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ISCHEMIA試験、狭心症関連の健康状態の比較/NEJM

 中等度〜重度の虚血を認める安定虚血性心疾患を有する進行性慢性腎臓病(CKD)患者において、初期の侵襲的治療戦略(血管造影+血行再建術+ガイドラインに基づく薬物療法)は、保存的治療戦略(ガイドラインに基づく薬物療法)と比較し、狭心症関連の健康状態に対して実質的または持続的な有益性を示さなかった。米国・ミズーリ大学カンザスシティー校のJohn A. Spertus氏らが、「ISCHEMIA-CKD試験」の副次目的である狭心症関連の健康状態の評価に関する解析結果を報告した。ISCHEMIA-CKD試験の主要目的である予後(死亡または心筋梗塞)への影響についても、侵襲的治療戦略は保存的治療戦略と比較して、イベントの有意なリスク低下は確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年3月30日号掲載の報告。約700例で狭心症関連の健康状態を評価 研究グループは、中等度〜重度の虚血を認める安定虚血性心疾患を有し、推定糸球体濾過率<30mL/分/1.73m3または透析中の進行性CKD患者を、侵襲的治療戦略群または保存的治療戦略群に無作為に割り付け、無作為化前、1.5ヵ月、3ヵ月、6ヵ月時、その後は6ヵ月ごとにシアトル狭心症質問票(Seattle Angina Questionnaire:SAQ)を用いて健康状態を評価した。 本副次解析の主要評価項目は、SAQサマリースコア(スコア範囲:0~100、高得点ほど狭心症の頻度が低く機能とQOLが良好)であった。侵襲的治療戦略の効果の推定には、ベイズ理論の混合効果累積確率モデルを使用し、intention-to-treat解析を行った。保存的治療戦略と侵襲的治療戦略で健康状態の予後に有意差なし ISCHEMIA-CKD試験では777例が無作為化を受け、そのうち705例について健康状態の評価が行われた。 被験者の約半数(49%)は、無作為化前に狭心症を発症していなかった。 3ヵ月時における、侵襲的治療戦略群と保存的治療戦略群との間のSAQサマリースコア推定平均差は2.1ポイント(95%確信区間[CrI]:-0.4~4.6)で、侵襲的治療戦略群のほうが好ましいことが示された。同推定平均差は、ベースラインにおける狭心症の頻度が毎日または毎週の患者で最大(10.1ポイント、95%CrI:0.0~19.9)、同頻度が毎月の患者で最小であり(2.2ポイント、95%CrI:-2.0~6.2)、狭心症がない患者ではほとんど差はなかった(0.6ポイント、95%CrI:-1.9~3.3)。 6ヵ月時では、全例における両群の差は減少していた(0.5ポイント、95%CrI:-2.2~3.4)。 なお、著者は研究の限界として、血管造影前に無作為化されたものの侵襲的治療戦略が必要と予測される患者は除外されていた可能性があること、左冠動脈主幹部病変や心不全を有する患者などは除外されていることなどを挙げている。

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ISCHEMIA試験、侵襲的治療で狭心症関連の健康状態良好/NEJM

 中等度以上の虚血が認められる安定虚血性心疾患の患者に対し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG)などの侵襲的治療は、至適薬物治療による非侵襲的治療に比べ、狭心症関連の健康状態アウトカムが良好であることが示された。この差はベースラインにおいて、狭心症の症状発生頻度が高い患者でより大きいことも示されたという。米国・ミズーリ大学カンザスシティー校のJohn A. Spertus氏らが、5,000例超を対象に行った「ISCHEMIA試験」の結果で、NEJM誌オンライン版2020年3月30日号で発表した。ISCHEMIA試験ではすでに、侵襲的治療と非侵襲的治療による臨床イベント発生率を比較しており、両群で有意差がなく、その結果については昨年公表していた。ISCHEMIA試験の第2の目的として狭心症関連の健康状態を評価 研究グループはISCHEMIA試験の第2の目的として、侵襲的治療vs.非侵襲的治療の狭心症関連の健康状態を評価する検討を行った。 試験は、21歳以上で中等度以上の虚血が認められる安定虚血性心疾患の患者を無作為に2群に分け、狭窄病変に対し侵襲的治療(PCIまたはCABG)による血行再建(2,295例)、または至適薬物治療による非侵襲的治療(2,322例)をそれぞれ実施した。無作為化後1.5、3、6ヵ月時点で、その後は6ヵ月ごとに、シアトル狭心症質問票(Seattle Angina Questionnaire:SAQ)を用いて狭心症関連の症状、機能およびQOLを評価した。 主要アウトカムは、SAQサマリースコア(スコア範囲:0~100、高いほど健康状態は良好)だった。ベイズ統計フレームワークの混合効果累積確率モデルを用いて、両群の差を検証した。3、12、36ヵ月時点のSAQサマリースコア、いずれも侵襲的治療群で高値 ベースラインでISCHEMIA試験の被験者の35%が、前月に狭心症の症状がなかったと回答していた。 無作為化後3、12、36ヵ月時点のSAQサマリースコアは、侵襲的治療群が非侵襲的治療群に比べ、それぞれ4.1ポイント(95%確信区間[CrI]:3.2~5.0)、4.2ポイント(3.3~5.1)、2.9ポイント(2.2~3.7)いずれも高かった。 両群間の差は、ベースラインで狭心症症状の頻度がより高かった患者間のほうが大きかった。毎日または毎週同症状があった患者と、まったく症状がなかった患者で比較すると、3ヵ月時点でのSAQサマリースコアの差は8.5ポイントvs.0.1ポイント、36ヵ月時点では5.3ポイントvs.1.2ポイントだった。

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左冠動脈主幹部狭窄、PCIはCABGより5年臨床転帰不良/Lancet

 左冠動脈主幹部病変の血行再建術では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は冠動脈バイパス術(CABG)に比べ、5年時の臨床転帰が不良であることが、デンマーク・オーフス大学病院のNiels R. Holm氏らが行った「NOBLE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月23日号に掲載された。PCIは近年、左冠動脈主幹部病変を有する患者の血行再建において、標準治療のCABGに代わり使用機会が増えている。本研究では、追跡期間中央値3.1年の時点で、これら2つの介入法の死亡率は類似するが、PCIでわずかに高かったと報告されている。主要有害心/脳血管イベントを評価する非劣性試験 本研究は、欧州北部9ヵ国の36の病院が参加した非盲検無作為化非劣性試験であり、2008年12月9日~2015年1月21日の期間に患者登録が行われた(Biosensorsの助成による)。今回は、追跡期間中央値5年時の成績が報告された。 対象は、安定狭心症/不安定狭心症、急性冠症候群で、左冠動脈主幹部の入口部、mid-shaftまたは分岐部に、目視で>50%の狭窄または冠血流予備量比(FFR)≦0.80の病変を有し、これ以外の非複雑病変が3つ以下の患者であった。 被験者は、PCIまたはCABGを受ける群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、主要有害心/脳血管イベント(MACCE)であり、全死因死亡、手技に伴わない心筋梗塞、再血行再建術、脳卒中の複合とした。PCIのCABGに対する非劣性は、MACCEが275件発生後のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.35を超えない場合と定義された。副次エンドポイントは、全死因死亡、手技に伴わない心筋梗塞、再血行再建術であった。死亡に差はないが、心筋梗塞と再血行再建術はCABGで良好 1,201例が登録され、PCI群に598例、CABG群には603例が割り付けられた。両群とも592例ずつがintention-to-treat解析の対象となった。追跡期間中央値4.9年の時点で、主要エンドポイントの評価に十分な検出力を持つイベント数に達した。 ベースラインの年齢中央値は、PCI群66.2歳(IQR:9.9)、CABG群66.2歳(9.4)で、女性がそれぞれ20%および24%含まれた。糖尿病がPCI群16%、CABG群15%に認められた。血行再建術の臨床的適応は、安定狭心症がPCI群82%、CABG群83%であった。左冠動脈主幹部狭窄が分岐部の患者はPCI群81%、CABG群81%であった。また、SYNTAXスコアの平均値は、それぞれ22(SD 8)点および22(7)点だった。 Kaplan-Meier法によるMACCE発生の推定値は、PCI群が28%(165イベント)、CABG群は19%(110イベント)であった。HRは1.58(95%CI:1.24~2.01)であり、PCIの非劣性は示されず、CABGの優越性が確認された(p=0.0002)。 また、全死因死亡の発生率はPCI群9%、CABG群9%(HR:1.08、95%CI:0.74~1.59、p=0.68)であり、両群間に差は認めなかった。一方、手技に伴わない心筋梗塞の発生率はそれぞれ8%および3%(2.99、1.66~5.39、p=0.0002)、再血行再建術の発生率は17%および10%(1.73、1.25~2.40、p=0.0009)と、CABG群で有意に良好であった。なお、脳卒中の発生率はそれぞれ4%および2%(1.75、0.86~3.55、p=0.11)だった。 SYNTAXスコアが低い集団(1~22点、52%)のMACCE発生率は、PCI群27%、CABG群14%(HR:2.05、95%CI:1.41~2.98、p=0.0001)と、CABG群で良好であった。一方、同スコアが中間の集団(23~32点、40%)では、PCI群30%およびCABG群25%(1.24、0.87~1.77、p=0.30)、同スコアが高い集団(≧33点、9%)では、それぞれ33%および25%(1.41、0.68~2.93、p=0.40)であり、両群間に差はみられなかった。 著者は、「左冠動脈主幹部病変がみられ、これ以外の狭窄の数が限定的な患者の血行再建術においては、ハートチーム(heart team)による治療が適切と考えられる場合は、PCIとCABGの死亡率はほぼ同様の可能性がある。多枝病変で、とくに糖尿病を合併する場合は、CABGのほうが死亡率が低いため好ましく、PCIは急性冠症候群で好ましい手技と考えられる。PCIとCABGの双方が適応の患者では、個々の手技に関連する便益とリスクに関する十分な情報が必要となる」としている。

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第5回 サルコペニアを合併する高齢患者に必要な心リハとは?【今さら聞けない心リハ】

第5回 サルコペニアを合併する高齢患者に必要な心リハとは?今回のポイント高齢心不全患者では半数以上でサルコペニアを合併しているサルコペニアは生活の質を低下させるだけでなく、生命予後の不良因子である高齢心不全患者こそ、心リハでの積極的介入が重要第2回でも紹介しましたが、心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、現在、心筋梗塞や狭心症だけではなく心不全患者にも保険適用となっています。日本人口の高齢化に伴い、心不全患者が増加し続けており、2020年には120万人を超えると予想されています。最近の日本の急性心不全入院患者の多施設前向き研究では、心不全入院患者の年齢中央値は80歳でした1)。さて、読者の皆さまは、高齢の急性心不全入院患者に心リハを行うべきと考えるでしょうか? よく内科医の方から、『高齢の急性心不全患者では足腰の問題もあり、エルゴメータやトレッドミルの運動ができないので、心リハは適応外ではないですか?』『急性心不全入院患者では循環動態が不安定なので、できるだけ負担をかけないために安静にしているほうがいいのでは?』といった質問を受けます。果たして、高齢の急性心不全入院患者では安静が良いのでしょうか? このような患者は、退院後も運動療法が適応外なのでしょうか?心リハ=エルゴメータ運動ではない通常、心リハの運動療法では、大腿四頭筋群を中心に使う律動的な運動を行いやすいエルゴメータ運動が用いられます。しかし、当然ながらエルゴメータの上で座位を保持できるバランス力に加え、自転車こぎ運動ができる最低限の筋力・持久力が必要になります。エルゴメータでは負荷量を調整できますが、通常のエルゴメータには機器の重みとして最低10W(ワット)の負荷がかかります。このため、10Wの負荷で持久的な自転車こぎ運動ができる患者でなければ、通常のエルゴメータによる有酸素運動の適応にはなりません。高齢者に限らず、重症心不全患者などで運動耐容能が高度に低下し通常のエルゴメータ運動ができない場合には、椅子からの立ち上がり運動(スクワット)やつま先立ち運動(カーフレイズ)などのごく軽度の筋力トレーニングを行ってもらいます。このような筋力トレーニング5~10回を1セットとして1日に頻回に行う方法により、体幹・下肢の筋量増加を目指します(「少量頻回」の原則)。また、このような患者では、歩行をはじめ日常生活動作(ADL)が不安定な患者も多いので、歩行訓練や移乗訓練などADL訓練を行います。いわゆる廃用症候群のリハビリと似たトレーニング内容となりますが、心不全患者ではリスク管理が重要です。リハビリを実施する際には、心電図モニタリング・血圧・Borg指数を確認し、専門医の監督のもとで行います。急性心不全では安静臥床が適切か?急性心不全により循環動態が悪化している際には安静が必要です。病状によっては、トイレ動作ですら、さらなる循環動態の悪化を招くことがあります。しかし、最近では循環動態のモニタリング機器の性能が格段に向上し、循環器救急患者のリハ中のリスク管理が容易になりました。そのような中で、リスク管理下での超急性期リハの安全性や有効性が検討された結果、現在では急性心不全患者でも「初期治療により循環動態の改善が認められれば、速やかに心リハを開始すべきである」と考えられています。安静臥床は筋萎縮だけでなく、せん妄や・無気肺・肺炎・自律神経機能異常などの合併症を来しやすく、それらの合併症により、治療は一層複雑化してしまいます。したがって、超急性期の心リハでは、初期治療により循環動態および自覚症状の改善傾向を認めたら速やかに(できれば治療開始後48時間以内に)リハ介入し、ベッド上あるいはベッド周囲での運動を開始することを目指します。循環動態・自覚症状の速やかな改善は心不全患者の長期予後とも関連することが知られており、早期の循環動態改善を目指した治療薬も開発が進められています。これらの治療に並行した早期リハ介入は、とくにサルコペニアに陥りやすい高齢心不全患者にとって重要です。近年の臨床研究にて、心不全患者の体重減少、すなわちサルコペニアはADLを低下させるだけではなく、生命予後不良因子であることがわかっています2)。心リハでサルコペニアの進行を予防することは、心不全患者のADLのみならず生命予後にも関わる重要な介入であるといえます。とくに高齢心不全患者では同化抵抗性によりトレーニングを行っても筋肉量が増加しにくいことや社会的事情により回復期の通院心リハへ参加することが困難なことも多いため、入院中に低下した筋量・身体機能を退院後に回復させることは容易ではありません。介護を要する高齢患者の増加を防ぐために、また介護負担を少しでも軽減するために、入院中の心リハがカギとなると考えられます。最後に臨床の現場では、入院中に積極的なリハがないまま、退院日前日まで“原則安静”とされている心不全患者が多いようです。退院後、患者は必要に応じて身体を動かす必要がありますが、医師の大半はそれに無関心で、「きつい活動は控えましょう」の一言のみ。疾患管理において安静や運動制限が本当に重要と考えるのであれば、入院中から患者がどの程度の身体活動を症状・循環動態の悪化なく行えるのかを医学的に評価した上で、退院時に「あなたはここまでの活動は問題なくできますが、これ以上のきつい活動は控えてくださいね」というように具体的に指導するべきではないでしょうか。高齢者診療に関わる医療者は、安静のもたらす功罪について今以上に意識を高める必要がありそうです。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>「心リハ=エルゴメータ運動ではない」と書きましたが、運動耐容能の低下した高齢心不全患者では通常のエルゴメータ運動が困難でも、ストレングスエルゴ8®(アシスト機能付きエルゴメータ)や、てらすエルゴ®(仰臥位用負荷量可変式エルゴメータ)などを用いれば、自転車こぎ運動が可能になることも多く、当院でもこれらの機器を用いて高齢心不全患者に対して有酸素運動の指導を行っています3)。また、当院では導入していませんが、アームエルゴ®など上肢を使うエルゴメータもあります。患者ごとに適切な運動の種類を検討することも運動処方のポイントです。運動に用いる器具はいくつかバリエーションを用意し、どのような器具を用いるのか、患者ごとに指導できると良いですね(図1)。画像を拡大する1)Yaku H, et al. Circ J. 2018;82:2811-2819.2)Anker SD, et al. Lancet. 2003;361:1077-1083.3)Ozasa N, et al. Circ J. 2012;76:1889-1894

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今、心血管系疾患2次予防に一石が投じられた(解説:野間重孝氏)-1154

 至適内科治療(optimal medical treatment:OMT)という言葉がある。冠動脈疾患は代表的な複合因子的な疾患である。喫煙、血圧、糖尿病、高脂血症等さまざまな因子が複合的に作用して疾病が形成される。こうした疾病に対しては、関係すると思われる諸因子を逐次徹底的にコントロールすることにより、疾病の1次・2次予防を図るやり方が考えられ、OMTと呼ばれた。冠動脈疾患に対しては大体90年代の半ばに確立されたといえる。冠動脈疾患に対するOMTの確立は、境界域の冠動脈疾患においては、場合により外科的治療や血管内治療の代替えとされるまでに発展した。一方、大変皮肉なことに、一旦OMTが確立した後はこれにプラスして何か新しい治療法を加えようとした研究は、ことごとくnegative studyに終わったといってよい。そんな中、今回のコルヒチンによる心血管系疾患の2次予防に関する成績は、研究法に対して多少の不満はあるものの、久しぶりに快音を響かせたヒットとなったのである。 動脈硬化が炎症と深い関係があるとする動脈硬化炎症説は、1976年にRossらが「障害に対する反応」仮説を提出したことに始まる(N Engl J Med. 1976;295:369-377., 420-425.、二部構成)。以後さまざまな仮説が提出された。この論文評は動脈硬化炎症説を解説することが目的ではないので深入りはしないが、近年は自然免疫の障害説なども提出され議論が続いているものの、結局決定的なメカニズムの解明には至っていない。これはちょうどレセプターの研究をしようとするならブロッカーが開発されなくてはならないのと同じことで、炎症のあるプロセスを強力かつ永続的にブロックするような薬剤が開発されなかったことが大きな理由だったと考えられる。 コルヒチンはイヌサフラン科のイヌサフラン(Colchicum autumnale)の種子や球根に含まれるアルカロイドで、単離されたのは1820年まで下るが(それでも十分昔!)、イヌサフランそのものはローマ時代から痛風の薬として使用されていた。主な作用として、細胞内微小管(microtubule)の形成阻害、細胞分裂の阻害のほかに、好中球の活動を強力に阻害することによる抗炎症作用が挙げられる。皮肉なことに、この辺にコルヒチンが動脈硬化の進展予防に何らかの作用を持つと考えられなかった理由がある。というのは、動脈硬化炎症説を考える人たちは単球やマクロファージ、免疫系細胞には注目するが、好中球には関心を示さなかったからだ。ちなみに好中球、多核球に対してこれだけ強力な抑制作用を持つ薬剤は、現在コルヒチン以外に知られていない。結局、今世紀に至るまでコルヒチンが心動脈硬化性疾患の進展予防に何らかの効果を持つとは誰も考えなかったのである。 しかし意外な方面から突破口が開かれる。ニューヨーク大学のリウマチ研究室の研究者たちが奇妙な事実に気付き報告したのだ。痛風患者に対してコルヒチンを使用していると心筋梗塞の有病率が低いというのである(Crittenden DB, et al. J Rheumatol. 2012;39:1458-1464.)。 この結果にいち早く注目したのがHeartCare Western AustraliaのNidorf SMらのグループだった。彼らは通常の治療に加え、コルヒチン錠を1日当たり0.5mg投与する治療群(282例、66歳、男性率89%)とコントロール群(250例、67歳、男性率89%)の計532例を中央値で3年間フォローアップした結果(主要アウトカムは、急性冠症候群、院外心停止、非心臓塞栓性虚血性脳卒中)、ハザード比(HR)は0.33(95%信頼区間[CI]:0.18~0.60)、NNT 11で2次予防が可能であるという驚くべき結果を得た(LoDoCo試験、Nidorf SM, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:404-410.)。この結果はケアネットにおいても2013年1月15日に報道されたが、残念ながらわが国ではあまり注目されなかった。この試験は登録数が少ないこと、PROBE法で検討されていることからあくまでpilot studyだったのだが、一部の関係者の注目を集めるには十分だった。 今回の研究はLoDoCo試験に注目したカナダ・モントリオール心臓研究所のグループが計画したものである。プロトコールはきわめてシンプルで、心筋梗塞後平均13.5日後の患者4,745例を、コルヒチン0.5mgを服用する群とプラセボを服用する群に二重盲検し、中央値22.6ヵ月の追跡を行ったのである(複合エンドポイント:心血管死、心停止による蘇生処置、心筋梗塞の再発、脳卒中、血行再建)。この結果、HR:0.77、95%CI:0.61~0.96でコルヒチン群が優れているとの結果が得られたのである。 ただし、この研究にまったく問題がなかったわけではない。複合エンドポイントのうち、心血管死、心停止後の蘇生、心筋梗塞には両群で差がなく、差が出たのは脳卒中と血行再建術を要した緊急入院のみであったからだ。数字から見るならば、脳卒中で差がつかなければこの研究はかなり際どい結果になっていた可能性もあるのである。ここで問題なのは、冠動脈疾患と脳卒中ではその発生のメカニズムを同じ土俵で論じてよいか議論があることである。文頭でOMTを話題としたが、冠動脈疾患が典型的な複合因子的疾患であるのに対し、脳卒中は血圧のコントロールに対する依存度が大変に高く(つまり単因子的な色彩が強く)、その予防法も冠動脈疾患でいうOMTとはやや趣が異なるのである。 論文中のlimitationの項で、筆者らは4,745例という数が少ないのではないかと述べているが、統計的に不十分な数であるとは考えられない。むしろその後半で述べているように、対象患者を心筋梗塞罹患後の患者に限定したことにこそ問題があったのではないかと考える。冠動脈疾患の2次予防の検定をするならば、さまざまなレベルの有症状、無症状の冠動脈疾患患者から心筋梗塞罹患患者までもっと広い患者層から対象を集めるべきだったのではないだろうか。こういった心血管系疾患の予後に関する研究をするとき、どうしても複合エンドポイントを冠動脈関係イベントのみに絞るというわけにはいかず、脳卒中を入れざるを得ないことが避けられない弱点になる以上、患者層は冠動脈疾患患者からできるだけ広く集めるべきだったのではないかと考えるのである。それにしても平均年齢が60.6歳の患者集団としては、コルヒチンを飲む飲まないにかかわらず、脳卒中の発生率がやや高いように感じられることも気になる点ではあった。 一方、LoDoCo試験を行ったオーストラリアのグループは、その後コルヒチン投与が安全に行えることが確かめられた5,522例の安定狭心症を対象としてコルヒチン0.5mgによる二重盲検試験を行った。この結果は本年発表されたが( Nidorf SM, et al. Am Heart J. 2019;218:46-56. )、30%のendpoint reductionを報告している。もっともこのグループも複合エンドポイントにはpilot studyと同様に脳卒中を入れざるを得なかったが、今回論評している研究ほど脳卒中の結果が結果に影響は与えていない。やはり対象の選択の問題ではないだろうか。論文評としてはいささか穏やかでない言い方になるが、率直に言って、評者はこのグループの研究のほうを評価したいと感じている。 いずれにしても、これらの研究は今後臨床面だけでなく、動脈硬化炎症説の研究にも大きな影響を与えていくものと推察される。今までの研究方向に大きな軌道修正がかけられる可能性もある。研究者たちの奮起を期待するものである。臨床面では、コルヒチンは家族性地中海熱などの研究を通じて生涯安全に飲み続ける方法がすでに確立されており、かつ値段は1錠8円前後なのである。本邦でも早急に研究が進められることが望まれる。 冠動脈疾患の予後改善に関して、確かに今、一石が投じられたのである。

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低用量コルヒチン、心筋梗塞後の虚血性心血管イベントを抑制/NEJM

 低用量コルヒチンは、心筋梗塞患者における虚血性心血管イベントのリスクをプラセボに比べ有意に低減することが、カナダ・モントリオール心臓研究所のJean-Claude Tardif氏らが行ったCOLCOT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。炎症は、アテローム性動脈硬化およびその合併症において重要な役割を担うことを示す実験的および臨床的なエビデンスがある。コルヒチンは、イヌサフランから抽出された抗炎症作用を有する経口薬で、痛風や家族性地中海熱、心膜炎の治療に使用されている。発症後30日以内の心筋梗塞の無作為化試験 本研究は、12ヵ国167施設が参加した医師主導の二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2015年12月~2018年8月の期間に患者登録が行われた(カナダ・ケベック州政府などの助成による)。 対象は、登録前の30日以内に心筋梗塞を発症し、経皮的血行再建術を受け、強化スタチン治療を含む国のガイドラインに準拠した治療を受けている成人患者であった。 被験者は、低用量コルヒチン(0.5mg、1日1回)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、心血管死、心停止からの蘇生、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院の複合とした。主要複合エンドポイント:5.5% vs.7.1% 4,745例が登録され、コルヒチン群に2,366例、プラセボ群には2,379例が割り付けられた。追跡期間中央値は22.6ヵ月だった。 ベースラインの全体の心筋梗塞発症後平均期間は13.5日、平均年齢は60.6歳、女性が19.2%であった。また、20.2%が糖尿病を有し、93.0%が心筋梗塞に対し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けており、98.8%がアスピリン、97.9%が他の抗血小板薬、99.0%がスタチンの投与を受けていた。 主要複合エンドポイントの発生率は、コルヒチン群が5.5%と、プラセボ群の7.1%に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.61~0.96、p=0.02、log-rank検定)。 主要複合エンドポイントの構成要素のうち、心血管死(コルヒチン群0.8% vs.プラセボ群1.0%、HR:0.84、95%CI:0.46~1.52)、心停止後の蘇生(0.2% vs.0.3%、0.83、0.25~2.73)、心筋梗塞(3.8% vs.4.1%、0.91、0.68~1.21)の発生率には両群間に有意な差は認められなかったが、脳卒中(0.2% vs.0.8%、0.26、0.10~0.70)と血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院(1.1% vs.2.1%、0.50、0.31~0.81)の発生率はコルヒチン群で有意に低かった。 副次複合エンドポイント(心血管死、心停止後の蘇生、心筋梗塞、脳卒中)(コルヒチン群4.7% vs.プラセボ群5.5%、HR:0.85、95%CI:0.66~1.10)および有効性の探索的エンドポイントである死亡(1.8% vs.1.8%、0.98、0.64~1.49)、深部静脈血栓症/肺塞栓症(0.4% vs.0.3%、1.43、0.54~3.75)、心房細動(1.5% vs.1.7%、0.93、0.59~1.46)の発生率には、両群間に有意な差はみられなかった。 治療薬関連の有害事象は、コルヒチン群が16.0%、プラセボ群は15.8%で認められた。重篤な有害事象はそれぞれ16.4%、17.2%でみられた。消化器イベントの頻度が高く(コルヒチン群17.5%、プラセボ群17.6%)、そのうち下痢がコルヒチン群で9.7%、プラセボ群で8.9%(p=0.35)、悪心がそれぞれ1.8%、1.0%(p=0.02)で発現した。 著者は、「主要複合エンドポイントの改善は、主に脳卒中と血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院の発生率の低下によってもたらされた」としている。

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第14回 高齢糖尿病患者の動脈硬化、介入や治療強化のタイミングは?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第14回 高齢糖尿病患者の動脈硬化、介入や治療強化のタイミングは?Q1 ABIだけで十分? それとも他の検査も行うべき?頸動脈エコーや足関節上腕血圧比(ABI)は簡便であり、後述の通り冠動脈スクリーニングの意味もあるので、糖尿病の患者であれば一度は行っておくとよいと思います。頸動脈狭窄やABI低下はいずれも冠動脈疾患とよく合併します1)。頸動脈内膜剥離術(CEA)を行った頸動脈狭窄症例での冠動脈疾患合併は約40%みられるとの報告があります2)。ABI低下がなくても無症候頸動脈狭窄と冠動脈狭窄を呈する症例もあるので、やはり頸動脈エコーは行っておくべきでしょう。また頸動脈エコーを行うとQ2で述べる不安定プラークの有無を知ることができるので有意義です。Q2 頚動脈エコーの結果と治療法選択の判断について教えてくださいIMT肥厚がその後の心血管疾患の発症予測に使えることが知られていますが、軽度のIMT肥厚は糖尿病患者では高頻度で認められるため、これらの患者においては一般的な動脈硬化のリスク因子の介入を行っています。すなわち、禁煙の他、適切な血糖・血圧・脂質のコントロールです。この段階での抗血小板薬の投与は行いません。高度の肥厚があるものについては、冠動脈病変をスクリーニングしています(後述)。無症候頸動脈狭窄の患者への抗血小板薬の投与で、脳梗塞一次予防の介入エビデンスはありません。しかし観察研究では、≧50%あるいは≧70%狭窄のある患者で抗血小板薬投与が同側の脳卒中発症抑制に関連したという報告があり、2015年の脳卒中ガイドラインでも、中等度以上の無症候頸動脈狭窄では他の心血管疾患の併存や出血性合併症のリスクなどを総合的に評価した上で、必要に応じて抗血小板療法を考慮してよいとしています3)。われわれもこれに準じ、通常50%以上(NASCET法)の狭窄例では抗血小板薬を投与していることが多いです。一方、無症候頸動脈狭窄や高度のIMT肥厚は冠動脈疾患を合併していることが多いので、これらの症例では通常の12誘導心電図だけでなく、一度循環器内科を紹介し、心エコーの他、冠動脈CTや心筋シンチグラムなどを考慮しています(高齢者ではトレッドミルテストが困難なことが多いため)。2型糖尿病患者で冠動脈インターベンションやバイパス術を必要とするような、高度な冠動脈病変を伴う患者を検出するために適正なIMT最大値(Max IMT)のカットオフ値としては2.45mmという報告があり、参考になると思います4)。冠動脈病変が疑われれば、抗血小板薬(アスピリンやクロピドグレル)を投与する意義はさらに大きくなります。抗血小板薬による消化管出血リスクは年齢リスクとともに増加し、日本人では海外の報告より高いといわれます。胃十二指腸潰瘍の既往があるものや、NSAIDs投与中の患者ではとくに消化管出血に注意を払わなければなりません。冠動脈疾患をともなわない無症候頸動脈狭窄でとくに出血リスクが高いと考えられる症例には、患者に説明のうえ投与を行わないこともあります。あるいは出血リスクが低いといわれているシロスタゾールに変更することもありますが、頭痛や頻脈などの副作用がありえます。とくに頻脈には注意が必要で、うっ血性心不全患者には禁忌であり、冠動脈狭窄のある患者にも狭心症を起こすリスクがあることから慎重投与となっています。このため必ず冠動脈病変の評価を行ってから投与すべきと考えます。なお、すでに他の疾患で抗凝固薬を投与されているものでは、頸動脈狭窄に対しての抗血小板薬の投与は控えています。なお、無症候性の頸動脈狭窄が認知機能低下5)やフレイル6) に関連するという報告もみられます。これらの患者では認知機能やフレイルの評価を行っておくことが望ましいと考えられます。頚動脈エコー所見で低輝度のプラークは、粥腫に富んだ不安定プラークであり脳梗塞のリスクとなります7)。潰瘍形成や可動性のあるものもリスクが高いプラークです。このような不安定プラークが観察されれば、プラーク安定化作用のあるスタチンを積極的に投与しています。糖尿病治療薬については、頸動脈狭窄症のある患者に対し、とくに有効だというエビデンスをもつものはありません。SGLT2阻害薬は最近心血管イベントリスクを低下させるという報告がありますが、高齢者では脱水をきたすリスクがあるので、明らかな頸動脈狭窄症例には慎重に投与すべきと考えます。Q3 専門医への紹介のタイミングについて教えてください脳卒中ガイドラインでは高度無症候性狭窄の場合、CEAやその代替療法としての頸動脈ステント留置術(CAS)を考慮してよいとされています3)。脳神経外科に紹介し、手術になることは高齢者では少ないように思いますが、内科治療を十分行っていても狭窄が進展したり、不安定プラークが残存したりする症例などはCASを行うことが多くなっています。また、TIAなどの有症状症例で50%以上狭窄の症例では紹介しています。手術は高齢者のCEAやCASに熟練した施設で行うことが望まれます。最近、CEAやCASを行った症例において認知機能の改善が認められたという報告がみられており、エビデンスの蓄積が期待されます8)。末梢動脈疾患では跛行や安静時痛のある患者や、ABIの低下があり下肢造影CTを撮影して狭窄が疑われる場合に血管外科に紹介しています。腎機能が悪い患者については下肢動脈エコーや非造影MRAで代用することが多いですが、エコーは検査者の技量に左右されることが多く、またいずれの検査も造影CTよりは精度が劣ると考えられます。最近炭酸ガスを用い、造影剤を使用しない血管造影がありますが9) 、施行している施設は限られます。このような施設で検査を受けるか、透析導入のリスクを説明のうえ造影剤検査を行うか、しばらく内科治療で様子をみるかは、外科医と患者さんで相談のうえ、決めていただいています。 Q4 頚動脈エコー検査の頻度は? 何歳まで検査を行うべき?頚動脈エコーのフォロー間隔についてのエビデンスはありませんが、われわれは通常1年に1回フォローしています。無症候の頸動脈狭窄や不安定プラークが出現した場合、内科治療の強化や冠動脈のスクリーニングの検討が必要と考えますので、80~90代でも冠動脈インターベンションを行う今日では、このような高齢の方でも評価を行っています。IMTは年齢とともに健常者でも肥厚しますが、平均IMTは90歳代でも1mmを超えないという報告もあり10)、高度の肥厚は異常と考えます。また上述のように、無症候頸動脈狭窄に対して内科治療を十分行っていても病変が進展した際には、外科医に紹介する判断の一助となります。一方、頸動脈狭窄あるいは冠動脈CTで石灰化がある方でも、すでにしっかり内科的治療が行われており、かつ冠動脈検査やインターベンションの希望がない場合は検査の頻度は減らしてもよいかもしれません。 1)Kawarada O. et al. Circ J .2003;67; 1003-1006. 2)Shimada T et al. J Neurosurg. 2005;103: 593-596.3)日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017対応].pp88-89.協和企画;2017.4)Irie Y, et al. Diabetes Care. 2013;36: 1327-1334.5)Dutra AP. Dement Neuropsychol. 2012;6:127-130.6)Newman AB, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56: M158–166.7)Polak JF, et al. Radiology. 1998;208: 649-654.8)Watanabe J, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2017;26:1297-1305.9)Merz CN, et al. Angiology. 2016;67:875-881.10)Homma S, et al. Stroke. 2001; 32: 830-335, 2001.

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高リスク2型糖尿病の心血管リスク、リナグリプチンvs.グリメピリド/JAMA

 心血管リスクが高い比較的早期の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬リナグリプチンはSU薬グリメピリドに対し、心血管死、非致死的な心筋梗塞・脳卒中の複合のリスクが非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCAROLINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクを増加させる。リナグリプチンの心血管安全性を評価したプラセボ対照比較試験では非劣性が示されているが、実対照薬との比較試験は実施されていなかった。43ヵ国607施設が参加した実薬対照非劣性試験 本研究は、43ヵ国607施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照非劣性試験であり、2010年11月~2012年12月の期間に患者登録が行われた(Boehringer IngelheimとEli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、HbA1c 6.5~8.5%の2型糖尿病で、心血管リスク因子として、(1)アテローム動脈硬化性心血管疾患(虚血性心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)、(2)2つ以上のリスク因子(2型糖尿病罹患期間>10年、収縮期血圧>140mmHg、喫煙など)、(3)年齢70歳以上、(4)細小血管合併症(腎機能障害、増殖網膜症など)を満たす患者であった。 被験者は、通常治療に加えて、リナグリプチン(5mg、1日1回)を投与する群またはグリメピリド(1~4mg、1日1回)を投与する群に無作為に割り付けられた。担当医には、臨床的必要性に応じて、主にメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジンジオン系薬、インスリンを追加または用量を調整することで、血糖降下治療を強化することが奨励された。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合とし、リナグリプチンのグリメピリドに対する非劣性の評価が行われた。両側検定で、ハザード比(HR)の95.47%信頼区間(CI)の上限値<1.3を満たす場合に非劣性と判定した。体重が1.54kg低く、低血糖が少ない 6,033例(平均年齢64.0歳、2,414例[39.9%]が女性、平均HbA1c値7.2%、罹患期間中央値6.3年、大血管疾患42%、メトホルミン単剤療法59%)が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値は6.3年だった。 主要アウトカムは、リナグリプチン群が3,023例中356例(11.8%、2.1/100人年)、グリメピリド群は3,010例中362(12.0%、2.1/100人年)で発生し、非劣性の判定基準を満たした(HR:0.98、95.47%CI:0.84~1.14、非劣性のp<0.001)。一方、優越性は認められなかった(p=0.76)。 主な副次アウトカムとして、主要アウトカムに不安定狭心症による入院を加えて解析を行ったところ、リナグリプチン群が3,023例中398例(13.2%、2.3/100人年)、グリメピリド群は3,010例中401例(13.3%、2.4/100人年)で発生していた(HR:0.99、95%CI:0.86~1.14)。 全死因死亡(HR:0.91、95%CI:0.78~1.06、p=0.23)、心血管死(1.00、0.81~1.24、p=0.99)、心血管系以外の原因による死亡(0.82、0.66~1.03、p=0.08)には有意な差はみられなかった。 HbA1c値の平均変化は、当初、リナグリプチン群よりもグリメピリド群で良好であったが、全体では両群間に有意な差はなかった(256週までの補正後平均重み付け平均差:0%、95%CI:-0.05~0.05)。また、グリメピリド群で早期にわずかな体重増加が認められ、その後は増加せずに維持されたが、全体ではリナグリプチン群のほうが体重が低かった(-1.54kg、-1.80~-1.28)。 有害事象は、リナグリプチン群が2,822例(93.4%)、グリメピリド群は2,856例(94.9%)で発現した。重篤な有害事象は、それぞれ46.4%および48.1%にみられた。 審査によって確定された急性膵炎は、リナグリプチン群15例(0.5%)、グリメピリド群16例(0.5%)に認められ、慢性膵炎は3例(0.1%)および0例(0.0%)、膵がんは16例(0.5%)および24例(0.8%)にみられた。また、1回以上の低血糖エピソードは、それぞれ320例(10.6%)および1,132例(37.7%)で発現し(HR:0.23、95%CI:0.21~0.26)、重症低血糖は10例(0.3%)および65例(2.2%)、入院を要する低血糖は2例(0.1%)および27例(0.9%)に認められた。 著者は「心血管へのベネフィットが証明されているメトホルミン治療後に、さらなる血糖降下治療を要する場合は、リナグリプチンなどのDPP-4阻害薬は低血糖や体重増加のリスクが少ない選択肢となる」としている。

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ベジタリアンは肉食より脳卒中リスク増/BMJ

 魚食や菜食主義(ベジタリアン)の人は、肉食の人と比較して虚血性心疾患の発生率は低かったが、ベジタリアンでは脳出血および全脳卒中の発生率が高いことが示された。英国・オックスフォード大学のTammy Y N Tong氏らが、ベジタリアンと虚血性心疾患および脳卒中との関連を調査した前向きコホート研究「EPIC-Oxford研究」の18年を超える追跡調査結果を報告した。これまでの研究では、ベジタリアンが非ベジタリアンより虚血性心疾患のリスクが低いことは報告されていたが、利用可能なデータが限られており、脳卒中に関するエビデンスは十分ではなかった。BMJ誌2019年9月4日号掲載の報告。約5万人を肉食・魚食・ベジタリアンに分け心血管疾患および脳卒中の発生を調査 研究グループは、1993~2001年に虚血性心疾患、脳卒中、狭心症または心血管疾患の既往がない4万8,188例を登録し、ベースラインとその後2010~13年に収集された食事の情報に基づいて、肉食群(魚、乳製品、卵を消費するかどうかにかかわらず肉を食べる人:2万4,428例)、魚食群(魚は食べるが肉は食べない人:7,506例)、菜食群(ヴィーガンを含むベジタリアン:1万6,254例)に分類し、追跡調査した。ベースラインとその後の2010年頃(平均追跡期間14年後)の両方で食事に関する報告があったのは2万8,364例であった。 主要評価項目は、2016年までの英国医療サービスの関連記録から特定された虚血性心疾患および脳卒中(脳梗塞、脳出血)の発生とし、Cox比例ハザードモデル、Wald検定を用いて解析した。ベジタリアン群の脳卒中が肉食群に比べ20%増加 18.1年以上の追跡調査の結果、虚血性心疾患2,820例、全脳卒中1,072例(脳梗塞519例、脳出血300例)が確認された。社会人口学的および生活習慣の交絡因子を調整後、魚食群およびベジタリアン群の虚血性心疾患の発生は、肉食群と比較してそれぞれ13%(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77~0.99)および22%(HR:0.78、95%CI:0.70~0.87)低下した(異質性のp<0.001)。この差は、虚血性心疾患の発生が肉食群よりもベジタリアン群において、10年以上で1,000人当たり10症例(95%CI:6.7~13.1)少ないことに相当した。虚血性心疾患との関連性は、自己報告による高コレステロール、高血圧、糖尿病、BMIで調整すると、部分的に減弱した(ベジタリアン群のHR:0.90、95%CI:0.81~1.00)。 一方、ベジタリアン群では、全脳卒中の発生が肉食群より20%増加した(HR:1.20、95%CI:1.02~1.40)。これは、10年以上で1,000人当たり3症例多いことに相当し、大部分は脳出血の増加によるもので、脳卒中との関連性は疾患リスク因子を調整しても減弱しなかった。 なお、著者は研究の限界として、スタチンなどの薬物療法に関する情報が利用できなかったこと、食事や食事以外に関する交絡因子の可能性、対象者の多くが欧州の白人であり一般化できるかは限定的であることなどを挙げている。

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STEMI合併多枝冠動脈疾患、完全血行再建術は有効か/NEJM

 ST上昇心筋梗塞(STEMI)を伴う多枝冠動脈疾患患者の治療では、非責任病変を含む完全血行再建術は、責任病変のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して、心血管死と心筋梗塞の複合のリスクだけでなく、心血管死+心筋梗塞+虚血による再血行再建術の複合をも有意に抑制することが、カナダ・マクマスター大学のShamir R. Mehta氏らが行ったCOMPLETE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。STEMI患者では、責任病変へのPCIは心血管死と心筋梗塞のリスクを低減するが、非責任病変へのPCIがこれらのイベントのリスクをさらに抑制するかは不明だという。責任病変PCIが成功したSTEMIが対象の無作為化試験 本研究は、31ヵ国140施設が参加した国際的な無作為化試験であり、2013年2月~2017年3月の期間に患者登録が行われた(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 対象は、STEMIで入院し、責任病変へのPCIが成功後72時間以内に試験への組み入れが可能であり、冠動脈造影で梗塞と関連のない病変(非責任病変)が1つ以上認められた多枝冠動脈疾患を有する患者であった。 被験者は、非責任病変への完全血行再建術を行う群またはそれ以上の血行再建術は行わない群に無作為に割り付けられた。完全血行再建術群は、非責任病変PCIの施行時期(初回入院中または退院後数週以内)で層別化された。 第1の主要アウトカムは、心血管死と心筋梗塞の複合とし、第2の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、虚血による再血行再建術の複合であった。第1の主要アウトカムが26%、第2の主要アウトカムは49%改善 4,041例が登録され、完全血行再建術群に2,016例(平均年齢61.6±10.7歳、男性80.5%)、責任病変PCI群には2,025例(62.4±10.7歳、79.1%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は35.8ヵ月だった。 第1の主要アウトカムは、完全血行再建術群が2,016例中158例(7.8%)に発生し、責任病変PCI群の2,025例中213例(10.5%)に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.60~0.91、p=0.004)。この差は、完全血行再建術群で心筋梗塞(5.4% vs.7.9%、HR:0.68、95%CI:0.53~0.86)がより少なかったことによる(心血管死は2.9% vs.3.2%、HR:0.93、95%CI:0.65~1.32)。 第2の主要アウトカムは、完全血行再建術群が179例(8.9%)に発生し、責任病変PCI群の339例(16.7%)と比較して有意に優れた(HR:0.51、95%CI:0.43~0.61、p<0.001)。虚血による再血行再建術は、完全血行再建術群が有意に良好であった(1.4%vs.7.9%、HR:0.18、95%CI:0.12~0.26)。 主な副次アウトカムである心血管死、心筋梗塞、虚血による再血行再建術、不安定狭心症、NYHAクラスIVの心不全の複合の発生は、完全血行再建術群が有意に優れた(13.5% vs.21.0%、HR:0.62、95%CI:0.53~0.72)。 2つの主要アウトカムの双方における完全血行再建術群のベネフィットは、非責任病変PCIの施行時期が初回入院中および退院後のいずれにおいても、一貫して認められた(それぞれ交互作用:p=0.62、p=0.27)。 一方、大出血(2.9% vs.2.2%、HR:1.33、95%CI:0.90~1.97)、脳卒中(1.9% vs.1.4%、HR:1.31、95%CI:0.81~2.13)、ステント血栓症(1.3% vs.0.9%、HR:1.38、95%CI:0.76~2.49)には両群間に有意な差はなかった。また、造影剤関連の急性腎障害が、完全血行再建術群の30例(1.5%)、責任病変PCI群の19例(0.9%)で発現した(p=0.11)。 著者は「3年間で、1例の心血管死/心筋梗塞を予防するのに要する治療必要数(NNT)は37件であり、1例の心血管死/心筋梗塞/虚血による再血行再建術を回避するのに要するNNTは13件だった」としている。

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急性冠症候群へのプラスグレル、チカグレロルより高い有効性/NEJM

 ST上昇の有無を問わず急性冠症候群患者の治療では、プラスグレルはチカグレロルと比較して、1年後の死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合の発生率が有意に低く、大出血の発生率は両群間に差はないことが、ドイツ心臓センターミュンヘンのStefanie Schupke氏らが行ったISAR-REACT 5試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。抗血小板薬2剤併用療法(アデノシン二リン酸受容体拮抗薬とアスピリン)は、急性冠症候群の標準治療とされる。プラスグレルとチカグレロルは先行薬のクロピドグレルに比べ、血小板阻害作用が強く、効果の発現が迅速かつ安定しているとされる。一方、侵襲的評価が予定されている患者における、これらの薬剤による1年間の治療の相対的な優劣のデータはこれまでなかったという。2剤を直接比較する医師主導の無作為化試験 本研究は、ドイツの21施設とイタリアの2施設が参加した医師主導の多施設共同非盲検無作為化第IV相試験であり、2013年9月~2018年2月の期間に患者登録が行われた(German Center for Cardiovascular Researchなどの助成による)。 対象は、急性冠症候群(ST上昇型心筋梗塞[STEMI]、非ST上昇型心筋梗塞[NSTEMI]、不安定狭心症)で入院し、侵襲的評価(冠動脈造影検査)が予定されている患者であった。 被験者は、プラスグレル(負荷用量60mg、維持用量10mg、1日1回)またはチカグレロル(負荷用量180mg、維持用量90mg、1日2回)を投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年後の死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合とし、主な副次エンドポイントは出血であった。主要エンドポイント:6.9% vs.9.3%、大出血:4.8% vs.5.4% 4,018例が登録され、プラスグレル群に2,006例(平均年齢64.6±12.1歳、女性23.8%)、チカグレロル群には2,012例(64.5±12.0歳、23.8%)が割り付けられた。STEMIが41.1%、NSTEMIが46.2%、不安定狭心症が12.7%であった。84.1%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を、2.1%が冠動脈バイパス術(CABG)を受けていた。 主要エンドポイントは、プラスグレル群が2,006例中137例(6.9%)で発生し、チカグレロル群の2,012例中184例(9.3%)と比較して有意に低かった(ハザード比[HR]:1.36、95%信頼区間[CI]:1.09~1.70、p=0.006)。 主要エンドポイントの個々の要素の発生率は、死亡がプラスグレル群3.7%、チカグレロル群4.5%(HR:1.23、95%CI:0.91~1.68)、心筋梗塞がそれぞれ3.0%、4.8%(1.63、1.18~2.25)、脳卒中は1.0%、1.1%(1.17、0.63~2.15)であり、プラスグレル群における主要エンドポイントの発生率の低さは、主に心筋梗塞が少ないためであった。 ステント血栓症(definite、probable)は、プラスグレル群が1.0%、チカグレロル群は1.3%(HR:1.30、95%CI:0.72~2.33)で発現し、このうちdefiniteはそれぞれ0.6%、1.1%に認められた。 大出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]基準の3、4、5)は、プラスグレル群が4.8%、チカグレロル群は5.4%にみられた(HR:1.12、95%CI:0.83~1.51、p=0.46)。 著者は「いくつかの過去の知見により、チカグレロルに基づく戦略はプラスグレルに基づく戦略よりも優れるとの仮説を立てたが、結果は予想とは異なっていた」としている。

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心房細動合併安定CAD、リバーロキサバン単剤 vs.2剤併用/NEJM

 血行再建術後1年以上が経過した心房細動を合併する安定冠動脈疾患患者の治療において、リバーロキサバン単剤による抗血栓療法は、心血管イベントおよび全死因死亡に関してリバーロキサバン+抗血小板薬の2剤併用療法に対し非劣性であり、大出血のリスクは有意に低いことが、国立循環器病研究センターの安田 聡氏らが行ったAFIRE試験で示された。研究の成果は2019年9月2日、欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日のNEJM誌オンライン版に掲載された。心房細動と安定冠動脈疾患が併存する患者における最も効果的な抗血栓治療の選択は、個々の患者の虚血と出血のリスクの注意深い評価が求められる臨床的な課題とされている。日本の294施設が参加、単剤の非劣性を検証する無作為化試験 本研究は、日本の294施設が参加した多施設共同非盲検無作為化試験であり、2015年2月23日~2017年9月30日の期間に患者登録が行われた(バイエル薬品との契約を介して循環器病研究振興財団の助成を受けた)。 対象は、年齢20歳以上、心房細動と診断され、登録の1年以上前に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス手術(CABG)を受けた患者、または冠動脈造影で血行再建術の必要がない冠動脈疾患(狭窄≧50%)と判定された患者であった。 被験者は、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬であるリバーロキサバン(クレアチニンクリアランス15~49mL/分の患者は10mgを1日1回、同≧50mL/分の患者は15mgを1日1回)の単剤療法を受ける群、またはリバーロキサバン+抗血小板薬(治療医の裁量でアスピリンまたはP2Y12阻害薬から選択)の2剤併用療法を受ける群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建術を要する不安定狭心症、全死因死亡の複合とし、非劣性の評価が行われた(非劣性マージンは1.46)。安全性の主要エンドポイントは、国際血栓止血学会(ISTH)基準による大出血とし、優越性の評価が行われた。 なお、本研究は、併用群で全死因死亡のリスクが高かったため、独立データ安全性監視委員会の勧告により2018年7月、早期中止となった。事後解析では有効性の優越性を確認 2,215例(修正intention-to-treat集団)が登録され、単剤群に1,107例が、併用群には1,108例が割り付けられた。全体の平均年齢は74歳、男性が79%であった。1,564例(70.6%)がPCI、252例(11.4%)がCABGを受けていた。 ベースラインのCHADS2スコア中央値は2、CHA2DS2-VAScスコア中央値は4、HAS-BLEDスコア中央値は2であった。併用群の778例(70.2%)がアスピリン、297例(26.8%)はP2Y12阻害薬の投与を受けていた。治療期間中央値は23.0ヵ月(IQR:15.8~31.0)、フォローアップ期間中央値は24.1ヵ月(17.3~31.5)だった。 有効性の主要エンドポイントは、単剤群が89例、併用群は121例で発生し、人年当たり発生率はそれぞれ4.14%および5.75%であり、単剤群の併用群に対する非劣性が確認された(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95、非劣性のp<0.001)。 また、安全性の主要エンドポイントの人年当たり発生率は、単剤群が1.62%(35例)と、併用群の2.76%(58例)に比べ有意に優れ(HR:0.59、95%CI:0.39~0.89、p=0.01)、単剤群の優越性が確証された。 副次エンドポイントである全死因死亡の人年当たりの発生率は、単剤群は1.85%であり、併用群の3.37%と比較して有意に良好であった(HR:0.55、95%CI:0.38~0.81)。このうち、心血管死(1.17% vs.1.99%、0.59、0.36~0.96)および非心血管死(0.68% vs.1.39%、0.49、0.27~0.92)のいずれにおいても、単剤群が有意に優れた。 事前に規定されたサブグループ(性別、年齢、脳卒中リスク、出血リスク、腎機能など)の解析では、有効性の主要エンドポイントは全般に単剤群で一致して良好な傾向が認められ、大出血イベントに関しても、同様の効果が観察された。 著者は、「事前に規定されていない解析では、有効性の主要エンドポイントに関して、単剤群の併用群に対する優越性が確認された」としている。

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加熱式タバコによる受動喫煙の害は?【新型タバコの基礎知識】第8回

第8回 加熱式タバコによる受動喫煙の害は?Key Points加熱式タバコによる受動喫煙のリスクは、あるかないかで言えば、ある。ただし、紙巻タバコと比べると程度は低いと考えられる。すでに禁煙になっている場所を加熱式タバコはOKとすべきではない。加熱式タバコによる受動喫煙はどれぐらい発生するのでしょうか?屋内空間で加熱式タバコを使用したときにどれぐらいの濃度で、粒子状物質や有害物質が検出されるのか、調べた研究がこれまでに3つあります。その3つの文献の結果をまとめたのが表です。画像を拡大する一番左の文献を例として表の見かたを説明します。Ruprechtらによる2017年の研究は、イタリア国立がんセンターの研究者らが実施した研究です。アイコス・スティックと紙巻タバコのそれぞれを用いた場合に、屋内空間に充満する有害物質の濃度を1時間に1.5回換気するという設定で測定しています。基準となる紙巻タバコの場合の有害物質の濃度を100%とした場合に、アイコス・スティックの場合の有害物質濃度が何%に相当するのか、が表されています。たとえば、PM2.5の濃度は1.3~1.5%であり、アセトアルデヒドは5.0~5.9%、ホルムアルデヒドは6.9~7.1%でした。100%より小さな値=加熱式タバコの場合の濃度が低いことを表しています。3つの文献の結果をみると、右2つのタバコ会社からの報告では、粒子状物質(PM:particulate matter)が検出されていないのに対して、タバコ会社から資金提供のない研究機関からの報告では検出されていると分かります。しかも、タバコ会社による研究では測定されていなかったPM nmという10~1,000nmの大きさの粒子状物質が比較的多く出ていると分かりました。ただし、比較的多いといっても紙巻タバコと比べると4分の1から5分の1というレベルであり、他の大きさの粒子状物質の濃度は紙巻タバコに比べてかなり低く、PM2.5で100分の1から50分の1というレベルでした。3種のアルデヒド類の濃度を比較すると、タバコ会社による研究ではアクロレインが検出されていませんが、イタリア国立がんセンターの研究では検出されています。アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドについては3つの研究すべてで検出されており、紙巻タバコの場合と比較して、おおよそ10分の1から20分の1の濃度でした。それでは、加熱式タバコによる受動喫煙の被害はあるといえるのでしょうか? あるかないかで言えば、あるが答えだといえるでしょう。ただし、程度が問題でもあります。加熱式タバコでは副流煙(吸っていない時にタバコの先端から出る煙のこと)がないため、受動喫煙は紙巻タバコと比べれば、かなり少なくなります。加熱式タバコであれば、屋内に発生する粒子状物質の濃度は紙巻タバコの数%というレベルに減らすことができるのです。とはいえ、受動喫煙がまったくないわけではなく、加熱式タバコからもホルムアルデヒドなどの有害物質が放出されています。加熱式タバコによる受動喫煙の被害については、それぞれケースバイケースで考える必要があるといえるでしょう。もともと屋内で紙巻タバコを吸っていた人が加熱式タバコに完全にスイッチできれば、受動喫煙の害は減らせるかもしれません。屋内での紙巻タバコの喫煙は、皆が考えているよりもはるかに危険といえます。屋内で喫煙すると、すぐに大気汚染の緊急事態レベルとなっているのです。たとえば、屋内で3人が喫煙するレストランではPM2.5濃度が600μg/m3となり、この値は大気汚染の緊急事態レベル濃度500μg/m3よりも高いものです*。また、喫煙する自動車内では、PM2.5の1時間平均値は750μg/m3と非常に高い値となります。紙巻タバコを加熱式タバコに置き換えることができれば、PM2.5を減らすことができるでしょう。一方、もともと禁煙だった場所なのに、加熱式タバコが使われるようになるケースもあることに、注意が必要です。自宅内ではタバコを吸わないルールだったのに、加熱式タバコならいいだろうと言って、禁煙から加熱式OKへと後退してしまうケースなどです。そういったケースが続出しているのです。その場合には、いままでなかった受動喫煙の被害が発生してしまうこととなります。家庭では、子どもや家族が受動喫煙の危険にさらされてしまうのです。また、世の中には、タバコの煙やエアロゾルから被害を受けやすい人もいます。狭心症などの虚血性心疾患、気管支喘息や化学物質過敏症の患者さんが代表例です。少量の曝露でも、発作を起こしたり、体調を崩したりするなどの健康被害が起きてしまう可能性があります。受動喫煙に関しては、加熱式タバコの方がましかもしれないからといって、単純に加熱式タバコならOK、とは考えるべきではないのです。第9回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?」です。*微小粒子状物質(PM2.5):大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5µm以下の非常に小さな粒子のこと。PM2.5の健康影響について、米国の研究では、大気中のPM2.5値が10μg/m3増えると、心臓や肺の疾患による死亡率が9%、肺がん死亡率が14%、全死亡率が6%増えると報告された。2013年、日本の環境省は「健康影響が出現する可能性が高くなる濃度水準」をPM2.5日平均値で70μg/m3と定め、それを超えた場合には、不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らすこと、呼吸器系や循環器系疾患のある者・小児・高齢者などにおいては体調に応じてより慎重に行動することが望まれるとしている。

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short DAPTとlong DAPTの新しいメタ解析:この議論、いつまで続けるの?(解説:中野明彦氏)-1105

【はじめに】 PCI(ステント留置)後の適正DAPT期間の議論が、まだ、続いている。 ステントを留置することで高まる局所の血栓性や五月雨式に生じる他部位での血栓性イベントと、強力な抗血小板状態で危険に晒される全身の出血リスクの分水嶺を、ある程度のsafety marginをとって見極める作業である。幾多のランダム化試験やメタ解析によって改定され続けた世界の最新の見解は「2017 ESC ガイドライン」1)に集約されている。そのkey messageは、・安定型狭心症は1~6ヵ月、ACSでは12ヵ月間のDAPTを基本とするが、その延長は虚血/出血リスクにより個別的に検討されるべきである(DAPT score・PRECISE DAPT score)。・ステントの種類(BMS/DES)は考慮しない。・DAPTのアスピリンの相方として、安定型狭心症ではクロピドグレル、ACSではチカグレロル>プラスグレルが推奨される。 一方本邦のガイドラインは、安定型狭心症で6ヵ月、ACSでは6~12ヵ月間を標準治療とし、long DAPTには否定的である。 言うまでもないが、DAPTの直接の目的はステント血栓症予防である。ステント血栓症の原因は複合的で、病態(ACS vs.安定型狭心症)のほかにも、患者因子(抗血小板薬への反応性・糖尿病・慢性腎臓病・左室収縮能など)、病変因子(血管径・病変長・分岐部病変など)、ステントの種類(BMS、第1世代DES、第2世代以降のDES)、さらには手技的因子(stent underexpansion、malappositionなど)が関連すると報告されている。そしてステント血栓症は留置からの期間によって主たるメカニズムが異なり、頻度も変わる2)。1年以降(VLST:Very Late Stent Thrombosis)の発生頻度は1%をはるかに下回り、in-stent neoatherosclerosisが主役となる。またVLSTの数倍も他病変からのspontaneous MIが発症するといわれている。こうした点がDAPTの個別的対応の背景であろう。【本メタ解析について】 ステント留置後のadverse eventは時代とともに減少し、したがって数千例規模のRCT でもsmall sample sizeがlimitationになってしまう。これを補完すべく2014年頃からRCTのメタ解析が年2~3本のペースで誌上に登場してきた。本文はその最新版で、これまでで最多の17-RCT(n=46,864)を解析した。DAPTはアスピリン+クロピドグレルに限定し、単剤抗血小板療法(SAPT)はアスピリンである。従来の「short DAPT=12ヵ月以内」を細分化して「short(3~6ヵ月)」と「standard(12ヵ月)」に分離、これを「long(>12ヵ月)」と比較する3アーム方式で議論を進めている。 その結論・主張は、(1)総死亡・心臓死・脳卒中・net adverse clinical eventsはDAPT期間で差がない(2)long DAPTはshort DAPTに比して非心臓死や大出血を増やす(だからlong DAPTは極力避けたほうがいい)(3)short DAPTとstandard DAPTではACSであってもステント血栓症や心筋梗塞に差がない(だからshort DAPTでいい) などである。しかし一方、long DAPTの超遅発性ステント血栓症・心筋梗塞抑制効果についてはほとんど触れられておらず、short DAPTに肩入れしている印象を受ける。筆者が、おそらく虚血患者に接する機会が少ないであろう臨床薬理学センター所属のためだろうか? 本メタ解析の構図は「DAPTに関するACC/AHA systematic review report(2017)」3)に似ていて、これに2016年以降発表されたRCTを中心に6報加えて議論を展開している。long DAPTほど血栓性イベント抑制に勝り出血性合併症が増える結論は同じだが、ACC/AHA reportはテーラーメードを意識してかリスクによる選択の余地を強調している。 さらにいくつか気になる点がある。評者もご多分に漏れず統計音痴なので、その指摘は的を射ていないかもしれないけれど、できれば本文をダウンロードしてご意見をいただきたい。 たとえば、MIやステント血栓症はlong DAPTで有意に抑制しているのに心臓死はshort DAPTで少ない傾向にあったこと。あるいは非心臓死(有意差あり)・心臓死のOdd Ratioが共に総死亡より大きかったこと。これらは各エンドポイントが試験により含まれたり含まれなかったりしていたためらしい。 また、たとえば各試験でのevent ratioが大きく異なること。同じshort vs.standard DAPTの試験でも12ヵ月MI発症率が0%(IVUS-XPL)~3.9%(I-LOVE-IT2)と幅がある。調べてみるとperiprocedural MIを含めるかどうかなど、そもそも定義が異なるようである。 そして、例えばランダム化の時期である。short vs.standardのほとんどがPCI前後に振り分けているのに対し、standard vs.longはすべてで急性期イベントが終了した12ヵ月後に振り分けランドマーク解析している。これでもshort vs.longの図式が成り立つのだろうか?【まとめ】 DAPT有用性の議論はあのゴツイPalmaz-Schatz stentから始まった。第1世代DESも確かに分厚かった。しかし技術の粋を集め1年以内のステント血栓症が大幅に減少した現時点において、short DAPTにシフトするのは異論がないところであろう。とりわけcoronary imagingを駆使してoptimal stentingを目指すことができる本邦においては、なおさらである。しかし一方、心筋梗塞二次予防に特化したメタ解析4)では、long DAPTが致死性出血や非心臓死を増やすことなく心臓死やMI・脳卒中を有意に抑制した、との結果だった。 ステント血栓症が減ったからこそ、二次予防に抗血小板薬(DAPT)をどう活かすかという視点も必要であろう。解析の精度はさておき「short term DAPT could be considered for most patients after PCI with DES」と結論付けたSAPT(アスピリン)vs.DAPT(アスピリン+クロピドグレル)の議論はそろそろ終わりにしても良いのではないだろうか。 現在はアスピリンの代わりにクロピドグレルやP2Y12 receptor inhibitor(チカグレロル)によるSAPT、少量DOACの有効性も検討されて、PCI後の抗血栓療法は新しい時代に入ろうとしている。 木ばかりでなく森を見るようにしたいと思う。

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労力に比して得るものが少なかった研究(解説:野間重孝氏)-1094

 本論文は年齢・性別・狭心症のタイプ・pretest probability・CTの列数の観点から冠動脈造影CT(CTA)の有用性を、65本の既出論文のメタアナリシス(一部著者らが集めた未出版データも含む)によって検討したものである。 ご存じのように現在、世界のCTの10台に1台はわが国にある。高性能なものに限ればこの数はもっと多くなると推察される。これは他国とはかなり異なった医療状況を生み出しているのではないかと思う。SCCTが発表しているデータによれば、CTAの診断能は感度86%~99%、特異度95%~97%であるものの、陽性適中率は66%~87%にとどまる。本論文中では前者で97.2%~100%、後者で87.4%~89%との数字を別のメタアナリシスデータから引用している。しかし陰性適中率が98%~100%と、とてつもなく高い数字になることには言及していない。考えていただきたいのだが、ここに比較的安全でかつ陰性適中率がきわめて高い検査が比較的容易に行えるとしたら、疾病の確率が何パーセントかと論ずる前に、さっさとその検査を行ってしまうのではないだろうか。それが現在のわが国の実情なのだと思う。もっともこの論文も警告しているように、安易な検査のやり過ぎは国家医療財政に大きな負担となる。これも現在のわが国の現状そのものといえる。 本論文ではpretest probabilityが重要な要素として論じられている。しかし、その算出方法についてはdiscussionの中でDiamond and Forester modelを利用したこと、ESCのガイドラインも参照していること、また運動負荷の成績から見積もったものもあると述べるにとどまっており、methodsの中で詳細に論じられてはいない。評者も評者の周囲も日常診療においてあまりこのような数字の議論をしないので、これが一部の医師たちの間では常識になっているものかどうか言及できない。著者の中に日本人も含まれていることを考えると、欧米とわが国の違いだけとはいえないとも考えられるが、評者には論評できない。ただし、重要な構成要素について説明不足であることは指摘しておきたい。 また、年齢や性別がなぜ診断成績に影響を与えるかについても考察されていない。これについては近年、雑誌が推測による記述を抑制するようになったからだという見方もできるが、結論部分に書かれている内容について十分なdiscussionをしないというのはいかがなものなのだろうか。これに関連して考えるのは、本論文では石灰化指数(カルシウムスコア)が検討されていないことである。性別については何ともいえないが、年齢と石灰化指数には強い相関が認められることはよく知られており、年齢による診断能の低下の有力な説明になったのではないだろうか。この問題から離れても、CTの診断能を議論する場合、石灰化指数は重要な要素であり、本論文でこの議論が抜けていることには非常に不満を感じる。 CTの列数の議論には違和感を感じた。これは原理的な問題であり、実際の開発においては実験・実証によって議論されるべき問題であって、臨床データのメタアナリシスが利用される余地はない問題だと考えるからである。ちなみに、旧式のCTでも意外に診断に有効利用できるといったデータなら、統計を利用する意味がある。この辺は統計をとるという行為をどう考えるかにかかっている。 結論を言えば、多くの国の多くの学者たちが交流を持ったことに意義を感じるものの、大変な労力をかけた論文としては得るものが少なかったと言わざるをえない。

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続・アブレーションはお嫌いですか?(解説:香坂俊氏)-1089

 心房細動に対するカテーテルアブレーション(CA)が患者予後そのものを改善するか?ということについては、以前CASTLE-AF研究が発表された際にも当シリーズでコメントさせていただいた。CASTLE-AFは「重症心不全のAF患者」を対象とした無作為ランダム化試験(RCT)であり、コントロール群と比較しCA群で死亡・心不全入院が約4割減少するという衝撃的なまでの予後改善効果を提示した(第847回)。では、より一般的な「心不全でないAF」に対するCAの効果はどうなのか? 同稿の最後にも記したが、そこは長らくCABANAという名前の他施設共同国際臨床試験の結果が待たれていた(南国的でゴキゲンな名称であるが、試験が行われたのは北米)。 今回、そのCABANA試験の結果が満を持して発表された(JAMA誌に2報同時に掲載され、第1報は患者予後に関する主解析であり[予後改善効果はなし]、第2報はQOLを扱ったものであった[CAにQOL改善効果あり])。 自分が今回担当させていただくのは後者のQOLに関する論文の講評である(前者に関しては小田倉先生が説明されている)。先ほどさっくりと述べたとおり、コントロール群(抗不整脈薬のみを使用)と比較しCA群でQOL改善の方向で確かに統計的な有意差はついた。だが、今回自分がポイントとして取り上げたいのは、そのQOL改善の程度である。 CABANA研究では AFEQT(※)という質問表を使って患者QOLの評価が行われている。このAFEQTを用いてCA群でのQOL改善の態度は12ヵ月で 5.3ポイントというものであった(95%信頼区間は3.7~6.9)。専門的な話となるが、だいたいAFEQTの5ポイントの増減は、心房細動生活スケール(EHRA:※※)のクラス1つ分の変動と同様と考えられており、確かにこれは臨床的にも有意な変化といえる。※AFEQT(Atrial Fibrillation Effect on QualiTy-of-life)とは心房細動患者に特化したQOLを評価するために開発された質問紙表であり、心房細動による症状(4問)、日常生活の制限(8問)、治療の不安(6問)の3つの項目から全体のQOLスコアを算出する仕組みをとっている(0〜100点:0点が最もQOLが悪く、100点が最もQOLが良い)。実際の質問紙表では上記の3項目に治療の満足度(2問)に関する質問を加えた20問から構成され、すべての質問の回答に要する時間は約5~10分程度である(http://www.afeqt.org)。※※ EHRAスケール1.無症状2.心房細動の症状に困っているが、通常の日常生活に影響はない3.高度の心房細動の症状により、通常の日常生活に影響を与えている4.通常の日常生活を送るのが困難であるしかし、この論文をさらに読み進めてみると、実に興味深いグラフが後半に提示されている。長期的に見ると12ヵ月時点の5.3ポイントという差は、2群間(抗不整脈薬のみのコントロール群とCA群の間)で次第に縮まり、60ヵ月後の時点では2.6 ポイント差にまで縮小している。この変化はCA群でQOLが低下したわけではなく、薬物治療群で持続的にQOLが改善してもたらされたものであるが、2.6ポイントという差に臨床的な意味があるかどうかというところはかなり議論が分かれるところであろう。 CABANA試験を語るうえで、抗不整脈にアサインされた群のCAへのクロスオーバー率(27.5%)がしばしば問題点として指摘されるが、このことについては抗不整脈薬をまず使ってみて、そしてその後にCAが必要になったほうが27.5%だった、と解釈するのが妥当ではないだろうか(そのように診療を行ってもハードエンドポイントに差はつかない)。これは安定狭心症に対するPCIの予後改善効果を検証したCOURAGE試験でも同様の議論が行われ、こちらでもハードエンドポイントに差がないことから、今では最初にOptimized Medical Therapy(至適薬物療法)を行ってから必要に応じてPCIを考えるという診療パターンでよいとされている。 このほかに、CABANA試験は非盲検の臨床試験であることもLimitation(限界)として指摘されており、ランダム化された後に両群ともに治療への期待からより自身のQOLを高く評価してしまった可能性がある(この傾向は侵襲の度合いが強いCA群でより顕著であったと考えられる)。なお、この点を克服するにはシャム手技(sham procedure)を取り入れた試験のデザインが必要である。 「歴史は繰り返す」というが、CAがたどってきた道は安定狭心症に対するPCIがたどった道によく似ている。安定狭心症に対するPCIの純粋な予後改善効果はCOURAGE試験によって否定され(2007年)、その後同試験のサブ解析によりQOLの改善効果も限定的(2~3年の短期的なもの)であることが示された(2008年)。また、昨年報告されたORBITA試験では、sham procedureを取り入れてPCIの効果をコントロール群と比較した場合、その短期的なQOLの改善効果すらプラセボ効果によってもたらされた可能性が高いことが指摘されている。 PCIがその力をフルに発揮するのは、急性心筋梗塞をはじめとするACSの症例に対してであり、こちらははっきりと予後改善効果がRCTによって示されている。CAも心不全例に関しては同様であるが、心不全のないAFに対するCAの選択は(安定狭心症に対するPCIと同様)慎重であるべきだろう。「CAでAFを根治できる」などという説明は行うべきではなく、少なくとも予後改善でなくQOL改善を目的とするという説明の仕方がフェアであるように思われる。QOLが維持できているAF患者さんに対するCAの用途は、今回の結果を見てみてもきわめて限定的であるといえるのではないか。謝辞 本稿の作成に当たっては当科の池村 修寛医師の協力を得た。池村医師はAFEQTを用いた研究で成果を挙げており(Ikemura N, et al. JAMA Netw Open. 2019;2:e191145.、Ikemura N, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2019;12:e005573.)、氏の協力なくしてCABANA試験のQOL解析に関する本質的な洞察は不可能であった。この場を借りて感謝を申し上げたい。

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安定狭心症の血行再建適応評価はMRIとFFRのいずれで行うべきか?(解説:上田恭敬氏)-1076

 典型的な狭心症症状があって、トレッドミル負荷心電図陽性で、複数の冠危険因子を持つ918症例を登録して、MRIによる虚血評価を行う群とFFRによる虚血評価を行う群に無作為に割り付ける、国際多施設無作為化非劣性試験が行われた。主要評価項目は12ヵ月時点でのMACE(全死亡、心筋梗塞、target-vessel revascularization)であった。 MRI群(454症例)のうち445例が実際にMRIを受け、221例が虚血陽性となったためCAGが必要とされた。実際にCAGを実施した219例のうちCAG陽性であった184例(40.5%)が血行再建(PCIまたはCABG)の適応ありと判断されたが、実際に血行再建を受けたのは162例(35.7%)であった。逸脱としては、MRIを受けなかったのが9例、CAGを受けなかったのが2例、血行再建を受けなかったのが22例であった。 FFR群(464症例)のうち449例がCAGを受け、282例がCAG陽性であったためFFRが必要とされた。実際にFFRを実施した265例のうちFFR陽性であった213例(45.9%)が血行再建の適応ありと判断されたが、実際に血行再建を受けたのは209例(45.0%)であった。逸脱としては、CAGを受けなかったのが15例、FFRを受けなかったのが17例、血行再建を受けなかったのが15例であった。 MRI群とFFR群を比較すると、血行再建の適応ありと判断された割合は40.5%対45.9%(p=0.11)と差がなかったが、実際に血行再建を受けた割合は35.7%対45.0%(p=0.005)とFFR群で有意に高値であった。主要評価項目のMACEは3.6%対3.7%で非劣性が示された。また、12ヵ月時点で狭心症症状が消失している割合は49.2%対43.8%で差がなかった。よって、MRIによって虚血評価を行うことは、FFRによって虚血評価を行うことに比して、血行再建の実施率が低くなり、12ヵ月時点のMACEにおいて非劣性であることが示されたと結論している。 MACEの多くは虚血の有無や血行再建の必要性が検討された関心病変とは関係なく発生することや、虚血の原因とならないことが示された関心病変も後日MACEの原因となる場合があることから、予後が虚血の評価法に左右されないことを示唆する本研究の結論は正しいようにも思われるが、試験としてはいくつか疑問点がある。まず、典型的な狭心症症状があってトレッドミル陽性の症例を集めているにもかかわらず、半数以下の症例でしか血行再建の適応がなく実施もされておらず、12ヵ月の時点では狭心症症状が半数弱の症例で残存している状況をみると、それら数値の説明が論文中にないため、いずれの群においても血行再建の適応評価が適切に行われたのか疑問である。次に、MRI陽性者中のCAG陽性率が83.3%、FFR割付群全体のCAG陽性率が60.8%となっているが、「CAG陽性」の定義が記載されておらず、CAGの結果についても記載がない。CAG陰性の167例ではFFR群であるにもかかわらずFFRが実施されず、CAG陽性&FFR陰性の2例で狭心症症状軽減を目的としてPCIが実施されていることからも、FFRの実施が適切だったかどうか疑問である。CAGでは有意な狭窄でなくても虚血の原因となりうることは、FFRを用いた多くの研究で示されていることである。CAGやFFR、PCIといったinvasive strategyに関して、適切に行われたか否か疑問の残る試験ではないだろうか。

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狭心症の冠動脈血行再建の適応判定、MRIはFFRに非劣性/NEJM

 冠動脈疾患のリスク因子を有する安定狭心症患者における冠動脈血行再建の適応の判定法として、心筋灌流心血管磁気共鳴画像(MRI)は冠血流予備量比(FFR)と比較して血行再建の施行率が低く、1年後の主要有害心イベント(MACE)に関して心血管MRIはFFRに対し非劣性であることが、ドイツ・フランクフルト大学病院のEike Nagel氏らが実施した「MR-INFORM試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2019年6月20日号に掲載された。安定狭心症患者では、血行再建の適応の判定にこれら2つの戦略が用いられることが多いが、MACEとの関連におけるこれらの非劣性は確立されていないという。4ヵ国16施設が参加した非劣性試験で心血管MRI群とFFR群に割り付け MR-INFORM試験は、英国、ポルトガル、ドイツ、オーストラリアの16施設が参加した非盲検多施設共同相対的有効性非劣性試験であり、2010年12月~2015年8月の期間に患者登録が行われた(英国国立衛生研究所Guy's and St. Thomas生物医学研究センターなどの助成による)。 対象は、定型的狭心症を有し、心血管リスク因子を2つ以上有するか、またはトレッドミル運動負荷試験が陽性の患者であった。被験者は、心血管MRIに基づく戦略またはFFRに基づく戦略(侵襲的冠動脈造影とFFR測定)を行う群に無作為に割り付けられた。 血行再建は、心血管MRI群では心筋の6%以上が虚血の場合、FFR群ではFFRが0.8以下の場合に推奨された。 主要複合アウトカムは、1年以内のMACE(死亡、非致死的心筋梗塞、標的血管の血行再建)であった。非劣性マージンは、リスク差6ポイントとした。血行再建を受けた患者の割合:心血管MRI群35.7% vs. FFR群45.0% 918例が登録され、心血管MRI群に454例(平均年齢62±10歳、男性72.5%)、FFR群には464例(62±9歳、72.2%)が割り付けられた。 血行再建を推奨する基準を満たしたのは、心血管MRI群が40.5%(184/454例)、FFR群は45.9%(213/464例)であった(p=0.11)。指標となる血行再建を受けた患者の割合は、心血管MRI群がFFR群よりも低かった(35.7%[162例]vs.45.0%[209例]、p=0.005)。 主要複合アウトカムの発生率は、心血管MRI群が3.6%(15/421例)、FFR群は3.7%(16/430例)であり(リスク差:-0.2ポイント、95%信頼区間[CI]:-2.7~2.4)、非劣性の閾値を満たした。無MACE生存(HR:0.96、95%CI:0.47~1.94、p=0.91)は両群間に差はなかった。 全死因死亡(HR:2.05、95%CI:0.38~11.21)、心臓死(1.03、0.15~7.29)、非致死的心筋梗塞(0.84、0.35~2.02)、標的血管の血行再建(0.34、0.09~1.26)には、心血管MRI群とFFR群の間に有意な差はみられなかった。 また、12ヵ月時に、狭心症の発作を認めなかった患者の割合にも、両群間で有意な差はなかった(心血管MRI群49.2% vs.FFR群43.8%、p=0.21)。 重篤な有害事象の発現は、心血管MRI群とFFR群でほぼ同等だった。 著者は、「検査前に予測された冠動脈疾患の確率は75%であるが、侵襲的冠動脈造影の施行率はFFR群が96.8%であったのに対し、心血管MRI群は48.2%だった」とし、「冠動脈疾患疑い例のマネジメントに関する現行のNICEガイドラインでは、診断戦略と治療戦略を合わせた方法のエビデンスがないため、これらは別個に扱われているが、本試験の知見はこの知識の乖離を埋めるものである」と指摘している。

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冠動脈疾患疑い患者にCTAが有用な臨床的指標は?/BMJ

 安定胸痛があり冠動脈疾患が疑われる患者に対して、冠動脈CT血管造影(冠動脈CTA)による恩恵があるのは、臨床的な検査前確率が7~67%の範囲の患者であることが明らかにされた。また、冠動脈CTAの診断精度は、経験的に64列超の検出器を用いたほうが感度・特異度ともに高いことや、狭心症がある患者でも低下しないこと、男性で高く、高齢者では低いことなども示された。ドイツ・シャリテ大学病院ベルリンのRobert Haase氏らが、65試験についてメタ解析を行い明らかにしたもので、BMJ誌2019年6月12日号で発表した。冠動脈CTAは、正確かつ非侵襲的に閉塞性冠動脈疾患(CAD)をルールアウトすることができる。しかし英国NICEや欧州心臓病学会の現行ガイドラインでは、典型的・非典型的狭心症のすべての患者についてのCTAは推奨されておらず、臨床的情報(性別、年齢、胸痛タイプなど)で推定されたCADの検査前確率が15~50%の患者にのみ実施されているという。CTAの閉塞性CADに関する診断精度を検証 研究グループは、冠動脈CTAと冠動脈造影を比較した診断精度に関する前向き試験について、メタ解析を行った。Medline、Embase、Web of Scienceを用いて公表された試験結果を、また未発表の試験結果については試験を行った研究者に直接連絡を取って確認した。50%以上の内径縮小を閉塞性CADのカットオフ値としており、また全被験者がCADの疑いで冠動脈造影の適応があり、冠動脈CTAと冠動脈造影を両方実施していた試験を解析対象とした。 主要アウトカムは、CTAの閉塞性CADに関する臨床的事前検査としての陽性・陰性適中率で、一般化線形混合モデルで分析した(非CTA診断結果を包含および除外して算出)。 非治療/治療閾値モデルを用いて、CTAの診断精度が高くその実施が適切である検査前確率の範囲を導いた。同モデルでは、CTA陰性の際の検査後確率は15%未満(陰性適中率85%以上)、CTA陽性の際の検査後確率は50%超を閾値とした。64列超検出器のCTA装置で精度が向上 65の前向き診断精度試験(被験者5,332例)のデータを包含して解析した。 臨床的な検査前確率が7~67%の範囲で、非治療/治療閾値モデルの治療閾値50%超、非治療閾値15%未満となった。具体的には検査前確率が7%では、CTAの陽性適中率は50.9%(95%信頼区間[CI]:43.3~57.7)で、陰性適中率は97.8%(同:96.4~98.7)だった。検査前確率が67%では、CTAの陽性適中率は82.7%(同:78.3~86.2)、陰性適中率は85.0%(同:80.2~88.9)だった。 被験者全体ではCTAの感度は95.2%(95%CI:92.6~96.9)、特異度は79.2%(同:74.9~82.9)だった。 また、64列超検出器のCTA装置を用いたほうが、同64列未満の場合に比べ、経験的感度(93.4% vs.86.5%、p=0.002)、特異度(84.4% vs.72.6%、p<0.001)がともに高かった。 CTAのROC曲線下面積(AUC)は0.897[0.889~0.906]であり、CTAの診断能は、男性よりも女性でわずかに低かった(AUC:0.874[0.858~0.890] vs.0.907[0.897~0.916]、p<0.001)。また、75歳超になるとわずかに低くなった(0.864[0.834~0.894]、全年齢群と比較したp=0.018)。狭心症のタイプ(典型的狭心症0.895[0.873~0.917]、非典型的狭心症0.898[0.884~0.913]、非狭心症胸痛0.884[0.870~0.899]、その他の胸部不快感0.915[0.897~0.934])による有意な影響はみられなかった。

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第24回 心肺停止の症例から考えるバイタルサイン2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

最終回は「心肺停止」の症例です。文字通り、心臓と肺の機能が停止した(心停止・呼吸停止)状態です。病院の救急外来には心肺停止の患者さんが搬送されてくることがありますが、搬送される前の状態を思い浮かべてください。もしも人が倒れたその時、その場所にあなたが居合わせたら...。もしもその人があなたの大切な人だったら...。そんなことを想像しながら読んでみてくださいね。患者さんIの場合◎経過──2胸骨圧迫について以前は心臓マッサージと言われていましたので、この呼び方のほうが馴染みがあるかもしれませんが、最近は胸骨圧迫と呼ばれ、一次救命処置では最も大切な手技です。まず、胸の中央に手を置きます〈図3-1〉。そこには胸骨と呼ばれる骨がありますが、圧迫する部位はその胸骨の下半分です。胸骨を圧迫するので胸骨圧迫と言われます。図3-2のような格好で強く・速く・絶え間なく胸を押します。強く:胸が約5cm沈み込むまで強く圧迫しますが、6cmを超えないようにします速く:1分間に100〜120回のテンポで行います絶え間なく:胸骨圧迫を中断する(心肺蘇生を中断する)時間は最小限にしますそしてもう1つのポイントは、圧迫と圧迫の間には胸に力を入れないようにして、胸を完全に元の位置に戻すようにします。「肋骨が折れてしまうことはありませんか?」とよく聞かれますが、骨折することをおそれて不十分な胸骨圧迫となってしまっては、その人を救うことはできません。◎経過──3店員さんは一所懸命に胸骨圧迫を続けています。「あ、替わります」 店員さんが少し疲れてきている様子でしたので、あなたは声をかけました。「ありがとうございます。お願いします」(講習会の時と同じように...、落ち着いて、落ち着いて...、人工呼吸はどうしよう...、とりあえず胸骨圧迫をしっかり...)人工呼吸について本来の心肺蘇生は、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で行います〈図2〉が、人工呼吸ができないか、ためらわれる場合には胸骨圧迫のみの心肺蘇生でも構いません。医療従事者による心肺蘇生でも、人工呼吸ができない状況では胸骨圧迫のみの心肺蘇生でも悪くないとされます。心肺蘇生では人工呼吸(マウス・ツー・マウス)のイメージが強いという人もいますが、心肺蘇生の中で最も大切な手技は胸骨圧迫ということを知っておいてください。◎経過──4息を切らして別の店員さんが戻ってきました。 「AED持ってきました! これ...、使ったことありますか?」そこに居合わせた人たちは顔を見合わせました。3つの心停止とAED心肺停止と判断されたときの心電図波形は大きく3種類に分かれます。「心室細動や(無脈性)心室頻拍」といった、致死性心室性不整脈心臓の電気的活動があるものの脈が触れない場合は、「無脈性電気活動(PEA)」心臓の電気的活動そのものがなくなっている場合は「心静止」心室細動や心室頻拍では電気ショック(電気的除細動)が有効ですが、PEAや心静止には電気的除細動は無効です。そのため、病院内で患者さんが急変したとき、まず初めに心電図モニターを装着します。AEDは、装着すると自動的に心電図波形を解析し除細動が必要かどうかを判断し、除細動が必要なときにはショックボタンを押すことによって除細動を行う機器です。AEDの使い方AEDは蓋を開けると、次にすべきことを音声で教えてくれます〈写真1〉。その通りに行えば誰にでもできます。ですが、いきなり本物を使用するのは勇気がいりますね。練習用の機器がありますから、ぜひ講習会で習ってみてはいかがでしょうか。「私、講習会で習ったんです。やってみます...!」 あなたはAEDをお母さんの傍らに置き、AEDの蓋を開けました。『パッドを図のように胸に貼ってください』パッドにはイラストで貼り付ける位置が描かれています。パッドをそのように貼り付けました〈写真2〉。『心電図を解析します。患者に触れないでください』 胸骨圧迫を中止し、お母さんから離れます。患者に触れていたりしていると、ノイズのために適切な解析ができないことは、先日の講習会で教わりました。『ショックが必要です。患者に触れないでください』「...!(講習会で習った通りにやろう)」講習会では「本番のように(心肺蘇生の)練習してください。もし本当に心肺蘇生をすることになったら、この練習のようにやってください」と言われたことを思い出しました。「皆さん、ショックボタンを押しますから触れないでください!」あなたは周りの人の安全を確認しました。「ショックボタン押します!」◎経過──5ショックボタンを押し終わると、あの店員さんがすぐに胸骨圧迫を再開しました。「ぼくも、ちょうど先日、講習会を受けてきたところなんです」「え?」 「お店の研修のひとつで...」そのときお母さんが 「うぅぅぅん」 とうなって眉をしかめました。「救急車が来ました!」 まもなく救急隊員が入ってきて、あなたの顔を見て言いました。「ありがとうございました。替わりますね」◎経過──6救急隊が到着したときにはお母さんは脈が触れるようになっており、救急車内では少し意識が戻ってきた様子でした。搬送先の救命救急センターでは急性冠症候群※と診断され、まもなくカテーテル治療が行われました。お母さんが無事に退院したのは約3週間後のことです。※急激な血圧上昇・心拍数増加などによる血行動態の変化や冠攣縮などによる冠動脈血管内膜のプラークの破裂、血栓形成により冠動脈の内腔が閉塞、狭窄し引き起される症候群。急性心筋梗塞、不安定狭心症、心原性突然死が含まれる。エピローグ「ここのパスタ、リベンジね」「そうね、この前はありがとう。血圧と糖尿病の薬に、心臓の薬まで加わっちゃったわ。でも、たまには外食もいいわね」ミートソースとカルボナーラを注文しようとすると、半年前のあの店員さんが遠くに見えました。さいごに心肺停止は呼吸や循環などが破綻してしまっている状態といえます。今まで、バイタルサインに着目していろいろな患者さんを一緒に学んできましたが、バイタルサインの異常を呈する患者さんを放っておくと、いずれ心肺停止の状態に陥ってしまうかもしれません。心肺停止は非常に致死率の高い状態です。そうならないためにも、バイタルサインの異常を素早く察知できるようになりましょう。

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