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ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと2018 in東京~【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科、同院 大腸・肛門外科、同院 腫瘍センター、同大学院 応用腫瘍学講座、同大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プランは、認定NPO法人キャンサーネットジャパンと共催で、2018年3月3日(土)に大腸がん疾患啓発イベント「ブルーリボンキャラバン」を開催する。同イベントは、大腸がんの診断・検査から外科的治療・薬物療法について広く知ってもらうことを目的に、国際的な大腸がん啓発月間でもある3月に毎年開催されている。会場は、東京医科歯科大学M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂。当日は来場者全員にオリジナル冊子「もっと知ってほしい大腸がんのこと」のプレゼントがあり、ブルーを身に着けて来場した方には粗品も用意されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】 2018年3月3日(土)《セミナー》 13:00~16:50《ブース展示》12:00~17:00【場所】 東京医科歯科大学 M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂 〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45【参加費】 無料【予定内容】《セミナー》 総合司会 石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座) 13:00~13:05 開会挨拶   三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長) 13:05~13:20 講演(1) 「15分で学ぶ!大腸がんの基礎知識」  植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科 科長) 13:20~13:45 講演(2) 「大腸がんの手術療法~開腹手術からロボット手術まで~」  絹笠 祐介氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科 科長) 13:45~14:10 講演(3) 「大腸がんの内視鏡診断・治療、最前線!」  福田 将義氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 光学医療診療部) 14:10~14:30 休憩(20分) 14:30~14:45 講演(4) 「転移・再発のある大腸がんの治療方針~治療の目的を考える~」  石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科) 14:45~15:05 体験談 「肝臓切除への選択~希望と不安~」  野城 郁郎氏(大腸がん経験者) 15:05~15:30 講演(5) 「大腸がん肝転移に対する手術治療」  齋浦 明夫氏(がん研有明病院 消化器外科 肝胆膵外科部長) 15:30~15:55 講演(6) 「大腸がん薬物療法のいま」  室 圭氏(愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部 部長) 15:55~16:10 休憩(15分) 16:10~16:45 Q&A  Q&Aトークセッション 質問票にお答えします!  パネリスト:杉原 健一/福田 将義/石川 敏昭/齋浦 明夫/室 圭/野城 郁郎 16:45~16:50 閉会挨拶  杉原 健一氏(東京医科歯科大学 名誉教授)《ブース展示》 会場では大腸がんの検査・治療に使用する機器などのブース展示を開催します。 展示スペースはどなたでもご自由にご観覧いただけますのでお気軽にお越しください。[出展協力] ・東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター ・東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部 ・東京医科歯科大学 歯学部口腔保健学科 ・公益社団法人日本オストミー協会 東京支部 ・ブーケ(若い女性オストメイトの会) ・NPO法人がんと暮らしを考える会 ・株式会社メディコン ・アルフレッサファーマ株式会社 ・ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ・アミン株式会社 ・オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社【問い合わせ先】 ブルーリボンキャンペーン事務局 認定NPO法人キャンサーネットジャパン 〒113-0034 東京都文京区湯島1-10-2 御茶ノ水K&Kビル 2階 TEL:03-5840-6072(平日10時~17時) FAX:03-5840-6073 MAIL:info@cancernet.jp【共催】 東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科 東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター 東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座 東京医科歯科大学大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン 認定NPO法人キャンサーネットジャパン【協力】 メルクセローノ株式会社(冊子提供)【後援】 東京都/東京医科歯科大学医師会/東京都医師会/ 日本癌治療学会/日本臨床腫瘍学会/大腸癌研究会/ 公益社団法人日本オストミー協会/NPO法人ブレイブサークル運営委員会/ 認定NPO法人西日本がん研究機構詳細はこちら

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人口当たりの医師数が最も少ない県は? 依然大きい地域偏在

 厚生労働省がこのほど取りまとめた2016(平成28)年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」の結果によると、医療施設に従事する医師は、総数の95.4%に当たる30万4,759人であった。これを都道府県別に人口10万人当たりの医師数でみると、全国平均では240.1人で、前回の14年調査に比べ6.5人増となったものの、最も多かった徳島県(315.9人)と最も少なかった埼玉県(160.1人)では倍近い開きがあることがわかった。人口当たりの医師数が最も少なかったのはいずれも首都圏 本調査は、医師や歯科医師、それに薬剤師が厚生労働大臣に届け出た各届出票に基づき、厚生労働省が2年に1度実施するもの。 このうち、医療施設(病院・診療所)に従事する医師は30万4,759人で、前回調査時から7,914人、率にして2.7%の増加となった。男性医師は24万454人で、対前回調査比で4,104人(1.7%)増だったのに対し、女性医師は6万4,305人で、前回調査時から3,810人、率にして6.3%の増加となった。 平均年齢は、全体で49.6歳。病院に従事する医師は44.5歳で、約30年にわたって上昇傾向が続いている。一方、診療所に従事する医師では59.6歳となっており、2010(平成22)年から引き続き上昇している。 主な診療科別にみると、従事する医師数が最も多かったのが「内科」6万855人(20.0%)で、「整形外科」2万1,293人(7.0%)、「小児科」1万6,937人(5.6%)が続いた。また、主な診療科別にみた平均年齢は、「肛門外科」が58.5歳と最も高く、逆に最も低かったのは「救急科」で41.4歳だった。 従業地の都道府県別にみた人口10万人当たりの医師数は、全国平均で240.1人であった。このうち、人口当たりの医師数が最も多かったのは徳島県で315.9人、次いで京都府(314.9人)、高知県(306.0人)などとなっている。一方、人口当たりの医師数が最も少なかったのは埼玉県160.1人で、茨城県(180.4人)、千葉県(189.9人)で、いずれも首都圏。今回の調査では、26都府県で平均を上回っていたが、最多の徳島県に比べて最少の埼玉県では約半数程度の医師数しか確保できておらず、依然として地域による偏在は大きいといえる結果となった。

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シェーグレン症候群〔SS:Sjogren's syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義眼・口腔乾燥を主症状とし、多彩な全身臓器症状を呈し、慢性に経過する全身性自己免疫疾患である。疾患名は1933年に報告したスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレン(Henrik Sjogren *oはウムラウト)に由来する。■ 疫学中年以降の女性に好発(女性 vs.男性 14 vs.1)し、国内に少なくとも数万人(厚生労働省研究班推定)の罹患数とされ、潜在例はさらに多いと推定されている。■ 病因病理学的には、涙腺・唾液腺などの外分泌腺にリンパ球浸潤とそれに伴う腺構造破壊、線維化が認められる。免疫学的には、リンパ球・サイトカイン・ケモカイン異常、高IgG血症、多彩な自己抗体産生が認められる。■ 症状1)腺症状ドライアイ(眼乾燥)、ドライマウス(口腔乾燥)が二大症状である。気道粘膜、胃腸、膣、汗腺などの分泌腺障害に起因する乾燥症状を認める例もある。2)全身症状・腺外臓器病変(1)全身:微熱、倦怠感(2)甲状腺:慢性甲状腺炎(3)心血管:肺高血圧症(4)肺:間質性肺疾患(5)消化器:慢性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変(6)腎臓:間質性腎炎、腎尿細管性アシドーシス(7)神経:末梢神経障害(三叉神経障害)、中枢神経障害(無菌性髄膜炎、横断性脊髄炎)(8)関節:多関節炎(9)皮膚:環状紅斑(疾患特異性が高い)、高ガンマグロブリン性紫斑(下腿点状出血斑)、薬疹(10)リンパ:単クローン性病変、悪性リンパ腫(11)精神:うつ病■ 分類本疾患のみを認める一次性(原発性)とほかの膠原病を合併する二次性(続発性)に分類される。■ 予後腺症状のみであれば生命予後は一般に良好である。腺外症状、とくに悪性リンパ腫を認める例では予後が不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見1)血液検査異常(1)腺障害:血清唾液腺アミラーゼ上昇(2)免疫異常:疾患標識自己抗体(抗SSA抗体、抗SSB抗体)・リウマトイド因子・抗核抗体陽性、高ガンマグロブリン血症、末梢リンパ球数減少を認める。2)腺機能検査異常涙液分泌低下は、シルマーテスト、涙液層破壊時間(BUT)により評価する。乾燥性角結膜炎は、ローズベンガル染色、フルオレセイン染色、リサミングリーン染色を用いて評価する。唾液分泌低下は、ガムテスト、サクソンテストにより評価、より客観的には唾液腺シンチグラフィーが用いられる。涙腺、唾液腺の形態は、超音波あるいはMRI検査により評価される。3)腺外臓器病変に応じた各種検査肺野およびリンパ節の評価についてはCT検査が有用である。また、間質性腎炎の評価には尿検査が行われる。● 診断で考慮すべき点潜在例も多く、その可能性を疑うことが診断への第一歩である。ドライアイ、ドライマウスの有無を問診し、典型例では問診のみで診断がつくこともある。本疾患が疑われた際は、診断基準に沿って確定診断を行うことが望ましい。しばしば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などの他の自己免疫疾患を合併する。診断のための検査が困難である場合には、専門施設への紹介を考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 腺症状1)眼点眼薬(人工涙液、ムチン/水分分泌促進薬、自己血清)、涙点プラグ挿入術、ドライアイ保護眼鏡装用2)口腔催唾薬(M3ムスカリン作動性アセチルコリン受容体刺激薬)、唾液噴霧薬がそれぞれ用いられる。■ 腺外症状 全身症状に対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられる。免疫学的な活動性が高く、臓器障害を呈する症例では、ステロイドおよび免疫抑制薬が用いられる。● 治療で考慮すべき点眼症状に対しては治療が比較的奏功する一方で、口腔乾燥症状は改善が乏しい例も多い。腺症状に対するステロイドの有用性は否定的である。リンパ増殖性疾患、悪性リンパ腫を含む腺外症状もまれではないため、注意深く経過観察する。腺外臓器病変、ほかの膠原病を有する例は、リウマチ内科専門医へのコンサルトを考慮する。不定愁訴が多い例もあるが、本疾患を正しく理解をしてもらえるようによく患者に説明する。4 今後の展望欧米では、抗CD20モノクローナル抗体の臨床試験が報告されているが、その有用性については十分確立されていない。リンパ球などの免疫担当細胞を標的とした新規治療薬の臨床試験が国際的に進められている。5 主たる診療科リウマチ科(全身倦怠感、関節痛、リンパ節腫脹)、眼科(眼乾燥症状)耳鼻咽喉科(リンパ節腫脹、唾液腺症状)、歯科口腔外科(口腔・乾燥症状)、小児科(小児例)6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難病情報センター シェーグレン症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本シェーグレン症候群学会(医療従事者向けのまとまった情報)シェーグレン症候群財団ホームページ(米国)(医療従事者向けのまとまった情報)Up to date(医療従事者向けのまとまった情報)1)Firestein GS, et al. Kelley and Firestein’s Textbook of Rheumatology 10th edition.Philadelphia;Elsevier Saunders:2016.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班 編集. シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版.診断と治療社;2017.3)日本シェーグレン症候群学会 編集.シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル 改訂第2版.診断と治療社;2014.公開履歴初回2017年12月12日

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特定の歯周病菌感染が頻脈性不整脈の進行に影響か

 頻脈性不整脈の患者は、徐脈性不整脈の患者と比較して、唾液中から特定の歯周病原菌が多く検出されることが、神奈川歯科大学の青山 典生氏らの研究により示された。BMC cardiovascular disorders誌 2017年10月17日号の報告。 頻脈性不整脈および徐脈性不整脈は、QOL低下をもたらす心調律異常である。歯周病の人は、心血管疾患のリスクが高いといわれるが、頻脈性不整脈および徐脈性不整脈との関連性についての報告はほとんどない。 著者らは、その関連性を明らかにするため、東京医科歯科大学病院を受診した頻脈性不整脈患者(n=98)と徐脈性不整脈患者(n=40)の2群を対象に、唾液中の歯周病原性細菌を調査した。 主な結果は以下のとおり。・頻脈性不整脈の患者からは、徐脈性不整脈の患者よりも、唾液中の歯周病原菌Porphyromonas gingivalisおよびPrevotella intermediaが多く検出された。・高血圧、脂質異常症をもつ患者の割合は、両群間で同等であった。

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口腔がんになりやすい職業

 フィンランド・ヘルシンキ大学のLaura Tarvainen氏らが、舌・口腔(oral cavity)・咽頭がんにおける職業別リスクについて、飲酒・喫煙を調整し評価したところ、歯科医師などいくつかの職業で舌がんの相対リスクが高いことがわかった。著者らは、職業的な化学物質への曝露、飲酒や喫煙の増加、ヒトパピローマウイルス感染が関連する可能性を示唆している。Anticancer research誌2017年6月号に掲載。 著者らは、1961~2005 年における北欧諸国の1,490万人と、舌・口腔・咽頭がん2万8,623例のデータを調査。職業別の飲酒については肝硬変による死亡率と肝臓がん発症率に基づいて推定し、職業別の喫煙については肺がん発症率に基づいて推定した。 飲酒・喫煙について調整後、舌・口腔・咽頭がんの相対リスクが1.5を超えた職業は、歯科医師、芸術系職、美容師、ジャーナリスト、司厨、船員、ウエイターなどであった。

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第4回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院腫瘍化学療法外科、同大学院未来がん医療プロフェッショナル養成プラン、同大学院臨床腫瘍学分野、同大学院応用腫瘍学講座は、2017年10月1日(日)に、第4回「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、同院が地域がん診療連携拠点病院の活動の一環として、がんに関するさまざまなテーマで開催する公開講座の4回目となる。今回は『正しく知ろう!「化学療法」』をテーマに、化学療法の目的と効果、さまざまなサポートについて広く知ってもらうための内容となっており、各種ブース展示や体験コーナーなど、楽しく学べる企画が多数予定されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2017年10月1日(日)《セミナー》13:00~16:35 《ブース展示》12:00~17:00【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー2F 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45現地キャンパスマップはこちら【参加費】無料(※参加申し込み不要)【テーマ】正しく知ろう!「化学療法」【予定内容】《セミナー》13:00~16:35 鈴木章夫記念講堂司会:坂下 博之氏(東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野)13:00~13:05 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)13:05~13:30 講演1 「化学療法」ってどんなもの? 何のため? 石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科)13:30~14:00 講演2 最近話題の治療について、解説します(免疫療法/プレシジョンメディシン) 池田 貞勝氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター)14:00~14:20 医科歯科大のがん治療 update(1) 「がん疼痛の治療」の進歩と現状 野里 洵子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター)14:20~14:40 医科歯科大のがん治療 update(2) 大事です! 化学療法中の「口腔ケア」 古屋 純一氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院 口腔ケア外来)14:40~15:00 休憩15:00~16:00 パネルディスカッション 化学療法をしながらの生活 《パネリスト》  石川 敏昭氏(同院 腫瘍化学療法外科)  橋爪 顕子氏(同院 がん化学療法看護認定看護師)  有本 正子氏(同院 臨床栄養部)  山田 麻記子氏(同院 腫瘍センター 社会福祉士)16:00~16:30 講演3 治療を受ける際の意思決定のサポート 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)16:30~16:35 閉会挨拶 川﨑 つま子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部長)《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ■がんと栄養・食事 (東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)■お口の楽しみ、支えます (東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科)■ウィッグ・メイクを楽しもう! (アプラン東京義髪整形/マーシュ・フィールド)■在宅治療の味方 皮下埋め込みポートって何? (株式会社メディコン)■がん患者さんの家計・お仕事に関するご相談 (特定非営利活動法人 がんと暮らしを考える会)■がん患者と家族へのピアサポートの紹介 (特定非営利活動法人 がん患者団体支援機構)■看護師よろずミニ相談 (東京医科歯科大学医学部附属病院 専門・認定看護師チーム)■がん相談支援センター活用のすすめ (東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター)■「もっと知ってほしい」シリーズ冊子 (認定NPO法人 キャンサーネットジャパン)【お問い合わせ先】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45TEL:03-5803-4886(平日 9:00~16:30)【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座東京医科歯科大学大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン【協力】認定NPO法人キャンサーネットジャパン【後援】東京医科歯科大学医師会東京都医師会/東京都第4回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら

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第4回 レセプトを査定するのは誰?【医師が知っておきたいレセプトの話】

前回は診療報酬の請求から支払いまでの流れを確認してきました。今回はその中でも「レセプトの審査」について一緒に学んでいきましょう。審査支払機関レセプトの審査は第1回で学んだとおり、「審査支払機関」が行います。「審査支払機関」は国民健康保険加入者のレセプトを取り扱う「国民健康保険団体連合会(以下、国保連)」と、その他のレセプトを取り扱う「社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)」の2つに分かれます。さらに「国保連」、「支払基金」がそれぞれに47都道府県に支部を持っており、皆さんの所属する医療機関は、所在する都道府県支部にレセプトを提出し、そのレセプトはそれぞれの支部で審査されます。審査の流れ図のようにオンラインもしくは電子媒体で提出されたレセプトは大きく4段階で審査されます。画像を拡大する1)コンピューターによるチェック患者名や傷病名などに漏れがないかといった基本的な書式の不備のほか、国が定めた保険診療のルールに適合していない項目、傷病名と医薬品の関連性の有無など、基本的かつ定型パターンになっている項目についてコンピューターが自動的にチェックを行います。そこで、疑義のあるものにはマーキングがされます。2)職員による審査事務コンピューターによるチェックでマーキングされたもの、または、コンピューターで自動的にチェックできない項目を職員が目視で確認します。そこから審査委員が審査すべきレセプトを抽出します。いよいよ3~4段階目の審査に入るのですが、まずは審査を行う審査委員の構成を確認しましょう。審査委員会は下記の三者の代表で構成されています。皆さんの近くにも審査委員の先生がいらっしゃるのではないでしょうか。(1)診療担当者代表各都道府県の医師会・歯科医師会・薬剤師会から推薦された医師・歯科医師・薬剤師から選任された者(2)保険者代表各都道府県の保険者団体から推薦された医師・歯科医師・薬剤師から選任された者(3)学識経験者医学上および薬学上の知見と臨床経験を有する者3)審査委員による審査1)、2)の点検を経て審査に回ったレセプトの審査を行います。具体的には、レセプトに記載されている内容が「療養担当規則」や「診療報酬点数表」などに定められたルールに則っているかをチェックします。4)審査委員会による決定最終的に、審査委員会の合議でその審査が合目的かつ適正かを決定します。以上の4段階のプロセスを経て、診療内容が適切でないと判断されたものは「査定」となり、申請内容に不備があるものや診療内容が適切かどうかの判断が難しいものは医療機関に「返戻」されます。皆さんが行った診療内容の証明である診療記録がレセプトとなり、多くのプロセスを経て、最終的には皆さんの身近にいる先生方に審査されるということになります。言い換えると今後、皆さんが審査をする側になる可能性も十分にあるということですね。仮に自分が審査員だったら、「このレセプトだけを見て納得するかな」と日々意識しながら確認するだけでも、「査定」や「返戻」の可能性はグッと減るのではないでしょうか。

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遺伝性血管性浮腫〔HAE:Hereditary angioedema〕

1 疾患概要■ 概念・定義遺伝性血管性浮腫(HAE)は、顔面や四肢、腸管や喉頭など全身のさまざまな部位に突発性、一過性の浮腫を生じる遺伝性疾患である。気道閉塞や激烈な腹痛を生じて重篤になりうるため希少疾患ではあるが見逃してはならない。従来、C1インヒビター(C1-INH)遺伝子異常によるHAE I型、II型が知られていたが、2000年にC1-INH遺伝子に異常を認めないHAE with normal C1-INH(HAEnC1-INHあるいはHAE III型)が報告された。HAEは常染色体優性遺伝形式をとるが、HAE III型では浸透率が低く、しかも発症するのはほとんど女性である。またHAE I/II型では家族歴のない孤発例も25%で認められる。孤発例はde novoの遺伝子異常症である1)。HAEにみられる突発性浮腫の本態は、これらの遺伝子異常の結果、産生が亢進したブラジキニンなどの炎症メディエーターによって血管透過性が亢進することがある。古くから知られた疾患であるがまれな疾患であり、気付かれにくく診断に難渋することが多い。2010年に「遺伝性血管性浮腫ガイドライン2010」が補体研究会(現 一般社団法人 日本補体学会)から発表され2)、2014年に改訂された3)。HAEの診断、鑑別、症状別の治療方針について系統的に記載されたわが国で初めてのガイドラインである。■ 疫学HAE I/II型は人種を問わず5万人に1人とする報告が多い。HAE III型は10万人に1人程度と考えられている。いずれもすべての人種で報告されている。■ 病因HAEはその病因から3つの型に分類される。I型常染色体優性の遺伝形式をとり、C1-INHの活性、タンパク量ともに低下している。HAE全体の約85%を占める。II型常染色体優性の遺伝形式をとり、C1-INHの活性中心のアミノ酸変異による機能異常である。C1-INH活性は低下するが、タンパク量は低下しない。HAEの約15%を占める。III型遺伝性であるがほとんど女性に発症する。病態の詳細は不明であるが、一部の症例に凝固XII因子の変異を認める。C1-INHの活性、タンパク量ともに正常である。HAEのほとんどを占めるI型、II型の原因は、遺伝子変異によるC1-INHの機能低下である。I型、II型ならびにIII型の中で凝固XII因子の変異がある場合は、最終的にブラジキニンの産生が亢進する。その結果、血管透過性が亢進し、血管外に水分が漏出、貯留して浮腫が生じるが、この浮腫は数日で消失する。III型で凝固XII因子の異常を認めない場合の病因は不明である。■ 症状24時間で最大となり数日で自然に消褪する発作を繰り返す。10~20歳代に初発することが多い。I~III型まで報告されているHAEの特徴を、表に示す4)。いずれの病型も発現する症状はほぼ同じである。風邪、外傷、歯科治療、精神的ストレス、疲労などが誘因になりやすいが、何の誘因もない症例も多い。浮腫発作がないときには、健康人と何ら変わりはない。画像を拡大する1)皮膚症状眼瞼、口唇、四肢に発作性に浮腫を生じやすいが、ほかにもあらゆる場所に生じうる。浮腫を起こした皮膚表面は、赤みをごく軽度に帯びることはあっても蕁麻疹などのように明瞭な皮疹は伴わない。発作初期に罹患部がピリピリすることはあるが痛みやかゆみはない。2)消化器症状嘔気、嘔吐、下痢、腹痛などがあるが、なかでも腹痛は激烈である。炎症性疾患とは異なり、筋性防御はなく腹部エコーやCT所見で浮腫を認める。3)喉頭浮腫嚥下困難、喉の詰まり感、嗄声や声が出ないなどの声の変化、息苦しさを呈するが、進行すると呼吸困難、窒息になる。■ 予後喉頭浮腫を生じているにもかかわらず、適切に治療されなかった場合の致死率は30%とされる。その他の症候は予後良好である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準1)突発性の浮腫2)補体C4の低下、C1-INH活性の低下3)家族歴以上の3つがあればHAE I型あるいはII型(HAE I/II型)と診断できる。C1-INHタンパク質量が低下していればHAE I型、正常または増加していればHAE II型である。1)と3)のみの場合、HAE III型と診断しうる。1)と2)のみの場合HAE I/II型の孤発例か後天性血管性浮腫である。血清C1qタンパク質定量(保険適用外)が低値であれば後天性とされているが、HAEの場合でも低値を示すことがある。4)確定診断のためには遺伝子解析が有用である。確定診断のためにはC1-INH遺伝子(SERPING1)異常の同定が望ましい。HAE III型の一部では凝固XII因子遺伝子異常が報告されているが、わが国での報告はない。HAE III型は今後の研究の進展に伴って疾患概念が変化する可能性がある。5)診断の参考となるアルゴリズムを提示する(図)1)。画像を拡大する■ 検査1)HAEを疑った際にはまず補体C4濃度を測定する。発作時には100%、発作がないときでも98%の検体で基準値を下回る。2)C1-INH活性は発作時であるか否かにかかわらず50%未満となるため診断に最も有用である。保険適用である。3)C1-INHタンパク質定量はHAE I型、II型を区別する場合に施行するが、保険適用ではない。4)HAE I/II型ではSERPING1遺伝子のヘテロ変異を認める。5)HAE III型の一部には凝固XII因子の遺伝子異常を認めるが、それ以外には診断に役立つ検査はない。■ 鑑別診断突発性浮腫を呈するほかの疾患との鑑別が重要である。1)アレルギー性血管性浮腫蕁麻疹を伴い、原因はペニシリンなどの薬剤や卵、小麦などの食物、化学物質に対するIgEを介したアレルギー機序である。2)後天性血管性浮腫思春期発症が多いHAEと異なり40歳以降に初発することが多い。悪性腫瘍、自己免疫によるC1-INHの消費が原因である。3)非アレルギー性薬剤性血管性浮腫アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)では、COX阻害により浮腫を生じる。ACE阻害薬内服患者の0.1~0.5%に生じるとされる。4)物理的刺激による血管性浮腫温熱、寒冷、振動、日光曝露などの物理的刺激で生じる。5)好酸球増多を伴う好酸球性血管性浮腫末梢血の好酸球増多、繰り返す浮腫と発熱、蕁麻疹、体重増加とIgM増加を伴う。まれ。6)特発性浮腫原因不明である。血管性浮腫の半数近くを占め、最も頻度が高い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)発作出現時の治療と発作の予防の2つに分けられる。1)発作時の治療世界的にはC1-INH製剤、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、カリクレイン阻害薬の3系統が存在するが、わが国では2017年6月現在ヒト血漿由来C1-INH製剤である乾燥濃縮人C1インアクチベーター製剤(商品名:ベリナートP静注)のみ保険適用である。顔面、頸部、喉頭、腹部の発作には積極的に投与する。2)短期予防あらかじめ処置や手術がわかっているときの発作予防である。ベリナートPが1990年にわが国で承認されて以来、効能・効果は「遺伝性血管性浮腫の急性発作」のみであった。しかしながら、侵襲を伴う処置に対する発作予防の必要性が認められ、2017年3月ベリナートPの効能・効果に「侵襲を伴う処置による遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」が追加された。(1)歯科治療(侵襲が小さい場合)C1-INH製剤の準備のうえならば予防投与は必要ない。(2)歯科治療(侵襲が大きい場合)、外科手術などの大ストレス時手術の1時間前にC1-INH製剤の補充を行う。3)長期予防1ヵ月に1回以上あるいは1ヵ月に5日以上の発作がある場合、または喉頭浮腫の既往がある場合には、次の治療を検討する。(1)トラネキサム酸(同:トランサミン)30~50mg/kg/日を1日2~3回に分けて服用する。そのほか、長期の発作予防には抗プラスミン作用を期待してトラネキサム酸が用いられるが、効果は限定的である。(2)ダナゾール(同:ボンゾール)蛋白同化ホルモンであるダナゾールも用いられる。2.5mg/kg/日(最大200mg/日)を1ヵ月、もし無効ならば300mgを1ヵ月、さらに無効ならば400mg/日を1ヵ月投与する。有効であれば、その後1ヵ月ごとに半量に軽減し50mg/日連日か100mg/日隔日まで減量する。副作用として肝障害、高血糖、多毛、男性化には注意が必要である。ただし保険適用はない。(3)C1-INH製剤(C1エステラーゼ阻害剤)欧米ではヒト血漿由来のCinryzeの予防投与(週2回、静注)が認められているが、わが国では未承認である。4 今後の展望HAEの早期発見、早期治療のためには、関連診療科医師へのさらなる啓発活動が重要である。また、HAEのような希少疾患では、1人でも多くの患者情報を正確に収集し、病態の把握や診断基準の作成に役立てる必要がある。欧米では、すでにいくつかの登録システムが稼働しているように、わが国においても患者レジストリーの構築が不可欠である。現在、NPO法人 血管性浮腫情報センターと、一般社団法人 日本補体学会の協力をもとにレジストリーの構築が進められている。薬剤治療法については、従来から存在するヒト血漿由来C1-INH製剤に加えて、最近の10年間で遺伝子組換えヒトC1-INH製剤、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、カリクレイン阻害薬が次々と登場してきた。わが国ではヒト血漿由来C1-INH製剤ベリナートPのみがHAEへの保険適用を認められているに過ぎないが、これらの薬剤のHAEへの承認へ向けた臨床試験が進められている。とくに新しい経口のHAE治療薬開発の進展が期待されている。5 主たる診療科内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、小児科、救命救急科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報NPO法人 血管性浮腫情報センター(CREATE)(医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人 日本補体学会HAEサイト(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報HAE患者会「くみーむ」(HAE患者と家族への情報)その他の情報腫れ・腹痛ナビ(医療従事者向け)腫れ・腹痛ナビ(患者さん向け)1)堀内孝彦. 遺伝性血管性浮腫(HAE). In:日本免疫不全症研究会編. 原発性免疫不全症候群 診療の手引き. 診断と治療社; 2017.p.130-135.2)Horiuchi T, et al. Allergol Int. 2012;61:559-562.3)堀内孝彦ほか. 補体. 2014;52:24-30.4)堀内孝彦. 医学のあゆみ. 2016;258:861-866.公開履歴初回2017年6月27日

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高血圧予防食、痛風リスクを低減/BMJ

 DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食は男性の痛風リスクを低減するのに対し、西洋型の食事(Western diet)はこれを増加させることが、米国・マサチューセッツ総合病院のSharan K. Rai氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年5月9日号に掲載された。DASH食は、果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く摂取し、塩分、砂糖などで甘くした飲料、赤身や加工肉の摂取を抑えた食事法で、血圧を低下させ、心血管疾患の予防にも推奨されている。西洋型の食事(赤身や加工肉、フライドポテト、精製穀類、甘い菓子、デザート)は、血清尿酸値を上昇させ、痛風リスクを増加させる多くの食品から成るのに対し、DASH食は、最近の無作為化試験で高尿酸血症患者の血清尿酸値を低下させると報告されているが、痛風のリスクに関するデータはこれまでなかったという。4万人以上の男性を5段階のDASH食型と西洋食型に分けて評価 研究グループは、Health Professionals Follow-up Study(HPFS)のデータを用いて、DASH食および西洋食の、痛風リスクとの関連を前向きに評価するコホート試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 HPFSは、1986年に開始された進行中の縦断的研究で、食生活、病歴、薬物の使用状況などに関する質問票に回答した歯科医、検眼士、整骨医、薬剤師、手足治療医、獣医などの男性5万1,529例を対象とする。このうちベースライン時に痛風の既往歴がなかった4万4,444例について解析を行った。 妥当性が検証された食品頻度質問票を用いて、個々の参加者をDASH食型または西洋食型に分け、それぞれスコア化して5段階に分けた(スコアが高いほど、DASH食度、西洋食度が高い)。米国リウマチ学会(ACR)の判定基準を満たす痛風のリスクを評価し、年齢、BMI、高血圧、利尿薬の使用、アルコール摂取など可能性のある交絡因子で補正した。最高DASH食度群:32%低下、最高西洋食度群:42%増加 26年の追跡期間中に、1,731例が新たに痛風と診断された。1,500例(86.7%)に足部痛風が、1,226例(70.8%)に高尿酸血症が、605例(35.0%)に足根関節病変が、167例(9.6%)には痛風結節がみられた。 DASH食型の集団は、スコアが高くなるに従って痛風リスクが低下した(最高スコア群の補正相対リスク:0.68、95%信頼区間[CI]:0.57~0.80、傾向検定:p<0.001)。これに対し、西洋食型の集団はスコアが高くなるほど痛風リスクが増加した(1.42、1.16~1.74、p=0.005)。 BMI(25未満 vs.25以上)、アルコール摂取の有無、高血圧の有無で層別解析を行ったところ、痛風の相対リスクは主解析の結果とほぼ同じであり、交互作用検定では有意な差を認めなかった(すべての集団で、交互作用検定のp>0.17)。したがって、これらの因子にかかわりなく、DASH食型集団はスコアが上昇するほどリスクが低下すると考えられる。 著者は、「DASH食は、高尿酸血症患者の尿酸値を低下させることで痛風リスクを低減すると示唆される。痛風のリスクがある男性にとって、大いに興味を引かれる痛風予防の食事療法となる可能性がある」と指摘している。

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歯科治療で突然のむくみ!? 「遺伝性血管性浮腫」の危険性と予防

 2017年5月10日、都内にて「遺伝性血管性浮腫」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:CSLベーリング株式会社)。本セミナーは、今年3月に同社のベリナートP静注用500(一般名:乾燥濃縮人C1-インアクチベーター、以下ベリナート)が、「侵襲を伴う処置による遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」に対する、適応追加承認を取得したことを受けて行われたものである。むくみが引き起こす、致死的な症状…HAEの危険性とは 遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema、以下HAE)は、指定難病「原発性免疫不全症候群」の1つに認定されている疾患である。HAEは遺伝子の変異が原因で血液中のC1インヒビターの減少により、皮膚や消化管など、全身のあらゆる箇所に繰り返し腫れが起こる。 とくに、咽頭浮腫は、気道を塞いで呼吸困難を招き、致死的な状況に陥る場合もある、HAEの最も危険な症状である。セミナーの演者の1人、堀内 孝彦氏(九州大学病院 別府病院)は、咽頭浮腫が発症してから気道閉塞に至るまでの平均時間は8.3時間であったというデータを紹介し1)、症状を経過観察とすることで、窒息死に陥るケースがあることを紹介した。さらに、咽頭浮腫を呈していながら適切に治療しなかった場合の致死率は30%程度2)であることから、見逃してはいけない深刻な難病であることを強調した。意外と簡単? HAE早期鑑別のコツは、「あの問診と、この検査」 むくみが起こる原因として、とくに、抜歯などの歯科治療や、挿管が必要な全身麻酔は急性発作の強力な誘因として知られている。このように、血管性浮腫の原因は多彩であるが、堀内氏は「“家族歴の聴取”に加え、消化管浮腫による“激しい腹痛”の有無を聴取することで、HAEを疑うことができる」とコメントした。確定診断には補体C4値とC1-INHタンパク定量の2つの保険適応になる検査があるため、HAEを疑うことができれば、早期鑑別は比較的容易であるという。ベリナートの予防的短期投与がもたらすメリットとは もう1人の演者、田中 彰氏(日本歯科大学 新潟生命歯学部 口腔外科学講座)は自身の患者の歯科治療でHAE発作を初めて起こした症例を経験した。この経験をきっかけに、問診に加えて、高侵襲な歯科治療や抜歯において、術前の短期的予防投与が浮腫発作の抑制に有用であると強く感じたという。 ベリナートは、国内唯一のC1インアクチベーター製剤だが、身体への侵襲を伴う処置前の予防的な投与に対しても適応追加されたことで、患者さんが外科的治療や歯科治療を受ける際の急性発作のリスクを大きく低減することが期待される。

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確定診断までの平均期間は13.8年

 2017年5月9日、シャイアー・ジャパン株式会社は都内において、5月16日の「遺伝性血管性浮腫 啓発の日」を前に、「腫れやむくみ、腹痛を繰り返す難病の実態」と題したプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、本症の概要解説のほか、同社が開設した情報サイト(医療従事者向け、患者・家族・一般向け)の紹介などが行われた。なお、遺伝性血管性浮腫は指定難病(原発性免疫不全症候群に含まれる)に指定されており、患者は公的補助を受けることができる。遺伝性血管性浮腫の概要 セミナーでは秀 道広氏(広島大学 医歯薬保健学研究科 皮膚科学 教授)が、「遺伝性血管性浮腫(HAE)の具体的症例と治療の現状」と題して概要を解説した。 HAEは、第11染色体長腕のヘテロ欠損または変異によりC1エステラーゼ阻害因子(C1-INH)が低下し、ブラジキニンが亢進することで起きる血管浮腫とされている。患者は、欧米の統計では約5万人に1人とされ(人種差はない)、わが国では約450例が確認されている希少疾病である。 症状として、浮腫が発作的に皮膚、気道、腸管などに生じる(歯科診療や手術が原因のことも多い)。これらに痒みはなく、数日で自然に消退する。顔面、とくに口唇、眼瞼に好発し、咽頭や声帯に生じた場合、呼吸困難を呈することがあり、挿管などの処置が必要となる。また、腸管などに生じた場合は、重度の腹痛や下痢を伴い、急性腹症との鑑別が必要となる。 診断では、「遺伝性血管性浮腫(HAE)ガイドライン 2010(改訂2014年版)」(日本補体学会作成)があり、HAEを疑う症候やC4補体のスクリーニング検査、家族歴の問診などで診断する。実際、アレルギー発作の治療で使用するアドレナリンやステロイドなどが無効のため、鑑別は重要だという。 治療では、急性の発作時や予防治療に乾燥濃縮人C1インアクチベーター製剤(商品名:ベリナートP静注)が使用される。また、このほかにも現在icatibant(国内申請中)やC1エステラーゼ阻害薬などの臨床治験が進められている。発作から気道閉塞まで平均8.3時間 診断もでき、治療法もある本症の問題は、医療従事者の間でもなかなか覚知されていない点にあるという。 疾患についての医師の認知度アンケートによれば、皮膚科(約9割)、血液内科(約6割)、小児科(約5割)、歯科口腔外科、呼吸器内科、救命救急科(いずれも約4割)と、皮膚科を除いてあまり知られていない。そのため、初発症状出現から確定診断までの平均期間は13.8年という報告もある1)。また、患者が咽頭浮腫を起こした場合、浮腫が最大に達するまでの平均時間は8.3時間(最短では20分)という報告もある2)ことから、万が一の気道閉塞も考えて、臨床現場では見逃してはいけない疾患であると秀氏は訴える。 最後に秀氏は、「本症は希少疾病ではあるが、医学的に確立しつつある疾患であり、今後、新しい治療薬の開発・臨床試験が行われようとしている。問題は、いかに広く本症が認知され、使うことができる治療法が患者へとつながるかにある」と述べ、レクチャーを終えた。(ケアネット 稲川 進)関連サイト「腫れ・腹痛ナビPRO」(医療従事者向け)「腫れ・腹痛ナビ」(患者、家族、一般向け)参考サイトNPO法人 血管性浮腫情報センター(CREATE)一般社団法人 日本補体学会HAEサイト

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頭頸部がん領域で求められる体制整備

 2017年4月27日、都内にて“頭頸部がん治療とがん免疫療法薬「オプジーボ」”と題するセミナーが開かれた(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社)。演者である田原 信氏 (国立がん研究センター東病院 頭頸部内科長)は、「今後、免疫療法は頭頸部がん治療に新たな展望をもたらすだろう」と期待を述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。頭頸部がんにおける治療課題 頭頸部がんは、口腔、咽頭、喉頭、甲状腺など、頭頸部領域に発生するがんの総称である。本邦の年間推計患者数(甲状腺がんを除く)は4万7,000人。Stage III、IV期の進行がんが約6割で、その半数は再発に至る。再発後は化学放射線療法などが施行されるが、頭頸部が対象のため、「ご飯が飲み込めない」「皮膚がただれる」といった急性毒性で苦しむ患者も多い。 さらに、晩期毒性による死亡リスクの増大も問題であった。頭頸部がんへの新たな標準治療オプション 新たな治療手段が求められるなか、2017年3月24日、抗PD-1抗体「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」が、「再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん」に対する適応を取得した。 オプジーボは、プラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部がん患者361例を対象としたCheckMate-141試験で、全生存期間7.49ヵ月(95%CI:5.49~9.10)と、対照群の5.06ヵ月(95%CI:4.04~6.05)に対して有意な延長を示した(HR:0.70、97.73%CI:0.51~0.96、p=0.01011 [層別 log-rank検定])。安全性プロファイルは、これまでの臨床試験の結果と一貫しており、プラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部がんへの新たな標準治療オプションになると予想される。頭頸部がんは免疫抑制腫瘍 とくに、頭頸部がんの微小環境内では、さまざまな段階で免疫調節が生じているとの報告もある。オプジーボのような免疫チェックポイント阻害薬は、免疫抑制腫瘍である頭頸部がんに高い抗腫瘍効果をもたらすと期待される。実際、頭頸部がんを対象に複数の免疫チェックポイント阻害薬が開発段階にある。今後も免疫療法は、頭頸部がん治療に新たな展望をもたらすだろう。他科連携、診療連携プログラムの構築で緊密な連携を目指す その一方で、副作用管理、バイオマーカー探索などの課題も存在する。とくに、頭頸部がんはがん全体からみればマイナーながん種ということもあり、頭頸部がんに精通した医師自体が少なく、これまで集学的治療が実践されてこなかった。頭頸部がんの専門医は主に、耳鼻咽喉科・頭頸部外科を中心とする「頭頸部外科専門医」、口腔外科が中心の「口腔外科専門医」、腫瘍内科医が中心の「がん薬物療法専門医」と、複数の診療科にまたがっている。今後は医科歯科連携、頭頸部がん薬物療法診療連携プログラムの構築といった、緊密な連携による対策が求められるだろう。 また、肺がんでの「SCRUM-Japan」のような無償での検索体制構築はなく、Precision Medicineに向けた課題は存在する。今後、頭頸部がん領域でも体制整備が進み、さらなる治療成績向上が実現することを期待したい。

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日本人心房細動患者における左心耳血栓、有病率と薬剤比較:医科歯科

 心房細動(AF)は、一般的な心臓不整脈であり、血栓塞栓性事象を含む心血管罹患率および死亡率の増加と関連している。東京医科歯科大学の川端 美穂子氏らは、抗凝固療法中に前処置経食道心エコー(TEE)を受けている日本人非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における左心耳(LAA)血栓の有病率を評価し、ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性の比較を行った。Circulation journal誌オンライン版2017年2月7日号の報告。 抗凝固療法を3週間以上行ったのち、前処置TEEを受けたNVAF患者559例(男性:445例、年齢:62±11歳)をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・非発作性のAFは、275例(49%)で認められた。・LAA血栓は、15例(2.7%)で認められた。・LAA血栓の有病率は、DOAC群(2.6%)とワルファリン群(2.8%)で同様であった(p=0.86)。・CHA2DS2-VAScスコア0、脳卒中歴のない発作性AF、一過性虚血発作では、LAA血栓を有する患者はいなかった。・単変量解析では、LAA血栓と関連していた項目は、非発作性AF、心構造疾患、抗血小板療法、左心房の大きさ、高BNP、LAA流量の減少、CHA2DS2-VAScスコアの高さであった。・多変量解析では、BNP173pg/mL以上のみがLAA血栓の独立した予測因子であった。 著者らは「経口抗凝固療法を継続しているにもかかわらず、LAA血栓は、日本人NVAF患者の2.7%に認められた。血栓の発生率は、DOAC群、ワルファリン群で同様であった」としている。

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糖尿病患者支援に地域版新資格制度発足

 2017年3月29日、都内において東京糖尿病療養指導士認定機構設立準備委員会は、今夏より発足する「東京糖尿病療養指導士(東京CDE)」「東京糖尿病療養支援士(東京CDS)」に関するプレスセミナーを開催した。 糖尿病療養指導士(CDE)とは、糖尿病とその療養指導全般に関する正しい知識を持ち、医師の指示の下、患者に療養指導を行うことができる熟練した経験を持ち、試験に合格した一定の医療スタッフ(看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士)のことで、患者の生活指導のエキスパートである(平成28年6月時点で全国に19,062名)。今回の資格制度発足は、東京地域に特化した新しい認定資格制度となる。 はじめに東京糖尿病療養指導推進機構の代表理事である本田 正志氏(西川クリニック)が、「糖尿病の臨床現場では、合併症など病状が進行してから受診する患者もいる。そのため患者が重症化する前に身近な人に相談できる、支援できて発症予防に役立つ組織があればと考え、今回資格制度発足となった。今後、糖尿病患者(予備群も含め)2,000万人のために組織を発展させ、糖尿病の重症化を予防できるように支援をお願いしたい」とあいさつを行った。医療スタッフのスキルアップが糖尿病診療体制を強化する 次に東京糖尿病療養指導士認定機構の代表幹事である菅原 正弘氏(菅原医院 院長)が、「東京における糖尿病患者の増加と治療の実態」と題して基調講演を行った。 講演では、東京都の糖尿病患者の動向について全国と比較し、男女ともに糖尿病患者が全国平均より増えていることを指摘した。また、糖尿病の合併症について触れ、以前から知られている網膜症や腎症などに加え、最近では、歯周病、がん、認知症などが糖尿病関連とも報告されている。なかでも介護原因となる疾患の脳卒中(1位)、認知症(2位)が糖尿病に絡む疾患であることから、「介護者にも糖尿病の知識が必要な時代が来た」と警鐘を鳴らす。 糖尿病合併症の数が増えると、その医療費も増える。たとえば腎症を発症し透析まで進展した場合、1人年間500万円以上の医療費が必要なことを考えると、医療経済の面からも早期受診、診療介入によるサポートが必要となる。そのためにも、医療スタッフ、とくにクリニックなどのスタッフのスキルアップが望まれ、「こうした新資格制度の活用で層の厚い診療体制が構築されることを希望する」と抱負を語った。52万人の専門職が糖尿病の発症、重症化を防ぐ 続いて同機構の事務局長である内潟 安子氏(東京女子医科大学 糖尿病センター長)が、「東京糖尿病療養指導士とは」と題し、その発足の意義と活動、今後の展望について説明した。 全国版である日本糖尿病療養指導士(CDEJ)は、臨床現場でよく認知されているが、今回の資格は、全国的にみて患者数が多い東京地域に特化し、地域の事情や問題を加味し、自己管理を指導する医療スタッフを育成するものであるという。 具体的に「東京CDE」は、医療専門職として主に糖尿病患者の指導にあたるスタッフで、CDEJの職種に加え保健師、准看護師、健康運動指導士、作業療法士などを対象に資格の取得を目指すとする。 また、「東京CDS」は幅広い職種から成り、主に健康増進・糖尿病発症予防や福祉、介護など、患者よりも予備群、一般生活者を対象に疾患啓発、予防にあたるスタッフである。対象は、栄養士、介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士、歯科衛生士、登録販売者、保健・健康増進担当の自治体職員などが想定されている。両方の有資格者は東京都だけで約52万人以上と予想されている。 資格取得者は、糖尿病の病態と療養に関する体系的な知識を、職域で専門的に活かせ、医師やCDEJなどの指導対象者にとっては信頼して患者指導を任すことができる。また、資格者が施設にいることで、クリニックならばスタッフの再教育、継続教育につながるほか、健保組合なら糖尿病発症予防、重症化予防に最新の疾患知識を指導に役立てることができるという。 内潟氏は説明の中で、「臨床現場では、患者は医師に直接聞けないことを周りの看護師などのスタッフに尋ねている。そのときに答えられないと、患者の信頼を得ることはできない。糖尿病診療では、日ごろのコミュニケーションが大事であり、スタッフがこの資格を通じてスキルアップすることで、患者への適切な指導ができるようになってもらいたい」と新資格の意義を強調した。 今後の予定として8、9月に受験者用研修会の実施、10月に認定試験が開催され、2018年初頭には第1号の資格者が誕生する(資格更新は5年ごとの予定)。 両資格に関する詳しい内容は、下記のサイトを参考にしていただきたい。関連サイト東京糖尿病療養指導士認定機構東京糖尿病療養指導推進機構

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“モンスターペイシェント”の実態

 “モンスターペイシェント”が増加しているといわれる中、医療従事者や医療機関に対して自己中心的で理不尽な要求や暴言、暴力、クレームを経験したことはありませんか? ケアネットは3月、CareNet.comの医師会員を対象に上記についてアンケート調査を実施し、医師会員1,000人の回答を得た。同調査は2013年2月以来4年ぶりとなり、前回の調査結果との比較も行った。 今回の調査の詳細と、具体的なエピソードやコメントはCareNet.comに掲載中。 調査は、2017年3月16~17日、医師会員を対象にインターネット上で実施した。 このうち、患者・家族から暴言や暴力、その他“通常の域を超えている、診察に著しく影響を及ぼすレベル”の行動や要求、クレームを受けた経験について、「経験がある」と答えた人は55.1%で、4年前(67.1%)よりもやや減少した。ただし、経験者の6割近くが1年に1回以上のペースで遭遇しており、モンスターペイシェントが少なからず診療に支障を来している状況がうかがえる。 モンスターペイシェントの事例としては、「スタッフの対応が気に食わないなどのクレーム」が最も多く(47.2%)、「自分を優先した診察ほか、待ち時間に関する要求・暴言を吐く」(33.4%)、「治療法・薬剤を指定するなど、自分の見立てを強硬に主張」(30.3%)、「不要な投薬・過剰な投薬を要求」(18.3%)などが続いた。 また、勤務・経営する院内におけるモンスターペイシェント対応策として、「対応マニュアルやガイドラインがある」と答えた人は32.2%で、前回調査時より3.4ポイント増加しており、以下「対応担当者を決めている」(23.8%)、「院内で事例を共有している」(21.6%)、「対策システムがある」(18.6%)などが続いた。その一方で、「とくに対応策をとっていない」と答えた人が、選択肢の中で2番目に多い29.7%にのぼった。 この内訳を病床数でみると、200床以上では4割以上でモンスターペイシェントのマニュアルやガイドラインが整備されているが、小規模ほど対策が遅れている傾向にあるようだ。中には、「不当な目にあっても対応した医師が悪いという風潮が院内にあり、被害医師は孤立」「上司が守ってくれるかどうかが、その後のメンタルに大きく影響する」「守ってくれない職場は最低」(いずれも調査内の自由記述コメントから抜粋)など、対応以前に周囲が無理解であることをうかがわせるコメントもみられた。 患者およびその家族の“モンスター化”にとどまらず、事件となるケースも少なくない。近年では2013年に北海道三笠市の総合病院で、精神科医が外来患者に刺殺された事件や、14年に札幌市の病院で、消化器内科医が担当患者に切り付けられ重傷を負った事件、15年には岐阜市で歯科医院長が患者に刺殺された事件など、患者とのトラブルを発端とする凶悪事件は後を絶たない。 今回の調査で、暴力や身に迫る危険を経験した人は、回答全体に占める割合としては少なかったが、「看護師の首を跡が残るくらい絞めた」「病室で拳銃を発砲」などのモンスターペイシェントの事例が寄せられた。 このほか、「ネットで口コミに辛辣に書き込みされ困っている」「インターネットの掲示板で誹謗中傷された」「外来窓口で突然面識のない患者にホームページで見たことを理由に殴られた同業者がいたため、ホームページに顔写真を載せるのを止めた」といったエピソードは、2013年時の調査では見られなかった新たな傾向である。 今春、新たに入職したり、勤務先の医院を変えて心機一転、臨床に励みたいと考えたりする人も多いことだろう。そんな医療従事者の思いや希望を打ち砕くようなことがあってはならず、日々不安を抱えながら診療に当たるような不健全な状況は、一刻も早く改善されなければならない。今回の調査では「毅然と対応すべき」というコメントが多数寄せられた。しかし、個々人が「自分の身は自分で守る」以前に、理不尽な患者や家族を増長させないためのモンスター化の事前策を打つことはできないだろうか。 ケアネットではモンスターペイシェントの有効な対応策や解決事例などをさらに取材し、お伝えしていきたい。

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30秒で名医になれる!【Dr. 中島の 新・徒然草】(156)

百五十六の段 30秒で名医になれる!先日、とある講習会を受講した時のことです。出席者それぞれが自分の専門診療科に関することで3分間のプレゼンを行い、誰が上手いかを競うというセッションがありました。最初は7人1グループの中での予選です。内科や外科の先生方に混ざって、脳外科の私もプレゼンを行い、無事に代表に選ばれました。決勝は各グループからの代表4人の対戦です。最初は病理の先生が「病理に誤診させる3つの方法」というひねったタイトルでプレゼンをされました。次が外科の先生、「ピロリ菌陰性だからといって安心できない」というもの。そして内科の先生の「歯科技工士の塵肺例」という症例報告っぽいお話。いずれも各グループから選ばれただけあって、素晴らしいプレゼンでした。そして最後が私の番です。私のタイトルは「30秒で名医になれる!」というものです。せっかくなので、以下に再現いたします。脳外科の中島です。本日、私は「30秒で名医になれる!」というタイトルでお話しさせていただきます。脳外科に限らず、内科、外科、ここにお集まりの皆さん全員が名医になれる方法を伝授しましょう。お話する疾患は、私の外来を訪れる患者さんの中で3番目に多い頭痛です。多い頭痛の1番と2番は、言うまでもなく緊張型頭痛と片頭痛です。3番目が意外なことに低髄圧症、またの名を髄液減少症という頭痛なのです。そもそも脳というのは普段、髄液という水の上に機嫌良くプカプカ浮いているのです。ところが、髄液が漏れて減ってしまうと脳が下に引っ張られて頭が痛くなったり、耳鳴りがしたり、といろいろな愁訴が現れます。こうなると寝ている時は調子がいいのですが、座ったり立ったりすると、途端に頭が痛くなります。また、朝起きたときは調子いいのですが、昼から夜にかけて髄液が漏れてどんどん頭が痛くなります。このような特徴的な病歴を確認しておいてから診断をいたします。確定診断のための検査は、造影MRIとかRIシンチとかいろいろありますが、私は診察室で患者さんの頸を絞めてその場で診断しています。ここで聴衆から「ええーっ!」というどよめきが聞こえてきました。椅子に座っている患者さんの後方に回り、後ろから両手を回して軽く頸を絞めます。この程度が重要で、静脈還流をとめて頭蓋内圧を上げる程度のごく軽い圧迫です。決して頸動脈を絞めてはなりません。腰椎穿刺の時に行う、いわゆるクエッケンステット試験ですね。実際に椅子に1人座っていただき、実演して見せました。そうすると、さっきまで頭を痛がっていた患者さんが「先生、楽になりました」と仰います。そこでパッと頸から手を放すと、再び「痛たたた!」となります。手間のかかる検査をしなくても、たった30秒で誰でも簡単に診断できます。この時点で目の前に置かれたタイマーは残り30秒を示していました。後は治療です。私の経験では、早ければ1週間、長くても3ヵ月でほとんどの方が自然軽快してしまいます。ブラッドパッチという大がかりな治療が必要になるのは、20~30人に1人もいないんじゃないでしょうか。自然に治りはしますが、早く楽になろうと思ったら、患者さんにできるだけゴロゴロしてもらうといいです。「決して無理をしてはなりません。ソファに寝転がって、テレビを見ながらポテトチップスを食べましょう。家事なんかは全部、御主人にやってもらいなさい」と患者さんに申し上げると、大変感謝されます。タイマーは残り5秒、やはり時間を使い切りたいところ。するべきことは、ソファに寝転んでリモコン持って、テレビに「ピッ」、貴方に「ピッ」ここでちょうど3分ピッタリになりました。貴方に「ピッ」というのは、リモコンで亭主を操って、家事もゴミ捨ても全部やってもらえ、という意味です、言うまでもないことですが。自分では思い通りにプレゼンできたと思いましたが、残念ながら優勝はピロリ菌にさらわれてしまいました。まあ、皆さん、プレゼンが上手だったので仕方ありません。プレゼンのポイントを1つ挙げるとするなら、冒頭で「会場の全員が名医になれる」と宣言し、私だけの話ではなく聴衆1人ひとりの話題にした事です。聴衆の中には病理の先生も眼科の先生もおられたので、さすがに頭痛の診療は関係なさそうですが、あえて「全員が30秒で名医になれる」と言い切りました。自分の話をするより、相手の話をする方が耳を傾けてもらえます。聴いていた先生から、後で一言いただきました。貴方に「ピッ」なんて、咄嗟によく出てきましたね。あの台詞、僕は一生忘れません!お褒めいただき、ありがとうございました。最後に1句プレゼンは 掴みが大切 全力で

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ブルーリボンキャラバン ~もっと知ってほしい大腸がんのこと2017 in東京~【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科、同院 大腸・肛門外科、同院 腫瘍センター、同大学院 応用腫瘍学講座は、認定NPO法人キャンサーネットジャパンと共催で、2017年3月5日(日)に大腸がん啓発イベント「ブルーリボンキャラバン」を開催する。同イベントは、大腸がんの診断・検査から外科的治療・薬物療法について広く知ってもらうことを目的に、国際的な大腸がん啓発月間でもある3月に毎年開催されている。会場は、東京医科歯科大学M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂。総合司会は、フリーアナウンサーの中井 美穂氏が務める。当日は来場者全員にオリジナル冊子「もっと知ってほしい大腸がんのこと」のプレゼントがあり、ブルーを身に着けて来場した方には粗品も用意されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】 2017年3月5日(日)《セミナー》 13:00~16:50《ブース展示》12:00~17:00【場所】 東京医科歯科大学 M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂 〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45【参加費】 無料【予定内容】《セミナー》 総合司会 中井 美穂氏(フリーアナウンサー) 13:00~13:05 開会挨拶   小西 敏郎氏(NPO法人キャンサーネットジャパン 理事) 13:05~13:25 講演(1) 「大腸がんってどんな病気?~大腸がんの基礎知識~」  石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座 准教授) 13:25~13:55 講演(2) 「大腸がんの手術と手術後の生活」  安野 正道氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科 科長) 13:55~14:15 講演(3) 「顕微鏡で見た大腸がん~いろんなことがわかります~」  上野 秀樹氏(防衛医科大学校 外科学講座 教授) 14:15~14:30 休憩(15分) 14:30~14:50 体験談 「医学部教授が進行大腸癌から生還~走る医療者オストメイトとして活動~」  山本 悦秀氏(金沢大学 名誉教授/城南歯科医院 理事長) 14:50~15:20 講演(4) 「転移・再発した大腸がんの治療方針の基本」  植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科 科長) 15:20~15:50 講演(5) 「大腸がんの抗がん剤治療~いまとこれから~」  山口 研成氏(がん研有明病院 消化器化学療法科 部長) 15:50~16:00 情報提供 「RAS遺伝子検査とは?」  石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科) 16:00~16:15 休憩(15分) 16:15~16:45 Q&A  Q&Aトークセッション 質問票にお答えします!  パネリスト:上記登壇者 16:45~16:50 閉会挨拶  杉原 健一氏(東京医科歯科大学 特任教授)《ブース展示》 会場では大腸がんの検査・治療に使用する機器などのブース展示を開催します。 展示スペースはどなたでもご自由にご観覧いただけますのでお気軽にお越しください。[出展協力] ・東京医科歯科大学医学部附属病院 がん支援相談センター ・東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部 ・東京医科歯科大学 歯学部口腔保健学会 ・公益社団法人日本オストミー協会 ・ブーケ(若い女性オストメイトの会) ・株式会社メディコン ・アミン株式会社 ・ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ・オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社 ・メルクセローノ株式会社【問い合わせ先】 ブルーリボンキャンペーン事務局 認定NPO法人キャンサーネットジャパン 〒113-0034 東京都文京区湯島1-10-2 御茶ノ水K&Kビル 2階 TEL:03-5840-6072(平日10時~17時) FAX:03-5840-6073 MAIL:info@cancernet.jp【共催】 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科 東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター 東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座 認定NPO法人キャンサーネットジャパン【協力】 メルクセローノ株式会社(冊子提供)【後援】 東京都/東京医科歯科大学医師会/東京都医師会/ 日本癌治療学会/日本臨床腫瘍学会/大腸癌研究会/ 公益社団法人日本オストミー協会/NPO法人ブレイブサークル運営委員会/ 認定NPO法人西日本がん研究機構詳細はこちら

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高安動脈炎〔TAK : Takayasu Arteritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義高安動脈炎(Takayasu Arteritis:TAK)は、血管炎に属し、若年女性に好発し、大動脈および大動脈1次分枝に炎症性、狭窄性、または拡張性の病変を来し、全身性および局所性の炎症病態または虚血病態により諸症状を来す希少疾病である。1908年に金沢医学専門学校(現・金沢大学医学部)眼科教授の高安 右人氏(図1)により初めて報告された。画像を拡大する呼称には、大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などがあるが、各学会において「高安動脈炎」に統一されている。2012年に改訂された血管炎のChapel Hill分類(図2)1)により、英文病名は“Takayasu arteritis”に、略語は“TAK”に改訂された。画像を拡大する■ 疫学希少疾病であり厚生労働省により特定疾患に指定されている。2012年の特定疾患医療受給者証所持者数は、5,881人(人口比0.0046%)だった。男女比は約1:9である。発症年齢は10~40代が多く、20代にピークがある。アジア・中南米に多い。TAK発症と関連するHLA-B*52も、日本、インドなどのアジアに多い。TAK患者の98%は家族歴を持たない。■ 病因TAKは、(1)病理学的に大型動脈の肉芽腫性血管炎が特徴であること、(2)特定のHLAアレル保有が発症と関連すること、(3)種々の炎症性サイトカインの発現亢進が報告されていること、(4)ステロイドを中心とする免疫抑制治療が有効であることから、自己免疫疾患と考えられている。1)病理組織像TAKの標的である大型動脈は中膜が発達しており、中膜を栄養する栄養血管(vasa vasorum)を有する。病変の主座は中膜の外膜寄りにあると考えられ、(1)外膜から中膜にかけて分布する栄養血管周囲への炎症細胞浸潤、(2)中膜の破壊(梗塞性病変、中膜外側を主とした弾性線維の虫食い像、弾性線維を貪食した多核巨細胞の出現)、これに続発する(3)内膜の細胞線維性肥厚および(4)外膜の著明な線維性肥厚を特徴とする。進行期には、(5)内膜の線維性肥厚による内腔の狭窄・閉塞、または(6)中膜破壊による動脈径の拡大(=瘤化)を来す。2)HLA沼野 藤夫氏らの功績により、HLA-B*52保有とTAK発症の関連が確立されている。B*52は日本人の約2割が保有する、ありふれたHLA型である。しかし、TAK患者の約5割がB*52を保有するため、発症オッズ比は2~3倍となる。B*52保有患者は非保有患者に比べ、赤沈とCRPが高値で、大動脈弁閉鎖不全の合併が多い。HLA-B分子はHLAクラスI分子に属するため、TAKの病態に細胞傷害性T細胞を介した免疫異常が関わると考えられる。3)サイトカイン異常TAKで血漿IL-12や血清IL-6、TNF-αが高値との報告がある。2013年、京都大学、東京医科歯科大学などの施設と患者会の協力によるゲノムワイド関連研究により、TAK発症感受性因子としてIL12BおよびMLX遺伝子領域の遺伝子多型(SNP)が同定された2)。トルコと米国の共同研究グループも同一手法によりIL12B遺伝子領域のSNPを報告している。IL12B遺伝子はIL-12/IL-23の共通サブユニットであるp40蛋白をコードし、IL-12はNK細胞の成熟とTh1細胞の分化に、IL-23はTh17細胞の維持に、それぞれ必要であるため、これらのサイトカインおよびNK細胞、ヘルパーT細胞のTAK病態への関与が示唆される。4)自然免疫系の関与TAKでは感冒症状が、前駆症状となることがある。病原体成分の感作後に大動脈炎を発症する例として、B型肝炎ウイルスワクチン接種後に大型血管炎を発症した2例の報告がある。また、TAK患者の大動脈組織では、自然免疫を担当するMICA(MHC class I chain-related gene A)分子の発現が亢進している。前述のゲノムワイド関連研究で同定されたMLX遺伝子は転写因子をコードし、報告されたSNPはインフラマソーム活性化への関与が示唆されている。以上をまとめると、HLAなどの発症感受性を有する個体が存在し、感染症が引き金となり、自然免疫関連分子やサイトカインの発現亢進が病態を進展させ、最終的に大型動脈のおそらく中膜成分を標的とする獲得免疫が成立し、慢性炎症性疾患として確立すると考えられる。■ 症状1)臨床症状TAKの症状は、(1)全身性の炎症病態により起こる症状と(2)各血管の炎症あるいは虚血病態により起こる症状の2つに分け、後者はさらに血管別に系統的に分類すると理解しやすい(表1)。画像を拡大する2)合併疾患TAKの約6%に潰瘍性大腸炎(UC)を合併する。HLA-B*52およびIL12B遺伝子領域SNPはUCの発症感受性因子としても報告されており、TAKとUCは複数の発症因子を共有する。■ 分類1)上位分類血管炎の分類には前述のChapel Hill分類(図2)が用いられる。「大型血管炎」にTAKと巨細胞性動脈炎(GCA)の2つが属する。2)下位分類畑・沼野氏らによる病型分類(1996年)がある(図3)3)。画像を拡大する■ 予後1年間の死亡率3.2%、再発率8.1%、10年生存率84%という報告がある。予後因子として、(1)失明、脳梗塞、心筋梗塞などの各血管の虚血による後遺症、(2)大動脈弁閉鎖不全、(3)大動脈瘤、(4)ステロイド治療による合併症(感染症、病的骨折、骨壊死など)が挙げられる。診断および治療の進歩により、予後は改善してきている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)各画像検査による血管撮影TAKは、生検が困難であるため、画像所見が診断の決め手となる。(1)画像検査の種類胸部X線、CT、MRI、超音波、血管造影、18F-FDG PET/PET-CTなどがある。若年発症で長期観察を要するため、放射線被曝を可能な限り抑える。(2)早期および活動期の画像所見大型動脈における全周性の壁肥厚は発症早期の主病態であり、超音波検査でみられる総頸動脈のマカロニサイン(全周性のIMT肥厚)や、造影後期相のCT/MRIでみられるdouble ring-like pattern(肥厚した動脈壁の外側が優位に造影されるため、外側の造影される輪と内側の造影されない輪が出現すること)が特徴的である。下行大動脈の波状化(胸部X線で下行大動脈の輪郭が直線的でなく波を描くこと)も早期の病変に分類され、若年者で本所見を認めたらTAKを疑う。動脈壁への18F-FDG集積は、病変の活動性を反映する(PET/PET-CT)。ただし動脈硬化性病変でもhotになることがある。PET-CTはTAKの早期診断(感度91~92%、特異度89~100%)と活動性評価の両方に有用である(2016年11月時点で保険適用なし)。(3)進行期の画像所見大型動脈の狭窄・閉塞・拡張は、臨床症状や予後と関連するため、CTアンギオグラフィ(造影早期相の3次元再構成)またはMRアンギオグラフィ(造影法と非造影法がある)で全身の大型動脈の開存度をスクリーニングかつフォローする。上行大動脈は拡張し、大動脈弁閉鎖不全を伴いやすい。従来のgold standardであった血管造影は、血管内治療や左室造影などを目的として行い、診断のみの目的では行われなくなった。(4)慢性期の画像所見全周性の壁石灰化、大型動脈の念珠状拡張(拡張の中に狭窄を伴う)、側副血行路の発達などが特徴である。2)心臓超音波検査大動脈弁閉鎖不全の診断と重症度評価に必須である。3)血液検査(1)炎症データ:白血球増加、症候性貧血、赤沈亢進、血中CRP上昇など(2)腎動脈狭窄例:血中レニン活性・アルドステロンの上昇■ 診断基準下記のいずれかを用いて診断する。1)米国リウマチ学会分類基準(1990年、表2)4)6項目中3項目を満たす場合にTAKと分類する(感度90.5%、特異度97.8%)。この分類基準にはCT、MRI、超音波検査、PET/PET-CTなどが含まれていないので、アレンジして適用する。2)2006-2007年度合同研究班(班長:尾崎 承一)診断基準後述するリンクまたは参考文献5を参照いただきたい。なお、2016年11月時点で改訂作業中である。画像を拡大する■ 鑑別診断GCA、動脈硬化症、血管型ベーチェット病、感染性大動脈瘤(サルモネラ、ブドウ球菌、結核など)、心血管梅毒、炎症性腹部大動脈瘤、IgG4関連動脈周囲炎、先天性血管異常(線維筋性異形成など)との鑑別を要する。中高年発症例ではTAKとGCAの鑑別が問題となる(表3)。GCAは外頸動脈分枝の虚血症状(側頭部の局所的頭痛、顎跛行など)とリウマチ性多発筋痛症の合併が多いが、TAKではそれらはまれである。画像を拡大する3 治療■ 免疫抑制治療の適応と管理1)初期治療疾患活動性を認める場合に、免疫抑制治療を開始する。初期治療の目的は、可及的に疾患活動性が低い状態にすること(寛解導入)である。Kerrの基準(1994年)では、(1)全身炎症症状、(2)赤沈亢進、(3)血管虚血症状、(4)血管画像所見のうち、2つ以上が新出または増悪した場合に活動性と判定する。2)慢性期治療慢性期治療の目的は、可及的に疾患活動性が低い状態を維持し、血管病変進展を阻止することである。TAKは緩徐進行性の経過を示すため、定期通院のたびに診察や画像検査でわかるような変化を捉えられるわけではない。実臨床では、鋭敏に動く血中CRP値をみながら服薬量を調整することが多い。ただし、血中CRPの制御が血管病変の進展阻止に真に有用であるかどうかのエビデンスはない。血管病変のフォローアップは、通院ごとの診察と、1~2年ごとの画像検査による大型動脈開存度のフォローが妥当と考えられる。■ ステロイドステロイドはTAKに対し、最も確実な治療効果を示す標準治療薬である。一方、TAKは再燃しやすいので慎重な漸減を要する。1)初期量過去の報告ではプレドニゾロン(PSL)0.5~1mg/kg/日が使われている。病変の広がりと疾患活動性を考慮して初期量を設定する。2006-2007年度合同研究班のガイドラインでは、中等量(PSL 20~30mg/日)×2週とされているが、症例に応じて大量(PSL 60 mg/日)まで引き上げると付記されている。2)減量速度クリーブランド・クリニックのプロトコル(2007年)では、毎週5mgずつPSL 20mgまで、以降は毎週2.5mgずつPSL 10mgまで、さらに毎週1mgずつ中止まで減量とされているが、やや速いため再燃が多かったともいえる。わが国の106例のコホートでは、再燃時PSL量は13.3±7.5mg/日であり、重回帰分析によると、再燃に寄与する最重要因子はPSL減量速度であり、減量速度が1ヵ月当たり1.2mgより速いか遅いかで再燃率が有意に異なった。この結果に従えば、PSL 20mg/日以下では、月当たり1.2mgを超えない速度で減量するのが望ましい。以下に慎重な減量速度の目安を示す。(1)初期量:PSL 0.5~1mg/kg/日×2~4週(2)毎週5mg減量(30mg/日まで)(3)毎週2.5mg減量(20mg/日まで)(4)月当たり1.2mgを超えない減量(5)維持量:5~10mg/日3)維持量維持量とは、疾患の再燃を抑制する必要最小限の用量である。約3分の2の例でステロイド維持量を要し、PSL 5~10mg/日とするプロトコルが多い。約3分の1の例では、慎重な漸減の後にステロイドを中止できる。4)副作用対策治療開始前にステロイドの必要性と易感染性・骨粗鬆症・骨壊死などの副作用について十分に説明し、副作用対策と慎重な観察を行う。■ 免疫抑制薬TAKは、初期治療のステロイドに反応しても、経過中に半数以上が再燃する。免疫抑制薬は、ステロイドとの相乗効果、またはステロイドの減量効果を期待して、ステロイドと併用する。1)メトトレキサート(MTX/商品名:リウマトレックス)(2016年11月時点で保険適用なし)文献上、TAKに対する免疫抑制薬の中で最も使われている。18例のシングルアーム試験では、ステロイド大量とMTX(0.3mg/kg/週→最大25mg/週まで漸増)の併用によるもので、寛解率は81%、寛解後の再燃率は54%、7~18ヵ月後の寛解維持率は50%だった。2)アザチオプリン(AZP/同:イムラン、アザニン)AZPの位置付けは各国のプロトコルにおいて高い。15例のシングルアーム試験では、ステロイド大量とAZP(2mg/kg/日)の併用は良好な経過を示したが、12ヵ月後に一部の症例で再燃や血管病変の進展が認められた。3)シクロホスファミド(CPA/同:エンドキサン)CPA(2mg/kg/日、WBC>3,000/μLとなるように用量を調節)は、重症例への適応と位置付けられることが多い。副作用を懸念し、3ヵ月でMTXまたはAZPに切り替えるプロトコルが多い。4)カルシニューリン阻害薬(2016年11月時点で保険適用なし)タクロリムス(同:プログラフ/報告ではトラフ値5ng/mLなど)、シクロスポリン(同:ネオーラル/トラフ値70~100ng/mLなど)のエビデンスは症例報告レベルである。■ 生物学的製剤関節リウマチに使われる生物学的製剤を、TAKに応用する試みがなされている。1)TNF-α阻害薬(2016年11月時点で保険適用なし)TNF-α阻害薬による長期のステロイドフリー寛解率は60%、寛解例の再燃率33%と報告されている。2)抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(同:アクテムラ/2016年11月時点で保険適用なし)3つのシングルアーム試験で症状改善とステロイド減量効果を示し、再燃はみられなかった。■ 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)免疫抑制治療により疾患活動性が落ち着いた後も、虚血病態による疼痛が残りうるため、病初期から慢性期に至るまでNSAIDsが必要となることが多い。腎障害・胃粘膜障害などに十分な注意と対策を要する。■ 抗血小板薬、抗凝固薬血小板薬は、(1)TAKでは進行性の血管狭窄を来すため脳血管障害や虚血性心疾患などの予防目的で、あるいは、(2)血管ステント術などの血管内治療後の血栓予防目的で用いられる。抗凝固薬は、心臓血管外科手術後の血栓予防目的で用いられる。■ 降圧薬血圧は、鎖骨下動脈狭窄を伴わない上肢で評価する。両側に狭窄がある場合は、下肢血圧(正常では上肢より10~30mmHg高い)で評価する。高血圧や心病変に対し、各降圧薬が用いられる。腎血管性高血圧症にはACE阻害薬が用いられる。■ 観血的治療1)術前の免疫抑制治療の重要性疾患活動性のコントロール不十分例では、再狭窄、血管縫合不全、吻合部動脈瘤などの術後合併症のリスクが高くなる。観血的治療は、緊急時を除き、原則として疾患活動性をコントロールしたうえで行う。外科・内科・インターベンショナリストを含む学際的チームによる対応が望ましい。術前のステロイド投与量は、可能であれば少ないほうがよいが、TAKの場合、ステロイドを用いて血管の炎症を鎮静化することが優先される。2)血管狭窄・閉塞に対する治療重度の虚血症状を来す場合に血管バイパス術または血管内治療(EVT)である血管ステント術の適応となる。EVTは低侵襲性というメリットがある一方、血管バイパス術と比較して再狭窄率が高いため、慎重に判断する。3)大動脈瘤/その他の動脈瘤に対する治療破裂の可能性が大きいときに、人工血管置換術の適応となる。4)大動脈弁閉鎖不全(AR)に対する治療TAKに合併するARは、他の原因によるARよりも進行が早い傾向にあり、積極的な対策が必要である。原病に対する免疫抑制治療を十分に行い、内科的に心不全コントロールを行っても、有症状または心機能が低い例で、心臓外科手術の適応となる。TAKに合併するARは、上行大動脈の拡大を伴うことが多いので、大動脈基部置換術(Bentall手術)が行われることが多い。TAKでは耐久性に優れた機械弁が望ましいが、若年女性が多いため、患者背景を熟慮し、自己弁温存を含む大動脈弁の処理法を選択する。4 今後の展望最新の分子生物学的、遺伝学的研究の成果により、TAKの発症に自然免疫系や種々のサイトカインが関わることがわかってきた。TAKはステロイドが有効だが、易再燃性が課題である。近年、研究成果を応用し、各サイトカインを阻害する生物学的製剤による治療が試みられている。治療法の進歩による予後の改善が期待される。1)特殊状況での生物学的製剤の利用周術期管理ではステロイド投与量を可能であれば少なく、かつ、疾患活動性を十分に抑えたいので、生物学的製剤の有用性が期待される。今後の検証を要する。2)抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)2016年11月時点で国内治験の解析中である。3)CTLA-4-Ig(アバタセプト)米国でGCAおよびTAKに対するランダム化比較試験(AGATA試験)が行われている。4)抗IL-12/23 p40抗体(ウステキヌマブ)TAK3例に投与するパイロット研究が行われ、症状と血液炎症反応の改善を認めた。5 主たる診療科患者の多くは、免疫内科(リウマチ内科、膠原病科など標榜はさまざま)と循環器内科のいずれか、または両方を定期的に受診している。各科の連携が重要である。1)免疫内科:主に免疫抑制治療による疾患活動性のコントロールと副作用対策を行う2)循環器内科:主に血管病変・心病変のフォローアップと薬物コントロールを行う3)心臓血管外科:心臓血管外科手術を行う4)脳外科:頭頸部の血管外科手術を行う6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報1)2006-2007年度合同研究班による血管炎症候群の診療ガイドライン(ダイジェスト版)(日本循環器学会が公開しているガイドライン。TAKについては1260-1275ページ参照)2)米国AGATA試験(TAKとGCAに対するアバタセプトのランダム化比較試験)公的助成情報難病情報センター 高安動脈炎(大動脈炎症候群)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報大動脈炎症候群友の会 ~あけぼの会~同講演会の講演録(患者とその家族へのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Terao C, et al. Am J Hum Genet. 2013;93:289-297.3)Hata A, et al. Int J Cardiol. 1996;54:s155-163.4)Arend WP, et al. Arthritis Rheum. 1990;33:1129-1134.5)JCS Joint Working Group. Circ J. 2011;75:474-503.主要な研究グループ〔国内〕東京医科歯科大学大学院 循環制御内科学(研究者: 磯部光章)京都大学大学院医学研究科 内科学講座臨床免疫学(研究者: 吉藤 元)国立循環器病研究センター研究所 血管生理学部(研究者: 中岡良和)鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 小児診療センター 小児科(研究者: 武井修治)東北大学大学院医学系研究科 血液・免疫病学分野(研究者: 石井智徳)〔海外〕Division of Rheumatology, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA 19104, USA. (研究者: Peter A. Merkel)Department of Rheumatology, Faculty of Medicine, Marmara University, Istanbul 34890, Turkey.(研究者: Haner Direskeneli)Department of Rheumatologic and Immunologic Disease, Cleveland Clinic, Cleveland, OH 44195, USA.(研究者: Carol A. Langford)公開履歴初回2014年12月25日更新2016年12月20日

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第3回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院腫瘍化学療法外科、同大学院がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン、同大学院応用腫瘍学講座は、2017年1月15日(日)に、第3回「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、地域がん診療連携拠点病院である同院が活動の一環として行っている、がんに関するさまざまなテーマで開催する公開講座の3回目となる。今回は「一緒に考え、選び、支えるがん治療」をテーマに、さまざまな職種ががん患者と家族を支える窓口について、広く知ってもらうための内容になっており、各種ブース展示や体験コーナーなど、楽しく学べる企画が多数予定されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2017年1月15日(日)《セミナー》13:00~16:30《ブース展示》12:00~17:00【場所】東京医科歯科大学 M&D タワー2F 鈴木章夫記念講堂〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45現地キャンパスマップはこちら【参加費】無料(※参加申し込み不要)【テーマ】一緒に考え、選び、支えるがん治療【予定内容】《セミナー》13:00~16:30 鈴木章夫記念講堂司会:石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科)13:00~13:10 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)13:10~13:30 講演1 がん治療を「選ぶ」ためのヒント 石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科)13:30~14:10 情報提供 あなたのがん治療に必要な「支える」は? 《座長》  本松 裕子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター 緩和ケア認定看護師) 《パネリスト》  橋爪 顕子氏(同院 がん化学療法看護認定看護師)  安藤 禎子氏(同院 皮膚・排泄ケア認定看護師)  侭田 悦子氏(同院 皮膚・排泄ケア認定看護師)  高橋 美香氏(同院 医療連携支援センター医療福祉支援室 退院調整看護師)  山田 麻記子氏(同院 がん相談支援センター 医療ソーシャルワーカー)  坂下 千瑞子氏(同院 血液内科)14:10~14:30 医科歯科大のがん治療 update(1) 整形外科「骨転移専門外来」をご活用ください! 佐藤 信吾氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 整形外科)14:30~14:50 医科歯科大のがん治療 update(2) 咽頭・食道がんの低侵襲治療~大酒家のためのトータルケア 川田 研郎氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 食道外科)14:50~15:10 休憩15:10~15:50 講演2 がんを病んでも地域で暮らす~かかりつけ医と在宅医療のすすめ 川越 正平氏(あおぞら診療所 院長)15:50~16:25 講演3 正しく知ろう!「緩和ケア」 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)16:25~16:30 閉会挨拶 植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科 科長[教授])《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ■がんと栄養・食事 (東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)■お口の楽しみ、支えます (東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科)■ウィッグ・メイクを楽しもう! (アプラン東京義髪整形/マーシュ・フィールド)■在宅治療の味方 皮下埋め込みポートって何? (株式会社メディコン)■がん患者さんの家計・お仕事に関するご相談 (特定非営利活動法人 がんと暮らしを考える会)■がん患者と家族へのピアサポートの紹介 (特定非営利活動法人 がん患者団体支援機構)■がん相談支援センター活用のすすめ (東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター)■「もっと知ってほしい」シリーズ冊子 (認定NPO法人 キャンサーネットジャパン)■「看護師」にご相談ください~一緒に解決の糸口を探しましょう~ (東京医科歯科大学医学部附属病院 専門・認定看護師チーム)【お問い合わせ先】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45TEL:03-5803-4886(平日 9:00~16:30)【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科東京医科歯科大学大学院 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座【協力】認定NPO 法人キャンサーネットジャパン【後援】東京医科歯科大学医師会東京都医師会/文京区/東京都第3回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら(PDF)

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統合失調症患者の口腔ケア、その重要性は:東医大

 統合失調症患者は抗精神病薬で治療されるが、多くの場合、抗不安薬の併用が行われている。東京医科大学の岡本 彩子氏らは、定型、非定型抗精神病薬、抗不安薬、非向精神薬を服用中の統合失調症患者における口腔内乾燥症を評価するため、口腔水分計を用いて調査を行った。Journal of clinical pharmacy and therapeutics誌オンライン版2016年9月24日号の報告。 患者は、北里大学東病院および関連病院の精神科において、ICD-10基準に従って、統合失調症と診断された。すべての患者に向精神薬が処方されていた。一次性シェーグレン症候群のような口腔乾燥症に関連する疾患を有する患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・127例が登録された。・平均口腔水分値は、27.81±2.27%(正常値:30.0%以上)であった。・客観的な口腔水分値と主観的な口渇との間に有意な関連が認められた。・多変量解析では、抗精神病薬、とくに抗不安薬の数と口腔水分の程度との間に負の相関が認められた。・薬物投与量自体には、口渇との有意な相関は認められなかった。 著者らは「客観的な口腔水分測定では、向精神薬服用中の統合失調症患者は、口腔水分の減少が認められ、口腔水分の程度は、向精神薬の投与量ではなく、数と負の相関を示した」ことから、「歯科医は、統合失調症患者が来院した場合、口腔水分を評価し、薬が服用されているか判断すべきである。そして、口腔乾燥と多剤併用の関連性の知見に基づき、積極的な口腔乾燥症管理を行うよう、精神科医に情報提供すべきである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は 抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響 統合失調症への支持療法と標準的ケア、その差は

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