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(膿疱性)乾癬〔(pustular) psoriasis〕

1 疾患概要■ 概念・定義表皮角化細胞の増殖あるいは角質の剥離障害によって、角質肥厚を主な病態とする疾患群を角化症という。なかでも炎症所見の顕著な角化症、つまり潮紅(赤くなること)と角化の両者を併せ持つ角化症を炎症性角化症と称するが、乾癬はその代表的疾患である1)。乾癬は、遺伝的要因と環境要因を背景として免疫系が活性化され、その活性化された免疫系によって刺激された表皮角化細胞が、創傷治癒過程に起こるのと同様な過増殖(regenerative hyperplasia)を示すことによって引き起こされる慢性炎症性疾患である2)。■ 分類1)尋常性(局面型)乾癬最も一般的な病型で、単に「乾癬」といえば通常この尋常性(局面型)乾癬を意味する(本稿でも同様)。わが国では尋常性乾癬と呼称するのが一般的であるが、欧米では局面型乾癬と呼称されることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の75.9%を占める3)。2)関節症性乾癬尋常性(局面型)乾癬患者に乾癬特有の関節炎(乾癬性関節炎)が合併した場合、わが国では関節症性乾癬と呼称する。しかし、この病名はわかりにくいとの指摘があり、今後は皮疹としての病名と関節炎としての病名を別個に使い分けていく方向になると考えられるが、保険病名としては現在でも「関節症性乾癬」が使用されている。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の14.6%を占める3)。3)滴状乾癬溶連菌性上気道炎などをきっかけとして、急性の経過で全身に1cm程度までの角化性紅斑が播種状に生じる。このため、急性滴状乾癬と呼ぶこともある。小児や若年者に多く、数ヵ月程度で軽快する一過性の経過であることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の3.7%を占める3)。4)乾癬性紅皮症全身の皮膚(体表面積の90%以上)にわたり潮紅と鱗屑がみられる状態を紅皮症と呼称するが、乾癬の皮疹が全身に拡大し紅皮症を呈した状態である。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の1.7%を占める3)。5)膿疱性乾癬わが国では単に「膿疱性乾癬」といえば汎発性膿疱性乾癬(膿疱性乾癬[汎発型])を意味する(本稿でも同様)。希少疾患であり、厚生労働省が定める指定難病に含まれる。急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する重症型である。尋常性(局面型)乾癬患者が発症することもあれば、本病型のみの発症のこともある。妊娠時に発症する尋常性(局面型)乾癬を伴わない本症を、とくに疱疹状膿痂疹と呼ぶ。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の2.2%を占める3)。■ 疫学世界的にみると乾癬の罹患率は人口の約3%で、世界全体で約1億2,500万人の患者がいると推計されている4)。人種別ではアジア・アフリカ系統よりも、ヨーロッパ系統に多い疾患であることが知られている4)。わが国での罹患率は、必ずしも明確ではないが、0.1%程度とされている5)。その一方で、健康保険のデータベースを用いた研究では0.34%と推計されている。よって、日本人ではヨーロッパ系統の10分の1程度の頻度であり、それゆえ、国内での一般的な疾患認知度が低くなっている。世界的にみると男女差はほとんどないとされるが、日本乾癬学会の調査ではわが国での男女比は2:16)、健康保険のデータベースを用いた研究では1.44:15)と報告されており、男性に多い傾向がある。わが国における平均発症年齢は38.5歳であり、男女別では男性39.5歳、女性36.4歳と報告されている6)。発症年齢のピークは男性が50歳代で、女性では20歳代と50歳代にピークがみられる6)。家族歴はわが国では5%程度みられる6,7)。乾癬は、心血管疾患、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、うつ病の合併が多いことが知られており、乾癬とこれらの併存疾患がお互いに影響を及ぼし合っていると考えられている。膿疱性乾癬に関しては、現在2,000人強の指定難病の登録患者が存在し、毎年約80人が新しく登録されている。尋常性(局面型)乾癬とは異なり男女差はなく、発症年齢のピークは男性では30~39歳と50~69歳の2つ、女性も25~34歳と50~64歳の2つのピークがある8)。■ 病因乾癬は基本的にはT細胞依存性の免疫疾患である。とくに、細胞外寄生菌や真菌に対する防御に重要な役割を果たすとされるTh17系反応の過剰な活性化が起こり、IL-17をはじめとするさまざまなサイトカインにより表皮角化細胞が活性化されて、特徴的な臨床像を形成すると考えられている。臓器特異的自己免疫疾患との考え方が根強くあるが、明確な証明はされておらず、遺伝的要因と環境要因の両者が関与して発症すると考えられている。遺伝的要因としてはHLA-C*06:02(HLA-Cw6)と尋常性(局面型)乾癬発症リスク上昇との関連が有名であるが、日本人では保有者が非常に少ないとされる。また、特定の薬剤(βブロッカー、リチウム、抗マラリア薬など)が、乾癬の誘発あるいは悪化因子となることが知られている。膿疱性乾癬に関しては長らく原因不明の疾患であったが、近年特定の遺伝子変異と本疾患発症の関係が注目されている。とくに尋常性(局面型)乾癬を伴わない膿疱性乾癬の多くはIL-36受容体拮抗因子をコードするIL36RN遺伝子の機能喪失変異によるIL-36の過剰な作用が原因であることがわかってきた9)。また、尋常性(局面型)乾癬を伴う膿疱性乾癬の一部では、ケラチノサイト特異的NF-κB促進因子であるCaspase recruitment domain family、member 14(CARD14)をコードするCARD14遺伝子の機能獲得変異が発症に関わっていることがわかってきた9)。その他、AP1S3、SERPINA3、MPOなどの遺伝子変異と膿疱性乾癬発症とのかかわりが報告されている。■ 症状乾癬では銀白色の厚い鱗屑を付着する境界明瞭な類円形の紅斑局面が四肢(とくに伸側)・体幹・頭部を中心に出現する(図1)。皮疹のない部分に物理的刺激を加えることで新たに皮疹が誘発されることをKoebner現象といい、乾癬でしばしばみられる。肘頭部、膝蓋部などが皮疹の好発部位であるのは、このためと考えられている。また、3分の1程度の頻度で爪病変を生じる。図1 尋常性乾癬の臨床像画像を拡大する乾癬性関節炎を合併すると、末梢関節炎(関節リウマチと異なりDIP関節が好発部位)、指趾炎(1つあるいは複数の指趾全体の腫脹)、体軸関節炎、付着部炎(アキレス腱付着部、足底筋膜部、膝蓋腱部、上腕骨外側上顆部)、腱滑膜炎などが起こる。放置すると不可逆的な関節破壊が生じる可能性がある。膿疱性乾癬では、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する8)(図2)。膿疱が融合して環状・連環状配列をとり、時に膿海を形成する。爪病変、頬粘膜病変や地図状舌などの口腔内病変がみられる。しばしば全身の浮腫、関節痛を伴い、時に結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼症状、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがある10)。図2 膿疱性乾癬の臨床像画像を拡大する■ 予後乾癬自体は、通常生命予後には影響を及ぼさないと考えられている。しかし、海外の研究では重症乾癬患者は寿命が約6年短いとの報告がある11)。これは、乾癬という皮膚疾患そのものではなく、前述の心血管疾患などの併存症が原因と考えられている。乾癬性関節炎を合併すると、前述のとおり不可逆的な関節変形を来すことがあり、患者QOLを大きく損なう。膿疱性乾癬は、前述のとおり呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがあり、生命の危険を伴うことのある病型である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多くの場合、先に述べた臨床症状から診断可能である。症状が典型的でなかったり、下記の鑑別診断と迷う際は、生検による病理組織学的な検索や血液検査などが必要となる。乾癬の臨床的鑑別診断としては、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、亜鉛欠乏性皮膚炎、ジベルばら色粃糠疹、扁平苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、類乾癬、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、ボーエン病、乳房外パジェット病、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚サルコイド、白癬、梅毒、尋常性狼瘡、皮膚疣状結核が挙げられる。膿疱性乾癬に関しては、わが国では診断基準が定められており、それに従って診断を行う8)。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明することが診断基準の1つにあり、診断上は生検が必須検査になる。また、とくに急性期に検査上、白血球増多、CRP上昇、低蛋白血症、低カルシウム血症などがしばしばみられるため、適宜血液検査や画像検査を行う。膿疱性乾癬の鑑別診断としては、掌蹠膿疱症、角層下膿疱症、膿疱型薬疹(acute generalized exanthematous pustulosisを含む)などがある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外用療法副腎皮質ステロイド、活性型ビタミンD3製剤が主に使用される。両者を混合した配合剤も発売されている。2)光線療法(内服、外用、Bath)PUVA療法、311~312nmナローバンドUVB療法、ターゲット型308nmエキシマライトなどが使用される。3)内服療法エトレチナート(ビタミンA類似物質)、シクロスポリン、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、メトトレキサート、ウパダシチニブ(JAK1阻害薬)、デュークラバシチニブ(TYK2阻害薬)が乾癬に対し保険適用を有する。ただし、ウパダシチニブは関節症性乾癬のみに承認されている。4)生物学的製剤抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル)、抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)、抗IL-17A抗体(セクキヌマブ、イキセキズマブ)、抗IL-17A/F抗体(ビメキズマブ)、抗IL-17受容体A抗体(ブロダルマブ)、抗IL-23p19抗体(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)、抗IL-36受容体抗体(スペソリマブ)が乾癬領域で保険適用を有する。中でも、スペソリマブは「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている膿疱性乾癬に特化した薬剤である。また、多数の生物学的製剤が承認されているが、小児適応(6歳以上)を有するのはセクキヌマブのみである。5)顆粒球単球吸着除去療法膿疱性乾癬および関節症性乾癬に対して保険適用を有する。4 今後の展望抗IL-17A/F抗体であるビメキズマブは、現時点では尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に承認されているが、関節症性乾癬に対する治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には関節症性乾癬にもビメキズマブが使用できるようになる可能性がある。膿疱性乾癬に特化した薬剤であるスペソリマブ(抗IL-36受容体抗体)は静注製剤であり、現時点では「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている。しかし、フレア(急性増悪)の予防を目的とした皮下注製剤の開発が行われており、その治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には急性期および維持期の治療をスペソリマブで一貫して行えるようになる可能性がある。乾癬は慢性炎症性疾患であり、近年は生物学的製剤を中心に非常に効果の高い薬剤が多数出てきたものの、治癒は難しいと考えられてきた。しかし、最近では生物学的製剤使用後にtreatment freeの状態で長期寛解が得られる例もあることが注目されており、単に皮疹を改善するだけでなく、疾患の長期寛解あるいは治癒について議論されるようになっている。将来的にはそれらが可能になることが期待される。5 主たる診療科皮膚科、膠原病・リウマチ内科、整形外科(基本的にはすべての病型を皮膚科で診療するが、関節症状がある場合は膠原病・リウマチ内科や整形外科との連携が必要になることがある)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 膿疱性乾癬(汎発型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本皮膚科学会作成「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」(現在、日本皮膚科学会が新しい乾癬性関節炎の診療ガイドラインを作成中であり、近い将来に公表されるものと思われる。一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本乾癬患者連合会(疾患啓発活動、勉強会、交流会をはじめとしてさまざまな活動を行っている。都道府県単位の患者会も多数存在し、本会のwebサイトから検索できる。また、都道府県単位の患者会では、専門医師を招いての勉強会や相談会を実施しているところもある)1)藤田英樹. 日大医誌. 2017;76:31-35.2)Krueger JG, et al. Ann Rheum Dis. 2005;64:ii30-36.3)藤田英樹. 乾癬患者統計.第32回日本乾癬学会学術大会. 2017;東京.4)Gupta R, et al. Curr Dermatol Rep. 2014;3:61-78.5)Kubota K, et al. BMJ Open. 2015;5:e006450.6)Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011;38:1125-1129.7)Kawada A, et al. J Dermatol Sci. 2003;31:59-64.8)照井正ほか. 日皮会誌. 2015;125:2211-2257.9)杉浦一充. Pharma Medica. 2015;33:19-22.10)難病情報センターwebサイト.11)Abuabara K, et al. Br J Dermatol. 2010;163:586-592.公開履歴初回2019年9月24日更新2022年12月22日

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第27回 本当に高プリン体食は痛風の敵なのか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 高尿酸血症痛風の患者さんで、アルコールや肉・魚の内臓などプリン体を多く含む食品の摂取を制限されている方は多いと思います。プリン体は最終的に尿酸に代謝されるため、プリン体が多い食品を避けようというのはよく聞く話ですが、この摂取制限にどれほどの効果があるのでしょうか。プリン体制限食は尿中尿酸排泄を減らすと考えられていますが、プリン体は体内で生成される割合のほうが多いこともあり、尿酸値への影響は約1mg/dL程度と小さいことが知られています1)。さらに、尿酸値が多少高くても、必ずしも痛風発作が起こるわけではありません。無症候性高尿酸血症の結果を定量化するために、健康な男性2,046例を対象とした14.9年間にわたる追跡調査2)では、尿酸値と痛風発作の年間発症率の関係は下記のとおりでした。尿酸値9 mg/dL以上:年間発症率4.9%尿酸値7.0~8.9 mg/dL:年間発症率0.5%尿酸値7.0 mg/dL未満:年間発症率0.1%※尿酸値9 mg/dL以上の場合、痛風発作の5年累積発生率は22%。この研究では、痛風の強力な予測因子として、年齢、肥満度指数(BMI)、高血圧、コレステロール値およびアルコール摂取が指摘されています。多くの人が自覚症状がない疾患で、尿酸値と発作の発症率や食事の影響が小さいとなると、継続的なプリン体の摂取制限はなかなか難しいように思います。動物性プリン体の摂取制限は痛風発作の予防に有用しかし、プリン体制限食が急性痛風発作の発症予防に寄与するという報告もありますので紹介します。1つ目が2004年にNEJMに掲載された論文で3)、プリン体、タンパク質および乳製品の摂取が痛風発作の新規発症に及ぼす影響を前向きに調査したものです。対象はベースライン時点で痛風の既往がない男性 47,150 例で、食事要因と痛風の新規発症の関係を12年間追跡しています。研究期間中に痛風と初診断された730例のうち、各食品の摂取量が最小五分位群に対する最大五分位群の痛風の多変量補正相対リスクは次のとおりでした。肉類摂取量:1.41 (95%信頼区間[CI]1.07~1.86、p=0.02)魚介類摂取量: 1.51 (95%CI 1.17~1.95、p=0.02)乳製品摂取量の増加:0.56(95%CI 0.42~0.74、p<0.001)興味深いことに、プリン体が豊富な野菜の摂取量やタンパク質の総摂取量は痛風リスクの上昇と関連がみられませんでした。ちなみに、乳製品の摂取がリスク低減につながる理由として、尿酸とナトリウムが結合した針状結晶が関節で炎症を起こす過程を阻害するためという説があるようです4)。続いて、高プリン体食と再発性痛風発作リスクの関係を調べた症例クロスオーバー研究です5)。こちらはオンラインで募集した痛風患者633例を1年間追跡しています。平均年齢は54歳、78%が男性、88%が白人です。参加者は、痛風発作時に、発作発症日、発作の兆候、服用薬剤(抗痛風薬を含む)、発作前2日間の潜在的なリスクファクターの有無(プリン体含有食品の摂取を含む)について質問を受けています。すべての高プリン体食品(例:肉、内臓肉、肉汁、魚介類、豆類、ホウレンソウ、アスパラガス、マッシュルーム、酵母、ビール、その他ワインなどのアルコール飲料)が対象となっています。2日間の総プリン体摂取量の最小五分位群と比較して、他の各五分位群の再発性痛風発作のオッズ比の増加は、それぞれの群の低いものから1.17、1.38、2.21、4.76(p<0.001)で、動物性のプリン体摂取量については1.42、1.34、1.77、2.41(p<0.001)、植物性のプリン体摂取量については1.12、0.99、1.32、1.39(p=0.04)でした。プリン体摂取の影響は、性別、アルコール、利尿薬、アロプリノール、NSAIDs、コルヒチン服用のサブグループ間で一貫していました。高プリン体食の摂取で、再発性痛風発作のリスクが約5倍増加しており、とくに動物由来のプリン体の制限が有効であることが示唆されています。プリン体は食事由来よりも体内で生成される割合のほうが高いものの、実際にプリン体制限食では痛風発作が少ないというリスク感覚を持っておくと患者さんへ説明がしやすいかなと思います。植物性のプリン体摂取についてはあまり過敏になる必要はなさそうですが、アルコールや動物性のプリン体摂取は尿酸値への影響が直接大きくなかったとしても、痛風発作の原因になりうることや、乳製品が予防となりうることは押さえておくとよいでしょう。1)Kakutani-Hatayama M, et al. Am J Lifestyle Med. 2015;11:321-329.2)Campion EW, et al. Am J Med. 1987;82:421-426.3)Choi HK, et al. N Engl J Med. 2004;350:1093-1103.4)Dalbeth N, et al. Curr Rheumatol Rep. 2011;13:132-137.5)Zhang Y, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1448-1453.

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エヌトレクチニブ、NTRK固形がんとROS1肺がんでFDA承認

 2019年8月15日、米国食品医薬品局(FDA)は、NTRK融合遺伝子陽性でほかの治療法がない固形がんに対して、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブを迅速承認した。同時に、転移のあるROS1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しても承認している。 NTRK陽性がんの有効性は、ALKA、STARTRK-1、STARTRK-2の3つの多施設単群臨床試験のいずれかでエヌトレクチニブを投与された54例の成人患者で検討された。54例の独立評価委員による全奏効率(ORR)は57%(95%CI:43~71)であった。奏効期間(DOR)は、患者の68%が6ヵ月以上は、45%が12ヵ月以上であった。登録が多かったのは、肉腫、NSCLC、乳腺類似分泌がん、乳房、甲状腺、大腸であった。 ROS1陽性NSCLCの有効性は、上記の3つの試験でエヌトレクチニブが投与された51例の成人患者で調査された。ORRは78%(95%CI:65~89)で、DORは患者の55%で12ヵ月以上であった。  エヌトレクチニブの重篤な有害事象は、うっ血性心不全、中枢神経系への影響、骨格部骨折、肝毒性、高尿酸血症、QT間隔延長、視力障害であった。頻度の高い(発現率20%以上)有害事象は、疲労、便秘、味覚異常、浮腫、めまい、下痢、悪心、感覚異常、呼吸困難、筋肉痛、認知障害、体重増加、咳、嘔吐、発熱、関節痛、および視覚障害であった。

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尿酸値が低いと認知症リスクは増大するのか?~44年の追跡調査

 血清尿酸が減少すると抗酸化力が損なわれる可能性があるため、血清尿酸値が低いと認知症リスクが増大することが示唆されている。一方、血清尿酸値が高いと心血管リスクが増加し、認知症とくに血管性認知症のリスクが増大する恐れがある。今回、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLieke E.J.M. Scheepers氏らによる集団ベースの研究で、アルツハイマー病や血管性認知症などの認知症のサブタイプにかかわらず、血清尿酸値が高いと認知症リスクが低いことが示された。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2019年5月2日号に掲載。高い尿酸値は認知症における低いリスクと関連 1968~69年に38~60歳の女性1,462人を44年(平均33.1年)にわたって追跡調査し、血清尿酸(1968〜69年および1992~94年に調査)と晩年の認知症リスクとの関連を調べた。 その結果、44年の追跡調査期間中、高い血清尿酸値(標準偏差76.5μmol/L当たり)は、認知症(n=320、ハザード比[HR]:0.81、信頼区間[CI]:0.72~0.91)、アルツハイマー病(n=152、HR:0.78、CI:0.66~0.91)、および血管性認知症(n=52、HR:0.66、CI:0.47~0.94)における低いリスクと関連していた。 今回の結果は、アルツハイマー病および血管性認知症といった認知症のサブタイプにかかわらず、認知症発症において血清尿酸が保護的役割を果たすという仮説を支持する。著者らは、「これは、痛風患者の認知症治療および高尿酸血症の治療目標に重要な意味を持つかもしれない」としている。

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MR選択性の高い高血圧症治療薬「ミネブロ錠1.25mg/2.5mg/5mg」【下平博士のDIノート】第23回

MR選択性の高い高血圧症治療薬「ミネブロ錠1.25mg/2.5mg/5mg」今回は、選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)ブロッカー「エサキセレノン錠(商品名:ミネブロ錠1.25mg/2.5mg/5mg)」を紹介します。本剤は、中等度の腎機能障害およびアルブミン尿を有する2型糖尿病を合併する高血圧症患者にも投与することができ、これまでの高血圧症患者のアンメットニーズを満たす薬剤となることが期待されています。<効能・効果>本剤は、高血圧症の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年5月13日より発売される予定です。体液量の恒常性の維持に寄与するアルドステロンが作用するMR受容体の活性化を抑制することで降圧作用を示します。<用法・用量>通常、成人にはエサキセレノンとして2.5mgを1日1回経口投与します。なお、効果不十分な場合は5mgまで増量できます。本剤は、高カリウム血症の患者もしくは本剤投与開始時に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えている患者や重度の腎機能障害のある患者、カリウム保持性利尿剤やカリウム製剤などを投与中の患者には禁忌となっています。<副作用>国内第III相臨床試験において、総症例1,250例中162例(13.0%)に、臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、血清カリウム値上昇51例(4.1%)、血中尿酸増加17例(1.4%)、高尿酸血症13例(1.0%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として高カリウム血症(1.7%)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、血圧を上げるホルモン(アルドステロン)の働きを抑えることにより、血圧を低下させます。2.血圧が下がることにより、めまいなどが現れることがあるので、高所作業、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には注意してください。3.飲み合わせに注意すべき薬や健康食品があるため、現在服用している薬やサプリメントがある場合は、医師・薬剤師にお伝えください。また、新たに薬を飲み始める場合は、あらかじめ相談してください。4.本剤を服用中は、体内のミネラルバランスを保つために、こまめな水分摂取や適度な運動を心掛け、脱水や便秘を予防してください。5.この薬の服用により、血中のカリウム値が上昇することがあります。手や唇がしびれる、手足に力が入らない、吐き気などの症状が現れた場合は相談してください。6.葉物野菜や芋類、豆類、バナナなど、カリウムを多く含む食物を食べ過ぎないように注意してください。カリウムは水に溶けやすいため、ゆでたり水にさらしたりすることで、カリウムを減らすことができます。<Shimo's eyes>MR拮抗薬は『高血圧診療ガイドライン2014』において、高血圧症治療の第1選択薬とはなっていないものの、ミネラルコルチコイドが関与する低レニン性高血圧症にとくに効果が期待でき、治療抵抗性高血圧症に対しても有用であるとされています。既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)とエプレレノン(同:セララ)が発売されています。スピロノラクトンのMR拮抗作用は強力ですが、女性化乳房や月経異常などの性ホルモンに関連した副作用を発現しやすいことが治療継続の課題となっています。MRへの選択性が高いエプレレノンは、性ホルモン関連副作用は軽減されていますが、中等度以上の腎機能障害患者や、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者への投与は禁忌となっています。本剤はMR選択性を有し、本態性高血圧症患者を対象とした臨床試験においてエプレレノンに劣らない降圧作用が認められています。また、中等度の腎機能障害患者、および微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者に対しても、血清カリウム値の定期的な測定は必要ですが投与可能です。今までMR拮抗薬を使用できなかった血圧コントロール不良の患者の新たな治療選択肢となりうるでしょう。なお、2019年4月時点において、海外で承認されている国および地域はありませんので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。

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第16回 心臓の“しゃっくり”とは何ぞや?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第16回:心臓の“しゃっくり”とは何ぞや?正常ならほぼ規則正しい心臓の収縮も、時には乱れます。今回は、単発で生じる不整脈として最も多い「期外収縮」を取り上げ、基本的な用語や心電図の見方についてDr.ヒロがレクチャーします。症例提示71歳、女性。高血圧で加療中。不定期の動悸とめまいの訴えがあるため、ホルター心電図検査が行われた。総心拍数:8.1万/日(35~92/分)、期外収縮:2,900回/日、ポーズ(2秒以上):440回/日。心房細動・粗動なし。この患者の心電図(拡大波形)を抜粋して以下に示す(図1)。(図1)ホルター心電図画像を拡大する【問題1】AおよびBの心電図に色帯で示した波形の名称を答えよ。解答はこちらA:(心房)期外収縮B:(房室接合部)補充収縮解説はこちら上段Aと下段B、どちらも途中まではP-QRS-Tのリズムがレギュラー(整)に続いていますね。Dr.ヒロは安定したP-QRS-Tの連続を各波形の頭文字をとって“ピクット”と呼んでいます(Pの“ピ”,Qが“クッ”で、Tは“ト”ってこと)。心臓が収縮しているイメージにも良く合ってますでしょ? でも、安定なはずの“ピクット”がAの6拍目、Bの4拍目でグラついています。ともに、本来予想される心拍の出現タイミングからズレており、多くの人が「期外収縮」の診断を真っ先に思いつくのではないでしょうか?ここでは、それが正しいかどうかを問うています。今回は最も基本的な不整脈として、単発のものを扱いましょう。本問では、珍しくホルター心電図を題材にしています。これまでの12誘導とは違い、不整脈を中心にチェックする心電図なだけで、基本的な読みは変わりません。このように多くのホルター心電図は2段構えの構成で、上段(ch.1:チャンネル1)が12誘導のV5誘導、下段(ch.2)はV1ないしaVF誘導に類した波形を呈します。どちらを見てもいいですが、不整脈の解析に重要なP波が見やすいのはch.2であることが多いので、抜き出して説明しましょう(図2)。(図2)ch.2(NASA誘導)のみ抜粋画像を拡大するP-QRS-Tの“ピクット”の等間隔性を意識してビヨーンと図中にR-R間隔を弧線で表現しました。正常な洞調律が続いた場合、Aの6拍目、Bの4拍目のQRS波が来るべき本来の場所を点線で示しました。そうすると、AとBとで違いに気づきますよね?そう、まずAでは想定よりも“早い”タイミングでQRS波(▼)が出現しており、これが「期外収縮」です。「早期収縮」という別称のほうが意味はとりやすいですが、市民権を得ているのは前者です。英語の教科書でも、premature beat/contraction/systole/complexextrasystoleectopic beatなどの言い方が紹介*されています。(*:日本循環器学会編.循環器学用語集、Wagner GS, et al. Marriott Practical Electrocardiography 12th ed. Philadelphia:Lippincott Williams & Wilkins;2014.p.314.)この女性の動悸の原因はコレで、1日に約3,000回、Aと同様の(心房)期外収縮が出ていました。Dr.ヒロは“心臓のしゃっくり”とか“心臓がスキップしているみたい”(skipped beatと、ある外国人の患者さんが言っていたっけ)と説明していますが、皆さんなら何と説明しますか?では、もう一方のBは何でしょう…こちらも想定されるタイミングからズレている点はAと同じですが、こちらのQRS波(▼)は“遅ればせ”な感じがします。油断すると、これも「期外収縮」と言ってしまいそうですが、正しくは「補充収縮」と言うんです。英語表現はescape beat。せっかちで落ち着きがない“しゃっくり”のような期外収縮が動悸の原因となる一方、“遅刻”を思わせる負のイメージとは裏腹に、補充収縮はありがたい“安全網”、セーフティ・ネットなんです。これがなければ、心臓はしばらく止まってしまうわけですから…非常にありがたいワケ。実は、Bでは色帯(3拍目)に続く4拍目のビートも本来の洞収縮のタイミングからは遅れています。つまり、これも「補充収縮」なんです。このように2回以上連続で補充収縮が見られる時には、定義上は「補充調律」が見られたという表現が正しいです。勘のいい方は、途中からP波がしばらく出ていないことに気づいたでしょうか(最後の6拍目の直前にようやくP波があります)。よって、この女性のめまいの原因は、洞(結節)機能低下、すなわち「洞不全症候群」ということがわかります。では、期外収縮に関して、もう一問いきましょう。症例提示85歳、男性。慢性腎臓病(CKD)、高尿酸血症で通院中。脳梗塞の既往あり、頸動脈ステント留置術後。起床時の胸部苦悶感、息苦しさを主訴に救急受診した。脈拍75/分、血圧152/79mmHg、酸素飽和度99%、下腿浮腫あり。Hb:7.7g/dL、BUN:47.7mg/dL、CRE:5.31mg/dL、K:5.5mEq/L。心電図(図3)を以下に示す。(図3)救急外来時の心電図画像を拡大する【問題2】心電図(図3)の所見として誤っているものを2つ選べ。1)洞調律2)左軸偏位3)心房細動4)心室期外収縮5)完全左脚ブロック解答はこちら1)、5)解説はこちらいつも通りの“レーサー・チェック”です(第1回)。R-R間隔は不整で心拍数66/分(検脈法:10秒)、洞性P波はどうでしょう?「不整脈」がありそうですが…。1)☓:期外収縮らしきQRS波を除いた部分ではR-R間隔が整に見えます。ただ、それは“まやかし”です。根拠なきサイナス宣言はDr.ヒロ的には大罪です! “イチニエフの法則”で確認すると、洞性P波はないので自信を持って“非洞調律”と言えます。2)◯:QRS電気軸の定性的評価では、IとaVF(II)誘導でQRS波の向きに着目します(第8回)。I:上向き、aVF(II):下向きは「左軸偏位」、これでオッケーです。偏位角度は“トントン法Neo”で「-60°」となります。3)◯:「不整脈」かなと思いつつ診断に悩むなら、まずは長めに心電図を記録することから始めて下さい。情報が増えるほうが診断しやすいので、アタリマエのように思えて実はコレが“金言”なんです(笑)。以下に別の時間帯にとった12誘導心電図を示します(図4)。(図4)別の時間帯のII誘導・V1誘導(非同時[連続]記録)画像を拡大するII誘導では判然としませんが、V1誘導の3~4拍目のR-R間隔が空いた部分に、わずかな“さざ波”が見つけられたらアナタの勝ち。これがf波(細動波)ですよね。R-R不整とあわせて「心房細動(AF)」が正解です(第4回)。しかも、f波(細動波)が1mmに満たない場合はとくに「ファイン心房細動」と呼ばれます(fineは微細な、かすかなの意)。4)◯:図3では、2種類のQRS波が確認できます。普通は幅広くいびつなQRS-T波形のほうが(心室)期外収縮です。5)☓:QRS幅がワイドで特徴的なV1波形(rSR'型)、イチエルゴロク(I、aVL、Ⅴ5、V6)の側壁誘導でS波が目立つので(スラーという)、完全「右脚」ブロックであれば○でした。期外収縮のほうは「左脚」ブロックに似た形をしていますが、波形診断は房室伝導したQRS波形で行います。CKD stage5の高齢男性の症例です。胸部症状の原因は、溢水・尿毒症をはじめ、心不全や虚血性心疾患、不整脈など複数が考えられると思います。ほかに高カリウム血症も要注意です。Dr.ヒロの当セミナーでは、心電図を中心に解説しますが、実臨床では病歴、血液検査、胸部X線、心エコーなどの結果とともに総合的に判断して下さいね。ベースがR-R不整の場合にも「期外収縮」は出るんです。問題1のように洞調律だったら、先行R-R間隔よりも早いタイミングであることをもって診断できますが、今回のようにAFの場合はそうはいきません。“派手”な印象のQRS波形があれば、多くはそちらが「心室期外収縮:PVC」でしょう。これは、QRS幅がワイドになるのに加えて、T波もQRS波と向きが反転して大きく目立つ性質があるためです。肢誘導に着目すると、3拍目と5拍目がPVC、胸部誘導なら2拍目と5拍目がそうなりますね。もちろん、以前の(期外収縮が [少] ない)心電図を用意して、今回の波形と比べて房室結節を経由した正規のQRS波を認識し、もしもそれがなければ、少し長めに記録してメイン“じゃない”かつ”派手”な波形が PVCと考えてもOKでしょう。もちろん、まれに例外もあります。最後の最後にちょっとだけややこしい話を…。AFで見られる”派手”でおかしなQRS波形がすべて「期外収縮」、すなわちPVCの”一択”なら話はカンタンですよね?でも、実際には違うんです。もちろん、心房が高頻度で興奮するAFだと「心房期外収縮:PAC」は原理的にありえません。房室結節を過ぎた後、心室に入ってからの電気の進み方が通常と変わってしまう場合に平常とは異なるPVC類似のQRS波形を呈することがあるのです。これは「(心室内)変行伝導」と呼ばれる現象です(聞いたことない、難しいなと感じたら、今回は名前だけでも覚えましょう)。以上のことから考えられる今回の心電図診断をまとめます。心電図診断ファイン心房細動心室期外収縮(頻発性)完全右脚ブロック左軸偏位(左脚前枝ブロック疑い)時計回転このケースは心房では”痙攣”(AF)が続いていて、心室では頻繁に“しゃっくり”(PVC)が起こるややこしい方ということになりました。付随所見も多く、背景に心疾患もありそうな心電図だと思います。今回は、「期外収縮」をテーマに、ごく基本的な話をしました。紛らわしい「補充収縮」や基本調律がAFの場合なども扱いました。良く復習しておきましょうね!Take-home Message1)先行R-R間隔から想定されるタイミングよりも早期に出現するのが「期外収縮」の基本概念2)「補充収縮」を間違って「期外収縮」と言うなかれ3)不整脈の診断に迷ったら、まずは長く記録して判断材料を増やすべし【古都のこと~北野天満宮~】弥生の京都、桜の季節になる前に行っておきたいのは上京区にある北野天満宮です。2月下旬から約1ヵ月間、“見事”の一言に尽きる梅苑が公開されています。曇り空の朝、懐かしい景色の広がる北門から入ると、境内の随所で梅の木が香りを放っており、なかでも本殿前の「飛梅」は見事でした。“学問の神様”でもある菅原道真公が鎮座するこの神社は、受験生や修学旅行生の定番スポット。スマホ片手の制服姿の集団で賑わい始めた頃、桐箱の御守を手に“天神さん”を後にしたのでした。

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スタチン長期投与患者でbempedoic acidが有益/NEJM

 TPクエン酸リアーゼ阻害薬bempedoic acid(ベンペド酸)の安全性/有効性を評価した、52週間の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「CLEAR Harmony試験」の結果が、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K. Ray氏らにより発表された。最大耐用量のスタチンへのベンペド酸の追加により、プラセボと比較して有害事象の発現が増加することなく、LDLコレステロール値が有意に低下したという。これまで短期試験では、ベンペド酸によりLDLコレステロール値が低下することが示唆されていたが、ガイドラインで推奨されるスタチン療法を長期にわたって受けている高コレステロール血症患者への、ベンペド酸投与の安全性と有効性に関するデータは限られていた。NEJM誌2019年3月14日号掲載の報告。スタチン療法中の患者にベンペド酸を追加、長期安全性/有効性を評価 CLEAR Harmony試験は、2016年1月18日~2018年2月21日に、5ヵ国114施設において実施された。 対象は、アテローム動脈硬化性心血管疾患またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症、あるいはその両方を有する患者で、最大耐用量のスタチン療法±脂質低下療法を受けているがLDLコレステロール値が70mg/dL以上の患者を適格とし、ベンペド酸群とプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けた。最大耐用量スタチン療法は、患者が継続できた最大強度のスタチンレジメンとし、担当医が判定した。 主要評価項目は安全性とし、主要副次評価項目(主要有効性評価項目)は、52週間試験における12週時のLDLコレステロール値の変化率とした。安全性の解析には記述統計を用い、有効性は共分散分析(ANCOVA)を用いて解析した。ベンペド酸の上乗せは有効で、安全性プロファイルも良好 2,230例が登録され、そのうち1,488例がベンペド酸群、742例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。ベースラインの平均(±SD)LDLコレステロール値は、103.2±29.4mg/dLであった。 介入期間中における有害事象発現率は、ベンペド酸群78.5%(1,167/1,487例)プラセボ群78.7%(584/742例)、重篤な有害事象発現率はそれぞれ14.5%、14.0%で、いずれも両群で大きな差はなかった。しかし、投与中止に至った有害事象の発現率は、ベンペド酸群がプラセボ群よりも高く(10.9% vs.7.1%)、痛風の発現率もベンペド酸群が高値であった(1.2% vs.0.3%)。 12週時点で、ベンペド酸群は、平均LDLコレステロール値が19.2mg/dL低下し、ベースラインからの変化率は-16.5%であった。プラセボ群のベースラインからの変化率との差は-18.1ポイント(95%信頼区間[CI]:-20.0~-16.1)で、有意差が認められた(p<0.001)。安全性および有効性のアウトカムは、併用していたスタチン療法の強度にかかわらず一貫していた。

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腎疾患・CKDも遺伝子診断の時代へ!(解説:石上友章氏)-1006

 本邦でも、ミレニアム・プロジェクトと題した国家プロジェクトがあり、ヒト疾患ゲノム解析が、その中の1つのプロジェクトとして採用されていた(首相官邸「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について」)。当時は、キャピラリー・シークエンサーの時代で、逐次処理的に塩基配列を解読するため、膨大な設備と長時間の解析が必要であった。当時筆者が勤務していた米国・ユタ大学エクルズ人類遺伝学研究所には、国際的なヒトゲノムコンソーシアムの拠点があり、広いフロア一面を占めるキャピラリー・シークエンサーに感動を覚えた記憶がある。技術は進歩し、1,000ドルゲノムの時代を迎えて、個別化した全ゲノム解析が視野に入ってきた。現在では、いわゆる次世代シークエンサー(NGS)が汎用化し、これまで研究レベルであった分子遺伝学の成果が、臨床医にも手が届く時代を迎えている。今では、がんクリニカルシークエンス検査が、原発不明がんや、既存の治療に応答しない難治性がんの診療に応用されている。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏は、エクソーム解析を既知のCKDコホート計3,315例に対して行い、腎疾患・CKDにおける遺伝子診断の可能性について検討した1)。その結果は、307例(9.3%)に遺伝子診断をつけることができた。既知の原因遺伝子と疾患表現型が、必ずしも一致しない症例も少なからず認められた。たとえば、原著Figure 1の臨床診断スペクトラムによると、先天性多発性嚢胞腎の原因遺伝子として知られるPKD1、PKD2の異常は、そのほとんどが嚢胞性腎疾患であるが、Alport症候群の原因遺伝子として知られるIV型コラーゲンのα鎖遺伝子の異常は、高血圧性・糖尿病性を含む、幅広い臨床スペクトラムを呈している。同様に、家族性若年性痛風腎症の原因遺伝子として知られるUMOD遺伝子の変異も、幅広い臨床スペクトラムを呈している。 これまでのCKD・腎疾患の診断は、マクロ・ミクロの形態による診断ないしは、血清クレアチニン値に基づいた診断に限定されていた。今後、遺伝子診断は、迅速化、低コスト化、正確化を実現し、臨床医に、より確度の高い疾患情報の提供を可能にすることは間違いない。とくにCKDは、これまでの腎疾患のように、病理学的所見、病態に基づいた疾患ではない。estimated GFRによって、重症度を定量的に評価することができるようになったが、血圧、脂質、血糖とは異なり、eGFRを特異的に制御する治療法については、未解決である。CKDの重要性についても、主要4医学誌での論文をみても、いまだに疫学的な研究成果にとどまっていることが実情である。遺伝子診断のような技術革新が、すぐに臨床応用されるというのは楽観的に過ぎるが、引き続きの進捗に注目したい。

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高尿酸血症痛風の治療ガイドライン、8年ぶりに改訂

 2018年12月28日、日本痛風・核酸代謝学会は『高尿酸血症痛風の治療ガイドライン(GL) 第3版』を発刊した。改訂は2010年以来8年ぶりとなる。近年、尿酸値の上昇は、痛風だけではなく、脳・心血管疾患や腎障害にも影響を及ぼすとの報告が増えているため、これらのイベント予防も目的として作成されている。高尿酸血症痛風の治療ガイドライン第3版の特徴とは 高尿酸血症痛風の治療ガイドライン第3版は全3章で章立てられており、第1章は作成組織・作成方針、第2章は、診療上重要度の高い7つのクリニカルクエスチョン(CQ)と、それに対するエビデンスならびに推奨度が示されている。第3章は治療マニュアルとして、リスク因子、診断、治療などが項目ごとに記載され、「医療経済」の項が新規で追加されている点などが主な特徴である。治療アルゴリズムにはこれらのCQが盛り込まれており、高尿酸血症痛風の治療ガイドラインの集大成と言っても過言ではないそうだ。 また、これまでの病型分類は、尿酸産生過剰型と尿酸排泄低下型の2つのタイプであった。今回の高尿酸血症痛風の治療ガイドラインには、腸からの排泄低下により血清尿酸値が上昇するという“腎外排泄低下型”の概念が追加されている。 以下に第2章の各CQのみを高尿酸血症痛風の治療ガイドラインより抜粋して示す。第2章 クリニカルクエスチョンと推奨CQ1)急性痛風関節炎(痛風発作)を起こしている患者において、NSAID・グルココルチコイド・コルヒチンは非投薬に比して推奨できるか?CQ2)腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ3)高尿酸血症合併高血圧患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ4)痛風結節を有する患者に対して、薬物治療により血清尿酸値を6.0mg/dL以下にすることは推奨できるか?CQ5)高尿酸血症合併心不全患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ6)尿酸降下薬投与開始後の痛風患者に対して、痛風発作予防のためのコルヒチン長期投与は短期投与に比して推奨できるか?CQ7)無症候性高尿酸血症の患者に対して、食事指導は食事指導をしない場合に比して推奨できるか? 高尿酸血症痛風の治療ガイドラインはCQにおいて、とくに重要なポイントはCQ2、3で、腎機能低下を抑制する目的での尿酸降下薬の使用を条件付きで推奨している(欧米のGLでは推奨されていない)。一方、心血管発症リスクの軽減を目的とした尿酸降下薬の使用は、条件付きで推奨されない。ただし、降圧薬使用中の高血圧患者では痛風や腎障害を合併しやすいため、痛風や腎障害の抑制を目的に尿酸降下薬の投与が推奨されている。

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高尿酸血症の治療失敗に肥満が関連か~日本人男性

 高尿酸血症または痛風の日本人男性の治療目標達成率と治療成功に影響する因子について、順天堂大学の片山 暁子氏らが検討した結果、肥満と治療失敗との関連が示唆された。また、血清尿酸(SUA)管理の一部として脂質プロファイルを維持する重要性が強調された。著者らは「肥満と脂質異常症の両方をうまく管理し、健康的なSUA値を得ることで、心血管疾患を予防できるかもしれない」としている。Internal Medicine(Japan)誌オンライン版2019年1月10日号に掲載。 本研究は、2012年1~12月に実施した横断研究で、職場の健康診断に参加した13万6,770人のうち高尿酸血症または痛風の男性2,103人のSUA値および臨床的特徴を調べた。成功(SUA≦6.0mg/dLと定義)率を算出し、多変量解析を用いて「治療失敗」(目標SUA値に到達しない)に関連する因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・目標SUA値の達成率は37.5%であった。・BMIは治療失敗と有意に関連していた(カテゴリ[C]1<25.0と比較し、25.0≦C2<27.5の調整オッズ比[AOR]=1.35、27.5≦C3<30.0のAOR=1.69、C4≧30.0のAOR=1.94)。・腹囲(WC)と治療失敗との間にも有意な正の相関が観察された(C1<85.0cmと比較し、85≦C2<90のOR=1.29、90≦C3<95のOR=1.41、95≦C4のOR=2.28)。 ・BMIまたはWCの値の大きい人は小さい人よりも有意にSUA値が高い傾向があった。・治療失敗に対する予防因子として、脂質異常症治療薬の継続的服用が特定された。

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尿酸値上昇、食事の影響はわずか/BMJ

 一般集団において血清尿酸値の変化は、遺伝的寄与とは対照的に食事の寄与はわずかであることが明らかにされた。ニュージーランド・オタゴ大学のTanya J. Major氏らによる住民ベースコホート研究のメタ解析の結果で、BMJ誌2018年10月10日号で発表された。血清尿酸値は、遺伝的暴露と特定の食品などを含む環境的曝露による影響を受けることが知られている。血清尿酸値と食事内容の関係を統計的に検証 研究グループは、血清尿酸値と食事内容の関係を統計的に検証し、血清尿酸値の集団における変動に対する食事パターンおよび遺伝的変異の相対的な推定寄与を評価した。検討には、米国の断面調査データ(5つのコホート試験)を用いてメタ解析を行った。 解析に包含されたのは、ヨーロッパ系米国人1万6,760例(男性8,414例、女性8,346例)。腎疾患や痛風を有しておらず、尿酸降下薬や利尿薬を服用していない18歳以上を適格とした。全被験者は、血清尿酸測定値、食事調査データ、交絡因子情報(性別、年齢、BMI、平均1日摂取カロリー、教育を受けた年数、運動レベル、喫煙状態、更年期の状態)、ゲノムワイド遺伝子型の情報を有していた。 主要評価項目は、平均血清尿酸値と血清尿酸値の変動で、多変量線形回帰分析からのβ値(95%信頼区間[CI])とボンフェローニ補正p値を、各回帰分析で求めた食品が寄与する部分的R2値とともに用いて、関連性を定量化した。食事は尿酸値上昇と関連するが、影響はわずか 7つの食品(ビール、リキュール、ワイン、ジャガイモ、鶏、清涼飲料水、肉[牛、豚、ラム])が、血清尿酸値上昇と関連していた。一方、8つの食品(卵、ピーナッツ、コールドシリアル、スキムミルク、チーズ、ブラウンブレッド、マーガリン、非柑橘系果物)が、血清尿酸値低下と関連していた。これらは、男性コホート、女性コホートあるいは全コホートにおいて認められた。 健康的な食事ガイドラインに基づいて構築された3つの食事スコア(DASH、Mediterranean、Healthy Eating)は血清尿酸値と逆の相関関係を示し、使用したデータセットの食事パターンに基づくデータドリブンスコアは、血清尿酸値の上昇と正の関連を示したが、いずれも血清尿酸値の変動は0.3%以下であった。対照的に、一般的にみられたゲノムワイド一塩基変異による血清尿酸値の変動は、23.9%であった。

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日米における心血管代謝疾患のBMIカットオフ値

 日本人と米国人を対象とした横断研究から、日米とも高BMIが高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症の有病率増加と関連すること、有病率が増加するBMIカットオフ値は日本人のほうが有意に低いことを、虎の門病院の桑原 政成氏らが報告した。米国における過体重/肥満の定義が日本では適用できない可能性が示唆される。Nutrients誌2018年8月3日号に掲載。 本研究は、聖路加国際病院における18~85歳の日本人成人9万47例と、米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)における成人1万4,734例での横断研究。BMIごとの高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症の有病率を日米で比較した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率は米国のほうが有意に高く、高尿酸血症の有病率は日米で差がなかった。・年齢、性別、喫煙や飲酒習慣、慢性腎臓病、その他の心血管リスク因子の調整後、日米とも、高BMIは高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症の独立した危険因子であった・これらの心血管代謝リスク因子の有病率が増加したBMIカットオフ値は、米国が日本より有意に高かった(高血圧症:27 vs.23、糖尿病:29 vs.23、脂質異常症:26 vs.22、高尿酸血症:27 vs.23)。

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簡潔で読みやすい「脂質異常症診療ガイド2018年版」

 動脈硬化性疾患は、がんに次ぐ死亡原因であり、脂質異常症はその重要な危険因子である。昨年のガイドライン改訂に伴い、2018年7月5日、日本動脈硬化学会が「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版について」のプレスセミナーを開催した。今回、診療ガイド編集委員会委員長・日本動脈硬化学会副理事長の荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター病院長)が登壇し、診療ガイドの活用方法について語った。脂質異常症診療ガイド2018年版は簡潔に読みやすく 脂質異常症診療ガイドは脂質異常症患者の診療に必須の知識を理解するための、“簡潔で実用的なガイド”として発刊され、昨年改訂された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」とは異なる役割をもつ。各章はポイントの箇条書きや図表でわかりやすく構成されており、各病態のメカニズムや組織像の写真などが掲載されているため、メディカルスタッフとの情報共有や診察時の説明にも有効である。脂質異常症診療ガイドとガイドラインの違い 同氏はまず、以下の3点を脂質異常症診療ガイドとガイドラインの大きな違いとして強調した。1)脂質異常症の合併症として急性膵炎を動脈硬化性疾患に追加して記載2)実際の身体所見の写真や食品の脂質含有量例など栄養に関する具体的掲載3)新規薬剤の選択的PPARαモジュレーターが他の薬剤と別立てで追加 さらに動脈硬化性疾患予防のためには 、 早期からの包括的管理が重要であることを踏まえ、同氏は「生活習慣の包括的管理による危険因子(肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症、腎機能障害など)の改善を基本コンセプトとして包括的管理チャートが作成された」こと、包括的リスク評価・管理の変更点として「Step1 はa、b、cの3段階から2段階に簡略化した」ことを述べた。 脂質異常症診療ガイドによると、脂質異常症を診断するうえで診断基準がポイントとなる。この診断基準の値は「動脈硬化発症リスクを判断するためのスクリーニング値であり、治療開始のための基準値ではない」と記載されており、この基準値を満たしても薬物療法が開始されるわけではない。そして、診断基準で必要なLDL-Cの計算方法は、Friedewaldの式、もしくは直接法で求めるよう記載されるようになった。家族性高コレステロール血症に脂質異常症診療ガイドを活用 FHは原発性脂質異常症の中でもっとも頻度の高い常染色体遺伝疾患であり、早期診断・治療がきわめて重要とされる。同氏は「このような遺伝子疾患をしっかり鑑別して診断してもらうためにも診療ガイドの活用を」とコメントした。アプリやWebの活用も 動脈硬化学会はアプリやWEB活用にも注力し、医療従事者向けアプリ「冠動脈疾患発症予測・脂質管理目標値設定」をホームページ上で提供している。Web版はパソコン上で利用可能であり、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版に掲載している「吹田スコアによる冠動脈疾患発症確率と脂質管理目標値」を簡便に求めることが出来る。これに対応する一般向けアプリ「これりすくん」も提供しているので、患者が自身の疾患リスクを把握するためにも有効である。 最後に、同氏は「自身の興味ある領域の内容を、簡単かつ短時間に把握・理解してもらい、臨床に役立てていただきたい」と、脂質異常症診療ガイドの啓発活動に対する意気込みを語った。

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“2008年rosiglitazoneの呪い”は、いつまで続くのか?(解説:石上友章氏)-851

 2008年12月18日に、米国食品医薬品局(FDA)が出した通達によって、以後抗糖尿病薬については、心血管イベントをアウトカムにしたランダム化臨床試験(CVOT: cardiovascular outcome trial)を行うことが、義務付けられた。以来、これまでに抗糖尿病薬については、複数のCVOTが行われて発表されている。従来薬のCVOTの結果が非劣性にとどまることが多かったのに対して、SGLT2阻害薬を対象にした、EMPA-REG OUTCOME試験では、試験薬であるempagliflozin群に、心血管複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)を有意に抑制する効果が証明された(エンパグリフロジン、心血管死リスクを有意に低下/NEJM)。心血管死については、約40%もの抑制が認められ、一躍脚光を浴びた。PPARγアゴニストの1つである、rosiglitazoneのもたらした教訓1)が、すべての抗糖尿病薬についてのCVOTを義務化させた。 Whiteらの手による、Cardiovascular Safety of Febuxostat and Allopurinol in Patients with Gout and Cardiovascular Morbidities (CARES)試験は、こうした背景の下、CVOTの適応を抗高尿酸血症薬にまで拡大した結果、行われた臨床試験である。新薬であるfebuxostatにおける、従来薬であるallopurinolに対する非劣性、すなわち安全性が証明された。CVOTについては、EMPA-REG OUTCOME試験のように、予期せぬ幸運のような、想定外の結果が得られる場合もあるが、例外的である。大規模ランダム化試験のコストは、薬価に反映されるのは間違いないので、CVOTの義務化にも功罪がある2,3)。市販後調査(観察研究)を効率化し、草の根のようなシステムを構築することで、より迅速に、より的確に、安全性・有効性についての情報を収集することで代用できるのではないか?

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高価な新薬が安い従来薬に敗れた日:高尿酸血症治療薬フェブキソスタットの屈辱(解説:桑島巌氏)-850

 心血管リスクが高い例では痛風を合併することが多く、以前は尿酸生成抑制薬アロプリノール(商品名:ザイロリック、サロベール、アロシトールなど)が尿酸低下効果も確実でありよく処方され、現在ではすでに後発品も登場している。 しかし、2011年に新薬フェブキソスタット(商品名:フェブリク)が登場すると、新薬に乗り換える臨床医が急増した。アロプリノールの尿酸低下作用は確実でしかも廉価であったにもかかわらず、なぜ薬価の高いフェブリクの処方が増えた理由については常に疑問に感じており、私自身はフェブリクを処方した経験はほとんどない。 そこにきて今回、フェブリクの心血管疾患の有害事象に対する非劣性を従来薬アロプリノールと比較、証明する目的で行われたCARES試験の驚きの結果が発表された。 痛風を合併している心血管高リスク症例6,190例を対象として、フェブキソスタット治療群とアロプリノール群にランダム化され、中央値32ヵ月追跡した。その結果、複合心血管イベントに関してはフェブキソスタットのアロプリノールに対する非劣性は認められたものの、2次エンドポイントである総死亡、心血管死のリスクは有意に高かったという結果であった。 フェブキソスタットは日本の帝人ファーマによって開発され、米国では武田薬品によって発売されているが、本試験は米国Takeda Development Center Americasの支援によって行われた試験である。 本試験のlimitationとして両群とも途中脱落例が異常に多いことが挙げられているが、その理由は明らかではない。両群における脱落率に差はないという。 この結果は非常に重大であり、高リスク合併例での本剤の処方について対応が必要だろう。

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心血管疾患併存の痛風、フェブキソスタット vs.アロプリノール/NEJM

 心血管疾患を有する痛風患者に対し、非プリン型キサンチンオキシダーゼ阻害薬フェブキソスタット(商品名:フェブリク)は、プリン塩基類似体キサンチンオキシダーゼ阻害薬アロプリノールに比べ、心血管系有害事象の発生に関して非劣性であることが示された。一方で、全死因死亡や心血管死亡の発生率は、いずれもフェブキソスタット群のほうが高かった。米国・コネティカット大学のWilliam B. White氏らが、6,190例を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検非劣性試験の結果で、NEJM誌2018年3月29日号で発表した。フェブキソスタット群とアロプリノール群に無作為に割り付け 研究グループは、心血管疾患を有する痛風患者6,190例を無作為に2群に分け、一方にはフェブキソスタットを、もう一方にはアロプリノールを投与した。被験者について、腎機能による層別化も行った。 主要評価項目は、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・緊急血行再建術を要した不安定狭心症の複合エンドポイント。事前に規定した非劣性マージンは、同複合エンドポイントのハザード比1.3とした。フェブキソスタットとアロプリノールともに主要評価項目の発生は約10~11% 追跡期間は最長85ヵ月、中央値は32ヵ月だった。被験者のうち、試験レジメンを中止したのは56.6%、追跡中断となったのは45.0%だった。 修正intention-to-treat(ITT)解析の結果、主要評価項目の発生は、フェブキソスタット群の335例(10.8%)、アロプリノール群の321例(10.4%)で認められた。同発生に関するフェブキソスタット群のアロプリノール群に対するハザード比は1.03(片側98.5%信頼区間[CI]上限値:1.23、非劣性p=0.002)であり、非劣性が認められた。 全死因死亡、心血管死亡の発生率は、いずれもフェブキソスタット群がアロプリノール群より高率で、ハザード比はそれぞれ1.22(95%CI:1.01~1.47)、1.34(同:1.03~1.73)だった。 なお、実際に被験者が治療を受けている期間のイベント発生の解析と、修正ITT解析では、主要評価項目や全死因死亡、心血管死亡に関する結果は同等だった。

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心不全ガイドラインを統合·改訂(後編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会が、新たな心不全診療ガイドラインを公表した。本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。今回は後編。(前編はこちら)新たな心不全ガイドラインは診断フローチャートを簡略化 慢性心不全診断のフローチャートは、2010年版ガイドラインから大幅に簡略化された。基本的には欧州心臓病学会(ESC)の2016年版ガイドライン(Ponikowski P, et al. Eur Heart J.2016;37:2129-2200)を下敷きとしながらも、わが国の実態を踏まえ、画像診断を重視するチャートになっている。急性心不全治療のフローチャートも新規作成 「時間経過と病態を踏まえた急性心不全治療フローチャート」や、「重症心不全に対する補助人口心臓治療のアルゴリズム」の作成、「併存症の病態と治療」に関する記載の充実も新たな心不全診療ガイドラインの主要な改訂ポイントのひとつである。併存症は、心房細動、心室不整脈、徐脈性不整脈、冠動脈疾患、弁膜症、高血圧、糖尿病、CKD・心腎症候群、高尿酸血症痛風、COPD・喘息、貧血、睡眠呼吸障害について記載されている。心不全合併高血圧には、4種薬剤が推奨クラスI、エビデンスレベルA 新たな心不全診療ガイドラインでは、高血圧を合併したHFrEFに対する薬物治療は、ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬に忍容性のない患者に対する投与)、β遮断薬、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の[推奨クラス、エビデンスレベル]が[I、A]、利尿薬が同上[I、B]、カルシウム拮抗薬が同上[IIa、B]とされた。なお、長時間作用型のジヒドロピリジン系以外のカルシウム拮抗薬は陰性変力作用のため使用を避けるべきと注記されている。 高血圧を合併したHFpEFに対する治療は、適切な血圧管理が同上[I、B]、基礎疾患の探索と治療が同上[I、C]とされた。心不全合併糖尿病には、包括的アプローチとSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)を推奨 心不全を合併した糖尿病に対する治療は、食事や運動など一般的な生活習慣の改善も含めた包括的アプローチが同上[I、A]、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が同上[IIa、A]、チアゾリジン薬が同上[III、A]とされた。CKD合併心不全は、CKDステージで推奨レベルが異なる CKD合併心不全に対する薬物治療は、CKDステージ3とステージ4~5に分けて記載されている。 CKDステージ3においては、β遮断薬、ACE阻害薬、MRAが同上[I、A]、ARBが同上[I、B]、ループ利尿薬が同上[I、C]となっている。CKDステージ4~5においては、β遮断薬が同上[IIa、B]、ACE阻害薬が同上[IIb、B]、ARB、MRAが同上[IIb、C]、ループ利尿薬が同上[IIa、C]とされた。新たな心不全ガイドラインでは血清尿酸値にも注目 心不全を伴う高尿酸血症の管理においては、血清尿酸値の心不全の予後マーカーとしての利用が[IIa、B]、心不全患者における高尿酸血症への治療介入が[IIb、B]とされた。国内未承認の治療法も参考までに紹介 海外ではすでに臨床応用されているにもかかわらず、国内では未承認の治療薬やデバイスがある。ARB/NEP阻害薬(ARNI)や、Ifチャネル阻害薬などだ。これらの薬剤は「今後期待される治療」という章で、開発中の治療と並び紹介されている。

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