サイト内検索|page:3

検索結果 合計:153件 表示位置:41 - 60

41.

薬物性味覚障害マニュアルが11年ぶりに改定、注意すべき薬剤と対策は?/厚労省

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル』は77項目に細分化され、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載されているが、今回、「薬物性味覚障害」の項が11年ぶりに改定された。薬剤性味覚障害は味覚障害の原因の約20%を占めていること、多くの薬剤の添付文書の副作用に記載されていることから、以下に示すような薬剤を服用中の患者の訴えには十分注意が必要である。<添付文書に口腔内苦味の記載がある薬剤の一例>・ニコチン(禁煙補助剤)・フルボキサミンマレイン酸塩(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI])・ラベプラゾールナトリウム(PPI)・レバミピド(胃炎・胃潰瘍治療薬) ・レボフロキサシン水和物(ニューキノロン系抗菌薬)・炭酸リチウム(躁病・躁状態治療薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚障害の記載がある薬剤の一例>・アロプリノール(キサンチンオキシダーゼ阻害薬・高尿酸血症治療薬)・ジクロフェナクナトリウム(フェニル酢酸系消炎鎮痛薬)・レトロゾール(アロマターゼ阻害薬・閉経後乳癌治療薬)・ロサルタンカリウム(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚異常の記載がある薬剤の一例>・アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)・アプレピタント(選択的NK1受容体拮抗型制吐薬)・イリノテカン塩酸塩水和物(I型DNAトポイソメラーゼ阻害型抗悪性腫瘍薬)・インスリンデグルデク[遺伝子組換え]・リラグルチド[遺伝子組換え](持効型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ配合薬)・エルデカルシトール(活性型ビタミンD3)・オロパタジン塩酸塩(アレルギー性疾患治療薬)・チアマゾール(抗甲状腺薬)・テルビナフィン塩酸塩(アリルアミン系抗真菌薬)・バルサルタン(選択的AT1受容体遮断薬)・フェンタニル(経皮吸収型持続性疼痛治療薬)・ボリコナゾール(トリアゾール系抗真菌薬)・メトトレキサート(抗リウマチ薬/葉酸代謝拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照 上記のような薬剤を服用している患者が症状を訴えた場合、まずは(1)原因薬剤の中止・減量を行うが、原疾患の治療上、中止などの対応ができない場合、または味覚障害を起こす可能性のある薬剤を複数服用して特定が困難な場合もある。そのような場合でも(2)亜鉛剤の補給[低亜鉛血症がある場合、味蕾の再生促進を期待して補給]、(3)口腔乾燥の治療などで唾液分泌を促進させる、(4)口腔掃除とケアで対応することが必要で、とくに(1)(2)は重要度が高いと記載されている。<早期に認められる症状>薬物性味覚障害は高齢者に多く、複数の薬剤を服用しており、また発症までの時間や症状もまちまちで、初期の症状を捉えることは困難なことが多い。初期症状を含め、よく訴える症状に以下のようなものがある。 1:味(甘・塩・酸・苦)が感じにくい 2:食事が美味しくない3:食べ物の好みが変わった 4:金属味や渋味など、嫌な味がする 5:味のしないところがある 6:口が渇く<患者が訴えうる自覚症状>1:味覚減退:「味が薄くなった、味を感じにくい」2:味覚消失・無味症:「まったく味がしない」 3:解離性味覚障害:「甘みだけがわからない」4:異味症・錯味症:「しょう油が苦く感じる」 5:悪味症:「何を食べても嫌な味になる」6:味覚過敏:「味が濃く感じる」 7:自発性異常味覚:「口の中に何もないのに苦みや渋みを感じる」 8:片側性味覚障害:一側のみの味覚障害 本マニュアルには医師、薬剤師などの医療関係者による副作用の早期発見・早期対応に資するため、ポイントになる初期症状や好発時期、医療関係者の対応などが記載されている。 また、患者が読みやすいように、患者やその家族に知っておいてもらいたい副作用の概要、初期症状、早期発見・早期対応のポイントをできるだけわかりやすい言葉で記載してもいるので、ぜひ参考にしていただきたい。

42.

痛風発作中にベンズブロマロンが開始?【処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)痛風発作中にベンズブロマロンが開始?講師:眞弓 久則氏 / 眞弓循環器科クリニック院長動画解説痛風の中年男性にベンズブロマロンが処方されました。発作中は尿酸降下薬を開始しないこととされていますが、患者はまだ痛風発作がある模様。どのような患者背景から、医師はあえてこの処方をしたのでしょうか?

43.

新型コロナ、スーパースプレッダーとなりうる人の特徴/東京医科歯科大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、すべての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者がとくに感染を広げていくことが知られる。東京医科歯科大学の藤原 武男氏らによるRT-PCR検査によるウイルスコピー数を用いたCOVID-19入院患者の後ろ向き解析の結果、3つ以上の疾患の既往歴および、糖尿病、関節リウマチ、脳卒中の既往がスーパースプレッダーのリスク因子となることが示唆された。Journal of Infection誌オンライン版2021年12月30日号にレターとして掲載の報告より。 2020年3月~2021年6月に、中等症から重症のCOVID-19で東京医科歯科大学病院に入院し、少なくとも1回以上RT-PCR検査が行われた患者が解析対象とされた。入院患者の電子カルテの情報を基に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・がん・慢性腎不全・脳卒中・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーといった基礎疾患の有無とウイルスコピー数について関連が調査された。 主な結果は以下の通り。・計379例が適格となり、解析対象とされた。年齢中央値は59歳で、約33%が女性だった。・PCRテスト回数の中央値は2(1~26)回。複数回PCRテストを実施した患者の90%以上で、ウイルス量は1回目または2回目でその個人の最大値を示した。・約59%に基礎疾患があり、約21%に3つ以上の基礎疾患があった。・基礎疾患について詳細は、高血圧症が38.5%、糖尿病が21.6%、がんが18.7%、脂質異常症が18.5%、呼吸器疾患が10.8%、心疾患が9.0%、高尿酸血症が7.7%、慢性腎臓病が6.6%、脳卒中が5.0%、関節リウマチが2.1%だった。・1人を除きワクチンは未接種だった。・性別、年齢、喫煙状況について調整後の多変量回帰分析の結果、上記基礎疾患を3つ以上重複して有する患者では、基礎疾患のない患者と比較して、ウイルスコピー数が87.1倍(95%信頼区間[CI]:5.5~1380.1)高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・また、関節リウマチ患者では1659.6倍(95%CI:1.4~2041737.9)、脳卒中患者では234.4倍(95%CI:2.2~25704.0)倍、糖尿病患者では17.8倍(95%CI:1.4~ 223.9)ウイルスコピー数が高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・入院時の血液検査結果における血小板数とCRPレベルの低さも、ウイルスコピー数の多さと関連していた。 著者らは、軽症患者が解析に含まれていない点、変異株による影響が不明な点等の本研究の限界を挙げたうえで、基礎疾患の有無や検査値などの入院時に得られる情報に基づき、スーパースプレッダーとなる可能性の高い患者に対しては、とくに感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示されたとまとめている。

44.

ステージ4のCKD、クロルタリドンで血圧コントロール改善/NEJM

 進行した慢性腎臓病(CKD)を有し高血圧のコントロールが不良の患者において、クロルタリドン(国内販売中止)による降圧治療はプラセボと比較して12週時点で血圧コントロールを改善したことが、米国・インディアナ大学医学部のRajiv Agarwal氏らによる検討で示された。これまでに、進行したCKD患者の降圧治療においてサイアザイド系利尿薬の使用を支持するエビデンスは、ほとんど示されていなかった。NEJM誌オンライン版2021年11月5日号掲載の報告。プラセボ対照で12週までの24時間ASBP値の変化を評価 研究グループは、ステージ4のCKDで、高血圧のコントロールが不良(24時間自由行動下血圧モニタリング[ABPM]で確認)の患者を無作為に1対1の割合で2群に割り付け、一方には、クロルタリドンを投与(12.5mg/日で開始し4週ごとに増量、必要に応じて最大投与量は50mg/日とする)またはプラセボを投与し、有効性と安全性を評価した。無作為化では、ループ利尿薬の使用有無による層別化も行った。 主要アウトカムは、ベースラインから12週までの24時間自由行動下収縮期血圧(ASBP)値の変化。副次アウトカムは、尿中アルブミン/クレアチニン(A/C)比、NT-proBNP値、血漿レニン値とアルドステロン値、および身体容積(total body volume)のベースラインから12週までの変化であった。安全性も評価した。群間差は-10.5mmHgで有意差 無作為化を受けたのは160例(クロルタリドン群81例、プラセボ群79例)で、年齢は各群66.2±10.8歳と66.7±10.8歳、男性の割合は77%と78%であった。121例(76%)が糖尿病を有し、96例(60%)がループ利尿薬の投与を受けていた。ベースラインでの体表面積当たりの平均(±SD)推算GFR値は23.2±4.2mL/分/1.73m2、降圧薬の平均処方数は3.4±1.4だった。また、無作為化時点における平均24時間ASBP値は、クロルタリドン群142.6±8.1mmHg、プラセボ群140.1±8.1mmHgであり、平均24時間自由行動下拡張期血圧(ADBP)値はそれぞれ74.6±10.1mmHg、72.8±9.3mmHgであった。 ベースラインから12週までの補正後平均24時間ASBP値の変化は、クロルタリドン群-11.0mmHg(95%信頼区間[CI]:-13.9~-8.1)、プラセボ群-0.5mmHg(-3.5~2.5)で、群間差は-10.5mmHg(-14.6~-6.4)で有意差が認められた(p<0.001)。 ベースラインから12週までの尿中A/C比の変化割合(%)は、クロルタリドン群がプラセボ群よりも50ポイント(95%CI:37~60)低かった。 安全性の評価では、プラセボ群よりもクロルタリドン群で、低カリウム血症、血清クレアチニン値の可逆的上昇、高血糖症、めまい、および高尿酸血症の発生頻度が高かった。

45.

早期パーキンソン病、イノシンによる尿酸値上昇に効果なし/JAMA

 早期パーキンソン病(PD)と診断された患者において、イノシンはプラセボと比較して臨床的疾患進行率に差は認められず、早期PDに対する治療法としてイノシンの使用を支持しない。米国・マサチューセッツ総合病院神経変性疾患研究所のMichael A. Schwarzschild氏らParkinson Study Group SURE-PD3 Investigatorsが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SURE-PD3試験」の結果を報告した。尿酸値の上昇は、臨床的には痛風などの結晶性疾患、心血管障害、代謝障害と関連している一方で、前向き疫学研究では血清尿酸値の上昇がPDのリスク低下要因となることや、早期PDでは血清尿酸値高値が進行を遅らせることなどが報告され、尿酸塩の代謝前駆体であるイノシンによる疾患修飾治療の可能性が追求されていた。JAMA誌2021年9月14日号掲載の報告。血清尿酸値5.8mg/dL未満のPD患者を対象に、イノシン群とプラセボ群を比較 研究グループは、2016年8月~2017年12月に、米国の58施設において、ドパミン作動薬をまだ必要としないPD患者で、線条体ドパミントランスポーターが減少しており、血清尿酸値5.8mg/dL未満の患者298例を、イノシン群とプラセボ群に1:1の割合に無作為化した。投与期間は最長2年間で、投与量は1日最大3g(500mgカプセル2個を1日3回)とし、血清尿酸値が7.1~8.0mg/dLとなるよう盲検下で漸増した。なお、腎結石のリスク低下のため、2018年1月からは1日最大投与量は2g/日とした。 主要評価項目は、運動障害疾患学会パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)のパートI~IIIの合計スコア(範囲:0~236、スコアが高いほど障害が大きい)の年間変化で、臨床的に意味のある最小差は6.3ポイントとした。副次評価項目は、血清尿酸値、有害事象、およびMDS-UPDRSの各パート、QOL、認知機能、線条体ドパミントランスポーター結合能などの有効性である。 なお、本試験は、予定されていた中間解析において、事前に規定された無益性基準を満たしたため、早期終了となった。有効性に差はなし、安全性ではイノシン群で腎結石が多い 無作為化された298例中273例(92%)(女性49%、平均年齢63歳)が試験を完了した。MDS-UPDRSスコアの変化量は、イノシン群が11.1ポイント/年(95%信頼区間[CI]:9.7~12.6)、プラセボ群が9.9ポイント/年(95%CI:8.4~11.3)で、両群の差は1.26ポイント/年(95%CI:-0.59~3.11、p=0.18)であり、臨床的疾患進行率に有意差は認められなかった。 イノシン群では血清尿酸値が持続的に2.03mg/dL上昇した(ベースラインの4.6mg/dLから44%上昇)のに対し、プラセボ群では0.01mg/dLの上昇であった(群間差:2.02mg/dL、95%CI:1.85~2.19mg/dL、p<0.001)。ドパミントランスポーター結合能の低下を含む有効性の副次評価項目については、有意差は認められなかった。 安全性については、イノシン群ではプラセボ群と比較して重篤な有害事象の発現頻度は低かったが(100患者年当たり7.4 vs.13.1)、腎結石の発生が多く認められた(100患者年当たり7.0 vs.1.4)。

46.

総合内科専門医試験オールスターレクチャー 膠原病

第1回 関節リウマチ 乾癬性関節炎第2回 痛風 成人スチル病 ベーチェット病第3回 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群第4回 全身性強皮症 混合性結合組織疾患 皮膚筋炎・多発性筋炎第5回 大型血管炎第6回 ANCA関連血管炎 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。膠原病については、杏林大学医学部付属病院の岸本暢將先生がレクチャー。多彩な疾患に分類される膠原病。問題文に散りばめられた症状や検査所見などの膨大な情報の中から、診断のポイントを拾い上げるスキルを学びます。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 関節リウマチ 乾癬性関節炎膠原病の問題では、膨大に提示された症状や検査所見の数値から、素早く異常を見つけるスキルが問われます。読み解くポイントについて、疾患別に例題を使って解説します。第1回は、国内に70万人以上の患者がいるとされ、日常診療でもよくみられる関節リウマチ。各治療薬と副作用の組み合わせや、症状別に禁忌の薬剤について確認します。乾癬性関節炎は、付着部炎など関節周囲から炎症が起きる点が関節リウマチと異なります。第2回 痛風 成人スチル病 ベーチェット病赤く腫れる症状が特徴的な自然免疫系の疾患を取り上げます。痛風は、急性期に尿酸降下薬を使用すると急性発作を誘発することがあるので注意。発作を誘発する食品や薬剤を押さえましょう。ピンク色の皮疹が現れる成人スチル病は、悪性腫瘍、感染症、薬剤アレルギーとの除外診断がポイント。白血球増多に注目します。20~30代に多いベーチェット病。症状として、口内炎やざ瘡様皮疹、結節性紅斑、ぶどう膜炎が現れます。第3回 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群リンパ球に関わる獲得免疫系の疾患を取り上げます。全身性エリテマトーデスSLEを発症するのはほとんどが女性で、多彩な症状を呈します。血小板数、白血球数、赤血球数の低下、CH50、C3、C4の低下が非常に特徴的な所見です。疾患と関連する抗核抗体も試験に出やすいポイント。ループス腎炎はSLEに起因する糸球体腎炎です。口腔乾燥やドライアイを呈するシェーグレン症候群。悪性リンパ腫のリスクにもなります。第4回 全身性強皮症 混合性結合組織疾患 皮膚筋炎・多発性筋炎皮膚や内臓が硬化、線維化する全身性強皮症SSc。限局皮膚型とびまん皮膚型に分けられ、手指にレイノー現象がみられます。抗体の種類によって合併する臓器障害が異なる点が試験でもよく問われます。混合性結合組織疾患MCTDの診断のポイントは、抗U1-RNP抗体と肺高血圧症。皮膚筋炎・多発性筋炎PM/DMでは、悪性腫瘍と急速進行性の間質性肺炎に要注意。肘や膝などにみられるゴットロン徴候が特異的な皮疹です。第5回 大型血管炎血管炎のうち大型血管炎に分類される高安動脈炎と巨細胞性動脈炎について解説します。小型血管炎に比べて症状が出にくい大型血管炎。間欠性跛行や大動脈解離など深刻な症状が起きる前に見つけるには、不明熱、倦怠感、体重減少、関節痛などの症状で疑うことが重要です。高安動脈炎の9割が女性、発症年齢は20歳前後がピーク。X線、CT、MRIの画像検査がメインです。巨細胞性動脈炎は高齢者にみられ、側頭動脈の生検がポイント。第6回 ANCA関連血管炎ANCA関連血管炎は、国内では高齢者が多いため顕微鏡的多発血管炎MPAが多く、対して海外では多発血管炎性肉芽腫GPA、好酸球性多発血管炎性肉芽腫EGPAの比率が多くなっています。小血管が破れるか詰まるため、紫斑や爪下出血など目に見える症状が出やすいのが特徴的。薬剤誘発ANCA関連疾患も頻出ポイント。MPA、GPA、EGPAを鑑別できるように、症状の似た他疾患の除外と、各診断基準を押さえます。

47.

「ユリノーム」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第56回

第56回 「ユリノーム」の名称の由来は?販売名ユリノーム®錠50mgユリノーム®錠25mg一般名(和名[命名法])ベンズブロマロン(JAN)効能又は効果下記の場合における高尿酸血症の改善 痛風高尿酸血症を伴う高血圧症用法及び用量(1)ユリノーム錠 50mg1)痛風通常成人1日1回1/2錠または1錠(ベンズブロマロンとして25mgまたは50mg)を経口投与し、その後維持量として1回1錠を1日1~3回(ベンズブロマロンとして50~150mg)経口投与する。なお、年令、症状により適宜増減する。2)高尿酸血症を伴う高血圧症 通常成人1回1錠を1日1~3回(ベンズブロマロンとして50~150mg)経口投与する。なお、年令、症状により適宜増減する。(2)ユリノーム錠 25mg1)痛風通常成人1日1回1錠または2錠(ベンズブロマロンとして25mgまたは50mg)を経口投与し、その後維持量として1回2錠を1日1~3 回(ベンズブロマロンとして50~150mg)経口投与する。 なお、年令、症状により適宜増減する。2)高尿酸血症を伴う高血圧症 通常成人1回2錠を1日1~3回(ベンズブロマロンとして50~150mg)経口投与する。なお、年令、症状により適宜増減する。警告内容とその理由1.劇症肝炎等の重篤な肝障害が主に投与開始6ヶ月以内に発現し、死亡等の重篤な転帰に至る例も報告されているので、投与開始後少なくとも6ヶ月間は必ず、定期的に肝機能検査を行うこと。また、患者の状態を十分観察し、肝機能検査値の異常、黄疸が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。2.副作用として肝障害が発生する場合があることをあらかじめ患者に説明するとともに、食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、腹痛、下痢、発熱、尿濃染、眼球結膜黄染等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、直ちに受診するよう患者に注意を行うこと。禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)【禁忌(次の患者には投与しないこと)】1.肝障害のある患者 [肝障害を悪化させることがある。]2.腎結石を伴う患者、高度の腎機能障害のある患者 [尿中尿酸排泄量の増大により、これらの症状を悪化させるおそれがある。また、効果が期待できないことがある。]3.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人4.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年6月16日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年4月改訂(第5版)医薬品インタビューフォーム「ユリノーム®錠50mg/25mg」2)トーアエイヨー:製品情報一覧

48.

総合内科専門医試験オールスターレクチャー 内分泌・代謝

第1回 糖尿病(1)第2回 糖尿病(2)第3回 下垂体疾患 副甲状腺疾患 骨粗鬆症第4回 甲状腺疾患第5回 代謝性疾患第6回 副腎疾患 二次性高血圧 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。内分泌・代謝については、聖路加国際病院内分泌代謝科の能登洋先生がレクチャーします。糖尿病、脂質異常症、高尿酸症といった代謝性疾患は、それぞれの診断基準となる数値をきちんと把握し、適切な治療でコントロールすることが大切です。内分泌疾患は、内分泌系の仕組みを総合的に捉え、各ホルモンの作用と、多岐にわたる疾患の特徴を押さえます。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 糖尿病(1)内分泌・代謝の第1回は、糖尿病の病態と診断について解説します。糖尿病には、1型、2型、その他、妊娠糖尿病の4つの病型があり、血糖値とHbA1cの数値、既往歴から鑑別します。急激な高血糖によって引き起こされる糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態、あるいは過度の治療による低血糖。命にかかわることもあるため、試験でよく問われるテーマです。第2回 糖尿病(2)内分泌・代謝の第2回は、糖尿病の治療について解説します。治療のポイントは、多様な薬剤の使い分け。各治療薬の作用機序、効果と副作用、禁忌事項を確認します。インスリン療法で重要なのが、用量調節の際の責任インスリンという概念。妊娠糖尿病は、胎児への影響を考慮して、通常の糖尿病よりも診断基準が厳しく、血糖コントロール目標値を厳格に管理することが推奨されています。第3回 下垂体疾患 副甲状腺疾患 骨粗鬆症さまざまなホルモンを分泌する下垂体。初めにホルモンの種類と全身の標的器官を押さえます。下垂体ホルモンの過剰分泌や分泌低下によって引き起こされる各疾患も要チェック。副甲状腺ホルモン疾患の鑑別には、カルシウムとリンの値に注目します。骨粗鬆症は、一般的に加齢により発症しますが、内分泌疾患、薬物、糖尿病など、特定の誘因によって発症する場合もあります。骨粗鬆症の各治療薬について、機序と使用法を確認します。第4回 甲状腺疾患内分泌・代謝の第4回は、甲状腺疾患について解説します。バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、プランマー病など、複数の疾患に起因する甲状腺中毒症。この甲状腺中毒症が重症化した甲状腺クリーゼは、致死率が高いので要注意。甲状腺機能低下症の代表的な疾患は、橋本病、粘液水腫性昏睡です。甲状腺腫瘍について、最新のガイドラインにおける治療方針を確認します。第5回 代謝性疾患脂質異常症の診断基準は、LDL-C、HDL-C、中性脂肪を数値別にチェック。総コレステロールから善玉コレステロールを除いた”non-HDL-C”という新たな指標が注目されています。幼少期から動脈硬化性疾患を起こす原発性高コレステロール血症の治療には、PCSK-9阻害薬が近年効果を発揮しています。高齢者の場合は、過度な減量は禁物。軽い肥満の方が死亡リスクを下げます。高尿酸血症は、原因疾患と合併症の有無によって治療薬の使い分けがポイントです。第6回 副腎疾患 二次性高血圧副腎から産出分泌されるホルモンには、アルドステロン、コルチゾール、カテコルアミンがありますが、副腎に腫瘍ができてホルモンが過剰分泌されると、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、パラガングリオーマといった疾患が引き起こされます。内分泌疾患により発症する二次性高血圧は、原因疾患を治療することで改善できます。各疾患に関わるホルモン、注目すべき検査所見、鑑別診断、治療の流れを確認します。

49.

まず懐中電灯を掴め!【Dr. 中島の 新・徒然草】(370)

三百七十の段 まず懐中電灯を掴め!ついに大阪府での新型コロナの新規感染者数が1,000人を超えてしまいました。3波までとの違いは、PCRが陽性に出る確率が上がった若い人の感染が多くなった新規感染者数だけでなく重症者数も増える一方といったところで、残念ながら当院でも劣勢は否めません。この先、一体どうなってしまうのでしょうか?話は変わって、年をとると何もかも「面倒くせえ!」となります。書類作成とか診療行為とか家事だとか。昔は何とも思わなかったことが一々面倒。だからといって、仕事がなくなるわけではありません。むしろ、若いときよりもやるべき事が増える一方です。本日のお話は、どうやってこの面倒さを克服するのか、です。私のしている工夫を診療と家事に分けて述べましょう。まずは外来での患者さんの診察です。脳外科外来でも、腹に違和感があるとか足が痛いとかいう人はたくさんいます。もちろん、「ここは脳外科なんでほかに行ってください」で済ませることも可能です。でも、いったん手抜きすると歯止めが掛からない性格は自分が一番よく知っています。なので、私はできるだけ自分の目で確認するようにしています。この時に役立つのが懐中電灯です。髪の毛の中が痛いときも、腹がおかしいときも、まずは懐中電灯を掴む。そうすると、手に持った懐中電灯に引っ張られて当該部位を診ることになります。「牛にひかれて善光寺」とはまさにこのこと。異常ナシが大半ですが、時には帯状疱疹や鼠経ヘルニアが見つかることもあります。見なければわからないけど、見ればわかる典型です。次に足がどうとか言う人。この場合は、懐中電灯もさることながら足台も使います。手術室で使う足台を脳外科外来に準備しているので、まずはそれを患者さんの前に置き、それから懐中電灯を掴む。すると患者さんもゆっくりと靴を脱ぎ、ソックスを脱ぎしてくれます。動作が鈍いからと焦ってはいけません。その間に、電子カルテを使ってほかの雑用をササッと済ませておきましょう。足さえ出てきたら「痛風かな、足底筋膜炎かな」と前に進むことができますね。さらに家事の工夫を述べましょう。料理を作ったり食べたりするのはいいけど、後の皿洗いが面倒なのは誰でも同じです。そんなときにはYouTube!本欄でも紹介した中田 敦彦氏や懲役 太郎氏のチャンネルを聴きながら皿洗い。手際良くはありませんが、気がついたらいつの間にか終わっています。そういや、床掃除でも工夫がありました。ロボット掃除機のルンバです。ルンバくんが機嫌よく掃除をするためには、準備をしなくてはなりません。椅子を逆さにして机に上げたり、床に散らかったものを片付けたり。先に片付けるのがいいのはわかっているけど、なかなか取り掛かれない。でも、先にルンバのスイッチを入れておくと片付けざるを得ません。自らに強制的に仕事をさせる方法、いろいろありそうですね。読者の皆様の工夫があったら教えてください。最後に1句怠惰なる 我を動かす 一工夫

51.

降圧薬の有害事象メタ解析、急性腎障害や失神が関連か/BMJ

 降圧薬による高血圧治療は、転倒との関連はないものの、軽度の有害事象として高カリウム血症および低血圧と関連し、重度の有害事象として急性腎障害および失神との関連が認められることが、英国・オックスフォード大学のAli Albasri氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年2月10日号に掲載された。降圧治療の有効性を評価した無作為化対照比較試験のメタ解析は多いが、潜在的な有害性を検討したメタ解析はほとんどない。また、既存のメタ解析は、降圧治療とすべての有害事象の関連に重点を置き、特定の有害事象との関連は明らかにされていないという。降圧治療と特定の有害事象の関連をメタ解析で評価 研究グループは、降圧治療と特定の有害事象との関連を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を実施した(英国Wellcome Trustなどの助成による)。 成人(年齢18歳以上)で、降圧薬とプラセボまたは無投与、降圧薬数が多い群と少ない群、降圧目標値の高値と低値を比較した無作為化対照比較試験を対象とした。小規模な初期段階の試験を回避するために、試験はフォローアップ期間が650人年以上であることが求められた。 2020年4月14日の時点で、4つの学術データベース(Embase、Medline、CENTRAL、Science Citation Index)に登録された文献を検索した。 主要アウトカムは、試験のフォローアップ期間中の転倒とした。副次アウトカムは、急性腎障害、骨折、痛風、高カリウム血症、低カリウム血症、低血圧、失神であった。また、死亡や主要心血管イベントと関連する追加アウトカムのデータを抽出した。 バイアスのリスクはCochrane risk of bias toolで評価した。変量効果メタ解析で、試験の異質性(τ2)を考慮してすべての試験の率比(RR)、オッズ比(OR)、ハザード比(HR)を統合した。死亡、心血管死、脳卒中を抑制、心筋梗塞との関連は不明確 58件の無作為化対照比較試験(28万638例、フォローアップ期間中央値:3年[IQR:2~4])に関する63本の論文が解析に含まれた。多くの試験(40件[69%])はバイアスのリスクが低かった。 転倒のデータを報告したのは7件の試験(2万9,481例、1,790イベント)で、降圧治療との関連を示すエビデンスは認められず(要約RR:1.05、95%信頼区間[CI]:0.89~1.24)、この関連に関する試験間の異質性はほとんどなかった(τ2=0.009、I2=31.5%、p=0.372)。 一方、降圧薬は、急性腎障害(要約RR:1.18、95%CI:1.01~1.39、τ2=0.037、15試験)、高カリウム血症(1.89、1.56~2.30、τ2=0.122、26試験)、低血圧(1.97、1.67~2.32、τ2=0.132、35試験)、失神(1.28、1.03~1.59、τ2=0.050、16試験)との関連が認められた。 降圧治療と骨折(要約RR:0.93、95%CI:0.58~1.48、τ2=0.062、I2=53.8%、5試験)、および痛風(1.54、0.63~3.75、τ2=1.612、I2=94.3%、12試験)との関連のエビデンスは明確ではなく、CIの幅の広さは試験の異質性が大きいことをある程度反映すると考えられた。 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系拮抗薬に限定すると、急性腎障害と高カリウム血症のイベントを評価した試験間の異質性は低くなった。また、個々の試験で投与中止の原因となった有害事象に焦点を当てた感度分析では、結果の頑健性が示された。 さらに、降圧治療は、全死因死亡(HR:0.93、95%CI:0.88~0.98、τ2=0.008、I2=50.4%、32試験)、心血管死(0.92、0.86~0.99、τ2=0.011、I2=54.6%、21試験)、脳卒中(0.84、0.76~0.93、τ2=0.013、I2=44.8%、17試験)のリスク低減と関連したが、心筋梗塞(0.94、0.85~1.03、τ2=0.013、I2=40.7%、19試験)との関連は明確ではなかった。 著者は、「これらのデータは、降圧治療の開始や継続について医師と患者が協働意思決定を行う際に、とくに有害事象の既往歴や腎機能低下により有害性のリスクが高い患者にとって、有益な情報となるだろう」としている。

52.

第37回 どこにでもある薬のCOVID-19重症化予防効果を調べる試験がアフリカで始まった

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に効く薬を見つけるための数多の試験が世界のあちこちで実施されていますが、アフリカではこれまでほぼ皆無でした。しかしこの9月から、とても価値があるのにほとんど手つかずな使命を帯びた大規模試験がアフリカで始まっています1)。その使命とは、COVID-19患者が重症化して入院せずに済むようにする安くてどこでも手に入る薬を見つけ出すことです。ANTICOVという名称のその試験2,3)では、今さらという感がありますが、世界保健機関(WHO)のSolidarity試験や英国でのさらに大規模なRecovery試験でCOVID-19入院患者にはっきりと無効だったマラリア薬・ヒドロキシクロロキンが最初に検討される試験薬の一つとなっています4)。ANTICOVはいまのところコンゴ共和国でのみ進行中ですが、やがては13ヵ国で軽度~中等度のCOVID-19患者2,000~3,000人が参加する予定です。C型肝炎薬ソホスブビル、駆虫薬nitazoxanideやイベルメクチン、痛風薬コルヒチンなどの多数の薬の検討が予定されていますが、まず試されるのは上述のヒドロキシクロロキンとHIV薬・カレトラ(ロピナビル/リトナビル)です4)。理由はどうあれ病院に来た患者にCOVID-19検査を受けてもらい、感染が確認されて酸素飽和度(SpO2)94%以上などの選択基準を満たした患者を試験に招待します。試験参加を了承した患者は対照薬・アセトアミノフェン(パラセタモール)か試験薬のいずれかを決められた期間服用し、アプリへの入力や電話への回答で症状が毎日記録されます。主要転帰はこの上なく明確で、薬の割り当てから3週間(21日間)以内に酸素飽和度が93%以下に陥ることです。そうなったら服用薬が効かなかったと判断され、国によってはWHO主催の入院患者対象Solidarity試験などに参加することができます。先週のScienceのニュース1)によると、コンゴ共和国に続いて今週にはケニアで患者募集が始まります。300人のデータが揃った時点で最初の中間解析が実施され、その後は新たに加わった300人のデータが揃うたびに途中解析が順次実施されます4)。試験で検討される薬は今後追加され、中間解析で有効か無効の判定基準を満たした薬は試験を卒業していきます。ANTICOV試験でまず検討されるヒドロキシクロロキンは入院患者に明らかに無効だったことに加えて予防効果や軽症への効果もなかったとする報告もあり、ヒドロキシクロロキンから始めるなんてことは自分ならしないと英国のSolidarity試験を率いた医師の一人Martin Landray氏は言っています1)。しかしANTICOV試験のガーナ担当を率いるJohn Amuasi氏は試す価値があると考えています。同剤を標準薬とするアフリカの国は依然として多く3)、ANTICOV試験で無効と判明すればその効果への期待を断つことができるのです。それに、利益相反を考慮の上でこれまでの試験一揃いを解析した最近の報告では早めのヒドロキシクロロキン投与に軍配が上がっており5)、効果の望みは全くないというわけではなさそうです。ヒドロキシクロロキンは先鋒にふさわしくなさそうとはいえ、Landray氏はANTICOVのような試験の価値を認めています。誰もがいかなるときにも使えていざという時に大量に供給可能な治療薬は見つけておく必要があるからです。参考1)First-of-its-kind African trial tests common drugs to prevent severe COVID-19/Science2)ANTICOV/DNDi3)Largest clinical trial in Africa to treat COVID-19 cases before they become severe is launched in 13 countries/DNDi4)ANTICOV試験プロトコール5)Mechanism of action of chloroquine/hydroxychloroquine for COVID-19 infection /EurekAlert

53.

心血管リスク患者へのフェブキソスタット、アロプリノールに非劣性/Lancet

 心血管リスク因子を有する痛風患者において、フェブキソスタットはアロプリノールと比較し、主要評価項目である複合心血管イベントに関して非劣性であることが示された。長期投与による死亡あるいは重篤な有害事象のリスク増加も確認されなかった。英国・ダンディー大学のIsla S. Mackenzie氏らが、多施設共同前向き無作為化非盲検非劣性試験「FAST試験」の結果を報告した。フェブキソスタットとアロプリノールはともに痛風の治療に用いられる尿酸降下薬であるが、フェブキソスタットの心血管系への安全性に懸念があり、欧州医薬品庁は安全性をアロプリノールと比較する市販後臨床試験の実施を勧告していた。Lancet誌オンライン版2020年11月9日号掲載の報告。心血管リスク因子を有する60歳以上の痛風患者約6千例が対象 FAST試験は、英国、デンマークおよびスウェーデンの18施設で実施された。対象は、すでにアロプリノールの投与を受け、少なくとも1つの心血管リスク因子を有する60歳以上の痛風患者で、過去6ヵ月間に心筋梗塞または脳卒中を発症した患者、重度うっ血性心不全または重度腎機能障害を有する患者は除外された。導入期として血清尿酸値0.357mmol/L(6mg/dL)未満を達成するためにアロプリノールの投与量を最適化した後、アロプリノール継続投与(最適化された投与量)群、またはフェブキソスタット群(80mg/日から投与を開始し、目標の血清尿酸値を達成するため必要に応じて120mg/日まで増量)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。心血管イベントの既往の有無による層別化も行った。 主要評価項目は、非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性急性冠症候群による入院、非致死的脳卒中、または心血管死の複合エンドポイントであった。層別化因子と国で調整したCox比例ハザードモデルを用い、on-treatment解析でアロプリノールに対するフェブキソスタットのハザード比(HR)を算出し非劣性を評価した(非劣性マージン:HR=1.3)。 2011年12月20日~2018年1月26日の期間に、6,128例(平均年齢71.0歳、男性85.3%/女性14.7%、心血管疾患既往歴あり33.4%)が、アロプリノール群(3,065例)およびフェブキソスタット群(3,063例)に割り付けられた。100人年当たり主要評価項目イベント発現頻度、1.72 vs.2.05 試験終了(2019年12月31日)までに、すべての追跡調査を撤回したのは、フェブキソスタット群189例(6.2%)、アロプリノール群169例(5.5%)であった。追跡期間中央値は1,467日(IQR:1,029~2,052)、on-treatment解析の追跡期間中央値は1,324日(IQR:870~1,919)であった。 主要評価項目のイベント発生は、on-treatment解析でフェブキソスタット群172例(100人年当たり1.72件)、アロプリノール群241例(100人年当たり2.05件)で、補正後HRは0.85(95%信頼区間[CI]:0.70~1.03、p<0.0001)で非劣性が認められた。 フェブキソスタット群では、3,063例中222例(7.2%)が死亡し、安全性解析対象集団3,001例中1,720例(57.3%)に重篤な有害事象が発現した(治療に関連した事象は19例[0.6%]に23件発現)。一方、アロプリノール群では、3,065例中263例(8.6%)が死亡し、安全性解析対象集団3,050例中1,812例(59.4%)に重篤な有害事象を認めた(治療に関連した事象は5例[0.2%]に5件発現)。フェブキソスタット群で973例(32.4%)、アロプリノール群で503例(16.5%)が治療を中止した。

54.

コルヒチンの冠動脈疾患2次予防効果に結論を出した論文(解説:野間重孝氏)-1300

 評者は今回の論文に関連した他論文の論文評を昨年12月にこの欄に掲載しているため(「今、心血管系疾患2次予防に一石が投じられた」)、解説部分が前回と一部重複することを、まずご容赦いただきたい。また、先回の論文評の中で今回の論文のスタディデザイン報告をした論文(Nidorf SM, et al. Am Heart J. 2019;218:46-56.)に言及し、評者の早とちりから彼らがすでに結論を出してしまったような誤解を与える記述をしてしまいました。この点につき、この場をお借りして陳謝させていただきます。 動脈硬化が炎症と深い関係があるとする動脈硬化炎症説は、1976年にRossらが「障害に対する反応」仮説を提出したことに始まる(Ross R, et al. N Engl J Med. 1976;295:369-377.、420-425.、二部構成)。以後さまざまな仮説が提出され、議論が繰り返されたが、結局確定的なメカニズムの解明には至っていない。 コルヒチンはイヌサフラン科のイヌサフラン(Colchicum autumnale)の種子や球根に含まれるアルカロイドで、長く痛風の薬として使用されてきた。主な作用として、細胞内微小管(microtubule)の形成阻害、細胞分裂の阻害のほかに、好中球の活動を強力に阻害することによる抗炎症作用が挙げられる。ところが皮肉なことに、ここにコルヒチンが動脈硬化の進展予防に何らかの作用を持つと考えられなかった理由がある。というのは、動脈硬化炎症説を考える人たちは単球やマクロファージ、免疫系細胞には注目するが、好中球には関心を示さなかったからだ。ちなみに好中球、多核球に対してこれだけ強力な抑制作用を持つ薬剤は、現在コルヒチン以外に知られていない。結局、今世紀に至るまでコルヒチンが動脈硬化性疾患の進展予防に何らかの効果を持つとは誰も考えなかったのである。 しかし突破口は意外な方面から開かれた。ニューヨーク大学のリウマチ研究室の研究者たちが奇妙な事実に気付き報告したのだ。痛風患者に対してコルヒチンを使用していると心筋梗塞の有病率が低いというのである(Crittenden DB, et al. J Rheumatol. 2012;39:1458-1464.)。 この結果にいち早く注目したのが本論文の著者であるHeart Care Western AustraliaのNidorf SMらのグループだった。彼らは通常の治療に加え、コルヒチン錠を1日当たり0.5mg投与する治療群(282例、66歳、男性率89%)とコントロール群(250例、67歳、男性率89%)の計532例を中央値で3年間フォローアップした結果(主要アウトカムは、急性冠症候群、院外心停止、非心臓塞栓性虚血性脳卒中)、ハザード比(HR)は0.33(95%信頼区間[CI]:0.18~0.60)、NNT 11で2次予防が可能であるという驚くべき結果を得た(LoDoCo試験、Nidorf SM, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:404-410.)。この試験は登録数が少ないこと、open labelで検討されていることからあくまでpilot studyだったのだが、一部の関係者の注目を集めるには十分だった。 いち早くLoDoCo pilot studyに注目したのがカナダ・モントリオール心臓研究所のグループであり、前回評者が論文評を担当した論文がこれだった(Tardif JC, et al. N Engl J Med. 2019;381:2497-2505.)。彼らは、登録日前30日以内に心筋梗塞を発症し、経皮的血行再建術を受けた症例4,745例を2群に分け、両群にいわゆる内科的至適療法(OMT)を行うとともに、一方の群にコルヒチン0.5mg/日を、もう一方にplaceboを追加投与する二重盲検試験を行った。エンドポイントを心血管死、心停止後の蘇生、心筋梗塞、脳卒中、血行再建とし、コルヒチン群で有意に発生率が低いことを証明した。この研究は注目すべきものではあったが、問題点もあった。複合エンドポイントのうち、差が出たのは脳卒中と血行再建だけで、脳卒中ではっきり差が出ていなければかなりきわどい結果になっていた可能性があったからだ。また心筋梗塞後30日以内の患者という対象設定にも問題があった。 一方、先回のpilot studyから確信を得たNidorfらのグループは、LoDoCo2試験を立ち上げた。コルヒチンが安全に投与できることが確かめられた安定狭心症5,522例を対象としてコルヒチン0.5mg/日とplaceboによる二重盲検試験を行った。この試験のデザインは前述したように、昨年別途報告された(Nidorf SM, et al. Am Heart J. 2019;218:46-56.)。そのLoDoCo試験の最終報告となるのが本論文である。この試験にも複合エンドポイントに脳卒中が含まれていたが、31%の発生減を報告できたことには十分な説得力がある(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.57~0.83、p<0.001)。また、サブ解析でも明らかな心事故発生の減少が報告された。この試験の意味深い点は、臨床的にとくに問題のない安定狭心症を対象として2次予防の成績を提出したことにある。評者が題名に「結論」という文言を使用したゆえんである。 今回の試験で著者らは対象患者の性別に偏りがあったこと、血圧や脂質など他の危険因子のデータ収集が不完全であったことを挙げているが、評者にはこれらが大きな限界とは考えられない。冠動脈疾患は典型的な多因子的疾患であり、2次予防効果をみるためには一つひとつの因子をつぶしていく必要がある。すべての因子を包括した研究が事実上不可能である以上、どれか確定的な因子(もしくは治療法)が証明できればそれは充分な前進であると評価されなければならないと考えるからである。 評者が不満に思うことを挙げるとすれば、前述のカナダのグループにおいても同様なのだが、冠動脈疾患の2次予防の検定になぜ脳卒中を複合エンドポイントに入れなければならないのか、という点である。冠動脈疾患は何度も述べているように典型的な多因子疾患である。一方、脳血管障害は、確かに危険因子は多数指摘できるが、その中において血圧の重要性が圧倒的に高く、同じ多因子疾患といっても冠動脈疾患とはその性格を大きく異にし、その進展過程・機序にも差があるからである。今回の試験においても、前回のカナダのグループの試験においても、コルヒチンは明らかに脳卒中の発生率を低下させている。だから確かに効果があることに異論はないのだが、その機序については別の議論が必要であろう。 このところコルヒチンを用いた研究が各方面で活発化していることは、J-CLEARの論文紹介に目を通していらっしゃる方々はよくご承知ではないかと思う。しかし評者の知る限り、わが国ではあまり関心が持たれていない印象がある。わが国でもこの新しい発見を有効に利用しようという動き(もしくは検証しようという動き)が早く出ることを願うものである。

55.

高尿酸血症はCKDの発症や進行の危険因子ではあっても主たる原因とはならないか(解説:浦信行氏)-1256

 従来、高尿酸血症はCKD発症や進行の有意な危険因子であり、血圧や肥満度などの各種関連因子を調整しても依然として有意な危険因子であるとする報告は数多く見られる。このような研究報告はわが国でも多数見られ、代表的なものにIseki K.らの沖縄での研究、久山町研究、聖路加病院における研究などがあり、いずれも大規模な前向き研究である。また、腎組織との関連についてもKohagura K.らは167例の腎生検組織の血管病変の程度と血清尿酸値が有意に関連すると報告している。血清尿酸値の低下がCKDの臨床像を改善するか否かは、今まで大規模な研究がほとんどない。アロプリノールの効果を評価したRCTはいずれも小規模でSiu YP.らは54例、Goicoechea M.らは113例であり、いずれもCKDの進行抑制を報告している。Kanji T.らは19のRCTの992例のメタ解析の結果を報告しているが、研究期間が最長6ヵ月といずれも短期間であり、蛋白尿の低減効果を報告するにとどまっている。 このたび、NEJMからアロプリノールのCKD進行抑制効果に関する成績が報告された。その結果は、CKD進行抑制効果は認めなかったと報告された。高尿酸血症はCKD発症や進行の危険因子ではあっても主たる原因ではないのか。しかし、この研究には複数の限界がある。(1)目標症例は620例であったが登録の遅れで369例にとどまった。しかも治療中断例がアロプリノール群で54例、対照群で45例であり、大幅な統計学的パワーの喪失は無視できないと考える。(2)ベースラインの平均eGFRが31.7mL/min/1.73m2と、CKD 4程度のすでにかなり進行した例である。おそらく組織的にも糸球体血管病変が高度であると推測され、従来報告されている軽症~中等症例は別に検討する必要がある。(3)アロプリノールは100~300mg投与であるが投与のタイミングの記載がない。アロプリノールやその活性代謝産物は必ずしも半減期は長くない。血清尿酸値は生成酵素のXORが夜間に活性が高くなることから夜間から早朝にかけて上昇する。24時間にわたりXORを抑制する状況であったらどうであったか、など。これらをクリアーしたより統計学的なパワーの大きな研究が待たれる。

56.

アビガン、ウイルス消失傾向も有意差示せず/多施設無作為化試験

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状および軽症患者に対するファビピラビル(商品名:アビガン)のウイルス量低減効果を検討した多施設非盲検ランダム化臨床試験の最終結果の暫定的な解析から、通常投与群(1日目から投与)は遅延投与群(6日目から投与)に比べて6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたが、統計学的に有意ではなかったことを、7月10日、藤田医科大学が発表した。本研究の詳細なデータを速やかに論文発表できるよう準備を進めるという。 本研究は、藤田医科大学を代表機関とし全国47医療機関で実施している「SARS-CoV2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験」(研究責任医師:藤田医科大学医学部感染症科 教授 土井 洋平氏)。 3月上旬~5月中旬にCOVID-19患者89例が参加し、うち44例がファビピラビルの通常投与群、45例が遅延投与群に無作為割り付けされた。遅延投与群のうち1例が割り付け直後に不参加を希望したため、臨床的評価は通常投与群44例、遅延投与群44例を対象とした。またウイルス量に関する評価は、研究参加時に既にウイルスが消失していたことが後日判明した19例を除外し、通常投与群36例、遅延投与群33例を対象とした。研究参加中に重症化または死亡した患者はいなかった。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目である「6日目まで(遅延投与群が内服を開始するまで)の累積ウイルス消失率」は、通常投与群66.7%、遅延投与群56.1%で、調整後ハザード比(HR)は1.42(95%信頼区間[CI]:0.76~2.62、p=0.269)であった。・副次評価項目である「6日目までのウイルス量対数値50%減少割合」は、通常投与群94.4%、遅延投与群78.8%で、調整後オッズ比は4.75(95%CI:0.88~25.76、p=0.071)であった。・探索的評価項目である「37.5℃未満への解熱までの平均時間」は、通常投与群2.1日、遅延投与群3.2日で、調整後HRは1.88(95%CI:0.81~4.35、p=0.141)であった。・ファビピラビル投与に関連する有害事象については、血中尿酸値上昇が84.1%、血中トリグリセライド値上昇が11.0%、肝ALT上昇が8.5%、肝AST上昇が4.9%に見られた。これらの異常値は、内服終了後(16日目または28日目)に再度採血された患者(38例)のほぼ全員で平常値まで回復していた。また、痛風発症例はいなかった。

57.

アロプリノールはCKDの進行を抑制するか?/NEJM

 進行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)患者において、アロプリノールによる尿酸低下療法はプラセボと比較し、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を遅らせることはなかった。オーストラリア・St. George HospitalのSunil V. Badve氏らが、アロプリノールによる尿酸低下療法の有効性を検証した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Controlled Trial of Slowing of Kidney Disease Progression from the Inhibition of Xanthine Oxidase:CKD-FIX」の結果を報告した。血清尿酸値の上昇はCKDの進行と関連している。しかし、アロプリノールを用いた尿酸低下療法が進行リスクの高いCKD患者のeGFR低下を抑制できるかどうかは不明であった。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。2年間のeGFRの変化を、プラセボと比較し評価 研究グループは、2014年3月~2016年12月の期間に、オーストラリアおよびニュージーランドの31施設において、尿中アルブミン(mg)/クレアチニン(g)比が265以上または前年からのeGFR低下が3.0mL/分/1.73m2で、痛風の既往がない、ステージ3または4の成人CKD患者を、アロプリノール(100~300mg/日)群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、CKD-EPI(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)式を用いて算出した、無作為化から104週(2年)までのeGFRの変化であった。eGFRの変化はプラセボと有意差なし 目標症例は620例であったが、登録の遅れのため369例(目標の60%)がアロプリノール群(185例)またはプラセボ群(184例)に割り付けられた時点で登録中止となった。無作為化直後に各群3例が同意を撤回し、363例が主要評価項目の解析対象となった。363例のベースラインにおけるeGFR平均値は31.7mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比の中央値は716.9、平均血清尿酸値は8.2mg/dLであった。 主要評価項目であるeGFR変化量は、アロプリノール群が-3.33mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-4.11~-2.55)、プラセボ群が-3.23mL/分/1.73m2/年(95%CI:-3.98~-2.47)であり、両群に有意差は認められなかった(平均群間差:-0.10mL/分/1.73m2/年、95%CI:-1.18~0.97、p=0.85)。 重篤な有害事象は、アロプリノール群で182例中84例(46%)、プラセボ群で181例中79例(44%)に認められた。 なお、著者は、登録が完全ではなかったこと、治療を中断した患者の割合が高かったこと、代替エンドポイントを使用したことなどを研究の限界として挙げている。

58.

アドヒアランス不良でアセトアミノフェン分3から変更提案した薬剤は?【うまくいく!処方提案プラクティス】第23回

 今回は、アセトアミノフェンの複数回投与が開始になったものの、アドヒアランス不良のため疼痛コントロールが困難であった症例です。良好な疼痛コントロールとアドヒアランスを得るために提案した代替薬とその根拠を紹介します。患者情報93歳、男性(在宅)基礎疾患:うっ血性心不全、右被殻出血(左麻痺あり)、前立腺肥大症、高尿酸血症訪問診療の間隔:2週間に1回服薬管理:お薬カレンダーで管理し、ヘルパーによる毎日の訪問介護時に服薬処方内容1.タムスロシン塩酸塩錠0.2mg 1錠 分1 夕食後2.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 夕食後3.トリクロルメチアジド錠1mg 1錠 分1 夕食後4.フェブキソスタット錠10mg 1錠 分1 夕食後5.センノシド錠12mg 2錠 分1 夕食後6.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 2錠 分1 夕食後7.アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 朝昼夕食後8.ピコスルファート内用液0.75% 便秘時 就寝前7〜8滴本症例のポイントこの患者さんは、脳出血後の左麻痺によって手先の不自由さがあり、ほぼベッド上で生活していました。そのため、服薬回数をすべて1日1回で統一して一包化し、毎日夕方の訪問介護の時間に服薬していました。ところが先日、トイレへ移動する際に転倒して受傷し、睡眠時や排泄時の疼痛のため、アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 毎食後が開始となりました。朝・昼のアセトアミノフェンは、ヘルパーさんが夕方の訪問介護時にベッド近くに置いておいて、患者さんご自身で服薬することになりました。しかし、2回分を重複して服用したり服薬を忘れてしまったりと服薬アドヒアランスが維持できず、疼痛が管理できないという問題がありました。同じタイミングでケアマネジャーから、薬をなんとか1回にまとめられないものかと相談があり、アセトアミノフェンの変更提案を検討することにしました。1日1回の服用に適したNSAIDsを検討1日複数回服用することで重複投薬のリスクがあり、飲み忘れによって疼痛コントロールも不十分であるため、ほかの定期薬に合わせて服用できる鎮痛薬を検討しました。ここで候補に挙がったのは長時間作用型NSAIDsのメロキシカムです。長時間作用型という性質上、1日1回で疼痛コントロールできることに加え、服薬回数の負担も軽減できることから当該患者さんの処方薬として妥当だと考えました。半減期が長いため、高齢者や腎・肝機能が低下している場合は注意が必要ですが、この患者さんは心不全の状態が安定していて、直近の検査結果からも腎機能は年齢相応(Scr:0.78mg/dL、eGFR:57.8mL/min/1.73m2)で大きな悪化もないことから薬物有害事象の懸念は少ないと考えました。処方提案と経過医師に上記内容をトレーシングレポートで相談したところ、疼痛コントロールもしっかり行う必要があるが、誤薬のリスクを下げるためにも変更しようと了承いただきました。提案当日に変更対応となり、アセトアミノフェン錠の回収とメロキシカム錠10mgを夕食後投与としてカレンダーにセットしました。そして、患者さんとヘルパーさんへ鎮痛薬の変更があることを説明し、今後は朝・昼の薬はなくなることをお伝えしました。患者さんも複数回の服薬や飲み忘れ、重複投薬のことを気にしていたので、今回の変更を受けて安心していました。その後、患者さんは疼痛コントロールも良好で、疼痛による苦痛も有害事象もなく生活を続けています。

59.

第12回 ニコチン依存症治療用アプリが人間味を帯びたら医者いらず?

疾患治療にスマホアプリが処方される時代がやってきた。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)は6月19日、株式会社CureApp(キュア・アップ)が申請した禁煙治療用アプリ「CureApp SCニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」の製造販売承認を了承した。7月にも正式承認となる見込みで、同社は保険適応を目指している。臨床試験でも認められた禁煙治療用アプリの効果日本では2014年に施行された医薬品医療機器等法(薬機法、旧薬事法改正とともに名称変更)で、診断・治療などを目的としたソフトウェア単体も医療機器として分類されることになった。アメリカでは2型糖尿病の治療用アプリが既にFDAの承認を取得して実際に用いられているが、日本国内で臨床試験を経た治療用アプリの承認は初。しかも、禁煙治療用アプリとしては世界初である。このアプリは既存のニコチン製剤による禁煙治療と併用される。喫煙によるニコチン依存は、ニコチン摂取により脳内で起きる快感や報酬感が反復することで起こる身体的依存と喫煙で身に付いたクセや習慣が抜けない心理的依存の2つに分けられ、医療的な措置として、前者はまさにニコチン製剤、後者は診察時の医療従事者によるカウンセリング的なものとなる。ただ、現在の保険適応のニコチン製剤による治療期間は3ヵ月で、最初の1ヵ月間は2週間おき、その後は1ヵ月おきで受診回数は合計5回のみ。しかし、この間、患者は個人差があっても日常的に身体的依存と心理的依存に悩まされる。身体的依存に対するニコチン製剤は毎日2回服用するものの、心理的依存への対処は5回の受診時のみだ。この心理的依存への措置を補完するのが今回のアプリである。報道にもあるように禁煙治療期間中に心理的依存に悩む場合はアプリを立ち上げると、そのつらさに共感し、緩和措置を提案するメッセージが表示される。また、前述のアプリの正式名称からも分かるように禁煙治療中の受診時に測定される呼気中一酸化炭素(CO)濃度の専用測定機器が付属し、測定結果をアプリに送信して医師と共有することでよりきめ細かな日常管理も可能になるという。ちなみにアプリによる治療はニコチン製剤による治療より長い6ヵ月間。医師がアプリを処方した際に患者には処方コードが渡される。このコードをダウンロードしたアプリに入力することで、アプリはアクティベートされ、6ヵ月後には自動的に使用不可となる。実際に行った臨床試験での継続禁煙率は半年間(9~24週)で対照群が50.5%、アプリ使用群が63.9%、1年間(9~52週)では対照群が41.5%、アプリ使用群52.3%でいずれも統計学的な有意差(p=0.010)が認められた。禁煙治療中にはどんなことが起こるのか?率直に言ってもう少し早く承認されていれば、私自身が使ってみたかったと思う。というのも、この原稿を執筆している今現在、ニコチン製剤による禁煙治療中だからだ。ちなみに7月1日で3ヵ月間の全治療コースが終了予定である。前回も書いたが、私は高尿酸血症の解消のため1年7ヵ月で体重14kg減を実現した。減量開始当初はここまでできるとは思っていなかったが、この間、ウエストも20cm減となり、お腹ポッコリが気になって着れなかったボディコンのTシャツも着れるなど良いことは多い。そしてこの14kg減量を実現すると、どうしても喫煙を続けている自分が気になった。要は高級ブランドのワイシャツを着ると、ネクタイも高級ブランドのものにしたくなるような感覚といったらいいのかもしれない。私は安アパートを個人事務所にしており、かつてはほぼ1日中喫煙しながら仕事をしていた。14kg減量できたのだから禁煙もそんなに苦痛なくできるはずだろう、と思って始めたのだが、これが予想外に大変だった。完全禁煙から約2週間は1日3時間ほどしか仕事ができなかった。原稿を書く以上、当然キーボードに両手を置いているはずなのだが、実は結構な頻度で喫煙し、むしろ喫煙の合間に仕事をしているような感覚に近かったのかもしれない。禁煙を開始し、頻繁にタバコを手にしていた左手が手ぶら状態なのがどうにも気になって仕方ない、率直な表現をすると左手をどこに置いて良いのか分からないのだ。それならば左手もキーボードに置いて終始仕事に集中すれば良いだろうと言われるかもしれないが、そんな「生易しい」ものではない。あまりの手持無沙汰に左手をブルブル振り、それも疲れると散歩と称して外をぶらぶら歩く。この繰り返しでまともに着席していられない。この地獄の2週間を過ぎると、今度は食後、飲酒時に無性にタバコが欲しくなる。絶対タバコは購入しないと決めていたが、緊急事態宣言もあり喫煙者がいる飲酒の席がほとんどなかったことも幸いしたかもしれない。2ヵ月以上過ぎた今は2~3日に1回ぐらいは「タバコがあったら」と思うことはあるが、だいぶ慣れてきた。今では喫煙直後と思われる人とすれ違っただけで、それに気づくようにもなっている。禁煙治療を阻害する医師たちとは?この間、受診時に主治医から「どうですか?」と尋ねられた際は率直にそのことを説明していたが、一度だけ「気を紛らわすためには水を飲むとか運動するとかが良いと言われています」と他人事のように言われたぐらいである。臨床試験の結果から推察すれば、私が経験した悩みがこのアプリで解決できる可能性はあるということだ。ただ、このアプリで示されているようなモデルは、医師を巡るある命題を再燃させることにもつながる。近年の人工知能(AI)の台頭とともに一時期活発化した「医師はAIに置き換わるのか」という議論だ。この件は現状のAIの精度が決定打といえないことから、「医師かAIかではなく、AIを使わない医師は淘汰される」との方向で収束しているように思う。また、別の観点からは「AIは患者に共感はできないが、ヒトである医師は患者に共感を示せる」から医師がAIに置き換わることは難しいと言われてきた。だが、今回のアプリが患者への共感の一部も代行できるならば、医師はもはや患者に共感を示せるだけでは不十分となる。古の孫子が唱えた「彼を知り己を知れば百戦殆からず」にならい、アプリの挙動も踏まえてより高い共感を患者に示さねばならなくなる。医師の生存環境はより厳しいものになるが、逆にそれができれば、前述の臨床試験で示された長期的な禁煙継続率も上昇すると肯定的に捉えることは可能だ。ちなみに私は元喫煙者として、経験上、患者の禁煙の阻害になる医師像のほうが明示しやすい。それは健康増進法改正議論が活発化した際にとくに目立った「喫煙の害のみを繰り返し強調する医師」である。こうした医師が間違っているというわけではない。しかし、年々喫煙率が低下し、現在では2割を切る少数派としての喫煙者はいわば確信犯である。その確信犯たる喫煙者に善悪論のみで行動変容を迫ることはかなり困難である。なぜなら自分をひたすら否定する人の忠告にヒトは耳を貸さないからだ。実際、私自身、あの健康増進法改正論議の当時は「意地でも止めるものか」と思ったものだ。喫煙問題に熱心な医師ほど「喫煙はニコチン依存症」と病気であることを強調する。依存症治療では、依存対象と物理的に距離を取らせ、依存対象を分散させるが、そのベースには患者への寄り添いが必要であると多くの精神科医が強調する。だからこそ今回の禁煙治療用アプリの登場で、禁煙治療での「共感=寄り添い」の欠如を改めて感じてしまうのだ。参考Masaki K, et al. NPJ Digit Med. 2020 Mar 12;3:35.[Epub ahead of print]

60.

第11回 GLP-1製剤の自由診療問題と教科書的な生活習慣改善指導との共通点

痩せてスリムな体になりたいというのは比較的万人に共通した願望ではないだろうか。とりわけ年齢を経れば代謝が低下し、太りやすくなるため、中年太りを解消したいという人は私の周りでも少なくない。ところが食事療法、運動療法は大変だから、なるべく楽に痩せたい。そんな「夢」を逆手に取る行為に日本医師会がご立腹のようである。6月17日の定例会見で、日本医師会(以下、日医)副会長の今村 聡氏が、一部の医療機関においてダイエット向けに糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬を自由診療で処方していることを問題視し、そのことが報じられた。確かに好ましい話ではない。だが、こうした適応外処方の自由診療、あるいは薬の個人輸入代行業はかなり前から跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している。実際、私も知人から個人輸入代行で痩せる薬を入手したと見せられたことがある。この時、見せられたのは抗てんかん薬のトピラマート(商品名:トピナ)である。てんかん専門医から肥満傾向のてんかん患者には使いやすいと聞いたことがあるが、こんな難しい薬が医師の管理もなく、ダイエット目的で入手できるのだと改めて驚いたものだ。これ以外にも同じく糖尿病で使われるSGLT2阻害薬も痩せ薬としてアンダーグラウンドで取引されていると聞いたことがある。GLP-1受容体作動薬の場合、既に海外で肥満症治療薬として承認されているのは事実であり、日本国内でも臨床試験中。ちなみにGLP-1受容体作動薬をダイエット目的で処方している自由診療クリニックのホームページを見ると、海外で承認済みであることを強調しながら、「日本では製薬メーカーで治験が行われず、日本では未承認です(原文ママ)」と事実とは異なる記載をしている。記事中ではGLP-1受容体作動薬の副作用として下痢が記述されているが、むしろ私が危惧するのは低血糖発作のほうだ。そもそもダイエットをしている人は、言っちゃ悪いが極端な糖質制限など偏った食事をしている人が通常集団よりも多いと推察される。そんなところにGLP-1受容体作動薬を投与しようものならば、低血糖発作リスクは高いはずである。その辺を会見で今村氏が言及したかどうかは個人的に気になる。というのも、痩せたい願望が強い人にとっては、下痢レベルの副作用を無視することは十分に考えられる。結果として、逆にこの記事が「寝た子を起こす」がごとく、痩せたい願望を持つ人への誘因になってしまう可能性すらある。(ちなみに日本医師会の定例記者会見は決まった企業メディアにしか参加が認められていない。企業メディアの場合は新たに参加が認められるケースもあるが、フリーランスは実績にかかわらず参加不可。私も過去に広報部門に参加を希望したが一蹴されている)問題のある自由診療はGLP-1だけじゃないしかし、このニュースに私は割り切れないものを感じてしまう。確かに今回のGLP-1受容体作動薬の自由診療による処方は問題ありだし、警告すべきものとは思う。しかし、従来から自由診療では、問題がある治療が行われていることをまさか日医執行部が知らぬわけはないだろう。代表例ががん患者に対する細胞免疫療法。要は患者から採取したT細胞などを増やし、活性化させて体内に戻してがんと戦わせるという「治療」だ。だが、これらは科学的エビデンスが確立されていないのは周知のこと。近年、血液がんを対象に承認されたキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)のキムリアなどの成り立ちを見ても分かるように、ヒトのT細胞を抽出してちょっとやそっと増やしたりして体内に戻しても生存期間延長や治癒など得られないことは医師ならばわかるはずだ。しかし、がん終末期の患者が藁をもすがる思いで1回数十万円から百万円超ものこの「治療」に貴重なお金を注ぎ、期待したであろう効果を得られず患者が亡くなっている現実はもう30年以上横行している。むしろ例え事実上「糠に釘」でも日医が警鐘を鳴らし続けることが望ましいのではないだろうか。生活習慣改善指導は教科書的でいいのか?それ以上に割り切れないと思う点もある。それは痩せたい人への事実上の医療不在である。ちなみにここでいう痩せたい人とは、単に美容のために痩せたい人を意味するのではなく、疾患あるいはその予備群、代表例を挙げると生活習慣病で肥満傾向を持つ人などだ。患者の立場ならば、医師からなるべく体重を減らすため、過食を止め、運動するよう「指導」された経験のある人はいるだろう。だが、誤解を恐れずに言えば「そう言われただけ」の人がほとんどのはずだ。具体的にどんな運動をどれだけやればいいか、過食を止めるためにどうすれば良いか、何をどのように食べるべきか、単に教科書的文章の読み上げではなく、自分の生活に合わせてどのようにすればよいかを具体的に指導を受けた経験がある人は稀ではないだろうか?そのことをうかがわせる実例として、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」を挙げよう。同ガイドラインは書籍として総ページ数は約380ページだが、食事療法、運動療法に関する記述ページはその1割弱。内容はほぼ国内外のエビデンスをさらりと紹介している程度である。多くの経口糖尿病治療薬の添付文書には判で押したように「本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること」という記載がありながら、医師による食事療法、運動療法の指導も判で押したような教科書的なものばかりだ。もちろん個々の患者に合った運動療法、食事療法を指導することも、それを患者が継続することも容易でないことは分かるが、現状はあまりに受け皿がなさすぎるなかで、自由診療だけをとがめるのは穴の開いたバケツで水をくむようなものである。実際、私も経験がある。血液検査の結果、中性脂肪が若干正常上限値を上回っていた時のことだ。医師から次のように言われ、ポカン口状態になった。「肉、魚、卵はできるだけ控えるように」は? 何食べればいいんですか? 大豆? 豆腐? 納豆? 肉、魚、卵はできるだけ控えたら外食では食べるものがない。私たちが聞きたいのは、たとえば「お肉は脂身を残して量は少なめにして、その代わりに豆腐などを副菜に取り入れて」などより具体的なことである。幸いこの中性脂肪高値は一時的なものだったが、後に尿酸値の8.1mg/dLという検査結果に飛び上がらんばかりに驚いたことがある。この時の医師も某ジェネリック医薬品メーカーが作った高尿酸血症痛風患者向けの冊子の内容を棒読みするだけだった。体重を減らす飲酒を控えるプリン体摂取を控える毎日2Lの飲水唯一棒読みではなかったのは、「体重を減らす」と言った後に「フフッ」と笑ったことぐらい。要はみんなできないんだよねという意味だろう。しかし、私はこれにややカチンときた。さらに飲酒は好きだし、控えるのは限界がある。プリン体をとりわけ多く含む食品はそもそも日常的にそれほど摂取機会がない。ということで体重減少と2L飲水に取り組んだ。いわば「おいしく楽しく酒を飲み続けるため」にそうしたのだ。詳細は省くが1年7ヵ月で14kg減。尿酸値も正常化している。だが、この間、運動をどう習慣化すればいいのか、その内容をどう変化させるかなど試行錯誤の連続。ちなみに一見簡単そうな飲水2Lのほうが楽しくもなく、習慣化までに苦労した。今この原稿を執筆中の傍らに1.5Lと600mLのペットボトルがある。こうしたことで医師などから工夫の伝授や励ましがあれば、どれだけ助けになっただろうと今も時々思う。こうした医療不在の隙を自由診療の囁きが埋めてしまっているのが現実ではないだろうか。このように書くと、「医師に何でも求めないで欲しい」と言われるかもしれないが、ならば医師から対応可能な職種へ繋ぐシステムが欲しいと思う。もちろんそうした職種への報酬の財源は医科診療報酬のプラス幅をやや抑えて捻出する。まあ、日医執行部が最も反発しそうではあるが。

検索結果 合計:153件 表示位置:41 - 60