サイト内検索|page:3

検索結果 合計:86件 表示位置:41 - 60

41.

第12回 糖尿病合併症対策のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第12回】糖尿病合併症対策のキホン―眼科、腎機能、神経障害などの非専門領域の検査は、どのくらいの頻度でどこまで行うべきでしょうか。また専門医を紹介すべきタイミングと連携のコツを教えてください。 糖尿病網膜症の発症・進展抑制、早期治療のために、眼科医との連携は重要です。初診時に、眼科に行ったことがあるかを確認し、行ったことがなければ、眼科医に紹介します。1度眼科を受診すると、眼科医のほうでその後の定期検診を指示してくれますが、こちらでも、定期的に眼科を受診するように指導します。とくに問題がなければ半年に1回、網膜症がある場合は、重症度に応じた受診間隔でよいでしょう。「糖尿病治療ガイド2016-2017」(日本糖尿病学会編・著)では、眼科医への定期的診察の目安として、病期ごとに「正常(網膜症なし):1回/6~12ヵ月」「単純網膜症:1回/3~6ヵ月」「増殖前網膜症:1回/1~2ヵ月」「増殖網膜症:1回/2週間~1ヵ月」としています1)。 糖尿病腎症は、慢性透析療法の原疾患の第1位で2)、透析療法を受けている糖尿病患者さんの生命予後は非糖尿病の透析患者さんよりも不良で、心血管疾患や感染症リスクも高く重症化しやすいため3)、腎症についても、早期発見、進展抑制が求められます。腎症は、糸球体濾過量(GFR、推算糸球体濾過量:eGFRで代用)と尿中アルブミン排泄量あるいは尿蛋白排泄量によって評価できます。eGFRは、血清クレアチニン(Cr)を用いて「eGFR(mL/分/1.73m2)=194×Cr-1.094×年齢(歳)-0.287(女性の場合は、この値に×0.739)」で換算できるので、受診時に一般的な腎機能検査として、尿蛋白排泄量およびCr、BUNの検査は必ず行います。また、尿中アルブミン量を3~6ヵ月に一度測定し、アルブミン/クレアチニン比(ACR:Albumin Creatinine Ratio)を算出することで、尿蛋白が出現する前に腎臓の変化を発見することができます。網膜症のない場合、正常アルブミン尿であっても、eGFR<60mL/分/1.73m2の場合は、他の腎臓病との鑑別のために、また遅くとも尿中アルブミン排泄量が300mg/gクレアチニンを超えたら、専門医に紹介し、以降、定期的に腎臓専門医を受診してもらうようにします。 一般的には、糖尿病の三大合併症は神経障害→網膜症→腎症の順に進行し、神経障害は最も早く現れます。神経障害は、血糖コントロールの悪化とともに起こることが多いですが、糖尿病と診断される前、境界型の段階から存在するため、しばしば糖尿病診断の糸口になることもあります。神経障害の症状は非常に多岐にわたるため、糖尿病以外の原因による神経障害との鑑別が重要になります。足の末梢神経障害について、症状が著しく左右非対称であったり、筋萎縮や運動神経障害が強い場合は、神経内科に紹介します。 外来で注意したい糖尿病の合併症の1つに、指や爪の白癬症(水虫)や変形、胼胝(べんち、たこ)、足潰瘍・足壊疽などの「足病変」があります。神経障害および血流障害、易感染性が足潰瘍・足壊疽の主な原因になりますが、それ以外に、網膜症による視力低下で、身の回りを清潔にすることがおろそかになる、足にできた傷に気付かない、足に合わない靴を履いているなどが間接的な原因になり、足病変を悪化させることがあります。足潰瘍はひどくなると足壊疽になり、切断に至ることもあるため、まず予防をきちんとすること、できてしまった場合は、できるだけ早期に診断し対処します。予防のためには、患者さんに、毎日足を観察して異常があれば連絡するように伝えます。また、医療従事者側でも、診察の際に足を診察し、早期診断に努めるようにします。―糖尿病性神経障害の基本的な診断法と治療法について教えてください。 神経障害には、広範囲に左右対称性にみられる「多発神経障害(広汎性左右対称性神経障害)」と「単神経障害」があり、多くみられるのは多発神経障害です。 両足の感覚障害(両足のしびれや疼痛、また、足の裏に薄紙が貼りついたような感覚や砂利の上を歩いているような感覚になる知覚異常など)や穿刺痛、電撃痛、灼熱痛といった自発痛(ジンジン、ビリビリ、チリチリなど)、触覚・温痛覚の低下・欠如といった自覚症状、両側アキレス腱反射、両足の振動覚および触覚のうち、複数の異常があれば、多発神経障害の可能性があります。自覚症状については、かなりひどくならないと患者さんから訴えてくることはないため、注意が必要です。 多発神経障害の予防・治療のために、まずは良好な血糖コントロールを維持することが重要です。ただし、長期間の血糖不良例では、急激な血糖低下により、神経障害が悪化する可能性があります(治療後神経障害)。神経障害の自覚症状を改善する薬剤として、アルドース還元酵素阻害薬「エパルレスタット(商品名:キネダック)」があり、神経機能の悪化の抑制が報告されています4)。また、自発痛に対しては、Ca2+チャネルのα2δリガンド「プレガバリン(商品名:リリカ)」やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)「デュロキセチン(商品名:サインバルタ)」、抗不整脈薬「メキシレチン(商品名:メキシチール)」、抗けいれん薬「カルバマゼピン(商品名:テグレトール)」、三環系抗うつ薬などが単独、もしくは併用で使用できます。―高齢者ではどこまで合併症対策をすべきでしょうか? 高齢であっても、高血糖は糖尿病合併症の危険因子になるため、非高齢者同様、合併症の発症・進展を見据えた血糖コントロールは重要です。 しかし、高齢者の合併症は、非高齢者とは異なる特徴があります。高齢者でとくに問題になるのは認知機能の低下で、高齢患者さんでは、高血糖による認知症の発症リスクが高くなることが報告されています5,6)。また、高齢者では、高血糖によるうつ症状の発症・再発が多くなることも報告されています7)。そのほか、歯周病が増悪しやすいこと、急性合併症のうち、糖尿病ケトアシドーシスは若年者が多いのに対し、高齢者では高血糖高浸透圧症候群が多いなど1)、高齢者と非高齢者では留意すべき合併症が異なることを念頭に置く必要があります。 また、高齢者の合併症対策を考えるうえで、最も大切なのは血糖コントロールの考え方です。高齢者では、身体機能や認知機能、生理機能の低下や多くの併発症の可能性があり、個人差が非常に大きいことから、非高齢者とは異なる観点で、個別化した血糖コントロール目標および治療を検討することが求められます。高齢糖尿病は、若・壮年に発症し高齢化した患者さんと、高齢になって発症した患者さんで分けて考えます。とくに、高齢発症の糖尿病患者さんでは、生活スタイルや家族構成、身体的・精神的機能を考慮した治療戦略、さらには合併症対策を立てたほうがよいでしょう。また、高齢者では、年齢によっては余命を考慮し、できるだけQOLを損なうことなく、望ましい治療を選択することも重要です。 高齢者については、「糖尿病治療ガイド2016-2017」で初めて「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が掲げられました(詳細は、第1回 食事療法・運動療法のキホン-高齢者にも、厳密な食事管理・運動を行ってもらうべきでしょうか。をご参照ください)1)。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2016-2017. 文光堂;2016.2)一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会. 図説 わが国の慢性透析療法の現況. 2015年12月31日現在.3)羽田 勝計、門脇 孝、荒木 栄一編. 糖尿病最新の治療2016-2018. 南江堂;2016.4)Hotta N, et al. Diabet Med. 2012;29:1529-1533.5)Yaffe K, et al. Arch Neurol. 2012;69:1170-1175.6)Crane PK, et al. N Engl J Med. 2013;369:540-548.7)Maraldi C, et al. Arch Intern Med. 2007;167:1137-1144.

42.

これからの心房細動アブレーション、焼くか冷やすか~Fire and Ice trial~(解説:矢崎 義直 氏)-580

 左房と肺静脈をカテーテルアブレーションで電気的に隔離する心房細動の治療法は、この10年で大きく発展し、心房細動に対するマネージメントを大きく変えた。とくに高周波によるアブレーション治療は、薬物療法より洞調律維持効果が高いことを多くの大規模臨床試験が証明している。しかし、従来の高周波によるアブレーションは、肺静脈と左房を電気的隔離するために一点一点の多くの焼灼を必要とし、連続した円周上のブロックラインを作成するには、経験を必要とする。手技の複雑性のため、アブレーション治療成績は、個々のオペレーターの技術に大きく依存し、経験豊富な施設でも一定の割合で合併症が発生する。より手技がシンプルで、安全かつ治療効果が高いシステムとして冷凍バルーンアブレーションが開発された。 Fire and Ice trialは、症候性薬剤抵抗性発作性心房細動に対する肺静脈隔離術において、高周波アブレーションと冷凍バルーンアブレーションの効果と安全性を比較した無作為、前向き、非劣性試験である。 効果の主要エンドポイントは、初回アブレーション後の心房性不整脈の再発、もしくは再アブレーションや薬物療法などの治療の介入である。1年間のイベント発生率は、冷凍バルーン群で378例中138例(34.6%)、高周波群で384例中143例(35.9%)であり、非劣性が証明された(p<0.001)。最近の報告では、高周波アブレーションや冷凍バルーンアブレーション後の心房細動再発率は2割を切るものも多く、本試験のイベント発生率はやや多い。理由として以下の2点が挙げられる。 まず、本試験の期間中に両システムがそれぞれ、第2世代にアップグレードしている。冷凍バルーンは、カテーテル、シースの操作性が増し、バルーンの表面をより広範囲に冷却できるようになった。高周波アブレーションは、カテーテルの先端に圧センサーが搭載され、カテの先端と心筋の接触圧をグラム表示することにより、肺静脈隔離の精度がさらに増した。サブ解析において、それぞれの新旧システムによる成績に有意差はなかったものの、第1世代を使用していた期間が最終結果に影響を与えた可能性はある。 2点目は、心房細動再発の検出方法も結果に大きく影響するというものである。通常、アブレーション後のフォローは3ヵ月おきの外来やホルター心電図に留まることが多いが、本試験は電話伝送心電図を採用している。これにより、毎週心電図を確認することができるため、より厳密に心房細動の再発を検出した可能性がある。本試験では、それに加え、再アブレーションや、抗不整脈薬の使用などもイベントに組み込んでいる。これらの因子は、不整脈再発とオーバーラップしている可能性もあるが、より広くイベント発生がカウントされた可能性がある。 安全性の主要エンドポイントは、死亡、脳梗塞、一過性脳虚血発作、有害事象の発生の複合であり、1年間のイベント発生率は冷凍バルーン群で40例(10.2%)、高周波群で51例(12.8%)であり、両群差はなかった(p=0.24)。有害事象のほとんどが、穿刺部のトラブルや横隔神経障害などの致死的ではないイベントであり、今後、経験とともに改善の余地のある合併症であった。 今回の臨床試験で、冷凍バルーンアブレーションは従来の高周波アブレーションと比較して、同等の効果と安全性が証明された。また、冷凍バルーンアブレーションの手技時間は124分と高周波アブレーション群より有意に短く、シングルショットデバイスのメリットも結果に表れた。しかし、高周波アブレーション群も手技時間が140分、透視時間16分と短く、経験のある施設でのみ行われた試験というのがよくわかる。冷凍バルーンアブレーションの最大のメリットは、シンプルで簡便な手技でラーニングカーブが短いという点であり、むしろ、まだ経験の浅い術者や施設がより恩恵を被るであろう。

43.

循環器内科 米国臨床留学記 第10回

第10回 日本では使用されていない抗不整脈抗不整脈薬に関しては、日本と比べてアミオダロンを使用する機会が多いように感じます。おそらく、冠動脈疾患を伴う症例が多いため、フレカイニドなどのVaughan Williams分類Class Iの抗不整脈薬が使えない患者が多いことが一因だと思われます。米国では、日本では使用されていない心房細動に対する薬剤が幾つかありますので、紹介したいと思います。AHA/ACC/HRSのガイドラインに示されているように、器質的心疾患、とくに虚血性心疾患や心不全がある患者に使用できる抗不整脈薬は限られており、虚血性心疾患がある場合の選択肢はアミオダロン以外にdronedarone、dofetilide、ソタロールとなります。今回は、日本で使用されていないdofetilideおよびdronedaroneを取り上げたいと思います。dofetilide(商品名:Tikosyn)dofetilideはアミオダロンやソタロールと同じくClass IIIに分類される抗不整脈薬で、遅延整流外向きカリウムチャネルIKrに作用し心房および心室の不応期を延長します。dofetilideはQT延長作用が強いため、いろいろと制限があります。まず、開始前のQTcが440msより長い患者には使用することができません。また、腎機能によって投与量が異なり、クレアチニンクリアランスが20mL/min未満の患者では投薬できません。投薬後2時間の心電図によるQT間隔のチェックが必要で、かつ投与開始後最低3日間は入院のうえ、心電図モニターを継続することが推奨されています(いずれも添付文書より)。つまり、torsades de pointesなどが起きる可能性があるため、外来で始めることができないのです。実際、QTが著明に延長するため、標準投与量(500μg、1日2回)を投与できないこともよくあります。dofetilideの効果は用量と強く相関します。今年Heart Rhythm誌に発表された論文1)では、500μgを1日2回投与できたのは65.9%ですから、3分の1の症例で目標投与量に至らなかったようです。持続性心房細動に対してdofetilide導入入院中の薬物的除細動の成功率は41.9%で、1年後の洞調律維持は39.6%でした。同じClass IIIの抗不整脈薬のソタロールもQT延長作用が強く、米国ではdofetilideと同様、入院のうえ3日間モニタリングすることが勧められており、外来で開始することができません。dronedarone(商品名:Multaq)アミオダロンは抗不整脈薬の中でも最も有効性が高い薬剤ですが、ヨウ素剤による甲状腺や肺などに対する副作用のため、使用が難しい患者もいます。このアミオダロンからヨウ素を排除したのがdronedaroneです。半減期も13~19時間と、アミオダロンの2ヵ月前後と比べて短く、体内への蓄積が少なくて済みます。dronedaroneは薬理学的除細動の効果が低いため、除細動目的で処方することは推奨されていませんので、洞調律の維持のための処方となります。アミオダロンとの直接比較では、12ヵ月での洞調律維持がアミオダロンの75.1%に対して、dronedaroneは58.8%と有意に劣っていました2)が、最近のペースメーカーを用いた無作為化試験3)は、12週間の観察で心房細動の発生が54.4%減少することを示しています。dronedaroneは心不全を増悪させることがあり、心不全患者では注意が必要です。前述のガイドラインでは、NYHA Class IIIおよびIVの心不全患者で4週間以内に心不全のエピソードがある場合は禁忌となっています。上記のような制約のため、結果的に米国ではアミオダロンが頻繁に使われているのではないかと思われます。参考文献1) Huang HD, et al. Heart Rhythm. 2016 Feb 24. [Epub ahead of print]2) Le Heuzey JY, et al. J Cardiovasc Electrophysiol. 2010;21:597-605. 3) Ezekowitz MD, et al. J Interv Card Electrophysiol. 2015;42:69-76.

44.

アミオダロンは効く?効かない?よくわからない?(解説:香坂 俊 氏)-550

アミオダロンの登場10年以上前にさかのぼるが、アミオダロンが心肺蘇生の現場に登場したときは画期的であった。何しろエビデンスのエの字もなかった心肺蘇生の領域で、自分が知る限りでは初めての本格的ランダム化試験が行われたのだ。その試験の名前はALIVEといった(NEJM誌2002年掲載)。当時、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(pulseless VT)といった致死性不整脈には、種々様々な薬剤が使用されていた。主要なものとしては、昔からあったリドカイン、I群抗不整脈薬の雄ブレチリウム(現在米国では製造中止)、さらに抗狭心症薬からくら替えしてきたアミオダロンなどが選択肢として存在したが、ALIVE試験ではこのうちリドカインとアミオダロンが比較された。その結果はといえば、アミオダロンのほうが、蘇生されて病院に到達する率が抜群によく出たため(22.8% vs.12.0%)、これ以降ACLSのプロトコルにも採用され、アミオ(アミオダロンの米国での通称)は、救急医や循環器内科医にとってなじみ深い抗不整脈薬となった。ただ、ALIVEは300例程度の試験であったため、退院時の生死に関しては明確な結論が得られないままとなっていた(どちらの群でも80%以上の患者さんが最終的には死亡された)。アミオダロンの退場(?)前置きが長くなったが、今回のRCTはその「生存退院」というところにターゲットを合わせ、ALIVEのおおよそ10倍の規模で行われた臨床試験である(n=3,026)。さらに、アミオダロン、リドカインに加えて、ご丁寧に生理食塩水を使うコントロール群まで設定されるという徹底ぶりである。結果についての詳細は他稿(院外心停止に対するアミオダロン vs.リドカイン vs.プラセボ/NEJM)に譲るが、驚くべきことにアミオダロン群とリドカイン群の間に生存退院率の差は認められず(絶対値の差が0.7%、p=0.70)、さらに2つの薬剤投与群とコントロール群との差もわずかなものであった[アミオダロン群との差が3.2%(p=0.08)、リドカイン群との差が2.6%(p=0.16)]。この結果は衝撃的なものであり、今後アミオダロンのガイドライン上での扱いがどうなるか注目される(おそらく、今ほど絶対的な地位にとどまることはなかろうかと思われる)。よくわからないところよくわからないのが、アミオダロンとリドカインの2剤共「目撃されていた(witnessed)」心肺停止例に限れば、優れた効果を発揮できていた、というところだ。目撃者のいなかった心肺停止例は、いくらVFやVTといった波形を呈していたとしても、薬剤を使用するタイミングを逸してしまっていたということなのか? あるいは、きちんとバイスタンダーによる蘇生行為が行われていなければ、こうした薬剤は効果を発揮できないのか?自分はしばらくはアミオダロンを使い続けるつもりでいる。ただ、アミオダロンは有害事象(血圧の低下や徐脈)もある程度想定しなくてはならない薬剤なので(注)、もしもこちらをリドカインに切り替えて支障がないというのであれば、それは助かる。さらに、「目撃された」心肺停止例という群を別枠で考えなくてはならないかということについては、現場視点から考えると難しいのではないかと思う。このあたり、今後議論が深まっていくのではないだろうか?注)今回の試験でも、アミオダロン群では5%程度の症例で一時的なペーシングが必要となっている。

45.

ICD移植患者の心室頻拍、アブレーションが転帰良好/NEJM

 植込み型除細動器(ICD)の移植を受けた心筋梗塞後生存患者で、抗不整脈薬投与にもかかわらず心室頻拍(VT)を呈する患者について、抗不整脈薬の漸増よりもアブレーションを行ったほうが、アウトカムは有意に優れることが、カナダ・ダルハウジー大学のJohn L. Sapp氏らが行った多施設共同無作為化試験VANISHの結果、示された。同患者における抗不整脈薬治療抵抗性VTの頻度は高いことが知られる。しかし、その効果的なアプローチは明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年5月5日号掲載の報告。22施設で無作為化試験、アミオダロンを漸増 VANISH試験は、カナダ、ヨーロッパ、米国、オーストラリアの3次機能医療センター22施設で、虚血性心筋症を呈しICD移植を受けた患者で、抗不整脈投与もVTを呈する患者を集めて行われた。 被験者を無作為に、カテーテルアブレーションを施行(アブレーション群)、またはベースライン抗不整脈薬用量投与の継続もしくは漸増を行う群(漸増療法群)に割り付け追跡評価を行った。漸増療法群では、既投与薬がある場合、アミオダロンを開始。また、アミオダロンの用量は、同投与が300mg/日未満だった場合、または300mg/日以上でメキシレチンが併用されていた場合、増量した。 主要アウトカムは、死亡・24時間以内で3回以上のVTエピソード(VT storm)の記録・30日間の治療後の至適ICDショック治療の複合であった。複合アウトカム発生はアブレーション群で有意に低率 2009年7月~2014年11月に259例の患者が登録され、132例がアブレーション群に、127例が漸増療法群に無作為に割り付けられた。 追跡期間27.9±17.1ヵ月の間の主要アウトカム発生率は、アブレーション群が59.1%、漸増療法群が68.5%であった(アブレーション群のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.53~0.98、p=0.04)。 なお群間で、死亡率に有意差はみられなかった(27.6% vs.27.3%、HR:0.96、95%CI:0.60~1.53、p=0.86)。 有害事象について、アブレーション群で心穿孔が3例、重大出血3例が認められた。漸増療法では、肺傷害による死亡が2例、肝機能障害が1例認められた。

46.

心房細動に対する肺静脈隔離:クライオバルーン法は高周波アブレーション法に効果として非劣性、同等の安全性(解説:今井 靖 氏)-534

 薬物治療抵抗性発作性心房細動に対して、カテーテルアブレーションによる肺静脈隔離術は、ガイドラインにおいて推奨される治療法として確立している。高周波カテーテルアブレーションが広く普及しているが、クライオバルーン法がそれに続く治療法として注目を集めており、本邦においても昨年秋から広く実施されるようになった。 この論文は、上記対象疾患に対して、クライオバルーン法が高周波カテーテルアブレーションに非劣性であることを示すために行われた、多施設ランダム化比較試験である。有効性におけるプライマリーエンドポイントは、治療後90日以内における最初の臨床的なイベント(心房細動、心房粗動または心房頻拍の発症、抗不整脈薬の使用、再度のアブレーション)とされた。 安全性におけるプライマリーエンドポイントは死亡、脳血管イベント、重大な治療関連合併症の複合とされている。762例がランダム化され、378例がクライオバルーン、384例が高周波アブレーションに割り付けられた。平均追跡期間は1.5年であった。有効性エンドポイントにおいては、クライオバルーン法では138例、高周波アブレーション群では143例に認められた(Kaplan–Meier法による1年間あたりのイベント発生推計;クライオバルーン法34.6%、高周波アブレーション法35.9%、ハザード比:0.96、95%信頼区間:0.76~1.22、非劣性評価においてp<0.001)。安全性におけるプライマリーエンドポイントは、クライオバルーン法において40例、高周波アブレーション法では51例に認められた(Kaplan–Meier法における年間あたりのイベント推計;クライオバルーン法10.2%、高周波アブレーション法12.8%、ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.52~1.18、p=0.24)。 結論として、治療抵抗性発作性心房細動に対するクライオバルーン法は高周波アブレーションに対して非劣性であったが、全体としての安全性において差異は認められなかった。 クライオバルーン法は、この研究においては第1世代のバルーンが当初使用され、臨床試験の途中から第2世代のバルーンが用いられている。第1世代はバルーン全体が冷却される一方、第2世代のバルーンになり、肺静脈に接触する尖端側の半球側のみが冷却される構造に改良されている。なお、本邦に昨年秋から導入されたのはこの第2世代のクライオバルーンである。本研究においてもサブ解析で第1世代と第2世代のクライオバルーンが比較されているが、後者のほうが心房性不整脈などのエンドポイント発生が低い、すなわち有効性が高いという結果が認められている。一方、高周波アブレーション法も、最近は3次元マッピング法を基本として、カテーテル尖端圧(コンタクトフォース)の把握、一定部位に有効な通電が得られたと考えられる場合にタグを表示するVisiTag(Webster)など進歩が目覚ましい。3次元マッピング法は、放射線による透視を最小限に抑えて手技が実施できるところまで進化してきているが、クライオバルーン法は短時間にかつ簡便に肺静脈隔離が達成できる一方、透視と肺静脈に楔入されていることを確認するための造影剤使用を行わざるを得ないという点、肺静脈の解剖学的形態により、バルーン法による治療が困難な場合もある。 また、クライオバルーン法においては横隔神経麻痺の発症が比較的高いという懸念もあったが、日常臨床においては、横隔神経刺激における筋電図モニタリング(CMAP)の実施によりその障害も特に本邦では低率に抑えられている。肺静脈、左房の形態がバルーン法に適するかどうか事前にCT、MRIにおいて左房、肺静脈の形態把握をすることが肝要と思われる。 今回の研究により、新しいクライオバルーン法が高周波アブレーション法に非劣性であることが示されたことにより、患者ごとに適する治療手段で治療効果をさらに高めることが出来れば良いと考えられる。肺静脈・左房の形態が、クライオバルーンに適する場合はクライオバルーンを選択、形態的に適さない場合や肺静脈隔離以外に付加的に心房内線状焼灼、CFAE、GP ablation、rotor ablationなどを行う場合は高周波アブレーションを行う、といった具合に、症例ごとに至適化する必要性があると考えられる。

47.

院外心停止に対するアミオダロン vs.リドカイン vs.プラセボ/NEJM

 電気的除細動抵抗性の心室細動(VF)または無脈性心室頻拍(VT)の院外心停止患者に対し、アミオダロンまたはリドカインの投与はプラセボと比較して、生存率や良好な神経学的アウトカムの改善に結び付かないことが、約3,000例を対象とした無作為化二重盲検試験の結果、示された。難治性ショックVF/VTの院外心停止患者に抗不整脈薬が投与されるのは一般的になっているが、生存ベネフィットは実証されていなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月4日号掲載の報告。3,026例を3群に無作為化、主要アウトカムは生存退院率 試験は、55の救急医療サービス(EMS)機関の救急隊員が北米10地点で患者を登録して行われた。被験者は、18歳以上成人、非外傷性の心停止、1回以上の電気的ショック後に難治性VF/VTが認められる、および静脈路や骨髄路の確保が必要な患者であった。 被験者をアミオダロン、リドカイン、プラセボ(食塩水)を静脈投与する群に無作為に割り付け、併せて標準的ケアを行いながら比較した。 主要アウトカムは、生存退院率。副次アウトカムは、退院時の神経的機能良好であった。 per-protocol(主要解析)集団には、適格基準を満たし、試験薬が用量を問わず投与され、初回難治性ショックだった患者3,026例が包含された。生存退院率は同等、退院時の神経学的アウトカムも同等 3,026例が無作為に割り付けられたアミオダロン群974例、リドカイン群993例、プラセボ1,059例のうち、生存退院した患者は、それぞれ24.4%、23.7%、21.0%であった。生存率差は、アミオダロン vs.プラセボは3.2%(95%信頼区間[CI]:-0.4~7.0、p=0.08)、リドカイン vs.プラセボは2.6%(同:-1.0~6.3、p=0.16)、アミオダロン vs.リドカインは0.7%(同:-3.2~4.7、p=0.70)であった。 退院時の神経学的アウトカムも、3群で同等であった(アミオダロン群18.8%、リドカイン群17.5%、プラセボ群16.6%)。 治療効果については不均一性がみられ(p=0.05)、心停止が目撃された(EMSまたはバイスタンダーにより)患者についてみたサブグループ解析では、実薬群のほうがプラセボ群よりも生存退院率が有意に高率だった。 また、有害事象として無作為化後24時間以内に一時的心臓ペーシングを要した患者が、アミオダロン群(4.9%)でリドカイン群(3.2%)およびプラセボ群(2.7%)よりも多くみられた。

48.

発作性心房細動へのアブレーション、冷凍 vs.高周波/NEJM

 薬剤抵抗性発作性心房細動に対するクライオバルーンアブレーション(冷凍アブレーション)は、高周波アブレーションに対し非劣性であることが認められ、安全性も同等であった。ドイツ・Asklepios Klinik St. GeorgのKarl-Heinz Kuck氏らが、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験「FIRE AND ICE」の結果、報告した。現在のガイドラインでは、薬剤抵抗性発作性心房細動の治療としてカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離術が推奨されている。高周波アブレーションが最も頻用されているが、冷凍アブレーションは比較的簡便で手術時間の短縮や合併症の軽減などが期待できる。これまで、両者の比較試験は小規模なものが多く、無作為化試験はほとんどなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月4日号掲載の報告。769例を対象に非劣性試験を実施 研究グループは、2012年1月19日~15年1月27日の間に、8ヵ国16施設において、クラスI群またはIII群抗不整脈薬あるいはβブロッカーに抵抗性の症候性発作性心房細動患者769例を登録した。このうちスクリーニング失敗例等を除いた762例をクライオバルーンアブレーション(クライオバルーン)群または高周波アブレーション(RF)群に、施設および年齢(≦65歳 vs.>65歳)で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた(それぞれ378例および384例)。 有効性に関する主要評価項目は、アブレーション後90日以降の治療不成功(30秒以上持続する心房細動の再発、心房粗動または心房頻拍の発生、クラスI群またはIII群抗不整脈薬の使用、再アブレーション)で、非劣性マージンはハザード比(HR)1.43とした。 安全性の主要評価項目は、全死因死亡、脳血管イベント(脳卒中または一過性脳虚血発作)、重篤な治療関連有害事象の複合エンドポイントであった。アブレーション後90日以降の治療不成功は冷凍35%、高周波36% 解析対象は、割り付け後にアブレーションが実施された750例(クライオバルーン群374例、RF群376例)で、追跡期間は平均1.5年であった。 アブレーション後90日以降の治療不成功は、クライオバルーン群138例、RF群143例であった。Kaplan-Meier法で推算した1年時のイベント発生率は、それぞれ34.6%、35.9%で、HRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.76~1.22)であり、クライオバルーン群はRF群に対して非劣性であることが認められた(非劣性のp<0.001、log-rank検定)。 安全性の主要評価項目の発生は、クライオバルーン群40例、RF群51例に認められた。Kaplan-Meier法で推定した1年時のイベント発生率は、それぞれ10.2%、12.8%であった(HR:0.78、95%CI:0.52~1.18、p=0.24)。

49.

ジゴキシンは本当に死亡を増大するのか/BMJ

 ジゴキシン(商品名:ジゴシンほか)使用と死亡との関連は認められず、一方で入院減少との関連が認められたことを、英国・バーミンガム大学循環器サイエンスセンターのOliver J Ziff氏らが報告した。ジゴキシンは心不全患者の症状軽減や心房細動患者の心拍数コントロールに用いられる頻度が高いが、最近の観察研究で死亡増大との関連が指摘されていた。研究グループは、すべての観察研究、無作為化試験を対象に試験デザインや方法を考慮しつつ、ジゴキシンの死亡および臨床的アウトカムへの影響を明らかにするシステマティックレビューとメタ解析を行った。BMJ誌オンライン版2015年8月30日号掲載の報告。ジゴキシン vs.対照の比較試験をシステマティックレビュー、メタ解析 ジゴキシンの安全性と有効性に関する本検討は、Medline、Embase、Cochrane Libraryおよび参照リスト、さらに現在進行中の前向き試験(PROSPEROデータベースに登録)を検索して行われた。1960年~2014年7月に発表され、ジゴキシンと対照(プラセボまたは無治療)を比較検討した試験を適格とした。 未補正および補正済みデータを、試験デザイン、解析方法、リスクバイアス別にプール。ランダム効果モデルを用いたメタ解析法で、主要アウトカム(全死因死亡)、副次アウトカム(入院など)を評価した。死亡への影響はベースライン差によるもの システマティックレビューにより52試験、被験者62万1,845例が包含された。被験者は、ジゴキシン使用者が対照よりも2.4歳年上で(加重差95%信頼区間[CI]:1.3~3.6)、駆出率が低く(33% vs.42%)、糖尿病者が多く、利尿薬と抗不整脈薬の服用数が多かった。 メタ解析には75件の解析試験(未補正33件、補正後22件、傾向適合13件、無作為化7件)が含まれ、総計400万6,210人年のフォローアップデータが組み込まれた。 結果、対照と比べて、ジゴキシンのプール死亡リスク比は、未補正解析試験データ群で1.76(1.57~1.97)、補正後解析試験データ群で1.61(1.31~1.97)、傾向適合解析試験データ群で1.18(1.09~1.26)、無作為化対照試験データ群で0.99(0.93~1.05)であった。 メタ回帰分析により、ジゴキシンと関連した死亡への有意な影響は、利尿薬使用といった心不全重症度マーカーなど(p=0.004)治療群間のベースライン差によるものであることが確認された。 方法論が良好で、バイアスリスクが低い試験は、ジゴキシンと死亡についてより中立的であると報告する傾向が有意にみられた(p<0.001)。 全試験タイプにわたって、ジゴキシンは、わずかだが有意に、あらゆる要因による入院の減少と関連していた(リスク比:0.92、0.89~0.95、p<0.001、2万9,525例)。 結果を踏まえて著者は、「ジゴキシンは、無作為化試験において死亡との関連は中立的であることが認められ、また全タイプの試験で入院の減少と関連していた」とまとめ、「観察試験でみられたジゴキシンと有害転帰との関連は、ジゴキシン処方を原因とするものではなく、統計的補正によっても軽減されない交絡因子によるものと思われる」と述べている。

50.

心房細動アブレーション、部位特定にアデノシンが効果的/Lancet

 発作性心房細動へのカテーテルアブレーションにおいて、肺静脈隔離術後にアデノシンを投与し休止伝導部位を特定することが、無不整脈生存を改善する安全で非常に効果的な戦略であることが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のLaurent Macle氏らが、国際多施設無作為化優越性試験ADVICEの結果、報告した。著者は、「本アプローチを、臨床でルーチンとすることを検討すべきである」とまとめている。心房細動へのカテーテルアブレーションは増大しているが、不整脈再発の頻度が高い。アデノシンの投与は、休止伝導部位(dormant conduction)を明らかにし、伝導再発(reconnection)リスクのある肺静脈を特定可能である。それにより心房細動アブレーションの追加部位が導かれ、無不整脈生存が改善できるのではないかと見なされていた。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号の掲載報告。心房細動患者をアデノシン誘導追加アブレーション群と非追加アブレーション群に割り付け 試験は、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の18病院で行われた。過去半年に少なくとも3回の症候性心房細動を有し、抗不整脈薬治療が無効であった18歳以上の患者を登録した。 肺静脈隔離術後にアデノシンを静脈内投与。休止伝導部位が認められた患者を、追加の心房細動アブレーションを行う(アデノシン誘導による追加アブレーション)群と行わない(非追加アブレーション)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。休止伝導部位が認められなかった患者は、無作為に選択してレジストリ(非休止伝導部位レジストリ)群に包含した。患者は治療割り付けについて知らされず、アウトカムの評価はマスキングされた判定委員会により行われた。 追跡期間は1年間。主要アウトカムは、単回アブレーション後の症候性の心房頻脈性不整脈発生までの期間で、intention-to-treat解析で評価した。アデノシン誘導追加アブレーション群の心房細動患者の不整脈再発ハザード0.44 2009年10月~2012年8月に、心房細動患者550例が登録され、534例について肺静脈隔離術後のアデノシン投与が行われた。それにより休止伝導部位の出現が認められたのは284例(53%)で、アデノシン誘導追加アブレーション群に147例、非追加アブレーション群に137例が無作為に割り付けられた。 症候性心房頻脈性不整脈が未発生であった心房細動患者は、非追加アブレーション群58例(42.3%)に対して、アデノシン誘導追加アブレーション群は102例(69.4%)であった。アデノシン誘導追加アブレーション群の絶対リスクの減少は27.1%(95%信頼区間[CI]:15.9~38.2、p<0.0001)、ハザード比は0.44(同:0.31~0.64、p<0.0001)であった。 一方、非休止伝導部位レジストリ群には115例が包含され、そのうち症候性心房頻脈性不整脈が未発生であったのは64例(55.7%)であった(非追加アブレーション群との比較のp=0.0191)。 重篤有害事象の発生は、各群で同等であった。死亡は1例(広範囲の血栓症)で、レジストリ群の患者であり心房細動アブレーションと関連していると考えられた。

51.

心房粗動の患者さんへの説明

心房粗動監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・洞結節由来の心房波が消え、複数あるいは単一の興奮波が心房の中を旋回しています。・心房粗動が起こると、1分間に250~350回心房が興奮します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節心房粗動では、心房が速い速度で細かく収縮するため、外から見るとけいれんしているような状態になります。①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?◆通常の心臓は興奮が伝わり規則正しく収縮しますが…トントントントン◆心房粗動では、心房細動よりは低いものの、速い速度で細かく収縮します。しかし、収縮の一部が心室一定に伝わるため、心室の収縮は規則的です。そのため、脈拍は1分間に150回、75回など一定になることが多いです。トントントントントントン脈拍は一定であることが多いです。無症状の方から、動悸、息切れなどの症状を訴える方までさまざまです。心房の収縮心室の収縮(脈)Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・心房粗動自体が直接命に関わることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こすことで間接的に悪影響を及ぼすため、治療が必要です。血栓が血管を閉塞脳梗塞心房細動や心房粗動では、心房がけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどみ、心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓から動脈に沿って、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍といわれています。この塞栓症を予防することが心房細動や心房粗動治療の最も重要な目的です。血液がよどむ→血栓ができる→血栓が全身に飛ぶ(運ばれる)→脳梗塞、心筋梗塞などの塞栓症Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動の治療は・抗不整脈薬はあまり効果がありませんが、カテーテルアブレーションは高い効果(根治確率90%以上)が認められます。そのため、治療はカテーテルアブレーションが主体となります。・心房粗動が長い間続いているなど脳梗塞を起こす危険がある場合は、血栓が起きないように抗血栓薬を飲みます。高周波通電カテーテルアブレーション電極アブレーションカテーテル高周波発生装置カテーテルアブレーション血管を通して心臓まで細い管(カテーテル)を入れ、不整脈の原因となっている場所を探して、その部位を低温やけどさせ、不整脈の原因を取り除くという治療です。心房粗動のほとんどは右心房が発生部位であることがわかっています。静脈からカテーテルを挿入すると、すぐに右心房に到達し、治療も短時間で終了します。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆カテーテルアブレーションで根治した場合、その後の治療や管理は不要です。◆長期的には心房細動を発生することもありますので、定期的な検査は受けたほうがよいでしょう。【根治しなかった場合は、下記に注意しましょう】◆高血圧、糖尿病、心臓の病気などがあると脳梗塞を起こしやすくなるので、しっかり管理してください。◆睡眠不足、ストレス、アルコールは不整脈を起こしやすくしますので注意してください。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.抗血栓薬による脳梗塞予防◆血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。◆ワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。◆薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診のたびに血液検査を行う必要があります。◆ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

52.

心房細動の患者さんへの説明

心房細動監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動とは?・洞結節由来の心房波が消え、複数あるいは単一の興奮波が心房の中を旋回しています。・肺静脈の開口部にある心筋細胞から生じる心房期外収縮が引き金になります。・心房細動が起こると、1分間に350回以上心房が興奮します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節心房細動では、心房が速い速度で細かく収縮するため、外から見るとけいれんしているような状態になります。①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動とは?◆通常の心臓は興奮が伝わり規則正しく収縮しますが…トントントントン◆心房細動では、心房が速い速度で細かく収縮しますが、収縮の一部は心室に伝わらないので、心室の収縮は不規則です。そのため、脈拍は1分間に50回前後のこともあれば、100回を超えるような方もいます。トントントントントン人によって脈の速さが大きく違うため、まったく無症状の方から、ひどい動悸、息切れ、脈が速くなる・でたらめになる、などの症状を訴える方までさまざまです。持続時間もまちまちで、発作的に数分から数時間起きる方(発作性心房細動)もいれば、慢性的に起きる方(慢性心房細動:1週間上持続するもの=持続性心房細動、1年以上持続しているもの=永続性心房細動)もいます。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房の収縮心室の収縮(脈)心房細動とは?・人口の1%と、比較的ありふれた不整脈ですが、加齢により増加し、80歳以上では5%の方がかかっています。・心房細動自体が直接命に関わることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こす原因となるため、脳梗塞へのなりやすさなどを考え治療を決めます。血栓が血管を閉塞脳梗塞心房細動や心房粗動では、心房がけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどみ、心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓から動脈に沿って、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍といわれています。この塞栓症を予防することが心房細動や心房粗動治療の最も重要な目的です。血液がよどむ→血栓ができる→血栓が全身に飛ぶ(運ばれる)→脳梗塞、心筋梗塞などの塞栓症Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動の治療は・脳梗塞を起こす危険がある場合は、血栓が起きないように抗血栓薬を飲みます。・心房細動を止める必要がある場合は、薬(抗不整脈薬など)を服用するか、カテーテルアブレーションを行います。高周波通電カテーテルアブレーション高周波発生装置電極カテーテルアブレーション血管を通して心臓まで細い管(カテーテル)を入れ、不整脈の原因となっている場所を探して、その部位を低温やけどさせ、不整脈の原因を取り除くという治療です。心房細動では左心房にある肺静脈の血管内やその周囲から発生する異常な電気信号をきっかけに起こるため、肺静脈を囲むようにしてアブレーションの治療を行い、肺静脈からの異常電気信号が、心臓全体に伝わらないようにします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆高血圧、糖尿病、心臓の病気などがあると脳梗塞を起こしやすくなるので、しっかり管理してください。◆睡眠不足、ストレス、アルコールは心房細動を起こしやすくしますので注意してください。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。◆脳梗塞の危険性が高い場合は、脳梗塞予防薬を毎日忘れないように服用します。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.抗血栓薬による脳梗塞予防◆血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。◆ワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。◆薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診のたびに血液検査を行う必要があります。◆ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

53.

アリスミアのツボ Q23

Q23心房細動に対するアブレーションの適応は?発作性心房細動、とくに若年者では積極的に……もちろんインフォームドコンセントが重要ですが。発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションは、もうすでに円熟期に入っていると感じています。2回行うという前提で考えれば、80~90%が心房細動フリーになるといってよい時代です。症状のある発作性心房細動が紹介されると、一度は抗不整脈薬を試すのですが、それでもカテーテルアブレーションという方法があることを伝え、とくに若年者ではむしろ積極的に勧めています。日本における多施設での経験も、J-CARAF研究として報告されています(3,373例)1)。合併症は、穿刺部の出血などもすべて含めて4.5%で、ドレナージを要する心嚢液貯留が1.3%、TIA、症候性・無症候性脳梗塞を合算して0.3%、死亡例は0%という数字です。しかし、慢性心房細動になれば、この成功率は確保できず、まだ発展途上の治療方法という位置付けです。だから、心房細動に対するカテーテルアブレーションは、心房細動が発作性のうちに行う……若年者では、(1)抗不整脈薬ではやがていつの日か慢性化してしまう2)、(2)合併症発現率も許容範囲であること、を考えれば、積極的に勧めていいと思っています。ちなみに日本循環器学会のガイドラインでは次のような推奨がなされています。クラス I高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず、かつ重症肺疾患のない薬物治療抵抗性で有症候性の発作性心房細動に、年間 50 例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行われる場合。クラス IIa 薬物治療抵抗性で有症候性の発作性および持続性心房細動。パイロットや公共交通機関の運転手など、職業上制限となる場合。薬物治療が有効であるが、心房細動アブレーション治療を希望する場合。1)Inoue K, et al. Circ J. 2014; 78: 1112-1120. Epub 2014 Mar 17.2)Kato T, et al. Circ J. 2004; 68: 568–572.

54.

アナフィラキシーの治療の実際

アナフィラキシーの診断 詳細は別項に譲る。皮膚症状がない、あるいは軽い場合が最大20%ある。 治療(表1)発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難である。数分で死に至ることもあるので、過小評価は禁物。 ※筆者の私見適応からは、呼吸症状に吸入を先に行う場合があると読めるが、筆者は呼吸症状が軽症でもアナフィラキシーであればアドレナリン筋注が第1選択と考える。また、適応に「心停止」が含まれているが、心停止にはアドレナリン筋注は効果がないとの報告9)から、心停止の場合は静注と考える。表1を拡大する【姿勢】ベッド上安静とし、嘔吐を催さない範囲で頭位を下げ、下肢を挙上して血液還流を促進し、患者の保温に努める。アナフィラキシーショックは、distributive shockなので、下肢の挙上は効果あるはず1)。しかし、下肢拳上を有効とするエビデンスは今のところない。有害ではないので、薬剤投与の前に行ってもよい。【アドレナリン筋肉注射】気管支拡張、粘膜浮腫改善、昇圧作用などの効果があるが、cAMPを増やして肥満細胞から化学物質が出てくるのを抑える作用(脱顆粒抑制作用)が最も大事である。α1、β1、β2作用をもつアドレナリンが速効性かつ理論的第1選択薬である2)。緊急度・重症度に応じて筋注、静注を行う。血流の大きい臀部か大腿外側が薦められる3)。最高血中濃度は、皮下注で34±14分、筋注で8±2分と報告されており、皮下注では遅い4)。16~35%で2回目の投与が必要となる。1mLツベルクリンシリンジを使うと針が短く皮下注になる。1)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~30分間隔 [厚生労働省平成20年(2008)5)]2)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~15分間隔 [UpToDate6)]3)アドレナリン1回0.01mg/kg筋注 [日本アレルギー学会20141)]4)アドレナリン1回0.2~0.5mgを皮下注あるいは筋注 [日本化学療法学会20047)]5)アドレナリン(1mg)を生理食塩水で10倍希釈(0.1mg/mL)、1回0.25mg、5~15分間隔で静注 [日本化学療法学会20047)]6)アドレナリン持続静脈投与5~15µg/分 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)]わが国では、まだガイドラインによってはアドレナリン投与が第1選択薬になっていないものもあり(図1、図2)、今後の改訂が望まれる。 ※必ずしもアドレナリンが第1選択になっていない。 図1を拡大する ※皮膚症状+腹部症状のみでは、アドレナリンが第1選択になっていない。図2を拡大する【酸素】気道開通を評価する。酸素投与を行い、必要な場合は気管挿管を施行し人工呼吸を行う。酸素はリザーバー付マスクで10L/分で開始する。アナフィラキシーショックでは原因物質の使用中止を忘れない。【輸液】hypovolemic shockに対して、生理食塩水か、リンゲル液を開始する。1~2Lの急速輸液が必要である。維持輸液(ソリタ-T3®)は血管に残らないので適さない。【抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー】経静脈、筋注で投与するが即効性は望めない。H1受容体に対しヒスタミンと競合的に拮抗する。皮膚の蕁麻疹には効果が大きいが、気管支喘息や消化器症状には効果は少ない。第1世代H1ブロッカーのジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®)5mgを静注し、必要に応じて6時間おきに繰り返す。1)マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン®)2.5~5mg静注 [日本化学療法学会20047)]2)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg緩徐静注 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)] 保険適用外3)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg静注 [UpToDate6)]4)経口では第2世代のセチリジン(ジルテック®)10mgが第1世代より鎮静作用が小さく推奨されている [UpToDate6)] 経口の場合、効果発現まで40~60分【H2ブロッカー】心収縮力増強や抗不整脈作用がある。蕁麻疹に対するH1ブロッカーに相乗効果が期待できるがエビデンスはなし。本邦のガイドラインには記載がない。保険適用外に注意。1)シメチジン(タガメット®)300mg経口、静注、筋注 [AHA心肺蘇生ガイドライン9)] シメチジンの急速静注は低血圧を引き起こす [UpToDate6)]2)ラニチジン(ザンタック®)50mgを5%と糖液20mLに溶解して5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【βアドレナリン作動薬吸入】気管支攣縮が主症状なら、喘息に用いる吸入薬を使ってもよい。改善が乏しい時は繰り返しての吸入ではなくアドレナリン筋注を優先する。気管支拡張薬は声門浮腫や血圧低下には効果なし。1)サルブタモール吸入0.3mL [日本アレルギー学会20141)、UpToDate6)]【ステロイド】速効性はないとされてきたが、ステロイドのnon-genomic effectには即時作用がある可能性がある。重症例ではアドレナリン投与後に、速やかに投与することが勧められる。ステロイドにはケミカルメディエーター合成・遊離抑制などの作用により症状遷延化と遅発性反応を抑制することができると考えられてきた。残念ながら最近の研究では、遅発性反応抑制効果は認められていない10)。しかしながら、遅発性反応抑制効果が完全に否定されているわけではない。投与量の漸減は不要で1~2日で止めていい。ただし、ステロイド自体が、アナフィラキシーの誘因になることもある(表2)。とくに急速静注はアスピリン喘息の激烈な発作を生じやすい。アスピリン喘息のリスクファクターは、成人発症の気管支喘息、女性(男性:女性=2:3~4)、副鼻腔炎や鼻茸の合併、入院や受診を繰り返す重症喘息、臭覚低下。1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1~2mg/kg/日 [UpToDate6)]2)ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ®)100~200mg、1日4回、点滴静注 [日本化学療法学会20047)]3)ベタメタゾン(リンデロン®)2~4mg、1日1~4回、点滴静注11) 表2を拡大する【グルカゴン】βブロッカーの過量投与や、低血糖緊急時に使われてきた。グルカゴンは交感神経を介さずにcAMPを増やしてアナフィラキシーに対抗する力を持つ。βブロッカーを内服している患者では、アドレナリンの効果が期待できないことがある。まずアドレナリンを使用して、無効の時にグルカゴン1~2mgを併用で静注する12)。β受容体を介さない作用を期待する。グルカゴン単独投与では、低血圧が進行することがあるので注意。アドレナリンと輸液投与を併用する。急速静注で嘔吐するので体位を側臥位にして気道を保つ。保険適用なし。1)グルカゴン1~5mg、5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【強力ミノファーゲンC】蕁麻疹単独には保険適用があるがアナフィラキシーには効果なし。観察 いったん症状が改善した後で、1~8時間後に、再燃する遅発性反応患者が4.5~23%存在する。24時間経過するまで観察することが望ましい。治療は急いでも退室は急ぐべきではない13)。 気管挿管 上記の治療の間に、嗄声、舌浮腫、後咽頭腫脹が出現してくる患者では、よく準備して待機的に挿管する。呼吸機能が悪化した場合は、覚醒下あるいは軽い鎮静下で挿管する。気道異物窒息とは違い準備する時間は取れる。 筋弛緩剤の使用は危険である。気管挿管が失敗したときに患者は無呼吸となり、喉頭浮腫と顔面浮腫のためバッグバルブマスク換気さえ不能になる。 気管挿管のタイミングが遅れると、患者は低酸素血症の結果、興奮状態となり酸素マスク投与に非協力的となる。 無声、強度の喉頭浮腫、著明な口唇浮腫、顔面と頸部の腫脹が生じると気管挿管の難易度は高い。喉頭展開し、喉頭を突っつくと出血と浮腫が増強する。輪状甲状靭帯穿刺と輪状甲状靭帯切開を含む、高度な気道確保戦略が必要となる9)。さらに、頸部腫脹で輪状軟骨の解剖学的位置がわからなくなり、喉頭も皮膚から深くなり、充血で出血しやすくなるので輪状甲状靭帯切開も簡単ではない。 絶望的な状況では、筆者は次の気道テクニックのいずれかで切り抜ける。米国麻酔学会の困難気道管理ガイドライン2013でも、ほぼ同様に書かれている(図3)14)。 1)ラリンゲアルマスク2)まず14G針による輪状甲状靭帯穿刺、それから輪状甲状靭帯切開3)ビデオ喉頭鏡による気管挿管 図3を拡大する心肺蘇生アナフィラキシーの心停止に対する合理的な処置についてのデータはない。推奨策は非致死的な症例の経験に基づいたものである。気管挿管、輪状甲状靭帯切開あるいは上記気道テクニックで気道閉塞を改善する。アナフィラキシーによる心停止の一番の原因は窒息だからだ。急速輸液を開始する。一般的には2~4Lのリンゲル液を投与すべきである。大量アドレナリン静注をためらうことなく、すべての心停止に用いる。たとえば1~3mg投与の3分後に3~5mg、その後4~10mg/分。ただしエビデンスはない。バソプレシン投与で蘇生成功例がある。心肺バイパス術で救命成功例が報告されている9)。妊婦対応妊婦へのデキサメタゾン(デカドロン®)投与は胎盤移行性が高いので控える。口蓋裂の報告がある15)。結語アナフィラキシーを早期に認識する。治療はアドレナリンを筋注することが第一歩。急速輸液と酸素投与を開始する。嗄声があれば、呼吸不全になる前に準備して気管挿管を考える。 1) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014. 2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000; 30: 1144-1150. 3) Hughes G ,et al. BMJ.1999; 319: 1-2. 4) Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006; 117: 391-397. 5) 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー.平成20年3月.厚生労働省(参照2015.2.9) 6) F Estelle R Simons, MD, FRCPC, et al. Anaphylaxis: Rapid recognition and treatment. In:Uptodate. Bruce S Bochner, MD(Ed). UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 9, 2015) 7) 日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会.抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版).日本化学療法学会(参照2015.2.9) 8) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.第9章治療.In:食物アレルギー診療ガイドライン2012.日本小児アレルギー学会(参照2015.2.9) 9) アメリカ心臓協会.第12章 第2節 アナフィラキシーに関連した心停止.In:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010(American Heart Association Guidelines for CPR & ECC). AHA; 2010. S849-S851. 10) Choo KJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 4: CD007596. 11) 陶山恭博ほか. レジデントノート. 2011; 13: 1536-1542. 12) Thomas M, et al. Emerg Med J. 2005; 22: 272-273. 13) Rohacek M, et al. Allergy 2014; 69: 791-797. 14) 駒沢伸康ほか.日臨麻会誌.2013; 33: 846-871. 15) Park-Wyllie L, et al. Teratology. 2000; 62: 385-392.

55.

アリスミアのツボ Q22

Q22発作性心房細動はやがてどうなるの?原因が取り除かれない限り、やがて慢性心房細動になります。発作性心房細動の基本的課題これは発作性心房細動を診療するうえでの基本的課題ですね。将来を予測してこそ、初めて医療介入が成立するからです。私も2000年代前半にこの同じ疑問を抱いていました。その当時、それを教えてくれる論文はなかったので、心臓血管研究所でカルテ調査を行い、その結果を発表しています。さて、その回答は下図に示すとおりです。再発性の発作性心房細動、そのほとんど、いわゆる抗不整脈薬を処方されている症例が、時間経過とともに抗不整脈薬が効かなくなり慢性化していく様子を図示したものです1)。回答はいかに……画像を拡大するみてわかるとおり、長期に観察すればやがてすべての患者が慢性化していくのが実態でした。そのスピードは年間約5%で、10年経つと約半数の例で発作性心房細動は慢性化していました。もちろんこのスピードは患者の背景によって変化し、器質的心疾患を持つ例や高齢者ではより速くなります。これはあくまでも数字ですので、この数字をどのようにとらえて実際の診療に当たるかは医師・患者個別の問題になりますね。たとえば、50歳の患者と80歳の患者では、この図が持つ意味がずいぶん変わると思います。最後に但し書きですが、これは再発性発作性心房細動が対象ですので、初発の発作性心房細動や、原因が明らかな心房細動(術後の一過性心房細動、甲状腺機能亢進症に伴う心房細動など)には当てはまりません。

56.

アリスミアのツボ Q21

Q21アブレーションか、はたまた抗不整脈薬か?患者に任せましょう。ただし、ときどきは背中を押してあげることも……。病院内での経験が言葉を強くする……心房細動に対する抗不整脈薬の限界を知り、それよりずっとカテーテルアブレーションが有効であることを、病院内で毎日経験していると、心房細動をみたら「カテーテルアブレーションを行えば治りますよ。どうですか?」と患者にいいたくなります。これはこれで、私も一医師としてよく納得できます。患者の立場に立てば……しかし、私の外来には、そのようなつもりで話した医師の意図とはうらはらに、「どうしてもカテーテルアブレーションを行わなければならないのでしょうか?」といって納得できない患者がたびたび訪れてきます。話をよく聞いてみると、医師はそれほど強くカテーテルアブレーションを勧めていないのですが、患者にはそう伝わってしまったようです。医師として話す立場と、患者として聞く立場では、同じ言葉であっても異なるように聞こえてしまうようです。患者に任せる……「いつでもその気になったらしてあげますよ」私自身は、こんなとき「ゆっくり考えましょう。いつでもその気になったらできるのですから。これはがんの根治手術などとは違うので焦って決める必要はありません」ということをまず理解してもらうようにしています。そして、抗不整脈薬ではいずれ効果がなくなること、カテーテルアブレーションは現時点ではQOLを向上させる治療であること(生命予後向上効果は十分に示されていないこと)、慢性化して1 年以内であれば発作性心房細動と同等の治療効果が望めること……そんなことを伝えます。そして、2、3回の外来で時間をおいても、ずっと逡巡しているようならそっと背中を押してあげることもあります。

57.

【CLEAR!ジャーナル四天王 トップ20発表】鋭い論文解説がラインナップ!

臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、日本の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しているNPO法人です。 本企画『CLEAR!ジャーナル四天王』では、CareNet.comで報道された海外医学ニュース『ジャーナル四天王』に対し、鋭い視点で解説します。 コメント総数は280本(2014年11月現在)。今年掲載されたなかからアクセス数の多かった解説記事のトップ20をお届けします。 1位 「降圧薬服用患者が大幅に減る見通し、というより減らした」というほうが正確かもしれない:EBMは三位一体から四位一体へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/5/20) 2位 これがなぜLancetに!?(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/19) 3位 慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏) (2014/9/8) 4位 脳動静脈奇形(未破裂)の予防的切除や塞栓術などの介入療法では予後を改善できない(解説:中川原 譲二 氏) (2014/1/13) 5位 過度な減塩は死亡率を増やすか? ガイドライン推奨1日6g未満に一石を投じる研究(解説:桑島 巌 氏) (2014/8/21) 6位 患者に「歩け、歩け運動」を勧める具体的なエビデンス(解説:桑島 巌 氏) (2014/1/17) 7位 心臓マッサージは深度5cmで毎分100回:その自動化への課題(解説:香坂 俊 氏) (2014/1/8) 8位 心房細動アブレーションにおける新しいMRI指標:そのメリットとデメリット(解説:山下 武志 氏) (2014/2/18) 9位 DESは生命予後改善効果を持つ!?従来の説に一石(解説:野間 重孝 氏) (2014/7/28) 10位 よいメタ解析、悪いメタ解析?(解説:後藤 信哉 氏) (2014/1/21) 11位 急性心不全治療には新たな展開が必要では?(解説:平山 篤志 氏) (2014/1/10) 12位 大腸腺腫切除後の長期的な大腸がん死亡率(解説:上村 直実 氏) (2014/9/30) 13位 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略―4万5,000症例メタ解析(解説:中澤 達 氏) (2014/10/29) 14位 期待が大きいと失望も大きい:プラセボをおくことの重要性を教えてくれた試験。(解説:桑島 巌 氏) (2014/4/15) 15位 これでC型肝炎を安全に完全に治せる?(解説:溝上 雅史 氏) (2014/5/29) 16位 スタチン治療はやはり糖尿病を増やすのか?そのメカニズムは?(解説:興梠 貴英 氏) (2014/11/6) 17位 破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術 vs. 血管内修復術(解説:中澤 達 氏) (2014/2/12) 18位 診察室での血圧測定はもういらない?-高血圧診療は、自己測定と薬の自己調整の時代へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/17) 19位 小児BCG接種、結核菌への感染を2割予防-(解説:吉田 敦 氏) (2014/9/26) 20位 このテーマまだ興味がわきますか?アブレーション vs. 抗不整脈薬(解説:山下 武志 氏) (2014/3/6) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

58.

アリスミアのツボ 第4回

Q10治療の必要のない不整脈について、日常生活のアドバイスや指導はどのようにしていますか?何も証拠となる情報はないので……無難な対応で臨んでいます。アドバイスほど難しいものはない「アドバイス」……という言葉にはよいイメージがあります。日本語では「忠告」と訳されることもあり、これはどちらかというと悪いイメージかもしれません。そして、「エデゥケーション(教育)」、「指導」という言葉もあります。これは、どちらかといえば上から下へというイメージでしょうか。こう考えると、患者に対して医師が話す内容は、このうちどれなのでしょう。エビデンスはない実は、治療の必要のない不整脈について、「~すればよくなる」という確固とした証拠は何もありません。ただ、現場には期外収縮の症状に悩まれている患者も数多くいます。「薬がいらないことはよくわかりましたが、この症状はどうすればよくなるのでしょう」、「毎日の生活で気を付けることはありますか」などの質問を頻繁に受けます。相手の気持ちになってこのような質問に対して、「医学的に証明されている日常生活上の工夫はない」というのが学問的には正しいことです。が、社会的には到底受け入れられる回答ではないでしょう。アドバイス、指導は、相手の立場に立って行うからこそ意味のある行為だと感じます。何を隠そう、私自身が心房期外収縮の症状がひどくてつらい時期がありました。だからどうしたというわけではないのですが、「私も期外収縮があってつらかった」ことを伝えると、なぜか多くの患者さんが少しほっとした表情をみせてくれます。そのうえで、「できることはあまりないんですけど、規則的な生活を守って、睡眠不足やストレスを避けることですね。といっても、いつも守れるわけはありませんよね。そうそう、肥満もよくないんですよ……」というような、日常会話をしています。相手も不整脈を持っているということを知ると、同じ土俵に立っていると感じてもらえるのか、それなりに聞いてもらえます。Q11抗不整脈薬がたくさんありすぎて、どれをどの順番で使えばよいのかわからないのですが……。私の場合は、ここ数年かなりシンプルです。抗不整脈薬の投与対象は「発作性心房細動」昔は、さまざまな不整脈に対して抗不整脈薬を使用していました。対象がさまざまなため、それぞれの不整脈ごとに覚えなければいけないことも多かったという記憶があります。しかし、現在は、期外収縮は治療することがほとんどなくなり、上室頻拍、心房粗動など多くの不整脈がカテーテルアブレーションで治癒できるようになり、抗不整脈薬の出番は激減しました。今、私が抗不整脈薬を用いるといったら、そのほとんどは「発作性心房細動」ということになります。抗不整脈薬の薬効は薬によって異なる?昔の私は、少しは異なるのだろうと思っていました。そこで、心房細動を対象としたJ-RHYTHM研究という医師主導型の臨床研究を行った際、アミオダロン以外の抗不整脈薬が多数用いられていたので、サブ分析として薬物別の効果分析をしてみました。そうすると、驚いたことに洞調律が維持される程度(いわゆる薬効)に大きな差がなかったのです。差がないのなら、これほど日本にたくさんの種類の抗不整脈薬はなくてもいいんじゃないかと思ったぐらいですが、日本での歴史に基づいた結果なのでぼやいても仕方ありません。使い慣れた薬物で十分効果に差がなければ、安全性重視ということになるわけです。確かに、抗不整脈薬間で少しずつ安全性が異なるようです。ただ、すべての用量・副作用を記憶しておくわけにもいきません。というわけで、自分が使い慣れた薬物(ということは副作用をよく知っている)、具体的にはピルジカイニド(サンリズム)とフレカイニド(タンボコール)ばかりを使用しています。前者は腎排泄型、後者は肝代謝の要素があり、多くの場合に対処可能です。安全性重視ですから、使用する用量は少なめで開始し、サンリズムは75~100 mg/day、タンボコールは100mg/dayです。効果不十分で安全性に問題なければ、それぞれ倍の用量(これが通常用いられる用量)に増量します。つまり、半量から開始して、問題がなければ通常用量にしているわけです。Q12経口アミオダロンの使い方を教えていただけますか?循環器専門医に任せたほうが無難ですが、ここでも副作用回避が決定的に重要です。アミオダロンだけは他の薬物と異なる抗不整脈薬すべての薬効が似たようなものであれば悩まなくてよいのですが、唯一例外、アミオダロンだけは、他の抗不整脈薬とまったく異なる存在です。明らかに有効性に優れる一方で、致死的な副作用があり、さらにいったん体に入るとなかなか体から抜けにくい……有効性・安全性・薬物代謝のバランス感覚が取りにくい薬物です。なので、どちらかといえば、一般医家は用いないほうがよい、専門医で処方されアミオダロンを継続しなければならない患者でも、アミオダロンに関してだけは専門医に任せたほうがよいと思います。副作用回避を患者と共有するアミオダロンは、致死的な副作用があったとしても、それより重篤な病態を有する患者に対して用います。副作用をできるだけ少なくすることが、この場合に重要なことになりますが、これは医師だけで行うことは難しい……患者の協力を仰ぐほうが効率的です。そこで私のやり方を紹介します。1)アミオダロンの副作用を説明する(1)肺障害、甲状腺障害、肝機能障害があること、(2)とくに肺障害は10%の患者に生じ、致死率10%であること(初期は単なる感冒症状との違いがわからないので受診すること)、(3)3ヵ月に1度は副作用チェックを行うこと、などを説明します。患者が副作用を理解することが、副作用チェックを万全なものにしてくれます。2)初期投与量は400mg/dayを2週間アミオダロンは、総投与量が5gになるまでその薬効を期待しがたいのが実情です。3)2週間後に200mg/dayの通常量に減量副作用回避のために基本的には、3ヵ月ごとに胸部レントゲン、KL-6、甲状腺機能、肝機能、アミオダロン血中濃度を測定することにしています。ただし、KL-6、アミオダロン血中濃度は参考程度にしかなりません。KL-6が間質性肺炎の診断の契機となることは数%でしかなく(診断の契機はほとんど自覚症状かレントゲンです)、アミオダロン血中濃度は効果や副作用に重要な組織中濃度とは異なります(脂溶性薬物のため)。それでも、KL-6やアミオダロン血中濃度の測定は用量減量の契機となることが重要だと思っています。つまり、副作用回避は「常にできるだけ減量を考慮する」が肝です。100mg/dayを目指します。

59.

アリスミアのツボ 第3回

Q7症状のない上室・心室期外収縮は、どの程度まで経過観察すべきでしょうか。心機能が正常ならば経過観察しない、という考え方ではどうでしょうか。私は基本的に心機能が正常である限り、期外収縮の経過観察をしていません。これには異論や反論があるかもしれません。心房期外収縮の場合「心房期外収縮の頻発は、放置するとやがて無症状の心房細動に発展してしまうのではないか?」という不安。これはそのとおりだと思います。しかし、問題はその発生確率だと思うのです。一見健康者で、心房期外収縮頻発が見られた例での心房細動の発生確率は、年間約1.5%とされています。これをどう見るか……人によって異なるかもしれません。心房期外収縮例をすべて経過観察しようとするのは、間違いではないのですが効率性に劣る気がします。これを行うための外来診療の時間があれば、もっと有意義な(もっと重篤な疾患をもつ患者のケアに)使えばよいのではないでしょうか。もちろん例外があります。心原性脳梗塞のようだけれども心房細動が見つかっていない患者、心房細動がひとたびもし生じてしまえば脳梗塞のリスクがきわめて高いという患者では、心房期外収縮の頻発を経過観察する価値が高まるでしょう。ただし、これらの患者の経過観察としての適切な方法はまだ誰も知りません。心室期外収縮の場合「心室期外収縮の頻発は、やがて心機能低下を引き起こしてしまうのではないか?」という不安。これもその可能性はあると思います。ただし、どのような発生確率が見込めるのかという確かな数字がない以上、そして基本的に予後はよいという情報がある以上、効率性という意味で経過観察の価値が低いと感じてしまうのです。脳梗塞とは異なり、心機能低下はirreversibleではありません。健康診断をきちんと受けることを指導する、というような経過観察でもよいのではないでしょうか。Q8発作性心房細動に対する抗不整脈薬の用い方について教えてください。安全性重視という考え方で、患者の意向次第で減量や中止も随時可能専門家の現場での用い方「抗不整脈薬の使い方がわからない。ガイドラインや教科書と、循環器内科医の実臨床での使い方がかなり違う気がする」というご意見もありました。抗不整脈薬は諸刃の剣と言われることから、どうしても経験則が幅を利かせているのが実情です。ESCの心房細動ガイドラインで書かれていることESCの心房細動ガイドラインにはこの抗不整脈薬の使い方の原則が書かれているので、それを引用しておきましょう。1)抗不整脈薬治療は症状を軽減する目的で行うものである2)抗不整脈薬で洞調律を維持する効果は“modest”である3)抗不整脈薬治療は心房細動の再発をなくすものでなく、減らすことで臨床的には成功と考えるべきだろう4)1つの抗不整脈薬が効果のない場合、他の抗不整脈薬が効果を示すことがあるかもしれない5)抗不整脈薬による新たな不整脈の出現、心外性副作用はしばしば生じる6)抗不整脈薬の選別は効果よりもまず安全性を指針とすべきである私の使い方私の臨床現場での用い方はこれを基本にしています。たとえば、抗不整脈薬をいつ始めて、いつ中止するのかについての一定の見解はないのですが、患者が心房細動の症状で困っている時に開始し(1参照)、その際あらかじめ発作が完全に消失するものではないことを伝え(2、3参照)、症状が軽くなればいつでも薬物の減量をトライし、症状に困らなくなればいつでも中止をトライする(6参照)、ということを基本にしています。もちろん、減量や中止によって患者が困るようになれば、また再開することはたびたびです(むしろ、そのほうが多いかもしれません)。ただ、これを行うことで患者が薬物の効果を実感してくれることもアドヒアランスを高めると思っています。Q9NOACをどのように開始すべきでしょうか?ワルファリン時代とまったく異なる抗凝固療法のやり方を会得する必要がありますワルファリン時代に染みついた慣習心房細動の脳卒中予防には抗凝固療法が必要です。抗凝固療法の仕方…これについては、あまりにもワルファリンを使用してきた歴史が長く、ワルファリン時代のやり方が身に染みついてしまっていることを私自身が痛感しました。そこで、ワルファリン時代とは異なるNOACによる抗凝固療法の私のやり方をまとめておきます。1)心房細動初診患者では(脳卒中の一次予防ならば)その日のうちに抗凝固療法を始めない。ワルファリン時代は初診患者で脳卒中予防の説明をして、ワルファリン1.5~2mg/dayをその日から開始していました。しかし、NOACでは危なっかしくてできないですね。初診日は、脳卒中に関する啓蒙、年齢、体重の把握、血清Cr、Hbの採血をするだけにしています。クリアチニンクリアランスを把握してから抗凝固療法はするものと考え、次の外来から(つまりクレアチニンクリアランスが手に入ってから)NOACを処方します。次回の外来までに脳卒中になってしまうのでは……と不安に思う方がおられるかもしれませんが、所詮ワルファリン時代も初診時に処方する少量のワルファリン量ではそもそも効いていませんでした。NOACを初診日に処方すると禁忌症例に処方してしまう可能性があり、こちらのほうが危険でしょう。また、貧血のある患者にNOACを処方するのも危険です。今まさに、じわじわとどこからか出血しているのかもしれないからです。2)2週間以内の出血に関する問診とHbのチェックを忘れないワルファリン時代はゆっくりと抗凝固がなされ、しかもPT-INRによる処方量決定のためたびたび外来受診が行われるので、出血のケアは自然になされやすい環境にありました。しかし、長期処方が可能なNOACは大出血直前の気付きの機会を減らしています。そこで、私は、NOAC処方時には必ず2週間以内に受診してもらい、皮下出血、タール便の有無を聞き、必ずHbをチェックすることにしています。2週間でHbが明らかに減少していれば、どこからか出血していることになるからです。逆にHb値に変化がなければ安心できます。3)バイオマーカーはどうする?ワルファリン時代のPT-INRというモニタリングはなくなりました。では何もチェックしていないかというと、私は、ダビガトランではaPTT、リバーロキサバンとアピキサバンではPTをチェックしています。固定用量の薬物では必ず効きすぎの患者が、わずかといえども存在しているからです。ただし、これはモニタリングではありません。処方後2週間以内の外来で、Hbと一緒にバイオマーカーを一度採血するのです。バイオマーカーについては「あまり見かけないほど高い値である」ことがなければ、それで良しとしています。その後の採血ですが、クレアチニンクリアランスを高齢者では年に4回程度、若年者では年に1、2回チェックしますが、それと同時にこれらのバイオマーカーもチェックしています。NOACのバイオマーカーはモニタリングではなく、あくまでもチェックにすぎないのです。

60.

アリスミアのツボ 第2回

Q4循環器内科に紹介すべき不整脈を教えてほしいのですが…。消化器内科、呼吸器内科、神経内科など他の専門科に紹介する感覚で臨みましょう。自分も迷う非専門医から専門医への紹介、私も迷うことが多いのが実際です。「軽症そうだけど、紹介して大丈夫だろうか」、「的外れではないだろうか」、「これまで見逃してしまっていたようだが、いまさら大丈夫だろうか」、そんなことを考えながら紹介すべきかどうか迷っています。で、結局のところ、「専門でもない自分が、どれだけ迷っても仕方がない」と開き直って紹介している有様です。見当はずれのことも多いのですが、紹介先から「迷惑だ」とは聞きません。3つの選択枝循環器内科への紹介もそれと同じでいいのではないでしょうか。医療の基本は、1)放置する2)自分で様子観察する3)人(専門家)に任せるという3つの選択肢のうち、どれか1つを選ぶことです。この選択に迷うようであったら、とりあえず専門家に判断だけでもしてもらったほうが楽でしょう。患者さんサイドに立ってもメリットはたくさんあるはずです。重篤な病気であればもちろんのこと、そうでなくても、担当医がわざわざ診療情報書を書いてくれた(あるいは自分のために専門病院にまで電話してくれた)という感謝、そして専門医からの説明で得られる安心感等々です。自信があるかないかがすべてなので、不整脈別に紹介すべきかどうかを語るのは難しく、その不整脈に自信がなければ紹介してしまうというのが回答になりそうです。あえていえば、症状のない心房期外収縮、心室期外収縮、II度Wenckebach型房室ブロック、洞性不整脈は、自信をもって放置してよい不整脈にあたり、それ以外は紹介しておくというのが非専門家として合理的な医療かもしれません。Q5発作性心房細動はすべてのケースで抗不整脈薬を投与するのでしょうか?いいえ、発作性心房細動患者のすべてに抗不整脈投与は行いません。患者はさまざま一口に発作性心房細動といっても、患者はさまざまです。まったく症状のない患者や症状はあるけれども軽度で気にならないという患者もいれば、発作になると日常生活や仕事がまったく何もできなくなるという症状のひどい患者もいます。症状がある患者でも、その発作の頻度はさまざまです。年に1回という患者から、毎週生じるという患者まで、その多様性は先生方も経験済みのことでしょう。多様な患者すべてに対して、1つの医療を当てはめてしまうことには無理があります。そもそも効果判定はどうする?そして、抗不整脈薬をもし投与するなら、あらかじめその薬が効いたかどうかをどのようにして判断するのか決めておかねばなりません。効いていない薬を一生飲み続けるほど無駄なことはないからです。このあたりは、高血圧や糖尿病に対する薬とは大きく異なります。これらの薬は血圧や血糖で効いているかどうかを判断できるからです。では、抗不整脈薬はどうでしょう。たまたま記録する心電図だけで判断するのは難しく、これは24時間心電図にも当てはまります。では残るものといえば……それは症状にほかなりません。抗不整脈薬は症状を軽減するのが目的つまり、症状の乏しい患者に抗不整脈薬を投与したとしても、効いているのかいないのかさえわからない……これが出発点です。だから、症状があり、薬が効いているかどうかがわかる患者に投与するしかありません。さらに、発作頻度がきわめて低い(たとえば半年に1回)患者に薬を毎日服薬させることにも無駄が多いということもわかるでしょう。このような場合は、投薬するにしてもpill-in-the-pocket、つまり頓服で対処するのが合理的です。では、症状のあまりない患者の心房細動はただただ慢性化してしまうのを放置することになるのではないか…と不安に思うかもしれません。それは、また別の機会に述べたいと思いますが、抗不整脈薬にはその役割は与えられていないと思うのです。Q6心房細動の心拍数調節の目標とは?この目的、わかっているようで、私には正直なところ悩むことも多いのです。心房細動の心拍数に関する原則そもそも心房細動の心拍数が高いと何が悪いのでしょう。頻脈性心房細動といえば「心不全」ですね。では、低ければよいのでしょうか。いやいや、たとえば心拍数40/分のように低すぎてもいけないでしょう。この場合も、徐脈性「心不全」を起こしてしまいます。心拍数と心不全発症率の関係はU字状の関係にあり、このことから心房細動心拍数の原則は「高すぎず、低すぎず」になりそうです。心不全以外に知っておくべき原則はあるでしょうか。症状がこれにあたるでしょう。心不全発症率…患者によってさまざまさて、症状は患者個別に対応するとして、心不全予防にはどれくらいの心拍数が望ましいのでしょうか。困ったことに、U字の関係にあるのはよしとしても、U字の底にあたる心拍数がまったくわからないのです。昔は洞調律と同じぐらい(60~80/分)だろうと考えていたのですが、RACE II試験ではそれほど厳格でなくてよいということが判明してしまいました。私自身は現在、90/分台前半までは、心不全予防になっていると考えることにしていますが、その根拠は残念ながらありません。もちろん、心不全は心房細動心拍数だけで決まるものでないので、患者それぞれの心機能によっても、あるべき心拍数はきっと異なるのでしょう。心拍数をどうやって測る?現場では、それ以前に迷うことがあります。12誘導心電図で心房細動を見るとRR時間が揺れているという当たり前のことなのですが……。どこを測るのが心拍数を把握するには適切なのでしょう。今では、自分で測るのがもっともあてにならないと考えて、コンピューター計測値をみていますが、ときどきその心拍数と心電図の見た目がそぐわないときもあるのです(なぜだかわかりませんが)。そう、「心房細動の心拍数」という出発点が、私にはまだ疑問です。回答になっていなくてすみません。

検索結果 合計:86件 表示位置:41 - 60