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CKD診療ガイド改訂 -慢性腎臓病(CKD)は原疾患、腎機能と尿所見でリスク評価を-

日本慢性腎臓病対策協議会(東京都文京区、理事長:槇野博史、J-CKDI)は、1日、CKD診療に関して、かかりつけ医の標準化と腎臓専門医の連携を目的とした「CKD診療ガイド2012」を発行した。「CKD診療ガイド」は、2009年以来3年ぶりの改訂となる。本ガイド改訂委員長の今井圓裕氏は、今回の最も大きな改訂点として、CKDの重症度分類が腎機能だけでなく、原疾患、尿所見を評価した分類に変更されたことを挙げ、その他、血圧管理、貧血管理が臨床上に影響を及ぼす点として掲げた。最大の改訂点となった重症度分類の変更は、わが国でなく、国際腎臓病ガイドライン(KDIGO)も同様の見直しを行なっていると今井氏は言う。従来は糸球体濾過量(G = GFR)を基にした腎機能のみで評価してきたが、尿蛋白・尿アルブミン値(A = Albumin)、原疾患(C = Cause)を加えたいわゆるCGA分類で評価する。これはアルブミン尿や蛋白尿が、腎機能とは独立して末期腎不全、心血管死の発症リスクであることを示すエビデンスが確立してきたため。病期は4つに区分され、リスクに応じて腎臓専門医への相談・紹介基準や、腎臓専門医への通院間隔が推奨されている。次に注目すべき改訂点は、血圧管理。CKDにおける血圧管理については国際的に基準が変わってきており、現在の降圧目標レベルが過剰であると捉えられつつあると今井氏は述べた。これまでの蛋白尿が1g/日以上を認めるCKD患者の降圧目標値は「125/75mmHg未満」が推奨されてきたが、今回の改訂により撤廃され、「130/80mmHg以下」に統一された。高齢者においては、「140/90mmHg未満を目標に降圧し、腎機能悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認し、130/80mmHg以下に降圧する、収縮期血圧110mmHg未満への降圧は避ける」とさらに慎重な構え。特に夏期、RA系阻害薬投与例において、過降圧を来たし、急性腎障害で搬送される例も少なくないことも例に挙げ、高齢者における過降圧に注意を喚起した。また、推奨する降圧薬については、糖尿病and/or蛋白尿が認められる場合は、従来どおりRAS阻害薬を第一選択薬とすることは変わりないが、糖尿病も蛋白尿もみられないCKD例においては、降圧薬の種類を問わないことが記述された。貧血管理の改訂も注目すべき改訂点と言える。前回の改訂があった2009年以降、貧血の改善が臨床転帰につながらなかった試験が発表された。遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与については、「投与開始Hb値=10g/dL、治療目標Hb値=10~12g/dL、13g/dLを超えないよう配慮する」と基準を明記している。今回の改訂において、「重症度分類の変更」が意味するところは、蛋白尿、アルブミン尿が末期腎不全、心血管死の独立した危険因子であるものとして捉え、尿検査を定期的に実施していくことの重要性を促すものと捉えている。(ケアネット 藤原 健次)

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第3回 相当程度の可能性:治療と患者の死亡

■今回のテーマのポイント1.高度の蓋然性をもって因果関係の立証ができなかったとしても、「相当程度の可能性」の存在が証明できれば、不法行為による損害賠償責任を負う2.この法理は、結局は、因果関係の証明を緩和することと同じ効果をもつ3.「相当程度の可能性」さえ認められれば、過失の軽重を問わず損害賠償責任を負うこととなり得るのは問題である事件の概要56歳の男性(X)。午前4時半頃に突然の背部痛により目を覚まし、しばらくして背部痛は軽快したものの、妻の強い勧めもありY病院の救急外来を受診しました。医師Aは、心窩部に圧痛を認め、胸部聴診上心雑音、不整脈は認められなかったことから、第一に急性膵炎を、第二に狭心症を疑い、急性膵炎に対する点滴加療を開始しました。しかし、その5分後(診察開始から15分後)にXは、突如呼吸停止に至り、医師Aが蘇生処置を行うも2時間後に死亡しました。Xの死因は不安定狭心症からの急性心筋梗塞と考えられました。死亡後Xの妻と子らが、Y病院に対し診断、治療上の過失があるとして損害賠償請求を行いました。原審(高裁)では、適切な治療を行ったとしてもXが救命できたということはできないとして、Xの死亡との関係では、因果関係がないとしましたが、「患者が適切な医療を受ける機会を不当に奪われたことによって受けた精神的苦痛を慰藉すべき責任がある(期待権侵害)」として、200万円の損害賠償責任を認めました。これに対し、最高裁は、原審とは異なる判示をした上で、原審を維持しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過56歳の男性(X)。午前4時半頃に突然の背部痛により目を覚まし、しばらくして背部痛は軽快したものの、妻の強い勧めもありY病院の救急外来を受診しました。Xは、医師Aに対し、上背部痛及び心窩部痛があり、現在痛みは軽減していること、7、8年前にも同様の痛みがあり、その時は尿管結石であったことを伝えました。医師Aの診察では、心窩部に圧痛を認め、胸部聴診上心雑音、不整脈は認められなかったこと、尿検査では潜血を認めなかったことから、第一に急性膵炎を、第二に狭心症を疑い、診察室の向かいの部屋でペンタジンの筋注及びガベキサートメシル酸塩(商品名:FOY)の点滴静注を開始しました。Xは、点滴のため部屋を移った5分後(診察開始から15分後)に、突如「痛い、痛い」と言い、大きく痙攣した後、すぐに意識を消失しました。付き添いに来ていたXの子の知らせで医師Aが駆け付けたところ、ほどなく呼吸停止に至りました。医師Aらが蘇生処置を行うも奏効せず、診察開始から2時間後にXは死亡しました。Xの死因は、不安定狭心症からの急性心筋梗塞と考えられました。事件の判決本件のように、疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。けだし、生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって、右の可能性は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができるからである(最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁)。ポイント解説本判決は、医療バッシングが苛烈を極めた時期に出された判決であり、大きな問題(鬼の子)として民事医療訴訟において、いまだに禍根を残していますし、法理論的にも様々な問題が指摘されています。この判決が、混乱を導く原因となっているのは、判示において「右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるとき」というように因果関係の立証を緩和しているかのように受け取られたからです。しかし、前回(第2回 因果関係:不作為と患者の死亡)述べましたように、因果関係の証明は、「経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明すること」であり、それが認められない場合には、因果関係が「ない」こととなります。つまり、民事訴訟においては、あくまで因果関係は「ある」か「ない」かであり、「ありそう」というだけでは「ない」とみなされるのです。それでは、本判決が示した「相当程度の可能性」というのは一体民法709条※1におけるどの要件を示しているのでしょうか。本件判決では、上記判示の後、「生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって、右の可能性は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができるからである」と示しており、この「相当程度の可能性」は、民法709条における「法律上保護される利益」に該当すると述べています。したがって、本判決に従うと、(1)過失:医療水準に満たない診療(2)損害:「相当程度の可能性」(3)因果関係:(1)と(2)の間の因果関係ということとなります。しかし、理論上はそのように説明ができるとはいえ、(2)と(3)は結局、同じ立証となりますので、結論としては、(1)と「相当程度の可能性」(一般的に20%程度と考えられています)さえ立証できればよいということになり、ぐるっと回って因果関係の証明の程度が緩和されたことと同じになります※2。本判決のもう一つの問題点としては、「相当程度の可能性」自体が民法709条の要件である「法律上保護される利益」であるとしてしまったため、別の要件である過失の程度、すなわち医療水準からの解離の程度、悪質性を問わずに、独立して「相当程度の可能性」が認められることとなり得るということです。つまり、期待権の議論は、などの重篤な疾患において、病院側弁護士が、「確かに医療者に重大な過失はあったが、その過失とは関係なくにより死亡していた」と主張してきた場合に、患者側が、因果関係を高度の蓋然性をもって証明することは困難であり、その結果、敗訴するという事案がしばしば認められたことから出てきたものであり、重大な過失がある場合にまで、まったく損害賠償責任を負わないとすることが「損害の衡平な分担」という不法行為法の基本理念からみて適切かという指摘は理解できます。しかし、本判決により、過失の重大性を問わず、たとえ軽微な過失であったとしても、「相当程度の可能性」が認められれば、損害賠償責任が認められるということとなると、救済の範囲が過剰となりすぎ、大きな問題となります(「二重の緩和」問題)。突然の家族の死亡で困窮している家族を救済すべきという感覚は理解できますし、そうあるべきと考えますが、それは社会保障制度や生命保険でカバーすべきものであり、医療機関や医師を違法とそしることでカバーすべきものではありません。また、因果関係の緩和には紛争促進効果があります。裁判による紛争解決の限界を理解し、すべての救済について過失認定を前提とした司法によるのではなく、社会保障制度の充実等によりカバーできる範囲は、司法の外にゆだねる必要があるといえます。※1民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とされており、不法行為の要件には、(1)過失(又は故意)、(2)損害、(3)((1)と(2)の間の)因果関係があります(第1回ポイント解説参照)※2ただし、因果関係を「相当程度の可能性」までしか立証できない場合には、損害が患者の死亡等から「相当程度の可能性」を侵害されたこととなるため、賠償額が大きく減額されます(10分の1以下)。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁

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株式会社ツムラが会員制漢方専用電子書籍「漢方Library」を提供開始

株式会社ツムラは、医療関係者向け会員制サイト「漢方スクエア」の電子書籍本棚として、「漢方Library」を5月23日より提供開始した。近年のスマートフォンやタブレット端末の普及に対応するため、漢方専門誌や小冊子を電子書籍として提供するもの。「漢方Library」は、iPhone・iPadなどのiOS端末やアンドロイド端末、PCで可能。iOS端末、アンドロイド端末はそれぞれApp Store、Google playにて「本棚アプリ」をダウンロード、PCを利用する場合は、「漢方スクエア」内「情報誌・書籍」コーナーの「漢方Library」からダウンロードする。専用の本棚アプリとともに電子書籍がセットになっており、自分のオリジナルの本棚を作り上げていくことが可能。また、ダウンロードした書籍はオフラインでも閲覧できる。さらに、画面上へのマーカー、メモ、スタンプ機能や、キーワード検索機能も備えている。利用には同社の医療関係者向け会員制サイト「漢方スクエア」への会員登録(無料)が必要となる。詳しくはこちらhttp://www.tsumura.co.jp/password/m_square/library/index.htm(ケアネット 細田 雅之)

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関節リウマチ治療薬への新たな期待 【アバタセプト全例調査 中間解析結果】

2012年4月に開催された第56回日本リウマチ学会総会・学術集会(JCR2012)において、アバタセプト(商品名:オレンシア)の使用成績調査(全例調査)の中間解析結果が報告された。これを受けて2012年5月25日、ブリストル・マイヤーズ株式会社による記者発表会が開催され、産業医科大学第1内科学講座の田中良哉氏によって講演が行われた。関節リウマチとは?関節リウマチは手指や膝など全身の関節に腫れや痛みが生じ、症状が進行すると関節破壊・変形が起こるため、生活や仕事に影響を及ぼす自己免疫疾患である。また、関節破壊は発症後、約2年間で急激に進むため、早期からの適切な治療が求められる。日本の患者数は70万人とも100万人ともといわれ、30~40歳代の女性に好発する。関節リウマチの診断基準関節リウマチは関節破壊が起こる前に治療を開始することが求められるため、早期診断・早期治療を推奨することを目的に米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)により、関節リウマチ分類基準(ACR/EULAR2010)が発表されている。この基準によると、1ヵ所以上の関節腫脹を認め、他の疾患と鑑別された場合に、下記スコアリングによる分類基準において10点中6点以上であれば関節リウマチと診断される。 腫脹または圧痛関節数1個の中~大関節   0点2~10個の中~大関節   1点1~3個の小関節   2点4~10個の小関節   3点11個以上の関節(1つの小関節を含む)   5点血清学的検査RFも抗CCP抗体も陰性   0点RFか抗CCP抗体のいずれかが低値の陽性   2点RFか抗CCP抗体のいずれかが高値の陽性   3点滑膜炎の期間6週未満   0点6週以上   1点急性期反応CRPもESRも正常値   0点CRPかESRのいずれかが異常値   1点標的部位の異なる生物学的製剤現在、関節リウマチ(RA)治療に用いられる生物学的製剤はTNF阻害剤が4製品、IL-6阻害剤とT細胞阻害剤がそれぞれ1製品発売されている。T細胞阻害剤であるアバタセプトは抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを遮断し、T細胞の活性化とサイトカイン産生を阻害する薬剤である。これまでのTNFαやIL-6をターゲットとした生物学的製剤とはコンセプトの異なる薬剤として注目されている。3,000例を目標とする全例調査アバタセプトは使用実態下における臨床経過や有効性、安全性に関する情報を収集することを目的に全例調査の実施が承認条件となっている。2010年9月から症例登録が開始され、目標症例数は3,000例(24週の観察期間を終了する症例数)である。本中間解析では登録開始後の初期1,000例を対象として解析された。 <患者背景>性別 男性18.1%、女性81.9%平均年齢 61.4歳生物学的製剤の使用歴 未使用27.2% 既使用72.8%メトトレキサートの併用状況 非併用35.7% 併用64.3%安全性について有害事象は236例(23.6%)、うち重篤な有害事象は33例(3.3%)にみられ、副作用は160例(16.0%)、うち重篤な副作用は24例(2.4%)であった。有害事象のうち、重点調査項目であった重篤な感染症は8例、重篤な過敏症は1例、悪性腫瘍は3例であった。また、生物学的製剤を投与する際には結核等の再燃が危惧されるが、本中間解析において結核の報告はなかった。なお、重篤な副作用発現に対するリスク因子として、リンパ球数1000mm3未満と体重40kg未満が示唆された。バイオナイーブ群ではより高い改善効果DAS28(CRP)*1平均値は投与前は4.34であったが、24週時点で3.32まで低下した。 SDAI*2、CDAI*3はそれぞれ投与前が23.9、22.1であったのに対し、投与後は14.6、13.5まで改善した。また、生物学的製剤による前治療の有無別にみると、既投与例ではDAS28(CRP)は4,36(投与前)から3.48(24週時点)へ低下したのに対し、未投与(バイオナイーブ)群では4.26(投与前)から2.84(24週時点)まで低下していたことから、バイオナイーブの患者でより大きな改善がみられた。より高い治療効果への期待全例調査の中間解析により、アバタセプトは比較的副作用の発現頻度が低く、安全性の高さが示唆された。また、田中氏は、「アバタセプトはバイオナイーブ症例で有効性が高く、他の生物学的製剤と遜色がなかったことから、生物学的製剤の第一選択となり得る」と考察を述べた。アバタセプトの全例調査は承認条件が解除されるまで継続され、現在、長期使用における安全性や有効性に関する調査も実施されており、今後さらなるデータの蓄積が期待される。 *1 DAS28(CRP)28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による健康状態の評価、CRP(C反応性蛋白)による評価*2 SDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による全般評価、医師による全般評価、CRPによる評価*3 CDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、医師による全般評価(ケアネット 森 幸子)

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「今後の透析医療を考える」プレスセミナーレポート

2012年5月31日、「今後の透析医療を考える」と題したプレスセミナー(バイエル薬品株式会社主催)が開催された。第1部として、秋澤忠男氏(昭和大学医学部 腎臓内科教授)が、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」を、第2部として、宮本高宏氏(全国腎臓病協議会 会長)が、「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」を講演した。その内容をレポートする。「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」 わが国の透析患者に対する治療は、世界でトップレベルにあり、日本の透析患者の死亡リスクは、米国の1/4、欧州の1/2.5である。しかし、一般人と比較すると透析患者の余命は半分で、とくに心不全などの脳・心血管系疾患による死亡リスクが高くなっている。この原因として、血中リン(P)濃度による血管の石灰化が考えられる。 日本透析医学会は、この度、慢性腎臓病に伴う『骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(CKD-MBD)』を発表した。CKD-MBDは、2006年に発表されたガイドラインの改訂版で、主な変更点は、以下の通りである。○対象を透析患者だけでなく、保存期や移植期のCKDや小児CKDに拡大する○血管石灰化や透析アミロイドーシスなどの病態を加える○新規治療薬の評価・使用法を加える○エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度を明示する また、CKD-MBDでは、P、カルシウム(Ca)、副甲状腺ホルモン(PTH)の管理目標値も示されるとともに(P:3.5-6.0 mg/dL、Ca:8.4-10.0 mg/dL、PTH:60-240 pg/mL)、P、Caの管理を優先することが推奨されている。そして、管理方法としては、炭酸Ca、Ca非含有P吸着薬、活性型ビタミンD、副甲状腺作動薬を組み合わせて管理目標を達成する『9分割図』といわれる方法が提唱されている。 演者の秋澤氏は、「CKD-MBDを活用したPの適切な管理が、透析患者の予後向上につながることを期待したい」として、講演を終えた。「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」 透析患者を対象とした治療に関する調査結果が発表された。調査は、2012年4月に、インターネットで実施され、人工透析を受けている患者200名から回答を得た。主な調査結果は以下の通りである。○透析患者の不安項目としては、合併症への不安(73%)が最も多く、とくに、循環器疾患への不安を覚えている人が多かった。○透析の治療に関するガイドラインは、約40%の人が認知していた。○ガイドラインに沿った治療を希望する人は、60%であった(わからない:34%)。○自分の服用している薬に対する意識調査では、薬について十分理解している人が91%おり、自分で調べたり勉強している人の割合も73%であった。 演者の宮本氏は、自らも30年来の透析患者であることを明かしたうえで、透析患者の医療費負担に触れた。「透析にかかる医療費は年間約1兆5千万円で、国の医療財政を圧迫しているが、患者の自己負担額はほぼゼロに近い。この事実を鑑み、患者は、自分達が提供してもらっている医療に感謝し、自ら食事療法などの自己管理をしっかりと行うことが必要である」と強調した。

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10代うつ病患者の治療はファンタジーゲームで?

うつ病の認知行動療法のパソコン用ソフトとして開発された「SPARX(Smart, Positive, Active, Realistic, X-factor thoughts)」は、ファンタジーゲーム様式が特徴で、4~7週間にわたって提供される7つのモジュールを克服していくというものである。その治療効果について、ニュージーランド・オークランド大学のSally N Merry氏らによる12~19歳のティーンエイジャーを対象とした多施設無作為化非劣性試験の結果、プライマリ・ケアにおいて対面カウンセリングといった通常ケアの代替療法となり得るものであることが示された。Merry氏らは、「治療が必要にもかかわらず介入が行われていない患者を対象に適用していくことができるだろう」とまとめている。これまでパソコンソフトを活用した認知行動療法は成人についてはその効果が認められていたが、ティーンエイジャーにおける効果は明らかではなかった。BMJ誌2012年4月19日号より。12~19歳の187例をSPARX介入群と通常ケア群に無作為化試験は、ニュージーランドの24のプライマリなヘルスケア施設(小児科、一般診療所、学校のカウンセリング・サービス)で、うつ症状に対する支援を希望していて、自傷行為の重大リスクがなく、一般医が治療が必要と判断した12~19歳の187例を対象に、多施設無作為化非劣性試験を実施した。94例がSPARXを受ける群(平均年齢15.6歳、女性62.8%)に、93例は通常の治療を受ける群(平均年齢15.6歳、女性68.8%)に割り付けられた。通常ケア群には、訓練を受けたカウンセラーと臨床心理士が提供する対面カウンセリングが行われた。主要評価項目は、小児うつ病尺度改訂版(CDRS-R:children's depression rating scale-revised)スコアの変化とした。副次評価項目は、小児うつ病尺度改訂版、Reynoldのティーンエイジャーうつ病スケール第2版(Reynolds adolescent depression scale-second edition)、気分と感情質問票(mood and feelings questionnaire)、Spence小児不安スケール(SCAS:Spence children's anxiety scale)、小児用QOL・喜び・満足度質問票(paediatric quality of life enjoyment and satisfaction questionnaire)、小児用Kazdin絶望感測定尺度(Kazdin hopelessness scale for children)などの各スケールスコアの変化と、治療評価を含む全体的満足度を含めた。副次評価項目もすべてSPARX群の非劣性を支持170例(91%、SPARX群85例、通常ケア群85例)が介入後に評価を受け、168例(90%、83例、85例)が3ヵ月後のフォローアップ評価を受けた。パープロトコル解析(143例)の結果、SPARX群が通常ケア群に非劣性であることが示された。介入後、CDRS-R未処理スコアは、SPARX群で平均10.32の減少が認められた。通常ケア群では7.59の減少だった(群間差:2.73、95%信頼区間:-0.31~5.77、P=0.079)。寛解率は、SPARX群(31例、43.7%)が通常ケア群(19例、26.4%)より有意に高く(差17.3%、95%CI 1.6~31.8%)、P=0.030)、反応率はSPARX群(66.2%、47例)と通常ケア群(58.3%、42例)との間に有意差は認められなかった(格差:7.9%、95%信頼区間:-7.9~24%、P=0.332)。副次評価項目もすべて非劣性を支持するものであった。intention-to-treat解析はこれらの所見を確認し、得られた改善はフォローアップ後も維持された。介入に関連すると思われる有害事象の頻度も群間での差異は認められなかった(SPARX群11例、通常ケア群11例)。

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妊婦への新型インフルエンザワクチン接種、胎児死亡との関連認められず

妊婦への不活化新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関して、胎児死亡リスク増大のエビデンスは見つからなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのBjorn Pasternak氏らによる約5.5万人の妊婦を被験者とするデンマーク全国登録コホート研究の結果、示された。2009パンデミック当時、新型インフルエンザに罹患した妊婦の罹病率、死亡率が増大し、妊娠アウトカムが不良となることが認められたことから、その後、多くの国で、新型インフルエンザワクチン接種キャンペーンのターゲットに妊婦を含んでいる。Pasternak氏らは、ワクチン接種が胎児死亡と関連しないかを国民ベースで検証した。BMJ誌2012年5月19日号(オンライン版2012年5月2日号)掲載報告より。妊婦5万4,585例を対象に、ワクチン接種群と非接種群の胎児死亡等リスクを比較対象となったのは、2009年11月~2010年9月に単胎児妊娠中の妊婦5万4,585例であった。AS03パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン不活化新型インフルエンザワクチン(Pandemrix)接種状況および潜在的交絡因子を結びつけて調査が行われた。主要アウトカムは、ワクチン非接種妊婦と比較したワクチン接種妊婦の、傾向スコア補正後の胎児死亡(特発性流産と死産を含む)リスクとした。副次アウトカムは、流産(妊娠7~22週)、死産(22週過ぎ以降)とした。主要、副次アウトカムともにリスク増大の関連認められず妊婦5万4,585例のうち、ワクチン接種者は7,062例(12.9%)。胎児死亡発生は、1,818例(特発性流産1,678例、死産140例)だった。解析の結果、ワクチン接種と胎児死亡リスク増大との関連は認められなかった(補正後オッズ比:0.79、95%信頼区間:0.53~1.16)。副次アウトカムについても、流産(同:1.11、0.71~1.73)、死産(同:0.44、0.20~0.94)ともに増大は認められなかった。また共存症あり(同:0.82、0.44~1.53)、共存症なし(同:0.77、0.47~1.25)で検討した結果も、推定胎児死亡リスクは同程度であった。

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双極性障害患者に対するオランザピン単剤 or 併用の忍容性

リリー・リサーチ・ラボラトリーズの片桐氏らは日本人双極性障害患者に対しオランザピンを単剤または気分安定薬との併用にて18週間投与し、長期の安全性および有効性を検討した。その結果、「日本人でも欧米と同様、良好な結果が得られた」として、Curr Med Res Opin誌2012年5月号(オンライン版4月10日号)にて報告した。対象は、6週間のオランザピンおよびハロペリドール、プラセボ対照二重盲検比較試験を行った双極性障害患者。オランザピン(5-20mg/日)単独投与を完了した単独群100例、YMRS(ヤング躁病評価尺度)にて効果不十分により試験を中止した患者に対しオランザピンに気分安定薬(リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸のいずれか)を投与した併用群39例における18週間の安全性および有効性を評価した。オープンラベル多施設試験。安全性は治療中の有害事象、バイタルサイン、体重、錐体外路症状(EPSs)、有効性はYMRSトータルスコアおよび躁症状への反応率、寛解率にて評価した。主な結果は以下のとおり。 ・両群ともに死亡や重篤な副作用は認められなかった。・有害事象の発現率は単独群59.0%、併用群79.5%であった。両群とも軽度または中等度が大部分であった。・単独群におけるYMRSベースラインからの平均変化量は -3.0であった。また、躁症状への反応率は97.0%、寛解率は93.0%であった。・併用群でのYMRSベースラインからの平均変化量は -19.8であった。また、躁症状への反応率は64.1%、寛解率は61.5%であった。・なお、オランザピン使用に際しては、代謝パラメーターのモニタリングが推奨される。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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抗悪性腫瘍剤「ザーコリカプセル200mg/250mg」新発売

ファイザーは29日、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺(NSCLC:Non-Small Cell Lung Cancer)の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリカプセル200mg/250mg」(一般名:クリゾチニブ、以下:ザーコリ)を発売した。また、同日付で薬価収載もされた。ザーコリは、ALKを阻害する世界初の化合物。ALK遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)などの腫瘍の発生や形成に関わる重要な因子である。肺がんにおけるALK 融合遺伝子の存在は日本人研究者によって発見され、2007年に初めて発表された。予備的な疫学調査ではNSCLC患者の約3~5%がALK融合遺伝子陽性とされている。ザーコリは、ALK融合蛋白質のチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要な細胞内シグナル伝達経路を遮断する。同社は、ザーコリがより安全かつ有効に使用されるために一層の臨床データの蓄積が重要であると考え、同剤の承認条件にしたがい、製造販売後の特定使用成績調査(全例調査)を通じて、安全性および有効性に関するデータを早期に収集し、適正使用に必要な措置を講じていくという。また、全例調査契約時には、施設・医師要件を確認し、同剤の納入前にはMRによる適正使用情報の提供を行い、納入後には定期的な情報収集訪問を義務付けるとのこと。医療関係者向けには「適正使用ガイド」を、患者向けには冊子などを作成する。市販後に集収される副作用情報は、同社医療従事者向けのサイト「Pfizer for PROFESSIONALS」内にて週1回案内するとのこと。なお、保険償還前の薬剤提供については、ザーコリの早期使用が必要な場合を想定し、承認後から薬価基準収載までの期間、同剤開発治験実施施設に限定するなどの制限付きで提供していたが、今回の薬価基準収載をもって終了した。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_05_29.html

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パゾパニブ、転移性軟部肉腫の無増悪生存期間を有意に延長

マルチターゲットの経口チロシンキナーゼ阻害薬であるパゾパニブは、化学療法施行後に病態が進行した非脂肪細胞性の転移性軟部肉腫の新たな治療選択肢となることが、オランダ・Radboud大学医療センターのWinette T A van der Graaf氏らが実施したPALETTE試験で示された。軟部肉腫は成人のがんの1%ほどのまれな間葉腫瘍で、米国では年間約1万1,280人が罹患、約3,900人が死亡し、欧州では年間に10万人当たり5人の割合で発症しているという。パゾパニブは非脂肪細胞性の進行軟部肉腫に対する抗腫瘍効果が確認されている。Lancet誌2012年5月19日号(オンライン版2012年5月16日号)掲載の報告。パゾパニブの有用性を評価するプラセボ対照無作為化第III相試験PALETTE試験は、標準治療に抵抗性となった非脂肪細胞性の転移性軟部肉腫患者に対するパゾパニブの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。2008年10月9日~2010年2月26日までに13ヵ国72施設から、標準的な化学療法を1~4レジメン施行後に病態が進行した転移性軟部肉腫で、血管新生阻害薬による治療を受けていない患者が登録され、パゾパニブ800mg/日あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。試験治療終了後のクロスオーバーは行わないこととした。患者、担当医、アウトカムの評価者、解析担当者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。PFS中央値が3ヵ月延長、OSには差なし登録された372例のうち369例が評価可能であり、パゾパニブ群に246例が、プラセボ群には123例が割り付けられた。PFS中央値はパゾパニブ群が4.6ヵ月と、プラセボ群の1.6ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.31、95%信頼区間[CI]0.24~0.40、p<0.0001)。全生存期間(OS)はパゾパニブ群が12.5ヵ月、プラセボ群は10.7ヵ月と、両群で同等であった(HR:0.86、95%CI:0.67~1.11、p=0.25)。最も頻度の高い有害事象は、疲労(パゾパニブ群:65%、プラセボ群:49%)、下痢(58%、16%)、悪心(54%、28%)、体重減少(48%、20%)、高血圧(41%、7%)であった。相対的な用量強度(dose intensity)はプラセボ群が100%、パゾパニブ群は96%だった。著者は、「化学療法施行後に病態が進行した非脂肪細胞性の転移性軟部肉腫の治療では、パゾパニブが新たな治療選択肢となることが示された」と結論し、「本試験の対象はきわめて予後不良で、不均一な患者集団であり、パゾパニブの有用性が確かめられたことの意義は大きい」としている。(菅野守:医学ライター)

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低侵襲食道切除術、切除可能食道がんの術後合併症を低減

切除可能な食道がんの治療では、低侵襲食道切除術が開胸食道切除術に比べ術後の肺感染症の頻度が低く、短期的なベネフィットをもたらすことが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのSurya S A Y Biere氏らの検討で示された。切除可能な食道がんの唯一の根治的治療は食道切除術とされるが、開胸食道切除術では患者の半数以上に術後の呼吸器合併症の発現がみられる。胸腔鏡と腹腔鏡を用いた低侵襲食道切除術は、術後の肺感染症の合併が少ないため在院日数が短縮することが知られているが、これまで無作為化試験による評価は行われていなかったという。Lancet誌2012年5月19日号(オンライン版2012年5月1日号)掲載の報告。術後合併症の発現を評価する多施設共同非盲検無作為化試験研究グループは、開胸食道切除術と低侵襲食道切除術における術後合併症の発現状況を評価する多施設共同非盲検無作為化試験を行った。2009年6月1日~2011年3月31日までに、3ヵ国(オランダ、スペイン、イタリア)の5施設から18~75歳の切除可能な食道がんおよび胃食道接合部がん患者(cT1~3/N0~1/M0)が登録され、開胸食道切除術あるいは右胸腔鏡と上腹部腹腔鏡を用いて侵襲度を最小限にした食道切除術(MIO群)を行う群に無作為に割り付けられた。患者、施術担当医、アウトカムの評価者、データ解析の担当者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、術後2週以内および全在院期間中の肺感染症の発現とした。術後2週間の肺感染症:29% vs. 9%開胸群に56例、MIO群には59例が割り付けられた。術後2週間における肺感染症の発生率は、開胸群の29%(16/56例)に対しMIO群は9%(5/59例)と有意に低かった(相対リスク[RR]:0.30、95%信頼区間[CI]:0.12~0.76、p=0.005)。全在院期間中の肺感染症発生率も、開胸群の34%(19/56例)に対しMIO群は12%(7/59例)であり、有意な差が認められた(RR:0.35、95%CI:0.16~0.78、p=0.005)。在院日数はMIO群で有意に短く(14日 vs. 11日、p=0.044)、短期的なQOL(SF 36、EORTC C30、OES 18で評価)もMIO群が良好であった。在院中の死亡は、開胸群が1例(吻合部漏出)、MIO群は2例(吻合部漏出後の誤嚥および縦隔炎)だった。著者は、「これらの知見により、切除可能な食道がんに対する低侵襲食道切除術の短期的なベネフィットのエビデンスがもたらされた」と結論付け、「低侵襲食道切除術における肺感染症の低下はいくつかの要因で説明できるが、無気肺の発現低下の影響が大きいと考えられる」と指摘している。

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血管疾患の低リスク例に対するスタチンによるLDLコレステロール低下の効果:17万超患者データのメタ解析

27の無作為化試験の個々データをメタ解析した結果、スタチンによる治療は、血管疾患の低リスク例でも、ベネフィットが大きいことが、Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboratorsにより発表された。5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の患者において、LDLコレステロール1 mmol / Lの低下は、5年間で1,000人あたり約11人の主要血管イベントの絶対的減少を招き、この利益は、スタチン療法の危険性を超えているとされた。現在のガイドラインは、概して、血管イベントリスクの低い患者は、LDL低下療法に適しているとはされていないが、研究グループは「今回の報告は、これらのガイドラインに再考の必要性があることを示唆している」と主張した。対象は、スタチン治療をコントロールと比較した22試験(134,537例)およびスタチン間で比較した5試験(39,612例)を対象とし、それを、基線における5年主要冠動脈イベント発症リスクで5つのカテゴリに分けた(~5%, 5~10%、10~20%, 20~30%, 30%~)。主要血管イベントは、主要冠動脈イベント、脳卒中、冠動脈血行再建術の施行とした。主な結果は以下のとおり。 ・スタチンによるLDL低下は、年齢、性別、ベースラインLDLコレステロール値に関係なく、主要血管イベントを低下させた[1.0mmol/LあたりRR 0.79 (95%信頼区間 0.77-0.81)]。また、血管死、全死亡も低下した。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおける主要血管イベントの減少は、イベントリスクのより高いカテゴリにおけるイベント減少と同程度に大きかった。1mmol/LあたりRRは、低リスクカテゴリから高リスクに向け順に、0.62(95%信頼区間:0.47-0.81)、0.69 (0.60-0.79)、0.79 (0.74-0.85)、 0.81 (0.77-0.86)、0.79 (0.74-0.84)。傾向性p=0.04。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおいて、主要冠動脈イベント[同 0.57(0.36-0.89)、0.61(0.50-0.74)]および冠動脈再建術[(同0.52(0.35-0.75)、0.63(0.51-0.79)]が有意に減少していた。・脳卒中は、5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の対象者でも、リスクの高いカテゴリのリスクリダクションに類似していた[同0.76(0.61-0.95)](傾向性p=0.3) 。・スタチンによるLDLコレステロール低下において、がんの発症[同1.00(0.96-1.04)]がん死亡[(同0.99(0.93-1.06)]、血管以外の死亡に増加は認められなかった。(ケアネット 鈴木 渉)

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喫煙歴のある男性の約半数は、咳・痰、息切れの原因が喫煙だと知っていても喫煙を継続している

ノバルティス ファーマは28日、全国の40歳以上で喫煙歴がある咳・痰の症状を持つ未受診男性868名に対して行った、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、以下:COPD)に関する調査結果を発表した。今回の調査は、40歳以上で喫煙歴があり、咳や痰の症状がありながらも病院を受診していない男性868名に対して、COPDに罹患する可能性が高い人の咳や痰、息切れに対する認識を明らかにする目的で行われたもの。インターネット上にて同社が2012年3月に実施した。調査の結果、COPDに対する認知率は33%、肺気腫や慢性気管支炎に対する認知率はそれぞれ71%であるのと比較して低く、新しい概念の普及度合いが低いことがわかった。また、「咳・痰」や「息切れ」は「肺の病気である」と認識している人は、約4割弱(それぞれ40%、33%)と少ないこともわかった。さらに、約半数は「咳・痰」や「息切れ」は「タバコを減らす、または止めれば抑えられる」(それぞれ57%、47%)と認識していながらも喫煙を継続していることも明らかになった。また、「咳」や「痰」が「深刻である」と回答した人と「深刻でない」と回答した方の喫煙歴をその指標であるパックイヤー(Pack-Year)※で比較してみると、それぞれその差は5パックイヤー(43パックイヤー、38パックイヤー)と6パックイヤー(43パックイヤー、37パックイヤー)で、「深刻さ」はパックイヤーと相関していることが明らかになりました。パックイヤー:長期間にわたって、ある人が吸ったタバコの量を測定する方法。たとえば、20パックイヤーは、1日1箱を20年間、または1日2箱を10年間吸った量に相当する。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2012/pr20120528.html

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疼痛治療用注射剤「オキファスト注10mg/50mg」発売

塩野義製薬は28日、疼痛治療用注射剤「オキファスト注10mg」「オキファスト注50mg」(一般名:オキシコドン塩酸塩水和物、以下:オキシコドン)を同日発売したことを発表した。同社では、中等度から高度の疼痛を伴う各種における鎮痛を適応として、2003年にオキシコンチン錠(オキシコドン塩酸塩徐放錠)、2007年にオキノーム散(オキシコドン塩酸塩散)を発売した。しかし、従来は、経口投与が不可能になった場合には、他のオピオイド製剤に切り替える必要があったが。2007年に日本緩和医療学会より厚生労働省へ単味のオキシコドン注射用製剤の開発要望が出され、未承認薬使用問題検討会議で「開発する必要がある医薬品」との審議結果を受け、同社はオキファスト注の開発を開始した。今回、オキファスト注が発売されたことにより、経口投与ができなくなった場合もオキシコンチン錠、オキノーム散と同一成分であるオキシコドンで治療を続けることが可能になった。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/120528.pdf

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抗精神病薬を処方された患者は本当に薬を服用しているのか?

Stephenson氏らは経口第二世代抗精神病薬を服用している患者について、医師が認識しているアドヒアランスと患者による薬局への薬剤請求から判定した実際のアドヒアランスを比較し、「医師が思っているよりも患者のアドヒアランスは良好でないため、再発予防も見据え適切な介入を行うことが重要である 」と結論づけた。本報告はInt J Clin Pract誌6月号(オンライン版5月11日号)に掲載された。ヘルスコア統合研究データベースをもとに、1剤以上の第二世代抗精神病薬を処方された統合失調症または双極性障害患者の薬剤請求データから処方医師を抽出し、1~2名の担当患者の服薬アドヒアランスの評価と1年間の第二世代抗精神病薬のアドヒアランスとの関係をインターネット調査により収集した。医師により調査されたアドヒアランスは同期間の薬局から薬剤を請求と照らし合わせ比較をおこなった。主な結果は以下のとおり。 ・153名の医師が調査に協力し、214例(統合失調症:44例、双極性障害:162例、双極性障害および統合失調症:8例)の患者が抽出された。・60%の医師は正式なアドヒアランスに関するトレーニングを受けていなかった。・医師の2/3以上(68%)がアドヒアランスは重要であると考えており、担当患者の約76%はアドヒアランス良好であると回答した。・統合失調症患者において、アドヒアランス不良~中程度(アドヒアランス70%以下)であった17例中16例(97%)に対し、医師はアドヒアランス良好(アドヒアランス71%以上)であると回答した。・双極性障害患者において、アドヒアランス不良~中程度であった92例中62例(67%)に対し、医師はアドヒアランス良好であると回答した。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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抗菌薬と心血管死リスクとの関連

抗菌薬と心血管死リスクとの関連について、米国・ヴァンダービルト医科大学のWayne A. Ray氏らによる検討の結果、治療1~5日目において、マクロライド系のアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)使用患者は、ニューキノロン系のシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンほか)より有意に増加したがレボフロキサシン(商品名:クラビットほか)とは有意差は認められなかったことが明らかにされた。Ray氏らは「5日間の治療中、アジスロマイシン服用者の心血管死亡の絶対数増加はわずかであるが、基線での心血管疾患リスクが高い患者では顕著に増加した」と結論している。NEJM誌2012年5月17日号掲載報告より。テネシー州のメディケイドコホートを対象に検討研究グループは、薬剤の心臓に与える短期的影響に関連した死亡リスクの上昇を検出するようデザインされた、テネシー州のメディケイドコホートを対象に調査を行った。コホートは、心血管系以外の重篤な疾患で入院した患者、および入院中-入院直後の人・時間を除外した1992~2006年の間のアジスロマイシン服用群34万7,795処方と、傾向スコアマッチングした対照群として、抗菌薬非服用群139万1,180例(対照期間中マッチング例)、ペニシリン系のアモキシシリン(商品名:サワシリンほか)服用群134万8,672処方、シプロフロキサシン服用群26万4,626処方とレボフロキサシン服用群19万3,906処方が含まれた。主要エンドポイントは、心血管死亡と全死因死亡とした。絶対数増加はわずか、心血管疾患リスクが最も高い群で顕著に増加結果、5日間の治療中、アジスロマイシン服用群は、抗菌薬非服用群と比べて、心血管死亡リスクの上昇(ハザード比:2.88、95%信頼区間:1.79~4.63、P<0.001)、全死因死亡リスクの上昇(同:1.85、1.25~2.75、P=0.002)が認められた。同一期間中に、アモキシシリン服用群の死亡リスクでは上昇が認められなかった。アモキシシリン群と比べてアジスロマイシン群は、心血管死亡(同:2.49、1.38~4.50、P=0.002)と全死因死亡(同:2.02、1.24~3.30、P=0.005)のリスク上昇が認められ、100万治療当たり心血管死は約47件増加すると推定された。一方で、心血管疾患リスクスコア別にみると、最も高い十分位群(スコア区分1~5、6~9、10のうちのスコア10該当群)での推定値が約245件増加と最も顕著であった。スコア1~9では9件増加、6~9では45件増加であった。(朝田哲明:医療ライター)

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コーヒー摂取と原因別死亡との関連

米国立衛生研究所(NIH)のNeal D. Freedman氏らによる、50~71歳の男女約40万人を対象に、コーヒー摂取とその後の全死亡および死因別死亡との関連を調べた結果、逆相関の関連が認められたことが報告された。ただし、その結果がコーヒー摂取によるものなのかどうか、あるいはコーヒー摂取が関連しているのかどうかは今回のデータからは判然としなかったと補足しまとめている。コーヒーは広く消費されている飲料の1つであり、抗酸化作用や生理活性作用の源となる物質を豊富に含むことが知られているが、死亡リスクとの関連は明らかとなっていない。NEJM誌2012年5月17日号掲載報告より。50歳以上の40万人を13年間追跡Freedman氏らは、NIH-AARP食事健康調査に参加した、基線50~71歳の男性22万9,119人および女性17万3,141人を対象に、コーヒー摂取とその後の全死亡および死因別死亡との関連を調べた。がん、心疾患、脳卒中に罹患した参加者は除外された。コーヒー摂取についての評価は基線で1回行われた。1995~2008年のフォローアップ期間中、514万8,760人・年のうち死亡は、男性3万3,731人、女性1万8,784人だった。年齢補正モデルにおいて、コーヒー摂取者での死亡リスク増加が認められた。しかし、コーヒー摂取者では喫煙者も多く、喫煙状態と他の潜在的交絡因子で補正したところ、コーヒー摂取と死亡率の間には有意な逆相関が認められた。がんによる死亡では逆相関みられずコーヒーを飲む男性について、飲まない男性と比較した死亡補正ハザード比は以下のとおりであった。1日当たり1杯未満摂取では0.99(95%信頼区間:0.95~1.04)、1杯0.94(同:0.90~0.99)、2~3杯0.90(同:0.86~0.93)、4~5杯0.88(同:0.84~0.93)、6杯以上0.90(同:0.85~0.96)(傾向のP<0.001)。女性のハザード比はそれぞれ、1.01(同:0.96~1.07)、0.95(同:0.90~1.01)、0.87(同:0.83~0.92)、0.84(同:0.79~0.90)、0.85(同:0.78~0.93)だった(傾向のP<0.001)。なお疾患別にみると、心疾患、呼吸器疾患、脳卒中、外傷、事故、糖尿病、感染症による死亡では逆相関がみられたが、がんによる死亡では同関連はみられなかった。これらの結果は、喫煙歴がない人、基線の健康状態が良好ないしは特に良好と報告した人のサブグループでも同様だった。(朝田哲明:医療ライター)

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東日本大震災1年 透析患者移送その後の記録

財団法人ときわ会 常磐病院新村 浩明 2012年5月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 東日本大震災からすでに1年以上が経過しました。以前、この場をお借りして東日本大震災時の透析患者移送に関して報告させていただきました。(Vol.404 東日本大震災透析患者移送体験記 http://medg.jp/mt/2012/02/vol404.html)震災から1年を経過したのを機に、ときわ会グループのうち、震災時に透析移送にかかわった4施設(いわき泌尿器科、常磐病院、泉中央病院、富岡クリニック)において透析されていた方々のこの1年の経過をまとめてみましたのでここに報告したいと思います。これら4施設において、この1年間で亡くなられた方は、津波による死亡が3名、震災の直接関係は不明ですが震災後1週以内に亡くなられた方が3名、震災1カ月以降、2012年3月までに亡くなられた方は50名いらっしゃいました。震災時の4施設の透析患者数は637名で、うち56名の死亡であったため、死亡率が8.8%となりました。これは、透析医学会から発表されている2010年の透析患者粗死亡率9.7%より低い数字でした。この結果は、東大日本大震災とういう激甚災害の苦難を乗り越えた患者集団としては十分満足できる数字であったと考えます。また、ややもすれば無謀とも非難されかねなかった透析患者集団移送が、適切な選択であったことが裏付けられたのではないかと考えています。●ときわ会グループと透析患者集団移送ときわ会グループは、いわき市を中心に透析と泌尿器疾患を中心に診療するグループで、1つの病院と6つの診療所、2つの介護老人保健施設からなっています。http://www.tokiwa.or.jp/震災発生後の福島第一原発の事故により、富岡クリニックの患者及びスタッフは、緊急避難を強いられ、一部は福島県中通り地方から会津地方へと避難し、一部はいわき市に避難しました。いわき市に避難した富岡クリニックの患者は、いわき泌尿器科と常磐病院にて透析を行いました。前回報告したように、原発事故発生以降、いわき市内ではスタッフや医療物資、ガソリンの不足と断水によって、透析継続が困難となり、3月17日に、ときわ会グループ(いわき泌尿器科、常磐病院、泉中央クリニック、富岡クリニック)を含めたいわき市内の透析患者を、東京、新潟、千葉へ移送し透析を受けることとなりました。●震災発生後の透析患者の行方震災時、上記4施設で、総数637名の透析患者がおり、うち外来通院患者が532名、入院患者が68名でした。これらの患者のうち不幸にも津波で亡くなられた方が3名いらっしゃいました。また、集団移送まで間に3名の方が亡くなられました。これらの方々は震災以前より体調が悪かった方々でしたが、震災の影響によって透析が不十分であったり入院ケアが不十分であったことが死期を早めた可能性は否定できません。3月17日に集団移送した患者が428名(東京229名、新潟154名、鴨川市45名)で、これとは別に後日、22名(東京2名、横浜6名、埼玉14名)の方を移送しています。この移送とは別に、個人的に避難された方が230名で、避難されずにいわき市に残られた方が21名いらっしゃいました。震災前より入院されていた方は、移送後も入院透析となりました。移送後、31名の方が新たに入院されました。その多くはADL低下による通院困難で入院となった方や震災前からの合併症の悪化による入院でした。移送後発生した疾病で入院となった例としては、1名が転倒により大腿骨骨折のため入院となり、1名は消化管出血のため入院となっています。3月後半になると、水道や物流が復旧し、自主避難していたスタッフも戻ってきたため、いわき市で通常の透析ができる環境が整いました。そのため移送した透析患者は3月26日より順次、いわき市に戻りました。移送先で入院を継続していた方を除けば、4月23日までにはほとんどの透析患者がいわきに戻りました。いわき市に戻ってからは、一部の患者で、特に富岡地区の方々は住居がないため、必要に応じて入院していただいたり、施設をお世話したりしました。自主避難した方で、2012年3月現在も、いわき市に戻らず他院で透析を受けてらっしゃる患者は183名(28.7%)でした。いわき市に戻られない方では、やはり富岡地区の透析患者が多く、郡山や会津地方に避難され透析を受けている場合が多いようでした。●粗死亡率集団移送後に現地で亡くなられた方は2名いらっしゃいました。移送後、いわきに戻ってきてから亡くなられた方が、現在までに30名いらっしゃいました。自主避難された方で亡くなられた方は14名、避難せず自宅より通院された方で亡くなられた方は4名でした。これらの死因のほとんどが、合併症が悪化し亡くなられたものでした。いわゆる震災関連による原因によって亡くなられた方はいらっしゃいませんでした。津波による死亡の3名、震災に直接関係は不明ですが震災1週以内に亡くなられた方の3名と合わせると、震災以降に亡くなられた方は計56名でした。震災時の4施設の透析患者数は637名で、うち56名の死亡となり、粗死亡率は8.8%となりました。この数字は、透析医学会から発表されている2010年の透析患者粗死亡率9.7%より低い値でした。http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2011/p21.pdf●現在のときわ会グループ 常磐病院透析センター開所ご存知のように、福島県富岡町は福島第一原発事故の影響で警戒区域となっているため、同町にある富岡クリニックは現在も閉院したままです。同クリニックに通院していた透析患者は、県内のみならず様々な地域での避難生活を強いられており、その中でもいわき市に避難されている方々はときわ会グループの各施設で、透析を受けていただいています。常磐病院では震災前から計画されていた、最新設備を備えた新透析センターが昨年の7月にオープンしています。100床の透析ベッドを備え、オンラインHDFの装置や全自動透析装置を装備しています。これは震災前より将来の透析患者の増加を想定し昨年4月開所の予定で計画していましたが、震災の影響で7月開所となりました。現在のいわき市では、上記の富岡町を含めた警戒区域の方々が多く避難されています。こうした避難されている方々にはもちろん透析患者も含まれており、安心の透析医療を最新の透析センターで―提供していくことがときわ会グループの使命と考えています。●透析患者移送から1年を振り返り前述したように、この1年のときわ会グループでの粗死亡率は、震災以前の透析患者の粗死亡率の全国平均と比較して十分低い数字でした。これは震災時の透析施行困難な状況での患者移送が、適切な選択であったことの証明であると考えます。しかし、震災時のストレスや不十分な透析、満足できない食事は、決して透析患者の生命予後によい方向には働かなかったであろうと容易に推測されます。この1年を振り返り、あの時はこうすればよかったなどと反省する点は多々ありました。ときわ会グループとしてこの成績に決して満足することなく、一人でも多くの透析患者に安心安全な透析医療を提供できるように切磋琢磨したいと考えています。いわき市ではまだまだ余震が続き、原発事故の終息の時期も不明です。こうしたなか、いつ再び昨年の震災時と同じ状況が起こるとも限りません。さらに首都圏直下型大震災の発生が近い将来危惧されています。そこでときわ会グループの各透析施設では、災害に強いシステム作りに着手しており、また近隣地域の災害時には、透析患者を積極的に受け入れられるように常時準備していきたいと考えています。ときわ会グループでは、スローガンである『笑顔とまごころ、信頼の絆』を合言葉のもと、今後も、よりよい透析医療を提供できるよう努力していく所存です。皆様には、今後とも変わらぬご指導、ご支援を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

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「Breaking up with Diabetes」にむけて ~第55回日本糖尿病学会年次学術集会 レポート~

 参加者が約1万3千人と、過去最大の規模となった今回の学術集会。演題数は2,284題と過去最高となり、「糖尿病領域」の盛り上がりを肌で感じられる学会であった。【依然、注目度の高い糖尿病領域】 実際、4月1日から実施となったHbA1c国際標準化や「糖尿病治療ガイド2012-2013」の発行など、今春も糖尿病領域の話題は豊富だ。理事長声明においても、理事長の門脇氏がHbA1c国際標準化に触れ、「糖尿病臨床・研究・治験のさらなる国際化を目指す」とともに、「診療におけるHbA1cの認知向上につなげたい」と述べた。 また、エビデンス構築の一環としてJ-DOIT3の概要が発表された。本試験では、強力な治療介入が糖尿病患者の健康寿命やQOLをどれだけ改善するかを検討する。門脇氏は、「重症低血糖は2例のみでありACCORD試験の200分の1にとどまっている」点から「過去の大規模臨床試験とは異なる新しい結論がみえてくるのでは」と期待を語った。【インクレチン関連薬の演題が急増】 注目が集まる糖尿病領域だが、やはりその引き金は「インクレチン関連薬」ではないだろうか。発売から一定期間を経て多くの臨床成績が集積され、インクレチン関連薬の演題はこの3年で格段に増加したという。 昨年までは各薬剤の「有効性」「安全性」の演題がほとんどであったが、今年は「1年間にわたる長期投与試験」「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」「DPP-4阻害薬間の切り替え症例」など一歩踏み込んだ切り口でのインクレチン関連薬の口演、ポスター発表を目にした。【見えてきた、2次無効例の存在】 長期投与試験の結果で印象的だったのは、一部で2次無効例の存在がみられたことであった。集積途中のデータとはいえ、期待のインクレチン関連薬でも、長期の血糖コントロールは一筋縄ではいかないという事実に、糖尿病治療の難しさを再認識させられた。患者自身の生活習慣の悪化という根本原因に、歯止めをかける治療が求められているのかもしれない。「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」は、昨年よりは踏み込んだ研究であったものの、残念ながら、「今後の長期的検討が必要」「多くの症例蓄積が必要」というまとめに変化はなく、今後予定される大規模臨床試験に期待がかかる。【インスリンからの切り替え・離脱例の増加】 一部の適応追加が影響したのかGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬ともに「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」がみられた。インスリン分泌能の保持された患者での順調な離脱例の報告もあったが、症例によってはやや危険と思われる離脱報告もあり、適正使用が重要と感じた。とくに、インスリン使用者のDPP-4阻害薬への切り替えについては血糖コントロールの点からも慎重さが求められるのではないだろうか。【次世代の薬 :SGLT2選択的阻害薬】 さて、インクレチン関連薬に続く新しい波、として期待される薬剤がある。「SGLT2選択的阻害薬」だ。原尿からのブドウ糖の再吸収を減らし、ブドウ糖を尿から排泄させる、という新規作用機序をもつ薬剤でありポスター、演題で取り上げられた。新薬セッションでは各開発メーカー担当者が座長より質問を受ける一幕もみられ、注目度の高さがうかがわれる。 現在開発中のSGLT2選択的阻害薬には、イプラグリフロジン(アステラス製薬/寿製薬)、ダパグリフロジン(米ブリストル・マイヤーズスクイブ/英アストラゼネカ)、トホグリフロジン(中外製薬)、カナグリフロジン(田辺三菱製薬)、ルセオグリフロジン(大正富山)、エンパグリフロジン(日本ベーリンガーインゲルハイム/リリー)等がある。【新規超持効型インスリン:デグルデクへの期待】 インスリンのトピックスとしては、開発中の新規超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)に注目したい。 デグルデクは、皮下でマルチヘキサマー(インスリン6量体の長鎖)を形成し、その後、亜鉛(Zn)の解離とともに端から1つずつモノマーとなって血中へ移行する。これにより緩徐に血中に吸収され、長時間にわたる作用を示す。今回、インスリン グラルギン(以下、グラルギン)に対する非劣性試験結果においてグラルギンと同等の血糖改善と低血糖のリスク低下が報告された。低血糖をきたしにくいインスリン製剤として期待される。【まとめ】 インクレチン関連薬発売から一定期間を経過し、臨床データは増加傾向にある。とはいえ、解明されていない事は多い。かたや、糖尿病有病率については依然増加し続けている。 門脇氏は「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」こそが糖尿病治療の最終目標である、と述べる。目標達成のためには根本的な糖尿病の予防・治療法の開発に継続して取り組む必要がありそうだ。【編集後記】 インクレチン関連薬発売を経て、糖尿病領域はにわかに活性化している。今がまさに過渡期であり、近い将来、新しいエビデンスや新薬、画期的な治療が現れ、「糖尿病治療を取り巻く現況」は大きく変化していくのかもしれない。今回はその前触れを感じさせる学会であった。 変化を迎えようとしているこの時代に糖尿病の予防・治療に関わる最新情報を発信できることは医療情報を発信する側の人間として幸運なことといえよう。 「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」の実現にむけ、我々も、タイムリーで適切な医療情報の伝達に努めていきたい。

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