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長生きは本当に幸せか(解説:岡村 毅 氏)-462

 英国の地域在住高齢者のコホート研究(CFAS I ・CFAS II)を使って、1991年から2011年の間に平均余命が伸びたうち、主観的健康な期間、認知機能が保たれている期間、そして日常生活の障害がない期間は、どのくらいかということを調べたものである。 認知機能が障害されている期間は短くなっていた。これは、近年同じコホートから報告されているように、英国で認知症の有病率が低下していることとも対応しているだろう。生活習慣病の減少や教育の向上が関連するとされる1)。 主観的に健康な期間も伸びている。 一方で、残念ながら、生活障害を持つ期間は増えている。これは肥満が増加したことと関連する可能性が示唆されている。 われわれは、長生きはいいことだとアプリオリに考える。「だが本当にそうだろうか?」…、そんなことを公共の場で言ったら「不謹慎」と思われてしまうかもしれない。しかし、社会全体が長寿を目指すのであれば(政策とするのであれば)、本当は考えておかねばならないことだ。 本研究は、寿命が延びたのはいいが、不健康で認知症の時期が増えたのでは、という懐疑に答えを出すものだ。答えは「否」であった。浅薄な発言かもしれぬが、長寿を目指すこと(政策)のエビデンスが得られたといえる。 研究者の端くれとしては、本当は「幸せに生きた期間」は増えたのか、という疑問があったに違いないと思う。同時にその困難さも想像に難くない。幸せや生活の質といわれるものは常に主観的なものであり、尺度化の難しさは身に染みている。たとえば、今回の研究に即していえば、障害があっても他人に頼って生きるようになり、むしろ他人とのつながりを回復し、こころの安定が得られるというケースもあろう(もちろん私は障害を促進しているわけではないので誤解なきよう)。 この論文は、読者の探究心を激しく呼び覚ますものだ。さすがロックやヒュームを生んだ国である、というと言い過ぎであろうか。当然、「私たちの社会ではどうだろうか?」「実証的に検討する材料はあるのだろうか?」と考えなければなるまい。

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社会を支える力【Dr. 中島の 新・徒然草】(098)

九十八の段 社会を支える力読者の皆さんの中にも、以前は他の業界で働いていたけれども、医学部に入り直して卒業し、医師になった人も沢山おられることと思います。たまたま、他科のレジデントとそのような話になりました。中島「先生は以前、サラリーマンをやってたとか聞いたんやけど」レジ「以前、〇〇株式会社にいました」中島「えらい畑違いやな。向こうの業界と医療界とはまた違うところもあるわけ?」レジ「『同業者の悪口を言ってはならない』というルールが医療界にあるというのが驚きでした」中島「悪口なんか言ったらアカンがな。ルール以前の問題やろ」レジ「僕がいた会社だけかもしれないんですけどね。まず他社の製品の悪口を言うところから営業が始まるんですよ」中島「おいおい」レジ「『お客さん、ようこんなひどい製品使ってはりまんなあ!』とまず一発かましてから自分とこの製品の宣伝をするんです」中島「仰天した!」レジ「そやから、この仕事を始めてから、他所の悪口を言わないのでびっくりしたんですよ」中島「こっちの方が驚いてもたで」正確には「患者さんの前で同業者の診療行為にケチをつけてはならない」というのが業界ルールですね。「後医は前医をそしるべからず」として知られているのは読者の皆さんご存じのところ。そもそも、患者さんの転送を頼み込むこともあるし、ひょっとしたら自分が事故で担ぎ込まれるかもしれないのに、他の医療機関の悪口なんか言えるわけもありません。そんなある日のこと。脳外科外来に通院中の患者さんから私の書いた診断書のコピーを見せられました。患者「先生に書いてもらった診断書のことで」中島「かなり以前に書いたものですね」患者「お蔭で申請が通ったのはいいんですけど、〇〇診療所の先生が『ちょっと見せてみい』というからお見せしたら」中島「ええ」患者「『ひどい診断書やなあ。ようこんなんで申請が通ったなあ』って言われたんですよ」中島「あらまあ」患者「〇〇診療所の先生には『今度、更新の診断書を役所に提出する時に、顔役に頼んだろ』と言われました」中島「口利きしてもらうとうまくいくんですか?」患者「いや私にはよくわからないんです」中島「私にもよくわかりませんが、〇〇先生には世の中がそのように見えているのかなあ」患者「中島先生に言うと気を悪くするかな、とも思ったんですけど。すみません」医療界にも色々な先生がおられるようです。患者「やっぱりコネとかそういうこともあるんでしょうか?」中島「役所でコネが通ったとかいうのは一度も見たことがありませんよ、少なくとも私は」患者「ホントですか!」あくまでも医学的判断の話ですから、情実がからむようではいけません。中島「そもそも顔役がどうとか、コネがどうとか。そんなモンがまかり通ったら、嫌じゃないですか?」患者「そうですね。そんなことあってほしくないです」中島「やっぱり日本という国にはキチンとしていてほしいと思いますよね」患者「ええ」中島「だったらコネが必要だと思う必要はありません。今回もちゃんとした理由で申請が通ったんですよ」患者「はい!」こころなしか患者さんの表情が明るくなりました。患者「実は私の入っている△△同好会がコンテストに出場しましてね」中島「ええ」患者「私の後輩が個人優勝したんです」中島「凄いですね」患者「そのコンテストの審査委員長をやっていたのが私達の師匠でして、メチャクチャ厳しい人なんです」中島「へえーっ」患者「でもね、後輩の優勝が決まったときに師匠が言ったんです。『お前は俺の弟子やからな、ちょっと採点が辛めになったかもしれん。それでもお前がダントツやった。優勝おめでとう!』って」中島「いい師匠ですねえ」患者「そうなんですよ。すごい人です」中島「とにかく明るく前向きに、そして堂々と、これからも頑張りましょう!」患者「ぜひお願いします」なんだか予想外の展開になってしまいましたが、それにしても他人様の悪口は言わないほうが無難ですね。最後に1句フェアプレー 日本を支える 底力

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ハイリスクIgA腎症への免疫抑制療法の効果は?/NEJM

 ハイリスクIgA腎症の患者に対し、積極的支持療法に加え免疫抑制療法を併用しても、臨床的完全寛解率に有意差はみられなかった。また、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下率についても有意差はみられず、一方で、併用群では有害事象の発生が多く観察された。ドイツ・アーヘン工科大学のThomas Rauen氏らが3年にわたる多施設共同の非盲検無作為化比較試験の結果、報告した。IgA腎症患者について、支持療法に免疫抑制療法を併用した場合のアウトカムについては、これまで明らかにされていなかった。NEJM誌2015年12月3日号掲載の報告。単独支持療法または免疫抑制療法併用で3年間治療 試験の対象は、1日の尿蛋白排泄量が0.75g以上の持続性蛋白尿の患者337例。当初6ヵ月は導入期間として、蛋白尿の程度に基づきレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与量などについて調整を行い、支持療法を行った。その後、被験者を無作為に2群に分け、一方には支持療法のみを(支持療法群)、もう一方には支持療法と免疫抑制療法を併用し(併用群)、いずれも3年間継続した。 主要エンドポイントは階層法で順序付けをした2つで、試験終了時の臨床的完全寛解(蛋白とクレアチニンをグラム測定した際の尿蛋白・クレアチニン比が0.2未満、eGFRのベースラインからの低下幅が5mL/分/1.73m2体表面積未満)と、eGFRの15mL/分/1.73m2体表面積以上の低下だった。臨床的完全寛解、eGFR低下率とも両群間の有意差はみられず 被験者のうち、導入期間を終了したのは309例。そのうち1日の尿蛋白排泄量が0.75g未満に減少したのは94例だった。 残る患者のうち、最終的に162例について無作為化を行い、80例を支持療法群、82例を併用群に割り付けた。 結果、試験終了後に臨床的完全寛解が認められたのは、支持療法群4/80例(5%)に対し、併用群は14/82例(17%)で、両群間の有意差は認められなかった(p=0.01)。 また、eGFRの15mL/分/1.73m2以上低下についても、達成患者は支持療法群22例(28%)、併用群21例(26%)で、両群間の有意差はみられなかった(p=0.75)。eGFRの年間低下率についても、有意差はみられなかった。 一方、有害事象は、重度感染症、糖代謝異常、当初1年間の5kg以上の体重増加が、いずれも併用群で支持療法群よりも高率に認められた。また併用群1例で敗血症による死亡が報告された。

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第1子と第2子妊娠間の体重増、死産・新生児死亡リスク増大/Lancet

 第1子妊娠から第2子妊娠の間に母親の体重が増加すると、死産や新生児死亡リスクが増大することが確認された。とくに死産リスクについては、体重増と線形増加の関連性が認められた。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のSven Cnattingius氏らが、約46万人の女性を対象に行った住民ベースのコホート試験の結果、明らかにした。著者は、「今回示された結果は、健康で過体重の女性について妊娠前の体重増を防止する必要があること、過体重女性では減量の促進が必要であることを強調するものである」と指摘している。Lancet誌オンライン版2015年12月2日号掲載の報告。第1子・第2子妊娠初期BMIと出生児死亡リスクについて分析 研究グループは、1992年1月1日~2012年12月31日に第1子と第2子を出産し、いずれも単産だった女性を対象にコホート試験を行った。 母親の第1子・第2子妊娠それぞれ初期のBMIと、死産(在胎28週後に限定)や乳児(在胎22週以上で出生後28日未満)・後期乳児(同28日以上)・新生児(同1歳未満)死亡の発生を調べた。二項回帰分析を行い、妊娠間のBMI変化と各死亡率について相対リスク(RR)を算出し評価した。第1子と第2子妊娠間にBMI値4以上増加で死産リスク1.55倍 試験期間中に第1子、第2子を出産した女性58万7,710人のうち、完全な情報が得られた45万6,711人(77.7%)について分析を行った。 その結果、第1子妊娠期BMI値と第2子妊娠期BMI値との変化が-1~1と安定していた母親と比べ、4以上増加した母親では、死産RRは1.55(95%信頼区間:1.23~1.96)、新生児死亡RRは1.29(同:1.00~1.67)といずれも増大がみられた。 死産リスクについては、BMI増加に対して線形増加の有意な関連が認められた(傾向のp<0.0001)。 第2子新生児死亡リスクは、第1子妊娠期BMIが25未満と標準だった母親のみで、BMI増加に伴いリスクの増大がみられた。BMIが2~4増加したときの補正後新生児死亡RRは1.27(同:1.01~1.59)、4以上増加では1.60(同:1.16~2.22)だった。 第1子妊娠初期BMIが25以上の過体重の母親については、BMI減により乳児死亡リスクの低下がみられた(RR:0.49、95%CI:0.27~0.88)。

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子供の眼底出血は予防接種とは無関係、虐待を見抜く重要な所見

 米国では、予防接種が小児における眼底出血の原因ではないかとの説が流布しているという。フィラデルフィア小児病院のGil Binenbaum氏らは、「予防接種が眼底出血を引き起こすならその頻度は高く、予防接種との時間的関連が認められるはず」として、眼科外来における乳幼児の眼底出血有病率と原因を調べた。その結果、2歳未満児の有病率は0.17%とまれであり、ワクチンの速効性および遅効性の両方の作用を考慮しても、予防接種と眼底出血との時間的関連は認められなかった。著者は、「予防接種を小児における眼底出血の原因と考えるべきではなく、臨床診療および訴訟においてこの根拠のない説を受け入れてはならない」と強調したうえで、「眼科医は、外来患者の診察において偶発的な眼底出血に注意し、その他の既知の眼疾患または内科的疾患がない場合は、小児虐待の評価を考えなければならない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌2015年11月号の掲載報告。 眼底出血は、命の危険にさらされた虐待の頭部損傷症例において重要な防御戦略を示す所見の1つである。もし、予防接種が眼底出血を引き起こしているのなら、小児虐待の評価に影響を及ぼすことが考えられる。 そこで研究グループは、フィラデルフィア小児病院眼科外来において2009年6月1日~12年8月30日の間に、理由のいかんを問わず散瞳下眼底検査を受けた生後1~23ヵ月の乳幼児5,177例について後ろ向きに分析した。眼内手術歴または進行性網膜血管新生を有する小児は除外した。 主要評価項目は、眼底出血の有病率と原因、検査および眼底出血前の7、14、21日以内の予防接種との時間的関連であった。 主な結果は以下のとおり。・外来で眼底検査を受けた患児5,177例における眼底出血の有病率は、9例(0.17%、95%信頼区間[CI]:0.09~0.33%)であった。・9例全例が、非眼球所見にて虐待による頭部損傷と診断可能であった。・完全な予防接種の記録があったのは2,210例(眼底検査は計3,425件)であった。・そのうち163例が予防接種後7日以内、323例が14日以内、494例が21日以内に検査が行われており、眼底出血が認められたのは予防接種後7日以内0、14日以内1例、21日以内0であった。・予防接種と眼底出血との間の時間的関連は、7日(p>0.99)、14日(p=0.33)および21日(p=0.46)のいずれにおいても認められなかった。

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道路交通騒音でうつ病リスク増大

 交通騒音は、とくに都市部にて多くの人々に影響を与える。騒音はストレスやいらいらの原因となるが、騒音とうつ病との関連はあまり知られていない。ドイツ・エッセン大学病院のEster Orban氏らは、住宅道路の交通騒音と抑うつ症状の関連を調べるため、ドイツ住民ベース研究から5年間の追跡調査データを用い、検討を行った。その結果、住宅道路の交通騒音は抑うつリスクを増大させることが示唆された。Environmental health perspectives誌オンライン版2015年11月25日号の報告。 著者らは、Heinz Nixdorf Recall 研究の参加者で、ベースライン時(2000~03年)に抑うつ症状のない3,300人(45~75歳)のデータを分析した。抑うつ症状は、CES-D質問票の15項目(合計スコア17点以上)、抗うつ薬の投与に基づいて定義した。道路交通騒音は、European Parliament/Council Directive 2002/49/ECをモデルにした。騒音の高曝露は、1年間の24時間平均騒音レベルが55dB以上(A)と定義した。ロバスト推定ポアソン回帰は、相対リスク(RR)を推定するために使用した。潜在的な交絡因子調整のため、1)年齢、性別、社会的地位(SES)、自宅周辺のSESレベル、交通近接性、さらに2)BMIと喫煙、3)潜在的な交絡/中間因子である併存疾患と不眠症、で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体参加者の35.7%が、高いレベルの住宅交通騒音にさらされていた。・フォローアップ時(ベースラインから平均5.1年)、302人の参加者が高い抑うつ症状を有していた。曝露騒音レベル55未満に対する55超の調整後RRは1.29(95%CI:1.03~1.62、モデル1)であった。・潜在的な交絡/中間因子による調整は、結果を実質的に変化させなかった。・関連性は、ベースライン時に不眠を訴えた人で強く[RR 1.62(1.10~2.59) vs.1.21(0.94~1.57)]、教育年数13年以下の人においてのみ現れた[RR 1.43(1.10~1.85)vs.0.92(0.56~1.53):13年超]。関連医療ニュース 性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大 魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大 パートナーがうつ病だと伝染するのか  担当者へのご意見箱はこちら

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最も多く「いいね!」を集めたのはこれ!【2015年 Facebookいいね!年間ランキング】

2015年にCareNet.comに掲載した医療ニュースの中でFacebookの「いいね!」が多かった記事、トップ30を発表します。最新の医学情報はもちろん、飲食や睡眠にまつわるエビデンス、生活習慣とがんリスクなど、私たち自身の健康に関わるテーマの記事が多くランクインしました。1位音楽療法が不眠症に有用(2015/9/8)2位本当だった!? 血液型による性格の違い(2015/6/2)3位緑茶やコーヒーで胆道がんリスクは減少するか~日本のコホート研究(2015/11/12)4位かかりつけ機能を基に薬局を地域の健康窓口へ~「健康情報拠点薬局」第2回検討会(2015/6/24)5位膝OAに陸上運動療法は有効(2015/2/3)6位コーヒー摂取量と死亡リスク~日本人9万人の前向き研究(2015/5/11)7位なんと!血糖降下薬RCT論文の1/3は製薬会社社員とお抱え医師が作成(解説:桑島 巖氏)(2015/7/14)8位心房細動へのジゴキシン、死亡増大/Lancet(2015/3/30)9位脳梗塞の発症しやすい曜日(2015/4/3)10位片頭痛の頻度と強度、血清脂質と有意に相関(2015/10/13)11位周術期の音楽が術後の疼痛・不安を軽減/Lancet(2015/8/24)12位抗認知症薬の脳萎縮予防効果を確認:藤田保健衛生大(2015/8/13)13位新しいがん免疫療法、これまでと何が違う?~肺がん医療向上委員会(2015/8/4)14位少量飲酒でも発がんリスクは上昇する?/BMJ(2015/9/1)15位夫の喫煙で乳がんリスクが増大~高山スタディ(2015/2/9)16位心肺蘇生への市民介入で後遺症のない生存が増大/JAMA(2015/8/7)17位長時間労働は、冠動脈心疾患よりも脳卒中のリスクを高める/Lancet(2015/8/31)18位認知症患者への睡眠薬投与、骨折に注意(2015/7/1)19位腰痛は患者の心身を悪化させ医療費を増やす:日本発エビデンス(2015/3/27)20位肺がん患者が禁煙したときの延命効果は?(2015/7/2)21位社会生活の「生きにくさ」につながる大人のADHD(2015/9/16)22位唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ(2015/8/17)23位長時間労働は多量飲酒につながる/BMJ(2015/1/26)24位アルコール摂取とがんリスク、用量依存的に関連(2015/10/14)25位慢性疼痛 患者の性差を考慮した対処を(2015/5/1)26位脱毛症の人はあのリスクが上昇(2015/1/21)27位失明患者の視覚を回復、人工網膜システムが欧米で初承認(2015/8/26)28位統合失調症への集団精神療法、効果はどの程度か(2015/6/24)29位糖質制限食と糖尿病リスク:日本初の前向き研究(2015/2/27)30位魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大(2015/7/1)

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高度アルツハイマー病へのドネペジル投与は続けたほうがよいのか

 地域で暮らす中等度~高度のアルツハイマー病患者に対するドネペジル投与の中止は、当初1年間は介護施設入居リスクを増大するが、その後の3年間はドネペジル継続群と差はないことが示された。英国・ロンドン大学のRobert Howard氏らが、ドネペジルとメマンチンの投与について検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「DOMINO-AD」の結果から報告した。複数の先行観察研究で、認知症の薬物治療に伴い介護施設入居時期が遅くなることが示唆されているが、軽度~中等度のアルツハイマー病患者を対象とした先行無作為化試験では、影響がないとする結果が示されていた。今回の結果を踏まえて著者らは、「継続の有益性が明白ではないとしても、ドネペジル治療の中止か継続かの決定は、中止による潜在的リスクを知らせたうえで行うべきである」と述べている。Lancet Neurology誌2015年12月号の掲載報告。 DOMINO-AD試験は、イングランドとスコットランドにある15の2次医療施設から被験者を募って行われた。対象は、地域で暮らす中等度~高度のアルツハイマー病患者で、ドネペジル10mgを3ヵ月以上継続処方され、直近6週間以上継続しており、標準化されたMini-Mental State Examination(MMSE)スコア5~13点であった。研究グループは被験者を、(1)ドネペジル(10mg/日)継続/メマンチンなし(継続群)、(2)ドネペジル中止/メマンチンなし(中止群)、(3)ドネペジル中止/メマンチン20mg/日開始(切り替え中止群)、(4)ドネペジル(10mg/日)継続/メマンチン(20mg/日)開始(併用継続群)のいずれかに無作為に割り付け、52週間治療を行った。52週以降の治療法の選択は、被験者および担当医師に任された。試験開始後52週間、居住地の記録を取り、その後3年間は26週間ごとに記録した。本検討では、本試験で副次アウトカムであった介護施設(nursing home)への入居(独居生活から住居型ケア施設への不可逆的な移動)について評価した。また、二重盲検期完了後1年間のフォローアップ期間における入居リスクについて、事後解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・2008年2月11日~10年3月5日に、継続群73例(25%)、中止群73例(25%)、切り替え群76例(26%)、併用群73例(25%)に無作為に割り付けられた。・無作為後4年間に162例(55%)が介護施設へ入居した。・各群における入居者数は同程度であった。継続群36例(49%)、中止群42例(58%)、切り替え群41例(54%)、併用群43例(59%)。・試験開始当初1年間、統合ドネペジル中止群の介護施設入居が、統合ドネペジル継続群と比べて有意に多かった(ハザード比:2.09、95%信頼区間[CI]:1.29~3.39)。しかし、その後の3年間で差はなくなり(同:0.89、0.58~1.35)、治療効果の経時的な不均一性が有意であることが判明した(p=0.010)。・メマンチン開始群と非開始群との比較では、1年目(同:0.92、0.58~1.45)あるいはその後3年間(同1.23、0.81~1.87)ともに、患者への影響は認められなかった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度? 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?  担当者へのご意見箱はこちら

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股関節痛の主訴とX線上の股関節OAは必ずしも一致しない/BMJ

 2件の試験コホートの高齢参加者を対象に、股関節痛の主訴とX線画像診断結果との一致について調べた結果、乖離が認められることが、米国・ボストン大学のChan Kim氏らによる検討の結果、示された。股関節痛を訴え画像所見で変形性股関節症(OA)が確認された患者は9.1~15.6%の一方、画像所見で股関節OAが認められるが疼痛なしの患者は20.6~23.8%であった。また、疼痛主訴の部位を鼠径部などに限定した場合の診断感度は16.5~36.7%などとなっており、著者は「X線所見に依拠すると、診断医は多くの高齢者の股関節OAを見逃す可能性がある」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年12月2日号掲載の報告。2つのコホートを対象に痛みの主訴と画像所見の一致率を調査 股関節OAは重大な疾病要因であり、疼痛、歩行・機能障害を引き起こす。米国では過去30年で60歳以上人口が倍増しており、変形性関節症およびそれに伴う疾患コストが増加し続け、OAに関するコストは年間約1,855億ドルに上ると試算されているという。 通常、股関節痛を訴える患者にはX線画像診断が行われ、痛みとX線上のOAが認められれば股関節OAと診断づけられるが、研究グループは、股関節痛とX線上のOAの一致率がどれくらいなのか診断検査試験にて調べた。 試験は、マサチューセッツ州フラミンガム住民対象の「フラミンガムOA試験」コホート(2002~05年)、および全米多施設長期に行われた「OAイニシアティブ試験」コホート(2003~05年、4施設)を対象とした。 股関節の視覚的表現を用いて、1日中続くような股関節痛があったかどうか、また疼痛部位(前部、鼠径部、側部、臀部、腰部)を調べた。フラミンガムOA試験では、股関節痛を訴えた患者について、内旋時の股関節痛についても調べた。 それら報告を基に著者は、X線上の股関節OAと股関節痛の一致について分析した。また、股関節痛の股関節OA示唆に関する感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率を算出し、診断検査におけるX線画像診断の価値を調べた。結果は見逃しが多く存在することを示唆 フラミンガムOA試験参加者(946例、63.5歳)において、股関節痛を訴えた患者のうちX線上で股関節OA所見が認められたのは、15.6%のみであった。また、X線上で股関節OA所見が認められた患者で疼痛があったのは20.6%であった。 股関節痛を鼠径部に限定した場合、X線上で股関節OA所見が認められる感度は36.7%、特異度は90.5%、陽性適中率6.0%、陰性適中率98.9%であった。この結果は、他の部位の股関節痛や内旋痛についても同様であった。 また、変形性関節症イニシアティブ試験参加者(4,366例61.0歳)では、股関節痛を訴えた患者のうちX線上で股関節OA所見が認められたのは9.1%のみで、X線上で股関節OA所見が認められた患者で疼痛があったのは23.8%であった。 同様に鼠径部に限定した場合の診断感度は16.5%、特異度94.0%、陽性適中率7.1%、陰性適中率97.6%であり、他部位の股関節痛についても同様の結果が示された。

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抗がん剤の副作用管理アプリ、卵巣がん治験で検証:アストラゼネカ

 アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ [Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、2015年12月7日、cediranib・オラパリブ併用治療中の再発プラチナ感受性高悪性度卵巣がん患者に対するデジタルサポートサービスを検証する計画を発表した。本サービスは、アストラゼネカと米国立がん研究所 (NCI) との連携のもと、Voluntis社(本社:仏国パリ、最高経営責任者(CEO):Pierre Leurent)がシステムを開発した。 本サービスは、臨床医および患者に対して、cediranib・オラパリブ併用治療の副作用である高血圧および下痢の管理を支援することを目的としており、ウェブポータルとスマートフォンのアプリにより提供される。  本アプリは、アストラゼネカとNCIの協力的研究開発契約のもと、NCI主導で2016年に開始される3本の臨床試験におけるコンパニオン機器として検証される。  cediranibはVEGF-1、2、3受容体阻害剤。2015年7月、プラチナ製剤感受性再発卵巣がんの治療薬としての承認申請が欧州医薬品庁により受理され、希少疾病用医薬品のステータスを付与された。また、オラパリブとの併用によるプラチナ製剤感受性再発卵巣がんおよびプラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんの適応を開発中である。  オラパリブは、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの治療薬として承認された最初のPARP阻害剤であり、米国ならびに欧州で発売されている。アストラゼネカ株式会社のプレスリリースはこちら。

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「医療ビッグデータ後進国」の名誉挽回に期待-医療ビッグデータ・コンソーシアムによる政策提言-

 12月14日、都内にて、医療ビッグデータ・コンソーシアム(代表世話人統括 本庶 佑氏)の記者会見が開催され、「医療ビッグデータ・コンソーシアム 政策提言2015」を発表した。 日本では、医療ビッグデータが各医療機関または研究機関で独自に構築・収集・管理されており、その構築・利活用は他の先進国に比べ周回遅れと評されている。同コンソーシアムは、医療ビッグデータを「つなぐ」「活かす」「変える」の3つの提言を行った。概要を以下に報告する。医療ビッグデータを「つなぐ」「活かす」ことで日本を「変える」  「つなぐ」では、個人識別により連結可能な環境を目指し、データの統一的指針の確立、個人IDによる連結などを提言。全量調査や大規模ゲノムコホートを推進するとともに、個人の健診データ、電子カルテデータ、レセプト情報、介護情報などを医療ビッグデータとして「つなぐ」将来を目指す。 「活かす」では、積極的な利活用のためNDB(ナショナルデータべース)の民間企業への開放を提言。新たな産業の創出を目指す。これにより期待されることとして、医療機関では医療の質の向上や効率化、製薬会社では開発の促進、創薬の効率化およびコストダウン、研究機関では疾患の原因解明、予防法の解明などが挙げられるとした。また、医療産業や健康産業のみならず、金融、不動産など生活に関わる産業への活用も含まれている。 一方、データの連結や営利目的でのデータの利用に関しては課題もあるとし、国には個人情報保護法の適切な運用や法律、規制等の整備を求めるとしている。 「変える」では、医療ビッグデータによる新しい知見を積極的に情報発信することで、国民のヘルスリテラシーを向上させていくことを提言。個人データ提供のベネフィットを国民に伝え、国と国民との共有財を創造し、結果として超高齢社会における国民皆保険制度の維持・実現を目指す。※医療ビッグデータ・コンソーシアム産官学政の有志参画の下、2014年に発足。「ヘルスケア」「ライフサイエンス」「予防医療・健康情報」の3分野に分けて研究部会を設置。毎年12月に内閣官房長官、総務省、文科省、厚労省、経産省などの事務次官に政策提言を手渡し、その実現を促す。会員企業は16社。製薬企業では、アステラス、大塚、参天、塩野義、第一三共、武田、中外が参画している。

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CHAMPION試験:いろいろな意味で残念な研究(解説:野間 重孝 氏)-461

 現在、私たち循環器科医にとって、重症患者をCCU/ICUに収容しSGカテなどによって肺動脈圧を持続モニターしながら監理するという手法は、半ば常識化している。実際Forresterの分類などは、初期研修医の段階でも当たり前の知識となっている。そのため、外来通院している心不全患者の肺動脈圧を、何らかの方法で定期的にモニターすることができれば、それはきっと治療に資するところがあるに違いない、とつい抵抗なく考えてしまいそうになる。しかし、それは証明されることが必要なのである。実際、近年では多くの組織で、よほど重症な心不全患者でない限り、持続肺動脈圧モニターはむしろ行わない方向に向かっているのではないだろうか。 外来患者の肺動脈圧を植込み型センサーを用いて定期的にフォローし、それを参考に治療方針を最適化することが心不全の入院防止に役立つかどうかを前向きに研究したのが、2011年に発表されたCHAMPION trialで、本論文は同論文で集められた肺動脈圧データアクセス不可とされた対照群の患者を、データアクセス可能の状態にして13ヵ月間フォローアップした追加報告である。 CHAMPION trialは、NYHA心機能分類III度に分類される患者723例を対象として始められた。結局、諸条件をクリアし、かつ安全に植込み型センサーを装着されたのは550例となり、これをランダム化することによりモニター群(270例)、非モニター群(280例)が6ヵ月間フォローされた。死亡・その他の不適当事項により除外者が出たことから、結局モニター群177例、非モニター群170例がフォローアップを終了した。この間、モニター群では83件の心不全関連入院があったのに対し、非モニター群では120件の入院があり、HR 0.70(p<0.0001)をもってモニター群の成績が優れていたと発表された。 このtrialによって、外来通院患者においても肺動脈の定期的モニタリングが治療成績の改善に結び付いたと結論されたのだが、私は少々疑問を感じていた。 まずNYHA心機能分類が何の抵抗もなく使用されているが、かなり恣意的なものになる可能性がありはしないか。とくにこのtrialの場合、いわゆるHFpEFの病態の患者も相当数含まれている。このような患者にNYHA心機能分類を適応することが適当なのだろうか? 第2点は、当初集められた患者数が723例いたのに対し、実際のフォローアップ対象になった患者が550例に過ぎなかったことである。このモニター法は、実用的といえるのだろうか? 実際このモニター装置は、FDAに認可されているにもかかわらず、一般化はしていない。 第3点はデザインの問題である。このイベント数は、延べ数であることにすぐにお気付きになると思う。つまり、普通の前向きフォローアップスタディではイベントを起こした患者はグループから除いていくものなのだが、このtrialでは死亡・その他の理由で除外されない限り、グループ内に戻されて引き続きフォローされているのである。これは適当なのだろうか。このようにすると、1人で何回も入退院を繰り返したり、コンプライアンスに問題があったりする患者の存在が問題になる。このtrialは、single blindであるので、都合の悪い患者を何らかの理由で除外してしまうことが可能なのである。かつイベントが心不全関連入院ということになると、そこに研究者の恣意が入り込まなかったという保証はない。 という訳で、私はCHAMPION trialを取り組みとしては興味深く感じながらも、研究としては評価できないと考えていた。そこに発表されたのが、今回のいわば続編ともいえる追加報告であった。 今回は、前回の研究終了時点でフォローアップを終えた非モニター群170例に対して、肺動脈圧データへのアクセスを許可することにより、前回のtrialでモニター群(治療群)に行ったように定期的に肺動脈圧をモニターすることで治療の最適化を図り、前回の非モニター群(対照群)の成績と比較した。すると、非アクセス期間に比して心不全入院率は48%減少した(p<0.0001)という。 これにより、著者らは前回のtrialの成績とも併せ、肺動脈圧の定期的なモニタリングが外来慢性心不全患者の治療に対して、非常に有効な手段であると結論した。しかし、この結論はそのまま受け入れられるものではないと考える。 なぜなら、今回の対象となった集団と、前回のtrialで対象となった集団は異なる集団なのである。これを同じ土俵で比較することはできないはずである。 また(そもそも比較してはいけないのだが)、医師の判断の入る余地のない死亡率に差が出なかったことも、この方法の有効性に疑問を投げ掛けるものではないだろうか。 結局、この一連のtrialは疑問符が付いたまま終わることになったのではないかと思う。 本来は、論文評はここで終了とすべきなのだろうが、蛇足を承知であえて一言書き加えたい。この一連の論文の序論が、いずれも心不全の入院数とその費用を論じることから始まっている。つまり、この一連の研究は、本当の意味でのoptimal therapyを求めることを当初から目的としておらず、医療費の削減という金銭を目的としてなされた研究ではなかったのだろうか。今回の研究に使用された機器の名称をネットで検索してご覧になれば、一連のtrialが商業目的に大いに利用されたことも理解されるだろう。いろいろな意味で残念である。

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嚢胞性線維症〔CF : cystic fibrosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は、欧米白人の出生2,000~3,000人に1人と、比較的高い頻度で認められる常染色体劣性遺伝性疾患であるが、日本人にはきわめてまれとされている。1938年にAndersonにより、膵外分泌腺機能異常を伴う疾患として初めて報告されて以来、現在では全身の外分泌腺上皮のCl-移送機能障害による多臓器疾患として理解されている。近年のCFに関する遺伝子研究の進歩により、第7染色体長腕にあるDNAフラグメントの異常(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR遺伝子変異)がCFの病因であることがわかってきた。このCFTR遺伝子変異は、世界中で400種類以上報告されており、△F508変異(エクソン10上の3塩基欠失によるCFTR第508番アミノ酸であるフェニルアラニンの欠失)が、欧米白人におけるCF症例の約70%に認められている。■ 疫学かつては東洋人と黒人にはCFはみられないと考えられていたが、現在では約10万人に1人と推測されている。わが国では厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班によってCFの実態調査が行われ、1952年にわが国での第1例の報告以来、1980年の集計で46例が報告された。その後、当教室における1993年までの集計によって、104例(男57例、女47例)のCF患者の報告を認めている。単純に計算すると、わが国におけるCF患者の頻度は出生68万人に1人の割合となるが、CFに対する関心が高まったことなどから、1980年以降の頻度は出生35万人に1人の割合となり、確定診断に至らなかった例や未報告例などを考慮すると、真の頻度はさらに高いものと思われる。また、2009年の全国調査では、過去10年間の患者数は44例程度と報告されている。日本人CF症例の遺伝子解析の検討は少なく、王らは3例のCF患児に、花城らはCF患児1例にそれぞれ△F508変異の有無を検索したが、この変異は認められなかった。また、古味らは、△F508変異に加えてCFTR遺伝子のエクソン11に存在するG542X、G551D、およびR553X変異の有無も検索したが、いずれの変異も認められなかった。筆者らは、NIH(米国国立衛生研究所)のgenctic research groupとの共同研究により5例のCF患者およびその家族の遺伝子解析を行い、興味ある知見を得ている。すなわち全例において、△F508変異をはじめとする16種類の既知のCFTR遺伝子変異は認められなかったが、single stand conformational polymorphism analysisにより4例においてDNAシークエンスの変異を認めた(表1)。この変異が未知のCFTR遺伝子変異であるのか、あるいはCFTR遺伝子とは関係しないpolymorphismであるのかの検討が必要である。画像を拡大する■ 病因1985年にWainwrightらによって、第7染色体上に存在することが確認されたCF遺伝子が、1989年にMichigan-Toronto groupの共同研究により初めて単離され、CFTRと命名された。RiordanらによりクローニングされたCFTR遺伝子は、長さ250kbの巨大な遺伝子で、1,480個のアミノ酸からなる膜貫通蛋白をコードしている(図1)。翻訳されたCFTR蛋白の構造は、2つの膜貫通部(membrane spanning domain)、2つのATP結合構造(nucleotide binding fold:NBF 1、NBF 2)、および調節ドメイン(regulatory domain)の5つの機能ドメインからなっている。1991年にはRichらの研究により、CFTR蛋白自身がCl-チャンネルであることが証明され、最近では、NBF1とNBF2がCl-チャンネルの活性化制御に異なる機能を持つことが報告されている。このCFTR遺伝子の変異がイオンチャンネルの機能異常を生じ、細胞における水・電解質輸送異常という基本病態を形成していると考えられている。CFTR遺伝子のmRNA転写は、肝臓、汗腺、肺、消化器などの分泌および非分泌上皮から検出されている。CFTR遺伝子変異のなかで過半数を占める主要な変異が、CF患者汗腺のCFTR遺伝子のクローニングにより同定された△F508変異である。この△F508変異は欧米白人におけるCF症例の約80%に認められているが、そのほかにも、400種類以上の変異が報告されており、これらの変異の発生頻度および分布は人種や地域によって異なっている(表2)。△F508変異の頻度は、北欧米諸国では70~80%と高く、南欧諸国では30~50%と低いが、東洋人ではまだ報告されていない。画像を拡大する画像を拡大する■ 症状最も早期に認められ、かつ非常に重要な症状として、胎便性イレウスによる腸閉塞症状が挙げられる。粘稠度の高い胎便が小腸を閉塞してイレウスを惹起する。生後48時間以内に腹部膨満、胆汁性嘔吐を呈し、下腹部に胎便による腫瘤を触れることがある。腸管の狭窄や閉塞がみられることもある。わが国におけるCF症例の集計では、27.9%が胎便性イレウスで発症している(表3)。膵外分泌不全症状は約80%の症例で認められ、年齢とともに症状の変化をみることもある。食欲は旺盛であるが、膵リパーゼの分泌不全による脂肪吸収不全のため多量の腐敗臭を有する脂肪便を排泄し、栄養不良による発育障害を来してくる。低蛋白血症による浮腫、ビタミンK欠乏による出血傾向、低カルシウム血症によるテタニーなどの合併症を認める場合もある。粘稠な分泌物の気管および気管支内貯留と、それに伴うブドウ球菌や緑膿菌などの感染により、多くは乳児期から気管支炎、肺炎症状を反復して認めるようになる。咳嗽、喘鳴、発熱、呼吸困難などの症状が進行性にみられ、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの閉塞機転に伴う病変が進展し慢性呼吸不全に陥り、これが主な死亡原因となる。胸郭の変形、バチ状指、チアノーゼなども認められる。CF患者では汗の電解質、とくにCl濃度が異常に高く、多量の発汗によって電解質の喪失を来し、発熱や虚脱などの“heat prostration”と呼ばれる症状を呈することが知られている。その他の症状として、閉塞性黄疸、胆汁性肝硬変、耐糖能異常、副鼻腔炎症状などをはじめとする種々の合併症状が報告されている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ CFの一般的な診断法表4にわが国のCF患者104例における確定診断時の年齢分布を示した。全症例の半数以上である64例(61.5%)が1歳までにCFと診断されており、新生児期にCFと診断された30例(28.8%)のうち29例が胎便性イレウスにて発症した症例であった。したがって、胎便性イレウス症候群では、常にCFの存在を念頭におき、メコニウム病(meconium ileus without CF)との鑑別を行っていく必要がある。CFの診断には、汗の電解質濃度の測定が必須であり、Cl濃度が60mEq/L以上であればCFが疑われる。Pilocarpine iontophoresis刺激による汗の採取法が推奨されているが、測定誤差が生じやすく、複数回測定する必要がある。当教室では米国Wescor社製の発汗刺激装置および汗採取コイルを使用し、ほとんど誤差なく簡便に汗の電解質濃度を測定している。CFを診断するうえで、膵外分泌機能不全の存在も重要であり、その診断は、脂肪便の有無、便中キモトリプシン活性の測定、PFD試験やセクレチン試験などによって行っていく。X線検査により、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの肺病変の診断を行う。画像を拡大する■ CFのマス・スクリーニング欧米において、1973年ごろよりCFの新生児マス・スクリーニングが試みられるようになり、1981年にCrossleyらが乾燥濾紙血のトリプシン濃度をradioimmunoassayにて測定して以来、CFの新生児マス・スクリーニング法として、乾燥濾紙血のトリプシン濃度を測定する方法が広く用いられるようになった。さらに1987年にはBowlingらが、より簡便で安価なトリプシノーゲン濃度を測定し、感度および特異性の点からもCFの新生児マス・スクリーニング法として非常に有用であると報告している。筆者らも、わが国におけるCFの発生率を調査する目的で東京都予防医学協会の協力を得て、CFの新生児マス・スクリーニングを行った。方法は、先天性代謝異常症の新生児マス・スクリーニング用の血液乾燥濾紙を使用し、Trypsinogen Neoscreen Enzyme Immunoassay Kitにて血中トリプシノーゲン値を測定した。結果は、3万2,000例のトリプシノーゲン値は、31.8±8.9ng/mLであり、Bowlingらが示した本測定法におけるカットオフポイントである140ng/mLを超えた症例はなかった(図2)。画像を拡大する■ CFの遺伝子診断CFの原因遺伝子が特定されたことにより、遺伝子診断への期待が高まったが、CF遺伝子の変異は人種や地域によってまちまちであり、本症の遺伝子診断は足踏み状態であると言わざるを得ない。欧米白人では、△F508変異をはじめとするいくつかの頻度の高い変異が知られており、これらの検索はCFの診断に大いに役立っている。しかしながら、わが国のCF症例における共通のCF遺伝子の変異は、まだ特定されておらず、PCR-SSCP解析と直接塩基配列解析を用いて遺伝子変異を明らかにすることが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法新生児期にみられる胎便性イレウスに対しては、ガストログラフィンによる浣腸療法などが試みられるが、多くは外科手術が必要となる。膵外分泌不全による消化吸収障害に対しては、膵酵素剤の大量投与を行う。しかし近年、膵酵素剤の大量投与による結腸の炎症性狭窄の報告も散見され、注意が必要である。胃酸により失活しない腸溶剤がより効果的である。栄養障害に対しては高蛋白、高カロリー食を与え、症例の脂肪に対する耐性に応じた脂肪摂取量を決めていく。中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、膵酵素を必要とせずに吸収されるため、カロリー補給には有用である。必須脂肪酸欠乏症に対しては、定期的な脂肪乳剤の経静脈投与が必要である。脂溶性ビタミン類の吸収障害もみられるため、十分量のビタミンを投与する。呼吸器感染に対しては、気道内分泌物の排除を目的としてpostural drainageと理学訓練(physiotherapy)を行い、吸入療法および粘液溶解薬や気管支拡張薬などの投与も併せて行っていく。感染の原因菌としてはブドウ球菌と緑膿菌が一般的であるが、検出菌の感受性テストの結果に基づいて投与する抗菌薬の種類を決定していく。1~2ヵ月ごとに定期的に入院させ、2~3剤の抗菌薬の積極的な予防投与も行われている。抗菌作用、抗炎症作用、線毛運動改善作用などを期待してマクロライド系抗菌薬の長期投与も行われている。肺機能を改善する組み換えヒトDNaseの吸入療法や気道上皮細胞のNa+の再吸収を抑制するためのアミロイド、さらに気道上皮細胞からのCl-分泌促進のためのヌクレオチド吸入療法などが、近年試みられている。4 今後の展望まずは早期に診断して、適切な治療や管理を行うことが大切であり、その意味から早期診断のための汗のCl-濃度を測定する方法の普及が望まれる。さらに遺伝子検索を行うにあたっての労力と費用の負担が軽減されることが必要と思われる。適切な治療を行うためには、今後も肺や膵臓および肝臓の機能を改善させたり、呼吸器感染症を予防する新薬の開発が望まれる。さらに遺伝子治療や肺・肝臓移植が可能となり、生存年数が欧米並みに30歳を超えるようになることを期待したい。5 主たる診療科小児科、小児外科、呼吸器内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査 一次調査の集計(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業)難病情報センター:膵嚢胞線維症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病患者支援の会(内閣府認定NPO法人、腎移植や肝移植などの情報提供)Japan Cystic Fibrosis Network:JCFN(嚢胞性線維症患者と家族の会)1)成瀬達ほか.第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査.厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「難治性膵疾患に関する調査研究」平成21年度 総括・分担研究報告書. 2010; 297-304.2)Flume PA, et al. Am J Respir Care Med. 2007; 176: 957-969.3)清水俊明ほか.小児科診療.1997; 60: 1176-1182.4)清水俊明ほか.小児科. 1987; 28: 1625-1626.5)Wainwright BJ, et al. Nature. 1985; 318: 384-385.公開履歴初回2013年08月15日更新2015年12月15日

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未治療小児患者への抗精神病薬投与、その影響は

 未治療の小児および未成年者における抗精神病薬の神経学的有害事象への影響について調べた結果、リスペリドンはジスキネジアおよびパーキンソニズムの出現リスクが高いこと、一方でクエチアピンは神経学的有害事象が少ない抗精神病薬であることが明らかにされた。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学のMargarita Garcia-Amador氏らが、平均年齢14.4歳の265例について調べ報告した。また、遅発性ジスキネジアリスク増について、低年齢、精神疾患、治療が予測因子であることも報告した。結果を踏まえて著者らは、「抗精神病薬は、未治療および未治療に類する小児集団の神経学的有害事象を増加する。慎重にモニタリングする必要がある」と述べている。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年12月号の掲載報告。 研究グループは、未治療(および未治療に類する)小児および未成年者を対象とした抗精神病薬治療の1年間の多施設共同観察研究を行い、抗精神病薬の神経学的有害事象への影響について、人口統計学的、臨床的、治療的要因を評価した。最も使用されている3種の抗精神病薬を投与した被験者サブサンプルと、抗精神病薬未治の被験者サブサンプルを用いて2つのサブ解析を実施した。総ジスキネジアスコア(DyskinesiaS)、総パーキンソンスコア(ParkinsonS)、総UKU-認知機能スコアを算出して評価。また、ロジスティック回帰法で、Schooler-Kaine基準判定後に定義された遅発性ジスキネジアのリスク因子を分析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された被験者は、DSN-4のさまざまな第1軸疾患患者265例(平均年齢14.4[SD:2.9]歳)であった。・観察期間1年において、DyskinesiaS(p<0.001)およびParkinsonS(p<0.001)の増加を認めた。・リスペリドンはクエチアピンに比べ、DyskinesiaSの増加と関連していた(p<0.001)。・クエチアピンと比べて、リスペリドン(p<0.001)、オランザピン(p=0.02)のParkinsonS増加が有意に高かった。・総UKU認識スコアは、観察期間中に低下した。・抗精神病薬未治療患者の解析においても、有意な結果が得られた。・観察期間中に15例(5.8%)がSchooler-Kane基準を満たす遅発性ジスキネジアDを呈した。・観察期間中の遅発性ジスキネジアと関連していたのは、低年齢、精神症状歴、高い累積曝露期間であった。関連医療ニュース 小児への抗精神病薬使用で推奨される血糖検査、その実施率は 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 青年期統合失調症の早期寛解にアリピプラゾールは有用か?  担当者へのご意見箱はこちら

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第1回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院腫瘍化学療法外科、同大学院がんプロフェッショナル養成基盤推進プランは、2016年1月24日(日)に、「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、地域がん診療連携拠点病院となった同院の活動の一環として行う、がんに関するさまざまなテーマの公開講座の初の試み。第1回は、がん種を問わず、がんと診断された患者・家族の生活に、明日から役立つ情報の提供を目指した内容になっている。見て、触って、理解が深まるブース展示も多数予定している。 開催概要は以下のとおり。【日時】 2016年1月24日(日) 《セミナー》13:00~16:40 《ブース展示》12:00~17:00【場所】 東京医科歯科大学 M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂 〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45【参加費】 無料(※参加申し込みは不要です。)【テーマ】 患者・家族のための「がんとの付き合い方」【予定内容】 《セミナー》 13:00~16:40 鈴木章夫記念講堂 13:00~13:10  開会挨拶  三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長) 13:10~13:50  講演1  がんと診断されたら ~受け止め方、周りの人との関わり方~  松島 英介氏 (東京医科歯科大学医学部附属病院 心身医療科 科長[教授]) 13:50~14:30  講演2  がんとともに働く ~知っておきたい仕事とお金に関する制度~  近藤 明美氏(近藤社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士) 14:30~14:40  休憩 14:40~15:00  医科歯科大のがん治療update①  頭頸部がんってなに? 頭頸部がんにならないための生活習慣  朝蔭 孝宏氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 頭頸部外科 科長[教授]) 15:00~15:20  医科歯科大のがん治療update②  医科歯科大の放射線治療:小線源治療をご存知ですか?  吉村 亮一氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 放射線治療科 科長[教授]) 15:20~15:40  医科歯科大のがん治療update③  「認定看護師」ってなに? ~私たちにご相談ください~  東京医科歯科大学医学部付属病院 認定看護師 15:40~15:50  休憩 15:50~16:30  講演3  自分らしい「逝き方」を考える  三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長) 16:30~16:40 閉会挨拶  植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科 科長[教授]) 《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ ■がんと栄養・食事(東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部) ■がんと口腔のケア(お口の楽しみ支え隊[東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科]) ■メイク・ウィッグを楽しもう!(アプラン東京義髪整形 with 山崎 多賀子氏) ■在宅治療の味方 CV ポート(株式会社メディコン) ■がんと家計(がんと暮らしを考える会) ■がん患者・家族へのピアサポート紹介(特定非営利活動法人がん患者団体支援機構) ■がん相談支援センター活用のすすめ(東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター) ■NPO法人キャンサーネットジャパン ■あご・顔・口の中のがん患者の会 えがおの会 ■若年性がん患者団体 STAND UP !!【共催】 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科 東京医科歯科大学大学院 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン【協力】 NPO法人 キャンサーネットジャパン【後援】 東京医科歯科大学医師会/東京都医師会/文京区/東京都(予定)第1回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら。(PDF)画像を拡大する

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ACS発症の糖尿病におけるリキシセナチド、心血管転帰への影響は?/NEJM

 2型糖尿病で急性冠症候群(ACS)を発症した患者に対し、GLP-1受容体作動薬リキシセナチド(商品名:リキスミア)を追加投与しても通常治療のみの場合と比べて、主要心血管イベントやその他重篤有害事象の発生率について有意な変化はみられなかった。米国ハーバード・メディカル・スクールのMarc A. Pfeffer氏らによる6,068例を対象とした多施設共同無作為化プラセボ対照試験ELIXAの結果、報告された。リキシセナチドなどGLP-1受容体作動薬は多くの国で2型糖尿病患者への血糖降下薬として承認されているが、これまで大規模な心血管アウトカム試験の報告はなかった。NEJM誌2015年12月3日号掲載の報告。49ヵ国で6,068例を対象に無作為化プラセボ対照試験 試験は2010年7月9日~13年8月2日に、49ヵ国で6,068例の患者を登録して行われた。被験者は、2型糖尿病で、無作為化前180日以内に心筋梗塞または不安定狭心症で入院歴のある患者で、通常治療に追加してリキシセナチドまたはプラセボを投与する群に無作為に割り付け、リキシセナチドのプラセボに対する非劣性(ハザード比の95%信頼区間上限値を1.3と定義)と優越性(同1.0と定義)を評価した。 主要エンドポイントは、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症による入院の複合であった。 両群の被験者特性は類似しており、リキシセナチド群(3,034例)は平均年齢59歳、65歳以上被験者比率33.1%、女性30.4%、糖尿病罹病期間9.2年、HbA1c値7.7%、BMI 30.1、喫煙者11.7%、指標ACS以前の心筋梗塞歴22.1%、無作為化時の病歴は高血圧75.6%、PCI 67.6%、心不全22.5%など。また収縮期血圧129mmHg、LDL-C値78.8mg/dL、確認されたACSイベントはSTEMIが44.5%、非STEMI 38.4%、不安定狭心症16.9%、ACSから無作為化までの期間は71.8日などの特性を有していた。主要心血管イベントの発生、プラセボに対する優越性は認められず 追跡期間は中央値25ヵ月であった。主要エンドポイントの発生は、リキシセナチド群406例(13.4%)、プラセボ群399例(13.2%)で(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.89~1.17)、リキシセナチドのプラセボに対する非劣性は確認されたが(p<0.001)、優越性は認められなかった(p=0.81)。また両群間で、追加エンドポイント指標の心不全による入院(リキシセナチド群のHR:0.96、95%CI:0.75~1.23)、全死因死亡(同:0.94、0.78~1.13)についても有意差は示されなかった。 一方で、リキシセナチドはプラセボと比べて、重篤有害事象の発生は高率ではなかった(20.6% vs.22.1%)。また重症低血糖、膵炎、膵腫瘍、アレルギー反応の発生率もプラセボと変わらなかった。

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帯状疱疹ワクチン、接種後3~11年で効果が低下

 帯状疱疹ワクチンの予防効果は接種後3~11年で減弱することが、米国・チャールストン・スクール・オブ・ファーマシー大学のStephen J. Cook氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかにされた。著者は、「この結果は、帯状疱疹ワクチンの再接種の必要性について問題を提起するものである」と述べ、「臨床医は、患者に帯状疱疹ワクチンを接種するときは予防効果の減弱を考慮しなければならない」と注意したうえで、「水痘ワクチンが帯状疱疹の発症率に影響するか、また、帯状疱疹ワクチンの有効性に影響するかどうか、さらなる研究が必要であろう」とまとめている。Clinical Therapeutics誌2015年11月号(オンライン版2015年10月23日号)の掲載報告。 2006年、帯状疱疹の予防に弱毒化帯状疱疹ワクチンが承認され、初期の第III相試験では、試験期間中はワクチンの効果が持続することが認められた。しかし、長期的な予防効果の検討には追加研究が必要であったことから、研究グループは、ワクチンの有効性の変化を評価している研究に重点を置いたレビューを行った。 帯状疱疹ワクチンの有効性を検証した無作為化試験で2004年以降2015年までに発表された論文を、MEDLINE、EMBASE、CENTRALおよびCINAHLのデータベースにて検索した。 主な結果は以下のとおり。・6件の研究が、本レビューに組み込まれた。・2件の第III相試験において、帯状疱疹ワクチンは帯状疱疹のリスクを51.3%~72.4%低下させた。・帯状疱疹ワクチンはプラセボと比較して、疾病負荷(61.1%)、帯状疱疹後神経痛の発症率(66.5%)、疾患による機能障害(66.2%)および健康関連QOLへの疾患の影響(55%)を低下させ、有効であることが示された。・サーベイランス研究において、帯状疱疹の発症は追跡期間3.3~7.8年で相対低下率39.6%、4.7~11.6年で相対低下率21.1%であり、ワクチンの予防効果は減弱することが示されている。

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