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持効性注射剤と経口薬の比較分析、どんなメリットがあるか

 抗精神病薬投与は統合失調症の治療の柱であるが、大多数の患者でアドヒアランス不良が顕著な問題となっている。それらの患者に対しては持効性注射剤(LAI)が治療オプションとして推奨されているが、その利点に関するエビデンスは明確ではなく、とくに新規の第2世代LAIに関する観察データは限定的であった。米国・ペンシルベニア大学のSteven C. Marcus氏らによるメディケイド支払データベースの分析結果から、退院後の統合失調症患者に対する投薬は、LAIのベネフィットを支持するエビデンスが増加していることが示唆された。製剤はとくに第2世代LAIで認められた。著者らは、「新たなLAIが登場しており、さらなる大規模なリアルワールド試験を行い、LAIの臨床的アウトカムおよびコスト面での利点を詳細に明らかにする必要があるだろう」とまとめている。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、メディケイド患者のデータを用いて、統合失調症関連の入院後6ヵ月間の経口薬 vs.LAIの抗精神病薬投与について、アドヒアランス不良、投薬中断、再入院率を調べる検討を行った。2010~13年のTruven Health Analytics MarketScanのメディケア研究データベースを利用し、直近にアドヒアランス不良(前6ヵ月間)が認められ、経口薬またはLAIを投与されていた統合失調症関連での入院後30日以内の成人患者を特定し評価した。主要評価項目は、退院後6ヵ月間について調べたアドヒアランス不良(服用日数割合が0.80未満)、服用中断(60日以上服用なし)、統合失調症関連の再入院であった。社会人口統計学的、臨床的および治療の特色に関して、記述的分析法を用いて経口薬使用群 vs.LAI使用群を比較した。ロジスティック回帰分析法により、特色の違いを調整し、経口薬 vs.LAIの使用と各試験アウトカムの関連を調べた。すべてのアウトカムは、3つの分析レベル、すなわち全LAIクラス、世代レベル(第1世代[FGA]または第2世代[SGA])、個々のLAI製剤(フルフェナジンデカン酸エステル、ハロペリドールデカン酸エステル、リスペリドンLAI、パリペリドンパルミチン酸エステル)で比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・最終サンプルでは、退院後の経口薬使用者は91%(3,428例)、LAI使用者は9.0%(340例)であった。LAI群のうち、SGA LAI使用は半数強(53.8%、183例)であった。・アドヒアランス不良患者の割合は、経口薬群と比較してLAI群が有意に少なかった(51.8% vs.67.7%、p<0.001)。60日間以上の中断者の割合も有意に少なく(23.8% vs.39.4%、p<0.001)、統合失調症の再入院率も有意に低かった(19.1% vs.25.3%、p=0.01)。・これらの差の大きさは、SGA LAI使用群と経口薬使用群のアドヒアランス不良の比較において拡大した。・すべての差を共変量で調整後、経口薬使用群との比較において、LAI開始群の以下のオッズ比が有意に低かった。アドヒアランス不良の補正後オッズ比(AOR)が 0.35(95%信頼区間[CI]:0.27~0.46、p<0.001)、60日間以上の中断のAORが0.45(同: 0.34~0.60、p<0.001)。・FGA LAI群とSGA LAI群はいずれも、経口薬群との比較においてアドヒアランス不良のオッズ比が低かった。・同様に60日間以上の中断についても、経口薬群との比較でFGA LAI使用者(AOR:0.58、95CI:0.40~0.85、p=0.005)、SGA LAI開始者(同:0.34、0.23~0.51、p<0.001)のオッズ比が有意に低かった。・また、経口薬群との比較において、LAI開始者は再入院率のオッズ比も有意に低かった(AOR:0.73、95%CI:0.54~0.99、p=0.041)。しかし、製剤の世代別に分析した場合は、SGA LAI使用群のみが、再入院オッズ比が統計的に有意に低く(AOR:0.59、95%CI:0.38~0.90、p=0.015)、FGA LAI群では有意な低下はみられなかった(同:0.90、0.60~1.34、p=0.599)。・LAI製剤個別の分析では、再入院オッズ比は、パリペリドンパルミチン酸エステル開始群でのみ、経口薬群との統計的に有意な差が認められた(AOR:0.53、95%CI:0.30~0.94、p=0.031)。・リスペリドンLAI群の経口薬群と比較した再入院のオッズ比は33%低下したが、統計的な有意差には達しなかった(AOR:0.67、95%CI:0.37~1.22、p=0.194)。関連医療ニュース 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは 経口抗精神病薬とLAI併用の実態調査 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る  担当者へのご意見箱はこちら

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母の名言【Dr. 中島の 新・徒然草】(088)

八十八の段 母の名言事の起こりは交通事故です。20代の女性が自動車にはねられたのですが、もともと先天的な障害を持っていたこともあって、退院してからも社会復帰が思うようにいきません。事故前に毎日通っていた作業所のほうも、まずは隔日での短時間作業から始めることになりました。でも、2時間も仕事をしていると疲れてしまい、翌日は1日中家で寝ているのだとか。ということで、車椅子で診察室にやってきた患者さんとお母さんが揉めていたのは作業所での仕事を何時間にするか、でした。 患者 「でも、『2時間しか働かれへん』と言ってるのに、外で代表に出くわしたら気まずいし」 中島 「代表の顔を見たら、『お疲れさまっ』とか言っといたらええやんか」 母親 「そうよ。『あさってもお願いしま~す』とかね」 中島 「家で練習したらどう?」 患者 「何の練習ですか?」 中島 「爽やかに笑って、『お疲れさま~』とか『あさってもよろしく~』とか言う練習や」 母親 「そうそう。私が練習相手になってあげるわよ」 患者 「お母さんと私では性格が違うし。だいたいお母さんはアッケラカンとしすぎや」 母親 「そんなもん、アッケラカンとしてなかったら、障害持ってる子を育てられへんがな」 患者 「でもお」 中島 「お母さん、それ…すごい名言ですね!」 患者・母親 「はあ?」 「1日おきに2時間の作業をさせてもらったら?」と説得するお母さんと私は、「外で作業所の代表と出くわしたら気まずいし、私はお母さんみたいにアッケラカンとしていないから」という意味不明の抵抗をくらいました。その時飛び出したのが、前述の名セリフ、「アッケラカンとしてなかったら、障害持ってる子を育てられへんがな」です。いやはや、母は強し。確かに障害を持った子供を育てるというのは大変なことです。悲しいことや悔しいことも沢山あったことでしょう。でもそれら一切を乗り越えたところにアッケラカンの境地があったわけですね。普通の人の一言、いつもながら感心させられました。最後に1句障害は アッケラカンで 跳ね返せ

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アルツハイマー病の焦燥性興奮に新規配合薬が有望/JAMA

 アルツハイマー病が疑われ焦燥性興奮を呈する患者に対し、開発中の配合薬デキストロメトルファン臭化水素酸塩+キニジン硫酸塩の10週間投与により、興奮症状の軽減が認められたことが報告された。米国・Cleveland Clinic Lou Ruvo Center for Brain HealthのJeffrey L. Cummings氏らが行った第II相臨床試験の結果、示された。全体的に忍容性も良好だったという。JAMA誌2015年9月22/29日号掲載の報告より。患者220例を対象に、ベースラインからの症状変化を比較 研究グループは2012年8月~14年8月にかけて、米国42ヵ所の医療機関で、アルツハイマー病の可能性が高く、臨床的焦燥性興奮が認められ(臨床全般印象尺度[CGI]で焦燥性興奮スコアが4以上)、Mini-Mental State Examination(MMSE)スコアが8~28の患者220例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。 同試験では、順次並行比較(sequential parallel comparison)デザインを採用し、第1段階(1~5週)では被験者を無作為に3対4に分け、デキストロメトルファン-キニジン(93例)またはプラセボ(127例)をそれぞれ投与した。第2段階(6~10週)では、第1段階のデキストロメトルファン-キニジンについては、そのまま投与を継続。一方プラセボ群については、反応状況(プラセボ効果あり・なし)によって層別化したうえで、無作為に1対1の割合で2群に分けてデキストロメトルファン-キニジン(59例)またはプラセボ(60例)を投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインからの神経精神症状評価尺度(NPI)焦燥性興奮/攻撃性ドメインのスコア[0(症状なし)~12(日々顕著な症状あり)]の変化だった。デキストロメトルファン-キニジン群で焦燥性興奮症状が有意に低減 試験を終了した被験者は194例(88.2%)で、デキストロメトルファン-キニジン群は152例、プラセボ群は127例だった。 試験の第1・2段階を総合した結果、ベースラインからのNPI焦燥性興奮/攻撃性ドメインのスコアは、デキストロメトルファン-キニジン群がプラセボ群に比べて有意に低下した(最小二乗法でのZ統計値:-3.95、p<0.001)。 第1段階では、同スコアはプラセボ群でベースライン7.0から5.3に低減したのに対し、デキストロメトルファン-キニジン群では7.1から3.8に低減した(最小二乗法平均値:-1.5、95%信頼区間[CI]:-2.3~-0.7、p<0.001)。 第2段階の同スコアは、プラセボ群でベースライン6.7から5.8に低減し、デキストロメトルファン-キニジン群では5.8から3.8に低減した(同:-1.6、-2.9~-0.3、p=0.02)。 有害事象としては、転倒発生率がプラセボ群3.9%に対しデキストロメトルファン-キニジン群で8.6%、尿路感染症がそれぞれ3.9%と5.3%の発症が報告された。重篤有害事象の発生率は、プラセボ群4.7%に対し、デキストロメトルファン-キニジン群が7.9%だった。なお、デキストロメトルファン-キニジンと認知機能低下、鎮静、臨床的に有意なQTc延長との関連はみられなかった。

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カテーテル関連感染症、クロルヘキシジン消毒で大幅減/Lancet

 カテーテル挿入前に、皮膚消毒をクロルヘキシジン・アルコールで行うと、ポビドンヨード・アルコールを使った場合に比べて、カテーテル関連感染症リスクは85%低下することが示された。フランス・CHU de PoitiersのOlivier Mimoz氏らが、2,546例を対象とした無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「血管内カテーテル関連感染症予防のためにも全例について、皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコールを用いるべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告より。皮膚消毒前の洗剤による皮膚洗浄の有無についても比較 研究グループは、2012年10月~14年2月にかけて、フランス国内11ヵ所のICU入室となり、中心静脈カテーテル、血液透析、動脈カテーテルのいずれかを行った18歳以上の患者2,546例を対象に試験を行った。クロルヘキシジン・アルコールまたはポビドンヨード・アルコールによる皮膚消毒の、カテーテル関連の感染症予防効果について比較を行った。 被験者を無作為に4群に分け、2%クロルヘキシジン・70%イソプロピルアルコールまたは5%ポビドンヨード・69%エタノールのいずれかによる皮膚消毒群、および同実施前の洗剤による皮膚洗浄の有無別に割り付けた。 医師、看護師は、割り付けについてマスキングされなかったが、細菌学者およびアウトカム評価者には割り付けをマスキングされた。 主要アウトカムは、カテーテル関連感染症の発生率だった。皮膚洗浄の有無は感染率に有意差みられず クロルヘキシジン・アルコール群は1,181例、そのうち洗剤による皮膚洗浄を行ったのは594例だった。ポビドンヨード・アルコール群は1,168例、うち皮膚洗浄群は580例だった。 カテーテル関連感染症の発生率は、ポビドンヨード・アルコール群が1.77/1,000カテーテル日に対し、クロルヘキシジン・アルコール群は0.28/1,000カテーテル日と有意に低率だった(ハザード比:0.15、95%信頼区間:0.05~0.41、p=0.0002)。 洗剤による皮膚洗浄の有無では、同発生率に有意差はなかった(p=0.3877)。 また、全身性有害事象は認められなかったが、重篤皮膚反応の発生が、ポビドンヨード・アルコール群で1%(7人)に対しクロルヘキシジン・アルコール群では3%(27人)と有意に高率にみられた(p=0.0017)。2例はクロルヘキシジン・アルコール中断となった。

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ゴーシェ病専門ウェブサイト「ゴーシェテラス」が開設

 シャイアー・ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:グレン・スノハラ)は、10月1日の「世界ゴーシェ病の日」に合わせ、ゴーシェ病の患者とその家族のための専門サイト『ゴーシェテラス』を開設した。 ゴーシェ病とは、遺伝性の希少疾病で、わが国では33万人に1人の割合で発症すると報告されている(推定患者数約130人)。男女ともに発症し、とくにアーシュケナージ系ユダヤ人に最も多くみられ、850人に1人の割合で発生する。本症は、先天的な酵素(グルコセレブロシダーゼ)の活性低下あるいは欠損により、糖脂質(グルコセレブロシド)が組織に蓄積する疾患で、主症状として肝脾腫、貧血、血小板減少、骨症状、神経症状などがある。治療として、わが国では酵素補充療法と骨髄移植が現在保険適用とされており、実臨床の場で用いられている。酸素補充療法では、イミグルセラーゼ(商品名:セレザイム)のほか、2014年9月にベラグルセラーゼ アルファ(同:ビプリブ/点滴静注用)が発売された。 「ゴーシェテラス」では、ゴーシェ病と診断された患者と家族の日常生活や疑問に役立つさまざまなコンテンツが掲載されている。 具体的な内容として、・ゴーシェ病について(ゴーシェ病の原因、症状、診断方法、治療法を解説)・患者・家族の話(患者、家族の貴重な体験談)・動画で見る専門医のゴーシェ病講座(専門医がイラストなどを使用し説明)・社会保障制度(医療費助成制度の内容紹介)・用語集(医師・医療従事者らとの会話でよく出てくる用語の解説)などが、掲載されている。シャイアー・ジャパン株式会社のプレスリリースはこちら。関連リンク 希少疾病ライブラリ ゴーシェ病

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てんかん重積状態の薬物療法はエビデンス・フリー・ゾーン

 てんかん重積状態(SE)は、最も重篤なてんかんの様式であり、最もよく発生する精神的緊急症状で、発生頻度は10万人年当たり61件、推定死亡率は20%である。臨床的に強直性間代性けいれんSEは、4つの連続するステージすなわちearly、established、refractory、super-refractoryに分けられる。しかしSEの薬物治療について、とくに後半のステージには、臨床決定の情報となる質の高い対照試験がないことから、“エビデンス・フリー・ゾーン”となっている。オーストリア・パラケルスス医科大学のEugen Trinka氏らは、SEの経過に応じた薬物療法のエビデンスについて包括的ナラティブレビューを行った。その結果、established SEにはフェニトインやフェノバルビタール、refractory、super-refractoryには麻酔薬が広く使用されていることを明らかにした。Drugs誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、上述の4ステージアプローチに従って展開し、利用可能な文献の科学的エビデンスの強さに応じて、各抗てんかん薬の薬理学的特性と有効性/安全性のデータを提供しているSEの薬物療法に焦点を絞った包括的ナラティブレビューを行った。データソースは、MEDLINEおよび関連研究の参考文献とした。 主な結果は以下のとおり。・early SEでは、ロラゼパム静注またはミダゾラム筋注により約63~73%で有効なコントロールを得ていた。・established SEの治療には、安全性プロファイルは最適ではないものの、フェニトインの静注またはフェノバルビタールの静注が広く使用されていた。また、代替薬としてバルプロ酸、レベチラセタム、ラコサミドなどがあった。・refractoryまたはsuper-refractory SEには、十分な試験が行われていないにもかかわらず麻酔薬が広く使用されていた。また、後半ステージの代替治療に関するデータは限定的であった。・第1選択薬のベンゾジアゼピン系薬投与にもかかわらずestablished SEが持続している場合、バルプロ酸およびレベチラセタムが、フェノバルビタールおよびフェニトインの代替薬として安全かつ有効であることが示された。・いずれにせよ、established、refractory、super-refractory SEに対する抗てんかん薬として最も強く推奨支持するクラスIのデータはなかった。 結果を踏まえ、著者らは「established SEにはフェニトインやフェノバルビタール、refractory、super-refractoryには麻酔薬が広く使用されていることが明らかになったが、推奨治療を支持するエビデンスデータは乏しかった。試験間の方法論的不均一性を是正し、establishedおよびrefractory SEに対する最適な治療に関する情報を臨床医に提供できる、質の高いランダム化対照試験の実施が求められる」と指摘している。関連医療ニュース てんかん再発リスクと初回発作後消失期間 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか  担当者へのご意見箱はこちら

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一般市民による心肺蘇生の普及率を高めるにはどうすればよい?(解説:上田 恭敬 氏)-426

 本報告は、日本における院外心停止レジストリの2005年~2012年までのデータを後ろ向きに解析し、目撃者による蘇生措置と神経学的予後の関係を検討したものである。レジストリは、救急搬送されたすべての院外心停止症例が含まれるが、この解析においては、目撃者ありの心源性と考えられる、院外心停止症例16万7,912例のデータを用いている。 2005年と2012年を比較すると、目撃者による胸骨圧迫施行率は39%から51%へと増加し、目撃者による電気的除細動施行率は0.1%から2.3%へと増加していた。目撃者による胸骨圧迫あるいは電気的除細動がある場合には、ない場合に比して、より良好な神経学的予後が認められた。 以上より、2005年に比して2012年では、目撃者による胸骨圧迫あるいは電気的除細動の実施率が増加しており、このことが神経学的予後の改善に貢献していたと結論している。 しかし、胸骨圧迫は比較的広く普及しているため、予後改善に大きく貢献しているものの、その効果は限定的である。 これに対して、電気的除細動は予後改善に強力な効果があるものの、普及率は非常に低い。今後は、AEDの使用頻度が高い場所を検討することによって、その適切な配置を考える必要があると指摘している。日本においては、鉄道の駅やスポーツ施設での心停止症例数およびAED使用数が高く、これらの場所へのAEDの配備がより重要であり、これら施設のスタッフに対してAEDの使用法を指導するほうが、一般市民に対して指導するよりも効率的であるとしている。目撃者による胸骨圧迫の頻度が50%程度に留まっていることも問題であり、いっそうの普及活動が必要としている。 ただし、今回観察された予後改善効果のわずか23%のみが、目撃者による蘇生措置の改善に起因していることが示されており、それ以外の院外・院内における処置・治療法の進歩も予後改善に大きく貢献していると考えられた。 電気的除細動の施行率が低いことについては、AEDの配備などハード面での問題もあるが、胸骨圧迫の施行率が低いことについては、意識の低さが主な問題であり、こちらを改善しなければ、いくらハード面に力を入れても、電気的除細動の施行率も上昇しないであろう。 この意識の低さについては、必ずしも蘇生措置法を学習する機会が少ないことが主な理由ではないだろう。蘇生措置法を知っていても、関わることで自身に不必要な災いを被りたくないと考える人も少なくないのではないだろうか。善意で蘇生措置を行っても、訴えられたり責任を問われることがあるかもしれないと心配するからであり、この懸念を払拭することが、心肺蘇生法を普及させる以上に重要な課題ではないだろうか。 もちろん、重大な過失がなければ責任を問われることはないだろうが、誰も「重大な過失なく」処置をできる自信などないであろう。「過失だらけのことをしても、しないよりは良い」というくらいの意識を持てる状況がなければ、一般市民による蘇生措置の普及は困難と思われ、善意の人が確実に守られるような法律上の整備がまず必要であろう。蛇足かもしれないが、このことは、航空機内での医師による応急処置についても当てはまることである。

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REACT試験:クローン病に対する早期複合免疫療法の有用性~集団無作為化試験(解説:上村 直実 氏)-427

 クローン病は原因不明で根治的治療が確立していない炎症性腸疾患であり、わが国では医療費補助の対象である特定疾患に指定されている。しかし、抗TNF受容体拮抗薬の出現とともに、本疾患に対する薬物療法が大きく変わりつつある。欧米では、症状や炎症の程度によって、5-ASA製剤、ステロイド、代謝拮抗薬、抗TNF受容体拮抗薬と段階的にステップアップする従来型の薬物療法に対して、代謝拮抗薬と抗TNF-α受容体拮抗薬を早期から使用する早期複合免疫療法の有効性と安全性を比較検証する臨床研究が、盛んに行われている。 今回、カナダやベルギーの60施設(対象患者1,982例)が参加して行われた非盲検クラスター無作為化試験(REACT試験)の結果、早期複合免疫療法は、12ヵ月間の寛解維持効果に関しては従来療法と差を認めなかったものの、2年以内の外科的手術、入院回数、重篤な疾患の合併などの重大な有害事象の発生率は、従来療法に比べて有意に低かった(27.7% vs.35.1%、95%CI:0.62~0.86、p=0.0003)。なお、両群における薬剤関連有害事象の発生率には差を認めていない。この結果から、早期複合免疫療法は薬物関連の有害事象を増加することはなく、今後、さらなる比較試験での有用性の検証が期待できると結論されている。 わが国では、日本消化器病学会による「クローン病診療ガイドライン(GL)」が2010年に刊行されているが、本邦での大規模な介入試験はほとんどなく、GLにおけるステートメントの基になるエビデンスのレベルは、非常に低いものばかりとなっている。確かに、クローン病は患者個々の病態に応じた取り扱いが千差万別であり、エビデンスに加えて経験に即した治療法を選択することが重要となる疾患であるが、今後、わが国のクローン病患者を対象として、最適とされる治療方針を導く臨床研究が遂行できる体制が構築されることが待望される。

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子宮頸がん、新規ワクチンに治療効果の可能性/Lancet

 HPV-16/18に関連する子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)に対し、HPV-16/18(E6/E7蛋白)を標的にする合成プラスミドVGX-3100を投与することで、病理組織学的な退縮がみられ、治療効果がある可能性が示された。米国・ジョンズホプキンス大学のCornelia L. Trimble氏らが、167例を対象に行った第IIb相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、報告した。CINの治療は切除とされているが、切除では生殖性の罹患状態が長期に続く可能性がある。そこで研究グループは、VGX-3100ワクチンに対宿効果があるかどうかを調べた。Lancet誌オンライン版2015年9月16日号で発表した。36週後のCIN1・正常病理への改善率を比較 試験は2011年10月19日~13年7月30日にかけて、7ヵ国36ヵ所の婦人科医療機関を通じて、HPV-16とHPV-18に関連するCIN2またはCIN3の認められる患者167例を対象に行われた。研究グループは被験者を、無作為に3対1の割合で2群に分け、一方の群(125例)にはVGX-3100(6mg)を、もう一方の群にはプラセボを、それぞれ0、4、12週目に筋注投与した。 主要有効性エンドポイントは、初回投与から36週後のCIN1または正常病理への退縮とした。 per-protocol解析と修正intention-to-treat(ITT)解析を、プロトコルの不備なく3回投与した患者を対象に、また少なくとも1回投与した患者を対象にそれぞれ行った。VGX-3100群のおよそ半数で退縮 試験実施計画適合集団のper-protocol解析では、病理組織学的な退縮が認められたのは、プラセボ群では36例中11例(30.6%)であったのに対し、VGX-3100群では107例中53例(49.5%)だった(絶対差:19.0ポイント、95%信頼区間[CI]:1.4~36.6、p=0.034)。 修正ITT解析では、同割合はプラセボ群40例中12例(30.0%)に対し、VGX-3100群114例中55例(48.2%)だった(同:18.2ポイント、1.3~34.4、p=0.034)。 なお、注射部位の紅斑発症が、プラセボ群42例中24例(57.1%)に対し、VGX-3100群は125例中98例(78.4%)と有意に高率だった(同:21.3ポイント、5.3~37.8、p=0.007)。 これらの結果を踏まえて著者は、「VGX-3100は、HPV-16/18に関連するCIN2/3に対し効果を示した初の治療的ワクチンである。VGX-3100は、CIN2/3の非外科的な治療オプションとして、同疾患治療の動向を変えうる可能性がある」と述べている。

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FDA、pembrolizumabを非小細胞肺がんに承認

 米国食品医薬品局(FDA)は2015年10月2日、抗PD-1抗体pembrolizumab(Keyrtruda, Merck&Co.)を進行非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として迅速承認した。PDL-L1のコンパニオン診断キットPD-L1 IHC 22C3 pharmDx(Daco North America Inc.)とともに用いることとなっている。 pembrolizumabの有効性は、550例の進行NSCLC患者による多施設、オープンラベル試験Keynote001のサブグループ解析として61例の患者で評価された。対象はプラチナベースの化学療法治療によって、またALKやEGFRなどの遺伝子変異がある場合は適切な分子標的薬によって治療されたにもかかわらず進行したNSCLCで、PD-L1発現陽性の患者。被験者はpembrolizumab10mg/kgを2週または3週ごとに投与された。その結果、患者の41%に腫瘍縮小がみられ、効果は2.1~9.1ヵ月持続した。 安全性は、Keynote001に登録された550例で評価された。頻度の高い有害事象は疲労感、食欲減退、息切れ、呼吸困難、咳であった。免疫関連有害事象の発症は肺、結腸、内分泌腺にみられ、まれなものとして皮疹、血管炎などがあった。また、発育中の胎児、新生児の影響から、妊娠中および授乳中の患者への投与は避けることとなっている。 pembrolizumabは当該適応のブレークスルー治療薬に指定され、優先審査の対象となっていた。FDAのプレスリリースはこちら

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認知症に対する回想法、そのメリットは

 台湾大学のHui-Chuan Huang氏らは、認知症高齢者に対する回想法の有用性を明らかにすることを目的にメタ解析を行った。その結果、回想法の実施により認知機能および抑うつ症状の改善が認められ、その効果は地域で居住する患者よりも施設に入所している患者で大きいことを報告した。認知機能障害および抑うつ症状は認知症高齢者に一般的な症状である。過去に実施されたメタ解析は、解析対象とした試験のデータが古く、研究規模も小さかったため、認知機能および抑うつ症状に対する回想法の効果に関して一貫した結果が得られなかった。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月1日号の掲載報告。 研究グループは、最近の大規模無作為化対照試験(RCT)を含めたメタ解析を実施し、認知症高齢者における認知機能および抑うつ症状に対する回想法の即時効果と長期(6~10ヵ月)効果を検討した。PubMed、Medline、CINAHL、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、ProQuest、 Google Scholar、中国データベース等の電子データベースを検索し、適格文献を選択した。主要アウトカムは、認知機能および抑うつ症状のスコアとした。認知症高齢者における認知機能と抑うつ症状に対する回想法の効果を検討している合計12件のRCTを解析対象とし、2人のレビュワーが独立してデータを抽出した。解析はすべてランダム効果モデルを用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・認知症高齢者に対する回想法は、認知機能に対し効果量は小さく(g=0.18、95%信頼区間[CI]:0.05~0.30)、抑うつ症状に対しては中等度の効果量(g=-0.49、95%CI:-0.70~-0.28)を示した。・認知機能および抑うつ症状に対する回想法の長期効果は確認されなかった。・Moderator(変数)解析により、施設に入所している認知症高齢者は地域在住の認知症高齢者に比べ、抑うつ症状の改善が大きかった(g=-0.59 vs.-0.16、p=0.003)。・以上のように、回想法は認知症高齢者における認知機能および抑うつ症状の改善に有効であることが確認された・結果は、定期的な回想法の実施が認知症高齢者、とくに施設に入所している認知症患者の認知機能および抑うつ症状改善のためのルーティン・ケアに組み込む必要性を示唆するものであった。関連医療ニュース 重度アルツハイマー病に心理社会的介入は有効か:東北大 認知症患者への精神療法、必要性はどの程度か 認知症への運動療法、効果はあるのか  担当者へのご意見箱はこちら

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子供の近視、外で遊ばせると予防できる?/JAMA

 東アジアや東南アジアでは近視が増加しているが、中国・中山大学のMingguang He氏らは、小学1年生を対象としたクラスター無作為化試験により、小児の近視は屋外活動を増やすことで予防できる可能性があることを明らかにした。学校での屋外活動時間を1日40分追加することで、対照に比べ近視の累積発症率が有意に低下したという。著者は、「本研究に参加した小児の長期追跡調査と、今回の知見が一般化できるかさらなる試験が必要」とまとめている。JAMA誌2015年9月15日号の掲載報告。 研究グループは、2010年10月~13年10月に、中国・広州の小学校12校の1年生を対象にクラスター無作為化試験を行った。12校を介入群6校(計952例)、対照群6校(計951例)に分け、介入群では授業がある日は屋外活動の授業(40分)を追加するとともに、保護者に対して、放課後、とくに週末と休日は子供を屋外で活動させることを奨励した。一方、対照群では通常の活動パターンを続けてもらった。 主要評価項目は、ベースラインでは近視でなかった児童における近視の3年累積発症率で、副次的評価項目は、すべての児童における等価球面屈折度の変化量および眼軸長の変化量であった。右眼のデータを分析に用いた。 主な結果は以下のとおり。・近視の3年累積発症率は、介入群30.4%(259/853例)、対照群39.5%(287/726例)であった(群間差:-9.1%、95%信頼区間[CI]:-14.1~-4.1%、p<0.001)。・3年間の等価球面屈折度変化量も、介入群(-1.42D)と対照群(-1.59D)で有意差が認められた(群間差:0.17D、95%CI:0.01~0.33D、p=0.04)。・眼軸長の伸長は、介入群(0.95mm)と対照群(0.98mm)で差はなかった(群間差:-0.03mm、95%CI:-0.07~0.003mm、p=0.07)。

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Dr.香坂のすぐ行動できる心電図 ECG for the Action!

第1回  左室肥大の真実 第2回  縁の下の力持ち 心房の心電図変化 第3回  脚ブロックを使いこなすには 第4回  外科医と内科医の心電図 第5回  心電図の本丸 STの上昇 第6回  ST低下はどこまで信用できる? 第7回  上室性頻拍(1) 心房粗動から紐解く不整脈へのアプローチ 第8回  上室性頻拍(2) 本当に必要か?AVRTとAVNRTの鑑別 第9回  なぜ心室から来る不整脈は怖いのか?VTとVFへの対応 第10回 5分で語る心房細動のエッセンス 第11回 心電図最後の山場 QT部分 第12回 声に出して読みたい心電図 心電図の目的は、波形から所見を読み取ることだけではありません。いま心臓に何が起こっているかを把握し、次の行動へとつなげ、患者にその情報を還元することができてはじめて心電図を十全に活用できたと言えるでしょう。本DVDでは、Dr.香坂のこだわりである、「読める」だけでなく「次のアクションにつなげる」ことに徹底フォーカス。心電図から読み取る所見をどう診療に役立てていくか?大切なのは、読影の先にあります。第1回 左室肥大の真実 心電図をどう次のアクションにつなげるか?まずは、心電図からわかる左室肥大の算出方法をDr.香坂が詳しくレクチャーします。心臓の大きさを見るときに、どことどこに注目するべきか?そういった基準は実ははっきりしてきています。でもそこで満足してはいけません。左室肥大の所見をどう役に立てていくか。大切なのはその先にあります。第2回 縁の下の力持ち 心房の心電図変化 今回は、心房拡大のメカニズムをP波の第2誘導を通してレクチャーしていきます。P波が120sec(3マス)以上伸びていると左房の拡大所見です。なぜそうなるのか、Dr.香坂の解説を聞くと、左房の拡大所見は、「実は伝導異常と言った方が正確だ」ということがわかります。左房の大きさを見ることで、心臓にかかっている負荷の経年的な評価をすることができます。左室異常よりも左房異常の患者の方が将来心不全になっていく可能性が高いので、きめ細かくみていく必要があるでしょう。第3回 脚ブロックを使いこなすには 心電図上で脚ブロックを見破るためには、V1誘導に注目します。深い谷のように切れ込んだパターンが出たら左脚ブロック、大きな「M」のような形で現れたら右脚ブロックの心電図パターンです。今回はさらに突っ込んで、不完全ブロックのパターンである「左脚前枝・後枝ブロック」についても細かく解説していきます。予後の指標になりにくい脚ブロックですが、限られた状況ではかなりの力を発揮します。そういった状況を的確にピックアップしていく力を身に着けましょう。第4回 外科医と内科医の心電図 今回は箸休めの話題です。日本は年に1回健康診断を行わなければならないと労働安全衛生法で定められており、その検査の中に心電図が必須項目として含まれています。ただしそれは世界的には例外なことで、アメリカやカナダなどのガイドラインではルーチーンの心電図を推奨していません。それはなぜなのでしょうか?また、横の変化に強いが縦の変化には弱い機械読みの話、内科医と外科医心電図の読み方の違いなど、ちょっと知っておきたい話題について解説します。第5回 心電図の本丸 STの上昇今回のテーマは心電図の中でもっとも注目を集める“ST”部分についてです。STは心筋の虚血や心筋梗塞に鋭敏に反映する指標となり、心電図の本丸と言っても過言ではありません。STが上昇している心電図は、ほぼ間違いなく急性心筋梗塞ということができます。ではなぜSTが上がるのか?そのメカニズムはもちろん、さらにもっと詳細に心電図を読み解き、波形と梗塞している箇所についてのつながりなど、徹底的に解説します。第6回 ST低下はどこまで信用できる?今回は、臨床的な状況判断が求められる“ST低下”“T波変化”“異常Q波”について取り上げます。Dr.香坂曰く 「ST低下は嘘ばかり」、「T波変化はもっと嘘ばかり」、「時代遅れの異常Q波」。さてその真意とは?そして臨床的な状況判断と言っても具体的にどう行動すればよいか。現在の支流について語ります。第7回 上室性頻拍(1) 心房粗動から紐解く不整脈へのアプローチ不整脈のパターンにはいくつかありますが、分類するとMacro-ReentryとMicro-Reentryに分けられます。Macro-Reentryの大きな特徴は「肉眼的に目で見える」「カテーテルで灼ける」。今回はMacro-Reentryの理解を深めるための題材として、心房粗動を取り上げます。これらは心電図のパターン認識だけでなく、患者の治療にも結びつくので、ぜひ押さえておいてください。第8回 上室性頻拍(2) 本当に必要か?AVRTとAVNRTの鑑別今回は、AVNRTとAVRTのエッセンスをお教えします。AVNRTの特徴はP波が見えにくい、AVRTはQ波とP波が離れているということが挙げられますが、それぞれがなぜそのような波形を示すのか、その原理をわかりやすい図解を用いて解説。Dr.香坂いわく、「心電図を深読みすることが重要ではなく、“治療にどうつなげるべきか”が大切」です。Macro-Reentry型不整脈の治療についての理解が深まります。第9回 なぜ心室から来る不整脈は怖いのか?VTとVFへの対応今回は心室頻拍(VT)と心室細動(VF)について解説します。これらはポンプである“心室”に直接影響します。そのため、不安定徴候を来しやすく、すぐに、直接的に、対応することが必要となります。ゆっくり考えながら、心電図を読んでいる時間はありません。短時間で見るポイントと、その対応について学んでください。第10回 5分で語る心房細動のエッセンス今回は心房細動(AF)の解説です。心房細動は診療の中で一番多く見かける不整脈ではないでしょうか。心房細動は一言で言えば、「絶対的に不整」。QRSのリズムにパターンがないことが特徴です。この心電図を見たら、次のアクションは?!他の不整脈とは異なる対応が必要となる心房細動のエッセンスを5分でお教えします。第11回 心電図最後の山場 QT部分今回はQTについての解説です。QT間隔は実は測定が難しく、循環器の専門医であっても正確に測れるのは半分ほどと言われています。「QT間隔の基準値」というのもありますが、人種差や個人差があって非常に難しいところです。Dr.香坂が勧めるのは、「過去の心電図と見比べる」こと。QTが過去と比べて延長していたら、非常に重篤な不整脈を起こす恐れがあります。機械読みも必ずしも正確ではないので、重篤な不整脈を避けるためにも、QTの計測は正確に確実に行う必要があります。第12回 声に出して読みたい心電図最終回は「心電図一発診断!」。心電図から“カッコよく”診断を導き出していきましょう。でもちょっと待って!それは本当に臨床現場で役立つ読み方なのでしょうか?現実的な心電図の読み方はまず、「その心電図を読んで何の役に立つのか」を考えることです。パッとみて決めない。自分なりの見る順番を作ってきちんと守ること。過去の心電図があったら必ず見比べる。臨床の現場で心電図を読むときの心がけとポイントを、Dr.香坂が熱く語ります。

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多発性硬化症〔MS : Multiple sclerosis〕、視神経脊髄炎〔NMO : Neuromyelitis optica〕

1 疾患概要■ 概念・定義中枢神経系(脳・脊髄・視神経)に多巣性の限局性脱髄病巣が時間的・空間的に多発する疾患。脱髄病巣はグリオーシスにより固くなるため、硬化症と呼ばれる。白質にも皮質にも脱髄が生じるほか、進行とともに神経細胞も減少する。個々の症例での経過、画像所見、治療反応性などの臨床的特徴や、病理組織学的にも多様性があり、単一疾患とは考えにくい状況である。実際に2005年の抗AQP4抗体の発見以来、Neuromyelitis optica(NMO)がMultiple sclerosis(MS)から分離される方向にある。■ 疫学MSに関しては地域差があり、高緯度地域ほど有病率が高い。北欧では人口10万人に50~100人程度の有病率であるが、日本では人口10万人あたり7~9人程度と推定され、次第に増加している。平均発病年齢は30歳前後である。MSは女性に多く、男女比は1:2~3程度である。NMOは、日本ではおおむねMSの1/4程度の有病率で、圧倒的に女性に多く(1:10程度)、平均発病年齢はMSより約5歳高い。人種差や地域差に関しては、大きな違いはないと考えられている。■ 病因MS、NMOともに、病巣にはリンパ球やマクロファージの浸潤があり、副腎皮質ステロイドにより炎症の早期鎮静化が可能なことなどから、自己免疫機序を介した炎症により脱髄が起こると考えられる。しかし、MSでは副腎皮質ステロイドにより再発が抑制できず、一般的には自己免疫疾患を悪化させるインターフェロンベータ(IFN-ß)がMSの再発抑制に有効である。また、いくつかの自己免疫疾患に著効する抗TNFα療法がMSには悪化因子であり、自己免疫機序としてもかなり特殊な病態である。一方、NMOでは、多くの例で抗AQP4抗体が存在し、IFN-ßに抵抗性で、時には悪化することもある。また、副腎皮質ステロイドにより再発が抑制できるなど、他の多くの自己免疫性疾患と類似の病態と思われる。MSは白人に最も多く、アジア人種では比較的少ない。アフリカの原住民ではさらにまれである。さらに一卵性双生児での研究からも、遺伝子の関与は明らかである。これまでにHLA-DRB1*1501が最も強い感受性因子であり、ゲノムワイド関連解析(GWAS)ではIL-7R、 IL-2RAをはじめ、100以上の疾患感受性遺伝子が報告されている。また、NMOはMSとは異なったHLAが強い疾患感受性遺伝子 (日本人ではHLA-DPB1*0501) となっている。一方、日本人やアフリカ原住民でも、有病率の高い地域に移住した場合、その発病頻度が高くなることが知られており、環境因子の関与も大きいと推定される。その他、ビタミンD不足、喫煙、EBV感染が危険因子とされている。■ 症状中枢神経系に起因するあらゆる症状が生じる。多いものとしては視力障害、複視、感覚障害、排尿障害、運動失調などがある。進行すれば健忘、記銘力障害、理解力低下などの皮質下認知症も生じる。また多幸症、抑うつ状態も生じるほか、一般的に疲労感も強い。MSに特徴的な症状・症候としては両側MLF症候群があり、これがみられたときには強くMSを疑う。その他、Lhermitte徴候(頸髄の脱髄病変による。頸部前屈時に電撃痛が背部から下肢にかけて走る)、painful tonic seizure(有痛性強直性痙攣)、Uhthoff現象(入浴や発熱で軸索伝導の障害が強まり、症状が一過性に悪化する)、視神経乳頭耳側蒼白(視神経萎縮の他覚所見)がある。再発時には症状は数日で完成し、その際に発熱などの全身症状はない。また、無治療でも寛解することが大きな特徴である。慢性進行型になると症状は緩徐進行となる。NMOでは、高度の視力障害と脊髄障害が特徴的であるが、時に大脳障害も生じる。また、脊髄障害の後遺症として、明瞭なレベルを示す感覚障害と、その部位の帯状の締め付け感や疼痛がしばしばみられる。1)発症、進行様式による分類(1)再発寛解型MS(relapsing- remitting MS: RRMS):再発と寛解を繰り返す(2)二次性進行型MS(secondary progressive MS: SPMS):最初は再発があったが、次第に再発がなくても障害が進行する経過を取るようになったもの(3)一次性進行型MS(primary progressive MS: PPMS):最初から進行性の経過をたどるもの。MRIがなければ脊髄小脳変性症や痙性対麻痺との鑑別が難しい。2)症状による分類(1)視神経脊髄型MS(OSMS):臨床的に視神経と脊髄の障害による症状のみを呈し、大脳、小脳の症状のないもの。ただし眼振などの軽微な脳幹症状はあってもよい。MRI所見はこの分類には用いられていないことに注意。この病型には大部分のNMOと、視神経病変と脊髄病変しか臨床症状を呈していないMSの両方が含まれることになる。(2)通常型MS(CMS):大脳や小脳を含む中枢神経系のさまざまな部位の障害に基づく症候を呈するものをいう。3)その他、未分類のMS(1)tumefactive MS脱髄巣が大きく、周辺に強い浮腫性変化を伴うことが特徴。しばしば脳腫瘍との鑑別が困難であり、進行が速い場合には生検が必要となることも少なくない。(2)バロー病(同心円硬化症)大脳白質に脱髄層と髄鞘保存層とが交互に層状になって同心円状の病変を形成する。以前はフィリピンに多くみられていた。4)前MS状態と考えられるもの(1)clinically isolated syndrome(CIS)中枢神経の1ヵ所以上の炎症性脱髄性病変によって生じた初発の神経症候。CISの時点で1個以上のMS様脳病変があれば、80%以上の症例で再発し、MSに移行するが、まったく脳病変がない場合は20%程度がMSに移行するにとどまる。この時期に疾患修飾薬を開始した場合、臨床的にMSへの進行が確実に遅くなることが、欧米での研究で明らかにされている。(2)radiologically isolated syndrome(RIS)MRIにより偶然発見された。MSに矛盾しない病変はあるが、症状が生じたことがない症例。2010年のMcDonald基準では、時間的、空間的多発性が証明されても、症状がなければMSと診断するには至らないとしている。■ 予後欧米白人では80~90%はRRMSで、10~20%はPPMSとされる。日本ではPPMSが約5%程度である。RRMSの約半数は15~20年の経過でSPMSとなる。平均寿命は一般人と変わらないか、10年程度の短縮で、生命予後はあまり悪くない。機能予後としては、約10年ほどで歩行に障害が生じ、20年ほどで杖歩行、その後車椅子になるとされるが、個人差が非常に大きい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)MSでは「McDonald 2010年改訂MS診断基準」があり、臨床的な時間的、空間的多発性の証明を基本とし、MRIが補完する基準となっている。NMOでは、「Wingerchuk 2006年改訂NMO診断基準」が用いられる。また、MRIでの基準があり、BarkhofのMRI基準はMSらしい病変の基準、PatyのMRI基準はNMO診断基準で利用されている(図参照)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するNMOと同様の病態と考えられるが、臨床的には、NMO-IgG(抗AQP4抗体)陽性で、視神経炎のみ、あるいは脊髄炎のみの例や、抗AQP4抗体陽性で脳病変や脳幹、小脳のみで再発を繰り返す例などがあり、それらをNMO spectrum disorderと呼ぶこともある。■ 検査MSにおいては一般血液検査では炎症所見はなく、各種自己抗体も合併症がない限り異常はない。したがって、そのような検査は、各種疾患の除外、および自己免疫疾患を含めた再発抑制療法で悪化の可能性のある合併症のチェックと、再発抑制療法での副作用チェックの目的が大きい。髄液も多くは正常で、異常があっても軽微であることが特徴である。オリゴクローナルIgGバンド(OCB)の陽性率は欧米では90%を超えるが、日本人では約70%位である。MS特異的ではないが、IgG index高値は中枢神経系でのIgG産生、すなわち免疫反応が生じていることの指標となる。電気生理学的検査としては視覚誘発電位、体性感覚誘発電位、聴性脳幹反応、運動誘発電位があり、それぞれの検査対象神経伝導路の脱髄の程度に応じて異常を示す。MRIは最も鋭敏に病巣を検出できる方法である。MSの脱髄巣はMRIのT1強調で低または等信号、T2強調画像またはFLAIR画像で高信号域となる。急性期の病巣はガドリニウム(Gd)で増強される。脳室に接し、通常円形または楕円形で、楕円形の病巣の長軸は脳室に対し垂直である病変がMSの特徴であり、ovoid lesionと呼ばれる。このovoid lesionの検出には、矢状断FLAIRが最適であり、MSを疑った場合には必ず撮影するべきである。NMO病態では、CRP上昇や補体高値などの軽度の末梢血の全身性炎症反応を示すことがあるほか、大部分の症例で血清中に抗AQP-4抗体が検出される。抗体は治療により測定感度以下になることも多く、治療前の血清にて測定することが重要である。画像では、脊髄の中心灰白質を侵す3椎体以上の長大な連続性病変が特徴的とされる。また、他の自己免疫疾患の合併が多く、オリゴクローナルIgGバンドは陰性のことが多い。■ 鑑別疾患1)初発時あるいは再発の場合感染性疾患:ライム病、梅毒、硬膜外膿瘍、進行性多巣性白質脳症、単純ヘルペスウイルス性脊髄炎、HTLV-1関連脊髄炎炎症性疾患:神経サルコイドーシス、シェーグレン症候群、ベーチェット病、スイート病、全身性エリテマトーデス(SLE)、結節性動脈周囲炎、急性散在性脳脊髄炎、アトピー性脊髄炎血管障害:脳梗塞、脊髄硬膜外血腫、脊髄硬膜動静脈瘻(AVF)代謝性:ミトコンドリア病(MELAS)、ウェルニッケ脳症、リー脳症脊椎疾患:変形性頸椎症、椎間板ヘルニア眼科疾患:中心動脈閉塞症などの血管障害2)慢性進行型の場合変性疾患:脊髄小脳変性症、 痙性対麻痺感染性疾患:HTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性麻痺(HAM/TSP)代謝性疾患:副腎白質ジストロフィーなど脳外科疾患:脊髄空洞症、頭蓋底陥入症3 治療 (治験中・研究中のものも含む)急性増悪期、寛解期、進行期、それぞれに応じて治療法を選択する。■ 急性増悪期の治療迅速な炎症の鎮静化を行う。具体的には、MS、NMO両疾患とも、初発あるいは再発時の急性期には、できるだけ早くステロイド療法を行う。一般的にはメチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール/静注用)500mg~1,000mgを2~3時間かけ、点滴静注を3~5日間連続して行う。パルス療法後の経口ステロイドによる後療法を行う場合は、投与が長期にわたらないようにする。1回のパルス療法で症状の改善が乏しいときは、数日おいてパルス療法をさらに1~2クール追加したり、血液浄化療法を行うことを考慮する。■ 寛解期の治療再発の抑制を行う。再発の誘因としては、感染症、過労、ストレス、出産後などに比較的多くみられるため、できるだけ誘引を避けるように努める。ワクチン接種は再発の誘引とはならず、感染症の危険を減らすことができるため、とくに禁忌でない限り推奨される。その他、薬物療法による再発抑制が普及している。1)再発抑制法日本で使用できるものとしては、MSに関してはIFN-ß1a (同:アボネックス)、IFNß-1b (同:ベタフェロン)、フィンゴリモド(同:イムセラ、ジレニア)、ナタリズマブ(同:タイサブリ)がある。肝障害、自己免疫疾患の悪化、間質性肺炎、血球減少などに注意して使用する。また、NMOに使用した場合、悪化させる危険があり、慎重な病態の把握が重要である。(1)IFN-ß1a (アボネックス®) :1週間毎に筋注(2)IFN-ß1b (ベタフェロン®) :2日毎に皮下注どちらも再発率を約30%減少させ、MRIでの活動性病変を約60%抑制できる。(3)フィンゴリモド (イムセラ®、ジレニア®) :連日内服初期に徐脈性不整脈、突然死の危険があり、その他、感染症、黄斑浮腫、リンパ球の過度の減少などに注意して使用する。(4)ナタリズマブ(タイサブリ®) :4週毎に点滴静注約1,000例に1例で進行性多巣性白質脳症が生じるが、約7割の再発が抑制でき、有効性は高い。NMO病態ではIFN-ßやフィンゴリモドの効果については疑問があり、重篤な再発の誘引となる可能性も報告されている。したがって、ステロイド薬内服や免疫抑制薬(アザチオプリン 50~150mg/日 など)、もしくはその併用が勧められることが多い。この場合、できるだけ少量で維持したいが、抗AQP4抗体高値が必ずしも再発と結びつくわけでなく、治療効果と維持量決定の指標の開発が課題である。最近では、関節リウマチやキャッスルマン病に認可されているトシリズマブ(ヒト化抗IL-6受容体抗体/同:アクテムラ)が強い再発抑制効果を持つことが示され、期待されている。(5)その他の薬剤として以下のものがある。ミトキサントロン:用量依存性の不可逆的な心筋障害が必発であるため、投与可能期間が限定されるグラチラマー(同:コパキソン) :毎日皮下注射(欧米で認可され、わが国でも9月に製造販売承認取得)ONO-4641:フィンゴリモドに類似の薬剤(わが国で治験が進行中)ジメチルフマレート(BG12)(治験準備中)クラドリビン(治験準備中)アレムツズマブ(抗CD52抗体/同:マブキャンパス) (欧米で治験が進行中)リツキシマブ(抗CD20抗体/同:リツキサン) (欧米で治験が進行中)デシリズマブ(抗CD25抗体)(欧米で治験が進行中)テリフルノミド(同:オーバジオ)(欧米で治験が進行中)2)進行抑制一次進行型、二次進行型ともに、慢性進行性の経過を有意に抑制できる方法はない。骨髄移植でも再発は抑制できるが、進行は抑制できない。■ 慢性期の残存障害に対する対症療法疼痛はカルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリンその他抗うつ薬や抗てんかん薬が試されるが、しばしば難治性になる。そのような場合、ペインクリニックでの各種疼痛コントロール法の適用も考慮されるべきである。その他、痙性、不随意運動、排尿障害、疲労感、それぞれに対する薬物療法が挙げられる。4 今後の展望再発抑制に関しては、各種の疾患修飾療法の開発により、かなりの程度可能になっている。しかし、20~30%の患者では再発抑制効果が乏しいこともあり、さらに効果的な薬剤が求められる。慢性に進行するPPMS、SPMSでは、その病態に不明な点が多く、進行抑制方法がまったくないことが課題である。診断と分類に関して、抗AQP4抗体の発見以来、治療反応性や画像的特徴から、NMOがMSから分離される方向にあるが、今後も病態に特徴的なバイオマーカーによるMSの細分類が重要課題である。5 主たる診療科神経内科:診断確定、鑑別診断、急性期管理、寛解期の再発抑制療法、肢体不自由になった場合の障害者認定眼科:視力・視野などの病状評価、鑑別診断、治療の副作用のショック、視覚障害になった場合の障害者認定ペインクリニック:疼痛の対症療法泌尿器科:排尿障害の対症療法整形外科:肢体不自由になった場合の補助具などリハビリテーション科:リハビリテーション全般※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)公的助成情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療、研究に関する情報多発性硬化症治療ガイドライン2010(日本神経学会による医療従事者向けの治療ガイドライン)多発性硬化症治療ガイドライン2010追補版(上記の治療ガイドラインの追補版)患者会情報多発性硬化症友の会(MS患者ならびに患者家族の会)1)Polman CH, et al.Ann Neurol.2011;69:292-302.2)Wingerchuk DM, et al. Neurology.2006;66:1485-1489.3)日本神経学会/日本神経免疫学会/日本神経治療学会監修.「多発性硬化症治療ガイドライン」作成委員会編.多発性硬化症治療ガイドライン2010. 医学書院; 2010.公開履歴初回2013年03月07日更新2015年10月06日

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事例73 摂食機能療法の査定【斬らレセプト】

解説事例では、脳出血後遺症と片麻痺で受診した患者に対して、H004 摂食機能療法を算定したところ、「原疾患名もしくは廃用症候群にて算定する場合には、実施理由の記載が必要」とD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を理由に査定となった。摂食機能療法の注には、「摂食機能障害者に対して、1月に4回を限度。ただし、治療開始日から起算して3月以内は、1日につき」とある。事例もこの規定に基づき算定されていた。摂食機能障害者にも基準があり、「顎及び舌の手術等又は脳血管疾患等による後遺症等により摂食機能に障害があるもの」とあった。事例の病名には、「脳出血後遺症」としかない。この病名のみでは、摂食機能に障害があり、摂食機能療法が必要かどうかの判断はつかないことを理由に査定対象となったのであろう。医学上では当たり前であっても、保険診療上ではその診療がなぜ必要であったかを示さなければ、査定となってしまうのである。

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医薬品適応拡大申請時のエビデンス提示内容にばらつき/BMJ

 米国FDAに対し医薬品の適応拡大を申請する際、その有効性に関するエビデンスとして提出した臨床試験の内容は、適応拡大申請の内容によってばらつきがあることが明らかになった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBo Wang氏らがシステマティックレビューの結果、明らかにした。具体的には、有効性について既存薬との比較を行っていたものは、新たな適応症を追加申請していたものでは30%、多剤併用から単独投与などへの変更では51%、適応対象集団の拡大では11%などだった。また、エンドポイントとして、臨床的アウトカムを採用した試験の割合にもばらつきが認められたという。BMJ誌オンライン版2015年9月23日号掲載の報告。2005~14年の適応拡大のFDA承認薬について調査 研究グループは、2005~14年にFDAから適応拡大の承認を受けた処方薬について、システマティックレビューを行い、適応拡大の際に用いた試験と、最初の承認を受けた際の試験について比較を行った。 主要アウトカムは、比較対照薬(既存薬、プラセボ、歴史的対照、なし)、試験のエンドポイント(臨床的アウトカム、臨床スケール、代用エンドポイント)の種類だった。臨床的アウトカムを示した試験、適応症の追加では32% 解析に組み込まれた適応拡大は、295件だった。 このうち、承認申請に当たり既存薬との有効性を比較した試験結果を提出していたのは、適応症の追加に関する申請では30%(136件中41件)、多剤併用投与から単剤投与などへの変更といった適応変更申請では51%(93件中47件)。また、適応対象集団の拡大申請では11%(65件中7件)と最も低く、このうち94%(65件中61件)は、適応拡大集団を小児患者とするものだった。 申請試験で、臨床アウトカムをエンドポイントとして採用していたのは、適応症の追加に関する申請では32%(137件中44件)、適応変更では30%(93件中28件)、適応集団の拡大では22%(65件中14件)だった。 一方、希少疾病用医薬品について、希少疾病以外への適応拡大を申請したものは40件あった。このうち、既存薬との比較を行っていたものは28%(40件中11件)で、当初の希少疾病用医薬品申請時(オリジナル試験時)の同24%(42件中10件)と同程度だった(p=0.70)。また、臨床的アウトカムをエンドポイントとした割合もそれぞれ、25%(40件中10件)と31%(42件中13件)と同程度だった(p=0.55)。

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乾癬へのアダリムマブの有効性 ―米国市販後10年調査の中間報告

 中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象としたアダリムマブ(商品名:ヒュミラ)の実臨床における長期安全性と有効性を評価する10年間の市販後調査(ESPRIT)が進行中であるが、最初の5年間において未知の有害事象は認められず、死亡者数も予想を下回っており、安定した有効性が得られていることが、米国・ベイラー大学のAlan Menter氏らによる中間解析で明らかになった。Journal of the American Academy of Dermatology誌2015年9月号の掲載報告。 市販後調査の登録は2008年9月26日に開始され、2013年11月30日時点のデータについて解析が行われた。 解析対象は、市販後調査開始前の臨床試験も含めたすべてのアダリムマブ投与患者(全投与群)。すなわち、承認前の臨床試験から継続してアダリムマブが投与され、登録開始後にアダリムマブを少なくとも1回は投与された患者と、市販後調査の登録開始前4週間以内にアダリムマブの投与が開始された新規投与患者群であった。 主な結果は以下のとおり。・全投与患者群は6,059例、このうち新規投与患者群は2,580例であった。・登録期間中央値は全投与患者群765日、新規投与患者群677日であった。・全投与患者群において、重篤な治療関連有害事象の発現頻度(登録期間外も含む)は4.3件/100人年で、重篤な感染症は1.0件/100人年、悪性腫瘍0.9件/100人年、非黒色腫皮膚がん0.6件/100人年、黒色腫0.1件未満/100人年であった。・標準化死亡比は、0.30(95%信頼区間:0.19~0.44)であった。・医師の総合評価(PGA)で、消失またはほぼ消失と判定された患者の割合は、全投与患者群において12ヵ月後57.0%、60ヵ月後64.7%であった。

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生命を脅かす疾患 「低ホスファターゼ症」に光明

 アレクシオンファーマ合同会社(以下、アレクシオン)の主催により、「周産期・乳児期で生命を脅かす危険性が高い“低ホスファターゼ症”初の治療薬登場で変わる治療現場」をテーマに、メディアセミナーが2015年9月17日、東京都千代田区で開催された。冒頭で、同社社長ヘルマン・ストレンガー氏より低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia:HPP)治療薬、ストレンジックの日本における開発経緯について説明が行われた。日本におけるストレンジックの開発経緯 同社が先月発売したストレンジックの日本における開発は、2012年、日本でHPP患者を持つ母親からアレクシオンに、薬の必要性を切実に願う手紙が届いたことがきっかけであった。これにより、日本人HPP患者の国際共同治験参加が実現し、2015年8月、世界に先駆けて日本で発売されることとなった。HPPとは? 次に、藤原 幾磨氏(東北大学大学院 医学系研究科 環境遺伝医学総合研究センター 小児環境医学分野 教授)より、「低ホスファターゼ症とストレンジック」と題した講演が行われた。 HPPは、アルカリホスファターゼ(以下、ALP)をコードするALPL遺伝子の変異により、ALP活性が低下することが原因のきわめてまれで重篤な、進行性、全身性代謝性疾患である。日本における患者数は100~200人1)で、「小児慢性特定疾病」、「指定難病」に認定されている。HPPの症状と病型 HPPでは、ALPの活性低下に伴い、その基質であるPPiの蓄積による骨石灰化障害、PLPの蓄積によるビタミンB6依存性痙攣など、生命に関わる症状が引き起こされる。HPPは、「周産期型」、「乳児型」、「小児型」、「成人型」、「歯限局型」に加え、「周産期良性型」(周産期型で従来よりも症状が軽度で予後良好な例)を含めた6病型に分類されている。病型によって特徴的かつ多彩な臨床症状(骨石灰化障害に伴う呼吸不全、頭蓋骨早期癒合症、腎石灰化や重度の腎不全、筋肉/関節痛、運動機能障害など)を全身に発現し、最も重篤な周産期重症型では、生存期間の中央値が4ヵ月であったという報告もある2)。HPPの診断 これらの臨床症状を回避し、予防するためには、早期かつ正確にHPPを診断することが重要である。その際、「ALP活性値の低下」を確認することが、HPPの診断、類似疾患との鑑別に不可欠だが、藤原氏は、「患者の年齢や検査施設によってALP基準値が異なるため、配慮が必要だ」と注意を促した。HPP治療薬、ストレンジックとは? ストレンジックは、HPP患者に対する初めての治療薬で、HPPの原因であるALP活性の低下に対する酵素補充療法である。本剤の投与により、HPP患者の生存率(投与168週時)84%、24週という早期にくる病様症状や、胸郭石灰化促進による肺機能の改善、運動能力や身体機能の改善が認められ、身体障害、疼痛の軽減によるADL、QOLの改善が示唆された。 藤原氏は、「当院で実施した治験でも、著明な長管骨彎曲や骨化不全がみられた患者に、ストレンジックを投与したところ、骨病変の著しい改善がみられ、現在では歩くことができるようになっている」、「ストレンジック発売前は、HPP患者を発見しても辛く、悔しい思いをすることが多かったが、心待ちにしていた薬剤の登場と、その効果に喜んでいる」と述べた。HPP患者家族、喜びの声 最後に、原 弘樹氏(低フォスファターゼ症の会 代表)より「患者会の紹介と、ご家族の闘病」についての講演が行われた。 「低フォスファターゼ症の会」は、大阪大学の大薗 恵一氏が会の顧問を務めており、2008年より患者、医師、製薬会社、行政の架け橋として、精力的に活動を続けている。今回、患者家族を代表して、ハウ氏(低フォスファターゼ症の会 副代表)夫妻から闘病の様子が語られた。 ハウ氏の子息は、1997年に生まれた。先天性代謝異常スクリーニングでは、異常が見つからず、翌年、発熱した際に血液検査をしたところカルシウム高値であることが発覚し、その後「低ホスファターゼ症の乳児型」と診断された。首、腰がなかなかすわらないという悩みから始まり、気管支炎や肺炎による入院、乳歯早期脱落による入れ歯、頭蓋骨早期癒合症の手術、歩行困難のため車いす移動など、大変な日々だった、とハウ氏は当時を振り返った。 昨年、治験に参加し、ストレンジックを投与したところ、2ヵ月ほどで運動能力の向上がみられ、腰の痛みも治まってきたという。ハウ氏は、「現在、息子は高校3年生となり、力をつけたいという本人の要望から、親子で筋肉トレーニングを始め、今では家の手伝いができるほど力がついてきた、今後は、持久力をつけて自転車に挑戦するのが目標。頑張る息子の姿を大変うれしく思う」と喜びを語った。 原氏は、「会の結成当時は治療法がなく、自分たちの無力さ、無念さで苦しい思いをたくさんしてきた」、「世界に先駆けて日本で承認、販売されたことに対して、感謝の気持ちでいっぱい。ここまで成し遂げられたのは、“日本人の魂”だと感じた」と述べ、会を締めくくった。 ストレンジックによって、1人でも多くの“幼い命”が救われることを期待したい。参考文献1) 難病情報センター. 低ホスファターゼ症. (参照2015.9.30)2) Taketani T, et al. Arch Dis Child. 2014; 99: 211-215.

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