サイト内検索|page:1174

検索結果 合計:35647件 表示位置:23461 - 23480

23461.

35ヵ国の余命予測、日本はまだ伸びるのか/Lancet

 先進工業国はいずれも余命が延長し続け、2030年までに50%以上の確率で韓国女性の寿命が90歳を超えるとの研究結果が、Lancet誌オンライン版2017年2月22日号で報告された。研究を行った英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのVasilis Kontis氏らは、「90歳の壁は、21世紀の折り返し点ではまだ破られないと考えられていたが、とくに高齢女性の寿命の延長が大きく貢献し、達成時期が早まると予測される」と指摘している。信頼性の高い方法で35ヵ国の余命を予測 研究グループは、予測モデルの選択に起因する不確実性を考慮し、単一モデルよりも予測能が優れる方法として、確率的ベイジアンモデル平均化(BMA)アプローチを用い、国別の年齢別死亡率および余命の予測を行った(英国医学研究評議会[MRC]、米国環境保護庁[EPA]の助成による)。 BMAアプローチには、確率的に最終予測に貢献する21の予測モデルを用いた。質の高い人口動態統計データを有する35の先進工業国について、2030年までの年齢別死亡率を予測した。この年齢別死亡率を用いて、出生時と65歳時の余命を算出し、生命表で70歳前の死亡の確率を推定した。日本女性が2030年まで第1位を続ける確率は22% 2030年の出生時余命(寿命)は、35ヵ国全体で女性が65%以上、男性は85%以上の確率で2010年よりも延長するが、延長の幅は国によってばらつきがあると予測された。一方、2030年までに、日本女性の余命は、35%の確率で伸びが留まるか短縮し、次いで14%の確率でブルガリア男性、11%の確率でフィンランド女性の余命が、停滞または短縮すると予測された。 韓国女性の2030年の出生時余命は、90%の確率で86.7歳(2012年の世界最長の出生時余命に相当)を超え、57%の確率で90歳以上に達すると予測された。次いで、フランス、日本、スペインの順で女性の出生時余命が長かった。日本女性は、22%の確率で2030年まで余命世界一が継続し、14%の確率で第2位となる可能性が示唆された。 男性は、韓国、オーストラリア、スイスの2030年の出生時余命が、95%以上の確率で80歳を上回り、27%以上の確率で85歳を超えると予測された。また、女性と同様に、韓国のほか、ハンガリー、スロベニアのような中央ヨーロッパの新興経済国で、余命の延長が大きいと予測された。 これらの傾向の結果として、2030年までに女性の余命は韓国が日本に代わって第1位となり、男性の余命は韓国が現在の第1位であるオーストラリアに追いつく可能性が示唆された。米国、日本、スウェーデン、ギリシャ、マケドニア、セルビアは、男女とも予測余命の延長分が最も短かった。 女性の男性に対する余命の優越性は、メキシコ(女性が男性よりも延長)、チリ、フランス、ギリシャ(男女の延長分がほぼ同じ)を除き、2030年までに小さくなると予測された。 年齢層別の死亡率減少への寄与の解析では、女性の出生時余命の予測延長分の半分以上(多くの国では3分の2以上)が、65歳以上の高齢者の寿命の延長によるものであった。同様のパターンが、オーストラリア、アジア太平洋地域、北米、西ヨーロッパの男性にも認められた。 著者は、「余命の延長には、健康的な加齢、教育・労働・引退の枠組みの再構築、保健医療や社会的ケアへの出資を支援する施策を必要とするが、今回の予測では寿命の継続的な延長の達成が示唆された」としている。

23462.

高齢の閾値下うつ病、協働ケアで改善/JAMA

 高齢の閾値下うつ病患者の治療において、協働ケア(collaborative care)は通常ケアに比べ、うつ症状を短期的に改善する可能性があることが、英国・ヨーク大学Simon Gilbody氏らが行ったCASPER試験で示された。英国では、閾値下うつ病の1次治療における抗うつ薬の有効性のエビデンスはほとんどないため推奨されておらず、心理療法は高強度の治療形態として、より重度の病態の治療として留保されるのが一般的だという。協働ケアは、メタ解析で閾値を満たすうつ病への効果が示されている。JAMA誌2017年2月21日号掲載の報告。プライマリ・ケアでの有効性を通常ケアと比較 CASPER試験は、閾値下うつ病の高齢患者を対象に、プライマリ・ケアにおける協働ケアによる介入の、症状緩和および重症化の予防効果を評価するプラグマティックな多施設共同群間並行無作為化試験(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢65歳以上、標準化された簡易2項目質問法(brief 2-item case-finding tool)でうつ症状がみられ、精神疾患簡易構造化面接法(MINI ver. 5.0)でDSM-IV基準の閾値下うつ病と診断された患者であった。 被験者は、協働ケアを受ける群または通常のプライマリ・ケアを受ける群に無作為に割り付けられた。協働ケアは、気分症状に関連する機能障害の評価を行うケースマネジャーが調整した。患者は行動活性化プログラムに参加し、週1回の研修を平均6回受けた。ケースマネジャーは、必要に応じてプライマリ・ケア医や精神科医の指導を受けた。 主要評価項目は、フォローアップ期間4ヵ月時の患者報告によるうつ病の重症度とし、患者健康質問票(PHQ)-9スコア(0~27点、点が高いほどうつ病が重度)で評価した。 2011年5月24日~2014年11月14日に、英国の32のプライマリ・ケア施設に705例が登録された。協働ケア群に344例が、通常ケア群には361例が割り付けられた。評価項目は全般に優れるが、試験参加維持率が低い ベースラインの全体の平均年齢は77(SD 7.1)歳、女性が58%を占めた。平均PHQ-9スコアは、協働ケア群が7.8(SD 4.71)、通常ケア群は7.8(SD 4.64)だった。4ヵ月時までに協働ケア群の24%(82/344例)、通常ケア群の10%(37/361例)がフォローアップできなくなり、試験参加維持率は83%だった。主要評価項目の解析は、それぞれ274例、327例で行われた。 4ヵ月時の平均PHQ-9スコアは、協働ケア群が5.36点と、通常ケア群の6.67点に比べ有意に低かった(平均差:-1.31、95%信頼区間[CI]:-1.95~-0.67、p<0.001)。この差は、12ヵ月時にも保持されていた(5.93 vs.7.25点、平均差:-1.33、95%CI:-2.10~-0.55、p=0.001)。 4ヵ月時までにうつ病基準(PHQ-9スコア≧10点)を満たした患者(新規にうつ病と診断された患者)の割合は、協働ケア群が17.2%(45/262例)、通常ケア群は23.5%(76/324例)であり、有意な差は認めなかった(差:-6.3%、95%CI:-12.8~0.2、相対リスク[RR]:0.83、95%CI:0.61~1.27、p=0.25)が、12ヵ月時には協働ケア群が有意に低かった(15.7 vs.27.8%、差:-12.1%、95%CI:-19.1~-5.1、RR:0.65、95%CI:0.46~0.91、p=0.01)。 抗うつ薬の使用率は、4ヵ月時(9.9 vs.14.3%、RR:0.73、p=0.08)、12ヵ月時(9.8 vs.15.7%、RR:0.84、p=0.33)とも両群に差はなかった。また、健康関連QOLの評価では、SF-12の身体機能(4ヵ月時:p<0.001、12ヵ月時:p=0.02)および心の健康(4ヵ月時:p=0.009、12ヵ月時:p=0.007)が、いずれも協働ケア群で有意に良好であった。 不安症状の評価では、全般性不安障害評価尺度(GAD-7)が、4ヵ月時(p<0.001)、12ヵ月時(p=0.001)とも、協働ケア群で良好だった。また、12ヵ月間に、協働ケア群の5例(1.5%)、通常ケア群の18例(5.0%)が死亡し、有意な差がみられた(p=0.008)。 著者は、「協働ケアの効果は12ヵ月時も持続していたが、症例の減少率が高いため結果の信頼性には限界があり、長期的な効果の評価にはさらなる研究を要する」としている。

23463.

テロメアが長いとリスクが高い疾患は?

 テロメアの長さと、がんや非腫瘍性疾患の発症率の関連について、その因果関係と強さは不明である。今回、Telomeres Mendelian Randomization Collaborationによるメンデル無作為化研究から、テロメアが長いと数種のがんリスクを上げる一方で、心血管疾患など、いくつかの非腫瘍性疾患のリスクを下げる可能性があることがわかった。JAMA oncology誌オンライン版2017年2月23日号に掲載。 本研究では、生殖細胞系の遺伝子変異を操作変数として、疾患リスクとテロメア長の因果関係を評価した。データは、2015年1月15日までに発行されたGenomewide association study(GWAS)から、生殖細胞系の遺伝子変異を調べた非感染性疾患に関するデータを選択した。同定された163件の非感染性疾患に関するGWASのうち、103件でサマリーデータが入手可能であった。主要評価項目は、生殖細胞系の遺伝子変異によるテロメアの伸長の標準偏差(SD)当たりの各疾患のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)とした。 主な結果は以下のとおり。・サマリーデータは35のがんと48の非腫瘍性疾患について利用可能で、症例は42万81人(疾患当たりの人数の中央値: 2,526人)、対照は109万3,105人(同:6,789人)であった。・生殖細胞系列の遺伝子変異によるテロメア伸長は、部位特異的ながんのリスク増加とおおよそ関連していた。・神経膠腫では、遺伝子変異によるテロメア伸長の1-SD変化当たりのOR(95%CI)が5.27(3.15~8.81)と最も高かった。そのほか、ORが高い順に以下のとおりで、稀少ながんや幹細胞分裂率の低い組織部位で関連が強かった。  低悪性度漿液性卵巣がん:4.35(2.39~7.94)  肺腺がん:3.19(2.40~4.22)  神経芽細胞腫:2.98(1.92~4.62)  膀胱がん:2.19(1.32~3.66)  悪性黒色腫:1.87(1.55~2.26)  精巣がん:1.76(1.02~3.04)  腎臓がん:1.55(1.08~2.23)  子宮内膜がん:1.31(1.07~1.61)・非腫瘍性疾患については、冠動脈疾患(OR:0.78、95%CI:0.67~0.90)、腹部大動脈瘤(OR:0.63、95%CI:0.49~0.81)、セリアック病(OR:0.42、95%CI:0.28~0.61)、間質性肺疾患(OR:0.09、95%CI:0.05~0.15)を除き、遺伝子変異によるテロメアの伸長と精神疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、糖尿病、その他の非腫瘍性疾患のリスクとの関連を示すエビデンスはほとんどなかった。

23464.

皮脂欠乏症

皮脂欠乏症(乾皮症)【皮膚疾患】◆症状皮膚の水分が失われ、細かい亀裂や鱗屑という白い粉のようなものが見られる病気です。時にかゆくなる場合もあります。◆原因とくに乾燥する冬に起こりやすく、高齢者に多い病気です。◆治療と予防・外用薬(保湿の塗り薬)で治療します。・予防として、入浴時には体をやさしく洗い、お風呂上りにはクリームなどで保湿しましょう。また、室内では湿度を保ち、症状がある人は、電気毛布などを使わないようにしましょう。監修:ふくろ皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.袋 秀平氏

23465.

MRI撮影の必要性を小児に伝える必殺手段とは?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第86回

MRI撮影の必要性を小児に伝える必殺手段とは? 足成より使用 私が研修医のころ、といっても10年近く前の話ですが、MRI撮影が必要な3歳児がいました。ご存じのとおり、MRI撮影は時間がかかります。患児だけ閉鎖空間に置き去りにすると、ギャン泣き必至です。年齢によっては、MRI撮影の必要性を話せばわかるかもしれない。しかし私が担当した患児は、病院を受診して興奮気味のせいでしょう、撮影中じっとすることは不可能でした。母親が一緒にMRI室に入ったものの、イヤイヤがひどく鎮静剤を用いざるを得ませんでした。 Szeszak S, et al.Animated educational video to prepare children for MRI without sedation: evaluation of the appeal and value.Pediatr Radiol. 2016;46:1744-1750.小児科においてMRI撮影は、医師にとっても患児にとってもストレスが大きいものです。私も腰椎椎間板ヘルニアをもっているので、幾度となくMRI撮影を受けたことがありますが、あの閉鎖空間でじっと動かずに過ごすのはツライですよね。小児科では、MRI撮影に鎮静を要することがあります。ローテートする研修医は、患児と一緒にMRI室に入ることも。研修医時代、「うまくMRI撮影のことを子供に説明する方法があれば…」と思ったりしたものです。イギリスのある研究グループは、アニメビデオを用いて子供にMRI撮影について説明する方法が有効かどうか調べました。5~11歳の24例の健康な小児が本研究に登録されました。鎮静が必要だろうな、と思われる年齢よりはちょっと高めに設定したようですね。そりゃ2歳や3歳では、アニメビデオの内容が理解できませんからね。アニメビデオを見る前後に複数のアウトカムに対してリッカート尺度を用いて聴取し、その中央値の変化を調べました。さて結果はどうだったでしょうか。アニメビデオを見ることで、何の目的で検査をしているのか、金属がないかどうかをチェックする意義、検査中じっとしていることへの理解が有意に改善しました。また、検査に対する不安に関しても有意な改善がみられました。174秒のアニメビデオのうち、平均98.9%の時間、画面を見続けることができました。つまり、しっかりアニメビデオを見て、内容を理解してくれた患児が多かったということです。MRI撮影に関する小児向けのアニメビデオが普及すれば、鎮静剤の使用が減るだけでなく、医師・患児双方のストレスも大きく軽減するかもしれませんね。インデックスページへ戻る

23466.

うつ病や自殺と脂質レベルとの関連

 血清脂質レベルはうつ病や自殺念慮と関連しているといわれているが、これらの正確な関連はよくわかっていない。韓国・カトリック大学校のJihoon Oh氏らは、大規模サンプルにおける脂質レベルと自殺念慮を伴ううつ病との関連を調査した。Journal of affective disorders誌オンライン版2017年2月6日号の報告。 韓国の全国サンプルより、血清脂質レベルとPHQ-9(Patient Health Questionnaire 9)を用いて測定した軽度うつ病との関連を調査した。第6回韓国国民健康栄養調査(KNHNES VI)に参加した男性2,055人、女性2,894人のデータを使用した。高比重リポタンパクコレステロール(HDL-C)、低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド、総コレステロールの血清濃度で二分し、分析にはコンプレックスサンプルのロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病は、成人男性では高HDL-C(40mg/dL以上)、成人女性では高トリグリセリド(150mg/dL以上)と有意な関連が認められた。・中年(45~64歳)では、うつ病の増加(OR:2.20、95%CI:1.26~3.85)および自殺率の増加(OR:3.66、95%CI:1.41~9.51)は、高トリグリセリドと関連していた。・異常な脂質レベルの増加は、女性(OR:1.34、95%CI:1.12~1.60)および中年(OR:1.43、95%CI:1.12~1.82)のうつ病有病率の増加と関連していた。 著者らは「本研究は、断面研究デザインであるため、脂質レベルとうつ病の因果関係を調べることは困難であり、自殺率の評価にはさらなる検証が必要である」としながら、「大規模サンプルデータにおいて、高HDL-C、高トリグリセリドとうつ病との関連が示唆された。トリグリセリドは、若年および中年で自殺率との関連が高かったが、高齢者では異なった。さらなる評価により、民族間での血清脂質レベルと自殺を伴ううつ病との関係を詳細に説明できるであろう」としている。関連医療ニュース 血圧低下は認知症リスクを増加させるか、減少させるか 魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当か 揚げ物はうつ病の天敵か:日医大

23467.

高齢2型糖尿病、低過ぎるHbA1cは認知症リスク?

 ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病患者のQOL維持のための血糖コントロール改善の重要な指標とされているが、高齢者には低過ぎるHbA1cが害を及ぼす恐れがある。今回、金沢医科大学の森田 卓朗氏らの調査により、地域在住の高齢2型糖尿病患者において、HbA1cと要支援/要介護認定のリスクがJ字型を示すことが報告された。また、高齢の2型糖尿病患者での低過ぎるHbA1cが、認知症による後年の障害リスクに関連する可能性が示唆された。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版2017年2月11日号に掲載。 著者らは、血糖降下薬またはインスリンを投与されている65~94歳の糖尿病患者184例を調査した。エンドポイントは初回の要支援/要介護認定および/または死亡で、HbA1c(4区分)と要支援/要介護認定リスクおよび/または死亡との関係について、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて判定した。 主な結果は以下のとおり。・5年間に42例が初回の要支援/要介護認定を受け、13例が死亡した。・HbA1cと要支援/要介護認定リスク(年齢、性別、交絡変数を調整)との関係は、HbA1cが6.5%以上7.0%未満で最低となるJ字型を示し、6.0%未満では要支援/要介護認定リスクが増加し、最低レベルに比べたハザード比(HR)は3.45(95%CI:1.02~11.6、p=0.046)であった。・HbA1cが6.0%未満の患者では、6.0%以上の患者と比較し、(関節痛/骨折や脳卒中など他の障害ではなく)認知症によって要支援/要介護を認定されるリスクが高かった(HR:12.5、95%CI:3.00~52.2、p=0.001)。

23468.

フィブリノゲン濃縮製剤、ハイリスク心臓手術中の出血を減少させず/JAMA

 ハイリスク心臓手術において、術中出血に対しフィブリノゲン濃縮製剤を投与しても、術中出血量は減少しなかった。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのSuleyman Bilecen氏らが、術中出血に対するフィブリノゲン濃縮製剤の効果を検証した無作為化臨床試験の結果を報告した。フィブリノゲン濃縮製剤は、凝固障害を回復させ術中出血を減らす可能性があり、心臓手術中の出血管理に使用されている。しかし、これまで行われた心臓外科における無作為化臨床試験は2件のみで、フィブリノゲン濃縮製剤の有効性に関するエビデンスは確立されていなかった。JAMA誌2017年2月21日号掲載の報告。術中出血を呈した患者で、投与後から手術終了までの出血量を評価 研究グループは2011年2月~2015年1月に、オランダ・Isala Zwolle病院にて無作為化比較二重盲検プラセボ対照試験を実施した。 対象は、18歳以上で、待機的ハイリスク心臓手術(冠動脈バイパス術[CABG]と弁修復術/置換術の併用、複数弁置換術、大動脈基部再建術、上行大動脈/大動脈弓再建術)を受け、術中出血(胸腔から吸引される血液量が5分間で60~250mL)を呈した患者120例である。フィブリノゲン群(60例)またはプラセボ群(60例)に無作為に割り付け、前者では投与後の血漿フィブリノゲン濃度2.5g/Lを目標に、フィブリノゲン濃縮製剤を無菌水50mLで希釈して静脈投与し、後者はアルブミン2gを生理食塩水50mLで希釈して静脈投与した。 主要評価項目は、介入(人工心肺離脱後の試験薬投与)から閉胸までの出血量(mL)。また、フィブリノゲン濃縮製剤の安全性および忍容性について評価するため、30日院内死亡、心筋梗塞、脳血管イベント/一過性脳虚血性発作、腎機能障害/腎不全、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、手術合併症などを解析した。出血量はフィブリノゲン濃縮製剤とプラセボで有意差なし 120例(平均[±SD]71±10歳、女性37例[31%])中、CABG+弁修復術/置換術施行例が72%を占め、人工心肺時間(平均±SD)は200±83分であった。 主要評価項目の出血量中央値は、フィブリノゲン群50mL(四分位範囲[IQR]:29~100mL)、プラセボ群70mL(IQR:33~145mL)で(p=0.19)、絶対差は20mL(95%CI:-13~35mL)であった。 有害事象は全体で脳卒中/一過性脳虚血発作6例、心筋梗塞4例、死亡2例、腎機能障害/腎不全5例、術後5日以内の再開胸術9例を認めた。このうちそれぞれ4例、3例、2例、3例および4例がフィブリノゲン群であり、有害事象はフィブリノゲン群のほうが多かった。

23469.

1回の軟性S状結腸鏡検査で、大腸がん発症・死亡を抑制/Lancet

 1回の軟性S状結腸鏡検査で、大腸がんの発症や死亡が抑制され、その有効性は17年以上にわたり持続することが明らかとなった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのWendy Atkin氏らが、55~64歳を対象とした無作為化比較試験UK Flexible Sigmoidoscopy Screening Trial(UKFSS試験)の長期追跡結果を報告した。大腸がんは世界で3番目に多いがんで、その予防や早期発見は重要な課題となっている。UKFSS試験の追跡期間約11年時の解析では、軟性S状結腸鏡検査の1回施行で、大腸がんの発生が33%、死亡率が43%減少することが示されていた。Lancet誌オンライン版2017年2月21日号掲載の報告。男女約17万人をスクリーニング実施群と非実施群に無作為化 研究グループは、1994年11月14日~1999年3月30日の期間に、事前のアンケートで軟性S状結腸鏡検査によるスクリーニング(検査を1回施行し、ポリープなどの病変が発見された場合は切除)の案内があれば参加すると回答し、適格基準を満たした55~64歳の男女17万432例を、軟性S状結腸鏡検査を実施する介入群と実施しない対照群に、ブロックランダム化法(ブロックサイズ12、試験施設・一般診療所・世帯類型で層別化)により、1対2の割合で無作為に割り付けた。介入の特性上、医療スタッフの盲検化は困難であったが、対照群およびまだ無作為化されていない参加者には割り付け状況がわからないよう、無作為化は数回に分けてなされた。 主要評価項目は、大腸がんの発症率および死亡率。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)をintention-to-treat解析およびper-protocol解析で算出し評価した。スクリーニングを受けた場合、大腸がん発症率は35%、死亡率は41%減少 解析には17万34例が組み込まれた。介入群5万7,098例、対照群11万2,936例で、介入群のうち4万621例(71%)がスクリーニングを受け、1万6,477例(29%)はスクリーニングを受けなかった。 追跡期間中央値17.1年の間に、介入群1,230例、対照群3,253例が大腸がんと診断され、そのうちそれぞれ353例、996例が大腸がんで死亡した。Intention-to-treat解析では、対照群と比較し介入群の大腸がん発症率は有意に26%低下し(HR:0.74、95%CI:0.70~0.80、p<0.0001)、死亡率は有意に30%低下した(HR:0.70、95%CI:0.62~0.79、p<0.0001)。per-protocol解析では、検査未実施で補正した場合、スクリーニングを受けた集団において大腸がん発症率は35%低下し(HR:0.65、95%CI:0.59~0.71)、死亡率は41%低下した(HR:0.59、95%CI:0.49~0.70)。 著者は、今回の試験は、スクリーニングへの参加の意志に基づいて選別されたコホートが対象という限界はあるとしつつ、「過去10年で内視鏡技術は進歩しており、将来、軟性S状結腸鏡検査の有益性は、今回得られた結果よりもさらに拡大する可能性が考えられる」と述べている。

23470.

あれは幻だったのか?RA系阻害薬の“降圧を超えた臓器保護作用”(解説:石上 友章 氏)-648

 米国・ニューヨーク大学のBangalore氏らは、“Renin angiotensin system inhibitors for patients with stable coronary artery disease without heart failure: systematic review and meta-analysis of randomized trials.”と題するメタ解析・システマティックレビューで、『改めて』RA系阻害薬に、降圧効果を超えて虚血性心疾患を抑制する効果がないことを明らかにした。 あえて『改めて』と紹介したのは、言うまでもない。一連のディオバン関連の臨床研究不正の不名誉な嚆矢の1つともいえる、KYOTO Heart Studyが発表された2009年ESC Hotline Commentaryとして、本試験に対する慎重な解釈を表明したのが、Bangalore氏ならびに、筆頭著者のMesserli氏であった1)。共著者の1人であるRuschitzka氏にいたっては、学会場で『These "wonderful" results "were almost too good to be true."』と言い放ったと伝えられている2)。  彼らの直感的なコメントは8年の時を経て、科学的に正当な手法によって堂々と証明された。不正を見抜く確かな洞察力と、洞察を洞察のままでおくことなく自らの手で科学的な手法を用いて証明する、真の科学的態度に最大限の敬意を表したい。本研究の成果は、アブストラクトの最後の一文に凝縮されている。“Evidence does not support a preferred status of RASi over other active controls. ” RA系阻害薬の降圧を超えた臓器保護作用は、作られたエビデンスにほかならなかったのではないのか?

23473.

「カイジ」と「アカギ」(後編)【ギャンブル依存症とギャンブル脳】

今回のキーワードカジノを含む統合型リゾート(IR)行動経済学システム化報酬予測ニアミス効果損失回避欲求自助グループ(GA)なぜギャンブルは「ある」の? -ギャンブル脳ギャンブルをするのは男性が多いという理由について、因果関係、上下関係、契約関係を重視するという男性ならではのシステム化の心理があることが分かりました。それでは、そもそもなぜギャンブルは「ある」のでしょうか?その答えは、原始の時代に生きるか死ぬかの「ギャンブル」をして生き抜く遺伝子が現代の私たち(特に男性)に引き継がれているからです。これは、ギャンブル脳と呼ばれています。そして、これによって日常生活に支障を来している場合が、ギャンブル依存症と言えます。また、ギャンブル脳を含め人の心理行動と経済活動の関係を研究するのが、行動経済学です。ここから、このギャンブル脳を、3つの要素に分けて、その進化心理学的な起源を探ります。そして、その行動経済学的な応用を紹介しましょう。(1)「想像するだけでワクワクする」a. 報酬予測1つ目は、「想像するだけでワクワクする」という報酬予測(動機付けサリエンス)です。これが、心を奪われるという心理につながっていきます(渇望)。例えば、「勝った時の興奮が忘れられない」「あのスリルをもう一度味わいたい」「ルーレットが回っている瞬間が最も興奮する」という気持ちです。これは、ギャンブルに限らず、例えば「旅行は計画している時が一番楽しい」「遠足の前日は眠れない」など、初めてで不確定ですが、楽しいことが予測される非日常の直前の心理が当てはまるでしょう。この報酬予測の心理を引き出すには、すでにその快感(報酬)の体験をしていることが前提です。この点で、パチンコや競馬などと違い、宝くじにおいては、基本的に勝ちの快感の体験を味わうことはできません。よって、その代わりに、宝くじの当選額を億単位まで増額し射幸心を煽った上で、当選の疑似体験をCMで植え付けることが盛んに行われます。実際に、サルによる動物実験でも実証されていますが、確実な報酬よりも、不確実な報酬の「待ち時間」に、最も脳内で快楽物質(ドパミン)が放出されていることが分かっています。そして、この不確実で大きな報酬の繰り返しによって、「待ち時間」の快楽物質(ドパミン)の放出がより早く、より多くなっていきます。逆に言えば、「待ち時間」のあとの実際の快感(報酬)は、「待ち時間」の最中の快感(報酬)よりも相対的に目減りしていきます。簡単に言えば、実際に勝った喜びの快感が麻痺していき、「もっともっと」という心理が強まっていきます(耐性)。さらに、この相対的な快感の目減りにより、日常生活で他の喜びも麻痺していきます。ちなみに、パーキンソン病の患者が治療薬であるドパミン刺激薬を内服すると、8%がギャンブル依存症になることがアメリカでは報告されています。また、ドパミン部分作動薬のアリピプラゾールによってギャンブル行動が悪化したケースも報告されています。同じように、注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療薬である精神刺激薬のメチルフェニデートも、ギャンブル行動の悪化が懸念されます。そもそも、ADHDの特徴である衝動性は、ギャンブル障害のリスク因子でもあります。b. 強めるのはこの報酬予測をより強めるには、自分がギャンブルの過程にかかわることです(直接介入効果)。例えば、スロットマシンで、3つ数字が揃うのを何もせずにじっと待っているよりも、スロットのスタートとストップのタイミングを決められるようにした方が、よりのめり込んでしまいます。また、パチンコの出玉率は、台ごとに1段階から6段階までの設定が可能で、「勝ちやすい台」「負けが込む台」という偶発性がわざと演出されています。台選びによって少しでも勝敗を左右させる余地があると、まるであたかも自分の運命を自分で選んでいる感覚になるからです。競馬予想で言えば、馬や騎手の過去の成績や現在の状態の下調べを入念にすればするほど、予想への思い入れが強くなり、期待感が増していく心理が当てはまります。よって、勝負の結果にそのまま関与できる賭け麻雀、賭けポーカー、賭けゴルフなどは、より依存性が強いギャンブルであり、ほとんど全ての国で禁止されています。c. 進化心理学的な起源原始の時代、生きるか死ぬかの最中、獲物が罠にかかる直前、獲物を仕留めようとする直前に、より興奮する種がより生き残ったのでしょう。なぜなら、その「待ち時間」に仕留めた時の喜びをすでに噛みしめていた方が、より粘るからです。農耕牧畜の安定した文明社会では、そのような生きるか死ぬかの状況はなくなりました。しかし、その興奮を求める心理は残ったままなのでした。まさに「ハンターの血」が騒ぐとも言うべき狩猟本能です。原始時代の狩猟採集社会では、獲物はとても希少で限られていました。ところが、現代のギャンブル産業では、あたかも無限の「獲物」があるかのように演出できるようになりました。そんな中、「ハンター」の心理が過剰になり、制御ができなくなった状態が、ギャンブル障害です。d. 行動経済学的な応用この報酬予測の心理は、ギャンブル産業だけでなく、ビジネスの様々な場面で応用されています。例えば、それはあえて行列をつくり並ばせることです。飲食店に「行列のできる~」という触れ込みで駆け付ける人は、待っている間に、すでに想像してその味を噛みしめて、期待感を高めています。遊園地のアトラクションで並ぶ人は、その待ち時間が長ければ長いほど、その価値があると思い込んでいきます。高級デパートの買い物を楽しむ人は、あえて少ない支払い担当の店員がいる売り場で待たされてじらされたり、あえて支払いの手続きが多かったりすると、お買い上げの瞬間のテンションを上げていきます。ちなみに、このテンションの欲求が病みつきになったのが、オニオマニア(買い物依存症)です。また、部下とのコミュニケーションの場面などで、褒めるべき時に、毎回正確に褒めるよりも、何回かに1回はあえて褒めない方が、逆に褒められたい気持ちを煽ることができます。ただし、これを連発すると、気分屋に思われて、信頼関係がうまく築けなくなる危険性があります。また、これを依存的で自尊心の低い人に悪用すると、マインドコントロールに陥る危険性があります。動機付け(報酬予測)を高める直接介入効果としては、あえて選ばせる、あえて言わせることです。例えば、プレゼンテーションをする時に、選択式のクイズを設けたり、参加者にどんどん質問したり、どんどん意見を言わせたり、グループワークを取り入れて発表してもらったりするなどの参加型にした方が、より満足度(報酬)が高くなります。禁煙外来やアルコール依存症外来でも、説教や非難によって患者を受け身にさせるよりも、本人に禁煙や断酒のメリット(報酬)を考えてもらい、本人からその決意を引き出すかかわり方が効果的であることが分かります。(2)「あと少しだったのに」a. ニアミス効果2つ目は、「あと少しだったのに」というニアミス効果です。これが、「惜しい」「次こそは」「もう1回」という心理につながっていきます。実際に、ケンブリッジ大学の心理実験では、スロットマシンの「当たり」の時と同じように、「僅差のハズレ」の時も脳の報酬系の活動が高くなることが実証されています。ご褒美は、少なすぎる状況では、もちろん快感は得られにくく、やめてしまいます。逆に、多すぎる状況では、快感が鈍って飽きてきます。つまり、時々の少し足りない状況で、「もっと」という興奮が高まり、熱中するというわけです。これは、すでにパチスロ業界では応用されているようです。例えば、「7-7-7」のように同じ数字が3つ揃えば大当たりですが、あえて「7-7-6」「7-7-8」が出る頻度を30%程度に設定すると、客をその台に引き留めやすくなると言われています。当たり率は、不正がないように機器の1つ1つが厳密に審査されていますが、ハズレの数字の何が出るかの操作をするのはグレーゾーンのようです。確率論的に考えると、僅差の数字の揃いであっても、バラバラの数字の揃いであっても、ハズレはハズレであり、次に当たりが出る確率が上がることは全くないです。宝くじでも、分かりやすく応用されています。それが前後賞です。これは良心的です。ただ、例えば「6億円が出やすい土曜日」「この店で6億円の当たりが出ました」とまことしやかに宣伝されるのはどうでしょうか?「じゃあ、この曜日のこの店ならもしかして・・・」とつい思ってしまうでしょうか? これは、事実には違いないでしょうが、よくよく考えると、実はとても滑稽な宣伝文句です。なぜなら、単純な確率論なので、その事実に基づいて宝くじを買った人の当たる確率が上がることは全くないからです。そして、逆に確率が上がるとしたら、公営ギャンブルで不正が働いているわけで大問題になってしまうからです。b. 強めるのはこのニアミス効果をより強めるには、ギャンブルを何度もやりやすい状況をつくることです。例えば、カジノでは、アルコールは無料で、窓がなく昼か夜か分からず、音響効果も加わり、陶酔空間を演出させています。また、ラスベガスやマカオでは、カジノ直結の高級ホテルを格安にして、レストラン、バー、プール、エステ、劇場、遊園地、ショッピングモールなどありとあらゆる施設を気軽に利用できるようにして、お祭り気分を味わわせます。さらには、上客にはカジノまでの往復の航空チケットを無料にすることもあります。これらは、「コンプ」(complimentary)と呼ばれています。直訳すると「褒め言葉」となりますが、まさに、このようなおもてなしで気持ち良くなってもらって、カジノでたくさんお金を落としてもらうのです。そして、カジノの売り上げによって、他の不採算の施設費をカバーします。これが、カジノを含む統合型リゾート(IR)というビジネスモデルのからくりです。c. 進化心理学的な起源原始の時代、獲物を惜しくも捕り損なった時、その直後にもう一踏ん張りして、その瞬間に全てを賭ける種が生き残ったでしょう。なぜなら、獲物も追われ続けて疲れているので、次に仕留められる確率が上がるからです。しかし、現代に行われるギャンブルでは、「獲物」を仕留める確率は、当然のことながら一定です。パチンコやスロットもコンピュータで正確に制御されており、毎回完全にリセットされます。そして、この心理が発揮されることを逆手に取って、あたかもあと少しで「獲物」が仕留められるかのように演出できるようになりました。そんな中、「ハンター」の心理が過剰になり、制御できなくなった状態が、ギャンブル障害です。d. 行動経済学的な応用このニアミス効果や「コンプ」(おもてなし効果)は、ギャンブル産業だけでなく、コミュニケーションの場面でも応用できます。例えば、部下を叱る時に、「仕事ができていない」「きみはだめだ」と言うよりも、「あともうちょっとで完璧な仕事ができたのに」「きみは惜しい」と言う方が、仕事への意欲を引き出せます。逆に、褒める時に、「完璧な仕事ができた」「きみはすごい」と言うよりも、「良い仕事をした」「だけどここがクリアできたら完璧だった」と言う方が、仕事への意欲を維持させます。つまり、赤点で全く褒めないのではなく、満点で全く叱らないのでもなく、どちらにしても90点程度の「惜しい」という評価をすることが有効であるというわけです。また、女性が男性からデートのお誘いを受ける時に、快諾するよりも、思わせぶりにしつつもなかなかOKを出さない方が、男性のテンションを上げ、女性への好意を増すでしょう。これは、男性が「女性を口説き落とすことに喜びを感じる」という心理も納得がいきます。さらに、「コンプ」の発想を理解すれば、どんな相手とも日々気持ち良くさせる声かけをして気に入ってもらえている方が、コミュニケーションがスムーズになると分かるでしょう。(3)「損を取り返したい」a. 損失回避欲求3つ目は、「損を取り返したい」という損失回避欲求です。前回紹介したカイジの仲間の坂崎のように、「負けた分を取り返す」ためにさらにギャンブルに深追いする心理です(負け追い行動)。もともと人間の脳は利得よりも損失に大きな反応を示し、その反応の大きさ(価値)は金額に正比例せずに緩やかに頭打ちになっていくことが分かっています(グラフ1、プロスペクト理論)。つまり、得するより損することに敏感で、さらなる大損よりも現在の損に囚われてしまいやすいということです。b. 強めるのはこの損失回避欲求をより強めるには、時間の経過によって先々の利得の価値が下がって、目先の報酬の価値が上回ることです(遅延報酬割引)。例えば、真面目にこつこつ働いて借金を返して、将来に確実にすっきりするよりも、不確実なギャンブルに賭けて手っ取り早く借金をチャラにして今すっきりしたいという心理です。そう思うのは、ギャンブルの繰り返しによる脳への影響として、理性的な報酬回路(前頭葉)よりも、衝動的な報酬回路(扁桃体)の働きが優位になってしまうからです。先ほどの報酬予測の説明でも触れましたが、ギャンブルの繰り返しによって、報酬が得られるかもしれない「待ち時間」への快感が鋭くなり、逆に、実際のその報酬や日常生活での他の報酬への快感は鈍くなります。さらには、最近の脳画像研究では、報酬だけでなく、罰にも鈍くなることが分かっています。よって、この快感への鈍さを代償するためにますますやり続け、ますます高額の賭け金を出すと同時に、負け(罰)をますます顧みなくなります。つまり、ギャンブルによる先々の大きな損には目が向きにくくなり、目先の損得にばかり目が行き、「一発逆転」や「一か八か」という心理で、より短絡的になっていくのです。c. 進化心理学的な起源原始の時代は、いつもその日暮らしです。「今ここで」という状況でぎりぎりで生きていました。このような極限状況の中、得るよりも失うことに敏感な種が生き残るでしょう。なぜなら、たくさん食料を得ても、冷蔵庫がないので、保存はできずに腐らせてしまうだけだからです。逆に、少しでも奪われたり腐らせたりして食料を失えば、その直後に自分や家族の飢餓の苦しみや死が待っています。借金のようにどこかから借りてくることはできません。つまり、食料をたくさん得れば得るほど、正比例して幸せというわけではないでしょう。逆に、食料を失えば失うほど、正比例して不幸せ(恐怖)というわけでもないでしょう。そもそも食料はたくさんあるわけではないので、失った食料が多かろうと少なかろうと飢餓の苦しみや死には変わりがないからです。こうした種の生き残りが現在の私たちです。よって、現代の「食料」であるお金の価値は、正比例せずに緩やかに頭打ちになるというわけです。実際に、収入と満足度の関係性がそうです。しかし、現代の文明社会では、ギャンブルで負ければ、限りなく「食料」を失うことができます。しかし、その損失に正比例して苦痛を感じるわけではありません。借金をして一時しのぎをすることもできます。つまり、現代の「食料」を量産できる貨幣と借金の制度による文明社会で、「ハンター」が、損を取り返そうとし続けた結果が、ギャンブル障害です。d. 行動経済学的な応用この損失回避欲求の心理は、ギャンブルだけでなく、ビジネスの様々なところで応用されています。例えば、宣伝文句では、「買ったらお得」よりも「買わなきゃ損」の方がインパクトがあります。人は、「得しますよ」と言われるより「損しますよ」と言われる方が耳を傾けます。本日限定のオマケを付けるという商法は、オマケを付けるという点では得ですが、明日に買えばオマケが付かないという点で損であり、とても有効です。子どものしつけや教育にしても健康検診にしても、「放っておくと取り返しのつかないことになります」と言われると、半分脅しのようにも聞こえるくらい効果があります。さらに、依存症の治療でも応用できそうです。例えば、禁煙促進の研究報告では、禁煙が継続できたら単純に報酬をあげるよりも、失敗したら罰金を課す方式を追加したところ、禁煙成功率が有意にあがったということです。ギャンブル依存症にはどうすれば良いの?これまで、ギャンブルの起源を、進化心理学的に解き明かしてきました。それでは、ギャンブル依存症にはどうすれば良いでしょうか?このギャンブル対策への答えも進化心理学的な視点で考えてみましょう。そもそも生物の原始的な行動パターンは、接近か回避です(図1)。食料や生殖のパートナーへの接近を動機付けるのが快感や快楽です(ドパミン)。その一方、天敵や危険な状況からの回避を動機付けるのが不安や恐怖です(ノルアドレナリン)。快感になる状況を想像して快感になることが報酬予測(動機付けサリエンス)です。その一方、不安になる状況を想像して不安になることを予期不安と言います。過剰な予期不安がパニック障害の症状の1つとして治療介入が必要であると理解できるように、過剰な報酬予測はギャンブル依存症の症状の1つとして治療介入が必要であると言えます。つまり、パニック障害と同じように、ギャンブル依存症は病気であり、単純に自己責任として切り捨てるべきではないということです。つまり、ギャンブル依存症の治療には、本人と社会の両方に責任があります。この点を踏まえると、最も重要なポイントは、できるだけギャンブルには、個人として近付かない、社会として近付かせないということです。これは、ギャンブルに限らず、アルコールや薬物など依存症の治療の全般に言えることでもあります。それでは、ここから、個人と社会の2つの視点で、その治療や対策を考えてみましょう。(1)個人―ギャンブルに近付かない個人の視点として、ギャンブルに近付かないために、主に3つの取り組みが有効です。1つ目は、ギャンブルを断つ決意をして、ギャンブル関連の情報を身近に触れない取り組みを自らすることです。例えば、ギャンブルについての雑誌、スポーツ紙、テレビ番組を見ないことです。パチンコや競馬場などの近くは避けて通ることです。2つ目は、ギャンブルに近付かない代わりに、別のより健康的な「ギャンブル」に近付く、つまり目を向けることです。例えば、それは、新しい仕事であったり、新しい人間関係です。3つ目は、近付かない状態を維持するために、自助グループ(GA)に参加し続けることです。これはアルコール依存症の自助グループ(AA)と同じように、自分と同じ仲間とつながっていることは、ギャンブルに近付くことを引き留めます。ちなみに、ギャンブル依存症への治療薬としては、日本では保険適応外ですが、ナルトレキソン(オピオイド拮抗薬)があります。ちょうどアルコール依存症への治療薬として2013年に日本で発売開始されたアカンプロサートと同じ抗渇望薬に当たります。(2)社会社会の視点として、ギャンブルに近付かせないための最も手っ取り早い方法は、全面禁止です。これは、文明社会が始まった古代から、その当時の統治者が行ってきた長い歴史があります。しかし、この問題点は、けっきょく隠れてやる人々が現れ、それにまつわるトラブルが繰り返され、取り締まりきれないということです。私たちは、その現実を歴史から学ばなければなりません。よって、落としどころは、ギャンブルを娯楽としてある程度認めつつも、厳しい制限をかけることです。その制限とは、主に3つの取り組みがあげられます。これは、個人の対策の何倍にも増して有効で重要なことです。1つ目は、ギャンブルへの行動コストを上げることです。行動コストとは、行動をするために、時間、労力、金銭などのかかる費用(コスト)です。一番分かりやすいのは、場所制限です。ギャンブルができる場所が限られている、または遠くて気軽には足を運べないという場所が望ましいです。また、ギャンブル産業への入場料の徴収も有効です。実際に、海外のカジノでは自国民が入場する場合にのみ入場料を徴収して、あえて敷居を高くして、ギャンブル依存症の対策をしています。時間制限も有効です。これは、営業時間をもともと健康的な活動時間帯の9時から5時までに限定することです。逆に、判断力が鈍る夜間にはギャンブルをさせないことです。2つ目は、ギャンブル行動の見える化です。見える化とは、その名の通り、ギャンブルをどれだけしているか本人に見えるようにすることです。そのためにも、まず個人のギャンブルを管理するため、「タスポ」(タバコ購入のための成人識別ICカード)よりもさらに厳格な身分証明書の発行が必要です。年齢制限はもちろんのこと、損失合計金額などの表示による注意喚起が有効です。また、損失金額が加速している場合は、ギャンブル依存症のリスクを警告して、ギャンブル専門の医療機関や自助グループ(GA)の紹介をすることも有効です(責任ギャンブル施策)。さらに、本人の届け出によって、ギャンブルができないようにするシステムも有効です(自己排除システム)。これは、ちょうどアルコール依存症の人が、お酒を飲むと気持ち悪くなる抗酒剤をあえて内服し続けることに似ています。3つ目は、手がかり刺激を制限することです。手がかり刺激とは、ギャンブルを想像してしまうようなきっかけの刺激です。ちなみに、ギャンブルの手がかり刺激への反応は、最近の脳画像研究によっても裏付けられています。例えば、パチンコ、宝くじ、競馬などのCMや雑誌・新聞の宣伝が分かりやすいでしょう。これほど多くのギャンブルの宣伝が日本では当たり前のようにされているのは世界的に見れば異常です。駅前にだいたい1つはある、ど派手で目立つパチンコ店もそうです。また、手がかり刺激への反応性をそもそも高めないために、未成年にはなるべく触れさせないことも有効です。なぜなら、ギャンブルも、アルコールやタバコと同じように、発達段階の未成年の脳への刺激(嗜癖性)が特に強いからです。海外では、映画の喫煙シーンがR指定になるくらいです。 最後に、ギャンブルとは?カイジの仲間の坂崎が大負けからの大当たりで大逆転になりそうでならないシーン。その瞬間に、彼は「溶ける溶ける…!」「限りなく続く射精のような…この感覚っ…!」「ある意味桃源郷…!」と叫びます。快感と恐怖が入り交じり、完全にシビれてしまいます。ここで気付かされるのは、坂崎が最高の快感を得たその場所は、本当の「桃源郷」ではなく、生死のかかったギャンブルという修羅場であったということです。本来、快感や快楽は桃源郷にあり、不安や恐怖は修羅場にあると私たちは思いがちです。しかし、これまでのギャンブル脳の心理をよく理解すれば、実は、最高の快感は桃源郷にはありません。なぜなら、桃源郷では、全てが理想的に満たされ続けており、快感(ドパミン分泌)が鈍っているからです。簡単に言うと、桃源郷には、その状態に飽きてしまって、わくわくはありません。もちろん、修羅場では、全く満たされていないため、快感(ドパミン分泌)はほとんどありません。つまり、最高の快感は、桃源郷に苦労して向かっている修羅場の中でこそ感じるものであるということです。それが、生きている実感であり、生きる原動力です。原始の時代と違い、現代は「ギャンブル」のような生活をしなくても無難に生きていけるようになりました。そうなるとそこは、桃源郷でも修羅場でもない退屈なところです。何もしなければ、わくわくして生きている実感はないでしょう。つまり、その実感を得るためには、私たちはそれぞれの「桃源郷」を目指して、必死に「修羅場」をかいくぐることをあえてすることが必要になります。ギャンブルの心理の本質を理解した時、私たちは、「カイジ」や「アカギ」から、ギャンブルのマイナス面だけでなく、生き方としてのプラス面も含めて、より多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか? 1)福本伸行:人生を逆転する名言集、竹書房、20092)松本俊彦ほか:物質使用障害とアディクション 臨床ハンドブック、星和書店、20133)臨床精神医学、行動嗜癖とその近縁疾患、アークメディア、2016年12月号4)蒲生裕司・宮岡等編:こころの科学「依存と嗜癖」、日本評論社、2015年7月号5)帚木蓬生:ギャンブル依存症国家・日本、光文社新書、20146)岡本卓、和田秀樹:依存症の科学、化学同人、2016

23474.

夜中のトイレ【Dr. 中島の 新・徒然草】(159)

百五十九の段 夜中のトイレ夜中に何回かトイレに起きる、という高齢患者さんの訴えを今までは聞き流していました。が、ついに自分にも夜中に1回はトイレに起きる時が来てしまったのです。周囲の話では、50代ならだいたいそんなもん。それを聞いて安心しておりました。ところが、いつの間にか夜中に3回もトイレに起きるようになってしまいました。2時、3時半、5時とか、そんな感じ。自分としては50代で夜中に1回、60代で2回、70代で3回くらいのトイレかな、と漠然と思っていたのに。完全に人生設計が狂った!50代で3回もトイレに起きていたら、70代になったらどないするねん。人として終わっちまったよ、これは。ところがある日のこと。夕食後にまとめてのんでいる薬のうちの1つが、降圧利尿薬であることに気付きました。ひょっとしてこれのせいか?そう思って、夜ではなく朝にのむようにしてみると。あら不思議、朝までグッスリ!気付いてみれば当たり前ですが、夕食後に降圧利尿薬をのんだら頻回トイレで眠れません。もしかして、そんな些細な事で患者さんたちを苦しめたりしていないか、自分が処方している薬のほうも確認しなくては、と思った次第です。最近は、便利な配合剤の中にそっと利尿薬が入れてあることもあるので、そちらにも注意しなくてはなりませんね。最後に1句利尿剤 夜にのんだら 眠れません

23475.

双極性障害の再発エピソード、持効性注射剤の効果は

 双極I型障害(BP-I)の維持療法における長時間作用型アリピプラゾール注射剤400mg/月(AOM400)の有効性、安全性、忍容性について、米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のJoseph R Calabrese氏らが二重盲検プラセボ対照試験で評価した。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年1月31日号の報告。 本研究は、2012年8月~2016年4月に52週間の無作為化治療中止試験として実施した。現在躁病エピソードを有するBP-I患者(DSM-IV-TR診断)を対象に、経口アリピプラゾールとAOM400で安定した266例をAOM400群133例またはプラセボ群133例に無作為に割り付けた。主要エンドポイントは、無作為化から気分エピソードの再発までの期間とした。ほかのエンドポイントは、気分エピソードの再発率、エピソードの種類とした。 主な結果は以下のとおり。・試験完了患者は、AOM400群64例(48.1%)、プラセボ群38例(28.6%)であった。・AOM400群は、プラセボ群と比較し、気分エピソードの再発までの期間を有意に延長した(HR:0.45、95%CI:0.30~0.68、p<0.0001)。・AOM400群(35/132例、26.5%)は、プラセボ群(68/133例、51.1%)と比較し、気分エピソードの再発率が有意に低く(p<0.0001)、主に躁病エピソードにおいて効果が認められた患者であった(p<0.0001)。・AOM400群において、プラセボ群よりも発生頻度の高かった有害事象(発生率5%以上)は、体重増加、アカシジア、不眠、不安であった。 著者らは「AOM400は、気分エピソードの再発までの期間を延長し、再発率を低下させ、おおむね安全で許容された。BP-Iの維持治療に対するAOM400の使用が支持される」としている。関連医療ニュース 日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの効果は LAIを適切に使用するための5つのポイント パリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果

23476.

ペースメーカー・ICD装着患者も安全にMRI検査が可能/NEJM

 ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)を装着した患者へのMRI検査の実施は、長らく禁忌とされてきたが、検査前後の動作確認と、検査前の適切な再プログラミングを行うことで、磁場強度1.5テスラのMRIは安全に実施可能なことが判明した。MRI検査中の死亡や心室性不整脈や装着機器の故障は、いずれも認められなかった。米国・スクリプス研究所のRobert J Russo氏らが、ペースメーカーやICDを装着する1,500例を対象に行った前向き試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年2月23日号で発表した。MRI検査中の死亡、ジェネレータやリードの故障などを調査 研究グループは2009~14年にかけて、米国19ヵ所の医療機関を通じ、ペースメーカーまたはICDを装着した患者で、胸部以外については磁場強度1.5テスラMRIが臨床的に適応とされた、それぞれ1,000例(818人)と500例(428人)を対象に前向き試験を行った。両デバイスについて、MRI検査の前後に標準的プロトコルに準じた動作確認を行い、MRI検査前に再プログラミングを行った。 被験者の平均年齢は、ペースメーカー群が72.5歳、ICD群が65.1歳だった。 主要エンドポイントは、MRI検査中の死亡、ジェネレータやリードの故障、不整脈誘発、キャプチャーの失敗、電気的リセット。副次的エンドポイントは、デバイスの設定変更とした。自然停止の心房細動・心房粗動、部分的電気的リセットが各6件 その結果、MRI検査中の死亡、リードの故障、キャプチャーの失敗、心室性不整脈は認められなかった。MRI検査後にICDジェネレータの動作確認ができず、迅速な交換を要した事例が1件あったが、このICD例は、MRI検査前に適切なプログラミングが行われていなかった。 自然停止した心房細動や心房粗動は6件、部分的電気的リセットは6件だった。 リード抵抗、ペーシング閾値、バッテリー電圧、P波・R波の振幅が、いずれも事前に規定した閾値を上回った例は、少数にとどまった。また、MRIの再施行は、有害事象の増加と関連していなかった。

23477.

HER2陽性早期乳がんへのトラスツズマブ、11年追跡の結果は?/Lancet

 HER2陽性早期乳がんに対し、補助療法としてのトラスツズマブ投与は、無病生存期間を長期とする改善効果が、中央値11年間の追跡で確認された。投与期間については、2年投与は1年投与と比べ追加ベネフィットは認められなかった。英国・エディンバラ大学がん研究センターのDavid Cameron氏らが国際共同多施設非盲検第III相無作為化試験「HERA(HERceptin Adjuvant)」の最終解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2017年2月16日号掲載の報告。39ヵ国、5,102例の患者を対象に試験 HERA(BIG 1-01)試験は2001~05年にかけて、39ヵ国の医療機関を通じHER2陽性早期乳がんの患者5,102例を対象に行われた。手術や化学療法、放射線療法などの乳がんに対する1次治療を行った後、研究グループは被験者を無作為に3群に分け、トラスツズマブ1年投与(初回投与量8mg/kg体重、その後6mg/kg体重を3週ごとに静脈内投与)、トラスツズマブ2年投与(1年投与と同様の投与スケジュール)、トラスツズマブ非投与(観察群)をそれぞれ行った。 主要エンドポイントは無病生存期間(DFS)で、ITT集団で解析した。Coxモデルでハザード比(HR)を算出し、Kaplan-Meier法で生存曲線を算出した。トラスツズマブ1年投与群と2年投与群との比較は、366日ランドマーク解析で検証した。DFSに関するハザード比、トラスツズマブ1年群で0.76 被験者のうち追跡可能だったのは5,099例(1年投与群1,702例、2年投与群1,700例、観察群1,697例)だった。追跡期間の中央値は11年(四分位範囲:10.09~11.53)だった。また、本試験では観察群に割り付けられた患者の884例(52%)は、選択的クロスオーバーでトラスツズマブも受けていた。 解析の結果、1年投与群は観察群と比較して、DFS(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.68~0.86)、死亡(同:0.74、0.64~0.86)のリスクの有意な減少が認められた。 2年投与群は1年投与群と比較してDFSのアウトカム改善は認められず(HR:1.02、同:0.89~1.17)、長期投与ベネフィットのエビデンスは認められなかった。 10年DFSの推定達成率は、観察群が63%、トラスツズマブ1、2年投与群は共に69%だった。 心毒性はすべての群で低率にとどまった。副次的心エンドポイントの発生は、2年投与群が7.3%と、1年投与群(4.4%)および観察群(0.9%)に比べ頻度が高かった。

23478.

増加する多発性硬化症の第1選択薬となるか!?

 2月15日、バイオジェン・ジャパン株式会社は、都内において多発性硬化症治療薬フマル酸ジメル「テクフィデラ カプセル120/240mg」の発売に伴うプレスセミナーを開催した。セミナーでは、多発性硬化症診療の最新の知見のほか、テクフィデラの今後の治療での位置付けなどが講演された。40年で40倍以上患者が増えた多発性硬化症 セミナーでは、吉良 潤一氏(九州大学大学院医学研究院 脳研 神経内科学 教授)を講師に迎え、「さまざまな課題をかかえる多発性硬化症~テクフィデラ承認の意義~」をテーマに講演が行われた。 はじめに多発性硬化症(MS)の疫学として、わが国では約1万9,000人を超える患者(指定難病医療受給者証所有者数)がおり、その数も1970年代との比較で40倍を超える数になっていること、毎年患者数は増加していることが説明された。 また、MSの発症では、遺伝因子と環境因子(たとえば高緯度、EBウイルス、ビタミンD欠乏、喫煙、生活の欧米化など)の相互作用が判明しているものの、明確な機序はいまだ解明されていないという。障害部位により多様な症状が出現 MSは、中枢神経の髄鞘が障害される脱髄性疾患であり、最近の研究では、確実なエビデンスはないものの中枢神経髄鞘抗原を標的とする自己免疫性疾患であるともいわれている。そのため、発症するとその多くが再発と寛解を繰り返し、再発寛解型、2次性進行型、1次性進行型の3つの類型に分類される。 症状は、脊髄、視神経、大脳、小脳、脳幹の部位で、それぞれ運動機能、感覚機能、自律神経、高次脳機能が障害され症状として現れる。たとえば、大脳の運動機能が障害されれば片麻痺や単麻痺が、視神経の感覚機能が障害されれば視力低下、視野欠損、中心暗点などの症状が出現する。特徴的な前駆症状としては、急に疲れやすくなったり、新しいことが覚えられないなどが挙げられるという。 診断としては、現在、有用なバイオマーカーがないために、除外診断による診断がなされる。また、MRIや髄液検査、誘発電位検査による検査所見で確定診断を行う。とくにMSでは早い時期から2次進行期(現在2次進行期に有効な治療はない)が始まるケースが多いために、MRI検査で病期進行のモニターが望まれる。MS治療薬の現状と課題 現在MSの治療は、発症後の再発寛解期に主に行われている。痙縮、疼痛などへの対症療法をはじめ、急性期にはステロイドパルス療法が施行される。また、MSでは再発予防のために疾患修飾薬(DMD)を使用し、進行を抑える治療が行われている。 現在DMDの第1選択薬は、インターフェロンβとグラチラマーがあり、さらに第2選択薬としてフィンゴリモド、ナタリズマブ、アレムツズマブが病勢により適応される。しかし、実臨床の場ではDMDの使用は、薬剤の価格ゆえに40~50%未満にとどまるという。また、第1選択薬が注射薬ということもあり、アドヒアランスの観点からも使いづらく、第2選択薬でも長期の使用で進行性多巣性白質脳症(PML)の発生リスクがあるなど注意が必要とされている。 DMDでは、妊婦や小児への負担が少なく、長期安全性があり、就労・就学にも差し支えのない治療薬の導入が望まれているという。患者さんに使いやすいDMDの登場 今回発売されたテクフィデラは、経口薬という特徴を持ち、抗炎症作用と神経保護作用の両輪でMSの進行を抑制する。2013年には米国で、2014年には欧州で承認され、すでに全世界で21万人が使用している。 治療効果として、海外治験では投与開始後2年間でみた年間再発率がプラセボ群(n=771)の0.37と比較して、テクフィデラ群(n=769)では0.19と49%減少していた。また、国際共同治験では、投与開始後の12~24週を観察した新規Gd造影病巣の総数でプラセボ群(n=113)の4.3と比較して、テクフィデラ群(n=111)では1.1と84%減少していた。 安全性では、報告数の多い順に潮紅、下痢、悪心、腹痛などの有害事象があるが、重篤な事象は報告されておらず、投与された最初の1ヵ月間での報告が多かったという。 処方のポイントは、少量から徐々に増やしていくこと、3ヵ月に1回は病状進行の様子をモニターすること、また、視神経脊髄炎に使用すると重篤な再発を起こすことから使用前に鑑別診断をすることが重要だという。 最後に吉良氏は私見として「フィンゴリモドと同等の作用があり、将来的に第1選択薬として使用されると期待している。経口薬という最大の特徴は患者さんの負担を軽くする」と展望を述べ、レクチャーを終えた。

23479.

血圧低下は認知症リスクを増加させるか、減少させるか

 認知症における血圧変動の役割については、議論の余地がある。スウェーデン・ルンド大学のHannes Holm氏らは、長期フォローアップ研究において、安静時と体位変換時の血圧変化が、認知症とどのように関連しているかを分析した。European journal of epidemiology誌オンライン版2017年2月11日号の報告。 集団ベースのMalmo Preventive Projectでは、1974~92年に1万8,240人(平均年齢:45±7歳、男性の割合:63%)を対象に安静時と体位変換時の血圧を測定し、2002~06年に平均年齢68±6歳の安静時血圧を再測定した。認知症リスクを有する安静時と体位変換時の血圧変化との関連は、リスク因子を制御する多変量調整Cox回帰モデルを用い検討した。 主な結果は以下のとおり。・2009年12月末までに、428例(2.3%)が認知症と診断された。・起立時の拡張期血圧の低下は、認知症リスクが高いことが示された(10mmHg当たりのHR:1.22、95%CI:1.01~1.44、p=0.036)。これは、主に正常血圧者におけるリスク増加によって引き起こされた。・再検査時の収縮期血圧(10mmHg当たりのHR:0.94、95%CI:0.89~0.99、p=0.011)、拡張期血圧(10mmHg当たりのHR:0.87、95%CI:0.78~0.96、p=0.006)の高さは、認知症リスク低下と関連していた。・ベースラインと再検査時における収縮期血圧、拡張期血圧の極端な低下(第4四分位収縮期血圧:-7±12mmHg、第4四分位拡張期血圧:-15±7mmHg)は、同期間に著しい血圧上昇を示した対照群(第1四分位収縮期血圧:+44±13mmHg、第1四分位拡張期血圧:+15±7mmHg)と比較して、認知症リスクが高いことが示された(収縮期血圧[HR:1.46、95%CI:1.11~1.93、p=0.008]、拡張期血圧[HR:1.54、95%CI:1.14~2.08、p=0.005])。・中年期の拡張期血圧低下、中高年期の血圧低下、高齢期の血圧低下は、認知症発症の独立した危険因子であることが示された。関連医療ニュース 米国の認知症有病率が低下、その要因は 脳トレーニングで認知症予防、認知機能低下リスクが20~30%減 魚を食べると認知症は予防できるのか

23480.

2種の頭皮冷却法、乳がん化学療法の脱毛を半減/JAMA

 化学療法は、乳がんの微小転移を抑制し、再発リスクを低減して生存期間を延長するが、有害事象として、女性にとって最も大きな苦痛の1つとされる化学療法誘発性の脱毛が高頻度に発現する。対策として、頭皮冷却法の検討が進められており、2017年2月14日発行のJAMA誌に、2種のデバイスに関する米国の2つの研究論文が掲載された。2つの試験は、試験デザイン、患者選択基準、デバイスのタイプが異なるが、ほぼ同様の結果が得られており、頭皮冷却は半数以上の女性で脱毛を予防することが示された。無作為化試験の脱毛予防達成率:50.5% vs.0% 毛嚢細胞は、がん細胞と同様に増殖が活発で、化学療法への感受性が高いため、脱毛が発症するとされる。これに対し、頭皮を冷却すると頭皮下の血管が収縮し、毛嚢への血流が低下するため、化学療法薬の取り込みが減少する。また、冷却により毛嚢細胞の生化学活性も抑制されることから、化学療法薬への感受性が低下し、脱毛が抑制されると考えられる。 米国・ベイラー医科大学のJulie Nangia氏らは、術前または術後の化学療法が予定されている乳がん女性(StageI/II)を対象に、化学療法誘発性脱毛の予防における頭皮冷却デバイス(Paxman scalp cooling system)の有用性を評価する多施設共同無作為化試験を実施した(英国、Paxman Coolers社の助成による)。 2013年12月9日~2016年9月30日に、米国の7施設に182例が登録され、頭皮冷却群(119例)または頭皮冷却を行わない対照群(63例)に無作為に割り付けられた。事前に規定された中間解析時に、142例(頭皮冷却群:95例、対照群:47例)が評価可能であった。 142例の平均年齢は52.6(SD 10.1)歳で、36%(51例)がアントラサイクリン系薬ベースの化学療法、64%(91例)はタキサン系薬ベースの化学療法を受けた。StageIが40%(57例)、StageIIは60%(85例)だった。 主要評価項目である化学療法4サイクル施行後の脱毛予防(CTC-AE ver. 4の脱毛:Grade0[脱毛なし]またはGrade1[かつらを必要としない50%未満の脱毛])の達成率は、頭皮冷却群が50.5%(48/95例、95%信頼区間[CI]:40.7~60.4)と、対照群の0%(0/47例、95%CI:0~7.6)に比べ有意に良好であった(成功率の差:50.5%、95%CI:40.5~60.6)。 Fisher正確確率の片側検定はp<0.001であり、優越性の限界値(p=0.0061)を超えていたため、2016年9月26日、データ・安全性監視委員会によって試験の終了が勧告された。 ベースラインから4サイクル終了までのQOLの変化には、両群間に有意な差を認めなかった。また、頭皮冷却群で54件のデバイス関連の有害事象(頭痛、悪心、めまいなど)が報告されたが、Grade1が46件、2が8件(頭痛が7件、頭皮痛が1件)で、重篤な有害事象はみられなかった。前向き観察研究の脱毛治療成功率:66.3% vs.0% 一方、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S Rugo氏らは、頭皮冷却システム(DigniCap scalp cooling system)の脱毛予防効果を検証するプロスペクティブなコホート試験を行った(スウェーデン、Dignitana社の助成による)。 頭皮冷却は、化学療法の各サイクルの30分前に開始し、投与中および投与終了後90~120分間は頭皮を摂氏3℃(華氏37°F)に維持した。各サイクルの投与前および最終投与から数週後に、5枚の頭髪の写真(前面、後面、両側面、上面)が撮影された。脱毛は、化学療法の最終投与から4週後に、Deanスケール(0[脱毛なし]~4[75%以上の脱毛])に基づいて患者自身が評価した。 Deanスケールのスコアが0~2(50%以下の脱毛)の場合に治療成功と定義した。頭皮冷却群の50%以上が治療成功を達成し、成功率の95%信頼区間(CI)の下限値が40%以上の場合に、頭皮冷却と脱毛リスクの改善にはpositiveな関連があると判定した。Fisher正確確率検定でp<0.05の場合に、頭皮冷却群は対照群に対し統計学的に優越性があると確定することとした。 2013年8月~2014年10月に、米国の5施設に早期乳がん(StageI/II)女性122例(頭皮冷却群:106例、対照群:16例)が登録された。対照群のうち14例は、後ろ向きに年齢と化学療法レジメンをマッチさせた。 全体の平均年齢は53歳(範囲:28~77歳)、白人が77.0%で、化学療法の平均投与期間は2.3ヵ月であった。化学療法レジメンは、ドセタキセル+シクロホスファミドの3週ごと4~6サイクルが最も多く(頭皮冷却群:75.2%、対照群:62.5%)、次いでweeklyパクリタキセル12サイクル(11.9%、12.5%)であった。頭皮冷却群には、アントラサイクリン系薬の投与を受けた患者はいなかった。 脱毛50%以下(Deanスコア:0~2)の達成率は、頭皮冷却群の評価可能例が66.3%(67/101例、95%CI:56.2~75.4)と、対照群の0%(0/16例)に比べ有意に優れた(Fisher正確確率検定:p<0.001)。治療成功の67例の内訳は、Deanスコア0(脱毛なし)が5例、1(脱毛:>0~≦25%)と2(同:>25~≦50%)が31例ずつだった。 また、頭皮冷却群では、化学療法終了後1ヵ月時のEORTC乳がん特異的QOL質問票の5項目のうち3つが、対照群に比べ有意に良好であった。たとえば、「疾患や治療の結果として、身体的な魅力が低下したと感じた」と答えた患者の割合は、頭皮冷却群が27.3%と、対照群の56.3%に比べ有意に低かった(p=0.02)。 頭皮冷却群の106例のうち7例に冷却治療関連の有害事象が認められた(頭痛4例[3.8%]、そう痒1例、皮膚の痛み1例、頭部不快感1例)。症状が重度な患者はなく、中等度が1例(頭痛)であった。また、3例(2.8%)が寒気により冷却治療を中止した。有効な支持療法が治療の開始を促進する可能性 これら2つの論文のエディトリアルにおいて、米国・コロンビア大学医療センターのDawn L. Hershman氏は、「乳がん女性が化学療法を躊躇する最大の原因は脱毛であるが、この問題への厳密な取り組みは、これまでほとんど行われていない」とし、「今回の2つの研究はがん患者のQOL改善における重要な一歩であるが、Nangia氏らの検討では治療期間中のQOLに差がなく、Rugo氏らの検討では治療終了後1ヵ月のQOLが改善されたものの、サンプルサイズが小さく、観察研究である点に限界がある」と指摘している。 また、同氏は、支持療法の意義として、「患者を安心させることで、有害事象への懸念を持つ患者に、治療を開始するよう説得するのに役立つ可能性がある」とし、「将来、分子標的治療の導入で、化学療法の重篤な有害事象を回避できるようになる可能性があるが、それまでは頭皮冷却などの介入によって乳がん患者の治療関連毒性を軽減し、結果として転帰の改善が可能と考えられる」と記している。

検索結果 合計:35647件 表示位置:23461 - 23480