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潰瘍性大腸炎の症状を抑えるグセルクマブ皮下注への期待/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、潰瘍性大腸炎(UC)の治療薬グセルクマブ(商品名:トレムフィア)の皮下注製剤の製造販売承認事項一部変更の承認取得に伴い、都内でメディアセミナーを開催した。グセルクマブは、IL-23のp19サブユニットに結合してIL-23を阻害する医薬品として初めて承認された完全ヒト型モノクローナル抗体であり、わが国では尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬などの治療薬としてすでに承認を得ている。皮下注製剤は、中等症~重症のUCの寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)の治療薬として、2026年2月19日に製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。 セミナーでは、UCの病態、診療、グセルクマブの臨床試験結果などの解説のほか、UC患者の声などが語られた。患者にも医療者にもメリットがあるグセルクマブ皮下注製剤 「潰瘍性大腸炎における課題とトレムフィア皮下注製剤による導入療法に期待すること」をテーマに久松 理一氏(杏林大学医学部消化器内科学 教授/炎症性腸疾患包括医療センター長)が、UCの疾患概要、診療などの講演を行った。 炎症性腸疾患(IBD)とは消化管に炎症が起こる疾患の総称であり、原因不明のものを「非特異性炎症性腸疾患」といい、UCやクローン病がある。UCでは、主に大腸に炎症が起こり、重症化すると大腸全体に及ぶ。主な症状としては、下痢、血便、腹痛、便意の切迫感などのほか、重症になると体重減少や発熱、貧血などもある。また、病勢としては、病状が落ち着く「寛解」と病状が悪化する「再燃」を繰り返し、寛解状態を維持するために継続的な治療と定期的な診療が必要となる。 わが国では患者数は年々増加しており、UCでは約31万人の患者数が推定されている(参考までにクローン病は約9.6万人と推定される)。発症年齢は、男性で20~24歳、女性で25~29歳にピークがあり、IBD全体では30~40代の働き盛りの世代に多く発症する。この年代はまさに就業中枢の世代であり、かつ、人生ではさまざまなイベントが発生する時期であり、患者のQOLが阻害されることになる。 UCの治療としては、5-ASA製剤をベースに重症度に応じて、ステロイド、免疫調節薬、免疫抑制薬などが使用されるほか、近年では抗TNF-α抗体薬、JAK阻害薬、抗α4β7インテグリン抗体製剤が登場し、中等症~重症のUCで使用されている。今回、皮下注製剤による導入療法の適応が追加されたグセルクマブは、中等症~重症の寛解導入療法の治療薬として期待されている。 グセルクマブの臨床試験では、点滴静注での導入によるプラセボとの二重盲検ランダム化比較試験である「QUASAR試験」と皮下注での導入によるプラセボとの二重盲検ランダム化比較試験である「ASTRO試験」が実施された。 主要評価項目である12週時点での臨床的寛解について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が22.6%に対し、プラセボ群(n=280)は7.9%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が27.6%に対し、プラセボ群(n=139)は6.5%だった。12週時点での臨床的改善について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が61.5%に対し、プラセボ群(n=280)は27.9%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が65.6%に対し、プラセボ群(n=139)は34.5%だった。12週時点での内視鏡的改善(MES 0~1)について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が26.8%に対し、プラセボ群(n=280)は11.1%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が37.3%に対し、プラセボ群(n=139)は12.9%だった。両試験の結果から皮下注であっても点滴静注と同程度の寛解の効果があることが示唆された。また、安全性では、両試験ともに死亡に至った有害事象はなく、発疹、頭痛のほかASTRO試験では注射部位の紅斑などが報告されている。 グセルクマブの投与スケジュールとして、既存治療で効果不十分な中等症~重症のUCで導入療法から使用できるだけでなく、維持療法では導入療法終了4週後以降に1回200mgを4週間隔で皮下投与することもできる。 今後、グセルクマブが使えることで、患者では病院での滞在時間の短縮につながり、医師では導入から維持療法へのスムーズな移行ができる。そして、医療従事者では薬剤調整・ルート確保などの業務削減につながることが期待されている。 まとめとして久松氏は「グセルクマブは皮下注導入で適応追加となり、点滴静注と一貫性ある導入効果が証明されたことで患者の在院時間の短縮、施設の処置時間の短縮につながる」と述べ、講演を終えた。治療の選択肢が増えることは安心できる UC患者の声として一宮 亜美氏が、自身の疾患経験と生活上の課題や診療への思いなどを語った。一宮氏は、12歳のときにUCを発症し、いくつかの診療科を経て、小児科に入院したときにUCと確定診断された。中学生のころから生物学的製剤をスタートしたが、ステロイド治療では効果に抵抗性があったという。食生活では摂取制限もあり、摂取できない食品リストを作成し、とくに脂質の多いものやカレーなどの刺激の強いものは避けていると説明した。学生時代は、周囲には「おなかの病気」とだけ伝えており、社会人になってからはとくに伝えていないという。医療機関への受診は土曜日に行い、「医師には疑問があったら質問する」「普段から病状をメモして伝えるなどを行っている」と述べた。 最後に一宮氏は「治療の選択肢が増えることで安心できる。病状がコントロールできないときに、内科的治療の選択肢はあることがうれしい」と治療薬への期待を語った。

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『大型血管炎診療ガイドライン』改訂、治療のCQ推奨が新設/日本循環器学会

 大血管炎の高安動脈炎(TAK)や巨細胞性動脈炎(GCA)、そしてバージャー病に関する治療エビデンスや診断基準などをまとめた『2026年改訂版 大型血管炎診療ガイドライン』1,2)が8年ぶりに改訂された。第90回日本循環器学会学術集会(3月20~23日)会期中の3月20日に発刊され、本ガイドラインの研究班長を務めた中岡 良和氏(国立循環器病研究センター研究所副所長/血管生理学部長)が本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において、改訂点などを解説した。CHCC 2012における疾患分類と本ガイドラインで扱う疾患 血管炎は血管壁に炎症を認める疾患の総称で、多臓器を障害するため診療科横断的に多くの専門医の関与が必要とされる領域である。疾患分類は「CHCC 2012 血管炎の分類基準」に基づき、大型血管炎(TAKとGCA)、中型血管炎(結節性多発動脈炎[PAN]、川崎病)、小型血管炎(免疫複合体型小型血管炎、IGA血管炎ほか)3)とされる。一方で、バージャー病はこの分類には記載されていないが、「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究」4)の大型血管炎臨床分科会の調査対象であること、循環器医が関与する疾患であること、そして前版(2017年版)でも対象範囲としていたことから、本書でも大型血管炎の2疾患とともにバージャー病を対象疾患とした。ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨を設定 今回、本書で取り扱う大血管炎(TAK、GCA)の2疾患は、希少疾患であるもののエビデンス収集という難しい局面を乗り越え、治療レジメンに対する全9項目のクリニカルクエスチョン(CQ)とそれに対する推奨がPart1(診療ガイドライン)の項で取り扱われている。TAKとGCAはいずれもステロイド(グルココルチコイド:GC)により一時的な寛解に至るものの、減量過程で半数以上に再燃がみられるため、GC治療抵抗性症例の治療選択肢を明らかにするため、ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨が設定された。中岡氏は、「システマティック・レビュー(SR)チームがTAKとGCAのRCT論文をMindsのGRADEシステムに準拠した最新研究などのSR結果をガイドライン発刊に先駆けて論文報告した5)。そして、近年ではステロイド治療に加えて、IL-6阻害薬トシリズマブなどが汎用されるようになったため、エビデンスの確実性や益と害について各CQと推奨で言及している」と説明した。 なお、中型血管炎であるPANも循環器医が臨床現場で遭遇する可能性があること、『ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023』での記載がないことを踏まえ、本書第6章で取り上げている。また、バージャー病はPart2(各疾患の基礎と臨床)でのみの取り扱いであることには注意したい。 次に、本書を手に取るうえで理解しておきたい各疾患の特徴を以下のように示す。―――――――――――――――――――【高安動脈炎(TAK)】・病名:高安動脈炎に統一(大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などと呼ばれているため)・患者数:4,642例(2022年度難病受給者証所持者数)・男女比:1対8~9と女性が圧倒的に多い・発症年齢:女性は20歳前後にピーク、男性ははっきりしたピークがない・年齢分布:50代が多い・患者背景:HLA-B52陽性患者が多く、陽性者はグルココルチコイド治療抵抗性症例が多い・合併症:潰瘍性大腸炎罹患者が8%前後存在・地域差:アジアに多く、欧米に少ない【巨細胞性動脈炎(GCA)】・病名:以前は側頭動脈炎、Horton病などが使用されていた・患者数:2,850例(2023年度医療費受給者証所持者数)・男女比:1対2~3で女性がやや多い・年齢分布:50歳以上にみられ、70~80代でピーク・合併症:リウマチ性多発筋痛症が約30~40%にみられる・地域差:欧米に多く、アジアに少ない【バージャー病】・病名:閉塞性血栓血管炎とも呼ばれる・患者数:2,259例(2019年度特定医療費[難病]受給者証所持者数)で、近年減少傾向・男女比:若年発症でヘビースモーカーの男性に好発する・原因:作用機序などは不明だが、喫煙との関連が推察される―――――――――――――――――――TAKでのトシリズマブ併用、GCAの大動脈瘤リスク 上記を踏まえ、TAKの治療について、「治療アルゴリズムでは、まず疾患活動性を評価したうえでステロイド治療を開始する。欧米のガイドラインでは初期から免疫抑制薬を併用することが推奨されているが、本書CQ1(TAKの治療ではどのようなレジメンが有用か?)では、GCの早期減量が必要な症例に対し、トシリズマブ併用を選択肢とする推奨を示した」と強調した。 続いてGCAについて、「全身症状に加え、血管分布に応じて症状が出現する。外頸動脈の領域では血管狭窄に伴い、側頭部の痛み(顎跛行、舌跛行など)がみられる。内頚動脈の領域では失明や脳梗塞の原因になるほか、近年では大動脈瘤などを来すため、循環器領域でも注目されている」と指摘。診断基準は、現状、国内では1990年ACR分類基準が利用されているが、2022年ACR/EULARベースに日本語版の策定を進めているため、従来の1990年ACR分類基準と欧米で用いられている2022年ACR/EULAR分類基準が併記されている。さらに、トシリズマブの適応について「(確定診断ならびに疾患活動性の評価後に)トシリズマブを併用することでステロイドが減量できる点は50歳以上の患者でステロイドによる副作用を回避できるメリットがあるため、治療アルゴリズムにおいて、矢印を太字で示した。なお、昨年のNEJM誌において有用性が示されたJAK阻害薬ウパダシチニブは今回のアルゴリズムには反映されておらず、改めて検討される予定となっている」と説明した。 バージャー病については、「早期診断のため、診断基準の改訂を望む意見が多くあったため、2024年に一度改訂を行っている。本疾患として相違ない症状を呈し、血管画像検査所見が本疾患の特徴と合致し、ほかの疾患と鑑別できれば、診断可能」と解説した。「妊娠・出産」に関するコラムを新設 本書はわが国の大型血管炎の診療レベルを標準化し、日本全国どこにおいても患者が同じような治療を受けられるようにすること、患者の生活の質(QOL)と予後を改善させることを目的とし、大型血管炎の診療に関わる医師、医療専門職および大型血管炎の患者を利用者と想定して作成された。 最後に、今回新たに盛り込まれたコラムのうちTAK患者の妊娠・出産の項目を例に挙げ、「TAKの発症は10~20代の若年女性に多く見られるため、患者に妊娠をすること自体がリスクを伴う現実を伝えることも必要と判断されたため、コラムで妊娠・出産にも触れている。TAKを有する患者では妊娠が禁忌とされていたが、妊娠前に炎症をコントロールすることで妊娠・出産が可能であることや管理の軸について記した」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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辛い食品は炎症性腸疾患リスクを上げるのか

 潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)は世界的に有病率が増加しており、その原因として食事の関与が指摘されている。今回、サウジアラビア・保健省のAnas Almofarreh氏らが、辛い食品の毎日の摂取とIBDリスクとの関連を検討したところ、クローン病とは関連を示したが、潰瘍性大腸炎との関連は認められなかった。Nutrition誌2026年5月号に掲載。 本研究は症例対照研究で、サウジアラビアの民間クリニックにおける潰瘍性大腸炎患者157例、クローン病患者226例、対照群390例を対象とした。IBDの診断には、臨床検査、生検を伴う内視鏡検査、画像検査を用いた。辛い食品は、唐辛子やホットソースを使用した料理と定義し、自己記入式質問票を用いて評価した。辛い食品の摂取とIBDリスクとの関連を評価するために多変量ロジスティック回帰分析を用い、調整オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・辛い食品の毎日の摂取は、クローン病の発症リスク上昇と有意に関連していた(OR:1.61、95%CI:1.11~2.33)が、潰瘍性大腸炎とは関連していなかった(OR:1.03、95%CI:0.67~1.60)。・辛い食品とIBDの病変範囲や重症度との間には有意な関連が認められなかった。

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希少疾病の入院患者はパーキンソン病が最も多い/MDV

 2月最終日の「世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day:RDD)」を前に、メディカルデータビジョン(MDV)は、希少疾病・難病の入院患者推移を発表した。 データは、厚生労働省の「指定難病病名及び臨床調査個人票一覧表」から抽出し、2023年4月以降の同社のDPCデータを用い、入院患者数の年度別推移を分析したものである(対象期間:2023年4月~2025年9月、445施設)。 わが国の希少疾病を含む指定難病は、「原因不明、治療法の未確立、希少性および長期療養性を要件として厚生労働大臣が指定する疾病」であり、2025年4月時点で348疾病が対象となっている。 現在、課題として確定診断までの時間の長さや治療薬の未開発、臨床治験患者などの獲得の困難さなどが指摘されている。新しい治療薬は受療行動に変化をもたらす1)DPCデータに基づく指定難病の入院患者数ランキング(上位3疾患) 1位:パーキンソン病(1万49例) 2位:潰瘍性大腸炎(3,635例) 3位:全身性エリテマトーデス(SLE)(2,662例) 傾向として上位10疾患すべてで実患者数が増加傾向にあり、上位10疾患のうち4疾患を「免疫系疾患」が占め、当該領域の入院患者数増加が目立った。 経年の推移では、後縦靱帯骨化症や顕微鏡的多発血管炎(MPA)など、2023年度から2024年度にかけて入院患者数が約6~14%増加している疾患が複数確認でき、DPC病院における難病診療の受け入れは着実に拡大していた。2)神経・筋疾患領域の入院患者数ランキング(上位3疾患) 1位:パーキンソン病(1万49例) 2位:重症筋無力症(MG)(1,462例) 3位:筋萎縮側索硬化症(ALS)(1,138例) 神経・筋疾患領域の年度別の推移では、慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチーが約17%増(205→240例)、大脳皮質基底核変性症が約18%増(136→161例)と大幅な増加となった。3)免疫系疾患領域の入院患者数ランキング(上位3疾患) 1位:SLE(2,662例) 2位:皮膚筋炎/多発性筋炎(1,611例) 3位:MPA(1,541例) 2023年度と24年度を比較すると、MPA(690→792例)や好酸球性副鼻腔炎(264→348例)において、前年度比10~30%程度の増加が確認された。診断技術の向上や新規治療薬の浸透が、DPCデータ上の患者数増に寄与している可能性がある。 2023~24年度に承認された薬剤の対象疾患では、ALS(1,138例)、免疫性血小板減少症(1,250例)やMG(1,462例)の入院患者数が突出して多い。その一方で、遠位型ミオパチー(7例)やレノックス・ガストー症候群(20例)などは入院患者数が極めて少数であった。また、2024年度に新薬が承認された肺動脈性肺高血圧症が、前年度比約39%増(163→227例)と急増していた。これは新薬の登場が専門施設への受診を後押しした結果と考えられ、新薬承認が患者の受療行動に変化を及ぼしたと考えられる。

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コロナ禍で新規診断が増えた疾患・減った疾患/BMJ

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark D. Russell氏らによる、OpenSAFELY-TPPを用いたコホート研究の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、うつ病、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、骨粗鬆症の新規診断は予測値を下回ったのに対し、慢性腎臓病は2022年以降に診断数が急増し、サブグループ解析ではとくに認知症に関して民族および社会経済的状況により新規診断数の回復パターンに差があることが示された。著者は、「本研究は、日常診療で収集される医療データを用いた疾病疫学のほぼリアルタイムのモニタリングの可能性を示すとともに、症例発見の改善や医療の不平等を検討するための戦略立案に寄与する」とまとめている。BMJ誌2026年1月21日号掲載の報告。イングランドの約3千万例対象、COVID-19パンデミック前後の慢性疾患の新規診断と有病率を解析 研究グループは、2016年4月1日~2024年11月30日に、OpenSAFELY-TPPプラットフォームにデータを提供している一般診療所に登録され、かつ診療所に対して直接の医療に関与しない組織への個人データの共有を希望しない旨の登録をしていない患者2,999万5,025例を対象として、19の慢性疾患について年齢・性別標準化発症(新規診断)率および有病率の経時推移を検討した。 19の慢性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、冠動脈心疾患、慢性腎臓病(ステージ3~5)、セリアック病、COPD、クローン病、認知症、うつ病、2型糖尿病、てんかん、心不全、多発性硬化症、骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛症、乾癬、関節リウマチ、脳卒中/一過性脳虚血発作、潰瘍性大腸炎。 COVID-19パンデミックが、これら慢性疾患の診断に与えた影響を評価する目的で、パンデミック前のパターンから予測された期待診断率に基づく季節変動自己回帰和分移動平均(seasonal autoregressive integrated moving average:SARIMA)モデルを用い、パンデミック発生後の予測診断率と実際の観察診断率の差を比較した。パンデミック初年度に新規診断が急減、4年後もうつ病などは減少したまま パンデミック発生後の新規診断率はパンデミック前と比較し、初年度(2020年3月~2021年2月)に19疾患のすべてで急減した。ただし、その後の回復傾向は疾患ごとに異なった。 2024年11月時点でも、いくつかの疾患では新規診断数が予測値を下回っており、とくにうつ病(予測より-73万4,800件[-27.7%]、95%予測区間[PI]:-76万6,400~-70万3,100)で減少幅が最も大きく、喘息(-15万2,900件[-16.4%]、95%PI:-16万8,300~-13万7,500)、COPD(-9万100件[-15.8%]、-9万8,900~-8万1,400)、乾癬(-5万4,700件[-17.1%]、-5万9,200~-5万100)、骨粗鬆症(-5万4,100件[-11.5%]、-6万1,100~-4万7,100)も大きく減少した。 一方、慢性腎臓病の診断数は、パンデミック初期に減少したものの、2022年以降はパンデミック前の水準を上回る増加を示した(予測より35万9,000件[34.8%、95%PI:33万3,500~38万4,500]増加)。 人種および社会経済的状況で層別化したサブグループ解析の結果、パンデミック初期の減少後、白人および社会経済的困窮度が低い地域では、認知症の診断率がパンデミック前の水準を上回って増加したが、他の人種および困窮度が高い地域では増加しなかった。

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すでに承認されている経口薬が1型糖尿病の進行を抑制

 関節リウマチや脱毛症などの自己免疫疾患の治療薬としてすでに承認されている経口薬であるバリシチニブが、1型糖尿病の進行抑制に役立つのではないかとする研究結果が、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 この報告は、セントビンセント医学研究所(オーストラリア)のMichaela Waibel氏らの研究によるもので、新たに1型糖尿病と診断された人がバリシチニブを連日服用すると、インスリン分泌が維持され血糖変動が安定したという。さらに、同薬の服用を中止した後は、インスリン分泌量が減少して血糖変動の安定性が失われ、糖尿病が進行し始めるという変化が見られたとのことだ。 Waibel氏は、「これは本当に素晴らしい前進だ。これまでの1型糖尿病の治療はインスリン療法に大きく依存していたが、その依存度を軽減し、患者が日常の治療から解放される時間を提供できる、初めての経口での疾患修飾療法と言える。さらにこの薬は、長期合併症のリスクを低下させる可能性もある」と話している。 1型糖尿病は、免疫系が膵臓のインスリン分泌細胞(β細胞)を誤って攻撃することで発症する。発症とともにインスリン分泌量が低下し、最終的には分泌が停止するため、患者は生涯にわたって、血糖値を管理するためインスリン療法を続ける必要がある。一方、バリシチニブは、免疫系を刺激する信号を抑制する作用があり、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、脱毛症などの自己免疫疾患の治療薬としてすでに承認されている。これらの理論的な背景を基に研究チームは、バリシチニブが1型糖尿病の診断後早期の患者のβ細胞を保護する可能性があるのではないかと考えた。 今回の研究には、過去100日以内に1型糖尿病と診断された10~30歳の91人が参加。無作為にバリシチニブ群またはプラセボ群に割り付けられ、48週間にわたり毎日服用した。その結果、バリシチニブ群では対照群に比べてβ細胞機能が維持され、血糖値の変動が少なく、インスリンの必要量も少なかった。さらに、48週が経過しバリシチニブの服用を中止すると、血糖コントロールは72~96週目にプラセボ群とほぼ同じレベルまで悪化した。また、バリシチニブ群の患者も最終的には、プラセボ群と同量のインスリンを必要とする状態となった。 これらの結果からWaibel氏は、「1型糖尿病患者のβ細胞機能を維持することが示された有望な薬剤はいくつかあるが、それらの中でバリシチニブは経口投与が可能という点で小児を含む多くの患者が使用しやすく、明らかに有効であるという点で際立っている」と解説。「この薬の効果が長年にわたって持続するか、また、より早期に治療を開始することで1型糖尿病の診断を回避または遅らせることができるかを判断するため、さらなる試験を継続することが正当化される」と述べている。さらに、「この薬の有効性が証明されれば、遺伝的に1型糖尿病のリスクがある人を特定し予防的介入を行うことで、1型糖尿病発症を抑止できるようになるかもしれない」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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9月26日 大腸を考える日【今日は何の日?】

【9月26日 大腸を考える日】〔由来〕9の数字が大腸の形と似ていることと、「腸内フロ(26)ーラ」と読む語呂合わせから、健康の鍵である大腸の役割や生息する腸内細菌叢のバランスを健全に保つための方法を広く知ってもらうことを目的に森永乳業が制定。関連コンテンツ中等症~重症の活動性クローン病、グセルクマブ導入・維持療法が有効/Lancetコーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は?PPI・NSAIDs・スタチン、顕微鏡的大腸炎を誘発するか?日本人大腸がんの半数に腸内細菌が関与か、50歳未満で顕著/国立がん研究センターほか大腸がん死亡率への効果、1回の大腸内視鏡検査vs.2年ごとの便潜血検査/Lancet

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手薄な科目はまず王道に忠実な解法を会得!【研修医ケンスケのM6カレンダー】第6回

手薄な科目はまず王道に忠実な解法を会得!さて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。この原稿を書いているただいまは2025年9月14日で、秋雨前線の影響で雨雲が散在する中、猛暑を感じる時間も徐々に少なくなってきました。 皆さまいかがお過ごしでしょうか。夏休み、1次マッチングが終わり、今年度もいよいよ後半戦です。卒業試験の1回目が終わった、という方もいらっしゃるかと思います。4月から連載させていただいているこの連載も折り返しですが、後半戦の闘い方について今回は重要な回です! 当時を懐かしみながら、あの時の自分へ何を話しかけるのか。皆さんの6年生としての1年間が少しでも良い思い出になる、そんなお力添えができるように頑張って参りますので、ぜひ応援のほどよろしくお願い申し上げます。9月にやること:現状把握と、仕上がっていない科目を着手せよ!(万博は10月まで!行きましたか?)受験レースもいよいよ後半戦。前半の勢いのままにという方も、もう一度ここからという方も兜の緒を締めるそんな9月です。先月は「模擬試験を軸に、学習計画を立て、修正する」をテーマにしました。メックやテコム模試を受験した皆さま大変お疲れ様でした。結果はともあれ、皆さんがまず着手すべきは現状把握です。模擬試験は目標を持って受験してほしいと綴りましたが、対策に対してどれほどできたのか、何が現時点で足りている、足りていないのか。成績表をよく分析しましょう。自身の思考プロセスを振り返って、何が原因で誤答したのかもきちんと分析すべきです。例年の受験生のパターンからするとメジャー科がある程度完成している方が多いと思います。判断力が問われる、得点差がつくような問題はさて置き、基本的なメジャー科の問題ではもう差がほぼつかなくなってきているのではないでしょうか。一方で産婦小児、マイナー科、公衆衛生を後回しにしている受験生が多いはずです。もちろんメジャー科を優先する、という戦略を取っているので今できないことは許容しましょう。次の試験までに仕上げるにはどのようなペース配分で行くか今日から戦略を練ればいい話です。先月は公衆衛生対策について触れたので、今月はその続きとして産婦人科・小児科・マイナー科の攻略について述べていきます。産婦人科攻略産婦人科ですが、産科領域と婦人科領域があるので実質2科目のように感じ、専門用語や概念に苦手意識を感じる受験生は少なくありません。かく言う私もそのうちの1人でした。個人的な産婦人科攻略のおすすめはまずは下記分野から取り組むことです。産科正常分娩、妊娠高血圧症候群婦人科子宮頸癌1科目当たりの範囲が広いのでどこから着手したら良いかが難しいところですが、知識がゼロではない(=CBT突破しているなら大丈夫)ことを前提に着手するなら頻出かつ得点差が付く上記の3つが思い浮かびます。そして攻略にはちょっとしたコツがあります。それは該当するビデオ講義と臨床問題の解説を読み込むことです。CBTや卒業試験、実習で履修していない、なんてことはないはずです。「一度学習したことがあるのに得点できない」この状況を手際よく打破するには解法の王道をマスターすることが先決です。のちに紹介する小児科やマイナー科でも同様ですが、頻出項目は問題自体も例年練り上げられ、お決まりの出題パターンやポイントがあります。試験で得点することが目的ではありますが、そのポイントを押さえることが疾患や概念の理解に結びつくキッカケになり得ます。ここは1つ、我流を貫かず、まずはプロの解法に忠実であってほしいと思います。ビデオ講義や解説から、何がキーワード・キーフレーズなのか、どのような思考プロセスが必要で、鑑別は何か。王道に忠実な解法を会得しましょう。枝葉の知識は後からついてきます。小児科(大阪万博にて。渡航困難な国を気軽に体験できるのがいいですよね!)小児科も同様に頻出項目をマスターしましょう。成長と発達、川崎病、新生児黄疸関係、予防接種…など「など」で逃げましたが、小児科は産婦人科以上に満遍なく出題される傾向に感じます。さて、小児科の臨床問題を解く時にキーワードがあるので紹介します。それは「ぐったり」「経口摂取不良」です。近年の臨床問題では診断まで辿り着かなくとも何をすべきか判断力を問うものが多いです。実臨床もそうですが、この2つのキーワードがあるとそれだけでアラートレベルを上げましょう。マイナー科攻略1:精神科公衆衛生、産婦人科、小児科、の次はマイナー科目です。本題とは逸れますが、私は「メジャー」「マイナー」の概念はあまり好きでないです。試験範囲の都合に伴う呼称に過ぎず、きちんとした学問・診療科として学習に励んで欲しいと願います。眼科や整形外科、泌尿器科などが該当するマイナー科ですが、試験対策において手薄であるなら精神科および皮膚科から着手することをオススメします。他の科目と比べて、出題範囲が比較的多く、かつ得点差がつきやすい2科目だからです。とくに精神科はコストパフォーマンスがいいです。精神科は、臨床知識はもちろん、公衆衛生のブラッシュアップにも役立ちます(精神科入院や都道府県が担当する精神保健についてなど)。臨床知識ではまず下記から学ぶのがオススメです。精神科特有の症候統合失調症四字熟語で表現される精神科特有の症候は精神科疾患の特徴を学び直すのに便利で、かつそれらの違いが直接試験問題になります。学習する際は辞書的な解説はもちろんですが、実際の会話例も併せて理解するようにしてください。また精神科疾患の代表といえば統合失調症です。「統合失調症を示唆する所見は何か」は鉄板ですが、近年では抗精神病薬の副作用についても見かける頻度が多くなりました。専門用語が多く、1つ1つを的確に把握する必要があります。マイナー科攻略2:皮膚科さて最後は皮膚科です。他の科目と比してとくに皮膚科は内科的背景を見落とさないことが重要です。皮膚科も精神科と同様に専門用語が多く、特有の疾患が多いですが、その背景に内科で頻出疾患が隠れていることがあります(壊疽性膿皮症に潰瘍性大腸炎が背景など)。試験でも皮膚科と内科のそれぞれの観点から出題されることが多々あります。皮膚科ではとくに「粘膜疹」「掻痒感」がある疾患に敏感になりましょう。一般問題・臨床問題ともに頻出で、かつ得点差がつきます。最後に(大阪万博の大屋根リングから。花火はみんなの顔が上がりますよね。)いかがだったでしょうか。後半戦に向けて何から着手すべきか路頭に迷う受験生は意外と珍しくありません。最も大切なことは現状を把握して、試験範囲を見直すことなのです。今回は恐らく多くの受験生に当てはまるであろうパターンとして、対策すべき科目とそのコツを述べました。さて、最後に1つ。今回学び直した知識はぜひグループ学習で共有してください。私だけ知らなかった、なんて恥ずかしがることはありません。あなたが共有してくれた知識が、本番でふとみんなを助けることになるかもしれませんから。

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中等症以上の潰瘍性大腸炎へ新たな経口治療薬が登場/ファイザー

 ファイザーは、2025年9月12日に中等症~重症の潰瘍性大腸炎に対するスフィンゴシン1-リン酸受容体(S1P1,4,5)調節薬エトラシモド(商品名:ベルスピティ)を発売した。 潰瘍性大腸炎は、大腸におけるびまん性および連続性の粘膜炎症性病変を特徴とし、寛解と再燃を繰り返す慢性炎症性腸疾患で、主な症状として粘血便、下痢、腹部不快感、腹痛などがあり、倦怠感や貧血なども現れる。 潰瘍性大腸炎の治療薬は近年増えているが、2次無効で再燃を繰り返す患者がいる。 エトラシモドは、S1P1,4,5に対して選択的に活性を示すよう設計されたS1P受容体調節薬であり、潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)に対して1日1回経口投与する。本剤は、潰瘍性大腸炎に対する効能・効果で、2023年10月の米国での承認以降、欧州連合、英国、カナダ、オーストラリアなど38ヵ国と地域で承認されている。 中等症~重症の活動期にある潰瘍性大腸炎患者を対象としたELEVATE UC 12試験で12週間投与を完了した日本人患者を対象に、ELEVATE UC 12試験と同じ投与群に割り付け、エトラシモド2mgまたはプラセボを1日1回、40週間投与し、有効性および安全性を評価した国内第III相ELEVATE UC 40 Japan試験では、主要評価項目である40週間(ELEVATE UC 12試験での投与期間を含めると52週間)治療後の臨床的寛解率で、プラセボに対して高い寛解率を示し、安全性プロファイルも良好だった。【エトラシモド製品概要】一般名:エトラシモド販売名:ベルスピティ効能または効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法および用量:通常、成人にはエトラシモドとして2mgを1日1回経口投与する。用法および用量に関連する注意:感染症のリスクが増大する恐れがあるため、本剤と免疫抑制剤(タクロリムス、アザチオプリンなど)、生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ阻害薬などとの併用を避けること。本剤とこれらの薬剤を併用した臨床試験は実施していない。本剤の投与開始後12週時点で治療反応が得られない場合は、他の治療への切り替えを考慮すること。薬価:4792.8円/錠製造販売承認取得日:2025年6月24日薬価収載日:2025年8月14日発売日:2025年9月12日製造販売元:ファイザー

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クローン病へのグセルクマブの静脈内導入療法と皮下維持療法の有効性と安全性:2つの第III相試験(GALAXI-2および3)の48週時点の結果(解説:上村 直実 氏)

 指定難病であるクローン病(CD)の患者数は日本でも次第に増加して、近々5万例に達する見込みであるが、潰瘍性大腸炎と違って軽症例は少なく中等症から重症例が多く、内科的治療により寛解不能で外科的手術が必要な患者も多いのが現状である。完全治癒が見込めないCDに対する治療の基本は、病気の活動性のコントロールにより寛解状態を維持し、さらに日常生活に影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症を予防することにあるが、最近は内視鏡的な粘膜治癒を目的とした治療方針が必須となっている。粘膜治癒を目的とした抗TNF療法が使用されるケースが増えているが、抗TNF療法の無効例や効果が減弱してくる患者、副作用により治療中断を余儀なくされる症例が少なくなく、中等症から重症例に対しては、インターロイキン(IL)阻害薬や抗インテグリン抗体薬などの生物学的製剤が使用されることが多くなっている。 今回、中等症~重症の活動期CDの寛解導入および寛解維持療法における新たなIL阻害薬であるグセルクマブ(商品名:トレムフィア[ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体])の有用性と安全性を検証するためにプラセボおよび抗IL12/IL-23p40抗体ウステキヌマブ(同:ステラーラ)を対照とした二重盲検トリプルダミー試験が行われた結果、グセルクマブが寛解導入および維持療法においてプラセボおよびウステキヌマブと比べて有意な優越性を示したことが2025年7月のLancet誌に掲載された。 本研究の特徴は、プラセボのみでなく実薬を対照とした点と寛解導入試験開始時の割り付けのままで維持療法終了時まで一貫して評価するtreat-through designを採用している点である。すなわち、寛解導入試験の開始時に2用量のグセルクマブとプラセボおよびウステキヌマブの4群に無作為割り付けをして、治療開始12週時点での臨床的奏効率を比較した後、そのまま同じ薬剤の投与を継続して40週時点での臨床的有効率および内視鏡的奏効率を比較検討した方法である。この研究方法は、潰瘍性大腸炎に対する寛解導入および維持療法におけるエトラシモドの有用性を示した研究(CLEAR!ジャーナル四天王「潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるetrasimodの有用性」)や活動性クローン病に対する抗サイトカイン抗体ミリキズマブの有効性と安全性(CLEAR!ジャーナル四天王「活動性クローン病に対する抗サイトカイン抗体ミリキズマブの有効性と安全性」)などで使用された研究デザインであり、今後、標準的な試験方法となる可能性が高い。 実薬同士の比較試験については、昨年報告されたCDに対するリサンキズマブ(商品名:スキリージ)とウステキヌマブの直接比較試験(CLEAR!ジャーナル四天王「クローン病に対するリサンキズマブとウステキヌマブの直接比較」)に引き続くものであるが、グセルクマブとウステキヌマブはわが国でCDに対する保険適用を有している薬剤であり、今後、このような実薬同士の比較試験が公表されると臨床現場で使用する際に有益な情報となると思われる。

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固定用量の潰瘍性大腸炎治療薬「ベルスピティ錠2mg」【最新!DI情報】第44回

固定用量の潰瘍性大腸炎治療薬「ベルスピティ錠2mg」今回は、スフィンゴシン 1-リン酸受容体(S1P1,4,5)調節薬「エトラシモドL-アルギニン(商品名:ベルスピティ錠2mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、1日1回の固定用量での経口投与が可能な中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療薬であり、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2025年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはエトラシモドとして2mgを1日1回経口投与します。<安全性>重大な副作用として、黄斑浮腫(0.1%)、感染症(0.9%)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、リンパ球数減少(5.8%、28.0%)注)、リンパ球減少症(7.8%、10.8%)注)、肝機能障害(0.7%)、徐脈性不整脈(徐脈:1.5%、房室ブロック:0.6%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)があります。その他の副作用として、浮動性めまい、頭痛、γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加(いずれも1%以上)、高コレステロール血症、傾眠、悪心、潰瘍性大腸炎、腹部膨満、嘔吐、ALT増加、肝酵素上昇、AST増加(いずれも0.3~1%)、尿路感染、好中球減少症、高カリウム血症、食欲減退、頭部不快感、片頭痛、視力障害、耳鳴、高血圧、口内炎、寝汗、発熱、疲労、非心臓性胸痛、無力症、血中アルカリホスファターゼ増加、体重減少(いずれも0.3%未満)があります。注)発現頻度は以下の順:本剤2mgを投与された日本人を含む1,037例(6試験、最長投与期間163.0週、投与期間の中央値49.57週)、本剤2mgを投与された日本人93例(4試験、最長投与期間203.0週、投与期間の中央値78.14週)<患者さんへの指導例>1.この薬は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に用いられる薬です。炎症部位に到達するリンパ球数が減少することで、潰瘍性大腸炎の症状を改善すると考えられています。2.これまで、他の薬物療法で適切な治療を行っても潰瘍性大腸炎の症状が残っている場合に使用されます。3.失神、浮動性めまい、息切れなどの症状が現れた場合は、ただちに医師に相談してください。とくにこの薬の使用を開始してから早い時期に注意が必要です。4.視覚異常(視野の中に見えない部分がある、物がゆがんで見える、視野の中心が暗くなる、色が見分けにくい)が現れた場合は、ただちに医師に相談してください。5.この薬の投与開始12週後までに効果が得られない場合は、他の治療に切り替えることがあります。6.妊婦または妊娠している可能性のある女性は服用できません。<ここがポイント!>潰瘍性大腸炎(UC)は、再燃と寛解を繰り返す慢性炎症性腸疾患です。病因は完全には解明されていませんが、腸管局所における異常な免疫応答、それに続くリンパ節から消化管内の炎症部位へのリンパ球の遊走が病態形成に深く関与していると考えられています。薬物治療には、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤やステロイドが用いられます。ステロイドに抵抗性を示す場合は、タクロリムス、生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬などが寛解導入のために用いられます。エトラシモドL-アルギニンは、S1P受容体のサブタイプ1、4、5(S1P1,4,5)に選択的に作用し、炎症部位へのリンパ球の遊走を減少させることで、腸の炎症を抑制します。S1P受容体調節薬としては、オザニモドが2024年12月に承認されましたが、中等度以上の肝障害に対する使用制限や初回投与時から用量を漸増する必要があるなどの注意点があります。これに対して、エトラシモドは肝機能による使用制限がなく、1日1回の固定用量で経口投与できるため、肝機能に異常がある患者や初期の用量調節が困難な患者にとって、より使用しやすい選択肢となる可能性があります。中等症~重症の活動期にあるUC患者に対する寛解導入試験のAPD334-302/ELEVATE UC12試験(国際共同第III相試験)において、12週時(導入期)の臨床的寛解率は、プラセボ群の15.2%に対し、本剤2mg/日群は24.8%であり、本剤2mg/日群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p=0.026、Mantel-Haenszel法による層別因子)。

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コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は?

 コーヒーは現在世界で最も広く消費されている飲料の1つであり、米国では成人の約64%が毎日コーヒーを飲み、1日当たり約5億1,700万杯のコーヒーが消費されているという。コーヒーに含まれるカフェインが消化器症状に与える影響は、世界中で継続的に議論されてきた。カフェイン摂取と排便習慣、および炎症性腸疾患(IBD)との関連性を調査した中国医学科学院(北京)のXiaoxian Yang氏らによる研究結果が、Journal of Multidisciplinary Healthcare誌2025年6月27日号に掲載された。 研究者らは、2005~10年の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを利用し、カフェイン摂取量を導き出した。排便習慣(便秘・下痢)およびIBDはNHANESの自己報告データに基づいて定義された。ロジスティック回帰モデルを用いて、カフェイン摂取量と慢性便秘、慢性下痢、IBDとの関連を評価した。年齢、性別、人種、教育レベル、社会経済的地位、喫煙状況、飲酒状況、BMIなどの潜在的な交絡因子を調整した。 主な結果は以下のとおり。・計1万2,759例の成人が対象となった。この中には腸機能正常(n=1万785)、慢性下痢(n=988)、慢性便秘(n=986)が含まれていた。・カフェイン摂取量と慢性下痢には、正の関連性が認められた。1日当たりのカフェイン摂取量が1単位(100mg)増加するごとに、慢性下痢のリスクは4%増加した(オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.00~1.08)。・カフェイン摂取量と慢性便秘には、統計的に有意な関連性は認められなかった(OR:0.97、95%CI:0.93~1.02)ものの、U字型の非線形関係が認められた。便秘のリスクが最も低くなるのは1日当たり2.4単位(204mg)摂取した場合だった。これ未満の場合は、カフェイン摂取量が1単位増加するごとに慢性便秘のリスクが18%減少したが、これを超えると摂取量が1単位増加するごとにリスクが6%増加した。・カフェイン摂取量とIBDの間には有意な関連性は認められなかった。・サブグループ解析と相互作用検査の結果、60歳以上の高齢者において、カフェイン摂取量が増加するごとに慢性便秘のリスクが14%減少した(OR:0.86、95%CI:0.77~0.95)。 研究者らは「適量のカフェイン摂取は排便に役立つ可能性があるが、過剰なカフェイン摂取は慢性便秘を引き起こす可能性がある。また、高齢者の適切なカフェイン摂取は慢性便秘の予防に役立つ可能性があった。これらの結果から、臨床実践においては、排便の状態に応じてカフェイン摂取量を適切に調整することが推奨される可能性がある」とした。

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潰瘍性大腸炎の予後因子、思考を説明できるAIで特定

 潰瘍性大腸炎(UC)は慢性の炎症性腸疾患であり、その病態生理は多岐にわたる。そのため、症例ごとに最適な治療法を選択することが大切だ。今回、全国規模のレジストリを説明可能な人工知能(日立製作所)を用いて解析することで、難治性UCの予後因子を特定できることが報告された。レジストリ登録時の偽ポリープが存在することが、寛解と有意に負の相関を示したという。研究は東海大学医学部消化器内科の佐野正弥氏らによるもので、詳細は「Annals of Medicine」に5月5日掲載された。 UCは、重度の下痢、血便、激しい腹痛、発熱を特徴とし、再発と寛解を繰り返す難治性の炎症性腸疾患だ。UCの寛解を目指す場合、コルチコステロイド(CS)の導入が有効とされるが、CSには長期使用による有害事象のリスクがあり、早晩にCSに依存しない薬剤への切り替えが不可欠と考えられる。そのため、従来の研究では、どの治療がどの疾患型に対してより高い寛解率をもたらすかが検討されてきた。しかし、UCの疾患の多様性が影響し、包括的な予測モデルの開発は困難となっている。このような背景を踏まえ、著者らは、全国の医療記録に基づく機械学習モデルを用いて、難治性UCの予後因子を特定することとした。 解析対象は2003年4月から2012年3月(日本で生物学的製剤が普及する前)の期間に、全国レジストリに登録された新規UC症例7万9,096名とした。この中から3年分のデータがあり、初回診断時のMayoスコアが3以上で、登録以来CSを使用している4,003名(うち1,373名が3年以内に寛解達成)を最終的な解析対象とした。機械学習にはポイントワイズ線形モデル(PWLモデル)を用いて、3年後の寛解誘導と患者の層別化を予測した。モデルのパフォーマンスを示すスコアとして、曲線下面積(AUC)とF値を用いた。 長期寛解(3年以上持続)を予測するために、登録時、登録後1年、登録後2年までのデータに基づき開発された3つのPWLモデルが評価された。登録時、登録後1年目、登録後2年目のAUCはそれぞれ0.628、0.641、0.774であり、増加が認められた。また、登録後2年後までのテストデータセットにおける、適合率、再現率、F値はそれぞれ0.55、0.70、0.62だった。 次にk-means+法を用いて患者を予測される寛解率の高いグループと低いグループに分類した。さらに、登録時データのみを使用して寛解に関連する重要な因子の相関係数を調べたところ、偽ポリープ(0.695)、腹痛(0.689)、S字結腸炎(0.578)、5-ASAの使用(0.513)などいくつかの因子が相関していることが分かった。これらの因子の重み値は、偽ポリープ(-0.056)、腹痛(-0.054)で負の値を、S字結腸炎(0.054)、5-ASAの使用(0.049)で正の値を示した。登録後1年目までのデータを解析した結果、重要な因子として、偽ポリープ(0.982)、手術(0.964)、血球成分除去療法(0.940)が特定された。重み値は偽ポリープ(-0.159)が負の相関を示し、手術(0.094)と血球成分除去療法(0.109)が正の相関を示した。登録後2年までのデータでは、偽ポリープ(0.893)、2年目の日常生活(0.743)、1年目におけるCSの使用(0.736)が重要な因子となっていた。 本研究の結果について著者らは、「登録後2年目までの臨床データを組み込むことで、過学習のリスクなしにモデルの精度が向上した。さらに、3つ全ての予測モデルにおいて、登録時の偽ポリープの存在が寛解導入の成功を阻害することが示された。UCのように炎症と寛解を繰り返す疾患では、長期予後を予測する際に時系列データの影響を考慮する必要があるが、従来の統計手法には一定の限界がある。このような背景から、PWLモデルは予後予測とその影響因子の特定に有効なのではないか」と述べている。

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5月19日 IBDを理解する日【今日は何の日?】

【5月19日 IBDを理解する日】〔由来〕「世界IBDデー」に准じ、クローン病や潰瘍性大腸疾患などの「炎症性腸疾患」(IBD)への理解促進のため、IBDネットワークとアッヴィの共同で2013年に制定。関連コンテンツ第82回「IBD診療ブラッシュアップ」【診療よろず相談TV】アトピー性皮膚炎の成人・小児はIBD高リスク活動期クローン病の導入・維持療法、ミリキズマブが有効/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、グセルクマブは有効かつ安全/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、抗TL1A抗体tulisokibartが有望/NEJM

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クローン病患者の便意切迫感を改善するミリキズマブ/リリー・持田製薬

 日本イーライリリーと持田製薬は、ミリキズマブ(商品名:オンボー)のクローン病(CD)に対する適応追加にあたり、4月10日にメディアセミナーを開催した。 今回適応拡大されたミリキズマブは、2023年6月に同じ炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎の治療薬として発売され、今回、中等症~重症の活動期CDの治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応が追加された。 セミナーでは、同社が行ったCD患者へのアンケート結果やミリキズマブの適応拡大における第III相臨床試験VIVID-1試験の概要が説明された。クローン病患者が苦しんでいる日常生活 「クローン病の疾患概要と課題、便意切迫感の影響と実態に関する調査結果について」をテーマに日比 紀文氏(慶應義塾大学医学部 名誉教授)が、病態などの説明と持田製薬が行った患者アンケートの概要を述べた。 CDは、免疫異常などの関与で起こる肉芽腫性炎症性疾患であり、わが国には約7万例の患者が推定され、男性に多く、わが国では10代後半からの発症が多いという。主な症状としては、下痢、腹痛、発熱などがある。また、潰瘍性大腸炎と異なり、大腸のほかにも胃や小腸でも病変が認められ、縦走潰瘍、敷石像などが内視鏡で観察される。また、全層性の炎症で、瘻孔や狭窄もあり、痔ろうなど腸管合併症も認められる。そして、CDの病型分類では、小腸大腸型で1番患者数が多く、小腸型と大腸型では同じ割合で患者がいる。 CDの症状に対する患者と医師の認識の差について、「QOLに最も影響を与える症状」では、患者が「便意切迫感」(65%)が1番多かったのに対し、医師では「腹痛」(82%)だった1)。 この患者が挙げる便意切迫感は、「突然かつ緊急に感じる排便の必要性」と定義され、患者のQOLを著しく悪化させている。そこで、日比氏と持田製薬は、2025年1~2月にアンケートを実施し、CDにおける便意切迫感の影響と実態に関する調査結果を発表した。 調査は、CD患者100人、一般人431人、医師106人にインターネットで実施された。質問で「便意切迫感に襲われた経験がある人(98人)に頻度」を聞いたところ、「1日1回以上」と回答した人が42.8%だった。また、CD患者100人に「便意切迫感にどの程度困っているか」を聞いたところ、「日常生活を普通に過ごせないくらい」が14.0%、「困っているが普通の生活を努力して維持できる」が62.0%と全体で約75%の患者が困っていると回答していた。そのほか、日常生活の便意切迫感で困っていることでは「トイレの待ち時間に不安を感じる」が54.0%、人生において便意切迫感で困っていることでは「仕事・学校を辞めた」が24.0%と患者に多大な影響を及ぼしていることがうかがえた。CDの症状や便意切迫感について、「どのように理解され、対応してほしいか」を患者に聞いたところ、「困るときがあるので、求められたら手を差し伸べてほしい」が45.0%で1番多い回答だった。 以上から「便意切迫感の課題」として、患者は日常生活だけでなく人生のイベントに影響を受けていること、日常生活の維持に患者の努力があること、本音では患者は「便意切迫感から解放されたい」と思っていること、この「便意切迫感」は、周囲には伝えきれていないことを示した。最後に日比氏は、「今後は日常生活の中で『便意切迫感』に不安にならない環境作りが大切だ」と指摘し、「その実現には、周囲の偏見や誤解をなくすことが重要だ」と語った。臨床試験でミリキズマブは便意切迫感を改善 「クローン病に対する新しい治療選択肢について」をテーマに、久松 理一氏(杏林大学医学部消化器内科学 教授)が、ミリキズマブの特徴と第III相臨床試験VIVID-1(AMAM)試験の概要について説明した。 「令和5年クローン病治療指針(内科)」2)では、軽症~中等症~重症まで3段階に分けて使用する薬剤が示されている。ミリキズマブは、既存治療で効果不十分な場合に、中等症以上の病変で使用することができる治療薬。 本剤は、抗IL-23p19モノクローナル抗体製剤として、腸管炎症の原因となるサイトカインを作る免疫細胞に指令を出すIL-23に付着し、指令を阻害することでサイトカイン産生を阻む機序を持つ。使用に際しては、治療開始時に寛解導入療法として点滴静注製剤1回900mgを4週間隔で3回投与し、その後は維持療法として皮下注製剤1回300mgを4週間隔で投与する。 そして、今回適応拡大で行われた第III相臨床試験VIVID-1(AMAM)試験では、CD患者を対象に(1)患者報告型アウトカム(PRO)による12週における臨床的改善かつ52週における内視鏡的改善、(2)PROによる12週における臨床的改善かつ52週におけるCrohn’s disease activity index(CDAI)による臨床的寛解の2つを主要評価項目として、プラセボに対するミリキズマブの優越性を評価した。 試験対象は、ステロイド系薬剤、免疫調節薬などに対し効果不十分、効果減弱または不耐の中等症~重症の活動性CD患者1,152例(日本人28例を含む)。 試験の結果、12週時点でPROによる臨床的改善かつ52週時点で内視鏡的改善を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)で38.0%に対し、プラセボ群(199例)で9.0%だった。また、12週時点でPROによる臨床的改善かつ52週時点でCDAIによる臨床的寛解を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)で45.4%に対し、プラセボ群(199例)で19.6%だった。 そのほか、52週時点の排便回数・腹痛スコアのベースラインからの変化量は、ミリキズマブ群(579例)は-3.28であったのに対し、プラセボ群(199例)は-1.39だった。腹痛スコアも52週のミリキズマブ群(579例)は-1.16だったのに対し、プラセボ群(199例)は-0.52だった。 では、既存の治療薬との効果の違いはあるのか。ウステキヌマブとの比較で、52週時点でのCDAIによる臨床的寛解を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)が54.1%でウステキヌマブ群(287例)の48.4%に対し非劣性であった。同じく52週時点での内視鏡的改善を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群が48.4%、ウステキヌマブ群が46.3%だった。 安全性については、死亡事例はなく、主な有害事象としては、貧血、関節痛、頭痛などが報告された。 最後に久松氏は「ミリキズマブは、中等症~重症の活動期CD患者の臨床症状、粘膜炎症および患者報告アウトカムをいずれも改善したこと、排便回数、腹痛および便意切迫感の有意な改善が認められたこと、CD患者を対象とした臨床試験で新たな有害事象の懸念は認められなかったこと」に言及して講演をまとめた。

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潰瘍性大腸炎に対する1日1回の経口薬オザニモドを発売/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは2025年3月19日、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬オザニモド(商品名:ゼポジア)を発売した。 オザニモドは、潰瘍性大腸炎に対する新規作用機序の治療薬である。S1P1受容体および S1P5受容体に高い親和性を持って選択的に結合するS1P受容体調節薬であり、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、S1P1受容体の内在化および分解を誘導することにより、リンパ球を末梢リンパ組織内に保持する。この作用によってリンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害することで、潰瘍性大腸炎の病理学的変化を改善すると考えられている。 本薬剤は、海外では再発型多発性硬化症の成人患者および中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者に対する治療薬として、2020年以降に米国、欧州などの多くの国で承認されており、長期的な安全性プロファイルを有する。また、1日1回投与の経口薬であり、患者の負担を軽減し、QOLの向上に寄与することが期待されている。<製品概要>販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg一般名:オザニモド塩酸塩製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日:2025年3月19日薬価:12,313.30円(スターターパック1シート)、4,792.80円(0.92mg 1カプセル)効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

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新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬オザニモド、その特徴は?/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2024年12月27日にオザニモド(商品名:ゼポジア)について、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得した。そこで潰瘍性大腸炎およびオザニモドへの理解を深めることを目的として、2025年2月25日にメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、仲瀬 裕志氏(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授)が、潰瘍性大腸炎の概要、潰瘍性大腸炎患者を対象としたアンケート調査の結果、オザニモドの特徴や臨床成績などについて解説した。再燃への不安が大きな負担 指定難病として認定される潰瘍性大腸炎は、若年で発症することも多く、患者数が年々増加傾向にある。難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班が2014年に実施した調査では、潰瘍性大腸炎の患者数は約22万例と推計されており、令和5年度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は14万6,702例となっている。 潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返すことが特徴であり、仲瀬氏は「再燃があると思うだけで患者はすごく不安になり、日常生活にも大きな影響を及ぼす」と述べる。そこで、30代以上の潰瘍性大腸炎患者106例を対象に、インターネットによるアンケート調査が実施された。本調査の対象患者は、罹病期間5年以上の割合が71%、中等症から重症の割合が63%であった。再燃に関して、再燃経験を有する患者の割合は71%であり、再燃に対する不安を有する患者の割合は89%にのぼった。これについて、仲瀬氏は「さまざまな治療薬が使用可能となった時代においても、患者の89%が再燃の不安を感じているというのは、非常に重要なデータである。こうした不安を取り除くために、医療者は治療に取り組む必要がある」と述べた。S1P受容体調節薬オザニモドの登場 仲瀬氏は「潰瘍性大腸炎はヘテロな疾患である」と述べる。つまり、潰瘍性大腸炎の病態にはさまざまなサイトカインが関与するため、個々の患者で炎症のパターンが異なり、治療への反応も異なる。そのため、さまざまな作用機序の治療薬が開発されているが、それでも治療効果が不十分な患者が存在するのが現状であり、アンメットメディカルニーズが存在するといえる。 そこで新たに登場したのがオザニモドである。オザニモドは、S1P(スフィンゴシン-1-リン酸)受容体を調節するという新しい作用機序を有する※。オザニモドの特徴は、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、内在化および分解を誘導することにより、リンパ球がリンパ節から循環血中へ移動するのを抑制することで、結果的に大腸内の炎症を抑制するという点にある。また、1日1回投与の経口薬であることから、患者の負担を軽減することも期待される。※同様の作用機序を有する薬剤として、多発性硬化症治療薬のシポニモドが存在する日本人患者198例を対象とした臨床試験で有用性を検証 オザニモドは、欧米では中等症から重症の潰瘍性大腸炎を適応として2021年に承認を取得しているが、本邦では未承認であった。そこで、日本人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者198例を対象とした国内第II/III相試験「J-True North試験」が実施された。 本試験の主要評価項目である投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、プラセボ群が32.3%であったのに対し、オザニモド0.92mg群は61.5%であり、オザニモド0.92mg群が有意に改善し(p=0.0006)、プラセボ群に対する優越性が検証された。オザニモド0.92mg群の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は長期にわたって維持され、投与52週時ではプラセボ群16.9%、オザニモド0.92mg群49.2%であった(名目上のp値=0.0001)。 副次評価項目の臨床的寛解率、内視鏡的改善率、粘膜治癒率もオザニモド0.92mg群がプラセボ群と比べて改善する傾向にあり、いずれの項目も投与52週時のほうが投与12週時よりも良好な傾向にあった。 安全性について、投与52週時までの副作用発現割合は、プラセボ群が13.8%、オザニモド0.46mg群が20.6%、オザニモド0.92mg群が32.3%であった。オザニモド0.92mg群の主な副作用は、ALT増加(4.6%)、γ-GTP増加、AST増加、肝機能検査値上昇、肝機能異常、帯状疱疹、回転性めまい(各3.1%)であった。また、オザニモド0.92mg群の投与中止に至った副作用は4例に発現した(ALT増加・AST増加2例、薬剤性肝障害1例、黄斑浮腫1例)。死亡に至った副作用は報告されなかった。副作用報告数としては少ないが、帯状疱疹をはじめとする感染症や黄斑浮腫には注意を払う必要がある。 また、オザニモドの特徴としてリンパ球数の減少がある。これについて、仲瀬氏は「減少が大きければ休薬を考えないといけないが、リンパ球数の減少と治療効果は相関するという側面もあるため、リンパ球数の絶対値をフォローしながら、上手に使っていく必要がある」と述べた。<J-True North試験の概要>・対象:経口5-アミノサリチル酸製剤またはステロイドの投与歴がある中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎患者198例・方法:プラセボ群、オザニモド0.46mg群、オザニモド0.92mg群に1:1:1の割合で無作為に割り付け、オザニモド0.92mg群には1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、以降は0.92mgを1日1回12週まで経口投与。12週時点のレスポンダーは維持期に移行し、導入期と同じ治験薬を52週まで1日1回経口投与・評価項目[主要評価項目]投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率(完全Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上かつ30%以上低下、かつ直腸出血サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下または絶対値が1ポイント以下)[副次評価項目]投与12週、52週時の臨床的寛解率(直腸出血サブスコアが0ポイントで、排便回数サブスコアが1ポイント以下で[かつ排便回数サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下]、かつ内視鏡所見サブスコアが1ポイント以下)、内視鏡的改善率、粘膜治癒率など<製品概要>販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg一般名:オザニモド塩酸塩製造販売承認取得日:2024年12月27日効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

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1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」【最新!DI情報】第31回

1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」今回は、スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「オザニモド(商品名:ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、1日1回服用の新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬であり、既存薬で効果不十分であった患者や利便性の向上を望む患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)を適応として、2024年12月24日に製造販売承認を取得しました。本剤は、過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与します。<安全性>重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[2.8%]、口腔ヘルペス[0.6%])など)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、黄斑浮腫(0.6%)、肝機能障害(4.5%)、徐脈性不整脈(1.7%)、リンパ球減少(10.2%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)が報告されています。本剤投与による心拍数の低下は、漸増期間中に生じる可能性が高いので、循環器を専門とする医師と連携するなど適切な処置が行える管理下で投与を開始する必要があります。また、黄斑浮腫に備えて、眼底検査を含む定期的な眼科学的検査を実施する必要があります。その他の副作用は、頭痛、高血圧、γ-GTP増加、ALT増加(いずれも1%以上)、発疹や蕁麻疹を含む過敏症(1%未満)、上咽頭炎、末梢性浮腫、努力呼気量減少、努力肺活量減少(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.本剤は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に用いられる薬です。結腸に浸潤するリンパ球数が減少することで、潰瘍性大腸炎を改善すると考えられています。2.過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に使用されます。3.服用開始から徐々に用量を増やしていきますが、心拍数が低下することがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。4.服用中に重篤な眼疾患が現れることがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。<ここがポイント!>潰瘍性大腸炎(UC)は、主として粘膜にびらんや潰瘍が生じる非特異性炎症疾患です。再燃と寛解を繰り返すことが多く、長期間の医学管理が必要となります。薬物療法には、5-アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイドが用いられますが、これらの治療薬が無効であった場合には、免疫調整薬やヤヌスキナーゼ阻害薬、抗TNF抗体製剤、抗IL-12/23抗体製剤などが使用されます。しかし、無効例や通院での注射投与が困難な場合のほか、安全性の問題などで治療薬の変更が生じる懸念もあることから、とくに中等症~重症のUC患者に対しては、既存薬と異なる新たな作用機序で、症状や粘膜損傷などの改善効果が高く、難治性に移行させない経口治療薬が求められていました。オザニモドは、1日1回の経口投与で中等症~重症のUCに効果を示します。オザニモドは、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体のサブタイプ1(S1P1)と5(S1P5)に対して高親和性で結合し、リンパ球の遊走を抑制します。これにより、循環血中のリンパ球数が減少することで、炎症性細胞のさらなる動員や炎症性サイトカインの局所的な放出を防ぎ、腸粘膜が継続的に損傷する状況を改善します。日本人の中等症~重症の活動性UC患者を対象とした国内第II/III相試験(J-True North試験)において、主要評価項目である投与12週時点の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、本剤0.92mg群で61.5%、プラセボ群で32.3%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0006)。同様に、副次評価項目である投与12週時点の臨床的寛解率は、本剤群で24.6%、プラセボ群で1.5%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0002)。

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中等症~重症の潰瘍性大腸炎、グセルクマブは有効かつ安全/Lancet

 グセルクマブは、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎(UC)に対する導入療法および維持療法として有効かつ安全であることが、32ヵ国254施設で実施された第IIb/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「QUASAR試験」において示された。米国・シカゴ大学のDavid T. Rubin氏らQUASAR Study Groupが、第III相導入試験および維持試験の結果を報告した。グセルクマブは、インターロイキン(IL)-23を阻害するとともに、CD64にも結合する二重作用のヒト型ヒト抗IL-23p19モノクローナル抗体製剤で、IL-23の阻害がUCの治療に有望であることが示唆されていた。本邦ではUCへの適応は承認申請中。Lancet誌オンライン版2024年12月17日号掲載の報告。第IIb、第III相導入・維持試験でグセルクマブvs.プラセボを比較 QUASAR試験は、第IIb相試験、第III相導入試験および維持試験で構成された。 第IIb相および第III相導入試験の対象は、既存の治療(ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害薬)で効果不十分または忍容性不良の中等症~重症の活動期UCの成人患者で、グセルクマブ群(第IIb相では200mg群、400mg群、第III相導入試験では200mg群とし、それぞれ0、4、8週時に静脈内投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 第IIb相および第III相導入試験において、12週時に臨床的反応が認められたグセルクマブ群の患者、ならびにプラセボ群で12週時に臨床的反応が認められずグセルクマブ200mgを投与され24週時に臨床的反応が認められた患者は、第III相維持試験に組み込まれ、維持療法0週時にグセルクマブ200mgの4週ごと皮下投与(q4w)群、100mgの8週ごと皮下投与(q8w)群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、それぞれ44週間投与した。 主要エンドポイントは、導入試験における12週時の臨床的寛解、および維持試験における44週目の臨床的寛解であった。グセルクマブによる臨床的寛解率は、導入療法12週時23%、維持療法44週時50% 第III相導入試験は、2021年5月18日~2022年6月2日に無作為化が行われ、ベースラインの修正Mayoスコアが5~9の患者701例が解析対象集団となった(グセルクマブ200mg群421例、プラセボ群280例)。 第III相維持試験には、2020年7月31日~2022年11月11日に、846例(第IIb相導入試験から267例、第III相導入試験から579例)が登録され、ベースラインの修正Mayoスコアが5~9の患者568例が主要解析対象集団となった(グセルクマブ100mg q8w群188例、200mg q4w群190例、プラセボ群190例)。 導入試験における12週時の臨床的寛解率は、グセルクマブ群23%(95/421例)、プラセボ群8%(22/280例)であり、グセルクマブ群で有意に高率であった(補正後群間差:15%、95%信頼区間[CI]:10~20、p<0.0001)。 維持試験における44週時の臨床的寛解率は、グセルクマブ200mg q4w群50%(95/190例)、100mg q8w群45%(85/188例)、プラセボ群19%(36/190例)であり、プラセボ群よりグセルクマブ両群で有意に高率であった(補正後群間差:200mg q4w群30%[95%CI:21~38、p<0.0001]、100mg q8w群25%[95%CI:16~34、p<0.0001])。 安全性プロファイルは良好で、承認された適応症におけるグセルクマブの安全性プロファイルと一致していた。導入試験では、両群の49%(グセルクマブ群421例中208例、プラセボ群280例中138例)に有害事象が報告され、重篤な有害事象はグセルクマブ群3%(12例)、プラセボ群7%(20例)、治療中止に至った有害事象はそれぞれ2%(7例)、4%(11例)に報告された。維持試験では、有害事象の発現率は治療群間で同程度であり、主な有害事象はUC、COVID-19および関節痛であった。両試験において、活動性結核、アナフィラキシー、血清病あるいは臨床的に重要な肝障害は報告されなかった。

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