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5価経口生ロタウイルスワクチン、アジアの開発途上国の乳幼児にも有効

5価経口生ロタウイルスワクチン(商品名:RotaTeq ※国内未承認)は、アジアの開発途上国の乳幼児に対し安全に接種可能で、重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効なことが、バングラデシュ・国際下痢性疾患研究センターのK Zaman氏らが行った無作為化試験で示された。WHOの試算では、2004年の世界のロタウイルスによる死亡例数は52万7,000例で、そのうちアジアの開発途上国6ヵ国で21万5,896例を占める。先進国では、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防にロタウイルスワクチンが有効なことが証明されているが、アジアの開発途上国では同ワクチンの有効性に関する試験は行われていないという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月6日号)掲載の報告。バングラデシュ、ベトナムの生後4~12週の乳幼児に3回接種研究グループは、バングラデシュおよびベトナムにおいて、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防における5価経口生ワクチンの臨床効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。対象は、バングラデシュの農村地域であるMatlabおよびベトナムのNha Trangの都市部と近郊農村部で生まれ、消化管疾患の症状のみられない生後4~12週の乳幼児であった。これらの乳幼児が、生後6週、10週、14週の3回、ポリオウイルスワクチンなどのルーチンの乳幼児ワクチンとともに、5価ロタウイルスワクチンを経口接種する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。医療施設を受診した乳幼児に胃腸炎の症状がみられた場合には、医療スタッフあるいは親の記憶に基づいて報告することとした。主要評価項目は、3回目の接種後14日が経過して以降、試験終了時(2009年3月31日、生後約21ヵ月)までに発現した重症ロタウイルス胃腸炎(Vesikariスコア≧11)とし、per-protocol解析を行った。ワクチン有効率は、[(1-ワクチン群の人・時当たりの重症ロタウイルス胃腸炎発生率)÷プラセボ群の発生率]×100と定義した。ワクチン有効率48.3%、有害事象は同等2,036人が登録され、5価ロタウイルスワクチン群に1,018人が、プラセボ群にも1,018人が割り付けられた。このうち解析の対象となったのは、ワクチン群が991人、プラセボ群は978人であった。3回目の接種後14日から最終的な処置までのフォローアップ期間中央値は498日(IQR:480~575日)であった。ワクチン群では1,197人・年以上のフォローアップ期間中に38例の重症ロタウイルス胃腸炎が報告されたのに対し、プラセボ群では1,156人・年以上で71例に発現し、約2年間におけるワクチン有効率は48.3%(95%信頼区間:22.3~66.1%)と有意な効果が認められた(0%以上の有効性との比較におけるp=0.0005)。各回の接種後14日以内にみられた重篤な有害事象は、ワクチン群が2.5%(25/1,017人)、プラセボ群は2.0%(20/1,018人)であった(intention-to-treat解析)。最も高頻度にみられた重篤な有害事象は肺炎であった[ワクチン群:1.2%(12/1,017人)、プラセボ群:1.5%(15/1,018人)]。著者は、「アジアの開発途上国の乳幼児において、5価経口生ワクチンは安全で、かつ重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効であった」と結論し、「これらの知見はWHO勧告の拡張を支持するものであり、本ワクチンの世界的な使用を推し進めるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児がん患児に対する骨盤内照射で、将来の死産、新生児死亡のリスク増大

小児がん患児の性腺系への放射線照射は、将来、男児の場合はその子どもに重篤な有害作用をもたらすことはないが、女児では子宮や卵巣への照射によって死産、新生児死亡のリスクが有意に増加することが、アメリカ・国際疫学研究所(ロックビル)のLisa B Signorello氏らによるコホート研究で明らかとなった。近年、小児がんに対する積極的な治療により生存期間の改善が得られているが、変異原性の治療法である放射線治療は生殖細胞に障害をもたらし、この有害な作用は患児の子どもにも遺伝する可能性が示唆されている。しかし、受胎前の放射線曝露が死産、新生児死亡に及ぼす影響は不明だという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年7月23日号)掲載の報告。照射線量と死産、新生児死亡リスクの関連を評価する後ろ向きコホート研究研究グループは、不良な妊娠アウトカムのリスクを調査することにより、小児期に放射線治療や化学療法を施行された小児がん生存者からその子どもへの生殖細胞系の障害の遺伝リスクを間接的に評価するレトロスペクティブなコホート研究を行った。本研究は、小児がん生存者の子どもの死産および新生児死亡のリスクに関するコホート研究であるChildhood Cancer Survivor Study(CCSS)の一環として実施された。対象は、初回診断時に21歳未満で、アメリカの25施設およびカナダの1施設で治療を受け、診断後5年以上生存した患者であった。これらの患者に投与された化学療法薬および受胎前に睾丸、卵巣、子宮、下垂体に照射された線量を定量化し、この量と死産、新生児死亡のリスクとの関連につきポアソン回帰分析を用いて解析した。睾丸、下垂体への照射、アルキル化薬は関連なし、子宮、卵巣への照射でリスク増加対象となった小児がん生存者は女性が1,657人、男性が1,148人であり、妊娠数は4,946件であった。以下の項目は、死産、新生児死亡リスクの上昇とは関連がなかった。睾丸への照射[照射を受けた生存者の子ども1,270人のうち死産、新生児死亡は16人(1%)、補正相対リスク:0.8(95%信頼区間:0.4~1.6)、平均線量:0.53Gy(SD 1.40)]、下垂体への照射[17/510人(3%)、線量20.00Gy以上の場合の相対リスク:1.1(95%信頼区間:0.5~2.4)、女性の平均線量:10.20Gy(SD 13.0)]、アルキル化薬による化学療法[女性:26/1,195人(2%)、相対リスク:0.9(95%信頼区間:0.5~1.5)、男性:10/732人(1%)、相対リスク:1.2(95%信頼区間:0.5~2.5)]。子宮および卵巣への照射については、線量が10.00Gy以上になると、死産、新生児死亡のリスクが有意に増加した[5/28人(18%)、相対リスク:9.1(95%信頼区間:3.4~24.6)]。初潮前に放射線治療を受けた女性は、1.00~2.49Gyの低線量であっても死産、新生児死亡のリスクが有意に増加していた[3/69人(4%)、相対リスク:4.7(95%信頼区間:1.2~19.0)]。著者は、「男性の場合、性腺系への照射を受けても、その子どもが死産、新生児死亡となるリスクに影響を及ぼす遺伝性の変化はないことが示唆された。一方、子宮および卵巣への照射は子どもに対し重篤な有害作用をもたらし、これは子宮の障害が原因と推察された」と結論し、「思春期前に高線量の骨盤内照射を施行された女性が妊娠した場合は、注意深いマネジメントが必要である」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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肺がん患者への早期緩和ケア導入はQOL、精神症状、余命を改善

転移性の非小細胞肺がん患者には、早期緩和ケア導入のベネフィットが大きいことが明らかにされた。QOL、精神症状を有意に改善し、標準的ながん治療を受けた患者と比較して積極的治療は少ないにもかかわらず、生存期間がより長かったという。米国マサチューセッツ総合病院のJennifer S. Temel氏らの報告によるもので、NEJM誌2010年8月19日号に掲載された。転移性非小細胞肺がんはつらい症状に苦しむ上に、末期でも積極的治療を受ける場合がある。早期緩和ケア群と標準治療群に無作為化しQOL、精神症状を評価研究グループは、新たに転移性非小細胞肺がんと診断された患者を、標準的ながん治療と併せて早期緩和ケアを行う群(77例)と、標準的ながん治療のみを行う群(74例)に無作為に割り付け、ベースラインから12週までのQOLと精神症状の変化について追跡評価した。各評価には、QOLにはFACT-L(Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung)スケール(スコア:0~136、より高いスコアほどQOLが良好であることを示す)が、精神症状にはHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)が用いられた。主要評価項目は、12週時点におけるQOLの変化とした。末期医療に関するデータは電子カルテから集められた。QOL、精神症状、余命とも早期緩和ケア群が良好被験者151例のうち、12週までに27例が死亡に至り、評価が完遂されたのは12週時点で生存していた患者124例の86%に当たる107例だった。早期緩和ケア群のQOLは、標準的治療群より良好だった(FACT-Lスケールの平均スコア98.0対91.5、P=0.03)。加えて、早期緩和ケア群は標準的治療群より、抑うつ症状がより少なかった(16%対38%、P=0.01)。積極的な末期医療を受けた患者の割合は、早期緩和ケア群より標準的治療群が多かった(33%対54%、P=0.05)にもかかわらず、生存期間の中央値は早期緩和ケア群が、より長かった(11.6ヵ月対8.9ヵ月、P=0.02)。(朝田哲明:医療ライター)

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線維筋痛症に太極拳が有効

 線維筋痛症には太極拳が有用な治療である可能性が、米国ボストンにあるタフツ大学リウマチ科のChenchen Wang氏らの研究グループによる無作為化試験の結果、報告された。線維筋痛症治療ガイドラインでは、薬物療法、認知行動療法と並んで、健康教育と運動療法を含む集学的治療が提唱されている。なかでも運動は線維筋痛症に有効とされ、治療の中心的な構成要素として提唱されてきたが、患者の多くは診断後、何年にもわたって重篤な疼痛に悩まされ、症状のコントロールに薬物療法を必要としている。Wang氏らは、これまでの研究で太極拳が線維筋痛症に効果があるとの示唆を受け、試験を行った。NEJM誌2010年8月19日号より。太極拳と従来療法の2群に無作為化 Wang氏らは、線維筋痛症(米国リウマチ学会の1990年診断基準で定義)患者66例を対象に、伝統的な楊式太極拳を治療に取り入れた群(1セッション60分を週2回12週間継続、太極拳群、33例)と、健康教育とストレッチからなる従来療法群(対照群、33例)とを比較する、単純盲検無作為化試験を行った。 主要評価項目は、12週の介入が終わった時点の、繊維筋痛症質問票(Fibromyalgia Impact Questionnaire:FIQ)スコア(スコア:0~100ポイント、スコアが高いほど症状が重いことを示す)の変化とした。副次評価項目は、SF健康調査票(SF-36)の身体的および精神的項目のサマリースコアとした。また、効果の持続性を確かめるため、24週時点にも全員に対する評価が行われた。FIQスコア、SF-36スコアとも太極拳に軍配 結果、太極拳群33例には、FIQスコアおよびQOLにおいて臨床上重要な改善がみられた。FIQスコア平均値(±SD)のベースラインと12週の値は、太極拳群は62.9±15.5と35.1±18.8だったのに対し、対照群は68.0±11と58.6±17.6で、太極拳群のベースラインからの変化の差の方が対照群の同変化の差よりも18.4ポイント大きかった(P

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20年前と比べ、米国青少年の聴覚障害が増大、約2割に

米国の12~19歳の聴覚障害罹患率が、20年前と比べて増加傾向にあることが明らかになった。1988~1994年調査時の罹患率は約15%だったが、2005~2006年調査時は約20%になっていたという。米国ブリガム&ウィメンズ病院Channing LaboratoryのJosef Shargorodsky氏らが、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)のデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。著者らは、「増加の要因と、回避・防止し得るリスクファクターを特定することが必要」と提言している。5,000人弱について、聴覚障害の種類や程度、リスク因子を調査Shargorodsky氏らは、NHANESの1988~1994年時の12~19歳被験者2,928人のデータと、2005~2006年時の同1,771人のデータについて検討した。被験者は、聴力測定器によって聴覚障害の有無を調べられ、聴覚障害の程度について、片耳もしくは両耳、低周波(0.5、1、2kHz)または高周波(3、4、6、8kHz)、軽度(15超~25未満dB)か中等度~重度(25以上dB)に分類された。また、聴覚障害とそのリスク因子についての相互関係についても分析調査された。近年の聴覚障害は片耳、高周波が高率結果、1988~1994年の聴覚障害罹患率は14.9%(95%信頼区間:13.0~16.9)だったのに対し、2005~2006年の同率は19.5%(同:15.2~23.8)と、有意に増加していた(p=0.02)。05~06年の聴覚障害は片耳が多く、その罹患率は14.0%(同:10.4~17.6)で、88~94年の同11.1%(同:9.5~12.8)に比べ高率だった(p=0.005)。また05~06年は、高周波聴覚障害の罹患率が16.4%(同:13.2~19.7)と、88~94年の同12.8%(同:11.1~14.5)に比べ高率だった(p=0.02)。聴覚障害のリスクは、連邦政府が定める貧困層の子どもで有意に高く、罹患率は23.6%(同:18.5~28.7)であり、そうでない場合の18.4%(同:13.6~23.2)に比べ有意に高率だった(補正後オッズ比:1.60、95%信頼区間:1.10~2.32)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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STEMI患者へのPCI、システム1時間遅延ごとに死亡率1割上昇

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の、救急通報を受けてからの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施までの所要時間(システム遅延)が、1時間増すごとに、死亡率が1割上昇することが明らかにされた。デンマークAarhus大学病院循環器部門のChristian Juhl Terkelsen氏らが、6,000人超を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。STEMI患者が、医療機関に到着してから再潅流治療を受けるまでの、いわゆる「ドアからバルーンまで」(door-to-balloon)の遅延とアウトカムに関する研究はこれまでにも発表されているが、救急通報時点から医療機関到着までの時間を含む、システム遅延とアウトカムに関する研究は、これが初めてという。6,209人を中央値3.4年追跡研究グループは、2002年1月1日~2008年12月31日にかけて、デンマーク内で多数の症例数をこなす3ヵ所のプライマリPCIセンターで、発症から12時間以内にPCIを実施した、合わせて6,209人を対象に試験を行った。救急通報を受けてからPCIのガイド・カテーテル挿入までの所要時間を「システム遅延」、通報からPCIセンター到着までの所要時間を「前病院遅延」、PCIセンター到着からカテーテル挿入までの所要時間を、「ドアからバルーンまで遅延」と定義した。追跡期間の中央値は、3.4年(四分位範囲:1.8~5.2)だった。システム遅延、前病院遅延、ドアからバルーンまで遅延のそれぞれが長期死亡の独立因子結果、システム遅延が0~60分までの群(347人)では、長期死亡率が15.4%(43人)だった。システム遅延が増大するにしたがって同死亡率も増加し、61~120分(2,643人)では23.3%(380人)、121~180分(2,092人)では28.1%(378人)、181~360分(1,127人)では30.8%(275人)だった(p

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認知症の抑制に、果物/野菜摂取の増進とうつ病/糖尿病の予防が有望

認知症の発症を最大限に抑制するアプローチとして、結晶性知能(crystallized intelligence)と果物/野菜の摂取の増進およびうつ病と糖尿病の予防が有望なことが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)La Colombiere病院のK Ritchie氏らによるコホート研究で示された。認知症の臨床的、環境的なリスク因子は多岐にわたり、修正可能なことが一般人口を対象とした試験で示されている。そこで、認知症に特異的なリスク因子を検出し、これを除去することで発症を抑制するアプローチが進められている。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月5日号)掲載の報告。認知症特異的リスク因子の除去によって発症率はどの程度低減するか研究グループは、特異的なリスク因子の除去による認知症発症率の低減効果の評価を目的に、7年間に及ぶプロスペクティブなコホート研究を実施した。対象は、フランス南部の都市モンペリエ在住の65歳以上の住民1,433人[ベースラインの平均年齢72.5(SD 5.1)歳]であった。これらの一般住民に対し、標準化された神経学的検査を施行し、軽度認知障害および認知症の診断を行った。公衆衛生プログラムにおける優先項目が明らかにハザード比を算出し、認知症の修正可能なリスク因子の交絡因子や相互作用を検出するためにCoxモデルを構築した。7年間における軽度認知障害および認知症の発症率のブートストラッピングにより、平均人口寄与割合(PAF)を95%信頼区間とともに算出した。最終的に得られたCoxモデルを用いて多変量解析を行い、補正PAFを算出したところ、以下の項目が軽度認知障害および認知症の有意なリスク因子であった。結晶性知能(過去の学習経験の高度な適用によって得られる判断力や習慣)(ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.41~2.09、p<0.001、%PAF:18.1、95%信頼区間:10.9~25.4)、うつ病(1.39、1.13~1.71、p=0.002、10.3、3.7~17.2)、果物と野菜の摂取(1.26、1.02~1.56、p=0.04、6.5、0.2~13.1)、糖尿病(1.85、1.34~2.56、p<0.002、4.9、1.9~8.0)、アポリポ蛋白E遺伝子のε4対立遺伝子(1.47、1.16~1.86、p=0.001、7.1、2.4~12.0)。これらのデータに基づき、著者は「結晶性知能と果物/野菜の摂取を増進させ、うつ病と糖尿病を予防することで、認知症の発症が最大限に抑制される可能性があり、そのインパクトは既知の主要な遺伝学的リスク因子の除去の影響を凌駕する」と結論し、「確実な因果関係は不明だが、これらの知見は公衆衛生プログラムにおいて優先すべき項目を示唆すると考えられる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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外気温の低下により心筋梗塞リスクが増大

心筋梗塞のリスクは外気温が低下するごとに増大するが、外気温が高いこととは関連がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らがMyocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)のレジストリーについて実施した解析で明らかとなった。外気温は短期的な死亡率増加のリスクに影響を及ぼし、暑い日も寒い日にも死亡率は増大することが示されている。一方、外気温が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響については明らかにされていないという。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月10日号)掲載の報告。外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を評価研究グループは、イングランドとウェールズの15の大都市圏において外気温と心筋梗塞のリスクの短期的な関連について検討するために、時系列的な回帰分析を行った。対象は、2003~2006年のMyocardial Ischaemia National Audit Projectに登録された心筋梗塞入院患者8万4,010例で、イベント発生数中央値は57件/日であった。外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を、その後28日にわたり検討した。心筋梗塞のリスクが高い集団への介入で、外気温低下によるリスク増大を抑制可能外気温と心筋梗塞の発症には、平滑化されたグラフとして直線的な関連が認められ、外気温の閾値とは無関係に対数線形モデルによって良好な相関関係が確認された。すなわち、1日の平均外気温が1℃低下するごとに、直近およびその後28日間の心筋梗塞リスクが2.0%(95%信頼区間:1.1~2.9%)ずつ累積的に増大した。最も強い影響は2~7日と8~14日の中間期に生じると予測され、外気温1℃の低下ごとに心筋梗塞リスクがそれぞれ0.6%(95%信頼区間:0.2~1.1%)、0.7%(同:0.3~1.1%)増加した。外気温が高いことは心筋梗塞に対し有害ではなかった。75~84歳の高齢者は85歳以上を含む他の年齢層よりも外気温の1℃低下による心筋梗塞の相対リスクが有意に高く(相互作用のp<0.001)、冠動脈心疾患の既往歴のある患者は既往歴のない患者に比べ相対リスクが有意に高かった(相互作用のp=0.001)。これに対し、アスピリン服用者は、非服用者に比べ心筋梗塞の相対リスクが有意に低かった(相互作用のp=0.007)。著者は、「外気温の低下による心筋梗塞のリスク増大は、寒さに関連した死亡率増加の促進因子の一つと考えられるが、外気温が高いことは心筋梗塞のリスクを増大させない」と結論し、「外気温低下の予報をきっかけとして、的を絞ったアドバイスを行うなどの介入法によって、心筋梗塞のリスクが高い集団におけるリスク低減が可能となるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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テレビが患者・医療現場に与える影響は?

株式会社QLifeは20日、全国の生活者2,198人に対して行った『テレビの「薬」情報が患者・医療現場に与える影響 実態調査』の結果を発表した。調査結果によると、生活者が「医療情報」を最も得ているメディアとしては、テレビが1位であり、かつ最も「行動に影響がある」ことがわかった。生活者にとっては、NHKの方が民放よりも医療情報を得る場合の信頼性が高いという結果が出た。また、テレビが自分や家族が使う薬の「副作用」を話題にしていた場合、13%が医療者に相談せずに「まず、服用を中止」してしまうと回答した。ただしほとんどの人は、医師や薬剤師に相談をするという。日頃から医師や薬剤師による「薬の説明」は不十分と感じているため、テレビが適切な内容で薬の情報を発信した場合には、患者・医療者間のコミュニケーションが促されるという構図が明らかになった。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/1375.html

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開発中止となった抗肥満薬rimonabantの市販後臨床試験の結果報告

重篤な精神神経系の副作用により早期中止となった抗肥満薬rimonabantの心血管アウトカムの改善効果を検討した市販後臨床試験(CRESCENDO試験)の結果が、アメリカScripps Translational Science Institute(ラ・ホーヤ)のEric J Topol氏らによりLancet誌2010年8月14日号で報告された。この結果を受けて、2008年11月、rimonabantは開発自体が中止されている。rimonabantは内在性カンナビノイド受容体を遮断することで減量効果を発揮し、トリグリセリド、HDLコレステロール、空腹時血糖などの代謝異常を改善することが示され、ヨーロッパでは抗肥満薬として市販されていた。悪心やうつ病などの副作用が懸念されていたが、長期投与による心血管リスクの改善効果に期待が集まっていた。重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討CRESCENDO試験の研究グループは、rimonabantによる重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年12月~2008年7月までに、42ヵ国974施設から血管疾患の既往歴やリスクの増大がみられる患者1万8,695例が登録され、rimonabant 20mgを投与する群(9,381例)あるいはプラセボ群(9,314例)に無作為に割り付けられた。試験の関係者や患者には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、中央判定委員会の評価による心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を行った。いくつかの国の規制当局が重篤な精神的副作用を許容できないと判断平均フォローアップ期間13.8ヵ月の時点で、3ヵ国の医療関連規制当局がrimonabant群における自殺への懸念を表明したため、これらの国では試験が早期に中止された。解析は、無作為割り付けの対象となった全例について実施された。試験終了時(2008年11月6日)における心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントの発現率は、rimonabant群が3.9%(364/9,381例)、プラセボ群は4.0%(375/9,314例)であり、両群間に有意な差はみられなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.84~1.12、p=0.68)。rimonabant群はプラセボ群に比べ、消化管副作用[33%(3,038/9,381例) vs. 22%(2,084/9,314例)]、精神神経系副作用[32%(3,028/9,381例) vs. 21%(1,989/9,314例)]、重篤な精神的副作用[2.5%(232/9,381例) vs. 1.3%(120/9,314例)]が有意に高頻度であった。rimonabant群の4例、プラセボ群の1例が自殺した。著者は、「抗肥満薬として上市された薬剤の心血管アウトカムの改善効果を検討したところ、重篤な精神神経系の副作用がみられ、規制当局が許容できないと判断したため、試験も薬剤の開発も早急に中止された」とまとめ、「本試験が早期終了となったことは今後の薬剤開発計画に重要な教訓をもたらすだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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大動脈弁疾患の弁移植術、長期予後は自家移植が同種移植よりも優れる

大動脈弁疾患に対する弁移植術では、患者自身の肺動脈弁を大動脈弁として移植する自家大動脈起始部移植の方が、ドナーの提供による同種大動脈起始部移植よりも長期予後が優れることが、イギリスRoyal Brompton and Harefield NHS Trust心臓外科学のIsmail El-Hamamsy氏らが行った無作為化試験で示された。世界人口の増加や医療への近接性の改善に伴い、大動脈弁の手術数は今後30年以内に3倍に増大すると予想される。大動脈弁移植術は重篤な症状を呈する大動脈弁疾患患者の予後を改善するが、術後の生存率は一般人口に比べて低く、改善の程度は使用された移植片の種類に依存する可能性があるという。Lancet誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月3日号)掲載の報告。単一施設の1名の術者による2種類の移植術の10年生存率を評価研究グループは、大動脈弁疾患患者においては、患者自身の肺動脈弁を大動脈弁として移植する方法が、ドナーから提供された肺動脈弁を移植する方法よりも長期予後の改善効果が優れるとの仮説を検証するために、自家大動脈起始部移植(Ross procedure)と同種大動脈起始部移植の予後を比較する無作為化対照比較試験を実施した。大動脈弁移植を要する69歳未満の患者が登録され、イギリスの単一施設で自家大動脈起始部移植あるいは同種大動脈起始部移植を受ける群に無作為に割り付けられた。すべての移植術が一人の術者(Dr. Magdi H Yacoub)によって施行された。治療割り付け情報は試験関係者および患者に知らされていた。主要評価項目は、移植術後10年における生存率とした。同種移植群の死亡率は自家移植群の4倍以上、自家移植群の生存率は一般人口に匹敵228例が登録されたが、12例は18歳以下のため除外された。両群ともに108例ずつが割り付けられた。周術期死亡率は、自家移植群が1%未満、同種移植群は3%であったが、有意差は認められなかった(p=0.621)。移植術後10年の時点で、自家移植群の4例、同種移植群の15例が死亡した。10年生存率は自家移植群が97%(SD 2)、同種移植群は83%(SD 4)であった。同種移植群の死亡ハザード比は4.61であり、有意差がみられた(95%信頼区間:1.71~16.03、p=0.0060)。同種移植群の生存率(97%)は、年齢および性別で補正したイギリスの一般人口の生存率(96%)と同等であった。著者は、「これらの知見は、患者自身の肺動脈弁を大動脈弁として移植する自家大動脈起始部移植は、大動脈弁疾患患者の長期予後を改善するという仮説を支持する」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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CKD患者への透析開始を早めても生存改善に有意差認められず

慢性腎臓病(CKD)ステージ5の患者に対し、早期に維持透析開始をしても、生存率あるいは臨床転帰の改善とは関連しないことが明らかにされた。維持透析開始のタイミングには、かなりの差異がみられるものの、世界的に早期開始に向かう傾向にある。そうした中で本報告は、オーストラリアのシドニー医科大学校・王立North Shore病院腎臓病部門のBruce A. Cooper氏らの研究グループが、維持透析開始のタイミングが、CKD患者の生存に影響するかどうかを検討するため、早期開始群と晩期開始群との無作為化対照試験「IDEAL」を行った結果によるもので、NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年6月27日号)で発表された。eGFR10~14 mL/分を早期、5~7 mL/分を晩期に割り付けIDEAL(Initiating Dialysis Early and Late)試験は、オーストラリアとニュージーランドの計32施設で実施された。18歳以上の進行性のCKD患者で、推定糸球体濾過量(eGFR)が体表面積(コッククロフト・ゴールト式を用いて算出)1.73m2当たり10.0~15.0mL/分の患者の中から、eGFRが10.0~14.0mL/分の患者を早期に透析開始する群(早期開始群)に、eGFRが5.0~7.0mL/分の患者を遅く開始する群(晩期開始群)に無作為に割り付けた。試験参加者は、2000年7月~2008年11月の間に合計828例(平均年齢60.4歳、男性542例、女性286例、糖尿病患者355例を含む)が、早期開始群404例、晩期開始群424例に割り付けられ、2009年11月まで追跡された。主要評価項目は、全死因死亡とした。死亡率、有害事象とも有意差は認められず透析開始までの期間の中央値は、早期開始群1.8ヵ月(95%信頼区間:1.60~2.23)、晩期開始群は7.4ヵ月(同:6.23~8.27)だった。なお晩期開始群のうち75.9%は、開始指標としたeGFRは7.0mL/分より高値だったが、臨床症状が発現したため透析開始となった。追跡調査期間の中央値3.59年の間に、早期開始群404例中152例(37.6%)、晩期開始群424例中155例(36.6%)が死亡した(早期開始群のハザード比:1.04、95%信頼区間:0.83~1.30)、P=0.75)。有害事象(心血管イベント、感染症、透析合併症)の頻度においても、有意な群間差は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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進行性特発性肺線維症にシルデナフィルは有効か?

ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬シルデナフィル(商品名:レバチオ、ED治療薬としてはバイアグラ・保険未適応)について、進行性特発性肺線維症(IPF)に対する有効性をプラセボとの対照で検討した追加適応を目指す臨床試験の結果が報告された。主要評価項目(6分間歩行改善)での有益性は認められなかったが、副次評価項目ではさらなる研究の必要性をうたうに相当する、肯定的な結果がみられたという。シルデナフィルは進行性特発性肺線維症患者で、肺換気の比較的良好な領域の血流量を選択的に改善し、ガス交換能を改善する可能性があると期待されていることから、IPF臨床研究ネットワークのDavid A. Zisman氏らは、シルデナフィル投与による治療で、進行性IPF患者の歩行距離、呼吸困難、そしてQOLが改善するとの仮説を立て、検証のための臨床試験「STEP-IPF」を実施した。NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年5月18日号)より。2期から成る二重盲検・非盲検試験で評価STEP-IPF(Sildenafil Trial of Exercise Performance in Idiopathic Pulmonary Fibrosis)試験では、進行性IPFの定義は一酸化炭素拡散能が予測値の35%未満であることとした。試験は二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、2期間で構成された。被験者数は計180例。第1期試験では、被験者はシルデナフィル群(89例)またはプラセボ群(91例)に無作為に割り付けられ、12週間時点で評価が行われた。主要評価項目は、6分間歩行距離の20%以上延長を示した患者の比率だった。副次評価項目は、動脈血酸素化、呼吸困難の程度、QOLの変化などとされた。第2期試験は、非盲検試験で、全患者にシルデナフィルが投与され12週時点で評価が行われた。6分間歩行距離延長に有意差なし主要評価項目の6分間歩行距離の20%以上改善がみられたのは、シルデナフィル投与群では9例(10%)、プラセボ投与群6例(7%)で、両群間に有意差は認められなかった(P=0.39)。一方、副次評価項目である動脈血酸素化、一酸化炭素拡散能、呼吸困難の程度、QOLには、シルデナフィル投与を支持する、わずかながらも有意差が認められた。重篤な有害事象の発生は、両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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米国40歳以上糖尿病患者のうち網膜症罹患率は28.5%

米国の40歳以上糖尿病患者のうち、糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%と高率であることが明らかになった。特に非ヒスパニック系黒人で高く、4割近くにみられたという。米国疾病対策予防センター(CDC)のXinzhi Zhang氏らが、1,000人超の糖尿病患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月11日号で発表した。糖尿病性網膜症の罹患率、重症度に関して、全米人口をベースとした最近の動向は存在しなかったという。糖尿病1,006人について蛍光眼底撮影を実施同研究グループは、全米の断面調査「National Health and Nutrition Examination Survey」2005~2008年を基に分析を行った。サンプル数は1,006人だった。糖尿病の定義については、自己申告による糖尿病診断歴あり(妊娠糖尿病除く)、またはHbA1cが6.5%以上とした。両眼について2回の蛍光眼底撮影を行い、その程度についてAirlie House分類スキーム、Early Treatment Diabetic Retinopathy Study重症度スケールにて分類した。サンプルから求めた罹患率を基に、全米の40歳以上に関する罹患率推定値を算出した。40歳以上糖尿病の、男性の31.6%、女性の25.7%が糖尿病性網膜症全米40歳以上糖尿病患者における糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%(95%信頼区間:24.9~32.5)だった。そのうち、治療をせずに放っておくと間もなく失明するほどの重症度の同罹患率推定値は、4.4%(同:3.5~5.7)だった。男女別では、同推定値は、男性が31.6%と、女性の25.7%に比べ有意に高かった(p=0.04)。人種別では、非ヒスパニック系黒人で同推定値が38.8%、また治療をせずに放っておくと間もなく失明する程の重症度の同推定値は9.3%と、非ヒスパニック系白人の各値26.4%、3.2%に比べ、いずれも有意に高かった(p=0.01)。なお、糖尿病性網膜症に関する独立危険因子は、男性(オッズ比:2.07)、HbA1c高値(同:1.45)、長期糖尿病歴(同:1.06)、インスリン使用(同:3.23)、収縮期血圧高値(1mmHg上昇につきオッズ比:1.03)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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経口ビスホスホネート、食道がんや胃がんの発症リスク増大せず

 骨粗鬆症薬として用いられる経口ビスホスホネート製剤を長期に服用しても、食道がんや胃がんの発症リスクは増大しないようだ。英国Queen’s University Belfast公衆衛生センターのChris R. Cardwell氏らが、4万人超の治療群と同数のコントロール群について、約4年半追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月11日号で発表した。ビスホスホネートの服用による副作用として食道炎は知られるが、食道がんとの関係についての信頼性の高い研究は、これまでなかったという。約4万2,000人の治療・コントロール群を4.4~4.5年追跡 同研究グループは、英国General Practice Researchデータベースを基に、1996年1月~2006年12月の間に、ビスホスホネートを服用した4万1,826人と、同数のコントロール群について追跡し、食道がんや胃がんの発症リスクについて分析した。 被験者の81%が女性で、平均年齢は70.0歳(SD:11.4歳)だった。平均の追跡期間は、治療群が4.5年、コントロール群が4.4年だった。追跡期間が6ヵ月未満の人は、除外された。食道がんまたは胃がん、食道がんのみの発症リスクいずれも両群で同等 結果、追跡期間中に食道がんまたは胃がんを発症したのは、治療群の116人(うち食道がんは79人)に対し、コントロール群では115人(同72人)だった。食道がんまたは胃がんの罹患率は、治療群・コントロール群ともに、0.7/1,000人・年だった。食道がんの罹患率は、治療群が0.48/1,000人・年、コントロール群が0.44/1,000人・年だった。 食道がんまたは胃がんの発症リスクについて、治療群とコントロール群の間に、有意差はみられなかった(補正後ハザード比:0.96、95%信頼区間:0.74~1.25)。 食道がんのみの同補正後ハザード比も1.07(同:0.77~1.49)と、両群に有意差はなかった。なお、ビスホスホネートの服用期間による、食道がんまたは胃がん発症リスクにも有意差はみられなかった。

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大脳白質病変は、脳卒中、認知症、死亡リスクの予測因子:46試験のメタ解析

MRI上の高信号域として発見される大脳白質病変は、脳卒中、認知症、死亡のリスクと有意な相関を示すため、その予測因子となり得ることが、イギリスSt George’s University of London臨床神経科学部のStephanie Debette氏らが実施したメタ解析で示された。大脳白質病変と脳の疾患や死亡との関連を評価した試験の結果は必ずしも一致していない。その原因として、試験デザインや画像法、研究施設、サンプル数、フォローアップ期間の不均一性がデータの解釈を難しくしていることが挙げられるという。BMJ誌2010年8月7日号(オンライン版2010年7月26日号)掲載の報告。MRI上の高信号域と脳疾患、死亡との関連のエビデンスを系統系にレビュー研究グループは、MRI上の大脳白質の高信号域と脳卒中、認知機能低下、認知症、死亡との関連のエビデンスについて系統系なレビューを行い、メタ解析を実施した。1966~2009年11月23日までのデータベース(PubMed)を検索し、MRIを用いて大脳白質の高信号域が脳卒中、認知機能低下、認知症、死亡に及ぼす影響を評価したプロスペクティブな縦断的研究や、大脳白質の高信号域をカテゴリー別に分けてこれらの疾患のリスクを予測した試験を抽出した。対象集団、フォローアップ期間、大脳白質高信号域の測定法、アウトカムの定義、大脳白質高信号域とアウトカムの関連について評価した。脳卒中の発症リスクは3.5倍、認知症は1.9倍、死亡は2.0倍46の縦断的研究が抽出され、そのうち大脳白質の高信号域と脳卒中のリスクを評価したものが12試験、認知機能低下のリスクを検討したのは19試験、認知症は17試験であり、死亡については10試験が検討を行っていた。これらの試験について系統的なレビューを行い、メタ解析は22の試験(脳卒中9試験、認知症9試験、死亡8試験)ついて実施した。脳卒中のリスクについては、一般住民を対象とした6試験では大脳白質の高信号域と脳卒中は有意な相関を示し(ハザード比:3.1、95%信頼区間:2.3~4.1、p<0.001)、高リスク群を対象とした3試験でも有意な関連が確認された(同:7.4、同:2.4~22.9、p=0.001)。これらを合わせた9試験の解析では、大脳白質病変の存在は脳卒中の発症リスクを3.5倍に高めていた(同:3.5、同:2.5~4.9、p<0.001)。認知症のリスクについては、一般住民を対象とした3試験では大脳白質の高信号域と認知症は有意な相関を示したが(ハザード比:2.9、95%信頼区間:1.3~6.3、p=0.008)、高リスク群に関する6試験では有意な関連はみられなかった(同:1.4、同:0.9~2.3、p=0.14)。これら9試験の統合解析では、大脳白質病変の存在は認知症の発症リスクを1.9倍に高めていた(同:1.9、同:1.3~2.8、p<0.002)。死亡率との関連については、一般住民に関する4試験では大脳白質の高信号域は死亡を有意に増大させており(ハザード比:2.3、95%信頼区間:1.9~2.8、p<0.001)、高リスク群を対象とした4試験でも有意な相関が認められた(同:1.6、同:1.01~2.7、p=0.04)。8試験を合わせて解析したところ、大脳白質病変により死亡のリスクが2.0倍に増大していた(同:2.0、同:1.6~2.7、p<0.001)。著者は、「大脳白質病変は、脳卒中、認知症、死亡のリスクの予測因子である。すなわち、診断中に発見されたMRI上の大脳白質の高信号域は脳血管イベントのリスクの増大を示している」と結論し、「この知見を研究分野における中間的な指標として使用することも可能であり、脳卒中や認知症のリスク因子の詳細なスクリーニングに道を開くことになろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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心筋梗塞のリスクがカルシウム・サプリメントで増大

 サプリメントとしてのカルシウムの使用(ビタミンDは併用しない)により、心筋梗塞のリスクが有意に増大することが、ニュージーランド・オークランド大学のMark J Bolland氏らが行ったメタ解析で判明した。カルシウムは高齢者の骨格系の健康維持を目的としたサプリメントとして一般的に用いられている。ところが、カルシウム・サプリメントは心筋梗塞や心血管イベントのリスクを増大させる可能性があることが、プラセボを対照とした無作為化試験で示唆されているという。BMJ誌2010年8月7日号(オンライン版2010年7月29日号)掲載の報告。カルシウム・サプリメントと心筋梗塞などの心血管イベントの関連をメタ解析 研究グループは、カルシウム・サプリメントと心血管イベントのリスク増大の関連の評価を目的に、患者レベルおよび試験レベルのデータに関してメタ解析を行った。 1966年~2010年3月までのデータベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials)などを用いて、100例以上、平均年齢40歳以上、試験期間1年以上のカルシウム・サプリメント(≧500mg/日)に関するプラセボ対照無作為化試験を抽出した。 これらの試験の筆頭著者からデータの提供を受け、心筋梗塞などの心血管アウトカムは患者自身の報告、入院記録、死亡診断書で確認した。心筋梗塞リスクがカルシウム・サプリメント群で約30%増大 15試験が適格基準を満たした。患者レベルのデータは5試験[8,151例、フォローアップ期間中央値3.6年(四分位範囲2.7~4.3年)]で得られ、試験レベルのデータは11試験(1万1,921例、平均試験期間4.0年)から得られた。 5試験の患者レベルのデータの解析では、心筋梗塞の発症はカルシウム・サプリメント群が143例と、プラセボ群の111例に比べリスクが有意に31%増加していた(ハザード比:1.31、95%信頼区間:1.02~1.67、p=0.035)。 脳卒中(ハザード比:1.20、95%信頼区間:0.96~1.50、p=0.11)、心筋梗塞/脳卒中/突然死の複合エンドポイント(同:1.18、同:1.00~1.39、p=0.057)、死亡(同:1.09、同:0.96~1.23、p=0.18)については有意なリスクの増大を認めなかった。 試験レベルのデータの解析でも同様の結果が示された。すなわち、心筋梗塞を発症した296例のうち、166例がカルシウム・サプリメント群で、プラセボ群は130例であり、リスクはサプリメント群で有意に27%増加していた(ハザード比:1.27、95%信頼区間:1.01~1.59、p=0.038)。 著者は、「カルシウム・サプリメント(ビタミンDの併用なし)は心筋梗塞のリスクを有意に増大させることが明らかとなった」と結論し、「この大きいとは言えない心筋梗塞のリスク増大も、カルシウム・サプリメントの使用の拡大に伴って、膨大な疾病負担をもたらす可能性がある。骨粗鬆症の治療におけるカルシウム・サプリメントの役割の再評価が急務である」と指摘する。

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【お知らせ】女性限定セミナー「もっと知ってほしい婦人科がんのこと2010 in 大阪」開催

8月28日、NPO法人キャンサーネットジャパンは一般社団法人ティール&ホワイトリボンプロジェクト共催で、女性限定のクローズドセミナー「もっと知ってほしい婦人科がんのこと2010 in 大阪」を開催する。医療者の参加も歓迎。 日時:2010年8月28日(土) 13:30~16:45場所:大阪国際交流センター 小ホール参加費:無料 定員:200名プログラム <開会挨拶>NPO法人キャンサーネットジャパン 理事 川上 祥子氏  <基調講演1> 「婦人科がん(子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん)の予防・診断・治療」講師:関西医科大学附属枚方病院産科・婦人科 斉藤 淳子氏 <基調講演2>「婦人科がん(子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん)の治療(特に薬物療法)について」講師:国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科 温泉川 真由氏 <基調講演3>「婦人科がん患者が直面する問題(花嫁は子宮頸がん)」講師:一般社団法人ティール&ホワイトリボンプロジェクト 理事長 河村 裕美氏 <Q&Aセッション>司会:川上 祥子氏回答者:斉藤 淳子氏・温泉川 真由氏・河村 裕美氏 <閉会挨拶>一般社団法人ティール&ホワイトリボンプロジェクト 理事長 河村 裕美氏 詳しくはこちら http://www.cancernet.jp/eve100828.html

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ACCORD試験の細小血管合併症リスク、強化療法早期中止後の追跡結果

心血管リスクの高い2型糖尿病患者に対する強化療法(HbA1c<6.0%)は、標準療法(同7.0~7.9%)に比べ細小血管合併症のリスクを低減させないものの、その発症を遅延させ、腎、眼、末梢神経の機能の一部を有意に良好に保持することが、アメリカCase Western Reserve大学のFaramarz Ismail-Beigi氏らが行ったACCORD試験の追跡結果で明らかとなった。本試験は、2008年2月、中間解析で総死亡が強化療法群で有意に多かったため一部が早期中止となり、世界中の糖尿病専門医に衝撃を与えた。研究グループは、強化療法群の患者を標準療法群へ移行したうえでフォローアップを続け、今回、事前に規定された細小血管合併症の解析結果を、Lancet誌2010年8月7日号(オンライン版2010年6月29日号)で報告した。事前に規定された複合アウトカムと臓器機能について評価ACCORD試験の研究グループは、2型糖尿病患者では血糖値を低下させることで細小血管合併症の発症を低減できるかについて検討した。本試験には北米の77施設が参加し、対象は年齢40~79歳、HbA1c>7.5%、心血管疾患あるいはそのリスク因子を二つ以上有する2型糖尿病患者であった。これらの患者が、HbA1c<6.0%を目標とする強化療法あるいはHbA1c 7.0~7.9%を目標とする標準療法を施行する群に無作為に割り付けられた。今回の解析では、以下の事前に規定された複合アウトカムについて評価を行った。(1)主要複合アウトカム:透析あるいは腎移植、血清クレアチニン>291.7μmol/L、光凝固療法あるいは硝子体切除術。(2)副次的複合アウトカム:末梢神経障害+主要複合アウトカム。(3)腎、眼、末梢神経の機能に関する事前に規定された13の副次的エンドポイント。患者も担当医も治療割り付け情報を知らされていた。細小血管合併症の解析は全症例について行われ、受療の状況やコンプライアンスは考慮されなかった。強化療法群で、腎、眼、末梢神経障害の発症が遅延、7つの副次的エンドポイントが有意に良好1万251例が登録され、強化療法群に5,128例が、標準療法群には5,123例が割り付けられた。中間解析において、強化療法群で総死亡が有意に多かったため試験は早期中止とされ、この群の患者は標準療法群へと移行された。移行時点における主要複合アウトカムの発現率は、強化療法群が8.7%(443/5,107例)、標準療法群も8.7%(444/5,108例)(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.88~1.14、p=1.00)、副次的複合アウトカムはそれぞれ31.2%(1,591/5,107例)、32.5%(1,659/5,108例)(同:0.96、同:0.89~1.02、p=0.19)であり、いずれも両群間で同等であった。試験終了時の主要複合アウトカムの発現率は、強化療法群が10.9%(556/5,119例)、標準療法群は11.5%(586/5,115例)(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.85~1.07、p=0.42)、副次的アウトカムはそれぞれ38.2%(1,956/5,119例)、40.0%(2,046/5,115例)(同:0.95、同:0.89~1.01、p=0.12)であり、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。試験終了時において、強化療法群では細小血管合併症のリスクは低減されなかったが、アルブミン尿や眼合併症、神経障害の発症が遅延していた。また、腎、眼、末梢神経の機能に関する13の副次的エンドポイントのうち7項目が、強化療法群で有意に良好であった(p<0.05)。著者は、「強化療法では、総死亡や心血管疾患関連死、体重増加、重篤な低血糖のリスクが増大する点を考慮したうえで、その細小血管合併症の抑制効果のベネフィットを慎重に検討すべきである」と結論し、「我々はHbA1c<6.0%という現在の治療戦略の目標値を安易に考えすぎかもしれない。ACCORD試験の患者のフォローアップを継続することで、長期的なリスク対ベネフィットの評価を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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新しい糖尿病治療薬exenatide、追加薬として最適:DURATION-2試験

メトホルミンで十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に対する追加薬剤としては、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストであるexenatideが、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4) 阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)やチアゾリジン系薬剤ピオグリタゾン(同:アクトス)よりも有用なことが、アメリカInternational Diabetes Center at Park NicolletのRichard M Bergenstal氏らが実施した無作為化試験で示された。2型糖尿病患者の薬物療法はメトホルミンで開始されることが多いが、いずれは他の薬剤の追加が必要となる。GLP-1受容体アゴニストやDPP-4 阻害薬は血糖コントロールだけでなく、肥満、高血圧、脂質異常などの2型糖尿病関連の代謝異常にも有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年8月7日号(オンライン版2010年6月26日号)掲載の報告。3群の優越性を評価する二重盲検ダブルダミー無作為化試験DURATION-2試験の研究グループは、メトホルミン治療を受けている2型糖尿病患者において、週1回のexenatide、最大承認用量のシタグリプチン、最大承認用量のピオグリタゾンの安全性と有効性を評価する二重盲検無作為化試験を行った。2008年1月22日~8月6日までに、アメリカ、インド、メキシコの72施設から、メトホルミン治療を受けている18歳以上の2型糖尿病患者で、ベースライン時の糖化ヘモグロビン(HbA1c)が7.1~11.0%、BMIが25~45 kg/m2の者が登録された。これらの患者が、exenatide 2mg/週(皮下注)+プラセボ 1回/日(経口)、シタグリプチン100mg/日(経口)+プラセボ 1回/週(皮下注)、ピオグリタゾン45mg/日(経口)+プラセボ1回/週(皮下注)を併用投与する群で無作為に割り付けられた。主要評価項目はベースラインから治療26週までのHbA1cの変化率とし、1回以上の治療を受けたすべての患者についてintention-to-treat解析を行った。exenatide群でHbA1cと体重が有意に低下、重篤な低血糖は認めなかったexenatide群に170例、シタグリプチン群に172例、ピオグリタゾン群には172例が割り付けられた。このうちintention-to-treat解析の対象となったのは、それぞれ160例、166例、165例であった。ベースライン時の平均年齢は52歳、HbA1c平均値は8.5%、空腹時血糖は9.1mmol/L、体重は88.0kgであった。HbA1cのベースラインからの変化の最小二乗平均は、exenatide群が-1.5%(95%信頼区間:-1.7~-1.4%)であり、シタグリプチン群の-0.9(同:-1.1~-0.7%)、ピオグリタゾン群の-1.2%(同:-1.4~-1.0%)に比べ低かった。exenatide群とシタグリプチン群の差は-0.6%(同:-0.9~-0.4%、p<0.0001)、exenatide群とピオグリタゾン群の差は-0.3%(同:-0.6~-0.1%、p=0.0165)であり、exenatide群におけるHbA1cの有意な改善効果が確かめられた。exenatide群では体重が2.3kg(95%信頼区間:-2.9~-1.7kg)減少していた。シタグリプチン群との差は1.5kg(p=0.0002)、ピオグリタゾン群の差は5.1kg(p<0.0001)であり、シタグリプチン群で有意な体重減少効果が確認された。3群ともに重篤な低血糖エピソードの報告はなかった。最も高頻度にみられた有害事象は、exenatide群とシタグリプチン群が悪心[それぞれ24%(38例)、10%(16例)]、下痢[それぞれ18%(29例)、10%(16例)]であり、ピオグリタゾン群では上気道感染症[10%(17例)]、末梢浮腫[8%(13例)]の頻度が高かった。著者は、「糖尿病の治療を行う臨床医の目標は体重の減少と低血糖エピソードの抑制とともに最適な血糖コントロールを達成することであり、メトホルミンへの追加薬剤として、exenatideはシタグリプチンやピオグリタゾンよりもこの目標の達成度が高い」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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