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新型コロナ感染者、糖尿病リスクが高まる

 COVID-19罹患後にさまざまな疾患にかかりやすくなる可能性が示唆されているが、それに糖尿病が加わる可能性がある。米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究の結果が、The Lancet Diabetes & Endocrinology誌2022年5月号に掲載された。 本研究では、米国退役軍人省の全国データベースを用いて、2020年3月1日~2021年9月30日にCOVID-19検査で陽性となり、その後30日間生存した群(COVID-19群)18万1,280例、同じ期間に登録した対照群(411万8,441例)、2018年3月1日~2019年9月30日に登録した過去対照群(428万6,911例)からコホートを構成した。どちらの対照群も、SARS-CoV-2感染は認められなかった。 全登録例は、試験参加前に糖尿病を発症しておらず、中央値352日(IQR:245~406)のフォローアップが行われた。事前に定義された逆確率重み付けを用いて、糖尿病の発症、血糖降下薬の使用、およびこの2つの転帰の複合を用いてリスクを推定した。リスクの指標として、12ヵ月後のハザード比(HR)と1,000人あたりの疾病負荷の2つを報告した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19群は対照群と比較して、糖尿病発症リスク(HR 1.40、 95% CI :1.36~1.44)および疾病負荷(13.46、 95% CI:12.11~14.84、12ヵ月の1,000人あたり)、および血糖降下薬使用のリスク(1.85、1.78~1.92 )および疾病負荷(12.35、11.36~13.38 )が増加した。・糖尿病発症または血糖降下薬使用の複合エンドポイントのリスクを推定する解析では、12ヵ月時点で1,000人あたり1.46(95%CI:1.43~1.50)のHRと18.03(95%CI:16.59~19.51)の疾病負荷だった。・急性期以降の転帰のリスクと負担は、COVID-19の急性期の重症度(患者が非入院か、入院か、集中治療室に入院したか)に応じて、段階的に増加した。・すべての結果は、過去対照群との比較においても一貫していた。 著者らは「COVID-19と糖尿病リスクとの関連を支えるメカニズムは完全には明らかにされていないが、SARS-CoV-2が膵臓でインスリンを産生する細胞に感染し複製することで、インスリンの産生および分泌が損なわれることが示唆されている。糖尿病は多面的なlong COVIDの構成要素として考慮されるべきで、COVID-19患者の急性期後のケア戦略と糖尿病のスクリーニングと管理を統合する必要がある」としている。

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公園の運動ではマスクは不要、電車内は必要/厚生労働省アドバイザリーボード

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、5月19日に第84回の会議を開催し、その中で和田 耕治氏(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学 教授)より「日常生活における屋外と、小児のマスク着用について」の資料が説明された。 不織布製マスクの着用は呼吸器感染症対策として、咳・くしゃみなどの症状のある人や会話の際に飛沫やエアロゾルの発散を低減させることを目的に推奨され、ある程度の飛沫やエアロゾルを吸い込むことを予防する効果もある。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、発症前あるいは無症状の人からの感染対策が重要であり、さらに感染力が高いことや感染した場合の影響が大きかったことから、症状の有無に関わらず公共の場や職場、電車内などでのマスク着用が呼びかけられている。 その後、ワクチン接種の進展や病原性がより低いオミクロン株が流行株の多くを占めるようになり、マスク着用対策を緩和すべきという社会的要請も高まってきたことに対し、今回検討を行ったものである。電車内はマスク着用で通勤・通学する必要【屋外でのマスク着用が必要ではない】・屋外で周囲の人と距離が十分に確保できる場合(例:公園での散歩やランニング、自転車などの移動など)・家族などの人たちだけで過ごす場合・屋外で周囲との距離が十分に確保できない場面でも、周囲で会話が少ないかほとんどない場合(例:徒歩での移動など)【屋外でのマスク着用が必要である】・多数の人が利用する公共交通機関での通勤・通学の場合・屋外であっても人混みや会話をするような場面がありえる場合・屋内への訪問があればマスクを持参し、屋内で着用・COVID-19で起り得る症状(鼻水、頭痛、喉の痛み、発熱、咳など)があり、日常生活の必要物品の買い物などやむを得ない外出をする場合、屋外でもマスク着用(ただし、まずは外出を控えることが重要)マスク着用、小児では適宜判断が必要が必要【小児のマスク着用の原則的な考え方】 保育所、認定こども園などでは、2歳以上の未就学児についても、発育状況などからマスクの着用が無理なく可能と判断される児童については、可能な範囲で一時的にマスク着用を奨める。【小児のマスク着用考慮の理由と留意点】 COVID-19への対応が長期化する中で、マスク着用により熱中症のリスクや 表情が見えにくくなることによる影響も懸念され、考慮する時期にある。 一方で、当面は感染例が続き得ることから、施設内で感染者が出ている、または体調不良者が複数いる場合などには、一時的にマスク着用をすることは考えられるが、長期化しないように留意する必要がある。【2歳以上の未就学児以外】・熱中症リスクが高い場合には、登下校時にマスクを外すよう指導。ただし、十分な距離を確保し、会話を控えること、公共交通機関を利用する場合はマスクを着用することなどについて指導が必要。・屋外の運動場やプールでの体育の授業や休憩時間における運動遊び(鬼ごっこなど密にならない外遊びなど)においてもマスクの着用は不要。その際、十分な身体的距離をとることや体調不良の者が参加しないように確認することは必要である。

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免疫抑制が強い患者ほど接種後の抗体価に差、モデルナ製vs.ファイザー製

 免疫抑制治療を受けている固形臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者において、モデルナ製の新型コロナワクチンがファイザー製ワクチンより強い液性免疫原性を誘導しやすく、この効果は免疫抑制が強いほど顕著だったことが、米国・Johns Hopkins University School of MedicineのJonathan Mitchell氏らの研究で示された。JAMA Network Open誌2022年5月16日号に掲載。 臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者などの免疫抑制患者は、新型コロナワクチンに対する免疫応答が低下している。したがって、ワクチンの免疫原性の差は、免疫正常者での差より臨床的に重要である。本コホート研究では、免疫抑制の強さの異なる患者群ごとにファイザー製およびモデルナ製ワクチン2回接種後の抗スパイク抗体価を比較した。 対象は、2020年12月16日~2021年7月6日にmRNAワクチンを2回接種している新型コロナウイルス検査陽性歴のないリウマチ性・筋骨格系疾患と固形臓器移植患者で、免疫抑制の強さによって以下に層別化した。・免疫抑制治療を受けていないリウマチ性・筋骨格系疾患患者・免疫抑制治療を受けているリウマチ性・筋骨格系疾患患者・ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されていない固形臓器移植患者・ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者 ワクチン2回目接種から15〜45日後に半定量的抗体検査を実施し、年齢・ワクチン接種後期間・免疫抑制薬の数で重み付けした修正ポアソン回帰を使用して、2つのワクチンでの応答率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・リウマチ性・筋骨格系疾患患者1,158例(うちファイザー製ワクチン接種647例)および固形臓器移植患者697例(同367例)について調査した。・免疫抑制治療を受けていないリウマチ性・筋骨格系疾患患者(220例)のうち、抗受容体結合ドメイン力価が250U/mL以上だった患者の割合は、ファイザー製ワクチン91.5%、モデルナ製ワクチン93.1%で同等だった(発生率比[IRR]:1.02、95%CI:0.94~1.10、p=0.69)。・しかし、他の群では、モデルナ製ワクチン接種者のほうがファイザー製ワクチン接種者よりも受容体結合ドメイン抗体価250U/mL以上だった患者の割合が高かった。- 免疫抑制治療を受けているリウマチ性・筋骨格系疾患患者(938例):79.2% vs.60.5%、IRR:1.30、95%CI:1.20~1.43、p<0.001- ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されていない固形臓器移植患者(260例):66.4% vs.44.7%、IRR:1.56、95%CI:1.24~1.96、p<0.001- ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者(437例):11.4% vs.4.3%、IRR:2.62、95%CI:1.28~5.37、p=0.01 本研究では、免疫抑制治療を受けていない患者では、モデルナ製およびファイザー製ワクチンに対する免疫応答は同等だったが、免疫抑制治療を受けている患者は、モデルナ製ワクチンのほうがファイザー製ワクチンより高かった。免疫原性の差は、免疫抑制が最も強い患者(ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者)で最も大きく、抗体価250U/mL以上の患者の割合は2.6倍の差があった。

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コロナ治療薬の効果、観察研究とRCTで一致するか/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬(ヒドロキシクロロキン、ロピナビル-リトナビル、デキサメタゾン)を評価した観察研究のメタ解析と無作為化臨床試験(RCT)のメタ解析を比較すると、4分の3以上で治療効果の要約が一致していることが、米国・イェール大学のOsman Moneer氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月10日号で報告された。観察研究とRCTの一致を評価するメタ疫学研究 研究グループは、COVID-19の同じ治療薬や対照薬、アウトカムを評価した個別の観察研究とRCTまたはこれらの研究のメタ解析から、治療効果と人口統計学的データを系統的に同定し、これらをマッチさせて比較することで、観察研究とRCTの治療効果が一致するかを評価する目的で、メタ疫学研究を行った(著者の1人であるJoshua D. Wallach氏は、米国国立アルコール摂取障害・依存症研究所[NIAAA]の助成を受けた)。 解析データの入手には、米国国立衛生研究所(NIH)のCOVID-19治療ガイドライン、BMJ誌に掲載されたリビングレビューとネットワークメタ解析、PLOS Medicine誌に掲載されたリビングシステマティックレビューとメタ解析および逐次解析(trial sequential analysis)、さらにEpistemonikosの“Living OVerview of Evidence”(L・OVE)のエビデンスデータベースが用いられた。 試験選択の適格基準は、(1)BMJ誌掲載のリビングレビューにおいて、すべてのデータソースについてCOVID-19への治療的介入として最も多く研究されている3つの方法(ヒドロキシクロロキン、ロピナビル-リトナビル、デキサメタゾン)を直接比較したRCT、(2)BMJ誌掲載のリビングレビューで報告されたものと同じ介入法、対照薬、アウトカムを評価した観察研究とされた。 観察研究から安全性と有効性のアウトカムが同定され、二値変数(オッズ比)または連続変数(平均差または平均比)のアウトカムに関して治療効果が算出され、可能な場合は、BMJ誌掲載のリビングレビューで報告された個別のRCTまたはRCTのメタ解析の治療効果と、同じ介入、対照薬、アウトカムをマッチさせて(観察研究とRCTのマッチさせた組み合わせ)、メタ解析が実施された。 解析では、研究の人口統計学的データの分布と、マッチさせた組み合わせで治療効果が一致するかが比較された。マッチさせた組み合わせでは、観察研究とRCTの治療効果がいずれも有意に増加または低下している場合(p<0.05)、または双方の治療効果にいずれも有意差がない場合(p≧0.05)に、一致すると判定された。観察研究はRCTに取って代わるものではない COVID-19治療における安全性または有効性のアウトカムについて、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル-リトナビル、デキサメタゾンと、対照薬(実薬またはプラセボ)を比較した観察研究に関して、独立のメタ解析が新たに17件実施された。これらの研究を、BMJ誌掲載のリビングレビューで報告されたRCTのメタ解析17件とマッチさせ、比較が行われた。さらに、1件の観察研究と1件のRCTの組み合わせが、10組同定された。 27件のマッチさせた研究の組み合わせのうち、22組では個々の研究のすべてで、人口統計学的データと臨床データが適切に報告されていた。また、この22組のすべてが、性別、年齢、疾患の重症度の分布が重なり合う研究であった。 全体として、27件のマッチさせた研究の組み合わせのうち21組(78%)で、一致した治療効果が示された。また、観察研究のメタ解析とRCTのメタ解析から成る17件のマッチさせた組み合わせでは、14組(82%)で治療効果が一致し、少なくとも1件の観察研究または1件のRCTから成る10組では、7組(70%)で一致した。 一方、二値変数のアウトカムに関する治療効果のデータを有する18組のうち治療効果が一致したのは16組(89%)で、連続変数のアウトカムの治療効果データを有する9組における治療効果の一致割合(5組、56%)よりも高かった。 著者は、「COVID-19の世界的流行により、治療薬候補の臨床的価値の評価における観察研究の潜在的な役割が強調されているが、質の低いエビデンスの急速な流布の可能性に対する懸念も提起されている。本研究は3つの治療法に限定されてはいるが、これらの知見は、観察研究のメタ解析のエビデンスはRCTから収集されたエビデンスを補完することはできるが、取って代わるものではないことを示唆する」としている。

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コロナ禍でOTC薬の過量服薬による搬送が倍増【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第89回

新型コロナウイルス感染症が思いのほか長く続いており、患者さんの行動や考え方に大きく影響を及ぼしているということを実感している方は多いと思います。今回、コロナ禍で広がるOTC医薬品の過量服薬に関する問題が報告されました。集計の対象となったのは、埼玉医科大学病院臨床中毒センターに加え、国立病院機構災害医療センター救命救急センター、聖路加国際病院(東京都中央区)救命救急センターの3施設。2018年と2020年の救急搬送事例を比較したところ、2018年の過量服薬による救急搬送事例は239人(うちOTC薬の過量服薬32人、13.4%)だったものが、2020年は302人(うちOTC薬75人、24.8%)となっていた。過量服薬そのものは1.3倍の増加で、OTC薬に限定すると、2.3倍増だった。(2022年5月16日付 日経メディカル 一部改変)コロナ禍における薬物依存症の増加を危惧する声はこれまでもあり、とくにOTC医薬品はドラッグストアやインターネットで簡単に購入できることから問題視されていました。この記事の調査では、コロナ前の2018年と流行が本格的になった2020年との比較で2.3倍に増えていますが、もしかしたら2021年や2022年はもっと多いのかも…と想像してしまいます。コロナ前であってもOTC医薬品の乱用は問題となっていましたが、その際の症例には、若年男性・精神科的な問題を有する・薬物依存が重症・違法薬物の使用歴がある、などの特徴がありました。コロナ禍における過量服薬では、不安やストレスの増大による頭痛などの症状発現、受診控えによる自己判断が影響しているように思います。OTC医薬品の過量服薬に対して、薬局・薬剤師としてどうすればいいのでしょうか。今回の調査を行った埼玉医科大学臨床中毒学教授の上條吉人氏は、「過量服薬の危険性のあるOTC薬の販売に何らかの規制を設けるべき」と主張しています。おそらく行政が何らかの対応をするのではないかと思いますが、私たちが今すぐできることは、乱用の恐れのある医薬品を販売する際は、氏名・年齢・他薬局などからの入手状況・購入理由などを聴取する販売ルールを徹底し、不適切と判断した場合は販売せずに受診を勧めることです。声掛けや陳列などの工夫も考えられるでしょう。業界団体や職能団体が声を上げる必要もあるかもしれません。国を挙げてセルフメディケーションやOTC医薬品の活用を推進しているなか、薬剤師がこれらの問題をスルーするということはあってはなりません。過量服薬やそれによる救急搬送がなくなるように、OTC医薬品を販売する際の対応を再確認してみてはいかがでしょうか。

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第113回 小児肝炎はCOVID-19絡みの肝臓損傷の氷山の一角かもしれない

小児の原因不明の肝炎は日本で24例に増え1)、米国では先週18日までに180人が調べられています2)。米国が調査を進めるそれら180例のおよそ9%は肝臓移植が必要となりましたが、死亡したという報告は幸いありません。英国で先週月曜日16日までに確認されている急な肝炎小児197人にも幸いにして死亡例はありません3)。英国ではそれら197人のうち11人(約6%)が肝臓移植を受けています。たいていは対症療法でなんとかなりますが、手遅れにならないように親は子供の皮膚が黄色くなったり目が白っぽくなったらすぐに医者に連れていく必要があります。健康な小児が黄疸を突然呈して急な肝炎を伴う重病に陥る原因はいまだ不明ですが、米国も英国もアデノウイルスを原因とする見方を強めています4)。米国疾病管理センター(CDC)は同国での180例の半数近くに認められているアデノウイルスが引き続きとくに目立つ(strong lead)と言っています。英国でのアデノウイルス検出率はさらに高く、検査した170例中116人(68%)から検出されており、英国保健安全保障庁(UKHSA)もCDCと同様にアデノウイルス感染との関連が引き続き示唆されていると言っています。しかし、アデノウイルスは免疫抑制小児に肝炎を引き起こしうるものの健康な小児をそうすることはこれまで知られておらず、アデノウイルスは主役ではないかもしれないと考える研究者もいます。アデノウイルス原因説を疑う向きによるとアデノウイルス肝炎の典型的な特徴であるアデノウイルス感染細胞が肝炎小児の肝生検で見つかっておらず、もっと目を向けるべき原因候補・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が見過ごされがちです。SARS-CoV-2感染の数週間後に複数の臓器が傷んで小児多臓器炎症症候群(MIS-C)が生じうることが知られるように、SARS-CoV-2感染からしばらくして肝臓への免疫絡みの攻撃が生じてもおかしくありません4)。SARS-CoV-2が検出された英国の肝炎小児の割合はアデノウイルス検出率よりずっと低い15%です。しかしCDCの最近の報告によると米国の12歳未満の小児の75%がSARS-CoV-2感染を経ていると推定されています5)。また、欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control)と世界保健機関(WHO)が20日に報告した原因不明肝炎小児の疫学データによると26人の血清検査で大半の19人(73%)がSARS-CoV-2感染歴を裏付ける陽性でした6)。原因を見極めることは患者の治療手段に直結します。もしアデノウイルスが肝臓を害しているなら強力な抗ウイルス薬cidofovir(シドホビル)の出番です4)。しかし免疫反応の持続で肝臓が傷んでいるなら免疫抑制剤が命を救う治療になりえます。仮にSARS-CoV-2が誘発する過度の免疫が肝炎に寄与しているとするならアデノウイルス感染が共謀してその引き金の役割を果たすのかもしれません。小児から検出されているアデノウイルス41F型は胃腸に感染し、SARS-CoV-2は感染後に胃腸に長居しうることが知られており、それらが相まって肝炎を招きうるとの仮説がLancet姉妹誌に最近掲載されました7)。T細胞の見境ない活性化を誘発しうることが知られるSARS-CoV-2スパイクタンパク質がSARS-CoV-2感染小児のMIS-Cで認められる深刻な炎症にどうやら寄与する8)のと同様にスパイクタンパク質の一部がアデノウイルスへの免疫反応を過剰にしてその無法な免疫反応が肝臓を傷めるのかもしれないと著者は示唆しています。仮説の検証のために原因不明肝炎の小児の便を回収して腸に潜むSARS-CoV-2の検出を試みたり免疫系の過剰な活性化の検査が必要です。免疫の過剰が原因と今後の研究で判明したならば免疫抑制が適切な治療となるはずです。原因が判明して治療の方針が定まることは表沙汰となった肝炎の背後で知らずに肝臓を傷めているかもしれない多くの小児の助けにもなる可能性があります。米国のSARS-CoV-2感染小児とSARS-CoV-2以外の呼吸器感染小児(対照群)それぞれ約25万人を比較した最近の試験結果9)によるとSARS-CoV-2はアデノウイルスとの関連はどうあれ小児の肝臓を悪くすると傷めることがあるようです。試験の結果、SARS-CoV-2感染小児の6ヵ月間の肝酵素・ASTやALTの上昇(それぞれ110U/L以上と100U/L以上)は対照群より2.5倍多く認められました。黄疸を引き起こしうる赤血球分解産産物ビリルビンの血清濃度上昇(2mg/dL以上)もSARS-CoV-2小児に3.3倍多く認められました。小児に発生している原因不明の肝炎はSARS-CoV-2感染に伴う数多の肝臓損傷の氷山の一角なのかもしれず4)、そうであるなら肝炎の原因解明はその他多数の肝臓損傷の手当てを見出すことにも役立つでしょう。参考1)小児の原因不明の急性肝炎について / 厚生労働省2)Update on Children with Acute Hepatitis of Unknown Cause / CDC3)Increase in hepatitis (liver inflammation) cases in children under investigation / UK Health Security Agency4)What’s sending kids to hospitals with hepatitis-coronavirus, adenovirus, or both? / Science5)Clarke KEN,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Apr 29;71:606-608. [Epub ahead of print]6)European Centre for Disease Prevention and Control/WHO Regional Office for Europe. Hepatitis of Unknown Aetiology in Children. Joint Epidemiological overview, 20 May, 2022.7)Brodin P, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2022 May 13:S2468-1253.00166-2. [Epub ahead of print] 8)Porritt RA, et al. J Clin Invest. 2021 May 17;131:e146614. [Epub ahead of print]9)Elevated liver enzymes and bilirubin following SARS-CoV-2 infection in children under 10. medRxiv. May 14, 2022.

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国内での新型コロナワクチンの有効性~多施設共同研究/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症の発症予防における新型コロナワクチンの有効性を、全国の医療機関において検査陰性デザインを用いた症例対照研究を行い(VERSUS study [Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2])1)、国内においても海外で報告されたものとほぼ同等の有効性が認められた。4月22~23日にオンラインで開催された第96回日本感染症学会総会・学術講演会で、長崎大学の前田 遥氏が発表した。なお、本発表に含まれるデルタ株流行期の結果については、Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2022年4月19日号2)にも掲載されている。 2021年7月1日から開始しているサーベイランス研究結果の一部として、本報告では2021年7月1日~9月30日(デルタ株流行期)と2022年1月1日~2月28日(オミクロン株流行期)の2期における研究結果を報告した。それぞれ全国13ヵ所の医療機関で新型コロナウイルス感染症を疑う症状で医療機関を受診した患者(16歳以上)を対象に、検査陰性デザインを用いた症例対照研究を用いてワクチンの発症予防における有効性を評価した。 主な結果は以下の通り。【デルタ株流行期】・解析対象は1,936例で、うち検査(核酸増幅法検査もしくは抗原定量検査)陽性396例(20.5%)、年齢中央値49歳、基礎疾患あり34.0%、ワクチン未接種42.0%、2回接種完了32.2%、陽性者における未接種73.2%、2回接種完了6.6%だった。・16~64歳において、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種完了による発症予防の有効性は88.7%(95%CI:78.8~93.9%)。2回接種完了から91日以上経過した群では、90日以内の群と比較して有効性の低下が見られた。・16~64歳において、2回接種完了後の有効性は、ファイザー製:86.7%(95%CI:73.5~93.3%)、モデルナ製:96.6%(95%CI:72.8~99.6%)となり、ファイザー製よりモデルナ製のほうが、有効性が高い結果となったが、有意差は認められなかった。・65歳以上に関しては、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種による有効性は90.3%(95%CI:73.6~96.4%)であり、若年者とほぼ同等の効果が見られた。【オミクロン株流行期】・解析対象は16~64歳の2,000例で、うち検査陽性758例(37.9%)、年齢中央値35歳、基礎疾患あり16.1%、ワクチン未接種13.4%、2回接種完了75.8%、3回接種完了6.8%だった。・16~64歳において、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種完了による発症予防の有効性は42.8%(95%CI:23.6~57.1%)となり、デルタ株流行期と比較して有効性の低下が認められた。・3回接種完了による発症予防の有効性は68.7%(95%CI:37.1~84.4%)。追加接種による有効性の上昇が認められた。 本研究により、デルタ株流行期では、ワクチン2回接種完了による高い有効性が確認された。一方、オミクロン株流行期では、デルタ株流行期と比較してワクチン2回接種完了の有効性の低下が見られた。3回接種完了の有効性は、人種や社会背景が異なる日本でも、英国・米国の報告と同等であった。 本研究については今後も継続し、随時結果がアップデートされる予定。なお、オミクロン株流行期に関して、本解析で集計できていない症例が多数あり、オミクロン株流行期の解析結果は今後変動する可能性があるという。

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米FDA、5~11歳への3回目ファイザー製ワクチンを承認

 米国・ファイザー社は5月17日付のプレスリリースで、米国食品医薬品局(FDA)が、5~11歳の小児に対して、同社製の新型コロナワクチンの3回目接種を緊急使用許可(EUA)したことを発表した。ファイザー製ワクチンの初回シリーズ2回接種完了から5ヵ月以上経過した小児に対して、ブースター接種として、1回目・2回目接種と同量の10µgを投与できる。米国で5~11歳への3回目接種が承認されるのは、ファイザー製ワクチンが初めてとなる。 2022年1月に、FDAは12~15歳に対して、成人と同量の3回目接種(30µg)を承認したが、今回承認となった5~11歳への3回目接種は、3分の1の容量の10µgとなる。3回目接種は、高い忍容性と、初回シリーズと同等の安全性が確認されている。 今回の緊急使用許可の年齢層の拡大は、5〜11歳の健康な子供140例を対象とした第II/III相臨床試験のデータに基づいている。 本試験では、初回シリーズ2回接種完了から約6ヵ月後にブースター接種し、うち30例の血清サブ解析データにおいて、オミクロン株に対する中和抗体価が、2回目接種後と比較して36倍に増加したことが確認され、コロナ既往歴の有無にかかわらず、強力な反応が示された。 加えて、ブースター接種後1ヵ月のSARS-CoV-2野生株に対する中和幾何平均抗体価(GMT)は、2回目接種後と比較して6倍(95%CI:5.0~7.6)に増加し、この年齢層における強い免疫反応が示された。 ファイザー社では、生後6ヵ月~4歳の乳幼児を対象に、3µgを3回接種するスケジュールで、安全性、忍容性、免疫原性を評価する第I/II/III相臨床試験を実施しており、初期データが数週間以内に発表される予定という。 現在、米国では、5~17歳に対してファイザー製ワクチンのみが承認されており、これまでに5~11歳の800万人以上の小児が2回接種を完了しているという。一方、日本では、5~11歳に対してファイザー製ワクチンのみ承認されており、5月19日時点の首相官邸HPにおける「総接種回数の内訳」の発表によると、5~11歳の2回接種完了者は90万5,650人、接種率12.2%となっている。

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第101回 「ダヴィンチ」操作ミスで大動脈損傷、患者死亡/吹田市民病院

<先週の動き>1.「ダヴィンチ」操作ミスで大動脈損傷、患者死亡/吹田市民病院2.デルタ株による影響で2021年は超過死亡が発生か/厚労省3.日医、次期会長選に中川氏は不出馬、松本常任理事が有力候補か4.かかりつけ医制度の整備などを骨太2022に記載へ/内閣府5.過去10年で勤務医15%増、若手美容外科医が増加傾向/日医総研6.臓器移植提供体制の整備進み、移植希望登録者数も増加傾向/厚労省1.「ダヴィンチ」操作ミスで大動脈損傷、患者死亡/吹田市民病院大阪府・吹田市民病院は19日、同院にて実施されたロボット手術後に患者が死亡したことを明らかにした。同院によると、2020年10月27日に手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った60代男性の肺がんの内視鏡手術中に、外科医が誤って胸部大動脈を損傷したため大量出血し、患者は同年11月13日に低酸素脳症で死亡した。病院側は遺族に対しミスを認め、謝罪して和解金を支払い今年1月に示談が成立。再発防止策として、手術チームの再教育など医療安全のために体制強化に取り組むとしている。(参考)ロボット手術で患者死亡、外科医が遠隔操作を誤り大動脈損傷(読売新聞)市立吹田市民病院 手術中の医療ミスで患者死亡 遺族と和解(NHK)2.デルタ株による影響で2021年は超過死亡が発生か/厚労省厚生労働省の研究班による分析で、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年は国内の全死者数が予測よりも少なかった一方で、デルタ株などで大規模な感染がみられた21年は死者数が予測よりも多かったことが明らかになった。研究班は、例年に比べて死者数がどれほど増えたかの指標である「超過死亡」を、47都道府県で1週間ごとに算出して公開している。先月掲載されたデータによると、2020年は例年よりも死者が約6,000~5万人を下回る「過少死亡」を記録していたが、2021年は約1~6万の超過死亡がみられた。時期と地域別にみると、第4波の時期には関西で、第5波では首都圏で多かった。(参考)2021年の国内死者、想定超える 新型コロナによる医療逼迫影響か(朝日新聞)日本の超過および過少死亡数ダッシュボード(国立感染症研究所)3.日医、次期会長選に中川氏は不出馬、松本常任理事が有力候補か日本医師会の会長選が5月20日に公示された。立候補は6月4日に締め切られる。会長選は6月25日に予定され、当初、中川 俊男会長は再選を目指していたが、支持拡大が見込めないと考え、出馬を断念したと見られる。中川会長に対しては、2022年度診療報酬改定でリフィル処方箋の導入が決まるなど、反対していた開業医などから批判が集まっていた。有力な候補として、常任理事の松本 吉郎氏が出馬すると見られており、24日にも立候補が表明される見込み。松本氏は浜松医科大学を卒業した後、1988年には松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長を務め、2016年6月から日本医師会の常任理事となっている。(参考)日医会長、求心力失う 2期目立候補断念 「言行不一致」高まる批判 医療費圧縮容認、反発も(毎日新聞)日本医師会長選、中川会長が不出馬の意向 松本常任理事が有力候補に(朝日新聞)日医会長選 松本吉郎常任理事が24日に立候補で決意表明へ 副会長候補の茂松氏、角田氏、猪口氏も同席(ミクスオンライン)4.かかりつけ医制度の整備などを骨太2022に記載へ/内閣府17日、「第2回 全世代型社会保障構築本部」が内閣府で開催され、議論の中間整理が行われた内容が公表された。案には、厚生年金や健康保険の加入対象を広げる「勤労者皆保険」の実現、育児休業制度の推進などが盛り込まれているほか、今回のコロナ禍により、かかりつけ医機能などの地域医療の機能が十分に作動せず総合病院に大きな負荷がかかったため、かかりつけ医制度の整備を含め、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制の改革を求めている。政府はこの案を盛り込み、経済財政運営の基本指針「骨太の方針」を6月上旬の閣議決定を目指す。(参考)全世代型社会保障構築会議が議論の中間整理示す(Economic News)かかりつけ医機能の制度整備、骨太2022に記載へ 全世代型社会保障構築会議が中間報告で明記(CB news)全世代型社会保障構築会議 議論の中間整理(内閣官房)5.過去10年で勤務医15%増、若手美容外科医が増加傾向/日医総研日医総研は、厚労省が2年ごとにまとめる「医師・歯科医師・薬剤師統計」を基に、2010~2020年にかけての医師数の推移をまとめたリサーチ・レポートを公表した。これによれば、医学部入学定員は2008年の7,793人から2022年度の9,374人まで増加しており、増えた医師数のうちの8割は病院で働いていると考えられる。一方、診療所の医師は若干増加したのみで、10年間で数がほぼ変わらないまま年齢が上がっていた。診療科別では、内科・外科の医師が減少し、専門分化した臓器別の内科・外科が増えていた。また、若手医師では小児科を専門とする医師が減少し、形成外科・美容外科が増加する傾向が見られた。(参考)外科医が10年間で2割超の減、日医総研 病院・診療所の医師は15%増(CB news)医師養成数増加後の医師数の変化について(日医総研)令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(厚労省)6.臓器移植提供体制の整備進み、移植希望登録者数も増加傾向/厚労省厚労省は、「臓器移植の実施状況等に関する報告書」を公表した。臓器提供を行うために必要な体制を整えている施設数は全国で449施設(2022年3月31日現在)と前年度に比べて13施設増加しており、新型コロナウイルス流行下であっても、移植医療を行うことができる体制整備が進められている。また、移植希望登録者数も併せて掲載されているが、全国で心臓917名(前年度921名)、肺489名(前年度472名)など、前年度に比べて増加傾向を見せている。(参考)臓器提供体制整備、前年比13施設増の449施設 厚労省が報告書を公表(CB news)臓器移植の実施状況等に関する報告書(厚労省)

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中学生以下はクラスで、高校生は部活感染が多い/厚労省アドバイザリーボード

 本格的な学校生活が始まり、児童生徒などへの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が懸念されている。 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、5月11日に第83回の会議を開催し、その中で文部科学省から「学校における新型コロナウイルス感染症対策について」が示された。 感染状況では、幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校いずれも同一クラス内での感染が1番多く、高等学校では同一部活内での感染が1番多いことなどが報告された。また、学校での感染対策として、臨時休業の考え方を示すとともに、オミクロン株への対応として休業期間の短縮や授業、部活動でのリスクの高い行動の抑制のほか、児童生徒などへのワクチン接種の考え方が示された。本年1月と2月で一気に児童生徒の感染が拡大 資料によると2020(令和2)年6月からの集計で2021(令和3)年12月まで5万人を超えることがなかった児童生徒のCOVID-19感染者数が、2022(令和4)年1月には13万3,026人、2月に24万2,547人、3月に13万7,158人と急増したことが報告された。いずれもオミクロン株の急速な拡大が原因と考えられているが、従来株と比べ、幼稚園児や小学生で占める割合が高いことが指摘された。 学校別の感染経路について、幼稚園の園児では家庭内感染が当初より半数を超えていたが本年に入り経路不明が48%となった。小学校の児童では、当初より家庭内感染が約60~80%だったものが本年に入り経路不明の65%に変わり、中学生もほぼ同様の結果だった。高校生では、家庭内感染、学校感染、経路不明がほぼ等分で報告されていたが本年に入り、経路不明が56%と増加した。 学校内の感染について、幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校では同一クラス内での感染が1番多く、高等学校では同一部活動での感染が1番多かった。 教職員の学校内感染では、同一クラス(38%)での感染が1番多く、その他(26%)、職員室(17%)と続いた。オミクロン株対応に学校も変化 学校におけるCOVID-19対策として、「子供たちの健やかな学びの継続を最優先に、地域一斉の臨時休業については慎重な検討を求めるとともに、オミクロン株の特性等を踏まえ、臨時休業等に関する対応方針を見直す」、「教育活動の継続のため、基本的な感染対策の徹底に加え、感染拡大局面において対策を強化・徹底する」の2つの考え方を示し、対応を記している。 具体的には、臨時休業について「地域一斉の臨時休業」は慎重に検討することとしている。オミクロン株への対応については、臨時休業期間が7日間から5日間に短縮されるとともに、濃厚接触者の特定などに伴う臨時休業や出席停止は実施しないことになった。 また、感染リスクの高い教育活動について、音楽では室内近距離での合唱、家庭科では近距離の調理実習、部活動では密集する活動や大声、激しい呼気を伴う活動などは控えるように記している。 最後にコロナワクチンの接種については、「学校等集団接種」は保護者への説明機会の欠乏、同調圧力などを理由に「推奨しない」とし、「子供への指導など」では児童・生徒などや周囲に接種を強制しないこと、身体的理由で接種できない人もいるため、その判断を尊重することを指導するとともに、保護者にも理解を求めるとしている。その一方で教職員に対しては積極的な追加ワクチン接種(3回目)の促進を依頼している。

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6~11歳へのモデルナ製ワクチン、50μg2回接種が安全かつ有効/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNA-1273ワクチン(Moderna製)について、小児(6~11歳)への50μgの2回投与は安全かつ有効であることを、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのC. Buddy Creech氏らが、2つの試験の結果を踏まえて報告した。免疫応答および予防を含めて若年成人に対する非劣性が確認されたという。COVID-19予防のための小児へのワクチン接種は、緊急性の高い公衆衛生上必要な取り組みとされるが、小児におけるmRNA-1273ワクチンの安全性、免疫原性および有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年5月11日号掲載の報告。安全性、有効性を若年成人18~25歳群と比較 2つの試験は、PART1が投与量選択のため非盲検で行われている第II~III相試験で、PART2は選択用量の評価のために延長された、観察者盲検化プラセボ対照試験。PART2では、小児(6~11歳)を3対1の割合で無作為に2群に割り付け、mRNA-1273ワクチン(1回50μg)またはプラセボを、28日間隔で2回接種した。 試験の主要な目的は、小児におけるワクチンの安全性評価および関連する第III相試験に参加する若年成人(18~25歳)と比較した試験参加小児の免疫応答の非劣性を検証することであった。副次観察評価は、症状の有無を問わず確認されたCOVID-19およびSARS-CoV-2感染の発生率などであった。 2つの試験は現在も進行中で、本報告では中間解析の結果が報告された。中和抗体価、小児1,610、若年成人1,300 PART1試験では751例の小児が50μgまたは100μg用量のmRNA-1273ワクチン接種を受け、安全性および免疫応答の結果をベースとして、PART2では50μg用量を用いることが選択された。 PART2試験では4,016例の小児が無作為化され、mRNA-1273ワクチンまたはプラセボ(いずれも50μg)の2回接種を受け、1回目接種後、中央値82日間(IQR:14~94)追跡された。 50μg用量は主に、低グレードの一過性の有害事象と関連していた。最も一般的にみられたのは、注射部位の痛み、頭痛および倦怠感であった。ワクチン関連の重篤有害事象、小児多系統炎症性症候群、心筋炎、また心膜炎は報告されなかった。 2回目接種後1ヵ月間(57日目)で、50μgのmRNA-1273ワクチン接種を受けた小児の中和抗体価は、1,610(95%信頼区間[CI]:1,457~1,780)であった。一方、100μg量の接種を受けた若年成人は1,300(1,171~1,443)であった。両群参加者ともに、血清学的反応は99.0%以上で、事前規定の非劣性基準を達成していた。 B.1.617.2(デルタ)株が優勢だった時期の推定のワクチン有効率は、初回接種後14日以上に発生したCOVID-19に対して88.0%(95%CI:70.0~95.8)であった。

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第109回 医師も覚悟が必要!?ジェネリック会社の事業再生ADRで医薬品恐慌が勃発か

先週、本連載の原稿を提出し終わってほっと一息ついていた時に思わず目が点になるニュースが飛び込んできた。そのニュースとは、ジェネリック医薬品(以下、ジェネリック)の国内最大手(念のために言うと、今年は売上高で沢井製薬と首位が逆転)・日医工が事業再生ADRを検討中というもの。第一報は読売新聞で、その後、報道各社が後追いし13日夕方、同社は事業再生ADRを申請したことを発表した。事業再生ADRとは、私的整理の一種で債務超過などにより経営困難に陥った企業が、民事再生法や会社更生法のような法的整理ではなく、取引金融機関の協力を得て事業再建を目指す仕組み。すでに日医工の申請は国が認定する認証紛争解決事業者に受理され、事業再生計画案を作成して取引金融機関との第1回債権者会議が5月26日に開催予定だ。日医工のメインバンクは三井住友銀行で、同行を含み主要な取引金融機関は8行ほど。同社が債権者会議に提示する事業再生計画案に1行でも反対すれば、事業再生ADRによる経営再建は不可能になり、法的整理(いわば倒産)へと移行する。もっともすでにメインバンクの三井住友銀行が支援を表明。そのほかの主要行も何らかの形で支援することを明らかにしていることから、法的整理に移行する可能性はほぼないと言ってよい。今回、日医工がこのような事態に至った理由は主に2つある。1つはすでに明らかになっている同社富山第一工場の製造工程・品質管理での不正発覚だ。この件で昨年3月に業務停止命令の行政処分を受け、一部製品の出荷を停止したことが業績悪化につながった。もう1つの理由は海外展開の苦境だ。ご存じのように日本では国の方針でジェネリックがある成分でのジェネリック数量ベースシェア80%という目標達成に向け、ジェネリックに対してはここ数年追い風が吹いていた。もっとも医療用医薬品市場の稼ぎ頭の中核が生物学的製剤に移行している現在、低分子化合物の経口薬が中心である国内ジェネリック市場では80%目標達成後は市場成長が頭打ちになることがかなり前から指摘されていた。このため国内の主要ジェネリック企業は2010年代半ばから海外展開を開始。日医工も2016年にアメリカのジェネリック企業を買収し、海外事業に本格的に乗り出した。しかし、近年のアメリカ市場はインドのジェネリック企業が台頭し、激しい価格競争が繰り広げられている。海外では日本以上にジェネリックは価格1点勝負とも言われ、日本ほど品質に過敏ではない。大げさなことを言えば、錠剤に髪の毛が混じっていることぐらいはあまり問題にならない。その意味で日本のジェネリック企業にとってウリとなる「高品質」はむしろ価格競争力を削いでしまう。そのため日医工は利幅の高いバイオシミラー事業の展開を狙い、すでに国内では発売済みの抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤インフリキシマブ(商品名:レミケード)のバイオシミラーのアメリカ市場投入を狙い、臨床試験も終了させていた。しかし、新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、米国食品医薬品局(FDA)による米子会社や原薬提供会社の査察が停滞。この件に関連して大幅な減損計上にまで追い込まれた。これらの結果が、今回の事業再生ADRの申請というわけだ。今回の再建策は、あくまで日医工と取引金融機関が中心のため、ごく短期的に見れば同社製品の製造・供給に影響は出ない見通しだ。しかし、実際の再建策が動き出せばそうはいかないだろう。同社は国内ジェネリック企業としては最多の1,200品目以上を販売している。これに次ぐ沢井製薬は約800品目。ある意味、桁が違う。背景には「医療現場での必要性があれば不採算品目でも供給する」という同社の経営方針がある。これまではこうした不採算品目の損失も同社の基幹工場である富山第一工場で製造していた主要な約400品目の利益でカバーしてきた。だが、前述のように行政処分を受けた影響で同工場では約170品目の製造が停止したままである。今回の事業再生ADRで完全に尻に火が付いた状況では、今後の再建計画において不採算品目の整理に手が付けられるのは避けられないだろう。これまた、医療業界関係者はすでにご存じのように、同社以外でも複数のジェネリック企業で製造過程などの不正が発覚し、現状のジェネリックの供給体制は不安定なまま。ここで日医工が不採算品目を整理すれば、医療現場での供給不安に拍車がかかる可能性がある。そしてこのことはその穴埋めをしなければならない同社の競合他社や新薬メーカーも含めた製薬業界全体の「恐慌」に発展する可能性がある。一方、日医工は国内ナンバーワンジェネリック企業を目指し、過去20年間に6社の買収を行っている。その中には製薬大手エーザイが手放したジェネリック事業のエルメッドエーザイ社(現エルメッド)もある。今回の事業再生ADRにより先行き不安を感じ離職するとしたらこうした「外様組」だろう。そもそも製薬業界はここ数年リストラの嵐が吹き荒れ、人材あっせん業者が開くセミナーなどでは周囲が製薬企業出身者だらけということも稀ではないと言われている。もともとジェネリック企業の社内オペレーションは、新薬メーカーなどに比べれば、少人数体制と言われる。そうした現状でもし日医工での人材流出懸念が現実化すれば、日医工の生産、流通、販促活動での「自転車操業」化はもちろんのこと、そのあおりで代替品の供給を求められる同業他社にも自転車操業が波及する。もっともここで指摘しておきたいのは、こうした状況下で現在の国の制度がジェネリック企業をさらに苦境に追い込む可能性がある。それはすでに始まった「毎年薬価改定」である。これが突き詰められれば、ジェネリック企業は薬価改定のたびに不採算品目が増える。その意味では日本国内でのジェネリックの在り方は行政も含め、今一度抜本的な見直しが必要な時期に来ていると言えるかもしれない。

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妊婦の新型コロナ感染は早産リスク増、入院リスク2.65倍/JAMA

 カナダで行われた探索的サーベイランススタディで、妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、母体の有害アウトカムおよび早産のリスク増大と有意に関連していることが示された。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のElisabeth McClymont氏らが、妊娠中にSARS-CoV-2感染が認められた妊婦6,012人について、2つのコントロール群を対照に行った検討の結果を報告した。これまで妊婦へのSARS-CoV-2感染の影響について、対照比較コホートを用いた質の高い住民ベースの検証データは限定的であった。JAMA誌オンライン版2022年5月2日号掲載の報告。母体・周産期アウトカムや重症化リスクを検証 研究グループは2020年3月1日~2021年10月31日に、カナダの6州でSARS-CoV-2感染が認められた妊婦を対象とした観察的サーベイランスプログラム「CANCOVID-Preg」で、探索的データ解析を行った。パンデミック期間の妊娠期間中(時期は特定せず)に、主として症状の発症でPCR検査を受けSARS-CoV-2陽性が確認された6,012人を、年齢をマッチングしたSARS-CoV-2感染の女性、非感染妊婦の2つの対照群と比較した。妊娠期間中の感染は、参加している州/郡からCANCOVID-Pregに報告された。 主要アウトカムは、SARS-CoV-2感染に関連する母体・周産期アウトカムと、重症化(入院やICU/CCUへの入室、および/または酸素療法など)リスクとの関連だった。早産リスク、SARS-CoV-2感染妊婦は11% 6, 012人の年齢中央値は31歳(IQR:28~35)、最も多かった症例(35.7%)が妊娠28~37週での感染だった。人種/民族性は白人が37.8%で、それ以外は南アジア系が18.4%、アフリカ系・黒人種・カリブ系が12.1%、中東系7.1%などばらつきが大きかった。 SARS-CoV-2感染の妊婦は、カナダの20~49歳の女性感染者と比べ、入院リスクが有意に高かった(入院率7.75% vs.2.93%、相対リスク[RR]:2.65[95%信頼区間[CI]:2.41~2.88])。また、ICU/CCUへの入室リスクも有意に高かった(2.01% vs.0.37%、5.46[4.50~6.53])。 母体有害アウトカムは、高年齢、高血圧症あり、および診断時の在胎週数値が大きいほど有意に関連していた。 早産リスクも、感染妊婦で非感染妊婦(妊娠期間が同時期)と比べて有意に高く(11.05% vs.6.76%、RR:1.63[95%CI:1.52~1.76])、この傾向は入院を要さない軽症例でも認められた。

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オミクロン株とデルタ株の流行時期における、COVID-19に伴う症状の違いや入院リスク、症状持続時間について(解説:寺田教彦氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、流行株の種類により感染力や重症化率、ワクチンの効果が変化していることはニュースでも取り上げられている。これらのほかに、流行株により臨床症状が変わってきたことも医療現場では感じることがあるのではないだろうか? 例えば、2020年にイタリアから報告されたCOVID-19に伴う症状では、味覚・嗅覚障害が新型コロナウイルス感染症の50%以上に認められ、特徴的な症状の1つと考えられていたが、それに比して咽頭痛や鼻汁などの上気道症状は少なかった(Carfi A, et.al. JAMA 2020;324:603-605.)。ところが、2022年4月現在の臨床現場の感覚としては、COVID-19に伴う症状は咽頭痛や声の変化を訴える患者が増えてきており、味覚・嗅覚障害を理由に検査を新型コロナウイルスのPCR検査を受ける人はほとんどいなくなったように思われる。 本研究は、英国において、新型コロナウイルス感染症の検査結果や症状を報告するアプリ「ZOE COVID」の使用者を対象に、オミクロン株とデルタ株の流行時期のデータを比較している。 オミクロン株の症状の特徴としては、下気道症状や嗅覚異常が少なく、咽頭痛がデルタ株より多いことが報告されている(オミクロン株患者の症状報告、喉の痛みや嗅覚障害の割合は?/Lancet)。そして、Supplementary appendixのTbale S2に個々の症状についてワクチン2回接種後と3回接種後(ブースター接種済み)の患者による症状の違いもまとめられている。 デルタ株、オミクロン株の症状を比較すると、発熱は2回接種後で(44.1% vs.36.7%、[OR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.75~0.9)、3回接種後で(25.8% vs.39.2%、OR:1.09、95%CI:0.9~1.33)。 嗅覚障害は2回接種後で(41.9% vs.22.3%、OR:0.53、95%CI:0.48~0.58)、3回接種後で(32.4% vs.27.7%、OR:0.6、95%CI:0.49~0.73)。味覚障害は2回接種後で(56.7% vs.17.6%、OR:0.16、95%CI:0.14~0.18)、3回接種後で(38% vs.13.2%、OR:0.24、95%CI:0.2~0.3)と味覚・嗅覚症状はオミクロン株で減少傾向。鼻水は2回接種後で(80.9% vs.82.6%、OR:0.66、95%CI:0.59~0.74)、3回接種後で(81.8% vs.74.9%、OR:1.11、95%CI:0.89~1.39)。 嗄声は2回接種後で(39.6% vs.42.8%、OR:1.15、95%CI:1.05~1.26)、3回接種後で(31.1% vs.42%、OR:1.62、95%CI:1.35~1.94)。咽頭痛は2回接種後で(63.4% vs.71%、OR:1.42、95%CI:1.29~1.57)、3回接種後で(51% vs.68.4%、OR:2.11、95%CI:1.76~2.53)と咽頭痛や嗄声はオミクロン株で増加傾向だった。 もちろん、デルタ株とオミクロン株を比較することも重要ではあるが、本邦の患者さんやCOVID-19を診療する機会の少ない医療従事者の中には2020年ごろにニュースで取り上げられていた症状をCOVID-19の典型的な症状と捉えている方もおり、昨今の新型コロナウイルス感染症は、いわゆる風邪(急性ウイルス性上気道炎)の症状に合致し、検査を実施する以外に鑑別は困難であることも理解しておく必要があると考える。今回の報告は、オミクロン株では2020年ごろよりも発熱や味覚・嗅覚障害の症状は減少してきており、咽頭痛や鼻水などの上気道症状が多いことを実感することのできるデータであると考える。 急性期症状の持続日数についてもまとめられているが、デルタ株では平均値が8.89で中央値が8.0、95%CI:8.61~9.17に比して、オミクロン株では平均値が6.87、中央値が5.0、95%CI:6.58~7.16とオミクロン株で短縮が認められていた。本邦でも増えてきている3回接種後(ブースター接種済み)の場合では、デルタ株感染で平均7.71日、オミクロン株では4.40日が症状持続期間であった。 入院率はオミクロン変異株流行中の入院率(1.9%)のほうが、デルタ変異株流行中の入院率(2.6%)よりも有意に低下したことを指摘されているが、これも過去の報告や現場の臨床感覚に合致する内容だろう。 本論文は、全体を通して現場の臨床感覚に一致した内容だったと考える。 今回の論文では、オミクロン株では、とくにワクチン接種後では症状持続期間が短くなっていることが確認されている。適切な感染管理を行うために現場と調整する際、新型コロナウイルス感染症で難しさを感じる点に濃厚接触者となった場合や、感染した場合に一定の休業期間を要する点がある。症状持続期間が短くなっていることからは、場合によっては、感染力を有する期間も短くなっているかもしれない。 新型コロナウイルス感染症と診断された場合や、濃厚接触者となった場合でも、感染力を有する期間も短くなっていることが明らかになれば、今後の感染対策が変わりうるだろう。他に、この論文のLimitationsの4つ目に、年齢やワクチン接種状況、性別は一致させたが、他の交絡因子は一致していないことが指摘されている。流行株も変化したが、抗ウイルス薬も臨床現場で使用されることが増えている。これらの抗ウイルス薬による、症状改善時間の短縮や、感染力期間が短縮されることが明らかになれば、新型コロナウイルス感染症に対する公衆衛生上の方針にも影響を及ぼしてゆくかもしれない。

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コロナ既感染の高齢者、ワクチン接種後に強力な抗体反応を獲得/日本感染症学会

 高齢者介護施設の入所者と職員に対して、ファイザー製新型コロナワクチン(BNT162b2)接種後の抗体反応を検討した結果、高齢者であっても、新型コロナ既感染者であれば、ワクチン接種後に強力な抗体反応を獲得できることが示された。4月22~23日にオンラインで開催された第96回日本感染症学会総会・学術講演会で、九州大学の鄭 湧氏が発表した。本結果はJournal of Infection誌2022年3月1日号1)にも掲載されている。 本研究では、高齢入所者60例(平均年齢84.0歳、未感染者43例、既感染者17例)、施設職員66例(平均年齢46.7歳、未感染者34例、既感染者32例)の計126例を対象とし、2021年5~7月にファイザー製ワクチンを2回接種し、接種前後の検体を用いて、SARS-CoV-2スパイク蛋白特異的IgG抗体価を測定した。感染防御水準は、ワクチン製造元の指示に基づき、抗体価4,160 AU/mLとした。 研究によると、ワクチン2回接種後、ほとんどすべての未感染職員では、感染防御水準以上の抗体価を獲得したのに対し、未感染高齢入所者の約60%は獲得しておらず、抗体価が有意に低かった。一方、すべての既感染高齢入所者は、ワクチン1回目接種後の時点で、感染防御水準を超える抗体価を獲得していた。 未感染の職員および入所者では、接種1回後と2回後とも、加齢と共に抗体価は減少傾向にあった。一方、既感染の職員および入所者では、加齢による抗体価の減少も認められなかった。 さらに、既感染の職員および入所者では、コロナ感染後3~4ヵ月よりも、感染後13~15ヵ月経過してワクチン接種したほうが、接種後の抗体価が高い傾向が見られ、感染後1年以上でも、新型コロナの特異免疫を維持していることが示された。 本研究により、未感染の高齢者は、ワクチン2回接種後でも新型コロナに対し十分な抗体反応を獲得できない可能性がある一方で、既感染者では高齢であっても、感染後1年以上経過しても、ワクチン接種により迅速かつ強力な抗体反応を獲得できる可能性が示唆された。

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RBDダイマーベースの新規コロナワクチン、有効性を確認:第III相試験/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ZF2001」について、大規模な成人集団において、完全接種後6ヵ月以上にわたり症候性COVID-19の発症および重症化に対する安全性と有効性が確認されたことを、中国科学院のLianpan Dai氏らが発表した。ZF2001は、武漢-Hu-1株からの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の二量体タンデム-リピートスパイクタンパク質RBDを用いて開発されたワクチン。第I相および第II相の臨床試験で成人における安全性、忍容性および免疫原性があることが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年5月4日号掲載の報告。ウズベキスタン、インドネシア、パキスタン、エクアドルで大規模無作為化試験 研究グループは、ZF2001の有効性および安全性を確認する第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。試験は、ウズベキスタン、インドネシア、パキスタン、エクアドルの31臨床センターで行われ、18歳以上の被験者を無作為に、25μg量のZF2001を30日間隔で3回接種する群またはプラセボ群に割り付けて追跡評価した。さらに安全性の解析が、中国の施設のみで行われた。 主要エンドポイントは、症候性COVID-19の発症(3回接種後7日以上経過しておりPCR検査で確認されたものと定義)とした。主要副次エンドポイントは、3回接種後7日以上経過時点でのCOVID-19の重症化(COVID-19関連死も含む)であった。発症に対するワクチン有効率は75.7%、重症化への有効率は87.6% 2020年12月12日~2021年12月15日に、計2万8,873例がZF2001またはプラセボの1回以上の接種を受け、安全性解析に組み込まれた。2回目のデータカットオフ(2021年12月15日)の時点で、3回接種を完了しており、約6ヵ月間の追跡評価データが得られた2万5,193例を対象に主要有効性解析のアップデートを行った。 アップデータ解析において、主要エンドポイントの発症例は、ZF2001群158/1万2,625例、プラセボ群580/1万2,568例であり、ワクチン有効率は75.7%(95%信頼区間[CI]:71.0~79.8)であった。COVID-19重症化は、ZF2001群6例、プラセボ群43例であり、ワクチン有効率は87.6%(95%CI:70.6~95.7)。COVID-19関連死はそれぞれ2例、12例であり、ワクチン有効率は86.5%(95%CI:38.9~98.5)であった。 有害事象および重篤な有害事象の発現頻度は、両群間でバランスがとれていた。またワクチン関連死は報告されなかった。ZF2001群のほとんどの副反応(98.5%)はグレード1または2であった。

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新しい植物由来COVID-19ワクチン、各種変異株に有効:第III相試験/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンCoVLP+AS03(カナダ・Medicago製)は、各種変異株によるCOVID-19の予防に有効で、症候性COVID-19に対する有効率は69.5%、中等症~重症COVID-19に対する有効率は78.8%であったことを、カナダ・MedicagoのKaren J. Hager氏らが第III相無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。CoVLP+AS03ワクチンは、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)という植物で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質を発現させ形成されたコロナウイルス様粒子(CoVLP)と、アジュバントシステム03(AS03)を組み合わせた、新しい植物由来COVID-19ワクチンである。NEJM誌オンライン版2022年5月4日号掲載の報告。2021年3月~9月、南・北米で約2万4,000人を対象に無作為化プラセボ対照試験 研究グループは、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、メキシコ、英国および米国の85施設において、SARS-CoV-2に対するワクチンの接種歴がなく、確認されたCOVID-19の既往もない18歳以上の成人を、CoVLP+AS03ワクチン群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ21日間隔で2回筋肉内注射した。 主要評価項目は、2回接種後7日以降のRT-PCR法で確認された症候性COVID-19発症に対する有効性である。事後解析として中等症~重症COVID-19に対する有効性なども評価した。 ワクチンの有効性は100×(1-発生率比)で算出し、発生率比はプラセボ群に対するワクチン群のCOVID-19発生率(人年当たり)の比と定義した。 解析は、RT-PCR法で確認されたCOVID-19症例が160例以上認められた後、中央値で2ヵ月以上の安全性追跡調査を経て行った。なお、本試験は2021年3月15日~9月2日に実施され、有効性解析および安全性解析のデータカットオフ日はそれぞれ2021年8月20日および同年10月25日であった。 計2万4,141例が無作為化され、intention-to-treat集団に含まれた(ワクチン群1万2,074例、プラセボ群1万2,067例)。対象の年齢中央値は29歳で、14.8%はベースライン時に血清陽性であった。有効率は69.5%、中等症~重症化の予防効果は78.8% 2021年8月20日時点で、RT-PCR法で確認されたCOVID-19はintention-to-treat集団で165例(ワクチン群40例、プラセボ群125例)であり、全体におけるワクチンの有効率は69.5%(95%信頼区間[CI]:56.7~78.8)であった。165例中122例でウイルスの配列が同定され、デルタ株56例(45.9%)、ガンマ株53例(43.4%)、アルファ株6例(4.9%)、ミュー株4例(3.3%)、ラムダ株3例(2.5%)であった。 事後解析の結果、ベースライン時の血清陰性集団における有効率は74.0%(95%CI:62.1~82.5)であった。また、中等症~重症COVID-19に対する有効率は、intention-to-treat集団で78.8%(55.8~90.8)、血清陰性集団で86.0%(66.2~95.1)であった。 ワクチン群では重症COVID-19は認められず、感染例におけるCOVID-19診断時のウイルス量中央値は、ワクチン群と比較してプラセボ群で100倍以上高かった(ワクチン群3.46 log10コピー/mL、プラセボ群5.65 log10コピー/mL)。 非自発的な有害事象はほとんどが軽度または中等度で、一過性であった。発現率はワクチン群がプラセボ群よりも高かった(局所有害事象:92.3% vs.45.5%、全身性有害事象:87.3% vs.65.0%)。また、自発報告による有害事象の発現率(ワクチン群vs.プラセボ群)は、接種後21日目まで(22.7% vs.20.4%)、ならびに43日目から201日目まで(4.2% vs.4.0%)のいずれも、両群で同程度であった。

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第100回 手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査

<先週の動き>1.手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査2.4回目コロナワクチン、今月末からの開始に向けて/厚労省3.3回目用に確保したコロナワクチン、期限切れで廃棄相次ぐ4.医師偏在解消に向け「医師確保計画ガイドライン」改正/厚労省5.ヤングケアラー支援のための手引きを作成/厚労省6.有事の医薬品開発を見据えた緊急承認制度が新設1.手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査全国の総合病院などに勤務する眼科医5人が、病院や患者に無断で白内障の手術動画を医療機器メーカーに提供し、去年までの3年間に現金40~105万円を受け取っていたことが明らかとなりました。画像の提供を受けていたのは白内障治療用眼内レンズを販売するスター・ジャパン社。同社が白内障手術の動画を作成するために提供を受けたとされているが、販売促進の目的の可能性があるため、業界団体がメーカーの調査に着手した。今回の動画は手術動画であり、厳密には個人情報に含まれない可能性があるが、各医療機関側は患者の同意なく外部に提供したことを把握できておらず、再発防止のためには職員に対して個人情報保護法の教育が必要となる。個人情報保護法は今年4月から改正法が施行されており、個人データの授受については研究目的であっても第三者提供記録が本人による開示請求の対象となるなど規制が強化されている。医療機関側は情報漏洩時の報告義務を負っており、医師個人も個人情報保護法のルール順守が必須となる。(参考)“手術動画”無断で外部提供か 病院側「再発防止に努めたい」(NHK)“手術動画”で医師に現金提供 業界団体がメーカーを調査(同)医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会)【2022年4月施行】個人情報保護法改正とは?改正点を解説!(契約Watch)2.4回目コロナワクチン、今月末からの開始に向けて/厚労省今月末に開始見込みの新型コロナウイルスワクチン4回目接種の準備に向け、厚生労働省は全国の自治体に対して10日に通知を発出した。接種の対象者は、3回目の接種完了から5ヵ月以上が経過した60歳以上の者および18歳以上60歳未満の者のうち基礎疾患を有する者やその他新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高いと医師が認める者で、自治体に対してファイザー製および武田/モデルナ製ワクチンを配布する。基礎疾患のある人については、自己申告した者のほか、申告がない一部の人にも接種券を配布できるとし、自治体側の煩雑な事務作業を減らすために、18歳以上の対象者以外への一律送付も可能となっている。(参考)4回目コロナ接種券、対象以外も 厚労省が自治体に通知(産経新聞)4回目接種券、18歳以上一律も可能に…煩雑作業避けたい自治体の要望受け厚労省容認(読売新聞)新型コロナウイルスワクチンの追加接種(4回目接種)体制整備に係る医療用物資の配布について(厚労省)新型コロナワクチン追加接種(4回目接種)の体制確保について(その2)(同)3.3回目用に確保したコロナワクチン、期限切れで廃棄相次ぐ新型コロナウイルスワクチン3回目接種のために配布されたモデルナ製ワクチンが使用されないまま有効期限を迎え、これまでに10万本以上が破棄されていることが報道された。感染状況を踏まえた複合的な理由により、配送されたワクチン数が希望者を上回っていると考えられる。一方、ファイザー製ワクチンは4月に有効期限が9ヵ月から1年に延長されて破棄を免れたが、今後進められる4回目接種は対象者が制限されるため、引き続き期限切れを迎えるワクチンの増加は避けられないだろう。確保したワクチンの有効活用のために、国民に対してワクチン接種の働きかけを強化するなど、自治体で期限切れにならないような工夫を凝らす必要がある。(参考)なぜ?新型コロナワクチン 期限切れ廃棄 次々と明らかに(NHK)余るモデルナ、止まらぬ廃棄 融通できず悩む自治体(産経新聞)京都市、モデルナワクチン期限切れで廃棄へ 8万回分(日経新聞)4.医師偏在解消に向け「医師確保計画ガイドライン」改正/厚労省厚労省は、第8次医療計画等に関する検討会の下部組織「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を11日に開催した。2018年の医療法改正により、医療資源の地域的偏在の是正のため「医師確保計画」を策定することとなっており、各都道府県は2次医療圏ごとに医師確保計画を通じた医師偏在対策を進めている。今後、医師の働き方改革や地域医療構想の実現も視野に入れつつ、キャリア形成プログラムなどを含めた検討を進め、2022年中に報告書をまとめ、年度内に「医師確保計画策定ガイドライン」の改定を行う。2024年から始まる第8次医療計画の開始とともに医師確保計画の策定を開始する予定。(参考)2024年度から「医師確保計画」も新ステージに、医師偏在解消に向け2022年内に見直し案まとめ―地域医療構想・医師確保計画WG(Gem Med)地域枠医師などサポートするキャリア形成プログラム、現場ニーズを意識した作成・運用進む―地域医療構想・医師確保計画WG(2)(同)医師確保計画を通じた医師偏在対策について(厚労省)5.ヤングケアラー支援のための手引きを作成/厚労省全国の自治体に向け、大人に代わって日常的に家事や家族の世話をするヤングケアラーについて、早期の発見や支援を行う体制などの事例をマニュアルにまとめ、ヤングケアラー支援の体制作りを働きかける通知が発出された。厚労省が2021年度に子供・子育て支援推進調査研究事業で行った全国の中高校生を対象とした調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生で5.7%、全日制高校2年生は4.1%だった。そのうち、世話の頻度を「ほぼ毎日」と回答した者が3~6割程度、平日1日当たりで世話に費やす時間は「3時間未満」が多いものの、「7時間以上」と回答した者も約10%程度いることから、誰にも相談できずに1人で抱え込んでいるのかもしれない。今度、ヤングケアラーをいかに社会で支えるかが大きな課題となっている。(参考)ヤングケアラー支援で手引 学校や自治体連携、厚労省(日経新聞)厚労省、ヤングケアラー支援マニュアルを通知 「福祉、介護、教育など多分野の連携が重要」(JOINT)「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」(厚労省)6.有事の医薬品開発を見据えた緊急承認制度が新設感染症流行時などの有事にワクチンや治療薬を緊急承認する制度の創設を盛り込んだ医薬品医療機器法の改正案が、13日の参議院にて全会一致で可決され、成立した。現行制度では、海外承認された医薬品を早期承認する特例承認制度があるが、日本人への有効性が確認できる臨床データが十分集まっていない場合は国内で追加治験を行わなければならず、承認が遅れてしまう問題があった。今回新設された緊急承認制度は、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある病気の蔓延を防ぐために必要な医薬品や医療機器が対象で、ほかに代替手段がないことが条件となる。緊急時として原発事故やテロなども想定しているが、2年以内に有効性を確認できなければ承認を取り消す。(参考)薬の緊急承認制度創設へ 改正薬機法が成立 遅れたワクチン開発、反省踏まえ(産経新聞)「緊急承認制度」新設、早いワクチン実用化の実現は 改正薬機法成立(朝日新聞)改正医薬品医療機器法が成立 薬の緊急承認、新設 コロナ対応反省/信頼性課題(毎日新聞)

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妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は出産時合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症は妊婦で重症化しやすいことが知られており、罹患によって母体死亡や帝王切開となるリスクが上昇することがすでに報告されている。一方、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が母体・胎児・出産にもたらす影響については大規模な研究報告がこれまでなかった。本研究はカナダ・オンタリオ州で行われた9万7,590人を対象とし、妊娠中にワクチン接種を行った群、産後にワクチン接種を行った群、ワクチン接種を行った記録のない群で出産時合併症の有無を比較した報告である。 結果として、産後大出血、絨毛膜羊膜炎(子宮内感染と考えてよい)、帝王切開、緊急帝王切開、NICU入院、新生児仮死いずれもワクチン接種群とその他の群の間で差は認められなかった。また、ワクチンを受けた回数、1回目に受けたワクチンの種類、ワクチン接種を受けた時期で層別化したいずれの解析でもやはり各群で合併症に差は認められなかった。 妊娠・出産合併症は頻度が低いことからワクチンの影響を見るためには大規模集団を対象とした研究が必要であり、本研究の結果は妊娠中のワクチン接種の安全性を示唆するものとして十分なものといえるだろう。もちろん、妊娠初期に接種した群が少ない、出産時合併症の診断は臨床的に行われ、しばしば過小評価されることがある点、未測定の交絡要因など研究としての限界はあるが、各種感度分析が行われており研究手法としても信頼のおけるものである。同時期に発表された北欧からの研究と併せ、妊娠中の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種についての安全性が強く支持されたといえるだろう。

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コロナ入院患者にレムデシビルは有益か:WHO最終報告/Lancet

 レムデシビルは、人工換気へと症状が進んだ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対して有意な効果をもたらさないことが、またその他の入院患者について、死亡または人工換気(あるいはその両方)への進行に対する効果はわずかであることを、世界保健機関(WHO)の連帯試験コンソーシアム(Solidarity Trial Consortium)が最終結果として報告した。COVID-19患者を対象としたSolidarity試験では、これまでに4つの既存薬に関する中間解析結果が報告されている。このうちロピナビル、ヒドロキシクロロキン、インターフェロン(IFN)-β1aは無益として試験が中止となったが、レムデシビルの無作為化試験は継続されていた。本稿で同コンソーシアムは、これまでに行われたすべての関連試験の死亡率およびメタ解析の最終結果を報告している。Lancet誌オンライン版2022年5月2日号の報告。35ヵ国454病院でCOVID-19入院患者1万4,221例を対象に無作為化試験 Solidarity試験には、医師の見立てで明らかなCOVID-19で最近入院し、いずれの試験薬にも禁忌がなく、その他の患者の特性は問わず同意が得られた成人(18歳以上)患者が登録された。 被験者は、試験地で入手可能であった試験薬に等分になるよう無作為に割り付けられ、その時点で入手可能であった4つの試験薬(ロピナビル、ヒドロキシクロロキン、IFN-β1a、レムデシビル)のいずれかまたは非試験薬(対照)の投与を受けた。また、すべての患者は、試験地の標準治療も受けた。プラセボの投与は行われなかった。 プロトコールで指定されていた主要エンドポイントは、疾患重症度で分類した院内死亡であった。副次エンドポイントは、人工換気への進行(同未実施の場合の)、入院から退院までの期間などであった。 最終的なlog-rank検定およびKaplan-Meier解析はレムデシビルについて行われ、すべての4つの試験薬について追加された。メタ解析は、今回の試験およびその他3つの試験薬の無作為化試験で報告された入院患者における死亡率の加重平均値を評価した。 2020年3月22日~2021年1月29日の間に、WHOに加盟する世界6地域にある35ヵ国454病院から1万4,303例の適格条件を有すると思われる患者が登録された。COVID-19診断が反証されたり、暗号化された同意がデータベースに入力されなかったりした83例(0.6%)を除外後、Solidarity試験には1万4,221例が登録され、うち8,275例がレムデシビル(早期退院とならない限り10日間連日静注投与、4,146例)またはその対照(レムデシビルを入手可能な地域であったが、試験薬に割り当てられなかった、4,129例)を受けるよう無作為に割り付けられた。すでに人工換気を受けていた患者の死亡、レムデシビル群42.1%、対照群38.6% レムデシビル群、対照群ともにコンプライアンス率は高かった。 死亡は、レムデシビル群は4,146例中602例(14.5%)、対照群は4,129例中643例(15.6%)であった(死亡率比[RR]:0.91[95%信頼区間[CI]:0.82~1.02]、p=0.12)。すでに人工換気を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群359例中151例(42.1%)、対照群347例中134例(38.6%)であった(RR:1.13[0.89~1.42]、p=0.32)。人工換気は受けていなかったが酸素投与を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群14.6%、対照群16.3%であった(RR:0.87[0.76~0.99]、p=0.03)。 当初は酸素投与を受けていなかった患者1,730例の死亡は、レムデシビル群2.9%、対照群3.8%であった(RR:0.76[95%CI:0.46~1.28]、p=0.30)。また、人工換気を受けていなかった全患者の死亡は、レムデシビル群11.9%、対照群13.5%であり(RR:0.86[0.76~0.98]、p=0.02)、人工換気への進行はレムデシビル群14.1%、対照群15.7%であった(RR:0.88[0.77~1.00]、p=0.04)。 死亡/人工換気への進行の複合アウトカムの発生率(事前に規定されていなかった)は、レムデシビル群19.6%、対照群22.5%であった(RR:0.84[95%CI:0.75~0.93]、p=0.001)。 レムデシビルの連日静注投与への割り付け(非盲検対照との比較で)は、10日間の治療期間中の退院を約1日遅らせた。 なお、レムデシビル非使用と比較したレムデシビルのすべての無作為化試験における死亡率のメタ解析では、類似した所見が得られたという。

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