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米国における主要6要因の死亡率の変化/JAMA

 1969~2013年の米国死亡統計データを分析した結果、全死因(心疾患・がん・脳卒中・不慮の外傷・糖尿病の統合)の年齢標準化死亡率は減少の傾向が認められたという。米国がん協会のJiemin Ma氏らが報告した。ただし、心疾患、脳卒中、糖尿病の減少割合は鈍化がみられ、また同期間中COPDの死亡率は増大していた。JAMA誌2015年10月27日号掲載の報告。1969~2013年の全死因、主要6死因死亡率の経時的変化を調査 本検討は、米国における全死因および主要6要因(心疾患、がん、脳卒中、COPD、不慮の外傷、糖尿病)の死亡率について、経時的変化の傾向を調べることを目的とし、1963~2013年の全米人口動態統計データをjoinpoint分析して行われた。 主要評価項目は、年齢標準化死亡率と75歳未満の損失生存可能年数(years of potential life lost:YPLL)の総計および年間割合の変化で、全死因統合および各死因について評価した。COPDのみ増大、また近年は心疾患、脳卒中、糖尿病の死亡率低下が鈍化 1969~2013年の年齢標準化死亡率(人口10万当たり)は、全死因は1,278.8から729.8に減少していた(減少率42.9%、95%信頼区間[CI]:42.8~43.0%)。脳卒中は156.8から36.0に(77.0%、76.9~77.2%)、心疾患は520.4から169.1(67.5%、67.4~67.6%)、不慮の外傷65.1から39.2(39.8%、39.3~40.3%)、がんは198.6から163.1(17.9%、17.5~18.2%)、糖尿病は25.3から21.1(16.5%、15.4~17.5%)に減少していた。 一方で、COPDは21.0から42.2に増大していた(増加率100.6%、95%CI:98.2~103.1%)。 しかし、joinpoint分析により、直近期間において、男性COPD死亡率の低下が始まっていることが、また心疾患、脳卒中、糖尿病の死亡低下率が鈍化していることが判明した。たとえば、心疾患死亡の年間低下率は、2000~10年では3.9%(95%CI:3.5~4.2%)であったが、2010~13年では1.4%(同:0.6~3.4%)であった(傾斜差p=0.02)。 また、1969~2013年の年齢標準化YPLLは、糖尿病は1.9から1.6に(減少率14.5%、95%CI:12.6~16.4%)、がんは21.4から12.7に(40.6%、40.2~41.1%)、不慮の外傷は19.9から10.4に(47.5%、47.0~48.0%)、心疾患は28.8から9.1に(68.3%、68.1~68.5%)、脳卒中は6.0から1.5に(74.8%、74.4~75.3%)それぞれ有意に減少していた(p<0.05)。一方で同一期間中、COPDのYPLLは有意な減少はみられなかった。

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前立腺選択的α遮断薬、転倒・骨折リスクと関連/BMJ

 前立腺選択的α遮断薬は、転倒および骨折のリスク増大とわずかだが有意に関連していることが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のBlayne Welk氏らによる住民コホート試験の結果、明らかにされた。また、頭部外傷、低血圧症のリスク増大も認められた。前立腺選択的α遮断薬は高齢男性の前立腺肥大症の治療薬で、これまでに、重篤有害事象の1つとして低血圧症があり、それが重大な転倒・骨折、頭部外傷の誘因となっている可能性が指摘されていた。しかし先行観察研究では、前立腺選択的α遮断薬にフォーカスした検討はされておらず、また治療開始と転倒・骨折リスクに関して相反する結論が報告されていた。BMJ誌オンライン版2015年10月26日号掲載の報告。住民コホート試験で曝露群 vs.非曝露群について検討 前立腺選択的α遮断薬による治療を開始した男性で転倒・骨折リスクの増大がみられるかを検討した試験は、カナダ・オンタリオ州の医療管理データベースを基にコホートを作成して行われた。66歳以上男性で2003年6月~13年12月に前立腺選択的α遮断薬(タムスロシン、alfuzosin、シロドシン)を初回外来処方された(曝露コホート)群14万7,084例と、傾向スコアモデルを用いて適合した同薬を開始していなかった同数(非曝露コホート)を比較検討した。 主要アウトカムは、曝露後90日間での転倒または骨折による病院救急部門(ER)受診または入院とした。曝露群でわずかだが有意にリスクが増大 結果、曝露コホートは非曝露コホートに比べて、転倒リスクの有意な増大が認められた。各コホートの転倒発生は、2,129例(1.45%)、1,881例(1.28%)で、絶対リスク増大は0.17%(95%信頼区間[CI]:0.08~0.25%)、オッズ比(OR)は1.14(95%CI:1.07~1.21)であった。また、骨折リスクも有意に増大した。発生例は699例(0.48%)、605例(0.41%)で、絶対リスク増大は0.06%(0.02~0.11%)、ORは1.16(1.04~1.29)であった。これらの増大リスクは、前立腺選択的α遮断薬使用前の期間には観察されなかった。 また、副次アウトカムの低血圧症(OR:1.80、95%CI:1.59~2.03)および頭部外傷(同:1.15、1.04~1.27)も、曝露コホートで有意な増大がみられた。 著者は、「両コホートは、98の異なる変数(人口統計学的、併存疾患、使用薬物、医療サービス利用、既往歴)について類似していた。潜在的な未知の交絡因子(体調不良、運動機能障害、状況的リスク因子など)は除外することが可能である」と述べたうえで、「主要アウトカムに用いられたデータの感度は限定的であり、絶対リスクは過小評価の可能性がある」と指摘している。また、被験者が66歳以上であり、曝露群の84%がタムスロシンを処方されていたことから、「結果は、より若い男性には該当しない。また薬物間のアウトカムの差がわずかであることを示す統計的検出力にも乏しいものであった」と述べ、同薬物治療の導入について引き続き検討すべきだとしている。

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肝炎は全例が“治る”時代、では今後の対策は?

 ギリアド・サイエンシズ株式会社(以下、ギリアド)の主催により、“新薬「ソバルディ」「ハーボニー」登場で変わる肝炎治療 臨床現場のいま”をテーマに、C型慢性肝炎プレスセミナーが2015年10月27日、東京都中央区で開催された。肝炎ウイルス感染対策、これまでと今後 始めに、田中 純子氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学 医学部 衛生学講座 教授)より「疫学的視点からみたウイルス性肝疾患患者数の経年推移」と題した講演が行われた。 わが国における肝がんの死亡者数は、2000年頃から緩やかに減少しつつあるが、いまだに年間死亡者数は3万人を超えており、対策が望まれる疾患の1つである。 これまで、住民健診における肝炎ウイルス検査の追加(2002年)や、肝炎無料検査の実施(2007年)、肝炎対策基本法の施行(2010年)などにより、世界の中でも早期に肝炎ウイルス対策に取り組んできた。田中氏は、「検査強化を施策として行ってきた結果、肝炎ウイルスの潜在キャリア数は、推定240~305万人(2000年)から、推定77.7万人(2011年)に減少することができた」と述べた。しかし、感染を知ったものの、(継続的な)受診をしないキャリアが、いまだに推定53~118万人存在するため、受診勧奨や受療継続といった課題が残されているという1)。田中氏は、今後の肝炎・肝がん対策について、「すでに通院中の人には、適切な治療を受けられるようにすること、肝がんの自覚症状がなく、病院受診に至っていない人には、治療に結び付くよう工夫することが、肝炎・肝がん死亡減少のため重要となる」と指摘した。肝炎治療、油断は禁物 次に、榎本 信幸氏(山梨大学 医学部内科学講座第一教室 教授)より「C型慢性肝炎の最新治療」と題した講演が行われた。 これまでC型肝炎治療は、ペグインターフェロン・リバビリン療法が一般的であったが、副作用の問題や、患者の高齢化(すでに治療経験があり、インターフェロンが使えないケースや、効かないケースが増加)といった問題から、投与方法や副作用管理が簡便な治療が望まれていた。こうした背景の下、インターフェロンフリーの治療薬発売が続いているなかで、今年9月、新たに1日1回1錠、12週間の経口投与で治療を完了するジェノタイプ1型 C型慢性肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合錠、以下ハーボニー)が発売された。ハーボニーは、治療歴、代償性肝硬変の有無、年齢および投与前のNS5A耐性変異の有無にかかわらず、SVR12率は100%を達成している。 このように一見、C型肝炎は解決したように思えるが、榎本氏は、「C型肝炎ウイルスが消えても肝がんができることがあるため油断はできない」と警鐘を鳴らす。とくに「高齢」、「男性」、「γGTP上昇」、「AFP上昇」では肝がんリスクが高くなるため、ウイルス排除後のフォローが重要だという。榎本氏は、「“肝がん予防のABC”という考え方、すなわち、A:Age(65歳以上)、B:B型肝炎、C:C型肝炎、D:DM(糖尿病、血糖値が高い)、E:Ethanol(アルコールを毎日飲む)、F:Fibrosis(線維)、Fat(脂肪)、Fe(鉄)、G:Gender(男性)のすべてに注意を払うことが大切、BやCだけを治すようでは手遅れとなることもある」と注意を促した。費用対効果の判断は冷静に 最後に、五十嵐 中氏(東京大学大学院 薬学系研究科 特任准教授)より「ソバルディ・ハーボニーの医療経済的な価値」と題した講演が行われた。 新薬の医療経済評価を行うには、原則として「増分費用効果比(コスト増加分の質調整生存率に対する割合)」を考慮し、増大した分のコストが、健康で過ごせる期間に見合っているかを判断する。五十嵐氏は、「“ソバルディ”、“ハーボニー”は、価格だけみれば確かに高価だが、コスト増大分に見合った効果の改善があれば良いのではないか」と述べた。 肝炎から肝硬変、肝がんに進行してしまった場合、難しい治療や多額の治療費用が必要になることも珍しくはない。五十嵐氏は、「高額な薬代であっても、健康に過ごせる期間の延長や、将来的な治療費削減効果を考えれば、妥当ではないか」と説明し、講演を締めくくった。 ソバルディ、ハーボニーの登場により、肝炎治療の未来は明るくなった。だからこそ、今後、ウイルス排除後のフォローなど、肝炎・肝がん死亡減少のための対策が重要となってくるのではないか。(ケアネット 佐藤 駿介)参考1)田中純子ほか. a肝炎ウイルス感染状況に関する疫学基盤研究. In:急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究. 肝炎等克服政策研究事業.

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AZD9291、本邦でEGFR-TKI耐性NSCLCの優先審査に指定

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ガブリエル・ベルチ、以下、アストラゼネカ)は、EGFR T790M 変異陽性の非小細胞肺がん治療薬AZD9291が、2015年10月29日に厚生労働省より優先審査品目に指定されたと発表。 AZD9291は、「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(以下、EGFR-TKI)の使用中または使用後に病勢進行した、EGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺」を予定の適応として、2015 年8月に国内承認申請を行っている。米国および欧州でも承認申請中であり、米国食品医薬品局(FDA)からはBreakthrough Therapyに、欧州医薬品評価委員会(CHMP)からは迅速審査の指定を受けている。 AZD9291は、アストラゼネカが開発した1日1回投与の新規経口分子標的治療薬。既存のEGFR-TKIとは異なる新規の作用機序を有しており、EGFR活性化変異型EGFRに加え、EGFR-TKI治療耐性に関連するT790M遺伝子変異陽性EGFRを不可逆的に阻害する一方で、野生型EGFR に対しての阻害作用が弱くなるよう設計されている。 EGFR 遺伝子変異陽性のNSCLCは、既存のEGFR-TKIが有効な治療手段とされている。しかし、多くは治療開始1年~1年半ほどでEGFR-TKIに対する耐性が生じ、病勢が進行してしまう。これまでの研究から、EGFR-TKI耐性の約60%において、EGFR T790M耐性変異が生じていることが明らかになっている。アストラゼネカ株式会社のプレスリリースはこちら。

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複数の向精神薬の血中濃度を一度に測定する新手法

 向精神薬治療は薬物動態学的特性の個体差が大きいため十分な治療効果が得られない場合があるが、薬物血中濃度モニタリング(TDM)は、患者個々に投与された用量の効果を調べる有効な方法である。中国・昆明医科大学附属第一医院のJingjing Wang氏らは、TDM等に応用するため、抗精神病薬、抗うつ薬および抗認知症薬計17種の血漿中濃度を測定する、超高速液体クロマトグラフィー(UFLC)-タンデム質量分析法を開発し検証を行った。その結果、新しい測定法はTDMのすべての基準を満たしており、著者らの病院の日常診療において、抗精神病薬および抗うつ薬のTDMとして有用であったと報告している。Therapeutic Drug Monitoring誌2015年10月号の掲載報告。 研究グループは、従来の方法(0.1%ギ酸を含むメタノール/アセトニトリルで沈殿したたんぱく質の固相抽出)に代わる新たな方法として、0.1%ギ酸とアセトニトリルからなる移動相でSynergy 3u-Hydro-RP(2.0×50mm、3μm)カラムを使用するタンデム質量分析を組み合わせたUFLCを開発し、定量分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・新しい測定法により、一般的によく使用される抗精神病薬8種類(アリピプラゾール、クロルプロマジン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidone、クロザピン、オランザピン)、抗うつ薬8種類(citalopram、エスシタロプラム、ミルタザピン、fluoxetine、パロキセチン、セルトラリン、O-desmethylvenlafaxin+venlafaxine、フルボキサミン)および抗認知症薬1種類(ドネペジル)を同時に簡便かつ速やかに測定できた。・クロマトグラフィー分離の実行時間は計6分であった。・精度は0.90~14%、正確度は88.5~118%であった。・キャリブレーションには、臨床使用濃度をカバーし検出力のある6点標準曲線を使用した。・マトリックス効果によるイオン抑制と内部標準を調査した結果、回収率は89~110%であった。関連医療ニュース SSRIの薬物治療モニタリング、実施率は 不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する 1万超の爪からの薬物検出分析、薬物乱用を見抜けるか  担当者へのご意見箱はこちら

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SPRINT試験:厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖 氏)-446

 これまで、フラミンガム研究あるいはわが国の久山町研究、HOMED-BP研究などの観察研究では、収縮期血圧120mmHg以上から心血管合併症が増えてくることが明らかにされており、120mmHgが至適血圧値とされてきた。しかし、降圧薬治療でこのレベルまで下げることの是非については、多くの議論があった。とくに、高齢者では降圧目標値は高めにすべき、という意見は少なくなかった。しかし、本研究は、高齢者や冠動脈疾患の高リスク症例ほど収縮期血圧120mmHgという厳格な降圧が、140mmHgというこれまでの標準値とされたレベルまでの降圧治療よりも、心不全発症を含む心血管合併症の発症予防効果が大きく、生命予後を改善することを示し、J曲線の存在を否定した点で意義がある。決め手は心不全発症が少なかったこと。しかし、なぜ心不全なのか 注目すべきは主要評価項目の中でも、心不全発症と心血管死のみが有意かつ大幅に減少しており、これが全体の主要評価項目を、厳格降圧治療群が好ましいという結果に導いていることである。 このような心不全発症の抑制効果が全体の流れに大きく影響するという現象は、かつてのALLHAT試験でも観察され、最近では糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の有用性を検証したEMPA-REG OUTCOME試験でもみられている。前者では降圧薬としてのサイアザイド系利尿薬、後者ではSGLT2阻害薬の利尿作用が、心不全発症の抑制に大きく貢献したと考えられている。 心不全発症を複合エンドポイントに含めるか否かは、結果に大きく影響する。たとえば、糖尿病症例における降圧目標値を120mmHgと140mmHgで比較したACCORD試験では、両群で主要エンドポイントに有意差がなかったが、そのエンドポイントに心不全は含まれておらず、心筋梗塞、脳卒中、心血管死のみである。複合エンドポイントに心不全を含めるか否かの基準が一定していない。 とくに、SPRINT試験のように非盲検法で行われた試験において、急性心不全発症をどのように客観的に定義したかが知りたいところである。 今回のSPRINT試験でも、サイアザイド類似薬を優先的に使うことが推奨されていることから考えると、やはり心血管合併症を構成する重要な要素である心不全の抑制には利尿薬が不可欠であることを示唆している。この結果を日常診療に反映することは、慎重に~血圧測定環境の違い しかし、SPRINT研究の結果を、そのまま臨床に適応することには慎重であるべきである。血圧測定環境が、医師のいない場所で自動血圧計による3回血圧測定の平均値であることは注目すべきである。すなわち、白衣高血圧を徹底的に除外している状態での血圧評価である。わが国の家庭血圧計を用いた観察研究でも、収縮期血圧がほぼ120mmHg以上から心血管イベントが上昇することをすでに発表していることから、実際の臨床応用に当たっては家庭血圧で静かな環境での収縮期血圧120mmHgを目標とすべきと思われる。 もう1つ注意が必要なことは、今回の結果は血圧が安定するまで1ヵ月ごとの受診という細かい観察を伴う、しかも臨床研究という究極の適正治療の場での結果であることに留意すべきである。 とくに今回明らかになったように、腎機能の悪化、電解質異常の悪化は重篤な病態を招きかねない。低ナトリウム血症、低カリウム血症が厳格降圧群で多いことは、サイアザイド類似降圧薬の影響と思われる。本剤は非常に強力である反面、電解質異常にはくれぐれも注意が必要である。糖尿病合併例や脳卒中既往例は除外されている 糖尿病合併例や脳卒中既往例は対象から除外されている点は、注意が必要である。糖尿病合併高血圧例の降圧レベルに関してはACCORD試験で、脳卒中合併例ではSPS3試験で決着済みという考えからであろうか。今回は、あくまでもJカーブ論争で問題になった冠動脈疾患での降圧レベルの検証ということであろう。 あくまでも臨床研究という適正治療下での結果であり、わが国の一般診療で行っている医師による1回測定ではなく、血圧安定までは毎月の受診という慎重な高血圧診療での結果であることは留意すべきである。 予後を改善することが示されたが、血圧測定環境が日本の一般臨床とは異なること、臨床研究という慎重な観察の下で行われた降圧治療であることを念頭に置くべきである。関連コメントSPRINT試験:75歳以上の後期高齢者でも収縮期血圧120mmHg未満が目標?(解説:浦 信行 氏)SPRINT試験:絶対リスクにより降圧目標を変えるべきか?(解説:有馬 久富 氏)

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高感度心筋トロポニンIが陰性ならば、胸痛患者を帰宅させて良いか?(解説:佐田 政隆 氏)-447

 胸痛を主訴に救急外来を受診する患者は多い。心血管疾患ばかりでなく、食道炎や胸膜炎、気胸、整形外科的疾患など、さまざまな原因があるが、急性心筋梗塞や不安定狭心症といった急性冠症候群は、治療の遅れが予後を大きく左右するため、正確かつ迅速な診断が求められる。翌朝精査のため再来院するように指示していったん帰宅させたところ、自宅で心肺停止で発見されたという事例を耳にすることもある。そのため、循環器を専門にしていない医師でも、胸部症状を主訴に来院した患者において、急性冠症候群を診断することはきわめて重要である。 心電図で特徴点な変化が検出できれば、急性冠症候群の診断は容易である。しかし、問診上は急性冠症候群が疑われるものの決定的な心電図所見が得られず、判断に悩むことをしばしば経験する。問診、心電図、心エコ―などによって急性冠症候群を正確に診断するには熟練を要する。 そこで、急性冠症候群の存在を数値で表示するバイオマーカーは有用である。白血球数、CPK、CPK-MB、AST、CRP、LDHなどの古典的なマーカーに加えて、最近では、心筋トロポニンや心筋ミオシン軽鎖、ミオグロビン、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)などが開発されてきた。発症の比較的早期から上昇するものや、全血で迅速に診断できる簡便な判定キットも登場して汎用されているものもある。しかし、感度、特異度は十分でなく、バイオマーカーがたとえ陰性でも、急性冠症候群を完全に否定できないのが現状である。急性冠症候群が疑われる場合は、念のため入院させて経過観察するのが無難である。各種のガイドラインでも、急性冠症候群が疑われた場合は、大部分の患者を入院させて心筋トロポニン値の推移を観察することが勧められている。 しかし、「その多くの場合は無駄な入院であり、患者と医療経済に大きな負担になっている」と本論文の筆者らは主張している。そこで、本研究では、胸痛を主訴に救急外来を受診した患者を対象に高感度トロポニンIを測定して、陰性であれは急性冠症候群が否定でき帰宅させて良いかどうかを検証した。高感度心筋トロポニンI値が5ng/L未満だった患者では、30日以内に心筋梗塞や心臓死を来した割合はわずか0.4%で、急性冠症候群を除外できる確率(陰性適中率)は99.6%ときわめて高くなった。 筆者らは、このトロポニンIが5ng/L未満であれば救急外来から帰宅させることができ、無駄な入院を減らし医療費削減につながると主張している。しかし、偽性陰性があってはいけない。いくら陰性適中率がきわめて高いといっても100%でなければ問題である。実際、本研究ではトロポニンIが5ng/L未満で帰宅させられた患者2,905例のうち、0.4%である12例が30日以内に心筋梗塞または心臓死を発症したという。10例は心電図などで心筋梗塞が確定診断でき、2例は心停止で来院して救命できなかったという。 急性冠症候群に対して、陰性適中率が非常に高い検査法が開発された意義は大きいと思うが、高感度心筋トロポニンIを測定して低ければ、安心して帰宅させることができるということは決してないと思う。問診と各種検査を駆使して総合的に診断し、特異度が低くなったとしても、感度を100%に近づけ、助けられる急性冠症候群患者をすべて救命できる体制作りが必要と思う。

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こうして私は追いつめられた【新型うつ病】

今回のキーワード非定型うつ病進化医学社会脳ただ乗り遺伝子(フリーライダー)疾病利得労働法制方リワーク「新型うつ病」とは?皆さんは、「新型うつ病」という言葉を聞いたことがありますか? うつ病はよく知られていますが、ここ10年くらいで、「新型うつ病」が職場を騒がせています。例えば、「新型うつ病」の彼らは休職中に海外旅行に行こうとします。従来のうつ病とは根本的に何が違うのでしょうか? なぜ医師は休職のための診断書を出すのでしょうか? 果たしてこれは病気なのでしょうか? その正体は? どうすれば良いのでしょうか?前回(9月号)の記事で、進化医学的な視点で従来型のうつ病の理解を深めました。これを踏まえて、今回、「新型うつ病」について同じように進化医学的な視点で、その理解を深め、アプローチのポイントを探っていきましょう。今回、取り上げるのは、2012年に放映されたNHKの実録ドラマ「こうして私は追いつめられた」です。15分の短編映像で分かりやすく見せるための割愛や演出はありますが、「新型うつ病」の心理を生々しく描いており、理解の助けになります。なお、このドラマは、「新型うつ病」の検索ワードによるインターネットの動画の視聴が可能です。「新型うつ病」にはどんな症状がある?―表1主人公の今井は27歳男性で、IT企業の社員です。若手として張り切っていましたが、上司の前田から、仕事のミスについて「何やってんだよ」「そろそろこれくらいのこと、できるようになってくれよ」とたびたび叱責されるようになります。やがて、今井は、買ってきた食べ物をむさぼり食べながら「眠れない」「落ち着かない」などの症状を自覚するようになります。そして、受診した医療機関で、医師にうつ病と診断され、「今後3か月の休養を必要とする」との診断書が渡されます。これだけで見ると、本人が苦しんでいるという点で、診察時には基本的に従来型のうつ病の症状と量的に同じに見えてしまいます。しかし、その後に質的な違いがあることに気付きます。それは、休職してから今井が「よーし、気分転換にグアム行っちゃいますか?」とはしゃいでいるように、休職中に海外旅行に行ってしまうことです。つまり、楽しい出来事には元気になれています(気分の反応性)。これは、前回の記事で紹介しました従来型のうつ病(大うつ病性障害)の診断基準の「ほとんど毎日(ほとんど1日中)」という病状の一貫性を満たさなくなっています。よって、厳密には、今井の病態は非定型うつ病(非定型の特徴を伴ううつ病)が当てはまります(表1)。この診断名が、世の中で「新型うつ病」と呼ばれているようです。なお、「新型うつ病」はあくまでマスコミが作り出した呼び名であり、正式な病名ではないです。詳細は、うつ病学会のホームページのQ&AのQ4.をご参照ください。ちなみに、その他の元気になれる楽しい出来事(気分の反応性)としてよく耳にするのは、同窓会の幹事、転職活動、引っ越し、熱心な趣味や習い事、マラソン完走などです。表1 非定型の特徴を伴ううつ病(非定型うつ病)の診断基準(DSM-5) 感情意欲思考項目◎気分の反応性(1)過食(2)過眠(3)体の重さ(鉛様の麻痺)(4)拒絶に敏感備考◎は必須(1)から(4)の4項目中2項目以上もともとうつ病(従来型)などの診断基準を満たしている(いた)「新型うつ病」の心理とは?―表2今井の言動に注目しながら、従来型のうつ病と比べた「新型うつ病」の心理を大きく3つあげてみましょう。(1)人(周り)のせいにしやすい―他罰今井は、「おれこんなにがんばってるのに」「あの言い方はひどい」「前田のやつ、バカにしやがって」「(今、自分が苦しんでいるのは)全部、あいつのせいだ」と心の中でつぶやいています。そして、「おれをうつ病に追い込んだ鬼畜上司・M田!」とブログで悪口を書き込み始めます。1つ目の心理は、困難(ストレス)を人(周り)のせいにしやすいことです(他責、他罰)。周りを責めることで自分を守る心理です。そのため、責任感が乏しく、迷惑を被っていると感じやすくなり(被害的)、その反撃として攻撃的になります。対照的に、従来型のうつ病の心理は、困難(ストレス)を自分のせいにしやすいことです(自責、自罰)。自分を責めることで周りを守る心理です。そのため、責任感が強くなりすぎて、周りに迷惑をかけていると感じやすくなり(罪責感、罪業妄想)、いたたまれなくなり自殺のリスクを高めます。また、「新型うつ病」では、うつ病と診断された今井が「ですよね~」と喜んで症状をさらに饒舌に語っているように、うつ病と診断されることを積極的に受け入れ、休みたがります。今井が「ほっとした」「おれは悪くない」と言っているように、うつ病と診断してもらえれば、うまく行かないことは病気のせいにできるからです。悪いのは、病気であり、自分ではない。自分は被害者であり犠牲者であるという発想になります。だからこそ、「うつ病になるくらい苦しんだんだから、もう休んでいいんだ」と言い、休職中に悪びれることもなく海外旅行に行くなどSNSで充実したプライベートを発信します。対照的に、従来型のうつ病は、うつ病と診断されることに抵抗的で(否認)、休みたがらないです。それは、うつ病になってしまったのは自分のせいだと思っているからです。(2)周りが自分に合わないと不安がる(「傷付き不安」)―拒絶に敏感今井は、「何か悩みがあるなら聞かせてください。連絡待ってます」との前田からのメールが来た時、「全然分かってねえのか、前田。あんなにおれをいじめといて」と腹を立てます。そして、ブログの「M田のここが許せないベスト10」への好意的な反響メールを読んで、「みんなおれの味方なんだ」「やっぱりおれは間違ってない」と安心します。今井は、叱責など自分が受け入れてもらえない状況に敏感になり落ち着かなくなっていた一方、賛同など自分を受け入れてもらえる状況で落ち着きを取り戻しています。2つ目の心理は、周りが自分の期待に合わない、つまり傷付くことへの不安が強いこと、「傷付き不安」です(拒絶に敏感)。これは、非定型うつ病の診断基準の1つでもあります(表1)。この不安からとても打たれ弱くなります(ストレス耐性の脆弱性)。困難に向き合うこと(直面化)が苦しくなります。逆に傷付かない状況では元気になります。だからこそ、職場ではうつでも、自宅では元気で海外旅行に行こうと思えるのです。さらに、その不安から受け身や逃げ込みの心理が働きます(逃避、回避)。例えば、今井は、自宅に訪ねてきた前田と鉢合わせそうになった時、こそこそしています。前田に不満があるわりに向き合おうとはしていません。最後に復職した時も、「復職したおれをどんなふうに迎えてくれるのだろうか?」と思い、前田に自分からは歩み寄らず、前田が来るのを待っています。ちなみに、この逃げ込み(逃避、回避)の心理が過剰に働いていれば、また傷付くおそれのある職場への復帰には逃げ腰になり、病態が慢性化します。対照的に、従来型のうつ病は、逆に自分が周りの期待に合わない、つまり「傷付ける(=迷惑をかける)」ことへの不安が強いため、我慢しようとして打たれ強くなります。そして、抱え込みの心理が働き(執着)、休職しても早期の復職を望みます。つまり、「新型うつ病」は打たれ弱いために我慢ができなくて「うつ病」になるのに対して、従来型のうつ病は打たれ強いために我慢しすぎてうつ病になるということです。(3)周りに目が向きにくい―共感性欠如今井は、実家で両親から「食欲もあるし顔色も良いんじゃない?」「お前ほんとに病気なのか?」といぶかしく思われます。すると、「病気だっつってんだろ?」と言い返します。周りの意見を気にしない様子がうかがえます。また、その後、今井のブログは世の中で批判を浴びて炎上します。それを知った前田は「これ以上会社を誹謗中傷すると解雇もあるから」との留守録のメッセージを今井の電話に残します。それを聞いた今井は「なんでおれがこんな目に遭うんだ!?」とパニックになります。今井は、周りからどう思われているのかをまだピンときていないのです。3つ目の心理は、自分に目が向きすぎて周りに目が向きにくいことです。周りへのアンテナ(他者配慮)をあまり張っていないのです。これは、「周りよりもまず自分が大事」との思いが強いため、結果的に、周りの人たちへの気遣いが乏しくなります(共感性欠如)。その気遣いとは、例えば、休職中に海外旅行に行ったことを同僚が知ったらどう思うか、悪口を書き込んだブログを上司が知ったらどう思うかということです。また、この心理から「周りが自分に何をしてくれるのか」という発想をしやすくなり、苦手な上司や同僚がいなくなるなどの環境の調整がなされない限り、病状は良くはなりにくくなります。つまり、「なりたい自分」になれないなら、あきらめるという現実には耐えられないので保留という暫定措置をとるため、できる限り休職し続けようとする場合があるわけです。対照的に、従来型のうつ病は、逆に周りに目が向きすぎて、自分に目が向きにくいです。「自分よりも周りが大事」「自分のことは二の次」との思いが強いため、周りに気を使いすぎて(過剰な他者配慮)、「自分が周りに何をするべきなのか」「なるべき自分」という発想をしやすくなります。休職中は診察での態度もとても協力的です。ただ、焦りから早く復職しようとする場合はよくあります。表2 「新型うつ病」と従来型のうつ病の違い 「新型うつ病」(=非定型うつ病など)従来型のうつ病年齢20、30歳代(青年)40歳代以上(中高年)性格(パーソナリティ)自分本位(自己愛)真面目で几帳面(執着器質)例責任感乏しい人(周り)のせいにしやすい(他罰)迷惑を被っていると感じやすい(被害的)強すぎる自分のせいにしやすい(自責)迷惑をかけていると感じやすい(罪責的)ストレス耐性弱い周りが自分に合わないと不安がる(拒絶に敏感)逃げ込み(逃避、回避)強すぎる自分が周りに合わないと不安がる抱え込み(過剰適応)他者配慮乏しい周りに目が向きにくい(共感性欠如)なりたい自分を目指す多すぎる周りに目が向きすぎる(過剰な他者配慮)なるべき自分を目指す治療反応性良好ではない比較的に良好例診断や休職積極的当初は抵抗的(否認)その後に協力的薬物療法効果は限定的多くは効果あり認知行動療法集団で効果あり効果あり予後多くは慢性化多くは軽快なぜ「新型うつ病」になるのか?―図1.これまで、「新型うつ病」には、人(周り)のせいにしやすい(他罰)、周りが自分に合わなと不安がる(拒絶に敏感)、周りに目が向きにくい(共感性欠如)という大きく3つの心理があることが分かりました。それでは、なぜこのような心理になるのでしょうか? なぜ「新型うつ病」になるのでしょうか? ここから、その原因を、社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けて探ってみましょう。(1)社員(個人)の要因―自己本位な性格(自己愛パーソナリティ)後半にブログのオフ会で登場する臨床心理士ののぞみんが、「現代型うつ(新型うつ病)を発症する大きな原因は、患者さんの精神的な幼さです」と指摘します。言い換えれば、3つの心理の根っこにあるのは、自己本位な性格(自己愛性パーソナリティ)です。これは、真面目で几帳面な従来型のうつ病の性格(執着器質)とは対照的です。つまり、「新型うつ病」の患者は「オンリー・ワン(唯一の存在)」でありたいという心理が根っこにあります。従来型のうつ病の患者がありたい心理である「ワン・オブ・ゼム(組織の歯車)」では納得しないのです。人は成長するにつれて、自分が大事という自己本位の心理(自己愛性)から周りが大事という他者配慮の心理(社会性)にシフトしていきます。例えば、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン(1人はみんなのために、みんなは1人のために)」という言い回しがあります。本来は、相手や状況(環境)に応じて両者のバランスが取れていることが理想的ですが、「新型うつ病」は「ワン」(自己本位)の心理に偏りすぎてしまい、従来型のうつ病は「オール」(他者配慮)の心理に偏りすぎています。どちらにしても、そのバランスが失われています。両者は、うつ病になるという結果は同じなのですが、性格(パーソナリティ)としての原因は真反対であることが分かります。また、文化によってもこの自己本位と他者配慮の心理のバランスには偏りがあります。日本はもともと他者配慮の強い集団主義の文化であるのに対して、アメリカなどの欧米は自己本位の強い個人主義です。つまり、今、日本では社員(個人)が、集団主義から個人主義化してきているということです。(2)会社(社会)の要因―会社本位な社風前田は一緒に残業をしている他の部下たちに「昔はおれも上司に怒られてへこんで。でもその後、居酒屋に飲みに連れてってもらって。そこで教わったんだよ仕事の意味を。いっしょに客の喜ぶ顔見ようじゃないかって肩叩かれて。それでまた元気になって何とかやって行けたんだ」とこぼします。一方、オフ会でのぞみんは「今の不況では、昔のように十分な社員教育を行えないという悩みもあるんです」「そして会社にも今井さん育てる体制や今井さんへの理解が欠けていた」「そこに断絶が生まれ、お互いが苦しむことになったんです」と続けます。会社(社会)の要因として、会社本位な社風なってしまったことです。経済の低迷や国際競争の激化により、社員を育て成長を見守る余裕が経費的にも時間的にも職場になくなってきました。即戦力や成果を求めすぎて、社員(個人)よりも会社(社会)の利益に重きを置かざるを得なくなってしまったのです。つまり、社員(個人)だけでなく会社(社会)も、集団主義から個人主義化してきているということです。なぜ「新型うつ病」は増えているのか?―表3.「新型うつ病」になる原因は分かってきましたが、なぜこれほどまでに「新型うつ病」は増えているのでしょうか? 海外の状況と比べつつ、日本ならではの状況を社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けてまた探ってみましょう。(1)社員(個人)の要因―受け身で依存的な育ち方のぞみんは、「核家族やゆとり教育の世代に育って、大事に育てられてきて、人に怒られたり、ぶつかりあったりする経験が少ないから」と言います。ここから分かることは、葛藤(ストレス)の少ない育て方(生育環境)により、自己本位な育ち方に変わってきたのに、受け身で依存的な育ち方は相変わらず残っている、むしろ増えていることです。この世代は、ちょうど1980年代以降の生まれで、現在の20、30歳代ということになります。逆に、1970年代以前の生まれである現在の40歳代以降に「新型うつ病」は少なく、従来型のうつ病が多いです。家庭では、核家族化により祖父母がもともと家におらず、父親は単身赴任や出張で不在がちで、さらに一人っ子で兄弟がいなければ、母親との濃密な関係が増えて、過干渉で過保護に育てられます。母親が先回りするので、小さな失敗や挫折という貴重な経験をしにくくなります。学校では、「みんな仲良し」「ゆとり」という教育方針のもと、競い合いやぶつかり合いが好ましくないと教えられます。よって、友達や恋人との関係も、傷付け合わないために細心の注意を払った表面的な「やさしい」付き合いに留まります。例えば、ラインやメールの返事をいかに早くするかばかりを気にするようになります。言いたいこと言い合ってぶつかり合うような深い友情や恋愛感情の関係にはなりにくくなっているのです。本来、社会では人の価値観はそれぞれ違い、仕事においても恋愛においてもぶつかることは当たり前です。しかし、成人するまでに人間関係でぶつかり合う経験が少ないと、その葛藤を適切に対処する能力が磨かれていかないのです。結果的に、その葛藤(ストレス)を避けるために、逃げ込みの心理が働き、休職という手段を用いて、会社(社会)に依存してしまうのです。それでは、世界、特にアメリカではどうでしょうか? アメリカでは、会社でうまく行かないことがあれば、自分の能力が発揮できないと思い、あっさり辞めて他の会社に転職します。転職率が高いのもうなずけます。一貫したドライな個人主義です。一方、日本では、会社でうまく行かないことがあっても、その会社にしがみつきます。けっきょく集団的な帰属意識が根強いため、社員(個人)は、個人主義的な自己本位に変わってきたのに、集団主義的な依存は変わらないままなのです。これが、さきほどのぞみんが指摘した「幼さ」です。一貫しない「ウェット」な個人主義なのです。ちなみに、この依存的な育ち方として、「新型うつ病」と時期や特徴を同じくして注目されている社会現象が「ひきこもり」や「草食系」です。なかなか働こうとしない心理は、人間関係においてもなかなか働きかけようとしない心理につながっていきます。(2)会社(社会)の要因―保護的な労働法制今井の会社の社長は、前田に「うつ病とか言って単なる『怠け病』じゃないのか。そんなの気合いで何とでもなるんだよ。甘えだ甘え」と吐き捨てます。かつては「気合い」という言葉で、連帯意識を高め、それでも休職してしまう場合、その数少ない社員を手厚く抱え込んでいた時代がありました。当時からの就業規則では「新型うつ病」による休職を想定していません。会社の要因として、現在、「新型うつ病」によって休職する社員が急増しているにもかかわらず、その保護的な労働法制が残っていることです。それでは、世界、特にアメリカではどうでしょうか? アメリカでは、就職は基本的に社員(個人)と会社の契約です。よって、社員(個人)の能力が発揮されていなければ、契約への債務不履行となり、解雇の理由になります。雇用の流動性が高いのもうなずけます。会社も一貫したドライな個人主義です。一方、日本では、うまく行かない社員がいても、保護的な労働法制によって、もともとの給料の7、8割の傷病手当が1年半から3年くらい支給され、手厚く抱え込まれてしまうのです。特に、手厚くされる公務員や大企業の社員は、復職を先延ばしする傾向があります。けっきょく、社会の集団的な連帯意識が根強いため、会社は、利益追求する個人主義的な会社本位に変わってきたのに、手厚い集団主義的な労働法制は変わらないままなのです。これは、「新型うつ病」に戸惑い右往左往する社会の「幼さ」と言えます。日本の社会もまた一貫しない「ウェット」な個人主義なのです。表3 「新型うつ病」の増加の原因、結果、アプローチ 職員(個人)職場(社会)原因変化自己本位(個人主義的)会社本位(個人主義的)無変化依存的な育ち方(集団主義的)休職中の保護的な労働法制(集団主義的)結果逃げ込み抱え込みアプローチ自己本位の是正休職中の依存の脱却会社本位の是正休職中の過保護の脱却なぜ「新型うつ病」は「ある」のか?―グラフ1.これまで、「なぜ『新型うつ病』になるのか?」という疑問やその増加の原因を解き明かしてきました。それは、「かんばりすぎ脳」「上下関係脳」「つながり脳」「先読み脳」でした。それでは、そもそもなぜ「新型うつ病」は「ある」のでしょうか? その起源について、進化医学的な視点で、無意識的な心理と意識的な心理に2つに分けて探っていきましょう。(1)「助けて(休ませて)」という無意識的な心理―「助けて脳」前回(9月号)の記事では、従来型のうつ病の起源として4つの心理の進化をご紹介しました。その中で、3番目の「つながり脳」(社会脳)に着目してみましょう。社会脳とは、助け合い(協力)を好む心理でもあります(利他性)。例えば、困っている人がいたら、私たちは自然と助けたくなります。これは、そうなるように私たちの心が進化してきたと考えられています。この心理が働く遺伝子をより持っている種の共同体(社会)が、生存率や生殖率を高め、子孫をより多く残してきたからです(包括適応度)。この社会脳の中でさらに新しく進化した心理が考えられています。それは、周りの「助けたい」という心理を逆手に取った「助けて」という無意識的な心理です。例えば、身の危険を感じるなどの自分では対処できない困難(ストレス)を感じた時、腰や膝が抜けたり(転換性障害)、気を失い記憶がなくなること(解離性障害)があります。この反応は、単独で行動している場合は生存に不利です。しかし、集団で行動している場合、周りに助けてもらえる可能性が高く、生存に有利であることから進化したと考えられています。ここで、私たちは、「助けて」と言葉で伝えれば済むのに、なぜわざわざ体の反応で示さなくてはならないのかと思うでしょう。その理由は、言葉を使うようになったのは喉の構造が進化したごく最近の20万年前だからです。社会脳は300万年前から進化し始めており、その間の280万年間に、私たちの祖先は、言葉ではなく、主に表情、身振り手振り、態度でコミュニケーションをとっていました(サイン言語)。だからこそ、現代でも、言語的コミュニケーションよりも非言語的コミュニケーションの影響力の方が圧倒的に大きいのです(メラビアンの法則)。つまり、「新型うつ病」の1つ目の起源は、困難(ストレス)を感じた時、うつという反応(抑うつ反応)を周りに見せることで(信号)、周りから援助(互恵的利他行動)を引き出す心理であると言えます(社会的ナビゲーション仮説)。腰抜けや膝抜け、記憶喪失がわざとではないのと同じように、抑うつ反応は、本人が意図せず意識せずに起こります。現代の日本では、社員(個人)のストレス耐性が弱まってきているにもかかわらず、会社(社会)のストレス負荷は増してきています。この状況で、この抑うつ反応が、先史時代の瀬戸際の捨て身の心理戦略から、高度に社会化した現代を生き抜く新たな心理戦略として引き継がれ広がってきているように思われます。そう考えれば、職場ではうつでも自宅では元気であったり、休職中に元気で復職してまたうつになるという現象も、周りの支援を引き出すための一時的なもので一貫性がない点から納得がいきます。また、うつ病の治療としての薬物療法や休養が、従来型のうつ病に効果があるのに対して、「新型うつ病」にはほとんど効果がない現状も、会社の苦手な上司や同僚というストレス因子が変わらない点から、納得がいきます。(2)「どうせならもっと助けて(休ませて)」という意識的な心理―「怠け脳」今井の会社の社長は「怠け」と言い放っています。休職する前、今井は本人なりに一生懸命で、「怠け」の意図や意識ははっきりとは見受けられません。ところが、休職した後、海外旅行に行けるくらい元気になっているにもかかわらず、なかなか復職しようとしない点では、「怠け」の意図や意識が見受けられます。「怠け」もまた、社会脳の中でさらに新しく進化し心理戦略と考えられます。それは、助け合い(協力)の心理を出し抜いた「働かなくても良いなら働かない」、今井に当てはめれば「どうせならもっと助けて(休ませて)」という意識的な心理です。先史時代、私たちの祖先は、助け合い(協力)によって得た共同体(集団)の食糧(資源)を平等に分配してきました。ところが、その平等意識に乗じることで、その資源を楽して手に入れようとする心理もまた進化したのです。これを駆り立てるのは、「ただ乗り遺伝子(フリーライダー)」と呼ばれます。みんながお金を払って乗り物に乗っているのに自分だけただで乗ろうとする、言い換えれば、みんなが働いているのに自分だけは休もうとすることです。実際に、社会主義国家であったかつてのソビエト連邦や、国民を厚遇した政策のギリシアでは、働かない人が増えすぎて、国の運営が破綻しました。つまり、「新型うつ病」の2つ目の起源は、うつによって周りから援助が得られた時に、うつが治らないことを主張することで、その援助の継続を引き出す心理であると言えます(疾病利得)。これは、休めることに味を占めて、自分の権利として就業規則による休職可能な期間を目一杯に休もうとする点で、損得勘定が働いており、意図して意識して起こっていると言えます。「新型うつ病」は、経過の途中で、無意識的な心理から意識的な心理にシフトしていると言えます。「『新型うつ病』は怠けか病気か?」という議論の難しい点は、この無意識と意識の心理の偏りが、患者によっても、また病期によっても違うため、一概に言えないことです。さらに、本人は「おれは悪くない」という心理が強いため、「怠け」の要素を認めたがらないです。ここで言えることは、「新型うつ病」に「怠け」の要素はあると私たちは理解しつつも、臨床の場面で「怠け」という価値判断を含む言葉を使うことは治療的ではないということです。なぜ医師は休職診断書を作成してしまうの?―医師の心理.今井がうつ病と診断されて「ですよね~」と喜んでいる様子に、医師は「はい?」とけげんな表情をしています。実際に、ほとんどの医師は、初診の段階で「新型うつ病」を疑ってはいるのですが、なぜ休職のための診断書を作成してしまうのでしょうか? その理由は、大きく3つあります。(1)訴えを重くとる―見逃しはだめ1つ目の理由は、医師は基本的に症状を重くとることです。今井は「おれこんなにがんばってるのに」と思っており、それを医師は聞いています。患者が本人なりにはがんばっている点で(過剰適応)、「新型うつ病」に従来型のうつ病の要素も混じっていることが実際の臨床でよくあります。つまり、少なくとも初診時の診察室の中だけでは一概に「新型」か従来型かとはっきり言い切れないということです。このような病態に対して、「新型うつ病」と決め付けて、訴えを過小評価して休養を指示せずに後に従来型のうつ病の要素で症状が悪化して自殺されるなどの重大な事態を招くと問題があります。逆に、「新型うつ病」と決め付けず、むしろ訴えを過大評価して安全策として休養を指示して、実は後から休養するほどではなかったと分かっても問題はないです。つまり、医療において重要視されるのは、「空振りはありだけど見逃しはだめ」ということです。(2)訴えを受け止める―信頼関係が大事2つ目の理由は、医師は基本的に訴えを受け止めることです(受容)。医師は今井の饒舌な訴えに耳を傾けています。医師は、この受容によって信頼関係(ラポール)を築くことを優先します。これは医師の倫理観でもあります。逆に言えば、上から目線で疑いの目を向けていたら(パターナリズム)、治療が始まらないということです。たとえ「新型うつ病」を見抜いていたとしても、少なくとも訴えを受け止めているふりをして、暴くことはためらいます。(3)訴えを覆せない―客観性がない3つ目の理由は、医師は基本的に訴えを覆せないことです。今井の饒舌な様子(表出)から症状が誇張されていることが推測されます。実際の臨床では、「『うつ』でもう職場に行けない」と言い張ったり、「このままだとどうにかなってしまう」とほのめかす患者も多いです。うつ病の診断や治療方針は、このような診察室での患者の主観的な訴えを根拠としており、それが疑わしいと思っても、それを覆すだけの客観的な事実や検査データが医師側にはないのが現実です。患者は、診断書をもらう時点では海外旅行に行くとは言いません。多くのうつ病の心理検査も、患者の主観が反映されてしまい、客観性には限界があります。このような状況で、もし十分な根拠なく訴えを突っぱねれば、逆に医師の判断に客観性がないことになり、医師によるいやがらせ(ドクターハラスメント)だと受け取られる危険性もあります。さらに、患者によっては、休養診断書を手に入れるために、医療機関を渡り歩く場合もあります。最初のうちは休職するほどの状態ではないと医師から判断されるのですが、納得が行かず、セカンドオピニオンの名のもとに受診を繰り返すうちに、やがて訴え方が誇張的で誘導的になり、最終的に休職診断書を手に入れることができるのです。「新型うつ病」にどうすれば良いの?―表3、表4.これまで、「新型うつ病」の理解を深めてきました。治療反応性としては、従来型のうつ病が良好であるのに比べて、「新型うつ病」はもともと良好ではないことが分かります。それでは、どうすれば良いのでしょうか?「新型うつ病」の原因は主に4つであることを解き明かしてきました。それは、社員(個人)が自己本位(個人主義的)になったこと、社員(個人)が依存的なまま(集団主義的)であること、会社(社会)が会社本位(個人主義的)になったこと、会社(社会)が労働法制によって休職中に保護的なまま(集団主義的)であることです。ということは、その4つの原因に対して、それぞれ4つのアプローチをすれば良いのです。それは、社員(個人)の自己本位の是正、社員(個人)の休職中の依存の脱却、会社(社会)の会社本位の是正、会社(社会)の休職中の過保護の脱却です。ここから、社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けて、さらにそれぞれの側面で2つのアプローチのポイントをご紹介します。社員(個人)にどうすれば良いのか?.(1)周りに目を向けさせる―認知行動療法オフ会でのぞみんは「つらそうですね」と今井に共感します。しかし、間を置いて「M田さんも」と付け加えると、今井は「はっ?」「のぞみん、M田の味方なの?」とびっくりして言います。そして、他の参加者は「なんでM田の気持ちなんて分かるわけ?」と質問してきます。1つ目のアプローチのポイントは、自己本位の是正と依存の脱却のために、周りの視点に立たせて周りに目を向けさせることです(認知行動療法)。これは、一方的に説教をすることではないです。自分に目が向いてばかりで自分のことでいっぱいになっている本人に、周りがどう思っているかなどを具体的に問いかけ多面的に想像させます。例えば、本人が休職中に海外旅行に行ったことを知った同僚の気持ち、自分が悪口を書き込んだブログを見た上司の気持ち、そして今井を叱っていた時の上司の気持ちなどです。また、過去・現在・未来の時間軸の視点に立たせて将来に目を向けさせることです(メタ認知)。今この瞬間に目が向いて逃げ込もうとしている本人に、本人に「新型うつ病」の特性の理解を促し、このままだと将来どうなるかなどの見通しを伝えます。例えば、本人の物事のとらえ方(認知)に主な原因があること、原因からして従来型のうつ病ではないこと、薬の効果は限定的であること、休職が長引けば長引くほど対人スキル(社会性)が低まり逆に復職が困難になること、部署移動や転職により職場の環境を変えるだけでは同じ症状がまた出る可能性が高いことなどです。(2)周りが自分に合わなくても不安がらなくさせる―集団の復職訓練(リワーク)オフ会の参加者の男性の1人が「(妻が)『今夜は出かけるんだ。気分転換も大事だよね。いってらっしゃい」って嫌味を言うんだよ」「あいつ(妻)は内心じゃおれのこと働きもせず遊び歩いちゃってと思ってるんだよ」と嘆きます。すると、他の参加者たちは「それって」「単に思い込みなんじゃ・・・」とぼそっと指摘します。このやり取りを見た今井は、自分が独りよがりだったことに気付き、復職を決意するのです。ここから分かることは、自分独りでは気付かなかったことが、集団の中では気付くことができることです。昔から「人の振り見て我が振り直せ」とはよく言ったものです。2つ目のアプローチのポイントは、自己本位の是正と依存の脱却のために、休職しているうつ病の患者が集まった集団で復職訓練を行うことです(リワーク)。昨今では、このリワークを行う医療機関や企業が増えてきています。「新型うつ病」の患者は、医師や臨床心理士などの医療職(権威)からの個別の指摘に対しては、「傷付き不安」から身構えてしまい、自分の偏った考え方(認知の偏り)を認めようとしなかったり(否認)、反発するケースがあります(抵抗)。ところが、自分と似たメンバーからの指摘であれば、仲間意識による親近感から「傷付き」も最小限になります。こうして、安心感のある集団の中で、小さな「傷付き」体験を積み重ねることで、物事のとらえ方(認知)の偏りが修正され、周りが自分に合わなくても不安がらなくなり、「傷付き不安」を克服して、打たれ弱くはなくなります(人間的成長)。言い換えれば、リワークとは、仲間といっしょに小さく傷付け合うことで、人間関係とは何かを学ぶ大人の学校です。リワークによって、「自分の周りには相手がいる」「自分はたくさんの中の1人なんだ」という現実をより意識するようになります。すると徐々に、「自分にばかり目が向いていた」「上司や会社のせいにしてばかりだった」「嫌なことから逃げていた」という自分のもともとの考え方(認知)に気付くようになります。そして、「もっと周りにも目を向けよう」「自分にも悪い所があった」「嫌なことでも仕事だからやろう」と考えるようになります。こうして、自分も大事だけど周りも大事と思うようになり、「なりたい自分」と「なるべき自分」のバランスがよりとれるようになっていきます。会社(社会)はどうすれば良いのか?.(1)社員(個人)を育て見守る取り組みを行う―アサーショントレーニング上司の前田は一緒に残業をしている他の部下たちに「おれだって好きで今井を叱ってたわけじゃないよ」「早く一人前になってもらわなきゃ困るから必死だったんだよ」とこぼします。すると、ある部下が「今井も必死だったんじゃないですか?」「毎日あわただしすぎて、とにかく失敗しないように必死で、そればっかりで分かんなくなっちゃったじゃないですかね」と進言します。思い直した前田は、いよいよ今井が復職した日に「ありがとう。待ってたよ」「これからはもっとコミュニケーションをとって、いっしょに成長していけたらと思っている」と同じ目線で真摯に向き合います。すると、今井も「ありがとうございます」と素直に答えることができるのです。1つの目のアプローチのポイントは、会社本位の是正のために、そして長期的な会社の利益のためにも、社員(個人)を育て見守る取り組みを行うことです。これは、昔ながらの「気合い」や「精神力」などの抽象的な言葉で一方的に押し付けることではありません。例えば、それは感謝し合うポジティブなコミュニケーションのスキルを会社全体で推し進めることです(アサーショントレーニング)。また、「こうしろ!」「ああしろ!」という指示命令ではなく、「あなたはどうしたい?」「何ができるの?」「私たちは何をしてあげられる?」という問いかけによる双方向のかかわり方です。さらには、入社研修で新人社員たちに今回紹介しているこのドラマを流して、休職中に海外旅行に行く社員の問題点や上司が一方的に叱責する会社の問題点などについてグループワークをして、コミュニケーションの大切さをお互いの共通認識とすることです。「新型うつ病」のなり方を学ぶことは、「新型うつ病」にならないやり方を学ぶことでもあるからです。(2)休職中の傷病手当を最低限の設定に引き下げる―限界設定上司の前田は、部下たちに「(休職している)今井の担当分は同じチームのみんなに肩代わりしてもらう」と伝えます。すると、部下たちは「そんなあ、おれたちもう今の作業量でいっぱいいっぱいですよ」と嘆きます。一方、今井は休職中に傷病手当で海外旅行に行っています。これは、明らかに不公平です。このドラマでは、幸運なことに、オフ会でのやり取りのおかげで、今井は考え直し、早めに復職することができました。しかし、実際は、休職中の手厚い保障に安住することで、なかなか復職できないケースが多いです。2つ目のアプローチのポイントは、休職中の過保護の脱却と公平性のために、休職中の傷病手当を生活費と医療費を加味した最低限の設定に引き下げることです。つまり、保障の線引きを見極めるということです(限界設定)。これには、日本の労働法制が変わらなければならないです。そうすることで、本人に早期の復職が動機付けられます。そもそも、「傷病」の期間は、休養の期間であり、海外旅行などの交遊費にお金がかかることはないはずです。交遊費にお金をかけるくらい活動性が高いなら、早期に復職するタイミングであると言えます。また、自宅では元気で職場でうつになるという状態なら、それは本人にその職場が合っていないわけで、退職や転職のタイミングであると言えます。ただ、ここで誤解がないようにしたいのは、先ほど紹介したアメリカのような完全な契約社会が望ましいというわけではないです。それは、全くセーフティネットがないことはホームレスや犯罪などの別の社会問題を引き起こすリスクが高まるからです。かと言って、先ほど紹介したかつてのソビエト連邦や現在のギリシアのような生活が過剰に保障された社会もまた望ましくないです。それは、働かない人たち(フリーライダー)が増えすぎてしまい、国の財政(資源)を食い潰して、国家(集団)が破綻するリスクが高まるからです。現在の日本は、正規労働が昔ながらの労働法制で過剰に保障されています。その過剰になった保障の費用を抑えようとして、会社は全く保障のない非正規労働を増やし続けています。格差がますます開き、アンバランスになっています。望ましいのは、非正規労働を減らし正規労働を増やすことはもちろんですが、同時に正規労働の過剰な保障を是正することです。大事なことは、「切り捨て」の社会も「抱え込み」の社会も同じくらいの危うさがあり、私たちは、そのバランスをとる必要があるということです。表4 「新型うつ病」へのアプローチのポイント アプローチポイント職員(個人)自己本位の是正休職中の依存の脱却周りの視点に立たせて周りに目を向けさせる(認知行動療法)過去・現在・未来の時間軸の視点に立たせて将来に目を向けさせる集団で復職訓練を行う(リワーク)職場(社会)会社本位の是正職員(個人)を育て見守る取り組みを行う休職中の過保護の脱却休職中の傷病手当を最低限の設定に引き下げる(限界設定)「新型うつ病」はどこに行くの?.「新型うつ病」は、現在の日本の文化が作り出した要素が大きいことが分かります。それは、もともとの集団主義的な文化から新しい個人主義の文化に変わりゆく時代の流れの中で起きています。つまり、「新型うつ病」は、「助けて脳」と「怠け脳」という社会脳の進化の代償であるだけでなく、現在の日本の一貫しないウェットな個人主義という「文化の代償」とも言えます。今ここで、「新型うつ病」の正体が見えてきました。そして、どうすれば良いのかも分かってきました。これから社員(個人)も会社(社会)も私たち全員が、「新型うつ病」をより良く理解していけば、そして、バランスのとれた新たな労働の文化を生み出していけば、「新型うつ病」という現象はなくなっていく可能性があるのではないでしょうか?1)吉野聡:「現代型うつ」はサボりなのか、平凡社新書、20132)NHK取材班:職場を襲う「新型うつ」、文藝春秋、20133)アンソニー・スティーブンズほか:進化精神医学、世論時報社、20114)大平英樹:感情心理学・入門、有斐閣アルマ、2010

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画像信仰への対処【Dr. 中島の 新・徒然草】(093)

九十三の段 画像信仰への対処患者さんの画像信仰というのは物凄いものがあり、まるでMRIさえ撮れば何でもわかる、と思っておられるみたいです。頭部MRIをディスプレイに映し出したときに最もよく尋ねられるのは「私の頭はボケてませんか、大丈夫でしょうか?」という質問です。そんな時に、「いやいやMRIは脳の形態を見ているだけなので、記憶力とか計算などの機能については残念ながらわからないですよ」などと真面目に答えてしまうと、無限の泥沼にはまってしまいます。かといって「大丈夫です。ボケてなんかいませんよ」といい加減なことをいうのも気がひけます。結局、「うーん。萎縮は進んでいないようだなあ」と呟くことによって、患者さん本人が「ではボケていないんですね」と勝手に思い込むのを聞き流す、という作戦をとっています。さらに1歩進んで、「毎年MRIを撮影した方がいいですか?」と患者さんに質問されることもよくあります。確かに小さな未破裂脳動脈瘤とか無症候性の髄膜腫だったら1年に1回程度調べるのは意味のあることでしょう。でも、正常な人の脳を毎年MRIで調べる必要はないと私は思います。治療方針が変わらないのなら、検査する意味がないからです。自費の脳ドックで調べるのならまだしも、少なくとも保険診療で行うべきものではありません。でも、そのように説明してもなかなか納得してくれない患者さんが大勢おられるのも事実です。ついムキになって説教をかましてしまうのは、そんな時です。中島「何回もMRIを調べてどうしよってんですか!」患者「でも病気を早くみつけられるかもしれないし」中島「今回調べて何もないんだから、心配しないでくださいよ」患者「でもお」こんな感じですね。後は当たり前のことを言うのみです。中島「大切なのはMRIじゃありません」患者「何でしょうか?」中島「血圧です」患者「でも私は、毎月〇〇クリニックで測って正常です」中島「たまに測って正常と思いこんでいたら、大間違いですよ」患者「ええっ!」中島「血圧は毎日測ってください」患者「毎日ですか?」中島「とくに、朝起きてトイレを済ませた直後に測ってください」患者「血圧計は自分で買うのですか」中島「当たり前です。ドラッグ・ストアで売っているじゃないですか」患者「ええ」中島「何処にでも血圧計は設置されているし」患者「そうですね」中島「競艇場にもあるそうですよ。僕は知らんけど」患者「そうなんですか」中島「血圧計が3つ並んでいたら、3つとも腕を突っ込んでください」患者「3つとも突っ込むんですか?」中島「まあ、そのくらい真剣にやれということですね」実際、MRIを調べるよりも血圧を調べる方が、よほど大切ではないかと私は思っています。中島「血圧を測ったら帳面につけて、〇〇クリニックに持っていってください」患者「はあ」中島「クリニックでは正常だけど自宅で測ったら高いとか、そういうことがよくわかるんですよ」患者「ええ」中島「帳面につけることがボケ防止にもなりますからね」患者「……」あまり素直に従ってくれる人もいないのが実際のところです。患者さんの画像信仰を逆手にとって、頭部MRIを見ながら、「高血圧の影響が……出てしまっているなあ」と呟くくらいになると、本当の名医なのかもしれませんね。最後に1句健康は MR(エムアール)より 血圧計

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梅毒に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第13回となる今回は「梅毒」についてです。今回の梅毒流行の特徴「梅毒」というと、江戸時代に流行した記録もあるくらいに、日本では古くからある感染症です。そんな梅毒をなぜ今さら、この「気を付けろッ」が取り上げるのかと言いますと…今再び梅毒がすさまじい勢いで日本で流行しているからなのです! 梅毒は、日本における再興感染症なのですッ!図1は梅毒の患者数の推移です。見てのとおり、2013年から症例数が増加してきています。当初流行は、東京新宿区から始まったとされていますが、新宿区の病院で働く私としては「うーん…まあときどき診るなぁ」くらいの認識でおりましたし、「きっと医師がちゃんと報告する習慣がついただけで、報告バイアスが働いているんだな」などと思っておりました。 しかし、今こそハッキリ言いましょう! 梅毒は、流行ってます!! まあ、読者の皆さまは「おまえに言われんでも知っとるわ!」と思われるでしょうが、マジで流行ってます。ここ最近の梅毒の流行状況はヤバいことになっており、当院では週に数例診るペースで受診者が訪れています。2013年くらいまでは、主にMSM(Men who has sex with Men: 男性と性交渉する男性)の方を中心に流行していましたが、今では女性にも流行が及んでおります。画像を拡大する1回の性交渉で30%が感染梅毒は言うまでもなく性交渉で感染します。1期または2期梅毒に感染している人と性交渉をすると30%くらいの確率で感染すると言われています。主な性感染症の1回の性交渉で感染する確率を表にまとめました。HIVの1回の性交渉での感染率が0.05~0.1%くらいと言われていますので、30%というと結構な確率ですよね。そんなわけで梅毒になりたくなければセックスしなければ良いわけですが、それぞれ皆さまいろんな事情があるでしょうから、そういうわけにもいかないと思います。100%ではありませんが、コンドームの装着は予防に有効です。画像を拡大する初期症状に乏しい梅毒梅毒が広がりやすい理由の1つとして、症状に気付きにくい点が挙げられます。1期梅毒の「硬性下疳」と呼ばれる潰瘍病変は、一般的に痛みを伴わず、自覚症状に乏しいため気付かないうちにパートナーに梅毒をうつしてしまうことがあります。私自身は口唇に硬性下疳ができて、口唇ヘルペスと診断されて放置していたコマーシャルセックスワーカーの方を診たことがあります(図2)。画像を拡大するこの方はオーラルセックスをなりわいとされていましたので、1日何人もの梅毒患者が誕生していたものと思われます。また、2期梅毒も症状が多彩であり、なかなか診断に至らないことがあります。梅毒の皮疹は「これは典型的な梅毒疹だッ!」というものもありますが、「えー!これ梅毒の皮疹なの?」という非典型的なものもあり、さまざまなスペクトラムがあります。図3は乾癬のような皮疹で受診した2期梅毒の方です。「なんか最近様子がおかしい」ということで、上司に受診を勧められた会社員の方は神経梅毒でした。画像を拡大するというわけで、梅毒の診断は非常に難しいのですッ! 他の性感染症(淋菌、クラミジア、B型肝炎、HIVなど)を診たときも梅毒を疑ってみましょう。「いつも心に梅毒を!」これをわれわれの座右の銘にしようではありませんかッ!話が長くなってしまったのと、とっくに原稿の締め切りを過ぎている関係上、今回はここで終わります。次回「梅毒 その2」では性交渉歴の聴き方と、梅毒の診断・治療についてお話しさせていただきます。1)国立感染症研究所.IDWR 2014年第47号<注目すべき感染症> 梅毒 2014年における報告数増加と疫学的 特徴2)Holmes KK, et al. Am J Epidemiol.1970;91:170-174.3)Platt R, et al. JAMA.1983;250:3205-3209.4)Lycke E, et al. Sex Transm Dis.1980;7:6-10.

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DNA修復遺伝子異常の前立腺がん、olaparibで高い奏効率/NEJM

 DNA修復遺伝子に異常が認められる転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者には、ポリ(アデノシン二リン酸・リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害作用のあるolaparibが、9割近くの奏効率を示す可能性があることが示された。英国・Institute of Cancer ResearchのJ. Mateo氏らが50例を対象とした第II相非盲検単群2段階多施設試験の結果、報告した。前立腺がんは多様性があるが、現在の治療は遺伝子ベースに層別化したものはなかった。NEJM誌2015年10月29日号掲載の報告。50例を対象に、olaparib 400mgを1日2回投与 研究グループは、転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者50例を対象に、olaparib 400mgを1日2回投与した。 主要評価項目は、奏効率で、その定義としては(1)固形がんにおける効果判定基準RECIST1.1に基づく客観的奏効、(2)前立腺特異抗原(PSA)値の50%以上低下、(3)血中循環腫瘍細胞数が5/7.5mL以上から5/7.5mL未満へ減少のいずれかとした。 腫瘍生検を行い、ターゲット領域のみの次世代シーケンシング、エクソーム/トランスクリプトーム解析、デジタルポリメラーゼ連鎖反応検査を実施した。 被験者の全員にドセタキセル治療歴があり、49例(98%)にアビラテロンまたはエンザルタミドによる治療歴が、29例(58%)にカバジタキセルによる治療歴があった。被験者全体の奏効率33%、DNA修復異常例の奏効率88% 結果、評価が可能だった49例のうち、奏効が認められたのは33%(95%信頼区間:20~48)で、そのうち12例は試験薬の服用期間が6ヵ月超だった。 次世代シーケンシングの結果、BRCA1/2、ATM、ファンコニ貧血遺伝子、CHEK2などのDNA修復遺伝子に、ホモ接合欠失や有害突然変異もしくはその両方が16例で見つかった。 この16例のうち、olaparibで奏効が認められたのは14例(88%)で、その中にはBRCA2欠失の7例すべてと、ATM変異を認めた5例中4例が含まれていた。 なおグレード3または4の有害事象としては、貧血が20%(10例)、疲労感が12%(6例)で、先行試験の結果と一致していた。

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乳幼児期の全身麻酔、2歳時の神経発達への影響は/Lancet

 生後60週未満の乳幼児に対するセボフルランによる全身麻酔は、意識下局所麻酔と比べ、2歳時点における神経発達アウトカムへの影響は認められなかったことが報告された。オーストラリア・Murdoch Childrens Research InstituteのAndrew J. Davidson氏らが行った、無作為化比較試験の副次評価項目で示された。Lancet誌オンライン版2015年10月23日号掲載の報告より。オーストラリア、イタリアなど7ヵ国28病院で試験 研究グループは、2007年2月9日~13年1月31日にかけて、オーストラリア、イタリア、米国など7ヵ国28ヵ所の病院を通じて、生後60週未満で、胎在週数26週を超えてから生まれ、鼠径ヘルニア縫合術を受けた幼児722例を対象に試験を行った。 無作為に2群に分け、一方には意識下局所麻酔を(363例)、もう一方にはセボフルランによる全身麻酔を行った(359例)。 主要評価項目は、5歳時点でのウェクスラー就学前・小学生知能評価尺度第3版(WPPSI-III)スコアだった。今回の報告では、副次的評価項目の2歳時点でのベイリー乳幼児発達尺度第3版の認知機能複合スコアが発表された。全身麻酔時間中央値は54分 被験者のうちアウトカムが得られたのは、局所麻酔群が238例、全身麻酔群が294例だった。 2歳時点でのベイリー乳幼児発達尺度認知機能複合スコア平均値は、局所麻酔群が98.6(SD:14.2)、全身麻酔群が98.2(同:14.7)で、両群の差は0.169(95%信頼区間:-2.30~2.64)と同等だった。 なお、全身麻酔群の麻酔時間中央値は54分だった。

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11月12日は患者さんと肺炎を話題に

 10月29日、ファイザー株式会社は、岩田 敏氏(慶應義塾大学医学部 感染症学教室 教授)を講師に迎え、「長寿社会ニッポンにおける感染症の潜在リスクと最新対策」をテーマにプレスセミナーを開催した。ワクチンで防ぐ感染症 男女ともに平均寿命が80歳を超えるなかで、今後いかに健康寿命を延伸させ、健康な期間を延ばしていくかが重要となる。その際、わが国の主な死亡原因が、悪性新生物、心疾患、肺炎、脳血管疾患と続くなかで、65歳以上の高齢者では、96.8%が肺炎で亡くなっていることから、肺炎をいかにワクチンなどで予防するかがカギとなる、と岩田氏は説明した。高齢者の半数以上がワクチン接種歴なし 実際、ワクチン接種がどのくらい浸透しているのかを調査した資料がある。同社が全国の60歳以上の男女、7,050人に実施した「全国47都道府県“大人の予防接種”意識調査」によれば、「成人になってワクチンを接種したことがあるか」との問いに、「ある」と回答した人が42.5%(n=2,998)、「ない」と回答した人が50.9%(n=3,585)と、高齢者の半数以上がワクチン接種を受けていない現実が明らかとなった。また、「ある」と回答した人が受けたワクチンの種類では、インフルエンザ(76.8%)が最も多く、次いで肺炎球菌感染症(50.1%)、次に風疹・麻疹(13.8%)となっていた。肺炎に一度かかると… 肺炎球菌の血清型は現在90種類以上が報告され、侵襲性肺炎球菌感染症では5歳未満の小児と65歳以上の高齢者に患者が多く分布している。そして、重要なことは、2013年4月~2014年8月まで肺炎での死亡例154例のうち112例が65歳以上の高齢者ということである(IASR資料より)。高齢者が肺炎にかかるとADLの低下を招き、心身機能の低下が起こる。その結果、廃用症候群が進み、嚥下機能が弱くなることで、さらに肺炎にかかるという負のスパイラルに入ると指摘する。高齢者にとっては、肺炎にかかること自体がリスクであり、これをいかに防ぐかが、長く健康に過ごすための課題となる。今できる対策はワクチンの早期接種 肺炎球菌に対し、わが国で接種できるワクチンは2種類ある。1つは、PCV13(商品名:プレベナー13)であり、もう1つはPPV23(同:ニューモバックスNP)である。 PCV13は、結合型ワクチンであり、適応年齢は2ヵ月以上6歳未満と65歳以上で、小児にも適応があるのが特徴。また、接種経路は小児であれば皮下に、成人であれば筋肉内となる。本ワクチンとプラセボを比較した市中肺炎の累積発症数の研究によれば、その効果は4年以上持続する1)。 PPV23は、多糖体ワクチンであり、適応年齢は2歳以上である。接種経路は筋肉内または皮下であり、昨年より施行されたわが国の65歳以上の高齢者への肺炎球菌ワクチンの定期接種の対象ワクチンである。インフルエンザワクチンとの両剤接種で軽症化の効果が報告されている2)。 前述の「“大人の予防接種”意識調査」によれば、「医師から肺炎球菌ワクチンの接種について詳しい説明を受けたいと思うか?」という問いに対し、「説明を受けたいと思う」と回答した人が66.6%(n=4,694)に上る一方、「受けたいと思わない」(18.1%/n=1,274)、「わからない」と回答した人も15.3%(n=1,082)おり、浸透度の足踏みが懸念されている。 肺炎のリスクは、5歳未満(とくに2歳未満)の小児と65歳以上の高齢者、そして、糖尿病、心疾患などの基礎疾患のある人、療養中で免疫力が低下している人、脾臓を摘出した人、喫煙をしている人などに高い。とくに高齢者は、前述の負のスパイラルにならないためにも、場合によっては定期接種を待たずに接種を受けさせることも大切だという。 最後に、「11月12日は『世界肺炎デー』である。こうした機会に、医療者と患者の間で肺炎やワクチンが話題になることで、さらに感染症予防が進むことが重要」とレクチャーを終えた。ファイザー株式会社の「“大人の予防接種”意識調査」はこちら。(ケアネット 稲川 進)関連コンテンツケアネット・ドットコム 特集「肺炎」はこちら。参考文献1)Bonten MJ, et al. N Engl J Med. 2015;372:1114-11252) Kawakami K, et al. Vaccine. 2010;28:7063-7069.

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妊娠に伴ううつ病、効果的なメンタルヘルス活用法

 スクリーニングでうつ病と診断された妊娠中あるいは分娩後の女性について、スクリーニング単独の場合はメンタルヘルスの活用は22%にとどまったが、周産期外来部門への介入や、本人へのリソース提供を行うことで、周産期うつ女性のメンタルヘルス活用は、2~4倍増大するという。米国・マサチューセッツ大学医学部のNancy Byatt氏らがシステマティックレビューの結果、示した。Obstetrics & Gynecology誌オンライン版2015年11月号の掲載報告。 レビューは、PubMed、CINAHL、PsycINFO、ClinicalTrials.gov、Scopus(EMBASE)を検索し、1999~2014年に発表された、周産期医療時におけるうつ病スクリーニング後のメンタルヘルスケアの活用を評価した研究を特定して行われた。研究の選択基準は、1)英語で発表、2)スクリーニングでうつ病と診断された妊娠中あるいは分娩後の女性が被験者、3)周産期外来で有効性の認められているうつ病スクリーニングを実施、4)メンタルヘルスケアの活用をアウトカムに含む、とした。392件の論文が検索され、このうち42件がフルテキストレビューであり、17件が選択基準を満たした。modified Downs and Black scaleを用いて研究の質を評価。2人の研究者が個別に論文をレビューし、コンセンサスを得ながら、試験デザイン、介入の内容、メンタルヘルスケアの活用を明らかにし、分類した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化対照試験1件、クラスター無作為化対照試験1件を含む、さまざまな試験デザインの研究論文17件をレビューに包含した。研究論文の質に関する平均支持率は61%(31.0~90.0%)であった。・周産期外来部門へ介入が行われなかった場合、周産期うつ女性が1回以上メンタルヘルス外来を受診していた割合は平均22%(13.8~33.0%)だった。・しかし、患者への関与戦略(44%、29.0~90.0%)、実地アセスメント(49%、25.2~90.0%)、また周産期医療従事者へのトレーニング(54%、1.0~90.0%)といった介入を行うことで、外来受診の頻度は倍増した。・さらに、女性に対するリソースの提供、周産期医療従事者へのトレーニング、実地アセスメント、および周産期医療従事者対象のメンタルヘルスコンサルテーションという介入を行うことで、メンタルヘルスケアの活用はより高率となることが示唆された(81%、72.0~90.0%)。・詳細で正確なさらなる研究が必要ではあるが、スクリーニングに加えて本人および医療従事者を対象とした介入、また実地臨床レベルの障壁に対する介入を行うことは、うつ病の検出、評価、専門医への紹介、さらに周産期医療を改善すると思われた。関連医療ニュース 妊娠初期のSSRI曝露、胎児への影響は 妊娠初期のうつ・不安へどう対処する ヨガの呼吸法や瞑想、産前うつ軽減によい

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緑茶やコーヒーで胆道がんリスクは減少するか

 緑茶やコーヒーの摂取が、数種類のがんリスクを減少させる可能性があるが、胆道がんについてはよくわかっていない。大阪大学の牧内 武氏らは、緑茶(緑茶全体、煎茶、番茶/玄米茶)およびコーヒーの摂取と、胆道がんおよびそのサブタイプのリスクとの関連を、日本における集団ベースの前向きコホート研究で検討した。その結果、緑茶摂取量が多いと胆道がんリスクが減少する可能性が示唆され、その効果は煎茶に起因する可能性があるという。また、コーヒー摂取とは関連がなかった。Cancer science誌オンライン版2015年11月4日号に掲載。 1995~99年に45~74歳の8万9,555人を登録し、2010年まで113万8,623人年の追跡調査を行った。その間に胆道がん284例が確認された。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、Cox比例ハザードモデルを用いて計算した。 主な結果は以下のとおり。・緑茶摂取量が720mL/日を超える群では、120mL/日以下と比較して、胆道がんリスクが有意に低かった(HR 0.67、95%CI:0.46~0.97)。また、緑茶摂取量の増加とリスク減少の関連性については、有意ではないものの傾向がみられた(傾向のp=0.095)。・原発巣の部位による検討では、120mL/日を超える緑茶摂取が胆嚢がんと肝外胆管がんのリスク減少に関連する傾向がみられた。・煎茶と番茶/玄米茶を分けて検討した場合、煎茶の摂取量と胆道がんリスク減少との関連が、有意ではないものの傾向が認められた。しかし、番茶/玄米茶では関連が認められなかった。・コーヒーにおいては、胆道がん、胆嚢がん、肝外胆管がんとの間に明らかな関連性は認められなかった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第24回

第24回:痛風の診断と治療、そして予防監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 先日、痛風結節のある患者が受診されました。高齢女性で、かなり食生活が乱れているようでした。診断と治療に関しての基本的な流れを確認しつつ、家庭医として予防についても考えてみました。厳密なプリン体摂取制限による尿酸値低下の影響は少ないといわれているものの、食事習慣の改善については根拠を持ってアドバイスをしたいと思っています。 以下、文献1より(一部文献3を含む)痛風は尿酸ナトリウム結晶により、主に第1中足骨関節(MTP:metatarsophalangeal joint)が侵される、有痛性の関節炎である。ほかにも横足根関節(MT:midtarsal joint)、足関節にも多く、長期罹患例では膝関節、手指関節にも生じうるが、股関節、肩関節はまれである。女性ホルモンが尿酸排泄を増加させるので、閉経前の女性は男性に比べて痛風の有病率が低いとされている。また、アルコール(とくにビール)、肉類(とくに赤肉、ジビエ、内臓)、魚介類(貝、大型海水魚)、フルーツジュース、高濃度果糖液の入った飲料などの摂取は痛風のリスクを高める。(表1) 画像を拡大する痛風の診断基準としては、米国リウマチ学会のもの(表2)が用いられることが多く、発症リスクの計算については、オンラインで利用できるものがある2)。鑑別診断は、偽痛風、化膿性関節炎(まれだが痛風との合併あり)をはじめとした感染症、外傷である。表2. 痛風の診断基準1. 尿酸塩結晶が関節液中に存在することまたは2. 痛風結節の証明または3. 以下の11項目のうち6項目以上を満たすことa) 2回以上の急性関節炎の既往があるb) 24時間以内に炎症がピークに達するc) 単関節炎であるd) 関節の発赤があるe) 第1中足趾節関節の疼痛または腫脹があるf) 第1中足趾節関節の病変であるg) 片側の足関節の病変であるh) 痛風結節(確診または疑診)があるi) 血清尿酸値の上昇があるj) X線上の非対称性腫脹がある(骨びらん周囲に骨硬化像を伴うことと、関節裂隙が保たれていることで、RAとの鑑別可能)k) 発作の完全な寛解がある上記のような診断基準ではあるが、可能な限り関節液中の尿酸-ナトリウム結晶の証明が求められる。超音波やMRI、CTは必ずしも診断には必要ないとされる。ただし、超音波において、軟骨表面の尿酸塩結晶の検出は、Double contour signとして有名である。痛風性関節炎の診断上の注意点3)1.痛風発作中の血清尿酸値は低値を示すことがあり、診断的価値は高くない2.関節液が得られたら迅速に検鏡し、尿酸塩結晶の有無を同定する3.痛風結節は診断上価値があるが頻度は低い急性期の治療については、副腎皮質ステロイドの経口投与とNSAIDsが同等に効果的である (推奨レベルB)。第1選択はNSAIDsであり、歴史的にはインドメタシンが好んで使用されているが、他のNSAIDsに比べて効果があるというエビデンスはない。ステロイドは短期間で終了すると再燃がありうるため、10~14日で漸減していく。コルヒチンはやや高価であり、鎮痛効果はなく、発症後72~96時間経過していると効果に乏しいとされる。再発予防の治療については、痛風の既往があり、かつ年2回以上の発作(CKD stage2以上では年1回以上)、痛風結節、または尿酸結石の既往がある場合には尿酸を下げる治療を考慮する。症状がなくても発作後3~6ヵ月は治療を継続し、症状がみられる場合には引き続き継続する。服薬についても選択肢は多くあるが、ここではフェブキソスタットとアロプリノールが同等に効果がある(推奨レベルB)と述べるに留める。日本での目標値としては尿酸値6mg/dL以下に維持するのが望ましいとされている。食生活習慣の改善としては、体重減少はリスクを下げる。果糖液、プリン体を多く含む動物性蛋白、とくにビールを含むアルコールを避けるべきである。一方で、プリン体を多く含む野菜は痛風のリスクを上昇させないといわれている。野菜や低(無)脂肪の乳製品の摂取が推奨される。(ただし、推奨レベルはC)※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Hainer BL, et al. Am Fam Physician. 2014;90:831-836. 2) Gout diagnosis calculator. the GP education and training resource.http://www.gp-training.net/rheum/gout.htm (参照2015.11.4). 3) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版.http://www.tufu.or.jp/pdf/guideline_digest.pdf (参照 2015.11.4).

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受動喫煙で3歳時の虫歯リスクが倍増/BMJ

 出生後4ヵ月時にタバコの煙に曝露していた子供は、3歳時の虫歯のリスクが約2倍に上昇したが、母親が妊娠中に喫煙した場合の虫歯への影響は有意ではないことが、京都大学大学院薬剤疫学分野の田中 司朗氏らの調査で示された。先進国では乳歯の虫歯の有病率が高いが、子供の虫歯予防は砂糖の摂取制限やフッ素塗布などに限られている。横断的研究では、受動喫煙が乳歯および永久歯の虫歯に影響を及ぼすことが示唆されているが、コホート研究のデータはスウェーデンの試験が1件あるだけだという。BMJ誌オンライン版2015年10月21日号掲載の報告。受動喫煙の虫歯への影響を後ろ向きコホート研究で評価 研究グループは、日本の小児において、受動喫煙が乳歯の虫歯のリスクに及ぼす影響を検討するために、地域住民ベースのレトロスペクティブなコホート研究を行った。 2004~10年に神戸市で生まれた子供7万6,920例のデータを用いた。これらの小児は、出生時、4、9、18ヵ月、3歳時に市の健康診査を受けた。4ヵ月時に家族の喫煙状況の調査が、18ヵ月および3歳時には子供の歯の検診が行われた。 標準化質問票を用いて、母親の妊娠中の喫煙の有無および出生後4ヵ月時の子供のタバコの煙への曝露状況を調査し、「家族に喫煙者がいない」「家族に喫煙者はいるが子供のいない場所で喫煙する」「子供が2次喫煙に曝露されている」の3つのパターンに分けた。 主要評価項目は、乳歯の虫歯の発生とした。虫歯は、う歯、喪失歯、補綴歯と定義し、正規の歯科医がX線検査を用いずに判定した。 傾向スコアを臨床的および生活様式の背景因子で補正後に、Cox回帰モデルを用いて非喫煙家庭の子供と比較した喫煙者のいる家庭の子供の虫歯発生のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。因果関係は不明だが、受動喫煙回避のための介入を支持する知見 7万6,920例の子供のうち、出生後4ヵ月時に家族に喫煙者がいた子供の割合は55.3%(4万2,525例)であり、受動喫煙が確認された子供の割合は6.8%(5,268例)であった。 7万711例(91.9%)が3年間のフォローアップを完遂した。この間に1万2,729本の虫歯が確認され、そのほとんどがう歯であった。 3歳時の虫歯の発生率は、出生後4ヵ月時に非喫煙家庭の子供が14.0%、家族に喫煙者はいるが受動喫煙は確認されていない子供が20.0%、受動喫煙の子供は27.6%であった。 非喫煙家庭との比較における傾向スコアで補正したHRは、喫煙者はいるが受動喫煙は確認されていない子供が1.46(95%CI:1.40~1.52、p<0.01)であり、受動喫煙の子供は2.14(95%CI:1.99~2.29、p<0.01)であった。 妊娠中に喫煙していた母親の子供の、非喫煙家庭の子供に対する虫歯の傾向スコア補正HRは1.10(95%CI:0.97~1.25、p=0.14)であった。 著者は、「子供の虫歯のリスクは、非喫煙家庭に比べ受動喫煙の場合は約2倍、喫煙者のいる家庭の場合は約1.5倍に上昇していたが、母親が妊娠中に喫煙しても有意な影響は認めなかった」とまとめ、「これらの知見は、子供の虫歯と家族の喫煙の因果関係を示すものではないが、受動喫煙の減少に向けた公衆衛生学的、臨床的な介入の拡大を支持するものである」と指摘している。

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静脈血栓塞栓症が経口剤単剤で治療可能に

 深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PE)は密接に関連するため、総称して静脈血栓塞栓症(VTE)と呼ばれる。このVTEの治療および再発抑制に対して、選択的直接作用型第Xa因子阻害薬のイグザレルト(一般名:リバーロキサバン)が9月24日に適応追加承認を取得したことを受け、プレスセミナーが10月28日、都内で開催された(主催:バイエル薬品株式会社)。そのなかで、三重大学医学部附属病院 循環器内科科長 山田 典一氏が、日本初の経口シングルドラッグアプローチの有効性と、治療戦略の変化について解説した。VTE治療戦略のパラダイムシフト VTEの発症初期3週間は、PEまたはDVT再発の危険性が高く、初期治療をしっかり行うことが重要である。 従来の治療では、初期治療期にヘパリンなどを静注し、維持治療期から慢性期(長期2次予防)に、唯一の経口抗凝固薬であったワルファリンを投与していた。しかし、ワルファリンの効果発現には5~7日かかるため、投与開始時はヘパリンと併用(ブリッジング)しなければならないことから、山田氏はこの治療について「投与方法が煩雑で、また納豆など食事における注意も必要」と指摘した。 現在、経口剤はワルファリン以外に非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)が発売され、血中濃度の立ち上がりが早いエドキサバンとリバーロキサバンの2剤が、VTEの治療および再発抑制に使用可能となっている。 先にVTEに承認されたエドキサバンの投与スケジュールは、初期治療期にヘパリンなどを投与した後、エドキサバンにスイッチする。一方、リバーロキサバンは初期治療期にヘパリンなどを投与せず、最初からリバーロキサバンのみを投与するという、日本で初めての「経口シングルドラッグアプローチ」を可能にした。経口シングルドラッグアプローチの臨床成績 海外で実施されたEINSTEIN PE/DVT試験は、PE 4,833例とDVT 3,449例を、リバーロキサバン群4,150例と標準療法群(エノキサパリンとビタミンK拮抗薬併用)4,131例の2群に無作為化割り付けした非劣性試験である。この試験で、リバーロキサバン群は、有効性主要評価項目である「症候性VTEの累積再発率」において非劣性を示し(HR 0.89、95%CI:0.66~1.19、p<0.001)、また、安全性主要評価項目である「重大な出血または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象」の累積事象発現率について、HR 0.93(95%CI:0.81~1.06)で、リバーロキサバンの有効性と安全性が示された。 なお、本試験におけるリバーロキサバンの用法・用量は、初期強化療法では15mg 1日2回、維持療法では20mg 1日1回であった。しかし、PE/DVT患者での推定曝露量は、白人20mg 1日1回と日本人15mg 1日1回が同程度であることから、日本人のPE/DVT患者におけるJ-EINSTEIN PE/DVT試験での維持療法は15mg 1日1回で実施されている。 このJ-EINSTEIN PE/DVT試験では、投与3週間後および予定期間終了時の血栓消失した患者の割合が、リバーロキサバン群で標準療法群の約2倍であったことから、山田氏は、「症例数は限られているが、より高い血栓消失効果が期待できる」と強調した。経口シングルドラッグアプローチにより外来治療が増加 近年、海外ではDVT患者の外来治療が増加しており、現在は半数以上が外来で治療されている。山田氏は「わが国でも、経口シングルドラッグアプローチが可能になり、DVT治療については外来治療が増えていくだろう。入院期間が短縮され入院費用も削減できる」と新しい治療戦略に期待を示し、講演を締めくくった。

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MTX併用により関節リウマチのTKAは減少するか

 関節リウマチ(RA)が進行して関節破壊が進んだ場合、人工膝関節置換術(TKA)を行うケースが少なくない。そこで、名古屋大学の浅井 秀司氏らは、TNF阻害薬で長期治療中のRA患者における関節破壊の進行に起因するTKA発生に関して、MTXを併用するとどの程度の影響があるのか調査を行った。その結果、MTXを併用することでTKAの発生率を56%抑制することがわかった。The Journal of rheumatology誌オンライン版2015年10月1日号の掲載報告。 調査は、2001年5月1日から2008年5月31日までに同大学病院でTNF阻害薬治療を受けたRA患者155例(310の膝関節)のうち、関節破壊の徴候のある68例(111の膝関節)を対象とし、5年以上にわたって後ろ向きに行われた。フォローアップ期間の中央値(四分位範囲)は8.1年(7.0~9.3)であった。 主な結果は以下のとおり。・MTXを併用していた膝関節は79関節(71%)であった。・カプランマイヤー推定によると、TKAの累積発生率はMTX非併用群と比較して、MTXを併用した群で有意に低かった(5年時点での発生率:24% vs.45%、p=0.035)。・Cox比例ハザードモデルを使用した多変量解析によると、MTX併用(ハザード比 0.44、95%CI:0.22~0.89)、Larsenグレード(2.93、95%CI:1.94~4.41)、高年齢(1.04、95%CI:1.01~1.08)はTKAの独立した予測因子であることが明らかとなった。

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MetSリスクの高い抗うつ薬は

 メタボリックシンドローム(MetS)は双極性障害患者でよくみられ、一般集団と比較し相対リスクは1.6~2倍といわれている。このリスク増加は、不健康なライフスタイルや薬物治療に起因すると考えられている。これまで、抗精神病薬や気分安定薬は、体重増加やMetSと関連付けられてきたが、抗うつ薬の影響については総合的に評価されていなかった。イタリア・トリノ大学のVirginio Salvi氏らは、抗うつ薬の種類とMetSリスクとの関連を評価するため検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2015年9月26日号の報告。 本横断的研究では、双極性障害患者294例を連続登録した。MetS診断には、修正NCEP ATP-III診断基準を用いた。患者に使用された抗うつ薬は、一般的な分類名(SSRI、TCA、SNRI、その他の抗うつ薬)、およびヒスタミン1(H1)受容体との親和性を考慮した薬理学的作用に従って分類した。 主な結果は以下のとおり。・全般的には、抗うつ薬の使用はMetSと関連していなかった(有病率[PR]:1.08、95%CI:0.73~1.62、p=0.70)。・ヒスタミン1受容体への高い親和性を有する抗うつ薬を使用した患者(15例)では、MetSの有病率の大幅な増加が認められた(PR:2.17、95%CI:1.24~3.80、p=0.007)。・連続共変量モデルとして阻害定数(Ki)を含めた場合、KiとMetS有病率との間に逆相関を認めた(p=0.004)。 結果を踏まえ、著者らは「本研究は、双極性障害患者のMetSリスクを予測するためには、抗うつ薬の古典的な分類よりも薬理学に基づいた分類のほうがより有用であることを、臨床現場で初めて示した報告であり、臨床経過に関連する可能性がある。しかし、これらの知見が一般化できるかどうかを検討する、より大規模な研究が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 難治性うつ病発症に肥満が関連か 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学  担当者へのご意見箱はこちら

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