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エンシトレルビルとモルヌピラビル、妊婦禁忌の注意を強化/PMDA

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は12月17日、新型コロナウイルス感染症治療薬のエンシトレルビル フマル酸(商品名:ゾコーバ錠)およびモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル)について、妊娠する可能性のある女性への投与における適正使用のお願いを発出した1)。 新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬であるエンシトレルビルおよびモルヌピラビルは、催奇形性リスクを有することから、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌とされている。一方で、各薬剤の投与後に妊娠が判明した症例の報告が現在も継続している。これまでに、エンシトレルビルで54例、モルヌピラビルで19例が報告されている。 今回公表された「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」には、以下のとおり記載している。妊娠する可能性のある女性への投与に際しての注意事項 妊娠する可能性のある女性への投与に際しては、本剤投与の必要性を十分に検討すること。また、投与が必要な場合には、次の注意事項に留意すること。●本剤投与開始前に十分な問診により患者が妊娠していないこと及び妊娠している可能性がないことを確認すること。●次の事項について、本剤投与開始前に患者に説明すること。・妊娠中に本剤を服用した場合、胎児に影響を及ぼす可能性があること。・本剤服用中に妊娠が判明した又は疑われる場合は、直ちに服用を中止すること。・本剤服用中及び最終服用後2週間(ゾコーバ錠)又は4日間(ラゲブリオカプセル)における妊娠が判明した又は疑われる場合は、速やかに医師、薬剤師等に相談すること。 これらの注意事項の確認とともに、製造販売業者が周知している薬剤服用時の事前のチェックリスト(医薬品リスク管理計画書[RMP]医療従事者向け資材)および処方された女性患者と家族向けの資材(RMP患者向け資材)の活用を促している2~5)。 また厚生労働省は同日に、上記の内容について、両剤の添付文書の重要な基本的注意の項目に追記する改訂指示を発出した。

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第238回 妊娠はウイルス様配列を目覚めさせて胎児発育に必要な造血を促す

妊娠はウイルス様配列を目覚めさせて胎児発育に必要な造血を促す体内の赤ちゃんを育てるにはいつもに比べてかなり過分な血液が必要で、赤血球は妊娠9ヵ月の終わりまでにおよそ2割増しとなって胎児や胎児を養う胎盤の発達を支えます1)。その赤血球の増加にホルモンが寄与していますが、ヒトやその他の哺乳類が妊娠中に赤血球をどういう仕組みで増やすかはよくわかっていませんでした。先週24日にScienceに掲載された研究で、哺乳類ゲノムにいにしえより宿るウイルス様要素が妊娠で目覚め、免疫反応を誘発して血液生成を急増させるという思いがけない仕組みが判明しました2,3)。それらのウイルス様配列はトランスポゾンや動く遺伝子(jumping gene)としても知られます。トランスポゾンは自身をコピーしたり挿入したりしてゲノム内のあちこちに移入できる遺伝配列で、ヒトゲノムの実に半数近くを占めます。哺乳類の歴史のさまざまな時点でトランスポゾンのほとんどは不活性化しています。しかしいくつかは動き続けており、遺伝子に入り込んで形成される長い反復配列や変異はときに体を害します。トランスポゾンは悪さをするだけの存在ではなく、生理活性を担うことも示唆されています。たとえば、トランスポゾンの一種のレトロトランスポゾンは造血幹細胞(HSC)を助ける作用があるらしく、炎症反応を生み出すタンパク質MDA5の活性化を介して化学療法後のHSC再生を促す働きが先立つ研究で示唆されています4)。妊娠でのレトロトランスポゾンの働きを今回発見したチームははなからトランスポゾンにあたりをつけていたわけではありません1)。University of Texas Southwestern Medical Centerの幹細胞生物学者Sean Morrison氏とその研究チームは、妊娠中に増えるホルモン・エストロゲンが脾臓の幹細胞を増やして赤血球へと発達するのを促すことを示した先立つ取り組みをさらに突き詰めることで今回の発見を手にしました。研究チームはまず妊娠マウスとそうでないマウスの血液幹細胞の遺伝子発現を比較しました。その結果、幹細胞はレトロトランスポゾンの急増に応じて抗ウイルス免疫反応に携わるタンパク質を生み出すようになり、やがてそれら幹細胞は増え、一部は赤血球になりました。一方、主だった免疫遺伝子を欠くマウスは妊娠中の赤血球の大幅な増加を示しませんでした。また、レトロトランスポゾンが自身をコピーして挿入するのに使う酵素を阻止する逆転写酵素阻害薬を投与した場合でも妊娠中に赤血球は増えませんでした。研究はヒトに移り、妊婦11人の血液検体の幹細胞が解析されました。すると妊娠していない女性(3人)に比べてレトロトランスポゾン活性が高い傾向を示しました。HIV感染治療のために逆転写酵素阻害薬を使用している妊婦6人からの血液を調べたところヘモグロビン濃度が低下しており、全員が貧血になっていました。逆転写酵素阻害薬を使用しているHIV患者は妊娠中に貧血になりやすいことを示した先立つ試験報告5)と一致する結果であり、逆転写酵素阻害薬使用はレトロトランスポゾンがもたらす自然免疫経路の活性化を阻害することで妊婦の貧血を生じ易くするかもしれません。より多数の患者を募った試験で今後検討する必要があります。他の今後の課題として、妊娠がどういう仕組みでレトロトランスポゾンを目覚めさせるのかも調べる必要があります。レトロトランスポゾンを目覚めさせる妊娠以外の要因の研究も価値がありそうです。たとえば、細菌が皮膚細胞(ケラチノサイト)の内在性レトロウイルスを誘って創傷治癒を促す仕組みが示されており6)、組織損傷に伴って幹細胞のレトロトランスポゾンが活性化する仕組みがあるかもしれません。また、組織再生にレトロトランスポゾンが寄与している可能性もあるかもしれません。参考1)Pregnancy wakes up viruslike ‘jumping genes’ to help make extra blood / Science 2)Phan J, et al. Science. 2024 Oct 24. [Epub ahead of print]3)Children’s Research Institute at UT Southwestern scientists discover ancient viral DNA activates blood cell production during pregnancy, after bleeding / UT Southwestern 4)Clapes T, et al. Nat Cell Biol. 2021;23:704-717.5)Jacobson DL, et al. Am J Clin Nutr. 2021;113:1402-1410.6)Lima-Junior DS, et al. Cell. 2021;184:3794-3811.

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インフルエンザウイルス曝露後抗ウイルス薬の有効性(解説:寺田教彦氏)

 インフルエンザウイルス曝露者に対する抗ウイルス薬の有効性を評価したシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果が、2024年8月24日号のLancet誌に報告された。本研究では、MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govを用いて、11,845本の論文と関連レビューから18件の研究を確認し、このうち33件の研究をシステマティックレビューに含めている。概要は「季節性インフル曝露後予防投与、ノイラミニダーゼ阻害薬以外の効果は?/Lancet」のとおりでザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、重症化リスクの高い被験者において、季節性インフルエンザ曝露後、速やか(48時間以内)に投与することで症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆され、重症化リスクの低い人では、症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された。 過去には、2017年のインフルエンザウイルス曝露者に対する予防投与のシステマティックレビューで、オセルタミビルまたはザナミビルの曝露後予防投与により有症状のインフルエンザ発生を減少させる効果が報告されていたが(Doll MK, et al. J Antimicrob Chemother. 2017;72:2990-3007)、エビデンスの質や確実性は評価されていなかった。当時は、これらのエビデンスを参考に、WHOやIDSAのガイドライン(Uyeki TM, et al. Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47.)では、インフルエンザウイルス曝露後に、合併症のリスクが非常に高い患者に対して、抗ウイルス薬の予防投与が推奨された。本邦の現場でも、インフルエンザウイルス曝露後の予防投与は保険適用外だが、病院や医療施設内で曝露者が発生したときなどに、重症化や合併症リスクを参考に、個々の患者ごとに適応を検討していた。 本研究の結果から、2024年9月17日にWHOのガイドラインが更新されており、抗インフルエンザ薬(バロキサビル、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビル)の曝露後予防投与は、ワクチン接種の代わりにはならないが、きわめてリスクの高い患者(85歳以上の患者、または複数のリスク要因をもつ若年者)には曝露後48時間以内の投薬が推奨されている。 さて、われわれのプラクティスについて考えてみる。本研究では、曝露後予防投与で入院や死亡率の低下を確認することはできていないが、曝露後予防投与はインフルエンザ重症化リスクの高い患者群では発症抑制(確実性は中程度)の効果が期待でき、重症化リスクの低い人では、季節性インフルエンザに曝露後、速やかに投与しても症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された(確実性は中程度)。インフルエンザ重症化リスクの高い患者群では、インフルエンザに罹患することで重症化やADL低下につながることが予測され、適切な患者を選定して曝露後予防投与を行うことはメリットがあるだろう。 そのため、インフルエンザウイルス曝露後予防は、これまでどおりインフルエンザの重症化や合併症リスクを個々の症例で検討することが良いと考える。 曝露後予防投与時の抗ウイルス薬では、オセルタミビルやザナミビルに加えて、本研究では、ラニナミビルやバロキサビルも有効性を確認することができた。ラニナミビルやバロキサビルは、オセルタミビルやザナミビルに対して、単回投与が可能という強みをもつため、抗ウイルス薬の複数回投与が困難な環境ならば使用を考慮してもよいのかもしれない。しかし、オセルタミビルのように、過去の使用実績が豊富で安価な薬剤を選択できる場合は、これまでどおりこれらの薬剤を選択してよいと考える。

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重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の有効性(解説:小金丸博氏)

 入院を要する重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の有効性を評価したシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果が、Lancet誌2024年8月24日号に報告された。評価対象としたアウトカムは、症状改善までの期間、入院期間、ICU入院、侵襲的機械換気への移行、機械換気の期間、死亡、退院先、抗ウイルス薬耐性の発現、有害事象、治療関連有害事象、重篤な有害事象に設定された。季節性インフルエンザによる入院期間は、オセルタミビル(平均群間差:-1.63日、95%信頼区間:-2.81~-0.45)およびペラミビル(-1.73日、-3.33~-0.13)投与において有意な短縮を認めたものの、エビデンスの確実性は「低(low)」であった。ランダム化比較試験のデータが乏しく、死亡率など重要な患者の転帰に及ぼす効果について確実性の高いエビデンスは得られなかった。 インフルエンザは入院を要するウイルス性呼吸器感染症の重要な原因である。季節性インフルエンザの入院患者は、重症肺炎、呼吸不全、多臓器不全、二次的な細菌感染症などの合併症を発症し、死亡につながる可能性がある。インフルエンザで入院した成人の致死率は4~8%程度であるが、新型インフルエンザによるパンデミックの際や免疫不全の患者では致死率が高くなる場合がある(10~15%以上)。したがって、重症インフルエンザに対する効果的な治療法を特定することは、公衆衛生上重要な課題である。 ノイラミニダーゼ阻害薬などの抗ウイルス薬は、重症インフルエンザ患者に対して投与することが推奨されている。過去に報告されたシステマティックレビューとメタ解析では、ノイラミニダーゼ阻害薬による早期治療は、治療が遅れたり治療しなかった場合と比較して、死亡率の低下や入院期間の短縮につながる可能性があることが示唆されていた。ただし、重症インフルエンザに対して利用可能なすべての抗ウイルス薬治療を評価したネットワークメタ解析はなく、最適な抗ウイルス薬は不明であった。 本研究では8件のランダム化比較試験がシステマティックレビューに含まれ、そのうち6件がネットワークメタ解析の対象となった。重症インフルエンザで入院した患者において、オセルタミビルとペラミビルは標準治療またはプラセボと比較して入院期間を短縮する可能性が示されたが、含まれているランダム化比較試験の数が少なくデータが不足していたため、証拠の確実性は低いものであった。同様の理由で、すべての抗ウイルス薬が死亡率やその他の重要な患者の転帰に及ぼす影響を正確に評価することは困難であった。そのため、重症インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の有効性を精密に評価するためには、十分な検出力を持つ臨床試験を行う必要があると述べられている。 本研究のLimitationとして、二次性細菌感染症やインフルエンザのタイプ(A型、B型)が結果に与える影響を評価することができなかったことや、小児および高齢者に対する抗ウイルス薬の有効性を検討できなかったことが挙げられる。また、本研究では重症インフルエンザ患者を対象としており、われわれが日常で診療することが多い外来レベルのインフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の有効性については言及できない。

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わが国初のダニ媒介性脳炎予防ワクチン「タイコバック水性懸濁筋注」【最新!DI情報】第23回

わが国初のダニ媒介性脳炎予防ワクチン「タイコバック水性懸濁筋注」今回は、組織培養不活化ダニ媒介性脳炎ワクチン(商品名:タイコバック水性懸濁筋注0.5mL/小児用水性懸濁筋注0.25mL、製造販売元:ファイザー)を紹介します。本剤はわが国初のダニ媒介性脳炎の予防ワクチンであり、致死的な経過および後遺症の予防が期待されています。<効能・効果>本剤は、ダニ媒介性脳炎の予防の適応で、2024年3月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>初回免疫の場合、16歳以上には1回0.5mL、1歳以上16歳未満には1回0.25mLを3回、筋肉内に接種します。2回目接種は1回目接種の1~3ヵ月後、3回目接種は2回目接種の5~12ヵ月後に接種します。免疫の賦与を急ぐ場合には、2回目接種を1回目接種の2週間後に行うことができます。追加免疫の場合、16歳以上には1回0.5mL、1歳以上16歳未満には1回0.25mLを筋肉内に接種します。<安全性(0.5mL製剤の場合)>重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、脊髄炎、横断性脊髄炎、脳炎(いずれも頻度不明)があります。その他の頻度の高い副反応として、注射部位疼痛(35.0%)、下痢(10%以上)があります。10%未満の副反応には、注射部位出血、注射部位腫脹などの局所症状、上気道感染、浮動性・回転性めまい、悪心、嘔吐、腹痛、皮膚そう痒症、発疹などがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ダニ媒介性脳炎を予防するためのワクチンです。2.ワクチン接種したすべての人で、ダニ媒介性脳炎ウイルスへの感染が完全に予防されるわけではありません。マダニに咬まれるリスクが高い環境下では、虫よけ剤の使用や皮膚の露出を少なくするなど、基本的な感染リスク低減対策をとってください。3.接種は、3回の接種を行う「初回免疫」と必要に応じて接種を行う「追加免疫」があります。初回免疫1回目の接種のみでは、発症の予防を期待することはできません。4.ショック、アナフィラキシーが現れることがあるので、医師の監視下で接種を行います。接種後、少なくとも15分間は座って安静にしてください。<ここがポイント!>ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis:TBE)は、TBEウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染・発症します。TBEは重度の急性臨床経過をたどり、日本に多い極東亜型ウイルスの感染では、7~14日の潜伏期間後に頭痛、発熱、悪心、嘔吐が現れ、進行すると精神錯乱や昏睡、痙攣などの脳炎症状が生じることがあります。致死率は20%以上で、生存者であっても30~40%に後遺症が残るとされています。TBEに対する抗ウイルス治療はなく、対症療法が中心となります。本剤はTBEを予防するためのワクチンで、TBEリスク地域でレクリエーションや農業・林業などの野外活動でマダニに咬まれるリスクがある人に接種が推奨されます。ただし、接種したすべての人で感染が予防されるわけではないので、マダニに咬まれるリスクが高い場合には、虫よけ剤の塗布や防護服の着用または皮膚露出を避けるなど、感染リスク低減のための基本的な対策が重要です。本剤は、TBEウイルスをSPF発育鶏卵から採取したニワトリ胚初代培養細胞で増殖させ、得られたウイルスをホルムアルデヒドで不活化した後、精製し、安定剤およびアジュバント(水酸化アルミニウム懸濁液)を加えたものです。TBEウイルスに感染歴のない日本人健康成人および健康小児を対象とした国内第III相試験(B9371039試験:初回免疫)において、本剤を3回接種した4週間後にTBEウイルス中和抗体陽性率は成人および小児とも90%以上に達しました。また、追加免疫における海外第IV相試験(223試験)や免疫持続性における海外第IV相試験(690701試験、691101[B9371010]試験)で本剤の有効性が確認されています。なお、ダニ媒介性脳炎ワクチンは、医療上の必要性が高いワクチンとして厚生労働省からの要請を受けて開発されました。

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第232回 食塩水点鼻で風邪の小児が2日早く回復

食塩水点鼻で風邪の小児が2日早く回復食塩水の点鼻が風邪の小児の回復を早めました。英国・エジンバラ大学のSteve Cunningham氏が欧州呼吸器学会(European Respiratory Society:ERS)年次総会で発表したELVIS-Kids試験結果によると、親が塩を溶かして作る濃い目の食塩水の点鼻でくしゃみや鼻詰まりなどの風邪症状が、そうしなかった小児に比べて2日早く治まりました1,2)。Cunningham氏によると、子供は1年に多ければ10~12回も風邪を引きます。風邪症状を引き起こしうるウイルスは200種を超えます3)。ゆえにそれら全般を網羅してかつ有効な治療を開発するのは困難であり、アセトアミノフェンやイブプロフェンの服用などの治療のほとんどは風邪の期間の短縮ではなく症状を緩和するのみです。Cunningham氏いわく、風邪の回復を早めうる治療はありません。しかし例外的に有望な効果を示しているものがあります。その1つが食塩水の点鼻です。食塩水の鼻への注入や噴霧が症状を減らし、回復を早めることや他の人へ移してしまうのを減らしうることが成人患者を募った先立つ試験で示唆されています4,5)。また、ELVIS-Kids試験を率いたSandeep Ramalingam氏によると、南アジアの人は風邪治療としてしばしば食塩水で鼻をすすいだりうがいをしたりしています。同氏はその治療が本当に効くのかどうかを確かめたいと思っていました。Ramalingam氏の願いがかなって実現したELVIS-Kids試験は6歳までの小児407例を募り、濃い目の食塩水を点鼻する治療といつもの手当てが比較されました。食塩水を点鼻する群の親には海塩を手渡し、それを溶かして2.6%の食塩水を作り、子への1日4回以上の点鼻を症状が解消するまで続けるように指示しました。食塩水の点鼻をしない群の親は子に店頭販売の薬を与えたり、体を休めたりすることを促すなどのいつもの手当てをしました。被験者の小児407例のうち風邪を引いたのは301例で、食塩水を点鼻する群に割り振られたその約半数の150例の風邪症状は、食塩水の点鼻なしの151例に比べて2日早く解消しました。食塩水点鼻群の風邪症状の期間は6日間、食塩水の点鼻なしの群は8日間でした。また、食塩水点鼻群の小児は薬の使用が少なくて済みました。食塩水の点鼻は他の人に風邪を移し難くする作用もあるようで、食塩水点鼻小児の同居人は風邪症状の発生をより免れていました。食塩水点鼻小児の同居人のうち風邪症状を発生したのは半数に満たない41%でしたが、食塩水点鼻なしの小児の同居人はおよそ5人に3人(58%)が風邪を引きました。食塩水点鼻治療の親の反応は良く、そのおかげで子が早く回復したと82%の親が判断しました。また、同じく8割強の81%の親は次も食塩水を点鼻すると言っています。塩は言わずもがなナトリウムと塩素でできています。その塩素が点鼻食塩水の効果を担うのかもしれません。鼻や気管の内側を覆う細胞は塩素を使って抗ウイルス作用を担う次亜塩素酸を作ります。食塩水などで塩素を増やすことはそれら細胞の次亜塩素酸生成を促し、その結果ウイルス複製が収まり、ウイルス感染期間が短縮し、症状の解消を早めうるとCunningham氏は説明しています。ただし、科学ニュースNewScientistによると、米国・バンダービルト大学のWilliam Schaffner氏はその説明を疑っています。ただの水やより低濃度の食塩水を投与する群が試験にあったとしたら、点鼻食塩水がウイルスを討って回復を早めたのか単に鼻粘膜を潤すことで症状を緩和したのかがわかったかもしれないと同氏は述べています6)。参考1)Saline nasal drops reduce the duration of the common cold in young children by two days / European Respiratory Society2)A randomised controlled trial of hypertonic saline nose drops as a treatment in children with the common cold (ELVIS-Kids trial)/ European Respiratory Society (ERS) Congress 20243)About Common Cold / CDC4)Little P, et al. Lancet Respir Med. 2024;12:619-632. 5)Ramalingam S, et al. Sci Rep. 2019;9:1015.6)Evidence mounts that saline nasal drops and sprays help treat colds / NewScientist

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季節性インフル曝露後予防投与、ノイラミニダーゼ阻害薬以外の効果は?/Lancet

 重症化リスクの高い季節性インフルエンザウイルス曝露者に対し、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルによる曝露後予防投与は、症候性季節性インフルエンザのリスクを低下させる可能性が示された。また、これらの抗ウイルス薬は、ヒトへの感染で重症化を引き起こす新型インフルエンザAウイルス曝露者に対しても、予防投与により人獣共通インフルエンザの発症リスクを軽減する可能性が示されたという。中国・重慶医科大学附属第二医院のYunli Zhao氏らがシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析の結果を報告した。抗ウイルス薬のノイラミニダーゼ阻害薬による曝露後予防投与は、インフルエンザの発症および症候性インフルエンザのリスクを低減することが可能だが、その他のクラスの抗ウイルス薬の有効性は不明のままであった。Lancet誌2024年8月24日号掲載の報告。6種の抗ウイルス薬についてシステマティックレビューとネットワークメタ解析 研究グループは、WHOインフルエンザガイドラインの更新サポートのために、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析により、抗ウイルス薬のインフルエンザ曝露後予防について評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govを用いて、インフルエンザ予防における抗ウイルス薬の有効性と安全性を他の抗ウイルス薬、プラセボまたは標準治療と比較した、2023年9月20日までに公開された無作為化比較試験を系統的に検索。2人1組のレビュワーが独立して試験をレビューし、データを抽出、バイアスリスクを評価した。 ネットワークメタ解析は頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いて行い、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。 重視したアウトカムは、症候性または無症候性の感染、入院、全死因死亡、抗ウイルス薬に関連した有害事象、重篤な有害事象であった。 検索により公表論文1万1,845本を特定し、6種の抗ウイルス薬(ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジン、リマンタジン)に関する33試験・被験者1万9,096例(平均年齢6.75~81.15歳)をシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析に組み入れた。ほとんどの試験でバイアスリスクは低いと評価された。ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは軽減効果がある可能性 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、重症化リスクの高い被験者において、季節性インフルエンザ曝露後、速やかに投与することで(例:48時間以内)症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(ザナミビル[リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.25~0.50]、オセルタミビル[0.40、0.26~0.62]、ラニナミビル[0.43、0.30~0.63]、バロキサビル[0.43、0.23~0.79]、確実性は中程度)。これらの抗ウイルス薬は、重症化リスクの低い人では、季節性インフルエンザに曝露後、速やかに投与しても症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 また、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、感染したヒトの重症化と関連する新型インフルエンザAウイルス曝露後に、速やかに投与したときは、人獣共通インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(確実性は低度)。 オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジンは、すべてのインフルエンザのリスクを低下させる可能性が示唆された(症候性および無症候性の感染:確実性は中程度)。 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、無症候性インフルエンザウイルスの感染または全死因死亡の予防に、ほとんどまたはまったく効果がない可能性が示唆された(確実性は高度または中程度)。 オセルタミビルは、入院への効果は、ほとんどまたはまったくない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 6種の抗ウイルス薬はすべて、エビデンスの確実性は異なるが、薬剤関連の有害事象または重篤な有害事象の発現頻度を有意に増加させないことが示唆された。

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重症インフルエンザに抗ウイルス薬は有効か/Lancet

 重症インフルエンザの治療に最適な抗ウイルス薬は未だ不明とされる。中国・蘭州大学のYa Gao氏らは、重症インフルエンザの入院患者において、標準治療やプラセボと比較してオセルタミビルおよびペラミビルは、入院期間を短縮する可能性があるものの、エビデンスの確実性は低いことを示した。研究の成果は、Lancet誌2024年8月24日号で報告された。WHO診療ガイドライン改訂のためのネットワークメタ解析 研究グループは、世界保健機関(WHO)のインフルエンザ診療ガイドラインの改訂を支援するために、重症インフルエンザ患者の治療における抗ウイルス薬の有用性を評価する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(WHOの助成を受けた)。 医学関連データベースを用いて、2023年9月20日までに発表された論文を検索した。対象は、インフルエンザが疑われるか、検査で確認された入院患者を登録し、直接作用型抗インフルエンザウイルス薬をプラセボ、標準治療(各施設のプロトコールに準拠またはプライマリケア医の裁量による)、あるいは他の抗ウイルス薬と比較した無作為化対照比較試験であった。 注目すべき主要アウトカムとして、症状改善までの期間、入院期間、死亡率のほか、侵襲的機械換気への移行、機械換気の期間、退院先、抗ウイルス薬耐性の発現、有害事象、治療関連有害事象、重篤な有害事象などの評価を行った。 頻度論に基づく変量効果モデルを用いたネットワークメタ解析でエビデンスを要約し、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチによりエビデンスの確実性を評価した。死亡率に対する効果、エビデンスの確実性は「非常に低」 8件の試験(1,424例、平均年齢の幅36~60歳、男性の割合の幅43~78%)が系統的レビューの対象となり、このうち6件をネットワークメタ解析に含めた。 季節性インフルエンザおよび人獣共通インフルエンザにおけるオセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルの死亡率に対する効果に関しては、プラセボまたは標準治療と比較した場合、どの薬剤も有効性に差はなく、エビデンスの確実性は「非常に低(very low)」であった。また、オセルタミビルとペラミビル、オセルタミビルとザナミビル、ペラミビルとザナミビルの比較でも、死亡率に対する有効性に差を認めず、エビデンスの確実性はいずれも「非常に低」だった。 季節性インフルエンザによる入院期間は、プラセボまたは標準治療に比べオセルタミビル(平均群間差:-1.63日、95%信頼区間[CI]:-2.81~-0.45)およびペラミビル(-1.73日、-3.33~-0.13)で短縮したが、いずれもエビデンスの確実性は「低(low)」だった。 また、症状改善までの期間については、標準治療と比較してオセルタミビル(平均群間差:0.34日、95%CI:-0.86~1.54、エビデンスの確実性「低」)およびペラミビル(-0.05日、-0.69~0.59、エビデンスの確実性「低」)で差がほとんどないか、差を認めなかった。有害事象、重篤な有害事象の頻度も3剤で有意差なし 有害事象および重篤な有害事象の頻度には、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルで有意な差はなく、エビデンスの確実性はいずれも「非常に低」であった。 機械換気への移行、機械換気の期間、抗ウイルス薬耐性の発現、治療関連有害事象ではネットワークメタ解析を行うことはできなかったが、ペアワイズメタ解析は可能であり、機械換気への移行、抗ウイルス薬耐性の発現、治療関連有害事象に関してはザナミビルに対するオセルタミビルのリスク比は1.20~2.89の範囲であった(エビデンスの確実性はいずれも「非常に低」)。退院先を評価した試験はなかった。 著者は、「これらの知見は、重症インフルエンザ患者の治療における抗ウイルス薬の効果に関する不確実性を強調するものであるが、抗ウイルス薬の使用をある程度正当化する」「重症インフルエンザ患者における抗ウイルス薬の臨床的有用性、安全性、抗ウイルス薬耐性への影響について知るためには、より多くの臨床試験が必要である」としている。

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経口コロナ治療薬シェア7割のゾコーバ、入院を37%抑制/塩野義

 塩野義製薬は7月29日の第1四半期決算説明会にて、新型コロナウイルス感染症治療薬のゾコーバ(一般名:エンシトレルビル フマル酸)について、現在流通する3剤の経口コロナ治療薬の中でシェアを拡大し、とくに2024年4月以降は重症化リスク因子を有する患者への処方が多く、7月第3週時点でシェア67.6%に達したことを明らかにした。ゾコーバの重症化リスクのある患者の入院抑制効果など、リアルワールドエビデンスが蓄積されていることについて、以下のとおり説明された。入院リスクを37%減少 本剤が日本で緊急承認された2022年11月22日~2023年7月31日の期間において、国内の18歳以上のCOVID-19来院患者16万7,310例を対象に、レセプトデータベース(JMDC)を用いた入院抑制効果について、ゾコーバ群5,177例と標準対症療法群(抗ウイルス薬治療なし)16万2,133例とを比較して、投与から1ヵ月間の入院率を検証した。本結果は、Infectious Diseases and Therapy誌2024年8月号に掲載された1)。 本試験の結果、主要評価項目である理由を問わない入院イベントに関して、ゾコーバ群は対症療法群と比較して、約37%入院リスクが減少し、有意に入院イベントを抑制した(入院リスク:ゾコーバ群:0.494% vs.対症療法群:0.785%、リスク比:0.629[95%信頼区間[CI]:0.420~0.943]、リスク差:-0.291[-0.494 ~-0.088])。 本結果について同社は、オミクロン流行下でワクチン接種済みの患者が多い環境下においても、早期に本剤を服用することにより重症化を抑制できることを強く示唆するデータが得られたと見解を述べた。症状消失に関するグローバル第III相試験 また、患者1,888例を対象に症状消失およびLong COVIDについてフォローアップしたグローバル第III相試験(SCORPIO-HR試験)の結果について、ドイツ・ミュンヘンで開催された第25回国際エイズ学会(AIDS 2024)で発表された内容の一部についても言及された。本試験では、主要評価項目を、15の症状について症状が完全に消失し2日間以上経過したことと定義し、本剤とプラセボを比較した。本試験の結果、15症状消失までの時間短縮を示したが、統計学的な有意差は認められなかった(ゾコーバ群:12.5日vs.プラセボ群13.1日、p=0.14)。 アジア圏(日本、韓国、ベトナム)における第III相試験(SCORPIO-SR試験)では、5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])について消失して1日以上経過したと定義し、本剤とプラセボを比較した。本試験の結果、ゾコーバ群:10.1日vs.プラセボ群10.9日、p=0.04となり、統計学的に有意な結果が示された。 SCORPIO-HR試験およびSCORPIO-SR試験において、同じ施設でPCRの測定をしたところ、本剤を服用することでプラセボよりも速やかにウイルス量を低下させ、症状を伴うウイルス力価のリバウンドはみられなかったという。 現在、本剤について、国内の小児を対象とした症例集積や、グローバルでの予防効果の試験、グローバルでの入院から早期復帰の試験(STRIVE試験)、国内でのLong COVIDに対する前向き試験なども進行中だ。

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influenza(インフルエンザ)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第9回

言葉の由来“influenza”という言葉は、ラテン語の“influentia”(流れ込む)から派生したものだそうです。これは“influence”(影響)という英単語の語源でもあるようです。過去の記録によれば、当時の人々は、この病気が天体の影響によって引き起こされると考えていたようで、とくに占星術の影響が強かった中世では、星々の位置が地上の出来事に影響を与えると信じられていたそうです。このため、突然広がる流行性の病気は、天体からの影響だと解釈されていたわけです。興味深いことに、18世紀ごろまでは“influenza di freddo”(寒さの影響・流れ込み)という言い方もされており、寒気が体内に「流れ込む」ことで病気が発生するとも考えられていたようです。時代が変わり、19世紀後半に病原体としてのウイルスが発見されるまで、この「天体の影響」や「寒気の流れ込み」という概念が続いていました。現代の医学では、インフルエンザはウイルス感染症であることが明らかになっていますが、その名称には中世の人々の世界観が今も残っているようです。なお、“influenza”は日本語でも「インフルエンザ」ですが、日本では古くは「地域名+かぜ」あるいは「流行性感冒」と呼ばれており、ウイルスが分離され、命名されるまでは、この病気に対する特別な名前はなかったようです。併せて覚えよう! 周辺単語抗ウイルス治療antiviral therapy混合感染concomitant infection抗原シフトantigenic shiftワクチンvaccine飛沫感染予防droplet precautionこの病気、英語で説明できますか?Influenza, commonly known as "flu", is a highly contagious respiratory illness caused by influenza viruses. It can cause mild to severe illness and, at times, can lead to death. 参考1)Michael Quinion. “Influenza”. World Wide Words. 1998-01-03.(参照2024-07-23)2)“Tis the (Flu) Season: The History of ‘Influenza”. Merriam-Webster.(参照2024-07-23)講師紹介

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なぜ子どもはコロナが重症化しにくいのか

 子どもというものは、しょっちゅう風邪をひいたり鼻水が出ていたりするものだが、そのことが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症化から子どもを守っている可能性のあることが、米イェール大学医学部准教授のEllen Foxman氏らの研究で示された。この研究結果は、「Journal of Experimental Medicine」に7月1日掲載された。 COVID-19パンデミックを通して、子どもは大人よりもCOVID-19が重症化しにくい傾向があると指摘されていたが、その理由は明確になっていない。Foxman氏は、「先行研究では、子どもの鼻腔内の自然免疫の亢進は、小児期にのみ見られる生物学的なメカニズムによって生じることが示唆されていた。しかし、われわれは、子どもにおける呼吸器系ウイルスや細菌感染による負荷の高さも鼻腔内の自然免疫の亢進に寄与している可能性があると考えた」と言う。自然免疫系は、生まれつき体に備わっている、細菌やウイルスに対する防御システムだ。体は抗体を作り出すことで、より標的を絞った免疫反応を起こす一方で、自然免疫系は抗ウイルス性タンパク質と炎症性タンパク質を速やかに産生して、感染から体を守る働きを担っている。 Foxman氏らは今回、子どもでの頻繁な呼吸器感染症への罹患が鼻の自然免疫を高めるかどうかを調べるため、467点の鼻腔ぬぐい液検体の再分析を行った。これらの鼻腔ぬぐい液は、COVID-19パンデミック中の2021年から2022年にかけて、手術前のスクリーニング検査を受けた子どもや救急部門で診療を受けた子どもから採取されたものだった。研究グループは、上気道感染症の原因となる16種類の呼吸器系ウイルスと3種類の細菌について調べるとともに、自然免疫系によって産生されるタンパク質の量を測定した。 サンプルから最も多く検出されたウイルスは、2021年6〜7月ではライノウイルス(176検体中43点、24.4%)であり、2022年1月では新型コロナウイルス(291検体中65点、22.3%)であった。しかし、同時期にその他のウイルス感染が確認された検体も一定数あり、全体でのウイルス陽性率は、2021年6〜7月で38.6%、2022年1月で36.4%であった。また、RT-PCR検査でウイルスまたは病原性のある細菌、あるいはその両方について陽性と判定された検体に5歳未満の子どもの検体が占める割合は高く、2021年6〜7月で66.2%(51/77点)、2022年1月では53.3%(155/291点)であった。さらに、呼吸器系ウイルスや細菌の量が多い子どもでは、鼻腔内の自然免疫活性レベルも高いことが示された。 Foxman氏らがさらに、乳児健診時とその7〜14日後に健康な1歳児から採取された鼻腔ぬぐい液を調べた。その結果、いずれかの時点で何らかの呼吸器系ウイルスの感染が陽性と判定されていた子どもが半数以上を占めており、そのほとんどのケースで、自然免疫活性は、感染時には高まり非感染時には低下することが明らかになった。Foxman氏は、「このことから、低年齢の子どもでは、鼻の中でのウイルスに対する防御機構は常に厳戒態勢にあるのではなく、呼吸器系ウイルスの侵入に反応して活性化すること、そのウイルスが症状を引き起こしていない場合でも活性化することが明らかになった」と話す。 これらの結果は、子どもはライノウイルスのような比較的無害な呼吸器系ウイルスに感染することが多いため、自然免疫系が頻繁に、強く活性化されることを示している。 Foxman氏は、子どもが季節性ウイルスに頻繁に感染するのは、感染により得られる抗体が築かれていないのが理由ではないかとの考えを示している。新型コロナウイルスは新型のウイルスであったため、パンデミック発生時に感染を防御する抗体を持つ人は1人もいなかった。Foxman氏らは、「このような状況で、他の感染症によって子どものウイルスに対する防御機構が活性化され、これが新型コロナウイルスへの感染を初期段階で阻止することに寄与した可能性がある。さらに、そのことが、成人と比べて子どもでは重症度が低いという転帰につながったと考えられる」とニュースリリースの中で述べている。 Foxman氏は、季節性ウイルスや鼻腔内の細菌がCOVID-19の重症度にどのような影響を与えるのかについて、今後さらなる研究で検討する必要があると話している。

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ポスト・パンデミック期:コロナ抗ウイルス薬は無効?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

ポスト・パンデミック期におけるコロナ抗ウイルス薬の実態 2023年夏以降、コロナ感染症はポスト・パンデミックの時代に突入した。この時期に注目されているのが間断なく継続しているウイルスの遺伝子変異に対して、オミクロン株以前のパンデッミク期に開発された抗ウイルス薬が、その効果を維持しているかどうかという点である。 今回論評するHammond氏らの論文は、2021年8月から2022年7月にかけて、播種しているコロナウイルスがデルタ株からオミクロン株に切り替わりつつある過渡期に集積された症例を対象としたものである。Hammond氏らはこれらの対象をもとに3-キモトリプシン様プロテアーゼ阻害薬ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック、本邦承認:2022年2月10日、5日分の薬価[成人]:9万9,000円)に関するEPIC-SR試験(Evaluation of Protease Inhibition for COVID-19 in Standard-Risk Patients trial)の結果を報告した。 ニルマトレルビルの効果に関する最初の大規模臨床試験であるEPIC-HR試験(Evaluation of Protease Inhibition for COVID-19 in High-Risk Patients trial)は、ワクチン未接種でコロナ感染による重症化リスクを少なくとも1つ以上有する非入院成人コロナ感染者を対象として施行された(Hammond J, et al. N Engl J Med. 2022;386:1397-1408.)。EPIC-HR試験はEPIC-SR試験とは異なり、2021年7月から12月にかけてデルタ株優勢期に集積されたデータを基にした解析であることに注意する必要がある。EPIC-HR試験の結果、重症化リスクを有するワクチン未接種患者において、ランダム化から1ヵ月以内のニルマトレルビル投与による入院/死亡予防効果は非常に高く、87.8%であることが示された。しかしながら、EPIC-HR試験ではワクチン未接種のコロナ感染者を対象としていたため実際の臨床現場、すなわち、Real-Worldでの状況を十分に反映していない可能性があった。そこで、EPIC-SR試験では重症化リスクを有さないワクチン未接種者(1年以上前のワクチン接種者を含む)に加え、重症化リスクを少なくとも1つ以上有するワクチン接種者を対象としてニルマトレルビルの臨床効果が検討された。その結果、ニルマトレルビル投与によって症状緩和までの時間、コロナ関連入院/死亡率はプラセボ群に比べ有意差はなく、ニルマトレルビルはオミクロン株が主流を占める現在の臨床現場では、ワクチンの予防効果を相加的に上昇させるものではないことが判明した。 同様の結果はRNA-dependent RNA polymerase(RdRp)阻害薬として開発されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル、本邦承認:2021年12月24、5日分の薬価[成人]:9万4,000円)においても報告されている。ワクチン未接種者におけるモルヌピラビルの投与28日以内のコロナに起因する入院/死亡予防効果は31%であった(MoVe-OUT Trial, Jayk Bernal A, et al. N Engl J Med. 2022;386:509.)。この値はニルマトレルビルとの直接比較で得られたものではないが、値としてはニルマトレルビルの予防効果に比べ低いものと考えてよい。さらに、ワクチン接種者におけるモルヌピラビルの入院/死亡予防効果は、ほぼゼロであり(PANORAMIC Study, Butler CC, et al. Lancet. 2023;401:281-293.)、モルヌピラビルを実際の臨床現場で投与する医学的必然性がないことが判明した。以上のような結果を踏まえ、2023年2月25日、欧州医薬品庁(EMA)は実際の臨床現場でのモルヌピラビルの使用中止を勧告した(https://www.sankei.com/article/20230225-VRWSG7G2DJMWDI2TA3WTWIK7KI/)。EMAの勧告を受け、欧州、米国、豪州などの先進諸国ではモルヌピラビルは実際臨床の現場で投与されなくなっている。本邦でもEMAの勧告に従うべきであろう。 RdRpとして重要な薬物としてコロナ・パンデミック初期の2020年に開発されたレムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用100mg、本邦承認:2020年5月7日、5日分の薬価[成人]:27万9,000円)が存在する。本邦においては、レムデシビルは重症化因子を有する軽症から重症までのコロナ感染症に対して投与でき、コロナ・パンデミックの制御に対して多大の貢献をしてきた。しかしながら、レムデシビルがオミクロン派生株によるポスト・パンデミック期においても有効であるか否かに関しては十分なる検証がなされていない。 本邦の塩野義製薬が開発したエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)はニルマトレルビルと同様にMain protease阻害薬である。本剤に関し、厚労省は2022年6月22日に臨床効果が不十分との理由で一度承認を見送ったが、最終的には2022年11月22日に緊急承認した(5日分の薬価[成人]:5万2,000円)。緊急承認であるので、その後1年以内に有効性に関する総括的データの提出が義務付けられており、承認後も臨床治験が続行されている(SCORPIO-SR試験、SCORPIO-HR試験)。臨床治験の対象は初期のオミクロン株(BA.1、BA.2)優勢期に集積された。それ故、BA.2以降の多数の派生株に対しても真に阻害作用を有するかは確実ではない。本論評で取り上げたニルマトレルビルのオミクロン株に対する増殖抑制作用が適切なワクチン接種者においては否定されつつある現在、それと同様の作用を有するエンシトレルビルを臨床現場で使用することは費用対効果の面からは問題がある。以上まとめると、オミクロン株のBA.2を源流とする多数の派生株(2024年5月現在、KP.3、JN.1、XDQ.1など)が重要な位置を占めるポスト・パンデミック期において、パンデミック期に開発された高価な抗ウイルス薬を安易に投与することは、医学的ならびに費用対効果の面から慎むべきだと論評者は考えている。とくに、2023年秋にXBB1.5対応1価ワクチンを接種した人がBreak-through感染を起こした場合には、抗ウイルス薬を追加投与したとしても重症化予防の上乗せ効果は期待できない。一方、この1年以内に適切なワクチンを接種していない人がコロナに感染した場合には、内服抗ウイルス薬としてニルマトレルビルを投与することは、臨床的に間違った判断ではないと考えている。ポスト・パンデミック期において抗ウイルス薬の効果を規定する遺伝子変異 抗ウイルス薬はワクチン、モノクローナル抗体薬とは異なりS蛋白を標的とするものではなく、ウイルスのOpen reading frame (ORF)-1aに遺伝子座を有するMain proteaseあるいはORF-1bに遺伝子座を有するRdRpを標的としたウイルス増殖抑制薬である。オミクロン株にあってはORF-1aならびにORF-1bにMain proteaseとRdRpの作用を修飾する遺伝子変異の存在が報告されており(Main protease:P3395H変異、RdRp:P314L変異など)、それらが抗ウイルス薬の効果にどのような影響を及ぼすかは重要な問題である。これらの問題については、オミクロン株の初期株であるBA.1(BA.1.1を含む)、BA.2(BA.2.12.1、BA.2.75を含む)、BA.4、BA.5を対象として試験管内で検討され、ニルマトレルビル、モルヌピラビル、レムデシビルの抗ウイルス作用は共に維持されていることが証明されている(Takashita E, et al. N Engl J Med. 2022 ;387:468-470.、Takashita E, et al. New Engl J Med 2022;387:1236-1238.)。しかしながら、これらの検討はあくまでも試験管内のものであり、実地臨床面でのオミクロン初期株に対する抗ウイルス効果が証明されているわけではない。さらに、現在世界を席巻しているBA.2からの種々の派生株に対する抗ウイルス薬の試験管内ならびに臨床的抑制効果は検証されておらず、今後、喫緊の課題として取り組む必要がある。エンシトレルビルに関しては、先行3剤に比べ臨床効果に関する検証レベルが低いことも追記しておきたい。

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インフルエンザには麻黄湯?【漢方カンファレンス】第4回

インフルエンザには麻黄湯?以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】30代女性主訴発熱、咽頭痛既往特記事項なし病歴職場でインフルエンザが流行中。昨晩、ゾクゾクとした悪寒と咽頭痛があり、体温38.6℃。朝起きても悪寒と発熱が持続。インフルエンザが心配で受診。副作用が怖いので抗ウイルス薬はなるべく飲みたくない。外来待合室では、全身の関節痛があり椅子にじっと座れないほどきつくて体を動かしている。現症身長172cm、体重70.4kg。体温38.7℃、血圧112/80mmHg、脈拍86回/分 整。顔面紅潮あり、咽頭発赤あり、扁桃肥大なし、白苔なし、頸部リンパ節腫脹なし、呼吸音異常なし。インフルエンザ抗原検査(+)。経過受診時「???」エキス1包+「???」エキス1包を外来で内服。(解答は本ページ下部をチェック!)15分後悪寒が軽減して、少し関節痛が楽になったため改めて「???」エキス3包+「???」エキス3包分3で処方。(2~3時間おきに内服し、帰宅して安静にするように指導)当日帰宅後、2回目を内服して布団に入った。1時間後に発汗し始めた。発汗後、衣服を着替えて就寝。翌日翌朝には解熱して、咽頭痛もなくなり気分もすっきりした。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<冷えの確認>悪寒はありますか?ゾクゾクして鳥肌が立っています。体熱感はありますか?熱っぽい感じがあります。<温冷刺激に対する反応を確認>のどは渇きませんか?いま、温かい物と冷たい物ではどちらが欲しいですか?のどが渇きます、冷たい水が飲みたいです。<ほかの随伴症状を確認>のどの痛みは強いですか?体の節々が痛みますか?そのほかに、鼻汁、咳、痰はありませんか?汗をかいていますか?とてものどが痛いです。手足の関節や腰が痛くてじっと座るのがつらいです。咳が少しあるくらいで、汗はかいていません。横になりたいほどの倦怠感はありませんか?横になりたい感じはありません。ただ、体の節々が痛くて、こうして座っているのもつらいです。【診察】顔色は紅潮で、手足を触診すると熱感を感じた。また、脈診では浮で、反発力が強い脈(脈:浮、強)であった。また、後頸部から背部を触診すると、鳥肌がたっており、汗をまったくかいていなかった。カンファレンス今回は、インフルエンザの症例ですね。インフルエンザといえば麻黄湯(まおうとう)が有名で、有効性を示すRCTもいくつか知ってます1-3)。本症例も麻黄湯といいたいところですが、病名からすぐに飛びついてはいけないのでしたね。素晴らしい! それでは、早速、漢方診療のポイント(1)である病態の「陰陽」(寒と熱どちらが主体か)を考えます。風邪などの急性熱性疾患の場合、ゾクゾクとした悪寒だけでは「陰陽」どちらの病態か区別するのは困難で、悪寒以外の自覚症状、顔色、咽頭痛や倦怠感の程度などから陰陽を判断します(表1)。顔面紅潮があって、咽頭痛も強く、体熱感を自覚して冷たい水を好むということから「陽証」だと思います。そうですね。今回は「陽証」でよいですね。その次は、闘病反応の程度を示す「虚実」の判定を行う必要があります。急性疾患で「陰陽」・「虚実」を判断するには脈の診察がとくに重要だよ! 本症例では、悪寒があって脈が浮・強となっていることに着目すると、太陽病・実証と考えられるよ(太陽病の解説は本ページ下部の「今回のポイント」の項を参照)。太陽病の際に闘病反応の程度である「虚実」に関して、脈の所見以外に着目すべきポイントがあります。漢方医の診察からどの点かわかりますか?闘病反応ということは、咽頭痛や咽頭発赤の程度ですか?咽頭痛や咽頭発赤の程度からも闘病反応の程度を推測できるね。もう1つ大事な所見として、発汗の有無がポイントだよ。汗がない場合は闘病反応が強い(実)、汗をかいている場合は闘病反応が弱い(虚)と判定するんだ。太陽病では、悪寒があることが前提なので、悪寒があるにもかかわらず皮膚のしまりがなく、じわっと汗が出ている状態は闘病反応が弱い(虚)と考えるんだ。問診だけでなく患者の首筋に手を当てて、発汗の有無を確認することも大切だね。なるほど、本症例は、脈の反発力が強くて、悪寒がして汗がないことから「実証」ですね。それではやはり、汗がなくて、関節痛もあるので麻黄湯が適応になりそうです。たしかに麻黄湯は悪寒がして体の節々が痛い、「太陽病・実証」に適応になり、インフルエンザによくみられる闘病反応に類似していることから、インフルエンザに頻用されるようになりました。しかし、本症例ではさらに着目すべき特徴として、口渇があって冷たい物を飲みたいという所見があげられます。これは身体にこもった熱を冷ます作用のある石膏(せっこう)を含む漢方薬の適応を示唆する所見です。さらに「じっとしていられないほどつらい」というのも大切なキーワードです。本症例をまとめると以下のようになります。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?悪寒、脈:浮、冷たい飲み物が欲しい、顔面紅潮→熱が主体(太陽病)(2)虚実はどうか発汗なし、脈:強→実証(3)気血水の異常を考える気血水の異常ははっきりしない(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む悪寒あり、発汗なし、口渇あり、じっとしていられないほどつらい解答・解説【解答】本症例は、太陽病・実証で、発汗作用に加えて身体にこもった熱を冷ます作用がある石膏が含まれる大青竜湯(だいせいりゅうとう)が適応になります。大青竜湯はエキス製剤にないので、麻黄湯と越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を合わせることで代用します。【解説】一般的に風邪のひき始めの悪寒がある時期を太陽病といいますが、悪寒と同時かその後に熱の病態を示唆する所見があることが前提です。大青竜湯は、「太陽病・実」(脈が浮・強、発汗なし)の場合に用いる漢方薬で、麻黄湯の特徴である関節痛に加え、身体に熱がこもっている状態を示唆する「口渇があり、冷たい水が飲みたい」場合に適応になります。また、漢方では身の置きどころがないほどひどくつらがる状態を「煩躁(はんそう)」といい、「煩躁」も大青竜湯を用いる指標の1つです。悪寒と関節痛がある場合でも、「口渇」、「煩躁」のどちらかがあれば、麻黄湯でなく、大青竜湯が適応になります。葛根湯(かっこんとう)も「太陽病・実証」に用いる漢方薬ですが、麻黄湯や大青竜湯のように全身に及ぶ症状はなく、項(うなじ)のこわばりが目立つ場合に適応になります(表2)。なお、麻黄湯や大青竜湯の処方日数は長くても3日間までとします。内服方法も、処方せん上は毎食前に1日3回としますが、実際には、発汗があるまで2~3時間おきに内服した方がより効果的で、即効性が期待できます。ただし、高齢者では麻黄の副作用(交感神経刺激作用による動悸・不眠などや胃腸障害)が出現しやすく注意が必要で、基礎疾患によっては間隔を詰めた内服を避ける場合もあります。さらに、漢方薬を内服するだけでなく、発汗を促すために、温かくして安静にする、冷たい飲食物を避けるなど養生の指導も必要になります。今回のポイント「太陽病」の解説太陽病は風邪のひき始めのように、悪寒に加え、脈が表在性に触知できる浮である時期を太陽病(陽の始まりという意味)といいます。風邪の発症から間もない時期で典型的には発症から1~2日間の急性期です。脈浮は体表面(表)で闘病反応が起こっている時期であると考えます。表に病気の主座があることから葛根湯や麻黄湯などの漢方薬で発汗させて治療します。次に太陽病と診断した後は、虚実の判定を行います。虚実は脈を押し込んで全体から受ける反発力をみます。少しの力でペシャンとつぶれて触れなくなるような脈は「弱」で虚証、反発力が充実していれば「強」で実証と診断します。太陽病では舌や腹部の所見は参考にしないことに注意してください。参考文献1)Kubo T, Nishimura H. Phytomedicine. 2007;14:96-101.2)Saita M, et al. Health(NY). 2011;3:300-303.3)Nabeshima S, et al. J Infect Chemother. 2012;18:534-543.

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ニルマトレルビル/リトナビル、long COVIDに対する効果が認められず

 抗ウイルス薬のパクスロビド(日本での商品名パキロビッド、一般名ニルマトレルビル/リトナビル)を長期間投与しても、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)急性期以降の罹患後症状(post-acute sequelae of SARS-CoV-2;PASC、以下、long COVID)は改善しないことが、新たな研究で明らかになった。米スタンフォード大学医学大学院感染症・地理医学分野教授のUpinder Singh氏らが、パクスロビドを製造するファイザー社の資金提供を受けて実施したこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に6月7日掲載された。 Long COVIDは、COVID-19から回復後も他の疾患による症状としては説明のつかないさまざまな症状が3カ月以上続く状態を指し、罹患者の10〜20%が発症すると推定されている。Singh氏は、「いくつかの研究では、ウイルス粒子や分子の破片がlong COVIDの原因である可能性が示唆されている」と説明。その上で、「もしそうなら、long COVIDの症状は、ニルマトレルビル/リトナビルによる治療により緩和されるのではないかとわれわれは考えた」と話す。 Singh氏らは、中等度から重度のlong COVID患者155人(年齢中央値43歳、女性59%)を対象に二重盲検ランダム化比較試験を実施し、15日間のニルマトレルビル/リトナビルによる治療が、long COVIDの重症度軽減に有効であるのかを検討した。対象者は2対1の割合で、15日間にわたり1日に2回、ニルマトレルビル(300mg)/リトナビル(100mg)を投与される群(102人)と、プラセボ/リトナビル(100mg)を投与される群(53人)にランダムに割り付けられ、ランダム化から15週目まで追跡された。対象患者がCOVID-19に罹患してからランダム化されるまでの期間は平均で17.5カ月だった。主要評価項目は、ランダム化から10週目にリッカート尺度で評価した、long COVIDの6つの症状(倦怠感、ブレインフォグ、息切れ、体の痛み、消化器症状、心血管系の症状)の総合的な重症度とした。 その結果、ランダム化から10週目の時点で、ニルマトレルビル/リトナビル群とプラセボ群の間にlong COVIDの症状の総合的な重症度に有意な差は認められないことが明らかになった。一方で、有害事象の発生率は両群で同等であり、そのほとんどは軽度のものであったことから、ニルマトレルビル/リトナビルを長期間投与しても安全であることが示された。 こうした結果についてSingh氏は、「残念な結果ではあるが、ニルマトレルビル/リトナビルがlong COVIDの治療に役立つ可能性を完全に否定するものではない」とし、「例えば、long COVIDを発症して間もない患者に対する同薬の有効性を検証してみるのも一つかもしれない」と話している。同氏はさらに、「症状が現れてから16〜17カ月が経過した患者ではなく、7〜8カ月程度の患者を対象にニルマトレルビル/リトナビルの効果を検討すべきだったのだろうか。それとも、治療期間をもっと長くするべきだったのか。そもそも、対象患者は適切だったのだろうか。抗ウイルス薬による治療に反応するのは一部の症状だけの可能性もある」とさまざま疑問を挙げている。 研究グループは、今回の試験結果を引き続き分析し、特定の患者で他の患者よりも効果が高かったのかどうかを確認する予定である。

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第218回 ニルマトレルビル・リトナビルでコロナ後遺症緩和せず

ニルマトレルビル・リトナビルでコロナ後遺症緩和せず新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を討つ経口薬ニルマトレルビル・リトナビルのSARS-CoV-2感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)緩和効果が残念ながら認められませんでした1,2)。スタンフォード大学で実施された無作為化試験「STOP-PASC」の結果です。世界で数百万人が患うとされるlong COVIDの症状は多岐にわたり、数ヵ月から長ければ数年続きます。裏付けのある治療を見つけることが急務ですが、その根本原因に取り組む手段を検討している試験は不足しています。SARS-CoV-2が居続けることがlong COVIDの原因の1つとされています。実際、上気道や糞中にSARS-CoV-2のRNAが何ヵ月も排出され続けることが確認されています。生きて複製するSARS-CoV-2の溜まり場はlong COVID患者から見つかっていないものの、血液、口腔(歯周ポケット)、胃腸、中枢神経系などの種々の組織に長居するSARS-CoV-2のRNAやタンパク質が検出されています。そのような残滓ウイルスが長引く炎症や免疫機能不全の引き金となって多岐にわたる症状を招いているのかもしれません。そうであるならSARS-CoV-2を直撃する抗ウイルス薬を検討することで、もしかしたらlong COVIDの根本原因を断つ治療の道が開けるかもしれません。ニルマトレルビル、モルヌピラビル、レムデシビルなどの抗ウイルス薬を感染後すぐの期間に投与することでlong COVIDの症状の一揃いが生じ難くなることを示した試験がある一方で、そうともいえないという結果もあります。重症化の恐れが大きいCOVID-19患者への使用が承認されているニルマトレルビル・リトナビルの有効成分のニルマトレルビルはSARS-CoV-2のメインプロテアーゼを阻害してSARS-CoV-2が複製できないようにします。一緒に服用するリトナビルはCYP3A4阻害によってニルマトレルビルの分解を遅らせる働きがあります。ニルマトレルビル・リトナビルの投与でlong COVIDの症状が改善した患者の経緯をスタンフォード大学医学部のLinda Geng氏らやその他のチームが先立って報告しています。今回結果が明らかになったSTOP-PASC試験はGeng氏らの指揮の下で、2022年11月からその翌年2023年9月にかけて実施されました。試験には中等度~重度のlong COVID症状が3ヵ月以上続く患者155例が参加し、102例はニルマトレルビル・リトナビルを15日間服用する群、53例はリトナビルとプラセボを服用する群(リトナビル・プラセボ服用群)に割り振られました。投与10週時点での比較の結果、ニルマトレルビル・リトナビル服用群の6つの主要症状(疲労、脳のもやもや、呼吸困難、痛み、胃腸症状、心血管症状)の重症度の総計は、上述したとおりリトナビル・プラセボ服用群と有意差がありませんでした。他の比較でもニルマトレルビル・リトナビル服用群とリトナビル・プラセボ服用群は似たりよったりでした。効果は示せなかったもののせめてもの救いはあり、承認されている5日間投与よりも長い15日間のニルマトレルビル・リトナビル投与はおおむね安全でした。その結果によるとニルマトレルビル・リトナビルはより長期間安全に投与できるようです。参考1)Geng LN, et al. JAMA Intern Med. 2024 Jun 7. [Epub ahead of print]2)Stanford Medicine trial:15-day Paxlovid regimen safe but adds no clear long-COVID benefit / Stanford University

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第214回 マダニ媒介感染症治療薬が承認!それは新型コロナで苦戦した“あの薬”

久しぶりにあの薬の名前を聞いた。抗インフルエンザウイルス薬のファビピラビル(商品名:アビガン)のことである。本連載ではコロナ禍中にこの薬を核にした記事は2回執筆(第7回、第44回)し、そのほかの記事でも何度か触れたことがある。当時は新型コロナウイルス感染症に対してこの薬が有効ではないかと騒がれ、しかも一部報道やSNS上で過剰な期待が喧伝されていたため、それに苦言を呈する内容になったが、医療従事者内ではご承知の通り、結局、有効性が示されずに消え去る形となった。そのファビピラビルが5月24日に開催された厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会で「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染症」を適応とする効能追加の承認が了承されたのだ。マダニに咬まれて感染、SFTSウイルス感染症とは一部にはSFTSウイルス感染症自体が聞き慣れない人もいるかもしれない。今回承認が了承された適応症のSFTSウイルス感染症はSFTSウイルスを保有するマダニ類に咬まれることで起こるダニ媒介感染症の1種である。6~14日の潜伏期間を経て38℃以上の発熱、吐き気・嘔吐、腹痛、下痢、下血などの出血症状、ときに神経症状、リンパ節腫脹なども伴う。臨床検査値では病名の通り、血小板減少(10万/mm2未満)をはじめ、白血球減少、AST、ALT、LDHの上昇などが認められる。致死率は10~30%程度というかなり恐ろしい感染症1)だ。もともとは2009年に中国の湖北省(ちなみに新型コロナウイルス感染症が初めて確認された武漢市は同省の省都)、河南省で謎の感染症らしき患者が多数発生し、中国疾病予防管理センター(中国CDC)が2011年にSFTSウイルスを同定した。日本では2013年に山口県で初めて確認され(患者は死亡)、この直後のレトロスペクティブな調査から2005年以降それまでに別の10例の存在が確認された(うち5例が死亡)2)。現在SFTSウイルス感染症は感染症法で4類感染症に分類され、初めて患者が確認された2013年は年間40例だったが、それ以降の報告数は年々増加傾向をたどり、最新の2023年は132例と過去最多だった。2013年以降の2023年までの累計報告数は942例で、うち死亡は101例。累計の致死率は10.7%。ただし、この致死率は見かけ上の数字である。というのもこの死亡例の数字は感染症法に基づく届け出時点までに死亡が確認されている例のみだからだ。国立感染症研究所などが中心となって2014年9月~2017年10月までのSFTS患者を報告した事例のうち、予後の追跡調査が可能だった事例では致死率27%との結果が明らかになっている。これまでの患者報告は、東は東京都から南は沖縄県まで30都県に及んでいるが、推定感染地域はこのうち28県で西日本に偏在しているのが特徴だ。西日本(近畿・中国・四国・九州)内でこれまで患者報告がないのは奈良県のみである。ただし、東日本での患者報告数は少ないものの、マダニ類が吸血する野生の哺乳類ではSFTS抗体陽性の個体も見つかっており、単に診断漏れになっている可能性がある。そもそも近年、国内でSFTS患者が増えている背景には、昨今のクマ出没の急増と同じく、マダニ類が吸血するシカやイノシシなどの野生の哺乳類が人家周辺まで生息域を広げたことが影響しているとの指摘は少なくない。こうした動物に接する機会が多い獣医療従事者では、動物のケアなどから感染した疑いがある報告例は11例あり、また愛玩動物である犬、猫がSFTSに感染し、そこから人への感染事例もある。ちなみに犬、猫から感染が確認された世界初の症例は、2017年に西日本で野良猫に咬まれ、SFTS発症後に死亡した日本での症例である。また、極めてまれだがSFTS患者の体液を通じて人から人へ感染する事例もあり、日本国内ではこの4月に初めてこうした症例が報告されたばかりだ。さてSFTSに関しては「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 改定新版2019」が厚生労働省より発刊されている。現時点でSFTS感染症のワクチンはなく、これまでの治療も基本は発熱・頭痛・筋肉痛にはアセトアミノフェン(病態そのものに出血傾向があるためアスピリンやNSAIDsは使わない)、悪心・嘔吐には制吐薬、下痢にはロペラミド、消化管出血には輸血療法などの対症療法しかなかった。過去に中国ではウイルス性肝炎治療に使用する抗ウイルス薬であるリバビリンが使用されたことがあったが、1日500mgの低用量では致死率を下げないと考えられた3)ことから、前述の手引きでも推奨されていない。そうした中でSFTSウイルス感染マウスでより高い効果が示されていたのがファビピラビルである。ファビピラビル、承認までの紆余曲折これに対する企業治験が行われて今回晴れて承認となったわけだが、これが実は一筋縄ではいかなかったのが現実だ。そもそも前述したこの感染症の特徴を考慮すればわかるように、患者は突発的に発生するものであり、かつ致死率は高い。結局、製造販売元である富士フイルム富山化学が行った第III相試験は、多施設共同ながらも非盲検の既存比較対照試験、いわゆる従来の対症療法での自然経過の致死率との比較にならざるを得なかった。実質的には単群試験である。たとえ患者数が確保されたとしても、致死率の高さを考えれば対症療法の比較対照群を設定できたかどうかは微妙だ。そして今回の承認了承に先立つ5月9日の医薬品第二部会での審議では、「有効性が示されていると明確には言えない」として一旦は継続審議になった。これは第III相試験の結果から得られた致死率が15.8%で、事前に臨床試験の閾値とされた致死率12.5%を超えてしまったためである。ただ、現実の致死率よりもこれが低い可能性があるとして、再度検討した結果、既存論文などの情報も含めたメタアナリシスで得られたSFTSウイルス感染症の致死率が21~25%程度だったこと、それに加えて富士フイルム富山化学側が市販後臨床試験でウイルスゲノム量の評価で有効性を確認することを提案したため、承認了承となった。ちなみにこれに先立ってSFTSウイルス感染症に対してファビピラビルを投与した愛媛大学を中心に行われた医師主導治験での致死率は17.3%。こちらも前述のメタアナリシスよりは低率である。そしてファビピラビルと言えば、抗インフルエンザ薬として承認を受けた際に催奇形性を有する薬剤であることが問題になり、「厚生労働大臣の要請がない限りは、製造販売を行わないこと」といった前代未聞の条件が付いたことはよく知られている。承認されたが市中在庫はない異例の薬剤だった。しかし、今回のSFTSウイルス感染症については、▽原則入院管理下のみで投与▽原則患者発生後に納入▽研修を受けた登録医師のみで処方可能、という条件のもとにこの「大臣要請のみ」で製造という条件は緩和された。あるけどない謎の抗インフルエンザ薬。期待のみで終わった新型コロナ治療薬という苦難を経て、ファビピラビルが復活の兆しを見せるのか。個人的にはひそかに注目している。参考1)厚生労働省:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について2)Takahashi T, et al. J Infect Dis. 2014;209:816-827.3)Liu W, et al. Clin Infect Dis. 2013;57:1292-1299.

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外用抗菌薬の鼻腔内塗布でウイルス感染を防御?

 抗菌薬のネオマイシンを鼻の中に塗布することで、呼吸器系に侵入したウイルスを撃退できる可能性があるようだ。新たな研究で、鼻腔内にネオマイシンを塗布された実験動物が、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの強毒株の両方に対して強力な免疫反応を示すことが確認された。さらに、このアプローチはヒトでも有効である可能性も示されたという。米イェール大学医学部免疫生物学部門教授の岩崎明子氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に4月22日掲載された。 岩崎氏らによると、新型コロナウイルスは2024年2月時点で、世界で約7億7450万人に感染し、690万人を死亡させたという。一方、インフルエンザウイルスは、年間500万人の重症患者と50万人の死者を出している。 これらのウイルスに感染した際には、一般的には経口または静脈注射による治療を行って、ウイルスの脅威と闘う。これらは、感染の進行を止めることに重点を置いたアプローチだ。しかし研究グループは、鼻に焦点を当てた治療アプローチの方が、ウイルスが肺に広がって肺炎のような命を脅かす病気を引き起こす前にウイルスを食い止められる可能性がはるかに高いのではないかと考えている。 今回の研究では、まず、マウスを使った実験でこの考えを検証した。マウスの鼻腔内にネオマイシンを投与したところ、鼻粘膜上皮細胞でIFN誘導遺伝子(ISG)の発現が促されることが確認された。ISGの発現は、ネオマイシン投与後1日目から確認されるほど迅速だった。そこで、マウスを新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに曝露させたところ、感染に対して有意な保護効果を示すことが確認された。さらに、ゴールデンハムスターを用いた実験では、ネオマイシンの鼻腔内投与が接触による新型コロナウイルスの伝播を強力に抑制することも示された。 次に、健康なヒトを対象に、鼻腔内にネオマイシンを主成分とするNeosporin(ネオスポリン)軟膏を塗布する治療を行ったところ、この治療法に対する忍容性は高く、参加者の一部で鼻粘膜上皮細胞でのISG発現が効果的に誘導されていることが確認された。 岩崎氏は、「これはわくわくするような発見だ。市販の安価な外用抗菌薬が、人体を刺激して抗ウイルス反応を活性化させることができるのだ」と話している。なお、米国立衛生研究所(NIH)によれば、Neosporinは、抗菌薬のネオマイシン、バシトラシン、およびポリミキシンBを含有する。 岩崎氏は、「今回の研究結果は、この安価で広く知られている抗菌薬を最適化することで、ヒトにおけるウイルス性疾患の発生やその蔓延を予防できる可能性があることを示唆している。このアプローチは、宿主に直接作用するため、どんなウイルスであろうと効果が期待できるはずだ」と話している。

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抗菌薬は咳の持続期間や重症度の軽減に効果なし

 咳の治療薬として医師により抗菌薬が処方されることがある。しかし、たとえ細菌感染が原因で生じた咳であっても、抗菌薬により咳の重症度や持続期間は軽減しない可能性が新たな研究で明らかにされた。米ジョージタウン大学医学部家庭医学分野教授のDaniel Merenstein氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of General Internal Medicine」に4月15日掲載された。 Merenstein氏は、「咳の原因である下気道感染症は悪化して危険な状態になることがあり、罹患者の3%から5%は肺炎に苦しめられる」と説明する。同氏は、「しかし、全ての患者が初診時にレントゲン検査を受けられるわけではない。それが、臨床医がいまだに患者に細菌感染の証拠がないにもかかわらず抗菌薬を処方し続けている理由なのかもしれない」とジョージタウン大学のニュースリリースの中で述べている。 今回の研究では、咳または下気道感染症に一致する症状を理由に米国のプライマリケア施設または急病診療所を受診した患者718人のデータを用いて、抗菌薬の使用が下気道感染症の罹患期間や重症度に及ぼす影響を検討した。データには、対象患者の人口統計学的属性や併存疾患、症状、48種類の呼吸器病原体(ウイルス、細菌)に関するPCR検査の結果が含まれていた。 ベースライン時に対象患者の29%が抗菌薬を、7%が抗ウイルス薬を処方されていた。最も頻繁に処方されていた抗菌薬は、アモキシシリン/クラブラン酸、アジスロマイシン、ドキシサイクリン、アモキシシリンであった。このような抗菌薬を処方された患者とされなかった患者を比較した結果、抗菌薬に咳の持続期間や重症度を軽減する効果は認められないことが示された。 研究グループはさらに、検査で細菌感染が確認された患者を対象に、抗菌薬を使用した場合と使用しなかった場合での転帰を比較した。その結果、下気道感染症が治癒するまでの期間は両群とも約17日間であったことが判明した。 研究グループは、「抗菌薬の過剰使用は、危険な細菌が抗菌薬に対する耐性を獲得するリスクを高める」との懸念を示す。論文の上席著者である米ジョージア大学公衆衛生学部教授のMark Ebell氏は、「医師は、下気道感染症の中に細菌性下気道感染症が占める割合を知ってはいるが、おそらくは過大評価しているのだろう。また、ウイルス感染と細菌感染を区別する自身の能力についても過大評価していると思われる」と話す。 一方、Merenstein氏は、「この研究は、咳に関するさらなる研究の必要性を強調するものだ。咳が深刻な問題の指標になり得ることは分かっている。咳は、外来受診の理由として最も多く、年間の受診件数は、外来では約300万件、救急外来では約400万件以上に上る」と話す。その上で同氏は、「重篤な咳の症状とその適切な治療法は、おそらくはランダム化比較試験によりもっと詳しく研究される必要がある。なぜなら、今回の研究は観察研究であり、また、2012年頃からこの問題を研究したランダム化比較試験は実施されていないからだ」と述べている。

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2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチンの全額公費による接種は2024年3月31日で終了した。令和6年度(2024年度)は、秋冬期に自治体による定期接種が開始される。定期接種の対象となるのは65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人で、対象者の自己負担額は最大で7,000円となっている。なお、定期接種の対象者以外の希望者は、任意接種として全額自費で接種することとなり、2024年3月15日時点の厚生労働省の資料によると、接種費用はワクチン代1万1,600円程度と手技料3,740円で合計1万5,300円程度の見込みとなっている1)。この状況を踏まえ、医師のこれまでのコロナワクチン接種状況と、今後の接種意向を把握するため、主に内科系の会員医師1,011人を対象に『2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート』を4月1日に実施した。 Q1では、コロナの診療に現在携わっているかについて聞いた。「診療している」が79%、「診療していない」が21%だった。年代別で「診療している」と答えた割合は、40代(86%)、60代(83%)、30代(81%)の順に多かった。診療科別では、血液内科(94%)、呼吸器内科(94%)、救急科(92%)、総合診療科(90%)、腎臓内科(88%)、神経内科(88%)、内科(85%)、小児科(83%)、消化器内科(81%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(80%)、臨床研修医(80%)の順に多かった。年齢が低い医師ほど、コロナに感染した割合が高い Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を聞いた。感染したことがある医師は全体の45%、感染したことがない/感染したかわからない医師は55%であった。感染したことがある医師は年齢が低いほど、感染した割合が高く、20代は60%、30代は55%、40代は51%、50代は44%、60代は35%、70代以上は24%だった。臨床数別では、病床数が多いほうが感染した医師の割合が高く、20床以上で感染したのは49%、0~19床では34%だった。また、コロナ診療状況別では、コロナを診療している医師では47%、診療していない医師では37%に感染歴があった。昨年は20~40代の接種率が50%弱 Q3では、2023年秋冬接種でのXBB.1.5対応ワクチンの接種状況を聞いた。全体では「接種した」が58%、「接種していない」が42%だった。年代別で「接種した」と答えた割合は、多い順に70代以上(77%)、60代(72%)、50代(61%)、20代(50%)となり、30代(45%)と40代(48%)は50%未満であった。コロナ診療状況別の接種率は、診療している医師は62%、診療していない医師は46%であった。前年の傾向を引き継ぎ、接種する人と接種しない人の二極化進む Q4では、2024年度にコロナワクチンを接種する予定かどうかを聞いた。全体では「接種する予定」が33%、「接種する予定はない」が41%、「わからない」が26%となった。年代別では、「接種する予定」と答えた割合が過半数となったのは70代以上(56%)のみで、ほかは多い順に60代(44%)、50代(31%)、40代(28%)、20代(28%)、30代(23%)であった。30代では「接種する予定はない」が54%となり過半数を占めた。2023年コロナワクチン接種状況別で、2023年に接種した人では「2024年度に接種する予定」が53%、「2024年度に接種する予定はない」が16%となった。対して、2023年に接種していない人では、「接種する予定」が6%、「接種する予定はない」が74%となり、今回のアンケートで最も顕著な差が認められ、医師のなかでもコロナワクチンを接種する人と接種しない人の二極化が進んでいることがわかった。 Q5では、自身が受ける2024年度のコロナワクチンの費用は、病院負担か自己負担のどちらになるか、これまでのインフルワクチンなどの対応を踏まえ推測を交えて聞いた。「おそらく全額病院負担」が22%、「おそらく一部自己負担」が22%、「おそらく全額自己負担」が23%、「わからない」が33%となり、全体的に均等な割合となった。2024年度にワクチンを接種する予定の人のうち「全額病院負担」35%、「一部自己負担」29%、「全額自己負担」16%だったのに対し、接種する予定はない人は「全額病院負担」12%、「一部自己負担」20%、「全額自己負担」30%であった。ワクチンの必要性や高額な治療薬について、患者にどう説明するか Q6の自由回答のコメントでは、新型コロナに関して現在困っていることや知りたい情報を聞いた。主な回答は以下のとおり。ワクチンについて・ワクチンで感染予防が成り立たないのは明白。ただし重症予防は十分成り立っていたと思うので、高齢者と持病多い人は無料で受けられるようにしてほしい(40代、循環器内科)・接種の必要性をよく質問されるが、正直な所、自分も勧めてよいのか迷っている(40代、小児科)・今後新たに使用可能となるワクチンの種類とその効果など(60代、内科)・公費負担が終了すると被接種者は減少すると思われるが、今後の流行予測は?(70代以上、内科)・医療従事者のワクチン接種費用について(50代、内科)治療薬について・抗ウイルス薬の値段が高い事の説明をどうするか(60代、内科)・コロナ治療薬の処方が減り、対症療法が増えると思う(70代以上、内科)・抗ウイルス薬の適応と思われる患者さんが、高額のため投薬拒否された時のことを考えると頭が痛い(50代、消化器内科)流行状況、院内対策などについて・現在の感染状況の情報発信が少なくなり、新型コロナ感染症に対する世間の認識が乏しくなり、感染増加を招いていること(40代、呼吸器内科)・感染対策の立場として、職場での接種をどうするか悩んでいる(40代、感染症内科)・発熱外来の体制に悩んでいる(30代、呼吸器内科)・後遺症に関する診断(40代、呼吸器内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート

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新型インフルエンザ、新型コロナ両パンデミックは世界人口動態にいかなる影響を及ぼしたか?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 米国・保健指標評価研究所(IHME)のSchumacher氏を中心とするGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study (GBD) 2021(GBD-21と略記)の研究グループは、1950年から2021年までの72年間に及ぶ世界各国/地域における年齢/性差を考慮した人口動態指標に関する膨大な解析結果を発表した。GBD-21では、72年間における移住、HIV流行、紛争、飢餓、自然災害、感染症などの人口動態に対する影響を解析している。世界の総人口は1950年に25億であったものが2000年には61億、2021年には79億と著明に増加していた。世界の人口増加は2008年から2009年に最大に達し、それ以降はプラトー、2017年以降は減少傾向に転じている。本論評では、GBD-21に示された解析結果を基に、人類の人口動態に多大な影響を及ぼしたと予想される2009~10年の新型インフルエンザ(2009-H1N1)と2019年末から始まった新型コロナ(severe acute respiratory syndrome coronavirus-2:SARS-CoV-2)両パンデミックの影響に焦点を絞り考察する。新型インフルエンザ・パンデミックの世界人口動態に及ぼした影響 20世紀から21世紀にかけて発生したA型インフルエンザ・パンデミックには、1918年のスペイン風邪(H1N1、致死率:2%以上)、1957年のアジア風邪(H2N2、致死率:0.8%)、1968年の香港風邪(H3N2、致死率:0.5%)、2009年の新型インフルエンザ(2009-H1N1、致死率:1.4%)が存在する。2009-H1N1は、2009年4月にメキシコと米国の国境地帯で発生したが1年半後の2010年8月には終焉した。2009-H1N1は、北米鳥H1、北米豚H1N1、ユーラシア豚H1N1、ヒトH3N2由来のRNA分節が遺伝子交雑(再融合)を起こした特異的な4種混合ウイルスである。2009-H1N1は8個のRNA分節を有するが、そのうち5個は豚由来、2個は鳥由来、1個がヒト由来であった。 GBD-21で提示された世界の人口動態データは1950年以降のものであるので、スペイン風邪を除いたアジア風邪、香港風邪、2009-H1N1によるパンデミックの世界人口動態に対する影響を解析することができる。GBD-21の解析結果を見る限り、世界の総人口、平均寿命、小児死亡率、成人死亡率などにおいて各インフルエンザ・パンデミックに一致した特異的変動を認めなかった。 2009-H1N1によるパンデミック時のPCRを中心とする検査確定致死率は1.4%であり、1950年以降に発生したインフルエンザ・パンデミックの中では最も高い。にもかかわらず、2009-H1N1が世界の人口動態に有意な影響を及ぼさなかったのは、それまでの季節性インフルエンザに対して開発された抗ウイルス薬オセルタミビル(商品名:タミフル、内服)とザナミビル(同:リレンザ、吸入)が2009-H1N1に対しても有効であったことが1つの要因と考えられる。宿主細胞内で増殖したインフルエンザが生体全体に播種するためにはウイルス表面に発現するNeuraminidase(NA)が必要であり、抗ウイルス薬はNAの作用を阻害しウイルス播種を阻止するものであった。2009-H1N1のNAはユーラシア豚由来であったが、ヒト型季節性インフルエンザに対して開発された抗ウイルス薬は2009-H1N1の播種を抑制するものであった。有効な抗ウイルス薬が存在したことが2009-H1N1の爆発的播種を阻止し、パンデミックの持続を1年半という短期間に限定できたことが2009-H1N1によるパンデミックによって世界の人口動態が著明な影響を受けなかった要因の1つであろう。本邦では2009-H1N1パンデミック時に抗ウイルス薬が臨床現場で積極的に使用され、その結果として、本邦の2009-H1N1関連致死率が先進国の中で最低に維持されたことは特記すべき事実である。 2009-H1N1パンデミックは1年半という短い期間で終焉したので、パンデミック期間中に予防ワクチンの問題が積極的に議論されることはなかった。しかしながら、2010年以降、2009-H1N1は従来のA型季節性インフルエンザであったソ連株H1N1を凌駕し季節性A型インフルエンザの主要株となった。それに伴い、2015年以降、A型の2009-H1N1株とH3N2株、B型の山形系統株とビクトリア系統株を標的とした4価ワクチンが予防ワクチンとして導入された。 上記以外に20世紀後半から21世紀にかけて高病原性鳥インフルエンザH5N1(1997年発生、致死率:60%)、高病原性鳥インフルエンザH7N9(2013年発生、致死率:30%)などが注目された時期もあったが、これらのウイルスのヒトへの感染性は低く人間界でパンデミックを惹起するものではなかった。新型コロナ・パンデミックの世界人口動態に及ぼした影響 SARS-CoV-2は、2019年末に中国・武漢から発生した野生コウモリを自然宿主とする新たなコロナウイルスである。WHOは2020年1月に世界レベルで懸念される公衆衛生上の“緊急事態宣言”を新型コロナに対して発出した。WHOの緊急事態宣言は2023年5月に解除された。すなわち、新型コロナの緊急事態宣言は新型インフルエンザのパンデミックに比べて長く、3年半持続したことになる。WHOは新型コロナ感染症に対して“パンデミック”という表現を正式には用いていないが、本論評では新型インフルエンザとの比較のため“緊急事態宣言”を“パンデミック”と置き換えて記載する。 ヒトに感染し局所的に健康被害をもたらしたコロナウイルスには、SARS-CoV-2以外に2002年のキクガシラコウモリを自然宿主とするSARS-CoV(致死率:9.6%)と2012年発生のヒトコブラクダを自然宿主とするMERS-CoV(Middle East respiratory syndrome coronavirus、致死率:34%)が存在する。しかしながら、これらのコロナウイルスのヒトへの感染性は低く、人間界でパンデミックを起こすものではなかった。 GBD-21の解析データによると、2020年と2021年の2年間における世界の推定総死亡者数は1億3,100万人、うち新型コロナに起因するものが1,590万人であった。WHOから報告されたPCRを中心とした検査確定新型コロナによる世界総死亡者数は、2024年3月の段階で704万人であり、2021年末ではこの値より有意に少ない死亡者数と考えられ、GBD-21で提出された推定値と大きく乖離していることに注意する必要がある。GBD-21の死亡者数データにはウイルス感染の確定診断がなされていない症例が含まれ、死亡者数の過大評価、逆にWHOの報告は厳密であるが故に死亡者数が過小評価されている可能性がある。両者の中間値が新型コロナによる死亡者数の真値に近いのかもしれない。 以上のようにGBD-21の報告には問題点が存在するが、本報告が提出した最も重要な知見は、2020年から2021年の2年間における5歳から25歳未満の群(小児、青少年、若年成人)の死亡率が他年度の値と同等であったのに対し、25歳以上の成人死亡率が明確に増加していたことを示した点である。以上の解析結果は、新型インフルエンザ・パンデミックとは異なり、新型コロナ・パンデミックは世界の人口動態、とくに、成人の人口動態に重要なインパクトを与えたことを意味する。 新型コロナの遺伝子変異は活発で、2020年度内は武漢原株と武漢原株のS蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に変異したD614G株が中心であった。2021年にはアルファ株(英国株)、ベータ株(南アフリカ株)、ガンマ株(ブラジル株)、デルタ株(インド株)と変異/進化を繰り返し、2022年以降はオミクロン株が中心ウイルスとなった。以上の変異株はウイルスが生体細胞に侵入する際に重要なウイルスS蛋白の量的/質的に異なる遺伝子変異によって特徴付けられる。2024年現在、オミクロン株から多数の派生株が発生している(BA.1、BA.2、BA.4/5、BQ.1、BA.275、XBB.1.5など)。すなわち、GBD-21に示されたデータは武漢原株からデルタ株までの影響を示すものであり2022年以降のオミクロン株による影響は含まれていない。先進国の疫学データは、デルタ株最盛期まではウイルスの変異が進むほど新型コロナの病原性が上昇していたことを示唆している。すなわち、GBD-21に示された2020年を含む2年間における世界全体での成人死亡率の有意な上昇は、武漢原株からデルタ株に至るウイルスによってもたらされた結果である。 本邦独自のデータを基に考察すると(厚生労働省:新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード、2022年3月2日)、デルタ株時代の致死率が4.25%であったの対し、オミクロン株初期の致死率は0.13%と有意に低値であった。しかしながら、オミクロン株初期における年齢別死亡率は、30歳未満の群で低いのに対し30歳以上の群では有意に高く、GBD-21で示されたデルタ株最盛期までの傾向と一致した。オミクロン株最盛期における世界の年齢別死亡率がどのような動態を呈するかは興味深いものであり、2022年以降の世界人口動態に関する解析が待たれる。 新型コロナの変異に伴う感染性と病原性の増強は、ウイルス自体の性状変化に起因するものであることは間違いない。しかしながら、それらを修飾した因子として、抗ウイルス薬、予防ワクチンの開発遅延の問題を考慮する必要がある。人類の歴史にあって、コロナが世界的規模の健康被害をもたらしたのは2019年以降のパンデミックが初めてであった。そのため、パンデミック発症時点では新型コロナに特化した抗ウイルス薬、予防ワクチンの開発はほぼ“ゼロ”の状態であった。しかしながら、その後、多数の抗ウイルス薬、予防ワクチンが非常に短期間の間に開発が進められた。抗ウイルス薬の1剤目として、2020年5月、米国FDAはエボラ出血熱に対して開発されたRNA polymerase阻害薬レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注)の新型コロナに対する緊急使用を承認した。2剤目として、2021年11月、英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)はRNA依存RNA polymerase阻害薬モルヌピラビル(同:ラゲブリオカプセル、内服)を承認した。3剤目として、2021年12月、米国FDAは3CL protease(Main protease)阻害薬であるニルマトレルビル・リトナビル(同:パキロビッドパック、内服)の緊急使用を承認した。上記3剤は、少なくとも初期のオミクロン株(BA.1、BA.2)に対しても有効であった。上記3剤に加え、本邦ではニルマトレルビル・リトナビルと同様に3CL protease阻害薬であるエンシトレルビル(同:ゾコーバ、内服)が、2022年11月、緊急使用が承認された。いずれにしろ、GBD-21のデータ集積時に使用できた主たる抗ウイルス薬はレムデシビルのみであった。 新型コロナに対する予防ワクチンも2020年初頭から大車輪で開発が進められ、遺伝子ワクチン、蛋白ワクチン、不活化ワクチンなど170種類以上のワクチンがふるいに掛けられた。それらの中で現在のオミクロン株時代にも生き残ったワクチンは2種類のmRNAワクチンであった(ファイザー社のBNT162b2系統[商品名:コミナティ系統]とモデルナ社のmRNA-1273系統[同:スパイクバックス系統])。話を簡単にするため本邦における成人に対するmRNAワクチンについてのみ考えていくと、武漢原株対応1価ワクチンに対する厚労省の認可は2021年春、オミクロン株BA.4/5対応2価ワクチン(武漢原株+BA.4/5)に対する認可は2022年秋、オミクロン株XBB.1.5対応1価ワクチンの認可は2023年夏であった。GBD-21に示されたデータは武漢原株対応1価ワクチンが使用された時期のものであり、デルタ株に対する予防効果は十分なものではなかった。すなわち、GBD-21のデータ集積がなされた2021年まででは、その時期の優勢株(アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株)の強い病原性に加え、抗ウイルス薬、予防ワクチンが共に不十分であったこともデータの修飾因子として作用していた可能性を否定できない。

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