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第5回 意識障害 その4 それって本当に脳卒中?【救急診療の基礎知識】

●今回のpoint1)発症時間を正確に把握せよ!2)頭部CTは病巣を推定し撮影せよ!3)適切な連携をとり、早期治療介入を!72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+脳出血か、脳梗塞か、画像診断が有効だけど…「脳卒中かな?」と思っても、頭部CTを撮影する前にバイタルサインを安定させること、低血糖か否かを瞬時に判断することが重要であることは理解できたと思います(表)。今回はその後、すなわち具体的に脳卒中か否かを画像を撮影して判断する際の注意点を整理しておきましょう。「CT、MRIを撮影すれば脳卒中の診断なんて簡単!」なんて考えてはいけませんよ。画像を拡大する●Rule6 出血か梗塞か、それが問題だ!脳出血か脳梗塞か、画像を撮らずに判断可能でしょうか? 臨床の現場で、脳神経内科や脳神経外科の先生が、「この患者さんは出血っぽいなぁ」とCTを撮る前につぶやいているのを聞いたことはありませんか? 結論から言えば、出血らしい、梗塞らしい所見は存在するものの、画像を撮らずに判断することは困難です。一般的に痙攣、意識障害、嘔吐を認める場合には脳出血らしいとは言われます1)。私は初療の際、40~50歳代では梗塞よりも出血らしく、とくに収縮期血圧が200mmHgを越えるような場合にはその可能性は高いなと考え、高齢者、さらに心房細動を認める場合には、十中八九その原因は「心原性脳塞栓症」だろうと考えています。みなさんもこのようなイメージを持っているのではないでしょうか?!頭部CTをまずは撮影脳出血よりも脳梗塞らしければ、CTではなく、はじめからMRIを撮影すればよいのではないでしょうか? 脳梗塞であれば血栓溶解療法という時間の制約のある有効な治療法が存在するため、より早く診断をつけることができるに越したことはありません。血栓溶解療法を行う場合には、来院から1時間以内にrt-PA(アルテプラーゼ)を静注することが推奨されています(Time is Brain!)。しかし、MRIをまず撮影することは以下の理由からお勧めしません。・頭部CTはMRIと比較して迅速に撮影可能かつ原則禁忌なし・大動脈解離の否定は絶対(1)迅速かつ安全頭部CTの撮影時間は数分です。それに対してMRIは、撮影画像を選択しても10分以上かかります。梗塞巣が広範囲の場合や、嘔吐に伴う誤嚥性肺炎併発症例においては、呼吸のサポートが必要な場合もあり、極力診断に時間がかからず、安全に施行可能な検査を選択すべきでしょう。また、MRIはペースメーカー留置患者など撮影することができない患者群がいるのに対して、CTはほぼ全例施行可能です。私が経験した唯一撮影できなかった患者は、体重が200kgあり、CTの台におさまらなかった患者さんですが、まれですよね…。(2)大動脈解離の否定脳梗塞患者では、必ず大動脈解離の可能性も意識して対応するようにしましょう。とくに左半身の麻痺を認める場合には要注意です。当たり前ですが、血栓溶解療法を大動脈解離症例に行えばとんでもないことが起こります。大動脈解離が脳卒中様症状で来院する頻度は決して高くはありませんが、忘れた頃に遭遇します。そのため、血栓溶解療法を行うことを考慮している症例では、頭部CTで出血を認めない場合には、胸部CTも併せて行い大動脈解離の評価を行います。これは施設によっては異なり、胸部CTではなく、胸部X線、またはエコーで確認している施設もあるとは思いますが、病院の導線などの問題から、頭部CT撮影時に胸部CTも併せて評価している施設が多いのではないでしょうか。大動脈解離の確定診断は通常単純ではなく造影CTですが、脳卒中疑い症例では単純CTで評価しています。もちろん検査前確率で脳卒中よりも大動脈解離の可能性が高い場合には造影CTを撮影しますが、あくまで脳卒中を疑っている中で、大動脈解離の否定も忘れないというスタンスでの話です。大動脈解離の検査前確率を上げる因子として、意識障害のアプローチの中では、バイタルサイン、発症時の様子を意識するとよいでしょう。バイタルサインでは、脳卒中では通常血圧は上昇します。それに対して、身体所見上は脳卒中を疑わせるものの血圧が正常ないし低い場合には、大動脈解離に代表される“stroke mimics”を考える必要があります(参照 意識障害 その2)。この場合には積極的に血圧の左右差を確認しましょう。Stroke mimicsは、大動脈解離以外に、低血糖、痙攣・痙攣後、頭部外傷、髄膜炎、感染性心内膜炎でしたね。また、発症時に胸背部痛に代表される何らかの痛みを認めた場合にも、大動脈解離を考えます。意識障害を認める場合には、本人に確認することが困難な場合も少なくなく、その場合には家族など目撃者に必ず確認するようにしましょう。以上から、意識障害患者では低血糖否定後、速やかに頭部CTを撮影するのがお勧めです。CT撮影時の注意事項頭部CTを撮影するにあたり、注意する事項を冒頭のpointに沿って解説してきます。1)発症時間を正確に把握せよ!血栓溶解療法は脳梗塞発症から4.5時間以内に可能な治療です。血栓回収療法は、近年可能な時間は延びつつありますが、どちらも時間的制約がある治療であることは間違いありません。麻痺や構音障害がいつから始まったのか、言い換えればいつまで普段と変わらぬ状態であったのかを必ず意識して病歴を聴取しましょう。発見時間ではなく、「発症時間」です。“Wake up stroke”といって、前日就寝時までは問題なく、当日の起床時に麻痺を認め来院する患者は少なくありません。以前は発症時間が不明ないし、就寝時と考えると4.5時間以上経過している(たとえば前日22時に就寝し、当日5時半に麻痺を認める場合など)場合には、その段階で適応外とすることが多かったと思います。しかし、最近では、発症時間が不明な場合でも、頭部MRIの画像を利用して発症時間を推定し、血栓溶解療法を行うメリットも報告されています2)。現段階では、わが国では限られた施設のみが行っている戦略と考えられているため、病歴聴取よりも画像を優先することはありませんが、「寝て起きたときには脳梗塞が起こっていた症例は血栓溶解療法の適応なし」と瞬時に判断するのは早すぎるとは思っています。60歳以上では夜間に1回以上排尿のために起きていることが多く、就寝時間を確認するだけでなく、夜間トイレにいった形跡があるか(家族が物音を聞いているなど)は確認するべきでしょう。3時頃にいったという確認がとれれば、5時半の起床時に脳梗塞症状を認めた場合、血栓溶解療法の適応内ということになるのです。なんとか目の前の脳梗塞患者の予後を良くする術はないか(血栓溶解療法、血栓回収療法の適応はないのか)を常に意識して対応しましょう。2)頭部CTは病巣を意識して撮影を!血栓溶解療法の適応のある患者では、頭部CTは迅速に撮影しますが、低血糖の除外とともに最低限確認しておくべきことがあります。バイタルサインは当たり前として、ざっとで構わないので神経所見を確認し、脳卒中だとすると頭蓋内のどの辺に病巣がありそうかを頭にイメージする癖をもちましょう。「失語+右上下肢の運動麻痺→左中大脳動脈領域?」など、異常所見を推定し、画像評価をする必要があります。たとえば、左放線冠のラクナ梗塞を認めた症例において、重度の意識障害を認める、右だけでなく左半身の運動麻痺を認めるような場合には、痙攣の合併などを考慮する必要があります。麻痺がてんかんによるものであれば、血栓溶解療法は禁忌、脳梗塞に伴う急性症候性発作であれば禁忌ではありません。3)適切な連携をとり、早期治療介入を!急性期脳梗塞は“Time is Brain!”と言われ、より早期に治療介入することが重要です。血栓溶解療法適応症例は60分以内のrt-PA静注が理想とされていますが、これを実現するのは簡単ではありません。症例のように、現場から脳梗塞疑いの患者の要請が入ったら、その段階で人を集め、CT、MRI室へ一報し、スタンバイしておく必要があります。また、採血では凝固関連(PT-INRなど)が最も時間がかかり、早く結果を出してほしい旨を検査室に伝えて対応してもらいましょう。また、患者、家族に対する病状説明も重要であり、初療にあたる医師と病状説明する医師の2名は最低限確保し、対応するとよいでしょう。実際、この症例では、要請時の段階で医師を集め、来院後迅速に所見をとりつつ低血糖を否定しました。その後、頭部CT、胸部CTを撮影し、early CT signsや大動脈解離は認めませんでした。突然発症であり発症時間が明確であったため、急性期脳梗塞を疑いrt-PAの準備、家族への病状説明を行いつつ頭部MRIとMRAを撮影しました。結果、左中大脳動脈領域の急性期脳梗塞と診断し、血栓溶解療法を行う方針となりました。脳梗塞を疑うことはそれほど難しくありませんが、短時間で診断し、適切な診療を行うことは容易ではありません。Stroke mimicsを常に意識しながら対応すること、役割分担を行い皆で協力して対応しましょう!次回は「Rule 7 菌血症・敗血症が疑われたfever work up!」、高齢者の意識障害で多い感染症の診るべきポイントを解説します。1)Runchey S, et al. JAMA. 2010;303:2280-2286.2)Thomalla G, et al. NEJM. 2018;379:611-622.

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リジン尿性蛋白不耐症〔LPI:lysinuric protein intolerance〕

1 疾患概要■ 定義二塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、オルニチン)の輸送蛋白の1つである y+LAT-1(y+L amino acid transporter-1)の機能異常によって、これらのアミノ酸の小腸での吸収障害、腎での再吸収障害を生じるために、アミノ酸バランスの破綻から、高アンモニア血症をはじめとした多彩な症状を来す疾患である。本疾患は常染色体劣性遺伝を呈し、責任遺伝子SLC7A7の病因変異が認められる。現在は指定難病となっている。■ 疫学わが国での患者数は30~40人と推定されている。■ 病因y+LAT-1 は主に腎、小腸などの上皮細胞基底膜側に存在する(図)。12の膜貫通領域をもった蛋白構造をとり、分子量は約40kDaである。調節ユニットである 4F2hc(the heavy chain of the cell-surface antigen 4F2)とジスルフィド結合を介してヘテロダイマーを形成することで、機能発現する。本蛋白の異常により二塩基性アミノ酸の吸収障害、腎尿細管上皮での再吸収障害を来す結果、これらの体内プールの減少、アミノ酸バランスの破綻を招き、諸症状を来す。所見の1つである高アンモニア血症は、尿素回路基質であるアルギニンとオルニチンの欠乏に基づくと推定されるが、詳細は不明である。また、SLC7A7 mRNAは全身の諸臓器(白血球、肺、肝、脾など)でも発現が確認されており、本疾患の多彩な症状は各々の膜輸送障害に基づく。上述の病態に加え、細胞内から細胞外への輸送障害に起因する細胞内アルギニンの増加、一酸化窒素(NO)産生の過剰なども関与していることが推定されている。画像を拡大する■ 症状離乳期以降、低身長(四肢・体幹均衡型)、低体重が認められるようになる。肝腫大も受診の契機となる。蛋白過剰摂取後には約半数で高アンモニア血症による神経症状を呈する。加えて飢餓、感染、ストレスなども高アンモニア血症の誘因となる。多くの症例においては1歳前後から、牛乳、肉、魚、卵などの高蛋白食品を摂取すると嘔気・嘔吐、腹痛、めまい、下痢などを呈するため、自然にこれらの食品を嫌うようになる。この「蛋白嫌い」は、本疾患の特徴の1つでもある。そのほか患者の2割に骨折の既往を、半数近くに骨粗鬆症を認める。さらにまばらな毛髪、皮膚や関節の過伸展がみられることもある。一方、本疾患では、約1/3の症例に何らかの血液免疫学的異常所見を有する。水痘の重症化、EBウイルスDNA持続高値、麻疹脳炎合併などのウイルス感染の重症化や感染防御能の低下が報告されている。さらに血球貪食症候群、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性肝炎、関節リウマチ)合併の報告がある。成人期以降には肺合併症として、間質性肺炎、肺胞蛋白症などが増える傾向にある。無症状でも画像上の肺の線維化がたびたび認められる。また、腎尿細管病変や糸球体腎炎も比較的多い。循環器症状は少ないが、運動負荷後の心筋虚血性変化や脳梗塞を来した症例もあり、注意が必要である。■ 分類本疾患の臨床症状と重症度は多彩である。一般には出生時には症状を認めず、蛋白摂取量が増える離乳期以後に症状を認める例が多い。1)発症前型同胞が診断されたことを契機に、診断に至る例がある。この場合も軽度の低身長などを認めることが多い。2)急性発症型小児期の発症形態としては、高アンモニア血症に伴う意識障害や痙攣、嘔吐、精神運動発達遅滞などが多い。しかし、一部では間質性肺炎、易感染、血球貪食症候群、自己免疫疾患、血球減少などが初発症状となる例もある。3)慢性進行型軽症例は成人まで気付かれず、てんかんなどの神経疾患の精査から診断されることがある。■ 予後早期診断例が増え、精神運動発達遅延を呈する割合は減少傾向にある。しかし、肺合併症や腎病変は、アミノ酸補充にもかかわらず進行を抑えられないため、生命予後に大きく影響する。水痘や一般的な細菌感染は、腎臓・肺病変の重症化を招きうる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)高アンモニア血症を来す尿素サイクル異常症の各疾患の鑑別のため血中・尿中アミノ酸分析を提出する。加えてLDHやフェリチンが上昇していれば本疾患の可能性が高まる。確定診断には遺伝子解析を検討する。■ 一般血液検査所見1)血清LDH上昇:600~1,000IU/L程度が多い。2)血清フェリチン上昇:程度は症例によって異なる。3)高アンモニア血症:血中アンモニア高値の既往はほとんどの例でみられる。最高値は180~240μmol/L(300~400μg/dL)の範囲であることが多いが、時に600μmol/L (1,000μg/dL)程度まで上昇する例もある。また、食後に採血することで蛋白摂取後の一過性高アンモニア血症が判明し、診断に至ることがある。4)末梢白血球減少・血小板減少・貧血上記検査所見のほか、AST/ALTの軽度上昇(AST>ALT)、TG/TC上昇、貧血、甲状腺結合蛋白(TBG)増加、IgGサブクラスの異常、白血球貪食能や殺菌能の低下、NK細胞活性低下、補体低下、CD4/CD8比の低下などがみられることがある。■ 血中・尿中アミノ酸分析1)血中二塩基性アミノ酸値(リジン、アルギニン、オルニチン)正常下限の1/3程度から正常域まで分布する。また、二次的変化として、血中グルタミン、アラニン、グリシン、セリン、プロリンなどの上昇を認めることがある。2)尿の二塩基性アミノ酸濃度は通常増加(リジンは多量、アルギニン、オルニチンは中等度、シスチンは軽度)なかでもリジンの増加はほぼ全例にみられる。まれに(血中リジン量が極端に低い場合など)、これらのアミノ酸の腎クリアランスの計算が必要となる場合がある。(参考所見)尿中有機酸分析における尿中オロト酸測定:高アンモニア血症に付随して尿中オロト酸の増加を認める。■ 診断の根拠となる特殊検査1)遺伝子解析SLC7A7(y+LAT-1をコードする遺伝子)に病因変異を認める。遺伝子変異は今まで50種以上の報告がある。ただし本疾患の5%程度では遺伝子変異が同定されていない。■ 鑑別診断初発症状や病型の違いによって、鑑別疾患も多岐にわたる。1)尿素サイクル異常症の各疾患2)ライソゾーム病3)周期性嘔吐症、食物アレルギー、慢性腹痛、吸収不良症候群などの消化器疾患 4)てんかん、精神運動発達遅滞5)免疫不全症、血球貪食症候群、間質性肺炎初発症状や病型の違いによって、鑑別疾患も多岐にわたる。<診断に関して留意する点>低栄養状態では血中アミノ酸値が全体に低値となり、尿中排泄も低下していることがある。また、新生児や未熟児では尿のアミノ酸排泄が多く、新生児尿中アミノ酸の評価においては注意が必要である。逆にアミノ酸製剤投与下、ファンコーニ症候群などでは尿アミノ酸排泄過多を呈するので慎重に評価する。3 急性発作で発症した場合の診療高アンモニア血症の急性期で種々の臨床症状を認める場合は、速やかに窒素負荷となる蛋白を一旦除去するとともに、中心静脈栄養などにより十分なカロリーを補充することで蛋白異化の抑制を図る。さらに薬物療法として、L-アルギニン(商品名:アルギU)、フェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)、安息香酸ナトリウムなどが投与される。ほとんどの場合は、前述の薬物療法によって血中アンモニア値の低下が得られるが、無効な場合は持続的血液透析(CHD)の導入を図る。■ 慢性期の管理1)食事療法十分なカロリー摂取と蛋白制限が主体となる。小児では摂取蛋白0.8~1.5g/kg/日、成人では0.5~0.8g/kg/日が推奨される。一方、カロリーおよびCa、Fe、ZnやビタミンDなどは不足しやすく、特殊ミルクである蛋白除去粉乳(S-23)の併用も考慮する。2)薬物療法(1)L-シトルリン(日本では医薬品として認可されていない)中性アミノ酸であるため吸収障害はなく、肝でアルギニン、オルニチンに変換されるため、本疾患に有効である。投与により血中アンモニア値の低下や嘔気減少、食事摂取量の増加、活動性の増加、肝腫大の軽減などが認められている。(2)L-アルギニン(同:アルギU)有効だが、吸収障害のため効果が限られ、また浸透圧性下痢を来しうるため注意して使用する。なおL-アルギニンは、急性期の高アンモニア血症の治療としては有効であるが、本症における細胞内でのアルギニンの増加、NO産生過剰の観点からは、議論の余地があると思われる。(3)L-カルニチン2次性の低カルニチン血症を来している場合に併用する。(4)フェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)、安息香酸ナトリウム血中アンモニア値が不安定な例ではこれらの定期内服を検討する。その他対症療法として、免疫能改善のためのγグロブリン投与、肺・腎合併症に対するステロイド投与、骨粗鬆症へのビタミンD製剤やビスホスホネート薬の投与、成長ホルモン分泌不全性低身長への成長ホルモンの投与、重炭酸ナトリウム、抗痙攣薬、レボチロキシン(同:チラーヂンS)の投与などが試みられている。4 今後の展望小児期の発達予後に関する最重要課題は、高アンモニア血症をいかに防ぐかである。近年では、早期診断例が徐々に増えることによって正常発達例も増えてきた。その一方で、早期から食事・薬物療法を継続したとしても、成人期の肺・腎合併症は予防しきれていない。その病因として、尿素サイクルに起因する病態のみならず、各組織におけるアミノ酸の輸送障害やNO代謝の変化が想定されており、これらの病態解明と治療の開発が望まれる。5 主たる診療科小児科、神経内科。症状により精神科、腎臓内科、泌尿器科、呼吸器内科への受診も適宜行われている。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター リジン尿性蛋白不耐症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Sperandeo MP, et al. Hum Mutat. 2008;29:14-21.2)Torrents D, et al. Nat Genet. 1999;21:293-296.3)高橋勉. 厚労省研究班「リジン尿性蛋白不耐症における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究」厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 平成22年度総括分担研究報告書;2011.p.1-27.4)Charles Scriver, et al(editor). The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed. New York City:McGraw-Hill;2001:pp.4933-4956.5)Sebastio G, et al. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2011;157:54-62.公開履歴初回2018年8月14日

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そもそも術前リスク評価をどう考えるべきか(解説:野間重孝 氏)-891

 循環器内科はさまざまな院内サービスを行っているが、その中でも最も重要なものの1つが、心疾患を持つ(もしくは持つと疑われる)患者が心臓外のmajor surgeryを受ける場合のリスク評価に対するコンサルトに答えることではないかと思う。この場合、大体の医師が心疾患による追加的なリスクをまったく考える必要のない群を最軽症とし、これは絶対に手術は無理というものを最重症として5段階評価を考え、それなりの文章を考えて回答している、というあたりが実情なのではないかと思う。 ただ、その場合でも、はっきり○○%という数字を書き込むという方は、まずいらっしゃらないと推察する。というのは、そのようなエビデンスはどこにも存在しないからだ。この問題を考える場合、次のような視点を最低限持っておく必要があると考えるので、箇条書きにしてみる。 ○想定されるリスクは手術技術や機材の進歩、麻酔技術の進歩により変化していくもの  であって、一定ということはあり得ない。 ○上記と関連して、現在効果がないとされている技術(たとえばTAVIなど)も、  技術、機材の進歩により、リスク軽減に有効とされる時が来る可能性が十分にある  ことを想定しておく必要がある。 ○大変記載しにくい事実ではあるが、手術リスクは一般論ではなく、組織の設備、環境  や術者、アシストするスタッフの質、麻酔科医の技量に大きく依存する。 ○どこまでを標準的な術前スクリーニング検査とするかは、国情、医療事情により決定  されるもので、国、地域により一定ではない。また組織によっても異なる。 ○手術リスクをどのように評価するかには、異なった立場がある。患者の最大酸素摂取  量(peak oxygen uptake)を重要とするものもあれば、また、解剖学的な病態  (たとえば冠動脈狭窄の部位と程度)を重視するやり方もあり、どれが正しい、正確  であるかというエビデンスはない(疾病者の最大酸素摂取量をどう求めるかに議論が  あるのはもちろんである)。 ○上記でいえば、わが国は画像診断に比較的重きを置く傾向がある。実際、冠動脈疾患  でいえば、その存在が疑われる症例で冠動脈造影CT検査が行われないという事態は  想定しがたいが、これはわが国がOECD加盟国中CTの普及率、保有台数が第1位で  あるという事情と無縁ではない。 ○国、地域により、主な対象とされる疾患が異なる。欧米のリスク評価はどうしても  冠動脈疾患の比重が大きくなるが、わが国にそれをそのまま応用してよいという保証  はまったくない。たとえば、ACC/AHA、ESC/ESAともに2014年にガイドラインの  改訂を行っているが、これをそのままわが国で用いてよいという保証はない。 ○時代によりリスクに組み込まれる疾患が異なってくる。代表的なものが心房細動の  リスクをどう考えるかで、社会の高齢化と強く関連している。 ○手術リスクをどう位置付けるかは、そのmajor surgeryが対象とする疾患により  異なるはずである。悪性疾患を代表とする生命予後に直結する疾患と、機能予後に  深く関連するようなものでも生命予後には直接結びつかないものとでは、  リスクに対する考え方が異ならなければならない。 読者の皆さんの中にはもっと多くの事項が勘案されるべきだとお考えの方もいらっしゃると思うが、順不同ながらまず代表的なものは出し尽くしているのではないかと思う。 さて、こうした観点を踏まえて本論文を読み返してみると、大変失礼な言い方になるが、その発想があまりにもナイーブなのではないかというのが、私の正直な感想である。 「経験ある麻酔科医によるリスク評価」というが、「主観的」リスク評価をするに当たって、どの程度の術前スクリーニング検査が行われているのだろうか。私も第一線病院で30年以上診療に当たっている者(しかも古いタイプの医師)の1人として、患者に慎重に問診し、慎重な診察を行えば、かなりの確率でリスクを評価できるという自信がないわけではない。しかし、2018年の現在、そのような「主観的な」評価が許されるわけがないではないか。まず心エコー図を中心とした画像診断で状態を把握し(心エコー図の結果のみでリスク評価をしてはならないことはすでに証明されている)、正確な数字や別の観点からの画像が欲しい場合には、MRIやシンチグラムなども併用する。冠動脈疾患の可能性があれば、当然冠動脈造影CT検査を行う。場合によってはカテーテル検査も行う。そのうえで判断を下す。当たり前ではないか。NT pro-BNPについて言及されているが、今どき術前血液検査にBNPもしくはNT pro-BNPの項目が含まれていない採血を行う組織など、少なくともわが国には存在しないと思う。それでも5段階評価くらいはできても数値化まではできない。 エルゴメータによる運動負荷検査が取り上げられているが、現実的とは言えないと思われる。全身状態によってはエルゴメータをこぐことができないことは言うまでもないが、それだけではなく、もし実際に重症冠動脈疾患があった場合、運動負荷そのものが大変に危険であるという事実が指摘されなければならないだろう。少なくとも現在わが国で循環器を専門にしている医師が、狭心症を強く疑われている患者に対していきなり運動負荷を行うということはまずないのではないだろうか。運動負荷がぶっつけで行われる場合があるとするなら、学校検診などで心電図異常を指摘された明らかに健康な若年者に対して形式的なスクリーニングを行うような場合だろうが、これはまったく性格の異なったものであることはご説明するまでもないだろう。議論が冠動脈疾患に偏ったが、大動脈弁狭窄症やDCMなどでも同様の議論がなされることは言うまでもない。 DASIスコアとは――本文に細かい説明がないが――12項目の簡単な質問にYes/No方式で答えていくもので、各項目に重み付けがされており、最後に合計して計算式に当てはめることで、患者の最大酸素摂取量の予測ができるものである。全身状態の悪い患者も対象としなければならない場合、最大酸素摂取量の目安にしようとするならば現実的な方法といえる。本論文によればDASIスコアのみが有効なスクリーニング法だったとあるが、これは本研究のようなデザインをすれば当たり前なのではないだろうか。十分なスクリーニング結果を踏まえない担当医の「主観的」判断と全身状態によって結果に誤差が出て当然の運動負荷と、全員に安全かつ公平に行えるスコアリングを比べれば、結果は比べる前から明らかなのではないのか。本来術前リスク評価とは、どの方法が優れているといった議論の対象ではなく、可能な手段を総動員して行うべきものなのである。 そのほか、著者らのいうmorbidity and mortalityとは何か。なぜ30日を観察期間としたのか。たとえば術後2週間たって心筋梗塞が起こった場合、それと手術をどう関係付けるのか。疑問は多いのだが、それらにはこれ以上触れない。 というわけで、本研究が臨床医の素朴な疑問に答えようとした姿勢は評価するものの、研究の発想、方法はまったく評価できないというのが評者の受けた感想だったのだが、読者の皆さんはどう思われただろうか。

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猛暑の日々【Dr. 中島の 新・徒然草】(231)

二百三十一の段 猛暑の日々地震、豪雨に続いて、大阪では猛暑の日々が続いています。先日はついに車の温度計での外気温が40度となり、エアコンを全力でかけてもなかなか涼しくなりませんでした。病院の建物の中も場所によっては暑く、何台もの扇風機が回っています。当然のことながら暑さにやられて担ぎ込まれてくる患者さんが多く、ベッドも不足勝ちです。あまりにも熱中症が多いので、救急外来では、あらかじめトレイの上に点滴セット、留置針、採血管などを並べたものを準備しておき、患者さんが来たらそのトレイと棚から生食500mLのバッグを持っていけばOKという工夫をしてみました。なんと日勤の終わりには準備していた5つのトレイが全部使われてしまいました。そのくらい多いのが熱中症です。なぜか昼間に熱中症が増えると夜には急性アルコール中毒が増えるような気がします。自分の飲める量を知らない若い人が運び込まれることが多いのですが、中には夜の商売をしている人が飲み過ぎて運び込まれることもあります。こういう人には「客に飲ませるのが仕事でしょ。自分が酔っ払ってどないするんですか!」という突っ込みが入れられます。泥酔した患者さんたちも翌朝になるとケロッとして帰宅されるのですが、先日の若い女子大生はなかなか帰ろうとしませんでした。看護師さんから聞いた事情とは・・・看護師「もうすっかり意識清明なんですけどね」中島「ほな、帰宅やな」看護師「お母さんが来るまで待っているみたいです」中島「そんなもん、自分で帰ったらエエやんか」看護師「服がドロドロになったんで、持ってきてもらうそうです」中島「しゃーないなあ」看護師「お母さんがパンツも持ってきてくれるらしいです」中島「なんじゃそりゃ? そっちもドロドロなんか」看護師「はい」中島「き、聞かなきゃよかった」回診で病室に行ってみると、母娘にペコペコ謝られました。中島「まあ、若いときはこんなこともありますよ。次から気をつけるようにしましょうね」さすがに説教するわけにもいかないので、爽やかドクターを装っておきました。というわけで最後に1句猛暑日は 色々ドラマが うまれけり

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第4回 特別編 覚えておきたい熱中症の基本事項【救急診療の基礎知識】

覚えておきたい熱中症の基本事項7月に入り東京も連日気温が30℃を超え、40℃近い猛暑が続いています。連日熱中症による症状で救急搬送、外来受診される患者さんが後を絶ちません。熱中症に限りませんが、早期に異常を認知し、介入すること、そして、何より予防に努めることが非常に大切です。暑さに負けないために今回は熱中症の基本的事項をまとめておきましょう。●診療のPoint(1)夏場は常に熱中症を疑え!(2)非労作性熱中症は要注意! 屋内でも熱中症は起こりうる!(3)重症度を頭に入れ、危険なサインを見逃すな!熱中症の定義「熱中症とは何ですか?」と質問されて正確に答えられるでしょうか。以前は熱射病、熱痙攣、熱失神という言葉が使用されていましたが、現在は用いられません(重症度と共に後述します)。熱中症とは「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」とされ、「暑熱による諸症状を呈するもの」のうちで、他の原因疾患を除外したものと定義されています。わが国では毎年7~8月に熱中症の発生率が多く、「今そこにある危機」と認識し、熱中症の症状を頭に入れ意識しておく必要があるのです。熱中症の死亡率本邦の年間発症数は約40万人、そのうち8.7%(約3万5,000人)が入院、0.13%(約520名)が死亡しています。この数値は現在も大きな変化はなく、2016年の死亡者数は621名で65歳以上が79.2%という結果でした(厚生労働省 人口動態統計)。2018年は2017年より暑く、熱中症患者は増加することが予想されます。熱中症を軽視してはいけません。労作性vs.非労作性熱中症と聞くと炎天下の中、スポーツや仕事をしている最中に引き起こされるイメージが強いですが、それだけではありません。熱中症は、「労作性熱中症」と「非労作性熱中症」に分類(表1)され、屋内でも発生します。そして、この非労作性熱中症が厄介なのです。画像を拡大する労作性熱中症の患者背景としては若年男性のスポーツ、中壮年男性の労働(建設業、製造業、運送業、とくに日給制のような短い雇用期間の方)、非労作性熱中症では独居の高齢者が典型的です。労作性熱中症の場合には、若く、集団で活動していることが多く、基礎疾患もなく早期に発見、介入できるため予後は良好ですが、非労作性熱中症は、自宅で発生することが多く、発見が遅れ、また心疾患などの基礎疾患、利尿薬などの内服薬などの影響から治療に難渋することがあるわけです。実際、救急医学会の熱中症実態調査において、熱中症の死亡の危険因子は、(1)高齢、(2)屋内発症、(3)非労作性熱中症でした1)。重症度に影響するばかりでなく、再発防止手段にも影響します。意識して対応しましょう。熱中症の重症度以前、熱中症は、熱射病、熱痙攣、熱失神などの呼び名がありましたが、現在は重症度を理解しやすいように表2のように分類されています1)。I度は必ずしも体温は上がりません。症状で判断します。II度は頭痛や嘔吐、倦怠感に加え、深部体温の上昇を認めます。III度は、意識障害、臓器障害を認め、早急な対応が必要になります。画像を拡大する熱中症を疑うことは、病歴から難しくありませんが、重症度の判断は初期評価をきちんと行わなければ見誤ります。とくに重篤化しやすい、非労作性熱中症の高齢者には注意が必要です。意識が普段と同様か否か、腎前性腎障害に代表される臓器障害を認めていないかを評価しましょう。熱中症の治療治療の原則、「安静」「環境改善」「塩分+水分の補給」は絶対です。重症度や経口摂取の可否を評価し、細胞外液の点滴の適応を判断します。高齢者がぐったりしている、十分な飲水が困難な場合には、点滴を選択したほうがよいでしょう。また、点滴が必要と評価した患者では、採血や血液ガスも検査・評価し、臓器障害の有無も併せて確認しましょう。熱中症II度以上は、体温調節中枢が正常に機能していない状態です。皮膚や筋肉の血管拡張、血流増加、多量の発汗によって循環血液量減少性ショックへと陥ります。急速な輸液に加え、高体温が持続すると多臓器不全(意識障害、痙攣、急性腎障害、DIC etc.)を伴い、輸液だけでなく呼吸管理や透析などの全身管理が必要となることもあります。初期対応としては以下の2点を意識し、速やかに対応しましょう。(1)目標体温深部体温*が39℃を超える高体温の持続は予後不良因子であり、38℃台になるまでは積極的な冷却処置を行いましょう。*深部体温中枢温を正確に反映する部位は腋窩温でも皮膚温でもありません。最も好ましいのは深部体温(膀胱温、直腸温、食道温)です。救急外来など初療時には、直腸温を測定するか、温度センサー付きバルーンカテーテルを利用し、膀胱温を測定するとよいでしょう。健康な人の体温の平均値は、腋窩温36.4℃に対して直腸温37.5℃と約1℃異なると言われていますが、高体温で発汗している場合や測定方法によって、腋窩温や皮膚温は容易に変化します(正しく測定できません)。熱中症、とくに重症度が高いと判断した症例では、深部体温を測定する意識をもちましょう。(2)冷却方法体表冷却法が一般的です。気化熱を利用します。ぬるま湯(40〜45℃)を霧吹きを用いて体表にかけ、扇風機などで扇ぐとよいでしょう。本当に熱中症か?!熱中症は環境因子だけでも十分起こりえますが、普段であれば自己対応(環境を変える、水分・塩分を摂取する)ができずに発生した可能性があります。つまり、熱中症に陥った原因をきちんと検索する必要があります。とくに非労作性熱中症の場合には、尿路感染症や肺炎などの感染症などが引き金となっているかもしれません。また、薬剤やクリーゼなども熱中症様症状をとることがあります。これらの鑑別は病歴をきちんと把握すればおおよそ可能です。明らかに部屋が暑かった、当日の朝までは普段どおりであったなどの病歴がわかれば、感染症や薬剤の影響は考えづらいでしょう。それに対して、数日前から体調の変化があった場合には、感染症などの影響も考え対応する必要があります。発熱か高体温か判断できず、とりあえず血液培養を2セット提出するのは簡単ですが、それ以上に病歴聴取や身体所見を評価することのほうが大切です。プロカルシトニンも鑑別には役立たないため提出は不要でしょう。熱中症の予防熱中症は予防可能です。起こしてしまった人へは、治療だけでなく正しい熱中症の知識、そして周囲の方への啓発・指導を含め、ポイントを絞って熱中症を起こさないために必要なことを伝えましょう。「また熱中症の患者か!?」と思うのではなく、チャンスだと思い、再発予防に努めましょう。熱中症の基本的事項を伝授熱中症の初期症状、非労作性熱中症に関して伝えましょう。症状が熱中症によるものであることを知っておかないと対応できません。また、熱中症は屋外で起こるものと思っていると、非労作性熱中症に陥ります。高齢の方からは「風通しがいいのでクーラーは使用していません(設置していません)」、「クーラーは嫌いでね」という台詞をよく聞きますが、必要性をきちんと説明し、理解してもらうことが大切です。●熱中症の発生リスク評価を伝授猛暑が続いていますが、どの程度危険なのかを認識しなければ、「大丈夫だろう」と軽視してしまいます。朝のニュースをテレビやスマホで確認するのもよいですが、暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)を確認する癖をもっておきましょう。熱中症の発生に関与する因子は気温だけではなく、湿度、風速、日射輻射です。とくに湿度は大きく影響し、これらを実際に計測し算出して出てきた数値がWBGTです。細かなことは割愛しますが、WBGT>28℃になると熱中症が急増し危険と判断します(表3)。画像を拡大する●環境省の熱中症予防情報を伝授環境省熱中症予防情報サイトでは、WBGT(暑さ指数)を都道府県、地点別に確認できます。本稿執筆時の7月19日10時現在の東京都(都道府県)、東京(地点)のWBGT値は31.9℃(危険)と赤表示され、一目で熱中症のリスクが高いことがわかります。3日間の予測も併せて確認できるため、熱中症を予防する立場にある学校の教師や職場の管理者は必ず確認しておく必要があります。朝のニュースなどで危険性は日々報道されていますが、それでもなお発生しているのが熱中症です。願わくは、自ら確認し意識しておくことが必要と考えます。「熱中症の危険がある」ということを事前に意識して対応すれば、体調の変化に対する対応も迅速に行えるでしょう。●熱中症? と思った際の対応を伝授こむら返りや頭痛、倦怠感などを自覚し、環境因子から熱中症? と判断した場合には、速やかに環境を改善し(日陰や店舗内など涼しい場所へ移動)、水分だけでなく塩分を摂取するように勧めましょう。症状が改善しない場合や、自身で水分・塩分の摂取が困難な場合には、時間経過で改善することも多いですが、症状の増悪、一人暮らしで経過を診ることができる家族がいない場合には、病院へ受診するように指示したほうがよいでしょう。屋内外のリスクを見極め夏を過ごす7月は熱中症予防強化月間の重点取組期間です(厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」)。まだまだ暑い日が続きます。日頃の体調管理を行いつつ、屋外でのスポーツや作業をする場合には、リスクを評価し、予防に努め、屋内で過ごす場合には、温度・湿度を意識した環境の設定を行い、夏を乗り切りましょう!1)日本救急医学会熱中症に関する委員会. 熱中症の実態調査-日本救急医学会Heatstroke STUDY 2012最終報告-.日救急医会誌. 2014;25:846-862.

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循環器内科 米国臨床留学記 第29回

最終回 臨床留学を通して感じた、日本人の仕事に対する倫理観研修医と専門医研修の両方を日米で行うというのは稀ですが、それを行った私の経験から、日本と米国の研修システムを比較してみたいと思います。主観的な意見もありますので、ご了承ください。以前は、米国の教育システムが日本の教育システムよりも体系的で、米国で臨床を経験することで、卒後教育がどういったものであるべきかを学ぶ、という点だけでもかなり意味があったのではないでしょうか。米国を参考に日本のレジデンシー、フェローシップ教育が作られているのは間違いないと思いますが、その点において米国帰りの先生たちによる日本の医学教育への寄与は大きかったと思われます。優れた研修プログラムは日本にも米国にもある日本で臨床研修が義務化された2004年頃から、日本の教育システムもかなり変わってきました。批判もありますが、統一された基準の下での研修という意味では、進歩があったと思います。インターネットが普及して、日米を問わず、Evidence Based Medicine(EBM)が当たり前となっています。指導医がUpToDateなどを使ってきた世代になりつつありますし、場所を問わず、EBMを実践することは可能です。日本でも、評価が高く、また臨床研修に力を入れているような病院では、米国と遜色ない臨床のトレーニングを受けられると思います。ここで“評価が高い”と限定したのには理由があります。日本では研修医の数よりも研修プログラムの募集定員数の方が多いため、指導医の数や指導内容が伴っていない研修プログラム(指導医が不十分、研修体制が不十分など)がかなりあるように感じます。数年前になりますが、とある日本の病院で短期間働いたときに、「こんな指導医がほとんどいないような病院でも、臨床研修の指定を受けられるのか」と衝撃を受けたこともあります。これは研修プログラムを支える環境や文化の違いもあると思います。米国ではプログラムディレクターやチーフレジデントはかなりの時間を研修プログラムのマネージメントに割いていますが、それに対する時間が確保されており、また、給料や社会的な評価も伴います。日本でプログラムディレクターをやっていても、それに時間を割いている分、臨床を免除されることもなく、ボランティアということがほとんどではないでしょうか。プログラムディレクターや指導医の待遇を改善しなければ、プログラムの質の改善も難しいと思います。こういった側面があるとは思いますが、評価の低いプログラムは淘汰されていく必要があると思います。全米のみならず各国からレジデントの希望者が殺到する米国では、末端のトレーニングプログラムですら、教育体制はそれなりに整っています。実際、私が研修したのは外国人ばかりのプログラムで、ランクとしては下の方のプログラムでした。しかしながら、指導者はやる気に満ち溢れ、各国代表ともいえる優秀なレジデントは学習意欲に溢れていました。実際、米国ではプログラムは常に評価されており、レジデントからの評判や専門医試験の合格率が低いと廃止となることもあります。米国における多様な患者層や疾患米国では患者も多人種にわたり、日本で経験できないような症例もたくさん経験できます。また、いろいろな国から来た、さまざまなバックグラウンドを持つレジデント、指導医、医療従事者と仕事をするということは、かけがえのない体験です。難民などから這い上がってきた同僚をみると、自分がいかに恵まれていたかを思い知らされます。日本と違う国で働くという経験は何事にも代えがたい貴重な経験だと思います。日本の“スーパーローテーション”問題日本の初期臨床研修の、いわゆるスーパーローテーションにも問題があると思います。内科医になりたいのに、精神科や産婦人科をお客さんとしてローテートしても、将来的に役に立たない可能性が高いと思われます。こういったことは学生の間に済ますべきだと感じている医師がほとんどではないでしょうか。結果として、内科、外科、産婦人科、精神科など異なる科を目指す研修医が一緒になって研修をして、共有された目的がないというような状況が生まれます。米国のinternal medicine(内科)のレジデントは、ほとんどが“Categorical”と呼ばれる将来内科医となる人たちです。彼らにはinternal medicineの専門医を取るという明確な目的があり、かなり早い段階から専門医試験の勉強をしており、知識のレベルも高いです。同じ目標を持つレジデントと切磋琢磨できる環境が、内科、外科を問わず理想的だと思います。日本でしか学べないこととは?一方で、日本の研修システムにも優れた点がたくさんあります。例えば、手技に関しては日本人の研修医のほうがはるかに優れています。米国のレジデントは急変時には手が動かないというか、手技が何もできないのです。挿管は麻酔科を待ち、点滴、採血も技師かナースを待つのがほとんどです。一刻を争う状況で、エコーなしに大腿静脈からラインを確保する、自ら挿管を行うというようなことは経験がないためできません。また、仕事に対する取り組み方も異なります。個人差はもちろんありますが、概して、日本人の方が責任感を持って仕事に取り組んでいる研修医が多い気がします。米国はいい意味でも悪い意味でもシフト制が浸透しているため、“自分の患者”という意識がレジデントには希薄です。また、専門医がたくさんいるため、さまざまな科にコンサルトを出すが、レジデントや指導医に主体性がないため、方針が何も決まらないといったこともよくあります。日本で私が研修医だった頃のように夜中になっても患者の急変で病院に戻ったり、土日も病院に来なければ行けないというのは時代にそぐわないですし、もはや受け入れられませんが、自分の患者という意識は大切だと思います。医師としての最初の仕事である研修医の間に学ぶ患者に対する態度、姿勢はその後の在り方を決めうると思います。その意味でも、日本の良質なプログラムの中で高い倫理観を持った指導医や先輩と仕事をすることは、一生の財産になると思います。医学生の皆さんには、優れた指導医や先輩がいて、臨床研修に力を入れている施設での研修を目指してほしいと思います。臨床留学は実現可能な目標臨床留学を目指していた頃は、臨床留学の意味など考えたことがありませんでした。ただ、気が付いたら米国で臨床がしたいと思っていました。そして、臨床留学を目指してからは、“目指した以上後に引けない”というのが大きなモチベーションでした。実際、私は帰国子女でもないですし、初めて海外に行ったのも大学2年生の時でした。臨床留学を知ったのも大学6年生でハワイ大学に研修に行ってからです。当時はテレビ番組の“ER”などを見ながら、臨床留学を夢見ていました。英語は今でも苦労していますし、“ちょっと何言っているか分からない“的なことを患者や指導医から何百回も言われてきました。英語は完璧にはなりえませんが、英語以外の部分で日本人は挽回できます。トレーニングを2つの国で繰り返すのは、時間の無駄かもしれませんが、誰にでもできるわけではない経験ができたと思い、後悔はありません。臨床留学はレジデントからだけでなく、フェローからでも可能です。興味があれば、ぜひ挑戦してみてください。個人的には、“日本の優れた研修病院“で初期研修を受けてからの留学をおすすめします。患者や仕事に対する責任感、これは日本でしか学べない部分だと私は思っています。日本にいた頃は当たり前だと思っていたが、米国では当たり前ではない素晴らしい部分が、日本人にはたくさんありました。そのたびに、日本人でよかったと感じてきました。過去3年間にわたり連載を続けてきた「循環器内科 米国臨床留学記」も、私のフェローシップ卒業とともにいったん終了となります。これまでたくさんの叱咤、激励、質問などをくださった方々、貴重な時間を割いてお付き合いくださった読者の方々、本当にありがとうございました。

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子どもに対する抗精神病薬の処方前後における血糖・プロラクチン検査実施率に関する研究

 多くの国で、抗精神病薬(主に統合失調症、双極性障害、自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の治療に用いられる薬剤)による治療を受ける子供が増加している。大人と同様に、子供に対する抗精神病薬の使用は、糖尿病発症リスクの増大と関連している。このような点から、米国やカナダの診療ガイドラインでは、子供に対して抗精神病薬を処方する際、定期的に血糖検査を実施することが推奨されている。また、一部の抗精神病薬の使用はプロラクチンの上昇と関連しており、高プロラクチン血症による無月経、乳汁漏出、女性化乳房などの有害事象が、短期間のうちに発現する可能性もある。しかし、子供にとってこのような有害事象の徴候を適切に訴えることは難しいため、抗精神病薬を処方する際には、血糖検査と同時に、プロラクチン検査も実施すべきと考えられる。 医療経済研究機構の奥村 泰之氏らは、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、日本における、子供に対する抗精神病薬の処方前後の、血糖・プロラクチン検査実施率を明らかにするため検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2018年6月11日号の報告。 NDBを用いて、15ヵ月間のレトロスペクティブコホート研究を実施した。2014年4月~2015年3月に抗精神病薬を新規に処方された18歳以下の患者を、450日間フォローアップした。アウトカムは、処方前30日~処方後450日の間における、血糖・プロラクチン検査の実施状況とした。血糖・プロラクチン検査実施率は、次の4つの検査時期について評価した。(1)ベースライン期(処方前30日~処方日)、(2)1~3ヵ月期(処方後1~90日)、(3)4~9ヵ月期(処方後91~270日)、(4)10~15ヵ月期(処方後271~450日)。 主な結果は以下のとおり。・6,620施設から得られた、新規に抗精神病薬の処方を受けた4万3,608例のデータのうち、継続的に抗精神病薬を使用していた患者は、処方後90日で46.4%、270日で29.7%、450日で23.8%であった。・ベースライン期に検査を受けた患者の割合は、血糖検査13.5%(95%CI:13.2~13.8)、プロラクチン検査0.6%(95%CI:0.5~0.6)であった。・4つの検査時期すべてにおいて、定期的に血糖検査を受けた患者は、0.9%に減少していた。また、プロラクチン検査を受けた患者は、1~3ヵ月期で0.1%に減少していた。 著者らは、本研究結果について以下のようにまとめている。・本研究では、抗精神病薬の処方を受けた子供が血糖検査やプロラクチン検査を受けることは、まれであることが示唆された。・これらの検査実施率が低くなる背景として、抗精神病薬治療の一環として血糖検査やプロラクチン検査を実施する必要性が十分に認識されていないこと、採血に人手と時間を要すること、メンタルヘルスに関する相談の場で子供や保護者が採血を想定しておらず嫌がること、などが考えられる。また、子供のメンタルヘルスを診療できる医療機関が少なく、採血を苦痛として通院が阻害されてしまうことがないよう、医師が慎重にならざるを得ない状況も考えられる。・かかりつけ医が検査を実施して、その結果を、抗精神病薬を処方する医師と共有する体制を構築することも、解決策の1つであると考えられる。・抗精神病薬治療の一環として必要な検査を周知することに加えて、子供のメンタルヘルスを診療できる医療機関を増やし、かかりつけ医との診療連携を強化するなど、子供のメンタルヘルスに関する医療体制に対して総合的な観点からの解決が求められる。■関連記事小児に対する抗精神病薬処方、診断と使用薬剤の現状は非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状日本の児童・思春期におけるADHD治療薬の処方率に関する研究

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「超」基本手技の成功率を高める達人のレクチャー

臨床研修の最初に特に必要となるであろう「胃管挿入」「動脈採血」「心エコー撮影」などの基本手技だけにフォーカスし、達人による「いろはの”い”」を集めました。「なんとなく」でできた気になってしまう基本手技。その精度を極限まで高めた達人が、何を見て、何を気にしているのか。そのポイントを動画で超絶にわかりやすく解説します。超基本だからこそ、逆になかなか聞くことができない珠玉のTIPS集です。日々の研修にぜひお役立てください。胃管挿入は、単純そうに見えますが、決して簡単な手技ではありません。覚醒下で行うため、患者さんにとって非常につらく、不快感があるの手技です。また、頭蓋内挿入、気管内挿入、そして穿孔など、重大な事故につながる恐れもあります。それらを避けるためのポイントとコツ、そしてトラブル対処法をしっかりと分かりやすく伝授します。この番組で、ぜひ、胃管挿入をマスターしてください。(視聴時間 7:22)動脈血の採取は、いくつかの部位で行うことができますが、最も、簡単で、合併症の少ない大腿部での採血の手技をお教えします。ポイントは、解剖を理解することと皮膚に対する針の角度。この番組で、大腿動脈採血の手技をマスターしてください。(視聴時間 5:03)症例写真クイズで読影腕試し!異常所見を見つけ、鑑別診断を挙げる。実臨床に近い問いに答えて読影スキルをブラッシュアップしていきましょう!異常所見を見つけたら、それが「ドコ」にあるのかを、正確に表現することは読影の基本。第1回は肺野の区分や病変部位の特定につながる、重要な読影スキルをパパっと押さえましょう。 (視聴時間 5:54)心エコー走査でなんとなく持っている苦手意識は、実はちょっとしたことを知るだけで、克服することができます。装置に触る前にやるべきこと、プローブの固定の仕方や、患者さんの呼吸と体の向きをコントロールする方法など。きちんとした像を映し出すために必要な心エコーの走査方法を、基本中の基本から解説していきます。(視聴時間 15:58)フィジカル診察は全身外観の観察からスタートします。外観のアラームサインから脱水のフィジカル診断まで、医師の視覚、聴覚、触覚、嗅覚を使い患者さんの状態を評価します。ヒポクラテス顔貌、ツルゴール反応、Capiiiary refile time、触診による血圧測定など全身のフィジカルの基本知識をDr.徳田自ら実技を交え紹介します。(視聴時間 11:49)

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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そっちはいいんです!【Dr. 中島の 新・徒然草】(206)

二百六の段 そっちはいいんです!先日のこと。高齢の男性患者さんにペコペコ謝られました。患者「すっかり忘れていまして、どうもすみません」中島「いやいや、いいんですよ」患者「10月に予約だったのに、気づいたら12月でした」中島「皆さん、よくあることですから、お気になさらないで」患者「そう言っていただけると救われます」何が起こったかというと、頭部MRIの検査予約と診察日を忘れて来院されなかったのです。小さな脳動脈瘤とか髄膜腫とか、1年に1回の経過観察だけの患者さんというのは随分多いのですが、何せ1年に1回です。来年の同じ時期にまた撮影しましょう、と言って予約票を発行しても何処かに失くしてしまうのですね。そうならないように毎年誕生日のころ、と決めている方もおられるのですが、その誕生日が夏や冬となるとちょっと躊躇します。寒い中を無理に病院にやってきて体調を崩したら本末転倒です。そんなわけで、MRIの予約や診察予約を忘れていて、後で気づいたという人が続出するのです。中島「予約を忘れていてもですね、また、取り直したら済むことですから」患者「いやあ、恐縮です」中島「忘れるってのはいいんですよ、忘れるってのは」患者「いいんですか?」中島「ええ、あるはずの物を忘れていたというのは、われわれにとっては大したことではありません。そっちはいいんですよ」患者「はあ」中島「本当に困るのは、ありもしない検査を『あるはずだ!』とやって来る患者さんですよ」患者「そんな人いるんですか!」中島「いますよ」多くはありませんが、『今日は採血があるはずだ』とか『MRIがあるはずだ』とか言って来院する患者さんもおられるわけです。採血なら、医師の方がオーダーを入れ忘れていた、ということもあり得ますが、さすがにMRIの方はそういうこともなく、カルテの本文を確認すると「次回の検査は3年後に行う」などと書いてあったりします。とはいえ、一般に「存在しない」という主張は「悪魔の証明」とも言われ、なかなか相手に理解してもらえません。ある医療機関では、患者さんに「検査結果を渡せ」と言われて「そもそもそんな検査してまへんがな」と言ったら訴えられたそうです。こうなったらもはや喜劇です。当事者には気の毒ですが。まあ、こういうこともあるのだと思って、いつもニコニコ対応を心掛けておくのが無難のようですね。最後に1句ありもせぬ 検査めぐって ひと悶着

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循環器内科 米国臨床留学記 第26回

第26回 院内急変時における対応米国では、院内急変時に対するシステムが日本と異なり、最初は驚きました。私が研修した日本の施設では、院内急変が起きると院内にコードブルーが鳴り響き、医者が全員集合するというシステムでした。現場に近い医師やスタッフがいち早くたどり着けるというメリットがありましたが、すべての科の医者が仕事をストップして現場に向かうため、場合によっては1つの急変に30人近い医者が集まるという点で、非効率的なシステムのようにも感じました。私が研修医の時代はACLSの普及し始めで、「船頭多くして船山に上る」という感じで、指揮系統も統一されていませんでした。今は、日本でもACLSの教育が普及して、このようなことはなくなってきていると思います。ラピッドレスポンスとは現在、私が働いているカリフォルニア大学を始め、米国の病院では、院内急変時のコードとして、コードブルー、ラピッドレスポンス(Rapid Response)、コードストローク、エアウェイエマージェンシーなどがあります。ラピッドレスポンスシステム(RRS)は、最近日本でも導入が進んできているようです。ひとたびコードブルーで心肺停止状態に陥り、CPR(心肺蘇生)が必要になると、院内といえども死亡率は高くなります。このため、コードブルーに至る前に循環、呼吸、意識、尿量、胸痛や痙攣などに素早く対応し、コードブルーに至るのを防ぐRRSが、米国では10年以上も前から導入されています。挿管はもっぱら麻酔科医や集中治療医の役割また米国では、急変時に内科や外科のレジデントや指導医が挿管することはまずありません。ほとんどの医師は挿管の必要性を判断できても、挿管自体はできません。というより、挿管ができるようになるべくトレーニングを受けていません。挿管するのは、ほとんどの場合、麻酔科医もしくは集中治療医(病院によってはレスパイラトリーセラピスト[呼吸療法士]が行う)です。もちろん自信があれば、内科や外科のレジデントやフェロー、指導医が挿管しても良いのですが、その場に麻酔科医や集中治療医がいるにもかかわらず、あえてリスクを冒してまで挿管を試みる必要もないため、最初から彼らに任せるケースがほとんどです。私も、夜間に麻酔科医が来られないというまれな状況で挿管せざるを得なかったことが数回ある程度で、実質的には内科医が挿管する機会がほとんどありません。実際、日本人と比べると肥満患者が多く、声門が見えづらいため、難易度は比較的高いと思われますし、麻酔科医も最初から喉頭鏡を用いることも多いです。多職種で編成するコードチーム上記のエマージェンシーコードに対応するのは、当直中のレジデントと集中治療(フェローや専門医)、麻酔科医、看護師、薬剤師、レスパイラトリーセラピスト、検査技師などからなる専門のチームです。多くのコメディカルが現場に集合するのも、米国の分業制を象徴しています。日本のように、ほとんどの医者が挿管できるという状況ではなく、夜間は集中治療医が毎日当直しているわけではないので、麻酔科医がコードチームに必ず含まれています。また、複数の看護師が、書記、投薬、採血、ベッドコーディネートなど異なった役割を果たします。このオンコールのチームが日夜を問わず、院内で待機しています。急変時には指示出しに加え、挿管、心臓マッサージ、採血、ラインの確保など“手を動かす作業”に忙しい日本の研修医と比べて、こちらのレジデントは指示を出したりするのは得意ですが、逆に言うと手があまり動かず(点滴や血液ガスも上手ではない)、CPRは漫然と進んでいるが、採血やエコーなどが行われず、原因検索が進んでいないと感じることがよくあり、ついつい率先して採血やライン確保なども自分でやってしまいます。急変時に手がすぐに動かせるというのは、日本での研修のお蔭だと常々感じています。

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Dr.志賀のパーフェクト!基本手技

第1回 腰椎穿刺 第2回 気管挿管 第3回 胸腔ドレーン挿入 第4回 胃管挿入第5回 中心静脈挿入第6回 大腿動脈採血 第7回 肘内障整復 第8回 動脈内留置カテーテル挿入 第9回 指脱臼整復 臨床医がマスターしなければならない必須の基本手技を、シミュレーターを使用して、臨床現場さながらに実演し、解説します。このシリーズでは、腰椎穿刺をはじめとして、気管挿管、中心静脈挿入、大腿採血など9の手技を取り上げます。各手技を実践するうえで必要な手順の確認はもちろんのこと、ポイントやコツ、ピットフォール、そしてトラブルシューティングまでしっかりとカバーします。Dr.志賀の現場目線にこだわった、アツい!レクチャーは必見です。第1回 腰椎穿刺 第1回目の基本手技は、腰椎穿刺。腰椎穿刺は解剖から立体的な構造を意識して挑む必要があります。また、穿刺後頭痛、神経根症状など、手技に伴う合併症は、ちょっとしたコツで防ぐことができます。秘訣をお教えします!この番組で、ぜひ、腰椎穿刺をマスターしてください。第2回 気管挿管 今回の基本手技は、“気管挿管”。気道を制する者は救急を制する!この番組では、一刻を争う状況下で行う気管挿管の手技を見せるだけでなく、それぞれのポイントで陥りがちなピットフォールを提示し、正確に行うためのコツをしっかりと伝授します。迅速かつ正確な気管挿管の手技をマスターしてください!第3回 胸腔ドレーン挿入 今回の基本手技は胸腔ドレーン挿入。胸腔ドレーン挿入は患者さんの覚醒下で行う手技なので、痛みをきちんとコントロールすることが重要です。また、致死的な合併症を起こし得る手技なので、安全に行えるようコツをしっかりとマスターしてください!第4回 胃管挿入今回の基本手技は「胃管挿入」。胃管挿入は、単純そうに見えますが、決して簡単な手技ではありません。覚醒下で行うため、患者さんにとって非常につらく、不快感があるの手技です。手技を行う際には、しっかりとした配慮が必要です。また、頭蓋内挿入、気管内挿入、そして穿孔など、重大な事故につながる恐れもあります。それらを避けるためのポイントとコツ、そしてトラブル対処法をしっかりと分かりやすく伝授します。この番組で、ぜひ、胃管挿入をマスターしてください。第5回 中心静脈挿入今回の基本手技は、中心静脈挿入。最近では、安全にかつ、成功率を高めるため、超音波を使用して行う手技が当たり前となってきました。より安全に、正確に手技が行えるためのポイントを伝授します。もちろん超音波画像もお見せしながら解説します。この番組で、中心静脈挿入をマスターしてください。第6回 大腿動脈採血 今回の基本手技は「大腿動脈採血」。動脈血の採取は、いくつかの部位で行うことができますが、最も、簡単で、合併症の少ない大腿部での採血の手技をお教えします。ポイントは、解剖を理解することと皮膚に対する針の角度。この番組で、大腿動脈採血の手技をマスターしてください。第7回 肘内障整復 今回の手技は肘内障整復です。肘内障は5歳くらいまでの乳幼児に起こる橈骨頭亜脱臼で、整復は数秒で完了します。この番組では、回内法と回外屈曲法の2通りの方法を説明します。整復が成功するポイントは、「迅速」に行うこと。この番組で肘内障整復をマスターしてください。第8回 動脈内留置カテーテル挿入 今回の基本手技は持続的な血圧測定や、頻回な採血を必要とする場合に実施する手技である「動脈内留置カテーテル挿入」。穿刺部位はいくつかありますが、安静の制限や感染の少ない橈骨動脈の手技を解説します。手技の手順はもちろんのこと、ちょっとしたコツやトラブルシューティング術などをしっかりとお教えします。第9回 指脱臼整復 今回の基本手技は経験が少ないとハードルの高い「指脱臼整復」。左中指背側脱臼を例に2種類の整復方法を提示します。一方で整復できないときは、もう一方を行いましょう。この番組でぜひ指脱臼整復をマスターしてください!

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魔法のパッチで子供の注射の怖さを軽減

 2017年12月5日、佐藤製薬株式会社は、外用局所麻酔剤のリドカイン・プロピトカイン配合貼付剤(商品名:エムラパッチ)の発売を前に、「注射の痛みに我慢は必要ですか?」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、「痛み」の概要と小児の痛みのケアについてディスカッションが行われた。なお、同貼付剤は12月13日に発売された(薬価251.60円/1枚)。子供のころの痛みは記憶として大きくなる はじめに同社代表取締役社長の佐藤 誠一氏があいさつし、医薬マーケティング部による製品説明の後、基調講演が行われた。 基調講演では、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が、「その『医療の痛み』は本当に必要ですか?~痛みが無くなっても痛みの影響は終わらない~」をテーマに、主に小児における「痛み」の診療について現状や課題を語った。 痛みとは、組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験と定義される。それは主観的な体験であり、患者本人にしかわからない。しかし痛みは、たとえば手術前の麻酔のように、予防することもできる。それにもかかわらず、1980年代までは新生児や小児への痛みの対応はなおざりだったという。 それは、新生児は痛みを感じにくいと思われていたからであり、1980年代後半に報告された論文以降、大きく変化した。すなわち新生児は、痛みの抑制系が未発達ゆえに痛みを感じやすく、新生児の外科的処置時には、成人同様、局所麻酔薬や全身麻酔薬を使用し、減量および中止も成人と同じ基準で行うべきという考えに変化した1)。 さらに小児期での痛みの体験は、一時的なものではなく成長後にも影響を与え、中枢性感作、不安・恐怖など記憶を介した認知を獲得する。たとえば、小児期の機能的な腹痛は、成人後の慢性痛リスクを増加させるという報告もあるという2)。局所麻酔を行い、痛みを中枢神経に伝えないようにすることは、痛みや恐怖から脳を守ることにつながると同氏は説明する。小児の痛みをマネジメントする時代へ 小児の痛みの予防について、まず小児が怖がる痛みの代表に、予防接種、採血、点滴などの注射が挙げられる。現在わが国では、こうした痛みを医療者も患者も「仕方がない」「一時的」「我慢できる」などの理由で、まだ看過しているのが現状だと、加藤氏は問題を指摘する。一方、欧米では、先述の理由から積極的に痛みのマネジメントについて取り組みが行われ、たとえばカナダでは「小児のためのワクチン摂取の痛みのマネジメント(Pain Management During Immunizations for Children)」が作成され、ガイドラインによって痛みの軽減が図られている3)。また、世界保健機関(WHO)も「ワクチン接種時の痛みの軽減についての提言」を2015年に発表するなど、世界的な動きが示されている。 加藤氏は講演のまとめとして、「小児の医療における痛みへの対応が向上するには時間がかかるかもしれないが、防げる痛みを防ぎ、子供を痛みから守る医療を一緒に目指そう」と、小児医療に関わる人々へ向け抱負を述べた。痛みの軽減だけではない患児へのメリット 引き続き、「子どもたちが怖がらずに済む医療へ」をテーマに、先の演者の加藤氏に加え、富澤 大輔氏(国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科 医長)、平田 美佳氏(聖路加国際病院 小児総合医療センター 小児看護専門看護師)によるディスカッションが行われた。 「小児期の疼痛対策の必要性」について、医療者だけでなく患児の親も持つ「痛みは仕方がない」という思い込みから、ケアがされていない現状であるという。わが国は我慢の文化であり、薬も使わない、痛みの弊害に目が向けられない状態が続いている。海外(英国)を例に平田氏は、「10年以上前から子供の痛みのケアが行われ、エムラクリームのような局所麻酔クリームを日常的に使用し、子供たちの間では『マジック・クリーム』の愛称で親しまれ、注射などの処置の前に塗布する習慣ができていた」と説明した。また、「病院での工夫」としては、「患児の疑問に答え、希望に沿うようにしているほか、事前におもちゃの注射器を見せて、準備をさせることも不安軽減に大事だと考えている。注射などの際は、患児の集中力を分散させる環境作りや処置後のフォローを行い、ケースによっては、エムラクリームなどの情報提供をしている」と同氏は付け加えた。 次に、「小児がんの治療の現場」を富澤氏が語った。「診療の中で、患児に痛みを伴う検査や治療が多いのが現状。痛みへのケアがないと、患児は診療に消極的になってしまうので、親を良いサポーターにする努力が医療者側には必要であり、同時に痛みに対する親の意識を変える必要性もある。注射への配慮としては、不必要な検査は避け、患児に痛みを除く方法もあることを説明しておく必要がある。急性リンパ性白血病(ALL)でのエムラクリームを使用したコントロール研究では、局所麻酔下だと患児の動きがなく、心拍数も変わらないという報告もある4)。これは大事な点で、ALL治療の予後にも影響することなので、治療時の患児の動きを抑えることは重要だと考える」と、同氏は実臨床をもとに説明した。患児の痛みのケアには医療者と社会の認知が必要 最後に、各演者が医療者へのメッセージを述べた。平田氏は「血友病の患児がエムラクリームのおかげで、治療を在宅で行えるようになり、表情が明るくなった。患児の感じる痛みを今後もマネジメントしていきたい」と事例を挙げて語り、富澤氏は「小児科は比較的患児の痛みケアが進んでいる分野だが、一般的に多くの医療者は患児の痛みのケアやこうした製剤を知らない。患児の親が医療者に適用を依頼するケースもあり、わが国も欧米並みに知識の普及と診療使用を考え、実践する必要がある」と見解を述べた。 最後に加藤氏は、「痛みをなくすには、体と心の両方の治療が必要で、エムラクリームのように痛みを軽減するツールがあるのに使われていないのが問題。医師への啓発だけではなく、いかに一般社会に広く浸透させるかが今後の課題」と問題を提起し、ディスカッションを終えた。■参考佐藤製薬株式会社 ニュースリリース「エムラパッチ」新発売のご案内(PDF)

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血小板輸血後に女児死亡、厚労省から注意喚起

 2017年11月29日、血小板製剤輸血による細菌感染が疑われていた症例について、患者の死亡が確認されていたことが、厚生労働省の有識者会議にて報告された。患者は、急性骨髄性白血病の再発に対する同種骨髄移植を受けた10歳未満の女児。移植の約1ヵ月後に、血小板製剤の投与が行われ、投与20分後より振戦、呼吸促拍の出現により投与が一時中止された。その後、投与が再開されたものの、嘔吐、下痢により再び中止に至った。女児は投与後4日目に一時心肺停止状態となり、投与後1ヵ月6日目、敗血症性ショックによる多臓器不全で死亡した。 今回、女児が投与されたのは、「照射濃厚血小板-LR」(採血後4日目)20mlで、その後の検査により、残りの製剤および女児の血液から同一の大腸菌が同定された。担当医は「細菌感染と輸血血液との因果関係はあると考えられる」との見解を出している。 この問題に関して、厚生労働省は12月4日付で、血小板製剤使用時の安全確保について都道府県などに向けた通知を出した。 主な内容は以下のとおり。・少なくとも輸血開始後約5分間は患者の観察を十分に行い、約15分経過した時点で再度観察を行う。・輸血には同種免疫などによる副作用やウイルスなどに感染する危険性がありえるので、他に代替する治療法などがなく、その有効性が危険性を上回ると判断される場合にのみ実施する。・輸血を行う場合は、その必要性とともに感染症・副作用のリスクについて、患者またはその家族などに文書にてわかりやすく説明し、同意を得る。

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点から線の血糖管理で7%クリアへ

 2017年9月22日、アボット ジャパン株式会社は、フラッシュグルコースモニタリングシステム 「FreeStyle リブレ」(以下「リブレ」)の保険収載を受け、都内でプレスカンファレンスを開催した。当日は、本機の機能説明のほか、糖尿病患者からも使用経験が語られた。リブレの基本概要 リブレは、組織間質液中のグルコース値を記録するセンサーと、その測定値を読み取って表示するリーダーから構成される。500円玉大のセンサーを上腕後部に装着し、そこから極細のフィラメントが皮下に挿入され、グルコース値を毎分測定する。センサーは防水性で、最長14日間装着できる。そして、リーダーをセンサーにかざしスキャンするだけで、痛みを伴わず1秒でグルコース値を測定することができる。 さらに、測定されたデータを専用ソフトウェアで読み込むことで、グルコース値や変動データはAGP(Ambulatory Glucose Profile)と呼ばれるレポートとして、パソコン上で確認することができる。 本機は、国内では2017年9月1日より保険適用となった。患者の血糖動態を「見える化」して診療に活かす 講演では西村 理明氏(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 准教授)が、「糖尿病ケアは次の時代へ」と題して、糖尿病診療における「見える化の重要性」について語った。 厚生労働省が発表した「平成28年 国民健康・栄養調査」によると、糖尿病有病者と糖尿病予備群はいずれも約1,000万人と推計されることに触れ、患者数と医療費の増加に懸念を示した。とくに糖尿病合併症では医療費が高額になることが多く、合併症予防のためにも、日本糖尿病学会提唱のHbA1c 7.0%未満は、治療の目標として重要である。そして、血糖コントロールの大切なポイントは、血糖レベルの改善、低血糖の回避、血糖変動の最小化の3点だという。 近年の研究では、平均血糖変動幅(MAGE)と心血管イベントの相関(MAGEが大きいほど心血管イベントも多い)や低血糖と不整脈、心筋虚血の合併症も報告されている。低血糖の予防では血糖自己測定(SMBG)が行われ、インスリン量の調節や糖の摂取などの目安とされる。 ここで、2016年に西村氏が報告した「アンケートによる血糖自己測定の満足度と患者ニーズの調査」(n=1,050)が紹介された。その中で患者さんの半数以上が現在のSMBGは満足と答え、8割以上が低血糖対策としてのSMBGに満足と回答しているものの、低血糖発生の予防には必ずしも寄与していないことが示された。その原因として、測定回数の少なさ、血糖変動が見えないなどの得られる情報の少なさのほか、採血の痛さ、測定の煩雑さなど利用の際の手間もあると氏は指摘する。 こうした課題に応えるように開発されたリブレは、ほぼ痛みもなく、時間・場所を選ばずに着衣の上から1秒で測定ができる。従来の持続血糖測定(CGM)では測定記録が複雑で傾向がわかりにくかったが、リブレではわかりやすく視覚化されているため、血糖の日内変動を可視化でき、医療者もこれを診療に役立てることができるという。 実際、リブレの臨床試験では、1型糖尿病患者(n=239)を対象としたIMPACT試験1)と2型糖尿病患者(n=224)を対象としたREPLACE試験2)が行われ、両試験ともHbA1cの低下、低血糖発現時間の減少など血糖コントロールの質を改善することが示された。 最後に西村氏はリブレについて、「患者さんや医療従事者の負担を軽減しながら、豊富な血糖関連データを簡単に『見える化』する機器であり、広く普及すると思われる。この見える化で良質な血糖コントロールの達成を実現する患者さんが増え、糖尿病診療にパラダイムシフトをもたらすのではないかと感じている」と展望を語り、講演を終えた。MBGは患者にとって大きなストレス 次に患者視点から大村 詠一氏(日本IDDMネットワーク 専務理事)が、「FreeStyleリブレで変わった血糖管理」をテーマに、本機登場の意義、患者のメリットなどを語った。 エアロビックの演者・指導者である大村氏は1型糖尿病患者であり、インスリンを1日5回注射しているため、必要量の把握のためSMBGを余儀なくされている。しかし、SMBGの針は大きく痛みを伴うだけでなく、測定が煩雑であり、時間と場所の制約を受けることが多い。一方、リブレでは、こうした課題が解決されるうえ、自身の早朝における血糖上昇に気付くことができ、血糖動態改善につなげることができたという。 「リブレには、患者側から厚生労働省に承認要望を出し、適用となった経緯がある。この新ツールを活用することで、患者のライフスタイルの変化や治療の改善に寄与することを希望する」と大村氏は語る。 続いて、自身も2型糖尿病患者である華道家の假屋崎 省吾氏と西村氏の対談となった。SMBGについて假屋崎氏は、「指先が痛く、仕事柄、指に影響するのでストレスを感じる」と語り、リブレの使用感については、「痛みもなく、日常生活にまったく問題がない。運動もできる。1日平均10回くらい食前食後、運動前に測定して日常生活に役立てている。血糖測定についての悩みがなくなった」と感想を語った。 最後に、假屋崎氏は糖尿病患者さんに向けて「糖尿病の進行を防ぐ努力をしよう。病気とは友達付き合いで、プラス思考で生きよう」とメッセージを送り、西村氏が「リブレで合併症を防ぐことができたり、血糖測定のストレスから解放されるかもしれない。今後の普及を見守りたい」と述べてセミナーは終了した。●参考文献1) Bolinder J, et al. Lancet. 2016;388:2254-2263.2) Haak T, et al. Diabetes Ther. 2017:8;55-73.■参考FreeStyleリブレ オフィシャルサイト

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170)中性脂肪の代謝を阻害する“喫煙”【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者今日は朝食を食べて採血をしました。医師なるほど。中性脂肪が300mg/dLと驚くほど上昇していますね。空腹時は150mg/dL前後なのですが…。患者中性脂肪って食事で動くんですね。医師そうですね。食事で大きく変動します。食後の中性脂肪が高いと心筋梗塞になりやすいと言われています。患者どうやったら、中性脂肪を下げることができますか?医師食事をすると中性脂肪が上がりますが、血管の内側で中性脂肪は代謝されます。でも、その機能を落としてしまうのが「タバコ」です。患者やっぱり、タバコですか。肺がん以外にもいろいろと悪さをするんですね。明日から禁煙、いえ今日から禁煙準備を始めます。●ポイントすぐに禁煙に取り組む自信がない人には禁煙準備(例:灰皿の整理、カートン 買いを止めるなど)から始めてもらいます1)Staniak HL, et al. Atherosclerosis. 2014;233:381-386.2)Kabagambe EK, et al. Atherosclerosis. 2009;203:633-639.

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救急エコー最速RUSH!

第1回 ショックの鑑別にはエコー! 第2回 ダッシュで“RUSH”をモノにする 第3回 PUMP 第4回 TANK① 第5回 TANK② 第6回 PIPES ショック患者が来たときにどう対応しますか?採血、心電図、X線、CT・・・・。CT室に運んでいるときに患者の容態が悪化・・・そんな経験はありませんか。ショックの原因をベッドサイドでルールイン、ルールアウトできるのがエコーです。そんな救急エコーのプロトコルの中でも、最も早く、最も広範囲をカバーする「RUSH Exam.」。わずか2分でショックの原因検索ができます。このDVDで、RUSHをモノにして、ショックに立ち向かいましょう!第1回 ショックの鑑別にはエコー!ショックは原因によって対応や処置が異なり、とくに素早い診断が重要となります。そこで、エコー!X線よりも、CTよりも早く、確実にショックを鑑別します。今回は、ショックの原因検索にエコーがいかに有用かを解説します。第2回 ダッシュで“RUSH”をモノにする 最速エコーテクニック「RUSH Exam.」の概要について解説します。RUSHの基本は、PUMP、TANK、PIPESの3つのコンポーネントをそれぞれ、3ステップの計9ステップで見ていくことです。まずは、ショック患者が来たとき、どのような手順で、何をどう見ていくのか確認しましょう。第3回 PUMP RUSH Exam.の3つのコンポーネントのうちの1つ「PUMP」を見ていきます。PUMPで見るべきビューとそれぞれの施行ポイント、そしてその所見の取りかたをお教えします。実際のエコー映像もたっぷり。原因がわかったらすぐに処置・治療につなげられるのも、エコーならでは!まずはPUMPをマスターしましょう!第4回 TANK① PUMPに続いて、TANKについてみていきます。TANKのメインは、“FAST”。体腔内に液体貯留がないかどうかの検索を行います。でも、もちろん、ただのFASTではなく、Step Beyond FAST!TANKの見るべきビューとそれぞれの施行ポイント、そしてその所見の取りかたをしっかりとマスターしましょう!第5回 TANK② 今回は前回のTANKの続きです。最後のビューポイント前胸部についてみていきます。前胸部では主に「気胸」を診断、あるいは否定をしていきます。X線での気胸の感度は50%程度、それに対して、超音波では90%以上!それでも、X線を使いますか?さあ、エコーを使いこなして、迅速な診断と治療につなげましょう!第6回 PIPES 最後のコンポーネントPIPESです。PIPESでは、腹部、胸部大動脈瘤、解離とDVT(肺塞栓)について診断、除外をおこないます。見るべきビューは6つ。しっかりとマスターしましょう。これで、RUSH Exam.すべてのコンポーネントが揃いました!さあ、RUSHをモノにして、ショックに立ち向かいましょう!

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第6回 深刻な世代間ギャップの存在【患者コミュニケーション塾】

深刻な世代間ギャップの存在今では医学教育で義務化され、当たり前となったOSCE(客観的臨床能力試験)における医療面接。COMLでは、相手役となる模擬患者の養成と派遣に、1992年から取り組んできました。医学部の講義へ模擬患者を派遣すると、医学生たちから感想文が送られてきます。その内容を読んでいて、ある時期から気になる記載を目にするようになりました。それは、「子供の頃から友人のプライバシーにも深く立ち入らないように気を付けてきたのに、突然出会ううえに年齢も異なる患者さんに、どう対応すれば踏み込み過ぎずに済むか悩む。」といった内容です。友人と違うことをしたり目立ったりするといじめに遭う、というような不安から、真正面からぶつかることを避けてお互い傷つけないように付き合っていくことが、彼らにとっての処世術なのでしょうか。そう考えれば、このような悩みも理解できないわけではありません。しかし、患者の立場としては、違和感を覚えるのです。なぜなら、医師とは患者の究極のプライバシーと向き合う仕事だからです。「どこまで踏み込んでいいのか」ではなく、しっかり踏み込まないと仕事にならないはずです。私はむしろ多くの患者は、「あなたのことを知りたい」と向き合ってくれて、自分のことを十分理解したうえで医療を提供してほしいと望んでいるのではないかと思います。高齢患者の発言を理解できず真逆の行動にまた、コミュニケーションを取るうえで欠かせないのが「言語」です。ところが最近、異なる世代間での共通言語が危機的に少なくなってきていると感じます。年配の世代が若い世代の流行語や略語、「ビミョー」「フツー」「ヤバイ」とカタカナで表現される独特の言葉の使い方についていけないのもその1つです。一方、年配の世代が使う表現を理解できない若者も増えています。それを痛感したのが、ある研修医の体験談を聞いた時でした。その研修医は高齢の男性患者から採血をしようとしたそうですが、採血に適した血管がなかなか見つからず、2度失敗したそうです。そこで上級医に交代してもらおうとしましたが、急変患者が複数発生していて、手が空いている医師がいませんでした。その高齢男性は血液検査の結果が至急必要な患者だったので、「もう少し頑張ってみよう」とさらに2回試みましたが、またもや失敗してしまいました。それまでずっと黙って採血の様子を見守っていたその高齢患者が、4回目の失敗の後、おもむろに「なぁ、兜を脱ぐか?」と言ったそうです。しかし研修医はその意味が理解できず、「どうしよう、何か僕に言っている…」と戸惑い、一生懸命「かぶと、かぶと…」と考えているうちに、兜をかぶった侍が刀を抜いて闘う姿がイメージされて、その勇ましい姿から「そうか、僕は励まされてるんだ!」と考えたのです。そして再び、2回採血を強行したことを私に打ち明けました。この話を聞いた時に、私は大変な世の中がやってきたと思いました。日本語でコミュニケーションが取れなくなってきているのです。医療現場は0歳から100歳代までのあらゆる世代の患者、家族とのコミュニケーションが求められます。この世代間の共通言語をいかに増やしていくかも、喫緊の課題ではないかと思っています。

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治療できるライソゾーム病 ―ポンペ病を見逃さないために―

ポンペ病(糖原病II型/酸性マルターゼ欠損症[AMD])ポンペ病は、ライソゾーム酵素である酸性α-グルコシダーゼの欠損・活性低下を原因とする常染色体劣性遺伝疾患で、多くの組織のライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、主に骨格筋や心筋、平滑筋が障害される。発症率は約4万人に1人と報告されており1-3)、国内では100人程度の患者が確認されている。治療としては、各症状に対する対症療法に加え、酸性α-グルコシダーゼを補充する酵素補充療法が行われる。ポンペ病を疑う特徴的な症状臨床症状はきわめて多岐にわたるが、発症する年齢により、乳児型と小児型・成人型(遅発型)の3つに分けられる。乳児型は生後6ヵ月までに発症し、心肥大などの重度の心機能障害、筋力低下・筋緊張低下(フロッピーインファント※)、呼吸障害、哺乳不良、発達障害などがみられるが、とくに心肥大と筋力低下・筋緊張低下はポンペ病を疑う。小児型は生後6~12ヵ月以降、成人型は10~60歳代に発症し、いずれも重度の心機能障害は来さないが、小児型では進行性ミオパチー、成人型では緩徐進行性ミオパチーを特徴とする。小児型・成人型では、近位筋の筋力低下、呼吸機能障害、早朝の頭痛、高CK血症などからポンペ病を疑う。最重症である乳児型は約3分の1の頻度を占め2)、心肺不全により生後1年以内に死亡する急速進行性の経過をたどるため4,5)、とくに早期診断・治療が求められる。※筋肉が柔らかくなり、正常な子供にみられない特異な姿勢になる。首の座りやお座り、はいはいや歩行といった発達が遅れる。ポンペ病の早期診断のためにポンペ病を疑う症状や所見が認められたら、「新生児マス・スクリーニング用ろ紙※」を用いた酸性α-グルコシダーゼ酵素活性測定による簡便なスクリーニング検査の実施が推奨される(図1)。本スクリーニング検査は、検体に乾燥ろ紙血を用いるため、侵襲が少なく、常温で郵送可能などの利点があり、国立成育医療研究センター臨床検査をはじめとした幾つかの医療機関で原則無料で実施されている。酵素活性測定の結果は、2~4週間程度で報告され、酵素活性低下が確認できれば、確定診断として遺伝子検査や筋生検が必要となることがある。ポンペ病は、患者数が少なく、疾患の認知があまりされていないうえに、他の疾患と類似した症状や所見を示すことがあるため、診断がつかないまま適切な治療を受けられないでいる患者さんが存在している可能性がある。ポンペ病の患者さんの予後を考えるうえでは、早期診断・治療がきわめて重要である。図1 ろ紙血検体作業・依頼方法(国立成育医療研究センターの場合)(1)1~2mL採血後、新生児マス・スクリーニング用ろ紙に血液を2、3滴滴下する。◇点線丸印からはみ出るように滴下する◇ろ紙の裏側にしみるまで滴下する拡大する(2)ろ紙に患者さんの名前(もしくはイニシャル、匿名化番号)、生年月日、採取日、性別を記入する。(3)吊り下げずにそのまま水平に置き、室温で5時間以上乾燥させる(2~3日の室温放置も可)。(4)完全に乾燥させた後、ビニール袋に入れ、郵送までの間、冷蔵で保存する。(5)「検査申込書(酵素活性検査用)」に必要事項を記入し、ろ紙血(ビニールに入れた状態)とともに常温で検査実施機関に郵送する。1)Hirschhorn R & Reuser AJJ. Glycogen storage disease type II: acid alpha-glucosidase (acid maltase) deficiency. In: Scriver CR, et al. eds. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. NewYork: McGraw-Hill; 2001.p.3389-3420.2)Martiniuk F. et al. Am J Med Genet. 1998;79:69-72.3)Ausems MG et al. Eur J Hum Genet. 1999;7:713-716.4)van den Hout HM. et al. Pediatrics. 2003;112:332-340.5)Kishnani PS. et al. J Pediatr 2006;148:671-676.

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アクション指向型メモ【Dr. 中島の 新・徒然草】(132)

百三十二の段 アクション指向型メモいささか季節外れの話になりますが、今年の1月に年賀状の整理をしながら気付いた事について述べたいと思います。年末年始というと、大慌てで年賀状を出したり受け取ったり、というのが恒例です。とはいえ、年賀状というものは出して受け取ったらそれで終わりということはありません。その後に、住所録の変更とか、書き損じた葉書の処理とか、当選したお年玉付き年賀葉書の景品引き換えとか、いろいろなこともする必要があります。まず行うことは、手元の葉書の分類です。以前の私は、喪中葉書とか、書き損じ葉書とか、自分に来たものとか、家族に来たものとか、それぞれの属性に応じて分類していました。でも、この分類だと住所録をアップデートしようとしたときに、「何をすべきか」を再び考えなくてはなりません。つまり二度手間になってしまうのです。そこでお勧めするのが、アクション指向型分類です。すなわち、自分に来たものだろうが、家族に来たものだろうが、年賀状に対するアクションは2軸しかないので、これに従って分類するのです。(1)住所録:変更する(訂正、削除、新規登録)、変更なし(2)郵便局:持っていく(景品と交換、新しい葉書と交換)、持っていかないということですね。たとえば当選したお年玉付き年賀葉書 → 郵便局で景品に引き換える自分が書き損じた葉書 → 郵便局で新しいものと交換する宛先不明で戻ってきたもの → 住所録から削除するといったところ。まあ大部分の葉書は住所録を変更する必要もないし、郵便局に持っていく必要もありません。なので、残りの少数の葉書をアクション別に分類しておきます。そうすると5つくらいの山になるので、それぞれに「住所新規登録のみ」とか「住所訂正と景品に交換」というアクションを書いたメモを上に貼っておけばOK。1月半ば頃にメモに従って住所録をアップデートし、郵便局に持っていって交換します。最初に分類する時には少しだけ頭を使いますが、後で行動する時には頭を使わなくていいので楽です。この方法は冷蔵庫の食べ物の賞味期限にも応用できます。たとえば、開封してある牛乳を飲んでいいのか悪いのか、という現代人にとっての大問題。これを決める要素は、賞味期限開封後の日数という2つです。賞味期限を過ぎたものは、もちろん捨てるしかありません。また、開封から5日以上経ったら私は賞味期限内であっても捨てています。ヘンなものを飲んだらえらいことになりますから。ということは、開封した時点で捨てるべき日は一義的に決まってしまうので、牛乳パックに「~8月24日」などと書いておけばいいです。飲もうと思った日が8月24日なら躊躇なく飲む。8月25日なら躊躇なく捨てる。ただそれだけ。頭を使わなくていいので楽ですね。では、このアクション指向型メモを日常診療で応用する場面があるのか?私がやっているのは、外来カルテのSOAPの「P」の部分。ここに次の外来診察日にやることを書いておきます。P:〇〇を新たに処方する。次回の外来で効果と副作用のチェック、採血結果の確認。こんな風に書いておくと、次の外来診察の時に患者さんと世間話だけに終始して肝心な事を忘れていた、ということにはならないかと思います。読者の皆様、他にも応用する場面がありましたら、是非、教えてください。最後に1句メモ書いて 未来の自分へ 指示を出す

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