早産児へのNO吸入療法、気管支肺異形成症なしの生存を改善せず

提供元:ケアネット

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公開日:2010/08/12

 



早産児に対し、早期の低用量一酸化窒素(NO)吸入療法を施行しても、気管支肺異形成症や脳障害なしの生存期間は改善しないことが、フランスRobert Debre病院小児救急医療部のJean-Christophe Mercier氏らが実施した無作為化試験(EUNO試験)で示された。周産期医療の進展により早産新生児(在胎期間<28週)の生存率は向上しているが、これらの新生児は気管支肺異形成症などの長期にわたる神経認知的な障害の発症リスクを抱えている。動物モデルでは、NO吸入によりガス交換や肺の構造的な発育が改善されることが報告されているが、気管支肺異形成症の発症リスクがある早産児への使用については相反する知見があるという。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。

早産児800例を対象としたプラセボ対照試験




EUNO試験の研究グループは、軽度の呼吸不全のみられる早産児に対し早期に低用量NO吸入療法を開始し、長期的に継続するアプローチは気管支肺異形成症の発症を抑制するとの仮説を立て、これを検証する二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。

EU加盟9ヵ国の36施設から、在胎期間が24週から28週と6日まで、出生時体重が500g以上、出生後24時間以内に呼吸窮迫症候群のためサーファクタント投与あるいは持続的気道陽圧法を要した早産児800例が登録された。

これらの患児をNO吸入群あるいはプラセボ(窒素ガス)群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、修正齢36週の時点における気管支肺異形成症の発症なしの生存率とした。

この種の予防治療戦略は無効と考えられる




NO吸入群に399例が、プラセボ群には401例が割り付けられ、解析の対象となったのはそれぞれ395例、400例であった。

気管支肺異形成症の発症なしの生存率はNO吸入群が65%(258/395例)、プラセボ群は66%(262/400例)であり、有意な差を認めなかった(相対リスク:1.05、95%信頼区間:0.78~1.43、p=0.73)。

修正齢36週における生存率はそれぞれ86%(343/399例)、90%(359/401例)で(相対リスク:0.74、95%信頼区間:0.48~1.15、p=0.21)、気管支肺異形成症の発症率は24%(81/339例)、27%(96/358例)であり(同:0.83、0.58~1.17、p=0.29)、いずれも有意差はみられなかった。

著者は、「早産児に対し、早期の低用量NO吸入療法を施行しても、気管支肺異形成症や脳障害なしの生存期間は改善しなかったことから、この種の予防治療戦略は無効と考えられる」と結論している。

(菅野守:医学ライター)