サイト内検索|page:1513

検索結果 合計:33608件 表示位置:30241 - 30260

30241.

中等度~高度AD患者にメマンチンは本当に有効か?―メタ解析結果より―

中等度~高度アルツハイマー型認知症(AD)に適応を有するメマンチンが日本でも承認され1年が経過した。Hellweg氏らはメマンチンの臨床効果を評価するため、メタ解析を実施した。Int J Geriatr Psychiatry誌2012年6月号掲載。9報のメマンチンによる臨床試験より抽出した中等度~高度AD患者2,506例における、認知症の進行遅延に対する効果をメタ解析により検討した。認知、日常生活動作(ADL)、臨床全般評価およびこれら3つすべて(トリプルレスポンス)を組み合わせた評価に関してオッズ比と信頼区間を変量効果モデルに基づいて分析した。主な結果は以下のとおり。 ・メマンチン治療群はプラセボ群と比較して有意な認知症の進行遅延を示した。・少数の患者で悪化がみられたが、いずれもメマンチン治療群でプラセボ群より有意に低かった。〔 認知:24.6% vs 36.2%(p

30242.

頸動脈内膜中膜厚の年間増加率、心血管リスクを反映せず

頸動脈内膜中膜厚(cIMT)の年間増加率は一般人口の心血管リスクとは相関せず、臨床試験の代替指標としては使用できないことが、ドイツ・J W Goethe大学病院(フランクフルト)のMatthias W Lorenz氏らが実施したPROG-IMT試験で示された。cIMTは、早期のアテローム性動脈硬化の非侵襲的超音波検査の生物マーカーであり、一般集団において心血管イベントのリスクと正の相関を示す。すでに多くの臨床試験が、一般集団やリスク集団にみられるcIMTの変化は心血管イベントの発生リスクを反映するとの暗黙の前提の下で行われ、通常cIMTの年間増加率を指標に用いるが、これらの関連を検証した報告はほとんどないという。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版4月27日号)掲載の報告。cIMTと心血管イベントリスクの関連をメタ解析で評価PROG-IMT試験では、一般集団を対象に超音波検査で2回以上cIMTを測定し、その後心筋梗塞、脳卒中、死亡についてフォローアップした試験の個々の患者データについてメタ解析が行われた。2012年1月10日までに発表された一般集団を対象とした縦断的観察試験に関する論文を抽出した。心筋梗塞や脳卒中の既往歴のある患者は除外し、cIMTの増加率と心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、血管死、これらの併発)のリスクの関連をCox回帰分析で評価した。ランダム効果モデルを用いたメタ解析にて、cIMTの1SDおよび0.1mm増加ごとの対数ハザード比(HR)を算出した。cIMTとは相関するが、増加率との関連は認めず16試験に登録された3万6,984例が解析の対象となった。平均フォローアップ期間7.0年の間に、心筋梗塞が1,519件、脳卒中が1,339件、複合エンドポイント(心筋梗塞、脳卒中、血管死)は2,028件発生した。2回の超音波検査[1回目と2回目の間隔中央値4年(2~7年)]に基づき、cIMTの年間増加率を算出した。複合エンドポイントの発生に関する総頸動脈のcIMT平均増加率のHRは、年齢、性、総頸動脈の平均cIMTで調整すると0.97[95%信頼区間(CI):0.94~1.00]、血管リスク因子で調整すると0.98(95%CI:0.95~1.01)であり、有意な差はなかった。感度分析ではcIMT増加率とエンドポイントの関連は認めなかったが、2回の超音波検査の平均cIMTは心血管リスクと頑健な正の相関がみられた(年齢、性、総頸動脈のcIMT平均増加率、血管リスク因子で調整後の複合エンドポイントのHR:1.16、95%CI:1.10~1.22)。超音波検査を4回実施した3試験(3,439例)では、cIMT増加率はエンドポイントとはいずれの試験も相関を示さなかった(再現性の相関:それぞれr=-0.02、-0.04、-0.06)。著者は、「2回の超音波検査で評価したcIMTと心血管リスクの関連は一般集団では証明されなかった」と結論し、「臨床試験における心血管リスクの代替指標としてcIMTを使用できるとする結論は導き出せない」としている。(菅野守:医学ライター)

30243.

亜鉛追加、乳児の重症細菌感染症に有効

重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児に対し、標準抗菌薬治療の補助療法として亜鉛を追加投与すると、治療不成功リスクが低減する可能性があることが、全インド医科学研究所(AIIMS)のShinjini Bhatnagar氏らの検討で明らかとなった。重症細菌感染症は開発途上国の乳児期早期の主要な死因である。標準的な抗菌薬治療に安価で入手しやすい介入法を追加することで、乳児死亡率の抑制が可能と考えられている。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版2012年3月31日号)掲載の報告。亜鉛追加の有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価研究グループは、重症細菌感染症の可能性がある乳児に対する抗菌薬治療の補助療法としての亜鉛の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年7月6日~2008年12月3日まで、インド・ニューデリー市の3つの病院に、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児が登録された。これらの患児が、登録時の低体重や下痢の有無で層別化した上で、標準抗菌薬治療に加えて亜鉛10mgあるいはプラセボを毎日経口投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は治療不成功率(割り付けから7日以内の抗菌薬の変更を要する病態、21日以内の集中治療[人工呼吸器装着もしくは血管作動薬投与]を要する病態あるいは死亡)とした。治療不成功率:10% vs 17%352例が亜鉛追加群に、348例がプラセボ群に割り付けられ、それぞれ332例、323例が評価可能だった。治療不成功率は、プラセボ群の17%(55/323例)に対し、亜鉛追加群は10%(34/332例)と有意に少なかった[相対リスク低下率:40%、95%信頼区間(CI):10~60%、p=0.0113、絶対リスク低下率:6.8%、95%CI:1.5~12.0、p=0.0111)。治療不成功を1例回避するのに要する治療例数は15例(95%CI:8~67)であった。死亡例は亜鉛追加群が10例で、プラセボ群は17例と、有意な差はなかったものの亜鉛追加群で低下する傾向を認めた(相対リスク:0.57、0.27~1.23、p=0.15)。著者は、「生後60日までの乳児に限ってもベネフィットが確認された。回復、体重増加、完全経口摂食までの期間には影響はなかった。亜鉛は、標準抗菌薬治療の補助療法として、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児の治療不成功リスクを低減する可能性がある」と結論し、「亜鉛はすでに一般的に使用可能で、多くの低~中所得国で急性下痢の治療薬として市販されており、重症細菌感染疑いの乳児への介入に使用しても医療コストの増分はわずかだ」と指摘している。

30244.

医師と「法への不服従」に関する論考

神戸大学感染症内科岩田 健太郎 2012年6月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 平岡諦氏の「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を興味深く読みました。平岡氏は「医の倫理」は「法」よりも上位にあり、日本医師会は「医の倫理」に遵法を要求していることから、法律家(弁護士)が「医の倫理」規定に参画するのは間違っていると主張します。本稿の目的は平岡氏のこの大意「そのもの」への反論ではありません。平岡氏が指摘するような日本医師会の医療倫理への「操作」や歴史的プロセスについて、あるいはそこにおける弁護士の意味や役割についてぼくは十分な情報を持っていませんし、また関心事でもないからです。しかし、部分的には異議を持ちましたので、その点については、あくまでも各論的に指摘したいと思います。アメリカ医師会の倫理綱領を紹介して平岡氏はそこで「『法への非服従』を謳っている」と説明し、「A physician shall respect the law and also recognize a respondsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient」という文章を紹介します。しかし、「法への非服従」には二つの意味があります。一つは現行法を遵守しつつ、その法が「悪法である」と主張して変化を求めること、もう一つは現行法を悪法だと無視して進んで違法行為を行うことです。平岡氏が主張する「法への非服従」は後者にあたります。しかし、アメリカ医師会の文章では「seek changes」と書かれていますから、素直に読めば前者の意味と理解するのが自然です。平岡氏は自身の見解、医師の「法への非服従」にあまりにこだわるあまり、AMAの見解を曲解しています。ナチスドイツが行ったユダヤ人やその他の民族の大虐殺、そして医療の世界における非道な人体実験は我々の倫理・道徳的な観念に大きな揺さぶりをもたらしました。問題は、これらの非道な行為が「悪意に満ちた、悪魔的な集団によって行われた」というより、ハンナ・アーレントらが指摘するように、普通の常識的な人物たちが当時の法と上司の命令に素直に従って行った悪烈な行為であったことが大きな問題であったのです。ですから、それに対する大きな反省を受けて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」(ハンナ・アーレント「イスラエルのアイヒマン」みすず書房 225ページ)という考えがでてきました。これが平岡氏の言う「法への非服従」でしょう。さて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」は普遍的な原則です。ナチスドイツの法と命令に従った全ての人に適応可能な原則なのですから。したがって、「法への非服従」を求められる職業は平岡氏が主張するように医師だけに要求される倫理観ではありません。看護師などの他の医療者や、教師や、あるいはあらゆる社会人にも適用可能な原則です。しかし、ナチスドイツにしても、日本の731部隊にしても、その人体実験は極端なまでに悪らつで、また例外的な悪事でした。医療者は一般的に善良な意志を持っており、また善良なプラクティスを心がけています。それが必ずしも患者にとって最良な医療になる保証はありませんが、少なくともナチスドイツや731部隊的な行為は日常的には行われません。あれは、極めて例外的な事項です。日常的にあんなことが頻発されてはたまったものではありません。例外的なのだから忘却しても構わない、と申し上げたいのではありません。ハンナ・アーレントが指摘するように、そのような例外的な悪らつ非道は「ふつうの人」にも起こりえる陥穽を秘めています。だから、ぼくらはそのような「極端な悪事」にうっかり手を貸してしまうリスクを常に認識しておかねばなりません。繰り返しますが、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」というハンナ・アーレントの格率は、そのような極端な事例において適応が検討されるもので、日常的な格率ではありません。一方、アメリカはかなり強固な契約社会であり、法とか社会のルールを遵守するのが正しいと主張する社会です。アメリカのような契約社会でルールを破っても構わない、という考え方はかなりリスクが大きいのです。医師を含め、医療者も法やルールをきちんと遵守することが日ごろから要求されています。平岡氏のいう「法への非服従」はアメリカ医療の前提にはありません。だからAMAはseek changesとは言っても、act against the lawとは明記しなかったのです。もしアメリカにおいてそれが許容されることがあったとしても、繰り返しますが、極めてレアなケースとなるでしょう。アメリカ以外の社会においても、法への非服従が正当化されるのはナチスドイツ的な極めて例外的な悪事、「明白に犯罪的な命令」に限定されます。しかも、何が犯罪的なのかは自分自身で判断しなければならないのですが、その基準は「あいまい」であってはなりません。ハンナ・アーレントは「原則と原則からの甚だしい乖離を判別する能力」(同ページ)が必要と述べます。「甚だしい」乖離でなければならないのです。臨床試験の医療倫理規定であるヘルシンキ宣言もナチスドイツの人体実験の反省からできたものですが、ホープは極めて例外的なナチスドイツ的行為が、日常的な臨床試験の基準のベースになっていることに倫理的な問題を指摘しています(医療倫理、岩波書店)。あまりにも杓子定規で性悪説的なヘルシンキ宣言のために、患者が医療サービスを十全に受ける権利が阻害されているというのです。形式的で保険の契約書みたいなインフォームドコンセント、過度に官僚的なプロトコルなどがその弊害です。医療倫理を善と悪という二元的でデジタルな切り方をするから、こういう困難が生じるのです。多くの場合、医療の現場は白でも黒でもないグレーゾーンであり、ぼくら現場の専門家に求められるのは、「どのくらいグレーか」の程度問題なのですから。そして、アメリカであれ、日本であれ、他の世界であれ、医師が「法への不服従」を正当化されるのは(正当化されるとすれば、ですが)、極めて黒に近い極端で例外的な事例においてのみ、なのです。また、平岡氏は日本医師会がハンセン病患者の隔離政策に対応してこなかったことを批判します。その批判は正当なものです。しかし、それは「法の改正を求める」という方法と「法そのものをあえて破る」ことが区別されずに批判されています。たとえば、現行の悪法を悪法だと批判し、改正を求めることもひとつの方法なのです。そして、(引用)『医師の職業倫理指針』では「法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れないということもあって、医師は現在の司法の考えを熟知しておくことも必要である」となっています。すなわち、日本医師会は「遵法」のみを医師に要求し、「法への非服従」を医師に求めていないのです。このことは、日本医師会が「悪法問題」を解決していないことを示しています。(引用終わり)と医師会も「法律の不備」を指摘し、改善を求める必要は認めているのですから、少なくともAMAと(WMAはさておき)主張はそう変わりないのだとぼくは思います。また、平岡氏はジュネーブ宣言を引用して「いかなる脅迫があっても」と訳しますが、原文は「even under threat」、、脅迫下においても、、、という言及のみで「いかなる」=under any circumstances、とは書かれていません。この点では平岡氏の牽強付会さ、議論の過度な拡大解釈、が問題になります。平岡氏は日本医師会が「世界標準」から外れており、そこに(WMAに)従わないのが問題だといいます。その是非は、ここでは問いません。しかし、そもそも医の倫理に「世界標準」などというものを作ってしまえば、それは倫理を他者の目、「他者の基準」に合わせてしまうことを意味しています。しかし、たとえWMAがいう「規範」であっても、それが自分の中にある道徳基準を極端に外れている場合は、それに従わないというのが、カントらが説く自律的な倫理観です。AMAがこういっている、WMAがそう訴えている、「だから」それに従うというのは、そもそもその自律的な倫理原則から外れてしまいます。これは本質的なジレンマです。自律と他律のこのジレンマは、ヘーゲルら多くの哲学者もとっくみあった極めて難しい問題ですが、いずれにしても「世界標準だから」医師会にそれに従えと言うのは、自律を原則とする医療倫理における大きなパラドックスではないでしょうか。AMAの倫理規定を読むと、ぼくはいつもため息を禁じえません。http://www.ama-assn.org/resources/doc/ethics/decofprofessional.pdfそこには例えば、Respect human life and the dignity of every individual.とあります。全ての人の生命と尊厳を尊重せよと説きます。しかし、その基盤となるアメリカの国民皆保険に強固に反対してきたのも、またAMAでした(医師の利益が阻害されるからです)。このようなダブルスタンダードが、もっとも非倫理的な偽善ではないかとぼくは考えます。日本医師会がどうあるべきかは、本稿の趣旨を超えるものですが、少なくともAMAやWMAを模倣することに、その回答があるのではないことは、倫理の自律性という原則に照らし合わせれば確かなのです。

30246.

うつ病治療“次の一手”は?SSRI増量 or SNRI切替

重症うつ病の治療において第2段階の治療戦略を比較した報告は少ない。第一選択薬として使用したSSRIで治療効果が不十分だった場合、増量するべきか、SNRIへの切り替えを行うべきか明らかになっておらず、それぞれの忍容性と有効性を評価する必要がある。Bose氏らはSSRIであるエスシタロプラム10㎎/日で効果不十分であった患者における次の治療選択として、エスシタロプラムの増量とSNRIであるデュロキセチンへ切り替えた場合について比較検討した。Clin Drug Investig誌2012年6月号掲載。本試験はエスシタロプラムまたはデュロキセチンによる8週間の無作為化実薬対照二重盲検比較試験として実施された。2週間のlead-in期間(単盲検 )でエスシタロプラム10㎎/日に対し治療効果不十分(MADRSの改善率50%未満)であった患者571例(外来患者、18~65歳、MADRS総スコア30以上)から抽出したうつ病患者474例が対象。エスシタロプラム増量群(20㎎/日)229例とデュロキセチン切り替え群(60㎎/日)245例に無作為に割り付け検討した。主要評価項目は理由に関わらず試験中止までの期間とした。主な結果は以下のとおり。 ・主要評価項目である試験中止までの期間は両群間で差がなかった(ハザード比 :0.95、95%信頼区間:0.64~1.41、p=0.727)。・エスシタロプラム増量群はデュロキセチン切り替え群と比較して8週後のMADRS総スコアの有意な改善が認められた(LSMD:-1.87、95%信頼区間:-3.60~-0.14、p=0.034、LOCF解析)。・8週間後の寛解率(MADRS総スコア10以下)はエスシタロプラム増量群で54%、デュロキセチン切り替え群で42%であり、両群間に有意な差が認められた(p=0.013)。・有害事象は両群間で同等であった。・本試験では、エスシタロプラム10㎎/日投与で治療効果が不十分だった場合、エスシタロプラムを20㎎/日に増量する方が、デュロキセチン60㎎/日へ切り替えるよりもより有用である可能性が示唆された。(ケアネット 鷹野 敦夫)関連医療ニュース ・うつ病の血液検査法を開発-若者の将来的な診断に有用 ・職場におけるうつ病患者に対し電話認知行動療法は有効か? ・双極性障害患者の「うつ症状」は心血管イベントリスクを高める

30247.

術前化学放射線療法、治癒の可能性ある食道・胃接合部がん患者の生存率を改善

切除可能な腫瘍を有する食道がんまたは食道胃接合部がん患者に対し、術前に化学放射線療法を行った結果、生存率の改善が認められたこと、有害事象発生率は許容範囲であったことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのP. van Hagen氏らによる第3相多施設共同無作為化試験の結果、報告された。数十年間討議されてきた術前化学放射線療法は、これまでは試験結果が不良であったこともあり否定的であったが、同グループによる第2相試験では、毒性作用が低く、切除を受けた患者全員がR0(1ミリ以内の腫瘍なし)を達成していた。第3相試験では、術前に化学放射線療法を施行する群と手術単独群とを比較検討した。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。366例を術前化学放射線療法施行群と手術単独群に無作為化研究グループは、切除可能な腫瘍を有する患者を、術前にカルボプラチン(曲線下面積2mg /mL/分となるよう用量を調整)とパクリタキセル(50mg/m2体表面積)の週1回5週間投与と放射線療法(23分画で41.4Gyを週5日)を受ける群または手術のみ受ける群に無作為に割り付け追跡した。2004年3月~2008年12月に368例の患者を登録し2010年12月までの追跡データが収集できた366例が解析対象となった。被験者の平均年齢は60歳、275例(75%)が腺がんを、84例(23%)が扁平上皮がんを、7例(2%)は未分化大細胞がんを有していた。化学放射線療法群の全生存期間中央値は手術単独群の2倍366例は、術前化学放射線療法群178例、手術単独群は188例に無作為化された。術前化学放射線療法群で最も頻度の高かった重大な血液毒性は、白血球減少症(6%)と好中球減少症(2%)だった。最も頻度の高かった重大な非血液毒性は、摂食障害(5%)と疲労(3%)だった。術後R0を達成したのは、術前化学放射線療法群92%に対し、手術単独群では69%だった(P

30248.

サルモネラ感染の拡大、通販で購入したひな鳥が原因と特定

2005年に特定されたヒトサルモネラモンテビデオ感染症の集団発生について、米国CDCのNicholas H. Gaffga氏らが、感染源を特定し予防対策を講じる調査を行った結果、通信販売専門の孵化場から出荷されたひな鳥との接触が原因であったことが報告された。感染したのは主に幼児で、孵化場への介入により、ヒトへの感染は減少したが根絶には至らず、「生きているひな鳥からのサルモネラ菌伝播を断つことは難しいことが示された」と結論している。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。2004~2011年の間に43州316症例が同定、患者の年齢中央値は4歳ヒトサルモネラ感染症の集団発生は、生きたひな鳥との接触が関連しているとの見解が高まっているが、有効なコントロール方法はわかっていない。研究グループは、2005年に全米亜型分類ネットワークPulseNetによって確認された、ヒトサルモネラモンテビデオ感染症について調査を行った。公衆衛生局および動物衛生局と協力し、多州にわたる患者インタビュー、トレースバック調査、集団発生に関連した通信販売専門の孵化場での環境検査などを行い、感染源を特定し、さらなる予防対策を行った。症例は、2004~2011年に報告された発生株に感染していた例と定義した。その結果、43州で43州にわたる316症例が同定された。患者の年齢中央値は4歳だった。孵化場へ介入後、ヒトへの感染は減少したが伝播は継続面談は156例(49%)の患者(または保護者)に対して行われた。そのうち、入院は36例(23%)だった。また、情報が得られた145例のうち、80例(55%)に出血性下痢が認められた。入手できた、孵化後まもないひな鳥と接触したことを示す情報は159例あった。このうち、122例(77%)で接触があったことが報告された。トレースバック調査の結果、米国西部にある1つの通信販売専門孵化場が同定された(調査結果81%)。この孵化場で採取したひな鳥の検体から、ヒトサルモネラモンテビデオ感染症集団発生株が分離された。孵化場へ介入後、ヒトへの感染は減少したが伝播は継続した。(武藤まき:医療ライター)

30249.

新生児脳症に対する低体温療法後の長期アウトカム

新生児脳症に対する低体温療法の有効性に関する無作為化試験の長期アウトカムが報告された。6~7歳時点における死亡またはIQスコア70未満の複合エンドポイント発生率は、通常治療群より全身低体温療法群のほうが低かったものの、有意差は認められなかったという。ただし、低体温療法群のほうが死亡率が低く、生存例における重度障害の発生率の増大は認められなかった。米国・ミシガン小児病院のSeetha Shankaran氏らによる本検討は、これまでに18~22ヵ月時点での早期報告が行われており、その時点では死亡率および中等度~重度障害発生の有意な低下が示されていた。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。通常治療群と低体温療法群で諸機能の長期アウトカムを評価研究グループは、中等度~重度の脳障害を有する新生児を、通常治療(対照群)または食道温度33.5°Cで72時間全身冷却後、緩徐に復温する治療(低体温療法群)に割り付け追跡した。6~7歳となった参加者について、認知機能、注意・遂行機能、視空間機能、神経学的アウトカム、身体的・心理社会的健康度を評価した。主要評価項目は、死亡またはIQスコア70以下とした。今回の解析では208例の試験参加者のうち、190例で主要評価項目データが入手利用できた。死亡またはIQスコア70以下、低体温療法群47%、対照群62%、P=0.06死亡またはIQスコア70以下は、低体温療法群は93例のうち46例(47%)、対照群は97例の58例(62%)でみられた(P=0.06)。死亡はそれぞれ27例(28%)と41例(44%)で(P=0.04)、死亡または重度障害はそれぞれ38例(41%)と53例(60%)だった(P=0.03)。生存小児は122例(低体温療法群70例、対照群52例)で、その他の転帰データが得られた。このうち、中等度~重度障害がみられたのは、低体温療法群69例中24例(35%)、対照群50例中19例(38%)だった(P=0.87)。また、注意・遂行機能障害はそれぞれ4%と13%で(P=0.19)、視空間機能障害は4%と3%でみられた(P=0.80)。

30250.

境界性人格障害の自殺対策へ期待「DBT PEプロトコール」パイロット試験

境界性人格障害と心的外傷後ストレス症候群(PTSD)はしばしば合併し、その治療に難渋することも少なくない。Harned氏らは自殺企図や自傷行為のみられる境界性人格障害患者のPTSDを治療するために、PTSDに有効な認知行動療法の1つである持続エクスポージャー法(Prolonged Exposure:PE)と最近注目されている弁証法的行動療法(DBT)を組み合わせる治療法のプロトコール開発およびパイロット試験を実施した。Behav Res Ther誌2012年6月号(オンライン版2012年3月11日号)掲載。境界性人格障害とPTSDを合併し重大な自傷行為を経験した女性患者13例を対象にDBT PEプロトコールを1年間実施したのち、3ヵ月間フォローアップし評価した。主な結果は以下のとおり。 ・DBT PEプロトコールによる治療はPTSDの有意な改善と相関しており、多くの患者は試験後にPTSDの診断基準から外れる水準まで改善した。(治療完遂例の71.4%、全例 の60%)。・少数の患者(27.3%)で試験期間中に自傷行為が認められた。・自殺企図、解離、トラウマに関連する罪の意識、恥辱感、不安、抑うつ症状、社会的適応の改善も認められた。・1年間のDBT PEプロトコール実施は、患者およびセラピストに大いに受け入れられ、安全に実施可能であった。・本例のような自殺企図や自傷行為のみられる高リスク患者に対しDBT PEプロトコールは有効な治療法であると考えられる。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・自殺念慮はBMIとも関連(日本人の若者) ・「双極性障害に対する薬物療法レビュー」世界精神医学会(WPA)での報告 ・境界性人格障害患者の自殺予防のポイントはリハビリ

30251.

閉塞性睡眠時無呼吸症候群、持続気道陽圧療法で高血圧リスク低下

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は高血圧発症リスクを増大するが、持続気道陽圧療法(CPAP)によりそのリスクが低下することが、明らかにされた。スペイン・Miguel Servet大学病院のJose M. Marin氏らが約12年間追跡した前向きコホート研究の結果による。OSA患者では高血圧を呈する人が大勢を占める。これまで短期試験では、CPAPが同患者の高血圧リスクを低下することは示されていた。JAMA誌2012年5月23・30日合併号掲載報告より。高血圧を伴わない1,889例のOSAまたは非OSA患者を中央値12.2年追跡研究グループは、1994年1月1日~2000年12月31日に終夜睡眠ポリグラフィ検査のために受診した高血圧を伴わない1,889例について、2011年1月1日まで追跡し、高血圧発症について調べた。追跡期間は中央値12.2年、総計2万1,003人・年だった。基線から高血圧発症が認められた時点までのBMI変化値などの交絡因子で補正した多変量モデルで、非OSA患者(対照)群、未治療OSA患者群、国のガイドラインに基づくCPAP治療を受けた非OSA・OSA患者群の高血圧発症ハザード比(HR)を算出した。主要評価項目は、新規高血圧発症とした。CPAP治療群のみ、補正後ハザード比0.71と低下を示す高血圧発症例は705例(37.3%)だった。100人・年当たりの高血圧発症率は、対照群2.19(95%信頼区間:1.71~2.67)、OSA患者・CPAP治療非適用群3.34(同:2.85~3.82)、OSA患者・CPAP治療辞退群5.84(同:4.82~6.86)、OSA患者・アドヒアランス不良群5.12(同:3.76~6.47)、OSA患者CPAP治療群3.06(同:2.70~3.41)だった。補正後、対照群と比較して高血圧発症は、OSA患者・CPAP治療非適用群(オッズ比:1.33、95%信頼区間1.01~1.75)、OSA患者・CPAP治療辞退群(同:1.96、1.44~2.66)、OSA患者・アドヒアランス不良群(同:1.78、1.23~2.58)で高かったが、OSA患者CPAP治療群では低下した(同:0.71、0.53~0.94)。

30252.

郷に入っても郷に従わず その4 ~食事の心理学

ハーバード大学リサーチフェロー大西 睦子 2012年5月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 前回のコラムで、人工甘味料と肥満や糖尿病の関係は、体の生理的反応と人間の行動的、心理的な要素が関与していることをお伝えしました。そこで今回は、『食べる』という行動が起こるまでの心理的な状況を、さらに深く考えたいと思います。例えば、みなさんが5人のお友達とレストランに行くことを想像してみてください。おそらく、5人とも違うメニューを選ぶことが多いと思います。私は和風パスタとチーズケーキを選んだのに、あなたはサラダにステーキを選んだ理由、それはなぜでしょうか。けっこう深い理由があるのです。1)嗜好最近の科学雑誌に、様々な文化の異なるヨーロッパ諸国において、1600人以上の子供たちを対象に、食事の嗜好と肥満の関係についての報告がありました。結果は、肥満の子供たちは、脂肪や糖分の多い食事を好んだということでした。動物実験で、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが、空腹感を抑えるだけではなく、食べ物の嗜好にも関与していることがわかってきました。例えば、レプチン濃度が低いと、空腹感が増強するだけではなく、食べ物による喜びも増加します。●ということは、人種や文化の違いにかかわらず、肥満の子供は、高脂肪で甘い食べ物を摂取することによる喜びが強いと考えられますね。2)学習私たちは生後まもなく、食に対する行動的、感情的な反応を覚えます。この頃、親は重要な役割を果たします。なぜなら母親の食事は母乳に移行し、後の子供の嗜好に大きく影響するためです。従って、特に母親の食の影響は強いと思われます。離乳後、子供は自分で食べ始めますが、新しい食べ物に拒否反応を示し、少なくとも繰り返し10回以上経験して、ようやく受け入れます。このころの経験も、後の好き嫌いに影響します。さらに、食べることは、罪と報酬の意味もあります。食事の量や食べるスピードも、親の影響が大きいと考えられています。『ぐずぐずしないで、早く残さず食べなさい。』なんて、親に叱られた経験はありませんか?子供は食べ物を残すことに罪を覚え、出されたものは全部食べる習慣がつきます。3)再学習私たちの食事の好みは幼少期の経験に決まると考えられていますが、大人になって、再学習することによって好みを変えられることも報告されています。●これは、いいニュースです。子供の頃の悪い習慣を、大人になって変えるチャンスがあるのですから。4)食欲ドーパミンは、連続した学習による行動の動機付け(associative learning)と関係している神経伝達物質です。食事開始後、ドーパミンの分泌が上昇し、食欲が増強します。重要なのは、連続した学習によって、食べ物を想像するだけで、ドーパミンが分泌されるようになるのです。例えば、食べ物の写真、料理の音やにおいでドーパミンが分泌され、食欲が増加します。ストレスでもドーパミンの分泌が増え、過食になります。コカイン、覚せい剤は、ドーパミン分放出させ快感を起こします。セロトニンはドーパミンをコントロールする神経伝達物質です。食欲を抑えるには、ドーパミン分泌を抑制し、セロトニンを放出することとなります。最近、インスリンやレプチンもドーパミンに影響を与えることも報告されています。●やる気、ご褒美、学習などに関わるドーパミンは、脳の『快楽物質』とも呼ばれています。ドーパミンをたくさん増やしたい!と思いがちですが、やはりバランスが大切と思います。それは、5)の中毒に関係するからです。5)習慣、依存、中毒これは大トピックです。習慣、依存、中毒には、行動(心理的)問題が大きく影響します。2010年に、動物実験により、過食による肥満の脳内の分子経路が、麻薬中毒者のものと同じだとする報告があり、大変な話題になりました。米国フロリダ州のポール・ケネディ准教授の研究チームは、コカイン中毒者の脳内ではドーパミンが大量に放出され、ドーパミン2受容体が過剰に刺激されていることは明らかになっていましたが、同様な変化を「食事中毒」のラットで証明したのです。●食に限らず、人生において、喜び、幸せは大切ですが、実際はそれだけではないと思います。苦しみ、悲しみを克服しつつ得る喜びを経験することが、人間の成長につながるのではないでしょうか。私もそうなりたいと思います。6)感情感情、例えば、喜び、怒り、悲しみ、不安も肥満に影響します。肥満のひとでは、食事摂取による感情の変化に違いがあるとも言われています。肥満の人は、食べることで報酬を得ます。●誰でも美味しい物を食べると嬉しくなりますが、嬉しさの度合いが肥満の人は強いようです。7)決定意思決定は、自動的に即座にされる経路(これはかなり訓練されています)と、ゆっくりですが、コントロールした上で行われる経路と2種類あります。食べる行為に、この決定は重要な役割があると思いますが、残念ながら、動物実験モデルをつくることが難しく、まだまだ不明な点が多い分野です。●例えばみなさんが飲み物を注文するとき、『とりあえず生ビール(メニュー見ずに注文する人もいると思いますが)』という人もいますし、メニューをよく読んで『このカクテル下さい。』という人もいます。自分で決められず『お勧めは何ですか。』と店員に聞く人もいます。どうしてこんなに人は最終的な意志決定が違うのでしょうか?最後に、肥満には、環境の影響も大きな問題になってきます。環境とは、車など、便利な社会になったため、人々が動かなくなった点、スーパーマーケット、コンビニなどで、高カロリーの食品を消費者が買いやすくしている点(そういった商品が増えた、安くなった、目に留まる位置に置いてある)などです。駅のキヨスクで、大根やキュウリが売っているのは見かけたことはありませんが、お菓子はすぐに買って、すぐに食べることができますよね。『不便、面倒』という言葉は、売り文句にはなりにくいですが、思っているほど悪くはないかもしれません。

30254.

安定COPD患者における運動中の交感神経活性に対するチオトロピウムの効果

チオトロピウムはオキシトロピウムに比べ、運動時の交感神経活性を抑制することが国立病院機構 刀根山病院の好村氏らによって報告された。好村氏らは「交感神経活性の抑制効果は呼吸機能、運動耐容能の改善や労作時の息切れを減少させる要因となると考えられ、呼吸数や心拍数の減少、動脈のアシドーシスの進展抑制とも関連していることが示唆された」と結論している。これまでチオトロピウムがCOPD患者の労作時の息切れを改善することや、うっ血性心不全のリスクを低下させることが知られていたが、運動時の交感神経活性に対する効果については知られていなかった。Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 誌2012年5月22日(オンライン版2012年5月2日)掲載の報告。本試験の対象は10pack-years以上の喫煙歴※をもつ40歳以上のCOPD患者17例(女性3例、男性14例)。ベースライン時の数値はFVC(努力肺活量)

30255.

日本おける抗精神病薬の用量はアジア各国と比較し、まだ多い―REAP調査―

アジア各国の協力のもと、東アジアにおける向精神薬処方調査(REAP)が1999年より実施されている。今回、Xiang氏らはアジア各国における高齢の統合失調症入院患者における抗精神病薬の低用量(クロルプロマジン換算300mg/日以下)処方と人口統計学的および臨床的相関について検討し、報告を行った。Int Psychogeriatr誌2012年6月号(オンライン版2012年2月3日号)掲載。対象は2001~2009年のREAPデータベースより抽出した55歳以上の統合失調症入院患者1,452例。社会人口統計学的および臨床的な特性と抗精神病薬の処方箋を標準化されたプロトコールとデータ収集手法により集積した。本調査は中国、香港、日本、韓国、シンガポール、台湾、インド、マレーシアの8ヵ国の参加により実施した。主な結果は以下のとおり。 ・抗精神病薬が低用量で処方されていた頻度 は40.9%であった 。・抗精神病薬が低用量処方されがちな患者は女性、高齢、罹病期間が短い、陽性症状が少ないことと相関があった (多重ロジステック回帰分析)。・2001~2009年のすべての調査に参加した6ヵ国のうち、日本では抗精神病薬の低用量処方がより少ない傾向があった。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・維持期の統合失調症患者において現在の薬物投与量は最適か? ・抗精神病薬を処方された患者は本当に薬を服用しているのか? ・統合失調症の高感度スクリーニング検査 「眼球運動検査」

30258.

学習障害の有無によるメチルフェニデートの有用性を検証

注意欠陥/多動性障害(AD/HD)児は学習障害(LD)を合併していることが少なくない。Williamson氏らは浸透圧を利用した薬剤放出制御システム(OROS)を用いたメチルフェニデート徐放製剤について、LDの有無からみたAD/HD治療反応性を検証した。J Atten Disord誌オンライン版2012年5月24日掲載の報告。2ヵ所の実験校において、メチルフェニデート徐放製剤による6週間プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験よりLDの有無に関わらず抽出された135例(9~12歳)を対象に認知および行動テストを行った。主な結果は以下のとおり。 ・メチルフェニデート徐放製剤群 ではLDの有無に関わらずAD/HD評価尺度スコアの改善が認められた。・認知スキル、学業、教室での行動においてメチルフェニデート徐放製剤はプラセボより有用であった。・メチルフェニデート徐放製剤はLDの有無に関わらずAD/HD児の行動やパフォーマンスを改善する。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・境界性人格障害患者の自殺予防のポイントはリハビリ ・10代うつ病患者の治療はファンタジーゲームで? ・米国では自閉症は5歳まで診断されないケースが多い

30259.

手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

30260.

国家的「手洗いキャンペーン」が医療従事者関連感染症を低減:英国

イングランドとウェールズでは2004年に、全国のNHS傘下病院の医療従事者に対し、「手洗いキャンペーン(Cleanyourhands campaign)」が開始された。背景には、MRSAやMRSSなどの感染症蔓延の報告に対する懸念、一方の医療従事者の手洗いコンプライアンスが低率という報告があったこと、それらの前提として医療従事者の手指を媒介として患者から患者への感染拡大の可能性があったことなどによるという。キャンペーンは、2008年までに3回にわたって発動され、その効果について、英国・University College London Medical SchoolのSheldon Paul Stone氏らが前向き調査にて評価をした。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月3日号)掲載報告より。病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率と感染症発生との関連について調査「手洗いキャンペーン」は、ベッドサイドへのアルコール手指消毒薬の供給、医療従事者に手洗いを想起させるポスターの配布、コンプライアンスについての定期的検査とフィードバック、医療従事者に手洗いを想起させるための患者への資料提供から成った。アルコール手指消毒薬および液状石鹸はNHS物品供給会社を通して購入することとされ品質は保証されたものだった。キャンペーンは保健省が資金を提供し、国家患者安全丁(NPSA)の調整の下で展開された。キャンペーンの全国展開開始は2004年12月1日で翌2005年6月まで全国の急性期NHS病院に対し介入が続けられた。その後、2006年6月末、2007年10月に一新やポスターの再作成などが図られた。Stone氏らは、病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率、特定の医療従事者関連感染の報告におけるキャンペーンの影響について評価し、2004年7月1日~2008年6月30日の間の感染症発生と調達率との関連について、前向き生態学的断続時系列の手法を用いて調査した。調達率3倍に、MRSAとC. difficileは減少に転じたがMSSAには影響認められず四半期ごとに調べられた病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率は、1患者・床・日当たり21.8mLから59.8mLへと約3倍に増えていた。調達率は各キャンペーン発動と関連して上昇していた。感染報告症例は1万床・日当たり、MRSA菌血症は1.88から0.91に減少、C. difficile感染症も16.75から9.49に減少した。しかしMSSA菌血症は減少に転じなかった(2.67からピーク時3.23に、試験終了時は3.0)。石鹸の調達は、C. difficile感染症低減と独立した関連が試験期間を通して一貫して認められた(1mL/患者・床・日増大に対する補正後発生率:0.993、95%信頼区間:0.990~0.996、P<0.0001)。アルコール手指消毒薬の調達は、MRSA菌血症低減と独立した関連が認められたが、それは試験最後の4四半期においてのみだった(同:0.990、0.985~0.995、P<0.0001)。2006年発動のキャンペーンが最も強くMRSA菌血症低減(同:0.86、0.75~0.98、P=0.02)、C. difficile感染症低減(同:0.75、0.67~0.84、P<0.0001)と関連していた。定期検査のための保健省改善チームのトラスト訪問も、MRSA菌血症低減(同:0.91、0.83~0.99、P=0.03)、C. difficile感染症低減(同:0.80、0.71~0.90、P=0.01)と強く関連し、訪問後少なくとも2四半期はその影響が認められた。結果を踏まえてStone氏は、「手洗いキャンペーンは、病院の手指消毒薬等の調達継続と関連しており、医療従事者関連の感染症低減に重要な役割を果たすことが示された。医療従事者関連の感染症低減には、人目を引く政治組織的な推進力の下で行う国家的介入の感染症コントロールが有効である」と結論している。

検索結果 合計:33608件 表示位置:30241 - 30260