サイト内検索

検索結果 合計:37件 表示位置:1 - 20

1.

検査における腫瘍の見落とし【医療訴訟の争点】第18回

症例検査を行った際、“精査を目的としていた部位以外の部位に腫瘍が映り込んでいる”ということもありうるところ、本稿では、胸部陰影の精査目的で撮影された画像に写っていた胃の病変が指摘されなかったことが「見落とし」として責任原因となるかが争われた東京地裁令和6年9月26日判決を紹介する。<登場人物>患者女性(当時80歳)原告患者の相続人(子)被告1放射線科クリニック被告2PET-CT検査を実施した医療法人被告3大学附属病院被告医師ら上記各医療機関に所属する医師事案の概要は以下の通りである。平成25年10月患者は健康診断で左上肺野に異常陰影を指摘された。10月28日精査目的で、被告放射線科クリニックにおいて胸部CT検査(本件CT検査1)が実施された。担当医師(被告医師1)は肺病変の有無を中心に読影を行い、両肺上葉に腫瘤などを認めたのでこれを指摘して被告大学病院を紹介したが、胃の病変について特段の指摘を行わなかった。なお、当該検査画像には、後方視的にみれば胃壁に径約2.5cm程度の腫瘍性病変(後に消化管間質腫瘍[Gastrointestinal Stromal Tumor:GIST]と診断される本件腫瘍)が描出されていたとされるものであった。10月30日本件患者は被告大学病院を受診し、被告大学病院の医師は、肺がんの病期診断を目的として、頭頸部から大腿基部までを対象としたPET-CT検査を行うため、被告医療法人を紹介した。11月18日被告医療法人が開設する診療所において、PET-CT検査が実施された。同診療所の医師(被告医師2)は、同検査結果を踏まえた診断を行い、左肺がん(疑い)について転移を疑う明らかな異常所見は認められないと診断した。なお、同診療所の医師(被告医師2)は、胃に存在する本件腫瘍について診断を行うことも、放射線読影医に相談することもなかった。12月4日被告大学病院の担当医(被告医師3)は、同日までに実施した頭部MRI検査、気管支鏡検査(経気管支的腫瘍生検)、本件PET-CT検査などの各検査結果を踏まえて、本件患者につき、肺がんの遠隔転移はみられないとして、左上葉肺腺がん(cT1bN0M0、Stage1B)と診断。肺がんについて、本件患者は外科手術を希望しなかったため、放射線治療が行われることとなった。12月18日放射線治療における照射範囲の特定のため、被告大学病院において胸部CT検査(本件CT検査2)が実施。平成26年1月本件患者に対し、放射線治療が行われた。平成29年11月16日吐血12月2日吐血平成30年1月4日被告病院の消化器内科において、上部消化管内視鏡検査を実施し、胃に粘膜下腫瘍(本件腫瘍)を指摘される。1月25日本件患者は、被告病院消化器内科にて、上記、胃粘膜下腫瘍の精査目的で、腹部CT検査を受けたところ、胃の小弯側に径約5.6cmの腫瘤性病変(本件腫瘍)が認められた。2月他院にて、胃のGISTと診断された。その後、治療が開始された。令和5年12月29日本件腫瘍により死亡。実際の裁判結果患者側は、これら一連の画像検査において本件腫瘍が見落とされたことが、診断および治療開始の遅れにつながったとして、各医療機関および医師に対し損害賠償を求めて本件訴訟を提起した。裁判所は、各検査が実施された目的や経緯、当時の医療水準、画像所見の性質などを踏まえ、医師に課される注意義務につき、以下のとおり判断した。1)被告1(被告放射線科クリニック)の医師(被告医師1)の注意義務違反について原告は、被告医師1が、平成25年10月28日当時、本件CT検査1の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、追加の造影CT検査などを実施する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、本件患者が本件CT検査1を受けるに至った経緯および目的が、健康診断のレントゲン検査によりその左上肺野に陰影が認められたことからその精査目的であったことを指摘し、「被告医師1が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師1においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師1の注意義務違反を否定した。本件患者が、本件CT検査1の実施に先立って、被告医師1に対し、消化管出血、腹痛などのGISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する異常や違和感を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと本件CT検査1の対象であった胸部(肺・呼吸器)と本件腫瘍の存在した腹部(胃・消化器)についてはその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること2)被告2(PET-CT検査を実施した医療機関)の医師(被告医師2)の注意義務違反について原告は、被告医師2が、平成25年11月18日当時、本件CT検査1および本件PET-CT検査の各結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1の場合と同様、本件患者が本件PET-CT検査を受けるに至った経緯および目的が、肺がんの病期診断(肺がんの進行度及び遠隔転移の有無の診断)であったことを指摘し、「本件PET-CT検査の結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「本件PET-CT検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師2においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師2の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師2に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと肺がんについて胃に遠隔転移する蓋然性があることを示す医学的知見は示されていないことGISTが発症頻度の低い疾患であること3)被告3(大学病院)の医師(被告医師3)の注意義務違反について原告は、被告医師3が、平成25年12月18日当時、本件CT検査2の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1、2の場合と同様、本件患者が本件CT検査2を受けるに至った経緯および目的が、本件患者の希望も踏まえて本件放射線治療を実施することとして、その放射線照射部位を特定することを目的としていたことを指摘し、「かかる検査の経緯、目的などに照らせば、被告医師3が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍と推測される腫瘤像が描出されていたとしても、被告医師3においてこれを読影により捕捉する注意義務があったと認めることはできない」として被告医師3の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師3に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴等を申告したという事情もないこと本件CT検査2の対象である胸部と本件腫瘍のあった胃とではその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること注意ポイント解説本件は、画像検査における「腫瘍の見落とし」が問題となった事案である。ほかの診療科領域の疾患が画像に写っていたにもかかわらず、それを正しく指摘できなかったことが注意義務違反とされるかが問題となった点で、第14回(「症例報告の類似事例の誤診・見落とし?」)で取り上げた東京高裁令和2年1月30日判決と共通する部分がある。本件において裁判所は、単に画像上に腫瘍が写っていたか否かではなく、当該検査を行うに至った経緯、当該検査の目的を踏まえ、「注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」と判断している点が特徴的である。また、本件において原告は「放射線読影専門医は、画像診断を専門とする以上、その画像検査の目的の範囲外の部位であっても、患者の生存ないし健康に大きな影響を及ぼす病変を示す異常所見が偶発的に撮像された場合には、読影の際にその偶発所見を発見し、指摘するのが当時の臨床医学の実践としての医療水準であった」と主張した。これに対し裁判所は、以下のとおり判示し、不可能を課すものではない旨を明示し原告の主張を排斥している。「画像技術の進歩により、高解像度、大容量の画像が取得されるようになったことにより、偶発所見が発見されることも増えてはいるものの、画像の処理、識別、判断を医師において行う以上、その処理には当然限界があり、検査の目的とは直接関係のない偶発所見を発見すべき注意義務を医師に課すことは不可能を強いることに他ならない」上記の判示のとおり、裁判所は医師に不可能な義務を課すものではないものの、他方で、本件では、GISTが比較的稀な疾患であり、原告が見落としを指摘する画像上も、腫瘍が小さく、コントラストも薄く、胃壁の蠕動との識別が困難であったことに留意する必要がある。すなわち「そもそも全身を精査する目的での画像検査が行われた場合」や「特定の部位の検査を目的としていても、画像上、その部位以外の箇所に著明な疾患を示唆する所見がはっきりと写っている場合」などには、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性があることに留意する必要がある。また、「読影レポートを作成する放射線科専門医が、検査対象部位以外の部位の病変をレポートしている場合」には、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性がある。そして、近時はAIを用いた画像読影補助システムも導入されているところ、そのようなシステムが検査対象部位以外の部位の病変をレポートした場合などにも同様の問題が生じうる。この意味で、本裁判所の判断は当然に一般化できるとは限らないことに留意して診療にあたる必要がある。医療者の視点本判決は、画像検査における「目的外の偶発的所見」の見落としについて、医師の法的責任を限定する判断を示しました。裁判所は、高解像度の画像から得られる膨大な情報すべてを精査することは不可能であり、特段の事情(関連症状の訴えなど)がない限り、注意義務の範囲は「検査目的に関連のある範囲」に限られるとしました。これは、多忙を極める臨床現場の実情や、人間の認知能力の限界を考慮した現実的な判断であると評価できます。実臨床では、たとえ肺がん疑いの胸部CTであっても、撮像範囲に含まれる胃や肝臓などに明らかな異常がないか、可能な限り確認しようとする医師が多いでしょう。しかし、これを法的な「義務」として課されてしまえば、現場は萎縮し、過度な防衛医療を招きかねません。法的に義務が限定されたからといって、臨床的に「目的外は見なくてよい」と割り切ることはできませんが、本判決は、結果責任を問われる際の「合理的な境界線」を引いたという点で、実臨床を行う医師にとって非常に意義深いものと考えます。Take home message後方視的に異常と評価できる所見が存在していても、それだけで直ちに過失が認定されるわけではない特定箇所の精査目的の画像検査において偶発的に写り込んだ所見について、患者からその所見と結びつく症状がなく、その申告がなされていない場合には、医師に課される注意義務の範囲は、検査目的や臨床状況により限定される検査目的や患者の症状次第では、偶発所見への対応が問題となりうるため、判断の根拠や検討過程を記録しておくことが重要キーワード肺がん、GIST(消化管間質腫瘍)、精密検査、画像所見、他科領域の知見、見落とし、医療水準

2.

事例37 タケキャブの査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では継続して投与していたPPI、ボノプラザン(商品名:タケキャブOD錠)20mgがB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)を適用されて査定になりました。傷病名には、「胃潰瘍」と「維持療法の必要な難治性逆流性食道炎」があります。添付文書と照らし合わせても投与は妥当ではないかと考えられます。ただし「胃潰瘍」が傷病名欄上位に表示されていたため、審査機関におけるAIによるレセプト振分にてこちらを主病と判断され、査定対象に分類された可能性もあるのではないかと考えました。医師と相談して、「当初、十二指腸吻合部に潰瘍を認めPPI処方。胸やけ症状が持続。2025年1月の上部消化管内視鏡検査にて、潰瘍は改善傾向にあったが、LA Grade(改訂版 ロサンゼルス分類)Bの逆流性食道炎を認め、維持療法が必要な難治性と判断し、PPIを継続処方している」と理由を添えて再審査申請を行ったところ、復活しました。傷病名に「胃潰瘍」と併存の「逆流性食道炎」の場合は、それぞれに対するPPIの処方限度日数が異なるため(事例内「要約」参照)、8週間を超える場合には「維持療法の必要な難治性逆流性食道炎」と表記されているかを確認するようにアラートを表示させて、査定対策としています。

3.

小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)【すぐに使える小児診療のヒント】第7回

小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)は、2000年ごろから急速に認知が広がった比較的新しい疾患概念であり、新生児・乳幼児を中心に増加しています。嘔吐や下痢を主訴に受診する乳児では、感染症や外科的疾患に加えて、食物蛋白誘発胃腸症を鑑別に挙げることが重要です。今回は、代表的な新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症の一型である食物蛋白誘発胃腸炎(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome:FPIES[エフパイス])を中心に解説します。症例2ヵ月、男児。授乳2時間後に大量に嘔吐を繰り返したため救急外来を受診。普段は完全母乳栄養だが、本日は祖母に預けるため普段は使わない人工乳を使用したとのこと。受診時には活気良好で、腹部所見なし。食物蛋白誘発胃腸症の特徴と分類一般的に食物アレルギーというと、蕁麻疹や呼吸症状を伴う即時型(IgE依存型)アレルギーを想起するでしょう。しかし、食物蛋白誘発胃腸症はIgEが関与せず、主に消化管粘膜で炎症反応が起こる非即時型(非IgE依存型)アレルギーです。食物摂取後、数時間~数日かけて症状が出現し、皮膚症状や呼吸器症状を伴わないことが大きな特徴です。新生児・乳児の消化管アレルギーはわが国独自の疾患概念として扱われていましたが、小児の消化器分野や国際的な概念を鑑みて「食物蛋白誘発胃腸症」として再定義されました。食物蛋白誘発胃腸症は経過や症状から下記のようにいくつかのサブグループに分けられます。画像を拡大する最も代表的なものはFPIESです。日本での有病率は約1.4%と報告されており、決してまれな疾患ではありません。FPIESは経過により急性型と慢性型に分けられます。急性型は原因食物摂取後1~6時間に反復する強い嘔吐が出現し、顔色不良やぐったりするなど全身状態の悪化を伴うこともあります。重症例では、輸液やステロイド投与による全身管理が必要になることがあります。なお、急性期の対応として即時型アレルギーのようにエピネフリン筋注を行っても効果は期待できません。一般的には摂取を中止すると数時間で速やかに改善し、経過は短いのが特徴です。一方、慢性型は原因食物の摂取を続けることで数日~数週かけて嘔吐や下痢、体重増加不良が現れ、除去後も改善までに時間を要します。画像を拡大する実際には症状が重なり合っているためサブグループに分けられないことがしばしばあり、そのために診断や治療に支障を来す場合も見受けられます。日本ではNomuraらによる「嘔吐と血便の有無」で4群に分けるクラスター分類が提唱され、臨床的な整理に有用です。原因となる食物原因となる食物は国や地域によって異なりますが、国際的には乳、魚、鶏卵、穀物、大豆の順になっています。日本の13施設による多施設共同研究(成育医療センター・筑波大学ほか)では、食後1~4時間以内に遅延性の嘔吐を呈した小児225例を対象に解析を行った結果、FPIESの原因食物は鶏卵が最も多く(58.0%)、続いて大豆・小麦(各11.1%)、魚(6.6%)、牛乳(6.2%)でした。鶏卵では94%が卵黄によるものでした。牛乳が原因で発症した児の月例の中央値は1ヵ月と最も早い結果でした。原因食物の違いは各国の離乳食事情によるようで、初期に摂取するものが原因になりやすいと考えられています。診断と治療の基本FPIESには、下記のような診断基準が設けられています。臨床的には、(1)被疑食物を除去して症状が改善すること(食物除去試験)、(2)再度摂取することで症状の再現性があること(食物負荷試験)、(3)他の疾患に当てはまらないこと、を確認します。とくに、小児領域では腹部症状や体重増加不良を来す疾患が多数あるため、他疾患がないか十分に確認することが重要です。FPIESを含む食物蛋白誘発胃腸症は非IgE依存性であるため、一般的なIgE依存性の食物アレルギーで行うような血液検査やプリックテストでは診断できません。末梢血好酸球数、アレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)、便粘液好酸球検査、消化管内視鏡検査などを補助的に行うこともありますが、いずれも条件が限定されており、その所見のみで確定診断できるほど有用な検査ではありません。画像を拡大する治療の基本は原因物質の除去です。人工乳(乳)が原因の場合には、代わりに加水分解乳やアミノ酸乳といった栄養剤を使用します。食物除去によって栄養素が不足しないよう、病院の管理栄養士と相談しながら、適宜栄養素の内服や補助食品などを併用します。一般的にFPIESの予後は良好と考えられています。寛解率や時期は原因食物によって異なりますが、幼児期のうちに治ることが多いと報告されており、除去している原因食物が食べられるようになったかどうか、定期的な食物負荷試験で確認します。冒頭の症例では、追加の問診で「半月ほど前にも一度祖母に預けた際に人工乳を使用して2~3時間後に大量に嘔吐した」との情報があり、症状の再現性が確認されました。人工乳の使用を一旦中止し、これまで母乳では症状が出ていなかったため母乳での対応を継続しました。母が不在で母乳の供給が困難な場合には、アレルギー用ミルクである加水分解乳(ニューMA1など)を選択しました。その後、症状の反復がないこと、体重増加が良好であることなどを確認し、症状寛解後数ヵ月を経て経口負荷試験を行いました。離乳食の進み具合に合わせて、他の食材に関しても相談しながら通院中です。保護者への対応の工夫発症予防として、妊娠中の食物制限や離乳食の開始時期を遅らせることは、医学的根拠に乏しく推奨されません。また、「なんとなく怖いから卵はまだ与えていない」といった安易な食物摂取制限も避けるべきです。過度な制限は成長や発達に影響を及ぼすこともあるため、そのリスクを共有し、バランスのとれた摂取を勧めましょう。食物蛋白誘発胃腸症に限らず、食物アレルギーは子供の成長・発達や将来にも関わるため、保護者の心理的負担は非常に大きいものです。長期的な予後や今後の方針を丁寧に共有することで、不安の軽減につながります。FPIESは多くの場合、1~3歳ごろまでに自然寛解することが知られています。日本の報告では、卵黄、乳、小麦、大豆などの原因食品を対象とした場合、発症から12ヵ月後には約半数の児が寛解し、24ヵ月後にはおよそ8~9割が耐性を獲得していました。とくに乳製品が原因の場合、耐性を獲得する月齢の中央値は約17ヵ月と報告されています。冒頭の症例のように乳が原因の場合、乳児の栄養源の中心であるため成長に直結する大きな課題となります。保護者の不安に寄り添いながら、現実的な栄養管理の方法を一緒に模索していくことが重要です。次回は、絶対に見逃してはならない疾患の1つ、「精巣捻転」について取り上げます。夜風が涼しくなり、ようやく過ごしやすい季節になってきました。季節の変わり目、どうぞお身体にお気をつけてお過ごしください。ひとことメモ:よくあるQ&A妊娠中に特定の食物を控えれば、子供のアレルギー発症を抑えられるって本当?発症予防を目的とした母の妊娠・授乳中の抗原食物の制限、除去は推奨されない。完全母乳栄養であれば、赤ちゃんのアレルギー発症を予防できるって本当?母乳中には食物由来ペプチド、サイトカインが含まれており、児が食物に対して寛容を誘導するのに適している。ただし、母乳が原因で食物蛋白誘発胃腸症を発症することもある。他のアレルギーの可能性は?他の即時型アレルギーとは別の疾患概念であるため、必ずしも他の食物アレルギーを発症する可能性が高いとは限らない。離乳食の開始を遅らせると、アレルギー発症を防げるって本当?離乳食を遅らせることは予防・治療には繋がらず、むしろ成長を妨げることもあるため、安易に遅らせるべきではない。参考資料1)食物アレルギー診療ガイドライン20212)Nomura I, et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;127:685-688.3)国立成育医療研究センターホームページ4)好酸球性消化管疾患(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)(指定難病98)/難病情報センター5)早野 聡ほか. 浜松医科大学小児科学雑誌. 2025;5:12-18.

4.

7月14日 内視鏡の日【今日は何の日?】

【7月14日 内視鏡の日】〔由来〕「7(な)」と「14(いし)」と読む語呂合わせから内視鏡医学のさらなる発展と普及を願い、内視鏡医学研究振興財団が2006年に制定。1950年に世界で初めてわが国で胃カメラによる胃内撮影に成功した。それ以来、内視鏡は消化管のがんなどの早期発見・治療のために大切な役割を果たしている。また、内視鏡は、泌尿器科、呼吸器科、耳鼻咽喉科など幅広く用いられ、進化発展している。関連コンテンツマスクが胃カメラの飛沫拡散を予防【患者説明用スライド】上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の略語はどれが正しい?【知って得する!?医療略語】H. pylori検査と除菌後胃がん、知っておくべき7つのQ&A肥満者の鎮静下内視鏡検査、高流量鼻カニューレ酸素投与で低酸素症が減少/BMJ検査時間帯で異なる大腸内視鏡の精度、解決策は?

5.

肥満患者における鎮静下消化器内視鏡検査中の低酸素症発生に対する高流量式鼻カニュラ酸素化の有用性(解説:上村直実氏)

 消化器内視鏡検査は苦痛を伴う検査であると思われていたが、最近は多くの施設で苦痛を軽減するため、検査時に鎮静薬や鎮痛薬を用いた鎮静法により大変楽に検査を受けられるようになっている。しかし、内視鏡時の鎮静に対する考え方や方法は国によって大きく異なっている。米国では、内視鏡検査時の鎮静はほぼ必須であり、上下部消化管内視鏡検査受検者のほぼすべてが完璧な鎮静効果を希望するため、通常、ベンゾジアゼピン系薬品とオピオイドの組み合わせを使用して実施される。具体的には、ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬のミダゾラムとオピオイド鎮痛薬のフェンタニルの組み合わせが、最も広く利用されている。保険診療システムが異なるわが国でも、日本消化器内視鏡学会のガイドラインにおいて「経口的内視鏡の受容性や満足度を改善し、検査・治療成績向上に寄与する」ことから検査時の鎮静が推奨されると明記されており、多くの施設においてミダゾラムの使用が一般的になっている。 一方、内視鏡検査時の鎮静に関して最もよくみられる有害事象は、呼吸抑制、気道閉塞、胸壁コンプライアンスの低下に伴う低酸素血症である。とくに肥満者に多くみられる合併症であり、時に重篤になる場合もあるため注意が必要である。今回、中国・上海の大学病院3施設でBMIが28以上の肥満者を対象として鎮静を伴う検査時の低酸素血症を予防する手段として、加湿・加温された高濃度の酸素を最大60L/minという高流量で供給する高流量式鼻カニュラ(HFNC)を介した酸素投与の有用性を検証する目的で、通常の鼻カニュラを対照として施行された多施設ランダム化比較試験の結果が、2025年2月のBMJ誌において報告された。 本試験で使用された鎮静法は、麻酔科医師の指導の下にsufentanilと静脈麻酔薬のプロポフォールが用いられているが、日本では「消化器内視鏡診療におけるプロポフォールの不適切使用について ―注意喚起―」が日本消化器内視鏡学会から提起されているように、本剤は麻酔科医師の監視の下に使用することが義務付けられている点に注意が必要である。非常に強い鎮静効果を有する鎮静法における肥満者の低酸素血症予防が重要であると思われるが、本試験の結果では通常の鼻カニュラに比べて低酸素血症を引き起こす頻度が20%から2%に劇的に減少し、HFNCの有用性が明らかにされたものであり、将来的にはわが国にも導入されることが期待される。 最後に、消化器内視鏡検査を受ける患者さんにとって検査時の鎮静は賛否両論あるようで、「楽に検査を受けられる」「苦しい検査は受けたくない」とする鎮静賛成派と「検査の最中に意識がなくなるのは嫌」「内視鏡の画像を見たいので」という否定派に分かれている。内視鏡医にも肯定派と否定派がいて、最近では肯定派の医師が多くなっているが、鎮静に用いる薬剤の有用性とリスクに熟知することが重要であることは言うまでもない。

6.

肥満者の鎮静下内視鏡検査、高流量鼻カニューレ酸素投与で低酸素症が減少/BMJ

 肥満患者への鎮静下消化管内視鏡検査中に、高流量鼻カニューレ(HFNC)を介し酸素投与を行うことで、他の有害事象が増加することなく、低酸素症、無症候性呼吸抑制、および重度低酸素症の発生率が有意に減少した。中国・上海交通大学のLeilei Wang氏らが、上海の大学病院3施設で実施した無作為化並行群間比較試験の結果を報告した。HFNCによる酸素投与は、正常体重患者における鎮静下消化管内視鏡検査中の低酸素症の発生率を減少させるが、肥満患者におけるHFNCを介した酸素投与に関する見解には議論の余地があった。BMJ誌2025年2月11日号掲載の報告。通常の鼻カニューレ群とHFNC群に無作為化 研究グループは、肥満(BMI≧28)および米国麻酔学会(ASA)クラスI~IIで、鎮静下消化管内視鏡検査を受ける予定の18~70歳の患者を、通常の鼻カニューレ群とHFNC群に1対1の割合で無作為に割り付け、プロポフォールと低用量sufentanilによる鎮静処置中にそれぞれ酸素投与を行った。 主要アウトカムは、処置中の低酸素症(75%≦SpO2<90%・<60秒)の発生率とした。副次評価項目は、処置中の無症候性呼吸抑制(90%≦SpO2<95%・すべての時間)、重度低酸素症(SpO2<75%・すべての時間、または75%≦SPO2<90%・>60秒)、およびその他の有害事象とした。鎮静下内視鏡検査中の低酸素症の発生率は、21.2%vs.2.0% 2021年5月6日~2023年5月26日に1,000例が登録され、無作為化された。このうち、同意撤回などを除く984例(平均年齢49.2歳、女性36.9%[363例])が試験を終了し、最大解析対象集団(FAS)として包含された。 鼻カニューレ群と比較してHFNC群で、低酸素症の発生が有意に減少した。低酸素症の発生率はHFNC群2.0%(10/497例)、鼻カニューレ群21.2%(103/487例)であった(群間差:-19.14、95%信頼区間[CI]:-23.09~-15.36、p<0.001)。 無症候性呼吸抑制はHFNC群5.6%(28/497例)、鼻カニューレ群36.3%(177/487例)であり(群間差:-30.71、95%CI:-35.40~-25.92、p<0.001)、重度低酸素症はそれぞれ0%(0/497例)、4.1%(20/487例)であった(-4.11、-6.26~-2.48、p<0.001)。 その他の鎮静関連の有害事象は、両群間で差は認められなかった。

7.

退院時の説明が不十分だと責任発生?【医療訴訟の争点】第6回

症例入院患者は退院した後、直ちに入院前と同様の生活を送ってよいわけではなく、食事や運動制限を段階的に緩和していくなど、生活していく中で留意すべき事項がある。また、退院後に、急変が生じた場合はもちろん、それに至る前の異常が生じた場合には速やかに受診をしてもらう必要がある。このようなことから、療養方法の指導の適否が問題となる。今回は、退院時の説明義務の違反の有無等が争われた東京地裁令和5年3月23日判決を紹介する。<登場人物>患者69歳・男性十二指腸乳頭部腫大と診断され、内視鏡的乳頭部切除術および胆管・膵管ステント留置術後。切除組織の病理検査結果が深部断端陽性であったため、追加切除のため受診。原告患者の妻子被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成27年7月28日他院の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸乳頭部腫大を疑われ、生検にてGroup3と診断された。11月10日上記施設にて、内視鏡的乳頭部切除術および胆管・膵管ステント留置術を受けた。術後切除組織による病理検査の結果報告にて深部断端陽性(断面にがんが露出した状態)と診断され、追加切除を検討すべき旨の説明を受けた。患者は被告病院での手術を希望した。12月16日上記施設にて、留置していた膵管ステントおよび胆管ステントを抜去した。平成28年1月15日患者は妻子とともに被告病院消化器外科を受診。A医師から、治療方法には経過観察と膵頭十二指腸切除術の2つがある旨の説明がなされた。患者は、膵頭十二指腸切除術を受けることを決めた。1月25日被告病院に入院。患者はA医師から亜全胃温存膵頭十二指腸切除術の説明を受け、同意書に署名した。1月26日A医師の執刀で本件手術が実施された。1月30日胆管空腸ドレーンを抜去2月2日膵管空腸ドレーンを抜去2月5日ドレーン抜去部から膿状の排液が認められた。2月6日腹部の造影CT検査にて膵頭部摘除部に膵液瘻、仮性嚢胞形成過程の疑いと診断された。このため、ドレーン抜去部から再度ドレーンの留置を試みるが、皮下への挿入となり、膵空腸吻合部の腔(cavity)に到達せず、抗生物質の投与による保存的治療を実施した。2月8日瘻孔造影検査にて瘻孔からcavityが造影されたため、ドレーン抜去部から再度ドレーンの留置を試みたが、ドレーンが入らず、翌日に超音波ガイド下の穿刺ドレナージを予定した。2月9日再度瘻孔造影検査を行い、cavity内にドレーン(ファイコン14Fr)を留置し、以後、生理食塩水による洗浄ドレナージを実施した。2月15日再度瘻孔造影検査を行い、cavityに留置するドレーンをファイコン 14Frからピッグテールカテーテル(ソフトタイプ)に交換した。2月25日再度、瘻孔造影検査を行い、造影の結果、膵腸吻合部に小腔が確認されたため、ソフトピッグテールカテーテルを留置。2月29日ソフトピッグテールカテーテルを抜去3月1日患者に退院後の療養指導・説明3月2日退院(再診日は3月11日予定)3月9日午後4時頃自宅療養中の患者は、妻に対し、お腹が痛いから2階で休むと述べ、寝室がある2階に上がった。午後5時30分頃2階から音が聞こえたため、妻が2階に上がると、患者が倒れていたため、救急要請。午後5時49分救急隊が到着したが、本件患者は既に心停止の状態であった。午後6時21分頃病院に到着する直前に無脈性電気活動の状態。病院において、心肺蘇生措置、気管挿管、アドレナリンの投与等を受けたが、自己心拍は再開せず。午後7時43分死亡実際の裁判結果本件の争点は、ドレーン抜去のタイミングの適否をはじめとして多岐にわたるが、本稿では、退院時の説明義務違反について取り上げる。退院時の説明義務について、原告(患者家族)は、患者および退院後のキーマンとなる家族に対し、説明用の資料を作成して、退院に至る総合的な判断の具体的な内容、退院時の病状、退院後のリスク、退院後の生活における留意事項等について具体的に説明すべきであったと主張した。これに対し、裁判所は、A医師が2月29日にドレーンを抜去し、患者に対し、明日(3月1日)一日様子を見て大丈夫であれば明後日に退院となる旨を伝えたことを指摘し、「本件病院の医師は、本件患者に対し、退院に至る判断の具体的な内容および退院時の病状について、ドレーンを抜去しても問題がなく、病状が軽快したから退院となる旨、大まかに説明したものと認められる。よって、被告病院の医師に、退院に至る判断の具体的な内容および退院時の病状について、説明義務違反があったと認めることはできない」とした。また、裁判所は、被告病院の看護師が退院前日に、退院後の注意点として、食事については手術後の食事指導のパンフレットを参考にすること入浴および飲酒は次の外来(3月11日)まで控えること激しい運動は避けること重い荷物を持つことは避けること38度を超える発熱がある場合、吐気・嘔吐がある場合、食事・水分がまったく取れない場合、傷口が痛い・腫れる・血が出る場合、腹痛がある場合で心配なときは、被告病院に電話連絡し、受診したほうがいいかなどについて医師または看護師に相談することを説明したことや薬剤部の職員(原文ママ)が、患者に対し退院時の処方について用法用量の説明をしたこと栄養士が、患者および妻に対し食事指導を行ったこと等を指摘し、「被告病院の看護師は、本件患者に対し、本件説明書を用いて、退院後の生活における留意事項および受診の目安を説明し、また、被告病院の栄養士および薬剤部の職員も、本件患者に対し、食事上の留意事項や服薬に関する事項を説明したから、被告病院の医療従事者は、患者に対し退院後の生活における留意事項等を説明したと認められる」とした。なお、「本件説明書」とは「退院に向けての確認事項」と題する書面とのことであり、判決文からは記載内容の詳細は定かでないが、上記の看護師の説明内容として認定されている事項に沿う記載がなされている書面と推察される。注意ポイント解説本件訴訟では、退院時の説明について、被告病院は「被告病院の医師は、退院前日の3月1日、本件患者に対し、食事は消化の良い物を食べ、脂質の多い食事は避けること、運動は軽めの散歩等とし、激しい運動は避けること等を指示するとともに、腹痛や発熱等の症状が出た場合には直ちに来院するよう指示し、…本件患者の理解も良好であった」と主張した。しかし、判決文では、上記のとおり、「ドレーンを抜去しても問題がなく、病状が軽快したから退院となる旨、大まかに説明した」との判断にとどまっている。これは、被告病院の主張したような説明をしたことにつき、説明に用いた書面もなく、カルテに説明内容の記載もなかったためと推察される。そうであるとすれば、退院時の療養指導に関して必要な説明がされたと認定できず、説明義務違反があると判断される可能性もあり得たと思われる。このような状況であったにもかかわらず、裁判所が「説明義務違反がない」と判断したのは、被告病院の看護師が「退院に向けての確認事項」と題する書面を用いて、退院後の生活における留意事項および受診の目安を説明していたことや、被告病院の栄養士や薬剤部の職員が、食事上の留意事項や服薬に関する事項の説明をしていることの記録・記載があったことに加え、退院時に説明が求められる内容は、医師による説明でなければならないとは言えないものであったこと(コメディカルによる説明が許容されるものであったこと)によると考えられる。本来は、退院時の説明についても医師が説明を行い、その記録が残っていることが望まれるところであるが、看護師や薬剤部職員、栄養士らほかの医療職の説明により、退院時に説明すべき事項が補完された例と言える。また、医師自身が説明した内容について、カルテにきちんと記載しておくことが望まれることや、ある程度の定型的な留意事項についてはあらかじめ説明書を用意しておく(その上で、当該症例に即した個別の留意事項について追記等を行いつつ説明する)ことの有益性が改めて確認された例とも言える。医療者の視点多忙な勤務医にとって、患者への説明時間の確保は難解なテーマです。昨今では、単に病状説明をするだけではなく、誰に、どのような内容を、どれだけ詳しく説明し、さらにその説明を聞いた患者さん側がどの程度理解されたかなど、事細かにカルテに記載しなければなりません。働き方改革の影響もあり、一人ひとりの患者さんに多くの時間を割けない状況になっているため、(1)定型の説明文書を記載しておく、(2)チーム内の医師同士やコメディカルと説明業務を分担する、などの工夫が重要となります。ただし、当然のことながら、患者さんごとに病状/病態、背景、併存症などが異なるため、各患者さんに個別の注意喚起をする必要もあります。必要十分な説明を患者さんに届けるには、業務の効率化やチーム医療の推進が肝要です。Take home message退院にあたっての一般的な留意事項は定型の説明書を用いることも含め、医師の説明内容を記録化する(定型の説明書を用いる場合、当該症例に即した個別の留意事項について追記等を行いつつ説明し、コピーを残す)ことが重要である。医師に限らず、看護師らコメディカルが、それぞれの立場から留意事項を説明することもまた有益である。キーワード療養方法の指導としての説明義務退院時や診療の結果、入院させないで帰宅させて自宅で経過観察をする際に、生活上の留意事項やどのような症状が生じたときに病院を受診すべきか等につき指示・説明をする義務。患者に対する診療行為の一環として行われるものであり、患者の生命・身体の安全そのものを保護する見地から導かれる説明義務であり、治療法の選択に関する説明義務が患者の自己決定権の尊重を根拠に置くのとは根拠を異にする。

8.

GLP-1受容体作動薬、内視鏡検査の誤嚥リスクに影響するか/BMJ

 2型糖尿病患者に上部消化管内視鏡検査を行う際、検査前のSGLT-2阻害薬と比較してGLP-1受容体作動薬の使用では、肺吸引のリスクは上昇しないものの、内視鏡検査中止のリスクが高いことが、米国・ハーバード大学医学大学院のWajd Alkabbani氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年10月22日号に掲載された。米国のコホート研究 研究グループは、2型糖尿病患者の上部消化管内視鏡検査において、検査前のGLP-1受容体作動薬投与は、SGLT-2阻害薬投与に比べ肺吸引や検査中止のリスクを上昇させるかを評価する目的で、コホート研究を行った(ハーバード大学医学大学院薬剤疫学・薬剤経済学科などの助成を受けた)。 米国の2つの商用医療データベースを用いて、2016年1月1日~2023年8月31日に、上部消化管内視鏡検査前の30日以内にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬を使用した18歳以上の2型糖尿病患者を特定した。 4万3,354例を解析の対象とした。内視鏡検査前に2万4,817例(平均年齢59.9歳、女性63.6%)がGLP-1受容体作動薬を、1万8,537例(59.8歳、63.7%)がSGLT-2阻害薬を使用していた。サブグループ解析でも全般に肺吸引リスクに差はない 主要アウトカムである内視鏡検査当日または翌日の肺吸引の1,000人当たりの重み付けリスクは、GLP-1受容体作動薬群が4.15、SGLT-2阻害薬群は4.26であり、両群で同程度であった(統合リスク比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.73~1.31)。 内視鏡検査に使用した麻酔の種類や肥満度に基づくサブグループ解析でも、両群間に肺吸引リスクの差を認めなかった。また、個々のGLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬の比較でも、全般に肺吸引リスクに差はなく、エキセナチド-リキシセナチドのみリスクが高かった(統合リスク比:2.49、95%CI:1.36~4.59)が、症例数が少なく精度は低かった。BMI値≧30で検査中止リスクが高かった 副次アウトカムである内視鏡検査中止の1,000人当たりの重み付けリスクは、SGLT-2阻害薬群が4.91であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群は9.79と増加していた(統合リスク比:1.99、95%CI:1.56~2.53)。 サブグループ解析では、BMI値≧30の患者でGLP-1受容体作動薬群の検査中止リスクが高かった(統合リスク比:2.60、95%CI:1.65~4.06)が、BMI値<30の患者では差を認めなかった(0.99、0.51~1.94)。また、SGLT-2阻害薬群と比較して、セマグルチド皮下注、デュラグルチド、エキセナチド-リキシセナチド、チルゼパチドは検査中止リスクが高かった。 著者は、「これらの知見は、無作為化試験によるエビデンスがない現在、内視鏡検査を必要とする患者に対する検査前のプロトコールの作成に役立つ可能性がある」としている。

9.

GLP-1受容体作動薬が消化管の内視鏡検査に影響か

 上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)や大腸内視鏡検査では、患者の胃の中に食べ物が残っていたり腸の中に便が残っていたりすると、医師が首尾よく検査を進められなくなる可能性がある。新たな研究で、患者がオゼンピックやウゴービといった人気の新規肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している場合、このような事態に陥る可能性の高くなることが明らかになった。米シダーズ・サイナイ病院の内分泌学者で消化器研究者のRuchi Mathur氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。 GLP-1受容体作動薬には胃残留物の排出を遅延させる作用があり、便秘を引き起こすこともある。このため、この薬の使用者では、全身麻酔を必要とする処置を受ける際に食べ物を「誤嚥」するリスクが増加する可能性のあることが指摘されている。Mathur氏らは、GLP-1受容体作動薬使用者では消化管に残留物が見られることがあり、それが内視鏡検査で鮮明な画像を得る上で障害になる可能性があると考えた。 そこでMathur氏らは、2023年1月1日から6月28日の間に胃カメラか大腸内視鏡検査、またはその両方を受けた過体重または肥満の患者209人のデータを後ろ向きに解析した。209人中70人がGLP-1受容体作動薬使用者(GLP-1群、平均年齢62.7歳、女性36人)、残りの139人は非使用者(対照群、平均年齢62.7歳、女性36人)であった。胃カメラのみを受けたのはGLP-1群23人、対照群46人、大腸内視鏡検査のみを受けたのはGLP-1群23人、対照群45人、両方の検査を受けたのはGLP-1群24人、対照群48人だった。 胃カメラのみを受けた対象者のうち胃残留物が認められた者の割合は、GLP-1群で17.4%(4人)であった。これに対し、対照群と、胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者で、胃残留物が認められた対象者はいなかった。 また、大腸内視鏡検査または胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者のうち、「腸管の準備が不十分」(便が残存しているなど腸管洗浄が不十分な状態)であった者の割合は、GLP-1群で21.3%(10/47人)に上ったのに対し、対照群では6.5%(6/93人)であった。 ただし、研究グループは良い知らせとして、GLP-1受容体作動薬使用の有無に関係なく、対象患者において誤嚥、呼吸困難、誤嚥性肺炎は発生しなかったことを挙げている。 それでも研究グループは、「胃や腸に食物や便が残留するリスクの上昇は憂慮すべきことだ」と注意を促す。なぜなら、そのような状態での内視鏡検査は、「病変の見逃しや患者の不満、処置のキャンセル、医療資源の浪費といった重大なリスク」をもたらすからだという。 研究グループは、「本研究結果は、内視鏡検査前のGLP-1受容体作動薬の使用に関するガイドラインの更新が必要かどうかを判断するために、さらなる研究が必要であることを示唆するものだ」との見方を示している。

10.

喀血の原因は、58年前の○○【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第264回

喀血の原因は、58年前の○○2024年7月、アメリカの選挙演説をしていたドナルド・トランプ氏が狙撃されるという事件がありました。そのため、ここらへんで一度、弾丸関連の異物論文を復習しておこうと思うのが異物論文専門医です。大昔に受けた傷跡や異物などがその後、数十年の時を経て顕在化するというのはよくあります。異物論文の世界では、70年後に心筋梗塞を起こした症例などが有名です1)。さて、今日紹介するのは喀血例の報告です。アルツハイマー病や脳卒中の既往がある81歳の退役軍人が、喀血によって搬送されました。喀血の原因はいくつもありますが、高齢男性においては通常、結核、肺アスペルギルス症、喫煙などが想起されます。Shrinath V, et al. 'You bleed in war and you bleed in peace: Hemoptysis in a case with retained intra-thoracic bullet fragments decades after the injury.’ Lung India. 2024 Jul 1;41(4):331-332.酸素飽和度の低下もなく、バイタルサインは安定していました。喀血は鼻出血と同じように、一度止まってしまえば意外としばらく出血しないことが多いです。当然、原因があるならそれを解決しなければ、再喀血するリスクがあるわけですが。この高齢男性の喀血の原因は何だったのでしょうか?胸部X線画像では、陳旧性の肺の陰影のようなものが数個胸部に見られました。うーん、これが喀血を起こすものだろうか。確かに、過去に重症肺炎や結核の既往があったり、塵肺があったりすると、こういった石灰化が見られますが、それが急性喀血の原因にはなりにくいです。「もしかして吐血じゃね?」ということで、上部消化管内視鏡検査が行われましたが、何も異常はなく、むしろ声帯に血液が付着していることがわかりました。「ああ、これはやっぱり喀血だ」ということで、気管支鏡検査が行われました。しかし、気管支腫瘍や異物などは見られませんでした。胸部造影CTでは、左下葉と背中の皮下に金属影が確認されました。胸部X線写真正面像だけでは胸郭内・胸郭外のどちらに石灰化があるのか不明ですが、胸部CTではその場所が明らかとなります。皮下の金属影とくれば、アレでしょう。「これは戦時中の弾丸でしょうか?」こんな会話が診察室で行われたのかもしれません。そう、これは58年前、軍務に就いていたときに散弾銃で撃たれ、除去された弾丸と除去できなかった弾丸があるようでした。年齢や基礎疾患も考慮して、気管支動脈塞栓術までは行われませんでした。止血剤の投与で軽快退院しています。半世紀以上を経て、喀血を起こすというのは過去に類を見ないもので、現時点で「弾丸関連喀血」の世界最長記録であると論文中に記載されています。1)Burgazli KM, et al. An unusual case of retained bullet in the heart since World War II: a case report. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2013 Feb;17(3):420-1.

11.

最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

12.

二項対比で鑑別する【国試のトリセツ】第37回

§2 診断推論二項対比で鑑別するQuestion〈109E47〉12歳の女児。間欠的腹痛と下痢とを主訴に来院した。生来健康であったが、3カ月前から間欠性の腹痛と1日数回の下痢とが出現した。2カ月前から体重が2kg減少し、腹痛と下痢とが改善しないため受診した。痔瘻を認める。粘血便を認めない。血液所見赤血球400万、Hb9.8g/dL、Ht33 %、白血球6,000、血小板35万。血液生化学所見総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.0g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST30 IU/L、ALT35IU/L。CRP2.5mg/dL。下部消化管内視鏡検査で予想されるのはどれか。(a)偽膜(b)憩室(c)敷石像(d)ポリープ(e)輪状潰瘍

13.

治療に対する不安を軽くするには?【もったいない患者対応】第3回

治療に対する不安を軽くするには?登場人物今日来た患者さん、とても不安が強くて治療の説明をしてもなかなか必要性を理解してもらえないんです。なぜそんなに不安が強いのかな?どうやら同じ病気の友達にいろいろ言われたらしく…。副作用が多いからやめたほうがいいとか…。患者さんは友達の体験談に大きな影響を受けるからね。ですよね。どうすればいいんでしょう?先生は同じ治療を安全に受けた患者さんをたくさん知ってるよね?そのことに少し触れてみるのはどうだろう?実体験を例に挙げるたとえば、患者さんが下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける予定で、その説明を医師から受けるとします。しかし実は事前に知人から、「大腸カメラはすごく痛いよ!」「大腸カメラで大腸に穴が空いた人がいるらしいよ!」「前日の下剤がつらすぎて二度と受けたくない!」という話を聞いていたとしたら、患者さんはどういう思いを抱いているでしょうか? 「たった1人の事例が自分に当てはまるとは限らないし、個人差はあるに決まっているだろうから信用しない」などと冷静に判断できる人はおそらくいないでしょう。誰もが「自分も同じ目にあうかもしれない」と強い不安を抱くはずです。患者さんにとって、“親しい人からの体験談”ほど大きな影響を与えるものはないからです。そこで、私たちもそれを逆手にとり、不安が強い患者さんには「参考程度」に体験談をお伝えするのも1つの手です。たとえば、私は大腸カメラを2度受けた経験があるので、「私も大腸カメラを受けたことがあるんですが、全然痛くなかったんですよ。もちろん個人差はあると思いますが…」「私も下剤を飲んだとき夜中に何度かトイレに起きたのですが、お腹が痛くてつらい、ということはなかったです」と伝えています。実際に同じ検査や治療を受けた患者さんの事例を、個人情報に注意しながら例に出してみてもよいでしょう。もちろん、「n=1」の体験談は医学的には大きな意味をもちませんから、「個人差はありますよ」「ケースバイケースですよ」という補足説明は必要ですし、リスクについてはデータをもとに客観的な情報を提供すべきです。しかし、「実際にそういう感想もある」と知っておくことが、患者さんの心理的負担を少し軽くするのは間違いないでしょう。「相反する例」をうまく使う治療や検査の必要性をきちんと理解してもらうなら、「相反する例」をうまく利用するのも1つの手です。患者さんに「AはBです」と伝えたいときに、「AがBでなかったらどうなるか」を引き合いに出し、対比を浮き彫りにして理解してもらいやすくする、という手法です。たとえば、化学療法を受ける予定の患者さんに制吐薬を処方するとします。医師にとって、化学療法に制吐薬を併用するのは当たり前のことですが、患者さんにとっては初めての体験です。そこで、「吐き気止めを処方しておきますね」と言うだけで済ませるのではなく、「もし吐き気止めを使わないと、〇〇という状況になることが予想されます(〇%くらいの人に吐き気が起こると言われています)ので、吐き気止めを処方しますね」というふうに話します。他にも、たとえば輸血が必要な患者さんに対しては、「もし輸血をしないと〇〇になってしまうので、今日は輸血を行いましょう」というように伝えることが可能です。もちろん「脅す」という意味ではありません。治療の必要性を理解するためには、「治療をしなかった未来」を具体的に思い描いていただくことが有効だという意味です。これとは少し違うものの、似た例をあげてみます。以前、私の指導医は、肝臓切除の手術前に必ず、「実は、昔は肝臓は切れない臓器だと言われていました。肝臓は血管の塊だからです。いまはいろんな道具が出てきて、ようやく切れるようになったんです」と説明していました。技術が進歩する前は肝臓を「切ることすらできなかった」と伝えることで、「出血リスクが高すぎて手術が困難だった昔」を引き合いに出し、出血リスクの大きさを患者さんが理解しやすくしていたのです。

14.

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の略語はどれが正しい?【知って得する!?医療略語】第23回

第23回 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の略語はどれが正しい?病院によって上部消化管内視鏡検査の略語が違うようなのですが・・・そうですね。上部消化管内視鏡の略語表記は、施設や医師によりさまざまで混乱しますね。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】EGD【日本語】上部消化管内視鏡(検査)【英字】esophagogastroduodenoscopy【分野】消化器【診療科】消化器内科・消化器外科【関連】upper gastrointestinal endoscopy実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。筆者が最初に勤務した病院では上部消化管内視鏡検査、通称「胃カメラ」をGIF(gastrointestinal fiber scope)と表現していました。その後、転勤した先では、上部消化管内視鏡検査はGS(gastroscopy)と表現する医師が多く、一部の医師はES(endoscope)と表現していました。さらに別の病院に転勤すると、今度はGFと表記され、同じ上部内視鏡検査でも病院や医師により表記がまったく異なるのを目の当たりにしました。また最近では、上部消化管内視鏡検査をFGS(fiber gastroscopy)と表記している病院に遭遇しました。普段、見かけない表記なので調べてみると、1971年(昭和46年)に書かれた「消化管内視鏡の現状」という内視鏡に関する総説論文に出会いました。同論文によれば、1963年10月に町田製作所(千葉県我孫子市)が日本初の国産の胃内視鏡「FGS」を発表しました。その後、1964年にオリンパス光学工業(現・オリンパス)より「GTF」(通称、ファイバーカメラ)が発表されます。また町田製作所はファイバー食道鏡FES、十二指腸ファイバースコープ(FDS)を発表し、一方でオリンパス光学工業は食道ファイバースコープEF、十二指腸ファイバースコープJF-Bを発表しています。その後のオリンパス光学よりGIFシリーズの内視鏡が登場しています。上部消化管内視鏡の開発は、硬性胃鏡から始まり、軟性胃鏡、胃カメラ、ファイバースコープ、電子スコープへ発展を遂げると同時に、胃と食道、十二指腸それぞれ個別に開発された内視鏡が、食道から十二指腸まで1つの内視鏡で観察できるように進化してきました。内視鏡に関するさまざまな略語表記が存在するのは、内視鏡の開発の歴史が影響しているかもしれません。筆者が確認できた、上部消化管内視鏡検査を意図して記載された表記は以下の通りです。GIF:gastrointestinal fiberGS:gastroscopyES:endoscopyFGS:fiber gastroscopyGF:gastric fiberEGD:esophagogastroduodenoscopyGFS:gastrointestinal fiber scopyなお、現在でも使用されている「GIF」や「GF」は海外では通用しない表現で、国際的にはEGD(esophagogastroduodenoscopy)が公式な略語となっています(消化器内視鏡学会 消化器内視鏡用語集 第4版)。現場で混乱が生じないよう、表記が統一されていくことを願います。1)竹本 忠良. 東女医大誌. 1971;41:813-830.2)丹羽 寛文. Gastroenterol Endosc. 2009;51:2392-2413.3)鷲塚 信彦. SENI GAKKAISHI. 2008;64:258-261.4)藤野 雅之. Gastroenterol Endosc. 2008;50:3613-3618.5)日本消化器内視鏡学会用語委員会:消化器内視鏡用語集 第4版

15.

【第221回 】液体窒素を飲むとどうなるか?

液体窒素を飲むとどうなるか?いらすとやより使用私の子供がとあるYouTubeチャンネルの動画を見ていたとき「液体窒素を口に含んでも大丈夫」と言っていました。確かにそうかもしれない、と私も思いました。熱したフライパンに水を垂らしたとき、水滴は玉になったままフライパンの上を転がるのと同じ原理ということです。しかし、間違って飲んでしまったらどうなるんだろう…。ちょっと気になったので調べてみました。まとまった報告はなく、症例報告をいくつか紹介してみます。Kim DW.Stomach Perforation Caused by Ingesting Liquid Nitrogen: A Case Report on the Effect of a Dangerous Snack.Clin Endosc. 2018 Jul;51(4):381-383.これは13歳の男児が遊園地でお菓子を食べたところ、突然腹痛を訴えて来院した症例報告です。このお菓子は、液体窒素でキンキンに冷えていたことがわかりました。腹部CT検査で、消化管穿孔を起こしていることがわかり、緊急手術で胃穿孔が判明しました。液体窒素そのものか、ただ冷えていたことが原因なのかどうか、何とも言えない症例ではありますね。Zheng Y, et al. Barotrauma after liquid nitrogen ingestion: a case report and literature review.Postgrad Med. 2018 Aug;130(6):511-514.これは、25歳男性が液体窒素を含んだ自家製飲料を摂取した後に、急性腹症を起こした症例です。精査の結果、胃穿孔を起こしていることがわかり、緊急手術となりました。Pollard JS, et al.A lethal cocktail: gastric perforation following liquid nitrogen ingestion.BMJ Case Rep. 2013 Jan 7;2013:bcr2012007769.液体窒素を含むアルコール飲料を摂取した後に、胃穿孔を起こした18歳女性の症例報告です。胃の損傷の程度が大きかったため、Roux-en-Y再建による胃全摘術が必要でした。胃穿孔ばかり続きます。痛そうです。胃全摘はかなりシビアですね。Knudsen AR, et al.Gastric rupture after ingestion of liquid nitrogen.Ugeskr Laeger. 2009 Feb 9;171(7):534.28歳男性が、煙を吐き出して周囲を驚かせるために液体窒素15mLを飲み、その後重度の腹部膨満と縦隔気腫があったという症例報告です。小弯部を中心に胃が破裂していたため、開腹手術で縫合されました。上部消化管内視鏡検査では、冷却による潰瘍性病変などはありませんでした。おや?4つ目の報告は、ちょっと胃潰瘍とは異なる機序のようですね。実は、液体窒素による胃の傷害は、冷却による粘膜障害ではないとされています。ドライアイスなどを飲み込むと、長時間冷温に曝露されるので胃潰瘍のリスクがあるのですが、液体窒素はおそらくそれよりも早く気化します。液体窒素は、加熱されると数百倍に膨張することが問題になります。これによって、胃が極度に膨張して傷害を受けるのではないか、ということです。まぁ…どちらの機序が優勢にしても、こんなもんを飲み込むなんて狂気の沙汰ですから、決してマネしないように。ちなみにドライアイスを飲んだらどうなるかというと…実はこの連載の3回目で紹介しています。

16.

医師のがん検診受診状況は?/1,000人アンケート

 定番ものから自費で受ける最先端のものまで、検査の選択肢が多様化しているがん検診。CareNet.comが行った『がん検診、医師はどの検査を受けている?/医師1,000人アンケート』では、40~60代の会員医師1,000人を対象に、男女別、年代別にがん検診の受診状況や、検査に関する意見を聞いた。その結果、主ながん種別に受ける割合の多い検査が明らかとなったほか、今後受けたい検査、がん検診に感じる負担など、さまざまな角度から意見が寄せられた(2022年8月26~31日実施)。40代男性医師の約半数、がん検診を受けていない Q1「直近の健康診断や人間ドックで、どのがん検査を受けましたか?(複数選択)」では、男性ではどの年代でも、胃がん(40代41%、50代52%、60代59%)、大腸がん(同28%、同41%、同50%)の順に検査を受けた割合が多かった。「がん検診を受けていない」と回答した人は年代で大きく差があり、40代が47%、50代が31%、60代が23%となっており、40代男性の約半数が、がん検診を受けていないことが明らかになった。 女性では、40代と50代では、ともに乳がん(40代53%、50代47%)の検査を受けた割合が最も多く、次いで40代では子宮頸がん(52%)、胃がん(45%)、50 代では胃がん(45%)、子宮頸がん(44%)の順に多かった。60代は、胃がんが最多(64%)で、次いで乳がん(52%)、子宮頸がん(42%)の順となっている。「がん検診を受けていない」と回答した人は、どの年代も20%台で大きな差はなかった。女性の場合、乳がんや子宮頸がんといった若年層でも比較的リスクが高いとされるがんが多いことが、この結果に影響しているかもしれない。胃がん検診で最も多いのは経口内視鏡検査 Q2「胃がん検診の際に受けた検査はどれですか?(複数選択)」では、男女どの年代も経口内視鏡検査を受けた割合が最も多かった(男性29%、女性31%)。自由回答で、胃がん検診に対して寄せられたコメントとして、バリウムX線検査や内視鏡検査について、以下のようなものがあった。・バリウムではなくて内視鏡をファーストチョイスにしてほしい。(心臓血管外科、40代、女性)・胃のバリウム造影はあまり意味がないのではないでしょうか。(泌尿器科、40代、男性)・経口内視鏡の苦痛の軽減方法は鎮静以外にないものか、今後の技術の進歩に期待。(内科、60代、女性)・胃カメラは経鼻が入らないので、さらに細径の内視鏡開発を望みます。(泌尿器科、50代、男性)コメントが多く寄せられた「乳がん検診の痛み」 Q3では、男女で別の質問項目を設けた。男性に対しては前立腺がんについて聞いたところ、年代が上がるにつれて検査を受けた割合が増加し、40代ではわずか9%だが、50代では33%、60代では48%がPSA検査を受けていた。 女性に対しては乳がんについて聞いた。マンモグラフィ検査を受けた割合は各年代とも50%を超えており、超音波検査は30%前後であった。乳がん検診の痛みに対する以下のようなコメントが10件ほど寄せられた。・マンモグラフィはもっと痛みの少ない撮影法が開発されてほしい。毎回憂うつです。(眼科、40代、女性)・乳がん検診はMRIが最適だろうに、なぜ広がらないのかわかりません。そもそもマンモグラフィは非常に痛みが強く、その割に感度特異度とも不十分で改善点ありまくりなのに、まったく改善する見込みなし。(内科、50代、女性)・マンモグラフィが痛すぎるので、それに代わる痛くない検査がいい。(精神科、50代、女性)自費で受けた検査、今後受けたい検査 Q5では、自費で受けたことがある検査について聞いた。最も多かったのは腫瘍マーカー検査で、男女ともにどの年代も10%以上あり、最多の60代男性では24%だった。続いて脳ドックが男女ともに各年代10%前後であった。 Q6の自由回答のコメントでは、今まで受けたことはないが今後積極的に受けたい検査として、下部消化管内視鏡検査を挙げた人が14人、がん遺伝子検査が11人、がん線虫検査が10人、PET検査が9人、腫瘍マーカー検査が3人だった。ただし、線虫検査や腫瘍マーカー検査については、検査の精度に対して以下のような懐疑的な意見もいくつか寄せられた。・線虫検査などは偽陰性が問題だと思う。(泌尿器科、40代、女性)・腫瘍マーカーで早期発見は無理で、普段偽陽性ばかり見ているので、しっかりと有用性の評価をしないといけないと思う。(呼吸器内科、50代、男性)コロナ禍で検診を受けにくい状況も がん検診を受けにくい理由として、忙しくて受ける余裕がないという意見が多数寄せられた。具体的には、内視鏡検査や婦人科がんの検診は予約が取りづらいといったことや、週末に受診できる施設が少ないといった理由のほか、コロナ禍で検診を受けにくくなったという声も複数上がった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。がん検診、医師はどの検査を受けている?/医師1,000人アンケート

17.

CPと表記される医療用語が15種類…「誤解を招く医療略語」の解決に役立つポケットブレインとは?

 電子カルテの普及により多職種間で患者情報を共有しやすくなり、紙カルテ時代とは比にならないくらい業務効率は改善したー。はずだったのだが、今度は医療略語の利用頻度の増加による『カルテの読みにくさ』という新たな課題が浮上している。 医療略語は忙しい臨床現場で入力者の負担軽減に寄与する一方で、略語の多用や種類の増加が、職種間での情報共有における新たな弊害になっている可能性がある。また、診療科や職種により医療略語の意味が異なるため、“医療事故”のリスク因子にもなりかねない。増加の一途をたどる医療略語に、医療現場はどう対処していけばよいのだろうか。 そんな医療略語の課題解消に乗り出したのが、病院向け経営支援システムを扱うメディカル・データ・ビジョン株式会社だ。同社は医療IT企業の強みを生かし、医療略語辞書アプリ『ポケットブレイン』を昨年12月7日にリリースした。本アプリは電子カルテに書かれた英字略語を検索できる臨床現場支援ツールで、これを使えばカルテや各種検査レポートで分からない医療略語に遭遇した際、スマートフォンでサクサク検索できる。その開発者で医師の加藤 開一郎氏が昨年12月17日に記者会見を開き、医療略語の現状やアプリの開発経緯とその意義を語った。CPと略語表記されうる医療用語は15種類 医療略語は“さまざまな意味に解釈し得る”がゆえに誤解を招くものが存在する。加藤氏はその理由を「識別性の低さ」と話し、その一例として英字2文字で15種類もの意味を持つ『CP』を挙げた。≪CPと略語表記されうる医療用語≫・カプセル・ケアプラン・CP療法・大腸ポリープ・クロラムフェニコール・セルロプラスミン遺伝子・口蓋裂・脳性麻痺・毛細管圧・皮膚型ポルフィリン症・収縮性心外膜炎・半規管麻痺・臨床心理士・Child-Pugh分類・慢性動脈周囲炎 一方で、同氏は“略語の不統一”という問題も指摘している。これは、事実上は同じ物を指しているにもかかわらず、複数の医療略語が存在することだ。「上部消化管内視鏡検査」をその最たる例として挙げ、「学会でも略語表記の統一をアナウンスはされているが、現場ではさまざまな略語が使用されている」とコメントした。≪上部消化管内視鏡検査を意味して記載された略語≫*1)EGD:esophagogastroduodenoscopy2)GS:gastroscopy3)GIF:gastrointestinal fiber4)GF:gastric fiber5)GFS:gastlic fiber scopy6)ES:endscopy*:出典:ポケットブレイン説明資料医療略語の出現速度に書籍が追いついていない また、同氏は医師の働き方改革についても言及し、「医師の働き方改革と言われる一方で、内科、外科、救急医の減少傾向に歯止めがかからない。心ある医療者がかろうじて現場に踏みとどまっているのが現状だ。とにかく、医師・看護師の業務負担を減らすため、事務的な業務は積極的に事務職への代行を推進する必要がある。しかし、カルテを読む難しさがそれを阻んでおり、その大きな原因が英字略語や英語表記にあると考える。本アプリを開発した目的の1つは医師の業務代行にある」と強調した。 現在、医療略語に関する書籍は多数出版されているが、書籍でページをめくり医療略語を探すのは物理的に時間を要する。さらに、医療略語の出現速度に書籍の改訂ペースが追いついていない。片や、ネット検索は英字略語のみでは適切な情報に辿り着かず、適切な日本語との組み合わせ検索というもうひと手間が必要である。「それらの問題を解決したのが本アプリ『ポケットブレイン』」と同氏はコメント。 ポケットブレインは毎日情報が更新される成長型アプリで、未収載略語の追加・修正依頼、古い略語の削除等の依頼等、ユーザとの双方向性を重要視している。また、重要な機能の1つに“略語の属性情報”と“補足情報”がある。属性情報が分かることにより、目の前のカルテに書かれている英字略語に対し、その和訳を当てはめて良いかどうかの判断が可能となる。これにより医師以外の職種にも汎用性が高い仕様になっている。医療用語は医療を行うための共通言語 現在、日本医療機能評価機構の病院機能評価の機能種別版評価項目<3rdG:Ver2.0>において“略語の標準化”もポイントになっている。そのため、各病院独自のデータベースを構築する施設もあれば、略語の使用を登録制にしている病院もあるという。これを踏まえ、「同社は病院の業務スマホ向け版ポケットブレインの準備を進め、各病院の略語集にも対応していく予定」だという。 医療略語に限らず、医療用語は医療を行うための共通言語であり、インフラと言っても過言ではない。職種を超えた情報共有が求められる今日、カルテを早く正確に読める対策が求められる。 なお、本アプリに関連する連載をCareNet.comにて公開している。「知って得する!?医療略語」

18.

新型コロナ、消化管内視鏡検査で飛沫からの感染リスクは?

 消化管内視鏡検査(GIE)は、早期発見と多くの疾患の治療に有用である一方で、医療スタッフが患者の分泌物の飛沫によって感染するリスクがあり、COVID-19パンデミック下においては危険度の高い処置と考えられている。本研究は、横浜市立大学病院の研究チームが、検査を実施する医療スタッフが曝露する可能性のある唾液および消化液により、SARS-CoV-2陽性となる割合を検証した。Digestive endoscopy誌オンライン版2021年2月6日号に掲載。 本研究では、2020年6月1日~7月31日に横浜市立大学病院でGIEを受けたすべての患者が登録された。全員から3mL の唾液と共に、上部消化管内視鏡の場合は胃液10mLを、下部消化管内視鏡の場合は腸液10mLを採取した。主要評価項目は、唾液および胃腸液中のSARS-CoV-2陽性率で、SARS-CoV-2の血清抗体価や患者の背景情報についても併せて解析した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間中、計783例の唾液および消化液(上部消化管内視鏡:560、下部消化管内視鏡:223)を採取、分析した。・唾液サンプルに対するRT-PCRは、いずれもSARS-CoV-2陽性を示さなかった。・消化液サンプルの2.0%(16/783例、上部消化管内視鏡:13/560例、下部消化管内視鏡:3/223例)において、SARS-CoV-2陽性反応を示した。・RT-PCR陽性症例と陰性症例との間において、年齢、性別、内視鏡検査の目的、投薬、抗体検査陽性率については、いずれも有意差が見られなかった。・血清抗体検査においては、被験者の3.9%がCOVID-19抗体を有していたが、消化液のRT-PCRとの間に関連は見出されなかった。 これらの結果について、研究チームは「唾液中に検出可能なウイルスを持たない患者においても、消化管にSARS-CoV-2が存在するケースが確認された。内視鏡検査の医療スタッフは、処置を行う際に感染を認識する必要がある」と指摘。ただし、ウイルスが消化液中でどのくらいの時間留まり、感染性を保つかについてはデータが限られており、消化管におけるSARS-CoV-2の特徴や臨床的重要性を明らかにするにはさらなる研究が必要としている。

19.

大腸にテントウ虫を認めた1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第175回

大腸にテントウ虫を認めた1例Wikipediaより使用基礎疾患のない59歳の男性の下部消化管内視鏡スクリーニング検査中、検査医はビックリしました。なぜって、横行結腸にテントウ虫がいたからです!!!えええええっ!Tahan V, et al.An Unusual Finding of a Ladybug on Screening ColonoscopyACG Case Rep J . 2019 Aug 15;6(8):e00174.ナミテントウですよ。横行結腸にいたのは。 ちょっと待って、口か肛門、どっちから入ったの!?テントウ虫を飲み込んだら普通、消化されますよね。 しかし、下部消化管内視鏡検査をしたら、大腸に虫がいたという報告は実はいくつかあります。 “異物界"で有名なのが「横行結腸のゴキブリ」です1)。これは、ゴキブリの外殻がうまく消化されないことがあって、ゴキブリの形が残ってしまうという現象です。 おええ。よくよく考えると、テントウ虫が肛門から入って、ヨイショヨイショと横行結腸まで来るというのは考えにくいです。となると、やはり上から来たと考えるのが妥当ですよね。例のごとく、著作権の問題があってココに画像を貼れないのが残念ですが、上にあるWikipediaの写真のような、かわいいテントウ虫が横行結腸に転がっていたのです。 ぜひ原文をチェックしてみてください。テントウ虫の生死については書いていませんでしたが、たぶん死んでいたと思います。考察には、処置前に飲んだポリエチレングリコールが、胃や小腸の消化酵素でテントウ虫を消化するのを防いだのかもしれないと書かれていました。「ladybug」をPubMedでタイトル検索すると、わずか18件しか見つからず、 そのうち異物として報告されたのは、これが初めての例になります。1)Kumar AR, et al. An unusual finding during screening colonoscopy: a cockroach! Endoscopy. 2010;42 Suppl 2:E209-10.

20.

PPI服用や便秘がフレイルに影響

 フレイルと腹部症状の関連性はこれまで評価されていなかったー。今回、順天堂東京江東高齢者医療センターの浅岡 大介氏らは病院ベースの後ろ向き横断研究を実施し、フレイルの危険因子として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用、サルコペニア、低亜鉛血症、FSSG質問表(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)でのスコアの高さ、および便秘スコア(CSS:Constipation Scoring System)の高さが影響していることを明らかにした。Internal Medicine誌2020年6月15日号掲載の報告。 同氏らは、2017~19年までの期間、順天堂東京江東高齢者医療センターの消化器科で、65歳以上の外来通院患者313例をフレイル群と非フレイル群に分け、フレイルの危険因子を調査した。患者プロファイルとして、骨粗しょう症、サルコペニア、フレイル、栄養状態、上部消化管内視鏡検査の所見、および腹部症状の質問結果(FSSG、CSS)を診療記録から入手した。 おもな結果は以下のとおり。・対象者は、男性134例(42.8%)、女性179例(57.2%)、平均年齢±SDは75.7±6.0歳で、平均BMI±SDは22.8±3.6kg/m2だった。・そのうち71例(22.7%)でフレイルを認めた。・一変量解析では、高齢(p<0.001)、女性(p=0.010)、ヘリコバクターピロリ菌の除菌成功(p=0.049)、PPIの使用(p<0.001)、下剤の使用(p=0.008)、サルコペニア(p<0.001)、骨粗しょう症(p<0.001)、低亜鉛血症(p=0.002)、低アルブミン血症(p<0.001)、リンパ球数の低下(p=0.004)、CONUT(controlling nutritional status)スコアの高さ(p<0.001)、FSSGスコアの高さ(p=0.001)、CSSスコアの高さ(p<0.001)がフレイルと有意に関連していた。・また、多変量解析の結果でもフレイルと有意に関連していた。高齢[オッズ比(OR):1.16、95%信頼区間[CI]:1.08~1.24、p<0.001]、PPI使用(OR:2.42、95%CI:1.18~4.98、p=0.016)、サルコペニア(OR:7.35、95%CI:3.30~16.40、p<0.001)、低亜鉛血症(OR:0.96、95%CI:0.92~0.99、p=0.027)、高FSSGスコア(OR:1.08、95%CI:1.01~1.16、p=0.021)、高CSSスコア(OR:1.13、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)。

検索結果 合計:37件 表示位置:1 - 20