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第4回 GERDを発症・増悪させにくいCa拮抗薬は?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 胃酸などの胃の内容物が食道に逆流して生じる胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease:GERD)の原因の1つに、「下部食道括約筋(Lower esophageal sphincter:LES)」の機能低下があります。LESは胃と食道のつなぎ目にあり、胃酸の逆流を防ぐ筋肉ですが、加齢に伴う機能低下だけでなく、嗜好品や生活習慣および薬剤によっても緩まることがあります。GERDは頻度の高い疾患ですので、これらの悪化要因を把握しておくと服薬指導にとても有用です。MSDマニュアルには、下記の記載があります。「逆流をもたらす要因として、体重増加、脂肪食、カフェイン含有飲料、炭酸飲料、アルコール、喫煙、薬物がある。LES圧を低下させる薬物には、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、カルシウム拮抗薬、プロゲステロン、硝酸薬がある」(参考文献1)より引用)実際、アムロジピンの服用開始後にGERDの症状が悪化したと訴え、医師からの指示でアムロジピンを中止したところ症状が改善した患者さんに、私も会ったことがあります。その件の因果関係は不明ですが、今回はCa拮抗薬とGERDの関連について検討した後ろ向きコホート研究を紹介します。Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.対象となったのは、虚血性心疾患や硝酸薬の使用歴がなく、Ca拮抗薬を使用していた高血圧患者で、GERDの既往の有無および、Ca拮抗薬服用前と服用後でGERD症状に変化があったかどうかについてアンケート調査を行っています。15軒の薬局(地域薬局14軒、病院薬局1軒)から371例が登録され、平均年齢64歳、女性51.2%、男性48.8%でした。信頼度が高い方法というわけではありませんが、地域の薬局で研究を行うには現実的な方法ではないでしょうか。Ca拮抗薬服用前後におけるGERD症状の変化は下表のとおりです。画像を拡大するCa拮抗薬服用前からすでにGERDの症状がある130例中59例(45.4%)で、Ca拮抗薬服用により症状の悪化がみられています。症状の悪化の頻度がもっとも高かった薬剤がアムロジピン(61.3%、p<0.0001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(12.5%)という結果でした。Ca拮抗薬服用前にGERD症状がなかった241例においては、85例(35.3%)がCa拮抗薬服用によりGERDを発症しており、もっとも頻度が高かったのがベラパミル(39.1%、p=0.001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(30.7%)という結果でした。ニフェジピンの増悪リスクはジルチアゼムの4.22倍発症・増悪リスクがもっとも低かったジルチアゼムを基準とした場合の、GERD症状の増悪頻度のオッズ比は下表のとおりです。ニフェジピンやアムロジピンにおいて有意にGERDが増加しています。二フェジピンやアムロジピンの添付文書を参照すると、嘔気・嘔吐や腹部不快感、腹部膨満などGERDに類する副作用症状の記載はありますが、明示的にGERDの記載があるわけではないため見落としに注意が必要です。交絡因子を調整しきれる研究ではないため解釈に注意が必要ですが、血管平滑筋を緩めるCa拮抗薬がLESまで緩めてしまう可能性があることは、患者さんの症状を聞き取る際に頭の片隅に入れておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 胃食道逆流症(GERD)(2018年7月16日参照)2)Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.

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スボレキサントの日本人高齢不眠症患者に対する費用対効果分析

 日本で最も幅広く使用されている睡眠薬であるベンゾジアゼピン受容体作動薬ゾルピデムとオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの費用対効果について、MSD株式会社の西村 晋一氏らが、比較検討を行った。Journal of Medical Economics誌2018年7月号の報告。スボレキサントはゾルピデムよりも費用対効果が優れている 本研究では、不眠症と高齢者に多大な影響を及ぼす股関節骨折リスクを考慮したモデルを用いて検討を行った。公表された論文より、データを収集した。65歳以上の日本人高齢不眠症患者の仮想コホートを対象として研究を実施した。費用対効果の評価には、質調整生存年(QALY)と増分費用効果比を用いた。調査は、医療従事者の視点で行った。 スボレキサントとゾルピデムの費用対効果を検討した主な結果は以下のとおり。・ベースケース分析では、日本人高齢不眠症患者に対するスボレキサント使用は、ゾルピデムと比較し、費用が抑えられており(スボレキサント:252.3ドル、ゾルピデム:328.7ドル)、QALY値が高く(スボレキサント:0.0641、ゾルピデム:0.0635)、スボレキサントがdominant(優位)であることが示唆された。・感度分析では、スボレキサントの股関節骨折の相対リスクにより、アウトカムが優位からdominated(劣位)に変化した。・他のパラメータを範囲の下限から上限まで変化させた場合でも、スボレキサントはゾルピデムと比較して優位であった。・本研究の限界として、本モデルで用いたスボレキサントの股関節骨折の相対リスクは、承認前の臨床試験データに基づいていることから、より正確なデータが必要となる可能性がある。 著者らは「スボレキサントは、ゾルピデムよりも費用対効果が優れており、高齢不眠症患者に対するゾルピデムの代替可能な治療薬である可能性が示唆された。また、感度分析によると、スボレキサントに関連する股関節骨折の相対リスクに応じて、アウトカムが異なる可能性がある」としている。

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心房細動患者の心筋梗塞リスク、DOAC vs. ビタミンK拮抗薬【Dr.河田pick up】

 長い間、心房細動患者の血栓塞栓症予防にはビタミンK拮抗薬が使用されてきた。直接経口抗凝固薬(DOAC)が、ビタミンK拮抗薬に有効性および安全性で劣らないことからDOACの使用が増えてきているが、DOACとビタミンK拮抗薬のどちらがより心筋梗塞の予防に有効かについてのエビデンスは一致しておらず、結論が出ていない。この研究はアピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンそしてビタミンK拮抗薬を服用中の心房細動患者における、心筋梗塞リスクを調べることを目的に実施された。Journal of American College of Cardiology誌2018年7月3日号掲載の、デンマークのグループが発表した後ろ向き観察研究の結果より。デンマークのレジストリより3万1,739例の心房細動患者を抽出 心房細動の患者はデンマークヘルスケアレジストリを用いて同定され、最初に処方された抗凝固薬によって層別化された。標準化された1年間の絶対リスクとして、心筋梗塞による入院と死亡に対するハザード比がCox回帰分析を用いて求められた。経口抗凝固薬に対する絶対リスクは別々に報告され、患者の特徴に応じて標準化された。2013~16年の間に心房細動と診断され、抗凝固薬未使用の患者3万4,755例のうち、弁膜症による心房細動患者、30歳未満もしくは100歳を超える患者、および慢性腎不全の患者が除かれた。DOACはビタミンK拮抗薬よりも心筋梗塞リスクが低い 試験に組み入れられた3万1,739例(平均年齢:74歳、47%が女性)のうち、標準化された1年間の心筋梗塞リスクは、ビタミンK拮抗薬1.6%(95%信頼区間[CI]:1.3~1.8)、アピキサバン1.2%(95%CI:0.9~1.4)、ダビガトラン1.2%(95%CI:1.0~1.5)、そしてリバーロキサバン1.1%(95%CI:0.8~1.3)であった。DOACの種類で標準化された1年間の心筋梗塞リスクに有意な差は認められなかった〔ダビガトラン vs.アピキサバン(0.04%、95%CI:-0.3~0.4%)、リバーロキサバンvs.アピキサバン(0.1%、95%CI:-0.4~0.3%)、リバーロキサバン vs.ダビガトラン(-0.1%、95%CI:-0.5~0.2)〕。DOACとビタミンK拮抗薬の間ではいずれも有意な差が認められた〔ビタミンK拮抗薬 vs.アピキサバン-0.4% (95%CI:-0.7~-0.1)、 vs.ダビガトラン-0.4% (95%CI:-0.7~-0.03)、vs.リバーロキサバン-0.5% (95%CI:-0.8~-0.2)〕。 筆者らはDOACの種類では心筋梗塞リスクに違いはみられなかったが、ビタミンK拮抗薬と比べると、どのDOACも心筋梗塞のリスクが低かったと結論付けている。しかしながら、後ろ向き観察研究のため、なぜ医師がDOACでなくビタミンK拮抗薬を選んだかなどはわからず、交絡因子が隠されている可能性もあり、さらなる研究が必要と考えられる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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腎交感神経除神経降圧療法と降圧薬(解説:冨山博史氏)-885

研究の概要 研究対象は、カルシウム拮抗薬、利尿薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、ベータ遮断薬のいずれか、または複数の降圧薬の最大容量の50%以上の服用でも血圧コントロールが十分でない症例80例である。高周波カテーテルによる腎交感神経除神経(RND)実施群(38例)および対照群(42例)の治療後6ヵ月の血圧変化を24時間血圧測定にて評価した。RND群では、対照群に比べて24時間収縮期血圧が7.4mmHg有意に低下し、RNDの有意な降圧効果を示した。研究の背景と臨床的意義 RNDの降圧効果を評価するには、3つの重要確認事項がある。第1に血圧評価方法であり、診察室血圧では変動する血圧の降圧効果を評価することは不十分である。本研究では24時間血圧測定の結果よりRNDの有意な降圧効果を報告した。第2は、併用する降圧薬の影響である。RNDの対象は、難治性高血圧例が適切と現時点では考えられている。本研究に先行するSPYRAL OFF研究は、降圧薬非服用症例にてRNDの有意な降圧効果を報告した。しかし、実臨床では降圧治療服用下でのRNDの有効性を確認することが重要である。2014年に発表されたSYMPLICITY HTN-3研究では、RNDで有意な降圧効果を認めなかったことを報告した。しかし、その背景として降圧薬服用アドヒアランス不良が結果に影響した可能性が指摘されている。本研究では、血圧・尿検査にて降圧薬服用アドヒアランスを確認し、RND群、対照群に服薬アドヒアランスに差がないことを確認している。このように、本研究はRNDの降圧効果を検証するための2つの事項が確認されている。 3つ目の重要事項は、RND実施確実性の確認である。本研究では、RND実施確実性は直接検証されていない。しかし、24時間血圧評価にて降圧薬の最も影響の少ない朝夕のThroughの時間帯でもRND群では、血圧・心拍数の2重積が対照群に比べて有意に小さいことを確認している。この所見から、RNDにより腎交感神経活性が低下したと推察している。研究の今後 本研究では、服薬アドヒアランス良好例の割合が60%と報告しているが、研究症例数は80例と少ない。今後、RNDの効果と服薬アドヒアランスの関係(アドヒアランス不良群でRNDはより有効か)および降圧薬の種類によるRND有効性の差異を検証する必要がある。

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これからの心不全治療、認識新たに【東大心不全】

高齢化に伴い急増する心不全。今後も、より大きな問題となる心不全に、どう対応していくべきか。東京大学循環器内科学 教授 小室一成氏に聞いた。わが国の心不全の現状について教えてください。画像を拡大する画像を拡大する日本の心不全患者数は、現在、推計100万人。その数は2030年まで増え続け、130万人を超えるといわれています。増加は日本だけでなく、米国、欧州などの先進諸国やアジア、アフリカ諸国でもみられます。理由は高齢化です。心不全の発症は高齢者、とくに65歳を超えると急増します。わが国は高齢化が最も進んでいますので、心不全が今後大きな問題になることは間違いないといえます。わが国の心不全治療の現状について教えていただけますか。心不全の治療は、あらゆる疾患の中で最も確立されています。心不全リスク群であるステージAおよびBでは、器質的心疾患の発症・進展予防を、症候性の心不全であるステージCでは、症状コントロールを行います。とくに、ACE、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、心不全に対する複数の大規模臨床試験によって、生存予後を20~30%改善するというエビデンスがあります。また、最重症のステージDでは、適応があれば、心臓移植となりますが、わが国はこの分野でも成績は良好で、海外の心移植後5年生存率が8割程度なのに対し、日本では9割を超えます。さらに、移植待機中のLVAD治療についても良好な結果を示しています。しかし、問題点もあります。薬剤は有効であるものの、すべて対症療法です。移植についても、わが国ではドナーが少なく、移植までの待機期間は平均3年。世界でも飛び抜けて長いといえます。この待機期間は今後さらに伸びると予想され、ドナーを増やすよう活動していく必要があると思っています。学会としての取り組みについて教えていただけますか。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する一昨年(2016年)、日本循環器学会と脳卒中学会を中心に「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を作成しました。“健康寿命の延伸”と“5年で5%の死亡率減少”を大目標とし、5戦略(医療体制の充実、人材育成、予防・国民への啓発、登録事業の促進、臨床・基礎研究の強化)と3疾患を定めました。3疾患は脳卒中、血管病、そして、現在、循環器疾患の死亡で最も多い心不全です。心不全における5戦略、1つ目は医療体制の構築です。心不全患者さんの多くは、入院治療により改善して退院しますが、退院後の生活習慣、服薬指導が重要なのです。これを怠ると、急性増悪を繰り返しながら悪化し、最終的に命を落とすことになります。これを防ぐためには、専門病院から慢性期、在宅までの診療をシームレスに行える、心不全を念頭に置いた医療体制を作ることが必要です。2つ目は人材育成です。このように心不全は退院後が非常に重要なので、患者さんと密接な関係にある、実地医家の医師やメディカルスタッフの人材育成が重要になります。画像を拡大する3つ目は、予防・国民への啓発です。心不全は重症度に応じて4つの予防チャンスがあります。塩分・脂質過多、喫煙、多量飲酒、運動不足といった生活習慣の改善による0次予防。肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常の改善による心臓病にならないための、ハイリスク群の1次予防。そして、心不全の早期治療と再発予防による2~3次予防。最後は突然死の予防です。しかし、このチャンスも、患者さんに“心不全は予防できる”、ということをご理解いただかないと活かせません。そのために、アニメキャラクター「ハットリシンゾウ」を啓発大使とし、「シン・シン(心臓・身体)健康プロジェクト」を展開しています。そこでは、一般の方にわかりにくかった心不全の定義を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」とし、疾患としての認知促進を図っています。4つ目は登録事業の促進です。前述のとおり、日本の心不全患者数は100万人とされますが、この数字は新潟県佐渡市の統計から推計したものです。正確な統計ではありません。心不全患者がわが国に何人おり、どのような治療が行われていて、どのような地域差があるのか、こういった実態をレジストリで明らかにすることを考えています。5つ目は基礎研究です。これも前述のとおり、心不全の治療薬は有効であるものの、対症療法です。心不全発症の分子機序を解明して、それに基づいた新薬や新デバイスの開発をしないと、急増する心不全を減らすことはできません。そのためにも、メカニズムを明らかにする基礎研究が重要だと考えています。今年(2018年)の日本循環器学会学術集会で、「急性・慢性心不全診療ガイドライン」の改訂が発表されました。今回のガイドラインの大きな改訂ポイントは、急性と慢性の統合、ステージングの明確化、予防の重要性の強調です。急性と慢性を統合した理由は、急性心不全の多くは慢性心不全の増悪であるからです。心不全では、急性期に入院し、回復して退院しますが、その状態は慢性心不全の継続です。状態は入院前よりも悪化しています。それが理解されないと、入退院の繰り返しにつながります。今回のガイドラインでは、症状とリスク因子などを示し、患者さん自身が、どのステージングにおり、何をすべきか一目でわかるように工夫しています。東京大学での取り組みについて教えていただけますか。わが国の心臓移植は、東京大学、大阪大学、国立循環器病研究センターの3施設で8割、東京大学では、全国の4分の1を担っています。また、東京大学は交通の便が良いこともあり、遠方からも多くの心不全患者さんが受診されます。そのような中、2017年12月、新病棟に高度心不全治療センターを開所しました。同センターでは、移植待機、移植後など多くの重症心不全患者さんを、心臓外科と循環器内科がワンフロアで診療しています。場合によっては、3~4年入院して移植を待つこともあるため、快適な病室やリハビリテーション設備に工夫を凝らしています。また、東京大学では、循環器内科と心臓外科が一体となって、心不全を含めたあらゆる循環器疾患の最後の砦になるため、ほかの施設では治療できない重症患者さんを引き受けて治療しています。多くの施設から相談を受けますが、必要があれば、施設に伺って患者さんを拝見させていただきますし、場合によっては当院への入院を勧めています。最後に先生方にメッセージをお願いします。大学・大病院では心不全の急性増悪患者さんを診療します。それらの患者さんの多くは退院されますが、2度と急性増悪しないことが、最も重要です。とはいえ、退院していったケースは、大学や大病院では十分に管理できません。患者さんと密接な関係にある実地医家の方々に、患者さんの日常生活や服薬などを注意していただくことで、初めて急性増悪が防げるのです。このように、心不全治療は、専門施設と実地医家が連携を深め、一体となって行う必要があります。実地医家の先生方にも心不全をご理解いただき、共に診療にあたっていただければと思います。講師紹介

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降圧薬が皮膚がんのリスク増加に関連

 米国・マサチューセッツ総合病院のK.A. Su氏らによる調査の結果、光感作性のある降圧薬(AD)による治療を受けた患者では、皮膚の扁平上皮がん(cSCC)のリスクが軽度に増加することが明らかになった。多くのADは光感作性があり、皮膚の日光に対する反応性を高くする。先行の研究では、光感作性ADは口唇がんとの関連性が示唆されているが、cSCCの発症リスクに影響するかどうかは不明であった。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年5月3日号掲載の報告。 研究グループは、北カリフォルニア州の包括的で統合的なhealthcare delivery systemに登録され、高血圧症に罹患した非ヒスパニック系白人のコホート研究において、ADの使用とcSCCリスクとの関連を調べた。ADの使用については電子データを用いて分析。ADは、公表論文に基づいて、光感作性(α2刺激薬、利尿薬[ループ系、カリウム保持性、サイアザイド系および配合剤])、非光感作性(α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経抑制薬およびARB)または光感作性不明(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、血管拡張薬およびその他の配合剤)に分類された。 Coxモデルを用いて補正ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。共変量は、年齢、性別、喫煙、合併症、cSCCおよび日光角化症の既往歴、調査年、医療制度の利用、医療保険会員の期間、光感作性ADの使用歴とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に、cSCCを3,010例が発症した。・AD不使用群と比較し、cSCCのリスクは、光感作性AD使用歴ありの群(aHR:1.17、95%CI:1.07~1.28)、光感作性不明AD使用歴ありの群(aHR:1.11、95%CI:1.02~1.20)で増加したが、非光感作性AD使用歴ありの群では関連は認められなかった(aHR:0.99、95%CI:0.91~1.07)。・光感作性ADの処方数の増加に伴い、cSCCのリスクが軽度に増加した。1~7剤(aHR:1.12[95%CI:1.02~1.24])、8~15剤(同:1.19[1.06~1.34])、16剤以上(同:1.41[1.20~1.67])。

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抗血小板薬2剤併用、CABG後グラフト開存率を改善/JAMA

 チカグレロル+アスピリンによる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、アスピリン単剤に比べ、冠動脈バイパス術(CABG)後1年時の伏在静脈グラフトの開存率を改善することが、中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のQiang Zhao氏らが行った多施設共同試験(DACAB試験)で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年4月24日号に掲載された。CABG後の伏在静脈グラフトの開存に及ぼす、アスピリン+P2Y12受容体拮抗薬によるDAPTの効果については、いくつかの小規模な短期的臨床試験で相反する結果が報告されているという。1年後のグラフト開存率を3群で比較 研究グループは、CABG後の伏在静脈グラフトの開存におけるチカグレロル+アスピリンおよびチカグレロル単剤の効果を、アスピリン単剤と比較する非盲検無作為化試験を実施した(AstraZeneca社の助成による)。 対象は、年齢18~80歳の待機的CABGの適応例であった。緊急血行再建術、他の心臓手術の併用、CABG後にDAPTまたはビタミンK拮抗薬を要する患者や、重篤な出血のリスクを有する患者は除外された。 被験者は、CABG後24時間以内にチカグレロル(90mg×2回/日)+アスピリン(100mg/日)、チカグレロル単剤(90mg×2回/日)、アスピリン単剤(100mg/日)を投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、1年間の治療が行われた。 主要アウトカムは、1年後の伏在静脈グラフトの開存(FitzGibbon分類:GradeA[狭窄<50%])とし、割り付け情報を知らされていない審査委員会が独立に判定を行った。探索的な事後解析として、グラフト非閉塞(GradeA+B[狭窄≧50%])の評価も行った。開存の評価には、マルチスライスCT血管造影法または冠動脈血管造影法を用いた。 2014年7月~2015年11月の期間に、中国の6つの3次病院に500例が登録された。2剤併用群に168例、チカグレロル単剤群に166例、アスピリン単剤群には166例が割り付けられた。1年グラフト開存率:88.7%、82.8%、76.5% ベースラインの全体の平均年齢は63.6歳で、91例(18.2%)が女性であった。461例(92.2%)が試験を完遂した。 1年時のグラフト開存率は、併用群が88.7%(432/487グラフト)、チカグレロル単剤群が82.8%(404/488グラフト)、アスピリン単剤群は76.5%(371/485グラフト)であった。併用群とアスピリン単剤群の差は12.2%(95%信頼区間[CI]:5.2~19.2)であり、有意な差が認められた(p<0.001)のに対し、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群の差は6.3%(-1.1~13.7)と、有意差は認められなかった(p=0.10)。 7日時のグラフト開存率には、併用群とアスピリン単剤群(94.9 vs.91.1%、p=0.11)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(94.3 vs.91.1%、p=0.17)のいずれの比較においても、有意な差はみられなかった。 事後解析では、1年時のグラフト非閉塞率は、併用群がアスピリン単剤群に比べ高かった(89.9 vs.80.6%、p=0.006)が、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(86.1 vs.80.6%、p=0.17)には差がなかった。また、7日時の非閉塞率は、併用群とアスピリン単剤群(95.3 vs.92.8%、p=0.26)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(95.7 vs.92.8%、p=0.16)のいずれの比較においても、有意な差はなかった。 主要有害心血管イベント(MACE:心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中)は、併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群が4例(2.4%)、アスピリン単剤群は9例(5.4%)で発現し、大出血は併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群は2例(1.2%)に認められた。 著者は、「相対的な出血リスクの評価には、患者数を増やしたさらなる検討を要する」としている。

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心不全ガイドラインを統合·改訂(後編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会が、新たな心不全診療ガイドラインを公表した。本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。今回は後編。(前編はこちら)新たな心不全ガイドラインは診断フローチャートを簡略化 慢性心不全診断のフローチャートは、2010年版ガイドラインから大幅に簡略化された。基本的には欧州心臓病学会(ESC)の2016年版ガイドライン(Ponikowski P, et al. Eur Heart J.2016;37:2129-2200)を下敷きとしながらも、わが国の実態を踏まえ、画像診断を重視するチャートになっている。急性心不全治療のフローチャートも新規作成 「時間経過と病態を踏まえた急性心不全治療フローチャート」や、「重症心不全に対する補助人口心臓治療のアルゴリズム」の作成、「併存症の病態と治療」に関する記載の充実も新たな心不全診療ガイドラインの主要な改訂ポイントのひとつである。併存症は、心房細動、心室不整脈、徐脈性不整脈、冠動脈疾患、弁膜症、高血圧、糖尿病、CKD・心腎症候群、高尿酸血症・痛風、COPD・喘息、貧血、睡眠呼吸障害について記載されている。心不全合併高血圧には、4種薬剤が推奨クラスI、エビデンスレベルA 新たな心不全診療ガイドラインでは、高血圧を合併したHFrEFに対する薬物治療は、ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬に忍容性のない患者に対する投与)、β遮断薬、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の[推奨クラス、エビデンスレベル]が[I、A]、利尿薬が同上[I、B]、カルシウム拮抗薬が同上[IIa、B]とされた。なお、長時間作用型のジヒドロピリジン系以外のカルシウム拮抗薬は陰性変力作用のため使用を避けるべきと注記されている。 高血圧を合併したHFpEFに対する治療は、適切な血圧管理が同上[I、B]、基礎疾患の探索と治療が同上[I、C]とされた。心不全合併糖尿病には、包括的アプローチとSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)を推奨 心不全を合併した糖尿病に対する治療は、食事や運動など一般的な生活習慣の改善も含めた包括的アプローチが同上[I、A]、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が同上[IIa、A]、チアゾリジン薬が同上[III、A]とされた。CKD合併心不全は、CKDステージで推奨レベルが異なる CKD合併心不全に対する薬物治療は、CKDステージ3とステージ4~5に分けて記載されている。 CKDステージ3においては、β遮断薬、ACE阻害薬、MRAが同上[I、A]、ARBが同上[I、B]、ループ利尿薬が同上[I、C]となっている。CKDステージ4~5においては、β遮断薬が同上[IIa、B]、ACE阻害薬が同上[IIb、B]、ARB、MRAが同上[IIb、C]、ループ利尿薬が同上[IIa、C]とされた。新たな心不全ガイドラインでは血清尿酸値にも注目 心不全を伴う高尿酸血症の管理においては、血清尿酸値の心不全の予後マーカーとしての利用が[IIa、B]、心不全患者における高尿酸血症への治療介入が[IIb、B]とされた。国内未承認の治療法も参考までに紹介 海外ではすでに臨床応用されているにもかかわらず、国内では未承認の治療薬やデバイスがある。ARB/NEP阻害薬(ARNI)や、Ifチャネル阻害薬などだ。これらの薬剤は「今後期待される治療」という章で、開発中の治療と並び紹介されている。

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低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究

 低用量スタチンを服用している日本人の糖尿病新規発症リスクはこれまで検討されていない。今回、秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らは、低用量スタチン服用患者を、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価した。その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かった。さらに、ステロイドや免疫抑制薬との併用で発症リスクが上昇するため、注意が必要と指摘している。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2018年2月26日号に掲載。 本研究は、スタチン治療を開始した日本人患者2,554例の後ろ向きコホート研究である。同じスタチンの同じ用量を服用している患者のみ登録し、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けた。アウトカムはスタチン治療中の糖尿病新規発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・本コホートにおける糖尿病新規発症率は7.4%(n=190)であった。・カプランマイヤー生存曲線により、低力価スタチン服用患者に比べ高力価スタチン服用患者において糖尿病新規発症率が有意に高いことが示された(p<0.001、log-rank検定)。・Cox比例ハザード回帰分析により、糖尿病新規発症リスクを有意に増加させる因子として、ベースライン時の空腹時血糖、高力価スタチン使用、男性、Ca拮抗薬・免疫抑制薬・ステロイドとの併用が特定された。

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トリプルセラピーは重症COPD患者の中等度以上の増悪を減らすことができるのか?(解説:山本寛 氏)-821

 慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)、とくに重症のCOPDに対する治療は長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA)の吸入、長時間作用性β2刺激薬(long-acting β2 agonist:LABA)の吸入を軸に、吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)が上乗せされることが多かった。確かに重症COPDには気管支喘息の合併、いわゆるACO(Asthma and COPD Overlap)が多く、また、喘息を合併していない場合でも、好酸球性気道炎症は重症COPDで多く認められ、ICSが本質的に有用な患者は存在する。しかし、十分な証拠もなくICSを追加してしまう場合も多いだろう。ICS/LABAが第1選択であると誤解されていることもあるようだ。一方、COPDに対してICSを上乗せすると肺炎の合併が多くなることは従来から指摘されていて、最新2017年のGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では、一旦追加したICSを中止することも選択肢の1つとして提示されている。 一方、吸入療法の選択を考える場合、吸入薬の薬理作用だけでなく、吸入デバイスが何であるか、という点も重要なポイントである。低肺機能の患者にとって、ドライパウダー製剤(Dry Powder Inhaler:DPI)の吸入は実効を得にくいこともある。また、複数のデバイスの仕様を覚えることは患者にとっては大変な苦痛であり、実際にデバイスの使用方法を間違えてしまうことで吸入の実効が得られないこともある。したがって、複数の薬剤を1つのデバイスで吸入でき、しかもそのデバイスの操作が簡便で理解しやすいものであれば、それは治療の効果をより確実なものにする可能性があり、患者利益に直結するものとなる。 本研究はベクロメタゾン、ホルモテロール、グリコピロニウムの3剤を1つのデバイスで吸入できるMDI(Metered Dose Inhaler)製剤とインダカテロール、グリコピロニウムの2剤を1つのデバイスで吸入できるDPI製剤を比較して、中等度~重度のCOPD増悪のイベント発生頻度を52週間の観察期間にわたり追跡した二重盲検併行群間ランダム化比較試験=TRIBUTE試験である。結果の判断に注意が必要な点としては、Chiesi Farmaceuticiという企業の経済的支援の下で行われている試験であり、この企業がベクロメタゾン、ホルモテロール、グリコピロニウムのトリプル製剤をすでに上市している企業であるという点は挙げなければならない。また、本試験で用いられたインダカテロール、グリコピロニウムの合剤は本邦と同じBreezhaler製剤ではあるが、薬効成分の含有量が異なる(本研究:インダカテロール85μg/グリコピロニウム43μg、本邦流通品:110μg/50μg)点にも注意が必要である。 さて、本研究には17ヵ国、187の医療機関が参加し、(1)%FEV1(%1秒量)が50%未満という高度ないしきわめて高度の気流閉塞を伴う、(2)直近1年間に中等度から重度の急性増悪が1回以上、(3)吸入薬の維持療法をすでに行っている症候性、というCOPDの患者1,532例を対象に行われている。試験参加に当たっては、吸入薬の前治療が、ICS+LABA、ICS+LAMA、LABA+LAMA、LAMA単剤の4通りいずれかである場合のみ参加可能であり、その後導入期間として2週間、インダカテロール、グリコピロニウム2剤をDPI製剤で吸入したうえで、ベクロメタゾン、ホルモテロール、グリコピロニウムの合剤をMDI製剤で1日2回吸入する群(BDP/FF/G群)764例とインダカテロール、グリコピロニウムの合剤をDPI製剤で1日1回吸入する群(IND/GLY群)768例にランダム化された。主要評価項目は、治療52週間における中等度~重度COPD増悪のイベント発生頻度である。 主要評価項目である中等度~重度COPD増悪の頻度は、IND/GLY群の0.59/患者年(95%信頼区間[CI]:0.53~0.67)に対し、BDP/FF/G群が0.50(CI:0.45~0.57)で、その率比は0.848(CI:0.723~0.995、p=0.043)と有意なイベント減少が示された。有害事象の発現率は、BDP/FF/G群64%、IND/GLY群67%と両群で同等で、注目の肺炎の発症率は、両群ともに4%で有意差を認めなかった。治療関連の重篤な有害事象は、両群ともに1例ずつ(BDP/FF/G群:排尿障害、IND/GLY群:心房細動)が報告された。 今回の結果から、BDP/FF/GのトリプルセラピーはIND/GLYのデュアルセラピーと比べて、中等度~重度のCOPD増悪を15%減らす効果があるとみることができるが、果たしてこの結果から、「重症COPDにはトリプルセラピーを!」と単純に推奨できるだろうか? それは否である。本試験の患者背景に注目してみよう。患者の年齢はBDP/FF/G群が64.4±7.7歳、IND/GLY群が64.5±7.7歳(mean±SD)であり、本邦のCOPD患者が70歳以上の高齢者に多いことと比較すれば、明らかに若年者を対象とした研究であるといえる。また、Body Mass Index(BMI)についてもBDP/FF/G群が25.7±5.1kg/m2、IND/GLY群が26.6±5.4kg/m2であり、本邦のCOPD患者に多い痩せ型COPDはむしろ少数派であろう。また、COPDの臨床的phenotypeに関しても、chronic bronchitis(慢性気管支炎)型がBDP/FF/G群で57%、IND/GLY群で55%含まれており、対するemphysema(肺気腫)型はBDP/FF/G群で30%、IND/GLY群で31%しか含まれていない。すなわち、本邦のCOPDのほとんどを占める肺気腫型があまり含まれていなかったことになる。今回の試験のサブ解析では、慢性気管支炎型のCOPD患者において中等度~高度のCOPD増悪の発生頻度がBDP/FF/G群で有意に低い(率比0.752、CI:0.605~0.935、p=0.010)ことが示された一方で、肺気腫型の場合はまったく差がみられないようである(appendixに示されたフォレストプロットによれば、率比0.995で、CI値、p値は非公表であるが、CIは明らかに全体集団の率比0.848より大きく、また1をまたいでいる)。一方、好酸球分画が2%以上のサブセットでみると、BDP/FF/G群で率比0.806(CI:0.664~0.978、p=0.029)と有意なイベント減少が示されている。 以上から、本試験の結果を本邦のCOPD患者に外挿し適用することは難しいと考えられる。ただし、本邦においても存在する、「青ぶくれ=blue bloater」型の肥満COPD患者や好酸球性気道炎症の関与が推定されるCOPD患者においては、ICSを追加した治療が有効である可能性がある。また、1つのデバイスで吸入を完了できることのメリットはとくに高齢であるほど大きいと思われ、上記のようなphenotypeを示す高齢患者においては有用な選択肢となるかもしれない。今回の試験でBDP/FF/G群はMDI製剤での吸入を行っている。先述のとおり、重症COPDではDPI製剤の有効な吸入ができない可能性があり、MDI製剤で吸入できたBDP/FF/G群にはより有利だった可能性がある。臨床試験に参加する患者群は、日常臨床の患者群と比較して吸入アドヒアランスが高い集団である可能性が高く、今回の試験結果を実臨床に落とし込む場合は、アドヒアランスが低下しやすいデバイスを使用する患者層で、効果が大きく落ちてしまう可能性があることにも注意が必要である。トリプル製剤が本邦で上市される日がいずれ訪れると思われるが、その際はICSを上乗せするメリットのある患者層を見極め、デバイスの特性や吸入アドヒアランスに配慮した治療選択を行うことがより一層重要となるだろう。

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軽~中等度アルツハイマー病に新薬idalopirdineは有効か/JAMA

 選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬idalopirdineは、軽度~中等度アルツハイマー病(AD)患者の認知機能を改善しないことが、米国・California Pacific Medical CenterのAlireza Atri氏らが、idalopirdineの24週間投与の有効性を検証した3件の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(STARSHINE、STARBEAM、STARBRIGHT)の結果を報告した。アルツハイマー病は、高齢者での有病率が上昇し、治療費も増加していることから、新たな治療法が必要とされているが、今回の結果を受けて著者は、「アルツハイマー病の治療にidalopirdineを用いることは支持されない」とまとめている。JAMA誌2018年1月9日号掲載の報告。軽度~中等度アルツハイマー病患者2,525例でidalopirdine併用の有効性を評価 研究グループは2013年10月~2017年1月に、STARSHINE試験、STARBEAM試験およびSTARBRIGHT試験を行った。対象は、50歳以上の軽度~中等度アルツハイマー病患者2,525例(各試験参加者は933例[119施設]、858例[158施設]、734例[126施設])であった。 STARSHINE試験およびSTARBEAM試験ではドネペジル(商品名:アリセプトほか)、STARBRIGHT試験ではドネペジル、リバスチグミン(同イクセロン、リバスタッチ)またはガランタミン(同レミニール)に、idalopirdine(10mg、30mg、60mg)またはプラセボを24週間併用投与した(最終追跡調査は2017年1月12日)。 主要エンドポイントは、11項目の認知機能評価スコア(Alzheimer's Disease Assessment Scale cognitive subscale[ADAS-cog]:0~70点の範囲で得点が低いほど障害は少ないことを示す)。キー副次エンドポイントは、全般的臨床症状評価(AD Cooperative Study-Clinical Global Impression of Change[ADCS-CGIC])の変化尺度と23項目評価の日常生活動作(ADCS-ADL:ADCS-Activities of Daily Living scale)のスコアであった。主要エンドポイントおよび1つ以上のキー副次エンドポイントについて、プラセボに対し有意差が認められた場合に、その投与群は有効であるとした。認知機能評価スコアの変化、idalopirdineとプラセボで有意差なし 2,525例(平均年齢74歳、ベースラインのADAS-Cogスコア平均26点、女性が62~65%)のうち、2,254例(89%)が試験を完遂した。 ADAS-Cogスコアの24週時におけるベースラインからの変化量は、STARSHINE試験でidalopirdine 60mg群0.37、同30mg群0.61に対し、プラセボ群0.41であった(プラセボ群との補正後平均差:60mg群0.05[95%信頼区間[CI]:-0.88~0.98]、30mg群0.33[95%CI:-0.59~1.26])。STARBEAM試験では、idalopirdine 30mg群1.01、同10mg群0.53に対し、プラセボ群0.56であった(対プラセボの補正後平均差:30mg群0.63[95%CI:-0.38~1.65])。STARBRIGHT試験では、idalopirdine 60mg群0.38に対し、プラセボ群0.82であった(補正後平均差:-0.55[95%CI:-1.45~0.36])。 治療下に発現した有害事象(TEAE)の発現率は、idalopirdine群で55.4%~69.7%、プラセボ群で56.7%~61.4%であった。

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重症喘息の現状とアンメットメディカルニーズ

 アストラゼネカ株式会社は、日本で専門医を受診している成人喘息患者を対象とした調査研究であるACQUIRE-2試験のサブグループ解析を発表し、その結果からコントロール不良の重症喘息患者におけるQOL低下とアンメットメディカルニーズの存在が示唆された。重症喘息の病態 喘息は、治療を行うことである程度まで良好にコントロールできるようになったものの、吸入ステロイド薬を含む強力な治療を行ってもその効果が十分に現れず、症状をコントロールできない場合がある。症状のコントロールに高用量吸入ステロイド薬および長時間作用性β2刺激薬(LABA)、加えてロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、テオフィリン徐放製剤、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、経口ステロイド薬(OCS)、抗IgE抗体の投与を要する喘息、またはこれらの治療でもコントロールができないような喘息を「重症喘息」または「難治性喘息」という。 ACQUIRE-2試験では、高用量の吸入ステロイド薬と長期管理薬の併用治療を受けている、または経口ステロイド薬を長期管理薬として使用していて、次のいずれかに当てはまる場合に「コントロール不良の重症喘息」と定義した。 ・ACQスコア1)が1.5超 ・全身ステロイド投与が連続3日以上必要な喘息の増悪を研究への登録の前年に2回以上経験 ・1秒量(FEV1)が80%未満 また、喘息にはさまざまな病態が関与しており、好酸球性、好中球性、アレルギー性などのフェノタイプが特定されてきた。このうち、喘息の重症化には好酸球が大きく関わると考えられており、海外では重症喘息患者の半数以上が好酸球性喘息であるとの報告もある2)。コントロール不良な重症喘息患者の現状 ACQUIRE-2試験では、解析の対象となった喘息患者のうち12.3%がコントロール不良の重症喘息患者であると特定された。さらに、そのうち75.3%が夜間症状を経験し、27.2%が睡眠障害を経験していることが明らかとなった。コントロール不良な喘息は日常生活に与える影響が大きく、患者QOLが著しく低下する。発作が命にかかわることもあり、コントロール不良の重症喘息患者の死亡リスクは重症喘息患者の8倍とも言われている3-4)。生物学的製剤の可能性 そのような中、生物学的製剤への期待が高まっている。生物学的製剤は、IgG抗体やサイトカインなどの炎症物質に直接的に作用するため、喘息の重症化予防の観点からも効果が期待されている。現在、喘息に使用可能な生物学的製剤はオマリズマブ(抗IgE抗体)、メポリズマブ(抗IL-5抗体)の2剤であるが、それに加えて抗IL-5抗体であるbenralizumabの開発が進んでいる。 benralizumabは、第III相試験であるSIROCCO試験およびCALIMA試験において、コントロール不良の好酸球性重症喘息に対する効果を示した。標準治療にbenralizumab 30mgを追加することで、症状の増悪頻度の有意な低減(benralizumab投与群とプラセボ群とを比較して年間喘息増悪率が最大51%低下)が認められたほか5)、CALIMA試験の日本人患者83例を対象としたサブグループ解析では、benralizumabの56週投与は、プラセボ群と比較して喘息増悪の年間発生率を最大83%低下させた6)。 benralizumabの使用により、経口ステロイド薬減量の可能性が4倍以上高いことも示されており7)、生物学的製剤は重症喘息患者のQOL改善にも効果が期待できる。重症喘息患者のアンメットメディカルニーズを満たす薬剤として、生物学的製剤が希望をもたらす存在となりつつある。■参考1)Juniper EF, et al. The European Respiratory Journal. 1999;14:902-907.2)Schleich F, et al. Respir Med. 2014;108:1723-1732.3)Price D, et al. NPJ Prim Care Respir Med. 2014;12:14009.4)Fernandes AG, et al. J Bras Pneumol. 2014;40:364-372.5)Bleeker ER, et al. Lancet. 2016;388:2115-2127.6)FitzGerald JM, et al. Lancet. 2016;388:2128-2141.7)Nair P, et al. N Engl J Med. 2017;376:2448-2458.

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統合失調症と自閉スペクトラム症における白質代謝率の増加

 統合失調症や自閉スペクトラム症は、しばしば白質の障害を有する。統合失調症におけるさまざまな白質領域における代謝率、脳灌流、基礎活動の上昇が、数々の研究で報告されているが、自閉スペクトラム症では研究されていなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のSerge A. Mitelman氏らは、自閉スペクトラム症患者(25例)と統合失調症患者(41例)および健常対照者(55例)の白質代謝率を、定位的に配置された関心領域について幅広く比較するため、18F-FDGポジトロン断層法(PET)を用いて、検討を行った。Brain imaging and behavior誌オンライン版2017年11月22日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・自閉スペクトラム症患者および統合失調症患者において、内包、脳梁、白質の前索、側頭葉を含む評価された白質領域にわたり、代謝率の増加が認められた。・これらの増加は、統合失調症患者よりも自閉スペクトラム症患者において、より顕著で、より広範かつ非対称であった。・両疾患の患者において、最も高い代謝率の増加は、前頭前白質および内包前脚で認められた。・健常対照者と比較し、白質代謝の差は、あまり顕著ではなかった。近接する白質代謝の差は、統合失調症患者よりも自閉スペクトラム症患者で、より顕著であった。 著者らは「統合失調症および自閉スペクトラム症は、白質全体にわたる代謝活性の増加と関連していた。灰白質と異なり、白質代謝異常のvectorは、統合失調症と自閉スペクトラム症で類似していると考えられ、代償性の代謝亢進を伴う非効率的な機能的連結性を反映する可能性があり、神経発達障害の共通の特徴である」としている。■関連記事初回エピソード統合失調症の灰白質に対するω-3脂肪酸の影響日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果はドパミンD2/3受容体拮抗薬、統合失調症患者の脳白質を改善

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fremanezumabとerenumabは片頭痛の予防治療に有効(中川原譲二氏)-789

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)受容体を阻害するヒトモノクローナル抗体であるfremanezumabとerenumabは、ともに片頭痛の予防治療薬として研究されているが、両薬剤の第III相試験でその有効性が相次いで報告された。1)慢性片頭痛の予防治療としてのfremanezumab第III相試験fremanezumabを3ヵ月に1回、または毎月投与で有効性を検討 米国・トーマス・ジェファーソン大学のStephen D.Silberstein氏らの研究グループは、2016年3月~2017年1月の間、132施設において、慢性片頭痛患者(持続時間や重症度にかかわらず頭痛が月に15日以上あり、そのうち片頭痛が8日以上ある患者)1,130例を対象として、無作為に以下の3群に割り付けた。(1)fremanezumabを3ヵ月に1回投与(ベースライン時675mg、4、8週時はプラセボを投与、376例:3ヵ月ごと投与群)、(2)毎月投与(ベースライン675mg、4、8週時は225mg投与、379例:月1回投与群)、(3)プラセボ投与(375例)。薬剤、プラセボをそれぞれ皮下注した。 主要エンドポイントは、初回投与後12週時点における月平均頭痛日数のベースラインからの平均変化値とした。評価対象とした頭痛の定義は、連続4時間以上持続しピーク時重症度が中等度以上であった頭痛、または持続時間や重症度にかかわらず急性片頭痛薬(トリプタン系薬やエルゴタミン製剤)を使用した頭痛で、それらを呈した日数をカウントした。月平均頭痛日数が、fremanezumab群の2用量群とも約4割で半減 ベースライン時の被験者の月平均頭痛日数は、3ヵ月ごと投与群が13.2日、月1回投与群が12.8日、プラセボ群が13.3日だった。月平均頭痛日数の最小二乗平均値の減少幅は、3ヵ月ごと投与群4.3±0.3日、月1回投与群4.6±0.3日に対し、プラセボ群は2.5±0.3日であった(いずれもプラセボ群に対してp<0.001)。月平均頭痛日数が50%以上減少した患者の割合は、3ヵ月ごと投与群38%、月1回投与群41%に対し、プラセボ群は18%であった(いずれもプラセボ群に対してp<0.001)。試験薬に関連したものと考えられる肝機能異常は、実薬群でそれぞれ5例(1%)、プラセボ群で3例(<1%)と報告された。 本研究では、慢性片頭痛の予防薬としてのfremanezumabは、この12週試験において、プラセボよりも頭痛の頻度が低かった。副作用としては、薬物に対する注射部位の反応がよくみられ、長期の効果持続性と安全性については、さらなる研究が求められるとした。2)反復性片頭痛に対するerenumab第III相STRIVE試験約1,000例で、erenumab 70mgまたは140mgの有効性と安全性を検討 STRIVE(Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Erenumab in Migraine Prevention)試験では、2015年7月~2016年9月5日の期間に、121施設において、18~65歳の反復性片頭痛患者955例を対象として、erenumab 70mg、140mgまたはプラセボの3群に無作為に割り付け(それぞれ317例、319例、319例)、いずれも月1回皮下投与を6ヵ月間行った。 主要エンドポイントは、片頭痛を認めた日数(月平均)のベースラインから投与4~6ヵ月の変化。副次エンドポイントは、片頭痛の月平均日数が50%以上減少した患者の割合、急性期片頭痛治療薬の使用日数のベースラインからの変化、身体機能スコア(Migraine Physical Function Impact Diary[MPFID:0~100点、スコアが高いほど片頭痛が身体機能に与える影響が大きい])における機能障害・日常生活領域のスコアの変化などであった。70mgおよび140mgともに片頭痛の頻度が有意に減少 片頭痛月平均日数は、ベースライン時は全集団において8.3日であったが、投与4~6ヵ月時は、erenumab 70mg群で3.2日減少、同140mg群で3.7日減少したのに対し、プラセボ群では1.8日の減少であった(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)。片頭痛の月平均日数が50%以上減少した患者の割合は、70mg群43.3%、140mg群50.0%に対し、プラセボ群は26.6%(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)、また、急性期片頭痛治療薬の使用日数の変化量はそれぞれ1.1日減少、1.6日減少に対し、0.2日減少であった(同p<0.001)。機能障害スコアは、70mg群4.2点、140mg群4.8点の改善であったのに対して、プラセボ群は2.4点の改善であった。同様に日常生活スコアもそれぞれ5.5点、5.9点、および3.3点の改善であった(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)。有害事象の発現率は、erenumab群とプラセボ群で同程度であった。 本研究では、erenumab 70mgまたは140mgの月1回皮下投与は、反復性片頭痛患者において、6ヵ月以上、片頭痛の頻度、片頭痛の日常生活への影響および急性片頭痛治療薬の使用を有意に減少させた。erenumabの長期的な安全性と効果の持続性に関しては、さらなる研究が必要であるとした。片頭痛のCGRP誘発機序と新たな先制予防治療薬の登場 片頭痛患者では、三叉神経末端が刺激され、そこからカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が分泌されて血管拡張を誘発し、急性片頭痛が起こるとされる(CGRP誘発機序)。このため片頭痛の発症予防治療薬として、CGRP受容体の拮抗薬が有効ではないかとする研究が行われてきた。今回報告された慢性の反復性片頭痛患者を対象としたCGRP受容体を阻害するヒトモノクローナル抗体であるfremanezumabまたはerenumabの第III相臨床試験の結果は、片頭痛のCGRP誘発機序の妥当性とCGRP受容体の拮抗薬の発症予防における有効性を証明するものであり、両薬剤は片頭痛に対する先制予防医療の突破口を開く治療薬として注目される。

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心房細動患者の脳卒中予防に対するDOACのメタ解析/BMJ

 心房細動(AF)患者に対する直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の脳卒中予防効果について、英国・ブリストル大学のJose A. Lopez-Lopez氏らがネットワークメタ解析による有効性、安全性および費用対効果の解析を行い、BMJ誌2017年11月28日号で発表した。解析の結果、DOACはクラスとしてワルファリンよりも、AF患者の脳卒中および死亡リスクを抑制し、国際標準比(INR)2.0~3.0維持用量での大出血および頭蓋内出血に関してより安全であり、数種のDOACはコスト高にもかかわらずネットベネフィットが認められることが示された。予想される増分純便益(incremental net benefit:INB)は、アピキサバン5mgを1日2回投与が最も高く、次いでリバーロキサバン20mgを1日1回、エドキサバン60mgを1日1回、ダビガトラン150mgを1日2回であったという。ネットワークメタ解析で23試験を包含し有効性、安全性、費用対効果を解析 検討は、Medline、PreMedline、Embase、The Cochrane Libraryをデータソースとし、AF患者の脳卒中予防効果に対するDOAC、ビタミンK拮抗薬または抗血小板薬の使用を評価した、公表されている無作為化試験をシステマティックレビュー検索して行われた。 検索により、患者9万4,656例が関与した23試験が適格基準を満たし、解析に組み込まれた。このうち、INR 2.0~3.0目標達成用量についてDOACとワルファリンを比較検討していたのは13試験であった。また、解析に包含された介入法は27種あった。 被験者は、平均年齢70.0歳、男性63.3%、BMI値28.0、脳卒中既往20.2%(いずれも中央値)などであった。また、ワルファリン群の治療期間中に占めたTTR(time in therapeutic range)の割合は、中央値63.8%(範囲:45.1~83.0)であった。大半のアウトカムでアピキサバン5mgの1日2回投与が最高位にランク 有効性と安全性に関する解析の結果、ワルファリンと比較して脳卒中または全身性塞栓症リスクを抑制したのは、アピキサバン5mgを1日2回(オッズ比[OR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.66~0.94)、ダビガトラン150mgを1日2回(0.65、0.52~0.81)、エドキサバン60mgを1日1回(0.86、0.74~1.01)、リバーロキサバン20mgを1日1回(0.88、0.74~1.03)であった。DOAC間における比較では、ダビガトラン150mgを1日2回よりも、エドキサバン60mgを1日1回(1.33、1.02~1.75)、リバーロキサバン20mgを1日1回(1.35、1.03~1.78)が、脳卒中または全身性塞栓症リスクが高いとのエビデンスが認められた。 全死因死亡リスクは、ワルファリンと比較して、すべてのDOACで抑制効果が認められた。 大出血リスクは、ワルファリンと比較して、アピキサバン5mgを1日2回(0.71、0.61~0.81)、ダビガトラン110mgを1日2回(0.80、0.69~0.93)、エドキサバン30mgを1日1回(0.46、0.40~0.54)、エドキサバン60mgを1日1回(0.78、0.69~0.90)で低かった。頭蓋内出血リスクは、ほとんどのDOACでワルファリンよりも大幅に低かった(ORの範囲:0.31~0.65)。一方で消化管出血リスクがワルファリンよりも高いDOACが一部で認められた(ダビガトラン150mgを1日2回のOR:1.52[95%CI:1.20~1.91]、エドキサバン60mgを1日1回のOR:1.22[1.01~1.49]など)。 アピキサバン5mgを1日2回は、大半のアウトカムについて最高位にランクしており、ワルファリンとの比較によるINBは7,533ポンドで、費用対効果も最も認められた(その他投与群のINBは、ダビガトラン150mgを1日2回が6,365ポンド、リバーロキサバン20mgを1日1回が5,279ポンド、エドキサバン60mgを1日1回が5,212ポンド)。 著者は、「ネットワークメタ解析はDOACの直接比較の試験を不要なものとし、AF患者における脳卒中予防に関する選択肢を知らしめてくれるものである」と述べ、「作用機序が類似するDOACの中で、アピキサバンの常用量が最も有効かつ安全であり、費用対効果があると思われた」とまとめるとともに、「さらなる長期データで安全性に関する洞察を深め、DOACからベネフィットを得られない患者を特定し、各DOACの中和薬を開発することが重要である」と指摘している。

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小野薬品、PG受容体拮抗がん免疫薬をBMSと開発

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良暁)は2017年12月14日、ブリストル・マイヤーズスクイブ社と、開発中のプロスタグランディンE2(PGE2)受容体の1つであるEP4受容体の選択的拮抗剤「ONO-4578」の開発および商業化についてライセンス契約を締結したと発表。 ONO-4578は、小野薬品が創製したプロスタグランディンE2(PGE2)受容体の1つであるEP4受容体に対する経口投与可能な選択的拮抗薬。マウス担がんモデルにおいて免疫抑制性の腫瘍微小環境を改善することにより、抗腫瘍効果を示している。国内では、小野薬品が既に第I相臨床試験を開始している。

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クローン病に対するタイトな管理の有用性-多施設共同RCT(解説:上村直実氏)-772

 クローン病(CD)は原因不明で根治的治療が確立していない慢性炎症性腸疾患であり、わが国の患者数は現在約4万人で、医療費補助の対象である特定疾患に指定されている。本疾患に対する薬物療法の目的は、活動期CDに対する寛解導入および寛解状態の維持であり、一般的には、罹患部位や症状および炎症の程度によって、5-ASA製剤、ステロイド、代謝拮抗薬、抗TNF拮抗薬と段階的にステップアップする薬物療法が行われている1,2)。 CDの活動性について、便中カルプロテクチン(FC)やC反応性蛋白(CRP)など腸炎症のバイオマーカーを用いて治療方針を決定することが、患者の予後を改善するかどうかは不明であった。本論文は、一般的なクローン病活動指数(CDAI)に基づく評価法と比較して、CDAIと上記の炎症マーカーおよびステロイドの使用量による厳密な活動性評価により抗TNF療法を含む治療方針を変更するほうが、1年後の内視鏡的粘膜治癒率の向上に結び付く研究結果を初めて示したものである。 わが国におけるCDの重症度を評価する方法は、CDAIスコア、CRP値による炎症、腸閉塞や膿瘍などの合併症の有無等を考慮した総合的判断により、軽症、中等症、重症と分類するのが一般的である1,2)。本研究で炎症のバイオマーカーを加えた厳密な活動性の評価が有用とされているが、わが国におけるFCの測定は潰瘍性大腸炎の活動性評価に保険適用を取得したものの、現状ではCDの病態把握に対しては承認されていない。一般の保険診療現場でCD患者に対しても使用できるように、本論文や過去の研究結果を参考にして、日本人の臨床エビデンスを構築するとともに、公知申請などを用いた企業や学会からの要望などが期待されるところである。■参考1)日本消化器病学会編. クローン病診療ガイドライン. 南江堂;2010.2)日本消化器病学会編. 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016. 南江堂;2016.

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多発性嚢胞腎後期にもトルバプタンは有用か?/NEJM

 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の後期患者に対し、バソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタン(商品名:サムスカ)はプラセボと比べて、1年超にわたり推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を抑制したことが、米国・メイヨークリニックのVicente E. Torres氏らによる第III相の無作為化治療中止プラセボ対照二重盲検試験「REPRISE試験」の結果、示された。これまでに、早期(推定クレアチニンクリアランス:60mL/分以上)ADPKD患者を被験者とする試験において、トルバプタンは腎容積の増大およびeGFRの低下を抑制したことが示されていた。ただし、アミノトランスフェラーゼ値とビリルビン値の上昇を引き起こすことも示されている。一方、後期患者に対する有効性、安全性は検討されていなかった。NEJM誌2017年11月16日号(オンライン版2017年11月4日号)掲載の報告。世界213施設で患者1,370例を対象に検討 REPRISE試験は、2014年5月~2016年3月に世界213施設で被験者を登録して行われた。適格対象は、「18~55歳、eGFR:25~65mL/分/1.73m2」または「56~65歳、eGFR:25~44mL/分/1.73m2」のADPKD患者。無作為化前8週間をrun-in periodとし、トルバプタンの最大用量投与またはプラセボ等価用量の投与を行った後、1,370例をトルバプタン群(683例)またはプラセボ群(687例)に1対1の割合で無作為に割り付け12ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは、eGFRのベースライン(あらゆるプラセボまたはトルバプタンを受ける前)からフォローアップ(1年の試験期間完了後)までの変化で、各患者の参加期間を正確に補正(1年に内挿)して評価を行った。安全性の評価は、毎月行った。eGFR低下、トルバプタン群で有意に抑制 eGFRのベースラインからの変化は、トルバプタン群-2.34mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-2.81~-1.87)、プラセボ群-3.61mL/分/1.73m2(95%CI:-4.08~-3.14)であった(差:1.27mL/分/1.73m2、95%CI:0.86~1.68、p<0.001)。 アラニンアミノトランスフェラーゼ値の上昇は、トルバプタンを中断すると回復することが認められた。ビリルビン値の上昇は、正常閾値上限値の2倍を超える上昇は認められなかった。

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アトピー性脊髄炎〔AM:atopic myelitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義中枢神経系が自己免疫機序により障害されることは、よく知られている。中でも最も頻度の高い多発性硬化症は、中枢神経髄鞘抗原を標的とした代表的な自己免疫疾患と考えられている。一方、外界に対して固く閉ざされている中枢神経系が、アレルギー機転により障害されるとは従来考えられていなかった。しかし、1997年にアトピー性皮膚炎と高IgE血症を持つ成人で、四肢の異常感覚(じんじん感)を主徴とする頸髄炎症例がアトピー性脊髄炎(atopic myelitis:AM)として報告され1)、アトピー性疾患と脊髄炎との関連性が初めて指摘された。2000年に第1回全国臨床疫学調査2)、2006年には第2回3)が行われ、国内に本疾患が広く存在することが明らかとなった。その後、海外からも症例が報告されている。2012年には磯部ら4)が感度・特異度の高い診断基準を公表し(表)、わが国では2015年7月1日より「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づき「指定難病」に選定されている。画像を拡大する■ 疫学平均発症年齢は34~36歳で、男女比1:0.65~0.76と男性にやや多い。先行するアトピー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の順で多く、アトピー性疾患の増悪後に発症する傾向にあった。発症様式は急性、亜急性、慢性のものが約3割ずつみられ、症状の経過は、単相性のものも3~4割でみられるものの、多くは、動揺性、緩徐に進行し、長い経過をとる。■ 病因図1のようにAMの病理組織学的検討では、脊髄病巣は、その他のアトピー性疾患と同様に好酸球性炎症であり、アレルギー性の機序が主体であると考えられる。さまざまな程度の好酸球浸潤を伴う、小静脈、毛細血管周囲、脊髄実質の炎症性病巣を呈する(図1A)5)。髄鞘の脱落、軸索の破壊があり、一部にspheroidを認める(図1B)5)。好酸球浸潤が目立たない症例においても、eosinophil cationic protein(ECP)の沈着を認める(図1C)6)。浸潤細胞の免疫染色では、病変部では主にCD8陽性T細胞が浸潤していたが(図1D)6)、血管周囲ではCD4陽性T細胞やB細胞の浸潤もみられる。さらに、脊髄後角を中心にミクログリアならびにアストログリアの活性化が認められ(図1E、F)7)、アストログリアではエンドセリンB受容体(endothelin receptor type B:EDNRB)の発現亢進を確認している(図1G、H)7)。図1 アトピー性脊髄炎の病理組織所見画像を拡大する■ 臨床症状初発症状は、約7割が四肢遠位部の異常感覚(じんじん感)、約2割が筋力低下である。経過中に8割以上でアロディニアや神経障害性疼痛を認める。そのほか、8割で腱反射の亢進、2~3割で病的反射を生じ、排尿障害も約2割に生じる。何らかの筋力低下を来した症例は6割であったが、その約半数は軽度の筋力低下にとどまった。最重症時のKurtzkeのExpanded Disability Status Scale(EDSS)スコアは平均3.4点であった。■ 予後第2回の全国臨床疫学調査では、最重症時のEDSSスコアが高いといずれかの免疫治療が行われ、治療を行わなかった群と同等まで臨床症状は改善し、平均6.6年間の経過観察では、症例全体で平均EDSS 2.3点の障害が残存していた。全体的には大きな障害を残しにくいものの、異常感覚が長く持続し、患者のQOLを低下させることが特徴といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見末梢血所見としては、高IgE血症が8~9割にあり、ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニに対する抗原特異的IgEを85%以上の症例で有し、約6割で末梢血好酸球数が増加していた。前述のAMの病理組織において発現が亢進していたEDNRBのリガンドであるエンドセリン1(endothelin 1:ET1)は、AM患者の血清で健常者と比較し有意に上昇していた7)。髄液一般検査では、軽度(50個/μL以下)の細胞増加を約1/4の症例で認め、髄液における好酸球の出現は10%未満とされる。蛋白は軽度(100mg/dL以下)の増加を約2~3割の症例で認める程度で、大きな異常所見はみられないことが多い。髄液特殊検査では、IL-9とCCL11(eotaxin-1)は有意に増加していた。末梢神経伝導検査において、九州大学病院症例では約4割で潜在的な末梢神経病変が合併し、第2回の全国調査では、検査実施症例の25%で下肢感覚神経を主体に異常を認めていた3)。また、体性感覚誘発電位を用いた検討では、上肢で33.3%、下肢では18.5%で末梢神経障害の合併を認めている8)。図2のように脊髄のMRI所見では、60%で病変を認め、その3/4が頸髄で、とくに後索寄りに多い(図2A)。また、Gd増強効果も半数以上でみられる。この病巣は、ほぼ同じ大きさで長く続くことが特徴である(図2B)。画像を拡大する■ 診断・鑑別診断脊髄炎であること、既知の基礎疾患がないこと、アレルギー素因があることを、それぞれを証明することが必要である。先に磯部ら6)による診断基準を表で示した。この基準を脊髄初発多発性硬化症との鑑別に適用した場合、感度93.3%、特異度93.3%、陽性的中率は82.4%、陰性的中率は97.7%であった。鑑別として、寄生虫性脊髄炎、多発性硬化症、膠原病、HTLV1関連脊髄症、サルコイドーシス、視神経脊髄炎、頸椎症性脊髄症、脊髄腫瘍、脊髄血管奇形を除外することが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)第2回の全国臨床疫学調査の結果では、全体の約60%でステロイド治療が行われ、約80%で有効性を認めている。血漿交換療法が選択されたのは全体の約25%で、約80%で有効であった。AMの治療においてほとんどの症例はパルス療法を含む、ステロイド治療により効果がみられるが、ステロイド治療が無効の場合には、血漿交換が有効な治療の選択肢となりうる。再発、再燃の予防については、アトピー性疾患が先行して発症、再燃することが多いことから、基礎となるアトピー性疾患の沈静化の持続が重要と推測される。4 今後の展望当教室ではAMの病態解明を目的とし、アトピー性疾患モデルマウスにおける神経学的徴候の評価と中枢神経の病理学的な解析を行い、その成果は2016年に北米神経科学学会の学会誌“The Journal of Neuroscience”に掲載された7)。モデル動物により明らかとなった知見として、(1)アトピー性疾患モデルマウスでは足底触刺激に対しアロディニアを認める、(2)脊髄後角ではミクログリア、アストログリア、神経細胞が活性化している、(3)ミクログリアとアストログリアではEDNRBの発現が亢進し、EDNRB拮抗薬の前投与により脊髄グリア炎症を抑制すると、神経細胞の活性化が抑えられ、アロディニアが有意に減少したというもので、AMに伴う神経障害性疼痛に脊髄グリア炎症ならびにET1/EDNRB経路が大きく関わっていることを見出している。5 主たる診療科神経内科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター アトピー性脊髄炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報アトピー性脊髄炎患者会 StepS(AM患者と家族向けの情報)1)Kira J, et al. J Neurol Sci. 1997;148:199-203.2)Osoegawa M, et al. J Neurol Sci. 2003;209:5-11.3)Isobe N, et al. Neurology. 2009;73:790-797.4)Isobe N, et al. J Neurol Sci. 2012;316:30-35.5)Kikuchi H, et al. J Neurol Sci. 2001;183:73-78.6)Osoegawa M, et al. Acta Neuropathol. 2003;105:289-295.7)Yamasaki R, et al. J Neurosci. 2016;36:11929-11945.8)Kanamori Y, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:29-35.公開履歴初回2017年11月14日

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中国プライマリケア施設、主要4種の降圧薬常備は3割

 中国における降圧薬の利活用(入手性、費用、処方)は著しく不十分で、とくにガイドラインで推奨される廉価で価値の高い薬剤が、率先して使用されてはいない実態が明らかとなった。中国医学科学院・北京協和医学院のMeng Su氏らが、中国のプライマリケア施設における降圧薬に関する全国調査の結果を報告した。中国の高血圧患者は約2億人と推定されているが、プライマリケアでの治療の実態は、ほとんど知られていなかった。著者は、「今後、高血圧の疾病負荷を減らすために、とくにプライマリケア従事者の活動を介して、価値の高い降圧薬の利用状況を改善する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年10月25日号掲載の報告。中国のプライマリケア約3,400施設のデータを解析 研究グループは、2016年11月~2017年5月に実施された中国の全国断面調査(the China Patient-Centered Evaluative Assessment of Cardiac Events[PEACE]Million Persons Project[MPP]primary health care survey)のデータを用い、中国31省のプライマリケア施設3,362施設(地域衛生院203施設、地域衛生サービスステーション401施設、町衛生院284施設、村衛生室2,474施設)における降圧薬62種の入手性・費用・処方パターンを評価した。また、価値の高い降圧薬(ガイドラインで推奨され、かつ低価格)の利用についても評価し、降圧薬の費用と、入手性および処方パターンとの関連性も検証した。主要4種の降圧薬常備は33.8%、高価値の降圧薬常備は32.7% 計3,362施設、約100万例のデータを評価した(農村部:2,758施設、61万3,638例、都市部:604施設、47万8,393例)。 3,362施設中、8.1%(95%信頼区間[CI]:7.2~9.1)は降圧薬を置いておらず、通常使用される4種類(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、Ca拮抗薬)の降圧薬すべてを常備していたのは33.8%(95%CI:32.2~35.4%)であった。降圧薬の入手性が最も低かったのは、中国西部の村衛生室であった。 また、価値の高い降圧薬を常備していたのは、3,362施設中32.7%(95%CI:32.2~33.3%)のみで、それらの処方頻度は低かった(全処方記録の11.2%、95%CI:10.9~11.6)。価格が高い降圧薬のほうが、低価格の降圧薬より処方される傾向があった。

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