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卵巣がんへの週1回パクリタキセル、生存期間を延長するか/NEJM

 進行卵巣がんに対するパクリタキセル+カルボプラチン併用療法では、投与間隔を1週ごとに短縮した投与法(dose-dense療法)を行っても、通常の3週ごとの投与法に比べ予後は改善しないことが、米国・Sutterがん研究所のJohn K Chan氏らが行ったGOG-0262試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年2月25日号に掲載された。投与の間隔を狭めて頻度を高めたdose-dense療法は、血管新生を阻害し、アポトーシスを促進するため、薬剤の抗腫瘍効果を増強する可能性があるという。パクリタキセルの毎週投与法は乳がん患者の生存期間を延長することが示され、卵巣がんでは日本の研究(JGOG 3016試験)でdose-dense療法の有望な結果が報告されている。2つの投与法の効果を無作為化第III相試験で評価 GOG-0262試験は、進行卵巣がんの初回治療におけるパクリタキセル+カルボプラチン併用療法のdose-dense療法と通常治療の有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、新規に診断され、完全切除が達成されなかったStage III/IVの上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんとした。最大径が1cm以上の遺残病変がみられないStage II/IIIの患者や、術前補助療法を希望する患者も含まれた。 被験者は、ベバシズマブ投与の有無で層別化したのち、パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC=6)を3週に1回(第1日)静脈内投与する群(通常治療群)またはパクリタキセル(80mg/m2)+カルボプラチン(AUC=6)を第1、8、15日に静脈内投与する群(dose-dense療法群)に無作為に割り付けられた。3週を1サイクルとして6サイクルを施行することとした。 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)であった。 2010年9月~2012年2月の間に、米国、カナダ、韓国の200以上の施設に692例が登録され、両群に346例ずつが割り付けられた。全体では、60歳未満が46%、Stage III/IVが97%、上皮性卵巣がんが79%であり、ベバシズマブの投与は84%が、術前補助療法は13%が受けた。ベバシズマブ非投与例ではPFS中央値が有意に延長 PFS中央値は、dose-dense療法群が14.7ヵ月であり、通常治療群の14.0ヵ月と比較して有意な延長はみられなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.74~1.06、p=0.18)。 一方、ベバシズマブの投与を受けなかった患者のPFS中央値は、dose-dense療法群が14.2ヵ月と、通常治療群の10.3ヵ月に比し3.9ヵ月有意に延長した(HR:0.62、95%CI:0.40~0.95、p=0.03)。 これに対し、ベバシズマブの投与を受けた患者では、PFS中央値はそれぞれ14.9ヵ月、14.7ヵ月であり、有意差はみられなかった(HR:0.99、95%CI:0.83~1.20、p=0.60) 治療効果の同質性(homogeneity)について交互作用検定を行ったところ、ベバシズマブ投与例と非投与例に有意な差が認められた(p=0.047)。 全生存期間(OS)中央値は、dose-dense療法群が40.2ヵ月、通常治療群は39.0ヵ月であり、有意差はなかった(HR:0.94、95%CI:0.72~1.23)。 全体で最も頻度の高いGrade 3/4の有害事象は好中球減少(78%)であった。dose-dense療法群の発現率は72%であり、通常治療群の83%よりも有意に低かった(p<0.001)。 Grade 3/4の貧血の頻度は、dose-dense療法群が36%と、通常治療群の16%よりも高く(p<0.001)、Grade 2~4の感覚性ニューロパチーも、dose-dense療法群は26%であり、通常治療群の18%よりも高頻度であった(p=0.01)。 14例が担当医により治療関連死の可能性があると判定され、dose-dense療法群が6例、通常治療群は8例だった。 著者は、「NCIが最近行った卵巣がん患者の人口ベースの研究では、アジア系は白人よりも生存率が高いことが示され、治療への反応や毒性作用に関してゲノム薬理学的な人種差がある可能性も示唆されている。これにより、本試験とJGOG 3016試験の結果の違いが説明できるかもしれない」と指摘している。

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性差という個体の特徴の意義~女性は心房細動の予後規定因子なのか~(解説:西垣 和彦 氏)-491

性差医療とその本質とは? 歴史的に医学は成人男性を標準個体とし、その病態や臨床経過・予後、診断から治療に至るまでを確立してきた。しかし近年、危険因子や薬剤の効果においても性差があることが明らかになるにつれ、性差の存在がクローズ・アップされるようになった。この性差という個体の特徴における相違は、生物学的要因としてのホルモンバランスの違いなどがその原因として挙げられている。現代医学は、この性差を無視して成立しなくなったこともあり、性差研究を通して医療に反映させる性差医療が発展してきた。しかし、この性差医療に関し危惧されることがある。それは、性差がもたらすだろう損得を種々追求するがあまり、性差は個体の特徴の1つに過ぎないという本質を失念し、人種や年齢などの寄与度の高い危険因子の存在を無視・偏重して解析することであり、さらに性差がその疾患の予後を規定する普遍の定理かのような提起をしてしまうことである。このことは厳に慎まなければならない。 本論文のポイントは? 本論文のポイントをまとめる。本論文は、女性であることが心房細動の予後規定因子としてより強い心血管イベント/死亡リスクであるのか、30件のコホート研究、計437万1,714例を解析対象として行ったメタ解析研究である。 その結果、心房細動の各アウトカムに対する相対危険の男女比(女性/男性)は、全死亡:1.12(1.07~1.17)、脳卒中:1.99(1.46~2.71)、心血管死:1.93(1.44~2.60)、心イベント:1.55(1.15~2.08)、心不全:1.16(1.07~1.27)であった。したがって、心房細動は、女性であることが心血管イベントや死亡リスクに対し、より強い予後規定因子であると報告している。著者らはその機序として、女性のほうが男性より治療が遅れるのではないかということや、抗凝固薬による出血が多いことが、より強い心血管イベント/死亡リスクとなったのではないかとしているが、あくまでも著者らの推論の域を出ない。 各国の心房細動に対する抗凝固療法ガイドラインにおける性差 心房細動患者の生命予後に対する性差の影響に関しては、わが国も含めてこれまでも多くの研究報告がなされているが、その結果は混沌としていて一定の見解が得られていない。 フラミンガム心臓研究の38年に及ぶ追跡調査では、心房細動の危険度は高血圧があれば男性1.5倍、女性1.4倍とほぼ同等であったが、糖尿病があれば男性1.4倍、女性1.6倍高いという結果が報告された1)。 わが国の心房細動の有無と死亡リスクの関連を検討した、1万人以上の住民を登録したNIPPON DATA80では、非心房細動患者の死亡リスクを1としたとき、心房細動患者の循環器疾患死亡リスクは、男性で1.4倍、女性で4.0倍と多く、総死亡リスクは男性で1.4倍、女性で2.4倍と、女性において心房細動は全死亡あるいは心血管死の独立した危険因子であることが示された2)。しかし、この研究データは1980年~1999年の追跡調査より得られていることから、ワルファリンによる抗凝固療法が普及する以前を反映しているものと考えられ、現状に即応していないものと考えられている。 一方、最近では、心房細動患者の生命予後に関して、女性という因子はそれほど強い危険因子ではないのではないかという報告がなされている。デンマークで行われた、ワルファリン療法を受けていない心房細動患者7万例を登録したコホート研究によると、うっ血栓心不全、高血圧、および糖尿病といったCHADS2スコア1点のリスクと比較して、女性という性差のリスクがきわめて低いことが示された3)。 このような混沌とした結果を受けて、各国のガイドラインも異なった取り扱いをしている。2014年10月にアップデートされた、カナダの心房細動に対する抗凝固療法のガイドラインでは、女性という因子のみはエビデンスがないと抗凝固の対象には入れないとしている4)。これに対して、2015年2月にヨーロッパ心血管プライマリケア学会から出された、心房細動における脳梗塞予防のコンセンサスガイドラインでは、65歳以上の女性あるいは75歳以上の男性であるならば、CHA2DS2-VAScスコアの他のリスクを評価して抗凝固療法の適応を判断することとしており、女性という性差を心房細動の予後規定因子として重要視している5)。 わが国のガイドラインにおいては、65歳未満でほかに器質的心疾患を伴わない心房細動患者において、女性であることは単独の危険因子にならないとし、さらに65~74歳は性別にかかわらず考慮可となりうることから、単独因子として女性という性差は記載されていない6)。さらに、昨年5月に報告されたわが国のJ-RHYTHMレジストリを用いたCHA2DS2-VAScスコアの妥当性を検討した論文では7)、血栓塞栓症は男性(年1.6%)に比較し、女性(年1.2%)ではかえって少ないこと、CHA2DS2-VAScスコアから女性を除いたスコアリングは、血栓塞栓症のリスク層別化の点で有用であり、さらに日本人では、65歳以上や血管疾患もあまりリスク因子として効いていないことから、かえってこれらの因子を含めると予測能が落ちるため、むしろCHADS2スコアで抗凝固薬の使用を評価するのがよいと結論付けられている。はたして女性は心房細動の危険因子なのか? これまでの結果から、心房細動患者に対する抗凝固療法の適応を考慮するとき、女性という性差をその危険因子として考えることよりも、やはり人種による差が大きいといわざるを得ない。その点、この論文は所詮欧米のガイドラインを構築するエビデンスに過ぎず、わが国のガイドラインを左右するほどの影響力は持ち合わせていない。 米国心臓協会 (American Heart Association)の活動として、“Go Red for Women”が提唱されている。この標語は、日本人にとってわかりづらい英語の表現であったこともあり、私が『女性の心血管疾患を減らすことを目的として、女性に積極的に呼びかけていこうという運動の名称』であると知ったのは、かなり経ってからである。米国における女性の心血管疾患罹患の深刻化が問題となっていることの一端であるが、わが国の現状とはかなり異なっているといわざるを得ない。参考文献1)Kannel WB, et al. Am J Cardiol. 1998;82:2N-9N.2)Ohsawa M, et al. Circ J. 2007;71:814-819.3)Olesen JB, et al. BMJ 2011;342:d124.4)Verma A, et al. Can J Cardiol. 2014;30:1114-1130.5)Hobbs FR, et al. Eur J Prev Cardiol. 2016;23:460-473.6)日本循環器学会ほか. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).PDF (2016.3.1参照)7)Tomita H, et al. Circ J. 2015;79:1719-1726.

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Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療

第1回 まずは診断と病態の評価 第2回 うつ病の「原因」を探索する第3回 さまざまなうつ病を知る 第4回 うつ病の発症機序を理解する第5回 抗うつ薬を正しく使う! 第6回 1剤目が効かないときは… 第7回 うつ病と間違いやすい双極性障害 第8回 自殺させない患者との接し方 うつ病はどの診療科でも遭遇する可能性がある疾患です。そのスクリーニングや初期対応はすべての医療者の必須知識といっても過言ではありません。このDVDでは、基本的な診断方法や病型による薬剤選択、寛解までの治療戦略について、非専門医も知っておくべき内容に絞ってレクチャーします。これだけは頭に入れておきたい症状などは、語呂合わせを交えて紹介。講師自らが患者役を演じるスキットで、診断に欠かせない症状把握と診察のイメージトレーニングもできます。このDVDで、うつ病診療の勘所を押さえて自信を持って診療にあたってください!第1回 まずは診断と病態の評価 うつ病は患者さんの訴えからでしか診断ができません。だからこそ、その症状を理解することが何よりも重要。今回は、特徴的な9つの症状について、患者さんがよく言うフレーズや行動などを具体的にレクチャーします。診察中にすぐに思い出せるように、これらの症状を語呂合わせで覚えてしまいましょう!さらに、講師自らが患者役を演じるスキットで、どんな言葉や様子からうつ病を疑うか練習してみてください!第2回 うつ病の「原因」を探索するうつ病になりやすい性格は本当にあるのでしょうか。離婚や死別などストレスになる出来事があった場合の抑うつはうつ病ではないのでしょうか。今回は混乱しやすい、うつ病の「原因」についてレクチャーします。さらにうつ病と適応障害の違いも解説。この内容を知っておくだけで格段に診断をしやすくなること間違いありません!第3回 さまざまなうつ病を知る うつ病といっても、その病型によって症状はがらっと変わります。病型によっては、疾患ではなく性格の問題では?と誤解してしまうことも。今回は誰もが想像するようなうつ病であるメランコリア型と、それとは症状が異なる非定型をメインに取り上げて、その症状を患者スキットと語呂合わせで解説します。治療方針も異なるこれらの病型の特徴をこの番組で押さえてください!第4回 うつ病の発症機序を理解するうつ病は発症機序が完全には解明されていない疾患。しかし現時点でわかっている発症のメカニズムを理解することは、疾患の理解と治療にとても有用です。今回は相互に関連しあっている3つの発症機序の仮説をわかりやすく解説します。第5回 抗うつ薬を正しく使う! 抗うつ薬を正しく使うには、薬の特徴、開始と終了のルールや治療期間の理解が必要です。どの薬をどの量から始めるか、いつまで投与を続けるのか。軽症の場合、抗うつ薬を出していいのか?効果判定はどうやって行う?など薬物療法の原則とルールを伝授します。第6回 1剤目が効かないときは… 最初に処方した抗うつ薬が効かないとき、次に打つ手は何でしょうか?処方を変更する前に、確認すべき3つの項目をレクチャーし、変更する場合の薬剤選択の基準を伝授します。また周産期の女性や高齢者など、気を付けるべき患者についても解説。第7回 うつ病と間違いやすい双極性障害中々治療の効果が出ない患者さん、実は双極性障害かもしれません。講師自ら躁エピソードを語る例を演じ、なぜうつ病と双極性障害は間違われやすいのか、簡潔に解説します。うつ病と双極性障害を見分ける方法、そして双極性障害の治療で使用すべき薬剤をしっかり押さえてください!第8回 自殺させない患者との接し方 うつ病診療では、医師の接し方自体が、薬物療法と並んで重要な治療効果を持ちます。最終回は診察に際して押さえておくべきことと、治療的な話し方や聞き方を解説します。基本的な考え方が分かれば、すぐに実践できるテクニックをぎっしり盛り込みました。診察室での患者本人との会話にも、家族への説明や注意などにも役立ててください!

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喫煙が不妊・早期閉経につながる

喫煙が不妊・早期閉経につながる?! 喫煙により、不妊・早期閉経の可能性が高まります。 受動喫煙に曝されている女性も同様です。喫煙経験・受動喫煙がない女性に比べて…喫煙経験者は受動喫煙者*は1.14倍不妊の確率が高い!1.18倍喫煙経験者は 21.7ヵ月閉経が早い!受動喫煙者*は 13.0ヵ月*喫煙者と10年以上同居しているなど、高レベルの受動喫煙に曝されている女性Hyland A, et al. Tob Control. 2015 Dec 14. [Epub ahead of print]Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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夢の早漏治療薬dapoxetineは本当に安全か?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第62回

夢の早漏治療薬dapoxetineは本当に安全か? >FREEIMAGESより使用 dapoxetine(商品名:Priligy、Poxet)という薬剤は泌尿器科医の間では有名だと思われます。これは、短時間作用性の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)で、早漏治療に用いられることがあります。早漏について知らない女性の方もいると思いますので、少し説明しましょう。 性行為のときに、男性は5分よりも30分、30分よりも1時間“楽しみたい”と考えているワケです。いやだ、おげれつ! しかし、世の中には自制が効かずにたった1分や2分で射精をしてしまう男性もいます。これを早漏と呼びます。医学的に難しく言うなら、「男性における性機能障害。性行為時において女性器へ男性器を挿入した後1分以内に射精してしまう、もしくは挿入前に射精してしまうこと。射精をコントロールできないことによるストレスなど精神的な負担を感じていること。あるいは、性行為自体を避けていること」を指します。 そんな悩める男性たちにとって、dapoxetineは非常に有効という報告が多いです。しかし、残念ながら保険適用されませんので病院では処方してもらえません。ご注意を。 Yue FG, et al. Efficacy of Dapoxetine for the treatment of premature ejaculation: a meta-analysis of randomized clinical trials on intravaginal ejaculatory latency time, patient-reported outcomes, and adverse events. Urology. 2015;85:856-861. 中国の吉林大学からの研究です。この研究は、早漏治療薬としてdapoxetineが有効かどうか、複数の論文を集めてメタアナリシスしたものです。しかるべき機関に登録されている、妥当性の高い論文のみを集めました。その結果、5つのランダム化比較試験が信頼性が高いと判断されました。いずれも、プラセボとdapoxetineを比較したものです。この5試験を合わせて解析したところ、dapoxetineはプラセボと比較してIELT:intravaginal ejaculation latency time(膣内に挿入してから射精するまでの時間)を延ばすことができました(加重平均差1.47分、95%信頼区間:1.22~1.71分、p<0.00001)。つまり、上述の“お楽しみ”の時間が1~2分ほど延びたというのです!患者さんの感想はどうかというと、全般的な印象、性行為の満足度、射精に対する苦悩感といったアンケートに対して「dapoxetineいいね!」という結果が多かったようです。dapoxetineは性行為1~2時間前に30mgあるいは60mg内服するのですが、一番の副作用は下痢と言われています(5~10%)(J Sex Med. 2010;7:2947-2969.)。さすがに行為中に下痢になることはまれでしょうが、下手すると頑張ったその夜のうちにひどい下痢を発症してムードが台無しに…ということにもなりかねません。10分ならともかく1~2分の延長ためにこの薬剤を飲むのもどうかなあ…と感じますが、本当に悩んでいる人にとっては救いの薬剤になるでしょうね。インデックスページへ戻る

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治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのか

 治療抵抗性統合失調症では、クロザピンが標準治療として考えられている。しかし、クロザピンの使用は、多くの副作用により制限がある。また、他の抗精神病薬との無作為化比較試験の数も増加している。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMyrto T Samara氏らは、ネットワークメタ解析により、治療抵抗性統合失調症に使用可能な抗精神病薬によるすべての無作為化試験を統合し分析した。JAMA psychiatry誌2016年3月号の報告。 MEDLINE、EMBASE、BIOSIS、PsycINFO、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials、WHO国際臨床試験レジストリ、clinicaltrials.govより、2014年6月30日までの報告を検索した。少なくとも2人以上の独立したレビュアーにより、公表または非公表の治療抵抗性統合失調症(各試験の定義による)を対象とした単盲検または二重盲検のRCTで抗精神病薬(任意の用量および投与形態)を他の抗精神病薬またはプラセボと比較した試験を選択した。少なくとの2人以上のレビュアーが標準フォームに全データを抽出、コクラン共同計画のリスクバイアスツールで、全試験の質を評価した。データは、ベイジアン設定でランダム効果モデルを使用しプールした。主要評価項目は、統合失調症症状の全体的な変化によって測定される有効性とした。副次評価項目は、統合失調症の陽性症状と陰性症状の変化、治療への分類上の反応、何らかの理由による中止、治療の無効性、重篤な有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・40の無作為化比較試験、5,172例(男性:71.5%、平均年齢[SD]:38.8歳[3.7歳])が分析に含まれた。・全アウトカムにおいて、有意な差は少なかった。・主要評価項目では、オランザピンはクエチアピン(標準化平均差[SMD]:-0.29、95%CI:-0.56~-0.02)、ハロペリドール(SMD:-0.29、95%CI:-0.44~―0.13)、sertindole(SMD:-0.46、95%CI:-0.80~―0.06)よりもより有効であった。クロザピンはハロペリドール(SMD:-0.22、95%CI:-0.38~―0.07)、sertindole(SMD:-0.40、95%CI:-0.74~―0.04)よりもより有効であった。リスペリドンはsertindole(SMD:-0.32、95%CI:-0.63~―0.01)よりもより有効であった。・オランザピン、クロザピン、リスペリドンの優位性のパターンは、他の有効性評価項目でも認められたが、結果は一貫せず、効果サイズは通常よりも小さかった。・また、クロザピン、ハロペリドール、オランザピン、リスペリドン以外の抗精神病薬が有用であるとしたRCTは比較的少なかった。・最も驚くべき発見は、クロザピンがほとんどの他の薬剤よりも有意に良好ではないことであった。 結果を踏まえ、著者らは「抗精神病薬は治療抵抗性統合失調症患者に対し、より効果的だとするエビデンスは不十分であった。そして、非盲検とは対照的に盲検無作為化比較試験の有効性の研究結果では、他の第2世代抗精神病薬と比較しクロザピンの優位性を示す研究は少なかった」とし、「最近のエビデンスを変更するため、今後は高用量や、非常に難治性の統合失調症患者におけるクロザピン研究が最も有望であると考えられる」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 治療抵抗性統合失調症へのクロザピン投与「3つのポイント」

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頸動脈狭窄へのステント留置 vs.内膜切除の10年転帰:CREST試験/NEJM

 頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜切除術(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)を比較したCREST試験の10年追跡結果を、米国・メイヨークリニックのThomas G. Brott氏らが報告した。主要複合エンドポイント(周術期脳卒中・心筋梗塞・全死亡および周術期以降の同側性脳卒中)の10年発生率に両群で有意差は認められず、周術期以降の同側性脳卒中のみでも両群間で有意差はなかった。CREST試験では、これまで主要複合エンドポイントの4年発生率について、両群で差はないことが報告されていたが、さらなる長期追跡の解析結果が待たれていた。NEJM誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。主要複合エンドポイントほか周術期以降の同側性脳卒中も評価 研究グループは、米国およびカナダの117施設で、2000年12月~08年7月に症候性または無症候性頸動脈狭窄症患者2,502例を登録し、CAS群またはCEA群に無作為化して術後6ヵ月ごとに最大10年間追跡調査した(追跡期間中央値7.4年)。 主要複合エンドポイントは周術期(無作為化後30日以内の施術例は術後30日以内、無作為化後31日以後の施術例は無作為化後36日以内)の脳卒中・心筋梗塞・死亡および周術期以降の同側性脳卒中であった。また、長期評価として、周術期以降の同側性脳卒中を主要長期エンドポイントとした。CASとCEAで10年転帰は同等 主要複合エンドポイントの10年発生率は、CAS群11.8%(95%信頼区間[CI]:9.1~14.8)、CEA群9.9%(95%CI:7.9~12.2)で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.10、95%CI:0.83~1.44)。 主要長期エンドポイントの10年発生率は、CAS群6.9%(95%CI:4.4~9.7)およびCEA群5.6%(95%CI:3.7~7.6)で、両群間に有意差はなかった(HR:0.99、95%CI:0.64~1.52)。 症候性患者と無症候性患者に分けて解析した場合、いずれのエンドポイントも両群間で有意差は認められなかった。再狭窄発症または再血行再建を行った患者の割合は、CAS群12.2%、CEA群9.7%であった(HR:1.24、95%CI:0.91~1.70)。 著者は、「CREST試験の長期追跡結果は頸動脈疾患の治療と管理に役立つものであり、CASおよびCEAともに周術期のリスクは低いことに注目すべきであろう」と述べている。ただし、CREST試験では内科的治療との比較が行われていないという限界があったため、現在、CAS、CEAおよび非介入(強化薬物療法)の3群を比較するCREST-2試験が行われている。

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冠動脈手術前のアスピリンは中止すべきか?/NEJM

 冠動脈手術前のアスピリン術前投与は、死亡および血栓性合併症のリスクを低下させることはなく、出血リスクも増加しない。オーストラリア・アルフレッド病院のPaul S. Myles氏らが、冠動脈手術を受ける高リスク患者においてアスピリンが死亡率や血栓性合併症の発症率を減らすかどうかを評価する目的で行ったATACAS試験の結果、明らかとなった。ほとんどの冠動脈疾患患者は、心筋梗塞・脳卒中・死亡の1次または2次予防のためにアスピリンを投与されている。アスピリンは、出血リスクを高めるが、冠動脈手術前に中止すべきかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年2月25日号掲載の報告。冠動脈手術予定患者を対象に2×2要因試験を実施 ATACAS試験は、2×2要因デザインを用いた二重盲検無作為化比較試験で、2006年3月~13年1月に5ヵ国19施設にて患者登録が行われた。対象は、冠動脈手術が予定されている周術期合併症リスクを有する患者で、アスピリン群またはアスピリンとマッチさせたプラセボ群、ならびにトラネキサム酸群またはトラネキサム酸とマッチさせたプラセボ群に無作為化された。 本論文は、アスピリン試験についての報告である。2,100例がアスピリン群(1,047例)とプラセボ群(1,053例)に無作為化され、それぞれ手術1~2時間前にアスピリン100mgまたはプラセボを投与された。ワルファリンとクロピドグレルは、手術の少なくとも7日前に中止されることになっていた。 主要評価項目は、術後30日以内の死亡・血栓性合併症(非致死的心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓、腎不全、腸梗塞)の複合エンドポイント。事前に定めた副次評価項目は、死亡、非致死的心筋梗塞、重大出血、心タンポナーデおよび輸血であった。主要評価項目および副次的評価項目いずれもイベント発生率に両群で有意差なし 主要評価項目のイベント発生は、アスピリン群202例(19.3%)、プラセボ群215例(20.4%)であった(相対リスク:0.94、95%信頼区間:0.80~1.12、p=0.55)。 再手術を要する大出血の発生率は、アスピリン群1.8%、プラセボ群2.1%(p=0.75)、心タンポナーデはそれぞれ1.1%、0.4%(p=0.08)であった。死亡、脳卒中、肺塞栓、腎不全、腸梗塞の発生率は両群間で類似していた。 主要評価項目に関して、治療群と患者の性別・年齢・左室機能・出血リスク・術式・直近のアスピリン曝露量との間に、有意な交互作用は認められなかった。 著者は、「アスピリン群で出血リスクが増加しなかったのは、患者の選択、低用量(100mg)、患者の半数で抗線溶療法を行っていたことが関与していると考えられる」との見解を示している。

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長時間労働とがんリスク

 長時間労働は心血管疾患リスクの増加と関連しているが、がんとの関連は不明である。英国London School of Hygiene & Tropical MedicineのKatriina Heikkila氏らのマルチコホート研究により、長時間労働は、がん全体、肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスクに関連がないことが示唆された。一方、乳がんリスクとの関連については「さらなる研究が必要とされる」と記している。British Journal of Cancer誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。 著者らは、登録時にがんを発症していない男女11万6,462人について、労働時間とがんリスクの関連を調査した。がんの発症は全国のがん・入院・死亡登録で確認、また週単位での労働時間は自己申告による。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.8年間に4,371人ががんを発症した(大腸がん393人、肺がん247人、乳がん833人、前立腺がん534人)。・労働時間とがん全体のリスクの間に明らかな関連は認められず、大腸がん、肺がん、前立腺がんのリスクとの間にも関連は認められなかった。・女性の乳がんにおいて、年齢、社会・経済的地位、シフト時間や夜間労働、ライフスタイル因子に関係なく、週55時間以上の労働で1.60倍(95%信頼区間:1.12~2.29)に増加した。ただし、この結果は出産歴による残余交絡が影響している可能性がある。

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ロコモは、身体能力だけでなくうつ病とも関連する?

 ロコモティブシンドローム(LS)は、身体能力だけでなくうつ病の程度とも関係していることを愛知医科大学 運動療育センターの池本 竜則氏らが報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2016年2月10日号の掲載報告。 LSについての報告は最近増加しており、現在までに身体能力に関しての研究はなされてきたが、精神医学的評価を含めた研究はまれである。本研究では25-question geriatric locomotive function scale(GLFS-25)を用いて、LSの有無と重症度に関連する身体的および精神的パラメータを調査した。 対象は、同運動療育センターを利用している健康な60歳以上の高齢者150人で、事前に測定したGLFS-25カットオフ値(=16ポイント)から、LS群もしくは非LS群に割り付けられた。年齢、握力、timed-up-and-go test(TUG)、開眼片足立ち、背筋力、脚筋力、うつ病の程度、認知障害についてのパラメータは、Mann-Whitney U-test、および多重ロジスティック回帰分析を用いて比較検討した。 また、LS重症度と強い相関を示した変数は、多重線形回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・非LS群は110人(73%)で、LS群は40人であった。 ・LS群と非LS群間を比較分析したところ、年齢、握力、TUG、開眼片足立ち、背筋力、うつ病の程度において有意な差が認められた(p<0.006、Bonferroni補正)。・握力機能低下、TUG、片足立ち、うつ病の程度がLSに有意に関連していた(多重ロジスティック回帰分析)。・GLFS-25スコアに大きく寄与する要因は、TUGとうつ病の程度であった(多重線形回帰分析)。

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試みない後悔よりも、試みる勇気を持て、高齢者へのPCI(解説:中川 義久 氏)-490

 「後悔」とは、「ああすれば良かった、こうすれば良かった」と後から物事を悔いることで、皆ができれば避けたいと思っている感情の1つである。恋愛でも、仕事でも、対人関係でもそういう機会は多い。「あの時、勇気を出して告白すれば彼女の気持ちは変わったんじゃないか?」など、ギクシャクしたりした後で後悔の念は強まるものだ。“後悔先に立たず”というが、後悔しても取り戻せないとわかっていても執着心が勝ってしまうのが人間である。これはPCI施行医においても同様である。 非ST上昇型心筋梗塞と不安定狭心症の80歳以上の高齢者に対して、「早期侵襲的治療」と「保存的治療」を比較し、どちらの戦略が患者に利益をもたらすのかを調べた結果がノルウェーのグループからLancet誌に報告された。早期侵襲的治療とは、急性期に冠動脈造影を行い、必要に応じてPCIやCABGを選択し薬物療法の判断にも造影所見を利用する戦略である。保存的治療とは、至適薬物療法のみを行うもので冠動脈造影すら施行しない戦略である。主要エンドポイントは心筋梗塞、緊急血行再建、脳梗塞、全死亡の複合である。 その結果、主要エンドポイントは、早期侵襲的治療群93/229例(40.6%)vs.保存的治療群140/228例(61.4%)で、ハザード比0.53(95%信頼区間:0.41~0.69、p=0.0001)と早期侵襲的治療群が優れていた。出血性合併症は同程度であったという。 早期侵襲的治療を選択しPCI施術を試みたが、手技にまつわる合併症などで不幸な転帰をたどった場合には、「そっと保存的に様子をみれば良かった」と後悔するのが人間である。逆に、保存的治療を選択し結果が芳しくなかった場合には、「多少の危険を冒してでも本人と家族に説明し、勇気を出して侵襲的治療である冠動脈造影とPCIを施行していれば良かったのではないか」と考える場合もあろう。高齢患者の多い日本の実臨床の現場では、日々直面する問題である。 人間が自責の念を抱く最大の後悔は「できるのにしなかったこと」といわれる。つまり、一番大きな後悔は「わかっていたのにしなかった」「できるのにやらなかった」という罪悪感に基づくものである。試みたがうまくいかなかった場合には、その不成功の原因を究明し、次回の改善を期することも可能となる。これは、前向きな後悔といえる。 早期侵襲的治療と保存的治療の選択を迫られた場合に、個々の症例において得失を冷静に考えることは当然であるが、真にevenで迷った場合には、積極的方針を選択すること後押ししてくれる報告と思い、コメントさせていただいた。

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コミュ障の克服【Dr. 中島の 新・徒然草】(108)

百八の段 コミュ障の克服コミュ障とは「コミュニケーション障害」の略で、いわゆるネットスラングです。人とうまく話をすることができないので、職場でもプライベートでも人間関係をうまく築くことができず、つい引き籠りになってしまう、というのが典型的なパターンですね。もちろん、コミュニケーションが苦手だと、就職にも結婚にも差し支えることが容易に想像できます。で、そんなコミュニケーション障害を持つ人が、どのようにしてそれを克服したか、という体験談がネットで披露されていました。なかなか示唆に富む記事だったのでここに紹介いたします。その人は20代の男性。自分で編み出した「高速音読」という方法でコミュ障を克服したそうです。ゆっくり読んでもダメだし、黙読でもダメで、とにかく高速で音読するのが大切だということです。高速音読の対象として何を選んだかは詳しくは書かれていませんでしたが、新聞もそのひとつだったようです。なんでも高速音読を行うと、滑舌が良くなって言葉による切り返しがうまくなるのだとか。「これは凄い!」と思った私は、さっそく女房に教えました。中島「高速音読をやると滑舌が良くなって、コミュ障を克服できるらしいぞ」女房「コミュ障ってのは滑舌だけの問題なの?」中島「そう言われれば、人と会話するという心理的障壁もあるし」女房「話題をみつけるのも苦手なんでしょ」中島「他にもいろいろありそうやなあ」確かに滑舌が良くなったからといって話題が豊富になるかというと、あまり期待できそうにありません。中島「でもな。ワシら全員、英語ではコミュ障やろ」女房「は?」中島「日本語でも英語でも、問題は一緒やと思うんやな。つまり外国人としゃべるという心理的障壁とか、話題をみつける難しさとか。それに込み入った話を英語で表現するのも大変やがな」女房「確かにそうかも」中島「第一、英語の滑舌なんか全然アカンし」女房「ずいぶん説得力あるわね、それ」ということで、自ら英語高速音読を始めてみました。やってみると黙読とはまったく違います。たとえば、アクセントの位置です。黙読なら曖昧なままで済みますが、音読ではそうもいきません。例を挙げましょう。勘違いしていたもの "politics" 長い間、pol-i-ticsの「i」にアクセントがあるものと思っていましたが、実は「pol」でした。すみません。複数あるもの "in detail"de-tailの「de」にアクセントを置く人と「tail」にアクセントを置くアナウンサーが同じ「NHK WORLD English News」でしゃべっていました。3通りあるもの "Clostridium difficile"皆さんおなじみの細菌の名前で、たぶん第1音節にアクセントを置く人が多いと思いますが、第2音節にアクセントを置く人も第3音節に置く人もいるようです。ということで、頑張って英語高速音読を毎日やっているところです。三日坊主にならないよう継続するコツについても同じ記事に出ていたので、広く応用可能な方法として次回に紹介したいと思います。とりあえず1句英語なら 貴方も私も コミュ障だ

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うつ病再発予防へ、インターネット介入の可能性は

 再発うつ病患者において生活を改善する戦略は、妥当性が高い。ドイツ・ハイデルベルク大学のHans Kordy氏らは、無症状期間の延長を目的としたインターネット配信による2つの増強戦略の有効性を検討した。Psychotherapy and psychosomatics誌2016年2月号の報告。 3アームの多施設共同無作為化比較試験(非盲検、評価者盲検)で有効性を検討した。対象は、メンタルヘルスケア入院から退院した3つ以上のうつ病エピソードを有する成人232例。対象患者は、SUMMIT介入群、SUMMIT-PERSON介入群、通常ケア単独群に無作為に割り付けられた。介入は12ヵ月間実施し、通常ケアに加え、eメールまたはスマートフォンを経由してモニターした(危機的な状況が近付くシグナル、個人的な危機管理の支援、早期介入促進を含む)。SUMMIT-PERSON介入群では、さらに定期的な専門家とのチャットも行った。主要評価項目は、治療開始後24ヵ月間における、Longitudinal Interval Follow-Up Evaluationで評価した「well weeks(最も症状の軽い1週間)」であった。 主な結果は以下のとおり。・SUMMIT介入群は、通常ケア単独群と比較し、体調不良状態の期間減少(OR:0.48、95%CI:0.23~0.98)、体調不良からの回復の早さ(OR:1.44、95%CI:0.83~2.50)、体調良好から不良への悪化の遅さ(OR:0.69、95%CI:0.44~1.09)が認められた。・仮説に反して、SUMMIT-PERSON介入群は、SUMMIT介入群(OR:0.77、95%CI:0.38~1.56)および通常ケア単独群(OR:0.62、95%CI:0.31~1.24)と比較し、優れているとはいえなかった。・SUMMIT介入の有効性は、介入後8ヵ月時点で最も強かった。 結果を踏まえ、著者らは「完全自動化インターネット配信増強戦略SUMMITは、再発うつ病患者の生涯負担を軽減させることで、通常ケアを改善する可能性がある。効果の減弱は、無制限の期間延長を示唆している」とまとめている。関連医療ニュース これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか 近未来のうつ病治療に、会話システム「Help4Mood」 うつ病の新規発症予防へ、早期介入プログラム

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糖尿病患者への降圧治療、ベネフィットあるのは140mmHg以上の人/BMJ

 糖尿病患者に対する降圧治療は、ベースライン収縮期血圧値が140mmHg以上であれば、全死因死亡リスクや心血管疾患リスクの低減効果が認められるものの、140mmHg未満では、逆に心血管死リスクが増大することが示された。スウェーデン・ウメオ大学のMattias Brunstrom氏らが、システマティック・レビューとメタ解析の結果、明らかにした。糖尿病患者への降圧治療は、同患者で増大がみられる心血管疾患リスクを低減するが、至適血圧値については議論が分かれている。BMJ誌オンライン版2016年2月24日号掲載の報告。糖尿病患者100例以上のRCTを分析対象に 研究グループは、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)、Medline、Embase、BIOSISを基に、システマティック・レビューとメタ解析を行った。 糖尿病患者100例以上を対象にした無作為化比較試験で、治療期間は12ヵ月以上、降圧薬対プラセボ、2種類の降圧薬対1種類の降圧薬の比較を行ったものや、目標血圧値の違いによる比較を行った試験を分析対象とした。 糖尿病患者の降圧治療について、ベースラインなどの血圧値の違いによる、死亡や心血管疾患発症への低減効果を検証した。 49試験、被験者総数7万例超についてメタ解析 49試験(被験者総数7万3,738例)について、メタ解析を行った。被験者のほとんどが、2型糖尿病の患者だった。 分析の結果、ベースライン収縮期血圧値が150mmHg超の群は、降圧治療により、全死因死亡(相対リスク:0.89、95%信頼区間[CI]:0.80~0.99)、心血管死亡(0.75、0.57~0.99)、心筋梗塞(0.74、0.63~0.87)、脳卒中(0.77、0.65~0.91)、末期腎不全(0.82、0.71~0.94)のリスクが、いずれも有意に低減した。 また、ベースライン収縮期血圧値が140~150mmHgの群でも、降圧治療により、全死因死亡(0.87、0.78~0.98)、心筋梗塞(0.84、0.76~0.93)、心不全(0.80、0.66~0.97)のリスクが有意に低減した。 一方で、ベースライン収縮期血圧値が140mmHg未満の群については、降圧治療により、心血管死リスクは増大し(1.15、1.00~1.32)、全死因死亡リスクも増大の傾向がみられた(同:1.05、0.95~1.16)。メタ回帰分析の結果、ベースライン収縮期血圧が低い人ほどアウトカムは不良で、心血管死(収縮期血圧値10mmHg低下ごとの相対リスク:1.15、95%CI:1.03~1.29、p=0.015)、心筋梗塞(同:1.12、1.03~1.22、p=0.011)については降圧治療による有意な悪影響がみられた。これらの結果を踏まえて著者は、「糖尿病患者で収縮期血圧140mmHg未満の人への降圧治療は、心血管死リスク増大と関連しており、ベネフィットはみられなかった」とまとめている。 なお、降圧治療のリスク低減効果について、治療達成収縮期血圧値(140mmHg超、130~140mmHg、130mmHg未満で分類)で分析した場合も、同様のパターンがみられた。

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脳卒中後の降圧目標、130mmHg vs.140mmHg/BMJ

 脳卒中または一過性脳虚血発作歴のある患者に対し降圧治療を行う際、目標収縮期血圧値を140mmHgに設定しても、130mmHgに設定した場合と比べて、12ヵ月後の両群間の降圧差は3mmHgとわずかで、臨床的重要性は同等であることが示された。英国・ケンブリッジ大学のJonathan Mant氏らが、529例を対象に行った非盲検無作為化試験「PAST-BP」の結果、明らかにした。プライマリケアにおいて、脳卒中/一過性脳虚血発作後患者の異なる目標血圧値に関する試験は、これが初めてという。BMJ誌オンライン版2016年2月24日号掲載の報告。99ヵ所の一般診療所を通じ529例を追跡 研究グループは2009~11年にかけて、英国99ヵ所の一般診療所を通じ、脳卒中または一過性脳虚血発作を発症し、収縮期血圧値が125mmHg以上の529例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、目標血圧値を130mmHg未満またはベースライン血圧値が140mmHg未満の場合には10mmHg低下を目標とする厳格降圧群と、目標血圧値を140mmHg未満とする標準降圧群に割り付けた。 目標血圧値が異なるほかは、両群の患者には同様に、プライマリケアチームによる積極的なマネジメントが実施された。 主要評価項目は、ベースラインから12ヵ月時点での収縮期血圧値の変化だった。降圧差は2.9mmHg、140mmHg未満目標で臨床的に意義ある降圧は得られる 被験者529例(平均年齢72歳)のうち、主要解析に含まれたのは379例(厳格降圧群182例、標準降圧群197例)だった。 厳格降圧群の平均収縮期血圧値は、ベースラインから12ヵ月間で16.1mmHg低下し、127.4mmHgだった。一方、標準降圧群は12.8mmHg低下の129.4mmHgで、両群間の差は2.9mmHg(95%信頼区間:0.2~5.7、p=0.03)だった。 結果を踏まえて著者は、「脳卒中または一過性脳虚血発作歴のある患者に対し、目標収縮期血圧値を140mmHg未満ではなく130mmHg未満に設定しても、降圧のさらなる延伸はわずかで、目標血圧値140mmHg未満で臨床的に重要な降圧は得られる」と結論している。

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認知症の発症率が低下傾向:真打ち登場!(解説:岡村 毅 氏)-489

 Framingham Heart Study(以下フラミンガム心臓研究)から、認知症の発症率が時代とともに低下していることを示すデータが報告された。これまでも認知症発症率の低下を間接的に示す報告はあったが、本報告はフラミンガム心臓研究という古く巨大なコホート研究から得られた知見であり、信頼性は高い。 ただし、わが国においても同様にいえるかどうかに関しては、実証研究を待たねばならないだろう。また、仮に低下傾向であったとしても、今後認知症を持つ人の数は爆発的に増加すること(同時にすでに人口は減少局面にあり、若者はますます減ること)は決定的であり、著者らも考察の最後でいみじくも述べているが、狂喜乱舞するのではなく、「かすかな希望」をもたらす程度に考えたほうがよいだろう。 さて、フラミンガム心臓研究といえば、循環器領域で重大な結果を量産し続けるお化けスタディであるが、認知症に関しては、うつ症状の既往(若い頃のものでも)が認知症発症の危険因子という報告1)をまずは思い出す。近年は、ソーシャルネットワークの研究もよく目にする、つまり同性の友人が肥満だと肥満になるリスクが高まる2)とか、さらに幸福3)や孤独4)も凝集する(あるいは伝染する)とかいった類の報告である。ネットワークの先験性として、そもそも友人は遺伝的に近いのだ5)とまで報告されていた。素晴らしい研究だが、ここに至ると人間にとって自由とは何かと考えさせられてしまう。一方で批判もあるようで、BMJ誌は「同じ号で」批判の論文6)を載せており、「ダメな解析をしたら、ニキビ、身長、頭痛もソーシャルネットワークを通して伝染性しました(つまり、こんなのはでたらめです)」と述べていて、痛快な批判合戦である。まあ、私自身はこうした論文の解析方法は門外漢であり、以上はいち精神科医の単なる感想です。 フラミンガム心臓研究や、4大ジャーナルからは目が離せない。参考文献1)Saczynski JS, et al. Neurology. 2010;75:35-41.2)Christakis NA, et al. N Engl J Med. 2007;357:370-379.3)Fowler JH, et al. BMJ. 2008;337:a2338.4)Cacioppo JT, et al. J Pers Soc Psychol. 2009;97:977-991.5)Christakis NA, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014;111:10796-10801.6)Cohen-Cole E, et al. BMJ. 2008;337:a2533.

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Vol. 4 No. 3 ACC/AHA 脂質管理ガイドラインコントロバーシー その経緯と現在の考え

荒井 秀典 氏国立長寿医療研究センターはじめに米国のNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)が中心となって作成したNCEP-ATP III(National Cholesterol Education Program-Adult Treatment Panel)のガイドラインが2001年に発表され、そのガイドラインが2004年に改訂された。心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患の予防のための脂質管理に関しては、本ガイドラインが作成された米国だけでなく、アジアを含め多くの国々で脂質管理のガイドラインとして使われてきたと思われる。2008年頃よりNCEP-ATP IIIの改訂版であるNCEP-ATP-IV作成に向けた作業が行われていたが、結局NHLBIはその作成を断念せざるをえなかったと聞く。その後、American College of Cardiology(ACC)とAmerican Heart Association(AHA)という米国を代表する循環器の学会が、NHLBIと共同で動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)のリスクを減少させるための脂質異常症治療に関するガイドラインを2013年11月に発表した1)。そのガイドラインは、これまでのガイドラインから180度転換を図るものであった。ACC/AHAガイドラインは、脂質異常症に関する3つのcritical questions(CQ)に対する回答の形で作成されており、質の高いrandomized controlled trial(RCT)とメタ解析の論文を中心に系統的にレビューし、作成された。したがって、フォローアップ期間の短いRCTやRCTのサブ解析などは採用されていない。ACC/AHAガイドラインは、これまで数多く実施されてきたスタチンによるRCTおよびそのメタ解析の結果をもとに脂質管理の指針が出された結果となっている。このため、実臨床とは解離したガイドラインとの批判もある。メタ解析についてはCholesterol Treatment Trialists' collaborationなどのメタ解析の結果から2-4)、ハイリスク群における高用量スタチンを推奨するガイドラインとなっている。スタチンによるASCVD発症予防効果が期待できる4つのグループを同定設定されたCQに対してシステマティックレビューを行った結果、スタチン治療による多くの心血管イベント抑制を示すエビデンスおよびそのメタ解析より、治療が有益と判断される以下の4つの患者群が同定された。その4つの患者群とは、「ASCVDを有する患者(2次予防患者)」、「LDL-コレステロール(LDL-C)が190mg/dL以上の患者(続発性は除く)」、「LDL-Cが70~189mg/dLで40~75歳のASCVD既往のない糖尿病患者」、「LDL-Cが70~189mg/dL、ASCVD既往も糖尿病もない40~75歳で、10年間のASCVDリスクが7.5%以上(10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく)の患者」である。治療方針は、図に示すようなアルゴリズムに従って決定される。まず、2次予防で75歳以下の患者に対しては高用量スタチンによる治療を行うべきであり、76歳以上の患者には中用量スタチンによる治療を行う。1次予防においては、家族性高コレステロール血症など極めて冠動脈疾患の発症リスクの高い原発性高脂血症に対する治療の必要性から、LDL-Cが190mg/dL以上で21歳以上であれば、高用量スタチン治療を行う。わが国のガイドラインにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上ある場合には家族性高コレステロール血症の可能性が強くなるため、スタチン治療を考慮すべきであるとしているが、家族性高コレステロール血症でなければ、高用量スタチン治療を推奨しているわけではない。次に40歳から75歳までの糖尿病患者は1型、2型を問わずスタチン治療が推奨されている。なかでも10年間のASCVD発症リスクが7.5%以上の患者においては高用量スタチンが、それ以外では中用量スタチンによる治療が推奨される。4つめのグループとしては、2次予防でもLDL-C 190mg/dL以上でも糖尿病でもなくても、10年のASCVD発症リスクが7.5%以上の群であり、この基準を満たす場合にはスタチン治療の適用となる(表)。このように、治療方針決定のための判断材料としては、10年間のASCVD発症リスクを用いる以外は理解しやすく、治療を行う医師は高用量か中用量のスタチンを選べばよいということで、decision makingが容易となっている。図 動脈硬化性疾患予防のためのスタチン治療の推奨画像を拡大する表 高用量、中用量スタチンの治療対象画像を拡大するLDL-Cおよびnon HDL-Cの管理目標値は設定しない本ガイドラインでは、LDL-Cやnon HDL-Cの管理目標値を設定せず、図に示すように高用量(50%以上のLDL-C低下)あるいは中用量(30~50%のLDL-C低下)のスタチンによる治療が推奨されている。その理由は特定のLDL-Cを目標として(例えば、130mg/dL未満と100mg/dL未満でどちらのグループでよりイベント発症が少ないかなど)比較をしたRCTがないからであると説明されている。わが国の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版でも20~30%のLDL-C低下を目標とすることも考慮すると記載されており、LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンスは現状ではないことに関して異論はないが、日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、アドヒアランスを維持するためには管理目標値が必要であると考えている。したがって、動脈硬化性疾患予防ガイドラインにあるようにLDL-Cの管理目標値を考慮しながら治療にあたるというのがより実際的ではなかろうか。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドラインではLDL-Cの管理目標を設定しているが、“脂質管理目標値は到達努力目標値である”ことも認識すべきである。すなわち、100%その値をクリアすることを求めているわけではない。また、ASCVD予防のための脂質低下治療に関しては、高用量、中用量のスタチンのみが推奨されているが、わが国の保険診療では認められていない用量が推奨されている。非常にリスクが高い場合には、高用量スタチンが選択されるであろうが、日本で認められている最大用量のスタチンを用いることになるであろう。さらに、スタチン以外の薬剤でASCVDの発症リスクを有意に減少させる、あるいはスタチンとの併用で相加的なリスク減少が得られるとのエビデンスは得られなかったとされているが、JELISやACCORD Lipidのサブ解析などのエビデンスも考慮し、わが国のガイドラインでは、スタチン以外の薬剤の使用についても妥当としている。1次予防のための包括的リスク評価本ガイドラインにおいては、米国における5つのコホート研究10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく。年齢、性別、人種(アフリカ系アメリカ人かそれ以外)、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無により、その患者の10年間のASCVD発症リスクが計算される。また、生涯リスクも計算される。しかしながら、このリスクチャートをアジア人に適用することは、リスクの過大評価につながることは容易に想像できる。すでに欧米人の解析でも、NCEP-ATP IIIを適用した場合と比べて、スタチンの治療対象となる患者がかなり増加するとの試算もある。例えば、60歳以上の高齢者はほとんどがスタチンによる治療対象となるといわれている。このようにスタチン治療の適応範囲を広げることは、日本人における動脈硬化性疾患発症リスクを考えても現実的ではない。現在わが国のガイドラインでは、NIPPON DATA80を元にしたリスクチャートを用いており、これが日本人のリスク予測には妥当と考えている。ただ、死亡がエンドポイントとなっているため、今後は発症をエンドポイントとしたリスク評価手法を検討していく必要性はあろう。なおこのガイドラインでは、当然ではあるが、スタチン治療を開始する前に患者とのdiscussionが必要であると述べられており、正しい方向性である。安全性への配慮本ガイドラインでは、採用したRCTの成績に基づいて安全性に関する推奨を行っているが、特にスタチンによる糖尿病の新規発症、筋症(CK上昇を伴わないケースも多い)、認知機能低下などである。スタチンによる糖尿病の新規発症に関してはメタ解析の結果も発表されており、明らかであるが、スタチンによる心血管イベント抑制効果をしのぐものではない。また、メタ解析の結果からスタチンによる糖尿病の新規発症は用量依存性であり、スタチンの用量が少ない日本においては糖尿病の新規発症が欧米に比べ低いことが予想できる。スタチンによる糖尿病の新規発症のメカニズムは十分に明らかになっておらず、今後の検討課題である。バイオマーカーや非侵襲性検査の役割本ガイドラインにおいて、すでに述べたように年齢、性別、人種、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無が主要な危険因子であり、これらの危険因子により計算された10年間のASCVD発症リスクが7.5%未満の際に、高感度CRP、冠動脈のカルシウムスコア、ankle brachial index(ABI)などのバイオマーカーあるいは非侵襲性検査を用いることも考慮してよいとなっているが、そもそも慢性腎臓病(CKD)がリスクとしてカウントされておらず、日本でよく使用されている頸動脈エコーについてもエビデンスの欠如から採用されていない。頸動脈エコーについては、もちろん症例を選ぶべきではあろうが、治療の意欲やアドヒアランスを考えると有用な検査であろう。もちろん、エビデンスの蓄積をさらに進めるべきである。脂質異常症ガイドラインの今後の方向性本ガイドライン作成委員は、本ガイドラインがASCVD抑制のみにフォーカスしたガイドラインであり、脂質異常症の包括的なマネジメントのためのガイドラインではないことは認めている。したがって、今後実施すべき臨床試験について以下のように記載している。すなわち、高TG血症の治療はどうすべきか、non HDL-Cを治療ターゲットとできるか、アポB、Lp(a)、LDL粒子数などのマーカーがリスク評価に使えるか、治療方針決定のための最もよい非侵襲検査はなにか、生涯ASCVDリスクは使えるか、心不全や透析患者のなかでスタチンの恩恵を受けることができるのはどのようなグループか、スタチンによる新規糖尿病発症の長期的な影響はどうなのか、RCTから除外されているグループ(HIV患者、臓器移植患者)へのスタチンの効果はどうなのか、などである。いずれも重要なテーマであるが、RCTにそぐわないものもあり、観察研究などの結果もガイドラインに反映させるべきであろう。まとめ今回のACC/AHAガイドラインの特徴の1つは、脂質管理目標値を設定しないことである。ACC/AHAガイドラインにおける治療指針はスタチンによるRCTのみに基づいているため、LDL-Cを中心とした管理のみが強調されている点は注意が必要であり、レムナントなど他の脂質マーカーにも着目して、残余リスクの管理を考慮しながら治療にあたるべきである。今後、ガイドラインの作成は、ACC/AHAガイドラインのようにRCTのみをベースとしたものになる可能性が高いが、時間、コストなどの問題を考えると観察研究などのエビデンスもある程度は取り入れながら、ガイドラインの作成を行うことが現実的ではないかと思われる。文献1)Stone NJ et al. 2013 ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol to reduce atherosclerotic cardiovascular risk in adults: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2014; 129: S1-45.2)Baigent C et al. Efficacy and safety of cholesterol-lowering treatment: prospective meta-analysis of data from 90,056 participants in 14 randomised trials of statins. Lancet 2005; 366: 1267-1278.3)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaboration et al. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet 2010; 376: 1670-1681.4)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators et al. The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. Lancet 2012; 380: 581-590.

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糖尿病治療薬併用による陰性症状改善効果を検証

 統合失調症の陰性症状の病態生理における炎症、酸化ストレス、代謝異常の明確な中心的役割は、これら症状に対する薬理学的選択肢の可能性に新たな見解をもたらした。ピオグリタゾンは、抗炎症および抗酸化性を有する糖尿病治療薬である。イラン・テヘラン大学のNegar Iranpour氏らは、統合失調症の陰性症状の軽減を目的としたリスペリドンの補助療法としてのピオグリタゾンの有効性を評価した。Human psychopharmacology誌オンライン版2016年2月8日号の報告。 本試験は、プラセボ対照無作為化二重盲検試験にて行われた。対象は、PANSS陰性尺度20以上の慢性期統合失調症患者40例。対象患者は、リスペリドンに加えてピオグリタゾン(30mg/日)またはプラセボを併用する群に無作為に割り付けられ、8週間の投与を受けた。患者の症状と有害事象は、ベースライン、2、4、6、8週目に評価した。主要評価項目は、PANSS陰性尺度スコア減少の2群間の差とした。 主な結果は以下のとおり。・試験終了時、ピオグリタゾン併用患者は、プラセボ群と比較して、PANSS陰性尺度スコアの有意な改善が認められた(p<0.001)。また、PANSS総スコアの有意な改善も認められた(p=0.01)。・本試験では、統合失調症の陰性症状軽減にピオグリタゾン増強療法が有効である可能性が示唆された。関連医療ニュース 閉経後の女性統合失調症、陰性症状改善にSERM併用が有用 統合失調症の陰性症状軽減へ新たな選択肢となりうるか 統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか

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インクレチン製剤で膵がんリスクは増大するか/BMJ

 糖尿病治療薬であるインクレチン製剤による膵がんの発症リスクは、スルホニル尿素(SU)薬と変わらないことが、カナダ・マギル大学のLaurent Azoulay氏らが行ったCNODES試験で確認された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年2月17日号に掲載された。インクレチン製剤は低血糖のリスクが低く、体重への好ましい作用があるが、膵がんとの関連が示唆されている。インクレチン製剤の膵がんリスクについては、これまでに6件の観察研究があるが、結果は相反するものであり、方法論上の欠陥の指摘もあるという。97万例以上を追跡し、コホート内症例対照研究で関連を評価 CNODES試験は、2型糖尿病患者の治療におけるインクレチン製剤とその膵がんリスクの関連を検証する国際的な多施設共同コホート研究(カナダ保健省健康研究所の助成による)。 カナダ、米国、英国の6施設が参加し、2007年1月1日~13年6月30日の間に抗糖尿病薬による治療を開始した97万2,384例が解析の対象となった。 各参加施設においてコホート内症例対照研究を行った。膵がん発症例に対し、性別、年齢、登録日、糖尿病治療期間、フォローアップ期間をマッチさせた対照を最大20例まで設定した。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症のハザード比(OR)および95%信頼区間(CI)を推算した。また、薬剤のクラス別(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)および使用期間別(累積使用期間、治療開始後期間)の膵がんリスクの評価を行った。 DPP-4阻害薬はリナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチンが、GLP-1受容体作動薬にはエキセナチド、リラグルチドが含まれた。使用期間が長くなると、リスクが低下する傾向に 全体(97万2,384例)の平均年齢は56.9歳、男性が50.9%含まれた。各施設のフォローアップ期間中央値は1.3~2.8年であり、全体のフォローアップ期間は202万4,441人年だった。 この間に、1,221例が新規に膵がんを発症した(粗発症率:0.60/1,000人年)。背景因子をマッチさせた対照は2万2,298例であった。 対照群に比べ、膵がん群は肥満が少なかったが、糖尿病のコントロール不良やアルコール関連疾患を有する患者が多く、喫煙歴や急性/慢性膵炎歴を有する症例も多かった。 SU薬の使用例はインクレチン製剤使用例よりも年齢が若く、治療期間が長く、肥満の頻度が高く、HbA1c値が高かった。また、インクレチン製剤使用例は、細小血管合併症の診断例が少なかった。膵炎の既往例は両薬剤で同等だった。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症の補正HRは1.02(95%CI:0.84~1.23)であり、有意な差を認めなかった。また、SU薬に比べて、DPP-4阻害薬(補正HR:1.02、95%CI:0.84~1.24)およびGLP-1受容体作動薬(1.13、0.38~3.38)の膵がん発症リスクは、いずれも同等であった。 累積使用期間が1年未満の症例では、インクレチン製剤で膵がんリスクが増大したが有意ではなかった(補正HR:1.53、95%CI:0.93~2.51)。これに対し、有意差はないものの、投与期間が1~1.9年の症例ではリスクが低下し(1.07、0.82~1.39)、2年以上の症例ではむしろインクレチン製剤のほうがリスクは低くなった(0.62、0.36~1.07)。 治療開始後期間についても、インクレチン製剤の膵がんリスクに有意な影響はなかった(1~1.9年=HR:1.06、95%CI:0.86~1.31、2年以上:0.93、0.60~1.45)。 個々のインクレチン製剤についても、同様の知見が得られた。 著者は、「インクレチン製剤に起因するがんが潜在している可能性があるため監視を継続する必要があるが、これらの知見によりインクレチン製剤の安全性が再確認された」としている。

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高校スポーツ界の皮膚感染症、初の全国疫学調査

 米国では高校のスポーツ選手、とくにレスリング選手において以前から、皮膚感染症が大きな問題であったが、これまで全国的に高校のスポーツ選手における皮膚感染症についての疫学を調査した報告はない。米国・ミシガン州立大学のKurt A. Ashack氏らは、便宜的標本を用いて解析し、皮膚感染症は高校のスポーツ関連有害事象の1つとして重要であることを明示した。著者は、「スポーツ関連皮膚感染症の疫学を理解することが、皮膚感染症の認識とエビデンスに基づく予防を促進するだろう」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年1月29日号の掲載報告。 研究グループは、High School Reporting Information Onlineにおける2009/2010から2013/2014までの便宜的標本を用い、報告されたスポーツ関連皮膚感染症について調査した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間において、athlete-exposures(1人の選手が1回の練習または試合へ参加する単位。以下、AE)は2,085万8,781例で、474件の皮膚感染症が報告された。発生頻度は、2.27件/10万AEであった。・皮膚感染症の発現率が最も大きかったスポーツはレスリング(73.6%)で、次いでフットボール(17.9%)であった。・最も頻度の高い皮膚感染症は、細菌感染症(60.6%)と白癬感染症(28.4%)であった。・発現部位は頭部/顔面(25.3%)が最も多く、次いで前腕(12.7%)であった。・本研究の限界として、全米アスレチックトレーナー協会(NATA)に加入しているスポーツトレーナーがいる高校のみを対象としていることが挙げられる。ただし、データの報告者はスポーツトレーナーであり、データの質改善に寄与していた。

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