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“喫煙者の採用拒否”もアリな時代、タバコの適正価格はいくら?

大手リゾート、製薬、IT、広告代理店など“喫煙者は採用いたしません”と明言する企業が増えていること、ご存知ですか?映画やドラマの喫煙シーンも減らすべきだという声すら上がり、嫌煙モードは高まる一方の今のご時世。2010年10月以降大きく下がった喫煙率、喫煙への抑止力として働いたタバコ価格を医師はどう見ているのか?そもそも医師の喫煙率はどうなのか?「医師なのにタバコを吸うなんてもってのほか」「脳梗塞でも喫煙する患者に辟易」「もっと値上げしたら自分もやめられるかも」などなど、“タバコと喫煙者の負担”について言いたいことを吐き出していただきました!コメントはこちら結果概要60代以上の医師の約半数が禁煙に成功、30代以下の約8割は喫煙経験なし現在喫煙している人の割合は回答者全体で8.7%(国民全体では21.1%:JT実施「2012年全国たばこ喫煙者率調査」より)。世代別に見ると最も高い40代で10.2%、最も低い30代以下では6.6%であり、大幅な差は見られなかった。しかし喫煙経験の有無では大きく異なり、30代以下の約8割は喫煙経験自体がないのに対し、60代以上の約半数が『禁煙成功を経ての非喫煙者』という結果となった。「自分が吸っていては患者に対して説得力がないから」といった声が多く見られた。“喫煙者の負担増”6割が賛成、「明らかに悪影響を及ぼす疾患は医療費の負担率上げるべき」“喫煙は医療費増につながるため、喫煙者の保険料や医療費などの負担額を上げるべき”との考え方に対する賛否を尋ねたところ、全体の61.1%が賛成と回答。「理屈はわかるが実際の運用は困難では」との声がある一方で、「脳梗塞、COPD、心疾患ほか喫煙が悪影響を及ぼすとのエビデンスがある疾患は自己負担率増に」といった意見も複数寄せられた。医師の8割以上がいっそうの値上げ支持、過半数は“1,000円以上が適正”適正だと感じる一箱あたりの価格について尋ねたところ、最も多かった回答は『1,000~1,400円程度』で33.6%。次いで『1,500円以上』『800円程度(100%値上げ)』がそれぞれ19.5%となり「若年層が手を出しにくい価格にすることが大切」との意見が見られた。喫煙者でも3人に1人は値上げすべきと考えており、「いっそ1,000円以上になれば自分もやめられるのでは」といった声も挙がった。喫煙をめぐる環境、“全館禁煙”で院外にあふれる患者や職員に苦言、表現活動をめぐっては賛否が病院機能評価の項目に“全館禁煙の徹底”が含まれることもあって「敷地の一歩外の歩道上で入院患者が集団で喫煙し、かえって見苦しい」「職員が隠れて吸っている」など、病院周辺の喫煙状況を問題視する医師が多く、「病院こそ最も喫煙者の採用を拒否すべき職場だ」との声も挙がった。表現活動については「喫煙シーンは極力減らすべき」「映画などの規制はやり過ぎでは」と賛否が見られた。設問詳細タバコについてお尋ねします。JTが2013年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」によると、全国の喫煙者率は20.9%(前年比-0.2ポイント)、男女別では男性が32.2%(前年比-0.5ポイント)、女性は10.5%(前年比+0.1ポイント)という結果となりました。2010年10月の増税・定価改定による値上げ直後に比較すると減少傾向は緩やかになりつつあるものの、喫煙者の採用拒否を明言する企業も出てくるなど社会全体での嫌煙モードは高まっています。また政府は2012年6月に新たな「がん対策推進基本計画」を閣議決定し、2010年時点で19.5%の喫煙率を、2022年度までに12%に引き下げるとの考えを示しています。一方、禁煙運動を推進するNPO法人がアニメ映画内での喫煙シーンについて問題視した要望書を提出したことで議論が起こるなど、物理的環境の制限のみならず表現活動にも踏み込む向きについては、行き過ぎであるとして疑問視する声も挙がっています。そこで先生にお尋ねします。Q1.先生は喫煙されていますか。喫煙している以前喫煙していた喫煙したことがないQ2.「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。賛成反対どちらともいえないQ3.タバコの価格はどの程度が適正だとお考えになりますか。400円程度(現状維持)600円程度(50%値上げ)800円程度(100%値上げ)1,000~1,400円程度1,500円以上Q4.コメントをお願いします。2013年8月16日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員の医師コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「禁煙の最も有効な手段の一つは、徐々にではなく急激なたばこ価格の上昇と思う。またJTによる健康被害に対する訴訟も必要だろう」(呼吸器内科,70代以上,男性)「ヨーロッパやオーストラリアと同程度にするべきです。特に医療関係者は無条件で禁煙にするべきです」(神経内科,40代,男性)「喫煙は百害あって一利なしであり、医療者が就職する際、喫煙習慣の有無をチェックし、喫煙習慣があるヒトに対して、一定期間での禁煙を課すべきと考えます」(小児科,50代,男性)「喫煙で得られるものは何もない。迷惑千万であり税金、医療費等、もっともっと高くするべき。タバコ吸って肺がんになって助けてと言われても助ける気にならないので、成人の診察は絶対したくない」(小児科,40代,男性)「生活保護を受けている心筋梗塞の患者さんに煙草をやめるように促したところ逆切れされました。その後まもなくその患者さんは脳梗塞を併発し、寝たきりとなりました。医療に対して真摯でない人に医療費が無料というのはいまだに納得できない状況です」(救急科,40代,男性)「喫煙者と非喫煙者の保険料負担は差があってしかるべきだと思います」(循環器内科,40代,男性)「血管障害の治療を受けている生活保護受給者が医師の禁煙指導に従わない場合、何らかの対策が必要と思われます」(脳神経外科,50代,男性)「大学入学後18歳から喫煙していたが、運動部で走りへの影響があり、20歳で禁煙。病院は敷地内禁煙だが、院長、副院長が喫煙者なため、職員の敷地内喫煙がしばしば見られ、禁煙対策が徹底していない。院長の喫煙の有無で敷地内禁煙の徹底が分かれてしまうように思う」(小児科,50代,男性)「循環器を専門としていますが、家族を持ってからは怖くて吸えなくなったというのが正直なところです。これが合法的なものであることすら疑問です。危険性を啓蒙することも必要ですが、ほとんどの喫煙者には現実的に受け止められないため、積極的に吸いたくても吸えない環境を整備してあげるべきです」(循環器内科,40代,男性)「根本的には、喫煙者の自覚と意志によるところが大きいとつくづく思います」(内科,50代,男性)「喫煙者の医療負担額を上げるのは,現実的には困難。たばこ税として徴収した中から医療費に回すべき」(血液内科,40代,男性)「自分自身は喫煙経験が全くないし、経営しているクリニックは全館禁煙で、職員も喫煙者は採用しない方針を採っているが、他人の喫煙にはとやかく言うつもりは無い」(精神科,40代,男性)「病院評価機構の認定基準?で、院内が全面禁煙となり(喫煙室も作れない)、入院患者がすぐ隣の公園や道ばたで座り込んで喫煙している状態が日常化しておりみっともない状態です」(小児科,30代,男性)「日本はまだ喫煙者に甘い。非喫煙者が過半数を超えた今、飲食店での全面禁煙等を早く導入すべき」(外科,40代,男性)「きちんと分煙されれば、吸おうが吸うまいが構いません」(小児科,40代,男性)「タバコは1本100円以上が適正価格。さらに自動販売機での販売を禁止すべき」(小児科,40代,男性)「たばこだけを悪者にするのは不公平。車の排気ガス、食品添加物、ファーストフード、甘い炭酸飲料など他にも色々あるでしょう」(麻酔科,50代,男性)「たばこが健康状況に悪影響があるとわかっていても禁煙できない医療関係者をみると、禁煙治療の難しさを感じる」(産婦人科,40代,女性)「少なくとも自身や家族の喫煙には絶対反対ですが、喫煙者の存在を否定するつもりはありません。飲食店などではもう少し厳密に禁煙スペースと喫煙スペースを区切ってもらえればと」(総合診療科,20代,男性)「喫煙は体に有害だとは思うが、喫煙者に肩身の狭い状況を次々と作っていくようなやり方は、ちょっとどうかと思う」(小児科,50代,男性)「若いうちは格好つけてタバコを吸っていました。40過ぎて、格好悪い、体に気をつけなければと思い止めました。患者さんにも『タバコは高校生が格好つけて吸うもの、この年になっても吸っているのは格好悪いでしょ』と指導しています」(脳神経外科,40代,男性)「医療関係者の喫煙はなくなるべきだと思いますが、職員の禁煙もなかなか進みません。生命保険料などに差をつけるのは賛成です」(内科,50代,男性)「私は職業柄、禁煙に成功したが、なかなかそうはいかない方も多いでしょう。人に迷惑をかける観点からすれば、酒のほうがよっぽど社会悪だと思います。あまり極端な締め付けは新たな問題を引き起こします。」(形成外科,40代,男性)「疾患の誘因になる上、においがつくので嫌いです。次回の値上げは、一本1円でもいいので、医療費に回してもらいたいです」(内科,50代,男性)「受動喫煙の問題もあるが、麻薬として禁止されていないのだから吸いたい人は吸えばよい」(内科,60代,男性)「子供の出生と同時に喫煙はやめました.さまざまな病気の発症(特に悪性疾患)との関連が指摘されており,抗癌剤治療等の高額医療を削減するためにはたばこの価格をもっと上げれば良いと思います」(消化器外科,50代,男性)「私も15年前に禁煙しましたが、禁煙までに苦労しました。たばこの値段を上げるのには賛成ですが、保険料や医療費まで上げることにはちょっと抵抗があります」(外科,60代,男性)「周りで吸われると臭くて汚いうえに受動喫煙による被害を被る。本人は癌やCOPDなどで医療費を食い、やめようとしても禁煙薬は保険適応となっており医療費を使う。タバコの価格は1箱5000円以上が適正」(内科,50代,男性)「喫煙者はたばこを吸う事が自他に亘って健康及び環境に対して害を与えることを十分理解しているのか調査して、理解していなければ十分啓蒙し、なおも喫煙を続けようというのなら、それ相応の対価を支払わせるのは至極当然のことと考える」(その他,50代,男性)「大人っぽく見せるために喫煙していたが、健康のため禁煙をした。それから葉タバコの臭いが大嫌いになりました。非喫煙者には大迷惑ということがよくわかった。また、排水溝のゴミにも吸い殻は大量に含まれその除去費用も、街の清掃業務にもたくさんの税金がかかっています。税金を高くするのは当然です」(整形外科,50代,男性)「健康被害や依存性が明らかな喫煙…、煙草の販売そのものをやめてほしいと思います(まあ、もろもろの事情で難しいのはわかりますが・・)」(内科,40代,女性)「症状は無かったが冠動脈に動脈硬化がわかり禁煙しました。肺がんは関係ないとの意見もありますが、口腔、食道がんやCOPDを考えると患者さんもしかり、周りの方もつらい思いをする。そのような不幸な方が少しでも減ればと思う」(整形外科,40代,男性)「禁煙外来を担当しておりますが、禁煙治療の保険適応に対する過剰な規制が気になります。ニコチン依存症の診断基準としてブリンクマン指数(1日喫煙本数×年数)があるため、若年者では診断基準を満たさず、最も対策が必要であろう中高生や20代の禁煙治療が保険で行えないことや、禁煙治療の期間が12週間と規定されており、それを過ぎると保険を使えないこと、入院患者に対しては禁煙治療を開始できないことなどです。こうした規制をはやく取り払って欲しいものです」(その他,30代,男性)「JTは『マナー問題』にすることでプロパガンダに成功している」(内科,40代,男性)「子供たちに健康上悪影響を与えるとの思いから禁煙したが、子供たちは喫煙しており、割り切れない思い」(その他,60代,男性)「20年前に禁煙した。診療所内は禁煙、患者さんにはやめるよう毎回指示している。1箱の値段が1000円を超えれば、喫煙者は相当減るのではないか」(内科,70代以上,男性)「健康政策で最も効果的なのは,喫煙者を減らすこと。しかも,徐々に(たばこ農家や零細なたばこ屋さんへの対策を行いながら)値段を上げるだけで良いのだから,極めて簡単。税収減を心配する意見もあるが,長期的には医療費削減効果が大きいので,むしろ国の収支は改善されるともされており,早急にたばこを値上げすべし」(内科,60代,男性)「喫煙に関連が深い疾病では、喫煙者の保険医療支払いを高くできないのか?」(皮膚科,50代,男性)「当院は禁煙外来をしており、病院評価も受けているため敷地内禁煙となっている。しかし、一歩敷地外では入院患者の喫煙光景がみられ敷地外に吸殻が捨てられていたり、中にはまだくすぶっている吸殻もみられ非常に危険。といって敷地外に吸い殻入れを置くのもおかしい。喫煙自体は勧められたことではないが、病院内すべてを禁煙にするのではなく空港ロビーのように換気扇のついた喫煙室の設置を義務付けてはいかがか?入院患者に禁煙していただきたいのは山々であるが100%禁煙なんて無理。厚労省の役人だってどこかで吸っているのでしょう!こんな馬鹿馬鹿しい規制はやめてほしい」(消化器内科,60代,男性)「喫煙が自分の体に良くないことは自覚した上での喫煙はやむをえないと思います。自分も以前していたので、気持ちはわかります。ただ周囲の人への受動喫煙は避けるべきと考え、喫煙場所を今後も限定していくべきと思います。禁煙できず状態が悪化した場合は、家族ともどもいっさい医療側に苦情を言わないことも条件と考えます」(脳神経外科,50代,男性)「喫煙は百害あって一利なし。わかった上でなお喫煙をやめない方は、喫煙が悪影響を及ぼすとエビデンスのある疾患に関しては医療費の全額自己負担が妥当と考えます。そもそも確実に体に悪いのだから法律で全面禁止にしたら良い。税収の減少は医療費の削減で相殺可能でしょう。また現時点で喫煙している方から特別税を徴取し、一時的な財源に充てればいいと思います」(臨床研修医,20代,男性)「可処分所得が少ない若年層が、タバコに手を出せない環境を作るのが大事」(泌尿器科,50代,男性)「喫煙はがんを増加させるだけでなく、動脈硬化を著しく促進してしまいます。高血圧症や腎疾患を診療している医師としては、病気を進行させないためなんとしても説得して禁煙して頂いております」(腎臓内科,50代,男性)「喫煙が医療費を上げるという説に根拠はあるのか。喫煙で寿命が短くなればその分医療費も減るのでは」(内科,50代,男性)「喘息の子たちが苦しそうにしてるのが見ていられないのに、平気で近くで吸う人たちが許せない」(小児科,40代,女性)「タバコの依存性を考えると麻薬よりもたちが悪い面もあると聞く。2,000円くらいでも吸うヒトはいると思うのでどんどん釣り上げればよいという立場です。自分はneversmokerです」(泌尿器科,30代,男性)「施設内全面禁煙ですが、屋外の建物の陰で医療従事者が喫煙しているところが病棟から丸見え。患者さんも雨のなかでも傘さして外で喫煙してます。どうしようもないかも…」(整形外科,50代,男性)「煙草ばかりやり玉にあげられていることに違和感をおぼえます。お酒についてももっと厳密な論議をすべき」(精神科,40代,男性)「嗜好品なので、社会保険料や医療費の負担額を上げるべきではないが、税金を増やすことはいいと思います」(内科,50代,女性)「当地の某県立病院内は全面禁煙。境界の歩道上で患者さんがたむろして喫煙しているのが早朝の風景。当然職員はそれを毎日見ているが改善されたとは思えない。嗜好であるから難しいし、モラルの問題になるのだと思う。価格を吊り上げれば多少の抑制はかかるかもしれないが、無くなることもないと考える」(産婦人科,50代,男性)「病院も全館禁煙にしたいところですが、職員の喫煙者も多くなかなか賛同が得られません」(精神科,40代,女性)「当院も敷地内禁煙のはずなんですが、タバコ臭い職員がいるんですよね。病院なんて喫煙者の採用拒否を一番にしていい職場だと思うんですが」(小児科,40代,男性)「喫煙者は保険料や医療費などの負担増であるなら、飲酒者、肥満者、高血圧者、糖尿病者、その他リスクを持つ全ての者に対して負担増を強いるべきである」(リハビリテーション科,40代,男性)「嗜好品が将来的な病気のリスクを高め、その病気を社会全体で支えることが非喫煙者の理解を得ているとは思えません。値上げのみで解決できる問題ではないが、抑止力の一つとして考慮されるべき。現時点での税収減少を心配するのではなく、若年人口が減少し社会的に高齢者を支えることが不十分になっている今だからこそ将来のことをきちんと考えるべき」(消化器外科,50代,男性)「缶コーヒー1本とタバコ1本と同等くらいがいいんじゃないかと思います。が、他国とつり合いがとれないくらいの価格だと、差益を狙った組織が暗躍するのではと危惧されます」(泌尿器科,40代,男性)「生活保護の母子家庭の母親に喫煙者が多い。値段を上げても、子供の特別手当や手帳からくる公費を使って買っているのが実情なので、喫煙が減るとは思えない。子供が犠牲になるだけ。また禁煙外来も、自己負担なしなのであまり成功していない。困っています」(小児科,60代,女性)「1000円以上でも止められない方は多いと思います。呼吸器内科部長がヘビースモーカーで、禁煙外来を行っていながら休憩時間には吸っていましたね。依存の問題は難しいです」(消化器内科,50代,女性)「喉頭がんになってもまだやめない人がいる。こんな人に医療費を使うのはどうかと思う」(消化器内科,50代,女性)「全てを吸い込むのなら(副流煙もなく、吐き出しもない)許さなくもない」(小児科,40代,男性)「全面的に煙草を違法なものとして禁止してもいいのでは?吸わない人間からするとただただ迷惑なだけ。タバコ以外の嗜好品もあるのだから、タバコがなくても生きていけないわけではない」(内科,40代,女性)「禁煙外来へ紹介しているが、成功率は半分くらいで、最終的には本人の意志による」(内科,40代,男性)「被ばくより発がんリスクが高いことをなぜ伝えないのでしょう?値段は段階的に1500円以上にすべき」(消化器外科,40代,男性)「ヒステリックに騒ぎ過ぎかと思います」(泌尿器科,40代,男性)「学位論文のストレスで一時喫煙したが、運動が身体的に明らかに辛かった為禁煙した。また喫煙依存者に肺気腫等が多く、高齢になって症状に苦しむ姿を多くみて禁煙を広めるべきと感じ、抑止力として高額化することはかなり有効と感じる」(外科,50代,女性)「禁煙外来はやってませんが、よく勧めます。やってみて成功する人は少ないし、それよりも他人事と思って問題視しない人の方が多いですね。タバコの値段を引き上げれば絶対喫煙者は減ります。あとは健康というよりは政治の問題と言うしかないでしょう。前回の値上げの時に、3倍の1000円にするべきでした。400円で喫煙者数の現状維持を成功させましたね!総務省・財務省の勝ちで厚労省はいつも負けますね。もし1000円になれば1/3が禁煙、1/3が減煙、値上げ分で税金、生産者・JTの減収分は確保されて、結果的には喫煙者が減り、タバコの弊害が減って医療費分は浮くのではと予測してましたが」(精神科,50代,男性)「購入することにちょっと躊躇するような値段にすべきです」(腎臓内科,40代,男性)「たばこは嫌いですが、法律で禁止されているわけでもないのに、ここまで喫煙者が差別されるのもおかしな話だと思います。完全分煙、医療費負担増で自己責任でよいと思います」(心臓血管外科,40代,男性)「禁煙して『吸えないストレス』から解放されて、とても楽になりました」(消化器内科,40代,男性)「喫煙による被害の啓蒙VTRを小学生の頃から奨励したり、基本的にたばこ会社を撤退させたらどうか」(循環器内科,40代,女性)「喫煙者があまりにも迫害されているような気がします」(整形外科,50代,男性)「今年の世界禁煙デーの標語で厚生労働省の弱腰が明らか。WHOは『Bantobaccoadvertising,promotionandsponsorship』(タバコの宣伝、販売促進活動、スポンサー活動を禁止しよう)、対して厚生労働省の標語は『たばこによる健康影響を正しく理解しよう』。日本政府は本当に禁煙を推進する覚悟があるのか!」(循環器内科,50代,男性)「わかっちゃいるけど・・・と思っている方も多いと思うので、もっと容易に禁煙外来にかかれる(例えば小児の様に公費負担にするとか)体制を作るべきと思う」(内科,70代以上,男性)「敷地内禁煙にしていても抜け道はいくらでもあり、当院でも受動喫煙対策にかなり悩まされています。生活保護費を受給している膀胱がん患者が、ぬけぬけとタバコがやめられないとおっしゃるのが許せません」(泌尿器科,40代,男性)「過度の禁煙押し付けでうつ状態になった患者を診察したことがある。喫煙をやめさせようとする余り他の病気を発症させては本末転倒では。また、低所得層・過酷勤務層ほど喫煙率が高いことがわかっている。単にたばこの価格を上げるだけでは低所得者層への逆進課税になってしまう。販売禁止のほうが理に適っているのではないか」(内科,40代,男性)「禁煙したいと以前から思っておりますが、無理でした。値段を上げることが喫煙者を減らす第一歩ではないかと思います」(腎臓内科,40代,男性)「自分は吸わないが、安定税収入のために国民をニコチン中毒にしておいて今更医療費抑制のためにタバコの価格を上げるのはおかしいと思う」(循環器内科,60代,男性)「禁煙をした医師として『禁煙支援外来』に携わっている。吸ったことのない先生よりは適切な指導が出来ると自負している」(循環器内科,60代,男性)「病院のみならず、人格形成に大きく関わる小中学校教員自身の禁煙を徹底させる。校内禁煙は当然であるが校門近くでたばこを吸っている、あるいは駐車場の車内で吸っている教師を児童が見かけたという話をよく聞く」(消化器外科,50代,男性)「25年前結婚を機に、一つぐらい体に良いことをと思いたばこをやめました。やめてから良いことばかりです。患者への教育のためにも、少なくとも医師が率先して禁煙すべき」(外科,50代,男性)「禁煙歴27年。患者さんに禁煙を勧める時に自分が吸っていたのでは迫力ないし、自分の体験を話しながら説明しやすい」(精神科,60代,男性)「19歳頃から60歳まで吸いました。診察中にCOPDの患者さんが多くおられ、それが怖くて禁煙し13年。医療費が掛かるからと値段を上げるのは賛成できませんが、COPD等で苦しまれていることを知らせることが必要と考えます」(外科,70代以上,男性)「実の父が脳梗塞を患い、それでもタバコを吸って、再アタックが起きて寝たきりになり、ぼろぼろになって行くのを目の当たりにして禁煙した」(内科,50代,男性)「『風立ちぬ』で喫煙シーンが多かったが、監督自身がヘビースモーカーなので作品の製作にあたり何も考慮しないと思われる。映画やドラマでも喫煙の場面を極力減らしてほしい」(消化器内科,50代,男性)「早く禁煙しなければと思いながらきっかけが持てずにいます。いっそ1000円以上になればやめると思う」(内科,40代,女性)「価格を上げることが一番禁煙に繋がる早道と思う」(内科,70代以上,男性)「(呼吸器学会など)専門医取得に禁煙証明が必要となるといった動きは非常に良いと思う。医師が率先して禁煙し、患者への啓蒙活動に取り組むべき」(糖尿病・代謝・内分泌内科,30代,女性)「精神科ではたばこを必要とする患者さんがいるのは事実ですが,そういう方は一部に減りました。禁煙ってできるんだなあという印象をもちました」(精神科,40代,女性)「高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病、心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症、悪性腫瘍、肺疾患などの病名での治療では、喫煙患者の医療費自己負担率を8割位に上げるのが、禁煙促進に有効と考えます」(心臓血管外科,60代,女性)「10年以上前から間接喫煙の弊害を病院管理者に訴えましたが何も聞いてもらえませんでした。病院機能評価などで世間体が気になって初めて対策が取られました。情けないの一言です」(小児科,50代,男性)「アニメや映画での自粛や規制はやりすぎ」(小児科,40代,男性)「患者さんから『たばこ臭い人(助手)がいてリハビリを受けたくない』と苦情あり」(整形外科,50代,男性)「400円への値上げを契機に喫煙を止めた。値上げが無ければ喫煙を続けていた。経済的な理由ではなかったけれど…」(内科,60代,男性)「自分自身もなかなかやめられず、患者さんにダメですという時に心が痛い」(循環器内科,20代,男性)「広く禁煙運動が叫ばれ始めた頃に職業柄模範を示す必要があると考え半年間くらいかけて禁煙に成功。1日6-7本程度で50年くらい続けたが、結構苦労した思いがある」(その他,70代以上,男性)「喫煙者の『他人には迷惑かけてない』という妄言にはウンザリ。健康保険から金を取り、火事の原因や受動喫煙、路上喫煙で小児に火傷など、他人に直接的にも迷惑をかけているのに。大幅値上げ、健康保険からの排除などすべき」(耳鼻咽喉科,40代,男性)「喫煙本数と疾患には明確な関係があります。価格を上げ若年者には手に入りにくいところ(例えば1箱10000円)まで値上げすべきでしょう」(呼吸器内科,50代,男性)「1本100円程度にして、喫煙でリスクの上がるがん治療にJTから寄付してもらう」(皮膚科,40代,男性)「禁煙の推進や分煙には賛成するが、喫煙者の人格や喫煙行為そのものを害とみなすようなスタンス(今回の『風立ちぬ』に対する日本禁煙学会の意見など)は、原理主義的で違和感を感じる」(小児科,30代,男性)「喫煙者の患者の声として、今度値上げするなら禁煙するという声が多い。小刻みな値上げより、思い切った値上げが効果的なのではと考える」(皮膚科,30代,女性)「生活環境の変化に伴い自然にやめました。表現については、じゃあ過去の映画やドラマ等放送しないのか?レンタル等しないのか?どこまでが許容されて、どこからが問題かは、製作者が判断することと思います」(呼吸器内科,20代,女性)「煙草による経済振興と経済的損失を適正に数値表示してもらえれば功罪がわかり易くなるでしょう」(内科,60代,男性)「15年くらい吸っていたが、家族のために健康でいなければという意識からニコチンガム発売をきっかけに19年前に禁煙しました。大掃除の時、壁をふくと雑巾が真っ黒になりこれだけのタールが体内に入っていたのかと驚いた記憶がある」(内科,50代,男性)「タバコについては税金が課されているが、喫煙による疾病の医療費をまかなうほどではない事も事実。その辺の矛盾も検討すべき」(外科,30代,男性)「若いときから自動的に喫煙を始めてしまった。これからの若い人には喫煙を始めないように勧めるべきだ。医師の喫煙者は多いと思う」(産婦人科,70代以上,男性)「敷地内での禁煙で喫煙出来なくなった職員や入院患者が病院の正門で喫煙している。敷地外なので積極的に注意出来ない状況。病院のイメージが悪化しないか心配。」(臨床研修医,20代,男性)「喫煙者は、自分が中毒患者であるということを自覚すべき。患者は健康な人と同じに生命保険に入ることが難しいのは、ほかの慢性的で治療困難な疾患と同じですので、容易に理解できるはず。たばこが原因ということが明らかな癌は、保険診療を受ける権利はないと思います」(腫瘍科,40代,女性)「喫煙が健康被害があることがはっきりしているのだから、たばこの価格を上げその分を医療費に回せばよいと思う。不満なら吸わなければいい」(呼吸器内科,30代,男性)「禁煙出来ない患者は大勢いるため、タバコの値段を上げる以外にも保険料や医療負担額を上げる等の措置が必要であると思われる」(腎臓内科,30代,男性)「日本の法律上「20歳以上が許可」されているが、20歳にもなって「さあ吸おうか」などという馬鹿なことを考える人はいないでしょう。未成年で吸い始める人がほとんどでは。そういう観点で言えば「喫煙者はすべからく違法」と言っても過言ではないのでは」(循環器内科,40代,男性)「小児アレルギーを専門としています。子供が喘息で加療しているにもかかわらず、禁煙しない父親、祖父がいて困っています。日本では受動喫煙の害に対する意識が乏しいと思います」(小児科,50代,女性)「医師である限り、解剖のときに見たあの喫煙者の肺所見を知っていながら、よく自分が喫煙する気になると思う」(皮膚科,60代,男性)「喫煙者の話を聴くと、値段が1,000円以上になればやめる、という人が多いので、それくらいには値上げしても良いと思う」(膠原病・リウマチ科,50代,女性)「たばこを吸う人が減って、医療費が抑制できたらいいと思っています。私の家族もスモーカーでしたが、全然やめてくれず、最終的に脳梗塞になりました」(小児科,40代,女性)「生活保護の患者さんにヘビースモーカーが多い。禁煙指導しても聞く耳を持たない」(精神科,50代,女性)「喫煙者の保険料や医療費を上げるという意見は、理解出来るが非現実的。喫煙者の定義が困難であるし、抵抗も大きいと予想される。それよりも喫煙者の医療費に見合うだけタバコを値上げすべきであり、そうすれば喫煙の抑制にもなる」(麻酔科,50代,男性)「耳鼻咽喉科医ですが、タバコ関連癌が多いことがこの科の癌の特徴の一つです。タバコは心疾患や肺疾患の原因でもあり、「タバコは百害あって一利なし」だと思います。タバコ農家にはお気の毒ですが、JTもずいぶんタバコ以外の製品に移行できたでしょうから、容易に購買できない価格にして、喫煙をやめる人を増やすようにしていただきたい」(耳鼻咽喉科,50代,男性)「禁煙外来をしています。禁煙中にあっても再喫煙をなってしまうきっかけのほとんどは、飲み会です。会場内禁煙でありさえすれば、再喫煙の誘惑に負けてしまう確率はきわめて低くなります。喫煙シーンなど刺激を避けることが不可欠となります。また、禁煙中のがんばっている患者さんの中には、街で見える所で売って欲しくないと言っています。また、今回の一連の騒動ですが、作者自身がヘビースモーカーであり、自身の喫煙環境を満たすため(日本の社会の禁煙推進に反対するため)、作品を通して、訴えている側面がとても感じられ、危険であると感じます。反対意見を言われる方は、タバコがいかに依存性があって、反社会的な薬物であるという事が認識されていないかと思われます。」(内科,50代,男性)「日本のタバコは安すぎます。海外ではタバコに『killyou』とまで書いてあり、その上、1000円くらいです」(泌尿器科,40代,男性)「自身が喫煙しており、依存症であると認識している。麻薬や覚醒剤のように、非合法なものとして取り扱ってくれればさすがに禁煙すると思う」(内科,30代,男性)「主人は結婚を機に禁煙しました。そのときにはかなり喫煙と健康被害についてレクチャーをしましたが…」(産婦人科,40代,女性)

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アビエイター【強迫性障害】

ハワード・ヒューズ―完璧主義の光と影この映画の舞台は、20世紀前半のアメリカ。黎明期の航空業界と全盛期のハリウッドを股にかけて活躍した実在の人物、ハワード・ヒューズの激動の半生が描かれています。彼は若くして、資産家の両親を失い、その莫大な遺産を受け継ぎ、航空工学の才能と情熱により、飛行機作りと映画作りに明け暮れ、時代のパイオニアとして大成功をおさめます。また、数々のハリウッドの美女たちと浮名を流し、世界一の富と名声をほしいままにします。そんなハワードを衝(つ)き動かすものは、生まれながらの完璧主義と執着心でした。しかし、同時に、それらは諸刃の剣として、彼を苦しめ、数多い奇行の逸話を残しました。社会的な成功者としての強さと心の闇を持つ者としての脆さ、この彼のギャップは、私たちの好奇心を大いに焚きつけます。今回は、この映画を通して、みなさんといっしょにハワード・ヒューズの光と影をメンタルヘルスの視点から探っていきましょう。強迫観念―完璧さを求める心の囚われハワードは若くして、製作した映画で大ヒットを飛ばし、また、自身の設計、操縦した飛行機により世界最速の記録を塗り替えます。さらに、世界一周を4日で成し遂げるという新記録も樹立して、華やかなハリウッドで一躍スポットライトを浴びるようになります。これらの偉業の原動力は、ものごとを何でも丁寧に几帳面にやろうとする彼の完璧主義の性格によるものでした。映画製作では、撮影に納得しないと、時には同じシーンを100テイク近くも撮り直し、編集作業では同じ映像を繰り返し確認し、膨大な時間を費やしています。飛行機製作では、機体の流線形の美しさや操縦かんの触り心地にこだわり続けます。しかし、完璧主義は職業的に生かされる一方、完璧さを求めるあまり、完璧じゃないと気が済まなくなり、本人も周りも苦しむことにもなります。ハワードは、心を許した恋人に打ち明けます。「時々、本当はありえないかもしれないおかしな考えに取り憑(つ)かれ」「正気を失うんじゃないかと怖くなる」と。彼は、自分の心の闇にうすうす気付いていたのでした。自分の性分のおかげで、社会的に成功して、世の中をコントロールできるようになってはいます。しかし、同時に、その性分が裏目に出てしまい、自分でバカバカしい(不合理)と思えることにまでこだわり、その考えに心を囚われ(侵入思考)、自分の心をうまくコントロールできなくなっていくのです。これは、まさに心に強く迫ってくる考えで、強迫観念と呼ばれます。強迫行為―バカバカしいと分かっているのに、やらずにはいられないパーティ会場で、ハワードがトイレで手を洗うシーンが印象的です。彼は、恋人が上層部の男のご機嫌とりをしてベタベタしている様子に苛立ち、トイレに駆け込みます。そして、念入りな手洗いが始まるのです。その後のトイレでの手洗いでのシーンでは、血が出るまでゴシゴシと手洗いを続けます。その痛々しさは、見ている私たちにも伝わってきます。彼に一体、何が起きているのでしょうか?実は、彼の完璧主義は、美しさから清潔さへの追求においても発揮されていました。彼は、ちょっとしたストレスをきっかけに、手の不潔さが気になってしまい、手洗いをしなければ気が済まないという強迫観念で頭の中がいっぱいになります。そして、ついには、手洗いを始めてしまい、止めたいと思いながらも完璧だと自分で納得し安心するまで手洗いを止められないのでした。もはやきれい好きの度を越しています。このように、バカバカしいと分かっているのに、やらずにはいられない行為、やめられない行為を、強迫行為と言います。特に、手洗いを繰り返す行為を洗浄強迫と呼びます。また、確認を繰り返す行為は確認強迫と呼びますが、彼の映画作りや飛行機作りでの度を越した執拗な確認癖は、これに当てはまるとも言えそうです。強迫性恐怖―心の囚われが不安を招くハワードは、飛行機の操縦かんをセロフィンで包んで、清潔にしようとしています。また、トイレでは、たまたま居合わせた体の不自由な男性が、タオルを取ってほしいと頼みますが、彼は「できないんだ」と申し訳なさそうに断っています。もちろん、出る時にトイレのドアノブも触れません。そんな彼が、最愛の恋人が口を付けた牛乳ビンをちょっとためらいながらも思い切って飲むシーンは、また印象的です。その後、恋人とうまくいかなくなり、社会的にピンチになるなどのストレスが引き金となって、症状が悪化していくことが分かりやすく描かれています。強迫観念はエスカレートしていくと、恐怖が募ってきます(強迫性恐怖)。不潔さに対しての強迫観念から不安が強まる場合は、特に不潔恐怖と言います。いわゆる潔癖症です。きれい好きは、裏を返せば、不潔恐怖になりうるのです。彼自身、やがては不潔さを気にするあまり、部屋から出られなくなっていきます。また、不完全さに対しての強迫観念から不安が強まる場合、不完全恐怖と言います。やり直し―完璧でなければ最初から全てをやり直すハワードの浮気が原因でその最愛の恋人が家を出て行った直後のシーン。彼は、自分の衣類が雑然と部屋に投げ出されている状況が際立って目に入ってしまい、不潔さや不完全さへの強迫性恐怖が一気に押し寄せてきます。そして、衝動的に家にあった衣類を全て燃やし始めます。最後には、自分が着ていた服までも燃やし、生まれたままの姿で棒立ちになるのでした。過去を脱ぎ捨て、リセットを望むかのように。これは、完璧でなければ最初から全てをやり直すという、やり直し(取り消し)と呼ばれる心理メカニズム(防衛機制)でもあります。彼の完璧主義の信念に通じるものでもあります。完璧さを求めるあまり、言い換えれば、不完全恐怖から逃れるために、完璧か無のどちらかでなければ気が済まなくなり、無にしてやり直すという強迫行為です。強迫儀式―自分の行動の儀式化その後、ハワードは、飛行機事故で体が不自由になり、ライバル会社に自分の会社を乗っ取られそうになるというプレッシャーもあいまって、ついに、部屋にこもって出られなくなります。そして、彼は、紙、髭、爪が伸び放題のまま、顔も体も洗わずに、素っ裸で延々と自分自身に訴えかけます。「最初から繰り返せ!」と。そして、自分の行動を決められた手順で正確に実行しようとします。まるで儀式を執り行うかのように、同じ言葉や動きを繰り返すのです。これは、強迫儀式と呼ばれます。さらに、この儀式が心の中の言葉やイメージを思い浮かべる行為にまで及ぶと、体の動きがゆっくりになっていきます(強迫性緩慢)。例えるなら、ギアが硬すぎて吹かされ続けている車のエンジンです。こうして、彼の本来の才能や情熱は、食事の用意の仕方やばい菌に触れない方法などの儀式の確立に注がれていったのでした。もともと彼は欲しいものは全てを手に入れられる立場にあり、自分にできないことはないという感覚(万能感)が強かっただけに、誰も彼を止めることができませんでした。だからこそ、病状も深刻化していったと考えられます。強迫性障害―強迫観念と強迫行為を主とする部屋ごもりが長くなるにつれて、ハワードはゴミをため込むようになります。彼の部屋には、彼がものに触れる時に使ったティッシュが山のように床に散乱しています。そして、なんと自分のおしっこを入れたビンを整列させて並べています(強迫的ため込み、強迫的保存症)。潔癖な性格のはずなのに、自分の出した垢、爪、ティッシュ、おしっこなどは大丈夫なのでした。もはや清潔かどうかの判断基準は、彼の思い込み(認知の歪み)によって大きく狂ってしまっていたのです。彼の苦悩と狂気が強烈に描かれているシーンです。これは、最近、社会問題にもなっている「ゴミ屋敷」の主人の収集癖にもつながってくる症状とも言えます。そのゴミに価値があるかどうかは本人の思い込みによるものが大きいようです。また、彼は言葉を繰り返して言ってしまい、止まらなくなる症状がいくつかのシーンで見られます。「青写真を見せろ」「ミルクをもって来い」「最初からやり直せ」「風邪をうつしたくない」「未来への道だ」などの言葉でした。相手や周りに変だと思われることは重々自覚しており、苦しそうに手で口を塞いでいます。このように、やってはいけないと思えば思うほど(禁断的思考)、やらずにはいられなくなる行為も強迫行為と言えます。以上を振り返ると、ハワード・ヒューズは、強迫観念と強迫行為を主として、強迫性恐怖、強迫儀式、強迫性緩慢、強迫的ため込み、禁断的思考などの多彩な症状も見られる、重度の強迫性障害を患っていたことが伺えます。原因(1)―思い通りの子ども時代それでは、ハワードはなぜ強迫性障害になってしまったのでしょうか?すでに、彼の完璧主義で潔癖な性格とストレスについて触れましたが、そもそもなぜ彼はこんな性格になったのでしょうか? ハワードの生い立ちを調べると、14歳で飛行訓練を受けるなど、彼はとても裕福な家庭で育ちました。しかも、11歳にして故郷ヒューストンで第1号となる無線放送セットを作り上げるなど、頭も抜群に良かったようです。幼少期の病気による聴覚障害を除くと、彼は一貫してもてはやされ、自分の思うままの子ども時代を過ごし、挫折などの失敗体験が少なすぎていました。これが、彼の完璧主義の性格を作り上げたようです。原因(2)―母親の言いつけさらに、母親の絶大な影響がありました。彼が幼少期に母親から言いつけられる記憶を思い出すシーンがあります。裸の自分が母親に体を洗われている場面です。母親から「か・く・り(隔離)・・・、分かるかしら?」「伝染病がどんなに恐ろしいかも知っている?」「あなたは安全じゃないのよ」と言い諭されています。ここから、母親自身が不潔なものに対して神経質で過保護であることが伺えます。実際の伝記にも、母親は学校の先生、ボーイスカウトの隊長、サマーキャンプの指導員に「病気の人に近付けないで」との内容の手紙を書いていたというエピソードが残っています。彼の周りも母親の訴えに気を使って、彼を見かけると、「具合は悪くないか?」と過剰に気にかけていたようです。このようにして、幼い頃から、母親を中心として周りが病気を予防しようと過剰にかかわること(弁別刺激)により、彼は清潔であれば褒められるということを学び(オペラント学習)、潔癖は良いことであるという考え方(認知)が、繰り返し刷り込まれていった(強化)のです。これが、彼の潔癖な性格を形作りました。そして、大人になったハワードが具合を悪くした時につぶやくのは、「か・く・り・だ(隔離だ)」でした。あの母親の言葉です。この言葉は、彼の生涯において根深く付きまとっていることが伺えます。まさに、彼の人生の本質的な部分です。この隔離とは、もともとはコレラなど伝染病の患者を隔離する意味がありますが、自分の感情や行動に実感が伴わなくなる心理メカニズム(防衛機制)である「(感情の)隔離」「分離」をほのめかしているようにも思えます。部屋にこもって強迫儀式や強迫性緩慢に陥っている彼は、まさに、心を囚われ、自分自身が「隔離」されてしまっているのでした。ちなみに、最近、ばい菌や臭いをイメージ化した過剰な徐菌や消臭のテレビコマーシャルをよく見かけます。この影響が子どもたちをハワードのような不潔恐怖だけでなく、口臭・腋臭などの自分の匂いへの恐怖(自己臭恐怖)を持つ神経質な大人へと駆り立てていくのではないかと心配になってしまいます。実際に、清潔すぎる環境で育った子どもたちは、異物に対しての免疫が過敏に働き(アレルギー)、喘息や花粉症になりやすくなると言われています。さらには、体のアレルギー反応だけでなく、心の「アレルギー反応」として、汚れたものや臭うものへの恐怖が高まってしまうということも考えられるわけです。原因(3)―遺伝的な傾向ヒトが完璧さを求める欲求にもっと根源的な理由はないでしょうか?完璧さとは、対称性、正確性、美意識であり、そこには秩序があります。この秩序の欲求は、どうやら、動物の縄張りを守る習性(縄張り行動)に由来し、脈々と私たちの遺伝子にもそれぞれ多かれ少なかれ受け継がれ、組み込まれているようです。ですので、この遺伝的な傾向が強いだけで、強迫性障害になりやすくなるとも言えます。つまり、ハワードの強迫性障害は、子ども時代の裕福さや母親などの周りのかかわり、成人後のストレス(環境因子)だけでなく、ヒトそれぞれが元来持っている遺伝的な傾向(個体因子)も絡み合った結果として、出来上がったのではないかということが考えられます。治療―薬物療法と認知行動療法部屋にこもっていたハワードでしたが、ライバル会社と手を組んでいる議員から汚職の疑いをかけられ、ついに強制的に公聴会に呼び出されます。彼が外出を決意した時、助けにやってきた恋人とのやり取りが興味深いです。彼女は言います。「さあ、ここ(洗面所)で顔を洗いなさい」「私はどこにも行かないわよ」と。「きみには清潔に見えるかい?」というハワードに、彼女は「何も清潔なものなんかないわよ」「でも私たちはベストを尽くすものよ」と言い、彼に顔を洗わせる後押しをします。これは、あえて恐怖の対称に曝(さら)されて逃げ出したくなる反応を妨害し、馴らしていく(馴化)という治療法でもあります(曝露反応妨害法)。すっきりした彼は、思わず言います。「結婚しないか?」と。うわての彼女は「私のためにやってくれたのね」と受け流します。好ましい行動に対して賞賛を与えており、この行動を強化しようとしています(オペラント強化技法)。かつて幼少期に強化された潔癖な考え方を拭い去り(学習解除)、不潔にこだわらないという新しい考え方に修正しようとしています。このように、もともとの不潔なものに対する思考パターン(認知パターン)、行動パターンを変えていく治療法をまとめて認知行動療法と呼びます。現在の強迫性障害の治療は、薬物療法とこの認知行動療法が主流です。シネマセラピーラストシーンでハワードは、ついに、世界最大の飛行機を完成させ、自らが操縦し、飛行を達成させます。この飛行機は、今でも最長の翼幅を持つ航空機として、記録を保持し続けています。しかし、映画では描かれていない晩年の彼は、強迫性障害を悪化させ、事故による痛みの治療で覚えてしまった麻薬を乱用してしまい、薬物依存症にもなっていました。彼は、全財産をなげうってまで、飛行機作りに全てを賭けていました。そこまでして彼が飛行機をこよなく愛したのは、飛ぶことで全てを超越し、心の安らぎが得られるからだったようです。彼は、アビエイター(飛行機操縦士)として、自分の飛行機を完璧に操縦することができました。しかし、皮肉にも、自分の心は、完璧さを求めるあまりに制御が利かない「自動操縦」になってしまい、生涯最後まで「手動操縦」をうまく行うことはできなかったのでした。ハワード・ヒューズの生き様と心の病気は、まさにコインの裏と表です。私たちは、ハワードから完璧さや潔癖さを求めることの危うさを教わることで、ほどよい心の操縦法を見出していくことができるのではないでしょうか?1)エキスパートによる強迫性障害(OCD)(星和書店) 上島国利2)標準精神医学(医学書院) 野村総一郎3)STEP精神科(海馬書房) 岸本年史4)“Howard Hughes: His life and Madness”5)Donald L. Barlett & James B. Steele

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告白(続)【ソーシャルサポート】

もうどうでもいい皆さんは、人間関係や仕事で追い詰められて、「もういっぱいいっぱい」という気分になったありませんか?そして、日々の生活が「もうどうでもいい」くらい煮詰まってしまったことはありませんか?そうなってしまう原因として、孤立していることがよくあります。今回は、この孤立の危うさをテーマに、映画「告白」の登場人物である少年B、少年Bの母親、そして少年Aのそれぞれの心の闇に迫ります。ストーリーの展開は、次々と変わる登場人物たちの視点によって、それぞれの抱える心の闇が見透かされ、ある事件の全体像が少しずつ浮き彫りになっていきます。そして、事件後、その心の闇が重なり合い、希望の「光」は見えなくなっていくのです。この心の闇の大きな原因は、孤立です。これから、この孤立の心理をみなさんといっしょに掘り下げていきたいと思います。そして、そこから、私たちの日常に生かせる心のあり方のヒントを探っていきたいと思います。少年Bの「心の闇」(1)原因―思春期の抱えきれないストレス因子登場人物の中学生の少年Bは、クラスメートの少年Aとの「遊び」から、追い詰められて、担任教師の森口先生の幼い娘を死なせてしまいます。警察に事故と判断されてしまいますが、その真相に辿りついた森口先生は、クラスメート全員のいる教室で明かします。そして、復讐として、少年Aと少年Bの飲んだ牛乳パックにHIVに感染した血液を注入していたことをみんなの前で告げたのでした。少年Bは、自分がエイズで死ぬこと、クラスのいじめのターゲットになること、殺人者として追及されることを恐れ、その後は、自室にこもり、不登校になり、「心の病」を発症するのでした。実際に、思春期の心は、とても危うさをはらんでいます。なぜなら、体と同じく、心も飛躍的に成長をしていく中で、心が過敏になり、不安定になりやすい時期でもあるからです。また、彼は、溺愛する母親によってあまり我慢をせずに「大切」に育てられたこともあり、彼の心はとても脆く弱いことも分かります(脆弱性)。彼の不安定な心は、いとも簡単に少年Aの挑発的な捨てゼリフによって、殺人へと駆り立てて行ってしまったのでした。そして、その後にふりかかるストレスに耐えられなくなるのでした。(2)症状―多様な広がりがあるしばらくして、少年Bのおかしな様子に、彼の母親は気付き心配します。「自分の触れたものや汚れたものは、絶対、私や夫に触れさせず、全て自分で洗い」「(便器を)磨き上げ(ている)」「そのくせ自分は髪も洗わず、風呂にも入らず」と(洗浄強迫)。一方、少年Bは「くさい」「でもこれが生きてる証」「この歯もこの髪もこの爪もこの臭いも」と自分が普通ではなくなっていくことに自覚がありません。そして、「僕が必死で」(HIVウイルスが母親に)感染しないようにって」「死なないようにって」と自分がHIVウイルスをまき散らしていると思い込んでいます(加害妄想)。また、少年Bは、新しい担任教師のウェルテルとクラスメートの美月が毎週お見舞いにやってくるたびに怯えます。そして、対応した母親に向かって「余計なこと、しゃべんなよ、このクソババア」と奇声を上げて荒れています。その理由を彼は心の中で語ります。「森口のせいだ」「森口が僕を殺そうと、家にスパイまで送り込んで」「なのに母さんはペラペラと森口の悪口なんか・・・」と(被害妄想)。やがて、「僕は生きてる?」「その実感が全然ない」と自問自答します(離人症)。そして、アルバムに写っている自分自身を見て、母親に問いかけます。「この子は誰?」「なんで笑ってるの?」と。もはや自分自身が分からなくなっています(解離)。そして、最後に、「ごめんなさい」「直くん(少年B)をちゃんと育ててあげられなくて」と漏らす母親が、「出来損ない」と自分をバカにした少年Aにすり替わって見えてしまい(幻覚)、さらなる事件を起こしてしまうのです。このように、少年Bの症状は、強迫、離人症、解離、幻覚妄想など多様に広がっていきます。(3)診断―どうすれば良かったか?原因が明らかな心理的なストレスであり(心因性)、症状が多様な形状であることから(多形性)、少年Bの診断としては、急性精神病(急性一過性精神病性障害)が当てはまります。ただ、ストーリーの展開では、3か月が経とうとしています。症状が、固定化、慢性化するようなら、統合失調症に診断が変更されます。少年Bがこのような心の失調を引き起こさないためには、どうすれば良かったのでしょうか?彼は、心理的なストレスによって追い詰められていました。そして、「エイズになる」「いじめられる」「殺人者として責められる」という葛藤を抱えたまま出口が見えずに、煮詰まっていました。この煮詰まりによる感情の高ぶりは、緊張感や恐怖感を煽り、様々な症状を引き起こします。感情が理性を上回り、自分自身を冷静に見ること(客観視)が難しくなっています。彼は、理性を取り戻すため、まず誰かに心の内を正直に打ち明け、感情を吐き出し、早く楽になるべきでした。その相手は、まずは母親であり、家族でした。さらには、スクールカウンセラーなどの社会的な支援です(ソーシャルサポート)。しかし、彼にそれをできなくさせたのは、実は、母親に「心の闇」があったからだったのです。そして、彼の孤立はますます深まっていったのでした。少年Bの母親の「心の闇」(1)完璧主義の二面性少年Bの母親は、家でいつも化粧をして、ブラウスを着て、身ぎれいにしています。立派な家の中はオシャレなインテリアを施し、庭には見事なバラを咲かせています。あまりにも完璧な専業主婦です。しかし、少年が事件を起こした時、母親は森口先生の目の前で、森口先生の死んだ娘に対してではなく息子に対して、「かわいそうに」と繰り返します。さらに、新任の教師ウェルテルの前で、「前の担任のあの方、シングルマザー」「自分の子どもばかりにかまけて」と森口先生をあからさまに非難します。そして、「何もかもがあの女(森口先生)のせいだ」「この子(息子)はただ悪い友達に騙されて手伝いをさせられただけなのに」と庇います。なぜ、少年Bの母親は、いとも簡単に人のせいにしてしまうことができるのでしょうか?実は、彼女の完璧さには、ひたむきさや一生懸命さなどの良さと同時に、危うさもあります。自分が完璧であるという自信は、裏を返せば、「自分のすることはいつも正しい」という傲慢で独りよがりな発想に陥りやすくなります。その心理によって、問題が起きた時は、いつも人のせいにするようになり(他罰性)、孤立していきます。完璧主義の二面性が見えてきます(表2)。表1 完璧主義の二面性危うさ良さ傲慢、独りよがり人のせいにする孤立、抱え込みやり直し自信ひたむき一生懸命几帳面、真面目(2)歪んだ母性―条件付きの愛情母親は少年Bに「直くんは良い子」「勉強だって運動だって」と言って聞かせてきました。彼女は、自分の子育ても完璧であるという自信に溢れ、完璧な母親であることにも喜びを感じていました。しかし、現実には、少年Bは、中学になり、成績が落ち込み、部活動でも冴えません。そして、母親は「あの子はやればできる子なんです」と言い、必死に他人にも自分にも言い聞かせるようになっていきます。少年Bは、「良い子」、つまり完璧な子でなければならないのです一方、少年Bは、母親のその期待に必死に応えてきました。しかし、「いっぱいいっぱい」の限界までに達しつつありました。そんな中、事件が起きたのでした。彼は、殺人というとんでもないことをして、その復讐を受けてエイズになった「悪い子」である自分はもはやこの家では生きていけない、つまりはこの時点で死を意味すると思い込んでいたのでした。実際に、最後に母親が言った「ごめん」「ちゃんと育ててあげられなくて」という言葉に、少年Bは異常なまでに敏感に反応してしまうのでした。本来、子どもは、「どんなことがあっても愛される」「守ってくれる」という無条件の愛情を感じ取り、母親を中心とする家族を絶対的な心の拠り所としているものです(安全基地)。ところが、少年Bには、「母親の思い通りの子になるなら愛される」「思い通りにならなければ愛されない」という条件付きの愛情として刷り込まれてしまい、心の拠り所が不安定なまま、とても脆く弱かったのでした(脆弱性)。(3)パーフェクトマザーの危うさ―孤立少年Bが、自分はもう死んでゾンビなったという妄想から、自分の感染した血液で街をゾンビ化させようとコンビニに行き、片っ端から品物に自分の血液を付けます。その事態を収拾させるため、母親は、「買い取りますから」と店員に土下座までしていました。母親は、決して病院にも警察にも助けを求めようとはしません。自分の日記に「夫は仕事でずっと家にいない」「長女は東京で大学生活だ」と記し、家族にも相談はしていません。彼女は、完璧であるはずの自分は弱いところを見せられないという心理からやせ我慢をして、豹変した少年Bを丸ごと抱え込み、ますます孤立していくのです。母親は、「この家には」「この子には私しかいない」「私が守るしか(ない)」と日記に記し、告白します。彼女にとって、家という空間が世界の全てであり、息子との関係が人間関係の全てにまでなってしまっていたのでした。そして、少年Bが母親に真実を漏らした時、彼女は、いとも簡単に「決心」してしまうのです(4)グッドイナフマザー ―ほど良い母親「直樹は、もう直樹じゃない」「優しかった直くんはもういない」「義彦さん(夫)、真理子(娘)、さようなら、そしてごめんなさい」「私は直樹を連れ、一足先に(天国へ行きます)」と、母親は最後まで自分の心情を細かく日記に書き記します。ここにも、彼女の几帳面さや真面目さという完璧主義が伝わってきます。彼女の注いだ紅茶が湯気を出しながらカップから溢れていく様子は、まさに「いっぱいいっぱい」を超えた心の様を象徴的に描いています。そして、包丁を持って、息子の部屋に向かうのでした。無理心中(拡大自殺)です。完璧を求める人は、完璧ではない状態に耐えられないのです。そして、完璧ではないなら、全てをやり直すそうとする心理メカニズムが働いてしまうのです(やり直し)。この母親は、自分の人生だけでなく、息子の人生も全てやり直そうと思い立っていたのでした。この母親にとって、子どもは自分の思い通りになる体の一部なのでした。完璧主義の人ほど、いざという時に脆く弱いことが分かります。この母親から学べることは、良すぎる母親、つまりはパーフェクトマザーの危うさです。そして、グッドイナッフマザー(ウィニコットによる)の大切さです。これは、ほど良い母親という意味です。ほど良い母親は、良すぎる母親とは違い、頑張りすぎないので、子どもを追い詰めず、ありのままに受け止めることができます(無条件の愛情)。また自分の限界をよく分かっているので、困ったら周りに助けを求めます(ソーシャルサポート)。この「ほど良さ」が、結果的に、子どもの心の健康にも良く、そして同時に母親自身の心の健康にも良いのです。少年Aの「心の闇」(1)「褒めてほしい」―承認欲求少年Aは、もともと成績優秀な大人しい生徒でした。そして、電子工学の知識と才能がありました。苦心の末に、「びっくり財布」という電流が流れる財布を発明し、その発明品を、彼としては珍しく好感を抱いていた森口先生に見てもらいたかったのです。しかし、それを試された森口先生は、「私を実験台にしたの」「こんなもの作って」「動物でも殺すつもり?」と呆れたように一方的にとがめてしまいます。実は、森口先生は、もともと、彼を「アブない子」という目で見てしまっていました(ラベリング)。その理由は、彼は、成績優秀である反面、川原で見つけた犬の死骸をわざと動物虐待に見せかけてインターネットに流すなど悪ぶる一面もあったからでした(露悪)。彼は、「そんなことしか言えないんだ」と言い、森口先生に失望します。そして、謎めいたことを言います。「パチン」「先生には聞こえない?」「大切なものが消えちゃう音」と。彼の言う「大切なもの」とは何なのでしょう?それは、「自分を褒めてほしい」、つまりは自分を認めてくれる「味方がほしい」という、彼なりの希望だったのでした(承認欲求)。そして、「消えちゃう音」とは、その希望が消える音、つまり期待が裏切られるショックの音なのでした。(2)味方が欲しい―安全基地の欠如どうして少年Aは、悪ぶるわりに味方がほしいのでしょうか?そして、どうして、いとも簡単に裏切られたというショックを受けてしまったのでしょうか? そのヒントは、その後、お付き合いを始めた美月に自分の生い立ちを打ち明けるシーンで見えてきます。「母親もいなくて、ずっと一人だったから」との告白です。彼の母親は、幼少期に彼の元を去っています。彼の父親は、その後に新しい妻と結婚し、新しい子どもをもうけ、彼は厄介者扱いをされてしまい、中学に入ると、離れた別の家での独り暮らしをしています。つまり、彼は、家族という心の拠り所となる感覚(安全基地)がもともと満たされていないのでした。その欲求不満な感覚から、安全基地となる新しい味方を不器用ながらも求めていたのでした。(3)大切にされていない―共感性欠如その後に、少年Aは自分の生い立ちをウェブサイトで告白します。「母は将来有望な電子工学の研究者」「その彼女が最低の凡人と結ばれ、生まれた子」「それが僕だ」「母は僕の母になるため、研究者としてのキャリアも輝かしい未来も捨てた」「でもすぐにそのことを後悔し、そうさせた僕も憎み」「あんたさえいなければ(と考え)」「母は再び研究者としての道を歩くことを決めた」「もちろん僕を捨てて」「その時、僕には聞こえた」「大切なものが消えてしまう音を」と。彼は、幼少期に母親が去るまで(喪失体験)、その母親から虐待を受けていたのでした。母親から溺愛された少年Bとは真逆の境遇です。彼には、「大切にされる」という体験がそもそもなかったのです。だから、自尊心も信頼感も育まれず、誰かを「大切にする」という人とのかかわりのお手本(ロールモデル)が身に付いていないのでした。相手をどう大切にしていいか分からず、さらには自分自身をどう大切にしていいかも分からないのでした。彼は、相手に全く感情移入できず、共感性は育まれていません(共感性欠如)。実際に、森口先生に事件の真相を問いただされた時、目の前いるのが、自分が殺したと思っている子の母親であることなど気にもしない様子で意気揚々と語っています。さらに、彼の低い自尊心から来るひねくれやひがみとして、悪ぶってもいます(露悪)。彼の寒々と荒涼とした心の様が生々しく描かれています。少年Aは、虐待などの不適切な養育環境により、対人関係を築く能力が育まれていない状態と言えます(反応性愛着障害)。自我(アイデンティティ)が目覚める思春期まで、彼の愛着の問題がはっきりとは気付かれていない理由として、彼が幼少期から知的に高かったことが上げられます。知的な高さにより、自我(アイデンティティ)が目覚めるまで「良い子」「大人しい子」として順応してしまっていたことが考えられます。(4)虐待による環境因子の影響が大きい―発達障害は否定的彼の感情移入しないこと(共感性欠如)は、「大切にされる」ことがなかったという虐待による環境因子の影響が大きいことが分かります。鑑別疾患となる発達障害に関しては、以下の3つの点で否定的です。1つ目は、小学校時代に人とのかかわり方に問題がないことです(社会性)。自分の発明品をクラスメートに見てもらい、感想を求めるなどのかかわりがあります。また、母親がいない寂しさや、母親に認められたいという欲求も強くあります。2つ目は、人との接し方がむしろ同年代よりも長けている点です(コミュニケーション)。少年Bに殺人計画を誘うシーンでは、プライドをくすぐる上手な言い方をしています。森口先生の娘に接するシーンでも、目線を子どもの位置まで下げ、子ども心を掴む言い回しをしていました。3つ目は、行動のパターン化やこだわりはありません(イマジネーション)。彼の電子工学への思い入れは、病的なこだわりではありません。美月を家に招きたい時、「ジュース飲む?」との遠回しな誘い方もできており、相手がどういうことを考えているかを見通し、どう言えば相手が喜ぶか、受け入れてくれるかもよく分かっています。(5)注目されたい―自己愛の肥大化その後、少年Aは、自分の発明品を発明コンクールに出品し、優秀賞を受賞します。彼は新聞で大々的に報道されることを期待していました。ところが、たまたま他に起きた大きな事件に掲載ページを奪われてしまい、腹を立てて言います。「いいことで褒められても誰も注目してくれないじゃん」と。そして、「褒めてもらいたい」から、「自分の才能を世間に認めさせたい」「誰よりも優秀な人間として注目されたい」という発想(自己愛)に肥大化していきます。それは、誰よりもまず、母親に自分の存在を気付いてもらう、母親に認めてもらうためでした。彼は、本当に褒めてほしい人、つまり自分の味方になる人は、自分の母親だけだという自分自身の一途な思いにすでに気付いていました。彼は回想します。かつて母親が、「あなたには、ママと同じ血が流れているの」「ママと同じ才能を受け継いでいるのよ」と繰り返し吹き込む場面です。この記憶こそが、彼にとって、どんなことでも自分の能力が世間に注目されることが、母親の目を自分に向けさせることになるという発想の原点になっています。だからこそ、彼は、「バカ」という言葉をよく使っています。「バカ中のバカ(少年B)」「君(少年B)は他のバカたち(クラスメートたち)とは違う」「バカ(父親)はバカ(義母)と結ばれる」などです。どの言葉を選ぶかによって、その人の価値観、さらには葛藤が透けて見えてきます。裏を返せば、「バカ」という言葉は、才能ある母親に認められずに捨てられたという彼自身の引け目や劣等感でもあり、彼の心の様を映し出しているとも言えそうです(投影)。(6)「殺す相手は誰でもいい」―認知の歪み「(自分の発明品で)全国大会で優秀賞を受賞した」「こんなんじゃ世間は少しも騒がない」「誰も」「母だって気付いてくれない」「もっと大きく、全マスコミが取り扱うすごい事件、殺人」「母の血を受け継いだからこそできる、そんな才能を生かした殺人」「殺す相手は誰でもいい」と考え、彼は暴走しました。また、自分がHIVに感染し、エイズという「死に至る病」になると思った時、心の底から喜んだのでした。彼は、殺人により有名になることで、または自分が死にそうになることで、母親に自分の存在に気付いてもらえる、母に会えるチャンスだと思っているのでした。彼は知的に高いのですが、ものごとのとらえ方がとても病的に偏っていることが分かります(認知の歪み)。その理由は、彼が大切にされてこなかった生い立ちから、「大切にされる」「大切にする」という感覚がもともとないので、人の命も自分の命も、彼にとってはとても「軽い」のでした。それでは、彼は、なぜ母親をこれほどまでに美化し(理想化)、父親をこき下ろすのでしょうか?彼は、母親が自分を虐待していたことを淡々と語ります。そこには、恨みつらみはなどありません。一方、それなりに責任を果たした父親には冷淡です。この心理は、彼は、電子工学の才能というアイデンティティに目覚める中、才能ある人のモデル、才能ある自分を肯定するモデルがどうしても必要だったのです(ロールモデル)。そして、かつて自分を捨てた母親を理想化し、自分の生き方を重ね合わせることで、一体化したかったのです(同一化)。こうして、理想化した母親像が、彼の唯一の支えになっています。だからこそ、この母親と別れた父親は、悪者になるわけです。しかし、同時に、彼は、いつか母親と感動の再会をするという心の支えが自分のファンタジーであるかもしれないということにもうすうす気付いています。だからこそ、実際に、彼は母親に会いに行くことにとても躊躇しているのでした。(7)「ただの暇つぶし」―刹那主義HIVが陰性であるという検査結果を知り、彼はがっかりします。「それからはもうただの暇つぶし」「笑顔とか涙とかあれもこれも全て生きてるのも」「ただのくだらない暇つぶし」と語り、「おまえなんかただの暇つぶし」と美月への思いも薄っぺらさをにじませます。その後、美月に「あんたなんかただの」「マザコン」と挑発されたことで、あっさり美月を殺めてしまうのでした。そして、さらに、母親に実際に会いに行ったところ、母親が上司の教授とできちゃった婚をしている事実を知り(直面化)、自分はとっくに忘れ去られていたと思い込みます。そして、自爆による無差別殺人の計画を立てるのでした。やはり、彼には相手も自分も大切にするという感覚がなく、その場限りで生きてしまうのでした(刹那主義)。彼は、幼少期から「愛されている」「幸せである」という経験をしてきていないため、これから「誰かを愛していこう」「幸せになろう」という前向きで積極的な発想自体が全く出てこないのでした。(8)治療―どうすれば良かったか?少年Aが、森口先生の娘を死なせないためには、どうすれば良かったのでしょうか?もうすでに手遅れであったかもしれません。ただ、仮にできることとして考えたいことは、彼が最初に発明品を森口先生に見せた時点で、森口先生が彼の才能を褒めることができたとしたら?さらに、発明コンクールの入選が新聞で大々的に報道され、母親の目にも止まったら?そして、母親と早い段階で会えることができたら?彼の最も危うい点は、孤立です。美月がかかわりを持とうとしましたが、やはり手遅れでした。孤立が続けば、ますます共感性は育まれなくなります。さらには、自分が満たされてこなかった人ほど、人が満たされている状況、つまり人の幸せを素直に喜べないことが分かります。ラストシーンで、姿を現した森口先生が少年Aに「これが私の復讐です」「本当の地獄」「ここから、あなたの更生の第一歩が始まるんです」と言い諭します。自分の作った爆弾で母親を死なせてしまったと少年Aは思い込んでいますが、本当に爆弾は爆発したのでしょうか?そのシーンで、森口先生は、少年Aの母親に会ったこと、少年Aを忘れていないという母親の思いを聞き出したことを彼に伝えています。爆発していない方が、「大切なもの」がまだあるというありがたみを彼がより強く感じ、さらには、彼はこれから母親に「大切にされる」可能性があるという含みを持たせています。原作とは違い、救いを少し残しています。彼は、自分も他人も命は大切にすることに気付くかもしれません。その時こそ、彼は心の底から自分のやってしまったことを償うことの大切さに気付くかもしれません。現代の少年犯罪も、彼らが満たされていない家庭環境であればあるほど、彼らの更生が危惧されます。なぜなら、彼らにとって、他人の幸せ自体が、屈辱や殺意を煽ってしまう可能性があるからです。これは、「殺すのは誰でも良かった」という無差別殺人の病理にも重なっていきます。その根っこには、自分もいつ死んでもいいという刹那主義があることが多いのです。ここから、非行少年の更生でまず大切なことが、彼らの安定した生活環境の保証であり、彼らを孤立させない社会的な介入であることがよく分かります(ソーシャルサッポート)。私たちが登場人物たちから学ぶこと―孤立の危うさ裕子先生は復讐の鬼となり、周りを巻き込んでいきます。全てを失ってしまった森口先生と、失うものが何もない少年Aは、心の荒みと心の危うさはよく似ています。見ている私たちの息詰まる閉塞感は、それぞれの登場人物の告白によって、徐々にガス抜きされていきました。そして、ラストシーンの森口先生の「ドッカーン」という大声は、この閉じた世界が一気に開放されていく感覚になります。この爆発音は、高まった感情の行き着くところを象徴しているようです。彼らの教室から醸し出される不気味で生々しい閉塞感により、周りの意見を鵜呑みにして、いつも周りに合わせる心理も危ういです(同調)。しかし、全く誰にも相談せず、人の意見に耳を傾けず、独りよがりになって追い込まれていく孤立の心理は、もっと危ういことが分かります。私たちが登場人物たちから学び取り、努めていくことは、助けを求められやすいオープンな場、つまりは社会のあり方ではないでしょうか?そして同時に、助けを求めることができるオープンな心のあり方ではないでしょうか?表2 登場人物のそれぞれの孤立の原因、結果、改善策少年B少年Bの母親少年A原因溺愛による不安定な心(脆弱性)→森口先生の娘の殺人「良い子」である義務感自分がエイズで死ぬ恐怖いじめのターゲットになる恐怖殺人者として追及される恐怖完璧主義息子の精神障害の発症虐待などの不適切な養育環境→対人関係を築く能力が育まれていない結果精神障害の発症無理心中(拡大自殺)未遂森口先生の娘の殺人未遂美月の殺人自爆による無差別殺人未遂改善策父親などの家族にも打ち明けるスクールカウンセラーなどの社会的な支援ほど良い加減を目指す夫などの家族にも相談する早期の社会的な介入早期の母親との再会本人を認めていくかかわり1)「告白」(双葉文庫) 湊かなえ2)「死刑でいいです」(共同通信社) 池谷孝司3)「愛着障害」(光文社新書) 岡田尊司4)「子ども虐待という第四の発達障害」(学研) 杉山登志郎

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出直し看護塾 呼吸管理に関する基礎知識

1.「おさえておくべき酸素療法の肝」2.「弱点克服!血液ガス」3.「楽しく学ぶ人工呼吸モードの基礎」4.「これで安心!人工呼吸器使用中の患者管理の基礎」 私たちにとって酸素は必要不可欠なものですが、高濃度の酸素を吸入することで呼吸が停止したり、取り返しのつかない合併症を引き起こしたりすることもあります。まずは、酸素療法についてわかりやすく解説します。人工呼吸器のグラフィックモニターやそれぞれの数字の意味、SIMVやCPAPといった各種モードの特徴、呼吸管理に必要な言葉の解説など、日常業務で使える知識が満載です。1.「おさえておくべき酸素療法の肝」人工呼吸器の管理方法について解説します。酸素は、医療において特別なものではなく、外来や病棟、手術室などすべての医療シーンで登場します。「酸素」と言うと、体にいいイメージがあるかもしれませんし、実際、酸素がなければ我々は生きていくことができません。しかし、必要不可欠な酸素も、高濃度の酸素を吸入すると呼吸が停止したり、取り返しのつかない合併症を引き起こすことがあります。色もなく、匂いもない酸素を安全に使用するために、しっかりとした知識を身につけておきましょう。呼吸器の解剖/呼吸器の生理/医療ガス/呼吸とは?/低酸素状態とCO2ナルコーシス/低流量システム(カヌラ、マスク、リザーバー付きマスク)/高流量システム(ベンチュリーマスク)/バッグバルブマスク2.「弱点克服!血液ガス」わけのわからない数字の羅列をスラスラ読んでいく先輩たち…「自分もああなれたら」と血液ガスの本を手に取った人は少なくないでしょう。ところが、実際に本を読んでもチンプンカンプンだったり…。確かに血液ガスは、難しいです。でも、すべてを理解する必要はありません。看護師の業務の中で必要な6つの検査項目だけを抽出し、そこにポイントを絞って解説します。pH の変動には必ず意味があるため、その意味を患者の呼吸状態や人工呼吸器の設定に絡めて判断していけば、「ちょっと二酸化炭素がたまってアシドーシスになっているかなぁ」とか、きっと呟けるようになりますよ。血液ガスの考え方/理解するために必要な正常値/呼吸性アシドーシス/呼吸性アシドーシスの代償反応/慢性呼吸性アシドーシス/呼吸性アシドーシスを呈する疾患とその治療/呼吸性アルカローシス/呼吸性アルカローシスを呈する疾患とその治療3.「楽しく学ぶ人工呼吸モードの基礎」人工呼吸器にグラフィックモニターがつくようになってから、人工呼吸器に詳しい人にとっては、より分かりやすくなりましたが、そうでない人にはより分かりにくくなってしまった、という現実があります。人工呼吸器から流れてくる空気には、色も臭いもありません。胸が上がっているのはわかっても、肺の膨らみを目で確認することはできません。そのために、空気の流れによって変化する気道の圧力や、気流のスピードを目に見えるようにしたのがグラフィックモニターなのですが、これらのことは、本を読んでもなかなか理解できるものではありません。実際に人工呼吸器を動かし、グラフや数字の意味、各種モードの特徴、人工呼吸器を管理していくうえで必要な略語を解説します。苦手だった人工呼吸器がきっと好きになると思いますよ。人工呼吸器の換気様式/グラフィックモニターの特徴/PEEP/I : E比/EIP/調節機械換気/補助調節換気/同期式間欠的強制換気/持続気道陽圧/圧支持換気/人工呼吸器の初期設定/ウィーニング

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「身体のために禁煙しましょう」、さて先生ご自身は?医師の喫煙率2012

分煙化、禁煙エリアの拡大と、社会全体として嫌煙モードが高まる一方の昨今。もちろん院内も例外ではなく、全館禁煙という施設も増加している様子。2011年の「全国たばこ喫煙者率調査」(JT実施)によると、日本全体では21.1%。2010年10月の値上げの影響を受けて大幅に下がった2011年調査と比較すると、減少率は鈍化しているようです。そんな中、患者さんに禁煙を勧める立場にある先生方の喫煙率はどうなのか?ケアネットで2011年9月に実施したアンケートでは8.6%。さて約1年後の今回の結果はいかに?「医師の喫煙率2012」、前回と比較しながらご覧下さい。また、疾患リスクとの関係から少しずつ高まりつつある「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」という考え方についても賛否をうかがってみました!結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細タバコについてお尋ねします。JTが2012年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」によると、現在の全国の喫煙者率は21.1%でした。うち男性は32.7%(前年比-1.0ポイント)、女性は10.4%(同-0.2ポイント)と、男女とも漸減傾向にあります。なお対前年比で見ると、昨年調査時は2010年10月の値上げの影響を受け全体で2.8ポイント下がりましたが、今年度調査では0.6ポイントの減少に留まりました。そこで先生にお尋ねします。Q1. 先生は喫煙されていますか。喫煙している以前喫煙していた喫煙したことがないQ2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。賛成反対どちらともいえないQ3. コメントをお願いします(ご自身の喫煙に関して、禁煙された方はそのきっかけ、院内の喫煙環境、禁煙外来を含め患者・家族からの要望や状況など、タバコに関わることでしたら何でも結構です)アンケート結果Q1. 先生は喫煙されていますか。Q2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。2012年8月17日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要医師の喫煙率は7.1%、国民全体での変化に比較し高い減少率調査対象者の喫煙率は7.1%、2011年9月に実施した同調査では8.6%であり、1.5ポイントの減少となった。国民全体では2012年21.1%(前年比-0.6ポイント)、2011年21.7%(同-2.8ポイント)と減少率の鈍化が見られる一方(JT実施「全国たばこ喫煙者率調査」より)、医師の喫煙者は着実に減りつつあることが見て取れる。なお「喫煙したことがない」医師は、前回と変わらず56.7%という結果となった。「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」 、考え方には約6割が賛成"喫煙は医療費増につながるため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき"という考え方に対する賛否を尋ねたところ、賛成58.1%、反対15.5%となった。賛成医師からは「なぜ非喫煙者が喫煙による疾患の医療費も負担しなければならないのか」「疾患リスクが上昇することは証明されているため、応分の負担を求めるべき」といった意見が多く寄せられた。反対派からは、「飲酒・肥満・塩分過多など他の生活習慣や嗜好品の扱いはどうするのか」「喫煙者確認が困難」などのコメントが寄せられた。禁煙のきっかけ「患者からの視線」「子供のため」「院内の禁煙拡大」など様々以前吸っていたが禁煙に成功した医師は全体の36.2%。きっかけとしては、「自身が禁煙を勧める側にあるため」「COPDの患者を見て」など立場上の理由のほか、「子供ができたこと」「院内が完全禁煙となり、喫煙のたびに外出しては仕事にならない」など環境の変化によるものも多く挙がった。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「結婚を機に禁煙しました。家族への影響を考えると喫煙を続けるという選択肢はなく、喫煙歴は10年でしたが、あっさり禁煙できました。 今では嫌煙家で海外のように禁煙者をもっと守るような環境に日本も早くなってほしいと切に願っています。」(30代,男性,耳鼻咽喉科)「もともと喫煙していないが、医療費の増大につながっていることは明らかで、喫煙者に応分の負担を求めるべき。」(50代,男性,消化器科)「自動車保険のようにリスク細分化するのも手かと思う。不健康な人の負担を上げるよりも、健康な人にメリットが出る制度が望まれる。」(30代,男性,呼吸器科)「禁煙のきっかけは子供が生まれたことでした。 精神科病院なので病棟の全面禁煙はできておりません。」(40代,男性,精神・神経科)「禁煙に一番影響を与えるのは周囲の環境変化だと思う。実際自分の場合も結婚や子供の誕生がきっかけであった。そういうきっかけを利用すると不思議と難なく禁煙できるのではないか?」(40代,男性,内科)「職員の反対があり、禁煙外来が開設できていません。抵抗勢力が身内に多いです。」(30代,男性,神経内科)「体に何もいいことがないのに、いつまでも販売して続ける国の考えがさっぱりわからない」(30代,男性,外科)「喫煙をするのであればそのリスクとコストをかぶる覚悟が必要な時代なのでしょうね」(30代,男性,産業医)「勤務時間に喫煙している医師を見かけるが1回10分としても6回で1日1時間となり、非喫煙者に比べ労働時間も少なくなっている。喫煙者については保険料、医療費、たばこ税の増額は当然のこと。」(40代,男性,血液内科)「喫煙は嗜好の問題なので、他人に迷惑をかけない限りは許容されるべきと考えます。医療費増につながっているのは喫煙の他にも過食やアルコール多飲などもあるわけですから、喫煙者のみ負担額を上げるというのはおかしな話です。わたし自身は運動を始めたため、必然的に禁煙に至りました。喫煙していると運動が苦しかったからです。」(50代,男性,外科)「自分では喫煙歴はありません。あそびで1回ふかしたことがある程度。 個人的には喫煙には非常に冷たい気持ちですが、喫煙したい人が喫煙する場所が全くなってしまっているのはちょっとかわいそうに思うと気もあります。私に迷惑がかからないところで勝手に吸うことまで制限して欲しいとは思いません。」(40代,男性,耳鼻咽喉科)「患者によくないという以上、医者が喫煙していたらまったく信頼が得られない。」(40代,男性,外科)「喫煙が健康に悪いことはわかっていても医師が喫煙しているケースは多い。現在病院敷地内は禁煙だが、入り口の外に出て並んで吸っている人を多数見かけ、非常に印象が悪いと常々思っている。」(40代,男性,基礎医学系)「喫煙は百害あって一利無しなのは一目瞭然のため、とにかく全国民を強制的に禁煙させるように強く働きかけるべきである」(30代,男性,循環器科)「たばこ1箱1,000円に」(40代,男性,小児科)「自分だけへの影響であれば自己責任だが、間接喫煙として周囲へ悪影響を及ぼすため、売られていること自体間違い。」(30代,男性,総合診療科)「マナーの悪い喫煙者はどこにでもいます。喫煙は百害あって一利なし、健康にも、環境にも、有害です。喫煙自体を法律で禁じてもらいたいくらいです。」(30代,女性,形成外科)「禁煙した人にメリットがあるよう示してあげることも大切である。」(50代,男性,循環器科)「本人以外にも多大な影響を与える以上、一定の制限は止むを得ないと思います。本人の喫煙する権利とのバランス考量は必要と思いますが、原則として新規に習慣喫煙者が登場しない方向へ政策的に誘導すべきだと考えます。」(40代,男性,呼吸器科)「自分自身は喫煙しないから喫煙者がどう扱われても影響ないが,何でも厳しくしようという風潮はいずれ自分の身にも及ぶと予想されるので,一種の防波堤として喫煙者にそう厳しく当たるな,と思っている,」(50代,男性,皮膚科)「婚約時期に禁煙し、その後1度も喫煙したことがない。健康のためだけの禁煙は難しいのでは。家族などの大切なひとのための禁煙であれば、うまくいく可能性が高いと思う。」(50代,男性,泌尿器科)「全面禁煙に賛成です、ある意味、周りの人に迷惑がかかると考えると麻薬より悪いかも」(40代,男性,循環器科)「中途半端な値上げではなく、海外並に価格をあげるべき」(40代,男性,小児科)「今は禁煙の場所が増えたので、自分の家以外で吸おうと思うと、院外や学外へ行かなければならず、そうなると仕事にならないので、医者の喫煙者も本当に少なくなったと思います。」(30代,女性,神経内科)「30年前医局で禁煙の風が吹き、外来の机から突然灰皿がなくなったことをきっかけにやめました。」(60代,男性,内科)「喫煙者はリスクが高いので当然。また、禁煙治療が保険で行われるのもどうかと思う。タバコを吸わない人がなぜ喫煙者の禁煙にともなう治療費を払わないといけないのか」(50代,男性,呼吸器科)「30年前になりますが、病院の勤めが昼夜問わずで忙しすぎて、このままでは、恐らく健康を害してしまうと判断し、禁煙をしました。以後は全く吸っていません。喫煙する人の気持ちもわかりますし、喫煙したことのない人の気持ちもわかります。ただ、今の風潮ではやはり喫煙環境が悪くなるのは致し方ないことかと思います。」(60代,男性,小児科)「COPDの患者さんから「先生、俺みたいになりたくないなら、タバコはやめたほうがいいよ」と言われたのがきっかけで、ニコチンパッチやガムを使ってやめました。」(40代,男性,麻酔科)「受動喫煙による疾病リスクの増加の問題も有り,この厳しい財政状況の中では,喫煙者に多くの財政負担を求めるのは必然の流れ.」(40代,男性,内科)「喫煙は明らかに癌やCOPD、心血管疾患のリスク上げることが証明されているので、自己負担を上げ、責任を取らせるべき。非喫煙者が喫煙者の負担を強いられるのは問題。」(30代,男性,循環器科)「高校生の頃タバコ吸ってましたが、医学部に入って辞めました。あのころは運動していたんで、禁煙で成績が良くなったのが励みでした。禁煙は減塩と同じで個々人への働きかけとともに社会への働きかけも必要です。製薬メーカーももっと禁煙に力を入れてほしいです。MRさんでタバコを吸っているのは論外でしょう。 タバコはひと箱2000円でもいいと思います。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「『タバコは嗜好品ではなく薬物』 『喫煙者は病気であり治療が必要』 『その害を国が率先してお墨付きを与え国民にまき散らしている』 という啓発が必要」(30代,男性,神経内科)「喫煙する人が疾患にかかりやすいのだから、受益者負担で高くすべきだと思う。父は吸っているから肺気腫のような症状が出ているが、自業自得であるし、医療費が高くても仕方がないと感じる。私自身はそれを見ているので吸いたくもないし周囲ですっているのも嫌である。」(40代,男性,神経内科)「喫煙者かどうか正しく申告するはずがないので、タバコの販売価格に上乗せする形で徴収し医療費へ回すべきだと思いますね。」(50代,男性,耳鼻咽喉科)「医療に従事する者として禁煙は早くしたかった。が、なかなかできなかった。子供ができたことで一念発起し、自分のためでなく、子供のために、とやめた。 現在院内では看護師と事務職の喫煙率が高い。喫煙後うがいなどをしているようだが、時々においが残り、そのまま患者さんのところに行くので、患者さんがどう思っているのか、気になる。」(40代,男性,産業医)「個人の嗜好なので、条例・法律規制しないかぎり個人の自由。副流煙・受動喫煙に対する配慮は必要。」(40代,男性,整形外科)「税金をたくさん払っているのだから、そこは考慮してほしい。やはり分煙。 喫煙者を悪者にするなら販売自体をやめてほしい」(40代,男性,泌尿器科)「禁煙外来の充実が望ましいが、労力の割には点数が少ないように感じられ、余裕のある医療施設でないと普及が難しいと思います。」(40代,男性,内科)「10数年間1日20本吸っていましたが30歳代後半に不整脈を自覚したのをきっかけに禁煙しました。当時は禁煙補助薬もなく、禁煙の最初の1-2週間がとてもつらかったのを今でも覚えています。」(50代,男性,内科)「禁煙外来をしたいが,保険で診療ではCO測定を必須としているが測定器は10万円以上もするため断念している。また,喫煙を止めた者の割合等を、社会保険事務局長に報告しなければならないなど敷居を高くしすぎている。当局は医師を全く信用していない。」(50代,男性,循環器科)「生活保護を受けている人が、明らかにタバコが原因になっているCOPDの治療を受けつつもタバコを吸い続けているのをみると、今の医療制度はおかしいんじゃないかと思う。」(30代,女性,外科)「保険料の設定において、各個人のリスクを勘案するのは現実的でない。 それよりもタバコが健康にすごい害をもたらす、タバコから市民権を奪うような風潮になってほしい。そのためにはマスコミの力が必要であるが、マスコミは大スポンサーであるJTに遠慮してタバコの真実の姿を視聴者に伝えられないところに大きな問題がある。」(30代,男性,呼吸器科)「受益者負担を考えると喫煙は医療費を押し上げているのだから押し上げている分は喫煙者に負担してもらうのが合理的。」(40代,男性,腎臓内科)「入院患者が職員の自転車置き場などでたむろしてたばこを吸っているのは何とかならないのかなぁと思います。小児の患者に付き添っている患者の母親が、患児を連れて他の人たちといっしょに吸っているのを見ると、受動喫煙の知識とかもないのかと唖然とします。」(40代,男性,その他)「まず、歩きタバコは傷害罪にしたほうがいい。」(40代,男性,精神・神経科)「健診学会、ドック学会のデータを見ても、喫煙の害は明らかです。健康を害して国民総生産を押し下げているものと思います。国の対応も甘くもっと積極的に禁煙キャンペーンをはるべきと思います。」(50代,男性,その他)「喫煙していたのは若いころだけで、特に抵抗なく禁煙しました。院内は室内禁煙で、喫煙所が1か所のみあります。医療費(保険診療)はリスクのある人にも平等に負担される仕組みが日本での前提ですから、これを崩せばいくらでもリスクを考えた負担(あるいは加入拒否)がまかり通るように思います。保険者に加入者の健康維持を働きかけさせるという観点からは、喫煙者が加入したら保険者に補助をして、そのかわり禁煙にどれだけ導いたかを評価してもよいかもしれません。」(50代,男性,小児科)「保険料や医療費をどのくらいにするのかを決めるのが大変でしょうし、現場も大変でしょう。「私は喫煙者です」という自己申告制ですね。 それよりもタバコの値段を上げる。 喫煙のきっかけは何だったのでしょうか。好奇心・大人ぶりたいなどではないでしょうか?」(70代以上,男性,産婦人科)「喫煙したことで医療費の増加に影響しているかもしれないが、1日1本の人と1日0本の人では程度が変わってくると思います。喫煙量に関係なくでは不満が出るでしょうし、その際にその人個人の喫煙量がどのくらいかを証明することができないでしょうし、難しいと思います。喫煙した結果の医療費を上げるよりも、喫煙する際のたばこ税を相当額上げることの方がいいと思います。」(30代,男性,救急医療科)「医師になった時に禁煙しました 喫煙が法律で禁止されているわけではないので、負担増については少し疑問です 喫煙だけでなく飲酒も問題ですし」(50代,男性,内科)「タバコや副流炎の害悪をアピールすることや分煙,禁煙の徹底が大切なのであって,喫煙者の医療費を上げることは当然,患者が嘘をつくことにつながるため反対である.金銭的に負のインセンティブをつけるならたばこ税を調整・増額すればよい.」(40代,男性,神経内科)「喫煙は中毒(依存症)です。誰かが適切に指導すれば禁煙もその継続も可能です。個人的には、あの臭いはもう受け付けないです。」(40代,男性,内科)「喫煙者のマナーの悪さ(道端でたばこを吸って吸殻はそのままポイ・・・など)は耐え難いものがある。たばこ税はもっともっと上げるべきだし喫煙者の医療費負担を上げてもいいぐらいだと思う。」(40代,男性,小児科)「自分は健康にかなり気を遣っているが、喫煙者と同じ保険料、医療費を払うのは解せない。喫煙者の負担を増やすべきである。たばこ関連税は全て医療保険に回すべきである。 目の前で吸わなくても、外で吸ってから部屋に入られると、それだけで部屋の中がタバコ臭くなり、迷惑である。」(40代,男性,放射線科)「禁煙してみると生活があまりに快適になるので、他人にも勧めたくなります。」(60代,男性,神経内科)「明らかな発ガン物質を"堂々と""合法的に""PRまでして"売っているなんて信じられない。」(50代,男性,産業医)「喫煙する医師は患者からどう見られているか考えた事が無いのだろうか?また人に迷惑をかけてはいないという言い訳は成立しない。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「85歳です。40年ほど前完全禁煙しました。 小児科は忙しく余り吸う暇がありませんでしたが、当時タバコを吸うことは男のステイタスであったような気がします。まだ煙草の害が余り説かれていなかったころでしたが、医師の中にたばこの害を説く熱心な方がいて禁煙を勧めていました。その方の影響を受けました。それから強引に、喫煙する方の子供は診察しません。と張り紙をして禁煙運動をしてきました。3,40年も前ことです。少しは効き目があったようです。」(70代以上,男性,小児科)「全ての疾患をタバコにつなげる風潮がある。実際診療していてタバコはそれほどrisk factorになっているのか疑問をもつことが少なくない。今のところ健康寿命も世界一だがこの世代の人々は喫煙率は非常に高かった。日本の医療レベルが制度・技術ともに抜きんでていたから、と言えばそれまでだが果たしてそれが全てなのだろうか?」(40代,男性,外科)「咳が止まらないと受診した患者さんが喫煙を続けていることがよくあります。咳止め薬を希望されますが無駄だと思います。」(40代,男性,循環器科)

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原子炉事故に伴う被曝リスクの評価 ヨウ化カリウム、30km圏内…のエビデンスを問う

長崎大学 医歯薬学総合研究科教授 池田正行氏池田正行氏のご厚意により、今回の東北地方太平洋沖地震について書かれた「ヨウ化カリウムへの信仰そして30km圏内のエビデンス」を転載させていただきます。ヨウ化カリウムへの信仰 わが国で既承認のヨウ化カリウム製剤の効能効果は、1.甲状腺腫 (甲状腺機能亢進症を伴うもの)、2.慢性気管支炎,喘息に伴う喀痰喀出困難、3.第三期梅毒 だけです。それ以外はすべて適応外使用になります。それをあたかも効能効果があるように謳うのは、エビデンスに基づく医療ではなく、信仰に過ぎません。教会でいただくパンのようなものです。人はヨウ化カリウムのみにて生くるにあらず ですから、一緒に葡萄酒も配ったらどうかと思うのですが、そういう話は寡聞にして耳にしたことがありません。そう言うと、必ず「海外データがあるはずだ」という、わけしり顔の連中が出てきます。そもそも、「あるはずだ」という言葉が当事者意識ゼロ、ただの評論家に過ぎないことを示しています。自分で調べればすぐわかることなのに、調べようともしないリテラシーの低さよ。結局、PMDAにおんぶにだっこなのです。原子炉事故に伴う被曝のリスク評価と、そのリスク低減のための介入の有効性・安全性の評価の両方について、ヨード131を例にとって、エビデンスレベルの観点から調べてみました。そうすると、ツッコミどころ満載の、如何に頼りないものにならざるを得ないかがわかりました。1.リスク評価の難しさ介入試験はもちろんできません。さらに、曝露を事前に予想できませんから、(前向き)コホート研究も絶対できない。となると、観察研究の中でも、エビデンスレベルのより低い研究とならざるを得ません。広島・長崎の被曝者登録研究は、大規模コホート研究という題名ですが、いわゆる「後ろ向きコホート」ですし、被曝線量があくまで推定なので、そのエビデンスレベルの判断も慎重にしなければなりません。さらに、剖検から死亡・罹患・健診・と、モニタすべきイベントの種類とモニタリング方法の多様性だけでも、この種の観察研究の困難さがよくわかります。ベラルーシやウクライナよりも公衆衛生インフラが発達しているであろう日本でもこの程度なのです。ましてやチェルノブイリ事故による甲状腺癌のリスク上昇など、一体どうやって正確に評価できるというのでしょう。研究のメッカであるはずの長崎大学原研自身がdetection biasの影響を排除できず「わからない」と言っているぐらいなのに。「甲状腺がんの「増加」の理由については、事故後、甲状腺に注目してスクリーニング(精査)が行われるようになったため、今まで見つからなかった潜在がんや微小がんも含めてその発見頻度が高まったという見解もあります。事実、事故前の正確な疫学データはなく、すぐには、放射線障害によってがんが増えたとは言い切れません」。ちなみに、このページには「チェルノブイリ周辺では他の放射線障害の代表疾患である白血病などは増加していません」とあります。2.リスク低減のための介入の有効性・安全性の評価の難しさ介入の標的であるリスクの評価自体が上記のようなエビデンスレベルですから、さらにそのリスク低減のための介入の有効性・安全性の正確な評価はほぼ不可能です。 ・そもそも日本のようなヨード過剰摂取の国で ・何歳以上?何歳未満の子ども?に・一体いつからいつまで(そもそもその、服用開始のきっかけとなるイベントさえ、何を基準にしたらいいのかわからない) ・どのような用法用量で、ヨウ化カリウムを飲めば ・飲まない場合(ただしヨードたっぷりのふだんの食事はそのまま)と比べて、甲状腺癌のリスクが、どの程度低減できるのか?世界中誰一人として、この問いに明確に答えられないことは、EBMをちょっとかじっただけですぐわかります。PMDAの治験相談に耐えうるプロトコールが作れないこともすぐわかります。以上、EBMの一番の醍醐味は、「わからない」ということが「わかる」ことだと改めて実感できます。30km圏内のエビデンス ハルマゲドン妄想を煽るのならば、24万人が死んだ広島、14万人が死んだ長崎といった、ハルマゲドンの実例を挙げればいいものを、引用しないのはなぜか?それは、実際のハルマゲドンでは、人々は決してパニックにならないからです。だから話として「つまらない」。だから引用しない。長崎にプルトニウム核爆弾が落ちてからも、爆心地から半径30km以内を立ち入り禁止となることはありませんでした。原爆が落ちる前も落ちた後も、長崎大学医学部は150年前からずっと、Ground zeroから歩いて5分足らずの(爆心地公園は、毎日の私の通勤経路です)、この長崎坂本の地に留まっています。「プルトニウム粉塵は密度が高いため、大気中でも水中でも沈降速度が大きくあまり遠くへは広がらない。チェルノブイリ原発事故時のプルトニウムの環境への規制値(3.7GBq/km2)を超えた飛散範囲は30km以内であり、セシウム、ヨウ素などがヨーロッパにまで拡散したのと大きな違いがある」(プルトニウムの体内動態について)長崎こそ、30km以内を立ち入り禁止区域にする選択肢があったのでしょうが、そんなことはおかまいなしに、65年経ってしまいました。でもプルトニウム239の半減期は2万4000年(α崩壊)だそうですから、まだ十分間に合う?いいや、α線だから、「臭いものに蓋」でこれから何万年もこのままでいけばいい?プルトニウム239の半減期は2万4000年ですが、1945年8月9日から今日に至るまで、地元はもちろん、県外でも、長崎県産の農産物、水産物、畜産物、乳製品がプルトニウム239の汚染ゆえに風評被害を受け、差別されたことはありません。400年の歴史を持ち、日本全国の生産量の6割を占めると言われる牡蠣を含めて広島県産の農水畜産物も同様です。さらに、国際連合の常任理事国の国々は、広島、長崎では飽きたらずに、核実験によって、3桁に上る回数の核爆発を行い、膨大な量の放射性物質を地球上にばらまきました。Wikipediaには、たった1回の地下核実験の失敗でも、スリーマイル島原子力発電所で発生した事故の2,000倍の量が漏れたとの記載あります。1963年以前に、地上で核実験行われていた時代には、一体どれだけの放射性物質が大気中にばらまかれていたことか。セシウム137の体内での経年変化の図は非常に興味深いものです。もし、これが日本人だとしても、セシウム137は国・地域を越えて広がりますし、日本での核実験は広島・長崎の2回だけですから、1964年の高値は広島・長崎以降の、国際連合常任理事国の核実験によるものでしょう。特に1963年までの大気圏内核実験が、チェルノブイリよりもはるかに深刻な地球の汚染をきたしていたことを、この図は如実に物語っていると思います。以上、狂牛病病原体で汚染されたビーフバーガーをたくさん食べていた経験が、人間の居住地域の中では今日でも史上最悪のプルトニウム(半減期2万4000年!何百回でも言ってやるぜ!)汚染地域に来ても大いに役立っていること、危機がリテラシーを育てることが実感できました。

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顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科科長を経て2004年4月より慈泉会相澤病院 統括医長を勤め、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。ラップで床ずれを治す!それが「ラップ療法」だ床ずれを治癒できるのがこのラップ療法です。しかも簡単な方法で治そうというのがラップ療法の考え方です。まず、ラップを用意していただきます。床ずれを水で洗い、ラップを当ててテープで貼るだけでいいのです。簡単でしょう?今まで外用薬を試す、体位変換をする、栄養管理をするなどの対応で治らなかった床ずれがラップを貼るだけで治ったということで、驚かれています。それも約3ヵ月で治癒するというデータが出ています。ラップ療法を創案する以前は、床ずれは治癒することなく悪化して死亡退院する患者さんを見ることが、ほとんどでした。しかし、この方法で患者はある程度快方に向かうことができます。ポイントは消毒と、ガーゼを貼布しないことです。特にガーゼを当てることで傷口とガーゼが固まってしまい、交換する際にまた傷口を作ってしまうという悪循環をなくすことです。このラップ療法は3ヵ月で治癒するということから患者さんのためにもなり、また看護する側も今まで以上の負担が少ないというのが一番の特徴です。そして、痛みもなく簡単にできるラップ療法は、患者、家族、看護師にも好評であることを実感しました。ラップ療法の効果を広く知ってもらうために、論文・雑誌で発表したり、全国に向けて講演で紹介するようになりました。在宅でも床ずれが治療できるラップ療法は「ラップを貼るだけの治療」という受け止め方をされがちですが、床ずれ治療の新しい考え方を提案しているのです。ラップ療法以前の床ずれ治療は、消毒してガーゼを貼り、またガーゼを貼り直すという処置の繰り返しでした。ラップ療法で入院患者の床ずれが治れば、次は在宅で治療されている患者さんの番です。訪問治療先で1年以上治らない床ずれの患者さんにラップ療法を試してもらうため、ご家族にお願いしました。まず、ラップと洗剤の空き容器を用意してもらいました。次にお湯で洗ってラップをテープで貼るということを毎日やってもらいました。だんだんと治ってくると、ご家族も喜んで続けてくださいます。これも3ヵ月で治りました。その評判に最も敏感だったのが訪問診療をしている開業医の先生方でして、ラップ療法の指導で往診を頼まれたり、勉強会を開催したりするようになりました。ラップ療法はこうして生まれた一見簡単そうなラップ療法ですが、学会に認められるまでは長い道のりでした。それまでは、軟膏を塗ってガーゼを当てるというのが治療の定番でした。ヨード系の外用薬が使えるようになって、床ずれのMRSAや緑膿菌感染は治療できるようになりましたが、床ずれが治るという手ごたえを実感できませんでした。1996年、看護師が床ずれの研修会に出席して、創傷被覆材のサンプルをもらってきました。看護師たちが試してみたいというので許可しました。パンフレットを読んでみると、「湿潤療法」という言葉が書いてあり、使ってみると少しずつ治ってくるんですね。治るまで使いたかったのですが、直径15センチもある床ずれが3ヵ所あって、1日の治療費が5000円、1ヵ月では15万円になる計算で、保険請求したら審査に引っかかるかもしれないし、そもそも3週間分しか請求できないというんですね。残念ながら当時は、病院経営の点から床ずれの治療は以前の軟膏とガーゼ治療に逆戻りしました。それから、創傷被覆材の代用品を探した末、たどり着いたのが食用品ラップでした。さっそく食用品ラップを買ってきて床ずれに貼ってみました。始めは軟膏も使っていました。すると、1週間たって、ずいぶん良くなることが実感。だいたい3ヵ月で治ってしまいました。他にも床ずれの患者さんに何人かラップ療法を試してみたところ、ほとんどみんな治ってしまいました。なぜ「ラップ療法」が話題なのか?軟膏を使い分けたり、創傷被覆材を使い分けたりと、苦労してもなかなか治らなかった床ずれが、水で洗ってラップを貼るだけの簡単なやり方で治ってしまう、というところに尽きます。学会や講演会でこの話をすると、はじめのうちはほとんど信用されませんでしたね。床ずれの写真を見せられて半信半疑でやってみた方からは、「目から鱗」という評価をいただきました。簡単で、病院でも、訪問診療先でも、どこでもできて、患者家族にわかりやすい、指導しやすいと評判を獲得することができました。実は床ずれが治ってくると家族の心が癒される、とよく言われます。ラップ療法は、そんな方々の手で育ってきたと思います。ラップ療法の普及には、インターネットの役割は大きかったですね。ホームページを立ち上げたのは、2001年のことでした。床ずれに関しては素人の内科医が思いついた治療法が、わずか10年余りで全国に普及したのは、インターネットで直接発信し続けたおかげだと思います。ラップ療法が衛生材料として商品化されたため、社会的認知が早まった台所用品を使うという手軽さがラップ療法の売りである反面、医療安全を第一に考える病院などでは、拒否反応というか、嫌悪感が強いですね。医療用ラップが使えれば、ラップ療法と同じ考え方で治療してもらうことができます。そこで、医療用ラップを商品化してもらうべく、食品用ラップのメーカーや、被覆材のメーカーに相談しましたが、どこからも相手にされませんでした。採算などを考えれば無理な相談だったと思います。2005年に、水切り袋と紙おむつを組み合わせた「床ずれパッド」を使い始めました。それまでのラップを使った治療法と比べたら格段の進歩でした。臭いは少ないし、かぶれも少ない、使用感もよくなりました。床ずれパッドを商品化しようと考えて、ガーゼ類のメーカーに相談しました。試作品を何度か作り直した末に完成したのが、「モイスキンパッド」です。衛生材料なので、ガーゼと同じようにどこの病院でも安心して使えます。入院中から退院後まで一貫してモイスキンパッドを使って治療するのは当然ですが、退院後は床ずれパッドを使うように指導すれば、患者の負担も少なくて済みます。ラップ療法に「食わず嫌い」だった方にはモイスキンパッドをお使いいただき、ラップ療法の治療の考え方(Open Wet-dressing Therapy; OpWT)の良さを実感していただければいいなと思います。OpWTという創傷治癒理論が、国内のみならず海外でも広く認められるようになることを願っております。編集部追記:ラップ療法の危険性への指摘があったため、鳥谷部先生より見解をいただき、2011年9月15日に追加記事を掲載しました。質問と回答を公開中!

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