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ウクライナの戦争負傷者で薬剤耐性菌が増加

 ウクライナで戦争により負傷して入院した患者の多くが、極度の薬剤耐性を獲得した細菌に感染していることが、ルンド大学(スウェーデン)臨床細菌学分野教授のKristian Riesbeck氏らによる研究で示された。研究グループは、このような状況が戦争により荒廃したウクライナの負傷者や病人に対する治療をいっそう困難なものにしているとの危惧を示している。この研究は、「The Lancet Infectious Diseases」7月号に掲載された。 Riesbeck氏は、「私はこれまでに多くの薬剤耐性菌と患者を目にしてきたため慣れているが、今回目撃したほど強烈な薬剤耐性菌に遭遇したことは、これまでなかった」と話している。 今回の研究は、国立ピロゴフ記念医科大学(ウクライナ)の微生物学者であるOleksandr Nazarchuk氏が、戦争で負傷した入院患者から採取した検体に含まれる細菌が、どの程度薬剤耐性を獲得しているのかを調べるために、ルンド大学に協力を求めて実施された。対象患者はいずれも、重症のやけどや榴散弾による負傷、骨折により緊急手術や集中治療が必要だった。患者の傷ややけどの部位に感染の兆候が認められた場合には、皮膚や軟部組織から検体を採取した。また、中心静脈カテーテルを使用している患者に感染の兆候が認められた場合にはカテーテル先端の培養を行い、人工呼吸器関連肺炎の兆候が認められた患者からは気管支洗浄液の採取を行った。総計141人(負傷した成人133人、肺炎と診断された乳幼児8人)の患者から156株の細菌株が分離された。これらの菌株について、まず、広い抗菌スペクトルを持つカルバペネム系抗菌薬のメロペネムに対する耐性をディスク拡散法で調べた。次いで、耐性が確認されるか抗菌薬への曝露増加に感受性を示した株については、微量液体希釈法での分析が行われた。 その結果、テストした154株中89株(58%)がメロペネム耐性を示すことが明らかになった。耐性を示した菌株は、肺炎桿菌(34/45株、76%)とアシネトバクター・バウマニ複合体(38/52株、73%)で特に多かった。また、微量液体希釈法での分析を行った107株中10株(9%;肺炎桿菌9株、プロビデンシア・スチュアルティ1株)は、「最後の砦」とされる抗菌薬のコリスチンにさえ耐性を示した。さらに156株中の9株(6%、いずれも肺炎桿菌)は、新しい酵素阻害薬(β-ラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬)を含む、今回の試験で試した全ての抗菌薬に対して耐性を示した。 Riesbeck氏は、「私は以前、インドや中国で同様のケースに遭遇したことはあるが、この研究で観察された薬剤耐性菌の耐性は次元が違う」と驚きを表す。同氏は特に、肺炎桿菌で認められた耐性に懸念を示す。肺炎桿菌は、健康で免疫系が十分に機能している人にさえ病気を引き起こす可能性があるからだ。同氏は、「これは非常に心配な結果だ。これほど高いレベルの耐性を持つ肺炎桿菌に遭遇することはまれであり、われわれもこのような結果が出るとは予想していなかった」と付け加えた。 Riesbeck氏は、「多くの国がウクライナに軍事援助や資源を提供しているが、同国で進行している薬剤耐性菌の増加という事態への対処を支援することも、それと同じくらい重要だ。薬剤耐性菌のさらなる広がりは、欧州全体にとっての脅威となる可能性がある」と述べている。

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8月1日 肺の日【今日は何の日?】

【8月1日 肺の日】〔由来〕「は(8)い(1)」(肺)と読む語呂合わせから、肺の健康についての理解を深め、呼吸器疾患の早期発見と予防についての知識を普及・啓発することを目的に日本呼吸器学会が1999年に制定し、翌2000年から実施。学会では、肺の病気・治療について全国で一般市民を対象にした講座会や医療相談会を行っている。関連コンテンツ軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】電子タバコは紙巻きタバコの禁煙には役立たない【患者説明用スライド】抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加肺炎の予防戦略、改訂中の肺炎診療GLを先取り/日本呼吸器学会軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】

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オズウイルス感染症に気をつけろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。本日のテーマは「オズウイルス感染症」です。皆さんはすでにオズウイルス感染症についてのニュースはご覧になったでしょうか。2023年6月23日、国立感染症研究所から日本初、いやむしろ世界初となるオズウイルス感染症の症例が報告されました。世界で初めて報告されたオズウイルス感染症例症例の概要は以下の通りです。2022年初夏、高血圧症・脂質異常症を基礎疾患に持ち、海外渡航歴のない茨城県在住の70代女性に倦怠感、食欲低下、嘔吐、関節痛が出現し、39℃の発熱が確認された。肺炎の疑いで抗菌薬を処方されて在宅で経過を観察していたが、症状が増悪し、体動困難となったため再度受診し、その後、紹介転院となった。身体所見上は右鼠径部に皮下出血がみられたが皮疹はなかった。血液検査では、血小板減少(6.6万/µL)、肝障害、腎障害、炎症反応高値(CRP22.82mg/dL)、CK高値(2,049U/L、CK-MB14IU/L)、LDH高値(671U/L)、フェリチン高値(10,729ng/mL)が認められた。入院時、右鼠径部に飽血に近い状態のマダニの咬着が確認されたため、マダニ媒介感染症が疑われたが、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)やリケッチア症は陰性であった。入院後、心筋炎によるものと考えられる房室ブロックが出現し、ペースメーカーが留置され、心筋炎が疑われた。入院20日目には意識障害が出現し、多発脳梗塞が確認されたため抗凝固療法を開始した。治療継続中の入院26日目、突如心室細動が生じて死亡し、病理解剖が行われた。キーワード的には、「マダニ刺咬後の発熱」「血小板減少」「肝障害」「腎障害」「CK上昇」「フェリチン高値」「心筋炎」「凝固障害」などでしょうか。マダニ媒介感染症は流行地域も重要ですので、「茨城県」というのも大事な情報です。とくに心筋炎については、他のマダニ媒介感染症でもあまり報告がなく、オズウイルス感染症に特徴的なのかもしれません。とはいえ、まだ世界で1例ですので、オズウイルス感染症の典型的な経過なのかもよくわかっていません。オズウイルス肉眼で確認この症例は、原因不明でありましたが、茨城県衛生研究所において実施した次世代シーケンサー(NGS)によるメタゲノム解析とMePIC v2.0を用いた検索で、血液、尿などの検体からオズウイルスの遺伝子断片が検出され、国立感染症研究所でウイルスが分離され、遺伝子の配列が解析された結果、オズウイルスであることが確認されました(図1)。図1 患者検体から分離されたオズウイルス粒子の電子顕微鏡写真画像を拡大する(出典:国立感染症研究所.IASR.「初めて診断されたオズウイルス感染症患者」)本症例で初めてオズウイルスがみつかったわけではなく、実は以前からオズウイルスの存在は知られていました。ヒトで世界初の感染例なのに、その前からウイルスの存在が知られており、本症例ではそのオズウイルスの遺伝子断片を検出するためのRT-PCR検査まで行われています。これはなぜかと言うと、マダニからオズウイルスからみつかっており、「いつかこのようなオズウイルスによるヒト感染例が現れるのではないか」と予想され検査体制も整えられていたためです。ぶっちゃけ、マダニ媒介感染症の世界では、SFTSがみつかって以降、ヒトでの感染例が出る前から、マダニが持っているウイルスを先回りして調べるというのがトレンドとなっており、このオズウイルスも2018年に愛媛県のタカサゴキララマダニというマダニからオズウイルスがみつかっていました1)(なお、このオズウイルスは現時点では日本以外の国ではみつかっていません)。オズウイルスの正体とは、バーボンとの関係はオズウイルス(通は「OZV」と呼ぶ)は、オルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に属するウイルスです。オルソミクスウイルス科と言えばインフルエンザウイルスが有名ですね。オルソミクスウイルスは、(1)Influenzavirus A、(2)Influenzavirus B、(3)Influenzavirus C、(4)Thogotovirus(トゴトウイルス)、(5)Isavirus(アイサウイルス)の5つの属に分類されます。トゴトウイルス属には他にもトゴトウイルス、ドーリウイルスなどがあり、とくにオズウイルスはアメリカで報告されている「バーボンウイルス」に近縁のウイルスです。えっ…バーボンウイルスを知らないッ!?バーボンウイルス感染症は、2014年にカンザス州東部のバーボン郡の住民が感染したとして初めて報告され2)、その後ミズーリ州でも観察されている感染症です。お酒のバーボンとは関係ありません。このバーボンウイルスも致死率の高い感染症であり、その類縁ウイルスということでオズウイルスもヒトが感染すれば重症度は高いのではないかと予想されていました。ではわが国で今後もオズウイルス感染症の症例が報告される可能性はあるのでしょうか?次回、その可能性を解説します!1)Ejiri H, et al. Virus Res. 2018;249:57-65.2)Kosoy OI, et al. Emerg Infect Dis. 2015;21:760-764.

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人工骨頭置換術の骨セメント、抗菌薬1剤含有vs.高用量2剤含有/Lancet

 大腿骨頸部内側骨折で人工骨頭置換術を受ける60歳以上の患者において、高用量抗菌薬2剤含有骨セメントを使用しても深部手術部位感染の発生率は減少しなかった。英国・Northumbria Healthcare NHS Foundation TrustのNickil R. Agni氏らが、同国の26施設で実施した無作為化比較試験「WHiTE 8試験」の結果を報告した。股関節骨折の人工骨頭置換術では、深部手術部位感染のリスクを減らすため抗菌薬含有骨セメントが使用されているが、最近登場した高用量抗菌薬2剤含有骨セメントの使用に関しては議論の的となっていた。Lancet誌2023年7月15日号掲載の報告。無作為化後90日以内の深部手術部位感染の発生を比較 研究グループは、人工骨頭置換術を予定している60歳以上の転位型大腿骨頸部内側骨折患者を、セメント40g当たりゲンタマイシン0.5gを含有する骨セメント群(標準治療群)と、セメント40g当たりゲンタマイシン1gおよびクリンダマイシン1gを含有する骨セメント群(高用量抗菌薬2剤含有骨セメント群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。患者および評価者は盲検化された。 120日後に患者(または主たる介護人)に電話インタビューを行うとともに、手術記録、抗菌薬の詳細、画像診断報告等を含む医療記録からアウトカムに関するデータを入手した。 主要アウトカムは、120日時点のデータ入手に同意が得られた患者集団における、無作為化後90日以内の深部手術部位感染(米国疾病予防管理センターの定義による)であった。副次アウトカムは、120日時点における死亡率、抗菌薬の使用状況、健康関連QOLなどであった。抗菌薬1剤含有と2剤含有で、有意差なし 2018年8月17日~2021年8月5日の間に、4,936例が標準治療群(2,453例)または高用量抗菌薬2剤含有骨セメント群(2,483例)に無作為に割り付けられた。追跡終了日は2022年1月2日。 無作為化後90日以内の深部手術部位感染の発生は、標準治療群では主要アウトカム解析対象の2,183例中38例(1.7%)に、高用量抗菌薬2剤含有骨セメント群では2,214例中27例(1.2%)に認められた。 補正オッズ比は1.43(95%信頼区間[CI]:0.87~2.35、p=0.16)で、両群に有意差はなかった。

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思わぬ情報収集から服薬直前の抗菌薬の変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第55回

 今回は、抗菌薬の服薬直前に患者さんから飛び出た思わぬ発言から処方変更につなげた症例を紹介します。患者さんの話をしっかり聞き、気になることは深掘りすることが大事だと改めて感じた事例です。患者情報50歳、男性(施設入居中)基礎疾患多発性血管炎性肉芽腫、脊髄梗塞、仙骨部褥瘡既往歴半年前に総胆管結石性胆管炎副作用歴シロスタゾールによる消化管出血疑い処方内容1.アザルフィジン錠50mg 1錠 朝食後2.プレドニゾロン錠5mg 2錠 朝食後3.ランソプラゾールOD錠15mg 1錠 朝食後4.アムロジピン錠5mg 1錠 朝食後5.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1C 朝食後6.アピキサバン錠5mg 2錠 朝夕食後7.マクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウム散 13.7046g 朝食後本症例のポイント訪問診療に同行したところ、この患者さんは褥瘡の状態が悪く、処置後の感染リスクを考慮して抗菌薬が処方されることになりました。アモキシシリン・クラブラン配合薬+アモキシシリン単剤(オグサワ処方)が処方となり、緊急対応の指示で当日中の服薬開始となりました。薬を準備して再度訪問した際に、患者さんより「過去に抗菌薬でひどい目にあったと思うんだよなぁ」と発言がありました。お薬手帳や過去の診療情報提供書には抗菌薬による副作用の記載はなく、その症状はいつ・何があったときに服用した薬なのかを患者さん確認してみると、「胆管炎を起こして入院したとき、抗菌薬を服用して2日目くらいに悪心と発疹が出て具合がものすごく悪くなった。医師に相談したら薬剤誘発性リンパ球刺激試験(DLST)のようなものを行ったら抗菌薬が原因だということで治療内容が変更になったことがある」とのことでした。準備した薬は服薬させず、過去に胆管炎で入院した病院に連絡し、病院薬剤師に詳細を確認することにしました。担当薬剤師によると、副作用の登録はシロスタゾールしかありませんでしたが、カルテの詳細な経過を追跡調査してもらうことにしました。すると、胆管炎時に使用したアンピシリン・スルバクタムを投与したところ、アナフィラキシー様反応があったという医師記録があり、投与を中止して他剤へ変更したことがわかりました。処方提案と経過病院薬剤師から得たペニシリン系抗菌薬アレルギーの結果をもとに、医師にすぐ電話連絡をして事情を話しました。そこで、代替薬として皮膚移行性が良好かつ表層菌をターゲットにできるドキシサイクリンを提案しました。医師より変更承認をいただき、ドキシサイクリン100mg 2錠 朝夕食後へ変更となり、即日対応で開始となりました。施設スタッフおよび本人には、過去に副作用が生じた抗菌薬とは別系統で問題ない旨を伝えて安心してもらいました。お薬手帳にも今後の重要な情報なのでペニシリンアレルギーの記載を入れ、臨時で受診などがある場合は必ずこのことを伝えるように共有しました。変更対応後に皮疹や悪心、下痢、めまいなどが出現することなく経過し、皮膚症状も悪化することなく無事に抗菌薬による治療は終了となりました。

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ヒドロコルチゾン単体では敗血症性ショックによる死亡リスクは低下せず

 敗血症性ショックの患者に副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)のヒドロコルチゾンを単独投与しても死亡リスクを低下させることはできないが、他のステロイドと併用することで生存率が向上し、昇圧薬を使用せずに済む可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の麻酔科教授であるRomain Pirracchio氏らが実施したこの研究結果は、「NEJM Evidence」に5月22日掲載された。 敗血症とは、感染に対して全身が極端な反応を示し、心臓や肺などの体の重要な臓器に障害が生じる病態をいう。毎年、世界中で約5500万人が敗血症を発症し、1100万人が死亡している。敗血症では早期に気付くことが重要であり、治療としては、感染源のコントロール、抗菌薬の投与、輸液、昇圧薬(血圧を上昇させる働きを持つ薬剤)の投与などが行われる。敗血症のうち、輸液負荷を行っても血圧が危険なレベルに低下した状態が続き、血中乳酸値が高いままの病態を敗血症性ショックと呼ぶ。 敗血症性ショックに対する治療では、ステロイドが50年以上前から使用されているが、それが患者の死亡に与える影響については不明な点が多い。今回、Pirracchio氏をメンバーに含む国際共同研究チームは、敗血症性ショックの成人患者の管理におけるヒドロコルチゾンの静脈内投与の効果について、メタ解析で検討した。最大400mg/日のヒドロコルチゾンの静脈内投与を72時間以上受けた敗血症または敗血症性ショックの成人患者の群と、プラセボか通常のケア、または別のレジメンでヒドロコルチゾンの投与を受けた対照群を比較したランダム化比較試験を検索し、計24件の臨床試験(対象者の総計8,528人)を選出した。このうち17件の研究(同7,882人)には個々の患者データが、また7件の研究(同5,929人)には90日間での死亡率に関するデータがそろっていた。主要評価項目は90日間での全死亡、副次評価項目は、28日および180日時点での集中治療室での全死亡または退院、昇圧薬や人工呼吸器離脱までの時間、昇圧薬や人工呼吸器の使用・臓器不全が認められない日数とした。 その結果、ヒドロコルチゾン群では対照群と比べて90日間での死亡率の有意な低下は認められなかった(相対リスク0.93、95%信頼区間0.82〜1.04、P=0.22)。ただし、二次解析では、ヒドロコルチゾンに加え、同じくステロイドのフルドロコルチゾンを併用した場合には、対照群に比べて90日間での死亡率に有意な低下が認められた(同0.86、0.79〜0.92)。副次評価項目に関しては、昇圧薬の使用についてのみ、対照群との間に有意な差が認められ、ヒドロコルチゾン群では昇圧薬を必要としない日数が平均1.24日多かった。 Pirracchio氏は、「本研究は、敗血症性ショック患者に対するヒドロコルチゾン投与の効果を、これまでに報告された主なランダム化比較試験の個々のデータの分析により初めて検討したものだ」と述べる。そして、「本研究により、敗血症性ショックによる死亡に対するヒドロコルチゾン投与の効果はわずかではあるが、投与することで患者への昇圧薬の使用を控えることができ、その結果、合併症を予防できる可能性のあることが明らかになった。また、ヒドロコルチゾンとフルドロコルチゾンの併用は、死亡率の点では大きなベネフィットをもたらす可能性も示唆された」と話している。

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第50回 「また接種券が届いたが接種すべき?」にどう答える

新型コロナワクチンの推奨が相次いで追補Pixabayより使用最近、「6回目の接種券が届いたんですけど…接種したほうがよいでしょうか?」と患者さんから質問を受けることが増えました。今日も外来だったのですが、10人以上に質問を受けました。これまでは、接種券が届いたら周囲に相談することなく接種していた患者さんのほうが多かったのですが、最近は「本当に接種し続ける意味があるのか」と疑問を持っている人が増え、躊躇しておられる印象です。そんな国民の逡巡を見越してか、日本感染症学会と日本小児科学会から相次いでワクチンに関する提言が追補されました。■日本感染症学会:「COVID-19ワクチンに関する提言(第7版)」の公表に際して1)「わが国での流行はまだしばらく続くためワクチンの必要性に変わりはありません。COVID-19ワクチンが正しく理解され、安全性を慎重に検証しながら、接種がさらに進んでゆくことを願っています。」■日本小児科学会:小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)2)「国内小児に対するCOVID-19の脅威は依然として存在することから、これを予防する手段としてのワクチン接種については、日本小児科学会としての推奨は変わらず、生後6か月~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を推奨します。」新型コロナワクチンのエビデンスは驚異的なスピードで積み上げられていて、パンデミック初期の頃と比べると不明な点が減りました。患者さんを相手に診療をしていると、リスクとベネフィットを天秤にかける瞬間というのは何度か経験しますが、新型コロナワクチンについてはほぼエビデンスは明解を出しているので接種推奨の意見を持つ人のほうが多いはずですが、なぜか医療従事者でも接種しなくなった人が増えている現状があります。EBM副反応がしんどいというのは1つの理由です。「しんどい思いをしてまで接種する理由がない」というのはまっとうな理由ですし、私もそれに否定的な見解は持っていません。そのほかの理由として、「もういいや」といワクチン疲れしている人が増えていることです。ワクチン接種に懐疑的な報道やSNSのコメントがあるという理由で、「もう接種しなくていいと思う」と患者さんに持論を伝える医療従事者も次第に増えてきました。さすがに政府や学会が上記のような推奨を出しているさなか、それはまずいなと思います。私は対象の集団が多いほどエビデンスの威力は大きいと思っていて、たとえば喘息の初期治療にロイコトリエン受容体拮抗薬単剤を使うより吸入ステロイドを使うほうが患者さんのQOLは向上しますし、市中肺炎のエンピリック治療ではテトラサイクリン系抗菌薬よりもβラクタム系抗菌薬のほうがおそらく多くの人を救えます。普段の診療でわりとEBMを重視するのに、対象の集団が多いワクチンについてEBMを軽視するというのが、私にはよく理解できないです。まとめ繰り返しますが、個々でワクチンを接種しないと決めるのは個人の自由です。ただ、医療機関に勤務している人については通常の推奨度よりも高く、また基礎疾患のある患者さんに対しては学会も接種を推奨しているということは、納得できないとしても「医療従事者として理解しておく」必要があります。おそらく次第に接種間隔を空けていくことになるでしょうが、ひとまず9月以降はXBB対応ワクチンを接種することになります。参考文献・参考サイト1)日本感染症学会:「COVID-19ワクチンに関する提言(第7版)」の公表に際して2)日本小児科学会:小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)

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米FDAが治療困難な細菌性肺炎の治療薬を承認

 米食品医薬品局(FDA)は5月23日、Acinetobacter baumannii-calcoaceticus complex(以下、A. baumannii)に起因する細菌性の院内肺炎および人工呼吸器関連細菌性肺炎に対する新しい治療薬として、Xacduro〔一般名sulbactam for injection(スルバクタム静注用);durlobactam for injection(デュロバクタム静注用)〕を承認した。投与対象は18歳以上で、静脈内投与される。 グラム陰性球桿菌であるアシネトバクター属には多くの菌種が存在するが、医療機関で肺炎などの感染症の原因菌となることが最も多いのがA. baumanniiである。A. baumanniiは、互いに区別することが困難な4菌種の総称で、体のさまざまな部位に感染を引き起こす。A. baumanniiはまた、薬剤耐性を獲得しやすい。現状では、薬剤耐性A. baumannii感染に対する治療法は限定的である。 Xacduroは、ペニシリンに似た構造を持つ薬剤であるスルバクタムと、デュロバクタムで構成されている。スルバクタムはA. baumanniiを殺す作用を持ち、デュロバクタムはA. baumanniiが産生する可能性がある酵素によりスルバクタムが分解されるのを防ぐ作用を持つ。 Xacduroの安全性と有効性は、カルバペネム系抗菌薬に対して耐性を示すA. baumanniiによる肺炎で入院した成人患者177人を対象とした、多施設共同アクティブコントロール、オープンラベル(医師非盲検、評価者盲検)非劣性試験に基づいている。対象者は、Xacduroまたは対照抗菌薬としてコリスチンを最長14日間投与された。その結果、治療から28日以内にあらゆる原因で死亡した患者の割合は、Xacduro投与群での19%に対し、コリスチン投与群では32%に上った。Xacduro投与群で最も頻繁に生じた副作用は、肝機能検査での異常だった。 FDA医薬品評価研究センター(CDER)抗感染症部門でディレクターを務めるPeter Kim氏は、「FDAは、A. baumanniiなどの細菌を原因とする治療困難な感染症に対する安全で効果的な治療法の開発への支援に精力を傾けている。米国の重症の細菌性肺炎患者の一部に新たな治療選択肢を提供した今回の承認は、医療に関する高いアンメットニーズに応えるものだ」と述べている。 なお、Xacduroの承認は、Entasis Therapeutics社に対して付与された。

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事例025 レボフロキサシン錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説再燃を繰り返す尿路感染症の患者に抗菌薬のレボフロキサシン錠(一般名:レボフロキサシン水和物、以下「同錠」)を処方したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。同錠の添付文書をみてみると、必ず1日量を1回で投与することが求められているのみで、投与日数は適宜増減と記載されています。カルテをみると、初診時以降は細菌感受性検査などが行われておらず、再来時には同錠7日分が繰り返し処方されていました。「再燃」のコメントも入っています。投与日数の適宜増減から考えると問題が無いようにみえます。しかしながら、抗菌薬の使用目的は炎症を鎮めるためであり、耐性菌を防ぐために最小限の使用が求められます。過去の事例を見返したところ、ある返戻の理由に「尿路感染症に対する抗生剤・抗菌剤の算定は、診療開始日から2週間程度が基本となります。尿路感染症を繰り返す症例については診療開始日にご留意ください」と注意喚起されていたものをみつけました。今回の事例では、診療開始日が古いにもかかわらず、検査もなく繰り返し同一の抗菌薬が処方されていたため、「再燃」がコメントされていたとしても漫然投与とみなされ査定になったものと推測できます。今後の対応として医師には、今回のような投与を行った場合には、病名開始日を新しくしたうえで、病名に「増悪」「再燃」などを付けること、もしくはコメントを追加していただくようにお願いして査定対策としました。

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肺炎への抗菌薬、静注から経口に早期切り替えで入院期間短縮か

 肺炎により入院した患者は、通常、状態が安定するまで静脈注射(IV)用の抗菌薬(以下、IV抗菌薬)を投与される。しかし、市中肺炎に罹患した患者の多くでは、もっと早い段階でIV抗菌薬から経口抗菌薬に切り替えた方が早期退院につながる可能性のあることが新たな研究で示された。米クリーブランドクリニック・コミュニティーケアのAbhishek Deshpande氏らによるこの研究結果は、「Clinical Infectious Diseases」に4月3日掲載された。 米国での肺炎による入院患者数は毎年100万人以上に上り、5万人以上が肺炎により死亡している。Deshpande氏によると、市中肺炎は、入院と抗菌薬使用の主要な原因であるという。同氏は、「長期にわたる抗菌薬の投与は、薬剤耐性菌の増加と医療関連感染(院内感染)につながる可能性があるため、抗菌薬投与を最適化することは重要だ」と述べる。 今回の研究では、2010年から2015年の間に米国の642カ所の病院で市中肺炎により入院した37万8,041人の成人患者のデータが分析された。これらの患者は、最初にIV抗菌薬による治療を受けていた。入院3日目までにIV抗菌薬から経口抗菌薬に切り替えられた場合を、「早期切り替え患者」として対象患者を分類し、入院期間、14日間での院内死亡率、症状悪化によるICU(集中治療室)入室率、入院費を比較した。 37万8,041人のうち2万1,784人(6%)が「早期切り替え患者」に該当し、切り替えられた経口抗菌薬で最も多かったのはフルオロキノロン系薬剤であった。「早期切り替え患者」では、それ以外の患者に比べて、IV抗菌薬による治療日数、入院中の抗菌薬による治療期間、および入院期間が短く、入院費が低かった。しかし、両群間で、14日間での院内死亡率とICU入室率に有意差は認められなかった。死亡リスクの高い患者では、経口抗菌薬への切り替えが行われにくかった。しかし、経口抗菌薬への切り替え率が比較的高かった医療機関においてでさえ、死亡リスクの低い患者のうち実際に経口抗菌薬に切り替えられた患者の割合は15%に満たなかった。 米国胸部学会(ATS)/米国感染症学会(IDSA)の現行のガイドラインでは、患者が臨床的に安定した時点で、IV抗菌薬投与から経口抗菌薬投与に切り替えることを推奨している。このガイドラインに従うと、IV抗菌薬を3日間ほど投与した後に、経口抗菌薬に切り替えることになるが、実際にそのような治療が行われることは少ないという。 研究グループは、「医療機関は、臨床的に安定している市中肺炎患者に対する治療法を変更するよう臨床医を促すことで、抗菌薬の使用によりもたらされるさまざまな弊害を軽減することができる」と述べている。

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抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加

 近年の研究で、抗菌薬によるマイクロバイオーム異常および腸と肺の相互作用が肺がん発症の引き金になる可能性が指摘されている。今回、韓国・ソウル国立大学のMinseo Kim氏らが抗菌薬の長期使用と肺がんリスクの関連を調べたところ、抗菌薬の累積使用日数および種類の数が肺がんリスク増加と関連することが示された。Journal of Infection and Public Health誌2023年7月号に掲載。 本研究は後ろ向きコホート研究で、韓国国民健康保険サービスのデータベースから2005~06年に健康診断を受けた40歳以上の621万4,926人について調査した。抗菌薬の処方累積日数と種類数で層別し、多変量Cox比例ハザード回帰を用いて、抗菌薬使用に対する肺がんリスクの調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗菌薬処方累積日数が365日以上の参加者の肺がんリスクは、抗菌薬非使用者より有意に高く(aHR:1.21、95%CI:1.16~1.26)、1~14日の参加者よりも有意に高かった(aHR:1.21、95%CI:1.17~1.24)。・5種類以上の抗菌薬を処方されていた参加者の肺がんリスクは、抗菌薬非使用者より有意に高かった(aHR:1.15、95%CI:1.10~1.21)。

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経口投与が可能になったALS治療薬「ラジカット内用懸濁液2.1%」【下平博士のDIノート】第121回

経口投与が可能になったALS治療薬「ラジカット内用懸濁液2.1%」今回は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「エダラボン懸濁液(商品名:ラジカット内用懸濁液2.1%、製造販売元:田辺三菱)」を紹介します。本剤は、これまで点滴静注薬しかなかったエダラボン製剤の内服薬であり、ALS患者の通院・入院負担が軽減することで、在宅移行の支援となることが期待されています。<効能・効果>ALSにおける機能障害の進行抑制の適応で、2022年12月23日に製造販売承認を取得し、2023年4月17日より発売されています。なお、ALS重症度分類4度以上の患者、努力性肺活量が理論正常値の70%未満に低下している患者での有効性や安全性は確立していません。<用法・用量>通常、成人には1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に1日1回経口投与します。本剤投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとして、これを繰り返します。第1クール:14日間連日投与し、その後14日間休薬第2クール以降:14日間のうち10日間投与し、その後14日間休薬<安全性>国際多施設共同第III相試験(MT-1186-A01試験)において、日本人に認められた臨床検査値異常を含む副作用の発現は65例中3例(4.6%)でした。内訳は、下痢1例(1.5%)、肝機能異常1例(1.5%)、倦怠感1例(1.5%)でした。なお、重大な副作用として、急性腎障害、ネフローゼ症候群、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、血小板減少、顆粒球減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性肺障害、横紋筋融解症、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、運動神経細胞などの酸化による傷害を防ぐことで、ALSによる機能障害の進行を抑制します。2.抗菌薬を服用することになった場合は、主治医に連絡してください。3.頭痛やめまい、吐き気、口や喉の渇き、肌の乾燥などが現れた場合は脱水症状の可能性があります。脱水症状があると腎機能障害が起こりやすくなるため、主治医に相談してください。<Shimo's eyes>筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)は、運動神経が選択的に変性・脱落し、四肢、顔、呼吸筋などの全身の筋力低下と筋萎縮が進行的に起こる原因不明の神経変性疾患で、発病率は10万人に2人程度といわれています。これまで、エダラボン製剤の点滴静注薬(商品名:ラジカット注30mg、ラジカット点滴静注バッグ30mg)が脳梗塞急性期およびALSの治療薬として承認されています。点滴静注薬では、ALS進行による筋萎縮に伴い血管の確保が難しくなるとともに、注射による痛みや通院・入院などの治療負担が課題でした。本剤は投与が容易で、より利便性の高いエダラボンの経口薬であるため、これらの負担軽減が期待されています(現時点での適応はALSのみ)。本剤は、既存のエダラボン静注薬とエダラボン未変化体のAUC0-∞が生物学的同等性の基準を満たしていることにより、静注薬と同等程度の有効性と考えられます。なお、ALSに使用される既存の経口薬としては、グルタミン酸遊離阻害薬のリルゾール(同:リルテック錠50mgほか)があります。ALS患者は嚥下困難を伴うことが多いため、誤嚥リスクを考慮して、本剤はとろみを持たせた製剤となっています。使用前にボトルを振ってボトルの底に固着物の付着がないことを確認してから、専用の経口投与用シリンジで薬剤を量り取ってから直接投与します。なお、経鼻胃管または胃瘻チューブを用いて経管投与することもできます。本剤は食事の影響により血漿中濃度が低下するため、起床時など8時間絶食後に服用し、服用後少なくとも1時間は水以外の飲食は避けます。ボトル開封前は冷蔵(2~8℃)で保存し、開封後は密栓して室温で保存し、ボトル開封後15日以内に使用します。ALSは長期にわたる継続的な治療が必要であることから、エダラボンの経口薬の登場は、患者、介護者および医療者にとって朗報であり、エダラボン製剤が必要な患者の在宅治療移行が増えることが期待されます。

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女性の尋常性ざ瘡、スピロノラクトンが有効/BMJ

 尋常性ざ瘡の女性患者の治療において、カリウム保持性利尿薬スピロノラクトンはプラセボと比較して、12週時の尋常性ざ瘡特異的QoL(Acne-QoL)の症状スコアが良好で、24週時にはさらなる改善が認められ、標準的な経口抗菌薬の代替治療として有用な可能性があることが、英国・サウサンプトン大学のMiriam Santer氏らが実施した「SAFA試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月16日号に掲載された。イングランド/ウェールズの実践的な無作為化試験 SAFAは、イングランドおよびウェールズの10施設で実施された実践的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年6月~2021年8月の期間に参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、顔面のざ蒼が6ヵ月以上持続し、担当医によって経口抗菌薬による治療を要すると判定され、担当医の全般的評価(IGA)が2(軽症または悪化)の女性患者であった。 被験者は、スピロノラクトン(50mg/日)またはプラセボを6週間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。忍容性が確認された場合は、100mg/日に増量し、24週まで投与が継続された。両群とも、通常の外用薬の使用は容認された。 主要アウトカムは、12週の時点でのAcne-QoLの症状サブスケールスコア(0~30点、点数が高いほどQoLが良好)であった。副次アウトカムには、24週時のAcne-QoL症状サブスケールスコア、患者の自己評価による改善度、IGAに基づく治療成功、有害事象などが含まれた。患者自己評価による改善度も、24週には有意に良好 410例(平均[SD]年齢29.2[7.2]歳、軽症46%、中等症 40%、重症 13%)が登録され、スピロノラクトン群に201例、プラセボ群に209例が割り付けられた。主要アウトカムのデータは342例(スピロノラクトン群176例、プラセボ群166例)で得られた。 平均Acne-QoL症状スコアは、スピロノラクトン群がベースラインの13.2(SD 4.9)点から12週後には19.2(6.1)点に、プラセボ群は12.9(4.5)点から17.8(5.6)点にいずれも上昇し、ベースラインの変量で補正後の平均差は1.27点(95%信頼区間[CI]:0.07~2.46)と、スピロノラクトン群で改善度が大きかった。 24週時には、スピロノラクトン群が21.2(SD 5.9)点、プラセボ群は17.4(5.8)点へとそれぞれ上昇し、補正平均差は3.45点(95%CI:2.16~4.75)と、12週時よりも差が大きくなり、スピロノラクトン群で改善度が高かった。 患者の自己評価による全般的改善度(6段階Likert scaleの3~6点の達成率)は、12週時がスピロノラクトン群72%、プラセボ群68%(補正後オッズ比[OR]:1.16、95%CI:0.70~1.91)と両群間に有意差はなかったが、24週時にはそれぞれ82%、63%(2.72、1.50~4.93)となり、統計学的に有意な差が認められた。 12週時の治療成功(IGA分類)の割合は、スピロノラクトン群が19%(31/168例)、プラセボ群は6%(9/160例)だった(補正後OR:5.18、95%CI:2.18~12.28)。 有害事象の頻度(64% vs.51%、p=0.01)はスピロノラクトン群で高く、とくに頭痛(20% vs.12%、p=0.02)とめまい(19% vs.12%、p=0.07)が多かったが、ほとんどが軽度であった。試験薬に関連した重篤な有害事象の報告はなかった。 著者は、「スピロノラクトンは、第1選択の局所治療で効果がない持続性のざ蒼を有する女性において、経口抗菌薬に代わる有用な選択肢となる可能性がある」とまとめ、「スピロノラクトンは妊娠に注意を要し、参加者は受診時に避妊に関する助言を受けたが7件の妊娠が報告された。スピロノラクトンは、若年女性で頻用されているテトラサイクリン系の経口抗菌薬に比べ催奇性は低いと考えられ、通常の治療ではとくに避妊以外の制限は必要ないだろう」と指摘している。

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膵頭十二指腸切除後の手術部位感染予防、TAZ/PIPCが有用/JAMA

 適応症を問わず、開腹による膵頭十二指腸切除術後の手術部位感染(SSI)の予防において、セフォキシチン(国内販売中止)と比較して、広域スペクトラム抗菌薬ピペラシリン・タゾバクタムは、術後30日の時点でのSSIの発生率を有意に抑制し、術後の敗血症や膵液瘻の発生頻度も低いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMichael I. D'Angelica氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月9日号に掲載された。北米のレジストリ連携型非盲検多施設無作為化第III相試験 本研究は、レジストリ連携の実践的な非盲検多施設無作為化第III相試験であり、2017年11月~2021年8月の期間に、米国とカナダの26施設(外科医86人)で患者の登録が行われた(米国NIH/NCIがんセンター研究支援助成などの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、適応症を問わず待機的な開腹膵頭十二指腸切除術を受けた患者が、ピペラシリン・タゾバクタム(各施設の基準に従い3.375または4.5g、静脈内投与)またはセフォキシチン(2g、静脈内投与、対照)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬は、切開開始から60分以内に初回投与が行われ、手術終了まで2~4時間ごとに追加投与され、術後は24時間以内に投与を終えることとされた。 主要アウトカムは、術後30日以内のSSIの発現であった。30日死亡率、臨床的に重要な術後の膵液瘻、敗血症の発生などが、副次アウトカムに含まれた。 本試験は、事前に規定された中止基準に従い、2回目の中間解析により有効中止となった。30日死亡率には差がない 778例が登録され、ピペラシリン・タゾバクタム群に378例(年齢中央値66.8歳、男性61.6%)、セフォキシチン群に400例(68.0歳、55.8%)が割り付けられた。456例(58.6%)が術前に胆管ステントを留置され、273例(35.1%)が術前化学療法もしくは放射線療法を、488例(62.7%)が膵がんの切除術を受けていた。 30日の時点におけるSSIの発生率は、セフォキシチン群が32.8%(131/400例)であったのに対し、ピペラシリン・タゾバクタム群は19.8%(75/378例)と有意に低かった(絶対群間差:-13.0%[95%信頼区間[CI]:-19.1~-6.9]、オッズ比:0.51[95%CI:0.38~0.68]、p<0.001)。 術後の敗血症(4.2% vs.7.5%、群間差:-3.3%[95%CI:-6.6~0.0]、p=0.02)および臨床的に重要な術後の膵液瘻(12.7% vs.19.0%、-6.3%[-11.4~-1.2]、p=0.03)の発生率は、いずれもピペラシリン・タゾバクタム群で有意に低かった。 一方、30日死亡率(1.3% vs.2.5%、群間差:-1.2%[95%CI:-3.1~0.7]、p=0.32)には、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「術後SSIリスクの低減は、術前の胆道ステント留置の有無にかかわらず認められた。本試験の結果は、開腹膵頭十二指腸切除術後のSSI予防における標準治療としてのピペラシリン・タゾバクタムの使用を支持する」としている。

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誤嚥性肺炎予防に黒こしょうが効く?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第234回

【第234回】誤嚥性肺炎予防に黒こしょうが効く?Unsplashより使用咳嗽を誘発するものは、誤嚥性肺炎に対して予防的に働くことが知られています。ACE阻害薬は、副作用の咳嗽が誤嚥性肺炎を予防する効果があるとされています。さて今回紹介する論文で検証されたのは、黒こしょうです。黒こしょうは咽頭へのサブスタンスPの放出を増加させることによって、嚥下反射を改善して誤嚥を予防することが示されています。山口 学ほか.療養型病棟における黒胡椒を用いた誤嚥性肺炎予防.日本気管食道科学会会報. 2018;69(1):13-16.この研究では、療養型病床群に入院している患者32例を2群に分け、60日ごとに黒こしょうを使用する群と非使用群にクロスオーバーして黒こしょうを使用し、誤嚥性肺炎の発生率を調べました。研究期間中に37.5℃以上の発熱があった症例は28例で、2日以上の発熱と誤嚥性肺炎があり、抗菌薬を使用した症例は11例でした。黒こしょうを使用した群は、発熱例11例、抗菌薬使用例は2例であり、有意に抗菌薬の使用頻度および治療日数を抑制することが示されました。これと同じメカニズムで、黒こしょうオイルを吸入してもらうことで、脳卒中後遺症の105例に嚥下反射の改善がみられたという報告があります1)。なんかクシャミ出そうなので、個人的には、あまり黒こしょうは吸いたくない気もしますが…。1)Ebihara T, et al. A randomized trial of olfactory stimulation using black pepper oil in older people with swallowing dysfunction. J Am Geriatr Soc. 2006 Sep;54(9):1401-1406.

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