民によるCPRで、人工呼吸を実施することの有効性については明らかになっていない。Rea氏らは、胸骨圧迫単独実施よりも、胸骨圧迫+人工呼吸併用実施の方が、生存率を改善するであろうと仮定し、多施設共同無作為化試験(米国ワシントン州キング郡とサーストン郡、英国ロンドン市)を行った。試験は、救急医療サービスに通報があった際に、通信隊員が胸骨圧迫のみを実行するよう指示する場合、もしくは胸骨圧迫+人工呼吸を実行するよう指示する場合に無作為に割り付け実行された。対象は、18歳以上の院外心停止のケース(外傷、溺水、仮死状態は除く)で、通信隊員が、通報してきた現場に居合わせた一般市民によるCPR実行が必要と判断した場合だった。主要評価項目は、生存退院とし、副次評価項目は、神経学的転帰良好な生存退院[CPC(Cerebral Performance Category)5段階評価で1、2に該当]とされた。なお、患者に対する事前承諾は行われなかったが、生存回復後に試験に組み入れられていたことが知らされた。生存退院者割合は有意差認められず、ただし……患者登録は3地域トータルで、2004年6月1日~2009年4月15日に行われ計1,941例が試験に組み入れられた。内訳は、胸骨圧迫単独群に割り付けられたのは981例、胸骨圧迫+人工呼吸併用群は960例だった。結果、生存退院した人の割合は、単独群12.5%、併用群11.0%で、両群間に有意差は認められなかった(絶対差:1.5ポイント、95%信頼区間:-1.4~4.4、P=0.31)。副次評価項目の、神経学的転帰良好で生存退院した人の割合も両群間に有意差は認められなかった(それぞれ14.4%、11.5%、P=0.13)。ただし臨床症状別に検討した事前規定のサブグループ解析の結果、単独群の方が生存退院者の割合が高い傾向がみられた。すなわち、心原性心停止ケースにおける生存退院者の割合は、単独群15.5%に対し併用群12.3%(P=0.09)、AED適応ケースでは単独群31.9%に対し併用群25.7%(P=0.09)だった。(武藤まき:医療ライター)

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2型糖尿病治療薬rosiglitazone vs. ピオグリタゾン

65歳以上の2型糖尿病治療薬rosiglitazone服用者は、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)服用者と比べて、脳卒中・心不全・全死亡リスクが増大、急性心筋梗塞も加えた複合イベントリスクも増大することが明らかにされた。米国食品医薬品局(FDA)のDavid J. Graham氏らが、約23万人の米国高齢者向け公的医療保険メディケア加入者について調べ報告したもので、JAMA誌2010年7月28日号(オンライン版2010年6月28日号)で発表された。これまでの研究でも、rosiglitazoneの服用が、重篤な心血管疾患イベントの発生リスク増大につながる可能性が示唆されていた。rosiglitazoneまたはピオグリタゾン服用者を最長3年間追跡同研究グループは、65歳以上でメディケアに加入し、2006年7月~2009年6月の間にrosiglitazoneまたはピオグリタゾンの服用を開始した22万7,571人について、最長3年にわたり追跡した。被験者の平均年齢は、74.4歳だった。エンドポイントは、急性心筋梗塞、脳卒中、心不全それぞれの発症と、総死亡、またそれらすべての複合イベントだった。rosiglitazone服用者は脳卒中リスク1.27倍、心不全1.25倍結果、追跡期間中のエンドポイントいずれかを発生した件数の合計は、8,667件だった。rosiglitazone服用者のピオグリタゾン服用者に対する、イベント発生に関する補正後ハザード比は、脳卒中が1.27(95%信頼区間:1.12~1.45)、心不全が1.25(同:1.16~1.34)、死亡が1.14(同:1.05~1.24)、複合イベントは1.18(同:1.12~1.23)だった。急性心筋梗塞については、1.06(同:0.96~1.18)と、有意差はなかった。また、ピオグリタゾン服用者に対するrosiglitazone服用者の、複合イベントの寄与リスクは1.68(95%信頼区間:1.27~2.08)イベント/100人・治療年だった。有害必要数は1年間で60(同:48~79)人への治療だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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34~37週未満での後期早産児、RDSなど呼吸性疾患リスク増大

妊娠34週~37週未満の後期早産では、新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)などの呼吸器疾患発生リスクが、妊娠39~40週の満期出産に比べ有意に増大することが、米国内最新の大規模データで裏付けられた。この点に関するデータはこれまで、10年以上前の、米国外データによるものしかなかったが、米国イリノイ大学シカゴ校のJudith U. Hibbard氏らが、米国内約23万件の出産データを基にして調べ明らかにした。JAMA誌2010年7月28日号掲載より。2万弱の早産児のうち、36.5%がNICU同研究グループは、米国内の病院19ヵ所(12機関)での、2002~2008年の23万3,844件の出産について、後ろ向きに追跡した。主要評価項目は、RDS、新生児一過性多呼吸、肺炎、呼吸不全、振動換気法または通常換気法によるサポートの発症・発生だった。その結果、追跡期間内の後期早産1万9,334件のうち、7,055人(36.5%)が新生児集中治療室(NICU)入室となり、2,032人に呼吸機能障害が認められた。一方、満期出産は16万5,993人で、うちNICU入室となったのは1万1,980人(7.2%)、呼吸機能障害がみられたのは1,874人だった。RDS発症は妊娠38週の0.3%に対し34週の10.5%RDSを発症したのは、妊娠38週の0.3%(4万1,764児中140児)に対し、妊娠34週の新生児では10.5%(3,700児中390児)と大幅に高率だった。その他の呼吸器疾患について、妊娠38週と妊娠34週の新生児について比べてみると、新生児一過性多呼吸の発症率は0.4%対6.4%、肺炎は0.1%対1.5%、呼吸不全は0.2%対1.6%と、いずれも34週の群で高率だった。同傾向は、振動換気法または通常換気法によるサポートについても認められた。RDSの発症リスクは、妊娠34週から週数の増加につれて低下し(補正後オッズ比が34週40.1→38週1.1)た。妊娠37週の39~40週に対するオッズ比は3.1だったが、38週では有意差はなくなった。この傾向は、新生児一過性多呼吸(補正後オッズ比が34週14.7→38週1.0)、肺炎(同7.6→0.9)、呼吸不全(同10.5→1.4)についても認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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投身自殺名所への防止柵設置で自殺は減ったか? 既遂者約1万5,000人の解析

カナダ・トロント市の投身自殺名所の橋への自殺防止柵設置によって、その橋での自殺は解消されたものの、市全体の自殺率には変化がなかったことが、Sunnybrook Health Sciences Centre and Women’s College Hospital(トロント市)のMark Sinyor氏らの調査で明らかとなった。今回の結果と同様、これまでの調査でも防止柵設置後に全体の自殺率が低下したとの報告はない。一方、柵の設置がある程度自殺を予防しているのか、あるいは単に別の橋が代用されたり別の手段で自殺が試みられているのかははっきりしていないという。BMJ誌2010年7月24日号(オンライン版2010年7月6日号)掲載の報告。自殺防止柵設置前後の自殺既遂者約1万5,000人の記録を調査研究グループは、年間の投身自殺率が「金門橋(Golden Gate Bridge、アメリカ・サンフランシスコ市)」に次いで世界で2番目に高率の橋である「ブロア通り高架橋(Bloor Street Viaduct、カナダ・トロント市)」への自殺防止柵の設置が、自殺率に変化をもたらしたかについて調査を行った。対象は、1993~2001年(自殺防止柵設置前の9年間)および2003年7月~2007年6月(設置後の4年間)のオンタリオ州主席検死官事務所の記録に記載された自殺既遂者1万4,789人。主要評価項目は、ブロア通り高架橋、その他の橋、高層建築物からの人口当たりの年間投身自殺率、および他の手段による年間自殺率とした。投身自殺への誘惑に満ちた特別の場所ではないことが判明トロント市の人口当たりの年間投身自殺率は、ブロア通り高架橋への自殺防止柵設置前が56.4、設置後が56.6であり、設置前後で全体的な変化はみられなかった(p=0.95)。防止柵設置前のブロア通り高架橋における平均年間投身自殺率は9.3であったのに対し、設置後は自殺は1件も起きていない(p<0.01)。ブロア通り高架橋以外の橋における平均年間投身自殺率は、柵設置前の8.7に対し設置後は14.2と有意に増加しており(p=0.01)、高層建築物からの投身自殺率は設置前の38.5から42.7へと増大したものの有意な差は認めなかった(p=0.32)。著者は、「ブロア通り高架橋での投身自殺は防止柵の設置によって解消されたが、トロント市全体の人口当たりの年間投身自殺率に変化はなかった。その原因は、他の橋や高層建築物からの投身自殺が代償的に増加したためと考えられる」と結論し、「これらの知見により、ブロア通り高架橋が人を自殺に誘う独特の場所ではないこと、また防止柵を設置しても近隣に代わりになる橋などがあれば絶対自殺率には影響がない可能性が示唆される」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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首つりした人の多くは、その後1年以内に同じ方法で自殺に成功:未遂者約5万人の解析

 首つり/絞首/窒息による自殺未遂歴のある者は、その後の自殺成功率がレファランス(服毒自殺未遂)の6倍以上にのぼり、87%が1年以内に目標を達成し、90%以上が未遂と同じ方法で死亡していることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所臨床神経科学部のBo Runeson氏らが実施したコホート研究で判明した。自殺は主要な死亡原因であり、自殺のリスクがある者の評価法および治療法のいっそうの改善は一般臨床における最優先課題である。自殺未遂歴はその後の自殺既遂の強力なリスク因子であり、精神疾患と自殺企図が共存する場合は既遂リスクがさらに増大するという。BMJ氏2010年7月24日号(オンライン版2010年7月13日号)掲載の報告。初回自殺未遂の方法別の転帰を解析 研究グループは、未遂に終わった自殺の方法とその後の自殺既遂リスクの関連を検討するために、フォローアップ期間が21~31年に及ぶ全国的な長期コホート研究を実施した。 対象は、1973~1982年の入院患者のうち過去に自殺未遂歴のある4万8,649人で、1973~2003年までの自殺既遂状況を調査した。Cox多変量回帰モデルを用い、服毒を基準として初回自殺未遂の方法別の転帰について解析を行った。首つり未遂した人はその後90%以上が首つりで自殺に成功していた フォローアップ期間中に5,740人(12%)が自殺した。自殺既遂リスクは、以前に未遂に終わった自殺の方法によって大きなばらつきがみられた。 転帰が最も不良だったのは、以前に未遂に終わった自殺の方法が首つり、絞首、窒息の者であった。すなわち、この群の男性の54%(258人)および女性の57%(125人)が後に自殺に成功しており(年齢、性別、教育歴、国外からの移住状況、精神疾患の併発状況で補正後のハザード比:6.2、95%信頼区間:5.5~6.9)、87%(333人)は未遂後1年以内に目標を達成していた。 これ以外の未遂自殺の方法(ガス自殺、高所からの飛び降り、拳銃や爆薬の使用、入水)は、その後の自殺既遂リスクが首つりに比べて有意に低かったが、それでもハザード比は1.8~4.0に達していた。 刃物などで身体を切る、刺すなどの方法(補正ハザード比:1.0)、その他の方法(同:0.9)、自殺未遂の遅発効果やその他の自傷行為による損傷(同:0.7)がその後に自殺既遂に至るリスクは、レファランスカテゴリーとした服毒(未遂法の84%を占め、最も多い)とほぼ同じレベルであった。 自殺成功者のほとんどが、未遂に終わった自殺の方法と同じ方法で死亡しており、たとえば首つり未遂者はその90%以上が首つりで自殺に成功していた。著者は、「社会人口学的な交絡因子や精神疾患の併発状況で補正を行っても、未遂に終わった自殺の方法によってその後の自殺既遂リスクを予測できることが示された」と結論し、「首つり、入水、拳銃や爆薬、高所からの飛び降り、ガス自殺が未遂に終わった者には、強力なアフターケアを行うべきである」と主張している。

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患者は「明細書」をどう見ているか?

QLifeは7月30日、今年度から多くの医療機関の会計窓口で原則発行義務化された「明細書」について、患者にアンケート調査を行い、2010年4月以降に医療機関を受診した全国511名から回答を得た結果を発表した。調査は、2010年4月以降に医療機関を1度以上受診した511名を対象に、2010年7月14日~20日にインターネット上で行われた。それによると、領収書とは別に明細書が無料発行されることを患者の7割が知っており、実際に受け取ったことがあるという回答も9割近くにのぼった。ただし、第一印象は「領収書と差がない」「2回目からは不要」など様々で、内容を見ることさえしなかった人も24%いた。また「裏側を広告に使うべき」との回答が65%あった。明細書のメリットについては、「請求に安心」「医療機関に信頼感が増す」が多かった。「医療を勉強しやすく」「治療内容について医療者と話しやすく」という人も5割を超えた。患者の約半分が、過去に請求に疑問や不信感を抱いたことがあるが、質問をしなかった人も多く、こうした経験を持つ人の方が明細書の発行を高く評価していた。詳細はこちらhttp://www.qlife.co.jp/news/1322.html

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骨粗鬆症患者は、治療薬への期待と効果にギャップを感じている?

日本イーライリリー株式会社は7月30日、骨粗鬆症治療の現状を把握するため、代表的な治療薬である骨吸収抑制剤で薬物治療中の65歳以上の女性患者103名を対象に実施した、現在の病状や治療薬に関するインターネット調査の結果を発表した。調査の実施時期は2010年5月。その結果、現在治療中の患者の約半数(47.6%)は服用中の治療薬について十分な満足を感じておらず、最も不満を感じているのは「効果を実感するまでの期間」(37.5%)であることがわかった。さらに、治療を開始してから骨密度が「減っている」(4.8%)または「変わらない」(51.5%)と答えた人が半数以上(56.3%)おり、また、約1割(10.7%)の患者が治療薬服用中に骨折を経験していることも確認できたという。一方、患者の多くが、「骨密度を増やしたい」(76.7%)、「骨折をしたくない・繰り返したくない」(54.4%)、「骨粗鬆症を完治させたい」(42.7%) という目的を持って治療を開始しており、治療薬への期待と実際に感じる効果にギャップがあることが明らかになったとのこと。詳細はプレスリリースへhttps://www.lilly.co.jp/pressrelease/2010/news_2010_15.aspx

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飲用水に含まれるヒ素が死亡率を増大、バングラデシュの調査

長期にわたる飲用水を介したヒ素曝露が死亡率を増大させていることが、アメリカ・シカゴ大学のMaria Argos氏らがバングラデシュで実施したコホート研究(HEALS試験)で示された。バングラデシュ国民の350~770万人を含め、世界で数百万の人々が飲用水を介して慢性的にヒ素に曝露されている。しかし、これまでヒ素曝露と死亡率との関連について個人レベルのデータを用いてプロスペクティブに検討した調査はなかったという。Lancet誌2010年7月24日号(オンライン版2010年6月19日号)掲載の報告。 ヒ素曝露量との死亡の関連を検討する前向きコホート研究HEALS試験の研究グループは、バングラデシュ国民を対象に、長期的および直近のヒ素曝露状況の変動と、全死亡や慢性疾患死との関連について評価するために、プロスペクティブなコホート研究を実施した。バングラデシュ・アライハザール(Araihazar)在住の地域住民1万1,746人(18~75歳)を抽出し、訓練を受けた医師が面接して臨床的な評価を行った。参加者の登録は2000年10月~2002年5月に行い、2年に1回のフォローアップを実施した。2009年2月までに得られたデータにつき、交絡因子を補正のうえCox比例ハザードモデルを用いてヒ素曝露量別の死亡率のハザード比(HR)を算出した。井戸水のヒ素含有量、毎日のヒ素曝露量、尿中総ヒ素濃度と死亡率が相関2000年10月~2009年2月の間に407人の死亡が確認された。多変量解析により、ベースライン時にヒ素含有量が10.0μg/L以下の井戸水を飲用している住民との比較において、含有量10.1~50.0μg/L、50.1~150.0μg/L、150.1~864.0μg/Lの井戸水を飲用している住民の全死亡の補正HRを算出したところ、それぞれ1.34(95%信頼区間:0.99~1.82)、1.09(同:0.81~1.47)、1.68(同:1.26~2.23)であり、ヒ素曝露が死亡率を増大させていることが示唆された。同様に、毎日のヒ素曝露量や尿中総ヒ素濃度の解析でもヒ素曝露と死亡率の関連が示された。一方、直近のヒ素曝露量の変動(2年毎に測定された尿中総ヒ素濃度の差)は死亡率にさほど影響を及ぼさなかった。著者は、「飲用水を介した長期的なヒ素曝露が死亡率の増大と関連することが示された」と結論し、「このコホートのフォローアップデータは、ヒ素曝露の長期的な影響や曝露量の変動の影響を評価する際に使用できるだろう。ヒ素曝露による健康被害を軽減する方策の立案と医療資源の確保が喫緊の課題である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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1型糖尿病妊婦に対するビタミンC/E投与は、子癇前症を予防しない

1型糖尿病の妊婦に対しサプリメントとしてビタミンCとビタミンEを投与する方法は、子癇前症のリスク低下には効果がないことが、イギリスRoyal Victoria病院(ベルファスト)のDavid R McCance氏らによる無作為化試験(DAPIT試験)で示された。子癇前症は、妊娠後期にみられる妊娠誘発性の高血圧と新規発症の蛋白尿で特徴付けられる多系統疾患であり、未経産、20歳未満、40歳以上、肥満、子癇前症の既往歴、多胎妊娠、慢性高血圧・腎疾患・自己免疫疾患・抗リン脂質症候群・糖尿病などの既存疾患がリスク因子となることが指摘されている。既存疾患のない妊婦に抗酸化物質を投与しても子癇前症は低下しないことがすでに報告されているが、糖尿病の妊婦に対するビタミン類の効果は不明だという。Lancet誌2010年7月24日号(オンライン版2010年6月26日号)掲載の報告。ビタミンC/Eとプラセボで子癇前症予防効果を評価DAPIT試験の研究グループは、1型糖尿病の妊婦を対象にサプリメントとしてのビタミンCとビタミンEの投与が子癇前症の発症に及ぼす効果を評価するために無作為化プラセボ対照比較試験を実施した。イギリスの25施設から、妊娠前に1型糖尿病に罹患しており、妊娠8~22週、単胎妊娠、16歳以上の女性が登録された。これらの妊婦が、分娩まで1日1回ビタミンC 1,000mg+ビタミンE 400IU(α-tocopherol)を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。試験関係者と参加者には、治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、子癇前症(蛋白尿を伴う妊娠高血圧)の発症とし、modified ITT解析が行われた。子癇前症発症率:15% vs. 19%、有意差はないがベネフィットの可能性も2003年4月~2008年6月までに762人の妊婦が登録され、ビタミンC/E投与群に379人が、プラセボ群には383人が割り付けられた。子癇前症の評価は、ビタミンC/E投与群の375人、プラセボ群の374人で可能であった。子癇前症の発症率は、ビタミンC/E投与群が15%(57/375人)、プラセボ群は19%(70/374人)であり、両群間に差を認めなかった(リスク比:0.81、95%信頼区間:0.59~1.12)。母体および新生児ともに有害事象の報告はなかった。著者は、「サプリメントとしてビタミンCとビタミンEを投与する方法は、1型糖尿病の妊婦における子癇前症のリスクを低下させなかった」と結論したうえで、「ベースライン時に抗酸化物質が低下した状態にある女性では、サプリメントとしてのビタミン類の投与がベネフィットをもたらす可能性は残されているため、さらなる検討を要する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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