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ブレークスルー感染、女性・30歳以上で起こりやすい?

 ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJing Sun氏らが新型コロナワクチン接種後のブレークスルー感染*の発生率と発生率比(IRR)を特定することを目的とし、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、患者の免疫状態に関係なく、完全ワクチン接種がブレークスルー感染のリスク低下と関連していることが示唆された。また、ブレークスルー感染が女性や30歳以上で起こりやすい可能性も明らかになった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2021年12月28日号掲載の報告。*本研究ではブレークスルー感染を、ワクチン接種の14日目以降に発症した新型コロナウイルス感染症と定義しており、2回目完了後の発症としていない。 本研究は、全米の新型コロナに関する臨床データを一元化しているNational COVID Cohort Collaborative(N3C)1)のデータに基づいて分析した。2020年12月10日~2021年9月16日の期間に新型コロナワクチンを1回以上接種した症例がサンプルに含まれた。また、ワクチン接種、新型コロナの診断、免疫機能障害の診断(HIV感染、多発性硬化症、関節リウマチ、固形臓器移植、骨髄移植)、そのほかの併存疾患、人口統計データを検証するにあたり、N3C Data Enclaveを介した。 この研究ではFDAが認可した3つの新型コロナワクチン(ファイザー製[BNT162b2]、モデルナ製[mRNA-1273]、J&J製[JNJ-784336725])と、そのほかのワクチン(アストラゼネカ製など)接種者が含まれた。また、完全ワクチン接種というのは、mRNAワクチンとそのほかのワクチン接種の場合は2回接種、J&J製の場合は1回接種と定義。部分ワクチン接種というのは、mRNAワクチンやそのほかのワクチンを1回のみ接種と定義付けた。2回接種または1回のみ接種後のリスクは、ポアソン回帰を使用して免疫機能障害の有無にかかわらず評価された。 主な結果は以下のとおり。・N3Cのサンプルには計66万4,722例が含まれていた。・患者の年齢中央値(IQR)は51歳(34~66)で、そのうち女性は37万8,307(56.9%)と半数以上を占めていた。・全体として、新型コロナのブレークスルー感染の発生率は、完全ワクチン接種者で1,000人月あたり5.0だった。しかし、デルタ変異株が主要株になった後は高かった(2021年6月20日以前と以降の1,000人月あたりの発生率は、2.2(95%信頼区間[CI]:2.2~2.2)vs. 7.3(95%CI:7.3~7.4)だった。・部分ワクチン接種者と比較し完全ワクチン接種者では、ブレークスルー感染のリスクが28%減少した(調整済みIRR [AIRR]:0.72、95%CI:0.68~0.76)。・完全ワクチン接種後にブレークスルー感染した人は、高齢者や女性が多かった。また、HIV感染者(AIRR:1.33、95%CI:1.18~1.49)、関節リウマチ(AIRR:1.20、95%CI:1.09~1.32)、および固形臓器移植を受けた者(AIRR:2.16、95%CI:1.96~2.38)では、ブレークスルー感染の発生率が高かった。・具体的には、ブレークスルー感染リスクは18〜29歳と比較して30歳以上で30〜40%増加した。・ブレークスルー感染リスクは併存疾患の数が増えるにつれて増加したが、このリスクは免疫機能障害の状態に関連しており、とりわけそれによってAIRRが弱められた。 免疫機能障害のある人は完全ワクチン接種しても、そのような状態ではない人よりもブレークスルー感染リスクはかなり高かったことを受け、研究者らは「免疫機能障害のある人は、ワクチン接種を完遂してもマスク着用やワクチンの代替となるような戦略(例:追加接種や免疫原性試験)が推奨される」としている。

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COVID-19、ICU退室から1年後の身体・精神・認知症状の割合は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、集中治療室(ICU)で治療を受けた生存例では、1年後に約74%で身体症状が認められ、また約26%で精神症状が、約16%で認知症状が発現していたことが、オランダ・ラドバウド大学医療センターのHidde Heesakkers氏らが同国のICUで行った調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年1月24日号に掲載された。オランダの11のICUの探索的前向きコホート研究 本研究は、ICUで治療を受けたCOVID-19生存例における1年後の身体、精神、認知症状の発現の評価を目的とする探索的な前向きコホート研究で、ICU生存例(非COVID-19患者を含む)を対象とした多施設共同試験であるMONITOR-IC試験の一環として実施された。 対象は、年齢16歳以上のCOVID-19患者で、オランダにおけるCOVID-19急増の第1波の期間中(2020年3月1日~7月1日)に、同国の11の病院のICUに入室し、生存退院した集団であった。患者は1年間追跡された(最終追跡日は2021年6月16日)。 主要アウトカムは、ICU退室から1年後の自己報告式質問票で評価された身体症状、精神症状、認知症状であった。 身体症状については、フレイル(臨床フレイル尺度[≧5点])、疲労(Checklist Individual Strength下位尺度の疲労[≧27点])、身体機能障害の評価が行われた。精神症状は、不安(病院不安と抑うつ尺度[HADS]:下位尺度の不安[HADS-A]≧8点)、抑うつ(HADS下位尺度の抑うつ[HADS-D]≧8点)、心的外傷後ストレス障害(出来事インパクト尺度の平均値≧1.75点)で、認知症状は、簡易認知的失敗質問票14項目(≧43点)で評価された。30.6%で2領域以上、10.5%で3領域すべての症状 試験期間中にICUで治療を受け、病院を生存退院したCOVID-19患者452例のうち、302例(66.8%)が試験に含まれ、このうち1年後の質問票に回答した246例(81.5%、平均年齢61.2歳[SD 9.3]、男性176例[71.5%]、平均BMI値28.0[SD 4.5]、ICU入室期間中央値18.5日[IQR:11~32])が解析の対象となった。 ICU治療から1年後の時点で、身体症状が74.3%(182/245例)、精神症状が26.2%(64/244例)、認知症状は16.2%(39/241例)で報告された。2領域以上の症状は30.6%、3領域すべての症状は10.5%の患者で認められた。また、ICU入室前に就業していた生存者の57.8%で、仕事関連の問題(就業時間の短縮、病気による欠勤の継続など)が報告された。 身体症状のうち、フレイルが6.1%(15/245例)、疲労が56.1%(138/246例)、1つ以上の身体機能障害(新規、悪化)は67.1%(165/246例)で発現した。最も頻度の高い新規の身体機能障害は体力低下(38.9%[95/244例])で、次いで関節のこわばり(26.3%[64/243例])、関節痛(25.5%[62/243例])、筋力低下(24.8%[60/242例])、筋肉痛(21.3%[52/244例])、呼吸困難(20.8%[51/245例])の順だった。 精神症状では、不安が17.9%(44/246例)、抑うつが18.3%(45/246例)でみられ、心的外傷後ストレス障害は9.8%(24/244例)で発現した。また、認知症状では、認知的失敗質問票のスコア中央値は24.8点(IQR:12.8~37.0)であり、発生率は16.2%(39/241例)であった。 著者は、「他のウイルスの感染爆発(2003年のSARS、2012年のMERSなど)では、ICU生存例の約3分の1で退院後6ヵ月以降に精神健康上の問題が発生しており、これは今回の研究の1年後の発生率(26.2%)よりもわずかに高かった。また、非COVID-19のICU生存例では、1年後に77.0%で身体症状が、35.5%で精神症状が、14%で認知症状が発現したと報告されている。これと比べると、本研究の身体症状(74.3%)、認知症状(16.2%)の発生率は同程度であるが、精神症状(26.2%)の発生率は低かった。一方、職場復帰の問題は、非COVID-19のICU生存例では43%だったのに対し、本研究では58%であった」としている。

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第94回 コロナ禍3年目、人類の敵はコロナじゃなかった…

実はこの1週間で2度も「ええーーー!!!!」と思う経験をした。私の場合、昼食は自分の個人事務所の近傍にある飲食店を利用している。「この時期に?」と思われるかもしれないが、常にほぼ年中無休の一人仕事であるため、そのくらいしか気分転換はない。もっとも完全な黙食で、オーダーした料理が届くまではマスクをし、食べ終わったらマスクを装着してさっさと事務所に戻っている。本音を言うと、4人掛けテーブル席のような隣席との距離が保てるところに座りたいのだが、一人客だとカウンター席に案内されることが多い。最近では飲食店のカウンター席も隣のスペースとはアクリル板で仕切られていることがほとんどだが、言い訳程度の仕切りも少なくないので本音ではやや不安だ。先日の日曜日、近所のカフェに入った時は運よくテーブル席に座ることができた。もっともカウンター席からほど近いテーブル席。カウンター内にいる従業員とカウンター席に座る客との会話は丸聞こえだ。まあ、通常はそんなのも聞き流しているのだが、女性従業員が客に語っていたある一言が耳に入り、フリーズしてしまった。「まあ、私はさ、しっかり予防しているから。毎週イベルメクチン飲んで」医療従事者の多くがご存じのとおり、今回の新型コロナが流行した当初、治療薬がほとんどなかった際にドラッグ・リポジショニングとして注目された物の一つが駆虫薬のイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)だ。これは北里大学特別栄誉教授の大村 智氏が発見した放線菌が生産する物質の化学誘導体で、大村氏はこの研究で2015年のノーベル医学生理学賞を受賞している。新型コロナに関しては北里大学による医師主導の臨床試験と国内製薬企業の興和による臨床試験が実施され、前者はすでに試験を終了してデータの解析中である。イベルメクチンに関しては発展途上国を中心に新型コロナに関する研究報告は数多い。しかし、その中身はかなり小規模の観察研究がほとんど。しかも、投与方法や併用薬も統一したものではなく、有効と断言できるエビデンスは、はっきり言って乏しい。しかし、SNS上では、一部の人がこの薬を「新型コロナの特効薬」と持ち上げ、同時に既存の新型コロナワクチンや治療薬に関する重箱の隅を突いたかのようなネガティブ情報の発信を行っている。表現は悪いがもはや「イベルメクチン真理教」である。手に負えないのは、こうした「信者」の考えに一部の研究者や政治家までも賛同を示していることだ。彼らのイベルメクチン支持には、「日本発の薬」だからというある意味ナショナリズム的な思考も見え隠れする。昨年、私はイベルメクチンについてSNS上でネガティブな言及をした際には、ほぼ丸2日も「信者」たちに絡まれるプチ炎上を経験したほどだ。一部の「信者」がわざわざ個人輸入までしてイベルメクチンの予防内服をしているとの投稿もSNS上では時々目にしていたが、私は人口1億人超の日本でのノイジー・マイノリティぐらいにしか思っていなかった。そのためリアルで当事者に遭遇してやや驚いたのだ。それでもノイジー・マイノリティにたまたま遭遇したのだろうと思って納得していた。この翌日、別の飲食店のカウンター席で昼食を取っていた最中、一つ離れた席に座っていた男性客と従業員の会話を聞いて再び驚いた。従業員「しかし、本当に感染の勢い止まらないですよね」男性客「自分は外回りで人に会うからさ、やれる対策は何でもやろうと思ってね。先月中旬から2週間に1回、イベルメクチンという薬を飲み始めたんですよ」私がたまたまノイジー・マイノリティに連日遭遇しただけという可能性は十分にある。とはいえ、気になったのは最初に遭遇した飲食店の女性従業員も、客との会話で今年に入ってから服用し始めたと話していたことだ。つまり私が遭遇した2人とも、オミクロン株による感染拡大に自身で対処しようと思い、ネットサーフィンで得た情報からイベルメクチンの服用に至ったということなのだろう。そうでもない限り、素人が新型コロナに対してイベルメクチン服用を思い立つことはほぼあり得ない。ちなみに『信者』らはイベルメクチンに関して“安全性の高さ”をやたらと強調するが、医療従事者の多くが知っているように、既存のイベルメクチンの安全性データの多くが、腸管糞線虫症への2回服用、あるいは疥癬への単回服用のデータであって、慢性的に服用する際の安全性は明らかではない。玉石混交の情報から「自分が見たい」あるいは「自分にとって耳触りの良い」情報のみを抽出できるネットの罪の部分が顕在化している一例といえばそれまでだ。しかし、前述のようにイベルメクチン問題では、この薬に好意的な一部の研究者、政治家がさらに「権威付け」してしまっているという最悪の構図も存在する。人の上に立つ、あるいは人前に出がちな人の科学リテラシーの程度次第で社会に計り知れない影響を与える可能性を街角で思い知らされた週となった。これがコロナ禍3年目の市中の様子の一端である。改めて肝に銘じておこうと思う。

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mRNAワクチンの心筋炎リスク、年齢・男女別に2億人を解析/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種後の心筋炎リスクは、男女とも複数の年齢層で上昇し、とくに12~24歳の男性で2回目接種後に高かった。米国疾病予防管理センター(CDC)のMatthew E. Oster氏らが、米国の受動的なワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)を基にした解析結果を報告した。著者は、「心筋炎のリスクは、COVID-19ワクチン接種のメリットに照らして検討する必要がある」とまとめている。JAMA誌2022年1月25日号掲載の報告。米国VAERSへの心筋炎の報告を検証 研究グループは、2020年12月14日~2021年8月31日に、mRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer/BioNTech製]またはmRNA-1273[Moderna製])を接種した米国の12歳以上の1億9,240万5,448例を対象に、接種後に発生した心筋炎のVAERSへの報告について解析した(データカットオフ日2021年9月30日)。 主要評価項目は心筋炎、副次評価項目は心膜炎の発生。VAERSへの心筋炎の報告は、CDCの医師および公衆衛生の専門家が検討し、CDCの心筋炎(疑いまたは確定)の定義を満たしているかを確認し、すべての年齢層についてまとめた。 年齢別および男女別に、粗報告率を算出するとともに、心筋炎の予測率を2017~19年の医療費請求データを用いて算出した。また、30歳未満で心筋炎の疑いあるいは確定した症例については、医学的評価および臨床医のインタビューを行い、可能な限り臨床経過(発症前の症状、確定診断検査の結果、治療、早期転帰など)をまとめた。2回目接種後の16~17歳・男性で心筋炎報告率が最も高く約1万人に1人 調査期間中、mRNAワクチンの接種は1億9,240万5,448例において計3億5,410万845回行われた。VAERSへの心筋炎の報告は1,991例で、このうちCDCの定義を満たした心筋炎患者1,626例が解析対象となった。心筋炎患者の年齢中央値は21歳(IQR:16~31)、症状発現までの期間中央値は2日(IQR:1~3)で、1,334例(82%)が男性であった。 mRNAワクチン接種後7日以内の心筋炎の報告は、BNT162b2ワクチン接種者が947例、mRNA-1273ワクチン接種者が382例であった。接種後7日以内の心筋炎粗報告率は、ワクチンの種類、性別、年齢層、1回目または2回目接種で異なっていたが、男女とも複数の年齢層で予測率を越えた。 ワクチン接種100万回当たりの心筋炎報告率は、12~15歳男性(BNT162b2ワクチン70.7)、16~17歳男性(BNT162b2ワクチン105.9)、18~24歳男性(BNT162b2ワクチン52.4、mRNA-1273ワクチン56.3)において2回目接種後に高かった。 詳細な臨床情報が得られた30歳未満の心筋炎患者は826例で、そのうちトロポニン値上昇が98%(792/809例)、心電図異常が72%(569/794例)、MRI所見異常が72%(223/312例)に認められた。96%(784/813例)が入院し、このうち87%(577/661例)は退院までに症状が消失した。最も多かった治療は、非ステロイド性抗炎症薬が87%(589/676例)であった。 なお、著者は研究の限界として、VAERSは受動的な報告システムであるため、心筋炎の報告が不完全で情報の質が多様であり、過少報告または過剰報告の両方があり得ること、ワクチン接種のデータはCDCへ報告された者に限られているため不完全であった可能性があることなどを挙げている。

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コロナワクチン、5歳未満への緊急使用をFDA申請へ/ファイザー

 米・ファイザーは2月1日付のプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの緊急使用許可を、5歳未満の乳幼児にも拡大するよう求める申請手続きを開始したことを発表した。米国では、オミクロン株まん延下で小児COVID-19症例と入院が急増し、中でも4歳未満の乳幼児の感染例が160万超に上るという。米国では現在5歳以上がワクチン接種の対象だが、FDAが承認すれば、新たに生後6ヵ月~5歳未満への接種が可能になる。 本申請は、生後6ヵ月~5歳未満の小児に対し、3μg(12歳以上を対象としたワクチン30μgの10分の1用量)を2回接種するもの。ファイザーは、現在および潜在的な将来の変異株に対する高いレベルの保護を達成するためには、3回目の追加接種も必要になるとの考えだ。したがって、今回は想定されている3回接種のうち、初回として初めの2回接種について承認を求めているが、3回目の追加接種に関する試験データについても順次FDAに追加提出し、さらに承認の拡大を目指す方針。 翻って日本では、1月21日、ファイザー製の「コミナティ筋注 5~11歳用」の製造・販売が特例承認され、3月以降で接種が始まる見通しが立ったばかりの段階。諸外国では、イスラエルなどが5歳未満への接種を計画しているが、実施に至っている国はなく、世界に先駆けたFDAの判断が注目される。

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mRNAワクチン3回接種、オミクロン株とデルタ株への有効性は?/JAMA

 2021年12月10日~2022年1月1日に新型コロナウイルス感染症様(COVID様)症状を有し検査した人において、mRNAワクチンの3回接種は未接種および2回接種と比較し、オミクロン変異株およびデルタ変異株の両方に対して感染予防効果があることが認められた。米国疾病予防管理センター(CDC)のEmma K. Accorsi氏らが、症例対照研究の結果を報告した。ただし、その効果は、デルタ変異株に比べてオミクロン変異株で低いことが示唆された。JAMA誌オンライン版2022年1月21日号掲載の報告。2021年12月に米国の4,666施設で検査を受けた7万155例について解析 研究グループは、COVID-19のmRNAワクチン3回接種と症候性SARS-CoV-2感染との関連性を、変異株(オミクロン株およびデルタ株)別に推定する目的で、2021年12月10日~2022年1月1日に全米の薬局における検査プログラム(49州のCOVID-19検査施設4,666施設)で検査を受けた18歳以上のCOVID様症状を有する成人7万155例を対象に、診断陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を行った。 BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはmRNA-1273(Moderna製)ワクチン3回接種(3回目の接種は検査の14日以上前かつ2回目の接種から6ヵ月以上経過)と、ワクチン未接種および2回接種のみ(2回目接種は検査の6ヵ月以上前、すなわちブースター接種の対象)を比較した。 主要評価項目は、オミクロン変異株またはデルタ変異株による症候性SARS-CoV-2感染。S遺伝子が検出されなかった(S gene target failure:SGTF)感染をオミクロン変異株陽性、非SGTF感染をデルタ変異株陽性とした。すなわち、N遺伝子およびORF1ab遺伝子のPCRサイクル閾値(Ct値)がありS遺伝子のCt値がないをSGTF、それ以外を非SGTFとした。 多変量多項ロジスティック回帰分析により、症例と対照における3回接種vs.未接種および3回接種vs.2回接種のオッズ(OR)を比較することにより、症候性感染とワクチン接種との関連を推定した。また、陽性例において、副次評価項目として、3つのウイルス遺伝子のCt値(ウイルス量に反比例)中央値を、変異株別およびワクチン接種の有無別で比較した。対未接種:オミクロン株67%、デルタ株93.5%、対2回接種:66%、84% 解析対象は、感染例が2万3,391例(オミクロン変異株1万3,098例、デルタ変異株1万293例)、検査陰性(対照)が4万6,764例(平均[±SD]年齢40.3±15.6歳、女性4万2,050例[60.1%])であった。 ワクチン3回接種者の割合は、オミクロン変異株感染例では18.6%(2,441例)、デルタ変異株感染例では6.6%(679例)であり、検査陰性では39.7%(1万8,587例)であった。また、2回接種者はそれぞれ55.3%(7,245例)、44.4%(4,570例)、41.6%(1万9,456例)であり、ワクチン未接種者はそれぞれ26.0%(3,412例)、49.0%(5,044例)、18.6%(8,721例)であった。 3回接種vs.未接種の補正後ORは、オミクロン変異株が0.33(95%信頼区間[CI]:0.31~0.35)、デルタ変異株が0.065(0.059~0.071)、3回接種vs.2回接種の補正後ORは、オミクロン変異株が0.34(0.32~0.36)、デルタ変異株が0.16(0.14~0.17)であった。 Ct値中央値は、オミクロン変異株およびデルタ変異株共に3回接種者で2回接種者より有意に高かった(オミクロンN遺伝子:19.35 vs.18.52、オミクロンORF1ab遺伝子:19.25 vs.18.40、デルタN遺伝子:19.07 vs.17.52、デルタORF1ab遺伝子:18.70 vs.17.28、デルタS遺伝子:23.62 vs.20.24)。

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デルタ株流行期前後の比較では患児のICU入院が多い/成育研・国際医研

 国立成育医療研究センターと国立国際医療研究センターの合同研究チームは、デルタ株流行期における小児新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株が流行する以前と比較検討した。今回、その結果を庄司 健介氏(国立成育医療研究センター)らのグループが発表した。 この研究は、2020年10月~2021年5月までをデルタ株以前、2021年8月~10月までをデルタ株流行期とし、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例1,299人(デルタ株以前:950人、デルタ株流行期:349人)を対象に実施。その結果、デルタ株流行期は、デルタ株以前に比べて患者年齢が低いこと(中央値7歳vs.10歳)、基礎疾患のある患者の割合が高いこと(12.6%vs.7.4%)、集中治療室(ICU)入院を要した患者が多いこと(1.4%vs.0.1%)などが明らかとなった。 なお、研究では国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用した。(※本研究は、オミクロン株がまだ存在しなかった時期に実施されているため、その影響は検討できていないことなどに留意願いたい)デルタ株流行期ではICU入院の小児患者が増加【背景・目的】 COVID-19の第5波では、小児患者数も増加したが、小児患者の臨床的特徴や重症度がデルタ株の流行により変化があったのか、どのような小児患者が重症化していたのかなどの情報は限られ、解明が求められていた。これらを明らかにすることを目的とした。【研究対象・方法】・研究対象:2020年10月~2021年5月(デルタ株以前)と2021年8月~10月(デルタ株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者・研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、予後などのデータを集計・分析【研究結果】・期間中に研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株以前950名、デルタ株流行期349名。・入院患者の年齢の中央値はデルタ株以前が10歳、デルタ株流行期が7歳と、デルタ株流行期の方が若年化している傾向にあった。・入院患者に占める無症状の患者の割合はデルタ株以前が25.8%、デルタ株流行期が10.3%と、デルタ株流行期にはより症状のある患者が多く入院していたことがわかった。・ICUに入院した患者の数と割合は、デルタ株以前1名(0.1%)、デルタ株流行期5名(1.4%)と、いずれもデルタ株流行期で高かったことがわかった。症状があった患者に限って同様の解析を行ったところ、デルタ株以前1名(0.1%)、デルタ株流行期5名(1.6%)と患者全体での解析とほぼ同様の結果だった。・ICUに入院した患者のうち、半数(3/6名)は基礎疾患(喘息または肥満)のある患者だった。 研究グループでは、「今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、本研究の結果がその基礎データとして利用されることが期待できる」と感想を寄せ、「オミクロン株の与える影響など、引き続き検討していく必要があると考えられる」と研究の展望を語っている。また、「小児のCOVID-19患者の絶対数が増えると、集中治療を要するような小児患者も増えることが予想され、オミクロン株が流行している現在においても、小児患者について注意深く診ていくことが求められる」と注意を促している。

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国内データで見るオミクロン株へのワクチン2回接種の効果

 新型コロナワクチンの3回目のブースター接種が昨年12月から始まっているものの、初回接種(当初規定された2回目接種まで)時のような進捗が見られない。しかし一方で、オミクロン株の急拡大に歯止めが掛からないのが現状だ。多くが初回接種にとどまっている中、まん延するオミクロン株にはどれほどの効果があるのだろうか。長崎大学などの研究チームが、国内4都県5ヵ所の医療機関において、今年1月1日~21日までに新型コロナウイルス感染症が疑われる症状で検査を受けた患者400例超を解析したところ、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種の発症予防効果は51.7%で、昨年の第5波に流行したデルタ型と比べ大幅に低下していたことがわかった。本結果は、研究チームが進めているVaccine Effectiveness Real-Time Surveillance for SARS-CoV-2(VERSUS)Studyの暫定データで、 1月26日付で発表された。 本報告は、新型コロナウイルスのオミクロン株が全国で広がり始めた2022年1月1日~21日までに、全国4都県(東京、神奈川、埼玉、愛知)計5ヵ所の医療機関において、COVID-19が疑われる症状で受診した16歳以上を対象に、患者基本情報、症状、新型コロナワクチン接種歴(接種の有無、接種回数、接種日、接種したワクチンの種類)、新型コロナウイルス検査結果のデータを収集し、このうち417例について解析した暫定値。それによると、16~64歳において、ファイザー製あるいはモデルナ製いずれかのワクチンの2回接種完了(2回接種後14日以上経過)による、未接種者と比較した発症予防における有効性は51.7%(95%信頼区間[CI]:2.0~76.2%)と推定された。デルタ株が流行した2021年7月1日~9月30日における同値は88.7%(95%CI:78.8~93.9%)であり、新型コロナワクチンの有効性は低下していると考えられるという。 解析対象者の年齢中央値は32歳(四分位範囲:24~43歳)で、男性は227例(54.4%)、416例(99.8%)は自宅生活者であり、43例(10.3%)に基礎疾患があった。また、67例(16.1%)にCOVID-19患者との接触歴があった。ワクチン接種歴は、未接種53例(12.7%)、1回のみ接種完了5例(1.2%)、2回接種完了346例(83.0%)、接種歴不明1例(0.2%)だった。

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年末年始の当直・輪番当番は増えた、減った?/ケアネット

 2022年も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する中で迎えた。とくに初冬より流行し始めたオミクロン株は感染力の強さもあり、わが国全体が不安と戸惑いの中で新しい年を迎えた。そうした環境の中で、果たして年末・年始の当直・輪番当番に大きな動きはあったのであろうか。CareNet.comは1月13日(木)にWEBアンケートで医師会員400名に年末・年始の当直・輪番当番について調査を行った。■アンケート概要実施期日:2022年1月13日(木)調査方法:インターネット対象者:医師会員400名(年齢別に20・30代/40代/50代/60代以上に区分)「年代が若い」「病床規模が大きい」の項目で当直・輪番当番が「あり」の回答が増加 質問1として「年末年始に当直当番また輪番当番があったか」(単回答)をたずねたところ、医師会員全体(n=400)で「あった」が206名(51.5%)、「ない」が194名(48.5%)とほぼ同程度だった。20・30代の医師会員(n=100)では「あった」が63名、「ない」が37名と「あった」と回答した医師が多かったが、60代以上の医師会員(n=100)では「あった」が43名、「ない」が57名と「ない」が回答を逆転した。 また、病床別では「あった」について200床以上(n=236)で146名(61.9%)、20~199床(n=81)で38名(46.9%)、0~19床(n=83)で22名(26.5%)と規模により大きく分かれた。 質問2として「年末年始の当直当番または輪番当番の頻度はどれくらいか」(単回答)をたずねたところ、医師会員全体(n=400)では「3~4日に1回程度」が83名(20.75%)と回答した医師会員が一番多かった(「なかった」を除く)。また、「4~7日に1回程度」が79名(19.75%)も2番目に多く、短期のローテーションで当番に入っていた。病床別でもほぼ同様の回答傾向だった。 質問3として「1年前の年末年始と比較して来院患者数に増減はあったか」(単回答)をたずねたところ、医師会員全体(n=400)では「同程度」が187名(46.75%)、「減った」が49名(12.25%)の順で多く、「増えた」のは37名(9.25%)だった。医師会員の回答では、例年通りの年末年始の来院者数だったことがうかがえる(不明または診療していないを除く)。病床別でもほぼ同様の回答傾向だった。 質問4として「年末年始の当直当番や輪番当番について改善すべき点」(複数回答)をたずねたところ「当番可能な医師・医療スタッフの増員」が180名、「COVID-19疑い患者用の特別外来の設置と誘導」が135名、「患者さんへの疾患啓発」が112名の回答順で多かった。 最後に自由記載として「年末年始の診療でとくに印象に残った症例や患者さんのエピソード」についてたずねたところ、「モチによる気道の閉塞」「患者の問題受診行動(例:コンビニ受診、救急車をタクシー代わりなど)」「高齢者の便秘」「切迫した急な手術」などが寄せられた。

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塩野義の経口コロナ治療薬、速やかなウイルス減少効果を確認~第II/III相試験

 塩野義製薬は1月31日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として開発中の経口薬(S-217622)について、軽症・中等症および無症候のSARS-CoV-2感染者へ投与した際の、ウイルス力価の変化量を検討した第II/III相試験のデータを発表した。それによると、実薬投与群におけるSARS-CoV-2陽性患者の割合が、3回投与後の時点で、プラセボ群と比べ最大80%減少したことを示したという。 S-217622は、塩野義製薬が北海道大学との共同研究により創製した3CLプロテアーゼ阻害薬。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はウイルスの増殖に必須の3CLプロテアーゼを有し、本治療薬は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。 第II/III相試験では、軽症・中等症および無症候のSARS-CoV-2感染が確認された日本成人を対象に、本治療薬を1日1回、5日間経口投与した際の抗ウイルス効果ならびに安全性を評価した。その結果、実薬投与群におけるウイルス力価陽性患者(≧0.8Log10 [TCID50/mL])の割合は、3回投与後(投与開始4日目)の時点で、プラセボ群と比べ63~80%の減少を示した。本試験における高度な有害事象および重篤な有害事象は確認されず、忍容性が確認された。 プレスリリースと同日に開示された同社の2021年度第3四半期決算説明会資料1)には、第II/III相臨床試験のうちPhase 2a partの6日目までのデータが記載されており、本治療薬がオミクロン株を含め、幅広い株に対して活性を示したことも明らかにされている。 塩野義製薬では、2021年12月に商用に向けた本治療薬の初回ロットの製造を完了しており、本年3月までに100万人分の提供体制を構築し、4月以降は年間1,000万人分以上を生産予定。

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COVID-19経口治療薬「モルヌピラビル」の有効性(解説:小金丸博氏)

 モルヌピラビルはSARS-CoV-2や他のRNAウイルスに対して活性を有するリボヌクレオシドアナログである。RNA依存性RNAポリメラーゼに作用することによりウイルスRNAの配列に変異を導入し、ウイルスの増殖を阻害する。今回、重症化リスクを有する非重症COVID-19患者に対するモルヌピラビルの有効性と安全性を検討した第III相プラセボ対象ランダム化二重盲検試験の結果がNEJM誌オンライン版に報告された。被験者1,433例を対象とした解析では、プラセボ投与群(699例)の重症化が68例(9.7%)だったのに対し、モルヌピラビル投与群(709例)では48例(6.8%)であった(相対リスク減少率:30%)。死亡者数はプラセボ投与群9例(1.3%)に対してモルヌピラビル投与群では1例(0.1%)であり、モルヌピラビル投与群で少数であった。劇的な効果とはいえないものの、非重症COVID-19に対して一定の重症化予防効果を示した。 サブグループ解析の結果をみてみると、発症4~5日目の患者、肥満患者(BMI 30以上)、ベースラインのSARS-CoV-2抗体陰性の患者(未感染者)でモルヌピラビルの有効性を認めた。既感染者より未感染者に対してモルヌピラビルが有効性を示す理由が明確でないが、発症時のウイルス量が多い方が有効性を期待できる結果となっており、関連が推察される。 高濃度酸素投与が必要な重症患者、発症6日目以降の患者、新型コロナウイルスワクチン接種者、人工透析患者等は、本試験から除外された。これらの患者に対する有効性は確立していないことに注意が必要である。 本試験の結果を参考に、本邦においても2021年12月24日に特例承認された。発症早期の重症化リスク因子を有するCOVID-19患者に対して適応があり、妊婦、または妊娠している可能性のある女性には投与できない。本薬剤は非重症COVID-19患者に対する国内初の経口抗ウイルス薬である。治療の選択肢が増えたこと、外来患者に対して投与できることは、医療者側にとっても大きなメリットとなる。副反応についての情報はまだ不十分であり、さらなる知見の集積が必要である。

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小児用の新型コロナワクチン「コミナティ筋注5~11歳用」【下平博士のDIノート】第91回

小児用の新型コロナワクチン「コミナティ筋注5~11歳用」今回は、小児用のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチン「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名:コミナティ筋注5~11歳用、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。これまで新型コロナワクチンの接種対象外であった5~11歳の小児が適応となるため、小学校などでの集団感染や子供が発端となる家庭内感染を抑えることが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の予防の適応で、2022年1月21日に特例承認されました。接種対象は5歳以上11歳以下の小児です。なお、本剤の予防効果の持続期間は確立していません。<用法・用量>日局生理食塩液1.3mLで希釈し、1回0.2mLを合計2回、通常3週間の間隔で筋肉内に接種します。1回目の接種から3週間を超えた場合には、できる限り速やかに2回目の接種を実施します。本剤は2回接種により効果が確認されているため、原則として、同一の効能・効果をもつ他ワクチンと混同することなく2回接種します。<供給・保管に関する注意>本剤は冷蔵庫(2~8℃)で解凍後、10週間の保存が可能であり、超低温冷凍庫の設備は必須ではありません。30℃を超えない室温で解凍する場合は、解凍開始から24時間以内(一度針を刺した後の時間を含む)に使用します。希釈後は2~30℃で12時間までの保存が可能となっています。<安全性>臨床試験で報告された主な副反応は、注射部位疼痛84.3%、疲労51.7%、頭痛38.2%、発赤・紅斑26.4%、腫脹20.4%、筋肉痛17.5%、悪寒12.4%などでした。また、重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、心筋炎、心膜炎(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.このワクチンを接種することで新型コロナウイルスに対する免疫ができ、新型コロナウイルス感染症の発症を予防します。2.本剤の接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保ってください。3.医師による問診、検温および診察の結果から、接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは、本剤の接種を受けることができません。4.合計2回を3週間の間隔で筋肉内に接種します。1回目の接種から3週間を超えた場合は、できる限り速やかに本剤の2回目の接種を受けてください。5.本剤の接種直後または接種後に、心因性反応を含む血管迷走神経反射として、失神が現れることがあります。接種後一定時間は接種施設で待機し、帰宅後もすぐに医師と連絡を取れるようにしておいてください。6.接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。7.心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸など)が認められた場合には、すみやかに医師の診察を受けてください。<Shimo's eyes>本剤は12歳以上が対象のmRNAワクチン「コミナティ筋注」(2021年2月承認)と同一有効成分であり、11歳以下であっても使用できる小児用新型コロナワクチンとして初めて特例承認されました。5~11歳を対象に行った海外の臨床試験では、90.7%の有効性が確認されています。本剤は、希釈後の濃度が従来製剤の半分になるように調整されており、0.2mLで有効成分10μg(12歳以上への投与量の3分の1)が投与されます。従来製剤とは希釈液量が異なるので代用はできません。デッドボリュームの少ない注射針またはシリンジを使用した場合、10回分を採取することができます。1回量0.2mLを採取できない場合は、残量は使わずに廃棄します。従来製剤のバイアルキャップは紫色ですが、取り違えを防ぐため、小児用の本剤はオレンジ色となっています。そのほか、両剤の違いは「適正使用ガイド」にまとめられています。

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第97回 COVID-19後遺症様の症状が稀にワクチン接種後にも生じうる

イスラエルでもワクチンのCOVID-19後遺症予防効果あり去年9月に発表された英国での試験1)と同様に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種済みの人のSARS-CoV-2感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の主なものはどれも非接種の人に比べて少ないことがイスラエルでの試験でも示されました2,3)。もっと言うと、ワクチン接種済みの人のそれらの症状はSARS-CoV-2に感染したことのない人より多くもありませんでした。COVID-19後遺症全般についてはワクチンによる予防効果が認められなかった試験報告4)もありますが、エール大学の岩崎明子(Akiko Iwasaki)氏によれば今回のイスラエルでの試験や英国での試験結果はともあれ吉報です。「COVID-19後遺症は悲惨で、消耗を強いる。そうならないようにする手立ては何であれCOVID-19後遺症がこれ以上増えるのを防ぐのに必要であり、(その手立てを担いうるという)ワクチン接種理由がまた1つ増えた」と同氏は言っています2)。ワクチン接種後にも稀ながら生じうる後遺症ワクチンがCOVID-19後遺症を予防しうるとの期待がある一方で、その後遺症に似た症状がワクチン接種後に生じることが稀ながらあるようです5)。かつて幼稚園の先生をしていたBrianne Dressen氏は2020年11月にSARS-CoV-2ワクチンを接種し、その日の晩までに目がぼやけはじめました。また、貝殻を耳に当てているように音が変になりました。症状は急激に悪化し、やがては心拍異常や筋肉の脱力に見舞われ、電気ショックのような感覚を被るようになりました。Dressen氏はいまやそのほとんどの時間を暗い部屋で過ごし、歯を磨くことや幼い我が子に触れられるのさえ耐えることができません。医師がDressen氏を不安症と診断してからときが過ぎ、今から1年前の2021年1月になると米国国立衛生研究所(NIH)の研究者はDressen氏に降り掛かったような事態を把握し始め、Dressen氏や他の患者をNIH施設に招いて検査し、時には治療も施しました。しかし手がかりは少なく、Dressen氏が被ったような長く続く体調不良をワクチンが引き起こしたのかどうかは分からずじまいでした。NIHと患者のやり取りは昨年2021年の遅くまでに途絶えてしまいました。内々で研究は続いているとDressen氏等の調査を率いたNIHの研究者Avindra Nath氏は言うものの、唯一の頼みの綱であったNIHが手を引いたことに患者は困惑し、がっかりしています。NIHの研究は尻すぼみとなりましたが、ワクチン接種後の後遺症を理解することはそれらで悩む人の助けになるでしょうし、もしワクチンとの関連の仕組みが明らかになれば次世代のワクチン開発の参考になるに違いありません。また、そういう後遺症の恐れがある人を事前に同定可能になるかもしれません。カリフォルニア大学の免疫学者William Murphy氏はSARS-CoV-2スパイクタンパク質が誘発する自己免疫で感染後とワクチン接種後のどちらの長患いも説明できるかもしれないとの論説をNEJM誌に去年11月に発表しました6)。感染後やワクチン接種後の好ましい抗ウイルス効果と生じて欲しくない副作用の両方に免疫反応がどう寄与しているかをもっと基礎から調べる必要があります。Murphy氏はワクチン接種の支持者ですが、ワクチンを皆に安心して接種してもらうにはワクチン接種に安全性の心配はないと言って済ますのではなくワクチンについて隈なく調べ尽くすことが必要だと述べています5)。しかしMurphy氏の期待とは裏腹にNIHのNath氏が率いた患者研究は長続きしませんでした。NIHの研究には患者34人が参加し、そのうち14人がNIHで診られ、残り20人は血液検体、それに何人かは脳脊髄液(CSF)検体を提供しました。しばし治療も受けた患者もおり、たとえばステロイド高用量投与や免疫グロブリン静注(IVIG)が施されました。そのようにNIHは初めこそ患者を助けようとしていたにもかかわらずやがて患者との接触を断つようになりました。去年の9月のDressen氏の神経検査の予定は遠隔面談となり、12月になるとNath氏は患者を来させないようにしました。多くの患者を長期間治療するようにNIHは設えられておらず、患者の地元の担当医が手当てにあたるのが最良だとNath氏は言っています。しかしNath氏の言い分とは裏腹に医師には何もしてもらえないという患者もいますし、気のせいだと決めつけられることもあります。そうして表向きは梯子を外したNIHですが、エール大学の岩崎 明子氏はNIHのNath氏の協力を仰いでワクチン接種後の反応とCOVID-19後遺症がどう関連するかを調べることを計画しています。すでに患者との話が始まっており、血液や唾液などの検体を患者から集めるつもりです。また自己抗体を疑うドイツの研究者Harald Pruss氏はマウスへのSARS-CoV-2ワクチン接種後の自己抗体の特定に取り掛かっています。Pruss氏は感染後やワクチン接種後の患者の治療にもあたっており、患者の血液から抗体のほとんどを取り除く治療を調べる臨床試験を近々開始したいと考えています。自己抗体などの免疫系の関与は患者の体験でも示唆されており、ワクチン接種後に不調に陥った患者の何人かはScienceの取材に応じて免疫抑制剤でいくらか良くなったと言っています。NIHのNath氏も同様の効果を把握しており、免疫抑制/調節作用があるIVIGやステロイドによるCOVID-19後遺症治療を調べているNIH主催臨床試験結果がワクチン関連の合併症にも役立つことを期待しています。岩崎氏がワクチン開発にも着手COVID-19研究で何かと目に耳にすることが多いエール大学の岩崎氏の取り組みは今やワクチン開発にも及んでいます。先週26日にbioRxiv誌に発表された同氏率いるチームのマウス実験の結果、mRNAワクチン筋肉注射に続くSARS-CoV-2スパイクタンパク質やそのmRNAの点鼻投与で呼吸器粘膜の免疫を安全に底上げして感染や発病を防ぎうることが示されました7)。次の段階として、より大きな動物や臨床試験での安全性や有効性の検討が必要です8)。将来的には他の粘膜ウイルス病原体にも今回と似た手段が通用しそうであり、岩崎氏の活躍を見聞きすることは今後ますます多くなりそうです。参考1)Antonelli M,et al.Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22:43-55. 2)Long-COVID symptoms less likely in vaccinated people, Israeli data say / Nature3)Association between vaccination status and reported incidence of post-acute COVID-19 symptoms in Israel: a cross-sectional study of patients tested between March 2020 and November 2021. medRxiv. January 17, 20224)Six-month sequelae of post-vaccination SARS-CoV-2 infection: a retrospective cohort study of 10,024 breakthrough infections. medRxiv. November 08, 20215)In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid-like symptoms. Science.6)Murphy WJ, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 27;386:394-396. 7)Unadjuvanted intranasal spike vaccine booster elicits robust protective mucosal immunity against sarbecoviruses. bioRxiv. January 26, 20228)岩崎 明子氏のTwitter投稿(2022年1月27日)

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新型コロナ、スーパースプレッダーとなりうる人の特徴/東京医科歯科大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、すべての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者がとくに感染を広げていくことが知られる。東京医科歯科大学の藤原 武男氏らによるRT-PCR検査によるウイルスコピー数を用いたCOVID-19入院患者の後ろ向き解析の結果、3つ以上の疾患の既往歴および、糖尿病、関節リウマチ、脳卒中の既往がスーパースプレッダーのリスク因子となることが示唆された。Journal of Infection誌オンライン版2021年12月30日号にレターとして掲載の報告より。 2020年3月~2021年6月に、中等症から重症のCOVID-19で東京医科歯科大学病院に入院し、少なくとも1回以上RT-PCR検査が行われた患者が解析対象とされた。入院患者の電子カルテの情報を基に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・がん・慢性腎不全・脳卒中・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーといった基礎疾患の有無とウイルスコピー数について関連が調査された。 主な結果は以下の通り。・計379例が適格となり、解析対象とされた。年齢中央値は59歳で、約33%が女性だった。・PCRテスト回数の中央値は2(1~26)回。複数回PCRテストを実施した患者の90%以上で、ウイルス量は1回目または2回目でその個人の最大値を示した。・約59%に基礎疾患があり、約21%に3つ以上の基礎疾患があった。・基礎疾患について詳細は、高血圧症が38.5%、糖尿病が21.6%、がんが18.7%、脂質異常症が18.5%、呼吸器疾患が10.8%、心疾患が9.0%、高尿酸血症が7.7%、慢性腎臓病が6.6%、脳卒中が5.0%、関節リウマチが2.1%だった。・1人を除きワクチンは未接種だった。・性別、年齢、喫煙状況について調整後の多変量回帰分析の結果、上記基礎疾患を3つ以上重複して有する患者では、基礎疾患のない患者と比較して、ウイルスコピー数が87.1倍(95%信頼区間[CI]:5.5~1380.1)高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・また、関節リウマチ患者では1659.6倍(95%CI:1.4~2041737.9)、脳卒中患者では234.4倍(95%CI:2.2~25704.0)倍、糖尿病患者では17.8倍(95%CI:1.4~ 223.9)ウイルスコピー数が高く、ウイルスコピー数の多さと有意に関連していた。・入院時の血液検査結果における血小板数とCRPレベルの低さも、ウイルスコピー数の多さと関連していた。 著者らは、軽症患者が解析に含まれていない点、変異株による影響が不明な点等の本研究の限界を挙げたうえで、基礎疾患の有無や検査値などの入院時に得られる情報に基づき、スーパースプレッダーとなる可能性の高い患者に対しては、とくに感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示されたとまとめている。

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医療者における毎日の手指消毒剤、皮膚バリアへの影響は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおいて、アルコールベースの手指消毒剤(ABHS)を用いて毎日行う手洗いは、皮膚バリアの破壊率が低く、バクテリアや真菌のコロニー形成単位(CFU)数も低値であることが示された。 スペイン・Virgen de las Nieves University HospitalのTrinidad Montero-Vilchez氏らが、水とせっけん、ABHS、除菌シートを比較した無作為化試験の結果を報告した。COVID-19により手洗いの頻度は増したが、臨床におけるさまざまな手指衛生の皮膚バリア機能への影響に関するエビデンスは不足していた。Contact Dermatitis誌オンライン版2021年12月25日号掲載の報告。 研究グループは、日常診療における医療従事者のさまざまな手指衛生法の、皮膚バリア機能への影響を比較する無作為化試験を実施した。 被験者は、8時間の勤務中に、水とせっけん、ABHS、または除菌シートで手指を消毒する3群に無作為に割り付けられた。経表皮水分蒸散量(TEWL)などの表皮バリア機能パラメーター、および微生物負荷を、就業の前と直後に評価した。各製品の耐性と受容性は、就業後に記録した。 主な結果は以下のとおり。・試験には62人が参加し、水とせっけん群20人、ABHS群21人、除菌シート群21人にそれぞれ無作為化された。・8時間の勤務後、TEWLの増加は、除菌シート群が、水とせっけん群およびABHS群よりも高かった(それぞれ+5.45 vs.+3.87 vs.-1.46g・h-1・m-2、p=0.023)。・細菌および真菌のCFU数の減少は、水とせっけん群が、ABHS群および除菌シート群よりも低かった。・除菌シートは、水とせっけん、ABHSと比較して、使いにくいと見なされていた(p=0.013)。

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JSMO2022の注目演題/日本臨床腫瘍学会

 2022年1月21日、日本臨床腫瘍学会はオンラインプレスセミナーを開催し、会長の国立がん研究センター中央病院の大江 裕一郎氏らが、第19回学術集会の注目演題などを発表した。 今回の学術集会のテーマは「Inspiring Asian Collaboration and the Next Generation in Oncology」。アジアとの協力関係と若手の活性化を目指したものだという。2022年2月17~19日に、現地(京都国際会館およびザ・プリンス京都宝ヶ池)開催を基本とし、webライブとオンデマンド配信を組み合わせたハイブリッド形式で行われる。演題数は1,000を超え、4分の1は海外からの演題とのこと。4つのPresidenstial Session 選ばれた優秀演題が発表されるPresidentialは1~4までのsessionで行われる。 Session1は乳がんと婦人科がんで2月17日午前、Session2は肺がんで2月17日午後、Session3は消化器がんで2月18日午前、Session4は造血器腫瘍と希少がんのトピックで2月19日の午前に開催される。COVID-19関連演題 COVID-19関連は、主に2つの合同シンポジウムと2つの一般演題セッションで取り上げられる。 同学会と日本癌学会/日本癌治療学会のがん関連3学会の合同シンポジウム「COVID-19流行のがんマネジメント」が2月17日午後に行われる。ここでは、新型コロナの流行によるがんのマネジメントへの影響について、さまざまな観点から議論する。 ESMO(欧州臨床腫瘍学会)との合同シンポジウム「Oncology Trial and Practice with/post COVID-19 era」が上記シンポジウムに引き続いて行われる。ここでは海外演者と日本の演者が登壇し、コロナ禍でのがん臨床および治療開発をどのように行うべきかディスカッションが行われる。 一般演題ではCOVID-19関連Mini Session1と2で国内外の演者による発表が行われる。HPV関連がん 2020年にワクチンの積極的勧奨が再開されたHPV関連がんについては、会長企画「HPV関連がんの予防と治療~日本とアジアの現状から見えてくるものとは~」で取り上げる。 ここではHPVワクチンの安全性や近年増加しているHPV関連中咽頭がんについての新たな知見が紹介される。

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コロナ発症後の医療サービス利用期間、5歳以下は3~6ヵ月/BMJ

 ノルウェーの1~19歳の年齢層では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による医療サービス利用の増加への影響は限定的で、回復までの期間が1~5歳で3~6ヵ月と、6~19歳の1~3ヵ月に比べて長期に及び、その主な原因は呼吸器疾患であったことが、ノルウェー・公衆衛生研究所のKarin Magnusson氏らの調査で示された。研究の成果はBMJ誌2022年1月17日号で報告された。ノルウェーの1~19歳のコホート研究 研究グループは、1~19歳ではCOVID-19前に比べそのあとで医療サービスの利用が増えたかを検証する目的で、一般人口を対象とするコホート研究を行った(ノルウェー公衆衛生研究所の助成による)。 対象は、2020年1月1日の時点でノルウェーに居住する年齢1~19歳の集団(70万6,885人)で、2020年8月1日~2021年2月1日の期間にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の検査を受けた集団(陽性者1万279人、陰性者27万5,859人)と、検査を受けていない集団(42万747人)であった。3つの年齢層(1~5歳、6~15歳、16~19歳)に分けて解析が行われた。 主要アウトカムは、SARS-CoV-2検査が行われた週の6ヵ月前から、検査後約6ヵ月までの期間での、プライマリケア(総合診療医、緊急病棟)または専門医治療(外来、入院)における全原因および原因別の医療サービスの利用とされ、差分の差分法で解析された。専門医治療の増加はない SARS-CoV-2検査陽性者は陰性者に比べ、検査結果が判明してから1ヵ月間の短期的なプライマリケアの利用が相対的に大幅に増加し、1~5歳が339%(95%信頼区間[CI]:308~369)、6~15歳が471%(450~491)、16~19歳は401%(380~422)となった。 より若年の集団における検査陽性者のプライマリケアの利用は、2ヵ月後(1~5歳 22%[95%CI:4~40]、6~15歳14%[2~26])および3ヵ月後(26%[7~46]、15%[3~28])も陰性者に比べ増加したままであったが、年齢の高い集団ではこの増加はなくなっていた(16~19歳の2ヵ月後が11%[-2~24]、3ヵ月後は6%[-7~19])。 また、1~5歳の検査陽性者は陰性者と比較して、4~6ヵ月後の長期的なプライマリケアの利用が相対的に増加していた(13%、95%CI:-0~26)が、6~15歳(0%、-8~9)と16~19歳(-10%、-19~-1)ではこのような増加は観察されなかった。 検査陽性者と未検査者との比較でも、同様の結果が得られたが、3つの年齢層間の差は陰性者との比較に比べ小さくなった。 3つの年齢層のすべてで、プライマリケア受診増加の原因は、呼吸器疾患と、全身性または詳細不明の疾患であった。また、専門医治療の増加は観察されなかった。 著者は、「若年者の健康へのCOVID-19の影響が限定的であったとの情報は重要であり、青少年が自分自身や他者を保護するためにワクチン接種を行うべきかを判断するのに有用だろう」としている。

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BNT162b2とmRNA-1273の液性/細胞性免疫、感染/発症/重症化予防効果の推移:オミクロン株を中心に(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

ワクチン開発の現状 2022年1月12日現在、世界で開発されているワクチンは152個(開発中止になった10個を含む)に及び、その中で28個のワクチンが世界各国によって緊急使用あるいは完全使用が承認され、各ワクチンの感染/発症予防効果、重症化予防効果、特異的副反応などが徐々に明らかにされている。その結果、優れたワクチンとして生き残りつつあるのが、本邦をはじめ世界の先進国で優先的に使用されているRNAワクチンに分類されるPfizer/BioNtech社のBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)とModerna社のmRNA-1273(同:スパイクバックス筋注)の2つである。 2021年の11月以降、世界を席巻するウイルスはデルタ株からオミクロン株に置換されつつある。本邦でも2022年1月に入り、オミクロン株感染者の急激な増加を認めている。オミクロン株のS蛋白をPlatformにしたワクチン開発は理論的には困難な問題ではない。しかしながら、新たなワクチンを実地臨床の現場で使用できるためには第I相から第III相に至る治験を介して有効性、安全性を検証する必要があり、膨大な時間を要する。その意味で、今年の冬から春にかけて世界を席巻するであろうオミクロン株に対する予防策としては、現在使用可能なBNT162b2、mRNA-1273の2回接種(通常接種)に加え、3回目以上のブースター接種を組み合わせて立ち向かう必要がある。以上のような事実を踏まえ、オミクロン株に対する今後のワクチン政策を医学的に正しい方向に誘導するためには、BNT162b2とmRNA-1273の予防手段としての優越性の違いを確実に把握しておく必要がある。RNAワクチン通常接種(2回接種)後のオミクロン株に対する液性免疫、細胞性免疫、予防効果の時間推移 BNT162b2、mRNA-1273を2回接種した場合の野生株(先祖株)S蛋白-RBD(Receptor binding domain)に対する中和抗体価のピーク値(2回目ワクチン接種2~4週後)は、BNT162b2接種後に比べmRNA-1273接種後のほうが40~50%高い(Richards NE, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2124331., Self WH, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70:1337-1343.)。しかしながら、BNT162b2、mRNA-1273接種後の野生株中和抗体価はピーク値が異なるものの、それ以降4~6ヵ月間はほぼ同じ速度で低下する(Levin EG, et al. N Engl J Med. 2021;385:e84., Pegu A, et al. Science. 2021;373:1372-1377.)。 BNT162b2接種後のオミクロン株に対する中和抗体価は、ピーク値を与える時間帯ですでに検出限界近傍まで低下していた。また、mRNA-1273のオミクロン株に対する中和抗体価は、ワクチン接種後4~6ヵ月経過した時点で検出限界以下であった(Rossler A, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 12. [Epub ahead of print])。以上より、BNT162b2、mRNA-1273のオミクロン株中和作用はワクチン接種後のいかなる時間帯でもほぼ無効と考えることができる。この現象はオミクロン株S蛋白に存在する多彩な遺伝子変異に起因する強力な液性免疫回避によって惹起されたものである。 ワクチン接種によって形成されたS蛋白には、CD4-T細胞反応を賦活する抗原決定基(Epitope)が約30個、CD8-T細胞反応を賦活する抗原決定基が約50個存在する(山口, 田中. 日本医事新報 2021;5088:38.)。但し、T細胞反応を規定する抗原決定基の個数に関する報告は一定しておらず、確実な個数は現時点では同定されていない。これらの抗原決定基は種々の変異の影響を受け難く、オミクロン株以外の変異株において85~95%(Tarke AT, et al. bioRxiv. 2021;433180.)、オミクロン株においても70~80%が維持される(WHO. COVID-19 Weekly Epidemiological Update. 2022 Jan 7.)。ワクチン接種後のT細胞性免疫の持続期間は野生株を用いた解析ではあるが、少なくとも8ヵ月間は緩徐に低下しながらも維持されることが示された(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021;385:951-953.)。以上より、オミクロン株に対するワクチン惹起性T細胞性免疫は、時間経過と共にゆっくりと低下するものの、比較的長期間にわたり有効域に維持されるものと考えられる。賦活化されたCD4-T細胞はB細胞由来の液性免疫(中和抗体)と共同し補完的にウイルス感染を抑制する。一方、CD8-T細胞は、ウイルスに感染した生体細胞を殺傷/処理し、生体が感染後の過剰免疫状態に陥ることを阻止する(重症化抑制)。 本論評で取り上げたDickermanらの論文(Dickerman BA, et al. N Engl J Med. 2020;386:105-115.)は、アルファ株、デルタ株感染に対するBNT162b2、mRNA-1273の感染/発症予防効果、重症化(一般入院、ICU入院、死亡)予防効果の差を観察したものである。アルファ株、デルタ株感染にあって、感染/発症予防効果、ICUを含む入院予防効果に関してmRNA-1273のほうが勝っていた。しかしながら、死亡予防効果は両ワクチンで有意差を認めなかった。 オミクロン株に対する両ワクチンの予防効果に関する英国健康安全保障庁(UKHSA)の解析によると(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)、BNT162b2接種後のデルタ株発症予防効果が90%(ワクチン接種2~4週後)から60%(ワクチン接種後25週以上)まで低下するのに対し、同じ時間帯においてオミクロン株発症予防効果は65%から10%前後まで低下した。一方、mRNA-1273接種後のデルタ株発症予防効果は95%(ワクチン接種2~4週後)から75%(ワクチン接種後25週以上)まで低下、オミクロン株発症予防効果は同じ時間帯で70%から10%前後まで低下した。定性的に同様の結果は、米国からも報告されている(Accorsi EK, et al. JAMA. 2022 Jan 21. [Epub ahead of print])。これらの結果は、デルタ株に対する発症予防効果の時間的低下はmRNA-1273でより緩徐であるが、オミクロン株に対する発症予防効果の時間的低下は両ワクチンでほぼ同程度であることを意味する。オミクロン株に対する発症予防効果の時間推移は液性免疫の動態(両ワクチンの中和抗体形成能は低くワクチン接種直後から検出限界近傍)からは説明できず、予防効果の大部分が時間経過と共にゆっくりと低下するT細胞性免疫の賦活によって維持されていることを示唆する。そのため、オミクロン株に対するBNT162b2とmRNA-1273の発症予防効果の差は小さい。オミクロン株抑制を考えた場合、液性免疫ではなく細胞性免疫の賦活が重要である。その意味で、ドイツ・テュービンゲン大学で開発中のT細胞免疫賦活に特化したワクチン(CoVac-1)に論評者らは注目している(Heitmann JS, et al. Nature. 2021 Nov 23. [Epub ahead of print])。 オミクロン株に対するBNT162b2接種後の入院予防効果は、2~24週後に72%であったものが25週以上経過すると52%まで低下した。一方、デルタ株に対するBNT162b2の入院予防効果は接種後の時間経過(接種後20週以内)と無関係に90%前後の値を維持し(Tartof SY, et al. Lancet. 2021;398:1407-1416.)、オミクロン株に対する入院予防効果の動態とは異なっていた。オミクロン株感染における種々の重症化状態(酸素投与、機械呼吸、ICU入院、入院中の死亡)の頻度を解析した論文によると、これらの指標の発生頻度はデルタ株感染に比べオミクロン株感染で有意に低いことが示された(Maslo C, et al. JAMA. 2021 Dec 30. [Epub ahead of print])。オミクロン株が高感染性、低病原性の性質を有する特異的なウイルスであることは感染発症初期から観察されていた。感染性の増強は、Q498R, N501Y, H655Y, N679K, P681Hなどの多彩なS蛋白アミノ酸変異に起因する(CDC. Science Brief. 2021 Dec 2.)。一方、オミクロン株の低病原性は、肺胞領域でのウイルス複製/増殖能が低く、重症化の引き金になる肺炎が発生し難いという実験的事実から説明される(HKUMed News. HKUMed finds Omicron SARS-CoV-2 can infect faster and better than Delta in human bronchus but with less severe infection in lung. 2021 Dec 15.)。RNAワクチンブースター接種(3回目接種)後のオミクロン株に対する液性免疫、細胞性免疫、予防効果の時間推移 播種ウイルスの主体がデルタ株からオミクロン株に置換されつつある現在、オミクロン株を標的とした3回目ブースター接種の意義を明らかにする必要がある。オミクロン株に対する2回ワクチン接種後の中和抗体価は検出限界近傍の低値である(上述)。Nemetらの解析によると(Nemet I, et al. N Engl J Med. 2021 Dec 29. [Epub ahead of print])、BNT162b2の2回目接種5.5ヵ月後のオミクロン株中和抗体価に比べ3回目接種1ヵ月後の中和抗体価は97倍増加した。mRNA-1273の3回目ブースター接種に関するModerna社の報道によると(Moderna. Press Release. 2021 Dec 20.)、mRNA-1273の3回目接種後のオミクロン株に対する中和抗体価は2回目接種後の83倍まで増加したとのことである。 英国健康安全保障庁(UKHSA)の解析によると、BNT162b2の2回目接種後25週以上経過した時点で10%前後まで低下したオミクロン株に対する発症予防効果は、3回目ブースター接種2~4週後には70%以上に回復した(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。しかしながら、3回目接種から10週以上経過するとBNT162b2のオミクロン株発症予防効果は40%台まで再度低下した。BNT162b2の3回目接種後のオミクロン株に対する発症予防効果の推移は、2回目接種後とは異なり、主として中和抗体価の動態によって説明可能である。mRNA-1273の3回目接種後のオミクロン株に対する発症予防効果は78%と報告され、BNT162b2の効果とほぼ同程度であった(Accorsi EK, et al. JAMA. 2022 Jan 21. [Epub ahead of print])。しかしながら、mRNA-1273の3回目接種後の各ウイルスに対する発症予防効果の時間推移は報告されていない。 BNT162b2の3回目接種によるオミクロン株に対する入院予防効果は、2回接種後25週以上で52%まで低下したが、3回目接種2週以後で88%まで回復した(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。入院予防効果など重症化予防効果が主としてT細胞性免疫によって規定されるならば、UKHSAの観察結果は、BNT162b2の3回目ブースター接種はオミクロン株に対する液性免疫に加え細胞性免疫も改善することを意味する。 mRNA-1273はBNT162b2に比べ一般的に免疫原性、予防効果の面でより優れた効果を発揮することが判明したが、オミクロン株に対する作用/効果には明確な差を認めない。両者の差を招来する主たる原因は生体に導入されるmRNA量の違いである。成人においてmRNA-1273の通常接種によって生体に導入されるmRNA量はBNT162b2の3.3倍であり、その結果として高い免疫原性が発現する。しかしながら、mRNA導入量の多さは副反応の多さとも関連し、mRNA-1273では心筋炎を含む多くの副反応の頻度がBNT162b2よりも有意に高いことを知っておく必要がある(Chapin-Bardales J, et al. JAMA. 2021;325:2201-2202., Husby A, et al. BMJ. 2021;375:e068665.)。

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第87回 弔問した訪問診療医を患者家族が銃殺、在宅医療現場に波紋

<先週の動き>1.弔問した訪問診療医を患者家族が銃殺、在宅医療現場に波紋2.抗原検査キット、優先度の通知で一般販売見合わせの可能性3.オンライン診療報酬は対面と特例対応の中間に、制限は撤廃か4.オンライン資格確認で患者情報を取得した場合の加算が新設5.今年度の診療報酬改定、看護必要度の心電図モニター管理を削除1.弔問した訪問診療医を患者家族が銃殺、在宅医療現場に波紋1月27日夜、埼玉県ふじみ野市で在宅診療を行っていた医師・鈴木 純一氏(44)が、その前日に死亡確認した女性患者(92)の息子・渡辺 宏容疑者(66)に銃殺される事件が発生した。司法解剖の結果、鈴木氏の死因は胸に銃弾1発を受けたことによる心臓破裂だった。散弾銃の弾は体内を貫通しており、至近距離から撃たれ即死だったとみられている。県警の調べによると、容疑者から「焼香に来てほしい」との連絡を受け、事件当日21時頃に患者宅を訪問した医療関係者7人に対し、容疑者は心臓マッサージなどの蘇生措置を求めたという。鈴木氏が丁寧に説明して対応を断わったところ、容疑者は散弾銃を2丁持ち出し、少なくとも3回発砲。容疑者は鈴木氏を撃った後、続けて理学療法士の男性(41)を撃ち、同行していた医療相談員の男性に催涙スプレーをかけ、別の医療相談員にも発砲したと供述しており、理学療法士は上半身に重傷を負った。亡くなった鈴木氏は、10年ほど前から地域医療の担い手として懸命に働き、患者や同僚からの信頼も厚かった。東入間医師会によると、同氏は2市1町における在宅医療の8割に当たる約300人の患者と関わっていたという。昨年9月、デルタ株の感染拡大により入院できず自宅療養するコロナ患者の自宅を訪問診療する鈴木氏をNHKが取材していたこともあり、死を悼む声が広がっている。(参考)容疑者、前日死亡の母の蘇生依頼 断られ発砲か 埼玉立てこもり(毎日新聞)母親の蘇生断られた後に発砲か 立てこもり容疑者、名指し呼び出しも(朝日新聞)死亡医師は即死、至近距離から胸に銃弾 計画的な犯行か…ふじみ野の立てこもり、医師ら指定し呼び出す(埼玉新聞)立てこもり事件で犠牲の医師鈴木純一さん、地域医療の担い手として信頼厚く(日刊スポーツ)立てこもり事件 亡くなった医師 コロナ患者など在宅医療支える(NHK)2.抗原検査キット、優先度の通知で一般販売見合わせの可能性厚労省は27日、オミクロン株の急拡大により、抗原定性検査キットの需要が急速に伸びていることを受け、流通側・発注側の双方に事務連絡を通知した。流通側には行政検査を行う医療機関や地方自治体からの発注、地方自治体からの委託を受けて抗原定性検査キットを配布する薬局からの発注を優先するよう定め、大量発注によって安定供給に支障を来す恐れがある場合には、複数回に分割して納品することなどを示した。また、発注側には上記優先度などを踏まえ、実需を超えた発注は控えるよう要請している。この方針を受け、薬局など抗原検査キットの一般販売を行ってきた店舗では、一時販売見合わせなどを検討している。(参考)新型コロナ抗原検査キット供給の優先付けを事務連絡 厚労省、実需を超えた発注控えて(CBnewsマネジメント)抗原検査キット 医療機関など優先供給で薬局の販売に影響も(NHK)新型コロナウイルス感染症オミクロン株の発生等に伴う抗原定性検査キットの適正な流通に向けた供給の優先付けについて(事務連絡 令和4年1月27日)新型コロナウイルス感染症オミクロン株の発生等に伴う抗原定性検査キットの発注等について(同)3.オンライン診療報酬は対面と特例対応の中間に、制限は撤廃か厚労省は26日に中医協総会を開催し、オンライン診療の診療報酬について、対面診療の点数(初診料:288点)とコロナ特例対応における点数(同214点)の中間にすることを公益裁定で決めた。現行のオンライン診療料を廃止し、2022年度診療報酬改定で新たに、初・再診料を新設する。新型コロナウイルス対応として初診からのオンライン診療が特別に許可されているが、診療報酬が対面より低いこともあり、これまでのところ実施している医療機関は約6%にとどまるなど、普及していない。なお、現行のオンライン診療料の算定要件であった医療機関と患者との間の時間・距離要件や、オンライン診療の実施割合の上限は撤廃される見込み。(参考)オンライン診療 診療報酬上の評価は「対面診療と特例対応の中間程度に」 公益裁定で(ミクスオンライン)オンライン初診料、初診料(288点)とコロナ特例(214点)の中間に、オンライン資格確認を加算で後押し―中医協総会(6)(Gem Med)コロナ禍のオンライン診療はわずか6%… 「直接診たことない」と断られるケースも(東京新聞)4.オンライン資格確認で患者情報を取得した場合の加算が新設28日に行われた中医協総会において、オンライン資格確認を用いて患者情報を取得して診療した場合は、「電子的保健医療情報活用加算」の算定が可能となることが承認された。厚労省によると、2021年10月からオンライン資格確認の本格運用を開始したものの、運用を開始した医療機関や薬局などは11%にとどまっており、導入を加速させるのが狙い。医療機関・薬局と患者の間で、薬の処方情報や特定検診情報などの情報共有が進み、医療の質向上が期待されている。(参考)22年度診療報酬改定 オンライン資格確認で「電子的保健医療情報活用加算」新設 導入促す(ミクスオンライン)オンライン資格確認等システム、まず「カードリーダー申し込み施設の準備完了」を最優先支援―社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認 三師会による「オンライン資格確認推進協議会」設置へ(ドラビズon-line)5.今年度の診療報酬改定、看護必要度の心電図モニター管理を削除26日の中医協総会で、急性期病棟の「重症度、医療・看護必要度」について見直しが行われ、「心電図モニターの管理」を削除することを公益裁定で決定した。これまで、急性期一般入院病床において、心電図モニターを装着している患者は重症度が高いとされてきたが、厚労省は入院患者の状態に応じた適切な評価を行う観点から、重症度、医療・看護必要度の評価項目や該当患者割合の基準について見直しを行ってきた。診療側はこの見直し案について反対していたが、公益側委員の裁定により、モニター管理は削除することが決定した。このほか、A項目の「点滴ライン同時3本以上」であったのを「注射薬剤3種類以上の管理」に変更し、「輸血・血液製剤」を投与している患者について点数を1点から2点に変更することになった。今後、重症患者に対して高度な医療を提供する医療機関については「急性期充実体制加算」を新設して、高度医療機関に対して評価を行い、急性期一般入院料1から2・3等へ機能分化を促されることで、急性期病院の再編などが進む可能性がある。(参考)一般病棟用の重症度、医療・看護必要度に係る評価項目及び該当患者割合の基準について(中央社会保険医療協議会 総会)2022年度診療報酬改定 看護必要度は「心電図モニターの管理」削除へ 機能分化を促進(ミクスオンライン)心電図モニター管理削除など看護必要度の厳格化、コロナ禍でやるべきことだろうか?―日病・相澤会長(Gem Med)

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