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21.

高齢者NSTEMI治療における標準的治療法確立の難しさを示した研究(解説:野間重孝氏)

 本研究は英国心臓財団の助成によって行われ、結果は本年9月にロンドンで行われた欧州心臓病学会で発表された。その内容はInterventional Cardiology誌9月号に速報のかたちで掲載された。NEJM誌に掲載の論文が同じ9月に掲載されていること、また本文中にSENIOR-RITAという名称が付いても「はじめに」の部分で簡単に触れられているのみで論文の題名からも外されていることから、戸惑われた方も多かったのではないかと推察する。通常、正式発表の論文は学会発表からいくらか遅れるかたちで出版されるのが普通なのであるが、このあたり、研究グループが本研究成果を大きく報じたいと考えた意図がうかがえる。 急性冠症候群はST上昇型心筋梗塞(STEMI)、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、不安定狭心症に大別される。STEMIの場合は、可能な限り早急なprimary PCIが施行される必要があり、これは超高齢者であっても、大きな禁忌事項がない限り同様の治療方針が取られる。これに対してNSTEMIの治療方針は、年齢に関係なく二通りが考えられ、場合により選択されてきた。早期に造影検査およびインターベンションを行う侵襲的治療戦略と、保存的な治療を優先し急性期の侵襲的治療を回避する初期保存的治療戦略(非侵襲的治療戦略)である。この場合、リスク評価をいかに適切に行うかが重要となるが、近年ではリスク評価うんぬんを論じる以前に、大きな禁忌事項がない限り早期に侵襲的治療を行うべきであるという考え方が一般的となっている。実際、これをお読みの皆さんの関係施設においても、早期の侵襲的対応が可能な施設においては、特別な問題がない限り侵襲的治療が選択されているのではないだろうか。そして、この「特別な問題」として最も頻繁に問題になるのが年齢、それも75歳を超える超高齢の問題なのである。 NSTEMIをどう治療することが適切かについては、多くの研究がなされてきた。しかし、そもそもそういったエビデンスを構築するための研究から高齢者は除外されるのが常だった。このため、高齢者のNSTEMIの治療戦略についてはエビデンスがなく、事実上現場の医師の判断に委ねられてきたのが実態であった。もちろんいくつかの臨床研究はなされたが、どれもサンプル数や患者選択の問題から広く受け入れられる結果を出すには到らなかった。 この問題について初めてまとまった結果を発表したのが、2020年に発表されたSENIOR-NSTEMI試験であった。この研究では超高齢者であったとしても、侵襲的治療戦略のほうが保存的治療戦略よりも優れていると結論された。この論文は2020年8月のLancet誌に掲載され、このジャーナル四天王でも取り上げられたので(「NSTEMI、80歳以上でも侵襲的治療が優位/Lancet」)、ご記憶の向きも多いと思う。ただ、この試験はランダマイズ研究ではなく、日常診療の登録データからプロペンシティ・スコアを用いて解析したものであった。このため、この分野に関心のある医師たちは大規模ランダマイズ研究がなされることを待ち望んでいた。そこに発表されたのが本研究(SENIOR-RITA試験)だったのである。 本研究では患者を完全にランダマイズするとともに、STEMI、不安定狭心症、心原性ショック、余命1年未満の患者、侵襲的冠動脈造影を受けることができないと考えられたもの以外はすべて対象とした。つまり、いわゆる虚弱(フレイル)や認知障害があっても侵襲的検査・治療を受けられないと判断されたもの以外は対象とされた。そして1次複合エンドポイントを心血管死と非致死性心筋梗塞に絞った。これにより、単にランダマイズを行った以上に高齢者NSTEMI治療成績を明確にしようとした。 本試験では1,518例の患者が、侵襲的戦略群753例、非侵襲的治療戦略群765例にランダマイズされたかたちで割り振られた。平均年齢は82歳で、男女比もほぼ等しかった。中央値4.1年の追跡の結果、両群間で1次エンドポイントには差がないことが示された。つまり、NSTEMIの治療は症例の選択を誤ることがなければ、侵襲的、非侵襲的治療戦略で治療成績に差がないことが示された。 本研究はきわめて周到に計画・実行された大規模ランダマイズ試験であり、長年の問題について1つの結論を出したと考えられなくもない。しかし、いくつかの問題点も指摘されなければならないと思う。 上記「症例の選択を誤ることがなければ」と書いたが、この部分が大変に重要で、実際本試験ではスクリーニング対象になった患者の5人に1人だけが登録された。研究の目的から考えてSTEMI、心原性ショックは除外されて当然であるが、この数字からはその他でも多くの患者が高齢者の抱えるさまざまな問題により試験登録が適当ではないと判断されたことが推察される。この中には、高齢による強度の虚弱や認知障害、加えて本人の意向、家族の反対などさまざまな原因が考えられる。実は高齢者のNSTEMI治療において、この患者選択の問題こそが本質的な問題であり、本研究がその点に言及していないのは残念であるとともに、本研究の1つの限界となっていると思う。 また、その後に冠動脈造影や血行再建術を受けた患者数は非侵襲的戦略群で有意に多かった。ただし、この問題は保存的治療を選択した場合、時期を見て侵襲的検査・治療を行うか至適内科治療で経過を見るかという問題で、別途論じられるべき問題だろう。 治療合併症が少なかったことは評価されるべきではあるものの、現在のprimary PCIの技術レベルを考えれば、症例の選択を誤らなければ大きな合併症は起こらないことは当然予想されたと考えるが、合併症の問題は研究の信頼性を高める要因としては評価されなければならないだろう。ただし、ここでも患者選択の問題があることには注意してほしいと思う。 評者の結論を述べるならば、結局今回の研究はNSTEMIをどのように治療すべきかという一般的な問題に、高齢者において個別化医療の重要性を強調したこと、また現在の治療技術レベルにおいては、症例のリスク評価が慎重かつ十分に行われれば、高齢であるというだけの理由で特別な治療方針を考える必要はないことを示したものと考える。一方で、高齢者医療においては極端な虚弱や認知症、合併症のリスク、患者・家族の意向などを十分に考慮する医学的、倫理的視点の重要性が再確認されたといえる。本論文の限界を述べたように思われるかもしれないが、そうではない。さまざまに議論されてきた高齢者NSTEMIの治療を考える場合、保存的治療戦略でも十分な結果が得られることを示したことは十分に価値があると同時に、これだけ周到な準備をしてもこの分野の研究に明解な結論を出すことが困難であることを示したことがむしろ大きな成果であったと思う。

22.

厳しい寒さは心筋梗塞リスクを高める

 厳しい寒さは短期的に心筋梗塞(MI)リスクを高めることが、新たな研究で明らかになった。低い気温や寒波がMI発症に与える短期的な影響について検討した、米ハーバード大学のWenli Ni氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表されるとともに、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に9月1日掲載された。Ni氏は、「寒冷ストレスがかかっている間は特に、急性MIが生じやすい可能性がある」と述べている。 研究グループによると、過去の研究では、外気温が心血管に及ぼす負荷は、高温よりも低温の方が大きいことが明らかにされている。今回、Ni氏らは、より寒冷な地域において低温と寒波が心血管に及ぼす影響を検討するために、スウェーデンのSWEDEHEART登録者12万380人の転帰を追跡した。対象者は、2005年から2019年の寒冷期(10〜3月)にMIにより入院していた。機械学習を用いて1km2単位での日平均気温を推定し、同じ自治体に住む人が経験した日々の気温のパーセンタイルに基づいて、それぞれの自治体ごとの寒さに対する適応度を評価した。寒波は、各自治体の気温分布の10パーセンタイル以下の日平均気温が2日以上続く期間として定義された。低温と寒波の影響は、ラグ(低温や寒波の発生からその影響が現れるまでの時間差)0〜1日(即時)とラグ2〜6日(遅延)に分けて検討した。 その結果、低温になってから2〜6日後に外気温パーセンタイルが1単位低下すると、MI、非ST上昇型MI(NSTEMI)、およびST上昇型MI(STEMI)のリスクがそれぞれ有意に増加し、そのオッズ比は同順で、1.099(95%信頼区間1.057〜1.142)、1.110(同1.060〜1.164)、1.076(同1.004〜1.153)であると推定された。また、到来から2〜6日後の寒波もMI、NSTEMI、STEMIの有意なリスク増加と関連し、オッズ比は同順で1.077(同1.037〜1.120)、1.069(同1.020〜1.119)、1.095(同1.023〜1.172)であった。一方、ラグ0〜1日の低温と寒波は、MIのリスク低下と関連していた。これらの結果は、初発のMIであったかや、MIの既往歴の有無を考慮しても変わらなかった。 Ni氏らは、寒くなってすぐの時点ではMIの発生が減少していた理由について、「気温が下がり始めた当初は、人々が用心して屋内で過ごそうとしたためかもしれない。しかし、そのような行動を持続するのは難しく、数日のうちに外出して極寒の気温に身をさらし、それがMIリスクの上昇を招いたのではないか」との見方を示す。 本論文の付随論評を執筆した、米イェール大学公衆衛生大学院疫学分野のKai Chen氏と米ヒューストン・メソジスト病院心臓病学のKhurram Nasir氏は、気候変動により気温は極端に高くなったり低くなったりし続けていることを踏まえ、「医療システムが心血管の健康に対するこれらの課題を管理し、緩和するのに十分な備えを整えるには、両極端の気温に対処する必要がある」と述べている。

23.

週末の寝だめは心臓病リスクを低下させるか?

 ウィークデーの睡眠不足を週末に補う「キャッチアップ睡眠」は、心臓病のリスクを最大20%低下させる可能性のあることが、UKバイオバンク参加者9万人以上を対象にした研究で明らかになった。阜外病院(中国)の循環器専門家であるYanjun Song氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。 睡眠不足に悩まされている人は、休みの日の朝、普段より遅くまで寝て睡眠負債の影響を取り除こうとするものだ。しかし、このようなキャッチアップ睡眠が心臓の健康に役立つのかどうかについては明らかになっていない。 Song氏らは今回、UKバイオバンク参加者9万903人のデータを用いて、週末のキャッチアップ睡眠と心臓病との関連を検討した。参加者の睡眠に関するデータは活動量計で測定されていた。対象者は、キャッチアップ睡眠の時間の長さに応じて、最も少ないQ1(−16.05〜−0.26時間)から最も多いQ4(1.28〜16.06時間)までの4群に分類された(Q1群:2万2,475人、Q2群:2万2,901人、Q3群:2万2,692人、Q4群:2万2,695人)。夜間の睡眠時間が7時間未満と報告した場合を「睡眠負債あり」と見なしたところ、21.8%(1万9,816人)がこれに該当した。さらに、入院記録と死亡レジストリを用いて、虚血性心疾患、心不全、心房細動などさまざまな心臓病の診断歴についても調べた。追跡期間の中央値は約14年だった。 解析の結果、Q4群ではQ1群に比べて心臓病の発症リスクが19%低いことが明らかになった。睡眠負債ありに分類された人を対象にしたサブグループ解析でも、Q4群ではQ1群に比べて心臓病の発症リスクが20%低いことが示された。 こうした結果を受けてSong氏は、「十分なキャッチアップ睡眠は心臓病のリスク低下につながる。また、この関連性は、日常的に睡眠負債を抱えている人の間ではさらに顕著になる」と結論付けている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

24.

騒音曝露は心臓の健康に影響を及ぼし心筋梗塞後のMACEリスクを高める

 ドイツとフランスの住民を対象にした2件の研究から、都会の騒音は心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性のあることが明らかになった。これらの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。 1件目の研究は、ブレーメン心臓血管研究所(ドイツ)のHatim Kerniss氏らが、急性心筋梗塞(MI)によりブレーメン市の心臓センターに入院した50歳以下の患者430人を対象に実施したもの。研究グループが対象者の居住地の騒音レベルを調べたところ、これらの対象者は、同じ地域に居住する一般住民よりも高いレベルの騒音に曝露していることが判明した。また、糖尿病や喫煙などの従来の心血管疾患(CVD)リスク因子に関する評価指標(LIFE-CVD)のスコアから低リスクと判定されるMI患者では、スコアが高い人に比べて騒音レベルが有意に高いことも示された。 Kerniss氏は、「都会の騒音は、CVDのリスク因子として確定している因子が少ない若年層でのMIリスクを有意に増加させる可能性がある」とESCのニュースリリースの中で結論付けている。研究グループは、従来のリスク評価モデルでは、低リスクと考えられる若年層の心血管リスクを過小評価する可能性があると指摘。騒音曝露をモデルに組み込むことで、MIのリスクが高い若年層をより正確に特定でき、予防策や介入をより効果的に行うことができる可能性があるとの見方を示している。 2件目の研究は、ブルゴーニュ大学およびディジョン病院(フランス)のMarianne Zeller氏らが、フランスのMIに関するデータベース(RICO)を用いて、初発のMI後の患者における環境騒音の影響について検討したもの。対象は、急性MIによる入院後28日以上生存していた患者864人で、1年後の追跡調査の結果が分析された。 入院から1年後の時点で、19%の患者に主要心血管イベント(MACE;心臓突然死、心不全による再入院、MIの再発、緊急血行再建、脳卒中、狭心症/不安定狭心症)が生じていた。対象者の自宅の住所を基に騒音レベルを算出すると、平均騒音レベルは24時間を通して56.0dB、夜間で49.0dBと中程度であり、ヨーロッパの大部分の人口を代表する騒音曝露レベルであった。解析の結果、大気汚染や社会経済的レベルなどの他の因子に関わりなく、夜間の騒音レベルが10dB増加するごとにMACEリスクが25%増加することが明らかになった(ハザード比1.25、95%信頼区間1.09〜1.43)。 Zeller氏は、「これらのデータは、騒音曝露がMIの予後に影響を及ぼす可能性に関する初めての洞察となるものだ」と述べている。また同氏は、「より大規模な前向き研究によりこの結果が裏付けられれば、MIから回復した患者に対する治療の一環として、騒音低減に取り組むべきことが支持されるかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

25.

CABG後のAF予防、カリウム正常上限値の維持は不要/ESC2024

 冠動脈バイパス術(CABG)後の新規発症心房細動(AF)予防としてのカリウム投与について、濃度が正常下限値を下回った場合にのみカリウム投与することが、正常上限値になるまで定期投与することよりも劣らないことが最新の研究で明らかになった。本研究結果はドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBenjamin O'Brien氏らが8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインで発表し、JAMA誌オンライン版2024年8月31日号に同時掲載された。 これまで、心臓手術後の心房細動(AFACS)予防のために血清カリウム濃度を正常値に維持するためのカリウム投与が行われていたが、明確な根拠がない上にリスクや費用を伴うため、疑問視されていた。 本研究は、英国とドイツの心臓外科センター23施設で行われた多施設前向き非盲検ランダム化非劣性試験(TIGHT-K試験)。2020年10月20日~2023年11月16日に、CABG手術を予定し、AF既往歴のない患者を登録した。対象患者は、厳格なカリウム管理群(カリウム補充を行う血清カリウム濃度下限値が4.5mEq/L[正常上限値])と緩やかなカリウム管理群(同:3.6mEq/L[正常下限値])に1対1でランダムに割り当てられた。 主要評価項目は、CABG手術後120時間以内または退院までのいずれか早いタイミングで心電図により確認された新規発症AFACS(30秒以上の持続性AF、心房粗動、頻脈と定義)。また、正常下限値群の非劣性は、新規発症AFACSのリスク差と、それに関連する片側97.5%信頼区間(CI)の上限が10%未満であると定義された。副次評価項目には、心拍リズム関連イベント、臨床転帰、介入に関連するコストが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,690例は、平均年齢65歳、女性256例(15%)、EuroSCORE IIの平均スコア1.5%であった。・主要評価項目である新規発症AFACSは、正常上限値群の26.2%(n=219)および正常下限値群の27.8%(n=231)に発生し、リスク差は1.7%(95%CI:-2.6~5.9)であった。・携帯型心拍リズムモニターなどで検出されたAFACSの1回以上の発生率、AFACS以外の不整脈、入院患者の死亡率、入院期間については、グループ間に差はみられなかった。・正常下限値群でのカリウム投与回数の中央値(IQR)は0回(0~5)であったのに対し、正常上限値群では7回(4~12)で、カリウムの購入や投与にかかる患者1人当たりのコストは、正常下限値群で有意に低かった(平均差:111.89ドル、95%CI:103.60~120.19ドル、p<0.001)。 研究者らは「厳格なコントロールのためにカリウムを定期投与しても、緩やかなコントロールに比べてメリットはなく、コストが高くなることを示すことができた」と結論付けている。

26.

降圧薬の服用タイミング、5試験のメタ解析結果/ESC2024

 8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のRicky Turgeon氏が降圧薬の服用タイミングに関する試験のメタ解析結果を報告し、服用タイミングによって主要な心血管イベント、死亡の発生率や安全性に差はみられなかったことを明らかにした。 本研究では、すべての降圧薬の服用タイミング(夕あるいは朝の服用)を比較するすべてのランダム化並行群間比較試験(RCT)の系統的レビューおよびメタ解析を実施。収集基準は、心血管系アウトカムが1つ以上、追跡期間が500患者年以上、追跡期間中央値が12ヵ月以上で、Cochrane Risk of Bias Tool ver.2を使用して評価を行った。主要評価項目は、主要有害心血管イベント(MACE:全死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全増悪の複合)で、副次評価項目は、MACEのそれぞれの要因、全入院の原因、特定の安全なイベント(骨折、緑内障関連、認知機能の悪化)であった。 主な結果は以下のとおり。・4万6,606例を対象とした5件のRCTが解析対象となった(BedMed試験、BedMed-Frail試験、TIME試験、Hygia試験、MAPEC試験)。ただし、BedMed試験、BedMed-Frail試験、TIME試験は全体的にバイアスリスクが低いと判断された一方で、Hygia試験とMAPEC試験は、ランダム化プロセスに関してバイアスの懸念がいくつかみられた。・MACEの発生率は、5試験すべてにおいて夕方服用と朝方服用による影響を受けなかった(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.43~1.16)。・バイアスリスクによる感度分析の結果、バイアスが低いと判断された3つの試験では夕方服用と朝方服用のMACEのHRは0.94(95%CI:0.86~1.03)で、バイアスの懸念がある2つの試験のHRは0.43(95%CI:0.26~0.72)だった。・夕方服用と朝方服用による全死亡に差はみられなかった(HR:0.77、95%CI:0.51~1.16)。同様に、骨折、緑内障、認知機能に関するイベントなど、そのほかすべての副次評価項目においても、服用タイミングによる影響はみられなかった。 本結果から同氏は「本結果は夕方服用と朝方服用に違いがないという決定的な証拠を示す。また、患者は自分の都合に最適な時間に1日1回の降圧薬を服用できる」と結論付けた。

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大手術の周術期管理、ACE阻害薬やARBは継続していい?/ESC2024

 周術期管理における薬剤の継続・中止戦略は不明なことが多く、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASI:ACE阻害薬またはARB)もその1つである。RASI継続が術中の血圧低下、術後の心血管イベントや急性腎障害につながる可能性もあるが、Stop-or-Not Trialのメンバーの1人である米国・カルフォルニア大学サンフランシスコ校のMatthieu Legrand氏は、心臓以外の大手術を受けた患者において、術前のRASI継続が中止と比較して術後合併症の発生率の高さに関連しないことを示唆した。この報告は8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで報告され、同時にJAMA誌オンライン版2024年8月30日号に掲載された。 研究者らは、心臓以外の大手術前でのRASIの継続あるいは中止が、術後28日時点での合併症の減少につながるかどうかを評価するため、フランスの病院40施設において、2018年1月~2023年4月にRASIによる治療を3ヵ月以上受け、心臓以外の大手術を受ける予定の患者を対象にランダム化比較試験を実施した。 対象患者は、手術当日までRASIの使用を継続する群(n=1,107)と手術48時間前にRASIの使用を中止する群(最終服用は手術3日前、n=1,115)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は術後28日以内の全死亡と主な術後合併症の複合。副次評価項目は術中の血圧低下、急性腎障害、術後臓器不全、術後28日間の入院期間とICU滞在期間。 主な結果は以下のとおり。・対象患者2,222例は平均年齢±SDが67±10歳、男性が65%だった。また、患者全体の 98%が高血圧症、9%が慢性腎臓病、8%が糖尿病、4%が心不全の治療を受けており、ベースライン時点での降圧薬治療の内訳はACE阻害薬が46%、ARBが54%であった。・全死亡および主な術後合併症の発生率は、RASI中止群で22%(1,115例中245例)、RASI継続群で22%(1,107例中247例)であった(リスク比[RR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.87~1.19、p=0.85)。・術中の血圧低下は、RASI中止群の41%に発生し、RASI継続群の54%に発生した(RR:1.31、95%CI:1.19~1.44)。・平均動脈圧が60mmHg未満の持続時間中央値(四分位範囲)は、中止群で6分(4~12)、継続群で9分(5~16)だった(平均差:3.7分、95%CI:1.4~6.0)。・試験結果において、そのほかの差はみられなかった。

28.

心不全・2型糖尿病合併CKDへのフィネレノン~約1万9千例の解析/ESC2024

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMuthiah Vaduganathan氏らの研究グループは、左室駆出率(LVEF)40%以上の心不全(HFpEF/HFmrEF)患者を対象としてフィネレノンの有用性を検討した1試験、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者を対象としてフィネレノンの有用性を検討した2試験の計3試験のメタ解析を実施した。その結果、フィネレノンは全死亡、心不全による入院、複合腎イベントのリスクを低下させ、心・腎・代謝(CKM)症候群へのフィネレノンの有用性が示唆された。本研究結果は、8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)で発表され、Nature Medicine誌オンライン版2024年9月1日号に同時掲載された。  本研究は、フィネレノンに関するHFpEF/HFmrEF患者を対象とした1試験(FINEARTS-HF)、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象とした2試験(FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD)の参加者1万8,991例を対象とした。主要評価項目は心血管死、副次評価項目は全死亡、心不全による入院、複合腎イベント(eGFR 50%以上低下、腎不全、腎死)などとした。 主な結果は以下のとおり。・HFpEF/HFmrEF、2型糖尿病、CKDのうち1つのみ(すなわちHFpEF/HFmrEFのみ)を有する割合は10.4%(1,974例)、2つを有する割合は77.5%(1万4,710例)、3つを有する割合は12.1%(2,307例)であった。・主要評価項目の心血管死はプラセボ群5.0%(471例)、フィネレノン群4.4%(421例)に認められ、両群間に有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.78~1.01、p=0.076)。しかし、事前に規定された感度分析として、原因不明の死亡も含めて解析すると、フィネレノン群で有意なリスク低下がみられた(同:0.88、0.79~0.98、p=0.025)。・全死亡はプラセボ群12.0%(1,136例)、フィネレノン群11.0%(1,042例)に認められ、フィネレノン群で有意なリスク低下がみられた(HR:0.91、95%CI:0.84~0.99、p=0.027)。・心不全による入院についても、フィネレノン群で有意なリスク低下がみられた(HR:0.83、95%CI:0.75~0.92、p<0.001)。・複合腎イベントについても、フィネレノン群で有意なリスク低下がみられた(HR:0.80、95%CI:0.72~0.90、p<0.001)。

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HFpEF/HFmrEFへのβ遮断薬~約1万7千例の解析/ESC2024

 β遮断薬は、左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)、LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)を有する患者にも用いられているが、その安全性や臨床転帰への影響は明らかになっていない。そこで、松本 新吾氏(英国・グラスゴー大学/東邦大学医療センター大森病院)らの研究グループは、HFpEF/HFmrEF患者を対象とした4つの大規模臨床試験の参加者を対象として、β遮断薬の臨床転帰への影響を検討する観察研究を実施した。その結果、β遮断薬はHFpEF/HFmrEF患者の臨床転帰を悪化させないことが示唆された。本研究結果は、8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)で発表され、European journal of heart failure誌オンライン版2024年8月31日号に同時掲載された。 本研究は、HFpEF/HFmrEF患者を対象とした4つの大規模臨床試験(I-Preserve、TOPCAT、PARAGON-HF、DELIVER)の参加者1万6,951例を対象とし、ベースライン時のβ遮断薬の使用の有無で2群(使用群、未使用群)に分けて比較した。主要評価項目は心血管死または心不全による入院の初回発現とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者のLVEF平均値は56.8%であり、HFpEF患者の割合は79.1%(1万3,400例)であった。・対象患者のうち75.6%(1万2,812例)がベースライン時にβ遮断薬を用いていた。β遮断薬の用量(ビソプロロール換算)の中央値は5.0mgであり、1年継続率95.1%、2年継続率93.1%であった。・主要評価項目の発現リスクは、使用群のほうが未使用群と比較して低く(調整ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.74~0.88)、LVEFによる影響は受けなかった(p for interaction=0.88)。・主要評価項目の結果は、ほとんどのサブグループで一貫していた。しかし、心房細動の有無別にみると、心房細動を有するサブグループは有さないサブグループと比較して、β遮断薬の使用が良好な転帰と関連していた(p for interaction=0.02)。 本研究結果について、著者らは「β遮断薬がHFpEF/HFmrEFの転帰を悪化させる可能性は低いことが示唆された。因果関係を確認するためには、大規模な無作為化比較試験が必要である」とまとめた。

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STEMIの最終的な梗塞サイズの縮小、ステロイドパルスは有効か?/ESC2024

 ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の臨床転帰を左右する決定因子として、最終的な梗塞サイズが挙げられる。今回、最終的な梗塞サイズを縮小させる可能性がある方法として、梗塞早期でのグルココルチコイドのパルス療法による効果を検証するため、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJasmine Melissa Madsen氏らが医師主導二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を実施した。その結果、STEMI患者に対し、入院前治療としてグルココルチコイドのパルス療法を行っても、3ヵ月後の最終的な梗塞サイズは縮小しなかったことが示された。この研究は8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のセッションで報告され、JAMA Cardiology誌オンライン版2024年8月30日号オンライン版に同時掲載された。 本研究は、18歳以上で急性胸痛から12時間未満、心電図でSTEMIと診断された患者を対象に、2022年11月14日~2023年10月17日にデンマーク国立病院のRigshospitaletで実施された。最終追跡調査は2024年1月17日までであった。 対象者は入院前の段階で、グルココルチコイド(メチルプレドニゾロン250mg)静注群、またはプラセボ(9%NaCl 4mL)投与群に1対1で無作為に割り付けられ、Rigshospitaletで心臓MRI検査(CMR)のために受け入れられ次第すぐに、割り付け薬剤のボーラス投与が行われた。主要評価項目は3ヵ月後のCMRによる最終的な梗塞サイズ。副次評価項目は急性期および3ヵ月後のCMR結果、心臓バイオマーカーのピーク、3ヵ月後の臨床転帰、有害事象であった。 主な結果は以下のとおり。・割り付け後に適格基準を満たしたSTEMI患者530例の内訳は、年齢中央値65歳([四分位範囲[IQR]:56~75]、男性:418例(78.9%)だった。そのうち主要評価項目の評価を行うことができたのは401例(76%)で、グルココルチコイド群198例、プラセボ群203例だった。・最終的な梗塞サイズの中央値は治療群間で差はなかった(グルココルチコイド群5%[IQR:2~11]vs.プラセボ群6%[IQR:2~13]、p=0.24)。・ただし、プラセボ群と比較して、グルココルチコイド群では梗塞サイズが小さく(オッズ比[OR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.61~1.00)、微小血管閉塞(microvascular obstruction:MO)が少なく(相対リスク比[RR]:0.83、95%CI:0.71~0.99)、左室駆出率が有意に高かった(平均差:4.44%、95%CI:2.01~6.87)。・副次評価項目である心筋サルベージインデックス(MSI)や各種心筋マーカー(トロポニンTやCK-MBのピークなど)も両群間で差はなかった。・有害事象のうち30件(4%)は感染症に関連し、5件(0.7%)は皮膚合併症に関連したものであった。 本結果に対し、研究者らは「対象者の最終的な梗塞サイズが予想よりも小さかったため、この試験は検出力が不十分だった可能性がある」としている。

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重症大動脈弁狭窄症へのTAVI、Myvalは既存THVに非劣性/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)において、バルーン拡張型の経カテーテル心臓弁(THV)であるMyval(Meril Life Sciences・インド)は、術後30日時の複合エンドポイントに関して既存のTHV(Sapienシリーズ[Edwards Lifesciences・米国]、またはEvolutシリーズ[Medtronic・米国])に対し非劣性であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のAndreas Baumbach氏らLANDMARK trial investigatorsが実施した「LANDMARK試験」で示された。バルーン拡張型弁(BEV)であるMyval THVシリーズは直径が1.5mm刻みであることから、通常の3mm刻みの生体弁と比較し、大動脈弁輪との正確なサイズ合わせが容易となる。Myval THVの安全性と有効性は、これまで症候性重症大動脈弁狭窄症患者および二尖弁患者を対象とした単群試験または傾向スコアマッチング試験において示されていた。Lancet誌2024年オンライン版5月22日号掲載の報告。欧州・南米など16ヵ国31施設で無作為化非盲検非劣性試験を実施 LANDMARK試験は、16ヵ国(ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダ、イタリア、スペイン、ニュージーランド、ポルトガル、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スロベニア、クロアチア、エストニア、ブラジル)の31施設で実施された、前向き無作為化非盲検非劣性試験である。 研究グループは、TAVIの適応を有する18歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症患者を、Myval群または既存群に1対1の割合に無作為に割り付けた。患者の適格性は、2021年欧州心臓病学会のガイドラインに従い地域のハートチームが評価した。 有効性および安全性の主要エンドポイントは、VARC-3の定義に基づく術後30日時の全死亡、脳卒中、出血(VARCタイプ3および4)、急性腎障害(ステージ2、3および4)、主要血管合併症、中等度以上の人工弁逆流および新たに恒久的なペースメーカー植込みを必要とする伝導系障害の複合エンドポイントであった。Myval THVの既存THVに対する非劣性は、ITT集団において、非劣性マージン10.44%、両群のイベント発生率26.10%と仮定して検証した。既存の生体弁に対する非劣性を検証 2021年1月6日~2023年12月5日に、症候性重症大動脈弁狭窄症患者768例がMyval THV群(384例)および既存THV群(384例)に割り付けられた。患者背景は、平均年齢がそれぞれ80.0歳(SD 5.7)と80.4歳(5.4)、女性が193例(50%)と176例(46%)で、米国胸部外科医学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコアの中央値は両群とも2.6%(四分位範囲[IQR]:1.7~4.0)であった。 複合エンドポイントのイベントは、Myval THV群で25%(94/381例)、既存THV群で27%(103/381例)に発生した。群間リスク差は-2.3%(95%信頼区間[CI]:NA~3.8)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを超えなかったことから、Myval THVの既存THVに対する非劣性が示された(非劣性のp値<0.0001)。 複合エンドポイントの各要素の発生率に、両群で有意差はみられなかった。

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セマグルチド投与で心不全患者の利尿薬必要量が減少

 心不全患者の体内には水分がたまりやすいため、過剰な水分を排出する作用のあるループ利尿薬がしばしば処方される。こうした中、画期的な肥満症治療薬であるセマグルチド(商品名ウゴービ)によって利尿薬の必要性を減らせる可能性のあることが、肥満を伴う収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)患者を対象とした臨床試験のデータの解析で示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部准教授のKavita Sharma氏らによるこの解析結果は、欧州心臓病学会(ESC)による欧州心不全学会(Heart failure 2024、5月11~14日、ポルトガル・リスボン)で発表され、「European Heart Journal」に5月13日掲載された。 ESCのニュースリリースによると、心不全の代表的なタイプの一つであるHFpEFでは、全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能は正常に保たれているものの、筋肉が硬くなって広がりにくくなる。そのため、全身から心臓に血液が戻りにくくなり、全身が必要とする酸素を豊富に含んだ血液を送り出すことができなくなるという。 Sharma氏らは今回、肥満(BMI 30以上)だが糖尿病のないHFpEF患者529人を対象としたSTEP-HFpEF試験と、肥満で糖尿病のあるHFpEF患者616人を対象としたSTEP-HFpEF-DM試験の二つの臨床試験の参加者(計1,145人)のデータを統合して解析した。試験開始時点で利尿薬を使用していなかったのは220人で、223人がループ利尿薬以外の利尿薬、702人がループ利尿薬を使用していた。参加者は52週間にわたって週1回、セマグルチド2.4mgまたはプラセボを皮下注射する群にランダムに割り付けられていた。 その結果、セマグルチド群ではプラセボ群に比べて、心不全に関連した症状や身体的制限に関する標準的な評価尺度であるカンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の改善度が大きく、特に利尿薬使用患者で大きな改善が認められた(プラセボ群と比べたKCCQ-CSSの平均差は、利尿薬使用患者で+9.3、利尿薬非使用患者で+4.7)。また、試験開始時からの体重変化率はプラセボ群と比べてセマグルチド群で大きく、プラセボ群との差(平均)は、利尿薬非使用患者で-8.8%、ループ利尿薬の使用量が最も多かった患者で-6.9%であることが示された。 さらに、セマグルチドの使用は6分間歩行距離などの他の心不全の指標の改善にも関与している可能性が示されたほか、ループ利尿薬の使用量に大きな影響を及ぼすことが判明した。すなわち、試験期間中にプラセボ群ではループ利尿薬の使用量が平均で2.4%増加していたのに対し、セマグルチド群では平均で17%減少していたという。このほか、同試験では、利尿薬の使用状況によって分類したサブグループの全てにおいて、セマグルチド群ではプラセボ群と比べて重篤な有害事象が少ないことも示されたと、研究グループはESCのニュースリリースの中で述べている。 Sharma氏は全体的な結果として「利尿薬使用の有無にかかわりなく、HFpEF患者において、セマグルチドは症状や身体的制限を改善するとともに、体重をより減少させることが示された」と説明している。 さらにSharma氏は、セマグルチドを投与された患者では、プラセボを投与された患者と比べて、利尿薬の平均使用量が減少し、利尿薬の投与量が増加する可能性が低下し、利尿薬の投与量を減らす必要性が増加する可能性が示されたことに言及。「これらのパラメーターは、セマグルチドの疾患修飾作用と、この試験の対象者と同様の条件を満たす患者集団において、同薬が長期的な臨床アウトカムの改善に関連する可能性を示唆している」と述べている。

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低リスク高血圧患者、「血圧の下げすぎ」による心血管リスクは

 高リスクの高血圧患者において、治療中の収縮期血圧(SBP)が120mmHg未満および拡張期血圧(DBP)が70mmHg未満の場合は心血管リスクが増加することが報告され、欧州心臓病学会/欧州高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2018年版では高血圧患者全般に対してSBPを120mmHg以上に維持することを提案している。しかし、低リスク患者におけるデータは十分ではない。京都大学の森 雄一郎氏らの研究グループは、全国健康保険協会のデータベースを用いたコホート研究を実施。結果をHypertension Research誌オンライン版2024年2月14日号に報告した。 本研究は、3,000万人の生産年齢人口をカバーする全国健康保険協会のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて行われた。10年間の心血管リスクが10%未満で降圧薬を継続的に使用している患者が特定され、治療中のSBPとDBPによってカテゴリー分類された。主要アウトカムは心筋梗塞、脳卒中、心不全、末梢動脈疾患の新規発症の複合であった。 主な結果は以下のとおり。・92万533例の心血管低リスク患者が対象とされた(平均年齢:57.3歳、女性:48.3%、平均追跡期間:2.75年)。・SBPごとの主要アウトカムの調整後ハザード比(95%信頼区間)は、<110mmHg:1.05(0.99~1.12)110~119mmHg:0.97(0.93~1.02)120~129mmHg:1(参照)130~139mmHg:1.05(1.01~1.09)140~149mmHg:1.15(1.11~1.20)150~159mmHg:1.30(1.23~1.37)≧160mmHg:1.76(1.66~1.86)・DBPごとの主要アウトカムの調整後ハザード比は、<60mmHg:1.25(1.14~1.38)60~69mmHg:0.99(0.95~1.04)70~79mmHg:1(参照)80~89mmHg:1.00(0.96~1.03)90~99mmHg:1.13(1.09~1.18)≧100mmHg:1.66(1.58~1.76) 著者らは、「低リスクの高血圧患者において、治療中のDBPが60mmHg未満の場合に心血管イベント増加と関連していたが、治療中のSBPが110mmHg未満の場合には関連していなかった。高リスク患者を対象としたこれまでの研究結果と比較して、低リスク患者では、血圧を下げすぎることが有害となる可能性はそれほど顕著ではないことが明らかとなった」としている。

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世界での血管内イメージングデバイス使用率は、日本に追いつくのか?(解説:山地杏平氏)

 OCTOBER試験は、ILUMIEN IV試験と同時に発表された試験で、それぞれOCT (optical coherence tomography、光干渉断層法)を用いたPCI (percutaneous coronary intervention、経皮的冠動脈形成術)と、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較をしています。近年では、長い病変や、慢性完全閉塞といった複雑病変において、IVUS(intravascular ultrasound、血管内超音波)を用いたPCIのほうが、有意に結果が優れていたという報告が複数なされており、これらのランダム化比較試験の結果を受けて、米国では、血管内イメージングデバイスの使用は5%程度の施行率から、15%程度まで増加していると伺っています。OCTは、IVUSに比較して10倍空間分解能に優れていますが、一方で、造影剤もしくは低分子デキストランなどの使用にて赤血球除去が必要であり、それぞれ一長一短があります。この新たな血管内イメージングデバイスであるOCTを用いたPCIと、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較した試験が、米国と欧州が中心となって行われ、それぞれILUMIEN IV試験、OCTOBER試験としてESC(欧州心臓病学会)2023で報告されています。 OCTOBER試験では、分岐部病変を有する1,200症例が登録されており、OCTを用いたほうが、その後2年の臨床イベントが有意に少なかったという結果でした。その一方で、ILUMIEN IV試験では、OCTを用いたPCIのほうが、ステントの拡張された大きさは大きいものの、臨床イベントでは差はみられませんでした。この臨床イベントでの結果の違いがなぜみられたかと疑問になりますが、OCTOBER試験では左主幹部病変が約19%で、左前下行枝と対角枝の分岐部病変が71%でみられており、登録された病変が大きな冠動脈支配領域であったと予想されます。一方で、ILUMIEN IV試験では、複雑病変を有する症例が登録されていますが、この内訳として、長い病変長を有する病変が多く含まれており、分岐部病変はそれほど多くなかったようです。また、左前下行枝病変は52%であり、そのほかは左回旋枝、右冠動脈病変でした。このような病変背景の違いが、それぞれの試験結果の臨床イベントの差になったのではないでしょうか。ステントのパフォーマンスは、OCTを用いたPCIのほうが良く、さらには、大きな還流域をもつ分岐部病変だと、臨床予後にも影響を与えると理解してよさそうです。 本邦で行われているPCIは、すでに90%近くの症例でOCTやIVUSといった血管内イメージングデバイスを用いて行われています。血管内イメージングデバイスを使えない場合には、より確実に十分なステント留置ができるように、1つサイズの大きいステントや、バルーンを選択することが多いでしょうし、すでに血管内イメージングが広く普及している本邦では、これらのデバイスの有無を比較する試験の遂行は困難と考えられます。OCTOBER試験結果を踏まえて、われわれの日常臨床を変えることはないとは思いますが、少なくとも間違ったことはしていないことが追認されたと理解してよさそうです。

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金の話をする人間は卑しいのか?猫と暮らすQALYを考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第65回

費用対効果分析の意義世界的なインフレの波が日本にも押し寄せています。日本で物価が上がっていることを実感する機会が増えてきました。しかし、世界の先進国と比べると上昇率はまだ緩やかなのかもしれません。私は2023年8月末にオランダ・アムステルダムで開催された欧州心臓病学会(ESC2023)に参加しました。会場のキオスクで昼食を購入して驚きました。おいしくもないハンバーガーが、14.5ユーロでした。1ユーロが158円でしたので、日本円に換算すると2,291円となります。日本では500円ほど、絶対に1,000円を超えることはない質感でした。円安と日本の国力の低下を痛感しました。出費には、それに見合う対価が求められます。費用対効果、いわゆるコスパです。費用対効果分析は医療の現場でも意義を増し、この分野に特化した学問領域が進化しています。治療に掛かる費用は、安ければ良いというわけではありません。安価でも効かない薬や質の悪い医療では、「安物買いの銭失い」となります。一方で、効果が高くとも、法外に高額な治療では手が届かず、公的医療の枠組みを超えてしまいます。費用に見合う効果のバランスが取れていることが鍵となります。あらゆる疾患に共通する治療効果指標「QALY」医療における費用対効果を分析する場合に、効果をどのように測定するかが問題です。風邪を引いた場合には解熱することが求められ、がんの治療ならば再発せずに長生きすることが求められ、変形性膝関節症では痛みなく日常生活が可能となることが効果として求められます。風邪・がん・変形性膝関節症と、疾患ごとにバラバラの効果指標で費用対効果を算出すると、その解釈も疾患ごとにバラバラとなります。あらゆる疾患に共通する効果指標としてQALYが考案され国際的に活用されています。これは、Quality-Adjusted Life Yearの略語で、「クオリー」と呼ばれ日本語では「質調整生存年」と訳されます。瀕死の病の状態から、医療により同じ1年間を長生きすることができたとしても、思うままにできる元気な1年間と、寝たきりで身動きがとれない1年間では、多くの人は前者のほうが望ましいと考えます。生存期間で見ればどちらも1年ですが、前者は後者よりも質の高い状態なので、治療により得られる1年間の価値も大きくなります。このように、生存している期間に加えて質も同時に反映する評価指標がQALYです。QALYの値は、1(完全な健康)から0(死亡)までの値を取ります。完全な健康状態で過ごした1年間は1QALYであり、人がその年の価値の100%を得ることができたと解釈します。完全な健康状態ではない状態で生きた1年間は、価値の量が低下します。たとえば、効用が0.5の状態で1年間生きた場合、0.5QALYが得られます。この人は、その年に得られる最高の価値の量の50%しか得ていないという意味です。言い換えれば、0.5の健康状態で1年間を生きる価値の量は、完全な健康状態で半年間を生きることと同程度の価値の量があることを意味します。QALYは1QALY、2QALYと数えることができ、0.8の状態で10年間生存すれば0.8×10=8QALYとなります。ICER:1QALY延ばすために要するコスト従来からある標準的な治療と効果が高いと期待される新規治療と比べた場合に、QALYを1単位獲得するのにいくらコストが掛かるかを表す指標をICER(Incremental Cost-Effectiveness Ratio)と呼びます。要は、1QALYを延ばすために要するコストで、この値が医療行為を社会に導入する是非の基準となります。たとえば、新たな治療により比較対照と比べて500万円余分に掛かるけれども、2年間の延命が期待できれば、ICERは500万円/2年=250万円/年となります。これは、追加的に1年間生きるのにあと250万円のコストが掛かるということになります。イギリスでは、1QALY当たりに認めるコストの目安として2万~3万ポンドと設定しています。日本円に換算すると、1QALYを得るのに必要なコストは500万円程度までは容認されるという考えです。ICERが500万円/QALYを超える医薬品は、薬価の引き下げが検討されるなど医療政策に活用されています。今、議論に向き合わなければならないこのように医療の経済的な側面について考えることは、「金の話なんて、卑しいからするな」と感じる方もいるかもしれません。「人の命は地球よりも重い」という言葉がありますが、本当にそうでしょうか。医療費はだれかが負担しなければならないことは間違いありません。今を生きる私たちが費用を負担していないのであれば、いつか誰かがツケを支払わねばなりません。おそらく子や孫の世代です。一般の社会でも、支払い能力を考えずにただ金を使いまくる人間は愚か者と考えられています。国がなんとかしてくれると思考を放棄するのは「ドラ息子」の所業です。あえて目を背けたい事柄だからこそ、歯を食いしばって向き合う必要があります。今を生きる世代の人間は、次の世代や次の次の世代を巻き込むことは避けるべきであり、そのための議論を放棄してはならないと考えます。この困難な話題について原稿を書いていると、わが家の「ドラ息子」ともいえる愛猫の「レオ」が遊んでくれとやってきました。ゴロゴロいってスリスリしてきます。猫と暮らすことの費用対効果を考えてみます。猫の飼育コストには、食事、猫用品(トイレ、ベッド、おもちゃなど)、健康ケア(ワクチン、予防医療、獣医さんへの診療費)などが含まれます。遊んだり、トイレの世話をしたり、愛情を注いだりするために時間とエネルギーを費やすことも経費です。効果については、猫は癒しや楽しみを提供してくれます。彼らの愛らしい行動や一緒に過ごす時間は、ストレス軽減や幸福感向上に寄与します。猫と遊ぶことは、同居する人間にとってもアクティビティの機会になります。猫を飼うことは責任感を養う機会でもあります。猫と暮らす1年は2QALY、いや5QALY以上の価値があります。今回も結局は猫自慢の話になってしまいました。

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DOAC内服AF患者の出血リスク、DOACスコアで回避可能か/ESC2023

 心房細動患者における出血リスクの評価には、HAS-BLEDスコアが多く用いられているが、このスコアはワルファリンを用いる患者を対象として開発されたものであり、その性能には限界がある。そこで、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らは直接経口抗凝固薬(DOAC)による出血リスクを予測する「DOACスコア」を開発・検証した。その結果、大出血リスクの判別能はDOACスコアがHAS-BLEDスコアよりも優れていた。本研究結果は、オランダ・アムステルダムで2023年8月25日~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology 2023(ESC2023、欧州心臓病学会)で発表され、Circulation誌オンライン版2023年8月25日号に同時掲載された。 RE-LY試験1)のダビガトラン(150mgを1日2回)投与患者5,684例、GARFIELD-AFレジストリ2)のDOAC投与患者1万2,296例を対象として、DOACスコアを開発した。その後、一般化可能性を検討するため、COMBINE-AF3)データベースのDOAC投与患者2万5,586例、RAMQデータベース4)のリバーロキサバン(20mg/日)投与患者、アピキサバン(5mgを1日2回)投与患者1万1,1945例を対象に、DOACスコアの有用性を検証した。 以下の10項目の合計点(DOACスコア)に基づき、0~3点:非常に低リスク、4~5点:低リスク、6~7点:中リスク、8~9点:高リスク、10点以上:非常に高リスクに患者を分類し、DOACスコアの大出血リスクの判別能を検討した。また、DOACスコアとHAS-BLEDスコアの大出血リスクの判別能を比較した。【DOACスコア】<年齢> 65~69歳:2点 70~74歳:3点 75~79歳:4点 80歳以上:5点<クレアチニンクリアランス/推算糸球体濾過量(eGFR)> 30~60mL/分:1点 30mL/分未満:2点<BMI> 18.5kg/m2未満:1点<脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、塞栓症の既往> あり:1点<糖尿病の既往> あり:1点<高血圧症の既往> あり:1点<抗血小板薬の使用> アスピリン:2点 2剤併用療法(DAPT):3点<NSAIDsの使用> あり:1点<出血イベントの既往> あり:3点<肝疾患※> あり:2点※ AST、ALT、ALPが正常値上限の3倍以上、ALPが正常値上限の2倍以上、肝硬変のいずれかが認められる場合 主な結果は以下のとおり。・RE-LY試験の対象患者5,684例中386例(6.8%)に大出血が認められた(追跡期間中央値:1.74年)。・ブートストラップ法による内部検証後において、DOACスコアは大出血について中等度の判別能を示した(C統計量=0.73)。・DOACスコアが1点増加すると、大出血リスクは48.7%上昇した。・いずれの集団においても、DOACスコアはHAS-BLEDスコアよりも優れた判別能を有していた。 -RE-LY(C統計量:0.73 vs.0.60、p<0.001) -GARFIELD-AF(同:0.71 vs.0.66、p=0.025) -COMBINE-AF(同:0.67 vs.0.63、p<0.001) -RAMQ(同:0.65 vs.0.58、p<0.001) 本研究結果について、著者らは「DOACスコアを用いることで、DOACを使用する心房細動患者の出血リスクの層別化が可能となる。出血リスクを予測することで、心房細動患者の抗凝固療法に関する共同意思決定(SDM)に役立てることができるだろう」とまとめた。

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フォシーガ、心不全の罹患期間によらず、循環器・腎・代謝関連の併存疾患で一貫したベネフィット/AZ

 AstraZeneca(英国)は、チェコのプラハで開催された欧州心臓病学会の心不全2023年次総会において、第III相DELIVER試験の2つの新たな解析結果から、心不全(HF)の罹患期間にかかわらず、循環器・腎・代謝(CVRM)疾患のさまざまな併存状態におけるフォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の一貫したベネフィットが裏付けられたと発表した。 第III相DELIVER試験の事前規定された解析として、左室駆出率(LVEF)が40%超の心不全患者におけるフォシーガの治療効果を、HFの罹患期間(6ヵ月以内、6ヵ月超~12ヵ月以内、1年超~2年以内、2年超~5年以内、および5年超)別に検討した。その結果、フォシーガのベネフィットがHFの罹患期間にかかわらず一貫していることが示された。さらに、高齢かつ1つ以上の併存疾患を有し、HF悪化および死亡率の高い、罹患期間が長期にわたるHF患者において、絶対利益が増加した(治療必要数[NNT]:HF罹患期間5年超の患者と6ヵ月以内の患者との比較で24:32)。 CVRM関連の併存疾患の有病率およびさまざまな併存状態でのフォシーガに対する被験者の反応を評価した第III相DELIVER試験の事後解析結果も発表され、同時にJACC Heart Failure誌に掲載された。本解析結果によると、LVEFが40%超のHF患者では、5例中4例以上の割合で他のCVRM疾患を少なくとも1つ併発しており、5例中1例の割合でHFに加えて3つのCVRM疾患を併発していた。また、フォシーガは忍容性が良好であり、その治療ベネフィットはCVRM疾患の併存状態に関係なく一貫していた。 ハーバード大学医学部およびブリガム&ウィメンズ病院の内科学教授で、第III相DELIVER試験の主任治験責任医師を務めるScott Solomon氏は「現在の診療では、罹患期間が長期にわたる心不全患者は、新しい治療を追加しても反応しない、または忍容性が低い進行性疾患に罹患していると見なされる可能性がある。第III相DELIVER試験のデータは、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンによる治療ベネフィットは心不全の罹患期間にかかわらず一貫しており、患者にとって治療が決して遅すぎることがないことを示している。このデータは、心不全におけるダパグリフロジンの有効性に関するエビデンスの拡大を裏付け、ダパグリフロジンが、新たに診断された患者と同じように長期に罹患している患者に対しても役立つことを実証している」と述べた。 また、AstraZenecaのバイオ医薬品事業部門担当、エグゼクティブバイスプレジデントであるRuud Dobber氏は「CVRM疾患が患者そして社会に及ぼす影響は計り知れない。しかしながら、これらの患者に対する診断、治療は不十分であり、CVRM疾患における相互関係も十分に認識されていない。第III相DELIVER試験の結果から、心不全患者が2型糖尿病や慢性腎臓病といった他のCVRM疾患を併発していることがいかに一般的であるかが浮き彫りとなった。今回発表された新たな解析は、あらゆる心・腎疾患に対してベネフィットをもたらすフォシーガの価値をさらに示しており、心不全や他のCVRM疾患を有する何百万人もの患者の治療を根本的に変えるという私たちのコミットメントを強調している」とした。

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ICIの継続判断にも有用、日本初のOnco-cardiologyガイドライン発刊

 本邦初となる『Onco-cardiologyガイドライン』が第87回日本循環器学会学術集会の開催に合わせて3月10日に発刊された。これまで欧州ではESC(European Society of Cardiology、欧州心臓病学会)などがガイドラインを作成・改訂しており、国内でもガイドライン発刊が切望されていたことから、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が協働しMindsに準拠したものを作成した。今回、学術集会の会長企画シンポジウム6「OncoCardiology:診断と治療Up-to-Date」において、Onco-cardiologyガイドラインのポイントについて発表された。Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題10項目を選定 Onco-cardiologyガイドラインの目的は、(1)がん診療において心機能を正確に評価し、心血管疾患を適切に管理すること、(2)がん治療を中断することなく可能な限り継続することで、本ガイドラインの利用によってがん患者の全生存率とQOL改善が期待される。 Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題を以下のように10項目を選定し、がん患者が薬物治療を行う過程からその後のがん治療関連心血管毒性(静脈血栓塞栓症、肺高血圧症、心不全)発現時の対応方法に関するquestionが盛り込まれている(p.9 総説1-9参照)。<重要臨床課題>1)がん薬物療法中の心機能のモニター2)心血管イベントを発症した患者に対する薬物療法の選択3)トラスツズマブのマネジメント4)血管新生阻害薬のマネジメント5)プロテアソーム阻害薬のマネジメント6)免疫チェックポイント阻害薬のマネジメント7)がん薬物療法における静脈血栓塞栓症のマネジメント8)がん薬物療法における肺高血圧症のマネジメント9)心毒性を有するがん薬物療法のマネジメント10)がん薬物療法における心血管イベントの予防 上記の2)を担当した矢野 真吾氏(東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科 診療部長/教授)は、「がん薬物療法中の心血管イベントを理由にがん薬物療法を中止することは再発率の増加や全生存期間の短縮につながることから、『Background question(BQ)2:がん薬物療法中に心血管イベントを発症した患者に対して、がん薬物療法を継続することは推奨されるか?』を設定した」とコメント。また、「欧米のガイドラインと比較して、Onco-cardiologyガイドラインはエビデンスのあるquestionはシステマティックレビューを行いCQとしたが、エビデンスのないquestionはBQまたはfuture research question(FRQ)にした点に注目してほしい」と述べ、「がん薬物療法が有効でかつ治療継続が可能と判断できる場合は、モニタリングと対症療法を行いながらがん治療の継続を検討する。治療継続が困難な場合は代替療法について検討することをこのBQのステートメントにした」と説明した。Onco-cardiologyガイドラインにICIと心筋炎の関係性 Onco-cardiologyガイドラインで、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と心筋炎の関係性について解説した庄司 正昭氏(国立がん研究センター中央病院総合内科・循環器内科)は、「ICIによる心筋炎は直接的なものと間接的なものがあるが、いずれもスクリーニングにはトロポニンや心電図などが重要」と話し、「トロポニンはICI心筋炎患者の94%で上昇を認めたが、トロポニンが上昇しても臨床的な心筋障害を認めないケースも報告されている。また、心電図異常はICI心筋炎患者の89%で認められた1)」と述べた(FRQ6-1:ICI投与中の心筋障害診断のスクリーニングは有用か?)。 さらに、心筋障害発生時のステロイドの使用(BQ6-2:ICIによる心筋障害発生時、その治療としてステロイド療法は有用か?)について、「使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないが有用な可能性があるため、ステロイドを選択しない手はない」とコメントし、座長ならびに演者を務めた阿部 純一氏(MDアンダーソンがんセンター 教授)からの“ICIで発症リスクの高い虚血性心疾患との鑑別”に関する問い対して、同氏は「虚血性心疾患では胸痛などの症状が見られることから、それらの患者の訴えにしっかり耳を傾けることがスクリーニング検査とともに重要」と回答した。Onco-cardiologyガイドラインにがん患者の高血圧治療 高血圧の視点からOnco-cardiologyについて解説した赤澤 宏氏(東京大学医学部付属病院 循環器内科)によると、がん患者における高血圧の管理や治療に関するエビデンスがほとんどない状況だという。実際に、高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では『第7章:他疾患を合併する高血圧』にも項目立てられておらず、『第13章:二次性高血圧-薬剤誘発性高血圧 4)その他』の1つとして、がん分子標的薬、主として血管新生阻害薬(抗VEGF抗体医薬あるいは複数のキナーゼに対する阻害薬など)により高血圧が誘発される。発症率については薬剤、腫瘍の種類などにより異なるが、これらの薬剤使用時には血圧変化に注意する。通常の降圧薬を用いた治療を行うと、ESCのポジションペーパー同様の記載がなされている。このような現状を踏まえ、「JSH2025年改訂版には腫瘍循環器としてのCQを提案していきたい」と意気込んだ。なお、Onco-cardiologyガイドラインでは、『BQ4:血管新生阻害薬投与中の患者に対し、血圧管理が必要か?』が設定されており、血管新生阻害薬投与中の患者においても、非がん患者と同等の血圧コントロールをすることが望ましく、「がん患者における高血圧治療のエビデンスは乏しく、降圧治療の適応や強度は、がんの治療内容や予後、パフォーマンスステイタス、年齢や併存疾患、臓器障害、脳心血管リスクなどのさまざまな背景を考慮して、個別に対応する必要がある」と強く訴えた。

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がん治療による放射線関連心疾患、弁膜症を来しやすい患者の特徴/日本腫瘍循環器学会

 9月17、18日に開催された第5回日本腫瘍循環器学会にて、塩山 渉氏(滋賀医科大学循環器内科)が「放射線治療による冠動脈疾患、弁膜症」と題し、放射線治療後に生じる特異的な弁膜症とその治療での推奨事項について講演した(本シンポジウムは日本放射線腫瘍学会との共催企画)。 がんの放射線治療による放射線関連心疾患(RIHD:radiation-induced heart disease)の頻度は医学の進歩により減少傾向にあるが、それでもなお、食道がんや肺がん、縦隔腫瘍でのRIHD発症には注意を要する。2013年にNEJM誌に掲載された論文1)によると、照射から20年以上経過してもなお、主要心血管イベントリスクが8.2%(95%信頼区間:0.4~26.6)も残っていたという衝撃的な報告がなされた。それ以来、RIHDは注目されるようになり、その1つに弁膜症が存在する。放射線治療時の心臓への影響予測にAMC これら放射線治療時の心臓の予後予測のために見るべき点として、「上記のような弁膜症を発症する症例にはAorto-mitral curtain(AMC、大動脈と僧帽弁前尖の接合部)に進行性の弁の肥厚や石灰化が進行しやすいという特徴がある」と同氏は述べ、「肥厚をきたしている場合は予後が悪いとの報告2)もあることから、放射線治療時の診断マーカーになるのではないかとも言われている」とコメントした。また、心臓手術による死亡率を予測する方法として用いられるEuroSCORE(European System for Cardiac Operative Risk Evaluation)は本来であればスコアが高ければ予後が悪いと判定されるが、「AMCが肥厚している症例ではスコアにかかわらず予後不良である」と汎用される指標から逸脱してしまう点についても触れた。放射線治療における心毒性に対するESCガイドラインでの推奨 先日行われた欧州心臓病学会(ESC)2022学術集会において、初となる腫瘍循環器ガイドラインが発刊された。そこでは放射線治療における心毒性に関してもいくつか推奨事項が触れられており、がん治療患者の急性冠症候群(ASC)に対するPCI施行の可否についてはその1つである。ガイドラインによれば、「STEMIまたは高リスクのNSTE-ACSを呈し、予後6ヵ月以上のがん患者には侵襲的な治療戦略が推奨される(クラスI、レベルB)」とされ、予後6ヵ月未満の方については薬物療法を検討することが記載されているが、「がん治療による血小板減少を伴う患者に対しては、抗血小板薬の使用を慎重にならざるを得ないため、“アスピリンやP2Y12阻害薬の使用は推奨されない”(クラスIII、レベルC)」と薬物療法介入時の注意点を説明した。心臓に直接影響のある放射線量やドキソルビシン投与有無で分類 次に、がんサバイバーの外科治療による予後はどうか。外科的弁置換術(SAVR)において、放射線治療を受けた重度の大動脈弁狭窄症患者では放射線治療歴のない患者と比較して長期死亡率が有意に高いことが明らかになっているため、2020年改訂版『弁膜症治療のガイドライン』(p.69)でも、TAVIを考慮する因子として“胸部への放射線治療の既往 (縦隔内組織の癒着)”と明記されている。さらに、胸部放射線照射後の予後を調査した論文3)によると、胸部放射線照射群におけるTAVIは、対照群と比較して30日死亡率、安全性、有効性が同等であるものの、1年死亡率や慢性心不全の増悪が高いことが示された。ただし、両治療法の転帰について比較した報告4)を踏まえ、TAVI群では完全房室ブロックの発症やペースメーカーの挿入率が多かったことを念頭に置いておく必要がある。 そのほか、放射線治療の平均心臓線量と関連する心毒性を確認する推奨項目としてESCガイドラインに掲載されている「ベースラインCVリスク評価とSCORE2またはSCORE-OPによる10年間の致死的および非致死的CVDリスクの推定が推奨される(クラスI、レベルB)」「心臓を含む領域への放射線治療前に、CVDの既往のある患者にはベースライン心エコー検査を考慮するべきである(クラスIIa、レベルC)」「重症弁膜症を有するがんサバイバーの手術リスクを協議し、その判定を行うために、多職種チームによるアプローチが推奨される(クラスI、レベルC)」「放射線による症候性重度大動脈弁狭窄症で、手術リスクが中程度の患者にTAVI手術を行う(クラスIIa、レベルB)」を紹介。最後に同氏は「MHD(Mean heart dose)による評価が大切であり、心臓に直接影響のある放射線量やドキソルビシン投与有無などで低リスク~超ハイリスクの4つに分類する点などもESCガイドラインに記載されているので参考にして欲しい」と締めくくった。

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ケレンディア、2型糖尿病を合併するCKD患者に関する最新データ発表/バイエル

 バイエル薬品の2022年8月30日付のプレスリリースによると、欧州心臓病学会(ESC)学術集会2022において、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者(CKD)の死亡率にケレンディア(一般名:フィネレノン)が及ぼす影響を示した最新データが発表された。ケレンディアで2型糖尿病を合併するCKD患者の全死因死亡の発現率減少 2型糖尿病を合併するCKD患者を対象としたフィネレノン第III相臨床試験プログラムは、FIDELIO-DKDとFIGARO-DKDの2つの試験で構成されている。この2つの試験を含むFIDELITYは2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000名以上を対象に、心腎アウトカムを検討した最大規模の第III相臨床試験プログラムである。FIDELITYの全体集団では、全死因死亡および心血管死に対するフィネレノンの効果は統計学的有意差にわずかに至らなかったものの、FIDELITYの事前規定した探索的on-treatment解析から得られた最新データによると、本集団ではフィネレノン群がプラセボ群と比べ、全死因死亡の発現率(ハザード比[HR]:0.82[95%信頼区間[CI]:0.70~0.96]、p=0.014)および心血管死の発現率(HR:0.82[95%CI:0.67~0.99]、p=0.040)を有意に減少させることが示された。追跡期間4年時点での心血管死までの時間に関するイベント確率解析では、ベースライン時点の推算糸球体濾過率(eGFR)および尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に関係なくフィネレノンの有用性は一貫しており、eGFRが60mL/min/1.73m2以上の場合、プラセボと比べフィネレノンのより顕著な効果が示された。 Bayer(ドイツ)医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者であるクリスチャン・ロンメル氏は、「最適な血糖値や血圧に管理しているにもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKD患者さんの多くは腎不全に移行し、心血管死のリスクが著しく高くなっている。本日発表された探索的解析は、このような脆弱な患者さんの死亡リスクを低下させ、より長く健康な状態を維持するフィネレノンの可能性を示している」と述べた。 ケレンディアは2021年7月に米国食品医薬品局(FDA)、2022年2月に欧州委員会(EC)、2022年6月に中国国家薬品監督管理局(NMPA)よりそれぞれ販売承認を取得している。また、日本では2022年3月に厚生労働省より承認取得した。さらに他複数の国で審査当局の承認が得られたほか、現在販売認可の承認申請中である。

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