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ウィルソン病〔Wilson disease〕

1 疾患概要■ 定義肝臓およびさまざまな臓器に銅が蓄積し、臓器障害を来す常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である。■ 疫学わが国での発症頻度は約3万5千人に1人、保因者は約120人に1人とされている。■ 病因・病態本症は、銅輸送ATPase(ATP7B)の遺伝子異常症で、ATP7Bが機能しないために発症する。ATP7B遺伝子の変異は症例によりさまざまで、300以上の変異が報告されている。正常では、ATP7Bは肝細胞から血液および胆汁への銅分泌を司どっており、血液中への銅分泌のほとんどは、セルロプラスミンとして分泌されている。ATP7Bが機能しない本症では、肝臓に銅が蓄積し、肝障害を来す。同時に血清セルロプラスミンおよび血清銅値が低下する。さらに肝臓に蓄積した銅は、オーバーフローし、血液中に出てセルロプラスミン非結合銅(アルブミンやアミノ酸に結合しており、一般に「フリー銅」といわれている)として増加し、増加したフリー銅が脳、腎臓などに蓄積し、臓器障害を来すとされている(図1)。画像を拡大する■ 症状・分類5歳以上のすべての年齢で発症する。40~50歳で発症する例もある。神経型は肝型に比較して、発症年齢は遅く、発症は8歳以上である。ウィルソン病は、症状・所見により、肝型(肝障害のみ)、肝神経型(肝機能異常と神経障害)、神経型(肝機能は異常がなく、神経・精神症状のみ)、溶血発作型、その他に分類される。本症での肝障害は非常に多彩で、たまたま行った検査で血清トランスアミナーゼ(ALT、AST)高値により発見される例(発症前)から、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変などで発症する例がある。神経症状の特徴はパーキンソン病様である。神経型でも肝臓に銅は蓄積しているが、一般肝機能検査値としては異常がみられないだけである。肝機能異常が認められなくても、表1の神経・精神症状の患者では、本症の鑑別のために血清セルロプラスミンと銅を調べるべきである。画像を拡大する神経・精神症状は多彩で、しばしば診断が遅れる。本症患者で当初はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などと誤診されていた例が報告されている。表1の「その他の症状」が初発症状を示す患者もいる。したがって、表1の症状・所見の患者で原因不明の場合は、本症を鑑別する必要がある。■ 予後本症に対する治療を行わないと、病状は進行する。肝型では、肝硬変、肝不全になり致命的になる。肝細胞がんを発症することもある。神経型では病状が進行してから治療を開始した場合、治療効果は非常に悪く、神経症状の改善がみられない場合もある。また、改善も非常に緩慢であることが多い。劇症型肝炎や溶血発作型では、迅速に対応しなければ致命的になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断に有効な検査を表2に示す。また、診断のフローチャートを図2に示す。表2の補足に示すように、診断が困難な場合がある。現在、遺伝子診断はオーファンネットジャパンに相談すれば実施してくれる。画像を拡大する症状から本症を鑑別する場合、まずは血清セルロプラスミンと銅を測定する。さらに尿中銅排泄量およびペニシラミン負荷試験で診断基準を満たせば、本症と診断できる。遺伝子変異が同定されれば確定診断できるが、臨床症状・検査所見で本症と診断できる患者でも変異が同定されない場合がある。確定診断に最も有効な検査は肝銅濃度高値である。しかし、劇症肝不全で肝細胞が著しく壊死している場合は、銅濃度は高くならないことがある。患者が診断されたら、家族検索を行い、発症前の患者を診断することも必要である。鑑別診断としては、肝型では、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎などが挙げられる。神経型はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などである。また、関節症状では関節リウマチ、心筋肥大では心筋症、血尿が初発症状では腎炎との鑑別が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症の治療薬として、キレート薬(トリエンチン、ペニシラミン)、亜鉛製剤がある(表3)。また、治療の時期により初期治療と維持治療に分けて考える。初期治療は、治療開始後数ヵ月で体内に蓄積した銅を排泄する時期でキレート薬を使用し、その後は維持治療として銅が蓄積しないように行う治療で、亜鉛製剤のみでよいとされている。画像を拡大する肝型では、トリエンチンまたはペニシラミンで開始する。神経型では、キレート薬、とくにペニシラミンは使用初期に神経症状を悪化させる率が高い。したがって神経型では、亜鉛製剤またはトリエンチンで治療を行うのが望ましい。ウィルソン病は、早期に診断し治療を開始することが重要である。とくに神経型では、症状が進行すると予後は不良である。早期に治療を開始すれば、症状は消失し、通常生活が可能である。しかし、怠薬し、急激な症状悪化を来す例が問題になっている。治療中は怠薬しないように支援することも大切である。劇症型肝炎、溶血発作型では、肝移植が適応になる。2010年現在、わが国での本症患者の肝移植数は累計で109例である。肝移植後は、本症の治療は不要である。発症前患者でも治療を行う。患者が妊娠した場合も治療は継続する。亜鉛製剤で治療を行っている場合は、妊娠前と同量または75mg/日にする。キレート薬の場合は、妊娠後期には、妊娠前の50~75%に減量する。4 今後の展望1)本症は症状が多彩であるために、しばしば誤診されていたり、診断までに年月がかかる例がある。発症前にマススクリーニングで、スクリーニングされる方法の開発と体制が構築されることが望まれる。2)神経型では、キレート薬治療で治療初期に症状が悪化する例が多い。神経型本症患者の神経症状の悪化を来さないテトラチオモリブデートが、米国で治験をされているが、まだ承認されていない。3)欧米では、本症の診断治療ガイドラインが発表されている。わが国では、2015年に「ウィルソン病診療指針」が発表された。5 主たる診療科小児科、神経内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報ウィルソン病友の会1)Roberts EA, et al. Hepatology. 2008; 47: 2089-2111.2)Kodama H, et al. Brain & Development.2011; 33: 243-251.3)European Association for the Study of the Liver. J Hepatology. 2012; 56: 671-685.4)Kodama H, et al. Current Drug Metabolism.2012; 13: 237-250.5)日本小児栄養消化器肝臓学会、他. 小児の栄養消化器肝臓病診療ガイドライン・指針.診断と治療社;2015.p.122-180.公開履歴初回2013年05月30日更新2016年02月02日

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循環器内科 米国臨床留学記 第4回

第4回:大学病院、退役軍人病院、プライベート病院特徴のあるローテーション先の病院米国には、大きく分けて3つの病院があります。多くの大学のプログラムは、University Hospital (大学病院)に加えて、VA(退役軍人)病院、場合によってプライベート病院をローテートします。University Hospital (大学病院)University Hospitalは、メインの研修先となります。最先端の治療が行われるため、自然と重症患者が集まります。University Hospitalはフェローやレジデントが主戦力ですから、われわれがいないと仕事が先に進みません。近年、レジデントは労働時間の制限(週80時間労働)、Caps制度(受け持てる患者の数が決まっている)があります。結果的に、そのしわ寄せがフェローに来ます。先月はCCU(冠動脈疾患ケアユニット、重症の心疾患を扱う集中治療室)でしたが、レジデントより遅くまで病院にいることも多かったです。私のプログラムではCCUをローテートする月の平日は毎晩オンコールでERや院内からの循環器コンサルトが頻回にかかってきます。病院のカルテに家からアクセスできるため、心電図の確認のコールが頻回にかかってきます。夜中にST上昇心筋梗塞が来たら、心電図を確認した上でカテ室を起動させなければなりません。その他、緊急心エコーなどのオーダーもあります。そのため、4時間以上連続して寝られることはありませんでした。University Hospitalとしても酷使しても給料を増やさなくて良くて、かつ労働時間の制限がないフェローは使い勝手が良いのです。University Hospitalでは、医師の給料はプライベートホスピタルと比べると安いので、大学で働くことを希望する人は教育をしたい、もしくは研究をしたい人が中心となります。University of Californiaでは、すべての職員の給料が公開されています。循環器フェロー卒業直後の給料は、25万ドル程度です。EP(不整脈)や冠動脈インターベンションの教授のトップクラスは50万ドル以上にもなります。Veterans Affairs Hospital(VA: 退役軍人病院)VA(退役軍人)病院は、多くのUniversity Hospitalのプログラムとつながっており、ローテーションすることが義務付けられています(写真:ロングビーチVA病院)。全米のレジデントの約30%がVAをローテートし、ローテートしたフェローやレジデントの給料の一部はVAの財源から補われます。ロングビーチVA病院安価で医療を受けられると聞くと聞こえがいいが、VAはさまざまな問題を抱えている。VAで働くと、アメリカという国が、いかにインセンティブで動いているかを強く感じる。VA病院には、働いた人にしかわからない特別な雰囲気があります。基本的に米国というのは、能力や成果に応じて給料が決められる出来高制や年棒制で医師の給料が決まっており、これが労働意欲につながっています。VA病院はsocialized medicineです。つまり、政府によって運営され、患者は退役軍人です。彼らの多くはVA病院に来るしか選択肢がありません。病院からすれば、頑張らなくたって患者は来ますし、医師やスタッフの給料も固定されていますから、頑張って働く必要はありません。できることなら患者を減らして、早く帰りたいと思っている人がほとんどです。公的サービスが優れている日本なら、これでもみんな一生懸命働くでしょう。私は全米の3つのVA病院で働きましたが、共通して医療従事者の労働意欲は低く、VA病院はうまく機能しているとは思えなかったです。実際2014年にVA病院の医療が大きな問題となりました。多くの患者が何ヵ月にもわたって、外来の予約待ちで適切な診察を受けられず、診察を待っている間にがん患者が死亡するという問題が生じました。これに基づくさまざまな問題は、エリック・シンセキという日系の退役軍人長官の辞任につながりました。循環器領域でいうと、冠動脈カテーテルなら1日3件、アブレーションでも1日1件など、他の病院では考えられないような手技件数です。医師でさえも、外来の患者や心エコーの件数を減らすために、心エコーや外来のコンサルトのスクリーニングをすることが仕事になっている上司までいます。金曜日は15時を過ぎると、人はまばらになり、何も機能しなくなります。労働時間が短く、負荷も少ない割に、福利厚生は充実しているので、QOL重視の人にとっては最高の環境です。医師でいえば、60歳を超え、引退を控えた人、研究に時間を割きたいような人、急かされて手技などをやりたくない人が集まってきます。さらに一度、この生ぬるい環境に慣れると、なかなか他の病院では働けなくなります。周りの若手医師で、将来VA病院で働きたいと思っている人はいません。患者は退役軍人の人たちで、ざっくばらんに言えば、いいおじさんたちといった感じの人が多く、付き合いやすい人たちばかりです。しかしながら、経済的に貧しい人が多く、ホームレスの患者もたくさんいます。よく知られていることですが、退役した後は仕事に就けず、またベトナム、韓国、イラクなどで覚えた麻薬などを止められず、薬物やアルコール依存、PTSDなどに悩まされます(イラク、アフガニスタンからの帰還兵の10%が薬物やアルコール依存症との報告があります)。犯罪率も高いようで、死刑囚の10%が退役軍人という報告もあります。悲しいことに、アメリカの街角で「退役軍人です、お金を恵んでください」と書かれたプラカードを持っている人をよく見かけます。幸い、ホームレスでも退役運人である限り、医療は無料で受けられますので、外来にこういった方がたくさんいらっしゃいます。研究もVA病院では盛んに行われます。退役軍人の人は、VA病院にしかかからないためフォローがしやすいこと、また、退役軍人の方はいい人が多く、医師が研究を勧めると文句も言わず応じてくれる人が多いように感じます。無料で医療を受けているという引け目があるのかもしれません。研究に対価が払われることなどもあります。私も何度か目のあたりにしましたが、他の病院や日本では少しありえない実験的な研究が行われているのも事実です。VA病院からいい論文が出るのは、こういった側面があると思われます。実際、VA病院の医療の質に疑問を抱いている人も多く、退役軍人でお金を持っている患者はVA病院にかからないという方もいます。プライベートホスピタルプライベートホスピタルは当然ですが、収益第一です。収益につながらないようなことはしません。循環器の冠動脈インターベンショニストやEP(不整脈)の医師の仕事は、カテ室に空きがないようにどんどん手技を行うことです。1日に行う手技の数が、大学と比べても断然に多くなりますし、プライベートの循環器医師は、手技も比較的早い人が多いです。逆に言うと、1つの症例で粘ったりすると、他のスケジュールに支障が出るため、あきらめが早いほうがいい場合もあります。心房細動のアブレーションで肺静脈隔離という手技を行いますが、大学病院であるUC San Diegoにいた頃は、完全に隔離できるまで、上司が粘り、手技が大幅に遅れることがよくありました。患者さんのことを考えて粘ってやっているわけですが、プライベートホスピタルでは、そういうわけにはいきません。結果として、Cryoballoonといったような、時間短縮につながるデバイスが使用される傾向にあります。また、プライベートホスピタルでは、フェローやレジデントがいない環境に慣れているため、カテーテル手技後の止血や簡単なオーダーなどは看護師やNP(ナースプラクティショナー)がやってくれます。医師は、手技のリポートを作り、次の患者に備えます。収益を上げるべく、医師には医師だけができる仕事に専念させます。General Cardiologist(一般循環器専門医)も、コンサルトをどんどん見ることが自分や病院の収益につながります。出来高制ですからUniversity Hospitalでは怒られてしまいそうな、くだらないコンサルトでもお金になるため、喜んで引き受けてくれます。NPが一緒にラウンドし、雑用は彼らがこなし、医師は患者を見て、せっせとノートを作ります。教育面では、仕事のペースが落ちるためレジデントやフェローと関わるのを避ける人も結構います。悲しいですが、リサーチが病院の収益に結び付かないと判断されると、リサーチはもちろん行われません。中規模のプライベートホスピタルではリサーチをほとんどやっていないところが多いです。ファンディングを持っていて、研究を積極的に行うような大規模な病院もありますが、医師が臨床の時間を割かなくても良いように、リサーチのナースなどが積極的に関与し、サポート体制が充実しています。プライベートホスピタルにおける医師への待遇は、大学やVAと比べて格段に良いです。駐車場は無料で、食事、飲み物、スナック類も食べ放題なところが結構あります。給料も大学より、だいぶ良く、卒後すぐの循環器医師でもCaliforniaで30万ドル、以前住んでいたOhio州では40万ドルから50万ドルにもなります。プライベートホスピタルでは、トップクラスのインターベンショニストになると100万ドル以上稼ぐこともあります。このように、異なった種類の病院をローテートすることで、どういった病院が自分に合っているかをフェローの間に考えられるという側面もあります。

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冠動脈インターベンション時の血栓性の人工コントロールは可能か?(解説:後藤 信哉 氏)-460

 トロンビン、Xaなどの凝固因子の機能を薬剤により阻害すると、重篤な出血イベントが増え、血栓イベントは減少する。血液凝固第VIII因子、第IX因子の欠損は、重篤な出血イベントを起こす血友病ではあるが、血友病の血栓イベントは少ないと想定される。止血、血栓形成に必須の役割を演じる血液凝固因子を、血栓イベントリスクの高い短時間のみ阻害し、血栓イベントリスクの低下に合わせて凝固因子を正常化する調節ができれば、出血イベントリスクの増加を伴わない抗血栓療法が可能となると期待された。 本研究では、血液凝固第IX因子の機能を阻害して人工的に血友病をつくるpegnivacoginが使用された。本研究は、血液凝固第IX因子阻害薬使用時のアナフィラキシーの増加により早期に中止された。それでも、3,000例以上の症例がランダム化され、血液凝固第IX因子阻害群では108/1,616例(7%)、欧米にて承認された選択的なトロンビン阻害薬bivalirudin群では103/1,616例(6%)に心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントが発現した。本研究のアイデアは、人工的に血友病をつくり出してでも血栓イベント予防を目指す凄まじいコンセプトであった。血液凝固第IX因子阻害効果を、人工的に中和できる薬剤を同時に使用するとはいっても、生体の複雑性には未知の部分が多い。本研究は、チャレンジングなコンセプトであったが、比較的単純な血液凝固系であっても人工的な制御は難しいことを示したともいえる。 現時点の医療の科学は、帰納的なエビデンスベースドメディシンである。構成論的予測は不可能ではないが、未知の部分が多すぎる。エビデンスベースドメディシンの世界を脱却して、構成論的、予測的、個別特異的な医療の世界をつくるのが21世紀の医学、生物学のチャレンジである。

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抗Xaの囮療法の評価をどうする?(解説:後藤 信哉 氏)-459

 血液凝固検査は、細胞の存在しない液相で施行される。しかし、生体内の血液凝固反応は活性化細胞膜上、白血球上などのリン脂質膜上にて主に起こる。ワルファリンは、血液凝固因子第II、VII、IX、X因子と生体膜のphosphatidylserineの結合を阻害する効果を有した。ワルファリン服用下では、液相での血液凝固検査における凝固系の機能異常以上に、生体内における細胞膜を介した凝固系も効率的に予防した。いわゆる新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬は、凝固因子のトロンビン産生、フィブリン産生の酵素作用を可逆的に阻害する。ワルファリンとは作用メカニズムが異なるので、中和作用も異なる。抗トロンビン薬ダビガトランは、液相、細胞膜上の両者にてフィブリノーゲンからフィブリンを産生するトロンビンの作用を阻害している。トロンビンに結合するダビガトランを単純に失活させれば、中和薬としての効果を期待できた。 抗Xa薬も、液相ではXaの酵素活性部位から抗Xa薬を除いて失活させることを目標とすればよい。その方法は、ダビガトランの中和薬と同様でよい。しかし、トロンビンを産生するプロトロンビナーゼ複合体を形成するXaが、液相のXaと同じ動態をとるか否かは未知である。Xaに類似した構造を持ちつつ、Xaとして酵素作用がなく、かつ活性化血小板膜に集積できないXaデコイ(囮)が中和薬として開発された。液相のXa活性を指標とすれば、Xaデコイ(囮)により抗Xa薬の薬効は中和できることが本論文にて示された。 しかし、血小板細胞上などでのプロトロンビナーゼ活性阻害を中和したか否かは明確ではない。本研究は出血、血栓リスクの高い症例に対する研究ではなく、健常人を対象とした研究である。本研究の結論は、液相中の抗Xa活性を中和したことのみを支持すると考えるべきである。 抗血栓薬を中和すると、逆に血栓リスクが増すと想定される。実際、トロンビン産生のマーカーであるF1+2、線溶の指標であるD-dimerは中和薬投与後に上昇している。本研究は、バイオマーカーの計測を精緻に行った研究である。抗Xa薬に対する「Decoy(囮)」療法は科学的には新規のチャレンジである。臨床的インパクトの有無の評価は、今後の課題である。

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鋭い論文解説が勢ぞろい!【CLEAR!ジャーナル四天王 2015年トップ30発表】

臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、日本の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しているNPO法人です。本企画『CLEAR!ジャーナル四天王』では、CareNet.comで報道された海外医学ニュース『ジャーナル四天王』に対し、鋭い視点で解説します。コメント総数は約450本(2015年11月時点)。今年掲載された150本以上のコメントの中から、アクセス数の多かった解説記事のトップ30を発表します。1位高齢者では、NOACよりもワルファリンが適していることを証明した貴重なデータ(解説:桑島 巖氏)(2015/5/20)2位LancetとNEJM、同じデータで割れる解釈; Door-to-Balloon はどこへ向かうか?(解説:香坂 俊氏)(2015/1/9)3位FINGER試験:もしあなたが、本当に認知症を予防したいなら・・・(解説:岡村 毅氏)(2015/3/20)4位降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巖氏)(2015/4/3)5位MRIが役に立たないという論文が出てしまいましたが…(解説:岡村 毅氏)(2015/7/22)6位DAPT試験を再考、より長期間(30ヵ月)のDAPTは必要か?(解説:中川 義久氏)(2015/1/8)7位やはり優れたワルファリン!(解説:後藤 信哉氏)(2015/8/19)8位ヘパリンブリッジに意味はあるのか?(解説:後藤 信哉氏)(2015/7/8)9位市中肺炎患者に対するステロイド投与は症状が安定するまでの期間を短くすることができるか?(解説:小金丸 博氏)(2015/2/18)10位CKD合併糖尿病患者では降圧治療は生命予後を改善しない?(解説:浦 信行氏)(2015/6/9)11位ワルファリン出血の急速止血に新たな選択肢?(解説:後藤 信哉氏)(2015/4/6)12位SPRINT試験:厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖氏)(2015/11/13)13位なんと!血糖降下薬RCT論文の1/3は製薬会社社員とお抱え医師が作成(解説:桑島 巖氏)(2015/7/14)14位COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊氏)(2015/3/27)15位SORT OUT VI試験:薬剤溶出性ステント留置は成熟した標準治療となった!(解説:平山 篤志氏)(2015/2/10)16位心血管リスクと関係があるのはHDL-C濃度ではなくその引き抜き能(解説:興梠 貴英氏)(2015/1/21)17位SPRINT試験:75歳以上の後期高齢者でも収縮期血圧120mmHg未満が目標?(解説:浦 信行氏)(2015/11/18)18位鼻腔から集中治療を行える時代へ:ハイフロー鼻腔酸素療法(解説:倉原 優氏)(2015/6/3)19位働き過ぎは、脳卒中のリスク!(解説:桑島 巖氏)(2015/8/31)20位CLEAN試験:血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコール(解説:小金丸 博氏)(2015/10/30)21位IMPROVE-IT試験:LDL-コレステロールは低ければ低いほど良い!(解説:平山 篤志氏)(2015/6/22)22位なぜ心房細動ばかりが特別扱い?(解説:後藤 信哉氏)(2015/10/5)23位LDL-コレステロール低下で心血管イベントをどこまで減少させられるか?(解説:平山 篤志氏)(2015/4/21)24位EMPA-REG OUTCOME試験:試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人氏)(2015/10/1)25位DPP-4阻害薬の副作用としての心不全-アログリプチンは安全か…(解説:吉岡 成人氏)(2015/4/14)26位食後血糖の上昇が低い低glycemic index(GI)の代謝指標への影響(解説:吉岡 成人氏)(2015/1/6)27位抗うつ薬、どれを使う? 選択によって転帰は変わる?(解説:岡村 毅氏)(2015/3/3)28位治療抵抗性高血圧の切り札は、これか?~ROX Couplerの挑戦!(解説:石上 友章氏)(2015/2/20)29位デブと呼んでごめんね! DEB改めDCB、君は立派だ(解説:中川 義久氏)(2015/9/30)30位問診と自己申告で全死亡が予測できる?(解説:桑島 巖氏)(2015/7/6)今回ご紹介しました「CLEAR!ジャーナル四天王」とは他にも、人気のランキングはこちらをどうぞ

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第Xa因子阻害薬の中和薬、抗凝固活性の抑制効果を確認/NEJM

 第Xa因子阻害薬の抗凝固作用に対する中和薬として開発が進められているandexanet alfaについて、カナダ・マックマスター大学のDeborah M. Siegal氏らによる健常高齢者ボランティアを対象に行った臨床試験の結果が報告された。アピキサバン、リバーロキサバンのいずれの抗凝固薬に対しても数分以内で中和作用を示し、臨床的毒性作用は認められなかったという。第Xa因子阻害薬治療では出血の合併症が伴うことから、中和薬の開発が期待されている。NEJM誌オンライン版2015年11月11日号掲載の報告。アピキサバン、リバーロキサバンに対する中和作用を評価 試験は、50~75歳の健常高齢者ボランティアに、アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回投与して行われた。2段階の無作為化プラセボ対照試験にて、andexanetのボーラス投与またはボーラス投与+2時間静注を評価した。 主要アウトカムは、平均%でみた抗第Xa因子活性の変化とし、抗凝固薬ごとに抑制効果を評価した。 2014年3月~15年5月に、計101例の被験者(アピキサバン試験48例、リバーロキサバン試験53例)がandexanet投与を、44例(アピキサバン試験17例、リバーロキサバン試験27例)がプラセボ投与を受けるよう無作為に割り付けられた。被験者の平均年齢は57.9歳、女性が39%であった。抗凝固活性、ボーラス投与でアピキサバンは94%、リバーロキサバンは92%抑制 結果、抗第Xa因子活性は、andexanetボーラス投与群においてプラセボ投与群と比べて、急速(2~5分以内)に抑制された。 アピキサバン試験のボーラス投与群(24例)の抑制効果は94%に対し、プラセボ投与群(9例)は21%であった(p<0.001)。また、非結合アピキサバンの血中濃度は9.3ng/mLと有意に抑制され(プラセボ群1.9ng/mL、p<0.001)、トロンビン生成は被験者の100%で2~5分以内に完全に回復した(プラセボ群11%、p<0.001)。 リバーロキサバン試験では、ボーラス投与群(27例)の抑制効果は92%、プラセボ投与群(14例)は18%であった(p<0.001)。また非結合リバーロキサバン血中濃度は23.4ng/mLに有意に抑制され(プラセボ群4.2ng/mL、p<0.001)、トロンビン生成は被験者の96%で完全に回復した(プラセボ群7%、p<0.001)。 同様の効果は、andexanetのボーラス投与+2時間静注の検討においても維持されていた。 サブグループにおいて、Dダイマー値、プロトロンビンフラグメント1、2の一過性の上昇がみられたが、24~72時間で回復した。なお、有害事象や血栓性イベントの報告はなかった。

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FDA、ダビガトランの中和剤idarucizumabを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、抗凝固薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の特異的中和剤idarucizumab(商品名:Praxbind)を迅速承認した。対象はダビガトラン服用中で緊急に抗凝固作用の中和を要する患者。 idarucizumabは初めて承認されたダビガトランの特異的中和薬。ダビガトランに結合し、その作用を無効化する。 idarucizumabの効果と安全性は、ダビガトランを服用した283例の健康成人(抗凝固治療を必要としない成人)による3つの試験で検討された。その結果、idarucizumabが投与された健康成人において、ダビガトランの血中量(非結合型ダビガトランの血漿中濃度を測定)は迅速に減少し、その作用は24時間持続した。また、ダビガトラン服用中で、止血困難な出血が発生した、あるいは緊急手術が必要となった123例の患者による試験が行われた。この進行中の試験では、89%の患者でダビガトランの抗凝固作用が完全に中和され、その作用はidarucizumab投与後 4時間以上持続した。同試験において、idarucizumabの頻度の高い副作用は高カリウム血症、意識錯乱、便秘、発熱、肺炎であった。 ダビガトランの作用中和により、患者は血栓や心房細動による脳卒中のリスクにさらされることになる。そのため、idarucizumabの添付文書では、医療者が医学的に適切だと判断し次第、すみやかに抗凝固療法を再開することを推奨している。FDAのプレスリリースはこちら。

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正常眼圧緑内障の乳頭出血、血小板機能低下で発見されやすい?

 正常眼圧緑内障にみられる乳頭出血は、血小板機能の低下と関連していることが、韓国・成均館大学のSeong Hee Shim氏らの前向き横断研究によって明らかになった。著者は「乳頭出血を有する正常眼圧緑内障患者では、血小板凝集が遅れて出血が長引き吸収が遅延するため、乳頭出血が検出されやすい可能性がある」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。 研究グループは、正常眼圧緑内障と乳頭出血を有する患者(NTG・DH+群)120例、乳頭出血のない正常眼圧緑内障患者(NTG・DH-群)75例、および健常者(対照群)120例、合計315例を対象に、視野検査、カラー眼底写真撮影、光干渉断層計(OCT)検査を行うとともに、血小板機能アナライザー(PFA-100システム)を用いてコラーゲン/エピネフリン閉塞時間を測定した。 主な結果は以下のとおり。・コラーゲン/エピネフリン閉塞時間は、NTG・DH+群141.92±53.44秒、NTG・DH-群124.60±46.72秒、対照群114.84±34.84秒で、NTG・DH+群が他の群と比較して約14~24%長かった(一元配置分散分析、p<0.001)。・NTG・DH+群の活性化部分トロンボプラスチン時間も、対照群より長かった。・ステップワイズ多重ロジスティック回帰分析の結果、コラーゲン/エピネフリン閉塞時間の延長のみが独立して乳頭出血と関連していることが明らかとなった(年齢、性別、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、糖尿病、高血圧、低血圧、心疾患、甲状腺機能低下症、片頭痛、脳卒中、脂質異常症で調整したオッズ比=2.94、95%信頼区間:1.40~6.17)。・血小板機能を年齢別に3群で比較したときも同様の傾向が観察された。

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優れた抗血栓性を目指し、ポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成したCARMAT完全植込み完全置換型の開発と世界最初の臨床応用(解説:許 俊鋭 氏)-394

 2008年に、僧帽弁形成手術で世界的に著名な心臓外科医Alain Carpentier氏が、真に心臓移植の代替治療となりうる完全植込み完全置換型(fully implantable artificial heart)の臨床治験を、2011年までに実施する準備ができたと発表した1)。 ポンプ本体の内面はすべて生体材料 (“biomaterials”or a“pseudo-skin”of biosynthetic、microporous materials)で構成され、これまでの人工心臓でまったく未解決の問題であった、ポンプ内血栓形成が生じない人工心臓をつくるという、きわめて野心的なプロジェクトであった。 CARMAT完全植込み完全置換型(C-TAH)は、4つの生体弁を持つ電気駆動型拍動流拍動完全置換型で、現時点では体外のバッテリーと接続し、エネルギーは体外から供給するシステムではあるが、近い将来、経皮的エネルギー伝送により完全植込み型デバイスになることも可能である。ポンプ内面は、表面処理された生物心膜組織(processed bioprosthetic pericardial tissue)および拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から成り、抗凝固療法の軽減が潜在的に可能である2)。12頭の牛(体重102~112kg)を用いた平均3日間の実験で、4頭が4日以上(最長10日)生存した。まったく抗凝固療法なしで術後管理されたが、剖検では2頭に小さな腎梗塞がみられたのみであった。 2015年になって立て続けに3本の論文2)3)4)が発表され、本論文はその1つで2013年から始まった臨床例の最初の報告である。ただし、この臨床試験では当初目指した完全植込みには至らず、デバイスは外径8mmのきわめて屈曲性に富んだドライブラインで、体外のリチウムイオンバッテリーに接続して使用している。 C-TAHは2人の男性の患者に植え付けられた。患者1(76歳)は、2013年12月18日の植込み症例、患者2(68歳)は2014年8月5日の植込み症例で、C-TAH植込み手術の人工心肺時間は、157分、170分であった。2例とも術後12時間以内に抜管され、呼吸および循環機能は急速に回復した。 患者1は、術後23日に心タンポナーデのために再開胸止血手術施行し、以後抗凝固療法を中止した。C-TAHは良好に機能し、4.8~5.8L/分の良好な流量が得られた。術後74日目にデバイス機能不全のため患者は死亡した。抗凝固薬なし期間が50日間あったにもかかわらず、剖検ではポンプ内や末梢臓器に血栓はみられなかった。 患者2は、一時的な腎不全と心嚢液貯留に対してドレナージを必要としたが、それ以外は問題なく、術後150日で携帯電源システムとともに自宅に戻った。在宅4ヵ月後に低心拍出状態になりデバイス交換を試みたが、多臓器不全のために患者は死亡した。 本論文掲載決定時にはすでに3症例目の植込みが成功していて、術後104日目で退院直前の状態にある。 日本では、年間20万例が心不全のため死亡している。人口の高齢化とともに心不全はますます増加傾向にあり、65歳以上の循環器疾患医療費はがんを中心とした新生物医療費の2倍(13.3% vs.27.4%、2011年)を要している。心臓移植の対象となる65歳未満の心不全死亡は2万例弱であり、全心不全死亡数の9.7%にしか過ぎない。しかも、日本における年間心臓移植数は40例弱であり、2万例の65歳未満心不全死亡数はおろか、現在心臓移植登録・待機している400例に対しても極端に少ない。 すなわち、心臓移植治療はその絶対数において末期心不全に対する標準的治療とはなり得ない。そのため、米国で2002年に年齢などにより心臓移植適応除外となった症例に対する、心臓移植代替治療としての植込み型補助人工心臓(LVAD)を用いたDestination Therapy(DT)がFDAにより承認され、保険償還が始まった。DTは当初2年生存を目標にスタートしたが、INTERMACSデータでは現時点で2年生存率60%、3年生存率50%が達成されていて5)、今後、さらに治療成績が向上していくものと考えられる。長期の補助人工心臓の成績向上のために解決しなければならない主な課題として、(1)システムの長期耐久性、(2)抗血栓性の向上、(3)感染防止がある。その中で、今日の第2・第3世代の定常流植込み型LVADにおいて、すでに10年生存症例も報告され「(1)システムの長期耐久性」は達成されているが、「(2)抗血栓性の向上」と「(3)感染防止」はまったく解決できていない課題である。C-TAHは「(2)抗血栓性の向上」を目指した野心的なプロジェクトであり、抗凝固療法なしで50日間管理し、まったく血栓が生じなかったことは大きな成果である。また、C-TAHは近い将来、完全植込みを目標としており「(3)感染防止」にも意欲を示している。 残念なことに、ポンプシステムが第1世代拍動流ポンプであることにより、C-TAHには「(1)システムの長期耐久性」は期待できない。しかし、C-TAHポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成するという試みは、今日の長期耐久性に優れた第2・第3世代の定常流植込み型LVAD製造技術と結び付くことにより、植込み型LVADの「(2)抗血栓性の向上」に大きく貢献するものと期待される。 近い将来、経皮的エネルギー伝送システムの導入で有効な「(3)感染防止」技術が確立した暁には、植込み型LVADの心臓移植に匹敵するQOL・長期生存率が達成されるものと期待される。

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いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【2】(解説:後藤 信哉 氏)-383

 ワルファリンは第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、抗トロンビン、抗Xa薬により凝固因子の効果が阻害され続けるので、薬剤が体内から消失するまで止血効果を期待できない。第Xa因子の場合には、血漿中の抗凝固効果以上に、細胞膜上のprothrombinase complexを構成するXaも中和しなければならないので、抗Xa薬中和剤の開発はいっそう困難である。 中和剤の開発は、抗トロンビン薬ダビガトランにおいて抗Xa薬よりも容易である。そこで、ダビガトランに対する選択的モノクロナール抗体を用いて、「ダビガトランの抗トロンビン効果の指標である希釈トロンビン時間、エカーリン凝固時間、a-PTTなど」を指標とした抗トロンビン効果を確認したproof of concept試験が、以前にLancet誌に発表された。 ダビガトラン抗体が、血液凝固指標を用いた抗トロンビン効果を中和できるとのコンセプトを、実臨床においてダビガトラン急速中和の必要な症例を対象とした本試験が施行され、N Engl J Med誌に発表された。Lancet誌のPOC試験同様、本試験でも、抗ダビガトラン抗体Fabの投与の後、数分以内に希釈トロンビン時間、エカーリン凝固時間、a-PTTなどを指標とした抗トロンビン効果は中和された。われわれは実臨床の場において、ダビガトランの抗トロンビン作用を急速中和する薬剤を手にしたと理解して、大きな誤りはない。 解析対象とされた症例は、(1)重篤な出血により急速止血が必要な症例、(2)8時間以内の手術介入が必要な症例、の2種類であり、両者共にリスクの高い症例である。ダビガトランの抗トロンビン効果は急速中和されても、これらの症例の臨床的予後は目に見えるほどは改善されていない。実際、抗ダビガトランヒト化抗体Fab(idarucizumab)投与後90日以内の死亡は、90例の対象中18例(重篤な出血に対して投与を受けた51例中9例、および緊急手術を必要とした39例中9例)であった。 重篤な出血が致死的出血であれば、idarucizumabの急速中和効果により救命できた可能性は期待できるが、臨床的エビデンスは不明確である。 本試験は、経口抗トロンビン薬ダビガトラン服用中の重篤な出血、緊急手術により抗トロンビン効果の中和が必要なリスクの高い症例を対象とした。いずれの症例群においてもidarucizumabは速やかに抗トロンビン効果を中和した。われわれは、重篤な出血を経験した症例の1例でも中和剤により救命できれば、その1例にとって中和剤は意味があったと考える。しかし、その1例があったか否かは本試験では明確ではない。idarucizumabはダビガトランの抗トロンビン作用を急速中和した。その結果が救命に意味があったのかに関しては不明である。ヒト化モノクローン抗体Fabを受けるという大きな決断を踏み出すには、臨床経験は不十分である。難しい症例を対象とした試験ではあったが、血液学的中和剤が完成した事実には意味が大きい。

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ダビガトランに対するidarucizumab、患者での中和効果は?/NEJM

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)投与中の患者に対して、idarucizumabは数分以内で抗凝固作用を完全に中和することが、米国・ペンシルベニア病院のCharles V. Pollack, Jr氏らによる検討の結果、報告された。idarucizumabは、経口非ビタミンK拮抗薬に対する特異的な中和薬がない中、ダビガトラン特異的に抗凝固作用を中和するために開発されたヒト化モノクローナル抗体フラグメントである。これまでボランティア被験者(腎機能正常の健常若年者、65~80歳高齢者など)を対象とした試験で、迅速かつ完全な中和作用をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告より。重大出血患者群と要緊急手術患者群で安全性と有効性を検討 今回の報告は、現在も進行中の多施設共同前向きコホート試験RE-VERSE AD(38ヵ国400施設で300例登録を計画)の、早期登録患者90例(2014年6月~2015年2月に35ヵ国184施設で登録)において得られた中間解析の所見である。 RE-VERSE AD試験は、重大出血を呈した患者(A群)または緊急手術を要した患者(B群)におけるidarucizumab 5g静注の安全性を確認すること、およびダビガトラン抗凝固作用の中和能を確認することを目的とした。 主要エンドポイントは、idarucizumab投与後4時間以内のダビガトラン抗凝固作用の最大中和率(%)で、中央ラボにて確認(希釈トロンビン時間とエカリン凝固時間)が行われた。また、止血までの時間を副次エンドポイントのキーとした。88~98%の患者で、数分以内の抗凝固作用の中和を確認 登録患者90例の内訳は、A群51例、B群39例であった。患者の90%超が心房細動後の脳卒中予防のためダビガトラン治療を受けていた。年齢中央値は76.5歳、クレアチニンクリアランス中央値は58mL/分であった。 結果、ベースラインで希釈トロンビン時間の上昇がみられた68例、およびエカリン凝固時間の上昇が認められた81例において、最大中和率が100%であった(95%信頼区間[CI]:100~100)。 idarucizumab投与により、希釈トロンビン時間は、上昇がみられたA群98%の患者、およびB群93%の患者において正常化が認められた。またエカリン凝固時間についてはA群89%、B群88%の患者において正常化が認められた。それぞれの効果は、血液サンプルの結果から、初回投与後、数分以内に発現したことが明らかとなった。 また、24時間時点で、79%の患者において非結合ダビガトラン濃度は20ng/mL以下にとどまっていた。 止血に関する評価については、A群35例(中央ラボではない研究者による)の、止血までの時間中央値は11.4時間であった。手術を受けたB群36例のうち33例で、正常な周術期止血が報告され、軽度止血異常は2例、中等度止血異常は1例の報告であった。 また、抗凝固薬が再投与されていなかった患者1例において、idarucizumab投与後72時間以内の血栓性イベントが報告された。(武藤まき:医療ライター)関連記事 dabigatranの中和薬、リアルワールドな試験で良好な成績

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いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【1】(解説:後藤 信哉 氏)-380

 長らく使用されてきたワルファリンには、経験的に中和法が確立されている。ワルファリンの抗凝固薬としての作用機序は、経験に基づいて理解されてきた。ワルファリンは、基本的には第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、ダビガトラン存在下では第II因子機能、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン存在下では第Xa活性の速やかな回復は期待できない。第Xa因子は血漿中でプロトロンビントロンビンに転換するのみならず、活性化血小板膜上のprothrombinase complexにより、固相でもトロンビンを産生するため、生体におけるXa活性の中和は論理的にも困難である。 ダビガトランは、主に液相で起こるトロンビンによるフィブリンの産生を阻害する薬剤であるため、血漿からダビガトランを取り除けば効果の中和を期待できる。そこで、スポンサーはダビガトランに対する選択的モノクロナール抗体を作成した。抗体を作成し、抗体をヒト化して免疫原性を減らす方法は、すでに血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIaに対する選択的阻害薬治療として技術は確立している。ダビガトラン中和剤の投与を一生1回と割り切れば、アナフィラキシーの心配も大きくない。出血がコントロールできない場合、緊急手術時には欠点の多い抗体でも少数例でも出血死亡例は減らせると期待されて、idarucizumabというヒト化抗ダビガトラン抗体Fab(IgGのFcを切り離し、Fabを1ドメインのみ製剤化したという意味)が開発された。 本論文は、idarucizumab開発の第I相試験である。NEJM誌、 Lancet誌などの臨床的一流雑誌に第I相試験が掲載されることは少ない。上記の解説のごとく、ヒト化monovalent Fabとはいえ、アナフィラキシーショックの可能性が否定できないので一生に2度は使えない(すなわち、本試験に参加したヒトが将来ダビガトランを必要とし、なお、その中和が必要になってもこの薬を使うと、アナフィラキシーのリスクが高くなるという問題)。本論文は第I相試験であるので、健常人に対して「重篤な出血イベントリスクを増加させる」ダビガトランを「臨床的にメリットがない」と想定される状態で使用されている。さらに、まったく新しいヒト化monovalent Fabを、「臨床的に必要がないのに」ダビガトランを服用している症例に重ねてランダムに介入している。完全に実験的研究であり、今後繰り返される可能性はない。 本実験的研究によりidarucizumabは、ダビガトランにより惹起されたdiluted thrombin time(dTT)、ecarin clotting time(ECT)、activated partial thromboplastin time(aPTT)の延長を正常化することが示された。確かに、本試験は既存の薬剤開発システムの中ではproof of concept (POC)として必須と考えられる。しかし、被験者は出血のリスク、抗体投与のリスクなどを負うがメリットがあるとは考えにくい。ハードエンドポイントを含まないサロゲートエンドポイントを指標としたtrickyな試験なので、ヒトを用いず実証実験により精緻化されたsimulationなどにより、このような試験をスキップできる方法を考えるべきである。 日本ではとても、このような第I相試験はできないだろうな(というよりも、このような試験をする国にはなりたくないな)と思いました。

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よくある話【2】見えなかったリスクに対する過小評価:カテ前出血リスクの定量的評価(解説:香坂 俊 氏)-377

われわれはどうも昔から「見えないところ」の評価であっても、自分たちの経験による見立てはそれほど大きく的をはずさない、と考えるようである。今回は、冠動脈インターベンション(PCI)の合併症の予測に関する話題であるが、この手技には穿刺に伴う出血や造影剤使用による腎症といった問題点がつきまとう。そうした合併症を誰が起こしやすく、誰が起こさないのかということは、医師の評価の「正しさ」に関わる事象であり、これまでその領域があまり問題視されたことはなかった。John Spertus氏は、これまでそうしたリスク評価について、循環器分野で先駆的な役割を果たしてきた。そのSpertus氏がこれまでの集大成として提示したのが今回BMJ誌に掲載された論文である。扱われている内容はPCIに伴う出血の予測である。米国にはbivalirudinという、わが国のアルガトロバン(商品名:スロンノン)に近いトロンビン阻害薬が存在し、このbivalirudinはPCIに際し標準治療よりも出血率を下げることができる、とされている。ただ高額な薬剤であり、症例を選んで使わなくてはならない。Spertus氏がまず提示したのは、そのbivalirudinの使用率である。その使用率を客観的に計算された出血リスクに応じて振り分けたのが下図となる。わかりにくいかもしれないが、1本1本の曲線が各ドクターのbivalirudin使用率を示していて、人によって使い方がさまざまであることがおわかりいただけるかと思う。ただ、注目すべきは、ドクターによってはリスクが低い患者にbivalirudinを多く使用し、リスクが高い患者に使用していないといった傾向がみられるというところである(赤矢印方向)。これは本来のbivalirudinの用途からすると合目的ではない。そこで、Spertus氏は各施設にその客観的に計算された出血リスクを提示し、PCIの同意書に強制的にその数値を印刷する、という介入を行った。すると、その結果として、bivalirudinの使用は以下のように変化した。右上がりの曲線(赤矢印方向)が多くみられるようになり、bivalirudinの使用がその目的に沿ったものとなっていることがうかがえる。リスクの提示でここまで医師の判断や行動が変化するということも驚きであるが、この研究の成果はこれだけにとどまらない。上の図は、客観的に計算された出血リスクが同意書に提示されるようになる前後での実際の出血率を表したものである。グラフ右側に注目していただきたいが、高リスク患者における出血率が劇的に改善している。幾多もの薬剤、そしてデバイスの進歩よりも明確な「予後改善効果」がここには示されており、この分野注)での画期的な成果として特筆すべきことと(自分には)思われる。おそらく、これからの医療はデータを積極的に活用する時代を迎え、こうしたリスク計算なしには成立しえない方向に向かっていくであろう。好むと好まざるとにかかわらず、それが患者さんの安全の担保につながるからである(定量的なリスク評価なしに手技や手術に踏み込むことは、海図を持たずに航海に出るに等しい)。そのランドマークとなる発見がここにあった、といつの日かいわれる時がくるのではないか。注:Spertus氏はこうした研究分野を好んでOutcome Researchと呼び、米国では今後臨床研究はTranslational Research、Clinical Trial、そして Outcome Researchの3つに分かれていくと多くの研究者が考えている。

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ダビガトランの中和薬としてidarucizumabが有望/Lancet

 ヒト化モノクローナル抗体フラグメントidarucizumabは、用量依存的にダビガトラン(商品名:プラザキサ)の抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースすることが明らかになった。薬剤関連の有害事象についても、重篤なものは認められなかった。ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社のStephan Glund氏らが健康な男性47例について行った第I相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、示された。ダビガトランは心房細動後の脳卒中予防に、また静脈血栓塞栓症の治療および予防に関して、ワルファリンに代わる効果があることが示されている。Lancet誌オンライン版2015年6月15日号で発表した。idarucizumabを1g~7.5g投与、安全性、忍容性、有効性を検討 試験は、2013年2月23日~11月29日にかけてベルギーのSGS Life Sciences Clinical Research Servicesで、18~45歳の健康なボランティア男性47例を対象に行われた。被験者のBMIは18.5~29.9だった。 同グループは被験者全員に対し、ダビガトランエテキシラート220mg、1日2回を3日間、4日目には1回量を投与した。また被験者を無作為に分け、ダビガトラン最終投与2時間後に、idarucizumabを1g、2g、4gをいずれも5分静注投与、または5gと2.5gを1時間間隔で5分静注投与、またはプラセボ投与を、それぞれの群に行った。 主要評価項目は、薬剤関連有害事象だった。副次評価項目は、希釈トロンビン時間(dTT)、エカリン凝固時間(ECT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンビン時間のリバースなどで、2~12時間の効果曲線下面積(AUEC2-12)で評価した。用量依存的に、抗凝固作用は迅速かつ完全にリバース 結果、薬剤関連有害事象は7例報告されたが、注射部位紅斑や鼻出血など、全員が軽症だった。 idarucizumabは、投与量に応じて、ダビガトランによる抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースした。ダビガトラン投与4日目の同3日目に対するAUEC2-12の平均比率は、dTTはプラセボ群が1.01に対し、idarucizumab 1g群が0.26(74%抑制)、2g群 0.06(94%抑制)、4g群 0.02(98%抑制)、5g+2.5g群が0.01(99%抑制)だった。 重篤または重度の有害事象は報告されなかった。治療中断となった有害事象はなく、治療群間で有害事象発生の臨床的に重大な差はみられなかった。 なお本剤に関する臨床試験はさらに継続中である。

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TRIGGER試験:急性上部消化管出血に対する限定的輸血対自由な輸血;実用的・非盲検かつ集団をランダム化した実現可能性試験(解説:上村 直実 氏)-368

 臨床現場で上部消化管出血(UGIB)患者に対する診療においては、迅速に出血源を発見して止血することと同時に、輸血を行うか否かを判断することが重要となる。「非盲検集団無作為化試験」が、この輸血施行の判断基準に関するエビデンスを得るための研究デザインとして、適切であるか否かを検証するために施行されたTRIGGER試験の結果が公表された。 TRIGGER試験では、大量出血症例を除くUGIB全症例を登録し、病院単位でヘモグロビン(Hb)濃度が8g/dL未満で輸血を行う制限群と、10g/dL未満でも輸血できる非制限群の2群に割り付けて検討した結果、「集団無作為化デザインは、両群共に被験者の迅速なエントリーが可能で、高いプロトコル順守率および貧血の解消に結び付き、有意ではないが制限群で赤血球輸血の減少に寄与する可能性が示唆された」。すなわち「臨床診療ガイドラインでUGIB患者に対する輸血の基準を明確にするためには、『非盲検集団無作為化試験』が適切な研究デザインであり、その実施が必須である」と結論されている。 UGIB患者に対する輸血に関して明確な基準はなく、大規模研究によるエビデンスの構築が期待されるところである。しかし、緊急症例に対するエントリー率や診療現場での無作為割り付けの困難性、さらに症例バイアスが大きいなどの理由から、実現可能で精度の高い介入試験デザインが探索されてきた。TRIGGER試験の結果から、施設を無作為に分ける方法が信頼性の高いエビデンス構築に有用であると示されたことから、今後、同デザインを用いた大規模なRCTが実践されるであろう。しかし、わが国におけるUGIBに対する診療の中心は、内視鏡検査での出血源の確認に引き続く内視鏡的止血の成否により輸血の必要性を決定することが多く、日本で本デザインを使用した多施設共同試験を実施する際には、各施設間において異なる内視鏡診療精度が課題となろう。

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Vol. 3 No. 3 経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI) 手技と治療成績

髙木 健督 氏新東京病院心臓内科治療手技Edwards SAPIEN(Edwards Lifesciences Inc, Irvine, CA)は、経大腿動脈、経心尖部アプローチが可能である(本誌p.27図1を参照)。(1) 経大腿動脈アプローチ(transfemoral:TF)(図1)現在、Edwards SAPIENの留置は16、18FrのE-Sheathを用いて行っている。E-Sheath挿入は、外科的cutdown、またはpunctureで行う2つの方法があり、どちらの場合も術前の大動脈造影、造影CTを用いて石灰化の程度、浅大腿動脈と深大腿動脈の分岐位置を確認することが大切である。TAVIに習熟している施設では、止血デバイス(パークローズProGlideTM)を2~3本使用し、経皮的に止血するケースも増えてきている。しかしながら、血管の狭小化、高度石灰化を認める場合、またTAVIを始めたばかりの施設ではcutdownのほうが安全に行うことができる。E-Sheathは未拡張時でも5.3~5.9mmあり、通常ExtrastiffTMのような固いワイヤーを用いて、大動脈壁を傷つけないよう慎重に進める。ガイドワイヤーの大動脈弁通過は、Judkins Right、Amplatz Left-1、Amplatz Left-2カテーテルを上行大動脈の角度に応じて使い分ける。また、ストレートな形状(TERUMO Radifocus、COOK Fixed Core wire)を用いると通過させやすい。ガイドワイヤーを慎重に心尖部に進めたあと、カテーテルも注意深く左室内に進める。その後、通常のコイルワイヤーを用いてPigtailカテーテルに入れ替える。さらに、Pigtailの形を用いながら、心尖部にStiffワイヤーを進める。StiffワイヤーはAmplatz Extra Stiff Jカーブを用いることが多い。左室の奥行きを十分に観察するため、RAO viewで可能な限りガイドワイヤーの先端を心尖部まで進めるが、経食道エコーを用いるとより正確に心尖部へ進めることが可能である。Edwards SAPIEN23mmには20/40mm、26mmには23/40mmのバルーンが付随しており、通常はこれを使用する。バルーン内の造影剤は15%程度に希釈すると粘度が下がり、バルーン自体の拡張、収縮をスムーズにする。バルーンを大動脈弁まで進め、一時的ペースメーカーにて180~200ppmのrapid pacingを行い、血圧を50mmHg以下にし、バルーンをinflation、そしてdeflationする。Rapid pacingは、血圧が50mmHg以下になるように心拍を調整する。一時pacingが1:2になるときは、160〜180ppmの低めからスタートし徐々に回数を上げるとよい。Pigtailカテーテルからの造影は、バルーンinflationの際に、冠動脈閉塞の予測、valveサイズの決定に有用である(図2a)。大動脈内にデリバリーシステムを進め、E-Sheathから出たところで、バルーンを引き込み、ステントバルブをバルーン上に移動させる。デバイスのalignment wheelを回転させバルーンのマーカー内にステントバルブの位置を調整する(図2b)。大動脈弓でデバイスのハンドルを回し、デバイスを大動脈に添わせるように進めていく(LAO view)。デバイスを左室内に進めたあと、システムの外筒をステントバルブから引き離し、Pigtailからの造影剤で位置を確認し、rapid pacing下で留置する(図2c, d)。留置後、経食道エコー、大動脈造影でparavalvular leakがないことを確認し、問題なければE-Sheathを抜去、止血を行う。図1 経大腿動脈アプローチ画像を拡大する(1)画像を拡大する(2)画像を拡大する(3)画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する図2 経大腿動脈アプローチの画像a 画像を拡大するb 画像を拡大するc 画像を拡大するd 画像を拡大する(2) 経心尖部アプローチ(transapical:TA)(図3)左胸部に5~7cmの皮膚切開をおき、第5、6肋間にて開胸を行う。ドレーピング後に清潔なカバーをした経胸壁エコーを用いてアクセスする肋間を決定する。心膜越しに心尖部をふれ、心尖部であることを経食道エコーで確認する。心尖部の心膜を切開し、心膜を皮膚に吊り上げる。穿刺部位を決定したら、その周囲にマットレス縫合またはタバコ縫合をかける。縫合の中央より穿刺し、透視下にガイドワイヤーを先行させる。その後、Judkins Rightを用いて下行大動脈まで進め、Stiffワイヤーに変更する。さらに、24Frデリバリーシースに変更し、20mmバルーンで拡張したあとにスタントバルブを留置する(図4a, b)。図3 経心尖部アプローチ画像を拡大する(1)画像を拡大する(2)画像を拡大する(3)画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する図4 経心尖部アプローチの画像a 画像を拡大するb 画像を拡大する治療成績症候性重症大動脈弁狭窄症(symptomatic severe AS:s AS)に対して、効果的な薬物療法がないため、保存的治療を選択した患者の予後が悪く、手術可能である患者には、外科手術(sAVR)が標準治療となっている1-3)。しかしながら、30%以上のs ASは、さまざまな理由で、sAVRは見送られているのが現状である4,5)。TAVIは、ハイリスクs ASに対して、sAVRの代替治療として2002年にDr. Alain CribierによってFirst In Man(FIM)が施行され6)、現在はヨーロッパを中心に10万例以上の治療が施行されている。TAVIは、balloon expandableタイプのEdwards SAPIEN、self expandableのCoreValve system(Medtronic, Minneapolis, MN)といった2つのシステムが、欧州を中心に用いられている。(1) Edwards' Registries現在までにEdwards SAPIENを用いたregistryでは、さまざまな報告がなされているが、有害事象が施設ごとに異なり統一された基準を用いていなかった。そうした状況を踏まえ、2011年には統一評価基準を定めたValve Academic Research Consortium (VARC)guidelines7)が発表され、その後はVARCを用いた治療成績が発表されるようになった。2012年に報告されたFrance 2 registryでは、3,195例の初期成績と1年成績が報告された(平均82.7歳、logistic EuroSCORE 21.9±14.3%、STS score 14.4±12.0%)。Edwards SAPIENが66.9%で用いられ、CoreValveは33.1%であった。アプローチはTF 74.6%、TS 5.8%、TA 17.8%であり、手技成功は96.9%で得られた。また、30日全死因死亡率9.7%、1年死亡率24.0%、30日心血管死亡率7.0%、1年心血管死亡率13.6%であり、手術ハイリスクであるs ASに対してTAVIは妥当な治療法であることが示された8)。また、長期予後に関しては、Webbら9)が、84人のTAVI施行後5年成績を発表しており、5年間で3.4%の中等度valve dysfunctionを認めたものの重篤なvalve dysfunctionを引き起こした症例は認めず、SAPIEN valveの長期耐久性が優れていることを証明した。またそのなかで、生存率は1年83%、2年74%、3年53%、4年42%、5年35%であり、COPD、中等度以上のmoderate paravalvular aortic regurgitation(PR)が全死因死亡に与える影響が大きいことを示した。(2) 無作為化比較試験PARTNER試験(Placement of AoRtic Tra-NscathetER Valves)はs ASにおけるハイリスク手術、手術不適応症例において、TAVIと標準治療(バルーン拡張術+薬物療法)、外科手術を比較した初めての多施設無作為試験である。Cohort Aは、手術ハイリスクのs AS患者をTAVIとsAVRに割りつけ、cohort Bにおいては手術適応がないと判断されたs AS患者をTAVIと標準治療(バルーン拡張術)に割りつけた。手術ハイリスクとは、(1) STSスコアが10%以上、(2)予想30日死亡率が15%以上、(3)予測30日死亡率が高く、また50%以上の死亡率の併存疾患がある状態、と考えられた。除外基準は、2尖弁、非石灰化大動脈弁、クレアチニン3.0mg/dLまたは透析の重症腎不全、血行再建が必要な冠動脈疾患、左室機能低下(EF 20%以下)、大動脈弁径18mm以下または25mm以上、重症僧帽弁逆流症(>3+)、大動脈弁逆流症(>3+)、そして6か月以内に起きた一過性脳虚血発作または脳梗塞であった。2つのコホートの主要エンドポイントは研究期間中の全死亡であり、全死亡、再入院を合わせた複合イベントも検討された。PARTNER trial -cohort A-PARTNER trial cohort Aでは、手術ハイリスク(STS平均スコア11.8%)と判断されたs AS患者(25施設、699例)をTAVIとsAVRに割りつけ、術後1年時(中央値1.4年)の全死因死亡、心血管死亡、NYHA分類のクラス、脳卒中、血管合併症、出血を比較した。TA 104人に対しsAVRから103人、TF 244人に対しsAVRから248人が割りつけられた。30日全死因死亡率はTAVI群全体で3.4%、sAVR群で6.5%(p=0.07)であった。またTF群3.3%に対しsAVR群は6.2%(p=0.13)、TA群3.8%に対しsAVR群は7.0%(p=0.32)で有意差は認めなかった。主要エンドポイントに設定された1年時死亡率は、TAVI群24.2%とsAVR群26.8%(p=0.44)であり、TAVIの非劣性が確認された(非劣性のp=0.001)。TF、TAに分けて分析しても、sAVRと比較し非劣性が確認された。脳卒中または一過性脳虚血発作の発生率はTAVI群で高かった(30日TAVI 5.5% vs. sAVR 2.4% p=0.04、1年時8.3% vs. 4.3% p=0.04)。しかしながら、重症の脳卒中(修正Rankinスケールが2以上)では、有意差はみられなかった(30日TAVI 3.8% vs. sAVR 2.1% p=0.20、1年5.1% vs. 2.4% p=0.07)。全死因死亡または重症脳卒中を合わせた複合イベントの発生率に差はなかった(30日TAVI 6.9% vs. sAVR 8.2% p=0.52、1年26.5% vs. 28.0% p=0.68)。主要血管合併症は、TAVI群に有意に多かったが(11.0% vs. 3.2% p<0.001)、大出血と新規発症した心房細動はsAVR群で多かった(出血9.3% vs. 19.5% p<0.001、心房細動8.6% vs. 16.0% p=0.006)。TAVI群では、sAVR群より多くの患者が30日時点で症状の改善(NYHA分類でクラスII以下)を経験していたが、1年経つと有意差がなくなった。TAVI群のICU入院期間、全入院期間はsAVR群より有意に短かった(3日 vs. 5日 p<0.001、8日間 vs. 12日間 p<0.001)。以上のように、PARTNER trial -cohort A-より、1年全死因死亡率においてTAVIはsAVRに劣らないことが証明された10)。PARTNER trial -cohort B-PARTNER trial cohort Bでは、手術不適応と判断されたs AS患者(21施設、358例)を、バルーン大動脈弁形成術を行う標準治療群(control群)と、TAVI群に無作為に割りつけ比較検討を行った。1年全死因死亡率はTAVI群30.7%、control群50.7%であり(p<0.001)、全死因死亡または再入院の複合割合は、TAVI群42.5%、control群71.6%であった(p<0.001)。1年生存は、NYHA分類でⅢ/Ⅳ度を示した症例はTAVI群のほうが有意に少なかった(25.2% vs. 58.0% p<0.001)。しかし、TAVI群はcontrol群と比較して30日での脳卒中(5.0% vs. 1.1% p=0.06)と血管合併症(16.2% vs. 1.1% p<0.001)を多く発症した。血管、神経合併症が多いものの、全死因死亡率、全死因死亡または再入院の複合割合は有意に低下し、心不全症状は有意に改善した10)。その後、2年成績も報告され、2年全死因死亡(TAVI群43.3% vs. control群68.0% p<0.001)、心臓関連死(31.0% vs. 68.4% p<0.001)はTAVI群で著明に少なく、TAVIで得られたadvantageは2年後も継続していることが示された11)。上記2つの試験により、現時点では手術不適応、手術がハイリスクであるs AS患者に対するTAVIはsAVRの代替療法になることが示されたが、中等度リスク患者においては、未だエビデンスが不十分である。そのため、中等度手術リスクのs AS患者に対する、TAVIの有効性、安全性を証明するには、TAVIとsAVRを比較したPARTNER2 trialの結果が待たれるところである。TAVIに関連する特記事項血管合併症(vascular complication)血管合併症はTFアプローチのTAVIの大きな問題であり、大口径カテーテルを用いること、治療対象がハイリスク症例であることから高率に発生する。小血管径、重篤な動脈硬化、石灰化、蛇行した血管はTAVIにおける血管合併症の主な原因である。最新の報告であるFrance 2 registryでは、デバイスは18Fr Edwards SAPIEN XTを含んではいるものの、全体で4.7%、TF群で5.5%と主要血管合併症の発生頻度は減少している8)。主要血管合併症、または主要出血と生存の関係は、何人かの著者によって証明されており、この合併症を予防するために、十分なスクリーニングが最も重要である。脳卒中(stroke)TAVIにおける有症状の脳梗塞は、致命的合併症である(1.7~8.3%)10-17)。脳梗塞発症の機序ははっきりしていないが、大口径のカテーテルが大動脈弓を通過するとき、高度狭窄した大動脈弁を通過させるとき、大動脈弁拡張時、rapid pacing中の血行動態に伴うもの、デバイス留置など、手技中のさまざまな因子によって引き起こされている可能性が示唆されている。現在のTAVI症例は、高齢であり心房細動、そして動脈硬化病変の割合が高く、脳梗塞イベントを増加させている。Diffusion-weighted magnetic resonance imaging(DW-MRI)を用いた2つの研究において、TFアプローチTAVI後に、新規に発症した脳梗塞が70%以上の患者に発生していたことが報告された18,19)。また、Rodés-CabauらはDW-MRIによってTAで71%、TFでも66%と同じように、脳梗塞を発症していることを報告した20)。しかしながら、ほとんどの症例が症状を伴わないため、臨床的なインパクトを決定するにはさらなる研究が必要である。脳梗塞予防デバイスが開発中であり、TAVI後の無症候性、症候性脳梗塞を減少させると期待されていたが、満足できる結果は報告されていない。また、術後の抗血小板療法については、抗血小板薬2剤併用療法を3か月以上行うのが主流だが、はっきりとした薬物療法の効果については報告されておらず、議論の余地がある。調律異常(rhythm disturbance)文献により新規ペースメーカー植え込み率は異なっているものの(CoreValve 9.3~42.5% vs. Edwards SAPIEN 3.4~22%)、CoreValveは、左室流出路深くに留置し、長期間つづく強いradial forcesを生じることから、Edwards SAPIENよりも新規ペースメーカー留置を必要とする頻度が高いと報告されている。持続する新しい左脚ブロックの新規発現は、TAVI後の最も明らかな心電図上の所見であると報告されており、CoreValve留置後1か月の55%の症例で、そしてSAPIEN留置後1か月の20%の症例において認められ21)、その出現は全死因死亡の独立した因子であることが報告されている22)。一方で、TAVI後の完全房室ブロックの予測因子は、右脚ブロック、低い位置での弁の留置、植え込まれた弁と比較して小さな大動脈弁径、手技中の完全房室ブロック、そしてCoreValveと報告されており23,24)、一般的に心電図モニター管理は最低72時間、TAVI後の患者すべてに行われるが、この合併症の高リスク患者は退院するまでのモニター管理が必要である。弁周囲逆流(paravalvular regurgitation)Paravalvular regurgitation(PR)は、TAVI後に一般的にみられる。多くの症例では、mild PRを認め、7~24%の患者でmoderate以上のPRが観察される12,25-28)。SAPIEN Valveにおいて、moderate以上のPRの割合に経年的変化は認められない12,28)。一方、CoreValveは強いradial forcesによりPRが改善したと報告があるが25)、はっきりとしたコンセンサスは得られていない。TAVI後のmoderate PRは(PARTNER試験ではmild PRであっても)長期成績に影響を与えることがわかっており29-31)、PRを減らすことが非常に重要な問題となっている。PRを減らすためには、より大きなvalve sizeを選択する必要があるが32,33)、致命的な合併症である大動脈弁破裂を引き起こす可能性が増える。そのため、慎重なCT、エコーでの大動脈弁径、石灰化分布の評価が必要である。冠動脈閉塞(coronary obstruction)左冠動脈主幹部閉塞は稀であるが、BAV、TAVIの最中に起こりうる重篤な合併症である。急性冠動脈閉塞に対して迅速なPCI、またはバイパス手術で救命されたという報告がされている34-36)。大動脈弁輪と冠動脈主幹部の距離は、分厚い石灰化弁と同様に重要な予測因子となり、3Dエコー、CTでの正確な評価がこの致命的な合併症を避けるために必要である37)。ラーニングカーブTAVIにはラーニングカーブがあり、正確な大動脈弁径、腸骨大腿動脈径の測定、リスク評価、適切な症例選択、手技の習熟により、治療成績は劇的に改善することが報告されている。Webbらは168例の成績を報告し、初期の30日死亡率がTF 11.3%、TA 25%から、後半でTF 3.6%、TA 11.1%と改善したことを示し、TAVIにおけるラーニングカーブの重要性を明らかにした38)。おわりに本邦でも、Edwards SAPIEN XTを用いたPREVAIL JAPAN試験の良好な成績が発表され、2013年から保険償還され、本格的なTAVIの普及が期待されている。しかしながら、現在の適応となる患者群のTAVI治療後の1年全死因死亡率は20%以上であり、TAVIの適応については、議論の余地がある。特にADLの落ちている高齢者、frailtyの高い患者は、ブリッジ治療としてBAVを行い、心機能だけでなくADLが改善することを確認したうえで、TAVI治療を選択するといったstrategyも考慮する必要があるのではないだろうか。文献1)Bonow RO et al. 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217.

事例48 APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、D006 2 PT(プロトロンビン時間)とD006 7 APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を実施したところ、APTT がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの: 社保)にて査定となった。医師から、「ワーファリン®錠の添付文書には、『本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である』とあったために、PTとAPTTの組み合わせで血液凝固能管理を行っていたが、なぜAPTTが査定となったのか」と問い合わせがあった。添付文書で示されている検査は、PTとTT(トロンボテスト)であり、APTTは含まれていない。また、ワーファリン®錠投与中はコントロールされた血液凝固異常状態である。したがって、投与量をモニタリングするために認められるPT以外は、定期的検査として認めないとされたものであろう。しかし、術前検査や副作用チェックなど、医学的に必要としたコメントがある場合には査定となっていないことも申し添える。

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天馬PEGASUSは空を駆けるか?心筋梗塞後長期の抗血小板療法の意味と価値:PEGASUS-TIMI 54試験(解説:後藤 信哉 氏)-340

 1980年代に循環器内科に進んだわれわれ世代の循環器内科医にとって、「心筋梗塞は死に至る病」であった。実際、再灌流療法も、抗血栓療法も標準化していない当時の心筋梗塞は院内死亡率も10%を超えていた。日本以上に冠動脈疾患の有病率の高い欧米では、「心筋梗塞」が日本の「がん」並みに恐ろしい病気と理解されたことは容易に想像できる。1970~80年代には心筋梗塞の原因が「冠動脈血栓」であるとの知識も普及していなかった。筆者ら、血栓症の専門家がAHA、ACCなどの欧米のmajorな学会では1990年代になってもマイノリティーであった。 循環器内科医一般に血栓症と抗血栓療法の知識が乏しかったため、心筋梗塞、ステント血栓症などの冠動脈イベントが「血栓症」とわかった後は、メーカーの強烈な宣伝に抗うすべもなく、抗血栓薬は循環器内科領域の標準治療として急速に普及した。多くの循環器内科医は、アスピリン、クロピドグレルの薬効メカニズムは理解していないが、使用の経験は蓄積されている状態にある。実際、アスピリンは抗血小板薬と言い切れない部分もある各種細胞のシクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害薬であるが、薬効メカニズムの詳細は筆者にもよくわからない。 クロピドグレルも臨床試験の結果に基づいて1997年に米国で承認された。「心筋梗塞が怖い」欧米人は、「冠動脈血栓予防」のためにクロピドグレルも大量使用した。クロピドグレルの薬効標的P2Y12がクローニングされたのは2001年である。われわれは、抗血小板薬は薬効メカニズムもわからないままに使用していたのだ。これが1990年代の医療の実態であった。P2Y12クローニング後、この標的に対する選択的阻害薬が開発された(日本のプラスグレルはクロピドグレルの類似薬として開発された)。その成功例がチカグレロルである。P2Y12 ADP受容体はADPに特異的な受容体であるが、構造上ADPはATPに近い。チカグレロルの構造もATPに近い。低分子の非可逆的受容体阻害薬である。 薬効もわからないクロピドグレルの急性冠症候群の試験が成功したので、薬効を理解したチカグレロルはクロピドグレルに対する優越性を示すPLATO試験に挑戦した。試験の内部には不均一性があり、日本と東アジアにて施行されたPHILO試験もPLATO試験と同様の傾向ではないので、PLATO試験の全体としての成功は「運の良さ」の寄与が大きい。それでもPLATO試験では死亡率低減効果を示したので、欧州では急性冠症候群に対する標準治療になろうとしている。 さて、チカグレロルが天馬の如く世界を駆けるか否かを規定するのは、急性冠症候群以外の慢性期の疾病適応を取得できるか否かにかかっている。クロピドグレルは、「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応をCAPRIE試験により取得した。国際共同試験に「脳血管疾患」を入れると、画像診断の普及していない諸国にて脳梗塞と脳出血の弁別ができず、脳出血の増加により試験が失敗するリスクがある。 PEGASUS試験を実施したTIMI groupは、クロピドグレルの類似薬プラスグレル、トロンビン受容体vorapaxarの開発試験のデータベースを保有しているので、「脳血管疾患」の危険性を十分に理解していた。クロピドグレルのように「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応が取れなくても、「心筋梗塞後慢性期の血栓イベント抑制」の適応を取得できれば、冠動脈疾患は急性期から慢性期までチカグレロルを天馬として羽ばたかせることができる。その意味でPEGASUS試験はきわめて重要であり、医師、企業関係者、投資家などの注目を集めた。 Gene Braunwald氏率いるTIMI groupは、「臨床の科学」にも妥協のない科学者グループである。PLATO試験ではチカグレロル群において出血が多い傾向を認めたことから、発症後1~3年の心筋梗塞では出血リスクが血栓リスク低減効果を超えることを危惧した。急性期に用いた90mg1日2回に加えて、60mg1日2回のチカグレロルのアームを作った。低用量のアームがあったことで、安全性重視のわが国の参加もPLATO試験よりは容易になった。実際、PLATO試験には本邦は参加しなかったが、PEGASUS試験には参加した。 「臨床の科学」の質を上げるためには、ランダム化した症例の追跡の徹底化を図る必要がある。実際、追加リスクがあるとはいっても、心筋梗塞後1~3年後の症例の心血管イベントリスクは、アスピリン単剤でも年率3%程度にすぎない(9.04%/3年)。60mg、90mgのチカグレロル服用により、年率2.6%程度(7.77%/3年:60mg、7.85%/3年:90mg)に低下したとはいっても、これだけの軽微な差異を統計学的に検出するためには、数例の追跡不能すら許されないのだ。心血管領域では、標準治療の進歩により「現在の標準治療」下における心血管イベントリスクが低い。1980年代に「怖い病気」であった心筋梗塞の「怖さ」は21世紀になって激減した。わずかな差異を科学的に占めるためには大量の症例を登録し、徹底的に追跡する必要がある。有効性を示したことでチカグレロルは天馬になるかもしれないが、関係者が尽くした努力は計りしれない。 抗血小板薬なので、出血リスクが増えることは予測の範囲である。「科学的に質の高い」試験であるため、出血イベントも精緻に計測した。われわれは、2次予防におけるアスピリン服用時の重篤な出血イベント発症率を、年率0.2~0.5%程度と理解して、患者からインフォームド・コンセントを取得していた。PEGASUS試験はわれわれの想定が現在も大きく違っていないことを裏付けた。アスピリン群の重篤な出血イベント発症率は1.06%/3年(年間0.3%程度)であった。60mg1日2回、90mg1日2回のチカグレロルを追加すると、重篤な出血イベント発症率は2.30%/3年、2.60%/3年と2倍以上に増加した。プラセボとの比較において、アスピリン服用者の頭蓋内出血が約1.6倍に増加していた過去の事実に比較すると、頭蓋内出血、致死性出血が増えていないことに関係者は胸をなでおろしたであろう。 アスピリン使用時には「この薬を飲むと1,000人のうち、2~5人くらいが重篤な出血を起こすけど、将来の心筋梗塞を25%減らせる。どうしようか?」との患者さんとのICのプロセスが、「アスピリンにチカグレロルを追加すると、1,000人のうち、5人に重篤な出血が起こるけど心筋梗塞や心血管死亡、脳卒中は15%くらい減る。どうしようか?」となる。重篤な出血に頭蓋内出血、致死的出血が含まれないことは朗報であるが、このような説明によって、どの程度の患者さんが長期のチカグレロルの服用を希望するかを予測することは難しい。ATPに似たチカグレロルでは徐脈、呼吸困難感などの自覚的、他覚的副作用の増加も実臨床では問題になる。認可承認後に爆発的に売り上げを伸ばしたクロピドグレルは、CAPRIE試験ではほんのわずかにアスピリンに勝る優越性を示したのみであった。筆者ら血小板研究の専門家は、クロピドグレルの爆発的売り上げを予測できなかった。抗血小板薬に比較すれば、はるかに重篤な出血イベントリスクの多い新規経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が予防介入において広く使用されているのも、ランダム化比較試験を主導した研究者としての筆者の予測を超えた。チカグレロルがクロピドグレル並みの天馬となれば、わずかの差異のランダム化比較試験の結果が世界の医療界に影響を与える「てこ」のメカニズムを理解したいものである。

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「エドキサバンは日本の薬なのに…」2~エドキサバン減量と出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-337

 EBM(Evidence Based Medicine)を基本原理とする現在の医療において、臨床データベースの保有には圧倒的な意味がある。エドキサバンは日本企業が開発した薬剤である。日本企業には抗トロンビン薬があるがトロンビンの時代から、選択的凝固因子阻害薬の開発力は外資企業に先行していた。残念ながら、分子としての抗Xa薬を介入したときの個人の反応は予測不可能な程度にしか、現在の医学は成熟していない。結果として、エドキサバン介入時の臨床データベースを持っているものが強い。 第一三共の開発したエドキサバンであるが、非弁膜症性心房細動におけるワルファリンとの比較試験「ENGAGE AF-TIMI 48」は、ハーバード大学のTIMI groupをスポンサーとして施行された。膨大なデータベースからは、多くの科学的事実が公表される。本論文も重要なサブ解析の1つである。日本企業が開発した薬剤を用いた試験の重要なサブ解析であるが、残念ながら日本人は著者として参加していない。 ENGAGE AF-TIMI 48試験のプロトコルは単純ではなかった。ワルファリンと2用量のエドキサバンの有効性、安全性の検証を目指した部分のみでも、十分に複雑であった。さらに、本試験では来院時にクレアチニン・クリアランスが30~50mL/分の人、体重が60kg以下の人、または、P糖タンパク質の相互作用のある併用薬を服用したときには、エドキサバン投与量を半減した。試験の最初のみでなく、中途でも減量する基準を設けることにより、抗Xa効果の標準化を目指した。試験の規模が大きいので、プロトコルに規定された30、60mgの標準投与量から減量した5,356例と、減量しなかった1万5,749例の比較が可能であった。抗Xa活性のトラフ値を6,780例にて把握できたことも、科学的試験として、多くの情報をわれわれに与えることができる試験であったといえる。 ランダム化比較試験では、基本的に1つの臨床的仮説の検証のみが可能である。ENGAGE AF-TIMI 48試験では、二重盲検二重ダミー試験として、実臨床に近い0.5mg刻みのワルファリンのコントロールを行った。PT-INR 2.0~3.0を仮の「標準治療」とすることも徹底していた。TTRもきわめて高い。質の高いワルファリン治療下では、血栓イベントも出血イベントも起こりにくい。仮説検証試験としてはエドキサバンの優越性は示せなかった。 50年使用してきたワルファリンに「PT-INR 2.0~3.0」という枠をはめても、ワルファリンが優れた薬剤であることを示したのがENGAGE AF-TIMI 48試験であった。それでも、臨床的特徴に基づいて減量することにより、エドキサバン群の出血イベントリスクを示すことができたので、減量好きな日本の臨床家にはありがたい研究結果であったといえる。 筆者は本試験のDSMB(Data and Safety Monitoring Board)であったので、筆者には資格がないが、本試験に症例を登録した研究者であれば、ぜひ、本研究のような日本の臨床家に役立つサブ解析を主導したいと思った。主導するのがTIMI groupであることを受け入れるとしても、日本人研究者の1人として共著者になり、論文作成段階から寄与したかった魅力的研究である。

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急性冠症候群、経橈骨動脈アクセスの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する侵襲的処置では、経橈骨動脈アクセスが、経大腿動脈アクセスに比べ臨床的有害事象の抑制効果が優れることが、オランダ・エラスムス医療センターのMarco Valgimigli氏らが行ったMATRIX Access試験で確認された。ACS患者に対する抗血栓療法を併用した早期の侵襲的処置の重要な目標は、出血イベントを抑制しつつ効果を維持することである。侵襲的処置で頻度の高い出血部位は心臓カテーテル検査時の大腿動脈穿刺部であり、経橈骨動脈アクセスは技術的な困難を伴うが止血の予測がしやすいとされる。2つのアクセス法の有害事象を比較した試験では、相反する結果が提示されているという。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告。2つのアクセス法の有害事象を無作為化試験で比較 MATRIX Access試験は、経橈骨動脈的インターベンションにおける穿刺部位の出血や血管合併症の抑制効果を検討する多施設共同無作為化試験(Medicines Company社などの助成による)。対象は、冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応とされるACS患者(ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞)であった。 被験者は、経橈骨動脈または経大腿動脈的にアクセスする群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日時の重度の冠動脈有害事象(死亡、心筋梗塞、脳卒中)と、最終的な臨床的有害事象とした。後者の定義は、重度の冠動脈有害事象または冠動脈バイパス移植術(CABG)とは関連のない大出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]の出血性合併症重症度分類の3または5型)とした。 2011年10月11日~2014年11月7日までに8,404例が登録され、経橈骨動脈群に4,197例、経大腿動脈群には4,207例が割り付けられた。平均年齢は経橈骨動脈群が65.6歳、経大腿動脈群は65.9歳で、75歳以上はそれぞれ25.4%、26.2%含まれ、男性が74.5%、72.4%を占めた。メタ解析で大出血、冠動脈有害事象、死亡が改善 30日時の重度の冠動脈有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が8.8%、経大腿動脈群は10.3%(率比[RR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.74~0.99、p=0.0307)であり、有意な差は認めなかった[α水準が2.5%(p<0.025)の場合に有意差ありと定義]。 最終的な臨床的有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が9.8%、経大腿動脈群は11.7%(RR:0.83、95%CI:0.73~0.96、p=0.0092)と、有意差がみられた。この差には、非CABG関連のBARC 3/5型大出血(1.6 vs. 2.3%、RR:0.67、95%CI:0.49~0.92、p=0.0128)および全死因死亡(1.6 vs. 2.2%、RR:0.72、95%CI:0.53~0.99、p=0.0450)の影響が大きかった。 また、既報の試験(RIVAL試験)に本試験のデータを加えてメタ解析を行ったところ、経橈骨動脈アクセスにより大出血(RR:058、95%CI:0.46~0.72、p<0.0001)、重度の冠動脈有害事象(RR:0.86、95%CI:0.77~0.95、p=0.0051)、全死因死亡(RR:0.72、95%CI:0.60~0.88、p=0.0011)が減少したが、心筋梗塞や脳卒中の発症には影響はなかった。 さらに、本試験に関連してコホート内症例対照研究を行ったところ、BARC 2/3型の出血は出血以外の原因による死亡と強く関連した。 著者は、「経橈骨動脈アクセスは、ACS患者に対する侵襲的処置の標準とすべきことが示唆された」と結論付けている。

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