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第171回 「ダイチロナ」承認の裏で継続審議の塩野義ワクチン、その理由は…

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチンとして最も早く承認されたファイザーのコミナティから遅れること約2年半、ついに国産の新型コロナワクチンが承認される見通しだ。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会・医薬品第二部会は7月31日、第一三共の新型コロナメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである『ダイチロナ筋注』を承認することを了承した(8月2日付で正式承認取得)。その一方で塩野義製薬が承認申請をしていた遺伝子組み換えタンパクワクチン『コブゴーズ筋注』について、「現在までに評価された臨床試験成績のみでは、本ワクチンの有効性を明確に説明することが難しい」と判断され、継続審議となった。明暗を分けた両ワクチンだが、少なくともダイチロナに関しては公開された一部データを見る限り、承認が了承されたことは傍目にも妥当と思える。公開されたデータは、18歳以上を対象に追加免疫としてダイチロナとファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックスを比較した非劣性試験の結果だ。非劣性基準は、中和抗体価の幾何平均上昇倍率(GMFR)の両側97.5%信頼区間(CI)の下限値が0.67 を上回ることとなっている。公表されたGMFRは、対コミナティの試験ではダイチロナが58.690(95%CI:49.643~69.386)、コミナティが38.044(95%CI:29.704~48.726)、対スパイクバックスの試験ではダイチロナが36.074(95%CI:29.292~44.426)、スパイクバックスが25.402(95%CI:19.163~33.671)。GMFR比は対コミナティで1.464(両側97.5%CI:1.112~1.927)、対スパイクバックスで1.772(両側97.5%CI:1.335~2.353)。一方の安全性については、データは今のところ開示されていないが、厚生労働省が報道向けに公開した資料では、ダイチロナの安全性プロファイルは、コミナティ、スパイクバックスと同様。主な副反応は注射部位疼痛、倦怠感、頭痛、発熱で、ほとんどが軽度あるいは中等度で回復性が認められているという。もっとも有効性については起源株(武漢株)に対する結果で、今後、第一三共はオミクロン株XBB.1系統への一部変更申請で対応していく方針。この点は従来のコミナティ、スパイクバックスと同様だ。コミナティとスパイクバックスでは、起源株1価ワクチンからオミクロン株BA.4/5系統対応も含めた2価ワクチンへ変更された際、非臨床試験のみで一部変更承認となった点が理論上は理解できても違和感を持ってしまった人は医療関係者でも少なくなかったと理解している。しかし、今ではこの対応が国際的にスタンダードとなっている。今年5月に開催された日本も参加する薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)では、現在承認されているワクチンについてはプラットフォームとしての対応を適応可能とし、対応株変更時は確認的な品質と非臨床データのみの資料提出で承認審査が行えるとの見解がまとめられている。なお、第一三共によると、製造は埼玉県北本市にあるグループ会社の第一三共バイオテックの工場で行う。既存のmRNAワクチンはいずれも冷凍保存だが、ダイチロナに関しては冷蔵保存(2~8℃)が可能。もっともmRNAは振動などに弱いため輸送には一定の配慮が必要と言われているが、第一三共によると、流通を担当する卸については、インフルエンザワクチンなどと同様に既存の卸各社で対応する計画で、特定卸への絞り込みは考えていないという。一方、継続審議となった塩野義製薬のコブゴーズでは、審査評価資料として提出されていた国内臨床試験の比較対照薬は、初回免疫(優越性検証)がアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア、追加免疫(非劣性検証)がファイザーのコミナティだった。厚生労働省によると、部会の審議では「コブゴーズの接種により中和抗体価の上昇は一定程度認められるものの、初回免疫、追加免疫の両試験とも比較対照薬接種群の中和抗体価が通常想定されるよりも相当程度低く、当該試験に基づいて有効性を明確に評価することは困難との議論があった」と説明した。このため今回の申請資料中に参考資料として提出されていた海外などでの臨床試験成績などを新たに評価対象に追加して、改めて評価することになったと話している。私見を言えば、この結果はやや“不可解”とも言える。まず、初回免疫の比較対照薬がなぜバキスゼブリアだったかという点だ。塩野義製薬がこの臨床試験を開始した時期は、既に国内での新型コロナワクチン接種はコミナティやスパイクバックスを軸に実施されていた。バキスゼブリアに関しては、日本よりも先行して使用されたヨーロッパで発生頻度は稀ながら、死亡例も含む重篤な血栓症の報告があり、当初日本では公的接種に用いられなかった。しかし、国内では接種開始後にコミナティとスパイクバックスの供給不足が表面化したことなどから、途中から血栓症の発現頻度が低い40歳以上に限定で公的接種に用いられたという経緯がある。現状も公的接種はmRNAワクチンの2種類が用いられており、バキスゼブリアによる公的接種は2022年9月30日をもって終了している。現在のこうした接種状況、さらに今後も高齢者や基礎疾患保有者に対しては公的接種が継続するだろうという見通しに立てば、その選択肢になり得るワクチンは既存のmRNAのいずれかに対する非劣性検証を行うのが臨床上は筋だと個人的には考えるのだ。もっとも今回のコブゴーズの初回免疫の試験は起源株に対するものであり、コミナティ、スパイクバックスが起源株での発症予防の有効率が95%前後と驚異的とも言える結果だったことを考えれば、これらを比較対照薬とすることは、コブゴーズを含むその他のモダリティを用いたワクチンの有効性を不当に低く評価する可能性はある。この点を考えれば、バキスゼブリアを比較対照薬にするのもわからぬわけではない。この点を塩野義製薬広報部に確認したところ「試験実施時のワクチン接種状況から比較対照として利用でき、相手企業から利用許可が得られたことからバキスゼブリアになりました。また、これは当局とも相談をしながら、当局からもそれで良いだろうという判断で決定しています。他社(ファイザー、モデルナ)から許可が得られなかったのかどうかについては、こちら(広報部)では伺っていないので、ご回答できない状況です」とのことだった。さらに今回の審議結果は、解釈次第では同社の臨床試験実施体制そのものに疑義を呈されたと言えなくもない。今回の審議結果の受け止めについて尋ねたところ、「部会での審議内容については当社も確認中であること、また現状は継続審議となって審議中ですので、コメントすることは差し控えさせていただきます」との回答。新型コロナ治療薬のエンシトレルビルの緊急承認審議に続いて物言いが付いてしまった塩野義製薬だが、ここからどのような展開になるのか。しばらく目が離せそうにない。

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小児の急性副鼻腔炎、鼻汁の色で判断せず細菌検査を/JAMA

 急性副鼻腔炎の小児において、鼻咽頭から細菌が検出されなかった患児は検出された患児に比べ抗菌薬による治療効果が有意に低く、その有意差を鼻汁の色では認められなかったことが、米国・ピッツバーグ大学のNader Shaikh氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で示された。急性副鼻腔炎とウイルス性上気道感染症の症状の大半は見分けることができない。そのため小児の中には、急性副鼻腔炎と診断されて抗菌薬による治療を受けても有益性がない集団が存在することが示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「診察時に特異的な細菌検査をすることが、急性副鼻腔炎の小児における抗菌薬の不適切使用を減らす戦略となりうる」とまとめている。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。急性副鼻腔炎の持続・増悪患児約500例を、抗菌薬群とプラセボ群に無作為化 研究グループは2016年2月~2022年4月に、米国の6機関に付属するプライマリケア診療所において、米国小児科学会の臨床診療ガイドラインに基づいて急性副鼻腔炎と診断された2~11歳の小児で、急性副鼻腔炎が持続または増悪している症例515例を、アモキシシリン(90mg/kg/日)+クラブラン酸(6.4mg/kg/日)投与群(抗菌薬群)またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、1日2回10日間経口投与した。 割り付けは、鼻汁の色の有無(黄色または緑色と透明)によって層別化した。また、試験開始前および試験終了時の来院時に鼻咽頭スワブを採取し、肺炎球菌、インフルエンザ菌およびモラクセラ・カタラーリスの同定を行った。 主要アウトカムは、適格患者(症状日誌の記入が1日以上あり)における診断後10日間の症状負荷で、小児鼻副鼻腔炎症状スコア(Pediatric Rhinosinusitis Symptom Scale:PRSS、範囲:0~40)に基づき判定した。また、鼻咽頭スワブ培養での細菌検出の有無、ならびに鼻汁色でサブグループ解析を行うことを事前に規定した。副次アウトカムは、治療失敗、臨床的に重大な下痢を含む有害事象などとした。診断時の鼻咽頭からの細菌検出の有無で治療効果に有意差あり 無作為化後に不適格であることが判明した5例を除く510例(抗菌薬群254例、プラセボ群256例)が試験対象集団となった。患者背景は、2~5歳が64%、男児54%、白人52%、非ヒスパニック系89%であった。このうち、主要アウトカムの解析対象は、抗菌薬群246例、プラセボ群250例であった。 平均症状スコアは、抗菌薬群9.04(95%信頼区間[CI]:8.71~9.37)、プラセボ群10.60(10.27~10.93)であり、抗菌薬群が有意に低かった(群間差:-1.69、95%CI:-2.07~-1.31)。症状消失までの期間(中央値)は、抗菌薬群(7.0日)がプラセボ群(9.0日)より有意に短縮した(p=0.003)。 サブグループ解析の結果、治療効果は細菌が検出された患児(抗菌薬群173例、プラセボ群182例)と検出されなかった患児(それぞれ73例、65例)で有意差が認められた。平均症状スコアの群間差は、検出群では-1.95(95%CI:-2.40~-1.51)に対し、非検出群では-0.88(95%CI:-1.63~-0.12)であった(交互作用のp=0.02)。 一方、色あり鼻汁の患児(抗菌薬群166例、プラセボ群167例)と透明の鼻汁の患児(それぞれ80例、83例)では、平均症状スコアの群間差はそれぞれ-1.62(95%CI:-2.09~-1.16)、-1.70(95%CI:-2.38~-1.03)であり、治療効果に差はなかった(交互作用のp=0.52)。 なお、著者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により試験登録が中断され症例数が目標に達しなかったこと、重症副鼻腔炎の小児は除外されたことなどを研究の限界として挙げている。

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コロナ肺炎からの回復、アバタセプトやインフリキシマブ追加で短縮せず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院患者において、アバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブはCOVID-19肺炎からの回復までの期間を短縮しなかった。米国・セントルイス・ワシントン大学のJane A. O'Halloran氏らが、米国および中南米の95病院で実施したマスタープロトコルデザインによる無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines(ACTIV)-1 Immune Modulator:ACTIV-1 IM試験」の結果を報告した。本検討は、COVID-19の予後不良の一因として免疫調節異常が示唆されていたことから実施された。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。標準治療へのアバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブ追加の有効性をプラセボと比較 研究グループは2020年10月16日~2021年12月31日に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認されてから14日以内で肺病変が認められる18歳以上の入院患者を、3つのサブスタディにおいてそれぞれアバタセプト(10mg/kg、最大1,000mg、単回投与)群またはプラセボ群、cenicriviroc(300mg負荷投与後、150mgを1日2回、28日間経口投与)群またはプラセボ群、インフリキシマブ(5mg/kg、単回投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、標準治療(レムデシビルおよび副腎皮質ステロイド)に追加して投与した。 主要アウトカムは、28日以内における回復までの期間で、8段階の順序尺度(スコアが高いほど健康状態が良好であることを示す)を用いて評価した。回復日は、順序尺度が6点以上となった初日と定義した。主な副次アウトカムは28日全死因死亡率などであった。 3つのサブスタディで無作為化された全患者1,971例の背景は、平均(±SD)年齢54.8±14.6歳、男性1,218例(61.8%)であった。いずれの追加投与も、COVID-19肺炎の回復期間は短縮せず COVID-19肺炎からの回復までの期間の中央値は、アバタセプト群vs.プラセボ群でいずれも9日(95%信頼区間[CI]:8~10)、cenicriviroc群vs.プラセボ群でどちらも8日(95%CIは8~9 vs.8~10)、インフリキシマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ8日(95%CI:7~9)vs.9日(95%CI:8~10)であり、アバタセプト、cenicrivirocおよびインフリキシマブのいずれも、プラセボと比較して有意差は認められなかった。 28日全死因死亡率は、アバタセプト群11.0% vs.プラセボ群15.1%(オッズ比[OR]:0.62、95%CI:0.41~0.94)、cenicriviroc群13.8% vs.プラセボ群11.9%(OR:1.18、95%CI:0.72~1.94)、インフリキシマブ群10.1% vs.プラセボ群14.5%(OR:0.59、95%CI:0.39~0.90)であった。 安全性は、3つのサブスタディすべてにおいて、2次感染を含め実薬とプラセボで同等であった。

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モデルナとファイザーのコロナワクチン、対象年齢や初回免疫の一変承認取得

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを提供するモデルナおよびファイザーは、8月2日に各社のプレスリリースにて、ワクチンの接種対象年齢や初回免疫について一部変更承認を取得したことを発表した。 モデルナ・ジャパンのプレスリリースによると、同社の新型コロナワクチン「スパイクバックス筋注」について、これまで接種対象年齢が12歳以上だったものを、6歳以上に引き下げ、6~11歳の用法用量を変更する承認事項の一変承認を取得した。今回の一変承認は、「スパイクバックス筋注(1価:起源株)」の6~11歳における初回免疫、および「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」と「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の6~11歳における追加免疫を対象としている。 ファイザーとビオンテックの新型コロナワクチンについては、今回の一変承認で2価ワクチンも初回免疫に使用することができるようになった。ファイザーのプレスリリースによると、初回免疫に関わる製造販売承認事項の一変承認を取得した。対象のワクチンは、これまで追加免疫のみに適応だった「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」、「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」、「コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」。 また、「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用(1価:起源株)」の追加免疫、および「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の初回免疫と追加免疫に関わる一変承認も今回取得したが、並行して2023年7月7日に厚生労働省にオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価ワクチンに関わる製造販売承認事項一部変更を申請している状況を踏まえ、日本国内において供給の予定はないという。

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コロナ感染しても無症状な人の遺伝的特徴

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患すると、大多数に咳や喉の痛みなどの症状が現れるが、奇妙なことに、約5人に1人では何の症状も現れない。この現象には、ある遺伝的バリアントが関与しているようだ。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経学および疫学・生物統計学分野教授のJill Hollenbach氏らによる研究において、HLA(ヒト白血球抗原)-B遺伝子の特定のアレル(対立遺伝子)を保有している人では、新型コロナウイルスに感染しても症状の現れない可能性が、保有していない人の2倍以上であることが示された。この研究の詳細は、「Nature」に7月19日掲載された。 通常、HLAは細菌やウイルスなどの健康に対する潜在的な脅威を検知し、それに対する免疫反応を誘導する。Hollenbach氏らは、HLAのこのような重要な役割に鑑み、新型コロナウイルスに感染しやすい、あるいは感染しにくい特定のHLAの遺伝的バリアントが存在する可能性を考え、それを調べるための研究を実施した。 Hollenbach氏らはまず、HLAの遺伝子型が判明しているボランティアの骨髄提供者に本研究への参加を呼びかけ、承諾した人には、COVID-19の症状を追跡するために設計されたモバイルアプリを使用してもらった。このようにして、2021年4月30日時点で2万9,947人を本研究に登録。この中から、ワクチン接種が広範に行われる前の2021年4月30日までに新型コロナウイルス検査で陽性の結果を報告していた1,428人を対象に解析を行った。1,428人中136人は、陽性判定の前後少なくとも2週間の間に症状が現れなかった無症候性感染者だった。 HLAの5つの遺伝子座とCOVID-19の経過との関連を検討した結果、無症候性感染者はHLAの遺伝子座に存在する特定のアレル(HLA-B*15:01)を保有している可能性が、有症状者よりも有意に高いことが明らかになった。具体的には、HLA-B*15:01を保有する頻度は、無症候性感染者で0.1103、有症状者で0.0495であり、オッズ比は2.38(95%信頼区間1.51〜3.65)と、前者でのHLA-B*15:01の発生頻度が後者の2倍以上であることが示された。また、無症候性感染者のうち、HLA-B*15:01を保有していた人の割合は約20%であったのに対し、有症状者での割合は9%にとどまっていた。 次に、このような関連が新型コロナウイルスに対する既存のT細胞による免疫反応に起因しているという仮説を検証するために、HLA-B*15:01を保有する人の血液サンプルを用いて、新型コロナウイルス由来の特定のペプチドに曝露した際のT細胞の反応を調べた。その結果、T細胞が新型コロナウイルスのSタンパク質由来のNQKLIANQFというペプチドに反応することが示された。また、このようなT細胞の大部分は多機能性のメモリーT細胞であり、通常の風邪の原因ウイルスである季節性コロナウイルス由来のペプチドにも交差反応性を示すことも判明した。このことは、HLA-B*15:01を保有する人では、新型コロナウイルスに曝露する以前に他のコロナウイルスに曝露することで、新型コロナウイルスに対するある程度の免疫を獲得していた可能性があり、このため、新型コロナウイルス感染後、症状が現れる前にウイルスを駆除することが可能であったことを示唆している。 Hollenbach氏は、「これらの結果は、次世代のワクチン設計に役立つだろう。また、感染した場合に、発症を防ぐ方法を知るためにも有用な情報だ」と話している。 この研究には関与していない、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)感染症・世界公衆衛生部門の責任者であるDavey Smith氏は、「パンデミック中に観察された謎がこの研究により解けたのではないか」と述べる。同氏はまた、このアレルを持つ患者は、「言ってみれば、COVID-19の遺伝的宝くじに当たったようなものだ」とコメントしている。 Smith氏は、「ウイルスに対するより効果の高いワクチンを作るためには、HLAがどのようにして鍵となるウイルスのペプチドを認識するのかの理解を深めることが重要だ。私には、HLAの遺伝子型のように、遺伝子によって免疫反応を最大限に高めるために受けるべきワクチンを決めるような世界が想像できる」と述べている。

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第56回 第一三共と塩野義のコロナワクチンに明暗

第一三共の新型コロナワクチンが承認Unsplashより使用7月31日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会1)において、COVID-19に対する新たなワクチンとして、第一三共のmRNAワクチン「ダイチロナ筋注」の承認が認められました。同日審議された、塩野義製薬の組換えタンパクワクチンである「コブゴーズ筋注」は継続審議となり、実質的に認められなかった形となります。18歳以上への追加免疫に関する国内臨床試験で、従来株に対する中和抗体価の値が、対照群であったファイザー社製・モデルナ社製ワクチンの中和抗体価に対して同程度であることが確認され、中和抗体価の幾何平均上昇倍率で非劣性が確認されたことが決め手となりました。ダイチロナは従来株に対応したものですが、mRNAワクチンであるダイチロナについては変異ウイルスへの対応も期待されるところです。現在オミクロン株対応ワクチンがファイザー社・モデルナ社ともに流通しており、秋以降はXBB系統への対応ワクチンも登場する見込みです。塩野義製薬といえば、エンシトレルビル(ゾコーバ)が国内初のCOVID-19治療薬として承認されましたが、エビデンスの堅牢さが不十分で、実務的に手続きが煩雑であることも相まって、リアルワールドではあまり処方されていない現状があります。COVID-19の分野では、ここでワクチンにも塩野義の名を刻みたいところでしたが、今回は残念ながら承認が認められませんでした。抗体医薬ほどではないですが、新型コロナワクチンも栄枯盛衰が激しい分野で、アストラゼネカやジョンソン・エンド・ジョンソンのように表舞台から姿を消したワクチンもあります(図)。その中で燦然と輝くのがファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンです。変異ウイルスにも対応するそのスピードは圧巻で、とにかくこの分野では強いです2)。図. 新型コロナワクチンの国内承認の流れ(筆者作成)mRNAワクチンはどのメーカーのものでも有効性が高いですが、ウイルスベクターワクチンや組み換えタンパクワクチンがこれを上回ることは現状難しいようです。塩野義製薬が開発しているワクチンは組み換えタンパクワクチンで、既存のワクチンが何らかの理由で接種できない人にも使用できるというメリットがありますが、有効性がmRNAワクチンレベルに到達しなければ、承認は難しいでしょう。国内ワクチンへの期待と課題国内のワクチン流通問題を解決するためには、日本の企業に頑張ってもらう必要があったのですが、コロナ禍から約1,200日で、ようやく承認といったところです。今後は、スピードが課題になりそうです。XBB系統については、すでにファイザー社・モデルナ社と契約済みであり、この速度で第一三共のワクチンを変異ウイルスに対応させることができるのかどうか。また国内流通という強みを生かせるかどうか。いずれにしても日本のワクチン施策の歴史的な一歩になったわけですから、今後に期待したいところです。参考文献・参考サイト1)厚生労働省 令和5年度第3回薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会2)厚生労働省 令和5年度第3回薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 資料:新変異株対応のコロナワクチンの評価方針について

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新型コロナ、2価ワクチンブースターの有効性は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種について、オミクロンBA.4/5またはBA.1変異株対応2価ワクチンによるブースター接種(4回目接種)は、1価(起源株)ワクチン3回接種と比較して、50歳以上の成人におけるCOVID-19関連入院/死亡の低下と関連していたことを、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らが報告した。また、BA.4/5対応2価ワクチンとBA.1対応2価ワクチンの直接比較では、ワクチンの有効性に有意差はなく、潜在的な違いは絶対数では非常に小さいことが示唆されたという。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。北欧4ヵ国の50歳以上の成人を対象としたコホート研究 研究グループは北欧4ヵ国の住民登録、予防接種登録、患者登録などの各種データベースを用い、2020年12月27日から、解析データが入手できた直近日(デンマーク2023年4月10日、フィンランド4月7日、ノルウェー4月1日、スウェーデン2022年12月31日)までに、AZD1222(アストラゼネカ製)(プライマリ接種コースのみ)、BNT162b2(ファイザー製、1価:起源株)またはmRNA-1273(モデルナ製、1価:起源株)ワクチンを少なくとも3回(プライマリ接種コース2回、ブースター接種1回)接種した50歳(フィンランド60歳、ノルウェー65歳)以上を対象に解析した。 主要アウトカムは、COVID-19関連入院およびCOVID-19関連死である。4回目(2回目のブースター)としてオミクロンBA.4/5またはBA.1変異株対応2価ワクチン接種者と、4回目非接種者(3回接種)をマッチングさせ、それぞれKaplan-Meier推定法を用いてCOVID-19関連入院およびCOVID-19関連死の累積発生率を推定し、90日時点における相対的有効性(1-リスク比)および絶対リスク差を算出した。2価ワクチンのブースター接種者、1価ワクチン3回接種と比較して重症化が減少 4回目としてのBA.4/5対応2価ワクチン接種者は163万4,199例、BA.1対応2価ワクチン接種者は104万2,124例で、3回接種者とのマッチドペアはそれぞれ123万3,741組および93万2,846組であった。 4回目接種者は3回接種者と比較して、90日以内のCOVID-19関連入院およびCOVID-19関連死の累積発生率は非常に低かった。COVID-19関連入院に対する有効性および10万人当たりのリスク差は、BA.4/5対応2価ワクチンで67.8%(95%信頼区間[CI]:63.1~72.5)および-91.9(-152.4~-31.4)(イベント数289 vs.893件)、BA.1対応2価ワクチンで65.8%(95%CI:59.1~72.4)および-112.9(-179.6~-46.2)であった(イベント数332 vs.977件)。また、COVID-19関連死に対する有効性および10万人当たりのリスク差は、BA.4/5対応2価ワクチンで69.8%(95%CI:52.8~86.8)、-34.1(-40.1~-28.2)(イベント数93 vs.325件)、BA.1対応2価ワクチンで70.0%(95%CI:50.3~89.7)、-38.7(-65.4~-12.0)であった(イベント数86 vs.286件)。 4回目接種と3回接種の比較では、ワクチンの有効性は性別および年齢(70歳未満または70歳以上)により差はなく、ワクチン接種日から6ヵ月後まで緩やかに減少したが維持していた。 4回目接種に関してBA.4/5対応2価ワクチンをBA.1対応2価ワクチンと直接比較すると、有効性および10万人当たりのリスク差は、COVID-19関連入院(イベント数802 vs.932件)が-14.9%(95%CI:-62.3~32.4)および10.0(-14.4~34.4)、COVID-19関連死(イベント数229 vs.243件)が-40.7%(95%CI:-123.4~42.1)、8.1(-3.3~19.4)であった。この直接比較の結果は、性別および年齢(70歳未満または70歳以上)による層別化、あるいは追跡期間を6ヵ月まで延長した場合でも、同様であった。

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国産初の新型コロナmRNAワクチンを追加免疫として承認、供給なし/第一三共

 第一三共は8月2日のプレスリリースにて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する起源株1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(DS-5670)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした追加免疫における国内製造販売承認を取得したことを発表した。ダイチロナ筋注については、2023年1月に国内製造販売承認申請を行い、COVID-19に対する国産初のmRNAワクチンとして今回承認に至った。ダイチロナ筋注は、冷蔵(2~8度)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待される。ダイチロナ筋注は追加接種に用いられる起源株対応1価のmRNAワクチン 今回承認となったダイチロナ筋注は、同社が見出した新規核酸送達技術を活用し、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合領域(RBD)を標的としたCOVID-19に対するmRNAワクチンだ。ダイチロナ筋注の研究開発は、XBB.1.5系統1価ワクチンの開発を含め、日本医療研究開発機構(AMED)の「ワクチン開発推進事業」および厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の支援を受けて実施している。 なお、2023年5月開始の現行の追加接種には、ファイザーおよびモデルナのオミクロン株BA.4/5対応2価のmRNAワクチンが使用されている。また、2023年9月から予定されている追加接種には、XBB.1.5系統を含有する1価のワクチンを用いる方針が厚生労働省より示されている。今回承認された第一三共のダイチロナ筋注は、追加接種に用いられる起源株対応1価のmRNAワクチンであることから、供給は予定していない。 同社は、XBB.1系統1価ワクチンに対応できるよう速やかに開発を進め、早ければ年内にXBB.1.5系統1価ワクチンを供給できるよう取り組むとしている。

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8月1日 肺の日【今日は何の日?】

【8月1日 肺の日】〔由来〕「は(8)い(1)」(肺)と読む語呂合わせから、肺の健康についての理解を深め、呼吸器疾患の早期発見と予防についての知識を普及・啓発することを目的に日本呼吸器学会が1999年に制定し、翌2000年から実施。学会では、肺の病気・治療について全国で一般市民を対象にした講座会や医療相談会を行っている。関連コンテンツ軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】電子タバコは紙巻きタバコの禁煙には役立たない【患者説明用スライド】抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加肺炎の予防戦略、改訂中の肺炎診療GLを先取り/日本呼吸器学会軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】

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コロナの急性期症状、男女差は?

 男性のほうが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が重症化しやすく死亡率が高いという、性別による差異が報告されている。その理由として、男性のほうが喫煙率や飲酒率、予後悪化に関連する併存疾患を有している割合が高いなどの健康格差が示唆されている1)。今回、COVID-19の急性期症状の性差を調査したところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と判定された男性では発熱や悪寒といった特定の症状の発現率が女性よりも高いことが、米国・テキサス大学ヒューストン健康科学センターのJenil R. Patel氏らにより明らかになった。Preventive Medicine Reports誌2023年10月号掲載の報告。 対象は、アーカンソー医科大学でRT-PCR検査を受けた成人であった。パンデミック当初はCOVID-19関連の症状を有する人や濃厚接触者が検査対象であったが、その後、症状や曝露の有無にかかわらずすべての希望者に拡大した。COVID-19関連の症状(発熱、咳、息切れ、咽頭痛、悪寒、筋肉痛、頭痛、味覚・嗅覚障害)は、検査時、7日後、14日後に聴取した。症状の発現率の性差はχ2検定を用いて評価し、男女別の有病率比および95%信頼区間(CI)はロバスト分散を使用したポアソン回帰モデルを用いて推定した。今回の報告は、2020年3月29日~10月7日に聴取したデータの解析であった。 主な結果は以下のとおり。・2020年10月7日時点で、6万648例の地域住民と患者がRT-PCR検査を受けた。・SARS-CoV-2陽性者のうち86.3%が18~64歳、53.7%が女性であった。検査時に有していたCOVID-19関連の症状は、咳(28.1%)、頭痛(20.7%)、発熱(19.7%)、咽頭痛(16.0%)、筋肉痛(15.8%)、悪寒(13.7%)、味覚・嗅覚障害(12.4%)、息切れ(11.5%)であった。・陽性および陰性を含む解析対象者全員の症状は、検査時では悪寒を除くすべてが女性で有意に多かった。7日後では発現率は下がるものの、悪寒も含めて女性で有意に多いままであった。14日後にはほぼすべての症状は男女差なく減少したが、咳(p=0.02)は女性で有意に多かった。・陽性の集団では、男性のほうが発熱(男性22.6% vs.女性17.1%、p<0.001)と悪寒(14.9% vs.12.6%、p=0.04)が有意に多く、そのほかの症状は男女による差はなかった。・陰性の集団では、女性のほうが男性よりもすべての症状が有意に多かった。・検査時の男女別有病率比は、男性では発熱1.32(95%CI:1.15~1.51)および悪寒1.19(95%CI:1.01~1.39)と高かった。7日後では男性のほうが症状を有する割合が低い傾向にあったが、咽頭痛(0.49[95%CI:0.24~1.01])と筋肉痛(0.67[95%CI:0.41~1.09])以外は統計学的に有意ではなかった。14日後では、男女間で有意差は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「SARS-CoV-2陽性と判定された男性では、検査時における発熱や悪寒といった特定の症状の発現率が女性と比較して高かった。これらの違いは、COVID-19パンデミック時に急速に顕在化した健康格差という重要な問題を明らかにするものである」とまとめた。

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第157回 コロナの影響で平均寿命2年連続で縮む/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ影響で日本人の平均寿命2年連続で縮む/厚労省2.日本の人口、全都道府県で初の減少、外国人増加が補う/総務省3.感染症対策を強化、感染症危機管理統括庁を9月1日に設置/政府4.保険証の有効期限見直し検討 マイナンバーカードへの不安払拭/政府5.神戸徳洲会病院、カテーテル処置後の死亡で行政指導へ/神戸市6.美容外科医が少女らをカラオケに連れ込み、未成年者誘拐容疑で逮捕/東京1.新型コロナ影響で日本人の平均寿命2年連続で縮む/厚労省厚生労働省は、2022年の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳となり、いずれも前年より0.49歳と0.42歳短くなったことを明らかにした。これで平均寿命が2年連続で前の年を下回った。この大きな要因として新型コロナウイルス感染症による死者の増加が挙げられている。日本人の平均寿命は女性が世界1位であり、男性は4位に下がった。厚労省は今後の感染状況次第では、寿命が再び上昇する可能性もあるとしている。参考1)令和4年簡易生命表の概況(厚労省)2)去年の日本人平均寿命 2年連続で前年下回る 厚労省(NHK)3)日本人の平均寿命、男女とも2年連続で縮む 新型コロナ影響か(毎日新聞)4)平均寿命、2年連続で縮む コロナが最大の要因 簡易生命表公表(朝日新聞)2.日本の人口、全都道府県で初の減少、外国人増加が補う/総務省総務省がまとめた最新の人口動態調査によれば、わが国の人口は14年連続で減少し、初めて47都道府県すべてで人口が減少したことが明らかになった。その一方で、外国人の人口は過去最多の299万人に増加し、全都道府県で増えていた。わが国の人口減少に対して外国人の重要性が増しており、経済や社会の担い手として底支えをしていることが明らかになっている。東京都は外国人の増加により総人口は前年を上回っているが、日本人の減少は続いている。また、転入者が転出者を上回る「社会増」は東京、神奈川、埼玉、千葉、福岡、大阪、茨城、宮城、滋賀と都市部に人口流入が偏った傾向が続いている。参考1)住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(総務省)2)日本人、全都道府県で初の減少 外国人299万人が底支え(日経新聞)3)日本人の人口 14年連続減少 初めて47都道府県すべてで減る(NHK)3.感染症対策を強化、感染症危機管理統括庁を9月1日に設置/政府政府は、感染症発生時に司令塔機能を担う「内閣感染症危機管理統括庁」を9月1日に設置すると発表した。これは新型コロナウイルス禍で感染対策の初動が遅れた教訓を生かし、対応を強化するための措置。統括庁は内閣官房に置かれ、感染対策の立案や政府対策本部の運営、関係省庁の業務調整などを担う。同庁は、平時は38人が専従し、緊急時には101人に増員する。トップの「内閣感染症危機管理監」には栗生 俊一官房副長官が就任する見込み。感染症危機管理監を補佐する「内閣感染症危機管理対策官」には厚生労働省の医務技監の迫井 正深氏が着任する。このほか、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合した「国立健康危機管理研究機構」も新たに設立される。この新組織は「日本版CDC」とも呼ばれ、感染症の新たな発生に対して効果的に対応できる体制を整えることが期待されている。新型コロナ禍の教訓を踏まえ、次の感染症の発生に迅速で的確に対応する体制を整えることで、感染症対策の強化する。参考1)危機管理統括庁、9月1日設置を発表 経財相(日経新聞)2)感染症対応の司令塔「危機管理統括庁」9月1日設置 後藤担当相が発表(CB news)3)次の「コロナ」に即応できる? 新専門家組織の課題は?(毎日新聞)4.保険証の有効期限見直し検討 マイナンバーカードへの不安払拭/政府政府は健康保険証の代わりとして交付する「資格確認書」の有効期限を見直し、最長1年の制限を廃止し、現行の保険証と同じ有効期限に設定する検討に入った。現在は、2024年秋に健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに一本化する方針だが、マイナンバーカードへの不安が相次いでおり、保険証廃止の延期も視野に入れている。政府内では「資格確認書」の利便性向上によりトラブルへの対策とし、国民の不安を払拭する狙いがある。参考1)来年秋の保険証廃止方針 週明けにも協議し対応判断 岸田首相(NHK)2)“マイナ保険証”「安心して活用できる環境を整備」 官房長官(同)3)「資格確認書」の有効期限で見直し案 政府、保険証廃止への批判で(朝日新聞)4)首相、健康保険証の廃止延期も視野…マイナンバーカードへの不安払しょく狙い(読売新聞)5.神戸徳洲会病院、カテーテル処置後の死亡で行政指導へ/神戸市神戸市にある神戸徳洲会病院で、カテーテル処置後に複数の患者が死亡した事案について、7月28日に神戸市保健所が3度目の立ち入り検査を行った。市側は安全管理に問題があるとして、行政指導を検討している。問題の背景には循環器内科の男性医師が、カテーテル室を実質的に1人で担っていた可能性が浮上しており、電子カルテの記載漏れも判明している。病院側は第三者機関による検証を依頼しており、カテーテル治療の再開は安全が確保されるまで控えると発表している。参考1)カテーテル処置後死亡 神戸市“安全管理体制に複数の問題点”(NHK)2)カテーテル治療後に死亡相次ぐ神戸徳洲会病院 市が行政指導へ カルテに記載なし、実質一人で業務か(神戸新聞)6.美容外科医が少女らをカラオケに連れ込み、未成年者誘拐容疑で逮捕/東京美容クリニックの医師2人が、7月25日に開催された花火大会帰りの10代の女子高校生2人をナンパし、カラオケ店に連れ込んだ疑いで逮捕された。容疑者の医師らは少女たちに酒を飲ませたとされ、少女の1人は急性アルコール中毒で病院に搬送された。容疑者らは大学時代の同級生で、未成年者だとは知らなかったと一部否認しているが、女子高校生らは高校生だと説明して、断っていた。参考1)少女2人をカラオケに連れ込む 誘拐容疑で美容外科医2人を逮捕(毎日新聞)2)有名美容外科クリニックの医師2人を逮捕 女子高校生2人をカラオケ店に連れ込み疑い 逃げるも連れ戻し…急性アルコール中毒で搬送 警視庁(TBS)3)「カラオケに行こうよ」と連れ込み…10代少女らを誘拐した疑いで美容外科医2人逮捕(FNN)

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秋接種、ファイザーとモデルナのXBB.1.5対応1価ワクチン購入合意/厚労省

 厚生労働省は7月28日、新型コロナワクチンの2023年秋開始接種に向けて、オミクロン株XBB対応1価ワクチンとして、ファイザーから2,000万回分、モデルナから500万回分を追加購入することについて、両社と合意したことを発表した。なお、必要に応じて追加購入することも合意している。 同日にファイザーが発表したプレスリリースによると、今回供給を予定しているのは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンとなっている。本ワクチンは、同社が2023年7月7日に厚生労働省に承認事項一部変更申請を行っていた。 また、モデルナも同日に発表したプレスリリースにて、秋開始接種に使用するオミクロン株XBB.1.5系統に対応した新型コロナワクチンを供給するとしている。同社も2023年7月7日に厚生労働省に承認事項一部変更申請を行っていた。 両社ともに、XBB.1.5対応ワクチンについて薬事承認取得後に供給するとしている。

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小学生のコロナ感染リスクに近隣の社会経済環境が関連―大阪市での研究

 自宅周辺の社会経済環境と、小学生の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染リスクとの関連が報告された。高学歴者の多い環境で暮らす小学生は感染リスクが低く、卸売・小売業の従事者が多い環境の小学生は感染リスクが高いという。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の大石寛氏(大学院生)、同大学スポーツ健康科学部の石井好二郎氏らの研究の結果であり、詳細は「Children」に4月30日掲載された。 居住地域の社会経済環境とCOVID-19感染リスクとの間に有意な関連があることは、既に複数の研究から明らかになっている。ただしそれらの研究の多くは海外で行われたものであり、またCOVID-19重症化リスクの低い小児を対象とした研究は少ない。日本は子どもの相対的貧困率が高いこと、および、当初は低いとされていた子どものCOVID-19感染リスクもウイルスの変異とともにそうでなくなってきたことから、国内の子どもたちを対象とした知見が必要とされる。これを背景として石井氏らは、大阪市内の公立小学校の282校の「学区」を比較の単位とする研究を行った。なお、大阪市内には生活保護受給率が全国平均の3倍を上回る地区が複数存在している。 解析には、大阪市内公立小学校のCOVID-19感染患児数、行政機関や民間企業が公表・提供している社会経済環境関連データ、住民の大学卒業者の割合、他者との対面の必要性の高い職業(卸売・小売業、郵便・運輸業、宿泊・飲食業、医療・社会福祉関連業)従事者の割合、地理的剥奪指標(ADI)などのデータを用いた。これら以外に、結果に影響を及ぼす可能性のある共変量として、人口密度、世帯人員、医療機関・高齢者施設の件数、公共交通機関の施設(駅やバス停)の数などを把握した。対象期間は、パンデミック第2~5波に当たる2020年6月~2021年11月。 COVID-19に感染した小学生の数を目的変数、社会経済環境関連の指標を説明変数とし、共変量で調整後の解析で、大学卒業者が多く住んでいる学区では小学生のCOVID-19罹患率が有意に低いという負の相関が認められた〔罹患率比(IRR)0.95(95%信頼区間0.91~0.99)〕。一方、卸売・小売業従事者が多い学区では小学生のCOVID-19罹患率が有意に高いという正の相関が確認された〔IRR1.17(同1.06~1.29)〕。他者との対面の必要性の高いそのほかの職業従事者の割合やADIは、小学生のCOVID-19罹患率との有意な関連がなかった。 パンデミックの波ごとに解析した場合も、自宅近隣に卸売・小売業従事者が多いことは第4・5波で、小学生のCOVID-19罹患率と正の相関が認められた。また、解析対象とした第2~5波の中で最も罹患率の高かった第5波では、医療・社会福祉関連業の従事者が多い学区でも正の相関が見られ〔IRR1.16(1.05~1.28)〕、反対に大学卒業者が多い学区では負の相関が見られた〔IRR0.94(0.90~0.99)〕。このほかに第2波では、宿泊・飲食業の従事者が多い学区で小学生の感染リスクが3倍近く高かったことが分かった〔IRR2.85(1.33~6.43)〕。 以上より著者らは、「自宅近隣の社会経済環境が小学生のCOVID-19感染リスクと関連していることが明らかになった。特に、卸売・小売業従事者が多い地区で罹患率が高く、高学歴者が多い地区は罹患率が低い」とまとめている。また、ADIが有意な関連因子として抽出されなかったことから、「感染防止行動に必要な情報の収集、理解、評価とその実践につながる地域住民の実行力が、社会経済的な格差の有無にかかわらず、その地区の子どもたちのCOVID-19感染リスクを押し下げる可能性がある」と考察。「われわれの研究結果は、COVID-19感染リスクの地域格差を是正するための公衆衛生政策に有用な情報となり得る」と付け加えている。

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亜鉛補給でコロナ死亡率低下~メタ解析

 亜鉛の補給によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡リスクが有意に低下することが、米国・Patel College of Allopathic MedicineのSpencer Z. Rheingold氏らのメタ解析によって明らかになった。Cureus誌2023年6月10日号掲載の報告。 亜鉛は必須微量元素の1つで、炎症や感染症における免疫系の重要な調節因子であるとともに、直接的な抗ウイルス作用もあることが報告されている。COVID-19患者の予後を改善するために多くの研究グループが亜鉛補給に関する試験を実施しているが、その効果には議論の余地がある。そこで研究グループは、亜鉛を補給したCOVID-19患者と補給していないCOVID-19患者の死亡率と症状の関連についてメタ解析を行った。 2022年7~8月にPubMedline/Medline、Cochrane、Web of Science、CINAHL Completeを用いて、亜鉛補給とCOVID-19の関連を評価した試験を検索した。重複を除去した結果、1,215本の論文が検索され、これらの研究のうち5試験を死亡率のアウトカムの評価に、2試験を症状のアウトカムの評価に用いた。COVID-19患者の亜鉛摂取と死亡率や症状の関係を評価するために、リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。異質性はI2統計量を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・亜鉛を投与されたCOVID-19患者では、投与されなかったCOVID-19患者と比較して死亡リスクが有意に減少した(RR=0.63、95%CI:0.52~0.77、p=0.005)。・症状については、亜鉛を投与されたCOVID-19患者と、亜鉛を投与されなかった患者で差はなかった(RR=0.52、95%CI:0.00~2万4,315.42、p=0.578)。・亜鉛は広く入手可能であり、COVID-19患者の死亡リスクを低減する費用対効果の高い方法として有望な可能性がある。

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コロナによる医療中断で回避可能な入院リスク増/BMJ

  英国・リバプール大学のMark A. Green氏らは、同国7つの住民ベース縦断研究のコホートデータを解析し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中に医療へのアクセスが中断された人は、回避可能な入院をより多く経験していたとみられることを報告した。COVID-19流行中に医療サービスや治療へのアクセスがどの程度中断したかは、幅広い研究によって明らかとなっているが、この中断と健康への悪影響との関連を評価する研究が求められていた。著者は、「今回の調査結果は、パンデミックの短期的・長期的影響への対応や、将来のパンデミック時の治療・処置体制確保のために、医療投資を増やす必要性を浮き彫りにしている」と述べている。BMJ誌2023年7月19日号掲載の報告。英国の7つの縦断研究からコホートデータを解析 研究グループは、UK Longitudinal Linkage Collaborationを利用して、イングランドのNHS Digitalの電子健康記録とリンクした住民ベースの縦断研究コホートデータを、2020年3月1日~2022年8月25日の期間について入手した。 主要アウトカムは回避可能な入院で、適切なプライマリケア診療で入院を防ぐことができる状態(ambulatory care sensitive condition:ACSC)や急性増悪で入院の可能性はあるが入院を最小限にするためにプライマリケアで治療を試みるべき状態(emergency urgent care sensitive condition)での緊急入院と定義し、医療へのアクセスとの関連を解析した。新型コロナ流行で医療中断を経験した人は、回避可能な入院のリスクが高い 計9,742例(縦断コホートのサンプル構造で調整した加重割合35%)が、COVID-19流行中に何らかの形で医療へのアクセスが中断されたと自己報告した。 アクセスが中断された人は、あらゆるACSC(オッズ比[OR]:1.80、95%CI:1.39~2.34)、急性のACSC(2.01、1.39~2.92)、慢性のACSC(1.80、1.31~2.48)による入院のリスクが高かった。プライマリケア医または外来受診(予約済み)および手術、がん治療などの処置へのアクセスが中断された経験のある人は、回避可能な入院の指標と正の関連が認められた。 なお、著者は、観察研究であり因果関係は説明できないこと、COVID-19流行前の医療へのアクセスの困難さに関するデータがないことなどを研究の限界として挙げている。

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労働時間の変化にかかわらず睡眠時間減少が心理的苦痛に関連

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で行われた日本人対象の横断研究から、労働時間の増減にかかわらず、睡眠時間が減った場合に心理的苦痛が強くなる可能性が示された。産業医科大学環境疫学研究室の頓所つく実氏、藤野善久氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Psychology」に3月14日掲載された。 COVID-19パンデミックが人々のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼしていることについては、既に多くの研究報告がある。ただし、その影響を労働時間および睡眠時間の変化と結びつけて検討した研究は数少ない。パンデミックの初期には、職業や勤務形態によって労働時間が減る場合と増える場合があった。また、睡眠時間が大きく変わった人も少なくないことが知られている。藤野氏らは、産業医科大学が行っている「COVID-19流行下における労働者の生活、労働、健康に関する調査(CORoNaWork研究)」の一環として、パンデミック下での労働時間と睡眠時間の変化と、心理的苦痛の変化との関連を検討した。 2020年12月20~26日(パンデミック第3波の最中)にインターネット調査を行い、2万5,762人の労働者(正社員のほかに派遣・契約社員、在宅勤務者、自営業者などは組み入れ、アルバイトは除外)から有効回答を得た。うつ病と診断されている人や極端な低体重者(30kg未満)などは除外されている。アンケートは、パンデミックの前後で労働時間と睡眠時間がどのように変化したかという質問と、過去30日間の心理的苦痛の程度を把握する「ケスラー6(K6)」という指標の質問で構成されていた。K6は6項目の質問に対して0~4点で回答し、合計24点満点のスコアで評価する。本研究では5点以上の場合を「軽度の心理的苦痛がある」と判定した。 アンケートの回答に基づき、全体を以下の九つのグループに分類。1.パンデミック後に、労働・睡眠時間がともに増加した群、2.労働時間は増加し睡眠時間は変化していない群、3.労働時間は増加し睡眠時間は減少した群、4.労働時間は変化せず睡眠時間が増加した群、5.労働・睡眠時間がともに変化していない群、6.労働時間は変化せず睡眠時間が減少した群、7.労働時間が減少し睡眠時間は増加した群、8.労働時間が減少し睡眠時間は変化していない群、9.労働・睡眠時間ともに減少した群。 解析結果に影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、治療中の病気、教育歴、居住地域(緊急事態宣言が発出された地域か否か)、婚姻状況、12歳未満の子どもの有無、家族と過ごす時間、通勤時間、業種、勤務先の従業員数、就業形態(テレワークの頻度)、職位、仕事上のストレス、経済状況など〕を統計学的に調整し、「軽度の心理的苦痛がある」オッズ比を算出した。 まず労働時間に着目すると、労働時間が増加した群は変化なしの群に比べて、軽度の心理的苦痛がある確率が有意に高かった〔オッズ比(OR)1.15(95%信頼区間1.03~1.28)〕。労働時間が減少した群は変化なしの群と有意差がなかった。次に、睡眠時間との関連を見ると、睡眠時間が減少した群は変化なしの群に比べて、軽度の心理的苦痛がある確率が2倍近く高かった〔オッズ比(OR)1.97(同1.79~2.18)〕。睡眠時間が増加した群は変化なしの群と有意差がなかった。 続いて、前記の5番目の「労働・睡眠時間がともに変化していない群」を基準として9群の比較を行った結果、労働時間の増加・減少・不変に関係なく睡眠時間が減少した場合に、軽度の心理的苦痛がある確率が有意に増加していたことが明らかになった。一方、労働時間が増加しても睡眠時間も増加した場合は、有意なオッズ比上昇が観察されなかった。 オッズ比の有意な上昇が認められた群は以下の通り。2番目の「労働時間は増加し睡眠時間は変化していない群」はOR1.24(1.08~1.43)、3番目の「労働時間は増加し睡眠時間は減少した群」はOR1.98(1.64~2.39)。6番目の「労働時間は変化せず睡眠時間が減少した群」はOR1.94(1.72~2.18)。9番目の「労働・睡眠時間ともに減少した群」はOR2.59(2.05~3.28)。なお、オッズ比の有意な低下が見られた群はなかった。 以上より著者らは、「労働時間にかかわりなく、睡眠時間の減少が心理的苦痛の主な要因である可能性が示された。パンデミックの初期段階での経済的困難を伴う労働時間の減少が睡眠時間の減少を引き起こし、その結果、心理的苦痛を増大させたのではないか」と述べている。また、「この知見は、労働者の良好なメンタルヘルス維持のための睡眠衛生の重要性を物語っている」と付け加えている。

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第55回 コロナ後遺症、どんな子供に多い?

スウェーデンの大規模研究Unsplashより使用小児におけるCOVID-19は、多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)を除くと、成人ほど医学的な影響は大きくないため、感染症としては比較的軽視されています。そのため、新型コロナワクチン接種率は非常に低いところでプラトーに達しています。最新のデータによると、2回目まで接種した児は23.4%、3回目の接種を受けている児はわずか9.8%です1)。さて、スウェーデンの集団ベース研究において、小児におけるCOVID-19罹患後症状(後遺症)が評価されました2)。この研究は、スウェーデンの2つの地域に居住する6~17歳の小児を対象とし、2020年1月31日~2022年2月9日のCOVID-19の症例を組み入れました。後遺症は、感染後28日以上経過してから発生したものとしました。合計16万2,383人の小児(男児8万1,789人、女児8万594人)が感染を経験し、本コホートに登録されました。平均年齢は12.0±3.5歳で、入院に至った症例はわずか529例(0.3%)でした。日本においても小児のCOVID-19入院のみならず、後遺症で入院に至ることは非常にまれですよね。性別・年齢・親の教育水準などで差結果、後遺症と診断されたのは、326例(0.2%)だけでした。女児における後遺症の発生率は男児よりも高いことが示されました(100人年あたり0.19[95%信頼区間[CI]:0.16~0.22]vs.0.12[95%CI:0.10~0.14])。また、6~11歳より12~17歳のほうが後遺症の発生率は高いという結果でした(12~17歳:100人年あたり0.19[95%CI:0.17~0.22]vs.6~11歳:0.11[95%CI:0.09~0.14])。さらに、当然ではありますが、入院COVID-19例のほうが非入院例よりも後遺症は多かったようです(100人年あたり1.25[95%CI:0.62~2.23]vs.0.15[95%CI:0.13~0.17])。興味深いことに後遺症の発生は親の教育水準によって異なっていました。初等教育卒業水準と比べて高等教育卒業水準のほうが、後遺症が多かったのです(高等教育卒業水準:100人年あたり0.15[95%CI:0.13~0.18]vs.初等教育卒業水準:0.10[95%CI:0.04~0.19])。そして、両親のいずれかが後遺症と診断された場合、児の後遺症発生が5倍多いことが示されました(100人年あたり0.70[95%CI:0.49~0.97]vs.0.14[95%CI:0.13~0.16])。教育水準が高い集団は医療アクセスが速やかなので、後遺症の診断につながりやすいという側面もあります。また、自身の後遺症の経験から子供の長引く症状に対して懸念を抱く両親が多いためと考えられます。考察では遺伝的影響もありうると書かれています。参考文献・参考サイト1)新型コロナワクチンについて(首相官邸)2)Bygdell M, et al. Incidence and Characteristics in Children with Post-COVID-19 Condition in Sweden. JAMA Netw Open. 2023 Jul 3;6(7):e2324246.

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コロナ再感染、高齢者よりも若年層で増加

 新型コロナウイルス感染症の流行が長期にわたり、再感染者も増えている。コロナ再感染は基礎体力が劣り、基礎疾患を持つ人が多い高齢者に多いのではと考えられるが、実際には若年・中年層の増加率が高齢者よりも高いことが明らかになった。米国疾病管理予防センター(CDC)が実施した研究結果は、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年6月23日号に掲載された。コロナ再感染の割合の絶対的増加は18〜49歳で最も高い CDCは2021年9月5日~2022年12月31日に、米国の18の管轄区域から報告された18歳以上の成人のCOVID-19全症例、入院、死亡に占めるコロナ再感染の割合を調査し、5つの期間(デルタおよびオミクロン[BA.1、BA.2、BA.4/BA.5、BQ.1/BQ.1.1]がそれぞれ優勢だった期間)と年齢層別に解析した。 コロナ再感染の割合を調査した主な結果は以下のとおり。・期間中に278万4,548例のコロナ再感染が報告され、同集団および期間に報告された全症例(2,194万3,686例)の12.7%を占めた。・18~49歳が人口に占める割合は54%だが、この期間のコロナ再感染者の66.8%を占めた。50~64歳は21.2%、65歳以上は11.9%であった。・全症例に占めるコロナ再感染の割合は、2.7%(デルタ期)から28.8%(オミクロンBQ.1/BQ.1.1期、以後期間はすべてデルタ期→オミクロンBQ.1/BQ.1.1期)に大幅に増加した。COVID-19関連入院(1.9%→17.0%)および死亡(1.2%→12.3%)に占めるコロナ再感染の割合も大幅に増加した。・コロナ再感染の割合の絶対的増加は18〜49歳で最も高く(3.0%→34.4%)、50~64歳は2.1%→29.0%、65歳以上は2.0%→18.9%だった。・COVID-19の全症例、入院、および死亡のうちコロナ再感染の割合は、50歳以上と比較して、18~49歳では期間を通じて一貫して高かった。・コロナ感染間隔の中央値は269~411日であり、BA.4/BA.5期間の開始時に急減した。 レポートはこの期間のコロナ再感染およびそれに伴う入院と死亡の割合が若年層で高い理由として、初感染の累積発生率が高いこと、ワクチン接種開始の時期が遅いこと、ワクチン接種率が低いこと、曝露リスクが高いこと、初感染の重症度が低いために生存バイアスがかかっている可能性、など複数の要因が考えられるとしている。

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XBB/XBB.1.5、ほかの変異株より再感染リスク高い

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の多様な変異の出現は、ワクチンと感染の両方による集団免疫を回避する能力の向上と関連している。米国・カリフォルニア大学バークレー校のJoseph A. Lewnard氏らの研究によると、現在主流となっているオミクロン株XBB/XBB.1.5系統は、ワクチン由来の免疫と感染由来の免疫とで回避傾向が異なり、同時期に流行しているほかの変異体と比較して、ワクチン接種回数が多い人ほど感染リスクや感染時の入院リスクが低減する一方で、過去に感染既往がある人はXBB/XBB.1.5への感染リスクが高いことが示された。Nature Communications誌2023年6月29日号に掲載の報告。 XBB/XBB.1.5系統は2023年1月下旬までに、ほかの変異体を追い抜き米国内で主流となった。本研究では、南カリフォルニアにおいて2022年12月1日~2023年2月23日の期間に、外来でSARS-CoV-2陽性と判定された3万1,739例のデータを解析した。これらの被験者において、XBB/XBB.1.5に感染した人と、ほかのBA.4/BA.5などに感染した人について、ワクチン接種歴と過去のSARS-CoV-2感染既往、および臨床転帰を比較した。 主な結果は以下のとおり。・XBB/XBB.1.5系統に感染していると推定された外来患者の割合は、2022年12月1日の時点で21.1%(45/213例)であったのが、2023年2月23日の時点で77.8%(49/63例)に増加した。全被験者3万1,739例のうち、XBB/XBB.1.5症例は9,869例、それ以外のBA.4/BA.5などの非XBB/XBB.1.5症例は2万1,870例だった。・COVID-19ワクチン接種回数と感染リスクの関連は、XBB/XBB.1.5症例は、非XBB/XBB.1.5症例と比較した調整オッズ比(OR)が、接種2回で10%(95%信頼区間[CI]:1~18)、3回で11%(3~19)、4回で13%(3~21)、5回以上で25%(15~34)低かった。・過去のSARS-CoV-2感染既往と感染リスクの関連は、XBB/XBB.1.5症例は、非XBB/XBB.1.5症例と比較した調整ORが、過去1回の感染既往で17%(95%CI:11~24)、過去2回以上の感染既往で40%(19~65)高かった。・COVID-19ワクチン接種回数と感染時の入院リスクとの関連は、XBB/XBB.1.5症例における検査陽性後30日間の入院予防効果の推定値が、接種2回で41%(95%CI:-44~76)、3回で54%(0~79)、4回で70%(30~87)であった。一方、非XBB/XBB.1.5症例では、接種2回で6%(-65~46)、3回で46%(7~69)、4回で48%(7~71)であり、XBB/XBB.1.5症例のほうが有意に予防効果が高かった。・過去のSARS-CoV-2感染既往と入院リスクの関連は、XBB/XBB.1.5症例および非XBB/XBB.1.5症例において同等であった。2回以上の感染既往の入院の調整ハザード比は、XBB/XBB.1.5症例で0.73(95%CI:0.17~3.15)、非XBB/XBB.1.5症例で0.72(0.26~2.01)。 著者らは本結果について、XBB/XBB.1.5系統は、オミクロン株以前の変異株を含む過去の感染によって引き起こされた免疫応答に対する回避能が、同時期に流行しているBA.5系統より優れているものの、ワクチン接種によって引き起こされる免疫応答に対してはより感受性が高く、過去の変異株とは異なる特徴を持っていると述べている。

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第173回 コロナと戦えるT細胞が風邪のお陰で育まれうることの初の裏付け

ウイルスが体内の細胞の1つに感染すると病原体駆逐に携わるヒト白血球抗原(HLA)遺伝子のタンパク質がその細胞表面にウイルスタンパク質の切れ端を提示して免疫系に通知します。その通知を受け、病原体を認識して記憶しうるT細胞が感染細胞を殺してウイルスが複製できないようにします。HLA遺伝子群の顔ぶれはすこぶる多彩で、その多くはどれかのウイルスへの免疫反応の強さの個人差に寄与しています。たとえばHLA-B遺伝子の1つは感染したヒト免疫不全ウイルス(HIV)が体内で極わずかなままで発症しない人にも認められ、かたや別の種類のHLA-B遺伝子を有する人では正反対にHIV感染後速やかにAIDSを発症します。HIV感染の経過との関連のように新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の経過と関連するHLA遺伝子があるかもしれません。そこで米国・カリフォルニア大学の免疫遺伝研究者Jill Hollenbach氏が率いるチームは骨髄ドナー登録のおかげでHLAの種類が検査ですでに判明している3万例弱に協力を仰ぎ、SARS-CoV-2感染の経過とHLAの関連を調査しました。被験者の携帯機器にダウンロードしてもらったアプリを使って情報を集めたところSARS-CoV-2ワクチン普及前の2021年4月30日までに白人被験者の約1,400例がSARS-CoV-2に感染しており、その1割ほどの136例は無症状で済んでいました。HLA遺伝子情報と照らし合わせたところ、それら136例の5人に1人(20%)はHLA-B*15:01として知られるHLA-B遺伝子変異を有していました1)。一方、発症した人のHLA-B*15:01保有率は10人に1人に満たない9%でした。続いて、それら被験者とは別の米国とオーストラリアの被験者の血液検体を使ってHLA-B*15:01と発症予防を関連付ける仕組みの解明が試みられました。それら血液検体は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前に集められました。それにも関わらずHLA-B*15:01保有者の血液検体の75%のT細胞はSARS-CoV-2スパイクタンパク質の一部NQK-Q8を認識しました。どうやらHLA-B*15:01保有者のT細胞はSARS-CoV-2の情報を知らされていないのにSARS-CoV-2と戦う準備ができているようなのです。それはなぜか。SARS-CoV-2が広まる前から馴染みの季節性コロナウイルス感染の経験がその理由の一端を担っているようです。風邪ウイルスとしても知られる季節性コロナウイルスのスパイクタンパク質はNQK-Q8とほぼ同一のペプチド配列NQK-A8を含みます。HLA-B*15:01保有者のT細胞はそのNQK-A8にも強力に反応しました。HLA-B*15:01保有者のT細胞は季節性コロナウイルスによる風邪の経験を糧に鍛えられ、SARS-CoV-2を含むほかの見知らぬコロナウイルスをも相手できる免疫を備えたのかもしれません。見知らぬSARS-CoV-2も相手しうるT細胞が季節性コロナウイルスとの先立つ交戦を経て生み出されうることを裏付けた初めての成果となったと免疫学の研究者などは述べています2)。今後の研究課題として、HLA-B*15:01がSARS-CoV-2への免疫反応を底上げする仕組みを調べる必要があります。その仕組みの解明は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな予防ワクチンや治療手段の開発に役立ちそうです3)。参考1)Augusto DG, et al. Nature. 2023 Jul 19. [Epub ahead of print]2)One in five people who contract the COVID-19 virus don’t get sick. A gene variant may explain why / Science3)Gene Mutation May Explain Why Some Don’t Get Sick from COVID-19 / UC San Francisco

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