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dupilumab、好酸球数増多を伴う喘息患者の増悪を抑制/NEJM

 新たな抗体医薬dupilumabは、吸入ステロイド薬+長時間作用型β2刺激薬(LABA)でコントロール不十分な好酸球増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者の治療において、これらの併用薬を中止後もプラセボに比べ増悪を高度に抑制することが、米国・ピッツバーグ大学のSally Wenzel氏らの検討で示された。dupilumabはインターロイキン(IL)-4受容体のαサブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体で、2型ヘルパーT(Th2)細胞経路の主要なサイトカインであるIL-4およびIL-13双方のシグナル伝達を遮断することから、Th2細胞経路関連疾患の治療薬としての評価が進められている。本報告は第109回米国胸部学会(ATS、5月17~22日、フィラデルフィア)で発表され、NEJM誌オンライン版2013年5月21日号に掲載された。増悪抑制効果をプラセボ対照無作為化第IIA相試験で評価 研究グループは、好酸球増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者に対するdupilumabの有効性および安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第IIa相試験を実施した。 対象は、18~65歳、中~高用量の吸入ステロイド薬(フルチカゾン)+LABA(サルメテロール)でコントロールが不十分な、血中好酸球数≧300/μLまたは喀痰中好酸球濃度≧3%の中等症~重症の持続型喘息患者。これらの患者が、dupilumab群(300mg)またはプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付けられ、12週の治療が行われた。 割り付けから4週後にLABAを中止、6週後から3週をかけて吸入ステロイド薬を漸減して9週目に中止し、以降はdupilumabのみを12週目まで投与した。 主要評価項目は喘息の増悪、副次的評価項目は喘息コントロールの指標とし、Th2細胞関連バイオマーカーや安全性についても検討を行った増悪を87%抑制、FEV1、起床時PEF、ACQ5スコアも改善 2011年3月~2012年10月までに米国の28施設から104例が登録され、dupilumab群に52例(平均年齢37.8歳、男性50%、喘息罹患期間24.2年、過去2年間の平均喘息増悪回数1.4回、血中好酸球数0.55×10-9/L)、プラセボ群にも52例[41.6歳、50%、26.9年、1.4回、0.47×10-9/L(p=0.04)]が割り付けられた。 喘息増悪の発症率はdupilumab群が6%(3/52例)と、プラセボ群の44%(23/52例)に比べ有意に低下した(オッズ比[OR]:0.08、95%信頼区間[CI]:0.02~0.28、p<0.001)。これは、dupilumabにより増悪のリスクが87%抑制されたことを意味するという。増悪による入院例は両群ともにみられなかった。 増悪までの期間はdupilumab群がプラセボ群に比べ延長し、Kaplan-Meier解析による12週時の増悪率はdupilumab群が有意に良好だった(0.06 vs 0.46、OR:0.10、95%CI:0.03~0.34、p<0.001)。すべての副次的評価項目がdupilumab群で良好で、ベースラインから12週までの1秒量(FEV1)の変化(p<0.001)のほか、起床時最大呼気流量(PEF)(p=0.005)、5項目からなる喘息コントロール質問票(ACQ5)スコア(p=0.001)などには有意差が認められた。 12週後の呼気中一酸化窒素濃度(FENO)、TARC(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)、eotaxin-3(CCL26)、IgEは、いずれもdupilumab群がプラセボ群よりも有意に低下した(すべてp<0.001)。YKL-40、がん胎児性抗原(CEA)には有意差はみられなかった。 治療関連有害事象の発現率はdupilumab群が81%、プラセボ群は77%であった。このうち重篤な有害事象はそれぞれ2%、6%、有害事象による治療中止は6%、6%だった。dupilumab群で多い有害事象として、注射部位反応(29 vs 10%)、鼻咽頭炎(13 vs 4%)、悪心(8 vs 2%)、頭痛(12 vs 6%)などが確認された。 著者は、「吸入ステロイド薬+LABA投与中の好酸球数増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者の治療において、dupilumabはこれらの併用薬を中止後もプラセボに比べ増悪を高度に抑制し、Th2細胞関連炎症マーカーを低下させた」と結論している。

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若年者への低線量CT検査、発がんリスク増大/BMJ

 CT検査を受けた若年者における発がんの原因のほとんどは、検査による放射線被曝である可能性が、オーストラリア・メルボルン大学のJohn D Mathews氏らの調査で示された。1980年代以降、CT検査の施行率は実質的に上昇している。高線量の電離放射線被曝は発がんの原因となることが知られているが、低線量のCTスキャン(1臓器当たり5~50mGy)の発がんリスクは不明である。最近、英国でCT検査を受けた18万人の若年者の検討で、線量の増加に伴って白血病や脳腫瘍のリスクが増大することが示されていた。BMJ誌オンライン版2013年5月22日号掲載の報告。低線量被曝の発がんリスクをコホート試験で評価 研究グループは、オーストラリアの小児および青少年において、診断的CT検査による低線量電離放射線被曝後の発がんリスクを評価する、地域住民ベースのコホート試験(データ・リンケージ研究)を実施した。 オーストラリア版メディケア(個別支払い制度に基づく保健サービス)の診療記録を使用し、1985年1月1日~2005年12月31日までに出生した0~19歳のオーストラリア人1,090万人を抽出した。 このコホートの中から1985~2005年にメディケアでCT検査を受けた者全員を同定した。オーストラリア健康福祉研究所が運営するがんデータベースおよび全国死亡インデックスとの電子的リンケージにより、2007年12月31日まで追跡を行った。発がんの率比が24%上昇、検査年齢が若いほどリスクが高い 6万674件の発がんが同定され、そのうち3,150件がCT検査を受けたコホート(68万211人)に属していた。CT検査後の平均追跡期間は9.5年だった。 年齢、性別、出生年で調整後、全体の発がん率はCT検査を受けていないコホートよりも受けているコホートが24%高かった(発症率比[IRR]:1.24、95%信頼区間[CI]:1.20~1.29、p<0.001)。線量反応関係がみられ、CT検査が1回追加されるごとにIRRが0.16上昇した。 CT検査の年齢が若いほどIRRが高い傾向がみられ(傾向性検定:p<0.001)、検査年齢が1~4歳のコホートのIRRは1.35、5~9歳のIRRは1.25、10~14歳は1.14、15歳以上は1.24だった。 IRRは、さまざまなタイプの固形がん(消化器、皮膚、軟部組織、女性生殖器、尿路、脳、甲状腺)、白血病、骨髄異形成症、その他のリンパ系腫瘍で有意に上昇していた。 CT検査を受けたコホートにおける過剰な発がん数は608件(脳腫瘍147件、他の固形がん356件、白血病または骨髄異形成症48件、他のリンパ系腫瘍57件)で、2007年12月31日現在、すべてのがんを合わせた過剰発現率(EIR)の絶対値は10万人年当たり9.38であった。1回の検査当たりの実効線量は4.5mSvだった。 著者は、「CT検査後の発がんの原因のほとんどは放射線被曝によるものと考えられた。CT検査を受けたコホートにおける発がんの過剰状態は追跡期間終了時も持続していたことから、CT検査による最終的な発がんの生涯リスクは決定できない」とまとめ、「現在のCTスキャンは1985~2005年の機器に比べ低線量化の傾向にあるものの、発がんリスク上昇の可能性は残る。今後、CT検査の施行は明確な臨床的適応がある場合に限定すべきで、可能な限り低線量で撮像するよう1回の検査ごとに最適化を行う必要がある」と指摘する。

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うつ病や不安障害患者は、季節性の症状変化を実感!

 うつ病や不安障害患者は健常人に比べて季節性の変化を実感しやすく、とくに冬期に“気分の落ち込み”を感じる割合が多いことが、オランダ・フローニンゲン大学のWim H. Winthorst氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「医師は、季節が患者の健康 状態に影響を及ぼしうることを考慮に入れるべきである」と結論している。一般集団および精神疾患患者を問わず、気分や行動の季節的な変化は一般的と考えられている。しかしこれまでの研究では、この季節性があまり考慮されていない可能性があることから、Winthorst氏らは、気分や行動の季節性に焦点を絞った検討を行った。Depression and Anxiety誌オンライン版2013年5月21日号の掲載報告。 本研究では、うつ病患者(D)、不安障害患者(A)、うつ病と不安障害を併存している患者(DA)、健常対照(HC)について、本人の訴えによるうつ症状の季節性を検討した。オランダうつ病・不安障害患者研究(Netherlands Study of Depression and Anxiety:NESDA)に参加した2,168例について、国際比較診断用構造化面接(CIDI)によりDSM-IV分類に基づく診断を行った。気分および行動の変化は、Seasonal Pattern Assessment Questionnaire(SPAQ)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・2,168例のうち、53.5%が気分の季節性を報告した。・「気分の落ち込み」の割合が最も高かったのは冬期であった。・このパターンはすべての群でみられたが、D群、A群およびDA群では有意に季節性を実感しやすかった(p<0.001)。・活力、社会活動、睡眠、食欲、体重およびGlobal Seasonality Scoreにおいても、季節性の変化が認められた。・気分と行動の季節性変化はすべての群で認められたが、不安障害やうつ病(両方またはどちらかの)患者は、より季節性変化を実感しやすいことが示された。・なお本研究は、横断研究デザインという点で限界があった。関連医療ニュース ・低緯度地域では発揚気質が増強される可能性あり:大分大学 ・空中浮遊微粒子濃度は自殺企図・統合失調症増悪に影響を及ぼす ・うつ病治療にビタミンD投与は有用か?

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RSV流行期に健常早産児へのパリビズマブ月1回投与、喘鳴エピソードを有意に抑制/NEJM

 RSウイルス(RSV)の流行期に、健常早産児にモノクローナル抗体パリビズマブ(商品名:シナジス)を月1回投与することで、生後1年間の喘鳴が認められた日数が有意に減少し、また投与終了後も効果の持続が認められたことが、オランダ・ユトレヒト大学病院のMaarten O. Blanken氏らによる多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験MAKIの結果、報告された。RSVは、1歳未満児の冬季入院の最も多い原因である。また、重症RSV感染症は、高齢になってからの喘息等の発生率と関連していること、さらにRSVは幼児期の喘鳴症状との関連やQOL、医療コストに与える影響が大きいことが知られている。しかし観察研究では、RSV感染が反復性喘鳴の原因であるのか、早産児においてはもともと存在する肺の脆弱性の最初の徴候であるのかが明らかではなかった。一方でパリビズマブは、ハイリスクの乳児の重症RSV感染症の予防に有効であることが先行研究で示されていた。NEJM誌2013年5月9日号掲載の報告より。生後1年間における喘鳴の総日数についてプラセボと比較 本研究において研究グループは、パリビズマブを用いて、生後1年間における喘鳴の病因においてRSV感染症が潜在的な原因となっている可能性を調べることを目的とした。 2008年4月~2010年12月の間に、オランダ国内の15地点から、在胎33~35週で出生した429例を登録し、RSV流行期に、パリビズマブを月1回接種する群(214例)とプラセボを接種する群(215例)に無作為に割り付けられた。被験児は、早産であること以外は健常で、RSV流行期が始まる時点で6ヵ月未満児であった。 事前に規定した主要アウトカムは、生後1年間における喘鳴が認められた総日数(両親による報告)とした。ウイルス解析は、呼吸器エピソード発生の間に鼻咽頭スワブにて行われた。生後1年間の喘鳴総日数はプラセボ群と比べて相対的に61%低下 パリビズマブ接種群の生後1年間の喘鳴総日数は、プラセボ群と比べて相対的に61%(95%信頼区間[CI]:56~65)減少した。パリビズマブ予防群が930/5万3,075日(1.8%)、プラセボ群2,309/5万1,726日(4.5%)であった。 また、同期間中に反復性喘鳴を来した乳児の割合は、パリビズマブ群が10%低かった(11%対21%、p=0.01)。 著者は、健常早産児へのパリビズマブ接種は、生後1年間の喘鳴が認められた日数を有意に減少し、その効果は投与終了後も持続したと結論したうえで、「本研究で示されたパリビズマブ投与終了後も効果が持続したという所見は、RSV感染症が早産児の生後1年間における喘鳴の重大な機序であることを示すエビデンスである」とまとめている。

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高齢2型糖尿病患者へのビルダグリプチン、優れた目標血糖値の達成率/Lancet

 DPP-4阻害薬ビルダグリプチン(商品名:エクア)は、高齢の2型糖尿病患者の治療において、担当医が設定した個々の患者の目標血糖値(HbA1c)の達成率が良好で、忍容性にも問題はないことが、英国エクセター大学医学部のW David Strain氏らが実施したINTERVAL試験で示された。2型糖尿病の高齢患者数は世界的に増加しており、65歳以上の有病率は18~20%とされる。欧米のガイドラインは、裏付けとなるエビデンスを持たないまま、高齢患者の血糖コントロールでは個々に目標値を設定することを勧めている。一方、これらの患者におけるビルダグリプチンの良好な有効性と安全性を示唆するプール解析の結果があるという。Lancet誌オンライン版2013年5月23日号掲載の報告。目標値達成をプラグマティックなプラセボ対照無作為化試験で評価 INTERVAL試験は、2型糖尿病の高齢患者に対するビルダグリプチン24週治療におけるHbA1c目標値の設定とその達成の実行可能性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、現行の高齢2型糖尿病患者治療ガイドラインに即したプラグマティックな試験デザインが採用された。 対象は、70歳以上の7.0%≦HbA1c≦10.0%、空腹時血漿グルコース<270mg/dL、BMI 19~45の2型糖尿病患者とした。治験担当医が、年齢、ベースラインのHbA1c値、併存疾患、虚弱状態に基づき個々の患者のHbA1cの治療目標値を設定した。患者は、ビルダグリプチン50mg(薬物療法を受けていない患者などは1日2回、SU薬単剤療法を受けている患者は1日1回)を経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、(1)担当医により設定されたHbA1c目標値の達成率、(2)ベースラインから試験終了までのHbA1c値の変化の複合エンドポイントとした。目標値達成率:52.6 vs 27%、変化の群間差:-0.6% 2010年12月22日~2012年3月14日までに、欧州の7ヵ国(ベルギー、ブルガリア、ドイツ、フィンランド、スロベニア、スペイン、英国)の45の外来施設から278例が登録され、ビルダグリプチン群に139例[平均年齢75.1歳、男性52.5%、平均糖尿病罹患期間12.2年(1.3~35.0年)、平均BMI 29.1、平均HbA1c値7.9%]、プラセボ群にも139例[74.4歳、38.1%、10.6年(0.3~32.8年)、30.5、7.9%]が割り付けられた。ITT解析の対象は両群とも137例、安全性の解析は両群とも139例で可能であった。 HbA1c目標値の達成率は、ビルダグリプチン群が52.6%(72/137例)と、プラセボ群の27%(37/137例)に比べ有意に良好であった(調整済みオッズ比[OR]:3.16、96.2%信頼区間[CI]:1.81~5.52、p<0.0001)。 ビルダグリプチン群の平均HbA1c値はベースラインの7.9%から0.9%低下し、臨床的に意義のある改善が得られた。プラセボ群の平均HbA1c値は0.3%低下し、両群間のHbA1c値の変化の差は-0.6%(98.8%CI:-0.81~-0.33、p<0.0001)と、ビルダグリプチン群が有意に優れていた。 治療関連有害事象の発生率はビルダグリプチン群が47.5%、プラセボ群は45.3%であった。そのうち重篤な有害事象はそれぞれ5.8%、3.6%であり、有害事象による治療中止は4.3%、2.2%、治療関連死は0.7%、0.7%だった。5.0%以上に発現した有害事象として、めまい(ビルダグリプチン群7.9%、プラセボ群2.2%)、頭痛(5.8%、2.9%)、鼻咽頭炎(5.0%、5.0%)がみられた。 著者は、「ビルダグリプチンは、高齢の2型糖尿病患者の治療において、良好な忍容性を示すとともに個々の患者の目標血糖値(HbA1c)の達成に寄与することが明らかとなった。これらの知見は現行のADA/EASDなどのガイドラインの勧告を支持するものである」と結論し、「本研究は、2型糖尿病治療のエンドポイントとして個々の患者のHbA1cの目標値を用いる方法が実行可能であることを示した初めての臨床試験である」としている。

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高齢の慢性疼痛患者の多くはモバイル機器での疼痛管理に興味あり

 モバイル機器を用いた医療(Mobile health:mHealth)が急速に進展している。慢性疼痛の管理においてmHealthは、医療提供者とのコミュニケーションや治療関連副作用および疼痛のモニタリングを強化し、疼痛ケア資源へのアクセスを増加させることで高齢者を支援できる可能性がある。しかし、高齢者のmHealthに対する態度や認識、あるいは疼痛管理を改善するためのmHealthツール使用への障壁や助けとなるものについては、現在のところほとんどわかっていない。そこで、米国・ワイルコーネル大学医学部のSamantha J. Parker氏らは、フォーカスグループ法を用いた研究を行った。その結果、慢性疼痛を有する高齢者は、mHealthに興味があり使用する意欲は高いが、使用にあたっては重大な障壁もあること、医療従事者や研究者およびmHealthの開発者は、慢性疼痛を有する高齢者の年齢や機能に応じたデータ収集装置の開発に取り組む必要があることを明らかにした。BMC Geriatrics誌オンライン版2013年5月6日号の掲載報告。 対象は、慢性疼痛を有する60歳以上の高齢者で、ニューヨーク市にある一般診療所1施設および日帰り複合サービスセンター2施設から本研究への参加者を募集した。 参加者は41人で、6つのフォーカスグループに分けフォーカスグループディスカッション(FDG)を行ってもらった。FDGは記録しテキストに起こした後、内容分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・FDGにより、疼痛ならびに鎮痛薬の管理を支援するmHealthの使用に関して38のテーマが同定された。・参加者のうちmHealthの使用経験者は5%と少なかったが、85%の参加者は試してみたいという高い意欲があった。・mHealthは、より早く医療提供者と連絡をとるのに役立つ可能性があると述べた参加者が27%、自宅における転倒や他の有害事象を監視するのに役立つ可能性があると述べた参加者が15%であった。・データ収集装置を使用することに対する障壁としては、コスト(42%)と、機器の操作に精通していないこと(32%)が挙げられた。・データ収集装置の使用にあたっての援助としては、使用に先立つ研修(61%)と、高齢者の機能に応じた装置の調整(34%)が挙げられた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか? 治療経過を解説「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる

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治療とともに患者サポートを!胆道がん診療の中心機関3施設が初の共同編集

 昨年、印刷会社の元従業員が高頻度で胆管がんを発症していた事実が明らかになって以来、新聞などで「胆管がん」の文字を目にする機会が増えている。この胆管がんと、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんを合わせた胆道がんは、わが国の年間死亡者数が1.8万人と、がんの中でも6番目に多い。ところが他のがんに比べて、患者支援活動や情報提供が非常に少ないというのが現状である。 このようななか、患者さんやその家族に向けた初めての書籍として「胆道がんの治療とケアガイド」が6月4日に金原出版株式会社より発刊される。この書籍は、わが国の胆道がん診療の中心機関である、がん研究会有明病院、国立がん研究センター中央病院・東病院の3施設が初めて共同編集したもので、患者さんやその家族だけでなく、診療に携わるすべての人々に役立つ内容となっている。 この発刊に際して、5月29日、「胆道がんの最新治療とケアガイドの必要性に関するセミナー」が開催された。以下に、編集代表の1人である国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科 科長 奥坂拓志氏による講演内容を紹介する。 胆道がんの原因は十分に解明されていないが、人口当たりの罹患者数、死亡者数は、日本人が世界第1位である。胆道がんに対する現在の治療は、まず切除可能であれば切除手術を行う。ただし、手術に耐えうる体力があり、がんをすべて切除できることが条件となる。もし切除不可能であれば、化学療法もしくは放射線療法を行うが、放射線療法は延命効果が証明されていない。化学療法は、2006年にゲムシタビン(商品名:ジェムザール)が、2008年にS-1(同:ティーエスワン)が承認され、2011年にはGC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)が登場し、抗がん剤で延命が可能な時代となってきた。 奥坂氏は、胆道がん診療の課題の1つとして、5年生存率が約20%と依然として予後不良であることを挙げた。その理由として、早期発見が難しいこと、また胆道がんに適応のある抗がん剤はたった4剤で有効な治療法が少ないことが挙げられる。もう1つの課題として、奥坂氏は、インターネットでの検索結果や書籍の数を提示し、患者支援活動や情報提供が脆弱であることを訴えた。 これらの課題に対する取り組みとしては、より有効な抗がん剤治療の開発がある。現在、GS療法(ゲムシタビン+S-1)が開発されており、また、胆道がんに対する抗がん剤として、現在、分子標的治療薬をはじめとした多くの薬剤が開発されている。一方で、奥坂氏らは、治療だけではなく患者さんたちをサポートしていくことが大事ではないかと考え、さまざまな取り組みを行っている。その1つとして、国立がん研究センター中央病院において、患者向けの膵がん・胆道がん教室を実施し、年に1回、全国大会を開催していることを紹介した。また、今回、奥坂氏らが編集した「胆道がんの治療とケアガイド」には、疾患の解説や治療方法をはじめ、症状のマネジメント、副作用対策、食事の工夫、家庭でできるセルフケア、家族のための注意点など、具体的な手順や例を幅広く紹介しているとのことである。

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新知見!慢性期統合失調症患者では意志作用感が減退:慶応義塾大学

 意志作用感(sense of agency:SoA)とは、ある動作や思考などを他人ではなく自分の意志によって実行しているという感覚であり、統合失調症患者では、この意志作用感が障害されている。慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室神経心理学研究室の前田貴記氏らは、SoAを評価する統合フレームワークを用いて、陰性症状が残存している慢性統合失調症患者においてSoAが減退していることを初めて明らかにした。Psychiatry Research誌オンライン版2013年5月14日号の掲載報告。 統合失調症における自我障害(self disturbance)は同疾患の根源的な脆弱性のマーカーになると考えられるようになり、認知神経心理学的見地からの異常な意志作用感に関する研究が始まっている。統合失調症のSoA異常の特性を明らかにするためには、さまざまな臨床サブタイプおよびステージにおいて調査を行う必要がある。しかし、これまで陰性症状が残存している慢性統合失調症における調査は行われていなかった。 そこで本研究では、同タイプの統合失調症においてオリジナル作用特性タスクを用いてその特性を調べ、至適な手がかりを得るための統合フレームワークでSoAの予測コンポーネントと後付け(postdictive)コンポーネントとの間の動的相互作用を評価した。評価は、陰性症状が残存している統合失調症患者20例と、対照群として妄想型の統合失調症患者30例および健常ボランティア35例を対象に行われた。 主な結果は以下のとおり。・陰性症状が残存している統合失調症患者では、健常対照者や妄想型統合失調症患者と比較しSoAの顕著な減退が認められた。・陰性症状が残存している統合失調症患者で認められたSoAは、妄想型統合失調症患者でみられた過度のSoAと正反対の作用特性を示した。・SoAの減退は、統合失調症の実験的研究において初めて検出された。・統合フレームワークの適用により、これらの結果は、不十分な予測にもかかわらず、妄想型統合失調症では後付けコンポーネントが過度であったのとは対照的に、後付けプロセスの代償的寄与が増大しなかったことを示すものであった。関連医療ニュース 陰性症状改善に!5-HT3拮抗薬トロピセトロンの効果は? 統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か 精神疾患患者は、何を知りたがっているのか

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皮膚がんとの関連研究で判明!アルツハイマー病に特異的な神経保護作用

 米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のRobert S. White氏らは、70歳以上住民ベースの縦断的追跡研究の結果、非悪性黒色腫皮膚がんの人は、同皮膚がんを有さない人と比べて、アルツハイマー病(AD)の発症リスクが有意に低いことを明らかにした。同関連は、ADが疑われる例や脳血管性AD、その他あらゆる認知症ではみられなかったことも示され、著者は「アルツハイマー病には特異的な神経保護が存在することが推察された」と報告している。Neurology誌オンライン版2013年5月14日号の掲載報告。 研究グループは、ニューヨーク市民対象のエイジング疫学研究「アインシュタイン・エイジング研究」において、非悪性黒色腫皮膚がん(NMSC)とADとの関連について調べた。対象は、70歳以上のボランティア住民で、年1回の評価と、多領域の医師による診断コンセンサスが続けられた。自己申告に基づき、がんの症状およびタイプの情報を入手し、Cox比例ハザードモデルを用いて、NMSCとその後に発症した認知障害リスクとの関連を調べた。また、ADとNMSCの生物学的特異的関連性を導き出すために、「AD限定群」(見込みあるいは可能性があると診断された症例)、「全AD群」(前記に加えて混合型AD/脳血管性認知症)、「全原因認知症群」の3つのネスティッドアウトカム群を設定して検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡を受けたのは、1,102人(登録時の平均年齢79歳)であった。・人口統計学的および高血圧、糖尿病、冠動脈疾患で補正後の被験者において、NMSC(被験者群で優勢であった)とAD限定群のリスク低下との有意な関連が認められた(ハザード比:0.21、95%CI:0.051~0.87、p=0.031)。・APOE ε4遺伝子型データが入手できた769例について、APOE ε4アレルの数をモデルに組み込んで分析した結果、有意ではなかったが同程度の強さの関連性が認められた。・一方、NMSCと全ADあるいは全原因認知症との有意な関連は認められなかった。・今回の住民ベースの縦断的追跡研究により、70歳以上のNMSC患者は、NMSCではない人と比べて、ADの発症リスクが有意に低いことが示された。・その他のAD(全AD)や全原因認知症と診断された非特異的ADでは、その関連性が減弱あるいは消失したことから、アルツハイマー病に特異的な神経保護が存在することが推察された。関連医療ニュース 日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは? “重症にきび”はうつ病のリスク!? 睡眠障害と皮膚疾患、夜間のひっかき行動は睡眠ステージと関連

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鎖骨下静脈穿刺後の無気肺で死亡したケース

感染症最終判決判例時報 1589号106-119頁概要金属プレス機に両手を巻き込まれた19歳男性。救急搬送された大学病院にて、手袋の繊維、機械油で汚れた手をガーゼ、ブラシで洗浄し、消毒、デブリードマンを施行した。左手には有茎植皮術、右手には一時的な創縫合手術を施行し、術後抗菌薬を投与した。投与後、創部から黄緑色の浸出液と刺激臭があり、緑膿菌感染を疑い硫酸ゲンタマイシンンなどを追加。その後、浸出液と刺激臭は消失し、壊死部の除去を含めた右手皮弁切離術、左手小指端形成術を施行した。さらに右手では左胸部有茎植皮術、左手では腹部有茎植皮術を行った。約1週間後に41.1℃の発熱があり、敗血症疑いから血液培養を施行(結果は陰性)。しかし、翌日に軽度の呼吸困難があり、突然の痙攣発作と意識障害が出現したことからエンドトキシンショックを疑い、血管確保の目的で鎖骨下静脈穿刺が行われた。穿刺中に患者が上体を起こしたことから中止し、身体拘束後に再度右鎖骨下静脈にラインを確保した。しかし、胸部X線写真で右鎖骨下に血腫を認めたため、再度右そけい部からカテーテルを挿入した。その後、瞳孔散大傾向、対光反射喪失、嘔吐もみられたので気管内挿管を施行。諸検査を行おうとしたところ、心肺停止状態となり、蘇生が開始されたが、死亡した。詳細な経過患者情報19歳男性経過1990年8月17日12:10金属プレス機のローラーに両手を挟まれて受傷した19歳男性。某大学病院に救急搬送された時には、受傷時につけていた手袋の繊維、機械油などで両手の傷は著しく汚染されていた。13:30頃創洗浄開始。14:45緊急手術のための麻酔開始。同時にガーゼ、ブラシを用いた洗浄、消毒、デブリードマン施行。洗浄用の生食水(500mL)40本使用。左手:手掌皮膚は手関節から基節骨までグローブ状に剥離:有茎植皮術施行右手:手背の皮膚欠損および筋挫滅、一部では骨にまで達する:一時的な創縫合手術施行術後抗菌薬としてセフメタゾールナトリウム(商品名:セフメタゾン)、硫酸ジベカシン(同:パニマイシン)を使用。8月30日はじめて創部から黄緑色の浸出液と刺激臭があり、緑膿菌感染が疑われたため、硫酸ゲンタマイシン(同:ゲンタシン軟膏)、セフタジジム(同:モダシン)を投与。9月4日黄緑色浸出液と刺激臭はほとんど消失。9月10日右手皮弁切離術、左手小指断端形成術(壊死部の除去も行う)。9月26日浸出液が消失する一方、壊死部もはっきりとしてきたので、右手は左胸部有茎植皮術、左手は腹部有茎植皮術施行。術後から38~39℃の発熱が持続。10月1日41.1℃の発熱があり、敗血症を疑って血液培養施行(結果は陰性)。10月2日15:20軽度の呼吸困難出現。15:30突然痙攣発作と意識障害が出現。血圧92mmHg、脈拍140、呼吸回数22回。内科医師の往診を受け、エンドトキシンショックが疑われたため、血管確保目的で鎖骨下静脈穿刺が行われた。ところが穿刺中に突然上体を起こしてしまったため、いったん穿刺を中止。その後身体を拘束したうえで再度右鎖骨下静脈にラインを確保した。ところが、胸部X線写真で右鎖骨下に血腫を認めたため、カテーテルを抜去、右そけい部から再度カテーテルを挿入した。16:30瞳孔散大傾向、対光反射がなくなり、嘔吐もみられたため気管内挿管施行。腰椎穿刺にて採取した髄液には異常なかった。そこで頭部CTを施行しようと検査室に移動したところで心肺停止状態となる。ただちに蘇生が開始されたが反応なし。19:57死亡確認。病理解剖の結果、両肺無気肺(ただし左肺は一部換気)、(敗血症性)脳内小血管炎、脳浮腫、感染脾、全身うっ血傾向、右鎖骨下血腫、右胸水が示された。当事者の主張患者側(原告)の主張生命の危険性、あるいは手指の切断についての説明がないのは説明義務違反がある適切な感染症対策を行わず、敗血症に罹患させたのは注意義務違反である鎖骨下静脈穿刺により、無気肺を生じさせたのは注意義務違反である緑膿菌などに感染し、敗血症性の呼吸困難が生じていたことに加え、鎖骨下静脈穿刺の際に生じた鎖骨下血腫および血性胸水が無気肺をもたらしたことが原因となり、呼吸不全から心停止にいたり死亡した病院側(被告)の主張容態急変する前の9月26日までは順調に経過しており、手術前にその急変を予測して説明を行うのは不可能であった創は著しく汚染されていたので、無菌化することは困難であった。感染すなわち失敗という考え方は妥当ではない鎖骨下静脈穿刺により、無気肺を生じたとしても、患者が突然寝返りを打つなどして動いたことが原因である。患者救命のための緊急事態下で行われた措置であることを考慮すれば、不可抗力であった病理解剖所見では、突然の呼吸停止とまったく蘇生不能の心停止が同時に生じるという臨床的経過と符合しないため、結局突然死と診断されており、死亡原因の特定はできない裁判所の判断1.病院側は原因不明の突然死というが、病理解剖の結果心臓には心停止をもたらすような病変は確認されておらず、敗血症性の感染症および無気肺の存在以外には死亡に結びつく病変は確認されていないので、原告の主張通り、緑膿菌などに感染し、敗血症性の呼吸障害ないしは呼吸機能の低下、ならびに鎖骨下静脈穿刺の際に生じた鎖骨下血腫および血性胸水が無気肺をもたらしたことによる換気能力の低下、呼吸不全から心停止にいたり死亡した2.ゴールデンアワー内に十分な洗浄、消毒、デブリードマンなどを徹底して行い、その後も十分な洗浄、消毒、デブリードマンを行うべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った。その結果、敗血症性の重篤な感染症に罹患させたものである3.鎖骨下静脈穿刺の時にはいつ痙攣や不穏状態が生じるか予測できない状態であったので、穿刺時の不測の体動を予見することは十分に可能であった。そのため、身体を拘束したうえで鎖骨下静脈穿刺を行うべき注意義務を違反した4.説明義務違反は十分な洗浄や消毒を行わなかった過失に含まれる原告側合計7,077万円の請求に対し、5,177万円の判決考察この判決内容を熟読してみて、臨床を熱心に実践されている先生方のご苦労と、ひとたび結果が悪かった時に下される司法の判断との間には、大きな相違があると感じずにはいられませんでした。まず、最大の誤解は、「手の開放創からの感染は、十分な洗浄、消毒、デブリードマンを徹底して施行すれば、ほぼ確実に防止できるものである」と断定していることだと思います。いくら抗菌薬が発達した現代であっても、本件のような難治性の感染症を完全に押さえ込むのが難しいことは、われわれが常日頃感じているジレンマのような気がします。本件で不十分と判断されてしまった創の消毒・洗浄方法をもう一度みてみると、12:40(受傷後30分)救急搬入、バイタルサインが安定していることを確かめた後、両手に付着していた線維などを取り除いたうえで、ポビドンヨード(商品名:イソジン)、クロルヘキシジングルコン酸(同:ヒビテン)で消毒。13:30(受傷後1時間20分)抗菌薬を静注しながら、両腋窩神経、および腕神経叢ブロックを施行したうえで、ただちに創洗浄を開始。14:45(受傷後2時間35分)全身麻酔下の手術が必要と考えたため麻酔導入。麻酔完了後、ガーゼ、ブラシを用いながらヒビテン®液で軟部組織、骨、皮膚に付着した油様のものなどをよく洗浄したうえで消毒し、壊死組織、挫滅組織を切除、さらに生理食塩水でブラッシングしデブリードマンを完了。この間に使用した生食は20L。とあります。裁判ではしきりに、受傷後6時間以内のゴールデンタイムに適切な処置が行われなかったことが強調されましたが、このような病院側の主張をみる限り、けっして不注意があったとか、しなければならない処置を忘れてしまったなどという、不誠実なものではなかったと思います。少なくとも、受傷6時間の間に行った処置は、他人から批判を受けなければならないような内容とはいえないのではないでしょうか。にもかかわらず、「きちんと洗浄、消毒をすれば菌は消える」などと安易に考え、「菌が消えないのならば最初の処置が悪かったに決まっている」と裁判官が即断してしまったのは、あまりにも短絡しすぎていると思います。あくまでも過誤があると主張するのならば、洗浄に用いた生食が20Lでは足りなくて、30Lだったらよかったのでしょうか?そこまで医師の措置を咎めるのであれば、当時の医師たちのどこに不適切な点があって、どのような対策を講じたら敗血症にまでいかずにすんだのか、つまり今回と同様な患者さんが来院した場合には、どうすれば救命することができるのか、(権威ある先生にでも聞いたうえで)示すべきだと思うのですが、裁判官はその点をまったく考慮せず、一方的な判決となってしまいました。それ以外にも、容態急変時の血液ガスで酸素分圧が137.8mmHg(正常値は85~105)という数値をみて、「酸素分圧が正常値を大きく越えるものであり、無気肺により換気能力の低下を来した」と判断している点は、裁判官の勉強不足を如実に示しています。この当時、当然酸素投与がなされているはずですから、酸素分圧が137.8mmHgとなっても不思議に思わないし、それをもって換気障害があるとは判断しないのが常識でしょう。にもかかわらず、ことさら「酸素分圧が正常値を越えた」というだけで「注意義務違反に該当する医療行為があった」と短絡しているのは、どうも最初から「医者が悪い」という結論を導くために、こじつけた結果としか思えません。少なくとも、そのような間違った見解を判決文に載せる前に、専門家に確認するくらいの姿勢はみせるべきだと思います。鎖骨下静脈穿刺についても、同じようなことがいえると思います。当時の内科医師は、鎖骨下静脈穿刺前の局所麻酔の時に、患者がとくに暴れたり痛がったりしなかったので、あえて押さえつけながら穿刺を行わなかったと証言しています。これはごく当たり前の考え方ではないでしょうか。この裁判官の判断が正しいとするならば、意識がもうろうとしている患者さんに注射する時には、全員身体を拘束せよ、という極端な結論となります。実際の臨床現場では、そのようなことまであえてしないものではないでしょうか。病院側は不可抗力であったと主張していますが、そのように考えるのももっともであり、すべてが終わった後で判断する立場でこのような判決文を書くのは、少々行き過ぎのような気がしてなりません。ただ一方で、前途ある19歳の若者が命を落としてしまったのも事実です。その過程では、よかれと思った医療行為が裏目に出て、敗血症に至ったり、鎖骨下血腫を形成して死亡に少なからず寄与しました。しかし、ではどこでどのような反省をして、今後どのような対処をするべきかという、前向きの考え方がなかなかこのケースでは検討しにくいのではないでしょうか。つまり、本ケースのように医療行為の結果が悪くて裁判に発展してしまい、本件のような裁判官に当たると、医師にとって不利な判決にならざるを得ないという、きわめて釈然としない「医療過誤」になってしまうと思います。感染症

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重症ARDSへの早期の腹臥位治療、28日・90日死亡率を半分以下に減少/NEJM

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者に対し、腹臥位治療を連続16時間以上行うと、仰臥位に比べ、28日死亡リスクはおよそ6割、90日死亡リスクは5割強、それぞれ減少することが報告された。フランス・リヨン大学のClaude Guerin氏らが、重度ARDS患者500例弱について行った、多施設共同無作為化比較試験PROSEVAの結果で、NEJM誌オンライン版2013年5月20日号で発表した。急性ARDS患者を含む先行研究においては、人工呼吸器装着中の腹臥位治療について転帰の改善は示されなかったという。フランス・スペインのICU 27ヵ所、466例を対象に試験 PROSEVA(Proning Severe ARDS Patients)試験は、フランス26ヵ所、スペイン1ヵ所の集中治療室(ICU)を通じ、重症ARDSの患者466例を対象に行われた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(237例)には腹臥位治療を連続16時間行い、もう一方の群(229例)は仰臥位のままで治療を行った。 重症ARDSの定義は、動脈血酸素分圧(PaO2)の吸入酸素濃度(FiO2)に対する割合が150mmHg未満で、FiO2が0.6以上、呼気終末陽圧(PEEP)が5cmH2O以上、1回換気量が予測体重の6mL/kgに近い場合とした。 主要アウトカムは、試験開始から28日後までの全死因死亡率だった。腹臥位治療で28日死亡リスクは0.39倍、90日死亡リスクは0.44倍に その結果、仰臥位群の死亡率は32.8%だったのに対し、腹臥位群は16.0%と、有意に低率だった(ハザード比:0.39、95%信頼区間:0.25~0.63、p<0.001)。 補正前90日死亡率も、仰臥位群41.0%だったのに対し、腹臥位群では23.6%と、有意に低率だった(ハザード比:0.44、同:0.29~0.67、p<0.001)。 合併症発症率については、心停止が仰臥位群で有意に高率だったことを除き、両群で同程度だった。

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乳児への経口ビタミンD投与量、1,600 IU/日では過剰投与か/JAMA

 乳児への経口ビタミンD投与について、投与3ヵ月時点で乳児の97.5%以上で血中25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]値が75nmol/L以上を達成するための投与量は、1,600 IU/日であることが明らかになった。400~1,200 IU/日では、同目標は達成できなかった。一方で、ビタミンDの1600 IU/日投与を続けると、血中25(OH)D値は上昇を続けて250nmol/L以上となり、高カルシウム血症リスクを増大する可能性があることも明らかになった。カナダ・マックギル大学のSina Gallo氏らが、乳児132例を対象に行った二重盲無作為化試験の結果で、JAMA誌2013年5月1日号で報告した。現状では乳児へのビタミンD投与は、血中25(OH)D値40~50nmol/Lを目標に400 IU/日とするとされているが、健康な骨をつくるには75~150 nmol/Lの投与が望ましいとする意見もあるという。生後1ヵ月の母乳保育児を11ヵ月追跡 Gallo氏らは2007年3月~2010年8月にかけて、カナダのケベック州モントリオールで、生後1ヵ月の健康な母乳保育児を対象に、前向き二重盲検試験を行った。研究グループは被験者を無作為に4群に分け、経口ビタミンDを400 IU/日(39例)、800 IU/日(39例)、1,200 IU/日(38例)、1,600 IU/日(16例)をそれぞれ投与した。追跡期間は11ヵ月だった。 主要アウトカムは、投与開始3ヵ月時点での血中25(OH)D値75nmol/L以上の乳児の割合97.5%以上を達成することだった。全投与群で、被験者の97%以上が血中25(OH)D値が50nmol/L以上 その結果、3ヵ月時点で25(OH)D値が75nmol/L以上だった乳児の割合は、400 IU/日群が55%、800 IU/日群が81%、1,200 IU/日群が92%、1,600 IU/日群が100%であり、主要アウトカムの97.5%を達成したのは1,600 IU/日群のみだった。その後1,600 IU/日投与については、血中25(OH)D値が増え続け、250nmol/Lを超えたため、予定より早期に投与を中止し、400 IU/日を12ヵ月まで投与した。 投与後12ヵ月時点では、いずれの投与群も97.5%に達しなかった。 副次アウトカムの血中25(OH)D値が50nmol/L以上の乳児の割合については、すべての群で3ヵ月時点で97%を達成し、12ヵ月時点でも98%を維持していた。 乳児の成長や骨塩量については、群間の有意差は認められなかった。

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中高年の病因不明の慢性湿疹、Ca拮抗薬とサイアザイド系利尿薬との関連

 50歳以上の中高年に認められる病因不明の慢性湿疹について、Ca拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬との関連を指摘する知見が、米国・ユタ大学のErika M. Summers氏らによる後ろ向き症例対照研究の結果、報告された。 皮膚科医が、中高年者の慢性湿疹(chronic eczematous eruptions in the aging:CEEA)に遭遇する頻度が高いことから、研究グループは、薬剤性湿疹の可能性について検討した。薬剤性湿疹が疑われる場合、原因となる医薬品を特定することは臨床的に複雑なチャレンジとなっている。JAMA Dermatology誌オンライン版2013年5月1日号の掲載報告。 本研究は米国において特定の医薬品、とくに今回はCa拮抗薬がCEEAと関連しているか検討することを目的とした。 ユタ大学医学部皮膚科部門の外来患者を対象とし、2005年1月1日~2011年12月31日の間に、2ヵ月以上の説明がつかない対称性の湿疹がみられた50歳以上の94例を対象症例とした。薬剤性湿疹が臨床的に疑われる場合、海綿状皮膚炎あるいは接合部皮膚炎などの組織病理学的な変化がみられる場合も適格とし、対照群として年齢、性別、人種でマッチさせた皮膚の状態が良好な132例を設定し分析を行った。また、従来法の皮膚生検で炎症が認められた症例についてサブグループ解析を行い、湿疹型薬疹(湿疹、接合部皮膚炎など)との関連についても調べた。  主要評価項目は、特定の医薬品と、説明がつかない病因不明のCEEAとの関連とした。 主な結果は以下のとおり。・症例群と対照群では、Ca拮抗薬とサイアザイド系利尿薬の使用について、有意な差異が明らかであった。・Ca拮抗薬の適合オッズ比は4.21(95%CI:1.77~9.97、p=0.001)、サイアザイド系利尿薬の適合オッズ比は2.07(同:1.08~3.96、p=0.03)であった。・サブグループ解析では、統計的に有意な関連性が一つも示されなかった。

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