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RCTの35%が再解析で異なる結論に/JAMA

 米国・スタンフォード大学のShanil Ebrahim氏らは、「無作為化臨床試験(RCT)のデータを再解析することは、科学界が既報の試験結果の妥当性を評価するのに役立つ可能性がある」として、RCTデータの再解析報告の現状について調べた。オリジナル試験との方法論などの違いを特徴づける検討を行った結果、現在までに発表されたRCTの再解析報告はわずかで、完全に独立した著者により実行されたものはほとんどなかった。また再解析報告のうち35%が、オリジナル試験論文と比べて、治療すべき患者のタイプや数について異なる結論がみられたという。JAMA誌2014年9月10日号掲載の報告より。オリジナル試験論文との違いを調査 研究グループは、RCTデータの再解析報告を特定し、オリジナル試験との方法論およびその他の違いを明らかにすること、再解析を行った著者の独立性を評価し、オリジナル論文と治療すべき患者のタイプや数について結論が変わっていないかどうかを調べた。 2014年3月9日時点でMEDLINEにて論文を検索。論文のスクリーニングとデータの抽出は4名の研究者が独立して行った。 主要評価項目は、治療効果の方向性および大きさ、統計的有意性、治療すべき患者のタイプまたは数についての結論についての変化だった。35%で、オリジナル試験論文と結論が変化 検索により、発表論文36件、再解析報告適格37件を特定した。そのうち、まったく異なる研究者により行われた再解析は5件。内訳は、公的データに基づくものが2件、求めに応じて提供されたデータに基づくものが2件、残り1件はデータの入手元が不明であった。 再解析の大半は、統計または分析アプローチ法が異なり(18件)、アウトカムの定義または測定が異なっていた(12件)。 方向性が変化していた再解析は4件、治療効果の大きさが変化していたのは2件であった。一方で、4件が所見の統計的有意性の変化に至っていた。 オリジナル論文と結論が異なっていたのは13件(35%)であった。3件(8%)は、治療すべき患者が変わっており、治療すべき患者が少なくなっていたのは1件(3%)、治療すべき患者が多くなっていたのは9件(24%)であった。

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急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学

 順天堂大学の八田 耕太郎氏ら精神科救急医療機関の多施設共同研究グループ(JAST study group)は、統合失調症の急性期患者でリスペリドンまたはオランザピンの早期治療反応不良(ENR)例について、それぞれへの切り替えvs. 追加併用の検討を行った。結果、リスペリドンENR患者でオランザピンへの切り替えは、オランザピン追加併用よりもわずかだが優れる可能性が、一方でオランザピンENR患者ではリスペリドン追加併用がリスペリドン切り替えよりもわずかに優れる可能性が示されたことを報告した。Schizophrenia Research誌2014年9月号の掲載報告。 検討は、精神科救急医療部門で統合失調症の新規入院急性期患者を適格とし、評価者盲検無作為化試験にて行われた。最初に投与した抗精神病薬(リスペリドン[RIS]またはオランザピン[OLZ])について、ENR(Clinical Global Impressions-Improvement[CGI]尺度:2週時点で4以上)であった患者を、もう一方の抗精神病薬を追加併用する群、または切り替える群に無作為に割り付けて検討した(RIS+OLZ vs. RIS-OLZ、OLZ+RIS vs. OLZ-RIS)。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドン治療を2週間受けた患者60例のうち、早期治療反応(ER)例は33例、ENRは27例であった。後者の患者のうちRIS+OLZに14例、RIS-OLZに13例が割り付けられた。・あらゆる要因による治療中止までの期間について、RIS+OLZ群(54.1日、95%信頼区間[CI]:41.3~67.0日)は、RIS-ER群(同:68.7日、61.2~76.2日)よりも有意に短かった(p=0.050)。・一方、RIS-OLZ群(同:58.5日、43.1~73.9日)はRIS-ER群と比較し、有意な差はなかった(p=0.19)。・オランザピン治療を2週間受けた患者60例のうち、ER例は36例、ENRは24例であった。後者の患者のうちOLZ+RISに11例、OLZ-RISに13例が割り付けられた。・あらゆる要因による治療中止までの期間について、OLZ-RIS群(56.1日、95%CI:40.7~71.5日)は、OLZ-ER群(同:74.9日、68.5~81.3日)よりも有意に短かった(p=0.008)。・同期間について、OLZ+RIS群(同:64.6日、49.6~79.6日)はOLZ-ER群と比較し、有意な差はなかった(p= 0.20)。 リスペリドンENR患者でオランザピンへの切り替えは、オランザピン追加併用よりもわずかだが優れる可能性が、一方でオランザピンENR患者ではリスペリドン追加併用がリスペリドン切り替えよりもわずかに優れる可能性が示された。結果を踏まえて著者らは、「これら所見のように日常診療を修正することが妥当か、さらなる検討を行う必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症治療、ベンゾジアゼピン系薬の位置づけは オランザピンによる急性期治療、心血管系に影響 統合失調症の急性増悪期、抗精神病薬の使用状況は?:国立精神・神経医療研究C  担当者へのご意見箱はこちら

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高齢者のNSAIDs使用実態が明らかに

 オーストラリア・シドニー大学のDanijela Gnjidic氏らによる調査の結果、高齢者において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は適切に使用されていない可能性が報告された。シドニー在住の高齢男性を対象に横断的に調査したところ、その使用実態が、NSAIDsを高齢者に安全に使用するための臨床ガイドラインと一致していないことが明らかになったという。著者は「ガイドラインの勧告と現実世界で起きていることの差異をさらに検討しなければならない」とまとめている。Pain誌2014年9月号(オンライン版2014年6月20日号)の掲載報告。 研究グループは、シドニー在住の70歳以上の男性1,696例を対象に、疼痛有病率、NSAIDsの使用パターンや使用期間、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用、薬物相互作用の発生などについて調査した。 主な結果は以下のとおり。・NSAIDsを定期的に使用していた(NSAIDs常用者)は8.2%(139例)、必要に応じて使用していた(頓用者)は2.9%(50例)であった。・NSAIDs常用者の平均治療期間は4.9年で、ガイドラインで推奨されている使用期間(短期使用)より長いことが示された。・ガイドラインではPPIの併用が推奨されているが、NSAIDs常用者における併用率は25.2%にすぎなかった。・NSAIDs常用者は頓用者と比較して、オピオイド鎮痛薬を使用している傾向が有意に高かった(p<0.0001)。・NSAIDs常用者は頓用者と比較して、慢性疼痛(p<0.0001)、最近の疼痛(p=0.0001)、慢性の侵入的な疼痛(p<0.0001)を有している可能性が有意に高かった。

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厳格な血糖コントロールのご利益と選択の是非(解説:景山 茂 氏)-246

ACCORD研究は、強化療法群における死亡が有意に多かったために早期終了し、平均追跡期間は3.7年であった。本論文は、この試験期間に加え、試験終了後は両群共に緩やかな血糖コントロールに変更して追跡した1.2年のデータを加えて報告している。平均年齢62歳、2型糖尿病の罹病期間10年の心血管疾患のハイリスクの患者においても、心筋梗塞は強化療法群において少ないことが示された。 強化療法群の死亡はHbA1cが低下しなかった人に多かったこと、および死亡の80%以上は心筋梗塞によるものでなかったとする過去の報告に加えて、本解析ではHbA1cを時間依存共変量として調整するとハザードは有意でなくなることなどを挙げ、心筋梗塞予防に対する血糖コントロールの重要性を述べている。 DCCTおよびUKPDSでは試験終了後、約10年間のフォローアップを行った。試験終了後の期間は、強化療法群と従来療法群との間に血糖コントロールレベルに差がなかったにもかかわらず、強化療法群では細小血管障害のみならず大血管障害も有意に減少した。細小血管障害のみならず大血管障害にも認められた強化療法の効果をDCCTではmetabolic memory、UKPDSではlegacy effectと呼び、注目されている。 厳格な血糖コントロールには心筋梗塞の予防効果はあるにしても、罹病期間の長い比較的高齢の2型糖尿病患者にHbA1c<6%を目指す治療は危険であるという解釈には変わりはない。強化療法による厳格な血糖コントロールは、心筋梗塞は予防したが患者は亡くなったというのでは本末転倒であり、この治療法は選択すべきではないというのが現時点での判断といえよう。 HbA1c6%未満を目指すべき強化療法の適応は、どのような集団であるのかを明らかにすることが今後の課題である。

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56)禁煙しても体重を増やさない方法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師禁煙の準備の方は、いかがですか? 患者禁煙すると、体重が増えるのが心配で・・・ 医師確かに、そうですね。一般的に禁煙すると2~3㎏、体重が増えますからね。 患者やっぱりそうですか? 体重が増えると、糖尿病になるんじゃないかと思って・・・ 医師禁煙してから5年間くらいは、糖尿病リスクが高まります。10年くらい経つと、そのリスクはなくなります。 患者5年間ですか。体重が増えない方法や糖尿病にならないための注意点を教えてください。 医師わかりました。禁煙と食事制限を同時に行うと、禁煙に失敗する人が多いですから、運動療法を併用しましょう。 患者はい。わかりました。●ポイント禁煙指導とともに、体重増加予防のための運動療法を推奨します●資料喫煙自体は糖尿病発症リスクを高める(1.44倍)。禁煙後、男性では1.42倍、女性では 2.84倍と高まる(5年間、日本の報告)。英国での報告では10年ほど経つと、その差がなくなる。25本以上の喫煙(OR = 2.15)、糖尿病の家族歴(OR=1.51)がある人が禁煙後に糖尿病になりやすい。 1) 坂根直樹. Q&Aでわかる肥満と糖尿病. 2010; 9: 711-712. 2) Oba S, et al. PLoS One. 2012; 7: e17061.

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糖尿病高齢者に多い皮膚病変とは

 65歳以上高齢者における糖尿病と関連した皮膚疾患の有病率を調べた結果、慢性の皮膚潰瘍、脚部の褐色斑、かゆみが多いことが示された。台湾・高雄退役軍人総合病院のH-W. Tseng氏らが、退役軍人施設に入所する313例について調査し報告した。著者は、「糖尿病にみられる皮膚の特徴を観察することで、糖尿病患者の状態をより完全に評価することが可能である。糖尿病に関連した皮膚の情報は、適切な治療と看護を提供するための基本である」とまとめている。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌オンライン版2014年9月1日号の掲載報告。 研究グループは、高齢の男性における皮膚疾患と糖尿病および糖尿病に関連した皮膚疾患の統計的な関連性を調べた。 台湾の退役軍人施設で断面調査を行い、入所者の皮膚の症状、主な全身性疾患を記録。年齢、BMI、顕著であった全身性疾患で補正後、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行い、オッズ比(OR)とp値を求めて統計的関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、65歳以上男性313例で、そのうち70例(22.4%)が糖尿病を有していた。・糖尿病被験者に最もよくみられた皮膚の症状は、真菌感染症(77%)、脚部の褐色斑(38.3%)であった。・補正後ORの評価により、糖尿病との有意な関連が認められたのは、慢性の皮膚潰瘍(AOR:4.90、95%CI:1.82~13.19、p=0.002)、脚部の褐色斑(同:6.82、3.60~12.89、p<0.001)、かゆみ(同:12.86、4.40~37.59、p<0.001)であった。・糖尿病被験者では、細菌感染症、疥癬、スキンタッグのリスクがわずかだが高かった。

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ASCOの妊孕性温存ガイドライン改訂

 妊孕性温存は、がんサバイバーのQOLにとって重要であり、がん治療に影響を及ぼす。この重要性を鑑み、2006年にASCOは委員会を招集しガイドラインを発行。その後の妊孕性温存の進歩に伴い、2013年に改訂が加えられた。2014年8月、横浜市で開催された日本治療学会学術集会にて、米国・ニューヨーク医科大学のKutluk H Oktay氏は「ASCO Guidelines for Fertility Preservation:2013 Updates」と題し、ASCOガイドラインの概要を紹介した。 妊孕性保護については、ほとんどの患者は紹介すらされておらず、実際に妊孕性保護の対策を受けている患者はほんの一握りしかいないという。この問題の原因の主たるものは、患者と臨床医のコミュニケーション不足にある。ASCO妊孕性保護委員会は、がん専門医が関与して、治療が不妊や早期閉経の問題を起こすことを早期に患者に知らせ、がんのタイプや年齢、治療法による個々人のリスクを議論しなければならないと強調している。 Oktay氏は例として、抗がん剤の卵胞毒性について触れた。卵胞は原始卵胞期から胞状卵胞期へと成長し排卵されるが、抗がん剤がどの段階に障害を与えるかは、その種類によって異なる。代謝拮抗剤は胞状卵胞期にのみ影響を与える。このグループの薬剤ではダメージで月経が停止しても、卵巣内で次の卵胞は成長しているため、新しい排卵が起こり月経も再開する。一方、アルキル化剤やトポイソメラーゼ阻害薬などは、原始卵胞期にも障害を与える。つまり、予備の卵にまでダメージを与えてしまい、卵胞形成に対する障害は非常に大きい。どちらのグループも無月経をもたらすが、ダメージは異なるのである。そのため、抗がん剤は卵巣毒性の程度で4段階に分類されている。 また、化学療法施行患者の卵巣における卵の予備量を非施行者と比較した試験では、化学療法施行により卵の予備数が約10歳分減少することが明らかになっている。乳がん患者で出産を望む場合などでは、たとえ治療開始時には若年でも妊孕性保護を考慮しなければならないこともある。 ASCO妊孕性保護委員会は、不妊の危険性がある場合、生殖年齢のすべての患者には妊孕性保護の紹介をすべきであり、たとえ明確な意見を持っていなくても、できるだけ早期に触れるべきである、としている。 成人男性に対する精子凍結保存、成人女性に対する胚凍結保存および卵母細胞凍結保存や保存的婦人科手術、小児に対する精液、卵母細胞低温保存などを確立された妊孕性保存方法として推奨している。さらに、BRCA変異陽性がん患者についても触れている。BRCA変異陽性患者は原始卵胞が少なく、卵胞刺激による採取卵も少ないこと、また閉経が早く40歳未満の早期閉経が数倍みられることが明らかとなっている。そのため、変異陰性者以上に化学療法後の妊孕性低下が大きいと考えられる。

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ミノサイクリンの投与は統合失調症に本当に有用か:藤田保健衛生大学

 近年、統合失調症患者にミノサイクリンを投与することで精神症状が改善するといわれている。藤田保健衛生大学の大矢 一登氏らは、抗精神病薬による治療を受けている統合失調症患者に対するミノサイクリン増強療法に関する総合的なメタ解析を行った。Human psychopharmacology誌オンライン版2014年8月4日号の報告。ミノサイクリンは統合失調症の精神病理を改善 PubMed、PsycINFO、Google Scholar、Cochrane Library databasesから、2014年6月2日までに公表されたデータを抽出した。ミノサイクリンとプラセボを比較した無作為化比較試験(RCT)から得られた患者データを用い、系統的レビューおよびメタ解析を行った。相対リスク(RR)、標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(95%CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・4件のRCT、330例の患者データが抽出された。・ミノサイクリンはプラセボと比較し、PANSS総スコア(SMD:-0.70)、陰性尺度(SMD:-0.86)、総合精神病理尺度(SMD:-0.50)の減少で優れていた。しかし、陽性尺度(SMD:-0.26)、うつ症状(SMD:-0.28)では差が認められなかった。・ミノサイクリンは、すべての原因による中止(RR:1.10)、効果不十分による中止(RR:0.42)、有害事象による中止(RR:1.56)、死亡による中止(RR:3.18)においてプラセボと同等であった。・ミノサイクリンは、錐体外路系副作用のスコアにおいてプラセボよりも優れていた(SMD:-0.32)。 今回の結果から、ミノサイクリンは統合失調症の精神病理(とくに陰性症状)を改善し、忍容性も良好であることが示唆された。■関連記事統合失調症治療に抗炎症薬は有用かテストステロンは統合失調症治療の標的となるか治療抵抗性統合失調症に対する漢方薬「抑肝散」の有用性:島根大学

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国民の3分の1はロコモ予備軍-日整会プレス説明会

 9月11日、都内において日本整形外科学会主催によるプレス説明会が10月8日の「骨と関節の日」を前に開催された。説明会では、わが国における骨・運動器関連疾患の現状や今後の対策のほか、「ロコモティブシンドロームの要因としての上・下肢の痛みとしびれ」と題して、日常の愁訴から考えるロコモティブシンドロームについてのレクチャーが行われた。■日本人の約3分の1が運動器に障害あり 最初に、同学会の理事長である岩本 幸英氏(九州大学大学院医学研究院整形外科 教授)が、理事長挨拶として骨・運動器疾患の概要を述べ、変形性腰椎症や骨粗鬆症などの患者数が4,700万人を超え、トタールでみたとき、運動器の障害が脳血管疾患や認知症を抑え寝たきり原因の1位になっていることを説明した。そして、学会では、平成19年より「運動器の障害により、移動機能の低下を来した状態」を「ロコモティブシンドローム」(以下「ロコモ」)と呼び、広く啓発してきたことを説明。さらにロコモの認識・理解の普及を行い運動機能が衰える高齢者には早めの診療を促すことで、国民の健康寿命を延長していきたいと抱負を述べた。■約6割が治療に消極的 続いて「ロコモティブシンドロームの要因としての上・下肢の痛みとしびれ」と題して、持田 譲治氏(東海大学医学部外科系整形外科学 教授)が、レクチャーを行った。 ロコモは、健康寿命を脅かすものとして、厚生労働省が提唱している「健康日本21」でも認知度の向上と足腰に痛みを持つ高齢者割合の減少がうたわれている。背骨に異常があると手足の痛みやしびれに結び付き、これが患者のQOLを低下させ、さらにロコモの要因となる。 しかし、日本整形外科学会が実施した運動器の慢性痛有症者へのアンケート調査によると「主な治療機関」は民間療法(21%)という回答が一番多く、「特になし」(57%)という回答も過半数を占め、患者自身が治療に消極的である面をうかがわせた。 その他、持田氏が監修した「からだに痛み・しびれがある成人男女」(n=1,030)のWEB調査によれば、44%の回答者が毎日症状を感じており、約57%がその期間が1年以上続いていると回答。上肢に痛み・しびれの部位があると回答した人は30.9%。そして、上肢に痛み・しびれのある318人のうち医療機関に受診している人は、わずか11.9%しかおらず、鍼灸院、接骨院や整体への通院が16.4%、市販薬の服用などが24.8%、特段対処しないが18.6%など多くの人が自己判断による対処で済ませている実態が明らかとなった。仕事や家事への影響では65.7%の人が、仕事や家事に集中力の低下や作業内容、勤務時間の変更などの影響を受けていると回答した。 ■しびれの治療は時間を要する ロコモへの病状進行は、手足の痛み・しびれの後、次第に筋力低下や筋萎縮という運動系障害が現れることが多く、その際、身体を支える機能や身体を曲げる機能の障害を合併し、運動系障害で移動機能の低下が起こり、ロコモの要因となることを説明。診療では、患者さんの自覚症状(痛み、しびれ、筋力減少、変形などの愁訴)の正確な把握が重要であると述べた。 また、一般の方にも理解してもらいたいこととして、日常生活で立位や座位を保つためにも、上肢のロコモ対策が重要であり、痛み・しびれ、筋力低下の中で「しびれ」が一番回復には時間がかかること、急性期と慢性期では、内服薬の違いなど治療法が異なること、痛み・しびれの治療におけるゴールは8割程度であることなど理解のポイントを説明した。 最後に10月8日の「骨と関節の日」には、運動器の健康が体の健康維持にいかに大切かを啓発するさまざまな催しが全国で開催されるので、この機会にロコモへの理解を深めてほしいと語りレクチャーをまとめた。

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ベストマッチの合成薬とベストな試験デザインがもたらした心不全治療のパラダイムシフト(解説:原田 和昌 氏)-245

ここ10年間にFDAより認可された新規の経口心不全治療薬はない(ivabradineも認可せず)。アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるLCZ696は駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者において、β遮断薬などの標準治療に上乗せして、ACE阻害薬エナラプリルよりも、死亡および入院リスクを20%有意に抑制した。 McMurray氏らのPARADIGM-HF研究グループは、47ヵ国1,043施設からの8,442例における二重盲検無作為化試験(第III相)の結果をNEJM誌に発表した。試験は、LCZ696の圧倒的な有益性により早期に中断された。 ACE阻害薬およびARBを中止し、run-in期間に忍容性を確認してLCZ696群200mg 2回/日(バルサルタン320mg/日に相当)かエナラプリル群10mg 2回/日にランダム化した。 LCZ696群で全死亡が16%、心血管系の死亡が20%減少した。また、エナラプリルと比較して心不全による入院リスクを21%抑制し、心不全の症状も緩和した。腎機能の低下や血清カリウム値の上昇はより少なく、症候性低血圧がより多かったが血管浮腫に差はなかった。LCZ696群で血圧は3.2mmHg多く低下したが心拍数に差はなかった。LCZ696群で尿中cGMP排泄が増加した(補遺)。 慢性心不全患者では、レニン・アンジオテンシン系(RAS)、交感神経系が活性化し悪循環が形成される。Na利尿ペプチド系(NPs)は、慢性心不全患者でむしろ活性化が不十分であり、NPsを分解するネプリライシンが亢進しているとされる。 ネプリライシンはNPs(とくにANPとCNP)、サブスタンスP、ブラジキニン、エンドセリン-1、アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、アドレノメデュリンなどを分解する中性エンドペプチダーゼであり、その阻害薬はNPsやブラジキニンなどを活性化する。しかし、基質の特性からネプリライシン阻害薬にはRAS阻害薬を併用する必要がある。 Packer氏、McMurray氏らが2002年に報告したOVERTURE試験では、HFrEF患者にACE、ネプリライシン、アミノペプチダーゼPを阻害するomapatrilatを用いたが、これは血管浮腫の副作用により開発が中止となった。 血管浮腫は主としてブラジキニンとサブスタンスPの過剰によるが、ブラジキニンはACE、ネプリライシン、アミノペプチダーゼPにより分解されるためomapatrilatで血管浮腫が増強したものと考えられる。これに対しLCZ696はACEやアミノペプチダーゼPを阻害しないためブラジキニンの過剰を来さない。また、本試験の結果は心不全におけるACE阻害薬の効果が“適度な”ブラジキニンの活性化で代用できる可能性を示唆している。 これまでLCZ696の高血圧症や駆出率保持の心不全(HFpEF)を有する患者を対象とした小規模試験(PARAMOUNT試験)において、ARB単剤よりも血行動態およびNT-proBNPに関する効果が大きいこと、1日2回投与が望ましいことが示唆されていた。また、run-in期間の設定、エントリー基準にBNPやNT-proBNPを用いる試験デザインもよい結果につながった可能性がある。 今話題のバルサルタンであること、症状の軽いNYHAのI、II度でより有効であること、血管浮腫の多いアジア人でどうか(高血圧患者では確認済み)、長期的に脳内アミロイドβペプチドに影響はないかなどの問題は残されているが、心不全治療においてLCZ696がACE阻害薬やARBに取って代わるかもしれないという本試験の結果の意義を毀損するものではないと考える。

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びまん性汎細気管支炎〔DPB : diffuse panbronchiolitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)は病理組織学的には両側びまん性に分布する呼吸細気管支領域の慢性炎症像を特徴とし、臨床的には慢性副鼻腔炎を伴う慢性気道感染症の形を取る疾患である。そもそもDPBの疾患概念は1960年代に、わが国で確立されたものであるが、欧米においてDPBがほとんど存在しないため、長く認知されてこなかった。しかしながら、1983年、本間氏らによりChest誌上に紹介されて以来1)、徐々に理解が深まり、現在では広く認知され欧米の主要な教科書でも必ず触れられる疾患となっている。■ 疫学以前はそれほどまれな疾患ではなく、1970年代には人口10万人対11という有病率の報告もあったが、近年では典型例は激減し、めったに見ることがなくなった2)。男女差はなく、発症年齢は10~70代まで広く分布するが、発症のピークは中年である。多くの例で、幼小児期にまず慢性副鼻腔炎にて発症し、長い年月を経て下気道症状の咳、膿性痰が加わって症状が完成する。近年DPBが激減した背景には、戦後の日本人の生活水準が急速に向上し、栄養状態が大きく改善したことと、後述するマクロライド療法が耳鼻科領域の医師にも普及し、慢性副鼻腔炎の段階で治癒してしまうことの2つが大きな原因と考えられる。■ 病因明確な発症のメカニズムはまったく不明であるが、本症が病態として副鼻腔気管支症候群(sino-bronchial syndrome: SBS)の形を取ることから、背景には何らかの呼吸器系での防御機構の低下・欠損が推定される。さらにDPBでは親子・兄弟例が多く報告され、また家族内に部分症ともいえる慢性副鼻腔炎のみを有する例が多発することから、何らかの強い遺伝的素因に基づいて発症する疾患と考えられる。この観点からHLAの検討が行われ、日本人DPB患者では、一般人にはあまり保有されていないHLA-B54が高頻度に保有されていることが見出された3)。B54は特殊なHLAで、欧米人やアフリカ人にはまったく保有されず、東アジアの日本を含む一部の民族でのみ保有される抗原であり、このことがDPBという疾患が、欧米やアフリカにほとんど存在しないことと関連があると考えられる。■ 症状最も重要な症状は、慢性的な膿性の喀痰である。この症状のない例ではDPBの診断はまったく考えられない。痰に伴って咳があるのと、併存する慢性副鼻腔炎由来の症状である鼻閉、膿性鼻汁、嗅覚の低下が主症状である。疾患が進行していくと、気管支拡張や肺の破壊が進行し、息切れが増強し、呼吸不全状態となっていく。■ 予後1980年代以前のDPBはきわめて予後不良の疾患であり、1981年の調査では初診時からの5年生存率は42%、喀痰中の細菌が緑膿菌に交代してからの5年生存率はわずかに8%であった。しかしながら、1980年代半ばに工藤 翔二氏によるエリスロマイシン少量長期投与法が治療に導入されると予後は著明に改善し、早期に診断されてマクロライドが導入されれば、むしろ予後のよい疾患となった4)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)病歴と特徴ある画像所見から、典型例では診断は難しくない。画像所見としては、胸部X線所見で中下肺野に強い、両側びまん性の辺縁不鮮な小粒状影の多発を認め、これにさまざまな程度の中葉・舌区から始まる気管支拡張像と過膨張所見が加わる。CT(HR-CT)は診断上、きわめて有用であり、(1) びまん性小葉中心性の粒状影、(2) 分岐線状陰影、(3) 気道壁の肥厚と拡張像がみられる。DPBの診断基準(表1)を示す。表1 びまん性汎細気管支炎の診断の手引き1. 概念びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis: DPE)とは、両肺びまん性に存在する呼吸細気管支領域の慢性炎症を特徴とし、呼吸機能障害を来す疾患である。病理組織学的には、呼吸細気管支炎を中心とした細気管支炎および細気管支周囲炎であり、リンパ球、形質細胞など円形細胞浸潤と泡沫細胞集簇がみられる。しばしばリンパ濾胞形成を伴い、肉芽組織や瘢痕巣により呼吸細気管支炎の閉塞を来し、進行すると気管支拡張を生じる。男女差はほとんどなく、発病年齢は40~50代をピークとし、若年者から高年齢まで各年代層にわたる。慢性の咳・痰、労作時息切れを主症状とし、高率に慢性副鼻腔炎を合併または既往に持ち、HLA抗原との相関などから遺伝性素因の関与が示唆されている#1。従来、慢性気道感染の進行による呼吸不全のため不良の転帰を取ることが多かったが、近年エリスロマイシン療法などによって予後改善がみられている。2. 主要臨床所見(1) 必須項目1)臨床症状:持続性の咳・痰、および労作時息切れ2)慢性副鼻腔炎の合併ないし既往#23)胸部X線またはCT所見: 胸部X線:両肺野びまん性散布性粒状影#3 胸部CT:両肺野びまん性小葉中心性粒状病変#4(2) 参考項目1)胸部聴診所見:断続性ラ音#52)呼吸機能および血液ガス所見:1秒率低下(70%低下)および低酸素血症(80Torr以下)#63)血液所見:寒冷凝集素価高値#73. 臨床診断(1) 診断の判定確実上記主要所見のうち必須項目1)~3)に加え、参考項目の2項目以上を満たすものほぼ確実必須項目1)~3)を満たすもの可能性あり必須項目のうち1)2)を満たすもの(2) 鑑別診断鑑別診断上注意を要する疾患は、慢性気管支炎、気管支拡張症、線毛不動症候群、閉塞性細気管支炎、嚢胞性線維症などである。病理組織学的検査は本症の確定診断上有用である。[付記]#1日本人症例ではHLA-B54、韓国人症例ではHLA-A11の保有率が高く、現時点では東アジア地域に集積する人種依存症の高い疾患である。#2X線写真で確認のこと。#3しばしば過膨張所見を伴う。進行すると両下肺に気管支拡張所見がみられ、時に巣状肺炎を伴う。#4しばしば細気管支の拡張や壁肥厚がみられる。#5多くは水泡音(coarse crackles)、時に連続性ラ音(wheezes、rhonchi)ないしスクウォーク(squawk)を伴う。#6進行すると肺活量減少、残気量(率)増加を伴う、肺拡散能力の低下はみられない。#7ヒト赤血球凝集法で64倍以上。(厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班班会議、平成10年12月12日)SBSの形を取り、画像上、前述のような所見がみられれば、臨床的に診断がなされる。寒冷凝集素価の持続高値、閉塞性換気障害、HLA-B54(+)といった所見が診断をさらに補強する。通常、病理組織検査を必要としないが、非典型例、関節リウマチ合併例、HTLV-1陽性例、他のSBSとの鑑別が難しい例などでは、胸腔鏡下肺生検による検体が必要となる場合もある。近年、DPBが激減していることから経験が不足し、COPD、気管支喘息などと診断されてしまっている例もみられ、注意を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)表2 びまん性汎細気管支炎(DPB)に対するマクロライド療法の治療指針(2000年1月29日)マクロライド少量療法はDPBに対する基本療法であり、早期の症例ほどより高い臨床効果が得られることから、診断後は速やかにマクロライド少量治療法を開始すべきである。 なおマクロライド薬のうち、第1選択薬はエリスロマイシン(EM)である。(投与量及び用法)EM 1日投与量は400または600mgを分2または分3で経口投与する。(効果判定と治療期問)1.臨床効果は2~3ヵ月以内に認められることが多いが、最低6ヵ月は投与して、その臨床効果を判定する。2.長期投与により自覚症状、臨床検査所見(画像、肺機能など)が改善、安定し、重症度分類で4または5級(付記1)程度になれば、通算2年間の投与で終了する。3.終了後症状の再燃がみられれぱ、再投与が必要である。4.広汎な気管支拡張や呼吸不全を伴う進行症例で有効な場合は、通算2年間に限ることなく継続投与する。(付記)1.4級:咳・痰軽度。痰量10mL以下、息切れの程度はH-J II~III。安静時PaO2は70~79 Torrで、呼吸器症状のため社会での日常生活活動に支障がある。5級:呼吸器症状なし。安静時にPaO2は80 Torr以上。日常生活に支障なし。2.マクロライド薬のうち、現在までに本症に対する有効性が確認されているのは14員環マクロライド薬であり、16員環マクロライド薬は無効である。EMによる副作用や薬剤相互作用がある場合、あるいはEM無効症例では、14員環ニューマクロライド薬の投与を試みる。投与例 1)クラリスロマイシン(CAM)200または400mg 分1または分2経口投与2)ロキシスロマイシン(RXM)150または300mg 分1または分2経口投与炎症が強い例では、殺菌的な抗菌薬の静注やニューキノロン経口薬を短期間投与し、感染・炎症を抑えてから基本的治療に入る。基本的治療はエリスロマイシン、クラリスロマイシンを中心とした14員環マクロライドの少量長期投与である。これらの薬剤の抗炎症効果による改善が、通常投与後2週間くらいから顕著にみられる。エリスロマイシンでは400~600mg/日を6ヵ月~数年間以上用いる。著効が得られた場合はさらに減量して続行してもよい。ただし、気管支拡張が広範囲に進展し、呼吸不全状態にあるような例では、マクロライドの効果も限定的である。有効例では、投与後2週間くらいからまず喀痰量が減少し、この時点ですでに患者も自覚的な改善を認める。さらに数ヵ月~6ヵ月で呼吸機能、胸部X線像の改善がみられていく。同時に慢性副鼻腔炎症状も改善するが、嗅覚に関しては、やや改善に乏しい印象がある。マクロライドは一般的には、長期間投与しても何ら副作用を認めないことが多いが、まれに肝障害や時に胃腸障害を認める。元来マクロライドは、緑膿菌にはまったく抗菌力がないと考えられるが、近年の研究から14員環マクロライドが緑膿菌のquorum sensingという機能を抑制し、毒素産生やバイオフィルム形成を阻害することが解明されてきている。4 今後の展望典型例はほとんどみられなくなったが、日本人にはDPBの素因が今なお確実に受け継がれているはずであり、軽症例や関節リウマチなどの疾患に合併した例などが必ず出現する。 SBSをみた場合には、必ずDPBを第1に疑っていく必要がある。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本呼吸器学会 呼吸器の病気のコーナー(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Homma H, et al. Chest. 1983; 83: 63-69.2)Kono C, et al. Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2012; 29: 19-25.3)Sugiyama Y, et al. Am Rev Respir Dis. 1990; 141: 1459-1462.4)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1998; 157: 1829-1832.

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久山町研究における脂肪酸解析-医薬品としての高純度EPA製剤の重要性-

久山町研究とは、日本の全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を示す福岡県糟屋郡久山町の住民を対象に1961年から実施されている脳卒中・心血管疾患などの発症を検討した疫学調査です。その一環として行われた脂肪酸解析で、EPA/AA比と心血管イベントリスクとの関連について、新たな知見が得られました。本コンテンツでは、主にその研究結果と、高純度EPA製剤を服用することの重要性について、動画で詳しく解説します。

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新規抗てんかん薬単剤療法-治療戦略は変わる?-

2014年9月3日(水)、グラクソ・スミスクライン株式会社は「てんかんの薬物療法の課題と今後の展望」をテーマに、都内で第2回てんかんメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、大澤 真木子氏(日本てんかん学会理事長)より「学会・医師の立場から見た本邦のてんかん診療における課題・背景」と題した講演、山本 貴道氏(聖隷浜松病院院長補佐/てんかんセンター長)より「本邦におけるてんかん診療の現況と新規抗てんかん薬ラミクタール単剤療法認可の意義」と題した講演が行われた。てんかん治療の現状わが国のてんかん患者の割合は、およそ100人に1人と言われている。てんかんは、子供に多いが、近年高齢者における発症率も上昇傾向にあり1)、幅広い年齢で発症する脳神経の疾患である。てんかんの治療には薬物治療と外科治療があるが、通常は薬物治療が行われ、これは基本的に単剤治療が主である。その理由としては、約6割の患者が1剤で発作をコントロールできていること2)、副作用や薬物間相互作用の軽減による安全性の確保などが挙げられる。新規抗てんかん薬の課題しかしながら、近年相次いで発売されている新規抗てんかん薬は、わが国では併用療法での承認にとどまり、単剤で用いることができていなかった。そのため、いまだに旧来薬中心の治療が行われ、新規抗てんかん薬における単剤療法時の副作用データや、単剤療法の第一選択薬としての治療実績に関するデータが十分に収集できていない現状であった。新規抗てんかん薬単剤治療の利点わが国とは異なり欧米などでは、単剤療法の第一選択薬として新規抗てんかん薬が処方されるケースも少なくない3)。これは、新規抗てんかん薬は、従来の抗てんかん薬よりも、重篤となりやすい晩期型の副作用(脳症、白血球減少、再生不良性貧血など)が現れにくいという特徴があるためである4)。このような状況の中、ようやくわが国でも、先月初めて新規抗てんかん薬ラミクタールの単剤療法が承認された。現時点でラミクタール単剤療法の経験は未だ多くはないが、投与初期の漸増段階から効果が発揮され、患者の約9割が発作の消失ないし減少に至ることが報告されている5)。とくに、全身けいれんを起こすような症例では有効性が高く、第一選択となりうる。また、妊娠を希望している、もしくは将来的に妊娠を視野に入れている女性も、ラミクタール単剤療法が適していると言え、今回の単剤療法の承認によって従来薬からラミクタールへのさらなるシフトが起こる可能性がある。今回の承認により、てんかん患者が受ける身体的負担が軽減し、患者の生活の質をより高く保つことができる可能性が出てきた。さらに、医療者側にとっても、てんかんを治療するうえで薬剤の選択肢が広がったことは喜ばしく、このたびの承認の意義は大きいと言えよう。1)Cloyd J, et al. Epilepsy Res. 2006; 68 suppl 1: S39-S48.2)Kwan P, et al. N Engl J Med. 2000; 342: 314-319.3)Pickrell WO, et al. Seizure. 2014; 23: 77-80.4)Schmidt D, et al. BMJ. 2014; 348: g254.5)Yamamoto T, et al. Brain & Nerve. 2014; 66: 59-69.

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双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較

 スペイン・Health Value社のCarlos Rubio-Terres氏らは、双極性障害の治療薬としてのアリピプラゾールとオランザピンについて、有害事象の側面から医療費比較の検討を行った。その結果、アリピプラゾールのほうが、有害事象に関連するコストが低いことを報告した。Actas Espanolas Psiquiatria誌2014年9月号(オンライン版2014年9月1日号)の掲載報告。 検討は、Markovモデルを用い、「有害事象なし(NAE)」「錐体外路症状(EPS)」「体重増加(WG)」「性機能障害(SD)」を考慮に入れたコスト解析を実施した。 双極性障害の病態変化の移行確率は、臨床試験のメタ解析およびスペインでのレトロスペクティブな研究から推定した。また、それぞれの病態に関連する医療費は、公表されているスペインの研究を参考にした。コスト比較には、病院薬局の効率性という観点から、1日平均用量における1mg当たりの最低取得コストを使用。解析適用の計画対象期間は12ヵ月とした。モンテカルロシミュレーションを用いて、解析に含まれるすべての変数に対し確率的感度分析を実施。なおSpanish Health System price indexを用い、2013年に更新されたコストを使用した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールを用いた治療はオランザピンに比べ、患者1人当たりの年平均コストを289ユーロ(95%信頼区間[CI]:271~308ユーロ)削減した。・アリピプラゾールによる性機能障害発現率が、クエチアピン(非定型経口抗精神病薬の中で最も低頻度)と同程度と仮定した場合、患者1人当たりの追加コストは323ユーロ(95%CI:317~330ユーロ)であった。・アリピプラゾールによる治療はオランザピンと比較して有害事象に関連するコストが低かった。この差は双極性障害患者の治療において、スペインの医療システムに大きなコスト節減をもたらす可能性が示された。・結果の頑健性は、確率論的解析により検証された。関連医療ニュース アリピプラゾールと気分安定薬の併用、双極性障害患者の体重増加はどの程度 双極性障害の症状把握へ、初の質問票が登場 双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは

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安定冠動脈疾患のPCI、冠血流予備量比で適応判断~2年後の結果/NEJM

 安定型冠動脈疾患の治療では、冠動脈造影時に冠血流予備量比(fractional flow reserve; FFR)を測定し、心筋虚血の可能性が高いと判定された患者のみに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と薬物療法を行うアプローチが、薬物療法単独よりも良好な予後をもたらすことが、ベルギー・アールスト心血管センターのBernard De Bruyne氏らが行ったFAME 2試験で示された。血行再建術の成果は心筋虚血の範囲や程度に依存する。FFRが0.80以下(狭窄による最大血流量の20%以上の減少)では、心筋虚血が誘発される可能性が示唆され、このような患者では冠動脈造影のみによる血行再建術よりもFFRガイド下血行再建術のほうが、臨床アウトカムは良好とのデータがあるという。NEJM誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告。FFRガイドの有用性を無作為化試験で評価 FAME 2試験は、安定型冠動脈疾患および狭心症の患者において、FFRガイド下PCI+薬物療法の有用性を評価する非盲検無作為化試験。臨床的に安定した3枝までの冠動脈疾患(冠動脈造影で確認)で、FFR≦0.80の1つ以上の狭窄を有し、PCIの適応と考えられる患者を対象とした。 被験者は、FFRガイド下PCI+薬物療法を施行する群または薬物療法のみを行う群に無作為に割り付けられた。FFRはプレッシャーワイヤを用いて測定し、PCIは第2世代薬剤溶出ステント留置を行った。狭窄のFFRが>0.80の患者には薬物療法のみが行われた。 主要評価項目は、2年以内の全死因死亡、非致死的心筋梗塞、緊急血行再建術による入院の複合エンドポイントとした。主要評価項目:PCI群8.1%、FFR>0.80の薬物療法群9.0% 2010年5月15日~2012年1月15日までに1,220例が登録された。このうちFFR≦0.80は888例で、PCI群に447例、薬物療法単独群には441例が割り付けられた。残りの332例はFFR>0.80だった。 主要評価項目の発生率は、PCI群が8.1%と、薬物療法単独群の19.5%に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.26~0.57、p<0.001)。 PCI群では、緊急血行再建術が有意に少なかった(4.0 vs. 16.3%、HR:0.23、95% CI:0.14~0.38、p<0.001)が、全死因死亡(1.3 vs. 1.8%、0.74、0.26~2.14、p=0.58)および心筋梗塞(5.8 vs. 6.8%、0.85、0.50~1.45、p=0.56)の発生率には有意な差はなかった。また、心筋梗塞または心電図上の虚血変化に起因する緊急血行再建術はPCI群で有意に少なかった(3.4 vs. 7.0%、p=0.01)。 ランドマーク解析を行ったところ、0~7日の主要評価項目の発生率はむしろPCI群で高い傾向が認められた(HR:2.49、95%CI:0.78~8.00)が、8日~2年ではPCI群で有意に低かった(0.29、0.18~0.45)(交互作用検定:p<0.001)。また、8日~2年までの死亡または心筋梗塞の発生率はPCI群で有意に低く(4.6 vs. 8.0%、0.56、0.32~0.97、p=0.04)、緊急血行再建術もPCI群で有意に少なかった(3.6 vs. 15.6%、0.21、0.12~0.37、p<0.001)。 FFRが>0.80で薬物療法のみを受けた患者の主要評価項目の発生率は2年間で9.0%だった。 プロトコルで規定された臨床イベントまたは重篤な有害事象が1つ以上みられた患者は、PCI群が薬物療法単独群よりも少なかった(33.8 vs. 52.6%、p<0.001)。非心血管系の重篤な有害事象の発生率は両群で同等であった(17.2 vs. 17.2%、p=0.98)が、心血管系の重篤な有害事象はPCI群で有意に少なかった(24.6 vs. 46.3%、p<0.001)。 著者は、「冠動脈造影画像上の狭窄の有無にかかわらず、FFR>0.80の患者では、至適な薬物療法の臨床アウトカムが良好であった」としている。

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重症好酸球性喘息に新規抗IL-5抗体が有効/NEJM

 重篤な好酸球性喘息の治療において、メポリズマブ(国内未承認)は病態の増悪を有意に低減することが、グラクソ・スミスクライン社・米国Research Triangle ParkのHector G Ortega氏らが行ったMENSA試験で示された。重症喘息患者は、高用量吸入グルココルチコイドの継続治療を行っても、経口グルココルチコイドの併用の有無にかかわらず、持続性の好酸球性炎症によって頻繁に増悪を来す場合がある。メポリズマブはインターロイキン(IL)-5に対するヒト化モノクローナル抗体で、好酸球性炎症を選択的に阻害し、喀痰や血中の好酸球数を減少させることで、増悪の頻度を低下させるとともにグルココルチコイド全身投与の必要性を低減するという。NEJM誌オンライン版2014年9月8日号掲載の報告。増悪の抑制効果を無作為化試験で評価 MENSA試験は、重症好酸球性喘息に対するメポリズマブの有用性を評価する二重盲検ダブルダミー・プラセボ対照無作為化試験。対象は、年齢12~82歳、高用量吸入グルココルチコイド治療でも喘息の増悪を繰り返し、好酸球性炎症が確認された患者であった。 被験者は、メポリズマブ75mg(静脈内投与)、同100mg(皮下投与)またはプラセボを4週に1回投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は増悪の頻度で、増悪の定義は担当医がグルココルチコイド全身投与を3日以上行った場合や、患者が救急診療部を受診または入院した場合とした。 試験は、1~6週間の導入期間後に割り付けを行い、32週の治療期間後に主要評価項目を評価し、さらに8週のフォローアップを実施した。両投与法とも増悪の頻度がほぼ半減 2012年10月~2014年1月までに576例が登録され、静脈内投与群に191例(平均年齢50歳、女性55%)、皮下投与群に194例(51歳、60%)、プラセボ群には191例(49歳、56%)が割り付けられた。539例(94%、それぞれ175例、185例、179例)が治療を完遂した。 患者1例当たりの臨床的に重篤な増悪の年間発生率は、静脈内投与群が0.93、皮下投与群が0.81、プラセボ群は1.75であり、プラセボ群に比べ静脈内投与群は47%(95%信頼区間[CI]:29~61%)、皮下投与群は53%(37~65%)減少した(いずれも、p<0.001)。 入院または救急診療部の受診を要する増悪は、プラセボ群に比し静脈内投与群が32%(95%CI:-41~67%、p=0.30)、皮下投与群は61%(17~82%、p=0.02)低下し、入院を要する増悪はそれぞれ39%(-66~77%、p=0.33)、69%(9~89%、p=0.03)低下しており、いずれも皮下投与群で有意な改善効果が認められた。 1秒量(FEV1)のベースラインからの増加は、プラセボ群よりも静脈内投与群が100mL(p=0.02)、皮下投与群は98mL(p=0.03)高く、いずれも有意に改善した。 健康関連QOLの指標であるSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコア(0~100点、高いほど不良)のベースラインからの低下は、プラセボ群よりも静脈内投与群が6.4点(p<0.001)、皮下投与群は7.0点(p<0.001)大きく、いずれも有意に改善した。 また、喘息コントロールの指標である5-item Asthma Control Questionnaire(ACQ-5)スコア(0~6点、高いほど不良)のベースラインからの低下は、プラセボ群よりも静脈内投与群が0.42点(p<0.001)、皮下投与群は0.44点(p<0.001)大きく、いずれも有意な改善を示した。 治療期間中の有害事象は、静脈内投与群が84%、皮下投与群が78%、プラセボ群は83%に発現し、鼻咽頭炎(17~24%)と頭痛(17~24%)の頻度が最も高かった。このうち、担当医判定による治療関連有害事象は、それぞれ17%、20%、16%だった。 注射部位反応の発現率は、皮下投与群が9%であり、静脈内投与群の3%、プラセボ群の3%に比べ高かった。喘息関連イベントを含む重篤な有害事象は、静脈内投与群が7%、皮下投与群が8%、プラセボ群は14%に認められた。 著者は、「重症好酸球性という喘息のサブグループにおいて、メポリズマブは静脈内投与と皮下投与の双方で増悪の頻度を抑制するとともに、QOLや喘息コントロールを改善した」とまとめている。

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