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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第5位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内海外国内5位 J-RHYTHM Registryの結果が明らかに~70歳未満でもINRは低めで良いのか?わが国における抗凝固療法の最大の観察研究であるJ-RHYTHM Registryの結果が、第29回日本心電学会学術集会で口頭発表されました1)。同研究の対象は外来通院中の心房細動連続症例で、2009年1月~7月に全国の基幹病院などから7,937例が登録されました。ワルファリン投与が行われたのは6,932例(87%)で、INR 1.6~2.59でコントロールされていた症例が66%を占めています。イベント発生直近のINRレベル別に2年間のイベント発生率を検討すると、INR 1.6未満では血栓性イベントが、INR 2.6以上では出血性イベントが有意に高率に認められ、両イベントを合わせた発生率は、INR 1.6~2.59で有意に低率であり、この結果は、70歳未満例、70歳以上例いずれにおいても同様に認められたとのことです。このことは、70歳未満であってもINRの管理目標値を1.6〜2.6に設定することの妥当性をある程度示唆する所見です。本格的な検証には前向き試験が必要ですが、これは専門医ならずともほとんど医師が納得の結果ではないでしょうか?なぜならリアルワールドではかなりの医師が、若年者においてもこのように低めのINR管理をしていることは、周知の事実だからです。ガイドラインを守らなかったという点では公然の秘密とも言えたのかもしれません。この発表で、その秘密が秘密でなくなった感があります。1)小谷英太郎ほか.心電図 2012;32:S5-72.海外5位 左心耳閉鎖デバイスに関する無作為化試験~日本で普及するのか?左心耳というのは内胸動脈とともに「神様が心臓に残した2つのいたずら」の一つで、目立った役割がなく、そればかりか血栓形成の場であり、人類にとって迷惑な構造物と思われています。これをカテーテルを用いて閉鎖してしまうデバイスが過去10年間でいくつか開発されてきてはいたものの、エビデンスとしては不十分でした。本年(2013年)1月のCirculation誌に非弁膜症性心房細動に対するワルファリン単独投与との無作為割付試験(PROTECT AF)1)が報告され、やや方向性が見えて来ました。CHADS2スコア1点以上の707人を対象に2.3年追跡したところ、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死に差はなく、安全性においても有意差はありませんでした。ただし重篤な合併症も報告されており、実用化にあたってはデバイスの改良、植え込み技術の習得など課題は少なくない段階と思われます。何より、侵襲的治療の普及しにくい日本で今後どのような展開があるのか、注目すべき段階に来ていることは間違いありません。1)Reddy VY, et al. Circulation.2013;127:720-729. Epub 2013 Jan 16.

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(60)〕 The WOEST study:長期間抗凝固療法を受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンは不要でクロピドグレルのみの併用で良い

PCIを施行する際には、血栓症を予防するためにアスピリンとチエノピリジン系の抗血小板薬を併用することが標準とされてきた。 一方、65歳以上の年齢層の8%に非弁膜症性の心房細動が発症することが知られている。心房細動の治療は、心原性血栓による脳塞栓症と心房細動性頻拍症の持続による心不全の予防が基本であり、抗凝固薬とβ遮断薬の併用が標準治療とされている。抗凝固薬を服用中の患者にPCIを行う際の抗血小板薬の組み合わせは、臨床上きわめて重要な問題である。 本研究は、ベルギーとオランダの15の施設で抗凝固療法を受けている573人の患者をクロピドグレルとアスピリンの3剤併用群とクロピドグレルだけの2剤併用群に無作為に割り付けた。試験期間は3年で主要評価項目はPCI後1年以内の出血の合併症である。 PCI後1年のデータが得られた症例数は、2剤併用群で279例(98.2%)、3剤併用群で284例(98.3%)であった。出血の合併症の頻度は2剤併用群で54例(19.4%)で、3剤併用群の126例(44.4%)よりも有意(p<0.0001)に低かった。また、多発性出血と輸血の頻度についても、2剤併用群は3剤併用群よりも有意(p=0.011)に低いことが示され、また血栓症の増加もなかった。 以上の結果から、抗凝固療法を長期にわたって受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンを併用せずにクロピドグレルのみを抗凝固薬と併用することが効果は同等で安全性に優れているという、臨床上きわめて有用な薬の使い方が示唆された。

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抗凝固薬服用PCI患者にはクロピドグレル単独追加が出血リスクを有意に減少/Lancet

 経口抗凝固薬を服用中で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要とされる患者には、アスピリンやクロピドグレル(商品名:プラビックス)の抗血小板薬療法が推奨されている。その場合3剤併用療法は深刻な出血リスクを招くが、オランダ・Twee Steden HospitalのWillem J M Dewilde氏らの研究グループは、クロピドグレル単独と、クロピドグレル+アスピリンを併用した場合の有効性および安全性を調べる非盲検無作為化比較対照試験を行った。その結果、クロピドグレル単独追加群では出血性合併症が有意に減少し、血栓性イベントが増加しなかったことを報告した。Lancet誌オンライン版2013年2月13日号より。PCI後1年以内の全出血イベントの発生を評価 研究グループは、ベルギーとオランダの15施設で非盲検多施設無作為化比較対照試験を行った。期間は2008年11月~2011年11月の間で、経口抗凝固薬を服用中でPCIを受けた成人患者(18~80歳)を無作為に、クロピドグレル単独(抗凝固療法と合わせて2剤併用)またはクロピドグレル+アスピリン(3剤併用療法)のいずれかに割り付け追跡した。 主要アウトカムは、PCI後1年以内の全出血イベントとし、intention to treat解析にて評価した。クロピドグレル単独群は出血イベントが有意に減少 573例の患者が登録され、そのうち1年間のデータが得られたのは、2剤併用療法群284例中279例(98.2%)、3剤併用療法群289例中284例(98.3%)だった。平均年齢はそれぞれ70.3(SD 7.0)歳、69.5(同8.0)歳であった。 出血エピソードは、2剤併用療法群が54例(19.4%)、3剤併用療法群は126例(44.4%)で認められた[ハザード比(HR):0.36、95%信頼区間(CI):0.26~0.50、p<0.0001]。 多発性の出血イベントは、3剤併用療法群34例(12.0%)であったのに対し、2剤併用療法群では6例(2.2%)だった。 1単位以上の輸血を必要とした患者は、3剤併用療法群27例(9.5%)であったが、2剤併用療法群では11例(3.9%)だった(Kaplan-Meier解析によるオッズ比:0.39、95%CI:0.17~0.84、p=0.011)。 結果を踏まえて著者は、「経口抗凝固薬服用中でPCIを受けた患者には、クロピドグレル+経口抗凝固薬による治療が出血性合併症の有意に低いリスクと関連していた」と結論。「試験は小規模であったが、アスピリンを控えたことによる血栓イベントリスク増大のエビデンスは見いだすことができなかった」とも述べている。

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特発性VTE初発患者に対する再発予防のための低用量アスピリン投与/NEJM

 オーストラリア・Prince of Wales HospitalのTimothy A. Brighton氏らが、800人超について行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果、特発性静脈血栓塞栓症(VTE)の初発患者に対し、抗凝固療法後に低用量アスピリン療法を行っても、再発リスクがプラセボと比較して有意に低下しなかったことが報告された。一方で心血管イベント発生リスクについては、およそ3分の2低下し、研究グループは「正味の臨床的改善は示された」と結論した。特発性VTEを発症した人は、抗凝固療法終了後にVTE再発リスクが増大することが知られ、再発予防にアスピリンが有効である可能性があった。NEJM誌2012年11月22日号(オンライン版2012年11月4日号)掲載より。VTE再発率、プラセボ群が年率6.5%、アスピリン群が同4.8% 研究グループは、2003年5月~2011年8月に、特発性VTEの初回発症後、抗凝固療法を終了した822人を無作為に2群に分け、一方にはアスピリン(100mg/日)を、もう一方にはプラセボを投与し、最長4年間追跡した。主要アウトカムは、VTEの再発率だった。 被験者の平均年齢は54~55歳、男性は54~55%だった。追跡期間の中央値は、37.2ヵ月だった。 追跡期間中のVTE再発は、プラセボ群が411人中73人(年率6.5%)、アスピリン群が411人中57人(年率4.8%)と、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.52~1.05、p=0.09)。VTEの再発含む心血管疾患イベント発生リスク、アスピリン投与で約3分の2に 一方、事前に規定した2次複合アウトカムである、VTEの再発、心筋梗塞、脳卒中、心血管死のいずれかの発症率については、プラセボ群が年率8.0%に対し、アスピリン群が年率5.2%と、同リスクは約3分の2に低下した(ハザード比:0.66、同:0.48~0.92、p=0.01)。 また、もう一つの複合アウトカムで、VTEの再発、心筋梗塞、脳卒中、重大出血、総死亡のいずれかの発生率も、プラセボ群が年率9.0%に対し、アスピリン群が年率6.0%と、およそ3分の2に低下した(ハザード比:0.67、同:0.49~0.91、p=0.01)。 重大出血または臨床的重大出血の発症率や、重度有害事象の発生率は、両群で有意差はなかった。

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抗凝固療法におけるリスク評価のための計算機アプリがリリース

 心房細動患者に対して抗凝固療法を実施する際には、腎機能、出血リスク、脳卒中発症リスクなどを考慮する必要がある。 バイエル薬品株式会社は、それらを評価するための計算機アプリとして、2012年11月14日、医療従事者向けのiPadおよびiPhoneアプリ「診療計算App」の提供を開始した。 本アプリには、以下の5種類の計算機が内蔵され、オフラインでも使用が可能である。・クレアチニンクリアランス・Child-Pughスコア・HAS-BLEDスコア・CHADS2スコア・CHA2DS2-VAScスコア本アプリの詳細はこちら↓診療計算App for iPad診療計算App for iPhone

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検証!向精神薬とワルファリンの相互作用

ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用について、米国・ボストン大学医療センターのNadkarni A氏らが最新の文献レビューを行い、「特定の症例では、服用する向精神薬によって抗凝固療法を変更しなければならない可能性がある」ことを報告した。承認される向精神薬が増加し、ワルファリン療法を受けている患者が同時服用する可能性が増えている。しかし、ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用に関する直近の文献レビューは10年以上前のものしかなかった。Pharmacotherapy誌2012年10月号の報告。 ワルファリンは肝代謝を受けタンパク質との結合が高く、そのためとくに薬物相互作用を受けやすい。加えて、投与される患者は出血や血栓性合併症のリスクがあるなど他の治療と比べて狭い領域をターゲットにしている。そこで、ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用について記述された文献のシステマティックレビュー(MEDLINEを使用)は、チトクロームP450代謝システムと蛋白結合を介して伝達される相互作用に焦点を合て検証した。主な結果は以下のとおり。・ワルファリンと向精神薬の間には重大な相互作用があるが、過小評価されている傾向が示唆された。・これらの相互作用は、安全性と服薬コンプライアンスの両方に対して顕著な影響を及ぼしていた。・ワルファリン療法を受けている患者に特定の向精神薬が投与開始もしくは中止されるとき、あるいは向精神薬の安定投与を受けている患者にワルファリン療法が導入されるとき、臨床医は患者の国際標準比(INR)をモニタリングする必要がある。・ワルファリンとの併用でINRが増大する特定のリスクを引き起こす向精神薬は、フルオキセチン、フルボキサミン、クエチアピン、バルプロ酸などであった。・ワルファリンとの併用でINRを有意に減少させる可能性がある向精神薬としては、トラゾドン、セイヨウオトギリソウ、カルバマゼピンなどがあった。・タバコ成分中の多環芳香族炭素(polycyclic aromatic carbons)もINRを有意に減少させる可能性があった(ただし、ニコチン自体がニコチン置換療法のように、ワルファリンの抗凝固効果を変化させることは知られていない)。関連医療ニュース ・抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は? ・認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は? ・ドネペジル「新たな抗血管新生治療」の選択肢となりうるか?

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(13)〕 心房細動診療のピットフォール―心房細動で出血死させないために。CKDに配慮したリスク評価を!

非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う心原性塞栓による脳梗塞は、中大脳動脈などの主要動脈の急性閉塞による発症が多いため、アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に比べて梗塞範囲が大きく、救命された場合でも後遺症による著しいADLの低下を招きやすい。周術期の肺血栓塞栓症同様に、予防が重要である。心房細動患者の脳梗塞発症率は、発作性、持続性の病型による差はなく同等であるが、併存疾患や年齢によって梗塞リスクが異なり、リスク定量化の試みがなされている。2010年のESC心房細動管理ガイドラインから、従来のCHADS2スコアの欠点(低リスク例の層別化が不十分)が改善されたCHA2DS2-VAScスコアが採用されている。CHA2DS2-VASCスコアは、0 pointでは脳梗塞発症率が0%で、CHADS2スコアよりも低リスクを判別できて、抗凝固療法を必要としない例を効率よく除外できる。 ワルファリンは、きわめて有用・有効な抗凝固薬であるが、安全治療域が狭く、至適投与量の個人差が大きいうえ、多くの食品、薬物と相互作用があるなどの欠点を持っている。ワルファリンコントロールに繊細なコントロールが要求される理由のひとつとして、アジア人では、白人に比べて頭蓋内出血の頻度が約4倍高い(Shen AY, et al. J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 309-315.)ことがあげられる。ESCガイドライン2010では、出血リスクの評価としてHAS-BLEDスコア(Pisters R, et al. Chest. 2010; 138: 1093-1100.)を用いている。 本研究の結果、CKDを合併したNVAFは、梗塞リスクのみならず、出血リスクも高い特徴があることが明らかになった。従来の評価法のうち、HAS-BLEDスコアには腎機能が含有されるが(A)、CHA2DS2-VAScスコアには含有されていない。本研究の詳細を検討すると、CKD合併NVAFでは、梗塞リスクに対する高血圧(H)、心不全(C)、血管疾患(V)、糖尿病(D)の寄与が有意ではなかった(原著Table 3参照)。本邦でダビガトランの市販後に、腎機能低下患者で致死的な出血合併症を認めたことは記憶に新しい。個々の医師がCKDに高い関心を持つとともに、NVAFに対する抗凝固療法の安全性・有効性をさらに高める、より普遍的なリスク評価法の開発が必要であろう。

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抗凝固療法下の抗血小板療法DAPTよりもクロピドグレル単剤が出血リスクが低い:WOEST試験

心房細動(AF)など、抗凝固療法が必要な患者にステント留置を行う場合、抗血小板療法はアスピリン・クロピドグレル併用(DAPT)よりもクロピドグレル単剤のほうが、心血管系イベントを増加させることなく出血性合併症を有意に抑制することを、WOEST (What is Optimal antiplatelet and anticoagulant therapy in patients with oralanticoagulation and coronary stenting) 試験が明らかにした。この点を検討した初の無作為化試験である。8月28日の「ホットラインIII」セッションにて、聖アントニオ病院(オランダ)のWillem Dewilde氏が報告した。WOEST試験の対象は、抗凝固療法を1年以上継続し、無作為化後すぐに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が予定されていた18歳以上の563例である。重篤な出血既往例は除外されている。平均年齢は70歳、約8割が男性だった。抗凝固療法を必要とする疾患の70%近くをAFが占めた。また抗凝固薬は7割がワルファリンだった。PCIの内訳は、薬物溶出ステントDES(ベアメタルステント [BMS]との併用含む )が70%弱、BMS単独が30%となっていた。これら563例は抗凝固療法を継続のうえ、DAPT群(284例)とクロピドグレル単剤群(279例)に無作為に割り付けられた。DAPT群ではアスピリン80mg/日+クロピドグレル75mg/日、クロピドグレル単剤群では75mg/日を服用した。抗血小板薬の服用期間は、BMS留置例では最低1ヵ月間(最大でも1年間)、DES留置例では最低1年間とした。その結果、一次評価項目である「1年間の全TIMI出血」は、DAPT群:44.9%に対しクロピドグレル単剤群では19.5%と有意に低値となっていた(ハザード比:0.36、95%信頼区間:0.26~0.50;p

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特発性静脈血栓塞栓症の再発予防にアスピリン投与は臨床的ベネフィットあり

誘因が認められない非誘発性静脈血栓塞栓症を発症した患者に対し、アスピリン投与は、出血リスクを明らかに増大することなく再発リスクを有意に減らすことが報告された。イタリア・ペルージャ大学のCecilia Becattini氏らが行った無作為化試験の結果による。非誘発性静脈血栓塞栓症患者では、経口抗凝固療法中止後2年以内に再発する人が約20%を占め、抗凝固療法を延長することで再発は予防し得るものの、出血リスクが増大することが報告されていた。一方アスピリンの再発予防へのベネフィットについては、明らかになっていなかった。NEJM誌2012年5月24日号掲載報告より。403例をアスピリン群100mg/日とプラセボに割り付け2年間投与追跡Becattini氏らは、2004年5月~2010年8月の間に初発の特発性静脈血栓塞栓症を発症し6~18ヵ月の経口抗凝固療法を完了した403例を対象に多施設共同研修者主導二重盲検無作為化試験を行った。205例はアスピリン群(100mg/日)に、197例はプラセボ群に割り付けられ、2年間治療が行われた(1例はプラセボ群に無作為化後、治療開始前に死亡となった)。試験治療期間はオプションで延長可能とした。主要有効性アウトカムは、静脈血栓塞栓症の再発とし、主要安全性アウトカムを大出血とした。アスピリン群の再発は約半減と有意に減少試験期間中央値24.6ヵ月の間に、アスピリン群205例のうち28例が、プラセボ群197例のうち43例で静脈血栓塞栓症の再発が認められた。年間発症率はアスピリン群6.6%、プラセボ群11.2%で、ハザード比は0.58(95%信頼区間:0.36~0.93、P=0.02)であった。投与期間中央値23.9ヵ月の間の再発は、アスピリン群23例、プラセボ群39であった。年間発症率はそれぞれ5.9%、11.0%で、ハザード比は0.55(95%信頼区間:0.33~0.92、P=0.02)であった。各群それぞれ1例の大出血事例があった。有害事象は両群で同程度であった。

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ワルファリン投与終了後のアスピリン投与で静脈血栓塞栓症の再発は予防可能か?

Becattini氏らWARFASA研究グループは24日、抗凝固療法を中止した、誘因のない静脈血栓塞栓症患者に対するアスピリン投与により、再発リスクが低下することをNEJM誌に発表した。アスピリンの投与による重大な出血のリスクに明らかな上昇は認められなかった。約 20%の静脈血栓塞栓症患者は、経口抗凝固療法を中止後 2 年以内に再発すると言われている。抗凝固療法の投与期間延長によって再発予防は可能だが、出血リスクが伴う。WARFASA研究グループは多施設二重盲検試験にてアスピリンによる静脈血栓塞栓症の再発予防のベネフィットを検証した。誘因のない初発の静脈血栓塞栓症に対し、 6~18 ヵ月間の経口抗凝固療法を終了した患者が、アスピリン 100 mg/日とプラセボが投与される群に無作為に割り付けられた。主要有効性評価項目は静脈血栓塞栓症の再発、主要安全性評価項目は重大な出血。主な結果は下記のとおり。1. 試験期間中(中央値:24.6 ヵ月)、 静脈血栓塞栓症が再発した患者は、  アスピリン群 205 例中 28 例(6.6%/年)、プラセボ群 197 例中 43 例(11.2%/年)。  ハザード比 0.58(95%信頼区間:0.36~0.93)。2. 治療期間中(中央値: 23.9 ヵ月)、 アスピリン群 23 例(5.9%/年)、 プラセボ群 39 例(11.0%/年)で再発が認められた。 ハザード比 0.55(95%信頼区間:0.33~0.92)3. 各群 1 例に重大な出血が発現。有害事象は両群で同様。 (ケアネット 藤原 健次)

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妊娠中と産後の女性、DVTスクリーニングに単回の圧迫超音波検査が有効

深部静脈血栓症(DVT)が疑われる妊娠中および出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は、安全で合理的なスクリーニング法であることが示された。同スクリーニングで陰性でありながら、後にDVTの診断を受けた人の割合は1.1%と低かったという。フランス・Cavale Blanche大学のGregoire Le Gal氏らが、妊娠中・出産後の女性200人超について行った前向き試験で明らかにしたもので、BMJ誌2012年5月5日号(オンライン版2012年4月24日号)で発表した。妊娠はDVTのリスク因子であることが知られているが、一方で妊婦はDVTでなくても、それと似た症状を発症することが少なくないことも知られている。フランスとスイスの18ヵ所で210人を検査し追跡同研究グループは、フランスとスイスの18カ所の血管治療専門医療機関で、DVTが疑われた妊娠中または産後の女性226人について、単回の圧迫超音波検査によるDVTスクリーニングを行い、その後のDVT発症の有無について追跡した。被験者のうち16人は、主に肺血栓塞栓症の疑いにより、除外された。残った210人の、年齢中央値は33歳(四分位範囲:28~37)、妊娠中の女性は167人、出産後の女性は43人だった。当初DVT診断を受けなかった177人のうち、2人がDVT発症被験者のうち、圧迫超音波検査などでDVTの診断を受けたのは22人(10.5%)だった。また、同検査結果が陰性だった人のうち10人は、標準用量の抗凝固療法を行った。DVTの診断を受けず、また十分な抗凝固療法を行わなかった177人について、3ヵ月間追跡調査を行った。追跡期間中にDVTの診断を受けたのは、2人(1.1%、95%信頼区間:0.3~4.0)だった。同割合は、これまでに妊娠していない患者について行った静脈造影法によるDVTスクリーニングで、陰性でありながら後にDVTの診断を受けた割合と同等だった。研究グループは、「妊娠中または出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は安全で有効なDVTスクリーニングである」と結論付けた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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肺塞栓症に対するリバーロキサバン、標準療法に非劣性

肺塞栓症の初期治療および長期治療に対する、経口第Xa因子阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の固定用量レジメンは、標準的な抗凝固療法との比較で非劣性であり、ベネフィット対リスク特性が改善されていることが報告された。EINSTEIN–Pulmonary Embolism(PE)Study研究グループの検討報告で、NEJM誌2012年4月5日号(オンライン版2012年3月26日号)で発表された。リバーロキサバンの固定用量レジメンは、検査室監視が不要で、効果は深部静脈血栓症治療の標準的な抗凝固療法と同程度であることが示されていた。そこで、肺塞栓症の治療をシンプルにする可能性があることから検討が行われた。4,832例をリバーロキサバン対標準療法に無作為化研究グループによる無作為化薬剤名表示イベント主導型非劣性試験は、深部静脈血栓症の有無にかかわらず、急性症候性肺塞栓症を呈した4,832例を、リバーロキサバン投与群(1日2回15mgを3週間、その後は1日1回20mg)と、標準療法群(エノキサパリン投与後、用量調整ビタミンK拮抗薬を投与)に無作為に割り付け、3、6、12ヵ月時点で比較した。主要有効性アウトカムは、症候性静脈血栓塞栓症の再発とし、主要安全性アウトカムは、重大出血または重大ではないが臨床的に意義のある出血とした。イベント発生率、有害事象とも標準療法を上回る結果結果、リバーロキサバン群は、主要な有効性アウトカムにおいて標準療法群に対し非劣性(非劣性マージン2.0、P=0.003)で、イベント発生率はリバーロキサバン群の50件(2.1%)に対し、標準療法群は44件(1.8%)だった(ハザード比:1.12、95%信頼区間:0.75~1.68)。主要安全性アウトカムは、リバーロキサバン群10.3%に対し標準療法群11.4%の患者に認められた(同:0.90、0.76~1.07、P=0.23)。重大出血は、リバーロキサバン群26例(1.1%)、標準療法群52例(2.2%)で観察された(同:0.49、0.31~0.79、P=0.003)。他の有害事象の発生率は両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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経口抗凝固療法の自己モニタリング、血栓塞栓イベントを低減

患者自身が検査や用量の調整を行う自己モニタリングによる経口抗凝固療法は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢であることが、英国・オックスフォード大学のCarl Heneghan氏らの検討で示された。ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を受ける患者は増加し続けているが、治療域が狭いため目標とする国際標準化比(INR)を維持するには頻回の検査や適切な用量の調整などを要するという問題がある。自己モニタリングは、その有効性を示す優れたエビデンスがあるものの、臨床導入には相反する見解がみられるという。Lancet誌2012年1月28日号(オンライン版2011年12月1日号)掲載の報告。自己モニタリングの意義を検証するメタ解析研究グループは、経口抗凝固薬の患者自身による自己モニタリング(自己検査[検査は患者が行い用量は医師が決める]または自己管理[検査、用量調整とも患者が行う])の意義を検証するために、自己モニタリングと医師によるモニタリングの有効性を比較した無作為化試験のメタ解析を行った。Ovid versions of Embase(1980~2009年)とMedline(1966~2009年)を検索し、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどで検索結果を調整した。UK National Research Register and Trials Centralなどで未出版の試験も検索した。抽出された全試験の著者と連絡を取り、死亡までの期間、初回大出血、初回血栓塞栓イベントに関する個々の患者データの提供を求めた。機械弁置換や心房細動の患者についても解析した。年齢別、対照群のケアのタイプ(抗凝固療法専門施設とプライマリ・ケア施設)、自己検査と自己管理、性別について、事前に規定されたサブグループ解析を行った。変量効果モデルで統合ハザード比(HR)を算出した。 血栓塞栓イベントが半減、特に55歳未満と機械弁置換患者で高い効果1992~2006年に患者登録がなされ、2000~2010年に発表された11試験(6,417例、1万2,800人・年)が解析の対象となった。全体の平均年齢は65.0歳(17~94歳)、女性が22%、心房細動患者は53%、機械弁置換患者は35.0%であった。血栓塞栓イベントは、医師によるモニタリング群に比べ自己モニタリング群で有意に減少した(HR:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.85)が、大出血(同:0.88、0.74~1.06)と死亡率(同:0.82、0.62~1.09)は両群間に差はみられなかった。特に、55歳未満の患者(HR:0.33、95%CI:0.17~0.66)と機械弁置換患者(同:0.52、0.35~0.77)で血栓塞栓イベントの抑制効果が高かった。85歳以上の患者(99例)では、自己モニタリングによる合併症の増加はみられず、死亡率は有意に低下した(同:0.44、0.20~0.98)。著者は、「経口抗凝固療法の自己検査および自己管理は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢である」と結論し、「自己管理の選択肢は、適切な医療支援による保護の元で患者に提供すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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DVTに対するカテーテル血栓溶解療法、血栓後症候群を抑制

腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症(DVT)の治療では、低分子量ヘパリンやワルファリンによる標準的な抗凝固療法に血栓溶解薬を用いたカテーテル血栓溶解療法(CDT)を併用すると、標準治療単独に比べ血栓後症候群(PTS)の発生率や開存率が有意に改善することが、ノルウェー・オスロ大学病院のTone Enden氏が行ったCaVenT試験で示された。DVTに対する従来の抗凝固療法は、血栓の拡大や再発の予防には有効だが、血栓そのものは溶解させず、多くの患者がPTSを発症するという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月13日号)掲載の報告。カテーテル血栓溶解療法の併用効果を評価する無作為化対照比較試験CaVenT(Catheter-directed Venous Thrombolysis)試験の研究グループは、血栓溶解薬t-PA(アルテプラーゼ)を用いたCDTのPTS抑制効果を評価する非盲検無作為化対照比較試験を実施した。ノルウェー南東部地域の20施設から、腸骨大腿静脈の初回DVTの症状発症後21日以内の18~75歳の患者が登録された。これらの患者が、標準治療のみを行う群あるいは標準治療+CDTを施行する群に無作為化に割り付けられた。両群とも、24ヵ月間の弾性ストッキング(クラスII)の着用が指導された。標準治療は、国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標に、低分子量ヘパリン(ダルテパリン、エノキサパリン)とワルファリンを投与後にワルファリンを単独投与した。CDT群は、低分子量ヘパリンを単独投与し、CDTの8時間前までには投与を中止してCDTを行い、CDT終了1時間後からINR 2.0~3.0を目標に低分子量ヘパリンとワルファリンを投与した。CDTは超音波ガイド下に膝窩静脈からカテーテルを挿入し、血栓部位にアルテプラーゼを最長で96時間投与した(最大用量:20mg/24時間)。24ヵ月後のVillaltaスコアによるPTSの発生率および6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率の評価を行った。24ヵ月PTS発生率:55.6% vs. 41.1%、6ヵ月開存率:47.4% vs. 65.9%2006年1月~2009年12月までに209例が登録され、標準治療単独群に108例が、CDT群には101例が割り付けられた。24ヵ月のフォローアップ終了時に、189例[90%、標準治療単独群99例(平均年齢50.0歳、女性38%)、CDT群90例(同:53.3歳、36%)]から臨床データが得られた。24ヵ月の時点におけるPTSの発生率は、標準治療単独群の55.6%(55例)に対しCDT群は41.1%(37例)と有意に低下した(p=0.047)。PTS発生の絶対リスク減少率は14.4%、PTSの発生を1例抑制するのに要する治療数(NNT)は7であった。6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率は、標準治療単独群の47.4%(45例)に比べCDT群は65.9%(58例)と有意に改善した(p=0.012)。CDT関連の出血が20例でみられ、そのうち3例が大出血で、5例は臨床的に意義のある出血だった。著者は、「重度の近位DVTのうち出血リスクが低い患者にはCDTの追加を考慮すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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静脈血栓塞栓症予防に対するapixaban対エノキサパリン

うっ血性心不全、急性呼吸不全、急性関節リウマチなど内科疾患で入院した患者に対し、退院後も静脈血栓塞栓症の予防を目的にapixaban投与を延長して行っても、入院中のみに行うエノキサパリン(商品名:クレキサン)投与と比べて優位性は示されなかったことが報告された。apixaban投与群では、重大出血イベントがエノキサパリン投与群よりも有意に認められたという。米国・ブリガム&ウイメンズ病院のSamuel Z. Goldhaber氏らADOPT試験グループが行った二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験の結果で、NEJM誌2011年12月8日号(オンライン版2011年11月13日号)で発表された。apixabanの30日間経口投与群と、入院中エノキサパリン皮下注投与群とを比較本試験は、急性内科疾患で入院した患者について、退院後も静脈血栓症予防のための治療を行うことの有効性と安全性について、apixabanを退院後も延長して投与する長期投与コース群が、エノキサパリンを入院中のみ投与する短期投与コース群と比べて優れていると仮定して行われた。被験者適格は、うっ血性心不全や呼吸不全、その他の内科疾患で緊急入院となった患者で、3日以上の入院が予定され、静脈血栓塞栓症リスク因子(75歳以上、静脈血栓症で6週間以上の抗凝固療法の既往、がん、BMI 30以上など)を1つ以上有した6,528例だった。被験者は無作為に、apixaban 2.5mgを1日2回30日間(入院期間含む)経口投与する群と、入院6~14日にエノキサパリン40mgを1日1回皮下注投与する群に割り付けられた。apixaban長期投与コースの優位性示されず主要有効性アウトカム(30日時点の以下の発生複合:静脈血栓塞栓症関連死、肺塞栓症、症候性の深部静脈血栓症、30日目に計画的に実施された両側圧迫超音波検査で無症候性の近位下肢深部静脈血栓症を検出)は、4,495例(apixaban群2,211例、エノキサパリン群2,284例)について評価された。そのうち、apixaban群での発生は2.71%(60例)、エノキサパリン群では3.06%(70例)で、apixaban群の相対リスクは0.87(95%信頼区間:0.62~1.23、P=0.44)だった。一方、主要安全性アウトカム(出血イベント発生)について、30日までの重大出血イベント発生は、apixaban群0.47%(15/3,184例)、エノキサパリン群0.19%(6/3,217例)で、apixaban群の相対リスクは2.58(同:1.02~7.24、P=0.04)だった。(武藤まき:医療ライター)

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プライマリPCI前のエノキサパリン、未分画ヘパリンよりネット臨床ベネフィット提供

ST上昇型心筋梗塞を呈しプライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者の前処置として、未分画ヘパリンに比べエノキサパリンを投与されていた患者のほうが、ネット臨床ベネフィットが有意であることが報告された。フランス・パリ大学Gilles Montalescot氏らが行った国際無作為化オープンラベル試験「ATOLL」の結果による。直接的な両者の比較はこれまで行われていなかった。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。4ヵ国910例を対象に無作為化オープンラベル試験ATOLL試験は、ST上昇型心筋梗塞でプライマリPCIとエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを受けた患者の、虚血性イベントおよび出血イベントの低下について短期的、長期的に追跡する試験。4ヵ国(オーストリア、フランス、ドイツ、アメリカ)64施設から、2008年7月~2010年1月の間にST上昇型心筋梗塞を呈した910例が登録され行われた。被験者はオープンラベルで無作為に、プライマリPCI前に、エノキサパリンか未分画ヘパリンの0.5mg/kg静脈内ボーラスを受ける群に割り付けられた。患者の選択、割付、治療は可能な限り搬送中に医療チームが、中央無作為化センターと音声連絡を取り合い行われた。無作為化前にすでに抗凝固療法を受けていた患者は試験から除外された。プライマリエンドポイントは、30日死亡率、心筋梗塞合併症、処置失敗または大出血。主要副次エンドポイントは、死亡・再発性急性冠症候群・緊急血管再生術の複合とされ、intention to treat解析にて評価が行われた。主なエンドポイントでエノキサパリン有意に低減プライマリエンドポイントは、エノキサパリン群(450例)126例(28%)、未分画ヘパリン群(460例)155例(34%)で発生した(相対リスク:0.83、95%信頼区間:0.68~1.01、p=0.06)。死亡発生は、エノキサパリン群17例(4%)vs. 未分画ヘパリン群29例(6%)(p=0.08)、心筋梗塞合併症は同20例(4%)vs. 29例(6%)(p=0.21)、処置失敗は同100例(26%)vs. 109例(28%)(p=0.61)、大出血は同20例(5%)vs. 22例(5%)(p=0.79)で、両群間で違いはなかった。一方、主なエンドポイントは、エノキサパリン群で有意な低減が認められた[30例(7%)vs. 52例(11%)、相対リスク:0.59、95%信頼区間:0.38~0.91、p=0.015]。また、死亡・心筋梗塞合併症・処置失敗・大出血[46例(10%)vs. 69例(15%)、p=0.03]、死亡・心筋梗塞合併症[35例(8%)vs. 57例(12%)、p=0.02]、死亡・心筋梗塞再発・緊急血管再生術[23例(5%)vs. 39例(8%)、p=0.04]のエンドポイントもすべてエノキサパリン群で低減が認められた。Montalescot氏は、「エノキサパリンは未分画ヘパリンと比べて、虚血性アウトカムを有意に減らした。大出血、処置的成功に違いはなかった。したがって、エノキサパリンは、プライマリPCIを受ける患者にネット臨床ベネフィットという点で改善をもたらした」と結論している。

278.

心房細動を有する75歳以上高齢者の脳卒中リスクは“高リスク”とするのが妥当

心房細動を有する高齢患者の脳卒中リスクの予測能について、近年開発提唱された7つのリスク層別化シェーマを比較検討した結果、いずれも限界があることが報告された。英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア健康科学部門のF D R Hobbs氏らによる。脳卒中のリスクに対しては、ワルファリンなど抗凝固療法が有効であるとの多くのエビデンスがあるにもかかわらず、高齢者への投与率は低く、投与にあたっては特に70歳以上ではアスピリンと安全面について検討される。一方ガイドラインでは、リスクスコアを使いリスク階層化をした上でのワルファリン投与が推奨されていることから、その予測能について検討した。試験の結果を受けHobbs氏は、「より優れたツールが利用可能となるまでは、75歳以上高齢者はすべて“高リスク”とするのが妥当だろう」と結論している。BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載報告より。プライマリ・ケアベースの被験者を対象に、既存リスクスコアの予測能を検証既存リスク層別化シェーマの成績の比較は、BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation in the Aged)試験の被験者サブグループを対象に行われた。BAFTA試験は、2001~2004年にイギリスとウェールズ260の診療所から集められた心房細動を有する75歳以上の973例を対象に、脳卒中予防としてのワルファリンとアスピリンを比較検討したプライマリ・ケアベースの無作為化対照試験。Hobbs氏らは、BAFTA被験者でワルファリンを投与されていなかった、または一部期間投与されていなかった665例を対象とし、CHADS2、Framingham、NICE guidelines、ACC/AHA/ESC guidelines、ACCP guidelines、Rietbrock modified、CHA2DS2-VAScの各シェーマの脳卒中リスク予測能を調べた。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓の発生。解析対象のうち虚血性脳卒中の発生は54例(8%)、全身塞栓症は4例(0.6%)、一過性脳虚血発作は13例(2%)だった。最も分類できたのは高リスク、予測精度は全体的に同等低・中間・高リスクへの患者の分類は、3つのリスク層別化スコア(改訂CHADS2、NICE、ACC/AHA/ESC)ではほぼ同等であった。分類された割合が最も高かったのは高リスク患者で(65~69%、n=460~457)、一方、中間リスクへの分類が最も残存した。オリジナルCHADS2スコア(うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中既往)は、高リスク患者の分類が最も低かった(27%、n=180)。CHADS2、Rietbrock modified CHADS2、CHA2DS2-VASc(CHA2DS2-VASc血管疾患、65~74歳、性別)は、スコア上限値でリスク増大を示すことに失敗した。C統計量は0.55(オリジナルCHADS2)~0.62(Rietbrock modified CHADS2)で、予測精度は全体的に同等であった。なお、ブートストラップ法により各シェーマの能力に有意差はないことが確認されている。

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抗凝固剤 エドキサバン(商品名:リクシアナ)

 新規抗凝固薬であるエドキサバン(商品名:リクシアナ)が、2011年4月、「膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」を適応として承認された。今年7月にも薬価収載・発売が予定されている。静脈血栓塞栓症とは 今回、エドキサバンで承認された膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術施行患者は、いずれも静脈血栓塞栓症を発症しやすいとされている。静脈血栓塞栓症とは、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症の総称で、血流停滞、血管内皮障害、血液凝固能亢進を3大要因とし、上記患者においてその予防は重要となっている。 また、対象となる患者数は、膝関節および股関節の全置換術施行患者があわせて10万人、股関節骨折手術患者は10万人存在するとみられている。現在の静脈血栓塞栓症予防法と課題 下肢整形手術後における静脈血栓塞栓症予防法は、理学療法と薬物療法の2種類に大別される。理学療法における予防法としては、弾性ストッキングの着用や間欠的空気圧迫法などで、わが国ではすでに多くの症例で実施されている。薬物療法においては、未分画ヘパリン、ワルファリン、Xa阻害薬などが使用されているが、頻繁な血中モニタリング、ビタミンKの摂取制限、注射薬投与の煩雑さなどのアンメットニーズが存在している。エドキサバンはわが国初の経口Xa阻害薬 こうした状況を背景に、わが国初の経口Xa阻害薬となるエドキサバンが承認された。これまでにもXa阻害薬は存在していたが、いずれも注射薬であり、また従来のXa阻害薬がアンチトロンビンへの作用を介した間接的Xa阻害薬であるのに対し、エドキサバンはXaを直接阻害し、さらに可逆的に作用する。エドキサバンの第Ⅲ相試験結果 エドキサバンにはすでに多くのエビデンスが存在している。エドキサバンでは、人工膝関節全置換術、人工股関節全置換術施行患者を対象に、静脈血栓塞栓症および大出血または臨床的に重要な出血の発現率を検討した第Ⅲ相二重盲検試験が行われている。 人工膝関節全置換術施行患者を対象とした試験において、静脈血栓塞栓症の発現率は、エドキサバン群(30mg、1日1回、11~14日経口投与)で7.4%(95%信頼区間:4.9-10.9)、エノキサパリン群(2,000IU、1日2回、11~14日皮下注射)で13.9%(同:10.4-18.3)となり、有意に静脈血栓(塞栓)症の発現を抑制した。また、大出血または臨床的に重要な出血の発現率は、エドキサバン群で6.2%(同:4.1-9.2)、エノキサパリン群で3.7%(同:2.2-6.3)となり、群間の有意な差は認められなかった。 また、人工股関節全置換術施行患者を対象とした試験においては、静脈血栓塞栓症の発現率は、エドキサバン群(30mg、1日1回、11~14日経口投与)で、2.4%(同:1.1-5.0)、エノキサパリン群(2,000IU、1日2回、11~14日皮下注射)で6.9%(同:4.3-10.7)となり、有意に静脈血栓(塞栓)症の発現を抑制した。大出血または臨床的に重要な出血の発現率は、エドキサバン群で2.6%(同:1.3-5.1)、エノキサパリン群で3.7%(同:2.1-6.4)となり、群間の有意な差は認められなかった。 さらに、股関節骨折手術施行患者を対象に、エドキサバンまたはエノキサパリンを投与したオープンラベルでの臨床試験も行われており、この試験において、静脈血栓塞栓症の発現率は、エドキサバン群(30mg、1日1回、11~14日経口投与)で6.5%(同:2.2-17.5)、エノキサパリン群(2,000IU、1日2回、11~14日皮下注射)で3.7%(同:0.7-18.3)となった。なお、この股関節骨折手術施行患者を対象とした試験におけるエノキサパリン群は、参考として設定された群であり、統計学的な比較対象群とはならない。 こうしたエドキサバンの特徴やエビデンスを鑑みると、エドキサバンの登場により、医療従事者および患者の精神的・肉体的負担、静脈血栓塞栓症の発現率、頻回な血中モニタリング、食事制限といった、これまでのアンメットニーズの解決が期待される。リスクとベネフィットのバランスを鑑みた適切な使用を 近年、高い効果と使いやすさを兼ね備えた新しい抗凝固薬が開発され、抗凝固療法は大きな転換期を迎えつつある。しかし、どの抗凝固薬であっても少なからず出血リスクはつきまとい、また、ひとたび大出血を起こすと、場合によっては生命にかかわることもある。 その中で、わが国初の経口Xa阻害薬であるエドキサバンは、患者のリスクとベネフィットのバランスを鑑み、適切に使用すれば、多くの患者の役に立つ特徴を持った薬剤だといえる。■「リクシアナ」関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢

280.

静脈血栓塞栓症の抗凝固療法、至適な最短治療期間とは?

抗凝固療法終了後の静脈血栓塞栓症の再発リスクは、治療期間を3ヵ月以上に延長しても3ヵ月で終了した場合と同等であることが、フランス・リヨン市民病院のFlorent Boutitie氏らの検討で明らかとなった。再発リスクは近位深部静脈血栓症や肺塞栓症で高かった。一般に、静脈血栓塞栓症の治療には3ヵ月以上を要し、抗凝固療法終了後は再発リスクが増大するとされる。一方、抗凝固療法を3ヵ月以上継続すれば再発リスクが低減するかは不明で、再発抑制効果が得られる最短の治療期間も明らかではないという。BMJ誌2011年6月11日号(オンライン版2011年5月24日号)掲載の報告。静脈血栓塞栓症に対する治療期間が異なる抗凝固療法後の再発リスク 研究グループは、静脈血栓塞栓症に対する抗凝固療法の期間や臨床像が治療終了後の再発リスクに及ぼす影響、および再発リスクを最小限にする最短の抗凝固療法の治療期間を検討するために、7つの無作為化試験の参加者の個々の患者データを用いてプール解析を行った。対象は、担がん状態ではなく、治療期間が異なる抗凝固療法を施行された静脈血栓塞栓症初発患者2,925例。主要評価項目は、最長で24ヵ月のフォローアップ期間中における抗凝固療法終了後の静脈血栓塞栓症の初回再発率とした。静脈血栓塞栓症の治療期間は3ヵ月で終了してよいことを示唆するデータ 再発率は、近位深部静脈血栓症よりも孤立性の遠位深部静脈血栓症で有意に低く(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.34~0.71)、肺塞栓症と近位深部静脈血栓症は同等(同:1.19、0.87~1.63)、既知のリスク因子のない自発性(特発性)近位深部静脈血栓症よりも特定のリスク因子に起因する血栓症で有意に低かった(同:0.55、0.41~0.74)。抗凝固療法を1.0あるいは1.5ヵ月で終了すると、3.0ヵ月以降に終了した場合に比べ再発率が有意に高く(ハザード比:1.52、95%信頼区間:1.14~2.02)、3ヵ月で終了した場合と6ヵ月以降に終了した場合の再発率は同等であった(同:1.19、0.86~1.65)。抗凝固療法の期間と再発率に関連がみられたのは、治療終了から6ヵ月間に限られた。著者は、「静脈血栓塞栓症に対する3ヵ月間の抗凝固療法終了後の再発リスクは、3ヵ月以上治療を継続した場合と同等であった。自発性近位深部静脈血栓症や肺塞栓症は、治療の終了時期とは無関係に再発リスクが高かった」と結論し、「再発リスクが高く治療の継続が正当化される場合を除き、抗凝固療法は3ヵ月で終了してよいと考えられる」としている。

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