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COVID-19患者のリハビリテーション治療とその効果/厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院し、体力が落ちた中で患者のリハビリテーションはいつから開始するべきか、またその効果はどうなのだろう。 日本リハビリテーション医学会(理事長:久保 俊一)では、理事長声明を公開し、「新型コロナウイルス感染症の入院患者さんは狭い病室内への隔離によって運動量や活動量が低下しやすいために、隔離期間中であっても、発症早期から機能維持を目標とした適切なリハビリテーション治療を可能な限り実施していただきますよう、各医療機関での積極的な取り組みをお願いいたします。また、新型コロナウイルス感染症から回復した患者さんを受け入れる後方支援医療機関あるいは介護施設等でのリハビリテーション医療の継続とリハビリテーションマネジメントの実施を決して疎かにされませんようにお願いいたします」と早期からのリハビリテーション導入を推奨している。 また、4月13日に厚生労働省で開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「COVID-19感染患者に対するリハビリテーション治療」が報告されている。 この報告は、田島 文博氏(日本リハビリテーション医学会副理事長/和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座 教授)が自施設の取り組みも含め発表したものである。新型コロナウイルス感染症患者、リハビリで運動機能維持 COVID-19感染症患者に対するリハビリテーション医療の必要性として、2020年4月に全米保健機構(PAHO)が「COVID-19感染症患者には感染予防を徹底した上で、積極的なリハビリテーション治療が必要である。患者の活動性を低下させず、治療効果を最大限に引き出し、病床の有効利用と社会的資源の活用に繋がる」と提唱したこと、同年5月に日本リハビリテーション医学会の理事長声明で「急性期の集中治療室(ICU)での肺炎患者から回復期の身体・精神機能低下に対するリハビリテーション治療までリハビリテーション医療は不可欠」と提言のあったことを示した。また、2022年2月に、日本リハビリテーション医学会は「感染対策指針(COVID-19含む)」を発表し、さらなる安全なリハビリテーション治療の導入を勧めたほか、上述の理事長声明が4月に出されたことを示した。新型コロナウイルス感染症入院早期からのリハビリで転帰も良好 田島氏の所属する和歌山県立医科大学では、ICUで人工呼吸器にて治療している重症患者に対してもリハビリテーション治療を行っている。重要なことは、「身体を起こすこと」と「運動すること」だという。これは軽症・中等症患者でも同じで、分院では屋外での訓練を含め、運動療法を主体としたリハビリテーション治療も実施している。また、高齢者でもリハビリテーション治療を行えば、隔離期間が終わると同時に退院できると報告している。 中等症・軽症コロナ病棟のリハビリテーション治療実績について、同大学リハビリテーション科では、すべての患者をリハビリテーション科医師が診察し、必要と判断した場合にリハビリテーション治療を処方している。コロナ患者には、感染対策の教育を十分に行った療法士を担当とし、同科医師の指示に基づく、可及的長時間高負荷の運動療法中心を実施している。 実際、オミクロン株流行期におけるリハビリテーション診療に現状について、70歳以上の高齢者では94人が入院し、そのうちの88人(93.6%)にリハビリテーション治療が実施された。88人の転帰では、死亡者はなく、自宅・施設退院は79人(89.8%)、転院は9人(10.2%)だった。なお、院内感染はなかった。新型コロナウイルス感染症患者にリハビリ医療を導入する取り組み 田島氏は新型コロナウイルス感染症患者へのリハビリテーション医療導入のメッセージとして次の3項目を掲げている。1)コロナ医療においても、急性期からリハビリテーション医療を理解した医師が診察し、感染対策を指導された療法士がリハビリテーション治療を行えば、運動機能の低下は防げること。2)コロナ患者に対するリハビリテーション治療では急性期からの座位・立位訓練と運動療法が必須であること。3)コロナ医療において、リハビリテーション治療対応が困難な場合、可及的速やかにリハビリテーション治療可能な医療機関などに転院させること。

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新規抗体カクテル療法のAZD7442、コロナ発症予防にも有効/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防において、AZD7442はプラセボと比較して、有害事象の頻度は同程度でほとんどが軽度~中等度であり、症候性COVID-19の発生割合は有意に低いことが、米国・コロラド大学のMyron J. Levin氏らが実施した「PROVENT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年4月20日号に掲載された。AZD7442は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者のB細胞から分離された抗体由来の2つの完全ヒト型SARS-CoV-2中和モノクローナル抗体(tixagevimab、cilgavimab)の併用薬である。欧米5ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、COVID-19の予防におけるAZD7442の安全性と有効性の評価を目的とする進行中の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2020年11月~2021年3月の期間に、5ヵ国(ベルギー、フランス、スペイン、英国、米国)の87施設で参加者の登録が行われた(英国AstraZenecaと米国政府の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上で、COVID-19ワクチン接種への反応が不十分であるリスクが高い(年齢60歳以上、肥満、免疫不全状態、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎不全、慢性肝疾患など)、またはSARS-CoV-2への曝露リスクが高い地域や環境にある(医療従事者、食肉加工などの工場労働者、軍関係者、寮生活の学生など)、あるいはこれら双方に該当し、スクリーニング時に血清を用いた臨床現場即時検査でSARS-CoV-2陰性の集団であった。 被験者は、1日目にAZD7442 300mgの単回投与(tixagevimabとcilgavimabを別個に連続して筋肉投与)を受ける群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 安全性の主要エンドポイントはAZD7442投与後の有害事象の発生であり、有効性の主要エンドポイントはAZD7442投与後の症候性COVID-19(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法で確定されたSARS-CoV-2感染)とされ、183日間の経過観察が行われた。症状発現までの期間も長い 計5,197例(平均[±SD]年齢53.5±15.0歳、60歳以上43.4%、女性46.1%)が登録され、AZD7442群に3,460例、プラセボ群に1,737例が割り付けられた。ベースラインで、73.3%がCOVID-19ワクチン接種への反応が不十分であるリスクが高く、52.5%がSARS-CoV-2への曝露リスクが高いと判定され、77.5%は重症COVID-19への進展リスクが高い併存疾患を有していた。主解析は、参加者の30%が、自分が割り付けられた治療群を認識した時点で行われた。 少なくとも1件の有害事象を報告した参加者の割合は、AZD7442群が35.3%(1,221/3,461例)、プラセボ群は34.2%(593/1,736例)で、重症度はほとんどが軽度~中等度であった。とくに注目すべき有害事象のうち最も頻度が高かったのは、注射部位反応(AZD7442群2.4%、プラセボ群2.1%)であった。また、重篤な有害事象の発生率は両群で同程度だった(1.4%、1.3%)。 8例(両群4例ずつ)が死亡した。プラセボ群の2例はCOVID-19による死亡とCOVID-19関連の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)による死亡だった。違法薬物の過剰摂取による死亡が両群に2例ずつ含まれ、AZD7442群では心筋梗塞と腎不全による死亡が1例ずつみられた。 一方、症候性COVID-19の発生割合は、AZD7442群が0.2%(8/3,441例)と、プラセボ群の1.0%(17/1,731例)に比べ有意に低かった(相対リスク減少率:76.7%、95%信頼区間[CI]:46.0~90.0、p<0.001)。長期の追跡(中央値で6ヵ月)における相対リスク減少率は82.8%(95%CI:65.8~91.4)であった。 severe/critical(肺炎または低酸素血症がみられ、WHO Clinical Progression Scaleのスコアが5点以上)のCOVID-19は、AZD7442群では認められず、プラセボ群では5例にみられた。 AZD7442の有効性は、すべてのサブグループで一貫して認められた。また、症状発現までの期間は、AZD7442群がプラセボ群よりも長かった(ハザード比:0.17、95%CI:0.08~0.33)。 著者は、「これらのデータは、COVID-19の免疫予防薬としてのAZD7442の使用を支持するものである」とまとめ、「本試験の臨床および薬物動態の評価は少なくとも12ヵ月間継続される見込みである。また、緊急使用許可(EUA)の下で、免疫不全状態の集団における免疫予防薬としての本薬の有効性を評価する試験も進行中である」としている。

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第107回 医療者の成功事例求む!ワクチン接種をやる気に導く方法

わが家は18歳の娘も含め家族全員が2月中に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の3回目のワクチン接種を終えているが、2ヵ月ぶりに娘にワクチンを接種することになった。何かというと日本脳炎のワクチンである。私の娘の場合、2005年の日本脳炎ワクチン接種後に認められた「因果関係が否定できない急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の確認による接種勧奨中止」が本人の定期接種時期に当たったため、接種機会を逃していたのである。というか、接種勧奨再開時に本来通知が来ていたはずだが、私も妻もまったくに近いくらい記憶がない。私自身はちょうど勧奨再開時期に多忙を極めていたため、その点は妻に任せきりだったことも影響している。ちょうど昨年、ヒトパピロ―マウイルス(HPV)ワクチンの接種勧奨再開方針が決まった際に、改めて母子手帳を確認したところ、ワクチン接種のページに妙な空白を見つけ、未接種が発覚したというお粗末な顛末である。もっとも私が気付いた時期は、企業の製造工程不備により日本脳炎ワクチンの供給量が不安定な状態が続いていた。そんな最中にキャッチアップ対象に過ぎない娘の接種を医療機関にお願いすることもできない。昨年末に製造体制が復活したのは知っていたが供給が安定するのには時間がかかるだろうと思い、これまではずっとスタンバイ状態にしていた。最近になって流通もかなり改善しているだろうと思い、区役所に連絡を取って、支所に出向き予診票を発行してもらった次第だ。しかし、娘は大の注射嫌いで新型コロナワクチンの接種時でさえ、腕をまくって接種を待つ間、「あああ、あああ」と声を上げながらしかめっ面をし、看護師の皆さんが飛んできてなだめたほどの困ったちゃんである。とは言え、好き嫌いとは別に新型コロナに関しては、高校の大切な思い出作りの修学旅行の中止という状況まで経験しているので、本人もその必要性は認識していた。しかし、普段は病名としてすら馴染みのない日本脳炎のワクチンを改めて接種するとなるとそうもいかない。しかもすでに民法改正で成人となった18歳という年齢を考えると、幼少期のように親の一存で何も説明せずに済むとは思えない。そこで娘には率直に状況を説明した。まずは感染者のうち100~1,000人に1人が発症し、日本でも今も年間10例以内の発症者がいると話すと、「年10例? そんなんだったら必要ないじゃん」との第一声。これは予想された反応だったので、未だ首都圏周辺ですら養豚場のブタの抗体陽性率は高く、発症した場合は20~40%の人が命を落とすこと、さらに無事救命できたとしても半数前後に後遺症が出ると説明し、本人をなだめた。結局、接種当日にクリニックへ到着すると、すでに眉間にしわが寄っている。本人から「コロナのワクチンと比べて痛い?」との問い。いやー、これは答えにくい。本音を言えば、筋肉注射の新型コロナワクチンと皮下注射の日本脳炎ワクチンを比べれば、皮下注射のほうが痛みはあるに決まっている。私はそれに直接答えずに「まあ、チクっとするくらいだよ」と返した。接種を待つ間、もう18歳にもなったというのに父親の私の手を握っている。ようやく呼ばれて、私も同席して針が刺された瞬間の娘の顔は般若の形相。私は内心「あー、やっぱり痛いんだな」と思うしかない。終わって待合室に戻ってきてからは、「今までで一番痛かったよ」と半べそである。私は「まあその時々によっても差があったりするからね」と誤魔化しておいた。なんせ1週間後には2回目の接種を控えているので。ちなみに、その娘が思いもかけずワクチン接種後にニコニコしていたことがある。それは新型コロナの3回目接種の時である。この時、娘の接種が終わるまで私はクリニックの外で待っていたのだが、本人が「今日は何ともなかったわ」と言いながら、接種時の様子を頼みもしないのに話してくれた。本人によると接種をしたのは女医さんで、予診票を目を見開いて凝視しながら「あら、もしかして医療従事者?」と言われたとか。非医療従事者で娘の年齢だと、2月時点は2回接種完了から半年が経過していない例がほとんどだが、わが家の場合は自称「ワクチンマニア」の私が駆けずり回って、キャンセル待ちで緊急に受けられるところを探して登録したため、娘は同年代と比べて格段に接種時期が早い。実際、当時娘のクラスでは誰一人まだワクチンを接種しておらず、娘自身は「ズルしたかのように誤解されるのは嫌だ」ということでワクチン接種完了を担任教師にも友達にも隠していたほどだ。この女医さんが驚いたのも無理はなかろうと思う。本人も「違います」と答えたが、女医さんからは「でも、きちんとその年齢でワクチン接種に来ることはとても良いことですよ」とお褒めにあずかったらしい。筋肉注射という痛みが少ない方式だったことに加え、この褒められ効果が本人の心理に影響を与えたことは確かだったようだ。まあ、もっともこうしたことは接種というところまで辿り着いたから言えることで、問題は接種をためらう層へのアプローチである。その意味で私自身は今の状況をある種の懸念を持って眺めている。新型コロナワクチンに関しては、医学的知見を踏まえて2回接種が3回接種になり、今後は一部対象者に4回目の接種が行われようとしている。まだ未解明のことも少なくない新型コロナウイルスに対してはやむを得ないことではあるが、一般人の理解、以前も触れたが臨機応変な政策変更という状況に慣れていない日本人では、こうしたアジャイルさは必ずしも素直に受け止めてもらえるわけではない。そのことは3回目接種率の上昇の鈍さにも表れていると思う。これが新型コロナワクチンという限定的なものではなく、ワクチン全体への不安や疑念に広がってしまうと非常に厄介である。私が懸念するのはこの点だ。そしてもしこの危惧が現実になった際には、日本脳炎ワクチンのように対象の感染症自体の報告数が少ないものでは余計に「不必要論」が浸透してしまいやすいように思える。もちろん前述のように首都圏ですら養豚場の豚の抗体陽性率の高いという疫学的データから見れば、定期接種という形でややdo接種されているからこそ年間10例未満で収まっているのだと理解はできるはず。だが、一般向けの情報発信を常に行っているものとしては、そう簡単とは思えない。念のため、日本脳炎ワクチンについてTwitterなどで検索してみると、比較的接種に肯定的な親御さんは多いようだ。しかし、4月に岐阜県で日本脳炎ワクチン希望の5歳児への新型コロナワクチンの誤接種を巡って新型コロナワクチン否定派の人たちがあれやこれやと騒いでいるツイートも目にする。SNS上ではこうしたちょっとした事件が思いもかけないほど負の影響を拡大再生産することはよくあることだ。そうした中で日本脳炎ワクチンの供給量が改善してきた今、一般向けの啓発記事を書こうかとも思っているが、こうした「空気のようなワクチン」についてどのように情報発信すべきかとやや悩み始めている。その意味では接種を躊躇する方に対する医療従事者の成功事例があれば知りたいところだが、あちこち情報を検索していてもなかなかこれというものが見つからないというジレンマに陥っている(もし「こんな事例がありました」というのがあれば、ぜひ教えていただきたいとも思っている)。

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ワクチン接種後の解熱鎮痛剤使用は抗体獲得に影響しない/日本感染症学会

 第96回日本感染症学会総会・学術講演会(会長:前崎 繁文氏[埼玉医科大学 感染症科・感染制御科])が、4月22日~23日の期日でオンライン開催された。 本稿では、同学術講演会の口演より、谷 直樹氏(九州大学大学院)の「BNT162b2 mRNAワクチン接種後の副反応と解熱鎮痛剤内服が抗体反応に与える影響の検討」の概要をレポートする。 新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応は一般的なワクチンの接種後と比較して出現頻度が高いことが知られており、ワクチン接種後の症状軽減のため解熱鎮痛剤が使用されることも多い。そのような背景を踏まえ、ファイザー製ワクチン(BNT162b2)接種後の副反応の程度と誘導された抗体の関係性を調査すること、解熱鎮痛剤の使用が抗体反応に与える影響を調査することを目的として本研究が実施された。 解析対象は、BNT162b2を2回接種かつ2回目接種から14日以上経過した福岡市民病院職員のうち、感染・感染疑い歴のある者、ワクチン接種24時間以内に解熱鎮痛剤を内服した者を除く335人(うち235人から副反応情報を取得)とした。2回接種後に採血を行いSARS-CoV-2特異的スパイク蛋白IgG(S-IgG)抗体価を測定し、ワクチン接種後の副反応(発熱、倦怠感、頭痛、注射部位の痛みや腫れなど計13項目)に関する質問、および副反応に対して使用した解熱鎮痛剤について調査を行った。 口演で報告された主な結果は以下のとおり。・解熱鎮痛剤は全体の約45%で使用されており、発熱を認めた集団の80%以上が使用していた。・単変量解析において、局所の副反応は抗体価と相関を示さなかった。全身性副反応のうち1回目接種後の皮疹、2回目接種後の発熱、倦怠感、頭痛、悪寒の有無が抗体価と有意な関連を示した。・単変量解析で有意になった項目を用いて多変量解析を行った結果、2回目接種後の発熱の程度(β=0.301、p<0.0001)、女性(β=0.196、p=0.0014)、年齢(β=-0.119、p=0.0495)と抗体価の相関が認められた。・2回目接種後に体温が38度以上に上昇した集団は37度未満の集団より約1.8倍抗体価が高く、性別、年齢別のいずれの解析においても、2回目接種後の発熱が強いほど抗体価がより高くなる傾向が見られた。・解熱鎮痛剤を使用しても抗体価の低下は認められず、発熱の程度による違いも認められなかった。

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第107回 会長選前に日医で内紛勃発、リフィル処方箋導入で松原副会長が中川会長を批判

中川会長を批判する文書を大阪府地区医師会役員宛に送付こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウイーク前半は残雪期の春山を楽しむため、尾瀬の燧ヶ岳を登って来ました。群馬県側の大清水登山口から長蔵小屋に入り一泊。翌日、長英新道ルートでピークを目指しました。この時期の尾瀬はまだ積雪がかなりあり、冬山装備も必要なので一般登山者は少なく、静かな山旅を堪能できます。実際、長蔵小屋の宿泊はわずか4パーティーと快適だったのですが、食堂での食事はマスク着用で飲酒は禁止、会話も最小限でという厳格ルールには参りました。東京の飲食店の多くは、コロナ前と同じような活気が戻ってきています。山の中でももう少しルールを緩めてもいいのでは、とお通夜のような食事を取りながら思った次第です。さて、リフィル処方箋を巡って、日本医師会で“内紛”が起きています。4月27日付のRISFAXは「日医・松原副会長が中川会長を猛批判」という記事タイトルで、日本医師会の松原 謙二副会長が自身の地元の大阪府地区医師会役員宛に、長年日医が反対してきたリフィル処方箋導入を今回の改定で“飲ん”でしまった中川 俊男会長を批判する文書を送ったと報じました。「わずかな見かけだけのプラス改定のために禁じ手を用いるなど言語道断」同文書では、リフィル処方箋について「診察を省略して、 患者の希望と薬剤師の判断に任せるなど、患者を守る医師としての処方権を放棄したも同然」と主張。リフィル処方の導入を巡る経緯については「厚生労働省幹部から伝え聞いた話」として、財務省と厚労省から5つの医療費抑制の提案がなされ、中川会長が「表面上のプラス改定のためにリフィル処方を選んだ」としています。その上で、中川会長の対応について「わずかな見かけだけのプラス改定のために禁じ手を用いるなど言語道断」と強く批判しています。m3.com等の報道によれば、同じ27日、定例記者会見を行った中川会長は、「報道されている内容は、改定率や改定の経緯も含めて、日医とは違う考えをお持ちだということ」反論、「日医がリフィル処方箋の導入を求めて導入されたという事実はない。後藤 茂之厚労相と鈴木 俊一財務相の大臣折衝は非常に厳格なものであり、そこで政府としての結論として導入を決めたということ」と話したとのことです。この日の定例記者会見は、日医が新たにまとめた「かかりつけ医」の機能などの考え方を初めて公表する重要な場でしたが、松原副会長は出席予定だったにもかかわらず欠席しています。次期会長選に出馬する意向を固めた中川会長現職の副会長が会長を批判する文書を出すのは極めて異例のことです。ただ、既にこの批判文書に至る前哨戦がありました。それは、3月27日に開かれた日本医師会の臨時代議委員会です。茂松 茂人代議員(松原副会長の出身母体である大阪府医師会会長)が質問で、「リフィル処方箋の導入は改定率との交換条件だったとの一部報道もある」としてその真偽をただしたのです。この時も中川会長は交換条件について「全くそんな事実はない」と回答しています。またこの場では柵木 充明代議員(愛知県医師会会長)も、「使途が決まっている分を除いた上で、リフィル処方箋導入などによるマイナス要因を考慮すればマイナス改定ではないか」とリフィル処方箋導入を批判する質問をしています。俄然きな臭くなってきた日本医師会ですが、これらの動きは中川会長が6月に行われる予定の次期日本医師会長選に出馬する意向を固めたことと無縁ではないでしょう。4月22日付の北海道新聞は中川会長が再選を目指して会長選に出馬する意向を固めたとして、「やらなければならない仕事が山積している。(出馬を)前向きに検討している」という中川氏の言葉を報じています。ポスト中川の擁立の動き活発化かちなみに中川会長が「表面上のプラス改定のためにリフィル処方を選んだ」というのは、本連載の「第92回 改定率で面目保つも「リフィル処方」導入で財務省に“負け”た日医・中川会長」でも詳しく書いたように、ほぼ事実として捉える向きは多いようです。しかし、それを事実と認めてしまっては、日医会長の面目が立ちません。茂松・大阪府医師会会長、松原・日医副会長ら大阪府医師会陣営や、愛知県医師会陣営が次期日医会長選に挑むかどうかは現時点ではわかりませんが、松原副会長の批判文書が中川会長の“弱点”(今回の診療報酬改定での“失態”)を突いたのは確かでしょう。中川会長を巡っては、政界とのパイプの細さや、コロナ対応などで国民のさまざまな批判を浴びたことなど、その指導力を疑問視する声もあります。最近では4月20日の定例記者会見で「マスクを外すのは新型コロナウイルス感染症が終息した時」「ウィズコロナの状態でマスクを外す時期は来ない」などと発言したことに対し、脱マスクが進む海外の状況とのズレに、ネット上では批判が飛び交いました。そして1週間後の4月27日の定例記者会見では「屋外で、他の人と十分距離がとれている場合は、マスクを外す対応をとって頂きたい」と発言し、その一貫性のなさが再び話題となっています。また日医の政治団体、日本医師連盟の集票力にも陰りが見えています。夏の参院選を控え、ポスト中川会長の擁立を画策する動きが活発化するかもしれません。もっとも、大阪府医師会陣営は、リフィル処方箋やオンライン診療などに対し、中川会長よりもさらに激しい反対を表明しており、岸田政権側からどう見られるかは微妙です。日医会長選は6月4日に立候補を締め切り、6月25日の定例代議員会で投開票が行われます。松原副会長の処遇も含め、これから1ヵ月間の日医内部の動きに注目です。

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コロナ外来患者に処方される抗菌薬、何が多い?/JAMA

 抗菌薬の使用は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)を含むウイルスに対し、効果のない治療法であることは自明である。そこで、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のSharon V Tsay氏らは新型コロナ外来の高齢者に対する抗菌薬の処方状況を調査した。その結果、メディケア被保険者の新型コロナ外来患者の30%に抗菌薬が処方されており、そのうち50.7%がアジスロマイシンであったことも明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年4月8日号にリサーチレターとして掲載された。 本研究は医療保険メディケアのキャリアクレームとパートDのイベントファイルを使用し、新型コロナ外来患者の診察とそれに関連して抗菌薬を処方された65歳以上の被保険者を特定。また、年齢、性別、人種、処方場所ごとに、抗菌薬を「処方された」または「処方されなかった」新型コロナ感染した被保険者の分布を比較するために、カイ二乗検定を行った。 主な結果は以下のとおり。・2020年4月~2021年4月の期間、116万9,120例が外来受診し、そのうち34万6,204例(29.6%)に抗菌薬が処方されていた。処方量は月ごとに異なり、新型コロナが感染拡大した2020~21年の冬にはその処方割合は高くなった(範囲:17.5%[2020年5月]~33.3%[2020年10月])。・処方は病院の救急外来が最も高く(33.9%)、次に遠隔診療(28.4%)、Urgent care*(25.8%)、診療所(23.9%)と続いた。・最も頻繁に処方された抗菌薬はアジスロマイシン(50.7%)であり、次にドキシサイクリン(13.0%)、アモキシシリン(9.4%)、レボフロキサシン(6.7%)だった。・アジスロマイシンの処方割合が最も高かったのはUrgent care(60.1%)で、遠隔医療(55.7%)、診療所(51.5%)、病院の救急外来(47.4%)と続いた。・年齢、性別、処方場所にも違いが観察された。・非ヒスパニック系白人患者には、ほかの人種および民族グループ(アメリカインディアン/アラスカ先住民24.1%、アジア/太平洋諸島人26.5%、黒人またはアフリカ系アメリカ人23.2%、ヒスパニック系28.8%)よりも頻繁に新型コロナに対して抗菌薬が処方されていた(30.6%)。*Urgent care:急病診療所。かかりつけの医師やクリニックが閉まっている場合に利用する施設 なお、研究者らは「新型コロナ治療にアジスロマイシンの利点は示されていないうえ、抗菌薬の耐性に影響を及ぼす。また、本研究は米国全人口やメディケア処方薬の適用範囲ではない65歳以上の集団を代表するものではないかもしれないが、外来患者での抗菌薬の処方を適正化し、高齢者集団における新型コロナのようなウイルス感染症に対する不要な抗菌薬の使用を回避することの重要性を強調する」としている。

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14%の医師がコロナ前より年収増と回答、理由は?/1,000人アンケート

 ケアネットでは、3月10日(木)に会員医師1,000人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で新型コロナ禍前と比較した年収の変化について尋ねたところ、増えた(かなり増えた+やや増えた)と回答したのは14%、ほぼ変わらないと回答したのが66%、減った(かなり減った+やや減った)と回答したのは20%だった。年収2千万円を境に「増えた」と回答した医師が増加 新型コロナ禍前と比較した年収の変化を年収別にみると、年収2千万円未満では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」と答えたのは10%だったのに対し、年収2千万円以上では25%と多い傾向がみられた。 年齢別にみると、35歳以下では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」と回答したのが25%だったのに対し66歳以上では6%と、年齢が上がるごとにその割合が低下する傾向がみられた。逆に「減った(かなり減った+やや減った)」という回答は35歳以下では11%だったの対し66歳以上では32%と、年齢が上がるごとに増加した。開業医では「増えた」医師も「減った」医師も多い傾向 開業医と勤務医でそれぞれ傾向をみると、開業医では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」が17%、「ほぼ変わらない」が52%、「減った(かなり減った+やや減った)」が32%だったのに対し、勤務医では「増えた」が13%、「ほぼ変わらない」が70%、「減った」が17%だった。 診療科別にみると、精神科や神経内科、呼吸器内科では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」と回答した医師が20%以上となり、他科と比較して多い傾向がみられた。年収が増えた理由、影響大なのはワクチンバイト? 自由記述で年収が変化した(あるいは変わらない)理由を尋ねたところ、「かなり増えた」と回答した医師では、「コロナ補助金で(60代、内科開業医)」という声のほか、「ワクチンバイトをしまくったから(30代、眼科開業医)」とワクチンバイトを理由に挙げる人が多かった。 「やや増えた」と回答した医師では、「コロナに関係なく需要が増えている(30代、精神科開業医)」といった声のほか、「コロナ病棟をみていることの手当(40代、呼吸器内科勤務医)」等手当やワクチンバイトを挙げる人が多かった。 全体の60%以上を占めた「ほぼ変わらない」と回答した医師では、「コロナ感染対応が多いが、そのリスクに見合うだけのトータルでの増収はない(危険手当での増分≒外勤減分)(30代、小児科勤務医)」、「感染流行で患者が減少しても、その後感染が収まれば患者が増えるから(40代、麻酔科勤務医)」等プラスマイナスがあり、結果的に「変わらない」という声が多く聞かれた。 「かなり減った」「やや減った」と回答した医師が挙げた理由としては、「手術減、患者減でインセンティブが減った(40代、消化器外科勤務医)」、「患者数の激減(60代、小児科開業医)」など、患者数の減少が響いているという声が多くみられた。 上記のほか、男女別、病床数別、勤務先別等の回答について、以下のページで詳細結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2022【第5回】コロナ禍前との年収の比較

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マージャンは認知力の低下に有効【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第209回

マージャンは認知力の低下に有効photo-ACより使用麻雀(マージャン)は認知症の予防になるということで、健康麻雀と称して高齢者施設でプレイしている映像を何度か見たことがあります。しかし、「本当に医学的な根拠があるのだろうか?」という疑問をずっと持っていました。そうこうしているうちに新型コロナが流行し、接触感染の重要経路となりうる麻雀から、多くの人が離れてしまいました。さびしい限りです。Ding M, et al.Mahjong Playing and Leisure Physical Activity Alleviate Cognitive Symptoms in Older Community Residents.J Aging Phys Act. 2022 Feb 1;30(1):89-97.麻雀に限らず、頭を使う趣味というのは、認知機能の低下をある程度予防することができます。たとえば、数独やパズルなどがそうで、入院中の患者さんが、よくパズル雑誌を解いている光景を目にします。この研究は、麻雀をすることで、軽度認知障害(MCI)が予防できるかどうかを検討した論文です。MCIは、健康と病的な認知症の間にある症状のことで、「認知症の前段階」として理解されています。日本におけるMCIの有病率は、10%を超えていると考えられます。MCIを持つ高齢者187人と、持たない高齢者489人を登録しました。解析の結果、麻雀を続けている年数は、複数の共変数を補正したMCIの有病率低下と関連していることが明らかになりました(オッズ比:0.595、95%信頼区間[CI]:0.376~0.961、p=0.032)。とくに、身体的活動と麻雀は、MCIの有病率低下に複合的な効果をもたらすことがわかりました。そのため、ほどよい運動・ほどよい麻雀は、かなり認知力低下に有効だと考えられます。よぉし、明日から麻雀だ!……とはいえ、麻雀のやりすぎは痙攣のリスクになるかもしれないので1)、ほどほどに。1)An D, et al. Clinical characteristics and prognosis of mah-jong-induced epilepsy: A cohort review of 56 patients. Epilepsy Behav. 2015 Dec;53:117-9.

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国内初の遺伝子組み換えコロナワクチン「ヌバキソビッド筋注」【下平博士のDIノート】第97回

国内初の遺伝子組み換えコロナワクチン「ヌバキソビッド筋注」今回は、「組み換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(商品名:ヌバキソビッド筋注、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤は、わが国で4番目の新型コロナウイルスワクチンとして承認された国内製造ワクチンです。これまでさまざまな理由により先行3剤の新型コロナワクチン接種が受けられなかった人や3回目接種の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の予防の適応で、2022年4月19日に承認されました。接種対象は18歳以上です。なお、本剤の発症予防効果の持続期間は確立していません。<用法・用量>初回免疫1回0.5mLを2回、通常3週間の間隔をおいて筋肉内に接種します。本剤は2回接種により効果が確認されていることから、原則ほかのSARS-CoV-2に対するワクチンと混同することなく2回接種します。追加免疫1回0.5mLを筋肉内に接種します。通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができます。<安全性>臨床試験で報告された主な副反応は、圧痛75.3%、疼痛62.2%、疲労52.9%、筋肉痛51.0%、頭痛49.9%、倦怠感41.0%、関節痛23.9%、悪心・嘔吐14.5%などでした。また、重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.このワクチンを接種することで新型コロナウイルスに対する免疫ができ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは本剤の接種を受けることができません。1回目に副反応が現れた場合は、2回目の接種前に医師などに伝えてください。3.本剤の接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保ってください。接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。4.合計2回を3週間の間隔で筋肉内に接種します。1回目の接種から3週間を超えた場合は、できる限り速やかに本剤の2回目の接種を受けてください。5.初回免疫の2回目接種から少なくとも6ヵ月を経過した人は3回目の接種を受けることができます。6.本剤の接種直後または接種後に、心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神が現れることがあります。接種後一定時間は接種施設で待機し、帰宅後もすぐに医師と連絡を取れるようにしておいてください。<Shimo's eyes>わが国で4番目の新型コロナワクチンが登場しました。これまで承認されているワクチンはmRNAワクチンであるコミナティ筋注/同5~11歳用、スパイクバックス筋注と、アデノウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア筋注でしたが、本剤は、初の組み換えスパイクタンパクを抗原とした新型コロナワクチンです。遺伝子組み換えワクチンはすでにB型肝炎ワクチンなどで実用化されており、一般的に安全性が高く副作用が少ないといわれています。今回、国内臨床試験のデータなどをもとに有効性と安全性が確認され、特例承認ではなく通常承認の枠組みが適用されました。本剤は米国・ノババックスが開発し、わが国では武田薬品工業が技術移管を受けて製造販売と流通を担っています。本剤には、免疫の活性化を促進するサポニン由来のアジュバントMatrix-Mが添加されており、組み換えスパイクタンパクと組み合わせることで、SARS-CoV-2に対して中和抗体を作るなどB細胞の賦活化およびキラーT細胞などの細胞性免疫の賦活化が誘導されると考えられています。初回免疫について、米国とメキシコで実施された3万人規模の第III相試験では90.4%、英国で1万5,000人規模の第III相試験では89.7%の発症予防効果が確認されました。国内の日本人に対する臨床試験でも、海外におけるデータと大きく異ならない結果が得られました。副反応としては疼痛、倦怠感などが確認されましたが、ほとんどが軽度~中等度で、既存の新型コロナウイルスワクチンと比べても特別な懸念はないとされています。流通に関しては、凍結を避けた2~8℃での保存であり、通常のワクチンと同様に輸送・保管することが可能です。なお、有効期間は9ヵ月とされ、本剤の1バイアルには10回接種分の用量が充填されています。2022年4月27日、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、本剤を予防接種法に基づく特例臨時接種で使用するワクチンとして、1~3回目接種での使用を想定し、1~2回目接種に用いたワクチンの種類にかかわらず3回目接種への使用が可能となりました。接種開始時期については5月末目途とされています。参考1)PMDA 添付文書 ヌバキソビッド筋注

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「ロナプリーブ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第81回

第81回 「ロナプリーブ」の名称の由来は?販売名ロナプリーブ®注射液セット 300ロナプリーブ®注射液セット 1332一般名(和名[命名法])カシリビマブ(遺伝子組換え)(JAN)イムデビマブ(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制用法及び用量通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組換え)及びイムデビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注又は単回皮下注射する。警告内容とその理由<SARS-CoV-2による感染症の発症抑制>SARS-CoV-2による感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者※本内容は2022年5月2日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2022年1月改訂(第3版)医薬品インタビューフォーム「ロナプリーブ®注射液セット 300/ロナプリーブ®注射液セット 1332」2)PLUS CHUGAI:製品・安全性

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ワクチン接種者、オミクロンへの中和能が低下してもT細胞免疫は維持

 感染力の高いオミクロン株の出現や、新型コロナの既感染者またはワクチン接種者の中和能の低下がみられることから、新たな変異株への免疫防御力を推定するために細胞性免疫の研究が重要である。イタリア・サンタルチア財団Istituto di Ricovero e Cura a Carattere ScientificoのLorenzo De Marco氏らが、新型コロナに対して感染またはワクチンによる免疫を持つ人を対象にオミクロン株に対するT細胞応答性を調べた結果、スパイクタンパク質の変異にもかかわらず、オミクロン株が免疫系の細胞成分によって認識されることがわかった。すなわち、重症化予防効果は持続する可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2022年4月22日号に掲載。 本研究は、2021年12月20~21日に、Istituto di Ricovero e Cura a Carattere Scientificoで、ボランティアの医療従事者と科学者を対象に実施されたコホート研究である。採取直後の血液サンプルからリンパ球を分離し、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する応答を調べた。主要アウトカムとして、オミクロンBA.1株のスパイクタンパク質の変異領域に対するT細胞応答性、ペプチドライブラリーを用いた刺激によるスパイクタンパク質に対するT細胞免疫を調べた。 主な結果は以下のとおり。・新型コロナワクチン接種者もしくは新型コロナ既感染者の計61人が登録され、平均年齢41.62歳(範囲:21~62歳)、女性は38人(62%)だった。・オミクロン株の変異領域をカバーするペプチドに応答するCD4陽性T細胞頻度の中央値は0.039%(範囲:0~2.356%)で、武漢株の同じ領域に特異的なCD4陽性T細胞の0.109%(同:0~2.376%)と比べ64%減少した。・CD8陽性T細胞では、中央値0.02%(範囲:0~0.689%)の細胞で変異スパイク領域を認識し、同等の非変異領域に0.039%(同:0~3.57%)の細胞で応答したのに対し49%減少した。・しかしながら、完全長のタンパク質のペプチドライブラリーに対する全体的な応答性は、ほぼ維持されていた(推定87%)。・ワクチン接種歴や感染歴の異なるグループ間で、免疫認識の減少に有意な差はみられなかった。

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第106回 お薦めしません!医療素人とのTwitter応酬合戦、その全貌がコレ

先日、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するドラッグ・リポジショニングで注目された抗インフルエンザ薬ファビピラビルの「内情」について書いたが、その直後、私がTwitterであるツイートをしたことがきっかけで自ら「素人」と言ってはばからない人と応酬となった。Twitterをやっている人は分かると思うが、何も知らない、あるいはやや狂信的とも言っていい人とやり取りをするのは疲れるもの。私も大概は無視するのだが、あまりに誤った情報だと何かは返したくなる。その結果が今回の事態だが、医療知識のない人とやり取りをするというのは、こういうものなのだという参考事例として今回紹介したい。さて、きっかけとなった私のツイートは、本連載第104回でも触れた塩野義製薬が開発中の新型コロナの3CLプロテアーゼ阻害薬の催奇形性に関するもの。この薬に期待を寄せる人は未だ十分に有効性を示せていないイベルメクチンとファビピラビルに期待を寄せる人たちと一部と重なる。しかし、以前も触れたように動物実験でイベルメクチンは最高推奨用量の0.2倍、アビガンは臨床曝露量同程度以下で催奇形性が認められている。そうしたことをこの人たちは知らないのだろうか? という疑問を投げかけるツイートだった。ツイートした当初はほとんど反応はなかったが、それから1週間後にある人からリプライ(返信)が付いた。匿名アカウントで年齢・性別も分からないので、この人をAさんとしておこう。端的に言えばファビピラビル推しの人である。リプライの大意は「ファビピラビルの投与期間中避妊すれば問題ないし、やはり新型コロナの適応を持つバリシチニブだって催奇形性はある。またファビピラビルは米軍、台湾、日本では備蓄もされているし、海外では承認製造されている」。まあ、よくありがちな反応である。ちなみにバリシチニブに催奇形性があることは承知しているし、Aさんが言う米軍、台湾、日本での備蓄は抗インフルエンザ薬での適応であり、情報を混同している。そこでバリシチニブは催奇形性があるとはいえ、ラットで臨床用量の2.3倍、ウサギで6.3倍と、ファビピラビルはそれと比べてかなり低用量で認められ、この点で安全性は低いこと、新型コロナに対するファビピラビルはカナダ、クウェートでの二重盲検試験で有効性は確認されていないと指摘する引用ツイートを送った。過去の経験上、こうした1回目の反応後に相手が沈黙して終わりなのだが、返信があった。曰く「ファビピラビルの製造国は増えてますよ」という。この話はごく一部の国のジェネリック企業が臨床研究用などで製造していることなのだが、事細かに説明するのも面倒だったので「そうした国はいずれも日米欧3極と比べて医薬品の承認審査の厳格さを欠く国々。代表例がタイで、タイは保健省の一存で重症患者にアビガンを用いようとしているものの、エビデンスはなく、日本が真似すべきではない」という趣旨で引用リツイートをした。なお、私はAさんとのやり取りをほぼ引用リツイートで行っている。これはTwitterの性格上、単純なリプライ(返信)にすると、当事者以外のフォロワーなどに可視化されにくいからである。しかし、また返信があった。「海外では、主要国でもアビガン暫定承認と治験、備蓄が進められてます。アメリカでも製造されています」(ツイート内にカナダなどいくつかの事例のツイートを引用)引用ツイートのうち、カナダの出典を辿って思わず笑ってしまった。これはカナダで新型コロナの効能を謳ったファビピラビルの違反広告事例を紹介しているもの。どんな薬がどんな違反広告をしたかが表になっているのだが、「保存などが簡便で、新型コロナへの効果が期待されている」と謳った違反広告内容の紹介をカナダが公式にファビピラビルを評価したと勘違いしているらしい。私は大声を上げて爆笑してしまった。さらに引用ではイギリス、ドイツなども挙げているのだが、前者は単純に医師主導治験の話。後者は新型コロナの治療薬に関して「承認済み」「承認審査中」「臨床研究中」の区分で列挙し、ファビピラビルは単に臨床研究が行われている分類。ところが、Aさんは現地当局が承認審査プロセスに入っていると誤読している。いやはや、何とも言えない反応である。なので私はそうした内容やAさんが製造国が増えていると言っているものは、ファビピラビルの特許失効を受け、第三世界の一部ジェネリック企業が抗インフルエンザ薬としてや臨床研究用に供給するため細々と製造しているだけで、新型コロナ治療薬としての承認国は増加しておらず、承認に足るだけの十分なデータは未だ存在しない旨を返信した。これでやり取りも終わるだろうと思った。というのもこうしたやや長めのやり取りは過去にも経験があるが、それも3~4往復で終わることがほとんど。しかしAさんはめげずに「日本でアビガンは、利権で抑えられたと思いますよ」と、あるツイートを引用しながら返信を寄せてきた。でました、利権という名の陰謀論。ちなみにAさんが引用してきたツイートは、ワクチン否定派の中ではそれなりに有名な在米日本人のツイートで、先日、本連載でも触れたノババックスの組み換えタンパクワクチンの承認について「みんなアメリカでは承認されていないのは知っているかな?」という内容。アメリカで未承認は事実だが、それはアメリカでの申請が日本から2ヵ月遅れの今年2月であるからと考えれば説明がつく。また、すでに欧州連合(EU)では承認済みだ。この辺で止めておこうとも思ったのだが、引用先のツイートが申請時期のことやEUでの承認に触れずに、さも日本だけが暴走しているとの誤解を意図的に誘発しているかのような悪質さを感じたので、あえてAさん宛にその旨を返した。するとさらに返信(またかよ)。「未接種以外の治験してますか?」という。要は日本国内でノババックス製ワクチンを3回目のブースター接種に使おうとする動きがあることへの疑念らしい。もっともここで明確にファビピラビルから「ゴールポスト」が動いてきた。というか、ずっと「ゴールポスト」ずらしが続いてきているとも言えるが。確かにmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンを接種済みの人へのブースター接種に関する企業治験データはない。しかし、イギリスからはすでにファイザー製ワクチンやアストラゼネカ製ワクチンの接種者に対するブースター接種の臨床研究が報告されており、数字だけを見ると同一種のブースター接種よりも抗体価はやや低いものの、明らかにブースター効果は見て取れる。というか、ノババックス製ワクチンに一定の有効性と安全性が認められているならば、原理的に考えてもブースターとしての使用がそれほど大きな問題になるとは思われない。イギリスの臨床研究内容をツイートの140字という文字数制限内で説明するのは無理なので、後者の原理的には問題なしの話で引用リツイートを返した。ややうんざりしていたので、ついでに「そろそろつぎはぎであれこれ指摘するの止めたほうが良いですよ。どれも根拠薄弱なものばかりです」と付け加えた。本当はもっと過激な言葉が出そうだったのだが、最近、ある真面目な医師の実名アカウントが過激な物言いでアカウント凍結にあったのを目にしていたので極力丁寧な言い回しに止めた。しかし、返信は止まない(笑)。またもや別のツイートを引用しながら、新型コロナへのファビピラビル投与事例のメタアナリシスで有意な効果が認められた、との返信である。しかし、その中身は観察研究もどきやかなり設定の違うRCTを無理やりプールしているもの。溜息しか出ない。ということで指摘のメタアナリシスは「なんちゃってメタアナリシス」だとの指摘で返した。また、返信が返ってきた。曰く「二重盲検しか認めないんですね」と。加えてAさんはファイザー製ワクチンの治験で、一部の治験受託機関の管理が甘く、盲検が被験者にばれていた可能性がある事案が明らかになったことを付記してきた。これはBMJ誌でも紹介された話だ。この事案は記事を読んだ人もいるだろうが、問題となった受託機関が担当したのは4万例を超える同ワクチン被験者のうち1,000人程度で、かつ盲検がケースによって見れていた可能性があるに過ぎないというもの。このこと自体がワクチンの有効性や安全性に影響を与える可能性は低い。私は引用ツイートでさらに以下のような趣旨を返した。「二重盲検しか認めないのは原則として当然です。それが現時点で最も科学的に信頼度の高い試験方法です。それを否定するなら、抗インフルエンザ薬としてのアビガンも存在意義を失いますが、それで良いんですか? 二重盲検の結果として科学的に疑義が生じた場合は都度検討すれば良い話です」とにかく相手は止めない。もっとも徐々に返信までの時間は空いてきている。これも過去の経験からだが、こちらの返信に対する相手の反応までの時間が徐々に長くなるというのは、その間にネットサーフィンで反論材料を探し回っている時だ。しばらくして「レムデシビルは、二重盲検結果で承認されてましたか?」との返信。おいおい。レムデシビルの特例承認の根拠となったACCT-1試験は明確に二重盲検試験だ。その旨を指摘するついでに「これは添付文書にですら書いてある情報ですよ。ちゃんと調べてますか?」と追加して引用リツイートした。というか、調べていないことは明らかだろう。まあ、これでそろそろ止むだろうと思った私が甘かった。さらにAさんから返信。「WHOから、指摘ありましたよね」と。ああ、でました。それね。要は一時期、WHOが非常に粗い設定だった「SOLIDARITY試験」に基づき推奨しない見解を出した件だ。この見解は専門家からも批判され、当事者のギリアド社ですら公式に反論をリリースしたほど。後にデータが蓄積されたことでWHOも見解を修正している。私はさらに返信した。「また、きちんと調べずにモノを言うんですか? 承認後にWHOはよりレベルの低い『SOLIDARITY試験』に基づき推奨しない見解を出し、専門家からも批判されました。しかし、後のデータ蓄積などで、この見解は修正されています。あれこれ言う前に勉強すべきです」もうこれで何か返信があっても反応しないと一旦は決めた。しかし、このツイートにある方から「いいね」が付いた。相互フォローとなっていて面識もあるS先生からだ。医師の世界で知らない者はいないと言ってもいいパワフルな人だ。いや、ご多忙中なのに見ていたんだ。恥ずかしい。となると、もはや相手が黙るまで止めるわけにはいかない(笑)。そしてやはり返信があった。「そのようですね」とWHOの見解修正に関する別の人のツイートを引用。珍しくおとなしくなったと思いながらも、「ワクチンに関してどう思われますか?」と、どこかのTVが報じた国内での新型コロナワクチン接種後の死亡者数について触れた動画を引用してきた。次なる「ゴールポスト」変更の地雷付きだ。これにまともに付き合っていたら持たない。なんせ多くの方がご存じのようにアビガン問題と違って、ワクチン否定派の陰謀論は、まるで底なしのガラクタ箱のように、意味のない重箱の隅つつきの事案が次々と登場するだけだから。私もAさんのツイートにイライラしていたので、次のような趣旨で返した。「いい加減、ヒトに聞いたり、誰かのツイートを都合よく切り貼りするのではなく、自分で英語論文などの原典を調べたりすればいいんじゃないですか? どうやらこれまでのやり取りを見ていると英語論文などの原典に当たっていませんよね? 英語も十分に読めているようではない感じですが」腹立ちまぎれにこの辺で勉強したほうが良いですよ、と大学受験生向け英単語参考書のリンクでも貼ろうと思ったがさすがにやめておいた。するとまた返信。もういい加減にしてくれ!アメリカで裁判所の求めに応じてファイザー社が新型コロナワクチンに関する一部の文書を公開した一件を送ってきた。私もこの情報はすでにちらちら眺めていたが、はっきり言って目新しい情報はほとんどない。一部のワクチン否定派がまさに重箱の隅を突いてフレームアップしているだけである。そして私がきちんと勉強せよと言ったことに対するネット民にありがちな反応、「素人ですが、何か?」と付け加えてあった。これに対して以下のような趣旨の引用ツイートをした。「素人だから誤った情報を流布することが倫理的に許されるわけではありません。公開アカウントで発信するなら物事の事実関係は確認すべきです。カナダのアビガン違反広告の件を公的にアビガンの効能を認めたかのように発信したことをはじめ誤った情報をツイートしてますよね」なぜかこの時は一連のやり取りの中で最も多い「いいね」が付く。また、S先生も。あー、やっぱりまだ止められないんだなと思ってしまった。しかし、これでAさんからの返信は打ち止め。ここでほぼ丸2日間の応酬が終わった。しかし、このことを通じて改めて思ったのは、何かを固く信じている人ほど、さまざまな情報をあれこれ都合よく引用するという現実。コロナ禍が続く限り、こうしたことも永久機関のように続くのかと思うとうんざりである。

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アルツハイマー病およびMCI患者におけるCOVID-19の臨床アウトカム

 アルツハイマー病や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、高血圧などの共通のリスク因子を有しているといわれる。高血圧の治療においては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が頻繁に使用される。米国・ベントリー大学のYing Wang氏らは、アルツハイマー病または軽度認知障害(MCI)の患者おけるCOVID-19に対する、ACEI/ARB使用の影響について調査した。その結果、ARB使用はアルツハイマー病およびMCIの患者におけるCOVID-19発症リスクの低下に有意な影響を及ぼしていることが報告された。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2022年4月4日号の報告。 対象は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の検査を行った退役軍人。アルツハイマー病またはMCIを有する場合と認知障害を有さない場合におけるCOVID-19アウトカムを比較するため、古典的スコアと傾向スコアの加重ロジスティック回帰分析を実施し、ACEI/ARB使用の影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病と感染率および死亡率の増加との間に、統計学的に有意な関連が認められた。・MCIは、感染のリスク因子であるとは認められなかった。・MCIを有する患者は、臨床アウトカムが不良であった。・ARBの使用により、アルツハイマー病およびMCIの患者におけるCOVID-19発症リスクの有意な低下が認められたが、ACEIでは認められなかった。 著者らは「アルツハイマー病またはMCIの患者においてCOVID-19の影響を減少させるためには、既存薬による効果を調査することが非常に重要である」としている。

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世界人口の40%超がコロナ感染、感染率の高い地域は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン変異株(B.1.1.529)の急増が始まるまでに世界に衝撃的な影響を及ぼし、2021年11月14日の時点ですでに38億人の感染または再感染を引き起こし、世界人口の43.9%が少なくとも1回の感染を経験しており、累積感染割合は地域によって大きな差が認められることが、米国・ワシントン大学のRyan M. Barber氏らCOVID-19 Cumulative Infection Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年4月8日号に掲載された。バイアスの影響を受けにくい新たな推定法 研究グループは、COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日までの期間における、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の1日の感染者数や累積感染者数、1回以上感染した集団の人口比率に関して、バイアスを最小限に抑えた頑健な推定値をもたらす新たな方法を提示する目的で、190の国と地域のデータを用いて統計解析を行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの助成を受けた)。 解析には、ジョンズ・ホプキンズ大学(米国、メリーランド州、ボルチモア市)と、各国の報告のあった症例、入院、死亡のデータベース、ならびに既報のレビューやSeroTracker、政府機関を介して特定された血清有病割合調査のデータが、主に使用された。 これらのデータについて、報告の遅れなどの既知のバイアスが修正され、SARS-CoV-2に起因する超過死亡率の統計モデルを用いて死亡の過少報告の原因が明らかにされ、血清有病割合調査のデータについて抗体感受性の低下やワクチン接種、SARS-CoV-2エスケープ変異株による再感染の補正が行われた。 次いで、感染-検出比(IDR)、感染-入院比(IHR)、感染-死亡比(IFR)の実証的データベースが構築され、各地域の完全な時系列の値を推定するために地域別および1日ごとのIDR、IHR、IFRを予測する統計モデルが開発され、既報の系統的レビューで正当化されている予測因子の検証が行われた。 次に、1日の感染者数の3つの推定値(症例数÷IDR、入院数÷IHR、死亡数÷IFR)を組み合わせることで、バイアスの影響を受けにくい、より確実な毎日の感染者数の推定値が算出された。さらに、この毎日の感染者数を用いて、累積感染者数と1回以上感染した患者の累積人口比率が推定され、累積感染者数と症例、入院、死亡の修正データを用いて、累積IDR、IHR、IFRの事後推定値が算出された。 最終的に、感染から他者への感染性獲得までの期間と、感染している期間を仮定して、1日の感染者数が、地域別および1日ごとのReffective(実効再生産数:新たな1人の感染者が、その後他者に感染させた感染者数)の当該期間の時系列に変換された。感染者数は南アジアで多く、高所得地域で少ない 2020年4月~2021年10月までに、世界の1日のSARS-CoV-2新規感染者数は300万~1,700万人の間で不規則に変動し、2021年4月中旬に最大となり、とくにインドで急増していた。また、COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日の期間に、SARS-CoV-2感染と再感染を合わせた総感染者数は推定で38億人(95%不確定区間[UI]:34億4,000万~40億8,000万)に達し、世界人口のうち33億9,000万人(43.9%[95%UI:39.9~46.9])がSARS-CoV-2に1回以上感染していた。 累積感染者数は、7つの広域圏のうち南アジアが13億4,000万人(95%UI:12億~14億9,000万)と最も多かったが、累積感染率はサハラ以南のアフリカが100人当たり79.3人で最も高かった。また、高所得地域(日本を含む世界の高所得国を合わせた地域)は感染者数(2億3,900万人、95%UI:2億2,600万~2億5,200万)が最も少なく、東南アジア/東アジア(日本は高所得国に分類され、ここには含まれない)/オセアニアを合わせた地域は感染率(100人当たり13.0人[95%UI:8.4~17.7])が最も低かった。 累積感染割合は国や地域によって大きなばらつきがみられ、70%を超えた国が40ヵ国、20%未満が39ヵ国であった。 日本は、感染者数が645万人(不確定区間:508万~802万)、感染率は100人当たり5.0人(不確定区間:4.0~6.3)、感染割合は5.0%(不確定区間:4.0~6.2)だった。 Reffectiveとtotal immunity(特定地域の特定期間の人口における推定値[週平均])には明確な関連はなく、total immunityが80%の場合でもReffectiveの急速な低下の徴候は観察されず、データ上では明らかな集団免疫の閾値は認められなかった。 著者は、「これらの情報は、ワクチン接種の優先順位の決定など目標を絞った感染予防介入を行う際に有用となる可能性がある。また、今回の統計解析法は、新たに得られたデータに基づいて推定値を迅速に更新し、広く伝達することができるため、時宜にかなったCOVID-19の調査や科学研究、施策への対応においてきわめて重要な役割を担いうるだろう」としている。

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新型コロナ第6波の年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率

新型コロナ第6波における年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率010歳未満240.02006810<重症化率>012%210歳未満00010代00020代00030代00000020代00030代0.030040代0.090.05040代0.090.01050代0.500.11050代0.170.02060代70代1~2回接種3回接種0.470.310.9580代90代以上1.942.150.9760代1.7270代3.836.269.7690代以上810%未接種1~2回接種3回接種0.630.220.311.140.6380代7.623.676<致死率>10代未接種42.001.790.976.633.155.959.33協力の得られた石川県・茨城県・広島県のデータを使用し、2022年1月1日~2月28日における新型コロナウイルス感染者11万9,109人を対象に年代別・ワクチン接種回数別に、3月31日時点の状況での重症化率と致死率を暫定版として算出厚生労働省:第80回(令和4年4月13日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード事務局提出資料「第6波における重症化率・致死率について(暫定版)」より作図Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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コロナ禍の運動不足や孤独対策、どうするか【コロナ時代の認知症診療】第14回

“couch potato”な生活スタイルが高齢者にも?わが国ではCOVID-19(コロナ)が流行り始めた2020年の春頃から、自粛が進んだ。当初から高齢者では運動不足や活動範囲の制限による心身機能低下のへの注意が喚起されてきた。そして世界中での遷延化とともに、高齢者における活動量や身体機能をコロナ前後で比較し、その低下を報告した研究が相次いでいる。そして最近では、こうした研究のレビュー報告もでてきている。それらのレビューは当然ながら、いずれも運動量、活動範囲、消費エネルギーの低下などを報告している。このような低下が、下肢筋力の減少や、運動能力あるいは心肺機能さらにはバランスにまで影響することは、言うまでもない。新しい観点として、座りがちな生活(sedentary lifestyle)が指摘されている。数十年前から有名になったcouch potatoという英語俗語があった。これはカウチ(寝椅子)にくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごす自分の殻にこもった生活スタイルを意味する。このような状態は本来、青年や中年層のライフスタイルと思われたが、最近ではこれが高齢者でもみられるようだ(というよりカウチ青・中年が老年に至ったのか?)。実際、私の外来に来られる高齢患者のご家族がそうした指摘をされる。意外にローテクな方法が効果的な場合も?高齢者の運動不足解消また、階段の昇降段数も減っている。階段の上りの重要性はともかく、下りも大切だ。降ろした足が下のステップに着く際に、踵に重力がかかることで骨粗鬆症防御の役割も果たすのだそうだ。運動量や身体機能が下がっているのは当然としても、知的機能低下や社会交流の減少も同時に進行している。それだけに、この時代において、いかにして運動量やその関連要因の低下がもたらす弊害に対処するかの策が問題になる。多くの医学関連雑誌や行政から、コロナ禍で身体活動量を増やすことだけでなく、メンタルヘルスや社会交流の促しも視野に入れて具体的な提言などもなされている。現実的には、高齢者のITリテラシーを考慮するならローテクであろうか? たとえば週1回の電話利用、あるいは家庭訪問である。運動の分野ではこうした活動によって運動の実践を促し、転倒の危険性を少なくするように推奨されている。またハイテクならWeb利用だが、ノルウェーから自治体主催の包括的ITサービスの実例なども報告されている1,2)。PCやタブレットを用いて双方向性にコミュニケーションができるシステムである。実はこうしたサービスをわが国でもコロナ以前から実践してきた自治体もある3)。この実装のポイントは、面倒な契約などなく、クラウドや通信をひっくるめたインフラ込みの提供にあると思う。具体的には民生委員が関わるような事柄、たとえば見守りとか緊急連絡などに代表される高齢者への包括的なサービスを行ってきたようだ。世界初「孤独担当大臣」を置く英国での孤独対策コロナ禍により、飛沫感染を避けるためディスタンスは当たり前になった。そしてマスク、フェイスシールドを介してのコミュニケーションとなり、会話しながらの食事はもってのほかとなった。筆者は、見知らぬもの同士がすぐに仲良くなれる秘訣は、飲食を共にすることだと思う。その逆で、「孤食の害」はわかっていてもそうならざるを得ないのが現状である。諸悪の根源は「孤独」にあるとも言える。つまり老年心理学の観点に立つなら、「孤独」とは自分が他者から必要とされているとは思えない状態だと筆者は考えるからである。ところで英国は2018年「孤独担当大臣」を世界で初めて設けた。孤独は、肥満や1日15本の喫煙以上に体に悪く、孤独な人は、そうでない人に比べ、天寿を全うできないリスクが1.5倍に上がるとされる。そして孤独で生じる経済的損失は、約4.8兆円(日本の年間予算100兆円強)に達するとされている。そこで全国各地には、孤独対策に取り組む無数の草の根活動的な慈善団体があって、読書、音楽、スポーツなどのグループを作っている。男性の孤独解消に効果が高いと注目されるものに、mens’shed(メンズ・シェッド:男たちの集い処)がある。ここでは主に定年退職した男性が定期的に集まって、大工仕事などを一緒に行う。たとえばテーブルやベンチを作って公園に置いたり、学校に手作りの遊具を寄付したりする。皆で一緒にものを作ることで一体感が生まれ、そこからコミュニティとの絆が生まれる。さらに感謝の言葉もかけられれば、他者から自分は必要とされていると思え、生き甲斐に通じるのだそうだ。それなら確かに孤独解消につながるだろうと思われる。孤独を和らげ、身体活動や社会交流を促すためのポイントとして、屋内は駄目でも、屋外ならいいのではと考えている。というのは、コロナ禍の今でも大勢の人が集まる場所としてはゴルフ場がある。最近は市場空前の大盛況だと聞く。広々としたグリーンなら、少々喋っても構わないということである。地域でのゲートボールやグランドゴルフはこれに準ずるだろう。古典的ながら根強いのが、ラジオ体操である。基本は朝の6時頃に一定の公園など戸外に集い短時間の運動をしてあいさつ程度の言葉を交わすだけだ。けれども往復のウォーキングも加えると、コロナの時代に最低限の運動量は確保される。太極拳や自彊術であっても同様。小規模ながら、注目すべきものに老人会が主催するような公園等の清掃や環境整備が、また小学生の集団登校の見守り等もある。いずれも戸外で、マスクはしても比較的遠慮なくしゃべれる。また社会的な交流ができる。さらには自分のした仕事に対して、感謝や労いの言葉が向けられるところが重要である。お金ではない、こうした報酬が運動量を促すかもしれない。参考1)Sogstad M, et al.Health Serv Insights. 2020 Jun 8;13:1178632920922221.2)Rostad HM,et al.J Med Internet Res. 2021 Aug 16;23:e22316.3)アイラ株式会社プレスリリース

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18歳未満のCOVID-19関連MIS-C、絶対リスクは?/BMJ

 デンマークの18歳未満の小児/青少年において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の有害疾患の絶対リスクは概して低いが、RT-PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染者の0.05%(32/7万666例)に小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が認められ、さらに感染者における急性期後の一般開業医受診割合がわずかに増加していることから、症状が持続している可能性があることを、南デンマーク大学のHelene Kildegaard氏らが報告した。これまで、小児/青少年のSARS-CoV-2感染による入院、集中治療室(ICU)入室、死亡および免疫介在性合併症の発生率は研究によって異なっていた。なお、本研究では18歳未満におけるBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の有効性についても検討され、デルタ株流行期において感染リスク低減に有効であることが示されている。BMJ誌2022年4月11日号掲載の報告。デンマークの18歳未満の約115万人について調査 研究グループは、デンマークの小児/青少年におけるSARS-CoV-2感染に続発する急性期および急性期後の有害疾患リスクを評価するとともに、BNT162b2ワクチンの有効性を評価する目的で、デンマークの患者、処方、健康保険およびワクチン接種に関する全国登録を用いたコホート研究を実施した。 対象は、2021年10月1日までにSARS-CoV-2のRT-PCR検査を受けたか、または同日以前にBNT162b2ワクチンの接種を受け、かつ同年10月31日以前に追跡調査を完了した18歳未満のすべての小児/青少年である。 評価項目は、入院(12時間以上)、ICU入室、MIS-C・心筋炎・神経免疫疾患などの重篤な合併症、および検査後6ヵ月までの薬物治療開始と医療機関受診のリスクとした。また、ワクチンの有効性について、ワクチン接種者ならびにマッチングした非接種者の、1回目接種20日後ならびに2回目接種60日後のリスク比を算出し、1-リスク比として評価した。 2021年10月1日時点で、デンマークにおける18歳未満の小児/青少年は115万1,849人であった。心筋炎や脳炎は認められず SARS-CoV-2のRT-PCR検査を受けた小児/青少年は99万1,682例で、このうち7万4,611例(7.5%)が陽性であった。感染判明後30日以内の入院の絶対リスクは0.49%(361/7万4,350例、95%信頼区間[CI]:0.44~0.54)、ICU入室の絶対リスクは0.01%(10/7万3,187例、0.01~0.03)であった。 また、感染判明後2ヵ月以内のMIS-Cの絶対リスクは0.05%(32/7万666例、95%CI:0.03~0.06)であったが、心筋炎や脳炎は認められず、ギランバレー症候群は5例未満であった。急性期後(感染後1~6ヵ月)においてSARS-CoV-2感染者は、調査期間中にSARS-CoV-2検査を受けた全小児/青少年から抽出した参照コホートと比較し、一般開業医の受診が1.08倍(95%CI:1.06~1.10)増加することが示された。 BNT162b2ワクチンの接種を受けた小児/青少年は全体で27万8,649例であった。デルタ株が優勢な時期において、ワクチン未接種者と比較し接種者のワクチン有効率は、1回目接種20日後(22万9,799例)で62%(95%CI:59~65)、2回目接種60日後(17万5,176例)で93%(92~94)であった。

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モデルナ追加接種用2価ワクチン候補、2倍以上の中和抗体価を確認

 米国・モデルナ社は4月19日付のプレスリリースで、同社初の追加接種用2価ワクチン候補(mRNA-1273.211)が、オミクロン株を含むすべての変異株に対し、同社の承認済みのワクチン(mRNA-1273、商品名:スパイクバックス筋注)と比較して優れた中和抗体価を示したことを発表した。ワクチン効果の優越性は、追加接種の6ヵ月後も維持されたという。なお、mRNA-1273.211の忍容性および安全性は、承認済みのmRNA-1273追加接種(50μg)とほぼ同様であった。本研究は、査読前論文のオンライン・アーカイブである「Research Square」※2022年4月15日号1)にも掲載された。※今後、審査によっては論文内容が修正される場合あり 本試験は、mRNA-1273.211の単回ブースター投与による反応原性および免疫原性を評価する非盲検第II/III相臨床試験で、少なくとも6ヵ月前にmRNA-1273の2回投与によるプライマリーシリーズを完了した米国の18歳以上の被験者896例を対象に、ワクチン候補mRNA-1273.211を50μg追加接種した群(300例、平均年齢50.7歳)と、100μg追加接種した群(596例、平均年齢53.0歳)を検証した。 主な結果は以下のとおり。・承認済みのmRNA-1273を50μg追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後で幾何平均抗体価(GMT):630.5(95%CI:520.0~764.9)、接種181日後でGMT:145.6(95%CI:118.1~179.5)となり、オミクロン株への強力な中和抗体反応が得られたものの、接種後6ヵ月で効果が減少した。・新たな2価ワクチン候補のmRNA-1273.211を追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後でGMT:1389.8(95%CI:1212.1~1593.4)、接種181日後でGMT:312.9(95%CI:269.5~363.4)となった。・mRNA-1273.211は、既存のmRNA-1273に比べ、中和抗体価が1ヵ月時点での幾何平均比(GMR):2.20(95%CI:1.74~2.79)、および6ヵ月時点でGMR:2.15(95%CI:1.66~2.78)となり、2倍以上増加したことが確認された。・mRNA-1273.211の50μg投与後の副作用の発現率と比較して、100μg投与後の副作用の発現率が高いことが確認されたが、忍容性はおおむね良好で、50μg投与後に非自発的に報告された副反応および自発的に報告された有害事象の発現率は、mRNA-1273の50μg接種と同程度だった。 同社は現在、オミクロン株の特異的な変異に対応した最新の追加接種用2価ワクチン(mRNA-1273.214)も第II/III相臨床試験で評価中。2022年秋の北半球用追加接種ワクチンの選定に向けて、試験の初期データが第2四半期中に得られる予定としている。 追加接種用2価ワクチン候補のmRNA-1273.211は、ベータ株に基づく、9個のスパイク蛋白の変異(うち4つはオミクロン株に存在する変異)に、mRNA-1273.214は、オミクロン株に基づく、32個のスパイク蛋白の変異に、それぞれ対応しているという。(ケアネット 古賀 公子)1)Safety, Immunogenicity and Antibody Persistence of a Bivalent Beta-Containing Booster Vaccine. Research Square. 15 Apr, 2022.

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熱中症で発症するかも?特発性後天性無汗症AIGAとは【知って得する!?医療略語】第10回

第10回 熱中症で発症するかも?特発性後天性無汗症AIGAとは汗をかかない病気があるって本当ですか?そうなんです。『無汗症』という疾患があります。実臨床では「不明熱の原因」「熱中症の隠れたリスクの可能性」として指摘されています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】AIGA【日本語】特発性後天性全身性無汗症【英字】acquired idiopathic generalized anhidrosis【分野】脳神経【診療科】皮膚科【関連】特発性分節性無汗症・特発性純粋発汗不全症(IPSF)・自己免疫性自律神経障害薬剤性無汗症・二次性無汗症・乏汗症・神経障害性無汗症実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。不明熱の鑑別疾患リストに無汗症が報告されています。原因不明の微熱で病院を転々とする方で、全身状態は良好、炎症マーカーはすべて陰性、感染徴候はなく膠原病や悪性疾患を疑う所見にも乏しいとき、無汗症は想起されるべき疾患の1つかもしれません。無汗症には先天性と後天性がありますが、『特発性後天性全身性無汗症(AIGA)』は近年、難病指定されています(指定難病163)。無汗症では、気温が高くても汗をかかないため、熱の放散が障害され、体温調節ができずに容易に熱中症の症状を来たすとされています。新型コロナのためマスクをすることが当たり前の今日、マスクで呼気による体温調整が阻害されています。そのため、マスク装着時の体温調整は、非装着時と比較して、より発汗による体温調整に依存している可能性があり、全身性の無汗症の方は、例年以上に体温調節が難しく容易に熱中症を来たす可能性があります。無汗症の中でも、AIGAはステロイドパルスが有効だったとする論文報告が散見され、適切に診断すれば、患者さんのQOLを改善できる可能性があります。無汗症を見逃さないことがより重要になってくるかもしれません。筆者自身の診療シーンを振り返ると、救急外来に熱中症疑いで繰り返し搬送される患者さんの中に、脱水がないのにまったく汗をかいておらず、皮膚が乾燥している方を時々見かけていました。ご本人に聞いても、発汗することなく、急に熱中症の症状を来たしたと訴えていました。そのような患者さんの中に無汗症の方が混在していたのかもしれません。気温が急速に上昇してくるこれからの季節に注意したい疾患です。1)坂野翔子ほか. 日内会誌. 2018;107:p564-570.2)難病医学研究財団/難病情報センター:特発性後天性全身性無汗症 診断・治療指針3)柳下武士. 日皮膚会誌. 2021;131:p35-41.4)中根俊成. 臨床神経. 2019;59:p783-790.

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第106回 新しい公立病院の経営ガイドライン、「リストラ色」薄まるも総務省の本音は再編・統合推進か

市立大津市民病院、京大医局派遣の医師27人全員が年度内に退職へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、「第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚」「第103回 大津市民病院の医師大量退職事件、「パワハラなし」、理事長引責辞任でひとまず幕引き」「第104回 パワハラ事件に大甘の医療界、旭川医大、大津市民の幕引きの背後に感じた“バーター”の存在」で伝えてきた市立大津市民病院(30診療科、401床)の大量退職事件に再び動きがありました。4月18日、済生会滋賀県病院(栗東市)の院長補佐だった日野 明彦氏(京都府立医大 脳神経外科学教室出身)が新院長に就任したのですが、その翌日、新たに脳神経内科4人、麻酔科2人、放射線科の非常勤医師1人の計7人が年度内に退職する意向を持っていることが明らかになったのです。これで同病院在籍の京大医局派遣の医師27人全員が年度内に退職見込みとなりました(6人はすでに退職)。病院の診療体制としてはボロボロと言えます。4月25日のびわこ放送等の報道によれば、同日、大津市の佐藤 健司市長は定例会見で病院の設置者として改めて謝罪し、「今後も医師確保を含めた法人運営の後押しを全力で進めていく」と説明したとのことです。また、佐藤市長は、4月15日に滋賀医科大学を訪れて市立大津市民病院の運営立て直しへの協力を求めたことも明らかにしています。大津市には市立大津市民病院のほかに、日本赤十字社・大津赤十字病院(37診療科、684床)という京都大学系の巨大公的病院があり、患者獲得競争を繰り広げてきました。仮に今回の事件をきっかけに、市立大津市民病院の人気が落ち、ジリ貧になっていくとしたら、2病院の再編・統合話が出てくる可能性もゼロではないと思います。総務省が「公立病院経営強化ガイドライン」公表ということで、今回は総務省が3月29日に公表した「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(令和4年3月29日 総財準第72号 総務省自治財政局長通知)について書いてみたいと思います。公立病院、公的病院を巡っては、新型コロナ感染症流行拡大前に、厚生労働省から436病院の“リストラ”リストが公表され、全国の公立・公的病院関係者を青ざめさせました(「第23回 実は病院経営に詳しい菅氏。総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと(前編)」参照)。コロナの感染拡大もあって、このリストラ計画は中断したままでした。しかし、今回の新ガイドライン公表と合わせる形で、厚労省も第8次医療計画(2024年度から実施)の策定作業と並行して、公立・公的病院だけでなく民間病院も含めた機能の再検証を行うことを都道府県に求めています。再び各地で再編・統合の議論が活発化するのは必至でしょう。3回目のガイドライン、「改革」の文言がなくなり「経営強化」に公立病院を管轄する総務省が、その経営改革に関するガイドラインを公表するのは2007年12月、2015年3月に続いて3回目です。ガイドライン作成の背景には、全国の公立病院の多くは経営状況が非常に悪く、医療提供体制の維持が極めて厳しい状況にあったことがありました。これまでの2回は「公立病院改革ガイドライン」でしたが、今回は「改革」の文言がなくなり、「公立病院経営強化」とタイトルが微妙に変わっています。新型コロナ感染症対応で、地域の公立病院の必要性が再認識されたことも影響したと考えられます。旧ガイドラインで強調されていた「再編(リストラ)」色は薄まる旧ガイドライン(2015年版)は「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」と「再編・ネットワーク化」に力点が置かれていました。それに対し、新ガイドラインは個々の病院の「経営力強化」「機能強化」に力点が置かれています。新ガイドラインは「公立病院経営強化の基本的な考え方」として、「公立病院が直面する様々な課題のほとんどは、医師・看護師等の不足・偏在や人口減少・少子高齢化に伴う医療需要の変化に起因するものである。これらの課題に対応し、持続可能な地域医療提供体制を確保するためには、医師確保等を進めつつ、限られた医師・看護師等の医療資源を地域全体で最大限効率的に活用するという視点を最も重視し、新興感染症の感染拡大時等の対応という視点も持って、公立病院の経営を強化していくことが重要」と述べています。そして、その経営強化のためには、「地域の中で各公立病院が担うべき役割・機能を改めて見直し、明確化・最適化した上で、病院間の連携を強化する『機能分化・連携強化』を進めていくことが必要である。特に、機能分化・連携強化を通じて、中核的医療を行う基幹病院に急性期機能を集約し医師・看護師等を確保するとともに、基幹病院から不採算地区病院をはじめとする基幹病院以外の病院への医師・看護師等の派遣等の連携を強化していくことが重要である。その際、公立病院間の連携のみならず、公的病院、民間病院との連携のほか、かかりつけ医機能を担っている診療所等との連携強化も重要である」と、公民の区別なく地域において「機能分化・連携強化」を進める必要性を説いています。内容的にも新型コロナウイルス感染症対策において地域の公立病院が果たした役割などを勘案し、旧ガイドラインで強調されていた「再編(リストラ)」色が薄まった印象です。「都道府県の役割・責任強化」もより強調こうした前提のもと、新ガイドラインは2022~23年度中に「経営強化プラン」を策定することを求めています。すでに「自主的に改革プランを策定している病院」などでも、新ガイドラインで要請されている部分と比べて「不足」があれば、その分を追加策定する必要があるとし、また、すでに「従前の改革プランに基づいて再編やネットワーク化、経営形態見直しに取り組んでいる病院」でも、現在の取り組み状況や成果を検証し、さらなる経営力強化のために新ガイドラインに沿った経営強化プランを策定するよう求めています。旧ガイドラインで初めて盛り込まれた、病院の再編・統合に当たっての「都道府県の役割・責任強化」についても、より強調される内容となりました。「都道府県が、市町村のプラン策定や公立病院の施設の新設・建替等にあたり、地域医療構想との整合性等について積極的に助言すること」や「医療資源が比較的充実した都道府県立病院等が、中小規模の公立病院等との連携・支援を強化していくことが重要」としています。ドラスティックな再編・ネットワーク化の事例も紹介総務省は4月20日、この新ガイドラインの説明会をオンラインで開催、その中で最新の「公立病院の経営状況」を明らかにしています。それによると、853病院全体での2020年度の経常収支は1,251億円の黒字でした。コロナ関連補助金により980億円の赤字だった前年度(857病院)から大きく改善したものの、本業に当たる医業収支ベースでは6,010億円と大幅な赤字でした。また、病床規模別の経常収支は「500床以上」(95病院)が584億円の黒字だったのに対し、「100床未満」(255病院)では1億円の黒字に留まったそうです。コロナ対応をしていた病院でも1億円程度の黒字でしかないということは、コロナ後は再び大きな赤字転落になることを意味します。新ガイドラインの最後には、資料として「平成27年度から令和2年度までの間に実施済み又は実施中の再編・ネットワーク化の事例」が多数掲載されています。公立、公的、民間併せたさまざまな再編(統合、病床削減、病院の診療所化等)のケースは、どれもドラスティックです。地方の病院で働く方は、この資料だけも目を通しておくといいと思います。こうした事例を最後に掲載していることからも、「再編(リストラ)」色が薄まった新ガイドラインですが、「地域の病院の再編・統合に向けて、都道府県は今まで以上に積極介入をして欲しい」というのが総務省の本音と言えるでしょう。参考1)公立病院経営強化ガイドライン/総務省

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