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第53回 時間外・休日ワクチン接種の医師派遣に支援金/厚労省

<先週の動き>1.時間外・休日ワクチン接種の医師派遣に支援金/厚労省2.コロナ即日受け入れ、外来・入院加算の併算定が可能に3.コロナ労災6,041件、医療・福祉関係が75%を占める4.大規模接種センター開設も、医療者の未接種が先決問題か5.大学病院の経営状況、コロナ再拡大で回復の見込みなし6.受診控え、10ヵ月で1診療所当たり500万円以上の減収1.時間外・休日ワクチン接種の医師派遣に支援金/厚労省厚労省は、7月末までに希望する高齢者全員に接種を完了できるよう、ワクチン接種を行う医師・看護師等を確保するため、時間外・休日の接種について、被接種者1人当たりのワクチン接種対策費負担金2,070円に、診療報酬上の時間外等加算相当分の上乗せを行うと発表した。また、医師が不足すると都道府県が判断した地域に対しては、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の「時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業」により、接種会場に時間外・休日の医師・看護師等を派遣した医療機関に対しても、財政支援が実施される。(参考)ワクチン接種要員派遣、医療機関に財政支援 医師1人1時間ごと最大7,550円、時間外・休日(CBnewsマネジメント)新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)における「時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業」について(事務連絡 令和3年4月30日)2.コロナ即日受け入れ、外来・入院加算の併算定が可能に厚労省は7日、新型コロナ患者の受け入れをスムーズに行う目的で、初診・再診の後、その患者がただちに入院した場合、「医科外来等感染症対策実施加算」と「入院感染症対策実施加算」の同時算定で1日あたり10点が加算できるとの事務連絡を発出した。ただし、算定に当たっては、院内感染予防策を実施した上で、患者あるいは家族等に対して、十分な対応を行っている旨を説明することが求められている。この加算は、2021年4月から9月診療分までであり、2月26日に発出された通知に対するQ&Aの形で発出されている。(参考)初・再診後の入院も10点加算 感染予防策が前提、新型コロナ臨時措置(CBnewsマネジメント)初・再診から直ちに入院した場合、【医科外来等感染症対策実施加算】と【入院感染症対策実施加算】を併算定可―厚労省(Gemmed)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その44)(事務連絡 令和3年5月7日)3.コロナ労災6,041件、医療・福祉関係が75%を占める昨年、新型コロナウイルス感染症が原因の労働災害の発生件数は、全業種で合計6,041件、うち医療保健業(病院など)の発生が2,961件、社会福祉施設での発生が1,600件に上ることが明らかとなった。これは、2020年1月1日~12月31日までに新型コロナウイルス感染による労災(休業4日以上の休業や死亡)について、厚労省が報告したもの。これより、医療機関や福祉施設における感染防御がより重要だと言える。(参考)コロナ労災、昨年1年間で6,041人…医療・福祉関係者らが計75%(読売新聞)資料 令和2年労働災害発生状況の分析等(厚労省)4.大規模接種センター開設も、医療者の未接種が先決問題か菅 義偉首相は、新型コロナワクチン接種について、1日100万回を目標とする方針を7日に明らかにした。24日に東京と大阪で大規模接種センターを開設し、6月末には高齢者の5割、7月末には全員の接種完了を目指す。なお、厚労省の4月時点の調査では、集団接種を行う2割の自治体で医師や看護師の不足が課題とされており、地方自治体の中には、高齢者ワクチンの配送が急増しても、接種を行う医療従事者の確保が十分でない現状。また、医師・看護師で2回目の接種を終えている者はまだ2割前後であり、ワクチン接種を受ける前にワクチン接種に従事することになるなど、医療従事者側にも混乱が見られる。今後、これらの課題を対応しつつ、7月末までの接種完了に向けた取り組みが強化されるだろう。(参考)新型コロナ 接種従事、医師にリスク 8割ワクチン未完了(毎日新聞)新型コロナワクチンの高齢者向け接種の前倒しについて(事務連絡 令和3年4月30日)5.大学病院の経営状況、コロナ再拡大で回復の見込みなし全国医学部長病院長会議は、新型コロナウイルス感染症に関する昨年度の大学病院の経営状況について発表した。アンケート結果によると、第3波のコロナ患者増加の中で、収支状況についても落ち込みが見られ、初診外来患者数は前年度に比べて19%減少、入院延べ患者数、新入院患者数は前年度に比べて9.9%減少、2021年1月末時点の2020年度の医業収益率は8.4%(2,196億円)減収となり、依然として厳しい経営状況にある。大学病院が通常の重症患者の医療も維持しながらコロナへの対応を果たしていくために、医療連携体制の構築や一層の財政支援を要望している。(参考)資料 新型コロナウイルス感染症に関する大学病院の経営状況調査(1月度)(全国医学部長病院長会議)コロナ入院1人につき診療報酬500万円減 京大推計(朝日新聞)6.受診控え、10ヵ月で1診療所当たり500万円以上の減収日本医師会は、新型コロナウイルス感染症による2021年1月までの診療所経営への影響に関する調査結果を公表した。これによると、「入院外(外来と在宅医療)総件数の対前年同月比」で、総件数は2020年5月を底として6月以降改善傾向だったが、11月に再び大きく落ち込み、2021年1月の対前年同月比は、小児科38.5%減、耳鼻咽喉科25.1%減と受診控えが再び見られたことが明らかとなった。また、2020年4月~2021年1月の10か月で、1施設当たり医業収入の増減額の累計は、有床診療所で573万8,000円減、無床診療所で1,091万7,000円減であった。(参考)新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響-2020年11月~2021年1月分-(日本医師会)

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IL-6受容体拮抗薬の新型コロナ重症化阻止には低用量ステロイドの併用が必要?(解説:山口佳寿博氏)-1383

 新型コロナ感染症の重症化は生体の過剰免疫反応に誘発されたサイトカイン・スト-ムに起因する。サイトカイン・スト-ムの形成にはIL-6関連細胞内シグナル伝達系の賦活が重要な役割を担うと考えられており、IL-6受容体拮抗薬の効果を検証するために多数の試験が施行されてきた。しかしながら、期待とは裏腹に新型コロナ感染症の重症化に対するIL-6受容体拮抗薬の効果を肯定する論文と否定する論文が混在し、IL-6受容体拮抗薬の効果が確実だと断定できないのが現状である。本論評では、2021年2月下旬にNEJM に同時に掲載されたIL-6受容体拮抗薬の効果を肯定する論文(REMAP-CAP Investigators. N Engl J Med. 2021 Feb 25. [Epub ahead of print])と否定する論文(Rosas IO,et al. N Engl J Med. 2021 Apr 22;384:1503-1516.)をとり上げ、なぜこのような正反対の結果が得られたのか、その原因について考察する。 新型コロナ重症肺炎に対するIL-6受容体拮抗薬(トシリズマブ、商品名:アクテムラ)の効果を肯定した最初の論文は、イタリアにおける後ろ向き観察研究TESEO Trialであった(Guaraldi G,et al. Lancet Rheumatol. 2020 Aug;2:e474-e484.)。この解析では、静注、皮下注の別なくトシリズマブ投与は、重症肺炎患者における入院2週間以内の累積死亡率を62%低下させることが示された。中等症以上の肺炎患者を対象としたフランスの多施設ランダム化非盲検対照試験CORIMUNO-19 Trialでは入院後4週までの死亡率に有意差を認めなかったものの2週までの死亡率はトシリズマブ群で有意に低かった(Hermine O,et al. JAMA Intern Med. 2021 Jan 1;181:32-40.)。米国の多施設観察研究STOP-COVID Trialは、ICU入院の重症~重篤肺炎患者を対象としたものである(Gupta S,et al. JAMA Intern Med. 2021;181:41-51.)。この解析では、ICU入院2日以内の早期にトシリズマブを投与すると4週後の死亡リスクが29%低下すると報告された。英国での多施設ランダム化非盲検対照試験REMAP-CAP Trialは、ICU入院の重篤肺炎患者を対象として2種類のIL-6受容体拮抗薬(トシリズマブ群: 353例、サリルマブ[商品名:ケブザラ]群: 48例)の効果を解析したものであり、対照群として402例が登録された(REMAP-CAP Investigators. N Engl J Med. 2021 Apr 22;384:1491-1502.)。本試験では、全対象の93%で何らかのステロイドが基礎治療として導入されていた。IL-6受容体拮抗薬はICU入院1日以内に静脈投与されており、その結果として、IL-6受容体拮抗薬は、ICU入院3週目までの心肺機能支持療法の必要日数、病院内死亡率、3ヵ月後の死亡率において有意な改善効果を示した。4月29日現在、正式論文として出版されていないが英国の大規模RECOVERY Trial(多施設ランダム化非盲検対照試験、トシリズマブ群: 2,022例、対照群: 2,094例)でもIL-6受容体拮抗薬によって4週間以内の死亡率が有意に低下すると報告された(RECOVERY Collaborative Group. medRxiv.)。RECOVERY Trialにおいては、基礎治療としてのステロイドが全対象の82%に投与されていた。 トシリズマブの効果を否定した最初の論文は、イタリアから報告された(Salvarani et al. JAMA Intern Med. 2021;181:24-31.)。この試験は、前向き多施設ランダム化非盲検対照試験で中等症の急性呼吸不全/ARDSを呈した肺炎患者を対象としたものであり、ランダム化は症状発現から8日以内に行われ、トシリズマブはランダム化から8時間以内に投与された。本試験では、トシリズマブの効果を認めず、2週、4週以内の死亡率はトシリズマブ群と対照群でほぼ同一であった。米国における多施設ランダム化二重盲検対照試験BACC Bay Tocilizumab Trialでは、中等症~重症の肺炎患者を対象としてインフォ-ムド・コンセント取得3時間以内にトシリズマブが投与された。4週目までに挿管に至った、あるいは、死亡した患者の割合は、トシリズマブ群と対照群で有意差を認めなかった。英国、米国など世界9ヵ国62施設が参加して施行された国際的多施設ランダム化二重盲検対照試験COVACTA Trialでは、重症肺炎患者を対象とし、トシリズマブ群:294例、対照群:144例が登録された(Rosas IO,et al. N Engl J Med.2021 Apr 22;384:1503-1516.)。本試験では、退院までの日数はトシリズマブ群で有意に短かったが、4週目までの死亡率には両群間で有意差を認めなかった。本試験における基礎治療としてのステロイドは全対象の24%のみにしか投与されておらず、REMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialに比べ明らかに少なかった。 REMAP-CAP Trial(IL-6受容体拮抗薬の効果を肯定)とCOVACTA Trial(IL-6受容体拮抗薬の効果を否定)における試験計画には種々の差が存在する。たとえば、対象患者のエントリ-基準(対象患者の重症度など)、IL-6受容体拮抗薬の投与時期、Primary endpointの内容ならびに判定時期、試験の盲検性(二重盲検か非盲検か)などが異なっている(Angriman F,et al. Lancet Respir Med. 2021 Apr 27. [Epub ahead of print])。しかしながら、論評者は、両試験の差の中で最も重要なものは基礎治療としてのステロイドの導入頻度だと考えている(REMAP-CAP Trial: 93%、COVACTA Trial: 24%)。 新型コロナ感染症における重症化の最も重要な機序であるサイトカイン・スト-ムの発生にはIL-6関連シグナル伝達経路の賦活化が重要である。コロナウイルスが生体細胞に感染し細胞のACE2を占有すると、ACE2のリガンドであるアンギオテンシンII(AT)はACE2ではなくType 1アンギオテンシン受容体(AT1R)と結合する経路に流入する(AT-AT1R複合物の形成)。AT-AT1R複合物は、細胞膜に存在するタンパク分解酵素ADAM-17を賦活化し、細胞膜に付着しているTNFα、IL-6受容体α(IL-6Rα)を膜から切断、可溶性TNFα、可溶性IL-6Rα(sIL-6Rα)を産生する。可溶性TNFαは転写因子NF-кBを活性化し、TNFα、IL-1、IL-6、IL-8など多様な炎症性サイトカインを産生する。すなわち、可溶性TNFαは、NF-кBを活性化、活性化されたNF-кBはTNFαを再度産生するという“positive feed back回路”を形成する。本論評では、この回路をTNFαル-プと定義する。一方、sIL-6RαはIL-6と結合し、種々の細胞において転写因子STAT3を活性化する。STAT3はNF-кBとの物理的結合などの機序を介してNF-кBの活性を上昇させる(STAT3とNF-кBのcross talk)。このようなSTAT3を介するNF-кBの活性化はIL-6 amplifier(IL-6アンプ)と呼称される(Hirano T, et al. Immunity. 2020 May 19;52:731-733.)。IL-6アンプは、NF-кBの活性化によって細胞遊走因子(ケモカイン)を含む多様な炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1、IL-6、IL-8など)の持続的過剰産生を惹起する。それ故、IL-6アンプはNF-кBの活性化を持続させる“positive feed back回路”の1つと考えることができる。以上のTNFαル-プとIL-6アンプは互いに連携しており、サイトカイン・スト-ムの主たる発生機序として重要である。IL-6アンプを阻止するためには、可溶性IL-6Rαの効果を抑制すればよく、IL-6受容体拮抗薬が最もシンプルかつ有効な手段である。しかしながら、IL-6受容体拮抗薬はTNFαル-プの一部を抑制するもののすべてを抑制する訳ではなく、TNFαル-プの確実な抑制のためにはTNFα阻害薬の投与が必要である(Feldmann MJ,et al. Lancet. 2020 May 2;395:1407-1409.)。TNFαル-プとIL-6アンプの同時抑制には、これら2つの経路に対して“扇の要”として作用するNF-кBの活性を、たとえば、低用量ステロイドなどによって阻害すればよい。 以上の分子生物学的機序を基礎として、IL-6受容体拮抗薬が新型コロナ感染症の重症化阻止に有効であると報告したREMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialとそれらとは逆に無効と報告したCOVACTA Trialの意味する内容について考察する。有効と報告した前2つの試験では、対象の82~93%に基礎治療としてステロイドが投与されていた。すなわち、REMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialは、IL-6アンプとTNFαル-プに対して“扇の要”として作用するNF-кB活性をステロイドによる基礎治療によって抑制したものであり、IL-6ル-プ単独の効果を見たものではない。言い換えれば、REMAP-CAP Trial、RECOVERY TrialからはIL-6受容体拮抗薬が単独で新型コロナ感染症の重症化阻止に真に有効であるとは結論できない。一方、無効と報告したCOVACTA Trialでは基礎治療としてステロイドが投与されていた対象の割合は24%と低いものであった。すなわち、COVACTA Trial は、ほぼ純粋にIL-6アンプの効果を観察したものであり、COVACTA Trialの結果は、IL-6受容体拮抗薬の単独投与が新型コロナ感染症におけるサイトカイン・スト-ムに起因する病態の重症化を有意に抑制するものではないことを示唆する。以上の考察より、現時点では、IL-6受容体拮抗薬自体の新型コロナ感染症重症化阻止作用は否定的と考えなければならず、IL-6受容体拮抗薬の臨床的効果発現のためには、ステロイド(低用量)の併用が必要であるものと推察される。これに関する明確な機序は不明であるが、IL-6受容体拮抗薬の効果発現には、IL-6アンプに加えTNFαル-プの同時抑制が必要、あるいは、IL-6受容体拮抗薬とステロイドとの間に本論評で考察した機序以外の相加/相乗効果が存在するのかもしれない。今後、IL-6アンプの抑制、TNFαル-プの抑制、あるいは、両者の同時抑制を意識した確実な臨床試験を期待するものである。

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新型コロナワクチン接種で注目の副反応、SIRVAとは?

新型コロナワクチン接種による副反応疑いとして「ワクチン投与関連肩損傷(ワクチン投与関連肩損傷)」「ワクチン接種部位疼痛」などが報告されている。しかし、これはワクチン成分自体による副反応ではなく、接種手技により避けられる可能性がある。これらの発症予防のための必要な知識について、プライマリ・ケア連合学会の動画監修にも関わった仲西 康顕氏(奈良県立医科大学整形外科・臨床研修センター 講師)を取材し、末梢神経を損傷してしまう原因や実際の症状、注意点について伺った。末梢神経障害やSIRVAとは、その症例数や日本での認知度はどのくらいでしょうか?筋肉注射の手技が原因で生じる問題には、不適切な部位への接種による腋窩神経や橈骨神経などの末梢神経損傷とSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration)があります。三角筋への筋肉注射によるワクチン接種が一般的ではない日本においては、医原性末梢神経障害を専門とする私でも、筋肉注射に関わる症例には数例しか関わったことがありません。近年、整形外科医のなかで問題視されているSIRVAは、「ワクチン接種に関連した肩関節障害」と訳され、三角筋下滑液包内への不適切な薬剤注入が原因で生じる肩の急性炎症(肩関節周囲炎、滑液包炎、腱板炎など)のことです。米国で2010年頃に報告されたのをきっかけに徐々に報告数も増えていますが、2016年時点での米国での年間報告数はわずか200例超1)と世界的にもまだまだ稀な疾患です。そのため、整形外科医以外には聞き慣れない病名だと思います。しかし、これらの合併症はワクチン接種後の患者さんのQOLを損なう恐れがあり、新型コロナワクチンの安全な投与のための手技マニュアル作成には重要だと考え、プライマリ・ケア連合学会の動画「新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法 2021年3月版」の監修にも携わらせてもらいました。また、マニュアルと同時に作成した、われわれの筋肉注射手技の根拠に関する論文2)は、現在、オンラインで一般公開されています。私たちが提示した安全な手技に従って注射した場合、神経損傷やSIRVAについて避けることが可能です。ただし、ワクチン接種現場でこれらの合併症の診断方法や治療方法まで医療関係者の一人一人が“深く理解しておく必要性はない”というのが個人的な意見です。今回は従来の手技によって生じる可能性のある副反応について解説しますが、神経損傷とは関係なくワクチン接種後に生じる手の違和感などへの実際の対応については別稿で述べたいと思います。末梢神経障害やSIRVAを予防するための対策を教えてください筋肉注射に関する多くの手技解説には、穿刺部位について「肩峰から3横指下(5cm)」と書かれていますが、その部位には三角筋を支配し肩関節の外転を司る腋窩神経が走行しています。また、橈骨神経は上腕骨に螺旋状に巻き付くように走行しているため、腕の肢位によっては神経の走行を推測しにくく誤った穿刺を起こしかねないんです。さらに、前述のSIRVAは三角筋下滑液包へのワクチンの注入が原因と考えられますが、高齢者では症状がなくても腱板の広範囲断裂や滑液包内の液体貯留は珍しいことではなく3)、滑液包の形状が変化するこれらの疾患では肩峰より5cm以内の接種は滑液包内への誤注入のリスクがより高くなると推測されます(図1)。(図1) 正常の肩関節と腱板断裂、滑液包水腫画像を拡大する広範囲腱板断裂では、正常よりも末梢まで三角筋下滑液包が拡張することがある。さらに水腫がある場合、滑液包内への誤注入の可能性は高くなる。高齢者ではこれらの変化は症状を伴っていないことも稀ではない。われわれ整形外科医はこれらの神経損傷に必ず注意を払って手術に臨むわけですが、ワクチン接種現場の報道映像では “腰に手を当てて上腕後方を差し出す姿勢”のように神経損傷を招く可能性のある手技が多く見受けられました。これらの神経損傷を避けるために、整形外科では髄内釘のスクリューや創外固定のピンを安全に上腕骨に刺入することのできる部位について、永年蓄積されてきたノウハウがあります。当院では過去の複数の文献報告なども踏まえて、新しく筋肉注射を行うためのマニュアルを作成しました。ですが、“従来の手技での合併症の発生頻度”も“新たな接種方法による予防効果“も高いエビデンスを示すことのできる臨床研究はこれまで行われておらず、まだまだ議論の余地は残っています。<現時点で仲西氏らが提案する新たな接種方法>上腕が内旋しないように力を抜き、肘は自然に伸ばして腕をおろしてもらう肩峰から下ろした垂線と前腋窩線の頂点・後腋窩線の頂点を結ぶ線の2つの線が交わる点に穿刺する接種者、被接種者が共に腰掛けた状態で接種する末梢神経損傷やSIRVAを生じた患者が訴える症状、その対処法を教えてください腋窩神経損傷では穿刺時も含めて痛みや痺れもなく、数日後に肩を挙上しにくいと気付いたとの症例報告があります。診断するには、両肩を十分に露出した上で部分的な三角筋の収縮力の低下がないか観察する必要があるでしょう。しかし、腋窩神経損傷は比較的自然に治りやすく、おそらく医療従事者に十分認識されないまま治ってしまうことも多々あると思われます。一方、橈骨神経損傷は受傷後の比較的早期に手の甲から親指や人差し指にかけての痺れ、手首や指の動かしにくさを訴えることが多いようです。一言で神経損傷と言ってもその度合いにより、自然回復が見込めるか、あるいは何らかの外科的な治療を検討すべきかで治療方針は異なります。筋肉注射によって生じた重度の橈骨神経麻痺症例を経験したことがありますが、日常生活や就労に大きく影響する後遺症が残りました。もし橈骨神経損傷を疑った場合は、自然回復を待つのではなく早期に手の外科を専門に行っている整形外科あるいは形成外科医に相談すべきと考えます。正確な神経学的評価に加えて、近年では末梢神経の超音波による観察が診断に有用です。SIRVAに関しては、まだまだ日本では報告されている症例は多くありません。海外の報告を見ると、ワクチン接種後数時間から2日程度の間に肩関節の強い自発痛を生じ、自然に改善しないことが多いようです。新型コロナワクチンの2回目の接種では、三角筋の強い痛みを生じることがしばしばあるようなので、発症早期に診断することは難しいかもしれません。ワクチン接種から数日経っても安静時に軽減することのない強い肩の痛みが続く場合は、肩関節の単純MRIが有用と考えます。接種された三角筋ではなく、肩関節の滑液包を中心として広範囲に炎症を示す所見があれば、より積極的にSIRVAを疑うことができます。治療としては、初期には滑液包内へのコルチコステロイド投与が検討されますが、早めに整形外科へ紹介することをお勧めします。ワクチン接種部位に関する問題の背景を踏まえ、今後の手技の標準化についてはどのように考えますか?実は整形外科医の中でも、前医とのトラブルをしばしば抱えて受診される「医原性末梢神経損傷」の患者さんを積極的に診ようという医師は多くありません。また、筋肉注射の手技自体が全体的に少なく、さらには医療トラブルへの対応に慎重になるあまり、まとまった症例の検討や論文による知識の共有が行われにくかった背景があるのではと思います。そのために厚生労働省を含めて安全なワクチンの接種方法を検討する内科、小児科の医師の間には神経損傷が現実的な問題として認識されてこなかったのではないでしょうか。今回、当院のパンフレット公開後に日本プライマリ・ケア連合学会の中山 久仁子先生、守屋 章成先生から連絡があり、専門性を越えて議論した結果、整形外科医の声に耳を傾けていただき、一旦公開した筋肉注射手技の動画を再度撮影し公開するという決断まで下されました。おそらく、この動画で新しい手技を知った方がとても多いのではと思います。神経損傷やSIRVAといった問題が発生した際、実際に治療にあたるのは整形外科医ですが、コロナ禍で筋肉注射についての問題が注目を集めています。整形外科医の中にも、私が尊敬する名古屋大学の平田 仁教授をはじめとして、真剣に医原性末梢神経損傷の問題に取り組んでいる医師がおります。今後、筋肉注射の手技について検討する際には、ぜひ整形外科医の持つ知識も参考に、さらに安全性を高めるための建設的な議論に結びつくことを期待しています。現時点では筋肉注射の推奨接種部位について、各団体間で統一されていません。しかし、これからもワクチン接種に関わる医療者にも、接種を受ける多くの人にも安心してもらえるように取り組み、新型コロナウイルス感染症対策に貢献していきたいと思っています。次回「ワクチン接種後の手のしびれ、痛みをどう診るか」に続く。(インタビュー:2021年4月20日、聞き手・構成:ケアネット 土井 舞子)参考1)Hesse EM, et al. Vaccine. 2020;38:1076-1083.2)仲西 康顕ほか. 中部整災誌. 2021;64:1-9.3)Minagawa H, et al. J Orthop. 2013;10:8-12.*奈良県立医科大学附属病院臨床研修センターのサイトに「Q&A」などを掲載中厚生労働省予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について(令和3年2月17日から令和3年4月4日報告分まで)

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トシリズマブ、重症COVID-19肺炎入院患者の病態改善せず/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症肺炎で入院した患者の治療において、IL-6受容体モノクローナル抗体のトシリズマブはプラセボと比較して、28日後の臨床状態を改善せず、死亡率を抑制しないことが、米国・ベイラー医科大学のIvan O. Rosas氏らが行った「COVACTA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年4月22日号に掲載された。欧米9ヵ国のプラセボ対照無作為化第III相試験 COVACTA試験は、重症COVID-19肺炎入院患者におけるトシリズマブの有効性と安全性を評価する国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(F. Hoffmann-La Rocheなどの助成による)。 2020年4月3日~5月28日の期間に、北米と欧州の9ヵ国62施設で、年齢18歳以上、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法と、胸部X線またはCT検査で重症COVID-19肺炎と確定された患者が登録された。 被験者は、トシリズマブ(8mg/kg体重)の静脈内投与を1回受ける群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。参加者の約4分の1が、トシリズマブまたはプラセボの1回目の投与から8~24時間に、2回目の投与を受けた。 主要評価項目は、修正intention-to-treat集団(トシリズマブまたはプラセボの投与を少なくとも1回受けたすべての患者)の28日目の臨床状態とした。臨床状態は、1(退院または退院準備の状態)~7(死亡)の順序尺度で評価された。28日の臨床状態中央値:1.0 vs.2.0、死亡率:19.7% vs.19.4% 438例が登録され、トシリズマブ群に294例(平均年齢[±SD]60.9±14.6歳、男性69.7%)、プラセボ群に144例(60.6±13.7歳、70.1%)が割り付けられた。 28日の時点での順序尺度による臨床状態中央値は、トシリズマブ群が1.0(95%信頼区間[CI]:1.0~1.0)、プラセボ群は2.0(酸素投与がなく、集中治療室[ICU]以外に入院)(1.0~4.0)であり、両群に有意な差は認められなかった(群間差:-1.0、95%CI:-2.5~0、van Elteren検定によるp=0.31)。 安全性解析集団では、重篤な有害事象は、トシリズマブ群が34.9%(103/295例)、プラセボ群は38.5%(55/143例)で発生した。また、28日時点の死亡率は、トシリズマブ群19.7%、プラセボ群19.4%であり、両群に有意差はなかった(加重平均差:0.3ポイント、95%CI:-7.6~8.2、名目上のp=0.94)。 著者は、「今回のデータからは、退院または退院準備までの期間、およびICU入室期間においては、トシリズマブが有益である可能性が示唆されたが、これらはいずれも別の追加研究を要する」としている。

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ファイザー社ワクチン、英国・南ア変異株に対する有効率は?/NEJM

 有効率95%と報告されているファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)だが、英国で確認された変異株(B.1.1.7)および南アフリカで確認された変異株(B.1.351)に対する実社会での有効率はどの程度なのか? カタール・Weill Cornell MedicineのLaith J. Abu-Raddad氏らが、変異株への感染および重症化に対する同ワクチンの有効性を検証したコホート研究結果を、NEJM誌オンライン版2021年5月5日号のCORRESPONDENCEに報告した。 カタールでは、2月23日~3月18日にゲノム解析された症例の50.0%がB.1.351、44.5%がB.1.1.7により引き起こされていた。また3月7日以降はゲノム解析されたほぼすべての症例が、B.1.351またはB.1.1.7のいずれかへの感染であった。同ワクチンの接種は2020年12月21日に開始され、2021年3月31日時点で計38万5,853人が少なくとも1回のワクチン接種を受け、26万5,410人が2回の接種を完了している(訳注:カタールの総人口は約280万人)。 ワクチン接種状況、PCR検査結果、および臨床的特徴に関するデータは、流行開始以来蓄積されている全国的なCOVID-19データベースより抽出された。 主な結果は以下のとおり。・B.1.1.7への感染に対するワクチンの推定有効率は、2回目接種後14日以上で89.5%(95%信頼区間[CI]:85.9~92.3)であった(ワクチン2回接種群:PCR陽性50例 vs. PCR陰性465例、ワクチン非接種群:16,354例 vs.15,939例)。・B.1.351への感染に対するワクチンの推定有効率は、2回目接種後14日以上で75.0%(95%CI:70.5~78.9)であった(ワクチン2回接種群:179例 vs. 698例、ワクチン非接種群:19,396例 vs.18,877例)。・B.1.1.7およびB.1.351への感染が優勢である中、SARS-CoV-2感染による重症、重篤、および致命的な病態に対する2回目接種後14日以上における有効率は非常に高く、97.4%(95%CI:92.2~99.5)であった(ワクチン2回接種群:3例 vs.109例、ワクチン非接種群:1,692例 vs.1,586例)。・全国コホートの抗体陰性者の感染率と比較したnegative case-control designによる有効率は、B.1.1.7に対して87.0%(95%CI:81.8~90.7)、B.1.351に対して72.1%(95%CI:66.4~76.8)と推定され、上記結果が確認された。 著者らは、B.1.1.7およびB.1.351が国内で優勢の状況の中で、BNT162b2は感染および重症化に対して有効であったとまとめている。ただし、とくにB.1.351への感染に対する有効率は同ワクチンの臨床試験やイスラエル・米国からの実社会での報告(>90%)よりも約20%低かったと指摘。カタールでは、3月31日時点で、ワクチンを1回接種した6,689例と、2回接種した1,616例でブレークスルー感染が確認されている。また、ワクチン接種者におけるCovid-19による死亡も7例報告されている(1回接種後5例、2回接種後2例)。そのうえで、B.1.351感染に対しても、入院または死亡につながる最も深刻な感染に対する有効率は90%を超える強力なものであったとしている。

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鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第186回

鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例いらすとやより使用いやがる人に無理やり鼻咽頭スワブを突っ込んで新型コロナウイルスの検査をしたり、あろうことか空港では肛門から長いスワブを突っ込んだり、一体どうなってんだ的な検査を行っている国もあるようですが……。Gaffuri M, et al.An Unusual Retained Choanal Foreign Body: A Possible Complication of COVID-19 Testing With Nasopharyngeal SwabEar Nose Throat J . 2021 Feb 26;145561321993933.この症例報告はイタリアのものです。本文には何度か「非協力的な患者」という用語が出てきますが、認知力に問題があるとはいえ、鼻咽頭を無理やり突っ込むのはさすがに日本では問題になりそうです。鼻咽頭スワブによる新型コロナウイルスの検査が行われたのは、ダウン症の濃厚接触者の37歳男性です。施設でクラスターが発生したため、濃厚接触者として検査を受けに来たのです。処置中、頭を急に動かしたため、スワブが左鼻腔内にズボっと入ってしまい、しかもボキッと折れてしまいました。プラスチック製だと、折れる可能性は確かにありますね。かなり奥に入って折れたためか、肉眼的に見えない状況でした。医師は焦ります。どうにかして抜かないといけませんが、もしも鼻腔後壁を突き破っていたら…と思うとまずは画像検査を行わないといけません。しかし、この医師の肝っ玉の強いところは、画像検査前に逆の右鼻からササっと2回目の鼻咽頭スワブを行ったところです。外科的処置が必要になるにしても、とりあえず彼がコロナかどうかみておこう、というわけです。メンタル強いな……。単純X線写真では、折れたスワブの先は見つかりませんでした。そこで、鼻咽頭スコープを使って、スワブの先端がないか探すことにしました。……あった!!鼻中隔と上鼻甲介の尾の間に挟まれる形で、スワブの先がありました。ディスポの鼻咽頭スコープを使って観察したのですが、どうも容易には摘出できそうにないことがわかりました。その後、男性は新型コロナウイルス陽性であると判明し、手術室に移動して処置が行われました。把持する鉗子が必要だったので、鉗子チャネルがある内視鏡が必要でした。というわけで、気管支鏡を使って摘出処置が行われました。そして、スワブの先が摘出されました。ヤッター!鼻出血やその他合併症はなく、しばらく様子を見てからCOVID-19病棟に入院になったそうです。――こういう症例報告をみると、唾液PCRが広く普及してよかったなぁと思います。イタリアにおける4,876人の鼻咽頭スワブ検査のうち、鼻腔に合併症を起こした症例は8人(0.16%)です1)。きわめてまれな合併症ですが、8人のうち3人が鼻咽頭スワブの断裂です。無理矢理突っ込まないことは当然として、愛護的に検査しないとコワイということがわかります。1)Fabbris C, et al. Am J Otolaryngol. 2021 January-February; 42(1): 102758.

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第56回 コロナ禍で個人情報を晒す困窮者も、今こそ地域密着医療の出番では?

コロナ禍で2度目、しかも一部地域では緊急事態宣言発出中となるゴールデンウイーク(GW)は、多くの国民にとって過ごしにくかったに違いない。コロナ禍でたまりにたまった1年分の鬱憤を晴らしたくとも晴らす機会すらないのだから。かく言う私は、そもそもGWがあってないような立場に従来からおかれている。仕事を引き受けても、その一部を誰かに割り振ることができないフリーの立場にとっては、世間一般の長期休暇で仕事関係先から連絡が激減するGW、お盆休み、年末年始は溜まった仕事を片付けるための好機となる。実際、4月29日のGW入り以降、出かけた範囲は最も遠くても電車で20分以内の場所に限られている。また、GWは前述のように仕事関係先から連絡がこないので仕事をしながらも比較的普段よりはのんびり時間が過ごせる。ということで仕事の合間に仕事場周辺をトボトボ散歩することが増える。そんな散歩の道すがら、電柱に張られたある張り紙が目に留まった。それを見て「ああ、またか」と思った。同じような張り紙はちょうど昨年の第1回目の緊急事態宣言発令中にも目にしている。1回目の張り紙にはこう書いてあった。「お仕事探してます。特別なことはできませんが買い物の同行、散歩の同行お手伝いします。車椅子の方でも同行のお手伝いします。その他の事はそちらの方で決めてくださいよろしければ電話ください。090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」正直、メディアで仕事をしているとさまざまな人に会い、さまざまなシーンに出くわすので、一般の人と比べ、何かに驚くことは明らかに少ない。しかし、これを見た時は正直かなり驚いた。私の場合、個人情報は守っても限界があるという認識がある上に、職業柄どうしても個人情報を一定程度さらさなければならないことが多く、自分の個人情報の開示に一定の耐性がある。しかし、一般人にとっては明日の生活がかかっていても個人の携帯電話番号や名字だけとはいえ、名前を不特定多数の人に晒すことはかなり勇気がいることだと思う。ちなみに余談になるが自身の個人情報開示については30代前半の頃、やややり過ぎの行動をし、周囲からたしなめられたことがある。それは取材相手とトラブルになった時のことだ。トラブルとは相手の発言をほぼ忠実にテープ起こしをして掲載したにもかかわらず、相手から電話があり、「そんなことは一言も言っていない」といきなり激怒されたのである。明確な言いがかりで録音音声もあるので、「お会いしてお聞かせしますよ」と言ったのだが先方はそれを無視。そうこうするうちにいきなりブログを開設し、私の名指し批判(というか中傷)投稿をし始めた。投稿の中には「この男の住所などの個人情報を集めております。提供していただいた方には謝礼5万円を差し上げます」との記述が。ちなみに私がこの相手に渡した名刺には住所は記載済み。まあ、放っておけばよかったのだが、若気の至りで自分の免許証の写メを添付し、「この通り情報提供しましたので謝礼をお振込みください」とご丁寧に銀行口座まで記載したメールを相手に送信したのだが返信はなかった。ちなみにこのメール送信の2日後にはブログそのものが消え失せていた。今ならば当然こんなことは決してしない。誠に若気の至りである。余談が長くなってしまったが、今回新たに見かけた張り紙はこう書いてある。「高齢者一人暮らしの方のお手伝い致します。日常生活で困ったこと掃除・洗濯電気等の交換・自転車の修理買い物の代行・買い物のお供その他いろいろお手伝いいたします。お気軽にご連絡して下さい090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」電話番号と氏名は前回と同じで完全な同一人物だ。この地域には10年以上暮らしているが、こうした張り紙を見たのはこの2回だけである。やや極端を思うかもしれないが、この2回の張り紙だけでも、コロナ禍が社会全体に深刻なダメージをもたらしている証左の一部になると考えている。その意味で今回のコロナ禍がもっとも直撃した業種は、飲食業、宿泊業、医療・福祉業に代表される。前者2つの業種は、感染拡大阻止に伴う人と人の接触減、移動減の影響をまともにかぶった業種であり、医療・福祉業はまさに感染者発生などの対応でマンパワーが要求され、オーバーキャパシティとなった業種である。そして前述の張り紙を見て改めて調べた中で出てきたのが、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部企画課が過去に作成した資料である。約10年前のものでやや古いが、今でも一定の傾向は示せていると思う。私が注目したのは、この12ページ目にある業種別非正規雇用労働者の割合である。今回、負の影響が直撃した飲食、宿泊業での非正規雇用の割合が突出しているのである。つまり今回のコロナ禍で前年比5割以上の売上減などはもはや当たり前となっている飲食・宿泊業では、もともと経済・社会基盤がぜい弱な単身者・女性などを中心とする非正規雇用者が多く、これらの人が収入減や雇用調整などの影響を大きく受けていると想像できる。コロナ禍はもともと存在していた弱者を、さらに過酷な環境をもたらすことによって社会全体により強く印象付けているとも言える。こう書くと一見医療とは何も関係ないではないかと言われてしまうかもしれない。しかし、医療の世界でもこうした残酷な可視化はより進行しているはずである。たとえばちょっと考えただけでも次のような問題が浮かび上がってくる。ひとり親家庭での親側、老老介護夫婦家庭でのどちらか一人が新型コロナに感染したら、残された家族を誰がどうケアするのか?独居の認知症高齢者が感染したら、きちんと行動自粛をしてくれるだろうか?軽度認知障害の人が外出自粛を長期間続けたら症状の進行が加速しないだろうか?生活のリズムを整えることが重要な精神疾患患者が突然在宅ワークになったら悪影響はないだろうか?このようなことは挙げればキリがないはずだ。もちろんこれらの問題は現場の医療者だけで解決できることは少ない。ただ、行政や民間などとの連携で解決に導くとしても数多くの局面で医療者はゲートキーパーとならなければならない。まだ早いと言われるかもしれないが、ワクチン接種率が上昇し、今回のパンデミックが一定の収束を見せた時に、どのように行政や民間、あるいはつかみどころのない「地域」との連携を深めていくかは、今から各医療者に考えておいて欲しいことだと思い始めている。街角の張り紙一枚から「大仰な」と言われてしまうかもしれないが、敢えてこのようなことを言ったのはこの件をきっかけに過去数年間、医療の世界でよく耳にするある言葉に対する違和感を改めて思い出してしまったからだ。その言葉とは「地域密着」「地域包括ケア」の2つである。最近では新規のクリニックが開業するとほぼ即日インターネット上のホームページもオープンしていることが少なくない。そこでクリニックの院長の「ご挨拶」ページに行くと、多くは「地域に密着した」というキーワードが使われている。一方、「地域包括ケア」はご存じのように官製用語と言ってもよく、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」仕組みを指す。どちらの言葉も聞こえは良く、そのことを誰も否定はできない。その分、気軽すぎるほど多用されている。意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉を指す「プラスチック・ワード」に該当するとさえ、個人的には思っている。ただ、ここまで使われてしまったものだからこそ、単なる「プラスチック・ワード」で終わらせず、より価値のある「プラチナ・ワード」とでも言うべきものに徐々に転換させていく必要があるのではないかと考えている。まさにそのため今回の方策の一つが、コロナ禍により医療者の目に映った弱者情報の発信と周囲との連携によるその対策の立案とだと考えている。そしてそれを支えるための情報発信がメディア側に求められているとも思うのだ。繰り返しになるが、このことは本来はポスト・コロナ・パンデミック期に考えるべきこと、さらに問題に対するより明確な対策やアイデアを伴ってすべきことと言われればそうである。ただ、このコロナ禍が近現代まれに見る事態であるがゆえに、ポストコロナ期になってからでは、反動でこれらの問題が一時的に忘れ去られ、そのまま一気に忘れ去られてしまうのではないかとの危惧も持ってしまう。そんなこんなを街角の張り紙から考えながらGWを過ごしている。結局のところ自分の蚊のような微々たる脳ミソもまったく休まらない日々となっている。

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COVID-19のmRNAワクチン、妊婦の安全性に問題認めず/NEJM

 米国疾病予防管理センター(CDC)のTom T. Shimabukuro氏らは、米国の3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを用いて初期調査を行い、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの接種を受けた妊婦において、明らかな安全性の問題は認められなかったことを報告した。ただし、著者は「母体、妊娠および新生児の転帰について情報提供するためには、妊娠初期にワクチン接種を受けた妊婦を含むより多くの妊婦の長期的な追跡調査が必要である」とまとめている。米国ではすでに多くの妊婦がCOVID-19に対するmRNAワクチンの接種を受けているが、妊娠中のワクチン接種の安全性に関するデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを解析 研究グループは、“v-safe after vaccination health checker”サーベイランスシステム(v-safe)、v-safe pregnancy registry、およびワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)の3つのワクチン安全性モニタリングシステムを用い、2020年12月14日~2021年2月28日の期間にワクチンを接種し、かつ妊娠していることが確認された妊婦を対象に解析した。 v-safeは、COVID-19ワクチン接種プログラムのために開発された新しいCDCのスマートフォンによる積極的サーベイランスシステムで、登録は任意となっている。v-safe登録者のうち、妊娠中または受胎前後にワクチン接種を受けた18歳以上の女性を対象に、希望者をv-safe pregnancy registryに登録し、妊娠、出産、乳児について追跡調査を行った。VAERSは、自発的な報告システムで、CDCと米国食品医薬品局(FDA)が運用している。妊婦と非妊婦で有害事象は同程度 v-safeにおいて、16~54歳の3万5,691例が妊婦と確認された。非妊婦と比較して妊婦では、注射部位疼痛の頻度は高かったが、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱の頻度は低かった。 v-safe pregnancy registryに登録された妊婦は3,958例で、このうち妊娠を完了したのは827例であった。827例中、712例(86.1%)が生児出産(このうち98.3%は妊娠第3期にワクチン接種)、104例(12.6%)が自然流産、1例(0.1%)が死産、10例(1.2%)が人工妊娠中絶および子宮外妊娠であった。 新生児の有害アウトカムとしては、早産が9.4%(60/636例)、在胎不当過小児が3.2%(23/724例)、先天異常が2.2%(16/724例)報告されたが、新生児死亡は認められなかった。 また、VAERSに報告された妊娠関連有害事象は221件で、このうち最も多く報告された事象は自然流産(46例)であった。 著者は先行研究の結果等を踏まえて、「直接比較ではないが、COVID-19 mRNAワクチン接種を受け妊娠を完了した妊婦における妊婦/新生児有害事象の発現率は、COVID-19パンデミック前に実施された妊婦を対象とする研究で報告された発現率と同程度であった」と考察している。

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第56回 コロナ変異株巡る国の対応に喝、塩崎元厚労相の忖度なき発言

新型コロナウイルスの感染拡大の要因の1つである変異ウイルス。英国型や南ア型、ブラジル型に共通の変異株N501Yや、南ア型やブラジル型にもある変異株E484Kに加え、最近では東京などで確認されている日本型変異株も現れた。さらにインドでは、感染力や免疫効果に影響を与える恐れのある遺伝子変異を2つ以上併せ持つ変異株も登場し、日本でも確認されている状況だ。およそ2週間ごとに変異するコロナウイルスだけに、変異株に関する状況把握や分析が喫緊の課題になってきた。日本でもようやくワクチン接種がスタートしたものの、こうした変異ウイルスが再感染の可能性を高めたり、ワクチンの効果を低下させたりすることが懸念されている。変異株への警戒が高まる中、N501Yは変異株PCR検査で探し出すことができるが、E484Kを探し出す変異株PCR検査は地方衛生研究所(地衛研)などでは運用されていないという。しかも、ゲノム解析の対象はN501Yで変異株陽性になった場合だけだ。E484KのPCR検査法を導入しない不思議これに対し、新型コロナに関する情報をSNSやブログで積極的に発信している塩崎 恭久・元厚生労働大臣は、歯に衣着せぬ物言いをしている。まず、国立感染症研究所(感染研)と一部の地衛研に集中されているゲノム解析のプロトコルと体制の抜本的見直しが必要だと指摘。第2次緊急事態宣言の解除の際、変異株PCR検査の実施率をPCR陽性者対比で40%とするという目標が決められただけで、ゲノム解析の数値目標が設けられていないことを問題視している。実際、E484Kをスクリーニングする変異株PCR検査は存在する。塩崎氏は、海外のみならず国内でも実用化され、流通していると指摘した上で、なぜスピーディに導入しないのか理解に苦しむと述べている。データベースの構築・公開・活用をまた、変異株の地域性は臨床上、極めて有益な情報だが、感染研が積極的に示していないと批判。大学などの病院ネットワークを通じたゲノム解析を格段に増やし、解析結果を臨床医療に還元すべきだと提言している。さらに、ゲノム解析結果は国際的なウイルスゲノム解析結果公開サイト「GISAID」では、厚労省・感染研の方針で、採取地を「JAPAN」としか登録していないため、国内の分布がわからないと指摘。どの地域に変異株が流行しているのか拡散状況が正確に把握できるようにすれば、国内外の研究者が分析できるようになり、実態解明が加速すると提案している。ウイルスゲノム・サーベイランス体制の強化塩崎氏は具体的な施策として、官民合同のゲノム解析チームによるゲノム解析体制の構築、公衆衛生によるサーベイランス、そして地域臨床医療との有機的一体化を早急に実現することで世界に遅れをとることのない科学を実践すると共に、コロナウイルスの変化のスピードに負けない迅速性をもって対応し、変異株問題でも先端を行く覚悟が必要だ、と提言する。政権が変異株に対する具体的な施策を示せない中、塩崎氏の提言は具体的であり、納得できるものがある。政府には専門家による分科会などが複数あるが、政治に忖度した発言が目に付く一方、政権与党の一議員である塩崎氏が忖度なき発言をしているのがなんとも皮肉だ。

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第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(後編)

「まさにコロナ・バブルです」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。4都府県緊急事態宣言下のゴールデンウイーク、皆さんはどうお過ごしですか。私は仕方がないので、BS放送でのメジャーリーグ観戦とインターネットでの日本選手権競輪(通称:競輪ダービー)観戦で時間を潰しています。競輪ダービーは東京都調布市の京王閣競輪場で無観客で開かれています。オリンピックのケイリン代表候補の脇本 雄太、新田祐大両選手が出場しないのが少々残念ですが、2月の全日本選抜競輪を優勝し好調をキープしている郡司 浩平選手を今回はしっかり応援しようかと思っています。さて、前回記事の執筆後、知人の記者がこんな情報を寄せてくれました。「ある病院長が『首都圏の基幹病院なのに、コロナ患者を受け入れていないところがある』と話していた。補助金でウハウハな病院は結構あるようだ」。また、首都圏のある基幹病院の事務方の人は「積極的に受け入れてきた基幹病院は令和2年度の利益がすごいことになっています。民間なら税金で持っていかれますが、国公立・公的だと相当な内部留保ができるのでは。まさにコロナ・バブルです」と伝えてきました。「支援金が入金されればマイナスを補うことができる」と財務省「とにかくコロナ病床を増やせ!」という司令の下、展開されたさまざまな施策の結果、“焼け太り”とまで言われるまでになった医療機関の状況を、国の財政を司る財務省はどう見ているのでしょうか。“焼け太り”の病院があることや、補助金などで“ジャブジャブ”になっていることを認識しているのでしょうか。それを伺い知ることができる資料が4月、財務省から出ています。財務省主計局は4月15日、社会保障制度の見直しについて議論する財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において、2022年度診療報酬改定に向けての方針を説明、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」との方向性を資料と共に示しました1)。この中で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と医療機関経営についても、その見解と今後の対応策を示しています。それによれば、新型コロナの感染拡大の影響で、医療機関経営が厳しさを増すなか、病床確保料や緊急支援事業補助金など補助金を手当てしていることから、「マクロとしては、新型コロナ患者に対応する医療機関の減収を補い得る額が措置されている」との見方です。そして、「支援金が入金されれば医業利益の前年からのマイナスを補うことができる」としています。さらに、新型コロナウイルス感染患者を受け入れた医療機関へのさらなる支援として、「一定の条件を満たせば、前年や前々年の同じ月と同水準の診療報酬を支払う臨時的な措置を検討すべき」としています。一方で、「新型コロナに対応しない医療機関にも講じてきた多額の支援については、新型コロナへの対応に限られた財政資源を集中的に投入するという観点から、これまでの財政支援についてその目的及び効果にさかのぼった見直しが必要」と、コロナ未対応の病院には厳しい見方を示しました。端的に言えば、“ジャブジャブ”お金を投入した結果、マクロ的には医療機関の経営が苦境に陥らないようにしてはあるが、コロナ対応をしていない医療機関への多額の支援については今後見直す、ということです。1年前は「コロナで病院経営が大変」が大半一方、医療機関側はこれまでの巨額な財政支援をどう見ているのでしょうか。さすがに世間の手前、「コロナで儲かってます!」とは言えないので、そこはこそっとデータを示すに留めている印象です。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会は共同で、定期的に「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」の結果を公表しています。昨年の緊急事態宣言による医療機関への影響は、8月に公表された同調査の2020年度第1四半期分2)で明らかになっています。それによれば、全病院の外来患者・入院患者共に4月は大幅に減少、5月にはさらに悪化しました。6月には入院・外来患者数は、わずかに回復の兆しは見えたものの、医業損益は大幅な赤字が継続していました。コロナ未受け入れ病院と、コロナ受け入れ病院で比較した結果、2020年4月~6月はどちらの病院も業績は前年に比べ悪化していましたが、特にコロナ受け入れ病院では、医業利益率が-12.5%と悪い結果となっていました。このように、1年前は「コロナで経営が大変」という声が非常に大きかったのです。第3四半期は、支援金加味で業績改善「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」の最新の調査結果は2021年2月に公表された2020年度第3四半期分3)です。その第3四半期においても前年同期と比較し、外来患者数、入院患者数の減少が継続していることが明らかとなっています。なお、この時は2020年の4月〜12月までの経営指標も公表されています。それによれば、医業収益の前年度との比較では、コロナ患者受け入れありが-5.1%、コロナ患者受け入れなしが-2.1%と、やはりコロナ受け入れ病院のほうが悪い業績でした。ただ、支援金(医療従事者への慰労金除く)を加味した場合の、医業収益の前年度との比較を見ると、コロナ患者受け入れありが-1.0%、コロナ患者受け入れなしが-1.4%と、受け入れた方が若干良好な業績でした。緊急包括支援交付金の入金時期については、都道府県によってばらつきがあり、この数値は改善する可能性があるとのことでした。つまり、病院のほとんどが、医業収益的には補助金等のおかげでほぼ前年並みを達成できているのです。財務省の見立てと同じです。コロナ禍の中、他の多くの産業の事業者が羨む数字と言えるでしょう。コロナ以前よりも厳しい医療機関のリストラへこの調査、まだ2020年度第4四半期分と、1年通した数字が公表されていないのでなんとも言えませんが、ひょっとしたら年間では相当なプラスになっている可能性もあります。医療関係団体は、経営が悪い時は「診療報酬を上げてくれ!」と叫びますが、儲かっている時は静かに目立たないようにしているものです。この1年間に投入されたコロナ関連の補助金が病院経営にどう影響したか、そこは正確なデータを公表してもらいたいものです。大学病院の数字も気になるところです。コロナ対応という大義名分のもと、補助金でほぼ平等に生きながらえることができた日本の病院ですが、この先はコロナ以前よりもはるかに厳しい、医療機関のリストラが待っていると覚悟しておいたほうがいでしょう。先の財政制度等審議会・財政制度分科会で財務省は、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、「日本の医療提供体制の脆弱さが浮彫りになった」と指摘、医療機関相互の役割分担や連携体制の構築などにより、人的資源の効率的な配置・活用を行うことが必要だと説いています。そして、病院数の8割、病床数の7割を占める民間病院への対応が重要との観点から、診療報酬の役割が舵取り役として極めて重要になると強調、「2022年診療報酬改定においては『医療提供体制の改革なくしては診療報酬改定なし』と考えるべき」としています。財務省の考え方(いつも少し尖っています)がそのまま医療行政に反映されるとは限りませんが、医療提供体制を集約、効率化するという方向性は厚労省と同じで、その中心となる施策は地域医療構想を確実に進めていくことに他なりません。コロナ以前よりも厳しい医療機関のリストラが始まると覚悟しておいたほうがいいでしょう。病院経営者は、2020年度決算の数字を見て喜んでいる場合ではないと思われます。コロナ対応で明らかになった自院の実力、弱点を分析した上で、ポスト・コロナの時代を見据えた現実的な経営戦略の立案が求められます。参考1)財政制度分科会(令和3年4月15日開催)資料一覧/財務省2)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)3)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第3四半期)

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第58回 COVID-19後の脳のもやもやをゲームで治療する

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を切り抜けた人のいったいどれほどが認知機能障害を呈するかははっきりしていませんが、思考・集中・記憶が困難になることは確かにあり、そのような耐え難い尾を引く(long-haul)後遺症は悪くすると何ヵ月も続きます1)。退院に向けてリハビリに取り組むCOVID-19入院患者の神経や精神を検査した報告では調べた57人のほとんど46人(81%)に認知機能障害が認められ、計画や取り仕切ることなどに必要な遂行機能や注意の欠陥がとくに多く生じていました2)。認知機能障害は入院患者に限りません。米国のノースウェスタン大学病院にはCOVID-19神経副作用を専門とするNeuro COVID-19 Clinicと呼ばれる診療所があり、去年5月の開設以来400人以上を手当てしています1)。それらの外来データを調べたところ、神経症状が6週間以上続く100人目までの患者で不特定な認知異常“脳のもやもや(brain fog)”の訴えは最も多く81人(81%)に認められました3)。COVID-19に伴う認知機能障害の原因はわかっておらず、脊髄液やその他の検体を使って炎症やその他の異常の手がかりを探る研究が始まっています。原因の研究の一方で治療法の検討も始まっています。たとえば体を動かしたり頭を使うゲームがその一つで、COVID-19を経た患者48人の試験ではパズルのような頭脳ゲームが有望な成績を収めています1)。研究者は無作為化試験を始めるつもりです。ADHD(注意欠如・多動症)小児の治療に医師が処方するビデオゲームEndeavorRxの米国FDA承認4)を得たAkili Interactive社のデジタル治療の取り組みも進んでおり、COVID-19に伴う認知機能障害患者100人が参加する試験で検討されます1)。去年の6月に承認されたAkili 社のADHDゲーム治療は操作棒(マルチスティック)を使って障害物を避けつつ目標(アイテム)を回収することで注意の改善を目指します。その改善はADHD小児300人以上が参加した無作為化試験で裏付けられています5)。また、親や医師の評価も教育用の別のゲームをした対照群より良好でした。ゲームのようないわゆる脳トレは万能ではありませんが、注意や切り盛りする処理能力の構築に役立つことが裏付けられつつあります。注意や処理能力の障害はCOVID-19後遺症のどうやら核をなしており、インターネットやアプリを介したゲーム訓練は長引くCOVID-19症状でどうにもならないと悲観にくれる人の前途を照らすでしょう1)。参考1)COVID-19 ‘brain fog’ inspires search for causes and treatments / Science 2)Jaywant A,et al. Neuropsychopharmacol. 2021 Feb 15:1-6.[Epub ahead of print]3)Graham EL, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2021 Mar 23.[Epub ahead of print]4)FDA Permits Marketing of First Game-Based Digital Therapeutic to Improve Attention Function in Children with ADHD / PRNewswire5)Kollins SH, et al. Lancet Digit Health. 2020 Apr;2:e168-e178.

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J&Jの新型コロナワクチン、重症・重篤化に高い予防効果/NEJM

 Janssen(米国・Johnson & Johnsonグループの医薬品部門)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「Ad26.COV2.S」は、単回接種によりCOVID-19を予防し、とくに入院や死亡を含む重篤なCOVID-19に対する有効率が高いことが認められた。安全性は、他のCOVID-19ワクチンの第III相試験と同様であった。オランダ・Janssen Vaccines and PreventionのJerald Sadoff氏らが、Ad26.COV2.Sの国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「ENSEMBLE試験」の結果を報告した。Ad26.COV2.Sは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の完全長・安定化スパイク(S)タンパク質をコードする遺伝子組み換え非増殖型アデノウイルス血清型26(Ad26)ベクターである。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。米国、南米、南アフリカにおいて、約4万4,000人にワクチンまたはプラセボを接種 ENSEMBLE試験は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、南アフリカおよび米国において実施された。研究グループは、18歳以上の成人をAd26.COV2.S(ウイルス粒子量5×1010/mL)群(以下ワクチン群)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、単回接種した。 主要評価項目は、per-protocol集団における接種後14日以降、および接種後28日以降の中等症~重症・重篤COVID-19発症で、安全性についても評価した。 2020年9月21日に登録を開始し、計4万4,325人が無作為化され、うち4万3,783人が接種を受けた(ワクチン群2万1,895人、プラセボ群2万1,888人)。per-protocol集団は、ワクチンまたはプラセボの接種を受け、接種時SARS-CoV-2血清陰性または不明でプロトコールの逸脱がなかった参加者と定義し、3万9,321人(ワクチン群1万9,630人、プラセボ群1万9,691人)が含まれた(データカットオフ日は2021年1月22日)。重症・重篤COVID-19予防の有効率は接種後14日以降で77%、28日以降で85% 接種後14日以降に発症した中等症~重症・重篤COVID-19症例は、ワクチン群116例、プラセボ群348例であり、有効率は66.9%(補正後95%信頼区間[CI]:59.0~73.4)であった。また、投与後28日以降の同症例はそれぞれ66例および193例で、有効率は66.1%(55.0~74.8)であった。 COVID-19重症度別の有効率は、接種後14日以降発症例で中等症64.8%(補正後95%CI:55.8~72.2)に対し重症・重篤76.7%(54.6~89.1)、接種後28日以降発症例でそれぞれ62.0%(48.7~72.2)および85.4%(54.2~96.9)であり、ワクチンは重症・重篤COVID-19の予防効果がより高いことが示された。 南アフリカでは、20H/501Y.V2変異株が高頻度に検出されたが(91配列中86配列、94.5%)、有効率は、接種後14日以降発症の中等症~重症・重篤COVID-19に対して52.0%(補正後95%CI:30.3~67.4)、重症・重篤COVID-19に対して73.1%(40.0~89.4)、接種後28日以降でそれぞれ64.0%(41.2~78.7)および81.7%(46.2~95.4)であった。 重篤な有害事象の発現率は、両群とも0.4%であった。静脈血栓塞栓症はワクチン群11例、プラセボ群3例に認められたが、多くは基礎疾患や素因に起因している可能性が考えられた。死亡例はワクチン群で3例(COVID-19との関連なし)、プラセボ群で16例(5例がCOVID-19関連死)であった。

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第55回 政府も当事者意識を!新型コロナ感染拡大、収束のカギはテレワーク推進

ついに4月25日から新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言が東京都、京都府、大阪府、兵庫県に対して発出された。特措法に基づく緊急事態宣言発出はこれで3度目。もっとも今回は昨年4月に発出された緊急事態宣言時に次ぐ厳しい休業要請などが発表されている。そして従来から特措法に基づく、まん延防止等重点措置(まん防)や緊急事態宣言、あるいは自治体独自の自粛措置などで最も「標的」とされてきた飲食店に関しては休業もしくはアルコール提供なしの営業時間短縮(時短)が求められている。今回は宣言発出決定が23日、適用開始が25日と周知期間が極めて短かったこともあり、24日土曜日の都内の主要地域は、休業要請対象となるデパートや大型量販店などで買い物を済ませておこうとする人たちでごった返した。かく言う私も家族から1週間ほど前に「都心に行くときに買ってきて欲しい」と頼まれていたものがあり、それが休業要請対象施設で販売されているものだったため、「何とか土曜日中に買って」と哀願され、仕方なく外出した。そこで遭遇したのは、家族からの頼まれものを買うために入ったデパートのエレベーター待ち、ついでに立ち寄った大型書店のレジ待ち、のいずれも長蛇の列。とりわけ書店ではレジ待ちに並んでから終了までに約30分という人生初の経験をした。そして宣言初日の25日午前、最寄り駅周辺の飲食店街周辺を歩くと、あちらこちらに「臨時休業」「アルコールは提供しません」の張り紙。ざっと見て「臨時休業」と「アルコール提供なしで営業」は7:3くらいだ。見回っている最中に顔見知りの飲食店の経営者2人と顔を会わせた。いずれもアルコール提供なしで店を開くとのこと。それぞれの第一声は以下のような感じだった。「休業も考えたが、いろいろ計算すると、とりあえずは『お食事処』として営業するしかない」「時短はやむを得ないと思っていたが、まさかアルコールを提供しないように言われるとは思わなかった」後者の経営者はその後に言葉を継ぐように「いやー、本当につらい」と絞り出すように語った。そりゃそうだろう。アルコール類の提供を柱の一つとする飲食店にとって、「アルコールを提供するな、そのうえで時短もしろ」と言われるのは、やや品のない言い方かもしれないが「服を全部脱げ、そのうえで髪の毛も含めて全部体毛を剃れ」と言われる拷問のようなものだ。では、今回の広範な休業要請も含む緊急事態宣言は間違いだろうか? そう問われると、私はそうは思えない。このウイルスのメインの感染経路が飛沫感染であることを考えれば、やはり飲食の場での感染をいかに防ぐかが感染対策の大きなカギだ。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長が何度も「急所」という言葉を使って表現するのはそのためだ(この「急所」という言葉に傷つく飲食店関係者がいるのも承知している)。そのうえで考えると、1回目と2回目の緊急事態宣言やまん防、それ以外の各自治体独自の飲食店時短営業要請の後の感染者報告数を見れば、飲食店の時短営業に一定の感染者減少効果があるのは確かだ。まん防については効果を疑問視する声はあるものの、まん防だけで感染者報告がすでにピークアウトしている宮城県の事例を考えると、効果はあると言える。ただ、感染が拡大すればするほど、飲食店の時短営業だけでは効果に限界があるのもまた現実だ。ほぼ飲食店の時短営業のみに対策が集中した2回目の緊急事態宣言下では、首都圏で2回の宣言期間延長を経て感染者報告数がほぼ下げ止まってしまったことがその限界を端的に示している。そこで改めて振り返ると、過去の対応で最も効果があったのは、ほぼロックダウンに近い第1回目の緊急事態宣言である。この時の東京都心では日中の山手線で1両に10人に満たない乗客しかいないという状況が起こるほど人の流れが減少した。人口密集地帯である首都圏の中でも最も多くの人の流れを作り出す「通勤」「通学」がかなり減少したからで、そこまで含めてあれだけの効果があったのだ。それから考えれば、2回目、そして今回の緊急事態宣言に基づき国や都道府県が求める感染対策の中でもっとも実現できていないであろうと想像されるのが、「出勤者の7割減に向けたテレワークの活用」ではないだろうか。もちろん1回目の緊急事態宣言下でテレワークに取り組んだ企業の中には、そのメリット、デメリットを改めて認識し、その結果として一旦導入したテレワークの一部が元に戻ってしまったところもあるだろう。だが、言っちゃ悪いが上層部の感覚的な問題で元通りになってしまったケースも多々あるはずだ。そしてこの通勤という人の流れがまさに「急所」への流れも作ってしまう。それは会議室でのビジネスランチ、勤務先周辺での飲食店での昼食に代表される「会食の場」である。それが一歩進むと、勤務先周辺での時短営業破りの店舗での飲食に進んでしまう。都内でも住宅街中心の駅周辺などはいわゆる「自粛警察」の目も厳しいため、時短営業破りはそれなりに勇気がいる。しかし、都心部のオフィス街になるとそこまで厳しい目は少ない。通勤でそうしたところを通りがかれば、誘惑になびく人も少なくないはずだ。私は緊急事態宣言発出が決まった23日夜、オンラインイベントの運営を担当するため、久しぶりに都心、それも霞が関周辺まで出かけた。イベント終了は9時過ぎ。それを終えて新橋駅周辺にたどり着いた時に目に入った光景にため息が出てしまった。もちろん多くのお店はすでに消灯している。ところが、まん防での時短要請を破っている一部の飲食店(もちろん飲酒を伴う)の前では、ビジネススーツにネクタイ姿の会社員と思しき人たちを中心に入店待ちの行列を作っているのだ。もちろんここまで長期にわたって辛抱を求められる生活をしているのだから、飲食店で酒を口にしながら知人・友人とあれこれ喋ったりしたい気持ちはわかる。そして緊急事態宣言中でも感染がほぼピークアウトしていてあとは解除を待つばかりという時期ならば、前述のような光景も「仕方がないか」とも思える。しかし、この時は緊急事態宣言の発出が決定した日だ。かなり暗澹たる気持ちになった。変異株の登場による感染拡大の形態や既存の市中の蔓延状態に違いがあるとはいえ1回目と2回目の緊急事態宣言の間は約8ヵ月の「猶予期間」があった。その意味では感染拡大を防ぎ、さらに経済への影響も軽微に納めたいならば、むしろ感染急拡大期には限りなくロックダウンに近い対応で一時社会の動きを止めるのが最も有効なのではないかというのが今現在の私自身の考えである(もちろん今後出てくる新たな対策やその結果ではこの考えが変化する可能性はある)。その意味では、飲食店対策以外はほぼ掛け声で終わった第2回目の緊急事態宣言は失敗だったのだろうと改めて思う。そしてこの3回目あるいは想像したくないが将来の緊急事態宣言発出を成功に導くカギの一つは、テレワークの推進をどれだけ実現できるか。それに向けて政治がどれだけた環境整備をできるかだと考えている。また、職業柄、私権制限には敏感だと思っているが、さすがに今回の飲食店への要請内容の過酷さを考えれば正直者が馬鹿を見るようなことはあってはならないと思う。つまり時短要請などを破っている経営者には法令に沿って厳しい態度で臨んでもらいたいということだ。

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新型コロナワクチン接種日や副反応の記録に有用なアプリ/MDV

 メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、同社が開発し2015年からサービスを開始しているパーソナルヘルスレコード(PHR)サービス『カルテコ』に新型コロナワクチン接種の実施状況や副反応の有無を残せる新機能を搭載したことを、4月26日にプレスリリースした。 同システムはこれまで「カルテコ」を導入している医療機関の患者やその病院に付設する健診施設の受診者のみが利用できるサービスだったが、今回の新機能をアプリにしたことで、アプリをダウンロードした誰もが利用可能になったという。具体的な登録内容と手順 ワクチン接種記録の登録は「(1)新型コロナワクチンを選択(2)接種日を選択(3)初回か2回目かを選択(4)メーカーを選択(5)接種済証の写真を保存(6)接種後の副反応を記録」の手順で行う。「接種後にどのような副反応があったか」または「まったくなかったか」などを記録しておくと、次回の接種時に医師に対して前回の状況を伝えたり、自分で確認したりすることができる仕組みになっている。カルテコとは カルテコは、患者が医療機関を受診した際の診療記録(傷病名、検査結果、診療中に使われた薬、処方された薬、処置・手術など)や検査画像、健診結果をWeb上に保管し、インターネット環境があれば、いつでもどこでも閲覧できるサービス。現在、約3万人が利用している。

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COVID-19ワクチンにまだ過半数が不安/アイスタット

 いよいよ4月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が高齢者へ始まった。COVID-19収束に向けてワクチンへの期待、接種の希望など、どのような意識の変化があるのだろうか。 「一般市民へのワクチン接種の意識について」をテーマに、株式会社アイスタットは2020年12月に引き続き2回目となるワクチンに関するアンケートの調査を4月18日に行った。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~79歳の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年4月18日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~79歳/全国地域)を対象アンケート結果の概要・ワクチンをいつ接種したいかでは「すぐ受ける」(41.7%)が最多。前回調査(20年12月)より30.3%上昇・12月20日時点のワクチン接種の意向は、消極的(60.0%)が前向き(40.0%)を上回ったが、4月18日時点では前向き(58.3%)が消極的(41.7%)を上回った・どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを接種したいかでは、第1位「アメリカ」(53.3%)、第2位「日本」(48.0%)、第3位「ヨーロッパ」(20.0%)の順。前回第1位「日本」(67.7%)と第2位の「アメリカ」(27.3%)が逆転・4月18日時点で「安全性」「副作用」「有効性」「検証のデータ不足」について気になると回答した割合は、12月20日より減少。ワクチンに関する「マイナス」のイメージは払拭傾向・ワクチン接種について「不安である」の割合は、12月20日時点では72.3%、4月18日時点では55.3%を示し、この4ヵ月間で17%減少したものの、いまだ過半数超約4割の回答者がワクチンは「すぐ接種したい」と回答 「COVID-19のワクチンを『受ける/受けても良い』と思う時期はいつか」を聞いたところ、今回の調査では「すぐに受ける」(41.7%)が最も多く、「現時点では判断できない」(31.0%)、「1ヵ月過ぎてから~3ヵ月以内」(9.0%)と続いた。前回調査との比較では、「すぐ受ける」が30.3%伸長し、意識の変化がうかがわれた。同様に接種に「前向き」の回答も前回調査に比べ18.3%上昇し、年齢と前向きな回答傾向は正比例した。 「前問で『すでに受けた/すぐに受ける/6ヵ月以内に接種』と回答した人(n=175)にその理由」を聞いたところ複数回答で、「個人の感染症予防対策だけでは限界があるから」(66.9%)、「集団の感染症予防対策にはワクチン接種が有用だから」(52.6%)、「新型コロナウィルスの感染状況が深刻だから」(52.0%)と続いた。前回調査との比較で差が最も大きかったのは「集団の感染症予防対策にはワクチン接種が有用だから」で7.6%増加していた。 「最初の質問でワクチンを受ける時期について、『6ヵ月以内に受けない/期間に関わらず絶対に受けない/現時点では判断できない』と回答した人(n=125)にその理由」を聞いたところ複数回答で、「副作用が怖いから」(44.0%)、「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」(36.8%)、「ワクチンの有効性がまだ十分に検証されていないから」(28.8%)と続き、ワクチンへの不安を感じる回答が上位を占めた。前回調査との比較で差が最も大きかったのは「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」で20.4%減少となり、徐々に安全性の啓発が進んでいることがうかがわれた。 「どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを日本で接種できるのが良いと思うか」を聞いたところ複数回答で「アメリカ」(53.3%)、「日本」(48.0%)、「わからない/決められない」(22.7%)の順だった。前回調査に比べ、日本製を希望する人が19.7%減少し、アメリカ製が増えたが、わからない・決めらない人も微増していた。 「わが国のワクチンの接種開始・状況についてどう思うか」を5段階評価で聞いたところ、「非常に遅すぎると思う」(50.7%)、「やや遅すぎると思う」(23.0%)、「どちらでもない」(18.7%)と続いた。「非常に/やや遅すぎると思う」の割合は73.7%を示し、多くの回答者が接種の遅延を危惧する様子がうかがわれた。 「日本で開始されたCOVID-19ワクチンの気になること」を聞いたところ、複数回答で「安全性」(64.7%)、「副作用」(60.3%)、「有効性」(47.3%)の順番だった。前回の調査と比較すると上位3つの安全性・副作用・有効性がいずれも減少し、「接種できる時期」(30.0%)が4位に上り、一般の人々の関心が接種へ移っていることがうかがえた。 「接種が開始されたワクチンに不安があるか」を5段階評価で聞いたところ、「やや不安である」(37.7%)、「どちらでもない」(24.0%)、「非常に不安である」(17.7%)と続いた。「非常に/やや」を足し合わせた「不安である」の割合は55.3%と過半数を占めているが、前回の調査との比較でみると17%減少していた。 「COVID-19の患者数を抑えるためどうすればよいと思うか」を聞いたところ複数回答で、「集団での予防対策(3密対策など)の強化」(60.7%)、「個人の予防対策の強化」(59.7%)、「早急なワクチン接種の開始」(47.0%)と続いた。とくに「早急なワクチン接種の開始」は前回調査と比較すると25.0%増加し、接種への期待の広がりをうかがわせた。

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COVID-19ワクチン接種完了者、変異株に感染/NEJM

 新型コロナワクチンを2回接種後にも、新型コロナウイルスへのブレークスルー感染が認められ、変異株への感染があることが確認された。米国・ロックフェラー大学のEzgi Hacisuleyman氏らが、同大学職員で新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を2回接種した417人について調べた結果で、うち女性2人にブレークスルー感染が認められたという。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。2021年1月21日~3月17日のPCR検査結果を分析 ロックフェラー大学の全職員および学生(約1,400人)は2020年秋から、少なくとも週1回PCR検査を受けている。研究グループは、2021年1月21日~3月17日に、ニューヨーク州の適格規制に従い「BNT162b2」または「mRNA-1273」ワクチンの2回接種を受けた職員417人のPCR検査結果を調べた。 対象者は、調査期間よりも2週間以上前にワクチン接種を受けていたが、2人の女性について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が出現し、PCR検査の結果でSARS-CoV-2陽性が示された。COVID-19の症状あり、PCR陽性、変異株が検出 患者1は、51歳女性でCOVID-19の重症化リスク因子はなし。日常生活上の予防措置は順守していた。1月21日に「mRNA-1273」ワクチンの1回目接種を、2月19日に2回目接種を受けた。2回目接種の10時間後にインフルエンザ様の筋肉痛が発症したが翌日に解消している。2回目ワクチン接種から19日後の3月10日に喉の痛み等を呈し、大学でPCR検査を受けSARS-CoV-2陽性が確認された。翌11日に嗅覚を消失したが、1週間ほどで症状は解消していったという。 患者2は、65歳の健康な女性でCOVID-19の重症化リスク因子はなし。1月19日に「BNT162b2」ワクチンの1回目接種を、2月9日に2回目接種を受けており、接種した腕の痛みが2日間続いたことが示されている。3月3日、ワクチン未接種のパートナーがSARS-CoV-2陽性。3月16日に患者2に倦怠感、副鼻腔うっ血、頭痛の症状が現れ、ワクチン接種から36日後の3月17日に体調不良を訴え、検査の結果、SARS-CoV-2陽性が確認された。症状はそれ以上悪化せず、3月20日から回復に向かったという。 両患者のウイルスのシークエンシング解析の結果、臨床的重要性があると考えられる変異株、E484Kが1人から、3種の変異株(T95I、del142-144、D614G)が両者から検出された。 こうした観察結果から、研究グループは、ワクチン接種後にもCOVID-19発症リスクがあり、さらに変異株へ感染する可能性もあることが示唆されたとし、「ワクチン接種後にも、COVID-19の予防と、同感染の診断、さらに変異株の特定を続ける取り組みが重要であることが確認された」としている。

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第55回 コロナワクチン接種に駆り出される歯科医師、その心情は

新型コロナウイルスのワクチン接種の打ち手確保が難しくなる状況下、厚生労働省の検討会は4月23日、接種に必要な医師や看護師らを確保できない地域に限り、歯科医師が接種を行うことを特例で認める方針を決めた。厚労省は4月中にも各自治体に周知する。これに対し、各歯科医師会は4月24日現在、正式な声明を公表していない。これに対し、歯科医師からは前向きな声から反発までさまざまな声が上がっている。菅 義偉首相は19日、9月までにすべての対象者にワクチンが供給されるめどが立ったと胸を張った。しかし、ワクチンが確保できても、打ち手がいなければ、接種できないも同然だ。現行法上、ワクチン接種は原則として医師や看護師に限られており、実際すでに打ち手不足が表面化している。厚労省の3月25日時点の調査では、全国1,741市町村のうち、集団接種の予定会場で18.1%は医師が、22.8%は看護師が不足していると回答している。5月中旬以降、高齢者接種が本格化すれば、打ち手不足は一層深刻化するはずだ。そのような中、歯科医師のワクチン接種が認められたのだった。歯科医師は約10万5,000人おり、歯科医師によるワクチン接種が実施されたら、打ち手不足の緩和の助けにはなるだろう。「歯科医師を馬鹿にするな」の声もただ、歯科医師によるワクチン接種には、2時間程度の研修を受ける、接種を受ける人の同意を得る、医師らがいる集団接種会場に限定、などのいくつかの条件が設けられる。そもそも4月12日頃までの情報では、歯科医師の役割はワクチン接種を行う医師や看護師の補助を行うということになっていた。歯科医師会には、こうした状況に対しさまざまな声が寄せられているという。例えば、「医療従事者として可能な補助は行うべきだ」という前向きな声のほか、「手伝ってもいいが、報酬はどのくらいなのか」という現実的な疑問などだ。一方で、「歯科医師を馬鹿にするのもいい加減にしろ。医師のしもべ要請は、世界の笑いものだ」といった強い反発も見られるという。歯科医師のワクチン接種の話は、千葉県が千葉県歯科医師会に対しワクチン接種を依頼したことに端を発しているという。同会の役員はテレビ局の取材に対して、「大学で修業している時に採血とか、入院患者への点滴などは日常的に行っている。(注射そのものは)何も問題なくできると思う」と述べている。海外では薬剤師、医学生、ボランティアも担い手に感染者数が多い海外では、ワクチン接種に当たる職種は幅広い。米国の一部の州や英国では歯科医師や薬剤師も接種を行っている。米国の一部の州では、医学生や救急隊員も接種できる。英国では、医療資格を持たない一般のボランティアでも、条件を満たせば研修を受けて接種の資格が得られる。日本の場合、歯科医師の中から、どれだけの人数がワクチン接種の打ち手に名乗りを上げるか。ワクチン接種の安全性は重要だが、ここへ来て明らかに海外に遅れをとっている日本の現状もまた憂慮すべきである。接種のスピードを上げるには、さらなる医療職種の対象拡大を検討しなくて大丈夫なのだろうかと一市民ながら心配になる。

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ワクチン副反応疑い、リンパ節腫脹や消化器症状など多様/厚労省

 新型コロナワクチン接種後、倦怠感や頭痛、発熱などのほかに、稀ではあるもののリンパ節腫脹や消化器症状など多様な症状がみられていることが報告された。4月23日に開催された厚生労働省第56回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で1)、ファイザー社製ワクチン接種者の安全性を調査する前向き観察研究の更新データを、伊藤 澄信氏(順天堂大学医学部臨床研究・治験センター)が報告した2)。 この観察研究は、先行接種が行われた医療従事者を対象に、ワクチン接種者の最終接種4週後までの安全性を調査するコホート研究。体温のほか疼痛や発赤などの接種部位反応、倦怠感や頭痛などの全身反応の有無が報告され、それらの集計結果概要は既報の通り。 本稿では、健康観察日誌の自由記載欄の中間集計結果を以下に抜粋する(1回目/2回目)。なお、同集計データのデータカットオフは4月14日、1回目は1万9,162例、2回目は1万6,907例が集計対象となっている。筋肉痛:412例(2.15%)/559例(3.31%)悪寒:361例(1.88%)/1,758例(10.40%)関節痛:272例(1.42%)/1,709例(10.11%)ワクチン接種部位運動障害:245例(1.28%)/93例(0.55%)悪心:231例(1.21%)/629例(3.72%)下痢:200例(1.04%)/277例(1.64%)四肢不快感:193例(1.01%)/84例(0.50%)口腔咽頭痛:166例(0.87%)/211例(1.25%)傾眠:160例(0.83%)/95例(0.56%)疼痛:134例(0.70%)/161例(0.95%)浮動性めまい:133例(0.69%)/189例(1.12%)ワクチン接種部位疼痛:121例(0.63%)/-感覚鈍麻:119例(0.62%)/97例(0.57%)頭痛:97例(0.51%)/143例(0.85%)咳嗽:95例(0.50%)/154例(0.91%)背部痛:84例(0.44%)/364例(2.15%)発疹:76例(0.40%)/-筋骨格硬直:74例(0.39%)/100例(0.59%)腹痛:73例(0.38%)/117例(0.69%)異常感:72例(0.38%)/64例(0.38%)ワクチン接種部位内出血:72例(0.38%)/-四肢痛:68例(0.35%)/81例(0.48%)熱感:59例(0.31%)/-口腔咽頭不快感:59例(0.31%)/-そう痒症:57例(0.30%)/-筋力低下:53例(0.28%)/-発熱:46例(0.24%)/313例(1.85%)腹部不快感:45例(0.23%)/85例(0.50%)蕁麻疹:44例(0.23%)/56例(0.33%)腋窩痛:-/207例(1.22%)食欲減退:-/143例(0.85%)リンパ節症:-/120例(0.71%)嘔吐:-/101例(0.60%)リンパ節痛:-/68例(0.40%)倦怠感:-/68例(0.40%)頚部痛:-/66例(0.39%)  なお、1回目接種後49例(0.26%)、2回目接種後1,093例(6.46%)が翌日病休していることも報告された。伊藤氏は、とくに2回目接種後に腋窩リンパ節腫大を含む反応性リンパ節腫脹が2%強みられている点について、通常のワクチン接種ではあまりみられないと指摘。消化器症状なども含め、このように多様な症状がみられる可能性があるということを、あらかじめ知っておくことが重要ではないかと話した。

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南アフリカ株(B.1.351)の遺伝子変異とワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏)-1381

 前回の論評で考察したように、コロナウイルスは間断なく進化/変異を遂げ、世界に流布するウイルスは武漢原株からD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸[D]からグリシン[G]に置換)へ、さらには、N501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン[N]からチロシン[Y]に置換)に変化しつつある。2021年度には、N501Y変異株が世界に流布するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。本論評ではD614G株を“従来株”と定義し論を進める。 N501Y株に分類される変異株の主たるものとして、英国株(B.1.1.7)、南アフリカ株(B.1.351)、ブラジル株(P.1)の3種類が存在するが、これらの変異株の実効再生産数(R)は、英国株、南アフリカ株、ブラジル株の順であり、英国株が最も高い値を示す(WHO 2021年3月21日)。それ故、現時点では、英国株が流布する地域が最も多く、4月13日現在、世界132ヵ国/地域に及ぶ。次いで、南アフリカ株の流布する地域が多く世界82ヵ国、R値が最も小さいブラジル株の播種領域は少なく、世界52ヵ国で検出されている。これら3種類のN501Y変異株は1つの国/地域で1種類の変異株が流布しているわけではなく、3種類の変異株が共存していることが多い。本邦においては、2020年12月末より、検疫での検出を含めN501Y株の国内播種が始まっており、2021年4月13日現在、1,341名(検疫:200名、国内事例:1,141名)のN501Y変異株感染者が同定されている。国内事例のうち、英国株が94%、南アフリカ株が1.3%、ブラジル株が4.4%を占める(厚労省 2021年4月13日)。本邦での南アフリカ株の発生頻度は低いが世界的には英国株に次いで重要であり、本論評では南アフリカ株の特徴、とくに、武漢原株のS蛋白遺伝子配列を基に作成された種々のワクチンの効果について考察する。 南アフリカ株の遺伝子配列上の特徴に関する詳細は他紙(山口. 日本医事新報. 2021;5053:32-38.)に譲るが、S蛋白の構造を規定する遺伝子配列としてD614G変異を除いて9個の非同義変異が確認されている。これらの変異にあって重要なものは、ACE2との親和性を増強しウイルスの生体への侵入を助長、播種性を増加させるS1蛋白の受容体結合ドメイン(RBD)におけるN501Y変異と“免疫回避反応”を惹起するE484K変異(S蛋白484位においてグルタミン酸[E]がリシン[K]に置換)である(Tegally H, et al. medRxiv. December 22, 2020. [Epub ahead of print])。この2つの遺伝子変異はブラジル株でも認められる(Sabino EC, et al. Lancet. 2021;397:452-455.)。英国株ではE484K変異を認めないが、代わりに69~70位と144位におけるアミノ酸欠損が“免疫回避反応”を惹起する。 以上のような遺伝子変異の結果として、従来株感染後の回復期血漿に含まれるS蛋白特異的IgG抗体による液性中和作用は、南アフリカ株に対して11~33倍低下していた(Wang P, et al. bioRxiv. January 26, 2021. [Epub ahead of print])。同時に、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Pfizer社のBNT162b2で8.8~14倍(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])、Moderna社のmRNA-1273で6.4倍(Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 17. [Epub ahead of print])、AstraZeneca社のChAdOx1で8.9倍(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)低下していることが報告された。その他、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Novavax社のNVX-CoV2373で14.5倍、ロシアのGam-Covid-Vac(Sputnik V)で6.8倍、中国Sinovac社のCoronaVacならびにSinopharm社のBBIBP-CorVで2.4~3.3倍低下していた(WHO 2021年4月13日; Wang GL, et al. N Engl J Med. 2021 Apr 6. [Epub ahead of print])。従来株感染後あるいはワクチン接種後に得られた血漿の南アフリカ株に対する液性中和作用の減弱は主としてE484K変異によってもたらされるが、その他、K417N変異(S蛋白417位でリシン[K]がアスパラギン[N]に置換)、242~244位のアミノ酸欠損も関与するとされている。一方、BNT162b2の英国株、ブラジル株に対する液性中和作用は維持されていた(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])。すなわち、南アフリカ株に対するワクチンの液性中和作用は、mRNAワクチン(BNT162b2、mRNA-1273)、Adenovirus (Ad)-vectoredワクチン(ChAdOx1、Gam-Covid-Vac)、蛋白ワクチン(NVX-CoV2373)、不活化ワクチン(CoronaVac、BBIBP-CorV)とワクチンの種類によらず減弱しているものと考えなければならない。 南アフリカ株感染に対するワクチンの実際の予防効果を検討した報告は多くないが、Madhiらは、AstraZeneca社のAd-vectoredワクチンであるChAdOx1は南アフリカ株感染に対して有効な発症予防効果を示さないことを明らかにした(Madhi SA, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 16. [Epub ahead of print])。彼らの報告によると、南アフリカ株に対するChAdOx1の発症予防効果は、1回の接種後で33.5%(95%信頼限界[CI]:-13.4~+61.7%で非有意)、2回接種後で10.4%(95%CI:-76.8~+54.8%で非有意)でともに有意な予防効果ではなかった。一方、1回接種のAd-vectoredワクチンとして開発されたJohnson & Johnson社のAd26.COV2.Sの発症予防効果は、従来株に対して72%、南アフリカ株に対して57%であった(ENSEMBLE Study, PRNewswire. 2021年1月29日)。興味深い事実として、Ad26.COV2.Sのブラジルを中心とした南米での発症予防効果は66%で、従来株と南アフリカ株に対する予防効果の中間に位置した。Novavax社の蛋白ワクチンNVX-CoV2373の2回接種後の発症予防効果は、英国株(従来株を含む)に対して85.6%、南アフリカ株(対象はHIV陰性者)に対して55%であった(Brown. Evaluate Vantage. 2021年1月29日)。以上の結果を総括すると、武漢原株のS蛋白遺伝子情報を基に作成された種々のワクチンの変異株に対する液性中和作用は著明に減弱しているにもかかわらず、発症予防効果は英国株に対してはほぼ維持、南アフリカ株に対しては低下(しかし、有効)、ブラジル株に対しては両者の中間(有効)に位置するものと考えられる。以上の事実は、ワクチン接種後の液性中和作用の減弱がT細胞由来の細胞性免疫の賦活によって補完されていることを示唆する。 現状のワクチン接種が世界的に推進されていくと、従来株に加え変異株の中心的存在である英国株に対しても、今年中に集団免疫が確立されるものと予測される。その結果、コロナウイルスは集団免疫を回避するため、現状のワクチンに対して英国株より強い免疫回避作用を有する南アフリカ株、ブラジル株を近未来のウイルスとして選択する可能性がある。あるいは、現在の変異株と質的に異なる免疫回避作用を有する強力な新規変異株が形成される可能性も否定できない。ワクチン接種による従来株、英国株に対する集団免疫の確立は人類にとって必要不可欠な事項であるが、それでコロナ感染症が終焉を迎えるわけではなく、その先には、新たな未知の闘いが待っている可能性を念頭に置く必要がある。

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049)コロナワクチン、インフルワクチンとの違いは?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第49回 コロナワクチン、インフルワクチンとの違いは?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆いよいよ、医療従事者に加えて高齢者への新型コロナワクチン接種が始まりましたね。私の勤める病院でも職員への集団接種が始まり、先日1回目の接種を受けました。医局でも、やはりワクチン接種の話題で持ち切りで、筋注のこと、副反応のことなど情報が飛び交っています。周囲の人たちは、だいたい3割くらいが1回目の接種を受け終わっているような印象で、まだの人も予定はちらほらと決まってきました。なかには2回目の接種が終わっている医師も。よく耳にする副反応は、接種翌日の刺入部の筋肉痛。腕を動かさなければ気にならない程度という医師が多く、私自身も確かにそのような感じでした。(しかし、刺入部をうっかり壁にぶつけてしまうと、なかなかの痛みが……)私の周囲では、今のところ1回目の接種が終わったばかりの医師が多いため、2回目接種の副反応についてはまだあまり耳にしません。発熱、頭痛、全身倦怠感など、つらいのは2回目という話も聞くので、3週間後の2回目の接種も、心して挑みたいです。なお、肩の筋肉注射を受けたのは今回が初めてでしたが、想像以上に痛みが少なかったです。刺すときにわずかな痛みがあるのと、注入時に奥のほうが少し痛い気がする程度。インフルエンザワクチンの皮下注射のときのような、指の爪の先で思いっきり皮膚をつねるかのような注入時の痛みと比べれば、本当にごくわずか。皮下注射後によくある刺入部の腫脹発赤、痛痒さもなく、筋肉注射のほうが快適かもしれないという事実に気が付きました。施術者が筋注に慣れている人だったら、今後のインフルエンザワクチンもぜひ筋肉注射でお願いしたいくらいです。以上、コロナワクチン接種にまつわるあれこれでした。それでは、また~!

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