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アルナイラム社とVir社、COVID-19 治療薬候補(VIR-2703)を特定

 Vir Biotechnology社およびアルナイラム社は、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2ゲノムを標的とするRNAi治療薬研究の開発候補として、VIR-2703を選定したと発表した。両社は、近日中にFDAおよび他の規制当局と面会し、2020年末を目処にヒトにおける臨床試験を開始する見込みだとしている。 アルナイラム社は、SARS-CoV-2ゲノムの高度に保存された領域を標的とするRNAiを媒介するsiRNAを350種以上合成し、ウイルス複製を1/1000以下まで低減した有力なsiRNAを複数特定した。なかでも、VIR-2703は、SARS-CoV-2のウイルスモデルを使って感染性ビリオン(感染性を有するウイルス粒子)産生の抑制を測定する用量反応試験で、50%阻害濃度(EC50)が100ピコモル未満、EC95が1ナノモル未満であることを示した。さらに、VIR-2703は、4,300以上のSARS-CoV-2ゲノムのうち、99.9%以上に対して反応し、2003年のSARSアウトブレイクから発生したSARS-CoVゲノムに対しても反応すると予測されている。この結果を受け、両社は、VIR2703を開発候補薬に選定し、臨床試験に進めることとした。

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COPD患者の退院後呼吸リハ、早期開始で死亡リスク減/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院したメディケア受給者では、退院後3ヵ月以内の呼吸リハビリテーションの開始により、1年後の死亡リスクが低減することが、米国・マサチューセッツ大学のPeter K. Lindenauer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月12日号に掲載された。COPD増悪後の呼吸リハビリテーション(運動訓練、自己管理教育)が生存率を改善することはメタ解析で示唆されているが、この解析に含まれた試験は患者数が少なく、異質性が高いという。米国の現行ガイドラインでは、COPD患者に、退院後は呼吸リハビリテーションに参加するよう推奨している。90日以内と以降の開始を比較する開始コホート研究 本研究は、2014年に米国の4,446の急性期病院にCOPDで入院した出来高払い方式メディケア受給者の保険請求データを、後ろ向きに解析した開始コホート研究(inception cohort study)(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。最終フォローアップ日は2015年12月31日だった。 呼吸リハビリテーションを、初回退院後90日以内に開始した患者と、90日以降(91~365日)に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった患者を比較した。また、傾向スコアでマッチさせた患者の比較も行った。 主要アウトカムは、1年後の全死因死亡とした。探索的解析として、呼吸リハビリテーションの開始時期と死亡率との関連、および終了した呼吸リハビリテーションの回数と死亡率との関連の評価を行った。1年死亡率:7.3% vs.19.6% 4,446病院に入院したCOPD患者19万7,376例(平均年齢76.9歳、女性11万5,690例[58.6%])が解析の対象となった。このうち、2,721例(1.5%)が退院後90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、3,161例(1.6%)は91~365日に開始した。 退院から1年以内に3万8,302例(19.4%)が死亡した。このうち、7.3%が90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、19.6%は90日以降に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった。90日以内開始群は、90日以内非開始群に比べ、1年死亡リスクが有意に低かった(1年死亡率:7.3% vs.19.6%、絶対群間リスク差[ARD]:-6.7%、95%信頼区間[CI]:-7.9~-5.6、ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.57~0.69、p<0.001)。 90日生存例(1年死亡率:90日以内開始群6.2% vs.90日以内非開始群13.4%、ARD:-5.8%、95%CI:-6.9~-4.6、オッズ比[OR]:0.54、0.46~0.63)に限定した解析でも、生存に関して同様の効果が認められた。 また、在宅酸素療法の使用例(ARD:-5.7%、95%CI:-7.4~-3.5、OR:0.60、0.49~0.75、p<0.001)と非使用例(-6.8%、-8.0~-5.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)、併存疾患の負担が軽度(-7.6%、-8.6~-6.2、0.27、0.19~0.39、p<0.001)、中等度(-5.0%、-6.7~-2.8、0.57、0.43~0.75、p<0.001)、重度(-3.8%、-6.7~-0.5、0.76、0.59~0.97、p=0.03)の患者のいずれにおいても、90日以内開始群で死亡リスクが低かった。 傾向スコアでマッチさせた患者(両群2,710例ずつ)でも、90日以内開始群で死亡リスクが低かった(7.3% vs.14.1%、ARD:-6.8%、95%CI:-8.4~-5.2、HR:0.50、95%CI:0.42~0.59、p<0.001)。 呼吸リハビリテーションの開始時期別の比較では、90日以内非開始群に比べ、退院後30日以内に開始した患者(ARD:-4.6%、95%CI:-5.9~-3.2、HR:0.74、95%CI:0.67~0.82、p<0.001)、31~60日に開始した患者(-10.6%、-12.4~-8.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)および61~90日に開始した患者(-11.1%、-13.2~-8.4、0.40、0.30~0.54、p<0.001)のいずれも死亡リスクが低かった。 退院から90日までに受けた呼吸リハビリテーションの回数の中央値は9回(IQR:4~14)であった。回数が3回(1週間の推奨回数)増えるごとに、死亡リスクが有意に低下した(HR:0.91、95%CI:0.85~0.98、p=0.01)。 著者は、「これらの知見は、COPDで入院後の呼吸リハビリテーションに関する現行ガイドラインの推奨を支持するものだが、交絡が残存する可能性があり、さらなる検討を要する」としている。

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン、気管挿管・死亡リスク抑制せず/NEJM

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、ヒドロキシクロロキンが広く投与されているが、その使用を支持する頑健なエビデンスはなかったという。同国コロンビア大学のJoshua Geleris氏らは、ニューヨーク市の大規模医療センターでCOVID-19入院患者の調査を行い、本薬はこれらの患者において気管挿管や死亡のリスクを抑制しないと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年5月7日号に掲載された。ヒドロキシクロロキンは、マラリアやリウマチ性疾患の治療に広く使用されており、抗炎症作用と抗ウイルス作用を持つことから、COVID-19に有効な可能性が示唆されている。米国では、2020年3月30日、食品医薬品局(FDA)が緊急時使用許可(Emergency Use Authorization)を発出し、臨床試験に登録されていないCOVID-19患者への使用が認可された。ガイドラインでは、肺炎のエビデンスがある入院患者に本薬の投与が推奨されており、世界中の数千例の急性期COVID-19患者に使用されているという。米国の単施設のコホート研究 研究グループは、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキンの使用は、気管挿管および死亡のリスクを抑制するとの仮説を立て、これを検証する目的でコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 対象は、2020年3月7日~4月8日の期間に、ニューヨーク市のマンハッタン区北部に位置する急性期病院であるニューヨーク・プレスビテリアン病院(NYP)-コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)に入院し、鼻咽頭または口咽頭拭い液を検体として用いた検査でSARS-CoV-2陽性の成人患者であった。 救急診療部受診から24時間以内に、気管挿管、死亡、他の施設へ転送となった患者は除外された。フォローアップは4月25日まで継続した。ヒドロキシクロロキンは、1日目に負荷投与量600mgを2回投与後、400mgを1日1回、4日間投与するレジメンが推奨された。 主要エンドポイントは気管挿管および死亡の複合としtime-to-event解析を行った。傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量Coxモデルを使用して、ヒドロキシクロロキンの投与を受けた患者と非投与患者を比較した。有益性、有害性とも排除されない、推奨はすでに削除 1,376例が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値22.5日の時点で、346例(25.1%)に主要エンドポイントのイベントが発生した(挿管されずに死亡166例、挿管180例)。データのカットオフ時(4月25日)には、232例が死亡(66例は挿管後)し、1,025例が生存退院しており、119例は入院中(挿管なしは24例のみ)だった。 1,376例中811例(58.9%)にヒドロキシクロロキンが投与され(投与期間中央値5日)、565例(45.7%)には投与されなかった。投与群の45.8%は救急診療部受診後24時間以内に、85.9%は48時間以内に投与が開始された。 傾向スコアでマッチさせていない患者では、ヒドロキシクロロキン投与量は、年齢層や性別、人種/民族、BMI、保険の有無、喫煙状況、他の薬剤の使用状況の違いで異なっていた。また、ベースラインの重症度は、投与群が非投与群に比べて高く、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素濃度(FIO2)比中央値は投与群が223、非投与群は360であった。 傾向スコアでマッチさせた患者は、投与群が811例、非投与群は274例だった。 未補正の粗解析では、ヒドロキシクロロキン投与群は非投与群に比べ、主要エンドポイントのイベント発生率が高かった(32.3%[262/811例]vs.14.9%[84/565例]、ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.84~3.02)。 一方、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量解析では、ヒドロキシクロロキンとイベント発生率に有意な関連は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.82~1.32)。 著者は、「この観察研究の結果は、デザインと95%CI値を考慮すると、ヒドロキシクロロキン治療の有益性と有害性のいずれをも排除しないが、現時点では、有効性を検証する無作為化臨床試験以外では、その使用を支持しない」としている。なお、NYP-CUIMCでは、すでにガイダンスを改訂し、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキン治療の推奨は削除されたという。

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COVID-19と共存する診療の指針を示す動画公開/高血圧学会

 2020年初頭より長らく続いたCOVID-19の感染拡大と、それに伴う外出自粛や制限が相次いで緩和され、非常時から通常時へと戻る兆しが見え始めた。しかしながら、今後はCOVID-19を包含しながらの“新たな日常”となることは間違いない。そうしたCOVID-19を念頭に置いた高血圧診療をどう進めるべきかについて指針を示すべく、日本高血圧学会(理事長:伊藤 裕)はこのほど、各領域のスペシャリストによる解説動画コンテンツを作成1)。5月22日よりYouTubeの学会公式チャンネルで公開している。同学会では、これに先立って高血圧治療を受ける患者向けの動画コンテンツを公開しており、今回新たに追加された全10本はいずれも医師をはじめとする医療従事者向けの内容。 詳しい動画コンテンツのラインナップは以下のとおり。<パンデミックと高血圧診療>1.COVID-19到来と日本高血圧医療のNew Normal  解説:伊藤 裕氏(日本高血圧学会理事長、慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科教授)2.高血圧はCOVID-19の感染・重症化のリスク要因か?  解説:三浦 克之氏(滋賀医科大学公衆衛生学部門教授)3.降圧薬とCOVID-19:RAS阻害薬は是か非か?  解説:甲斐 久史氏(久留米大学医学部教授)4.COVID-19パンデミック下での減塩の重要性とその指導法  解説:日下 美穂氏(日下医院院長)<パンデミックと高血圧性臓器障害:メカニズムと診療のポイント>5.COVID-19と血栓症・脳卒中  解説:豊田 一則氏(国立循環器病研究センター副院長)6.COVID-19と心臓病  解説:大西 勝也氏(大西内科ハートクリニック院長)7.COVID-19と腎臓病:CKDと急性腎障害(AKI)  解説:向山 政志氏(熊本大学大学院生命科学研究部腎臓内科学教授)<パンデミック下における実地医家の役割>8.COVID-19と実地診療  解説:勝谷 友宏氏(勝谷医院院長、大阪大学大学院臨床遺伝子治療学招聘教授)9.New Normal時代に向けてのかかりつけ医の役割  解説:宮川 政昭氏(医療法人社団愛政会宮川内科小児科医院院長)10. COVID-19パンデミック下での医療対策:日本医師会の取り組み  解説:羽鳥 裕氏(日本医師会常任理事)

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医師目線と患者目線の確率は違う、新型コロナウイルスからの考察【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第23回

第23回 医師目線と患者目線の確率は違う、新型コロナウイルスからの考察この原稿を書いているのは、2020年5月初旬のゴールデンウィークです。新型コロナウイルス(COVID-19)対策として、緊急事態宣言がなされ、外出の自粛要請・施設の使用制限などの感染予防対策が行われています。これを遵守して、自宅でパソコンに向かって駄文を練っております。このコロナウイルスに感染しているかどうかを調べるPCR検査のあり方について議論が続いています。当初は、感染者との濃厚接触があり、発熱などの症状のある人に限定して PCR検査が行われてきました。もっと検査の対象をひろげ、検査数を増やすべきであるという議論です。PCR検査が陽性であれば間違いなく感染者で、検査が陰性であれば間違いなく感染者ではない、こうであれば理想的です。しかし、現実は異なります。本当は感染者なのにPCR検査が陰性になる場合や、検査結果が陽性でも実際には感染者ではない場合があります。この検査精度については、感度と特異度の2つの観点から評価されます。感度は感染者を陽性と判定できる確率で、特異度は非感染者を陰性と判定できる確率です。新型コロナウイルスへのPCR検査の感度は70%程度とされ、感染者の30%は検査で陰性と判定されることが問題です。テレビのワイドショーでは、識者と呼ばれる方々が賛成・反対の立場で熱く持論を展開しています。感度・特異度だけでなく検査前確率や陽性的中率などの統計的な専門用語を駆使して語る方もおられます。その意見は間違っている訳ではないのですが、正しくもないように思います。そもそも、確率や統計学的な論理を理解するには、一定の知的水準と数学的な素養が要求されます。理解できない人をバカにしている訳ではありません。収入も減少し、社会不安があり、何よりも先が見通せない状況においては、冷静な判断は難しいものです。政策や対応策を立案する部門では詳細な数値に基づいて考察すべきですが、実際に困難に直面している各個人に確率的なことを説明することの意味は難しいのです。これは、新型コロナウイルスにおいてだけではありません。ある患者さんに手術前の説明をする場面を考えてみます。「どのような手術でも100%安全という訳ではありません。100%安全と言い切ることはできないのです」このように説明します。「それはわかっています。どの程度の危険性があるのですか?」不安そうにたずねます。「そうですね。この手術で死亡する確率は0.1%ほどでしょうか」医師が答えます。患者さんと家族に表情に安堵が感じられます。なにより1,000人手術を受けても999人が生存するのです。どうみても上手くいく手術に思われます。ところが、その患者さんが手術合併症で命を落としたとします。1,000人に1人の死亡例に該当してしまったのです。その亡くなった本人にとっては、1,000分の999は生きていて、1,000分の1だけ死んでいるのではありません。0.1%の出来事ではなく、死亡したという事実は100%のできごとです。確率的な考察は、サンプル数や施行数が多い場合に意味を持ちます。人生において何千回も手術を行う医療提供者には死亡率0.1%は意味がありますが、手術を人生で1回しか受けない患者サイドでの死亡率0.1%の解釈は難しいです。「サイコロで6が出る確率は、出るか出ないかだから1/2だ」と言う人に、数学的にそれが1/6であることの説明・証明は可能でしょう。しかし、サイコロを何回も、何十回も、何百回もふってこそ1/6に近づいていくのです。1回しかサイコロをふるチャンスがなければ、当人とすれば、出るか出ないかの二者択一すなわち1/2の確率ともいえます。新型コロナウイルス騒動の収束と終息を願うばかりです。収束は、「収まる」「束ねる」ということから、状況が一定の状態に落ち着くとことを意味し、「終息」は完全に終わるという意味です。新型肺炎の状況が落ち着いてくるのが収束、完全に制圧された場合が終息となります。収束してから終息です。言葉遊びをしている場合ではなく、とにかくシュウソクしてほしいです。

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第7回 アビガン中間解析の怪、試験終了後に有効性は示せるか

Webニュースを見て「ああ、またか」とため息が出た。5月20日朝、共同通信が新型インフルエンザ治療薬アビガン(一般名・ファビピラビル)に関して、藤田医科大学で進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する臨床研究の中間解析で有効性が示されなかったという記事を公開した件だ。同社はメディア各社にニュースを配信する通信社でもあるため、これを機に他の報道機関各社もこのニュースを配信し始めた。藤田医科大学側は同日夕、反論の記者会見を開催し、あくまで中間解析は安全性の確認が主たる目的であり、現時点では有効性確認は行っていないとの見解を表明した。共同通信、藤田医科大、どっちが正しい?そもそもアビガンに関しては、冒頭の共同通信の記事でも言及しているように、安倍首相自らが5月4日の記者会見で有効性が確認されれば今月中の承認を目指す意向を表明しているほど政治側が迅速承認に前のめりである。首相が特定の薬剤名を口にすれば、当然メディアはそれを報じ、ちまたではその断片的なニュースが勝手に増幅して期待感が高まる。断片を増幅させる点では、今回一気に言葉だけは有名になってしまったPCR検査のようだが、PCR検査はあくまでAを増幅してもAだが、ニュースの場合はしばしばAが増幅してまったく違うBになってしまうのが厄介である。アビガンに関しては、まさにAがBになってしまった状態で、医療従事者の中には過度な期待が高まっていることに対して警戒感・嫌悪感を持っている人も少なくない。今回、共同通信にこのような記事が出たのも、そうした感情を持つ関係者によるリークの可能性がある。結局のところ藤田医科大学が中間解析は「試験継続の是非を検討するため主に安全性に重点を置いた」との主張はおおむねそうであろうが、参考値として算出したウイルス量低減効果は共同通信が報じたように現時点で有意差はなかったのが本当のところだろうと推察する。藤田医科大アビガン臨床研究に見える疑問点だが、そもそもこの藤田医科大学による臨床研究が真の意味でアビガンの有効性を示せる試験になるかそのものに私は大いに疑問がある。この臨床研究は無症状・軽症のCOVID-19患者でのアビガンのウイルス量低減効果の検討を目的とした多施設非盲検無作為化試験である。対象は86例で、試験開始日から10日目までアビガンを服用する群と試験開始6日目~15日目までアビガンを服用する群との比較試験である。今回報道されたのは、うち40例での中間報告らしい。主要評価項目であるウイルス消失率は、両群とも試験開始6日目に測定する。投与開始時期に差を設けることで事実上治療開始から5日までをアビガンvs.プラセボという立て付けにしているのだろう。これは致死性のあるウイルス感染症に対するプラセボ使用に倫理面から追求を受けることへのエクスキューズと見るのが順当だろう。さてここで私が考える疑問点を順次示したい。ご存じのようにCOVID-19患者の8割を占める無症候・軽症者は、大掛かりな医療的介入がなくとも回復することが知られている。だとするならば、プラセボ投与による事実上の無治療(厳格には対症療法のみ)も倫理的には許容されるはずである。この試験デザインで自然回復と薬効の違いを明確かつ厳格に見ることができるかはやや疑問である。また、無症候・軽症患者が対象となると、定量指標は体液・血液中のウイルス量の変動にならざるを得ないだろう。しかし、一部のウイルス感染症ではウイルス量が減っても、感染によって発生した炎症がその後、ウイルス量と無関係に独り歩きして症状の治癒まで時間を要することもある。COVID-19でも感染によって引き起こされた心血管炎が重症化につながるとの仮説もあり、ウイルス量の低減効果が必ずしもその後の良好な転帰につながらない可能性がある。一方、少なくとも報道を見る限り、共同通信が記事化した中間解析結果というのは、日本経済新聞の報道によると、第三者機関の勧告を意味しているらしい。結論から言えば、藤田医科大学が主張するように安全性には問題がないと第三者機関は結論付けたとは言えるだろう。ただ、第三者機関が有効性のデータをまったく目にしていないとは思えず、もし最初の5日間で両群に目を見張るウイルス量低減効果の差があれば、今後の臨床研究参加患者や他の臨床研究試験参加者の不利益を考え、試験の中止を勧告するはずである。「対象症例を増やせば、統計学的有意差が出るのでは?」という意見もあるだろう。これに対しては前回のレムデシビルの件でも触れたように、統計学的検討では症例数を増やせば微小な差も有意差として検出できる特性があることを考えれば、そのような意見、したがって出る統計学的有意差とは「その程度の小さな差」に過ぎないことになる。さらに無症候・軽症のCOVID-19患者が特段の医療的介入なしで回復すると言われている中、ご存じのように催奇形性の危険性を指摘され、かつ高価なアビガンを投与することはコスト・パフォーマンス、リスク・ベネフィットの点からも疑問符が付く。本来、COVID-19でのアビガンの効果を検証するならば、重症患者を対象に主要評価項目はハードエンドポイントである死亡率にすべきだろう。それで明確な効果が示せる薬剤ならば、COVID-19におびえる国民の期待にも沿えるというもの。やや辛い言い方になるが、そもそもこの試験のデザインそのものが、フルマラソンが怖いのでハーフマラソンにした的な腰が引けたものに映る。いずれにせよ今現在公開されているデータでアビガンがCOVID-19に有効といえるようなものは、ほとんどないのが実情である。衣類の防虫剤CMの「タンスにゴン」の合言葉のごとく「新型コロナにアビガン」という趣旨を声高に叫んでいる政治家とテレビに登場する魑魅魍魎的なコメンテーターの一部にはお黙りいただきたい。適切な情報を発信するための一里塚は、科学的に厳格なデザインの臨床研究結果が明らかになることである。

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新型コロナPCR検査、偽陰性が多い期間は?

 新型コロナウイルスのPCR検査の感度や特異度は十分に特定されておらず、偽陰性となる可能性が最も高い期間はよくわかっていない。今回、米国ジョンズ・ホプキンズ大学のLauren M. Kucirka氏らが7つの研究のプール解析を行ったところ、偽陰性率は、発症後3日目(感染後8日目)に最も低くなることがわかった。著者らは、偽陰性の可能性を最小限にするために、検査は発症から3日間待って実施すべきとしている。また、臨床的にCOVID-19が疑われる場合は、PCR陰性のみで除外診断すべきではなく、臨床的および疫学的状況を慎重に検討する必要があると述べている。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2020年5月13日号に掲載。PCR検査の偽陰性率は発症から3日目が20%と最低 本研究は、鼻咽頭または咽頭スワブを用いたPCR検査のデータを有する7つの研究のプール解析(入院または外来患者計1,330例)で、感染(曝露)後もしくは発症(症状発現)後の偽陰性率について、階層ベイズモデリングを用いて算出した。 PCR検査の偽陰性率について算出した主な結果は以下のとおり。・PCR検査の偽陰性率は感染1日目が100%(95%CI:100~100%)であり、4日目が67%(95%CI:27~94%)と5日目(COVID-19の典型的な発症日)まで減少した。 ・発症日(感染5日目)の偽陰性率は38%(95%CI:18〜65%)であった。・感染8日目(発症から3日目)の偽陰性率は20%(95%CI:12~30%)と最低となり、その後、9日目(21%、95%CI:13~31%)から再び増加し、21日目に66%(95%CI:54〜77%)となった。 なお、本研究の限界として、プール解析した基の研究のデザインの不均一性により、推定が不正確であることを挙げている。

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COVID-19、ヒドロキシクロロキンで院内死亡低下せず/JAMA

 ニューヨークの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン、抗菌薬アジスロマイシンまたはこれらの両薬を治療に用いた患者は、いずれも使用していない患者と比較して、院内死亡率に有意差はなかった。米国・ニューヨーク州立大学のEli S. Rosenberg氏らが、COVID-19入院患者の後ろ向き多施設共同コホート研究の結果を報告した。ヒドロキシクロロキンの単独またはアジスロマイシンとの併用は、COVID-19に対する治療法の候補と考えられているが、有効性や安全性に関するデータは限定的であった。JAMA誌オンライン版2020年5月11日号掲載の報告。無作為抽出したCOVID-19入院患者約1,400例を後ろ向きに解析 研究グループは、ニューヨーク都市圏の25施設に2020年3月15日~28日の間で24時間以上入院したCOVID-19患者7,914例(同期間でのニューヨーク都市圏におけるCOVID-19全入院患者の88.2%を占める)から、施設単位で無作為に抽出した1,438例について、治療薬、既往症、入院時臨床所見、転帰および有害事象に関するデータを解析した。最終追跡調査は2020年4月24日。 解析対象症例を入院期間中の治療に基づいて、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの両方を使用(併用群)、ヒドロキシクロロキンのみ、アジスロマイシンのみ、どちらも非投与の4群に分類し、院内死亡率(主要評価項目)、心停止および不整脈/QT延長の心電図異常所見など(副次評価項目)を評価した。ヒドロキシクロロキン服用群、非服用群と院内死亡率に有意差なし 解析対象の1,438例(男性858例[59.7%]、年齢中央値63歳)において、ヒドロキシクロロキン単独群(271例)、アジスロマイシン単独群(211例)および併用群(735例)は、非投与群よりも、糖尿病、呼吸数>22回/分、胸部画像の異常所見、酸素飽和度90%未満、AST>40U/Lの患者が多い傾向にあった。 院内死亡率は、全体で20.3%(95%信頼区間[CI]:18.2~22.4)であり、治療別では併用群25.7%(22.3~28.9)、ヒドロキシクロロキン単独群19.9%(15.2~24.7)、アジスロマイシン単独群10.0%(5.9~14.0)、非投与群12.7%(8.3~17.1)であった。 調整Cox比例ハザードモデルでは、非投与群と比較し、併用群(HR:1.35、95%CI:0.76~2.40)、ヒドロキシクロロキン単独群(1.08、0.63~1.85)およびアジスロマイシン単独群(0.56、0.26~1.21)で、院内死亡率に有意差は確認されなかった。 ロジスティック回帰モデルでは、非投与群と比較し、併用群(補正後オッズ比:2.13、95%CI:1.12~4.05)で心停止のリスクが有意に高かったが、ヒドロキシクロロキン単独群(1.91、0.96~3.81)とアジスロマイシン単独群(0.64、0.27~1.56)では有意差は確認されなかった。また、調整ロジスティック回帰モデルでは、心電図異常所見に相対的なリスクの差は認められなかった。

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コロナを巡る4つのお話【Dr. 中島の 新・徒然草】(324)

三百二十四の段 コロナを巡る4つのお話東京も大阪も新型コロナによる新たな感染者はどんどん減ってきました。緊急事態宣言が続いている8都道府県の解除も噂されています。これですんなり収まったら、それは出来すぎ! まだまだ油断大敵と私は思っています。さて、コロナを巡るお話をいくつか紹介します。その1:とある外科系診療科の先生。外科「中島先生、急がない手術は先延ばしにしなくちゃいけないんですよね」中島「確かに、病院からはそのように言われていますね」外科「ウチなんか、全部の手術が不要不急なんですけど」中島「不急かもしれんけど、不要ってことはないでしょう!」外科「そう言われれば、そんな気もします」自らを「不要不急」と断言するとは、なかなかの大物です。でも本人は大真面目でした。その2:別の外科系診療科。「手術が少ない時は、汚い医局を何とかしろ!」若手たちが偉い先生に説教をくらったそうです。先日、数人のレジデントが掃除をしているところに出くわしました。なぜか妙にサマになっています。よく見れば、揃ってスクラブと帽子とマスク。手術室でのいつものスタイルじゃないですか。道理で似合うはずだ!その3:保健所への電話もっとPCR検査をするべきだ、とメディアは大合唱!検査件数を絞りすぎていると保健所が批判されています。しかし、私がPCRを依頼して断られたことは一度もありません。確かに、4月頃は保健所の電話がつながりにくかったのは事実です。電話がつながってからも、担当者と話をするまで時間がかかりました。でも、徐々に保健所のシステムも改善されたようです。最近は1発で電話がつながり、すぐに担当者と話しをすることができます。人員が増えたのかもしれません。慣れてきたのか、電話でのやり取りも以前よりスムーズになりました。地域によってかなり対応が違うのだとは思いますが。その4:外食しなくなった外食せず、もっぱら自宅で食べております。女房だけでなく私も作ります。本やネットを参考に、パスタとか丼とか簡単なものばかりですけど。作って食べた後で、レシピを記録しながら反省する毎日。「塩はもっと少な目に」とか「赤ワインを切らせていた」とか。あと、毎回食べる前にスマホで写真を撮っています。美しく撮るためのコツは、テーブルクロスを敷くことかな。料理も写真も素人ですけど、やってみると面白いですね。ということで最後に1句自粛して 掃除に料理 新鮮だ

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COVID-19診療の手引きの改訂版を公開/厚生労働省

 5月18日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 2 版」を事務連絡として発出した。 同手引きの第1版は、3月17日に発出されているが、第2版となる改訂版では、国内外の最新知見を更新し、ページ数も約2倍となるなど、大幅に改訂されている。約3割の患者で嗅覚異常、味覚異常がある 追加された項目として「臨床像」では、「初期症状はインフルエンザや感冒に似ており、この時期にこれらとCOVID-19を区別することは困難である」とし、「嗅覚障害・味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきた。イタリアからの報告によると約3割の患者で嗅覚異常または味覚異常があり、特に若年者、女性に多い」など追加の症状が述べられている。 「合併症」では、「若年患者であっても脳梗塞を起こした事例が報告されており、血栓症を合併する可能性が指摘されている。また、軽症患者として経過観察中に突然死を起こすことがあり、これも血栓症との関連が示唆される。小児では、川崎病様の症状を呈する事例もあることが欧米から報告されている」と血栓に関する注意も追加された。 「重症化マーカー」では、(1)D ダイマーの上昇、(2)CRP の上昇、(3)LDH の上昇、(4)フェリチンの上昇、(5)リンパ球の低下、(6)クレアチニンの上昇などが挙げられるが、「全体的な臨床像を重視して、臨床判断の一部として活用する必要がある」としている。 「薬物療法」では、「日本国内で入手できる適応薬」としてRNA合成酵素阻害薬 レムデシビル(2020 年5 月7日に特定薬事承認)を示すとともに、「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」として「RNA合成酵素阻害薬 ファビピラビル」「吸入ステロイド薬 シクレソニド」「蛋白質分解酵素阻害剤 ナファモスタット」「ヒト化抗IL-6 受容体モノクローナル抗体 トシリズマブ」「同 サリルマブ」を紹介している。目次 第2版1 病原体・臨床像伝播様式/臨床像/重症化マーカー/画像所見2 症例定義・診断・届出症例定義/病原体診断/抗原検査/抗体検査/届出3 重症度分類とマネジメント重症度分類/軽症/中等症/重症4 薬物療法5 院内感染対策個人防護具/換気/環境整備/廃棄物/患者寝具類の洗濯/食器の取り扱い/死後のケア/職員の健康管理/非常事態におけるN95マスクの例外的取扱い/非常事態におけるサージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグルおよびフェイスシールドの例外的取扱い6 退院・生活指導退院等基準/生活指導引用・参考文献 診療の手引き検討委員会・作成班は「はじめに」で、「再流行のリスクもあり、予断を許しません。本手引きが広く医療現場で参考にされ、患者の予後改善と流行の制圧の一助となることを期待します」と活用を呼び掛けている。

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COVID-19治療薬「拙速な特例的承認」に懸念、日医有識者会議が緊急提言

 日本医師会COVID-19有識者会議は5月18日、「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」と題し、有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を、治療薬として承認すべきでないとする旨の声明を発表した1)。 声明では、特別承認制度により5月7日付で国内初のCOVID-19治療薬となったレムデシビル(商品名:ベクルリー)の承認過程に言及。米国立衛生研究所アレルギー感染症研究所(NIH/NIAID)が主導し、日本からも登録参加した国際共同臨床試験(ACTT1試験)において、「周到な研究デザインのもとにレムデシビルの効果を証明」しており、「高いエビデンス・レベルでCOVID-19に対する有効性が確認された初めての薬剤」であると強調している。 一方で、治療薬候補として現在複数の薬剤が検討されているが、「有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない」と指摘。「COVID-19のように、重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要」と提言している。 これに加え、著名人が既存薬の服用によりCOVID-19の症状が改善したことを公表したり、“有効”とされる既存薬の使用を巡って扇動的に報じたりするマスコミの姿勢にも疑問を呈し、「エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的な承認を行うことなく、十分な科学的エビデンスが得られるまで、臨床試験や適用外使用の枠組みで安全性に留意した投与を継続すべき」との見解を示している。 COVID-19を巡っては、国内外で新規治療薬の研究・開発が進められる一方、国内では、新型・再興型インフルエンザ治療薬として2014年に承認されたファビピラビル(商品名:アビガン)を転用、COVID-19治療薬として月内にも早期承認を目指すことを政府が明言している。また、厚生労働省は5月12日付で、COVID-19に関する医薬品の承認審査の際、公的な研究事業により実施される研究の成果において医薬品等の一定の有効性および安全性が確認されている場合には、治験等の臨床試験成績の提出を承認後でも可とする旨の通知を出している2)。

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COVID-19軽~中等症、早期の3剤併用療法が有効/Lancet

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者に対し、早期に開始したインターフェロン(INF)-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用療法は、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法に比べ、SARS-CoV-2ウイルス陰性化までの期間および入院期間を有意に短縮し、安全性にも問題がないことが確認された。香港・Queen Mary HospitalのIvan Fan-Ngai Hung氏らが、127例の入院患者を対象に行った第II相の多施設共同前向き非盲検無作為化試験の結果を報告した。COVID-19パンデミックを制圧するため、効果的な抗ウイルス薬治療を見いだすことに1つの重点が置かれている。今回の結果について著者は、「さらなる臨床研究で、INF-β-1bをバックボーンとする2剤併用抗ウイルス薬療法の検討も行う必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年5月8日号掲載の報告。鼻咽頭スワブによるRT-PCR検査で陰性化までの期間を比較 研究グループは2020年2月10日~3月20日に、香港の6病院を通じて、ウイルス検査でCOVID-19が確認され入院した18歳以上の患者127例を対象に試験を行った。INF-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用抗ウイルス薬療法と、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法を比較し、その有効性と安全性を評価した。被験者の症状の程度は、軽症~中等症だった。 被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはロピナビル400mg・リトナビル100mg、リバビリン400mgをいずれも12時間ごと14日間投与し、併せてINF-β-1b 800万IUを隔日3回投与した(3剤併用群、86例)。もう一方の群には、ロピナビル400mg・リトナビル100mgを12時間ごとに14日間投与した(対照群、41例)。 主要エンドポイントは、鼻咽頭スワブによる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査の結果でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間とし、ITT解析で評価した。陰性化に関する3剤併用群のハザード比は4.37 発症から治療開始までの期間中央値は、5日(IQR:3~7)だった。 鼻咽頭スワブ検査でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間中央値は、対照群12日(IQR:8~15)に対し、3剤併用群は7日(同:5~11)と有意に短かった(ハザード比:4.37、95%信頼区間:1.86~10.24、p=0.0010)。 有害事象は吐き気や下痢などが認められたが、両群間で有意差はなかった。対照群の1例が、肝炎のため治療を中止した。試験期間中の死亡は報告されなかった。

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SARS-CoV-2 は便中に長く排泄される(解説:浦島充佳氏)-1230

 対象は2020年1月から3月の間、中国・浙江省にて痰ないし咽頭深くの粘液より採取した検体にてPCRを用いて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断を受け入院した連続症例96例(軽症:22例、重症:74例)である。SARS-Cov-2ウイルスRNA量を、呼吸器、便、血清、尿検体のウイルス量のCt値で定量解析している。 以下がポイントである。1. 検出場所  痰・唾液中検出割合:100% 研究対象定義  便中検出割合:59%  血清中検出割合:41%  尿中検出割合:1例のみ2. 検出期間  痰・唾液中:18日(13~29日)  便中検出割合:22日(17~31日)  血清中検出割合:16日(11~21日)3. 重症度  重症:21日(14~30日)発症後2~3週がピーク  軽症:14日(10~21日)発症後2週がピーク4. 他のウイルス量増多の因子  60歳以上  男性 SARS-CoV-2ウイルスが便中に最も長く検出されたことは注目に値する。呼吸器から検出されるウイルスは会話や咳などを介した飛沫で感染するが、便中では接触感染が考えられる。重症例では発症後2~3週間がウイルス排泄のピークとなることから、院内感染や高齢者施設では、排泄物の扱いやトイレの清掃には細心の注意を払うべきであろう。 中国・武漢の医師らが新型コロナウイルス肺炎で入院した138例についてまとめている1)。138例中57例(41.3%)が院内感染と思われた。17例(12.3%)は新型コロナウイルス肺炎以外の理由で入院していた患者、40例(29.0%)は医療スタッフであった。外科病棟に入院していた腹部症状を認めた1人の患者から10人以上に感染させたと思われる。患者間でも感染が広がった。少なくとも4人の患者が同じ病棟で感染を広げている。4人すべての患者は非定型の腹部症状を示していた。138例中、下痢は14例(10%)に認められる。院内で感染した患者は重症化しやすい傾向にあった。ICUに入院する重症化リスクは院外感染で入院した患者の2.4倍である。 また血清中でも想像以上の頻度でウイルスが検知されていた。無症状者では理論上ウイルス血症になりにくいとは思われるが、軽症でも25%にみられていることから、COVID-19流行地での献血は要注意かもしれない。1)Wang D, et al. JAMA. 2020;323:1061-1069.

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第7回 リモート出演で気になったタレントの“ナメクジ腫れ”

こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。5月14日、47都道府県のうち39県で新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が解除されました。残る宣言の対象区域は北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫の8都道府県ですが、政府は5月21日を目処に解除の可否を改めて判断するとのことです。そんな自粛解除の流れの中、最近気になったのが、テレビのバラエティ番組に出ている女性タレントの顔です。タレントが自宅からリモート出演するバラエティ番組が増えていますが、ある若手女性タレントの目の下、いわゆる「下眼瞼」と呼ばれる部分が、ナメクジが付いたように腫れているのです。気になり出すとそこばかり目が行くもので、ここ2週間ばかりの間にもう1人、“ナメクジ腫れ”が生じている女性タレントを見つけました。“ナメクジ腫れ”の正体はいったい何でしょう? 知人に聞いたところ、「うかつなことは言えないけれど、ヒアルロン酸注射か二重(ふたえ)手術の痕では」との見立てでした。つまり、彼女たちはつい最近、美容整形の手術を受けたのではないか、というわけです。「不要の医療ではないが、不急の医療」私自身は美容整形の現場を取材したことはほとんどないので、「タレントも仕事が暇になったので、美容整形を受けに行ったのかな」と思っていただけなのですが、先週、あるニュースを読んでコロナの影響はこんなところにまで、と驚きました。それは共同通信が配信し、日本経済新聞(5月12日)や地方紙に掲載された「美容整形『多くは不急、今は控えて』」というニュースです。そのニュースによれば、記者が複数の美容関係者に取材したところ、新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛が続く中、美容整形を申し込む人が増えている、とのこと。記事は、「在宅勤務や休校、マスク着用で、手術後の顔の腫れや容姿の急変を他人に知られずに済むためではないか」と分析、「大学などが休みになり始める1月後半から予約が増えるのは例年通りだが、今年はとくに予約申し込みが多い」とのことでした。記事では、ある美容外科のケースも紹介、医療資材の不足から、消毒液の入手が困難な時期もあり、施術で通常10枚ほど用意するガーゼも2~5枚に制限、半分に切って使ったこともあった、としています。実際、外出自粛が続いた結果、今年の春の美容整形人気は本当のようです。日本美容外科学会はホームページで、一般の人に対して「美容医療をお受けになろうとお考えの方へ  新型コロナウィルス(COVID-19)感染予防に関するお願い」を掲示、「美容医療は不要の医療ではありませんが、多くの方にとって不急の医療と考えます」として「今お考えの美容医療は感染が収束するまでお待ちいただきたい」と訴えています。学会が「不急の医療」と言ってしまっている点が、なかなか興味深いです。一方、同学会は会員の医療機関にも、「美容外科診療の対応について」として、「待機可能な侵襲的美容外科治療を希望する患者に対しては、事態が収束に向かうまでは、実施内容の低侵襲化、あるいは実施の延期や中止を検討する」「新型コロナウィルス感染患者の治療に必要な医療資源(医療物資、輸液、抗生剤、ベンチレーター、医療スタッフ等)を感染症指定医療機関等へ供給することを最優先に考え、使用を最小限にすること」の2点を提言しています。国難と呼ばれる事態に不急の自由診療美容整形のプチブームに、私がとやかく言うことはありません。ただ、一つ気になったのは、美容整形外科の医師たちは、新型コロナウイルス感染症で医療リソース(モノもヒトも)が全国的に払底する時期にどう動いていたか、ということです。急性期病院勤務の医師は病院で新型コロナウイルスと戦い、都道府県医師会・郡市区医師会の医師は行政検査の委託を受け、PCR検査に携わるなどしています。たとえば、東京都医師会はPCR検査の体制を強化しようと、かかりつけ医の紹介で検査を受けられる「PCR検査センター」の設置を進めています。美容整形外科は自由診療がほとんどですから、地域の医師会に加入している医師も少ないでしょう。そうなると、ほとんどの美容整形外科医は、新型コロナウイルス感染症の診断・治療とは何の接点もないまま、自らの日常診療を続けていると思われます。先の日本美容外科学会の会員への呼びかけも「提言」となっており、会員に何らかのアクションを要請するものでもないからです。日本は自由標榜制なので、医師が自分の専門に美容整形外科を選ぶことは何の問題もありません。ただし、医師の教育・養成には相当の税金が投入されていることを考えると、“国難”と呼ばれる事態において、不急の自由診療だけに注力する医師の姿勢には、いささか疑問を覚えます。もっとも、新型コロナウイルス感染症の診断数がピークの頃、外来診療を止めてしまっていた、うちの近所の診療所(何科まではここでは書きません)も同類かもしれませんが…。

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COVID-19の流行による性生活の変化

 トルコ・Esenler Maternity and Children's HospitalのBahar Yuksel氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行がトルコ人女性の性行動にどのように影響するのかを評価するため、COVID-19流行前に行われた研究データと流行中のデータを用いて観察研究を行った。その結果、性的欲求と性交頻度はCOVID-19流行中に大幅に増加したが、性生活の質は大幅に低下したことが明らかになった。さらに、COVID-19の流行は妊娠に対する欲求の減少、女性の避妊低下、および月経不順の増加に関連することが示された。International Journal of Gynecology & Obstetrics誌オンライン版5月11日号掲載の報告。 2020年5月13日時点、トルコの感染者数は14万1,475人、死者数は3,894人と感染者は世界で9番目に多い。 研究者らは性交の頻度、妊娠の欲求、女性の性機能指数(FSFI:Female Sexual Function Index)、避妊法、月経不順について、COVID-19流行中と流行6〜12ヵ月前とを比較した。 主な結果は以下のとおり。・性交の平均頻度について、流行中と流行前で比較したところ、流行中に大幅に増加した(2.4 vs.1.9、p=0.001)。・流行前は19人(32.7%)が妊娠を望んでいたが、流行中は3人(5.1%)に減少した(p=0.001)。・一方、流行前と比べ、流行中の避妊具などの使用は有意に減少した(24 vs.10、p=0.004)。・月経不順は流行前よりも流行中で多くみられた(27.6% vs.12.1%、p=0.008)。・FSFIを流行前と流行中とで比較したところ、 流行前のほうが有意に高かった(20.52 vs.17.56、p=0.001)。

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第8回 話して生じる飛沫は空中を8分間漂い、新たなCOVID-19感染の火種となりうる

はしか(麻疹)、インフルエンザウィルス、結核菌等の呼吸器ウイルスは咳やくしゃみで放たれた飛沫を介して感染を広げます。飛沫のもとである口腔液に大量に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が存在することが発症患者1)のみならず無症状の患者2)でも確認されており、おそらくSARS-CoV-2も飛沫に収まって浮遊できるでしょう。普通に話しても飛沫が生じることは、咳やくしゃみによる飛沫ほどは広く知られておらず、話したときに生じてしばらく浮遊しうる直径30μm未満の飛沫の意義はこれまで蚊帳の外に置かれていました。しかし米国NIH支部の国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)の研究者らの試験結果によると、その認識は改める必要があるようです。先週水曜日にPNAS誌に掲載されたその報告によると、話したときに生じる飛沫は空中に8分間は浮遊し、新たなSARS-CoV-2感染の火種になるおそれがあるといいます3,4)。研究者は被験者に“stay healthy(健康でいよう)”というフレーズを25秒間繰り返し言ってもらい、そのときに発生する飛沫の浮遊(30cm落下)時間半減期を測定しました。その時間が8分間であり、話して生じた飛沫の直径はおよそ4 μm、口を出る前の乾燥前の粒子の直径は12μm以上と推定されました。この結果によると、1分間大声で話せば、ウイルスを含有する少なくとも1,000粒の飛沫が8分を超えて空中に留まり、その量はそれらを吸い込んだ誰かにCOVID-19を誘発しうるレベルだといいます。今回の研究を実施した研究チームは、話しているときの飛沫を撮影した結果を先月4月中旬にNEJM誌に報告しており5)、その試験では、布マスクをして話せば前方への飛沫の発散を抑えられることが示されています。アメリカ疾病管理センター(CDC)も推奨するマスク着用が、SARS-CoV-2の広がりを遅らせうる大事な役割を担うことを、前回のその報告と今回のPNAS報告は示していると、NIDDK広報担当者は米国の新聞USA TODAY紙に話しています6)。マスクの効果に関するこれまでの試験を集めて検討したPNAS誌投稿査読前報告7,8)の著者の見解はさらに揺るぎなく、公共の場でのマスク着用は、皆が守ればSARS-CoV-2の広まりを確実に防ぐ(Public mask wearing is most effective at stopping spread of the virus when compliance is high)と結論しています。参考1)Chan JF,et al. J Clin Microbiol. 2020 Apr 23;58.2)Wolfel R,et al. Nature. 2020 Apr 1. [Epub ahead of print]3)Droplets from Speech Can Float in Air for Eight Minutes: Study / TheScientist4)Stadnytskyi V,et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2020 May 13. [Epub ahead of print]5)Anfinrud P,et al. N Engl J Med. 2020 Apr 15. [Epub ahead of print]6)Simply talking in confined spaces may be enough to spread the coronavirus, researchers say / USAToday7)If 80% of Americans Wore Masks, COVID-19 Infections Would Plummet, New Study Says / VanityFair8)Face Masks Against COVID-19: An Evidence Review. Preprints. Version 2 : Received: 12 May 2020

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コロナウイルス感染と血栓症の関係(解説:後藤信哉氏)-1229

オリジナルニュース【NEJM】Lupus Anticoagulant and Abnormal Coagulation Tests in Patients with Covid-19 本稿執筆時点で日本では大きく問題とされていないが、中国、米国、欧州ではコロナウイルス感染と血栓イベントの深い関係が注目されている。血栓イベント増加の主要原因として、コロナウイルスの血管内皮細胞への浸潤などが想定されているがメカニズムの詳細は未知である。確かに、本稿の著者に指摘されてみればa-PTTは延長していることが多い。PT、a-PTTが延長してD-dimerの高い症例が多いというのが筆者の認識であるが、ICUに入院する時点にてヘパリンを投与されている症例が多いのでヘパリンの影響かと思っていた。 本研究では血液凝固関連因子を詳細に時系列にて調べている。全例にて同レベルの詳細な検討がなされているわけではない。平時であればNEJM誌に掲載される論文ではない。しかし、コロナウイルスは詳細未知のウイルスである。本論文にて示されたLupus anticoagulant陽性例が多いことは、コロナウイルス感染における血栓性亢進の原因として魅力的な仮説である。 a-PTTが延長しているからといって抗凝固薬を躊躇すべきでないとの著者の主張は現時点では正しいように思える。コロナウイルスと免疫調節の関係などが今後の研究のテーマとなると想定される。

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新型コロナ陽性率とBCG接種歴の関係は?/JAMA

 一時期、BCGワクチン接種(以下、BCG接種)をしている人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりにくい、というニュースが世界中を賑わした。ドイツやアメリカではBCG接種によるCOVID-19予防の有用性を検証するために臨床試験も始まっており、動向が気になるところである。このような状況に先駆け、今回、イスラエル・テルアビブ大学のUri Hamiel氏らは「小児期のBCG接種が成人期のCOVID-19に対して保護効果があるという考えを支持しない」という研究結果を発表。本研究で小児期のBCG接種群と非接種群での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性の結果割合が類似していたことを明らかにした。ただし、重症者の症例数が少ないため、BCG接種状況と疾患重症度との関連については結論付けられないとしている。JAMA誌オンライン版5月13日号のリサーチレターに報告した。 イスラエルでは1955~1982年の間、国家政策として新生児に対する BCG接種を行い、接種率は90%以上だった。しかし、1982年以降のBCG接種対象者は結核流行地からの移住者に限定されていた。 本研究は2020年3月1日~4月5日の期間、COVID-19症状(咳嗽、呼吸苦、発熱)を有する全症例を対象にRT-PCR法を実施、検査陽性率を1979〜1981年生まれ(39〜41歳)と1983~1985年生まれ(35〜37歳)で比較検討した大規模な人口ベースコホート。本研究の限界はイスラエルで出生しておらずワクチン接種状況が不明な人口が含まれたことだった。 主な結果は以下のとおり。・検査結果7万2,060件のうち、1979~1981年に生まれの結果は3,064件(出生コホート:1.02%、男性:49.2%、平均年齢40歳)、BCG非接種である1983~1985年生まれの結果は2,869件であった(同:0.96%、男性:50.8%、平均年齢35歳)。・SARS-CoV-2陽性となった割合について、BCG接種群とBCG非接種群で統計的有意差はなかった(361例[11.7%] vs. 299例[10.4%]、接種群との差1.3%、95%信頼区間[CI]:-0.3~2.9%、p=0.09)。・また、10万人あたりの検査陽性の割合にも統計的有意差はなかった(BCG接種群121 vs.BCG非接種群100、各群差:21、95%CI:-10〜50、p=0.15) 。・各群において重症疾患(機械的換気またはICU入室)は1例いたものの、死亡は報告されなかった。

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看護施設のCOVID-19の感染拡大を阻止するポイント/NEJM

 高度看護施設内では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症が急速に拡大する可能性があるという。米国・疾病管理予防センター(CDC)COVID-19緊急対策部のMelissa M. Arons氏らは、2020年2月下旬にCOVID-19の集団発生を認めた同国ワシントン州キング郡の高度看護施設でSARS-CoV-2の伝播状況を調査し、入所者の感染の同定における、症状に基づくスクリーニングの妥当性を評価した。その結果、施設内でのSARS-CoV-2の迅速かつ広範囲の伝播が実証されるとともに、検査結果が陽性であった入所者の半数以上が検査時に無症状であり、感染を広める原因となった可能性が示唆された。また、症状にのみ重点を置いた感染制御戦略は、感染の防止には十分でなく、検査に基づく戦略の導入を考慮する必要があることがわかった。NEJM誌オンライン版2020年4月24日号掲載の報告。2回の点有病率調査、症状で4群に分類 研究グループは、キング郡の116床の高度看護施設(4つのユニットで構成)において、1週間間隔で点有病率調査を2回連続で行った。 施設入所者の同意を得て、鼻咽頭および口咽頭の拭い液を用いたSARS-CoV-2検査(リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法[rRT-PCR]、ウイルス培養、配列決定[sequencing])を実施した。また、直近の14日間に入所者が発症した症状を記録した。検査陽性で無症状の入所者は、7日後に再評価した。 SARS-CoV-2に感染した入所者は、典型的症状(発熱[>37.8℃]、咳、息切れ)、非典型的症状(悪寒、倦怠感、錯乱、鼻漏、鼻閉、咽頭痛、筋肉痛、めまい、頭痛、吐き気、下痢)、症状発現前、無症状の4つに分けられた。56%が無症状、無症状者の半数以上に認知機能障害 2020年3月5日、最初のSARS-CoV-2陽性の入所者1人が特定された(3月2日に症状が出て3日に検査)。この最初の検査が行われた3月3日の時点で、施設には89人が入所していたが、23日後の3月26日現在、点有病率調査や臨床評価、死後の検査で57人(64%)がSARS-CoV-2陽性となった。 1回目の点有病率調査(3月13日)には76人が参加した。このうち、1回目または2回目(3月19~20日)の調査で48人(63%)がSARS-CoV-2陽性と判定され、28人は陰性だった。陽性者(平均年齢78.6±9.5歳、併存疾患罹患率98%、有症状率44%)と陰性者(73.8±11.5歳、100%、39%)で、人口統計学的背景因子や併存疾患、症状は類似していた。 陽性者48人のうち、検査時に17人(35%)が「典型的症状」、4人(8%)が「非典型的症状」を呈し、27人(56%)は「無症状(安定した慢性症状の12人を含む)」だった。無症状の27人のうち15人(56%)には認知障害が認められ、有症状者でもほぼ同様の割合であった。 検査陽性から7日後には、「無症状」の27人のうち24人(89%)で症状が発現し、「症状発現前」に再分類された。症状発現までの期間中央値は4日(IQR:3~5)。無症状者で最も多かった新規症状は、発熱(71%)、咳(54%)、倦怠感(42%)だった。症状発現前や無症状でもウイルス増殖、症状発現の-6~9日で分離 rRT-PCR陽性の46検体のうち31検体でSARS-CoV-2の増殖が確認された。ウイルス増殖は、典型的症状の16人中10人、非典型的症状の4人中3人でみられたが、症状発現前の24人中17人と、無症状群の3人中1人でも認められた。 生存ウイルスは、典型的症状の最初のエビデンスが得られた日の6日前から9日後までに採取した検体から分離された。倍加時間3.4日、死亡率26% 入所者の感染倍加時間は3.4日(95%信頼区間[CI]:2.5~5.3)で、施設周辺のキング郡の倍加時間5.5日(4.8~6.7)に比べ急速だった。また、4月3日現在、3月26日までに確認されたSARS-CoV-2感染者57人のうち11人が入院し(3人は集中治療を要した)、15人が死亡した(死亡率26%)。 施設の4つのユニットのうち、最初の感染が起こったと推定され、最初のSARS-CoV-2感染者が居住していた第1ユニットは、1回目の点有病率調査終了時に施設内で最も高い有病率を示した。その後、第2~4ユニットでもSARS-CoV-2感染が確認され、その有病率は持続的に増加した。常勤職員の19%が陽性、検査に基づく戦略が必要 1回目の点有病率調査(3月13日)までに、施設の常勤職員138人中11人(8%)がSARS-CoV-2陽性となった。 3月26日までに、138人中55人(40%)が症状を訴え、51人(37%)が検査を受け、26人(19%)が陽性であった。この検査陽性26人のうち17人が看護職員で、9人は勤務時間中に複数のユニットを通じてサービスを提供する職種(セラピスト、環境サービス、食事サービス)であった。COVID-19罹患職員に入院した者はいなかった。 34人の入所者の39の検体で塩基配列の解析が行われた。すべての配列は、ワシントン州におけるCOVID-19患者の過去の解析で報告された配列と同一または著しく類似していた。34人の入所者のうち、27人(79%)が1ヌクレオチド差の2つの遺伝子クラスターに適合する配列を持っていた。 著者は、「これらの知見は、ほぼ同時期に同じ郡の別の看護施設で起きたCOVID-19集団感染ときわめて類似している」とし、「看護施設の職員は、施設内でSARS-CoV-2感染が確認された場合、症状の有無にかかわらず、個人用保護具(PPE)を使用するなど、さらなる伝播を防御するための追加戦略を実施すべきであり、感染した入所者と職員を同定して隔離するために、検査に基づく戦略を考慮する必要がある」と指摘している。

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