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喘息様気管支炎と診断した乳児が自宅で急死したケース

小児科最終判決判例タイムズ 844号224-232頁概要1歳1ヵ月の乳児。37.5℃の発熱と喘鳴を主訴に休日当番医を受診し、喘息性気管支炎と診断され注射と投薬を受けて帰宅した。ところが、まもなく顔面蒼白となり、救急車で再び同医を受診したが、すでに心肺停止、瞳孔散大の状態であったため、救命蘇生措置は行われず死亡確認となった。司法解剖では、肺水腫による肺機能障害から心不全を起こして死亡したものと推定された。詳細な経過経過1983年12月31日この頃から風邪気味であった。1984年1月1日37.2℃の発熱あり。1月2日午後37.5℃に上がり、声がしわがれてぜいぜいし、下痢をしたので、16:20頃A医院を受診。待合室で非常にぜいぜいと肩で息をするようになったため、17:20頃順番を繰り上げて診察を受ける。強い呼吸困難、喘鳴、声がれ、顔面蒼白、腹壁緊張減弱、皮膚光沢なし、胸部ラ音、下痢などの症状を認め、喘息性気管支炎と診断。担当医師は経過観察、ないしは入院の必要があると判断したが、地域の救急患者の転送受け入れをする輪番制の病院がないものと考え、転院の措置をとらなかった。呼吸困難改善のため、スメルモンコーワの注射(適応は急性気管支炎や感冒・上気道炎に伴う咳嗽)と、アセチルロイコマイシンシロップなどの投薬をし、隣室ベッドで待つように指示した。18:00若干呼吸困難が楽になったように感じたため、容態急変した場合には夜間診療所を受診するように指示されて帰宅した。18:20帰宅時、顔面が蒼白になり唇が青くなっていたため、救急車を要請。その直後急に立ち上がり、目を上に向け、唇をかみしめ、まったく動かなくなった。18:54救急車でA医院に到着したが、すでに心肺停止、瞳孔散大の状態であり、心肺蘇生術を施さずに死亡が確認された。司法解剖の結果、「結果的には肺水種による肺機能障害により死亡したものと推定」し、その肺水腫の原因として、(1)間質性肺炎(2)乳幼児急死症候群(SIDS)(3)感染によるエンドトキシンショック(4)薬物注射による不整脈(5)薬物ショックとそれに続く循環障害などが考えられるが、結論的には不詳とされた。当事者の主張患者側(原告)の主張1.医師の過失1回目の診察時にすでに呼吸不全に陥っているのを認めたのであるから、ただちに入院させて、X線写真、血液検査などの精査を行うとともに、気道確保、酸素吸入、人工換気などの呼吸管理、呼吸不全、心不全などの多臓器障害の防止措置などを行うべき義務があったのに、これらを怠った2.経過観察義務違反・転医措置義務違反呼吸不全を認めかつ入院の必要を認めたのであるから、少なくとも症状の進行、急変に備え逐一観察すべき義務があったのに怠った。さらに、転医を勧告するなど、緊急治療措置ないし検査を受けさせ、あるいは入院する機会を与えるべき義務があったのに、転医措置を一切講じなかった3.救命蘇生措置義務違反心肺停止で救急搬送されたのは、心臓停止後わずか10分程度しか経過していない時点であり救命措置をとるべき義務があったのに、これを怠った4.死因喘息性気管支炎から肺炎を引き起こして肺水腫となり、肺機能障害から心不全となって死亡した。病院側が主張する乳幼児突然死症候群(SIDS)ではない病院側(被告)の主張1.医師の過失死因が不明である以上、医師がどのような治療方法を講じたならば救命し得たかということも不明であり、不作為の過失があったとしても死亡との因果関係はない。しかも最初の診察を受けたのが17:20頃であり、死亡が18:10ないし18:25とすると、診療を開始してから死亡するまでわずか50~60分の時間的余裕しかなかったため、死亡の結果を回避することは不可能であった。また、当日は休日当番医で患者が多く(130名の患者で混みあっており、診察時も20~30名の患者が待っていた)、原告らの主張する治療措置を講ずべきであったというのは甚だ酷にすぎる2.経過観察義務違反・転医措置義務違反同様に、診療開始から50~60分の時間的余裕しかなかったのであれば、大規模医療施設に転送したからといって、死亡の結果を免れさせる決め手にはならなかった3.死因肺水腫による肺機能障害から心不全を起こして死亡したと推定されていて、肺水腫の原因として間質性肺炎、乳幼児突然死症候群などが挙げられているものの特定できず、結局死因は不明というほかない裁判所の判断1. 死因強い呼吸困難、喘鳴、顔面蒼白、腹壁緊張減弱、胸部ラ音、下痢などの臨床症状があったこと、肺浮腫、肺うっ血が、乳幼児突然死症候群に伴うような微小なものではなく、著しいあるいは著明なものであったことなどからすると、肺炎から肺水腫を引き起こして肺機能障害を来し、直接には心不全により死亡したものと考えられる(筆者注:司法解剖の所見で「死因は不詳」と判断されているにもかかわらず、裁判所が独自に死因を特定している)。2. 医師の過失原告の主張をそのまま採用。加えて、もし大規模病院へ転送するとしたら、酸素そのほかの救急措置が何らとられないまま搬送されるとも考えられないので、診察から死亡までの50~60分の間に適切な措置をとるのは困難であり死亡は免れなかったとする主張は是認できない。当時休日診療で多忙をきわめていたとしても、人命にかかわる業務に従事する医師としては、通常の開業医としての医療水準による適切な治療措置を施すべき義務を負うものであり、もし自らの能力を超えていて、自院での治療措置が不可能であると考えれば、ほかの病院に転送するべきであった。3. 経過観察義務違反・転医措置義務違反失原告の主張をそのまま採用。4. 救命蘇生措置義務違反救急車で来院した18:54頃には、呼吸停止、心停止、瞳孔の散大の死の3徴候を認めていたので、心肺蘇生術を実施しても救命の可能性があったかどうか疑問であり、その効果がないと判断して心肺蘇生術を実施しなかったのは不当ではない。原告側合計2,339万円の請求どおり、2,339万円の判決考察この事例は医師にとってかなり厳しい判決となっていますが、厳粛に受け止めなければならない重要な点が多々含まれていると思います。まず、本件は非常に急激な経過で死亡に至っていますので、はたしてどうすれば救命できたかという点について検討してみます。担当医師が主張しているとおり、最初の診察から死亡までわずか60分程度ですので、確かにすぐに大規模病院に転送しても、死亡を免れるのは至難の業であったと思います。裁判所は、「酸素などを投与していれば救命できたかも知れない」という理由で、医師の過失を問題視していますが、酸素投与くらいで救命できるような状況ではなかったと推定されます。おそらく、すぐに気管内挿管を施し、人工呼吸器管理としなければならないほど重症であり、担当医師が診察後すぐに救急車で総合病院に運んだとしても、同じ結果に終わったという可能性も考えられます。ここで問題なのは、当初から重症であると認識しておきながら、その次のアクションを起こさなかった点にあると思います。もし最初から、「これは重症だからすぐに総合病院へ行った方がよい」と一言家族に話していれば、たとえ死亡したとしても責任は及ばなかった可能性があります。次にこのようなケースでは、たとえ当時の状況が患者さんがあふれていて多忙をきわめていたとしても、まったく弁解にはならないという点です。とくに「人命にかかわる業務に従事する医師としては、病者を保護すべきものとして通常の開業医としての医療水準による適切な治療措置を施すべき義務がある」とまで指摘されると、抗弁の余地はまったくありません。当然といえば当然なのですが、手に負えそうにない患者さんとわかれば、早めに後方病院へ転送する手配をするのが肝心だと思います。最後に、ここまでは触れませんでしたが、本件では裁判官の心証を著しく悪くした要因として、「カルテの改竄」がありました。1回目の診察でスメルモンコーワの注射に際し(通常成人には1回0.5ないし1.0mL使用)、病院側は「0.3mL皮下注射した」と主張しています。ところがカルテには「スメルモン1.0」と記載し、保険請求上1アンプル使用したという旨であると説明され、さらに1行隔てた行外に「0.3」と記載されており、どうやら1歳1ヵ月の乳児にとっては過量を注射した疑いがもたれました。この点につき裁判所は、「0.3」の記載の位置と体裁は、不自然で後に書き加えられたものであることが窺われ、当時真実の使用量を正確に記載したものであるかどうかは疑わしいと判断し、さらに「診療録にはそのほかにも数カ所、後に削除加入されたとみられる記載がある」とあえて指摘しています。実際のカルテをみていないので真実はどうであったのかはわかりませんが、このような行為は厳に慎むべきであり、このためもあってか裁判では患者側の要求がすべて通りました。日常診療でこまめにカルテを書くことは大変重要ですが、後から削除・加筆するというのは絶対してはならないことであり、もし事情があって書き換える場合には、その理由をきちんと記載しておく必要があると思います。小児科

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診察室の小ワザ【Dr. 中島の 新・徒然草】(022)

二十二の段 診察室の小ワザ頭を打ったと言っては、やってくるお年寄り。外来のたびごとに必ず1人はおられます。その中でも極めつけの必敗パターンが、夜中にトイレに行こうと思ったらふらついてこけた、というもの。本日来院されたのは70代の女性。中島「とにかくですね、夜中のトイレが一番危ないです」患者「気をつけてはいるんですけど、ついサッと立ってしまって」中島「それがいかん。頭の中身は若い時のままでも体はもう若くはありません」患者「そうですよねえ」中島「こけないようにするためには、立つときや歩くときに壁を手で触るといいですよ」患者「しっかり手すりを持つわけですね」中島「いや、持ってもいいのですが、触るだけで十分です」患者「触るだけなんですか?」中島「触るだけです。そうするとはるかに安定しますよ」ということで、診察室で実感してもらうわけです。中島「ちょっと実験してみましょう。その壁の横に両足を揃えて立ってください」患者「こうですか」中島「その状態で目を閉じてみましょう」患者「ちょっとグラグラして怖いです」中島「視覚情報が遮断されて不安定になるのです」患者「そうなんですか」中島「次に壁を指で触ってみましょう。触るだけです、手をつくには及びません」患者「あれっ、壁を触ったらすごく安定します! 全然怖くない!」中島「指先から位置情報が入ってきて安定するのです。立ち上がるときや、夜中にトイレに行くときも壁を触ると安心ですよ」患者「ホントだ、すごい!」ということで、ちょっとその辺の物を触るだけで驚くほど安定することを実体験として理解してもらいます。中島「これは秘伝のワザですからね、よかったらお友達にも教えてあげてくださいね。皆さん夜中にトイレに起きているでしょうから」患者「ぜひそうします」簡単なことではありますが、患者さんにはずいぶん感謝されます。よかったら先生方も御自分で体感したうえで、患者さん達に教えてあげてください。

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日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究

 海外の追跡研究では、地中海式食事法がアルツハイマー病のリスクを減少させるという報告がみられ、乳製品の摂取は控えめがよいとされている。しかし、久山町研究では、大豆・豆製品および牛乳・乳製品の摂取量が多い食事パターンと認知症予防との関連が報告されている。このうち、牛乳・乳製品の認知症予防に対する効果を検討するため、九州大学の小澤 未央氏らは、高齢の日本人集団での認知症発症における牛乳・乳製品の摂取の効果を検討した。その結果、牛乳や乳製品の摂取量が多いほど、認知症とくにアルツハイマー病のリスクが低下することが認められた。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版6月10日号掲載。 本研究は、日本人高齢者における認知症全体およびそのサブタイプの発症に牛乳や乳製品の摂取が効果的かを調べることを目的とした、前向きコホート研究である。対象は、久山町住民で60歳以上の非認知症者(n=1,081)。牛乳と乳製品摂取量は、70項目の半定量食物摂取頻度調査票を用いて調査し、四分位にグループ化した。牛乳と乳製品摂取量による認知症全体、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)の発症リスクは、Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・17年以上の追跡期間において、303例が何らかの認知症を発症した。うち166例がAD、98例がVaDであった。・年齢・性別で調整した発症率は、認知症全体、AD、VaDともに、牛乳と乳製品の摂取量の増加に伴い、有意に低下していた(傾向性p:それぞれp=0.03、p=0.04、p=0.01)。・潜在的な交絡因子を調整したところ、AD発症と牛乳や乳製品摂取量との間には有意な直線関係が得られた(傾向性p=0.03)。一方で、認知症全体とVaDでは有意ではなかった。・ADの発症リスクは、牛乳や乳製品摂取量の第1四分位よりも第2、3、4分位において有意に低かった。

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非定型うつ病は肥満になりやすい~前向きコホート研究

 うつ病と肥満の関連性はたびたび報告されているが、そのメカニズムや経時的な順序はよくわかっていない。スイス・ローザンヌ大学病院のAurelie M Lasserre氏らは、肥満の発症とBMI・ウエスト周囲径・体脂肪量の変化を調査し、うつ病におけるサブタイプ(メランコリー型、非定型、混合型、特定不能)が肥満発症の予測因子となるかどうかを検討した。その結果、非定型うつ病が肥満の強力な予測因子であることが示された。JAMA psychiatry誌オンライン版2014年6月4日号に掲載。 本研究は人口ベースの前向きコホート研究(CoLaus/PsyCoLaus)で、スイス・ローザンヌ市の住民から無作為に選ばれ、開始時の身体的・精神医学的評価と追跡時の身体的評価を受諾した参加者3,054人を5.5年間追跡した。参加者は2003年時点で35~66歳(平均49.7歳)で、女性の割合は53.1%であった。 本研究では、遺伝研究のための半構造化診断面接を用いて、開始時および追跡時の診断(DSM-IVによるうつ病のサブタイプ)を行い、社会人口学的特性、ライフスタイル(飲酒、喫煙、運動)、薬物療法についても聴取した。また、追跡期間中のBMI・ウエスト周囲径・体脂肪量の変化(開始時の値に対する変化率)や、開始時に肥満ではなかった参加者の追跡期間中の肥満発症率を検討した。体重・身長・ウエスト周囲径・体脂肪量(生体インピーダンス法)は開始時に測定され、訓練されたインタビュアーがフォローアップした。 主な結果は以下のとおり。・開始時に非定型うつ病であった参加者においてのみ、うつ病ではなかった参加者に比べて、追跡期間中に肥満が増加した。・非定型うつ病との関連性は、広範囲の潜在的交絡因子の調整後においても、BMI(β=3.19、95%CI:1.50~4.88)、肥満発症率(オッズ比3.75、95%CI:1.24~11.35)、ウエスト周囲径(β=2.44、95%CI:0.21~4.66)において男女とも有意であり、体脂肪量(β= 16.36、95%CI:4.81~27.92)においては男性で有意であった。 これらの結果から、著者らは「非定型うつ病は肥満の強力な予測因子である」と結論し、臨床および研究で本タイプを同定する必要性を強調している。また、「非定型の特徴を持つうつ病症状がみられるときは、食欲増進への影響が少ない治療方法が提唱される」としている。

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鎮痛薬+不眠症治療薬の併用、鎮痛薬単独より腰痛+不眠を改善

 米国・デューク大学医療センターのHarold W. Goforth氏らによる、不眠症治療の有効性を検証する二重盲検プラセボ対照並行群間試験の結果、標準的な鎮痛薬と不眠症治療薬の併用は、慢性腰痛患者の疼痛、睡眠、抑うつ症状を有意に改善することが明らかにされた。不眠症は、慢性腰痛患者によくみられる症状だが、これまで長い間、特別治療する必要はないとみなされてきた。しかし最近の研究で疼痛治療に不眠症治療を加えることにより予後が改善することが示唆されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「慢性腰痛患者の日常診療においては、睡眠と疼痛いずれもの治療が重要であることを意味している」と述べるとともに、さらに「睡眠障害の改善が疼痛を改善するというエビデンスが得られた」とまとめている。Sleep誌2014年6月1日号の掲載報告。 試験は、不眠症の診断基準を満たし3ヵ月以上腰痛が続いている慢性腰痛患者52例(平均年齢42.5歳、女性63%)を対象に行われた。 被験者を、エスゾピクロン(ESZ)3mg+ナプロキセン500mg1日2回投与群(ESZ群)とプラセボ+ナプロキセン500mg1日2回投与群(プラセボ群)に無作為に割り付け、1ヵ月間投与した。 主な結果は以下のとおり。・ESZ群はプラセボ群に比べ、主要評価項目とした総睡眠時間が有意に改善した(平均増加時間:ESZ群95分、プラセボ群9分)。・疼痛強度(視覚アナログスケール/ 平均減少量:ESZ群17mm、 プラセボ群2mm)、ならびに抑うつ症状(ハミルトンうつ病評価尺度/ 平均改善度:ESZ群3.8点、プラセボ群0.4点)も、プラセボ群に比べESZ群で有意に改善した。・疼痛強度の変化は、睡眠の変化と有意に相関していることが認められた。

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脳卒中に対するrtPA、臨床でも時間依存的有効性を確認/BMJ

 脳卒中に対する遺伝子組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)療法の時間依存的有効性について、ドイツの大規模脳卒中レジストリデータの後ろ向き解析の結果と、無作為化試験プール解析で示されている結果を比較した結果、類似していることが示された。同国ハイデルベルク大学のChristoph Gumbinger氏らによる報告で、著者は、「臨床でも早期のrtPA療法が良好な転帰と関連しているようであった。入院中または救急搬送時におけるrtPA療法を、早期に開始することの重要性を強調するものである」とまとめている。無作為化試験のプール解析の結果では、rtPA療法開始時間について、リスクベネフィットの境界時間は発症から最長4.5時間であることが示されていた。しかし無作為化試験は一部の患者を対象としたものであり、臨床に一般化して適用できるのかについては確認されていなかった。BMJ誌オンライン版2014年5月30日号掲載の報告より。ドイツ大規模臨床データ8万4,439例について後ろ向きに解析 研究グループは、臨床での急性虚血性脳卒中に対するrtPA療法の時間依存的有効性を大規模総合住民ベースのデータを用いて検討するため、ドイツ南西部にある大規模州の1つ、バーデン=ヴュルテンベルク州(人口1,040万人)のデータを対象とした。同州データには、148病院で治療された急性脳卒中患者データ8万4,439例が含まれており、rtPA療法を受けていたのは1万263例(12%)、非治療群は7万4,176例(88%)だった。 主要エンドポイントは、退院時の修正Rankin尺度スコアで定めた「アウトカム良好」(スコア0、1)、「アウトカム不良」(スコア2~6)とし、アウトカムとrtPA療法との関連をバイナリロジスティック回帰法にて分析した。最初のモデルでは治療群vs. 非治療群について評価し、次にrtPA療法群の患者について脳卒中発症から治療開始までの時間(0~90分、91~180分、181~270分、271分以上)で分類したモデルを用いて評価した。 さらに、脳卒中rtPA療法と院内死亡率との関連について類似性解析を行った。 また共同主要エンドポイントとして、退院時に修正Rankin尺度スコアが低値となる可能性について序数ロジスティック回帰分析にて評価(シフト解析)した。臨床でもリスクベネフィットの境界は4.5時間 患者、病院、治療特性について補正後、rtPA療法について、時間依存的に転帰が良好となる関連が認められた。 「アウトカム良好」となるために必要な治療数(NNT)は、発症後1.5時間以内開始では4.5(「アウトカム良好」vs. 「アウトカム不良」のオッズ比[OR]:2.49)、1.5時間超~3時間以内に開始では6.4(同:1.86)、3時間超~4.5時間以内に開始では18.0(同:1.26)であった。死亡リスクは、4.5時間までは各治療開始時間別群の間で差はみられなかった。各群の補正後ORは、0.85、0.99、0.99だった。 一方、4.5時間超でrtPA療法を受けた患者(不適当な組み合わせの治療アプローチを含む)は、「アウトカム良好」のためのNTTは18.6(OR:1.25、95%信頼区間[CI]:1.01~1.55)であったが、死亡リスクが高く、補正後ORは1.45(95%CI:1.08~1.92)だった。

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アロマターゼ阻害薬補助療法が閉経前乳がんでも有意に抑制/NEJM

 閉経前ホルモン受容体陽性早期乳がん患者に対して、補助療法としてアロマターゼ阻害薬のエキセメスタン(商品名:アロマシン)+卵巣機能抑制のほうが、タモキシフェン(同:ノルバデックスほか)+卵巣機能抑制よりも5年再発を有意に抑制したことが明らかになった。南スイスがん研究所のOlivia Pagani氏ら国際乳がん研究グループ(IBCSG)が、2003年に開始した2件の第III相無作為化試験の結果から報告した。これまでに閉経後の同患者では、タモキシフェン補助療法よりもアロマターゼ阻害薬のほうがアウトカムを改善することが報告されていた。NEJM誌オンライン版2014年6月1日号掲載の報告より。アロマターゼ阻害薬補助療法の閉経前乳がんの有効性を検討 2つの試験は、タモキシフェンとアロマターゼ阻害薬のエキセメスタンの補助療法としての有効性を検討した試験(TEXT)と、卵巣機能抑制について検討した試験(SOFT)で、閉経前ホルモン受容体陽性早期乳がん患者を被験者にそれぞれ5年間にわたって行われた。 卵巣機能抑制は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)作動薬トリプトレリン(国内未承認)、卵巣摘出または卵巣への放射線照射によって行われた。 今回の主要解析は、2試験の被験者4,690例のデータを複合して行われた。アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群の5年再発ハザード比0.66 追跡期間中央値68ヵ月後、5年時無増悪生存は、アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群が91.1%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群が87.3%だった(再発・二次性浸潤がん・死亡のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.60~0.85、p<0.001)。 また、5年時点で再発が認められなかったのは、アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群が92.8%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群が88.8%だった(再発HR:0.66、95%CI:0.55~0.80、p<0.001)。 死亡は194例(4.1%)で、全生存について両群間に有意差はみられなかった(アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群の死亡HR:1.14、95%CI:0.86~1.51、p=0.37)。 グレード3または4の選択的有害事象の報告は、アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群30.6%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群29.4%で、閉経後女性で報告された内容と類似したものであった。

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経口抗リウマチ薬ゼルヤンツの市販直後調査結果や悪性腫瘍発現率を紹介

 関節リウマチ治療は、生物学的製剤の発売により劇的に変化し、患者さんの予後も大きく改善している。しかし、生物学的製剤は分子量が大きいため点滴や注射で投与せざるを得ず、外出や旅行などで不便を感じる患者さんも少なくない。そのようななか昨年発売された低分子化合物のゼルヤンツ(一般名:トファシチニブ)は経口剤であり、生物学的製剤と同程度の効果が認められている。しかしながら、本剤は新しい作用機序の薬剤であることから、安全性について慎重に検討している医師も多いのではないだろうか。 このたび、6月17日に開催されたファイザーと武田薬品工業共催プレスセミナーで、産業医科大学第1内科学講座教授 田中 良哉氏がゼルヤンツの全例市販直後調査の結果や悪性腫瘍の発現率データを紹介した。 市販直後調査の調査期間は2013年7月30日~2014年1月29日、調査対象医療機関は173施設(病院131施設、診療所42施設)、症例数は285例で、17例22件の副作用が認められた。そのうち重篤な副作用は3例4件で、心不全(70代男性)、肺炎、肝機能異常(ともに80代女性)、背部痛(70代男性)であった。それぞれの転帰は、心不全と肺炎が軽快、肝機能異常は未回復、背部痛は不明である。引き続き、全例市販後調査では、安全性解析対象症例として6,000例(ゼルヤンツ群:4,000例、対照群:2,000例)を登録し、ゼルヤンツ群では有害事象を3年間観察する。田中氏は、今後の市販後調査において、感染症、悪性腫瘍、予期しない副作用の発現など、長期の安全性を明らかにしていくと述べた。 田中氏は、ゼルヤンツ投与患者における悪性腫瘍(非黒色腫皮膚がんを除く)の発現率についてのデータも紹介した。ゼルヤンツ投与患者全体(14試験、5,671例)における100人年あたりの発現率は0.85であり、TNF阻害薬(38試験、1万8,993例)における同発現率1.1とほぼ同等といえる。なお、米国の一般人のがん発症率は1.08 /100人年である。一方、日本人のゼルヤンツ投与患者556例(平均年齢53歳、女性84%)における同発現率は1.28と若干高めであったが、田中氏によると、信頼区間が広いためその差は有意ではないとのことである。 最後に田中氏は、ゼルヤンツは注射や点滴に対して抵抗のある患者さんが望んでいた薬剤であるとしたうえで、投与にあたっては、他の生物学的製剤と同様、重篤な感染症がないか、重度の肝機能障害がないか、好中球数・リンパ球数・ヘモグロビン値が低くないか、悪性腫瘍がないかなど、最初にきっちりスクリーニングし、使用中はしっかりモニタリングを行うことが重要であると強調した。

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第26回 前立腺がんの告知は、本人だけじゃダメなのか!?

■今回のテーマのポイント1.泌尿器科疾患で1番訴訟が多い疾患は腎不全であり、2番目に多い疾患は前立腺がんである2.患者本人に説明をした場合には、その上、家族に対してまで説明する法的義務はない3.しかし、紛争予防の観点から、可能な限り家族に対しても説明することが求められる■事件のサマリ原告患者Xの家族被告Y病院争点説明義務違反結果原告敗訴事件の概要76歳男性(X)。Xは、平成10年9月11日、頻尿や腰痛を訴え、Yクリニックを受診しました。直腸診の結果およびPSAが386.0ng/mLであったことから、Xは、前立腺がんと診断されました。Xは、前立腺がんが進行性のものであり、予後が良くないこと、生検などのさらなる検査および専門医による検査および治療を受けるべきであることなどの説明を受けたのをはじめ、治療方法として内分泌療法があること、その際に使用されるクロルマジノン(商品名: プロスタール)などの薬剤については勃起障害などの副作用が見られることについて説明されました。また、その後も複数回にわたり、適宜の時期に病状を説明され、検査および治療のために泌尿器科専門医のいる総合病院への転院を勧められました。ところがXは、勃起障害を避けたかったことなどから、前立腺がんに対するさらなる検査や転院、および治療を繰り返し拒否しました。その結果、対処的にタムスロミン(同: ハルナール)やプロスタール®Lを投与していましたが、徐々に増悪してきたため、同年12月16日からは、前記の処方に加え、リュープロレリン(同: リュープリン)の投与を開始しました。その後も、Xの病態は徐々に増悪し、平成13年6月19日には、Yクリニックに入院することとなりました。このころから、Xには不穏、認知症の症状が出現するようになりました。Xの病態が改善しないことから、7月6日、Z病院泌尿器科へ転院しました。転院時のXのPSA値は1,420 であり、Xが見当識障害のため自身が前立腺がんで治療中であることを伝えなかったことから、Z病院の医師は、Xの家族に対し「どうしてこんなになるまで放っておいたのか」と叱責しました。Z病院の医師は、Xを進行性の前立腺がんおよび骨転移と診断し、前立腺がんに対する手術適応はないと診断しました。Xは、同年8月18日に再びYクリニックに転院し、同クリニックにおいて入院治療を続けていましたが、同年9月19日に死亡しました。これに対し、Xの遺族は、X本人に対し病状の説明がなされていなかった、また、家族に対して説明がなされていなかったなどとして、Yクリニックに対し、990万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決●近親者への告知義務について患者の疾患について、どのような治療を受けるかを決定するのは、患者本人である。医師が患者に対し治療法等の説明をしなければならないとされているのも、治療法の選択をする前提として患者が自己の病状等を理解する必要があるからである。そして、医師が患者本人に対する説明義務を果たし、その結果、患者が自己に対する治療法を選択したのであれば、医師はその選択を尊重すべきであり、かつそれに従って治療を行えば医師としての法的義務を果たしたといえる。このことは、仮にその治療法が疾患に対する最適な方法ではないとしても、変わりはないのである。そうだとすれば、医師は、患者本人に対し適切な説明をしたのであれば、更に近親者へ告知する必要はないと考えるのが相当である。そして、本件についてみれば、被告は、Xに対し前立腺であることを告知し治療法等を説明していたのであるから、更に原告らに対し、Xがであることを告知する法的義務はないと考える。この点原告らは、患者が治療を拒否しているような場合には、患者に対してを告知している場合でも、更に患者の家族への告知をすべきであると主張する。しかし、上記のとおり、疾患についての治療法等の選択は、最終的には患者自身の判断に委ねるべきであり、患者の家族に対してを告知したことにより、家族らが患者を説得した結果、患者の気持ちが変わることがないとはいえないとしても、そのことから直ちに家族に対してを告知すべき法的な義務が生じるとまではいえない。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(名古屋地判平成19年6月14日判タ1266号271頁)ポイント解説●泌尿器科疾患の訴訟の現状今回は、泌尿器科疾患です。泌尿器科疾患で最も訴訟が多いのは腎不全で、2番目に多い疾患が前立腺がんとなっています(表1)。前立腺がん自体、進行が緩徐であること、治療方法が進歩したことなどから他のがんと比べ生命予後が良く、その結果、訴訟になり難いものと考えられます。腎不全については、第22回で解説させていただきましたので、今回は、前立腺がんをテーマとしたいと思います。数が少ないこともありますが、前立腺がんに関する訴訟において疾患に特徴的な争点というものは認められません(表2)。このような傾向の中で、今回紹介した事例には、長期間外来治療を継続した結果、最終的に認知症のためか見当識障害が生じたこと、高齢者においても勃起機能障害は治療を受けるか否かについて、心理的障害となるといった前立腺がんに特徴的ともいえる論点が見受けられました。高齢者に対し、長期間の治療を行っていると、認知症を含め見当識障害が出現することは生じ得ます。本件では、患者から伝えられなかったとはいえ、転院先のZ病院の医師が「どうしてこんなになるまで放っておいたのか」と家族を叱責したことが、紛争化を引き起こした原因の1つと思われます。前医がいないと誤認していた事例であり、Z病院の医師に悪気がないことは理解できるのですが、家族に対する発言には、やはり注意が必要といえます。また、残された遺族にとって、患者ががんであるにもかかわらず、勃起機能障害の副作用を恐れて治療を拒否していたという事実は受け入れがたいものです。本件においても、原告である遺族は訴えの中で、「平成10年12月16日以降のYクリニックの診療録には、Xが処方のみで帰宅したとか、転院を拒否したとか、不定期的な来院であったとか、勃起機能への執着があったなど、およそがんを告知された患者とは思えない行動が記されており、不自然な行動と評価せざるを得ない」とした上で、「Xに対し前立腺がんの告知及び治療法や転院等について説明を行っていなかった」と主張しています。後にも解説しますが、家族に対する説明は、可能な限り行うことが紛争化を防ぐために必要と考えられます。●説明義務の客体第9回において解説した通り、説明義務は、わが国の判例・通説によると、診療契約の付随的義務として認められるとされています。したがって、原則的には、契約の一方当事者である患者本人がその客体となり、家族は契約関係外の第三者ということになります。判例においても「緊急に治療する必要があり、患者本人の判断を求める時間的余裕がない場合や、患者本人に説明してその同意を求めることが相当でない場合など特段の事情が存する場合でない限り、医師が患者本人以外の者の代諾に基づいて治療を行うことは許されないというべきである」(東京地判平成13年3月21日判時1770号109頁)とし、家族に対し説明し、承諾を得たとしても、本人への説明、承諾がなければ違法であるとしています。その一方で、同回で紹介した事例のように、「医師は、診療契約上の義務として、患者に対し診断結果、治療方針等の説明義務を負担する。そして、患者が末期的疾患にり患し余命が限られている旨の診断をした医師が患者本人にはその旨を告知すべきではないと判断した場合には、患者本人やその家族にとってのその診断結果の重大性に照らすと、当該医師は、診療契約に付随する義務として、少なくとも、患者の家族等のうち連絡が容易な者に対しては接触し、同人又は同人を介して更に接触できた家族等に対する告知の適否を検討し、告知が適当であると判断できたときには、その診断結果等を説明すべき義務を負うものといわなければならない」(最判平成14年9月24日民集207号175頁)とする判例もあり、混迷を極めています。このような状況の中、本判決は出されており、かつ、説明義務の客体について、一定の方向を示すものとなっています。すなわち、「医師は、患者本人に対し適切な説明をしたのであれば、更に近親者へ告知する必要はないと考えるのが相当である」とした上で、末期がんなどにより余命が限られている場合であっても、「疾患についての治療法等の選択は、最終的には患者自身の判断に委ねるべきであり、患者の家族に対してがんを告知したことにより、家族らが患者を説得した結果、患者の気持ちが変わることがないとはいえないとしても、そのことから直ちに家族に対してがんを告知すべき法的な義務が生じるとまではいえない」としたことです。すなわち、本判決を踏まえ、前記判決を整理すると(図)のようになります。本判決により、説明義務の客体についてはある程度の整理が得られたものと思われます。ただし、本事例のように患者が死亡してしまったり、認知症などで意思疎通が困難となると、遺族は、診療中どのような説明がなされていたか知らない結果、無用な争いが生まれてしまう危険があります。したがって、法的義務としては、患者に説明すれば、家族に対し説明する必要はないのですが、紛争予防の観点からは、可能な限り家族に対しても説明することが望ましいということになります。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)名古屋地判平成19年6月14日判タ1266号271頁東京地判平成13年3月21日判時1770号109頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判平成14年9月24日民集207号175頁

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iPadを使ったインフォームドコンセントは有用【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第21回

iPadを使ったインフォームドコンセントは有用医師が行うインフォームドコンセントは治療内容であったり臨床試験であったり、まちまちです。研究や医療に参加する患者さんや被験者は、その仔細を完全に理解しているわけではなく同意書にサインをしてしまいます。というのも、医療従事者でなければその根幹を理解することは不可能だからです。そのため、医療従事者はできるだけわかりやすく説明をする必要があります。コンピューターを使ったインフォームドコンセントが有用であるとする報告はいくつかありますが(Arch Intern Med. 2009;169:1907-1914. )、iPadのような新しいデバイスを用いた研究はほとんどありません。私の恩師である先生はiPadを自由自在に用いて患者さんに説明しておられますが、私はプライベート以外でiPadを使ったことは一度もありません。プライベートといっても、息子の写真を保存しているだけで、まったく使いこなせていないのが正直なところです。最近ようやくWi-Fi(ワイファイ)という言葉を覚えたくらいで、「クラウド」とかまた新しい言葉が出てきて困っているところです。さて、今回紹介する論文は、臨床研究についての同意を得る際にiPadを用いたほうがよいのではないかと結論づけたものです。Rowbotham MC, et al.Interactive informed consent: randomized comparison with paper consents.PLoS One. 2013;8:e58603.このプロスペクティブランダム化比較試験は、 実際の臨床試験(抗がん剤の神経障害について)の内容を伝える方法として、iPadと紙ベースを比較したものです。この比較試験の被験者として、研究者と患者の双方に参加してもらいました。90人の参加者のうち、69人がオンラインテストを完遂しました。オンラインテストは、当該研究の目的、研究内容に質問があった場合に誰に尋ねるか、試験期間の長さなどを答える一問一答形式です。研究者14人では、iPadで説明を受けた人のほうがオンラインテストの点数がいい傾向にあったそうです (平均正答率77% vs 57%、p =0.07)。一方、患者55人では、iPadによる説明を受けた場合のオンラインテストの点数は、紙ベースの説明を受けた場合よりも有意に高いという結果が得られました(平均正答率75% vs 58%、 p<0.001)。また、紙ベースの場合、iPadと違って閲覧時間が非常に短いという結果も得られました。最近は、学校でもタブレットを使って授業を行うところもあるそうですね。目にやさしいディスプレイだから大丈夫、などとも言われていますが、なんとなく抵抗感を覚えるのは私だけでしょうか? 何でもかんでも次世代機器というのはケシカラン!と言うと、自分が時代遅れのオジサンになってしまった気がして、ちょっぴりさびしい気もします。

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COPDと糖尿病の合併例にメトホルミンは安全か

 COPDと2型糖尿病の合併例へのメトホルミン使用について、COPDであることを研究的・臨床的使用の障壁とすべきではないとの検討結果を、英国ロンドン大学セント・ジョージ校のAndrew W. Hitchings氏らが報告した。Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease誌オンライン版2014年6月10日号の掲載報告。 2型糖尿病とCOPDは一般的に関連があるとされている。メトホルミンは2型糖尿病に対して意義のある治療であるが、COPDに対してもベネフィットがあるかもしれない。しかしながら、メトホルミンのまれな副作用として乳酸アシドーシスの報告があることから、COPDにおける安全性については明らかになっていない。 そこで、過去にCOPD増悪で入院を経験したことのある2型糖尿病患者130例をレトロスペクティブに抽出し、乳酸濃度(プライマリーエンドポイント)と生存率(セカンダリーエンドポイント)をメトホルミン投与群と非投与群で比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は73.0±9.8歳、47例(36%)は女性だった。・120例の動脈血ガスを測定し、88例(73%)は低酸素血症、45例(38%)は呼吸不全、33例(28%)は呼吸性アシドーシスであった。・メトホルミン投与群51例(39%)における乳酸濃度の中央値(四分位範囲)は1.45mmol/L(1.10~2.05)であり、非投与群では1.10mmol/L(0.80~1.50)であった(p=0.012)。・生存期間の中央値は投与群で5.2年(95%CI:4.5~5.8)、非投与群で1.9年(95%CI:1.1~2.6)であった(ハザード比:0.57、95%CI:0.35~0.94)。これらは測定可能な交絡因子で調整した多変量モデルにおいても、有意なままであった。 今回、乳酸蓄積のリスクの高いCOPD患者において、メトホルミン療法は臨床的意義の不確かな、乳酸濃度のやや高値と関連していることが示された。これらのことから、著者は「メトホルミンは生存ベネフィットの観点でみると恩恵はあるが、測定不可能な交絡因子によって起こりうる影響も考えられるため、本検討の結果は慎重に解釈すべきである」としている。■「メトホルミン」関連記事eGFRが30未満は禁忌-メトホルミンの適正使用に関する Recommendation

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アトピー性皮膚炎治療に高周波超音波モニタリング導入を

 免疫抑制剤の一種でアトピー性皮膚炎(AD)に対するリアクティブおよびプロアクティブ治療の有効性が確立しているタクロリムスの塗布治療について、非侵襲的なモニタリング方法として高周波超音波検査法(HF-USG)を用いる検討が、ポーランド・ポズナン医科大学のAdriana Polanska氏らにより行われた。タクロリムス治療の安全性および有効性については、すでに無作為化試験で検討されているが、皮膚への作用の評価指標は異なるスコアや尺度によって行われてきたことから、本検討が計画された。Skin Research Technology誌オンライン版2014年6月4日号の掲載報告。 研究グループは、6ヵ月間のタクロリムス治療の観察を、HF-USG(真皮上層低エコー領域[SLEB]に定量)とエバポリメーターによる高周波の超音波検査で行う検討を行った。 AD患者39例(平均年齢26.3±12.8歳)を対象に、4週間ごとの外来受診時に同測定を行い(計7回)、右前肘窩で疾患重症度の評価を、医師の総合評価(IGA)に基づき行った。 主な結果は以下のとおり。・39例で試験を開始したが、6ヵ月間の試験を完了したのは22例(54.6%)であった。・39例のうち、31例(79.5%)が4週間以上のプロアクティブ治療を受けた。・治療期間中、IGA、SLEB、TEWLには統計的に有意な変化が観察された。・また、病変部と非病変部のSLEB、TEWLにも、統計的に有意な差がみられた。・以上のように、アトピー性皮膚炎のタクロリムス治療ではHF-USGが有用であることが示された。・同ツールは簡便で再現性があり、in vivoでの皮膚すべての病理学的な変化を想起させることが可能である。 これらを踏まえて著者は、「非侵襲性で客観的な判定方法として、HF-USGは、共通のスコアまたは尺度を有しており、とくにエビデンスベースの医療の時代であることから、アトピー性皮膚炎の疾患重症度のあらゆる評価に組み込むべきである」とまとめている。

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他の精神科医は薬剤の選択基準をどこに置いているのか

 統合失調症患者に対する抗精神病薬治療のベネフィット・リスク評価にあたり、精神科医はどのように判断を定量化しているのだろうか。また、患者のアドヒアランスはこの判断にどのような影響を及ぼしているのか。米国のMichael A Markowitz氏らが、その答えを明らかにすべく検討を行った結果、精神科医は当然ながら治療法選択にあたって陽性症状の改善を最も重視しており、アドヒアランス低下時には剤形の選択がより重要となることが示された。Psychiatric services誌オンライン版2014年5月15日号の掲載報告。 精神科医にとっての統合失調症治療におけるリスクとベネフィット、代替薬処方に関する相対的重要性について、離散選択モデルを用いたWeb調査により評価した。米国と英国の精神科医は、剤形ごとにさまざまなレベルの改善(陽性症状、陰性症状、社会的機能、体重増加、錐体外路症状、高プロラクチン血症、高血糖)によって特徴づけられる選択肢より回答した。回答者の判断には、過去の患者アドヒアランスの影響を評価に含んだ。ランダムパラメータロジットおよび二変量プロビットモデルにより推定を行った。 主な結果は以下のとおり。・394名の精神科医から回答が集まった。・陽性症状が「改善なし」から「大いに改善」となるシナリオが最も好ましいという結果が得られ、相対的重要度スコアは10と割り当てられた。・その他、重要度の高い順に見ると、陰性症状[改善なし→大いに改善(相対的重要度5.2、95%CI:4.2~6.2)]、社会的機能["severe problems"→"mild problems"(4.6、CI:3.8~5.4)] 、高血糖なし(1.9、CI:1.5~2.4)、15%超の体重増加なし(1.5、CI:0.9~2.0)、高プロラクチン血症なし(1.3、CI:0.8~1.6)、錐体外路症状なし(1.1.CI:0.7~1.5)であった。・剤形については、若干の有効性の変化よりも、アドヒアランス低下例に重要であり、注射剤は毎日の経口剤より好まれた(p<0.05)。関連医療ニュース 抗精神病薬の用量決定時、精神科医が望むことは 抗精神病薬注射剤を患者は望んでいるのか どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与  担当者へのご意見箱はこちら

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血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet

 30歳以上(最高95歳)の血圧値と12の心血管疾患との関連を分析した結果、どの年齢でも強い相関性が認められ、現状の高血圧治療戦略では生涯負荷が大きいことが明らかにされた。英国・Farr Institute of Health Informatics ResearchのEleni Rapsomaniki氏らが、同国プライマリ・ケア登録患者から抽出した125万例のデータを分析して報告した。著者は「今回の結果は、新たな降圧治療戦略の必要性を強調するものであり、その評価のための無作為化試験をデザインする際の有用な情報になると思われる」とまとめている。本報告は、血圧と心血管疾患との関連に関する最新の集団比較研究である。Lancet誌2014年5月31日号掲載の報告より。プライマリ・ケア登録125万例のデータを用いて分析 調査対象とした12の心血管疾患は、安定・不安定狭心症、心筋梗塞、予測していなかった冠動脈疾患死、心不全、心停止/突然死、一過性脳虚血発作、詳細不明の脳梗塞と脳卒中、くも膜下出血、脳内出血、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤)だった。 被験者データは、1997年1月~2010年3月にCALIBER(CArdiovascular research using LInked Bespoke studies and Electronic health Records)プログラムへと、225人のプライマリ・ケア医により登録された125万例分を用いた。被験者は30歳以上で、登録時は心血管疾患がなく、約5分の1(26万5,473例)が降圧治療を受けていた。 これらのデータについて、エンドポイントを12の心血管疾患の初発とし、臨床的に測定した血圧値と12の急性・慢性心血管疾患との関連を年齢特異的に比較検討した。また、生涯リスク(最高年齢95歳まで)と、その他リスク因子補正後の30歳、60歳、80歳時における心血管疾患発症の早まりを推算した。関連が低かったのは各年齢とも90~114/60~74mmHg、J曲線関連はみられず 追跡期間中央値5.2年の間に、8万3,098件の初発心血管疾患が記録されていた。 心血管疾患リスクが最も低かったのは、各年齢群とも、収縮期血圧値90~114mmHg、拡張期血圧60~74mmHgの人で、血圧低値群ではリスクが増大するというJ曲線関連のエビデンスはみられなかった。 また高血圧の影響は、心血管疾患エンドポイントでばらつきがあり、強く明白な影響が認められる一方で、まったく影響が認められない場合もあった。 収縮期血圧高値との関連が最も強かったのは、脳内出血(リスク比:1.44、95%信頼区間[CI]:1.32~1.58)、くも膜下出血(同:1.43、1.25~1.63)、安定狭心症(同:1.41、1.36~1.46)だった。逆に最も弱かったのは、腹部大動脈瘤(同:1.08、1.00~1.17)。 拡張期血圧と収縮期血圧の影響を比較した分析では、収縮期血圧上昇の影響が大きかったのは、安定狭心症、心筋梗塞、末梢動脈疾患だった。一方、拡張期血圧上昇の影響が大きかったのは腹部大動脈瘤であった。 脈圧の影響に関する分析では、腹部大動脈瘤だけが唯一、高値ほどアウトカムが良好となる逆相関がみられた(10mmHg上昇ごとのHR:0.91、95%CI:0.86~0.98)。なお脈圧の影響が最も強かったのは、末梢動脈疾患(HR:1.23、95%CI:1.20~1.27)だった。 高血圧症の人(血圧値140/90mmHg以上または降圧薬服用者)の30歳時における全心血管疾患発症の生涯リスクは63.3%(95%CI:62.9~63.8%)であるのに対して、正常血圧の人では46.1%(同:45.5~46.8%)だった。同年齢において高血圧は心血管疾患の発症を5.0年(95%CI:4.8~5.2年)早めることが示され、狭心症の発症が最も多かった(43%;安定狭心症22%、不安定狭心症21%)。 一方80歳時では、高血圧の影響による発症の早まりは1.6年(95%CI:1.5~1.7年)で、心不全、安定狭心症(それぞれ19%)が最も多かった。

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化学療法非選択の転移性前立腺がんに、新たな治療選択肢/NEJM

 化学療法を受けておらずアンドロゲン除去療法後に進行がみられた転移性前立腺がん患者に対し、経口アンドロゲン受容体阻害薬エンザルタミドは、増悪および死亡のリスクを有意に低下し、化学療法の開始を有意に延長したことが示された。米国・オレゴン健康科学大学のTomasz M Beer氏らによる第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、試験は当初計画した中間解析後に、試験薬の有益性が示されたとして早期終了となった。エンザルタミドは、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者で化学療法後の進行例に対し生存を延長することは確認されていた。NEJM誌オンライン版2014年6月1日号掲載の報告より。経口アンドロゲン受容体阻害薬vs. プラセボ、1,717例対象に無作為化試験 研究グループは、化学療法を選択せずアンドロゲン除去療法を選択したが無効であった患者への新たな治療選択の確立を目的に、同患者にエンザルタミドを投与しその有効性と安全性を検討する試験を行った。 被験者は2010年9月~2012年9月に世界207施設で1,717例が登録され、エンザルタミド(160mgを1日1回、872例)またはプラセボ(845例)を投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、X線画像診断による無増悪生存と全生存の共同エンドポイントで、計画では約516例の死亡発生後に中間解析を行う予定になっていた。 計画通り死亡540例が報告された時点(データカットオフ2013年9月16日)で中間解析を行った結果、エンザルタミド群の有益性が確認され、試験は早期に終了となった。進行リスクを81%低下、死亡リスクは29%低下 追跡期間12ヵ月時点で、X線画像診断による無増悪生存が確認された患者は、エンザルタミド群65%、プラセボ群14%で、エンザルタミドによる81%の進行リスク低下が認められた(エンザルタミド群のハザード比[HR]:0.19、95%信頼区間[CI]:0.15~0.23、p<0.001)。 データカットオフ時の生存は、エンザルタミド群626例(72%)、プラセボ群532例(63%)で、エンザルタミドによる29%の死亡リスク低下が認められた(エンザルタミド群のHR:0.71、95%CI:0.60~0.84、p<0.001)。 エンザルタミドの有益性は、すべての副次エンドポイントでも認められた。すなわち、細胞毒性化学療法開始までの期間(HR:0.35)、初発の骨格系関連事象までの期間(同:0.72)、軟部組織奏効(59%vs. 5%)、前立腺特異抗原(PSA)増悪までの期間(HR:0.17)、PSA値50%以上低下達成割合(78%vs. 3%)であった(すべての比較のp<0.001)。 エンザルタミド治療に関連した、頻度の高い臨床関連有害事象は、倦怠感と高血圧だった。

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PCSK9阻害薬は新たなコレステロール治療薬となりうるのか?(解説:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(216)より-

LDLコレステロール(LDL-C)が心血管イベントの重要なリスクファクターであること、そしてスタチンによるLDL-C値の低下に伴いイベントの発生率が減少したことで、ASCVD(Atherosclerotic Cardiovascular Disease)においてLDL-C値をより低くコントロールすることが目標とされた。 しかし、スタチンを使用しても管理目標値に到達できない患者群があり、これまでは治療薬としてエゼチミブが併用されていたが、それでも不十分であった。 エボロクマブはLDL-C受容体の分解を促進する蛋白であるPCSK9を阻害することで、スタチンの効果を増強しLDL-Cをさらに著明に低下させることを実現した抗体薬である。本薬の使用で、通常の治療に加えて平均57%、LDL-Cを低下させることがDESCARTES試験として発表された。この試験は、スタチンでは明らかにできなかった新たな世界を広げるエボロクマブの可能性を示している。 LDL-Cの低下のエビデンスはすべてスタチンを用いた試験に基づいていることから、AHA/ACCの今回改訂されたガイドラインでは、LDL-Cの管理目標値を設定せず、高用量のスタチンを使用するだけでよいとされた。エボロクマブは、スタチン以外にLDL-Cを低下させることを可能にした薬剤である。スタチンを用いないLDL-Cの低下によりイベントが減少するかを検証できるようになった。 また、スタチン単独ではLDL-C値を70mg/dL以下にすることが困難であったために、さらなる低下がイベントを減少させるのかが明らかでなかった。エボロクマブは、このようなLDL-Cと心血管イベントとの関連についての科学的な疑問を解決できる可能性のある薬剤である。 今後、イベントを検証するFOURIER試験が計画されている。LDL-Cに関する残された謎が解明され、多くのASCVD患者にとってこの薬剤が福音をもたらすのかどうか、2019年の結果に注目したい。

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エキスパートに聞く! 「SGLT2阻害薬」 パート1

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。今回は「糖尿病診療」の中で今旬の話題である「SGLT2阻害薬」について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。明日の診療から使えるコツをお届けします。1日に尿に排泄される糖は、約60g程度と聞いています。この量は血糖コントロールの改善に差が出てくるのでしょうか、ご教示ください。健常人では糸球体から180g/日(血糖値100mg/dLの場合)の糖が濾過されますが、血糖値が尿糖排泄閾値160~180mg/dLを超えない限り、近位尿細管に発現するSGLT2(再吸収の約90%を担う)とSGLT1(再吸収の約10%を担う)の働きによりほぼ100%再吸収されるため、尿糖排泄はみられません。一方、健常人にSGLT2阻害薬を投与すれば、SGLT1による糖再吸収能が高まり、尿糖排泄量は糸球体濾過量の1/3程度にとどまると考えられています。尿糖排泄量は、血糖管理状況と腎機能の影響を受けるため、2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与した場合、尿糖排泄量のバラツキは大きくなり、各薬剤の添付文書によれば、70~140g/日まで増加します。すなわち血糖値が高いほど、尿糖排泄量が多くなり、HbA1c低下量は大きくなります。このようにSGLT2阻害薬による血糖改善効果の程度は、腎機能が正常である限り、使用時のHbA1c値によって変わってきます。具体的な投与対象患者像について、また、投与を避けたほうがよい患者像について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄促進により血糖を改善するため、腎機能低下がない限り血糖を低下させます。また、体重減少、血圧低下、中性脂肪低下、HDL-コレステロール上昇、尿酸低下、糖毒性改善に伴うインスリン分泌能およびインスリン抵抗性の改善といった多面的効果も期待できます。その一方で、(1) 浸透圧利尿による多尿、頻尿、脱水、血圧低下、(2) 尿糖排泄増加に伴う尿路/性器感染症、(3) 糖新生促進によるケトン体増加、筋組織の萎縮など今後の臨床応用において留意すべき多くの点があります。各々の留意点として、(1) 口渇を感じにくい高齢者、腎機能低下例、利尿剤使用例、脳梗塞既往例、自律神経障害例、乳酸アシドーシス危険因子の保有例、(2) 尿路/性器感染症の既往例、とくに女性、(3) インスリン分泌能低下例(ケトアシドーシスリスク)、やせ、筋肉量が少ない例が挙げられます。つまり、最も適切な投与患者像は、非高齢の、罹病期間が比較的短い、肥満2型糖尿病例と考えられます。これらの患者においてもSU薬やインスリンとの併用時には低血糖発現に留意すべきで、あらかじめSU薬、インスリンを減量することを勧めます。コントロール不良例で使用する場合の注意点についてご教示ください。血糖管理不良例では尿糖排泄量が増加するため、SGLT2阻害薬の有効性は高くなります。しかし、血糖管理不良時には内因性インスリン分泌能を見極める必要があり、さらに頻尿、脱水などの副作用の頻度や重症度が高くなる可能性があるため注意が必要です。新規2型糖尿病患者の場合、肥満でインスリン非依存状態にあればよい適応です。しかし、非肥満例では糖新生に伴う骨格筋萎縮の懸念が強く、不適と考えます。すでに他剤が投与されているインスリン非依存例では、前投薬がインスリン製剤もしくはSU薬の場合は低血糖に、ビグアナイド薬の場合は乳酸アシドーシスに注意する必要があります。他剤の使用の有無にかかわらず、インスリン依存状態(体重減少例、ケトーシス例)ではケトアシドーシスに注意する必要があり、インスリン製剤を先行投与すべきです。SGLT2阻害薬のHbA1cの低下効果はどの程度でしょうか、ご教示ください。2014年6月18日現在、わが国ではイプラグリフロジン(商品名:スーグラ)、ダパグリフロジン(同:フォシーガ)、ルセオグリフロジン(同:ルセフィ)、トホグリフロジン(同:アプルウェイ/デベルザ)が発売、カナグリフロジンが発売準備中、エンパグリフロジンが承認申請中の状態です。一般にHbA1cの低下効果は、ベースラインHbA1c値に依存します。すなわちHbA1cが高い患者ほどよく下がります。わが国での臨床試験結果から、HbA1c8%程度に使用した場合、0.7~1.0%の低下が期待できると思われます。この効果は薬剤間で有効性に差はないものと思われます。単独療法での各SGLT2阻害薬のHbA1c改善効果は、52週時点で-0.6~0.67%と大きな差はありません。IC50で評価した各SGLT2阻害薬のSGLT2阻害活性が1.3~6.7nmol/Lと大きな違いがないことからも有効性に大差はないと考えられます。(高齢者の)浸透圧利尿による脱水の程度、およびその対処法や泌尿器科領域の感染症の頻度とその重症度について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄増加に伴う浸透圧利尿により尿量を増加させ、継続投与による尿量増加は200~600mL/日程度とされています。そのため、通常より約500mL/日多く飲水を行えば脱水を回避できると予想されます。継続投与による体液量関連指標の変化は、ヘマトクリット:+1%、尿素窒素:+1.5mg/dL、血清クレアチニン値:腎機能正常例-0.05mg/dL、中等度腎機能低下例+0.1mg/dL程度です。また、多尿、頻尿、口渇の発現率は、各々0~1%、2~5%、0~2%です。しかし、前述した値はあくまでも平均値であり、各々の値の標準偏差は大きいため、実地臨床で使用する場合には注意が必要であり、とくに口渇感を感じにくい高齢者、利尿剤使用例、血糖管理不良例では注意を要します。SGLT2阻害薬では、尿糖排泄増加による尿路や性器感染症が懸念されています。発現頻度は各々1~5%、1~7%で、重症度は軽症から中等症にとどまり、重症例は現時点で報告されていません。これらの多くは既往を有する例であり、とくに女性では注意が必要です。※エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A Part2はこちら

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