サイト内検索|page:1402

検索結果 合計:36523件 表示位置:28021 - 28040

28021.

アナフィラキシー 症例クイズ(1)

3回目のセフェム系抗菌薬静注後に熱感を訴えた糖尿病の女性症例161歳・女性経過3日前に家族でスキーに行ったが途中で疲れてしまい、本人は山小屋で家族が滑り終わるのを待ってホテルに戻った。翌日の夜から微熱があり、当日は38.5℃の発熱と頭痛があるため受診。既往歴高血圧、糖尿病服用薬剤イミダプリル(商品名:タナトリル)5mg、グリメピリド(同:アマリール)1mg

28022.

75)1分間でできるゲームで認知症のチェック【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者最近、物忘れが多くて、認知症が心配で・・・。 医師それは心配ですね。確かに糖尿病の人は、健康な人と比べると、認知症に2倍くらいなりやすいですからね。 患者えっ、そんなになりやすいんですか!? 医師それでは、認知症になっていないかどうか、簡単なゲームをやってみましょう。 患者えっ!どんなゲームですか?難しいのは嫌ですよ。 医師そんなに難しくはありませんよ。1分間に動物の名前がいくついえるかという簡単なゲームです。ただし、干支を順番にいうのは禁止ですよ。それでは、スタート(ストップウォッチを押す)。 患者えっと、イヌ、ネコ、ウマ、ゾウ・・・(考えながら順に動物の名前をいう)。 医師はい、1分です。18個、いえましたね。優秀です。14個以上いえれば一安心です。 患者ちょっと緊張しました。時々、こうやって頭を使わないとだめですね。●ポイント1分間ゲームを楽しく行うことで、簡単な認知症のスクリーニングできます 1) Ohara T, et al. Neurology. 2011; 77: 1126-1134. 2) Hanyu H, et al. J Am Geriatr Soc. 2009; 57: 1130-1131. *カットオフ値13で、アルツハイマー病がスクリーニングできる(感度91%、特異度81%)

28023.

腰痛に対する植物薬の実力は?

 非特異的腰痛に対する植物薬(herbal medicine)の有効性を検討する目的で、米国・ミシガン大学のHanna Oltean氏らはシステマティックレビューを行った。その結果、トウガラシはプラセボに比べ疼痛軽減に有効であることを報告した。また、デビルズクロー、セイヨウシロヤナギ、ヒレハリソウおよびラベンダー精油もプラセボより有効である可能性が示唆されたが、エビデンスの質が低~中であったという。今後、適切にデザインされた大規模試験による検討が必要だと指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviews誌2014年12月23日号の掲載報告。 研究グループは、MEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CINAHL、Clinical Trials.gov、WHO国際臨床試験登録(WHO ICTRP)およびPubMedなどのデータベースから、2014年9月までに発表された論文、ガイドラインなどを検索し、18歳以上の急性・亜急性・慢性の非特異的腰痛患者を対象に植物薬を用いた無作為化比較試験を選択した。 主要評価項目は疼痛と機能で、2人の研究者がバイアスリスク、エビデンスの質(GRADE)、CONSORT声明の遵守について評価した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化試験14件、計2,050例が解析対象となった。・Solidago chilensis Meyen(Brazilian arnica)含有ゲル1日2回塗布は、プラセボと比較して疼痛を軽減し可動性も改善した(RCT:1件、20例、エビデンスの質:非常に低い)。・Capsicum frutescens(キダチトウガラシ)のクリームや膏薬については、慢性腰痛患者においてプラセボより良好な結果が得られた(RCT:3件、755例、エビデンスの質:中)。一方、急性腰痛患者におけるトウガラシクリームの有効性は明らかではなかった(RCT:1件、40例、エビデンスの質:低)。また、キダチトウガラシクリームの効果はホメオパシー軟膏と同等という報告もあったが、エビデンスの質が非常に低かった(RCT:1件、161例)。・Harpagophytum procumbens(デビルズクロー)については、ハルパゴシドとして50mgまたは100mg/日服用によりプラセボと比べ疼痛の短期的な改善効果が良好であり、鎮痛薬のレスキュー使用量を減少できる可能性が示唆された(RCT:2件、315例、エビデンスの質:低)。デビルズクローの効果はロフェコキシブ12.5mg/日と同程度という報告もあったが、エビデンスの質が非常に低かった(RCT:1件、88例)。・Salix alba(セイヨウシロヤナギの樹皮)については、サリシンとして120mgまたは240mg/日服用によりプラセボに比べ疼痛が短期的に改善し、鎮痛薬のレスキュー使用量が減少することが示唆された(RCT:2件、261例、エビデンスの質:中)。ロフェコキシブ12.5mg/日と相対的に同等という報告もあったが、エビデンスの質が非常に低かった(RCT:1件、228例)。また、アセチルサリチル酸の心保護的用量に対して、血小板血栓症への影響がわずかであった(RCT:1件、51例)。・Symphytum officinale L(ヒレハリソウ、コンフリー)については、エキス含有軟膏がプラセボより疼痛の短期的な改善が良好である(RCT:1件、120例、エビデンスの質:低)。・ラベンダーアロマオイル(精油)を用いた指圧は、非治療者と比べて疼痛の軽減、腰椎屈曲ならびに歩行時間の改善が示された(RCT:1件、61例、エビデンスの質:低)。・顕著な有害事象は、解析に含んだ試験においてみられなかった。

28024.

重症うつ病と双極性障害の関係:徳島大

 重症うつ病は、双極性障害(BD)へと診断が変わるリスク因子の可能性がある。また精神病性うつ病(PD)は、BDと一貫した関連が認められる。徳島大学の中村 公哉氏らは、重症うつ病を有し初回入院した患者の、BDのリスクと精神病性特徴を調べ、重症うつ病診断の安定性、およびPDと非PDとの違い、さらに電気痙攣療法(ECT)の効果について検討した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2014年12月22日号の掲載報告。 2001~2010年に、重症うつ病(ICD-10に基づく)で入院した、精神病症状あり/なしの患者について、後ろ向き評価で検討した。被験者は89例で、平均年齢は55.6(SD 13.9)歳であった。 主な結果は以下の通り。・フォローアップ評価75ヵ月の間に、患者11例(12.4%)がBDを発症した。そのうち9例は、入院後1年以内の発症であった。・BD発症と有意に関連していたのは、閾値下の軽躁症状のみであった。・うつ病エピソード数や身体疾患歴は、PD患者との比較において非PD患者で有意に多かった。一方でECTの実施は、非PD患者よりもPD患者で有意に多かった。・入院期間の長さと、入院からECT実施までの日数には、有意な関連が認められた。・閾値下の軽躁症状は、とくに抗うつ薬の服用に慎重な高齢患者において、BDの前駆症状や顕性フェノタイプの指標となりうる可能性があった。・重症うつ病において、しばしば非PDは身体疾患が続いて起こり、PDを有する患者よりも再発が多く、それが“プライマリな”障害となり、ECTを要する頻度が高いと思われた。・ECTは、精神病性特徴を問わず重症うつ病には有効であった。ECTは早期であればあるほど、治療アウトカムが良好となることが予想された。関連医療ニュース うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか  担当者へのご意見箱はこちら

28025.

肺炎入院歴は心血管疾患のリスク因子/JAMA

 肺炎による入院歴がある集団では、これがない集団に比べ心血管疾患(CVD)の発症率が、短期的および長期的にも高いことが、カナダ・オタワ大学のVicente F. Corrales-Medina氏らの検討で示された。65歳以上では、30日発症率が約4倍に達し、その後10年まで有意なリスクの増大がみられ、65歳未満でも2年目まで有意なリスク上昇が確認された。CVDの至適な予防戦略を確立するには、リスク因子の特性化が重要であり、感染症はCVDの短期的、長期的なリスク因子である可能性が指摘されている。JAMA誌2015年1月20日号掲載の報告。2つのコホート研究から肺炎のCVDリスクを評価 研究グループは、肺炎による入院と、CVDの短期的、長期的リスクの関連を検討するマッチ化コホート試験(matched-cohort study)を実施した(国立心肺血液研究所[NHLBI]、国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]、国立老化研究所[NIA]の助成による)。 Cardiovascular Health Study(CHS、5,888例、登録時年齢65歳以上、登録期間1989~1994年)と、Atherosclerosis Risk in Communities study(ARIC、1万5,792例、登録時年齢45~64歳、登録期間1987~1989年)の、2つの地域住民ベースの多施設共同観察的コホート研究のデータを使用した。フォローアップは2010年12月31日まで行われた。 個々の研究の参加者のうち肺炎で入院した患者を選出し、それぞれの研究の対照群と背景因子をマッチさせた。マッチング後10年間、肺炎群と対照群におけるCVDの発症状況を追跡した。人口統計学的因子、CVDのリスク因子、潜在性CVD、併存疾患、身体機能状態などで補正したハザード比(HR)を推算した。CVD(心筋梗塞、脳卒中、致死性の冠動脈心疾患)の発症を主要評価項目とした。30日発症率がCHSで約4倍、ARICでも2倍以上に CHSの1,773例[肺炎群:591例(平均年齢73.9歳、女性57.8%)、対照群:1,182例(72.6歳、65.8%)]、ARICの2,040例[680例(55.8歳、53.8%)、1,360例(55.4歳、56.8%)]が解析の対象となった。 CHSの肺炎群591例のうち、入院から10年の間に206例(34.85%)がCVDを発症した[心筋梗塞104例(50.5%)、脳卒中35例(17.0%)、致死性冠動脈心疾患67例(32.5%)]。対照群と比較した肺炎群のCVDリスクは、入院後1年までが最も高く(0~30日:HR 4.07、95%信頼区間[CI]:2.86~5.27/31~90日:2.94、2.18~3.70/91日~1年:2.10、1.59~2.60)、その後10年にわたり有意に高い状況が持続した(9~10年:1.86、1.18~2.55)。 ARICでは、肺炎群の680例のうち入院後10年間で112例(16.5%)がCVDを発症した(心筋梗塞:33例[29.5%]、脳卒中36例[32.1%]、致死性冠動脈心疾患:43例[38.4%])。2年目までは、対照群に比べ肺炎群でCVDリスクが有意に高い状態が続いた(0~30日:HR 2.38、95%CI:1.12~3.63/31~90日:2.40、1.23~3.47/91日~1年:2.19、1.20~3.19/1~2年:1.88、1.10~2.66)が、2年以降は有意な差はなくなった(9~10年:1.54、0.74~2.34)。 著者は、「肺炎による入院は短期的および長期的にCVDリスクを増大させており、肺炎はCVDのリスク因子である」と結論している。感染がCVDリスクを増大させる機序については、短期的なメカニズムに関する議論はいくつかあるが、長期的メカニズムはほとんどわかっていないという。

28026.

市中肺炎入院患者、ステロイド追加で早期回復/Lancet

 入院を要する市中肺炎患者の治療において、プレドニゾンの7日間投与による補助療法を行うと、臨床的安定の達成までの期間が有意に短縮することが、スイス・バーゼル大学病院のClaudine Angela Blum氏らの検討で示された。市中肺炎では、血中への炎症性サイトカインの過剰放出により肺機能障害が引き起こされるが、ステロイドは全身性の炎症過程を抑制し、さらに肺炎球菌性肺炎に対する効果も確認されている。一方、ステロイド補助療法のベネフィットに関する議論は1950年代から続いているが、最近の臨床試験の結果は相反するものだという。Lancet誌オンライン版2015年1月18日号掲載の報告。ステロイド追加の有用性をプラセボと比較 研究グループは、市中肺炎に対する短期的ステロイド療法の有用性を評価する多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(Swiss National Science Foundationなどの助成による)。対象は、年齢18歳以上、入院後24時間以内の市中肺炎患者であった。 被験者は、プレドニゾン50mg/日を7日間経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は臨床的安定までの期間(バイタルサインが24時間以上安定するまでの日数)とし、intention-to-treat(ITT)解析を行った。 臨床的安定は、体温37.8℃以下、心拍数100回/分以下、自発呼吸数24回/分以下、昇圧薬の投与なしで収縮期血圧90mmHg以上(高血圧患者の場合は100mmHg以上)、精神状態が発症前レベルに回復、経口摂取が可能、適正な酸素供給(PaO2≧60mmHgまたはパルスオキシメトリ≧90%)のすべてを満たす場合と定義した。臨床的安定までの期間が1.4日短縮 2009年12月1日~2014年5月21日に、スイスの7つの3次病院に785例(ITT集団)が登録され、ステロイド群に392例(年齢中央値74歳、男性61%)、プラセボ群には393例(73歳、63%)が割り付けられた。 臨床的安定までの期間中央値は、ステロイド群が3.0日と、プラセボ群の4.4日に比べ有意に短かった(ハザード比[HR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.15~1.50、p<0.0001)。 30日以内の肺炎関連合併症(急性呼吸促迫症候群、膿胸、肺炎の持続)の発現率は、ステロイド群が3%であり、プラセボ群の6%よりも低かったが、有意な差は認めなかった(オッズ比[OR]:0.49、95%CI:0.23~1.02、p=0.056)。 退院までの期間(6.0 vs. 7.0日、p=0.012)および抗菌薬静注投与期間(4.0 vs. 5.0日、p=0.011)はステロイド群で有意に短かったが、肺炎の再発や再入院、ICU入室、全死因死亡、抗菌薬治療期間などは両群間に差はなかった。 有害事象は、ステロイド群の24%、プラセボ群の16%に発現し、有意差が認められた(OR:1.77、95%CI:1.24~2.52、p=0.0020)。ステロイド群では、インスリン治療を要する高血糖の院内発症率が19%と、プラセボ群の11%に比し有意に高かった(OR:1.96、95%CI:1.31~2.93、p=0.0010)。他のステロイド投与に特徴的な有害事象はまれであり、プラセボ群との間に差を認めなかった。 著者は、「プレドニゾン7日間投与は、合併症を増加させずに臨床的安定を早期にもたらした」とまとめ、「この知見は患者の立場からも実際的な価値があり、入院費や有効性の決定要因としても重要である」と指摘している。なお、今回の結果をこれまでのエビデンスに加えてメタ解析を行ったところ、入院期間の有意な短縮が確認されたという。また、著者は「高血糖の発現は予期すべきであり、ステロイド禁忌についても考慮する必要がある」としている。

28032.

心血管疾患予防の地域介入40年、その効果は?/JAMA

 40年間にわたる地域への心血管疾患予防プログラムの継続的な介入により、継続しなかった地域と比較して、同期間の入院率および死亡率が低下したことが報告された。米国・フランクリン記念病院(メイン州)のN. Burgess Record氏らによる同州低所得地域フランクリン郡への介入継続観察研究の結果、示された。総合的な心血管リスク減少プログラムは、とくに地方の低所得地域では10年以上行われている例がほとんどなく、罹患率や死亡率へのリスク因子の改善効果が不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「同様のプログラム効果が他の米国地域(とくに過疎の地方で)、また世界的に普遍的に認められるのかについて、さらなる検討が必要だ」とまとめている。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告より。過疎の低所得地域への継続的なプログラム介入効果を観察研究 研究はメイン州フランクリン郡で1970年に開始され、同郡の住民2万2,444例を対象に40年間にわたる心血管疾患予防プログラムの効果を、他のメイン州15郡(以下、メイン州)の平均データと比較した。 ベースライン値は1960~1970年のデータから算出した。また、1970年時点の主な人口動態データは、平均人口密度がメイン州31.3人/m2、フランクリン郡11.7人/m2、住民年齢中央値は29.1歳と26.8歳、収入中央値は8,217ドルと7,993ドルで、住民の99%が白人であった。 プログラムは、健康システム(インフラ整備、医療アクセス、質)、リスク因子(高血圧、コレステロール、糖尿病)、健康行動(喫煙、食事、身体活動)をキーエレメントに、各項目をターゲットとしたものが複数の自治体および地方病院、医師の後援の下で順次、導入実施されていた。 主要評価項目は、中央値でみた人口動態状況、高血圧および脂質異常症の発見と治療およびコントロール状況、喫煙をやめた人の割合、所得中央値補正後の1994~2006年の入院率、所得および年齢補正後の1970~2010年の死亡率であった。健康指標は改善、入院率、死亡率は他の地域平均と比べ有意に低下 2010年時点で、平均人口密度はメイン州43.1人/m2、フランクリン郡18.1人/m2、住民年齢中央値は40.7歳と43.4歳、収入中央値は4万6,541ドルと3万9,628ドルであった。白人住民の割合は95.2%と97.2%であった。 結果、フランクリン郡では40年間で順次、心血管疾患リスク因子をターゲットとしたプログラムが導入されたことで、健康指標は改善されていた。高血圧がコントロールされていた人(プログラム導入1974年)は、1975年18.3%から1978年43.0%へと24.7%増大し、コレステロール上昇がコントロールされていた人(導入1986年)は、1986年0.4%から2010年は28.9%と28.5%増大していた。 禁煙率(1988年導入)は、48.5%(1994~95年)から69.5%(1996~2000年)に改善し、州平均(58%から61%に改善)の改善よりも有意に良好であった(観察値-期待値[O-E]:11.3%、95%信頼区間[CI]:5.5~17.7%、p<0.001)。なお、2000年以降は、メイン州の禁煙率が上昇し両者間の差はなくなっている。 フランクリン郡1人当たりの入院件数は、1994~2006年の評価期間において期待値よりも少なかった(退院O-E:-17件/住民1,000人、95%CI:-20.1~-13.9、p<0.001)。 補正後死亡率は、フランクリン郡は唯一同州で一貫して予測値よりも少なく、1970~1989年の死亡O-Eは-60.4件/10万(p<0.001)、1990~2010年の同-41.6件/10万(p=0.005)であった。

28033.

学校での自殺予防介入は有効/Lancet

 学校ベースの自殺防止プログラムにより、生徒の自殺企図や重大な自殺念慮を減らすことができたことを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のDanuta Wasserman氏らが、多施設共同集団無作為化対照試験SEYLEの結果、報告した。若者の自殺は深刻な公衆衛生問題となっており、根拠に基づく予防プログラムへの期待が高まっている。今回の結果について著者は、「学校でのユニバーサルな自殺予防介入が有益であることが実証された」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年1月8日号掲載の報告より。QPR、YAM、ProfScreenの3つの介入群と対照群について検討 研究グループが行ったSEYLE(Saving and Empowering Young Lives in Europe)研究は、学校ベースの自殺行動予防介入の有効性について検討したもので、2009年11月1日~2010年12月14日の間に、欧州168校から年齢中央値15歳(IQR:14~15歳)、1万1,110例の生徒を集めて行われた。 学校単位で無作為に、3つの介入群の1つまたは対照群に割り付けた。各介入群には、(1)教師など学校関係者への質問・説得・照会(Question、Persuade、and Refer:QPR)のゲートキーパートレーニング、(2)生徒を対象とした気付きのためのメンタルプログラム(Youth Aware of Mental Health Programme:YAM)、(3)専門家によるリスクがある生徒のスクリーニング(ProfScreen)がそれぞれ行われた。 主要評価項目は、フォローアップ3ヵ月、12ヵ月間の自殺企図件数とした。分析には、これまでに自殺を企図した生徒や研究開始前2週間以内に重大な自殺念慮が認められた生徒を除き、全生徒のデータを含んで行われた。生徒を対象としたYAMプログラム群で有意な効果 被験者は、QPR群に40校(2,692例)、YAM群に45校(2,721例)、ProfScreen群に43校(2,764例)、対照群に40校(2,933例)が無作為に割り付けられた。 結果、フォローアップ3ヵ月時点では介入群と対照群に有意差は認められなかった。 12ヵ月時点ではYAM群で、対照群と比較して自殺企図発生(オッズ比[OR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.24~0.85、p=0.014)、および重大な自殺念慮発生(同:0.50、0.27~0.92、p=0.025)の有意な低下が認められた。それぞれの発生は、自殺企図がYAM群14件(0.70%)、対照群34件(1.51%)、重大な自殺念慮は15件(0.75%)と31件(1.37%)であった。 なお試験期間中、自殺に至った生徒はいずれの群でもいなかった。

28034.

NSAIDsは大腸がんを予防しうるか

 以前より、NSAIDsの使用が大腸がんのリスクを低減するという実質的なエビデンスがあるが、どのようなサブグループで化学的予防効果が副作用のリスクを上回るかについては特定されていない。米国・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのXiaoliang Wang氏らは、VITAL試験のコホートを対象に、大腸がんのあらゆるリスク因子とNSAIDs使用との関連性を調べた。その結果、NSAIDsの高頻度・長期投与と大腸がんリスクとの関連性について、サブグループ間の有意差は認められなかったとしたうえで、「NSAIDsは他の因子に大きく影響されることなく、大腸がん予防において全体的に有益な役割を持つ」と結論付けた。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2015年1月22日号掲載の報告。 2000年から2002年の間に、計7万3,458例(50~76歳)がすべてのアンケートに回答した。そのうち674例が2010年までの間に大腸がんを発症した。主な結果は以下の通り。・層別解析において、いずれの種類のNSAIDsであっても高頻度・長期投与(週4日以上を4年以上)は、性別、BMI、身体活動レベル、喫煙、飲酒、スクリーニングや食事に関する因子で層別化したすべてのサブグループにおいて、統計的に有意な大腸がんリスクの減少に関与していた。・より強い関連性を示した群は、男性、肥満、大量飲酒者であった。しかしながら、これら3群ともその交互作用はその他の群との比較において統計学的な有意差に至らなかった。・この関連性は、大腸がんリスクの高スコア群(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.49~0.79)と低スコア群(ハザード比:0.61、95%信頼区間:0.42~0.88)において、ほぼ同じであった。・さらに、がんの部位や病期によって影響が異なるかを検討した。その結果、NSAIDsの使用は近位部vs遠位部の大腸がん(群間差のp=0.06)、もしくは遠隔転移病期vs局所病期(同p=0.04)のいずれにおいても大幅なリスク低減に関連していた。

28035.

抗精神病薬は脳に委縮などのダメージを与えるのか

 最近のデータで、抗精神病薬治療と統合失調症患者における皮質灰白質減少との関連が示され、抗精神病薬の脳の構造・機能へのダメージに関する懸念が生じている。しかし、統合失調症患者個人の皮質機能を直接測定し、抗精神病薬に関連する灰白質の減少を示した研究はこれまで行われていなかった。米国・カリフォルニア大学のTyler A. Lesh氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象としたケースコントロール横断研究を実施し、抗精神病薬が脳の構造と機能に及ぼす影響を検討した。その結果、抗精神病薬による治療を行った患者は、行わなかった患者に比べ前頭葉皮質の有意な菲薄化が認められたが、前頭葉機能の活性亢進ならびに行動パフォーマンスの上昇がみられたことを報告。有害な影響ばかりではなく認知機能の改善に働く可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。抗精神病薬は脳委縮などのダメージと関連したが脳機能の活性とも関連した 研究グループは、初回エピソード統合失調症患者における抗精神薬の脳構造および脳機能に及ぼす影響について、皮質厚測定ならびに事象関連機能的MRIによるAXバージョンContinuous Performance Task(AX-CPT)を用いて検討した。2004年11月から2012年7月までに、カリフォルニア大学デービス校のImaging Research Centerにてケースコントロールによる横断的調査を実施。被験者は、初回エピソード統合失調症に特化した外来診療部Early Diagnosis and Preventive Treatment Clinicより収集した。 抗精神病薬を投与している初回エピソード統合失調症患者(抗精神病薬群)(23例)、抗精神病薬を投与していない患者(非抗精神病薬群)(22例)、健常対照群(37例)に対し、1.5-Tスキャナーを使用した機能的MRIを実施した。行動パフォーマンスを測定し(タスク実施の正確性、反応時間、d'-contextスコアによる)、またVoxelwise統計的パラメトリックマップによりAX-CPT実施中の脳機能活性の差異を検査し、皮質厚のvertexwiseマップにより全脳域にわたる皮質厚の差異を検査した。 抗精神薬の脳に及ぼすダメージについて検討した主な結果は以下の通り。・抗精神病薬群では、前頭葉(平均減少値[MR]:0.27mm、p<0.001)、側頭葉(同:0.34mm、p=0.02)、頭頂部(同:0.21mm、p=0.001)、後頭部(同:0.24mm、p=0.001)の大脳皮質各部において、対照群に比べ有意な皮質の菲薄化が確認された。・非抗精神病薬群と対照群の間で、クラスタ補正後の皮質厚に有意差は認められなかった。・抗精神病薬群は非抗精神病薬群と比べ、背外側前頭前皮質(DLPFC)(MR:0.26mm、p=0.001)、側頭皮質(同:0.33mm、p=0.047)において皮質の菲薄化が認められた。・抗精神病薬群、非抗精神病薬群とも、対照群と比べAX-CPT実施中DLPFC活性の減少が認められた(対抗精神病薬群p=0.02、対非抗精神病薬群p<0.001)。・ただし、抗精神病薬群は非抗精神病薬群と比べDLPFCの活性が高く(p=0.02)、行動パフォーマンスも高かった(p=0.02)。・抗精神病薬治療と脳の構造面、機能面、そして統合失調症に繰り返し認められる行動面での欠陥との関係が明らかになった。・抗精神病薬による短期治療は前頭葉の菲薄化と関連していたが、認知機能の改善および前頭葉の機能活性との関連も認められた。・本知見は、抗精神病薬の脳に及ぼす影響に関して増えている研究論文に重要な流れを与え、脳の神経解剖学的変化が脳機能に対し有害な影響を与える可能性があるという解釈への警告を示唆するものであった。関連医療ニュース 若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに 抗精神病薬が脳容積の減少に関与か 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか  担当者へのご意見箱はこちら

28036.

低リスクHER2陽性乳がんの術後補助化学療法(解説:笹田 伸介 氏)-306

 化学療法+トラスツズマブはHER2陽性乳がんの再発を抑制し、全生存期間を延長するが、これらの臨床試験は腫瘍径が1cmあるいは2cmを超えるものが対象となっており、1cm以下を対象としたランダム化比較試験は行われていない。そのため、「乳診療ガイドライン2013年版」、「NCCNガイドライン2014年版」では0.5cm以下(T1a)のN0症例には術後補助化学療法は推奨されず、0.6~1.0cm(T1b)には考慮するとされている。 後ろ向き解析でMD Anderson Cancer Centerより、1cm以下、N0のHER2陽性乳がん98例(術後化学療法なし)の5年無再発生存率は77.1%と報告されている1)。NCCNデータベースでは、T1bN0症例の5年IDFS(invasive disease free survival)はホルモン受容体および補助療法の有無により68~94%と報告されている2)。 この試験は、腫瘍径3cm以下かつリンパ節転移陰性のHER2陽性乳がん406例(うち1cm以下49.5%)を対象に、パクリタキセルとトラスツズマブによる治療を単アームで検証している。結果は3年IDFSが98.7%であり、有効と判断された。腫瘍径(1cm以下と1cm超)、ホルモン受容体(陽性と陰性)により効果に差は認めなかった。有害事象はGrade2以上の末梢神経障害が13.1%、うっ血性心不全は0.5%に認められたが、トラスツズマブ中止により回復した。 腫瘍径1cmを超える症例が50%登録されていることを考慮すると良好な結果であるが、問題点は比較試験でないこと、対象が3cmまで含まれており従来の試験と重複があること、観察期間が4年と短いことである。従来のアンスラサイクリン+タキサンを中心とする標準治療を塗り替える程の試験ではないが、より毒性の軽い治療としてのオプションになりうる。全症例とも10年までの観察が予定されており、長期予後を確認する必要がある。

28037.

ペコロスの母に会いに行く【認知症】

今回のキーワード社会脳社会的認知進化心理学・進化精神医学DSM-5デフォルトモードネットワークヒューマンセンタードケア「認知症の人はなんで無邪気なの?」 皆さんは、認知症になった人が無邪気になっていくのを不思議に思ったことはありませんか? 単にもの忘れをするだけでなく、ちょっとずつ無邪気に幼くなっていきます。 今回は、その原因とかかわり方のコツを、進化心理学・進化精神医学のメインテーマである社会脳(社会的認知)という視点から、いっしょに考えていきましょう。また、2013年にDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引第5版)への改定に伴い、認知症の診断基準が変わりました。その内容とその理由も解説します。 取り上げるのは、2013年の映画「ペコロスの母に会いに行く」です。ペコロスとは、小さい西洋玉ねぎのことで、この映画の原作者である主人公の頭をユーモラスに表した愛称です。彼の母親が認知症を発症してからの介護生活の様子が、ありのままにそしてほのぼのと描かれています。もの忘れ―学習と記憶の障害 主人公の男やもめのゆういちは、認知症の母のみつえの介護をしながら、息子のまさきと3人で暮らしています。日常生活でゆういちとみつえの間で交わされる会話のワンシーンをみてみましょう。ゆういちが「また!母ちゃん!」(電話の)受話器ば外しっぱなしにしとったらいかんて言うたろうが」「なんかあった時に連絡のつかんやろが」と注意します。すると、みつえは「また親ばわるもん(悪者)にする、もう」と言い返します。 このやり取りが、日々の挨拶のように繰り返されます。みつえは、電話の受話器を戻すよう言われた体験を丸ごと忘れており、忘れたことに自覚がないのです。つまり、「忘れたことを忘れている」のです(メタ記憶の障害)。 これは、典型的な認知症のもの忘れの症状です(健忘)。この記憶障害は、従来の診断基準では、全ての認知症において絶対的な項目でした。しかし、新しい診断基準(DSM-5)では、アルツハイマー病を除く認知症において、6項目の診断基準の中の「学習と記憶の障害」の1項目として格下げされています。 その理由として、他の3つの認知症の特徴があげられます(表1)。1つ目として、脳血管性認知症はまだら認知症であり、必ずしも記憶障害が目立たないからです。2つ目として、レビー小体型認知症は認知症状が動揺性であり、記憶障害が固定されていないからです。3つ目はとして、前頭側頭型認知症は前頭葉症状が主であり、記憶障害が初期に目立たないからです。 表1 それぞれの認知症の記憶障害の特徴   アルツハイマー病 脳血管性認知症 レビー小体型認知症 前頭側頭型認知症 記憶生涯 必ず目立つ 必ずしも目立たず 目立ったり目立たなかったりと揺れ動く 初期に目立たず 言い間違え、言葉数が少ない―言語の障害 認知症の進行に伴い、自宅介護が難しくなったため、ゆういちはみつえをグループホーム(介護施設)に入所させます。ゆういちが訊ねてきた時のワンシーンです。みつえは「ゆういち、どこにおったん?」「フリーターの仕事や(か)?」と訊ねます。ゆういちはすかさず「フリーライター!」と言い返します。これは言葉の言い間違え(音韻性錯語)です。このようなボケとツッコミのユーモアがこの映画には溢れています。その後、みつえは問いかけに対して言葉が出なかったり言葉数が少なくなっていきますが(無言症)、そんなみつえをゆういちは温かく見守ります。 これらの言葉の症状も、認知症の診断基準の1つです(言語の障害)。従来の診断基準の失語に当たります。顔が分からない― 知覚―運動の障害 ゆういちがグループホームからみつえを散歩に連れ出そうとするシーン。みつえは「この盗人(ぬすっと)、嘘つき!」「ああっ!悪者(わるもん)がおる。誰か誰かー!」と叫び出します。すぐにゆういちは「母ちゃん、ほら!」とゆういちが、帽子をとって薄毛の頭を目の前に向けると、「アハッ、なっ、ゆういちやったとか、あ~ハハハッ」と薄毛の頭を撫で回し、「えいえいえい」と叩き、「はげちゃび~ん!」と無邪気に騒ぎます(タイトル画像)。薄毛を確認してようやく息子のゆういちであると認識しています。しかし、ゆういちが帽子をかぶると、すぐに「誰ね?」と言い、息子の顔が分からなくなっています(相貌失認)。 みつえが大正琴を弾くシーン。「どげんやったかいな?ハハハッ」と弾き方を忘れたことを笑い飛ばしています。本来、長年体に染みついていた動きはなかなか忘れないものです。楽器の弾き方を忘れるのは症状とまでは言えません。しかし、その後にみつえは、読めない字を書くようになります。字が書けなくなるのは、認知症の症状と言えます(構成失書)。着替えや歯磨きなどの日常生活の動作ができなくなると(更衣失行、観念失行)、介護がさらに必要になってきます。 このようにものごとが認識できなくなる症状と、ものや体の動かし方が分からなくなる症状を合わせたものが、新しい認知症の診断基準の1つになっています(知覚―運動の障害)。これは、従来の診断基準の失認と失行に当たります。段取りが立てられない―実行機能障害 みつえがまだ家にいる時のワンシーン。ゆういちとまさきは夕食に弁当を買って食べています。みつえが料理できなくなっていることを間接的に描いています。料理は、献立を考え多くの段取りを経て作る必要があります。 このように、段取りを立てて計画的に行動できなくなる症状も、認知症の診断基準の1つです(実行機能障害)。これは従来と同じ診断基準です。実行機能とは、意志→計画→実行→評価(フィードバック)という一連の手順を踏んで、ものごとを実行していく脳の働きです。気付きにくい―複雑性注意の障害 さきほどの電話の受話器を戻すことをみつえが忘れているワンシーンでは、電話のそばに「受話器ば絶対にもどすこと」というメモが貼られています。しかし、みつえは、毎回、電話の対応でいっぱいいっぱいになっており、そのメモに気付かないのです。さきほどのゆういちの顔が分からなかったシーンでは、ゆういちはみつえの背後から「母ちゃん」と声をかけています。そして、みつえがゆういちを確認する前に、車イスを後ろに引いています。みつえは、目の前に見えていないゆういちの声に注意を向けることができずに混乱しています。また、みつえが夜遅くまでゆういちの帰りを駐車場で待っているワンシーンでは、ゆういちの車が間近まで迫ってきても、ゆういちを出迎える気持ちでいっぱいであるため、全く危機意識がありません。「ゆういち、お帰り~」と笑顔で迎えます。ゆういちは「母親ばひいたらシャレならんやろがっ!」「あやうくひいてしまうとこやった」と肝を冷やします。 これは、一度に複数の対象に注意を向ける力が落ちて、ものごとの変化や危機に気付きにくい症状で、新しく追加された認知症の診断基準です(複雑性注意の障害)。無邪気になる―社会的認知の障害 みつえが家で留守番をしている時に電話がかかってくるワンシーン。みつえが電話に答えます。「えっ?オレって誰ね?」「アハハッ、まさき(孫)か?」「まさき、どげんしとると?」「こっちには帰ってこんとね?」「ええっ?事故ば起こしたけん帰れんて!?」「示談?」「金ば払えば良かて」「そげん大きな金、持っとらんやろ?」「それ、ばあちゃんが払うてやる」と涙ぐみます。これは、おれおれ詐欺(振り込め詐欺)に引っかかっている典型的なパターンです。電話の相手を信用し切ってしまい、言われたことにあっさりと応じています。相手から出し抜かれないようにしようと相手の気持ちを推し量る警戒心(心の理論)が鈍くなり、だまされやすくなっています。 さきほどのゆういちの頭をみつえが撫で回し叩くシーン。ゆういちが痛がっているのになかなか叩くのを止めず、「はげちゃび~ん!」とふざけています。微笑ましく見える一方、見方を変えれば、みつえはゆういちの気持ちを感じ取ること(共感、情動認知)が弱くなり、無神経で無遠慮で一方的になっています。認知症が進むにつれて、表情を読み取る能力(表情認知)も弱くなり、同時に本人も徐々に無表情になっていきます。 みつえは「父ちゃん(夫)もたかよ(子どもの時に亡くなった妹)も死んでからの方がようウチに会いに来てくれたとよ」と言います。ゆういちが「死んでるって知っとっと?」と聞くと、「何ば言うとるね!父ちゃんもたかよも死んどろうもん」と笑顔で答えます。過去にみつえの脳に紡(つむ)がれた人生の「模様」が映る記憶の「織物」が解(ほど)けていき、現在の現実世界に混じり合っています。相手(社会)との共通の時間感覚や論理性が揺らぎ、自分を適切に振り返ること(自己認識、メタ認知)が難しくなっています。 みつえは、だまされやすくなり、相手の気持ちが分かりにくくなり、自分を振り返りにくくなっています。しかし、裏を返せば、素直で天真爛漫なお人好し、つまり無邪気になっていると言えます。 これらは、人とうまくやっていくための社会的な能力が低くなっていく症状で、新しく追加された認知症の診断基準です(社会的認知の障害)。従来は「理解力の低下」という曖昧な用語を使っていました。社会的認知とは、精神医学用語で、相手の気持ちを察して相手(社会)に対して適切に振る舞うという意味で、社会的能力とも呼ばれます(表2)。日常用語の社会的認知は「広く世間(社会)に知れ渡っている(認められている)」という意味ですので、この違いに注意が必要です。 表2 社会的認知   意味 心の理論 相手の気持ちを推し量る 共感性 相手の気持ちを感じ取る 表情認知 相手の表情を読み取る 社会性 相手(社会)にうまく合わせる 理性的抑制 相手(社会)のために我慢する 自己認識 自分(の気持ち)を振り返る(推し量る) 私たちはなぜ無邪気ではないのか?―新しい診断基準(DSM-5)のポイント ゆういちが、営業の仕事をサボって、出先の公園で趣味のギターの練習をしている時に、上司から電話がかかってくるシーン。何をしているかと聞かれて、「せっかくこっちに来たけんですね、いくつか広告ば取ろうと思って何件も回っとっとですよ」「えっ、どこばどげん回っとかってですか?」「いや~あの何件も回り過ぎてよう確認しとらんですね」とうまく取り繕うとしています。また、ゆういちは、みつえを自宅で介護することに限界を感じている時、施設に入所させるか思い悩んでいます。さらに、ゆういちは、認知症のみつえに冗談を交えて接しています。 このようなその場をしのぐウソ、気遣いによる苦悩、そして場を和ませるユーモアなどは、私たちがより良い人間関係を築き、立ち振る舞おうとするズルさであり賢さでもあります(社会的認知)。これは、「人間性」「人間らしさ」そのものです。これが、社会生活を送る私たちが決して無邪気ではない答えでもあります。 対照的に、みつえは無邪気です。その無邪気さとは、ウソもつけないですが、先読みや裏読みもできず、お世辞や冗談も思い付かず、悩みや葛藤がなくなるということです。 新しい診断基準では、認知症の中心的な症状のとらえ方が、従来の記憶障害から、社会的認知の障害へとシフトしていると言えます。なぜなら、そもそも認知症にまつわる困難は、物忘れそのものよりも、周囲の人の気持ちや自分の状況を分からなくなることだからです。 表3 認知症の診断基準 DSM-IV-TR DSM-5 映画のエピソード例 記憶障害 →学習と記憶の障害 電話の受話器を戻し忘れることを繰り返す 失語 →言語の障害 言葉の言い間違え、言葉数が少なくなる 失認 知覚―運動の障害 薄毛を見ないとゆういちの顔が分からなくなる字の書き方が分からなくなる 失行 実行機能障害 料理ができない ― 複雑性注意の障害 すぐそばのメモや車の動きに気付かない ― 社会的認知の障害 振り込め詐欺にだまされるゆういちが痛がっている様子が分からないすでに死んでいる夫や妹に会えると考えている 認知症の行動・心理症状(BPSD) これまで紹介してきた6項目の診断基準は、認知症状(中核症状)と呼ばれます。ここから二次的に現れる症状は、認知症の行動・心理症状(BPSD、周辺症状)と呼ばれます。これらをいくつか見てみましょう。 (1)幻覚 みつえがゆういちに「なあ、さっきたかよ(子どもの時に亡くなった妹)が来て、天草にいっしょに行こうて言うてくれたとばい」「そのあと父ちゃん(すでに亡くなった夫)が来て」「ウチの手ばずーとしっかりと握ってくれらしたと」「ごめんな~ごめんな~ヘヘヘヘッ」と楽しげにのろけます。みつえは見えないものが見えていることになります(幻覚)。この症状は、過去の記憶と現在の現実世界が区別しにくくなり(社会的認知の障害)、記憶を現実のものと認識し知覚してしまうことで起こります。 ちなみに、東北地方に伝わる「座敷わらし」は、認知症の幻覚、特にレビー小体型認知症の「幻の同居人(小人幻視)」の症状である可能性があります。「座敷わらしが出てくるとその家は栄えて、いなくなるとその家は傾き落ちぶれる」という言い伝えは、裏を返せば、経済的に恵まれている家は、認知症の人を養う余裕があり、結果的にその認知症の人が座敷わらし(幻覚)を見ることになります。逆に、貧しい家は、認知症の人を養う余裕がなく、座敷わらし(幻覚)を見てしまう認知症の人がいないということです。つまり、正確には「座敷わらしは、栄えている家には出てくるが、落ちぶれた家には出てこない」ということです。 (2)妄想 さきほどの電話の受話器の戻し忘れのシーンで、みつえは「また親ばわるもん(悪者)にする、もう」と言い返しています。ここから分かることは、みつえは自分に非があるという認識ができず(社会的認知の障害)、叱られた理由の辻褄を合わせようとして(合理化)、「息子が親を悪く言うようになった」とひがみっぽくなっています(被害念慮)。 さらに、ひがみっぽさから、家族からいじめられていると思い込むことがあります(被害妄想)。例えば、お金をどこかに隠した後、隠したこと自体を忘れてしまった場合、お金がないことに気付くと「(家族の誰かに)お金を盗られた」という思い込みに発展します(もの盗られ妄想)。 (3)誤認 みつえは、ちいちゃん(すでに亡くなった幼馴染み)に書いた手紙の返事が来ないと郵便配達員にたずねた過去を、グループホームで思い出しているシーン。その直後にやって来たまさき(孫)を見て、「ちょっと待っとって、郵便屋さん」「書いてますけん」と言います。これは、過去の記憶と現在の現実が区別しにくくなることに加えて(社会的認知の障害)、孫の顔の認識ができなくなっていることで(知覚―運動の障害)、目の前にいる孫を郵便配達員と人違いしています(人物誤認)。 また、グループホームの別の認知症の女性は、ゆういちの薄毛を見て、女学校時代に憧れだった教師と人違いしています。 (4)逸脱行動、感情失禁 入所中の認知症の男性が、若い女性スタッフの胸を次々と触るシーンがあります。ゆういちは思わず「あの子も触られるっとですか?」と思わずうらやましそうに言ってしまいます。これは、ルールを守るために欲求を抑える心の働き(理性的抑制)が弱まっていることで(社会的認知の障害)、性的にみだらになってしまう症状です(性的逸脱行動)。その後、この男性は叱られますが、感情を抑える心の働き(理性的抑制)が弱いことで、簡単に泣き出してもいます(感情失禁)。 社会的認知の障害はなぜ目立つのか? 「認知症の人はなんで無邪気なの?」という最初の疑問への答えは、これまで紹介してきた社会的認知の障害による症状が出てくるからであると言えます。それでは、そもそもなぜ社会的認知の障害は目立つのでしょか? このさらなる疑問を、進化心理学・進化精神医学の視点で探ってみましょう。 人間の脳において、意識的な活動のエネルギーは5%しか消費されていません。修復と維持に20%が消費されます。そして、実は残りの75%は、無意識的な活動のエネルギーに消費されていることが最近の研究で分かってきました(デフォルトモードネットワーク)。この脳活動は、何もせずに頭を働かせていないと高まり、課題などで意識的に頭を働かせると低まります。それにしても、あまりにもエネルギーを使い過ぎているようにも思えるこの無意識的な脳活動とは一体何でしょうか? それは、はっきりしたことはまだ解明されていませんが、ぼんやりと思い浮かべること(記憶の検索)、自分がいつどこにいるかなどの自分の状況を把握すること(見当識)、自分を振り返ること(自己認識)などの活動が考えらえています。これは、ちょうど世界(相手、社会)に対して自分をうまく関係付け、位置づけていくための高度な脳活動です。さらには、社会的認知につながる能力というふうにも考えられます。 例えるなら、脳という「コンピュータ」は、世界(相手、社会)という「キーボードタッチ」や新奇な状況という「コンピュータウィルス」への察知のために、脳活動全体の75%の「電力」を使い、常に「待機状態」になっているということです。そして、この「待機状態」の脳活動は、最も「電力」が費やされて動かされているため、いち早く「故障」しやすいということが考えられます。実際に、この脳活動の部位は、アルツハイマー病で脳血流が低下する部分にほぼ一致しています。これが、「認知症ではなぜ社会的認知の障害が目立つのか?」という疑問への答えです。実行機能の正体は? 実行機能障害は、認知症のもともとある診断基準の1つであるとさきほどご紹介しました。実は、この実行機能は、社会的認知につながっていると言えます。これはどういうことでしょうか? 社会的認知(社会脳)の進化の流れを説明します。その出発点は、原始の時代、私たちの祖先が、競争と協力をうまく使い分けるため、相手の心の視点に立つ能力を得たことです(心の理論)。すると、自分を離れて外から自分自身を見る視点が得られます(自己認識)。これは、自分は、相手を見ていると同時に相手から見られているという2つの視点に立つことでもあります(メタ認知)。さらには、同時並行的にものごとを考え記憶することができるようになります(ワーキングメモリー、作動記憶)。 複数の視点(メタ認知)を持つことで、連続的な時間軸の中で、過去・現在・未来を別々の時間帯(視点)として認識できるようにもなります。だからこそ、過去の振り返りを現在に行い、未来に生かすことができます。こうして、計画を立ててものごとをうまく成し遂げることができるようになるのです(実行機能)。 実行機能は社会的認知がつながっているという説明を端的にすると、社会的認知が相手(人)の心に視点が置かれているのに対して、実行機能は時間軸に視点が置かれているというだけの違いであるということです。複雑性注意の正体は? 複雑性注意の障害は、認知症の新しい診断基準の1つであるとさきほどご紹介しました。実は、この複雑性注意も、社会的認知につながっていると言えます。これはどういうことでしょうか? それは、社会的認知を源とするさきほどの同時並行的にものごとを考え記憶すること(ワーキングメモリー)とは、一度に複数の注意を向けることでもあるということです(複雑性注意)。いわゆる「ながら行動」です。 その「メモリー容量」は、数字なら約7個、文字なら約6個、単語なら約5個であることが分かっています(マジカルナンバー7±2)。この数は、注意(認知)し行動する内容の複雑さによって変わってきます。例えば、食事会で皆がいっしょに話せる人数は4人が限界ではないでしょうか? 5人以上だと、自然と4人以下の少人数に分かれていきます。また、会議での積極的な発言者は4、5人までが一般的ではないでしょうか? 残りの人たちは、「観客」と化していることが多いです。なぜなら、これが人間の脳の「メモリー容量」の限界だからです。それ以上の人数の人たちがそれぞれ違う発言をする場合、多くの人が混乱してストレスになるからです。それをみんな無意識に理解していると言えます。だからでしょうか? 暗証番号は、皆が余裕を持って覚えられる4桁が通常です。クレジットカード番号も4桁ごとに分けられています。 複雑性注意は社会的認知につながっているという説明を端的にすると、社会的認知が認知の質に力点が置かれているのに対して、複雑性注意は注意(認知)の量(数)に力点が置かれているというだけの違いであるということです。なぜ良い思い出の方が残りやすいのか? みつえは、亡くなった夫が現れたと楽しげにのろけています。しかし、かつてはその夫は酒癖が悪く、みつえは大変に苦労していたのでした。良い思い出ばかりを思い出し、悪い思い出は忘れてしまっているようです。なぜ良い思い出の方が残りやすいのでしょうか? 一般的にも、これは「記憶美人」と呼ばれます。 その理由は、悪い思い出は、社会的認知に関わる記憶が多いからであることが考えられます。例えば、人間関係においての苦労や後悔などです。一方、良い思い出は、より原始的な欲求に関わる記憶なので、比較的残りやすいことが考えられます。例えば、満足や愛情(愛着)などです(ドパミン系)。 認知症で悪い思い出は忘れてしまうとは、まさに「邪気」(悪意、悪感情)がなくなり、無邪気になるということです。社会的認知から考える認知症のリハビリテーションは? 認知症の問題が単なる記憶の問題だけではないことを知った今、単に記憶力のトレーニングをしても効果は限られていることに気付きます。ここからは、社会的認知を踏まえて、認知症のリハビリテーションを3つご紹介しましょう。それは、役割を担うこと、自尊心を保つこと、配慮することです(表4)。役割を担う (1)お年寄りはなぜ昔話をしたがるのか?―回想法 ゆういちがみつえに注意するシーン。ゆういちが「よかね、セールスやら来たら追い払わないかんばい」「話しやら聞かんでよかけんね」と言うと、みつえは「分かっとるて」「分かっとらんけん言いよったい」「あんましわめくと夜声八丁(夜の声が八丁先まで響く妖怪)が来っぞー!」と、子どもの時のゆういちに接しているように脅します。ゆういちは「こん頃の事ば忘れて昔の事ばっか言うとさね」と嘆いています。 認知症のあるなしにかかわらず、お年寄りは昔話をよくします。もちろん認知機能の低下により、最近のもの覚えが悪くなり(短期記憶の障害)、比較的残っている昔の思い出を代わりに話していると説明することはできます(長期記憶の保持)。しかし、それだけでしょうか? むしろ、多くのお年寄りはあえて昔話をしており、この現象には普遍性がありそうです。長期記憶が保持されることに意味があるのではないかということです。ここから考えられることとして、お年寄りが昔話をすることで心の健康がより保たれる可能性があります。この理由を進化心理学的に考えてみましょう。 私たちの祖先が言葉を話すようになった20万年前からの原始の時代、文字はまだありませんでした。文字が発明されたのはたかだか数千年前です。ましてや、現代のようなインターネットもありません。そんな中、私たちの祖先は、共同体の生存の確率を高めるため、遠い昔に起こった自然災害や部族間の戦争の記憶を、生きる知恵や戒めとして次世代に語り継ぎました。一部は、伝説や神話に形を変えたでしょう。このような言い伝えを好む遺伝子を持つ種の末裔が私たちです。そして、生き字引としての語り部の役割を担ったのが、経験豊富なお年寄りだったのではないでしょうか? そういうお年寄りは、今でも発展途上国などの未開の地では、長老として敬(うやま)われています。つまり、お年寄りが昔話をするのを好むのは、遺伝子にプログラムされている可能性があるということです。この遺伝子によって、共同体の子孫の生存率(包括適応度)は高められたのでしょう。 現代の高度な情報化社会では、お年寄りが昔話をする必要はなくなってしまいました。しかし、お年寄りが昔話をしようとする原始の時代からの心理は残ったままです。つまり、進化論的に考えれば、原始の時代の環境に適応していた心身に近付けるため、私たちが運動をして心身の健康を保っているのと同じように、お年寄り、特に認知症の人に昔話をあえてしてもらうことで、心の健康をより保つことができるということです(回想法、思い出ノート)。 (2)お年寄りはなぜ孫を見たいのか?―おばあちゃん仮説 みつえは、認知症が進む前、孫のまさきをよく気にかけています。祖父母が孫の幸せを願うのは普遍性があり、当たり前であると皆さんは思うでしょう。さらには、特に祖母が、母親を支えて孫を見ることで、心の健康が保たれるという研究仮説があります。それは、「おばあちゃん仮説」「祖母効果」と呼ばれています。 そもそもほとんどの動物は、繁殖が終わる年齢と寿命はだいたい一致しています。つまり、繁殖力がなくなった時が寿命の尽きる時です。しかし、私たち人間の女性は違います。50歳前後で閉経を迎えて繁殖力がなくなった女性が長生きすることには進化論的な意味があるということです。 その意味とは、1つには、50歳以上で出産しなくなるのは、子どもの生存率を下げない理由があるということです。たとえば、50歳以上の高齢出産では母子ともに死亡するリスクが高まります。すると、すでに生まれている子どもたちの生存が危うくなります。たとえ出産が成功しても、その子どもがぎりぎり独り立ちできる10歳になるまでに、子育てをする母親が当時の寿命(60歳くらい?)を迎えると、子どもの生存が危うくなります。さらには、ダウン症などのように高齢出産で生まれた子どもは生存率が低いため、その育児の負担(コスト)が高まることで、すでに生まれている子どもたちの生存が危うくなります もう1つには、繁殖を終えるのと引き換えに、まだ体力のある祖母が、子育てをする次世代の自分の娘(母親)を助けることで、娘の繁殖力を高め、孫の生存率を高めることです(包括適応度)。いわゆる「おばあちゃん子」の存在も、「祖母効果」の延長線上にあるものと考えられます。 都市化、核家族化、少子化した現代では、お年寄りが孫を見る機会はぐっと減りました。しかし、お年寄りが孫を見たいという原始の時代からの心理は残ったままです。つまり、お年寄り、特に祖母が孫や地域の子どもたちを見ることで、心の健康をより保つことができるのではないかということです。例えば、最近では、グループホームなどの「託老所」(介護施設) と託児所を併設し、お年寄りと子どもがお互いに交流する仕組みがつくられています(幼老統合ケア)。また、お年寄りが、小学校の校門で挨拶をしたり通学路の信号機前で安全確保をするなど、地域の子どもを見守るボランティに参加する取り組みも行われています。自尊心を保つ―お年寄りはなぜ敬(うやま)われるべきなのか? ゆういちは息子のまさきに「ばあちゃんの下着ば買うても買うても無くなるとばってんさあ」と不思議がっていました。その後、開けたタンスの引き出しから、大量の汚れた下着があふれ出てきたのでした。ゆういちは「タンスから噴き出した!」と思わず叫びます。 お年寄りは、認知機能の低下に伴い、排泄などのセルフケアに困難が出てきます。汚れた下着を洗おうにも洗濯機の使い方が分からなくなります(知覚―運動の障害)。そして、それを恥じらう自尊心は残っているため、隠すのです。しかし、うまく隠し切ることはできないのです(社会的認知の障害)。このような時、どう接するのが認知症のリハビリテーションとして望ましいでしょうか? 認知症の人は、症状が進むにつれてどんどん無邪気な子どものようになります。そんな人に、私たちはつい子ども扱いしてしまいがちです。しかし、ここで注意することは、認知症の人は子どもではないということです。認知症介護と育児について、その共通点と相違点をそれぞれ整理してみましょう。 共通点は、両者ともに自尊心を大切にすることです。これは、頼られたり、ほめられたり、ありがたがられたりすることで高まります。一方、相違点は、育児では叱ることはありますが、高齢者介護では叱ることは望ましくないです。その理由は、3つあります。1つ目は、子どもは叱られることで禁止の学習効果を得ることができますが、認知症の人は記憶の障害により学習効果が得られないからです。2つ目は、ネズミの実験結果で確かめられていることですが、叱られるなど恐怖の心理的ストレスによって、海馬領域(記憶中枢)の神経細胞の新生が抑制され、認知症状がさらに進んでしまうからです。3つ目は、認知症の人は、叱られると、自尊心が傷付けられ、BPSDが出やすくなるからです。これは、叱られた時、叱られた理由は忘れてしまっているのに、叱られた悲しみや叱った相手の記憶は比較的残っているので、理不尽に感じるからです。叱られた理由についての記憶は理性的で複雑であるため残りにくく、叱られた時の気持ちや叱った相手の記憶は感情的で単純であるため残りやすいのです(リボーの法則)。 以上より、認知症のリハビリテーションとして望ましい対応は、敬意を持って親切に接すること、決して叱らないことです。さらには、できることはさせてほめまくること、できないことはさせないことです(満点主義)。つまり、お年寄りは、敬(うやま)われることで心の健康が保たれるのです。配慮する―お年寄りはなぜ恭(うやうや)しくもてなされるべきか? さきほどのグループホームでみつえが「この盗人(ぬすっと)、嘘つき!」「ああっ!悪者(わるもん)がおる。誰か誰かー!」と叫び騒ぐシーンを振り返ってみましょう。みつえのような認知症の人は、目の前に見えているものと聞こえてくる声や音とに同時に注意を向けることが難しいです(複雑性注意の障害)。それでは、この点を踏まえて、みつえが騒がなくても済む方法はなかったでしょうか?  それは、注意を高めてもらうため、視覚、聴覚、触覚を総動員して丁寧に接することです(ユマニチュード)。例えば、話しかける時、少し遠くから相手の視界に入り、近付いて、視線を合わせて(視覚)、間を置いて、なるべく肩や腕へのスキンタッチをして(触覚)、ようやく声をかけることです(聴覚)。 また、その人をよく観察して行動パターンを先読みして気遣うことです(先回り)。例えば、喉の渇きやトイレなどをうまく言葉で伝えられない場合、その人の行動パターンから、「お茶をどうぞ」「トイレに行きましょうか?」などと汲み取ることです。 さらには、トイレや入浴などの介助をするとき、たとえその人の反応が乏しくても、かかわる時は話しかけ続けることです(実況生中継)。その人が大人しいから、こちらが話しかけても無言でも変わらないとみなさんは思われるかもしれません。その時は問題ないかもしれません。しかし、その後に問題が起こる可能性が高まります。理由として、自分が何をされたか分からないことでストレスがたまり、後に混乱することが考えられるからです。また、人として扱われていないように感じられて、本人の自尊心が傷付けられることが考えられるからです。つまり、こちらからどんどん働きかけることが大切なのです。 表4 社会的認知から考える認知症のリハビリテーション   例 役割を担う 昔話をしてもらう(回想法) お年寄りが子どもを見守る環境をつくる(幼老統合ケア) 自尊心を保つ 敬意を持って親切に接する決して叱らないできることはさせてほめまくり、できないことはさせない(満点主義) 配慮する 視覚、聴覚、触覚を総動員して丁寧に接する(ユマニチュード)よく観察して行動パターンを先読みして気遣う(先回り)かかわる時は話しかけ続ける(実況生中継) なぜ認知症の症状に地域差があるのか?―敬老思想 映画の舞台は長崎です。ほのぼのとした長崎弁が交わされ、とてものどかな土地柄です。東京のようなせわしない大都市とは対照的です。実は、疫学調査から、長崎のような地方と東京のような大都市とでは、認知症の症状の出方に違いがあることが分かっています。記憶障害などの認知症状は同じなのですが、行動・心理症状(BPSD)については、地方では目立たず、大都市では目立つのです。つまり、行動・心理症状の出現率に地域差があるといことです。これはどういうことなのでしょうか? そもそも原始の時代から、お年寄りは、生き字引としての指導的立場を担い、周りから敬(うやま)われ、恭(うやうや)しくもてなされてきました。「老馬の智」「亀の甲より年の功」「おばあちゃんの知恵袋」などの言い回しはまさにこれを言い当てています。つまり、共同体のメンバー全員がお年寄りをありがたがり、大事にするという敬老思想はもともとごく当たり前のことだったのです。私たちには、もともとそうすることを望ましく感じる心理が遺伝子に組み込まれている可能性があります。 ところが、近代化し情報化した現代はどうでしょうか? 特に、大都市は、スピード、生産性、効率性、競争力、結果がとても重視されます。すると、その価値観に合わない人、つまり役に立たない人はいてはならないという発想が生まれやすくなります。それは、「ボケ」が出てきたら、早く認知症と診断してもらって、早く施設に入るべきであるという発想です。そのような人がい続ければ、敬(うやま)われるどころか、迷惑で困った人として貶(おとし)められ、蔑(さげす)まれてしまいます。こうして、認知症の人は、現代では、そして特に大都市では、より自尊心を傷付けられて、行動・心理症状をより引き起こしています。まるで、現代の価値観が、認知症の患者をつくり出し、そして追いやっているようにも思えてしまいます。これは、現代の価値観の負の側面です。 一方、助け合いや敬老の精神が比較的に残っているコミュニティがある地方では、お年寄りが認知症になっても、家族や近所の人たちが協力して温かく面倒を見るので、自尊心が保たれ、行動・心理症状(BPSD)が出にくくなるというわけです。その人らしさを支える介護とは?―パーソンセンタードケア みつえは、認知症が進むにつれて、現在の現実と過去の記憶が交錯していきます。そこには、家族の歴史や絆が描かれています。まさにこの映画の醍醐味です。認知症の介護とは、症状を見るのではなく、その人の人生、つまりその人らしさを見ることであるということに私たちは気付かされます。そして、目の前のお年寄りの人たちがどういう人生を経て今ここにいるのかという物語に思いを馳せ、その人たちの心に寄り添う気持ちにさせられます。その人のことをよく知ることで、その人らしさやその人らしい生活を支えることができます(パーソンセンタードケア)。 このような介護により、お年寄りの心は満たされ、認知症の行動・心理症状(BPSD)を減らしたり、出てくるのを防ぐことができます。また、認知症状の進行を遅らせる可能性もあります。さらには、私たちの心も満たされ、楽しさやりがいを感じることができるようになります。介護する側の心のあり方とは?―かかわり方と薬のバランス ゆういちは、行きつけの喫茶店のマスターから「(介護施設に)預けると?」「はあ、そがんことするったい」「親ば捨てるやらおれはようしきらん(とてもできない)」と言われてします。ゆういちは「おれもどげんしたらよかか分からん」と苦悩します。 世間体や後ろめたさから、家族が介護を抱え込み、「介護疲れ」(適応障害)になることはよくあります。この映画では、最終的にゆういちがみつえをグループホームに入所させ、抱え込まないモデルとして描かれています。 入所後は、ゆういちの心には余裕ができて、みつえに怒鳴ることはなくなっています。そもそも家族によって介護力には限界があります。それを踏まえて、デイケアへの通所やグループホームへの入所を見極める必要があります。ポイントは、家族の介護者が介護への負担(ストレス)からやりがいを見失っていないか?「介護疲れ」に陥っていないか?ということです。 この介護者のメンタルヘルスは、家族だけでなく、私たち医療関係者(特に介護士)にも当てはまります。これまで説明しました認知症の人へのかかわり方はもちろん重要なのですが、そのかかわり方をしたからと言って必ずしも行動・心理症状(BPSD)が全く出ないというわけではありません。 介護者がやりがいを感じ続けるためには、認知症の人にうまくかかわっていくことと合わせて薬をうまく使っていく必要があります。例えば、毎夜どうしても騒ぐ場合(夜間せん妄)、夕食後に精神科薬を飲んでもらうようにすることです。また、日中にどうしても手が出てしまう場合(暴力)、日中に精神科薬を飲む必要があります。このように、かかわり方の工夫と薬の適応のバランスをとることです。認知症の人が無邪気であることとは? ラストシーンでは、車いすに乗ったみつえとベビーカーに乗った赤ちゃんがすれ違います。みつえも赤ちゃんも、無邪気で幸せそうです。そして、ゆういちは「ボケるとも、悪か事ばっかりじゃなかかもな」とつぶやきます。 かつて孫のまさきが伸び盛ったように、これからそのまさきとさとさん(グループホームの介護士)の恋が燃え盛ろうとするように、みつえが熟し衰えていくのは自然なことであると私たちは思えてきます。 認知症は、障害という特別な状態になるというよりは、老いという自然の流れの中で見られるその人らしさであるとも言えます。そもそも私たちが年を取るとはこういうことであると受け入れることが出発点です。今、私たちが身近で見ている認知症の人は、私たちの数十年後の姿かもしれません。私たちもいずれ同じようになるかもしれません。 そう考えると、その時に私たちはどんなふうにされていたいのだろうかと現在の認知症の介護のあり方を見つめ直すことができるのではないでしょうか?そして、長生きすることが幸せであると心から思える社会にしていくことができるのではないでしょうか?1)岡野雄一:ペコロスの母に会いに行く、西日本新聞社、20122)岡野雄一:「ペコロスの母に学ぶ」ボケて幸せな生き方、小学館新書、20143)山口晴保:認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント、協同医書出版社、20144)伊古田俊夫:社会脳からみた認知症、講談社、20145)村井俊哉:社会化した脳、エクスナレッジ、20076)DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引第5版)、医学書院、20147)本田美和子ほか:ユマニチュード入門、医学書院、2014

28038.

大人の対応【Dr. 中島の 新・徒然草】(052)

五十二の段 大人の対応私どもの病院では、毎月の会議で、当直日誌をもとに問題点の洗い出しと対策を行っています。とはいえ、当直日誌にはあまりにもいろいろなことが書いてあるので驚きます。 A先生 「なんじゃこりゃあ。『救急隊からの連絡では意識清明のはずが、病院に到着したときには昏睡状態でした。救急隊をちゃんと指導してください』って」 どうやら、救急隊が連絡してきた時には意識清明だった患者さんが、病院への搬入時には昏睡状態だったので当直医が慌てふためいたようです。それにしても「救急隊をちゃんと指導してください」と言われても、大阪の救急隊員は何百人、下手したら千人以上いるはずですから、教育するといっても非現実的です。 A先生 「確かに救急隊には状態をキチンと伝えてもらわないと、こっちも困るよな」 おっとA先生、当直医の肩を持ちますか。 B先生 「んなもん、救急隊からの連絡と来た時の状況が違うなんていくらでもあるでしょう」 そうそう。 中島 「その通りです。いきなり昏睡が来たらびっくりするかもしれんけど、とりあえず淡々と治療すればいいじゃないですか」 B先生 「救急車の中で急変したのかもしれんし」 中島 「よくあることですよ。大人の対応をすることが大切ですね」 すると、突然、C先生が発言しました。 C先生 「どうせ当直医は鬱憤晴らしに当直日誌に書いているだけでしょう。本人だって百も承知なんですから、いちいち真に受けたらあきまへん」 一同 「おおーっ!」 中島 「さらに・・・大人の対応や。上には上がおった」 まだまだ私も修行が足りませんね。 C先生 「ほな、次の症例に行きましょか」 最後に1句当直は 大人の対応 心得よ

28039.

不妊治療、体外受精を排卵誘発+膣内精子注入と比較/BMJ

 原因不明や男性側に軽度不妊があるカップルに対する体外受精2種の方法の有効性を、排卵誘発+子宮膣内精子注入法との比較で検討したが、健常児の出産率について非劣性であることが示された。多胎妊娠率についても、3群間で同等であったという。オランダ・アムステルダム大学のA J Bensdorp氏らが、カップル602組について行った無作為化比較試験の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2015年1月9日号で発表した。体外受精2種と排卵誘発+子宮膣内精子注入を比較 Bensdorp氏らは2009年1月~2012年2月にかけて、オランダ17ヵ所の医療機関を通じ、原因不明、または男性側に軽度不妊が認められる602組のカップルについて無作為化試験を行った。被験者の女性の年齢は18~38歳だった。 被験者を無作為に3群に分け、(1)体外受精による単一胚移植3サイクル(201組)、(2)修正自然周期による体外受精6サイクル(194組)、(3)排卵誘発と子宮膣内精子注入を6サイクル(207組)をそれぞれ行った。 主要評価項目は、12ヵ月以内の単胎妊娠による健常児の出産だった。副次アウトカムは、生存出産、臨床的妊娠、進行中の妊娠、多胎妊娠、妊娠までの期間、妊娠合併症、新生児罹患率と死亡率などだった。単胎妊娠による健常児出産率、体外受精群はいずれも非劣性 結果、単胎妊娠により健常児を出産したのは、体外受精単一胚移植群で104件(52%)、修正自然周期体外受精群で83件(43%)、排卵誘発+子宮膣内精子注入群で97件(47%)だった。 排卵誘発+子宮膣内精子注入群との比較による相対リスクは、体外受精単一胚移植群が1.10(95%信頼区間[CI]:0.91~1.34)、修正自然周期体外受精群が0.91(同:0.73~1.14)で、非劣性の規定(95%CIの下限閾値0.69)を上回っており、体外受精2種の非劣性が示された。 また多胎妊娠率も、体外受精単一胚移植群が6%、修正自然周期体外受精群が5%、排卵誘発+子宮膣内精子注入群が7%と、3群で有意差はなかった(体外受精単一胚移植群vs. 排卵誘発+子宮膣内精子注入群p=0.52、修正自然周期体外受精群vs. 排卵誘発+子宮膣内精子注入群のp=0.33)。

28040.

スタチン療法の効果に男女差はあるか?/Lancet

 同リスクであれば男女の、スタチン療法による主要血管イベントの予防効果は同等であることが明らかにされた。オーストラリア・National Health and Medical Research CouncilらによるCholesterol Treatment Trialists’(CTT)Collaboration(コレステロール治療試験に関する共同研究)が、27件の無作為化試験、被験者総数約17万4,000例を含んだメタ解析の結果、明らかにした。これまで、女性に対するスタチン療法が、男性と同程度の効果があるかどうかについては議論が分かれていた。Lancet誌オンライン版2015年1月9日号掲載の報告より。 主要血管・冠動脈イベント、脳卒中などの発症リスク低減効果を比較 メタ解析は、スタチン療法と対照群を比較した無作為化試験22件(被験者総数13万4,537例)と、スタチン療法の程度を比較した無作為化試験5件(同3万9,612例)を含んで行われた。 LDLコレステロール値ごと1.0mmol/L低下による、主要血管イベント、主要冠動脈イベント、脳卒中、冠動脈血行再建術のそれぞれ発症率、死亡率について、男女差を比較した。サブグループ解析は、多様性を考慮し99%信頼区間(CI)を用いて検討した。低リスク被験者についても、効果に男女差みられず 被験者のうち、女性は4万6,675例(27%)だった。全般的に女性のほうが、男性に比べ、心血管リスクは低かった。 LDLコレステロール値1.0mmol/L低下につき、主要血管イベント発生率の低下は、女性で率比(RR)0.84(99%CI:0.78~0.91)、男性は0.78(同:0.75~0.81)で、性別間で有意差はなかった(不均一性補正後p=0.33)。 また、絶対心血管リスクの5年予測値が10%未満の発生率についても、男女間で有意差は認められなかった(不均一性補正後p=0.11)。 同様に主要冠動脈イベント、冠動脈血行再建術、脳卒中それぞれの発症率の比例低下率についても、性別による有意差はなかった。がん発生率、非心血管死亡率への有害な影響は、男女共にみられなかった。 これらのネット有益性は、スタチン治療に伴う全死因死亡低下に還元され、女性のRRは0.91(99%CI:0.84~0.99)、男性は同0.90(0.86~0.95)だった(不均一性補正後p=0.43)。

検索結果 合計:36523件 表示位置:28021 - 28040