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Vol. 4 No. 2 アスピリンの評価とコントロバーシー(1) 循環器内科の立場から

上妻 謙 氏帝京大学医学部内科学講座・循環器内科はじめに虚血性心疾患に対する治療は抗血小板療法の進歩とカテーテルインターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の普及によって低侵襲かつ高い成功率で治療が可能となった。抗血小板療法ではアスピリンを常に標準薬として投与し、そこに血小板表面のP2Y12受容体のADPによる凝集を抑制するチエノピリジンなどの薬剤を追加する抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)がステント血栓症予防とハイリスク患者の2次予防のために確立された治療となった。しかしDAPTによる出血合併症の増加が問題となり、近年P2Y12受容体拮抗薬に第3世代と呼ばれる新しい薬剤が登場して、より早期に有効性を発揮できるようになってきたことにより、アスピリンの役割、意義に見直しの気運がでてきた。アスピリンの抗血小板作用アスピリン(アセチルサリチル酸)は、何世紀にもわたって医学史上、代表的な薬物として使用されており、アテローム性血栓症の治療の主要な役割を担ってきた。アスピリンが合成できるようになって120年近くなるが、当初は消炎鎮痛薬として捉えられていた。抗血小板薬として認知されるようになったのは50年ほど前からで、日本で虚血性心疾患や脳梗塞予防に対する保険適応が認められたのは2000年と比較的最近のことである。アスピリンは、cyclooxygenase(COX)にあるsingle serine residue(Ser529)のアセチル化によって、アラキドン酸の代謝を阻害する。血小板が生きている間中、アスピリンはこのCOXを不可逆的に阻害する。また血小板の活性因子であるトロンボキサンA2(TXA2)の産生が減少する結果、COXを阻害することができる。もともとアスピリンは、用量依存性でTXA2を減少させ、一度COXがアスピリンによってアセチル化された場合、巨核球によって新しい血小板が産生されるまで、TXA2は結合できない。COXは2つの異なるアイソフォームが存在し、COX-1は血小板、マクロファージ、そして血管内皮細胞に表れる構成型であり、もう一方のCOX-2は、炎症性刺激を求める誘導型である。アスピリンは、基本的には不可逆的なCOX-1阻害薬であり、高用量であればCOX-2阻害をすることができる。このため、アスピリンは大量投与すると抗血小板作用が減弱する可能性が知られており、アスピリンジレンマとも呼ばれ、1日100mgの投与で十分である。アスピリンの役割と問題点アスピリンは急性冠症候群をはじめとする虚血性心疾患の2次予防に対して、有効性が確立された薬物である。ISIS-2とRISC研究の両方の研究において、急性冠症候群発症後にアスピリン内服を継続していると、心筋梗塞の再発率を軽減させるという結果が示されている1, 2)。ISIS-2研究では、アスピリン160mg/日で内服治療を行う群と対照群とを無作為化して、5週間両群を比較検討したところ、血管イベントによる死亡率は減少したと報告された(9.4% vs. 11.8%; 95% CI 15-30; p<0.00001)。アスピリンの最大の問題点は出血合併症である。Antithrombotic Trialists' Collaborationは、アテローム性血栓症のハイリスク患者において、心筋梗塞、脳卒中、そして死亡を予防するための抗血小板療法を研究した、287の無作為化研究のメタ解析である3)。脳出血の合併は787人に起こり、そのうちの20%は致死的な出血であった。対照群と比較してアスピリンを内服していた患者は、脳出血発生のリスクが60%増加していたと報告している。このAntithrombotic Trialists' Collaboration研究において、重大な血管イベントを予防することに関して、アスピリンの1日内服用量、75~150、160~325、500~1,000mgの3群間にて、有意な差を示さなかった。アスピリンによる消化管出血および脳内出血発症のリスクを解析している、28の無作為化研究を用いたメタ解析では、対照群に割り振られた患者の消化管出血発生率は1.42%であったが、アスピリンを内服していた患者の消化管出血発生率は2.47%であることがわかった(OR 1.68; 95% CI 1.51-1.88)4)。また、心血管もしくは脳血管イベントの2次予防に対する6つの無作為化研究では、1日325mg以下のアスピリンを内服する患者は、対照群に比べると消化管出血の発症を2.5倍程度増加することが明らかにされた(95% CI 1.4-4.7; p= 0.001)5)。この解析は、アスピリンで治療を行った場合、67人の内1人の割合で死亡を防げた一方で、100人のうち1人の割合で非致死性の消化管出血が起こるということを示した。最近MAGIC試験の結果が発表され、日本人のデータとして低用量アスピリン内服中の患者の内視鏡所見で消化管障害を合併する頻度を明らかにしている6)。この報告では直径5mm以上の消化性潰瘍が6.5%に存在し、びらんは29.2%の頻度で存在した。もともとアスピリンをはじめとした非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)は上部消化管粘膜の障害を来す直接の作用があり、出血の元になる病変がアスピリンによって作られ、そこに他の抗血小板薬や抗凝固薬を併用することによって、臨床的に問題となる出血に発展するものと思われる。そして、消化管出血は心血管イベントの上昇につながることが示されている7)。そのため、海外のガイドラインでは低用量アスピリンに抗血小板薬や抗凝固薬を併用する時には、プロトンポンプ阻害薬を併用することを推奨するものが多い。DAPTにおけるアスピリンの役割現在、冠動脈ステント植え込み後の抗血小板療法として標準となっているのがアスピリンとチエノピリジン(クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン)の2剤併用療法、すなわちDAPTである。日本ではほとんどのACSがPCIで治療されているため、ステント治療のDAPTと同義になっている傾向がある。もともとステント血栓症の予防のために始まったDAPTは、アスピリンにワルファリンを併用していたものを、ワルファリンからチクロピジンに変更したことで始まった。特にチクロピジンは作用が十分に発現するまで1週間程度かかり、チクロピジン単剤という発想はまったくなかった。クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジンはチエノピリジン系薬剤といわれ、血小板表面上にあるP2Y12受容体に結合し、ADPによる血小板凝集を抑制し、またcAMP濃度を上昇させることによる血小板凝集抑制作用をもち、強力な抗血小板作用を有する薬剤である。プラスグレルやチカグレロルのような新しい抗血小板薬の特徴は作用発現の早さと効果の個人差が少ないことである。今まではクロピドグレルの効果発現の早さに個人差があることから、効果発現の早いアスピリンの併用は、その早期作用不足の補完の意味があったが、新規抗血小板薬ではその必要がなくなってきている可能性がある。1. ステント血栓症予防のためのDAPT最近の大きな話題の1つが、「DAPTをいつまでつづけるか」というDAPT期間の問題である。ステント血栓症予防のためのDAPT投与期間に対する考えは、ステントの進歩に伴い大きく変わってきている。現在標準のDAPT期間は、ベアメタルステント(BMS)留置後は最低30日間、理想的には12か月間が推奨されており、薬剤溶出性ステント(DES)留置後は12か月となっている。BMSでは、臨床使用され始めた頃から30日以内の早期のステント血栓症が問題であった。これがDESに関しては、30日以降の遅発性ステント血栓症、さらに1年以降の超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis:VLST)がクローズアップされ、2006年BASKET late試験では、6か月以降の心筋梗塞と死亡のイベントはDESのほうがBMSよりも高いと発表され、大きな問題点として取りざたされるようになった。2006年秋のヨーロッパ心臓病学会(ESC)においてその話題は一気に盛り上がり、その後追試もなされ、第1世代のDESでは5年経過しても年間0.2~0.5%程度のVLST発生がレポートされており8, 9)、一時は世界中で使用を控える動きがみられるようになった。以上の背景から、DES植え込み後のDAPT期間は無期限に延長される傾向があった。しかし、その後上市され現在使用されているDESは第2世代と呼ばれ、VLSTの問題が大きく改善されている。DAPTに関する臨床試験が多数行われており、3か月や6か月へのDAPT期間短縮が試みられるようになった。これまでに出版された6つの論文では、いずれも延長されたDAPTにイベント抑制のメリットが認められず、出血が増加するという結果となっており、6か月以上のDAPTに関してはデメリットがメリットを上回るとされている10-13)。したがって、最近改訂された2014年のESCのガイドラインでも待機的PCIのDAPTはDESでも6か月までに短縮された12)。しかし、2014年11月に発表されたDAPT試験の結果は、これまでの結果を否定するものとなった。DAPT試験は、DES植え込み後12か月経過した症例をランダマイズし、DAPTを30か月まで継続する群とアスピリン単剤とする群とに分けて検討した、FDA主導の産官学共同の臨床試験である。その結果、DAPTの継続によってステント血栓症、心筋梗塞の発症率は有意に抑制されることが示された。しかし重篤な出血はDAPT継続で有意に多く、死亡率もDAPT継続で高い傾向が示された。特にステント血栓症が少ないといわれるeverolimus-eluting stentが半数近くを占めており、現代のDES植え込み患者の実態で行われた試験のため、DAPTの継続が一定の意味をもつことが初めて示されたといえる。残された疑問は、DAPT終了後に残す薬剤として選択されているのが常にアスピリンであり、それがP2Y12受容体拮抗薬であったらどうかということである。この点について検討する臨床試験がGlobal Leadersで、1か月のDAPT後にP2Y12受容体拮抗薬(チカグレロル)を単剤で残す治療法と、12か月DAPT後にアスピリン単剤を残す従来療法とを比較する無作為化試験で、出血合併症と関連しやすいにもかかわらず、作用がP2Y12受容体拮抗薬よりも弱いというアスピリンの問題点について、解決策を示してくれる可能性がある。2. 急性冠症候群等アテローム血栓症2次予防としての抗血小板療法ステント血栓症予防で始まったDAPTであるが、ステント使用にかかわらず、抗血小板薬の内服治療でACS患者の心血管イベント抑制が得られることが多くの臨床試験で示され、DAPTを12か月間行うことがACS治療の標準となっている14)。不安定プラークを発症の基盤とするアテローム血栓症は同一患者に複数存在することが多く、同時期に心血管イベントを起こすことも多い。そのアテローム血栓症が症候性のACSや脳卒中として発症することを予防するために、強力な抗血小板療法が行われる。PCI施行患者の冠動脈3枝すべてをイメージングで解析し、その後3年間フォローしたPROSPECT試験では、PCI施行病変以外の病変に伴う心血管イベントは、治療病変と同等の頻度で起こることが示されている15)。さらに、そのイベントを起こす病変はもともと有意な狭窄病変であったものと、狭窄が存在しなかったところから急速に進展して発症したものがほぼ同頻度であることも示されている。したがって、一度アテローム血栓症によるイベントを発症した患者は、プラークが安定化するまで2次予防を厳重に行わなければならないわけである。末梢動脈疾患など、多臓器に病変がおよぶpolyvascular diseaseはアテローム血栓症発症のハイリスクであることが示されており、こういったリスクの高い疾患では、心血管イベントによる死亡率が末梢動脈疾患の存在しない患者と比較して1.76倍、心筋梗塞発症率が2.08倍という報告もあり16)、2次予防のための抗血小板薬としてアスピリン単剤では効果不十分な可能性があることがメタ解析によって指摘されている17)。そして、アスピリンよりもチエノピリジン系を中心としたアスピリン以外の抗血小板薬のほうが心血管イベントの抑制に有効であるというメタ解析も公表されている18)。20年前の臨床試験ではあるが、アスピリンとクロピドグレルを比較する二重盲検無作為化比較試験であるCAPRIE試験のサブ解析でも、末梢動脈疾患で組み入れられた患者では、アスピリンに比べクロピドグレルは心筋梗塞発症率を37%低減させたと発表されている19)。したがって末梢動脈疾患やpolyvascular diseaseなどのハイリスク患者については、アスピリンよりP2Y12受容体拮抗薬などのより強力な抗血小板薬の投与が推奨されてきている。DAPTとアスピリン単剤のどちらがよいかについては、CHARISMA試験が公表されている。2次予防患者については心筋梗塞発症などのリスク低下が示されているが、重篤でない出血合併症の増加が指摘されている20)。ここでもアスピリンが本当に必要なのかという点については、すべてのガイドラインでアスピリン投与が標準となっており、当初からのアスピリンoffについては今まで検討されたことがない。おわりに今まで述べてきたように、ゴールデンスタンダードとして常に投与が基本とされてきたアスピリンの有効性、安全性についてのエビデンスレベルは、近年急速に低下してきており、効果が確実で早いP2Y12受容体拮抗薬の普及もあり、治療の当初からP2Y12受容体拮抗薬単剤投与という選択肢を考慮していく必要が出てきた。今後のエビデンスの集積が望まれるが、アスピリンは安価であり、費用対効果も検討していく必要がある。文献1)Randomised trial of intravenous streptokinase, oral aspirin, both, or neither among 17,187 cases of suspected acute myocardial infarction: ISIS-2. ISIS-2 (Second International Study of Infarct Survival)Collaborative Group. Lancet 1988; 2: 349-360.2)Risk of myocardial infarction and death during treatment with low dose aspirin and intravenous heparin in men with unstable coronary artery disease. The RISC Group. Lancet 1990; 336: 827-830.3)Antithrombotic Trialists' Collaboration. Collaborative meta-analysis of randomised trials of antiplatelet therapy for prevention of death, myocardial infarction, and stroke in high risk patients. BMJ 2002; 324: 71-86.4)Derry S, Loke YK. Risk of gastrointestinal haemorrhage with long term use of aspirin: metaanalysis. BMJ 2000; 321: 1183-1187.5)Weisman SM, Graham DY. Evaluation of the benefits and risks of low-dose aspirin in the secondary prevention of cardiovascular and cerebrovascular events. Arch Intern Med 2002; 162: 2197-2202.6)Uemura N et al. Risk factor profiles, drug usage, and prevalence of aspirin-associated gastroduodenal injuries among high-risk cardiovascular Japanese patients: the results from the MAGIC study. J Gastroenterol 2014; 49: 814-824.7)Nikolsky E et al. Gastrointestinal bleeding in patients with acute coronary syndromes: incidence, predictors, and clinical implications: analysis from the ACUITY (Acute Catheterization and Urgent Intervention Triage Strategy) trial. J Am Coll Cardiol 2009; 54: 1293-1302.8)Daemen J et al. Early and late coronary stent thrombosis of sirolimus-eluting and paclitaxel-eluting stents in routine clinical practice: data from a large two-institutional cohort study. Lancet 2007; 369: 667-678.9)Kimura T et al. Very late stent thrombosis and late target lesion revascularization after sirolimus-eluting stent implantation: five-year outcome of the j-Cypher Registry. Circulation 2012; 125: 584-591.10)Valgimigli M et al. Short- versus long-term duration of dual-antiplatelet therapy after coronary stenting: a randomized multicenter trial. Circulation 2012; 125: 2015-2026.11)Park SJ et al. Duration of dual antiplatelet therapy after implantation of drug-eluting stents. N Engl J Med 2010; 362: 1374-1382.12)Windecker S et al. 2014 ESC/EACTS Guidelines on myocardial revascularization: The Task Force on Myocardial Revascularization of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS)Developed with the special contribution of the European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI). Eur Heart J 2014; 35: 2541-2619.13)Cassese S et al. Clinical impact of extended dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary interventions in the drug-eluting stent era: a meta-analysis of randomized trials. Eur Heart J 2012; 33: 3078-3087.14)Anderson JL et al. 2012 ACCF/AHA focused update incorporated into the ACCF/AHA 2007 guidelines for the management of patients with unstable angina/non-ST-elevation myocardial infarction: a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2013; 127: e663-828.15)Stone GW et al. A prospective natural-history study of coronary atherosclerosis. N Engl J Med 2011; 364: 226-235.16)Diehm C et al. Mortality and vascular morbidity in older adults with asymptomatic versus symptomatic peripheral artery disease. Circulation 2009; 120: 2053-2061.17)Berger JS et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease: a meta-analysis of randomized trials. JAMA 2009; 301: 1909-1919.18)Wong PF et al. Antiplatelet agents for intermittent claudication. Cochrane Database Syst Rev 2011; CD001272.19)Cannon CP et al. Effectiveness of clopidogrel versus aspirin in preventing acute myocardial infarction in patients with symptomatic atherothrombosis (CAPRIE trial). Am J Cardiol 2002; 90: 760-762.20)Bhatt DL et al. Patients with prior myocardial infarction, stroke, or symptomatic peripheral arterial disease in the CHARISMA trial. J Am Coll Cardiol 2007; 49: 1982-1988.

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SSRIなどで効果不十分なうつ病患者、新規抗うつ薬切り替えを検証

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の効果が不十分な大うつ病性障害(MDD)患者に対し、vortioxetineは他の抗うつ薬に比べて高い寛解率を示し、忍容性も良好であることを、フランス・Lundbeck SASのMelanie Brignonea氏らが検討の結果、報告した。結果を踏まえて著者らは、「vortioxetineが代替薬として妥当であることが示唆された」とまとめている。Current Medical Research and Opinion誌2016年2月号掲載の報告。 検討は、SSRIあるいはSNRIに対する効果不十分のMDD患者において、種々の抗うつ薬単剤と比較したvortioxetineの相対的有効性および忍容性の評価を目的とした。 初回治療の効果が不十分であったMDD患者を対象とした単剤治療の研究を系統的に検索。SSRI、SNRIおよびその他の抗うつ薬を治療薬とした研究を包含した。3段階のスクリーニング/データ抽出過程を経て、批判的吟味が行われた研究を特定した。システマティック文献レビューで示された結果の間接的な治療比較(ITC)をBucher's methodを用いて調整し、寛解率および有害事象(AE)による脱落率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は27件であった。National Institute of Health および Care Excellence のチェックリストで「質が高い」とされた研究も数件含まれていた。・3件の研究が、vortioxetineとagomelatine、セルトラリン、ベンラファキシンXR、bupropion SRを定量的評価により比較しており、エビデンスの構築に寄与していた。・vortioxetineは、agomelatineに比べて統計学的に有意な高い寛解率を示した(リスク差[RD]:-11.0%、95%CI:-19.4~-2.6)。また、vortioxetineはセルトラリン(同:-14.4%、-29.9~1.1)、ベンラファキシン(-7.20%、-24.3~9.9)、bupropion(-10.70%、-27.8~6.4)に比べ、寛解率が数値として高かった。・vortioxetineにおけるAEによる脱落率は、セルトラリン(RD:12.1%、95%CI:3.1~21.1)、ベンラファキシンXR(同:12.3%、0.8~23.8)、bupropion SR(18.3%、6.4~30.1)に比べて統計学的有意に低かった。・SSRI/SNRIの効果が不十分なMDD患者における単剤治療を評価した、質の高い切り替え試験が数件あった。間接的な比較により、vortioxetineへの切り替えが、他の抗うつ薬に比べて寛解率が高いことがわかった。vortioxetineの忍容性は良好で、他の抗うつ薬に比べてAEによる脱落率が低い。vortioxetineは、前治療のSSRIあるいはSNRIの効果不十分例に対する妥当な代替治療薬といえる。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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抗ヒトTリンパ球免疫グロブリン追加でGVHDが半減/NEJM

 急性白血病患者に対する同種末梢血幹細胞移植において、従来の骨髄破壊的前処置レジメンに抗ヒトTリンパ球免疫グロブリン(ATG)を加えると、2年時の慢性移植片対宿主病(GVHD)の発症率が半減することが、ドイツのハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのNicolaus Kroger氏らの検討で示された。慢性GVHDは、同種造血幹細胞移植後の晩期合併症や死亡の主な原因で、QOLを損なう。この20年間で、急性GVHDの予防には改善がみられるが、慢性GVHDの予防は改善されていない。ATGは唯一、非血縁ドナー由来の幹細胞移植時に使用すると慢性GVHDの発症率を低下させるとの報告があり、HLA一致ドナーからの移植に関する小規模の後ろ向き試験で抑制効果が確認されている。NEJM誌2016年1月7日号掲載の報告。AML、ALL患者でのATG追加の有用性を無作為化試験で評価 研究グループは、急性白血病患者に対する骨髄破壊的前処置レジメンにATGを併用すると、HLA一致同胞からの同種末梢血幹細胞移植後2年時の慢性GVHDが大幅に減少するとの仮説を立て、これを検証するための多施設共同非盲検無作為化第III相試験を行った(Neovii Biotech社および欧州血液骨髄移植学会の助成による)。 対象は、年齢18~65歳、初回または2回目の完全寛解が得られた急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)で、同種造血幹細胞移植の適応と判定された患者であった。同胞ドナーは、血清学的にHLA-AとHLA-Bが適合し、高解像度DNAマッチング法でHLA-DRB1とHLA-DQB1のアレルが適合するものとした。 被験者は、HLA一致同胞ドナーからの同種末梢血幹細胞移植前の3日間、骨髄破壊的レジメン(シクロホスファミド+全身照射またはブスルファン±エトポシド)にATGを併用する群または併用しない群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、移植後2年時の慢性GVHDの累積発症率とした(改訂シアトル基準およびNIH基準で判定)。副次評価項目は、2年時の生着、急性GVHD、非再発死亡、無再発生存、全生存であった。 2006年12月~12年2月に、27施設に155例が登録され、ATG群に83例、非ATG群には72例が割り付けられた。ベースラインの両群の背景因子は全般にバランスが取れていたが、年齢中央値がATG群39.0歳、非ATG群43.5歳(p=0.04)と有意な差が認められた。2年時慢性GVHD:32.2 vs.68.7%、無再発生存、全生存は同等 フォローアップ期間中央値24ヵ月の時点で、慢性GVHDの累積発生率はATG投与群が32.2%(95%信頼区間[CI]:22.1~46.7)と、非投与群の68.7%(58.4~80.7)に比べ有意に低かった(p<0.001)。 2年無再発生存率は両群でほぼ同程度であり(ATG投与群:59.4%[95%CI:47.8~69.2] vs.非投与群:64.6%[50.9~75.3]、p=0.21)、全生存率にも大きな差はなかった(74.1%[62.7~82.5] vs.77.9%[66.1~86.1]、p=0.46)。 生着不全は非投与群の1例(1.4%)に認められた。移植後100日以内の急性GVHDの発症率はATG投与群が25.3%、非投与群は34.7%(p=0.20)で、そのうちGrade2~4はそれぞれ10.8%、18.1%(p=0.13)、Grade3/4は2.4%、8.3%(p=0.10)であり、いずれも有意な差はみられなかった。 感染性合併症は、ATG投与群が57.8%、非投与群は54.2%にみられ、有意な差はなかった(p=0.65)。サイトメガロウイルスの再活性化(21.7 vs.25.0%、p=0.63)、エプスタイン・バール・ウイルスの再活性化(3.6 vs.1.4%、p=0.38)、真菌感染(3.6 vs.4.2%、p=0.86)にも有意差はみられなかった。移植後リンパ増殖性疾患は両群とも認めなかった。 2年時の非再発死亡率は、ATG投与群が14.0%、非投与群は12.0%であった(p=0.60)。有害事象(Bearmanスコア)の発生率は、消化管毒性(28.9 vs.52.8%、p=0.03)を除き両群間に有意な差はみられず、重症度にも差はなかった。 2年時の慢性GVHDの発現のない生存および無再発生存の複合エンドポイントの発生率は、ATG投与群が非投与群よりも有意に良好だった(36.6 vs.16.8%、p=0.005)。 著者は、「骨髄破壊的前処置レジメンへのATGの追加により、慢性GVHDの発生率が有意に抑制された。無再発生存率と全生存率はほぼ同じであったが、慢性GVHDのない生存および無再発生存の複合エンドポイントはATGを追加した患者が優れた」とまとめている。

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ウオノメ治療の長期効果、サリチル酸絆創膏 vs.デブリードメント

 鶏眼(ウオノメ)治療について、サリチル酸絆創膏は外科的デブリードメント(以下、デブリ)と比較して12ヵ月間の追跡期間中、消失率は高率だったものの、QOLや疼痛障害などについて改善は認められたがデブリ群と有意差はみられなかったことなどが示された。英国・ハダースフィールド大学のJohn Stephenson氏らが無作為化試験の結果、報告した。Journal of Dermatology誌オンライン版2015年12月15日号の掲載報告。 試験はイングランド北部で2009年9月~11年10月に、複数の鶏眼を有する患者201例(324個)を対象に行われた。消失までの期間を調べ、サリチル酸絆創膏による長期的効果を評価することが目的であった。 被験者は、年齢中央値59.3歳、女性が58.2%、鶏眼タイプは足底が77.6%、ベースラインでのサイズは3.69mmなどだった。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月の追跡期間中、消失率はデブリ(対照)群よりも絆創膏群で実質的に高率であったが、治療と再発までの期間との有意な関連はみられなかった。・不備データや患者特性を反映したパラメトリック生存分析で、治療と消失までの期間に有意な関連はみられなかった(ハザード比[HR]:1.189、95%信頼区間[CI]:0.780~1.813、p=0.422)。・消失までの期間中央値は、絆創膏群10.0ヵ月、デブリ群13.4ヵ月であった。・鶏眼タイプで調整後、治療と消失までの期間に有意な関連がみられ、足底鶏眼よりも足背(足の甲)/指間(ID)鶏眼で関連が有意であった(HR:1.670、95%CI:1.061~2.630、p=0.027)。・消失までの期間は、足背/ID鶏眼は5.9ヵ月、足底鶏眼は14.9ヵ月であった。・同様に多変量モデルを用いて、副次評価項目として、QOLや足関連の障害について評価したが(EQ-5D質問票やマンチェスター足の疼痛・障害指標[MFPDI]を使用)、いずれも、試験期間の評価ポイントにおいて、治療との有意な関連はみられなかった。・しかしながらQOLおよびMFPDIスコアの傾向分析の結果、ベースラインから3ヵ月時点までにかなりの改善がもたらされていた。続く3~12ヵ月にスコアが減少していた。

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筋萎縮性側索硬化症〔ALS : amyotrophic lateral sclerosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、中年期以降に発症する上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者が侵される疾患である。構音・嚥下筋、呼吸筋を含む全身の筋萎縮と脱力が進行性に認められ、呼吸補助を行わなければ平均2~4年で死に至る神経難病の1つである。従来ALSは運動神経系に限局した疾患とされ、主に日本から報告されてきた認知症を伴ったALS(ALS with dementia:ALS-D)は特殊な亜型と考えられていた。ところが近年、前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration:FTLD)と病理所見、原因となる遺伝素因についての共通性が明らかとなり、ALSとFTLDを一連の疾患スペクトラムで捉えようとする考えが広まっている。■ 疫学2009年度の調査では、わが国におけるALSの発症率は、人口10万人当たり2.1~2.3人、有病率は10万人当たり9.7~10.1人とされ、ほぼ全世界で同じような数字を示し、人種差もないとされている。性別では、男性が女性に比して約1.3~1.5倍多く発症する。また、発症率は40歳代より上昇し、ピークは60~70歳代である。■ 病因ALSの約5~10%に家族歴が認められ、その多くが常染色体顕性(優性)遺伝を示す。常染色体顕性遺伝を示す家系の約20~30%は活性酸素を消去する酵素であるCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)の遺伝子異常が原因と報告されている。この変異したSOD1遺伝子を強制発現したtransgenic mouseはALSと類似した神経症状を示すことから、変異SOD1が運動ニューロンの障害に働くことは間違いないが、その機序については明らかとなってはいない。SOD1以外の遺伝子座や原因遺伝子も次々に同定されてきているが、ALSの大多数を占める孤発例の原因についてはいまだ不明という状況である。病理で認められるユビキチン陽性封入体の本体としてTDP-43(transactive response DNA-binding protein 43 kDa)が同定され、病原蛋白質と想定されている。■ 症状上位と下位運動ニューロンが障害されるが、下記の症状がそれぞれの程度に応じて障害部位に認められる(表)。画像を拡大する上位運動ニューロンの障害巧緻運動の障害痙縮深部腱反射の亢進病的反射陽性(ホフマン反射、バビンスキー反射など)下位運動ニューロンの障害筋力低下筋萎縮筋緊張の低下筋線維束性収縮深部腱反射の減弱ないし消失また、前述したようにALSにおける認知機能障害が注目されるようになり、約半数の症例で何らかの障害を示すとされている。その特徴として、記銘力や見当識の障害は目立たず、行動異常、性格変化や意欲の低下、言語機能の低下として表れることが報告されている。ALSでは、眼球運動障害、膀胱直腸障害、感覚障害、褥創を来すことは少なく、陰性4徴候と呼ばれている。■ 分類上位・下位運動ニューロン徴候が四肢からみられ、体幹・脳神経領域に進展していく脊髄発症型(古典型)と、病初期に脳神経領域が強く障害され、四肢にはあまり目立たない球麻痺型(進行性球麻痺型)が病型の中核をなす。また、病初期には上位運動ニューロン徴候のみ、あるいは下位運動ニューロン徴候のみを示して進行性に悪化する症例があり、前者は原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)、後者は脊髄性進行性筋萎縮症(spinal progressive muscular atrophy:SPMA)あるいは単に進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)と診断されてきた。これらの疾患が独立した一疾患単位であるのか、あるいはALSの亜型と考えるべきなのか議論がいまだにあり、結論は得られていない。■ 予後ALSの経過には、個々人での差異もかなりみられることに留意する必要があるが、一般的には、発症から死亡もしくは呼吸補助が必要となるまで平均2~4年とされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ALSの診断は、構音障害や嚥下障害などの球麻痺症状を含む全身性、進行性の筋萎縮や脱力がみられるか、または筋電図検査において、広範な部位に脱神経所見が認められることにより診断される。画像検査においては後述するような所見が認められることもあるが、基本的には筋力低下や筋萎縮の原因となりうる脳幹や脊髄での圧迫、腫瘍病変などを除外する目的で行われる。なお、ALSの診断基準は診断感度を上げるための改定が行われており、改定El Escorial診断基準、Updated Awaji診断基準、Gold Coast診断基準などが出されている。表に示した診断基準は、改定El Escorial診断基準を取り入れながら,わが国において従来用いられてきた厚生労働省特定疾患神経変性疾患調査研究班の診断基準を改訂し、2003年度に神経変性疾患に関する研究班により作成されたものであり、指定難病の申請をする際に利用されている。1)針筋電図検査神経原性の場合、運動単位電位(muscle unit potential:MUP)の種類が減少し、高振幅、多相性のものが目立ち、干渉波が減少する。脱神経があると、安静時の検査で線維性収縮電位、陽性鋭波、線維束性収縮電位が認められる。脳幹領域、胸髄領域では各1筋、頸髄および腰仙髄領域では神経根支配と末梢神経支配の異なる2筋について検索を行うようにする。2)頭部MRIALSのMRI所見としては、T2強調画像における皮質脊髄路に沿った高信号域、中心溝を縁取るように線状の低信号領域などが報告されている。前者は皮質脊髄路における神経線維の変性・脱落、マクロファージの出現、グリオーシスによるものとされ、後者は鉄の沈着によるものと推定されている。いずれの所見もALSに特異的にみられるわけではなく、健常者でも同様の所見が認められるとの報告もある。現時点でALSに特異的なMRI所見はなく、筋萎縮や脱力を呈する他疾患を除外する目的で行われる。3)鑑別診断鑑別すべき疾患は先述の表の鑑別診断を参照。その他に鑑別すべき疾患として、ポリオ後症候群、重症筋無力症なども挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法ALSでは治療に関する高いエビデンスは少なく、その薬物療法に関して、長らくグルタミン酸拮抗剤であるリルゾール(商品名:リルテック)が唯一という状況であった。しかし、2015年6月、フリーラジカル消去剤として脳梗塞の治療薬として使用されていたエダラボン(同:ラジカット)が、ALSの進行を遅らせることが証明され、治療薬として認可された。当初点滴薬のみであったが、2022年12月に経口薬の製造販売が承認された。リルゾールは、生存期間を平均3ヵ月延長するとされる。ALSと診断された方に治療薬として処方することが勧められるが、同時に、投与する前に患者には薬の効果は顕著ではないこと、肝機能障害、貧血、その他の副作用が生じる可能性があることを充分説明した上で同意を得て使用する。なお、努力性肺活量(%FVC)が60%を切っている患者への投与は、効果が期待できないとの理由で避けるべきである。一般的には、1回50mgを朝、夕食前に内服する。エダラボンのALSに関する進行抑制効果は、発症後2年以内で、呼吸機能が保たれている患者群において確認された。一方、ALS重症度分類4度以上、%FVCが70%未満に低下している症例での有効性は確認されていない。実際の臨床では、病期・状態にかかわらず、すべてのALS患者に投与可能とされているが、投与はALSの治療経験を持つ医師と連携しながら実施する。経口剤は、1日1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に投与する。投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、第1クールは14日間連続投与した後、14日間休薬する。第2クール以降は、14日間のうち10日間投与する投与期の後、14日間休薬し、以後同様のサイクルで投与を続ける。家族性ALSのうちで最も頻度の高いSOD1遺伝子変異を有する症例に対して、蛋白合成を抑制するアンチセンスヌクレオチドである「トフェルセン」の髄腔内投与が米国および欧州において認可された。ALSの機能評価スケールでの有意な改善は認められなかったが、髄液中のSOD1蛋白質濃度が低下し、血漿中のNfL濃度の低下が認められた。対症療法として、痙縮に対する理学療法、抗痙縮薬の投与などを行う。流涎に対して、抗コリン作用を有する三環系抗うつ薬などの効果が報告されている。ALS患者においてしばしば認められる強制泣き・笑いなどの情動調節障害に対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬で効果があるとされ、試みる価値がある。米国ではデキストロメトルファンとキニジンの合剤が承認されているが、わが国では未承認である。疼痛や精神不安、不眠に対しては、呼吸抑制などのリスクがあることを患者および家族に説明した上で、麻薬を含む鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬などの積極的薬物治療を行うべきである。■ 呼吸管理ALSは、呼吸筋を含む全身筋の脱力を来す疾患で、呼吸補助を行わなければ呼吸不全がその死因となることが多い。すなわち適切な呼吸補助と全身管理を行えば長期の生存も期待できるが、その際問題になることとして、一度装着した呼吸器を外すことは現在のわが国では難しいこと、呼吸器を装着した患者が長期入院できる医療施設が限られるため、在宅での療養を選択せざるを得ず、患者家族の負担が過大となる点が挙げられる。呼吸補助に関しても、まずマスクを用いた非侵襲的な呼吸補助(non-invasive ventilation:NIV)を選択し、その後気管切開による侵襲的な呼吸補助(tracheotomy (and)invasive ventilation:TIV)へと変更する方法、最初から侵襲的呼吸補助を行うなどの選択が考えられる。呼吸補助が検討されるべき時期として目安となる基準を提示しているガイドラインもあるが、遅くとも呼吸障害に関連した臨床症状(呼吸苦、朝の頭痛、小声など)が認められた段階で開始するようにする。以前は%FVCが65%未満での導入が検討されていたが、より早期に導入することで生存期間が延長するとの報告もある。■ 栄養管理ALSでは、嚥下障害の進行により、栄養不良、脱水、誤飲などの危険にもさらされる。栄養状態が不良だと予後不良となることが報告されており、適切な栄養管理を行う必要がある。現在、経皮的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)が比較的安全に施行できることから、球麻痺症状のある患者では、窒息、誤飲の危険を回避するために早めにPEGを施行しておくことが勧められる。■ リハビリテーション比較的急速に進行する筋萎縮・脱力に対して、筋力増強あるいは維持を目的とした運動療法が有効か否かという疑問がある。現在でもこれに対する確かな答えはないが、定期的な軽い運動療法を施した群では、とくに運動療法を行わなかった群と比べて、有意性は認められないものの、一部のADL評価スケールで障害度が軽くなる傾向が報告されている。ただし一般的に筋力の改善は期待できない。強い運動強度を負荷することに関しては、逆に悪影響を及ぼした可能性を示唆するものが目立ち、積極的なリハビリを推奨することはできない。近年、ロボット・リハビリテーション医療が発展して装着型サイボーグ“Hybrid Assistive Limb”(商品名:HAL)が保険適用となり、歩行距離の延長、歩行システムの再構築に有用であるとの報告もある。4 今後の展望ここ数年、ALS患者より樹立したiPS細胞を利用した薬剤スクリーニングで、有効とされた薬剤をはじめとしたいくつかの薬剤の臨床試験が実施され、新たな薬剤として認可されるものがでることが期待される。また、10年ぶりにガイドラインの改定が行われ「筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 2023」が刊行された。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)神経変性疾患に関する調査研究班(医療者向け診療、研究情報)JaCALS(医療者向け診療・研究情報)患者会情報日本ALS協会(患者とその家族会の情報)1)「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会編集. 日本神経学会監修. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023. 南江堂;2023.公開履歴初回2013年6月13日更新2016年1月19日更新2024年8月22日

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双極性障害I型とII型、その違いを分析

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のChristoph Abe氏らは、双極性障害I型(BD I)およびII型(BD II)患者について、皮質容積・皮質厚・皮質表面積を同時に分析するコホート研究を行い、診断に関連した神経生物学的な違いを明らかにした。著者らは、「今回の結果から、BD IとBD IIの症状の違いを説明することができ、診断のバイオマーカーとなりうる可能性を示している」と結論している。ただし、本検討結果で示された違いについては、「疾患の進行性の変化によって、また発症前の状態によっても説明でき、社会・環境・遺伝的な未知の要因に影響された可能性もある」と研究の限界にも言及している。Journal of Psychiatry Neuroscience誌オンライン版2015年12月7日号の掲載報告。 BDは、主に躁病、軽躁病、うつ病の発症によって特徴付けられる一般的な慢性精神障害で、認知機能障害あるいは脳構造の異常(健常者に比し前頭部の皮質容積が小さいなど)と関連している。I型とII型では症状や重症度が異なるが、これまでの研究はBD Iに焦点が当てられていた。研究グループは、BD I患者81例、BD II患者59例および健康な対照群85例を対象に、皮質容積、皮質厚、皮質表面積をMRIで測定し、重要な交絡因子に関して調整し解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・BD患者の前頭部、側頭部および内側後頭部で、皮質容積・皮質厚・皮質表面積の異常が認められた。・内側後頭部の異常にはリチウムと抗てんかん薬の使用が影響を及ぼしていた。・BD I患者およびBD II患者では共に一般的な皮質異常(健常者と比較し前頭部における皮質容積・皮質厚・皮質表面積が低下)が認められた。・側頭部および内側後頭部の異常はBD I患者でのみ認められ、皮質容積および皮質厚が異常に低かった。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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高齢肥満の左室駆出率保持心不全患者、食事・運動への介入効果/JAMA

 臨床的に安定している左室駆出率保持心不全(HFPEF)の高齢肥満患者に対して、20週間にわたるカロリー食事制限もしくは有酸素運動トレーニングによる介入は、運動耐容能を改善するとの無作為化試験の結果が、米国・ウェイクフォレスト大学医学部のDalane W. Kitzman氏らにより報告された。介入効果は相加的に認められ、またQOLへの影響はみられなかった。心不全を有する高齢患者の割合は高く、またHFPEF患者の80%以上が過体重であるという。運動耐容能の低下は慢性HFPEF患者でみられる主要な症状で、QOL低下の重大要素とされている。JAMA誌2016年1月5日号掲載の報告。カロリー制限食または有酸素運動の介入を20週間 試験は2×2要因法にて、2009年2月~14年11月に、米国都市部の大学病院で行われた。577例がスクリーニングを受け、最終的に100例の高齢肥満患者を対象に、20週間にわたるカロリー制限(食事群)または有酸素運動(運動群)もしくは両方の介入(運動+食事群)を行った(2週ごとに電話で注意喚起)。 主要アウトカムは2つで、最大酸素摂取量(VO2;mL/kg/分)で測定した運動耐容能改善、およびMinnesota Living with Heart Failure(MLHF)質問票(スコア範囲:0~105、高スコアほど心不全関連QOL低下を示す)とした。付加的な運動耐容能の改善効果がみられ、QOLへは影響なし 被験者100例は、平均年齢67(SD 5)歳、BMI 39.3(5.6)、HFPEFは臨床的に安定していた。26例が運動群に、24例が食事群に、25例が運動+食事群、25例が対照群に無作為に割り付けられ、合計で92例が試験を完了した。運動介入への参加率は84%(SD:14%)、食事介入のアドヒアランスは99%(SD:1%)であった。 主要効果分析の結果、最大VO2は両介入群ともに有意な増大が認められた。運動群は1.2mL/kg/分(95%信頼区間[CI]:0.7~1.7)、食事群は1.3mL/kg/分(同:0.8~1.8)であった(両群ともp<0.001)。また、運動+食事群の効果は相加的にみられ、最大VO2は2.5mL/kg/分であった。 一方、MLHF質問票スコアについては、両群とも統計的に有意な変化はみられなかった。食事群のスコアの変化は-6(95%CI:-12から1、p=0.08)、運動群は-1(-8~5、p=0.70)であった。 最大VO2の変化は、BMI変化と正の相関がみられ(r=0.32、p=0.003)、また大腿筋(筋肉内脂肪)変化との正の相関がみられた(r=0.27、p=0.02)。 試験に関連した重大有害事象の報告はなかった。 なお、体重は、食事群が7%(7kg、SD 1)減量し、運動群は3%(4kg、SD 1)減量、運動+食事群は10%(11kg、SD 1)の減量がみられた。

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災害対策について「伴に」考える研究会 定例会/特別企画のご案内

 順天堂大学大学院医学研究科 研究基盤センター分室の坪内 暁子氏ら『災害対策について「伴に」考える研究会』は、順天堂大学総合診療科と共同で、1月29日と3月29日に定例会を、2月12日に特別企画の講演会を開催する。 開催概要はそれぞれ以下のとおり。災害対策について「伴に」考える研究会【第7回定例会】【日時】2016年1月29日(金) 18:30~21:30(※18:00開場)【場所】東京都文京区本郷2-1-1順天堂大学医学部10号館1階105号室周辺地図はこちら【内容】《統一課題》外国人のための災害対策《講演》座長:内藤 俊夫氏(順天堂大学大学院医学研究科 総合診療科学 教授)(1)タイにおける災害事例と観光客等外国人のための対策   藤村 喜章氏(タイ国政府観光庁マーケティング・マネージャー)(2)言語の壁を越えた外国人被災者のための都立校による支援   奥谷 雅之氏(東京都立三田高等学校副校長)《グループ討論》司会:坪内 暁子氏(順天堂大学研究基盤センター分室)第7回定例会の詳細はこちら災害対策について「伴に」考える研究会【第8回定例会】【日時】2016年3月29日(火) 18:45~20:45(※18:00開場)【場所】東京都文京区本郷2-1-1順天堂大学医学部10号館1階105号室【内容】《統一課題》日本の災害対策はどこまで進んだのか?《講演》座長:内藤 俊夫氏(順天堂大学大学院医学研究科 総合診療科学 教授)(1)3.11での経験と教訓とその後の防災対策   今村 文彦氏(東北大学災害科学国際研究所 所長)(2)災害時の、身体的弱者や情報弱者に向けての情報発信   新井 哉氏(株式会社CBnews 編集局記者)《挨拶》坪内 暁子氏(順天堂大学研究基盤センター分室)第8回定例会の詳細はこちら災害対策について「伴に」考える研究会【特別企画】【日時】2016年2月12日(金) 18:30~21:30 (※18:00開場)【場所】東京都文京区本郷2-1-1順天堂大学医学部10号館1階105号室【内容】《統一課題》科学的根拠に基づく感染症対策づくりの大切さ《講演》座長:内藤 俊夫氏(順天堂大学大学院医学研究科 総合診療科学 教授)(1)人獣共通感染症に関する国内外の動向と問題点   佐伯 潤氏(大阪獣医師会会長/大阪府立大学客員研究員)(2)どの科の医師も抑えておくべき感染症の国内流行状況   上原 由紀氏(順天堂大学医学部総合診療科 准教授)(3)グローバル化で高まる寄生虫感染症のリスク:シャーガス病の問題点   奈良 武司氏(順天堂大学大学院医学研究科生体防御学 准教授)《産学官民で進める制度研究のための予備調査》担当:坪内 暁子氏(順天堂大学研究基盤センター分室)特別企画の詳細はこちら参加・申し込み・問い合わせ方法【参加費】無料【参加方法】下記の問い合わせ先まで、メールまたは電話にてご連絡ください。※研究会メンバー以外の方も参加可能な講演会です。※参加をご希望の場合は、それぞれ開催日の5日前までにご連絡をお願いいたします。※2回目以降のご参加は研究会メンバーの推薦が必要です。【問い合わせ先】順天堂大学研究基盤センター分室 坪内 暁子(世話人)E-mail:sociomed.sciences@juntendo.ac.jp電話:03-3813-3111内線:3294【共催】災害対策について「伴に」考える研究会順天堂大学総合診療科/研究基盤センター

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わかる統計教室 第3回 理解しておきたい検定 セクション1

インデックスページへ戻る第3回 理解しておきたい検定新薬の効果を調べる場合、その薬を必要としているすべての人に新薬を投与してみれば効果がわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬を投与して、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかを検証します。しかし、各人の臨床試験結果をみると、薬の効果にバラツキがあることが多く、本当に効果があるのか、それとも偶然なのかを判断することが困難なケースがあります。そこで登場するのが「統計解析」です。統計解析は「一部をみて全体を知る」のに便利なツールです。すなわち、一部の対象者について調べた結果が、広く世の中の人たち(これを「母集団」といいます)についても、同じことが言えるかを判断するものです。そのため、医療の研究において統計解析は、なくてはならない存在となっています。ところで、統計手法を利用する際に多くの方が間違いやすいことがあります。ほぼ90%の間違いは非常に初歩的なもので、ワースト3は次のようなものです。標準偏差(SD)と標準誤差(SE)の使い分け有意確率(p値)と「有意差あり」の意味対応がある場合と対応がない場合の検定方法の違いこれらは、すべて初歩的かつ基本的なことです。 そして、こうした初歩的なところにこそ落とし穴があります。そこで第3回では、ある新薬Yと従来薬Xという架空のデータを使って、統計学の基本的な事柄をできるだけ数式を使わず、極力やさしく説明していきます。ぜひご一緒に、統計の基本から学んでいきましょう。セクション1 母集団、n数、サンプル数、サンプルサイズとは表1は新薬Yの処方患者300例、従来薬Xの処方患者400例について、薬剤投与前後の体温を調べたデータです。低下体温は投与前体温から投与後体温を引いた値です。表1 薬剤投与前後の体温調査データ■n数とは新薬の効果を調べる場合、その薬を必要としているすべての人に新薬を投与してみれば効果がわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬を投与して、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかを検証します。この表の場合は、n数は体温を調べた患者の例数のことnはnumberの頭文字統計学ではサンプルサイズ(sample size)あるいは標本サイズとなります。■サンプル数、サンプルサイズとはそれでは新薬Yと従来薬Xのサンプルサイズはいくつになるでしょうか。新薬Yのサンプル数は300例、従来薬Xのサンプル数は400例、と考えた方は間違いです。なぜ間違いなのか。その理由は、「サンプルサイズ」というべきところを「サンプル数」としたところにあります。「サンプルサイズ」と「サンプル数」は異なります!この両者はしばしば混同されることがありますので、注意が必要です。今回、調査をいくつ行っているかをみると、新薬Yと従来薬Xの調査の2つです。この調査の個数をサンプル数(number of samples)あるいは標本数と言います。表1についてみると、サンプル数は2、それぞれのサンプルサイズはn=300とn=400となります。両者の使い分けを間違えないようにしてください。■母集団とは今から学習していくことは、表1のデータを解析して、今後世の中の多くの人たちに処方される新薬Yは、従来薬Xよりも効果があるといえるかどうかを検証することになります。その検証方法をマスターしていただくことが、今回の学習の狙いです。ここでいう「世の中の多くの人たち」のことを、統計学では「母集団(population)」といいます。今回のポイント1)n数とは体温を調べた患者の例数のこと、「n」はnumberの頭文字、統計学ではサンプルサイズ(sample size)あるいは標本サイズという!2)調査の個数をサンプル数(number of samples)あるいは標本数という!3)「世の中の多くの人たち」のことを統計学では「母集団(population)」という!インデックスページへ戻る

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統合失調症患者の攻撃性に有用な薬物療法は

 フランス・Fondation FondaMentalのG. Fond氏らは、統合失調症患者の攻撃性に関する薬物治療の有用性を検討した。その結果、第2世代抗精神病薬(SGA)は第1世代抗精神病薬(FGA)に比べて攻撃性を有意に低下すること、また気分安定薬および抗うつ薬は攻撃性に大きな変化をもたらさず、ベンゾジアゼピン系薬ではむしろ攻撃性が高まることが示された。著者らは、「結果は、攻撃性を示す統合失調症患者におけるSGAの選択を支持するものであるが、より長期間で詳細な研究が必要である」と述べ、また「ベンゾジアゼピン系薬の有害事象(とくに依存および認知障害)の可能性や今回の結果を踏まえると、ベンゾジアゼピン系薬の長期処方は統合失調症患者や攻撃行動を有する患者には推奨されない」と結論している。Psychopharmacology誌オンライン版2015年12月3日号の掲載報告。 研究グループは統合失調症において、SGAがFGAと比較して攻撃性スコアを低下するか否か(主目的)、抗うつ薬、気分安定薬、ベンゾジアゼピン系薬がこれら薬剤を投与されていない患者と比べ攻撃性スコアの低下に関連するか否か(副次目的)を検討した。FondaMental統合失調症専門センターのネットワーク内で被験者を系統的に包含し、DSM-IV第1軸の障害について構造化臨床インタビューで評価を行い、精神病症状、病識、コンプライアンスに関する尺度で確認評価を行った。攻撃性はBuss-Perry Aggression Questionnaire(BPAQ)スコアにより測定。また投与中の向精神薬治療を記録し評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、統合失調症患者255例、統合失調感情障害76例の計331例(平均年齢 32.5歳、男性75.5%)であった。・SGA服用患者は非服用患者に比べ、BPAQスコアが低かった(p=0.01)。具体的には、これらの患者において肉体的、言語的攻撃性スコアが低かった。・ベンゾジアゼピン系薬服用患者は非服用患者に比べ、BPAQスコアが高かった(p=0.04)。・気分安定薬(バルプロ酸塩を含む)および抗うつ薬服用者と非服用者の間で、BPAQ スコアに有意差は認められなかった。・これらの結果は、社会人口統計学的特性、精神病症状、病識、治療コンプライアンス、抗精神病薬の1日投与量、抗精神病薬の投与経路(経口薬 vs.持効型製剤)、現在のアルコール障害、日常的な大麻の摂取と独立して認められた。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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まれな不整脈関連遺伝子変異の存在は通知すべきか/JAMA

 大規模DNAシーケンス法により、メンデル遺伝病におけるまれであるが疾患リスクの高い変異型(レアバリアント)の存在が特定されたが、任意に抽出した患者集団での、関連臨床所見の発現頻度は明らかになっていない。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのSara L. Van Driest氏らは、不整脈関連遺伝子変異の存在と、電子カルテ記録を用いて臨床所見の関連を調べた。その結果、病原性とされる変異遺伝子SCN5A、KCNH2と臨床所見との一致率は低く、任意抽出患者集団では病原性遺伝子と推定される変異型と異常臨床所見との関連を認めることができなかったという。遺伝子検査を受けた場合、既知のレアバリアントの存在は患者に知らせることとされているが、論争の的となっている。著者は「今回の所見は、患者への通知の意義について疑問符を呈するものであった」と報告している。JAMA誌2016年1月5日号掲載の報告。非不整脈薬曝露患者2,022例を対象に変異遺伝子の存在と臨床所見の関連を調査 検討は後ろ向きコホート研究にて、非不整脈薬曝露患者2,022例を対象に行われた。被験者は2012年10月5日~13年9月30日に、米国大学医療センター7施設からElectronic Medical Records and Genomics Network Pharmacogenomicsプロジェクトとして集められた患者であった。 QT延長症候群およびブルガダ症候群の疾患原因遺伝子であるSCN5AとKCNH2の変異型について、3つのイオンチャネル専門ラボで評価し、またClinVarデータベースと比較し評価した。 臨床所見データは電子カルテ記録を参照し、2002年(いくつかの施設ではそれより早い時期から)~2014年9月10日までのデータを入手した。 主要評価項目は、不整脈またはECGの臨床所見(ICD-9コード、ECGデータで定義)で、手動レビューによる評価も行った。変異キャリアの有無で臨床所見の有意な違い認められず 対象の2,022例は、年齢中央値61歳(IQR:56~65歳)、女性55%、白人74%であった。 結果、223例(試験コホートの11%)で、2つの不整脈感受性遺伝子における122個の、まれな(マイナー対立遺伝子頻度<0.5%)、非類似のスプライスバリアント(変異タンパク質)が特定された。 1つ以上のラボまたはClinVarで病原性の可能性があるとされたのは、被験者63例、42個の変異であった(Cohen k=0.26)。 不整脈の所見を示すICD-9コードが認められたのは、変異キャリア63例では11例(17%)、非キャリア1,959例では264例(13%)であった(差:+4%、95%信頼区間[CI]:-5~13%、p=0.35)。 ECGの記録のあった1,270例(全体の63%)で、補正QT間隔について、変異キャリア(中央値429ms)と非キャリア(同439ms)で有意差はみられなかった(差:-10ms、95%CI:-16~3ms、p=0.17)。 手動レビュー後の評価では、変異キャリアでECGまたは不整脈の所見がみられたのは63例のうち22例(35%)で、補正QT間隔が500ms超の患者は2例のみであった。

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双子のがん発症、家族性リスクと強い関連/JAMA

 北欧の双生児を長期に追跡した研究で、すべてのがんおよび特異的がん(前立腺、メラノーマ、乳がん、卵巣、子宮がんなど)において、過剰な家族性リスクが有意に認められることを、米国・ハーバード公衆衛生大学院のLorelei A. Mucci氏らが報告した。住民集団ベースの研究で、家族性がんリスクは、がんリスク予測の基本要素とされている。著者は、「がんの遺伝性リスクに関する本情報は、患者教育やがんリスクカウンセリングに役立つだろう」とまとめている。JAMA誌2016年1月5日号掲載の報告。北欧4ヵ国20万3,691例を32年間追跡 研究グループは、大規模双生児コホートで、がんの家族性および遺伝性リスクを調べるため、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの住民ベースレジスターから、双生児20万3,691例(一卵性8万309例、同性の二卵性12万3,382例)を集め前向きに追跡した。 追跡期間は1943~2010年、中央値32年間で、全死因死亡は5万990例であった。追跡不能は3,804例。 双生児が共有した環境リスク因子、遺伝性リスク因子を調べ、がん発症について評価した。また、時間イベント解析を行い、家族性リスク(双子におけるがん発症リスク)、遺伝性リスク(個人レベルの遺伝子の違いによるがん発症リスク)を調査。年齢、追跡期間を補正した統計モデルを用い、死亡リスクの比較検証を行った。一卵性のほうが二卵性よりもリスクが高い 全体で2万3,980例、2万7,156件のがんが診断された。累積発症率は32%であった。 双子ともにがんと診断されたのは、一卵性(2,766例)は1,383組、二卵性(2,866例)は1,933組。同種がんの発症率は、一卵性38%、二卵性26%であった。 コホート全体の累積発症リスク(32%)と比較して、双生児の一方ががんを発症した場合の残る一方のがん過剰絶対リスクは、二卵性で5%(95%信頼区間[CI]:4~6%)高く(発症率は37%、95%CI:36~38%)、一卵性では14%(同:12~16%)高かった(同:46%、44~48%)。大半のがんで、家族性リスクおよび累積発症リスクが、二卵性よりも一卵性で有意に高かった。 全がん発症の遺伝性リスクは33%(95%CI:30~37%)であった。個別にみると、メラノーマ皮膚がん(58%、95%CI:43~73%)、前立腺がん(57%、51~63%)、非メラノーマ皮膚がん(43%、26~59%)、卵巣がん(39%、23~55%)、腎臓がん(38%、21~55%)、乳がん(31%、11~51%)、子宮がん(27%、11~43%)であった。

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整形外科で発見した骨転移、スムーズに他科へ引き継ぐには?

 一般的に、転移性骨髄腫は疼痛を伴うことが多く、腰痛、頸部痛などを訴えて初診時に整形外科を訪れ、がんと診断されることが少なくない。そのため、疼痛を訴えてきた患者において骨転移が認められる場合、より早く原発巣を同定し、いちはやく当該診療科に引き継ぐ必要がある。 そこで、今回は畑中 敬之氏(国立病院機構 福岡東医療センター 整形外科)らによる、整形外科医がどのように原発巣を精査して当該診療科に引き継ぐべきか検討した論文を紹介する。 著者らは、2013年4月から2014年2月までに同センター・整形外科にて骨転移を診察・加療された患者のうち、初診時に原発巣が同定されていない6例(男性4例、女性2例)に対して原発巣を探索し、当該診療科に引き継いだ。初診時の平均年齢は59~84歳(平均73歳)であり、悪性腫瘍の既往はなかった。 原発巣探索は、以下の高木辰哉氏の方法1)に基づき、2段階に分けて診察・検査を行った。・第1段階:病歴、理学所見、胸部X線、一般血液生化学検査、腫瘍マーカー、血清免疫電気泳動、胸腹部骨盤CT、骨シンチグラフィ・第2段階:骨生検、第1段階で原発を疑った臓器の生検、甲状腺エコー、マンモグラフィ、消化管内視鏡 上記の結果、6例中2例はCT、3例は電気泳動や腫瘍マーカーといった第1段階の比較的簡便な検査が重要な手掛かりとなり、原発巣が診断され、当該診療科に引き継がれた。生検まで必要であった残りの1例についても、血液がんの可能性が高いと診断可能であった。 なお、この検査の注意点は、・第1段階の検査結果が出そろうまでに1週間ほど時間がかかる点・第2段階の検査は比較的侵襲が大きいため、第1段階の検査を経て原発を強く疑うとき以外には行うべきではない点などが挙げられる。 初診時に原発不明な骨転移患者を診断する際に、いかにスムーズに原発巣を探し出すかが重要である。筆者らは、各臓器ごとの原発である確率を予測したうえで、体系化された診断手順を用いることで診断に至るまでの時間の消費を防ぐことができると述べた。また、日常からの他科との連携を深めることの重要性を強調し、結びとした。 原著では具体的な症例に関する記載もあるため、整形外科の先生方をはじめ疼痛の診療に関わる先生方に、ぜひ一読いただきたい。参考文献1)高木辰哉. 関節外科. 2007;26:23-28.

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大動脈弁狭窄症の新たな選択肢「コアバルブ」発売 日本メドトロニック

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 島田隆)は、重度の大動脈弁狭窄症で外科的治療を施行することが不可能な患者の治療を目的とした、日本初の自己拡張型経カテーテル大動脈生体弁「コアバルブ」を、2016年1月1日(金)より発売開始した。 同製品の特長である自己拡張型のフレームが患者ごとに異なる大動脈弁輪の形状にあわせて適切に留置されるため、大動脈弁輪への過度な負担を軽減し、術後弁周囲逆流の低減につながると期待されている。 また、同製品のデリバリーシステムは直径18Fr(6mm)であるため、血管損傷などの合併症発生のリスク低減が期待されるほか、大腿動脈・鎖骨下動脈・直接大動脈の3通りのアプローチが可能となるため、低侵襲かつ最適なアプローチの選択が可能となる。日本メドトロニックのプレスリリースはこちら

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腹部大動脈瘤に対する血管内治療の長期成績は改善(解説:中澤 達 氏)-471

 メディケア受給者3万9,966症例の腹部大動脈瘤の血管内治療と開腹手術を、プロペンシティスコアマッチングコホートで比較した。周術期死亡は、それぞれ血管内群1.6%、開腹群5.2%(p<0.001)であった。 観察期間の2001年から2008年で、周術期死亡率は血管内群で0.8%低下し(p=0.001)、開腹群で0.6%低下(p=0.01)、コンバージョン率は2.2%から0.3%に低下(p<0.001)した。 3年生存率は、血管内群が開腹群より高く、その後は同等となった。8年間での瘤破裂は、血管内群5.4%、開腹群1.4%(p<0.001)であった。血管内治療後2年間の再治療率は、低下(2001年10.4%から2007年9.1%)していた。 腹部大動脈瘤の血管内治療は、初期生存率において開腹手術より優れているが、長期となるとその差はなかった。破裂率は、血管内治療が開腹手術より高く、血管内治療の成績は経年的に改善していた。コメント 観察研究であるため、患者背景や解剖学的条件が均一ではないことより、治療法選択にバイアスが存在している。両群とも経年的に成績が向上していることは、臨床的に適切な治療選択が行われている結果と考えられる。 同様の先行研究において、DREAM trial1)とEVAR-1 trial2)では2年以内、OVER trial3)では3年以内の初期成績は、血管内治療が開腹手術より良好でその後は同等とされていた。また、OVER trialでは、血管内治療は70歳未満では生存率が上昇するが、メリットが享受されるべき70歳以上ではそうではなかった。 この研究では、術後再治療に関して開腹に関連するヘルニア、腸閉塞の入院加療と手術加療のデータがある。したがって、術後の再治療が開腹関連についても詳細に検討可能となった。結果は、瘤関連合併症と開腹関連合併症を合わせて、入院加療は開腹群が高く、手術加療は血管内治療が高かった。 血管内治療後2年間の再治療率が、経年的に低下していることにより、血管内治療が行われた症例が定期フォローアップを受ければ、開腹手術より生存率は良好と考えられる。加えて、デバイスの進化がエンドリークなど、術後の動脈瘤破裂率を減少させれば、さらに血管内治療が有利になるであろう。

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COPDって、何?

COPDって、何?COPDとはChronic Obstructive Pulmonary Disease日本語では慢性閉塞性肺疾患の略を意味します。 肺に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなるとともに、肺胞の壁が溶けてスカスカになった状態で、息が吐けなくなります。≪健康な肺とCOPDの肺≫炎症や線維化で肥厚して痰が分泌された気管支の断面 肺が酸素を取り込めなくなり、酸素ボンベが必要になります。正常な気管支の断面気管支が狭まる がんは手術ができるかもしれませんが、COPDは手術できません。気管支肺胞壁が壊れる肺胞壁肺胞 COPDは治ることはありませんが、禁煙によって悪化を止めることができます。COPDの肺の肺胞肺胞正常な肺の肺胞社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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セクション4 野獣クラブとセッション イメージしやすい勉強法の作り方

セクション4 野獣クラブとセッション イメージしやすい勉強法の作り方講師 小野 正博氏(有隣病院総合内科)第4弾は、「野獣のごとく、むさぼるように勉強を続けよう」が合い言葉の野獣クラブから創設者のひとり小野 正博氏(有隣病院総合内科)の登場です。独学では、なかなかできない臨床学習。先輩医師がそのノウハウを30分間出し切ります。もちろんフィジカルで必要な学習内容も披露!

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