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帯状疱疹生ワクチン、認知症を予防か/JAMA

 米国・スタンフォード大学のMichael Pomirchy氏らは、オーストラリアにおける準実験的研究の結果、帯状疱疹(HZ)ワクチンの接種が認知症のリスクを低下させる可能性があることを示した。オーストラリアでは、全国的なワクチン接種プログラムにおいて2016年11月1日から70~79歳を対象に弱毒HZ生ワクチンの無料接種を開始。同時点で1936年11月2日以降に生まれた人(2016年11月1日時点で80歳未満)が対象で、それ以前に生まれた人(80歳になっていた人)は対象外であったことから、著者らは、年齢がわずかに異なるだけで健康状態や行動は類似していると想定される集団を比較する準実験的研究の利点を活用し、HZワクチン接種の適格基準日である1936年11月2日の前後に生まれた人について解析した。結果を踏まえて著者は、「先行研究であるウェールズでの知見を裏付ける結果であり、認知症に対するHZワクチン接種の潜在的利益には因果関係がある可能性が高いエビデンスを提供するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年4月23日号掲載の報告。誕生日で分かれたワクチン接種適格者と不適格者の、認知症新規診断率を比較 研究グループは、オーストラリアにおけるプライマリケアの電子カルテ情報を提供している医療情報会社「PenCS」のデータを用い、2016年11月1日時点で50歳以上で、1993年2月15日~2024年3月27日にプライマリケア65施設を受診した患者10万1,219例を対象に、認知症の新規診断とHZワクチン接種との関連について解析した。この65施設は、PenCSソフトウェアを使用しており、電子カルテのデータを研究に使用することに同意した施設である。 主要アウトカムは、追跡期間中(2016年11月1日~2024年3月27日)に新たに診断された認知症であった。回帰不連続(RD)デザインを用い、HZワクチン接種の生年月日適格基準である1936年11月2日以降に生まれた接種適格者と、それ以前に生まれた接種不適格者を比較した。RDデザインでは、閾値周辺の帯域に分析を制限することに加えて、閾値(1936年11月2日)に最も近い日に生まれた人に最も高い重みが割り当てられる。追跡期間7.4年間において、接種適格者で認知症診断確率が1.8%ポイント低い 10万1,219例のうち52.7%が女性で、2016年11月1日時点の平均年齢は62.6歳(SD 9.3)であった。このうち、主要解析の解析対象集団(平均二乗誤差の最適帯域である1936年11月2日の前後482週間に生まれた人)は1万8,402例で、54.3%が女性で、平均年齢は77歳(SD 4.7)であった。これら集団の接種適格者と不適格者で、ベースラインにおける過去の予防的医療の利用状況や慢性疾患既往歴に差はなかった。 追跡期間においてHZワクチン接種を受ける確率は、適格基準日後1週間に生まれた接種適格者では、基準日前の1週間に生まれた接種不適格者と比べて16.4%ポイント(95%信頼区間[CI]:13.2~19.5、p<0.001)高いと推定された。両集団は、HZワクチン接種確率を除けば、肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、降圧薬またはスタチンの使用や、HZワクチン以外のワクチン接種などの他の予防医療サービス利用の確率は類似していた。 追跡期間7.4年間に新たに認知症と診断される確率は、接種適格者では不適格者より1.8%ポイント(95%CI:0.4~3.3、p=0.01)低かった。接種適格性について、他の予防医療サービスを受ける確率や、認知症以外の慢性疾患の診断を受ける確率への影響はみられなかった。

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ICU患者への生命維持装置の使用と転帰、2014~23年の動向/JAMA

 2014~23年の10年間に、米国の集中治療室(ICU)入室患者では院内死亡率とICU在室期間が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期に増加したが、その後はパンデミック前の水準に戻り、パンデミック前と比較して機械換気を受けるICU患者が減少したものの、昇圧薬の投与を要する患者は3倍に増加したことが、米国・ペンシルベニア大学のEmily E. Moin氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年4月14日号で報告された。ICU入室経験のある入院患者の10年間の後ろ向きコホート研究 研究グループは、COVID-19のパンデミック前・中・後における米国の救命救急診療の疫学的状況を描出する目的で後ろ向きコホート研究を行った(筆頭著者[Moin氏]は米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。 解析には、2014年1月1日~2023年12月31日の10年間に、米国の54のヘルスシステムからEpic Cosmos(2億6,200万例以上の医療記録を擁する地域共同ヘルスシステム)に登録された18歳以上の入院患者で、少なくとも1回のICU入室経験を有する集団のデータを用いた。 解析には、2014年1月1日~2023年12月31日の10年間に、米国の54のヘルスシステムからEpic Cosmos(2億6,200万例以上の医療記録を擁する地域共同ヘルスシステム)に登録された18歳以上の入院患者で、少なくとも1回のICU入室経験を有する集団のデータを用いた。COVID-19陰性・陽性例ともパンデミック期に院内死亡率上昇 ICU入室を含む入院345万3,687件を解析の対象とした。10年間の入院におけるICU治療の割合は15.3%で、2014年の15.0%から2023年には14.8%に低下した(差:0.2%ポイント[95%信頼区間[CI]:0.2~0.3])。全体の年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:53~75)、男性が55.3%で、黒人が17.3%、ヒスパニック系またはラテン系が6.1%であり、院内死亡率は10.9%であった。 補正後院内死亡率は、パンデミック期間中にCOVID-19陰性例(補正後オッズ比[aOR]:1.3[95%CI:1.2~1.3])、同陽性例(aOR:4.3[95%CI:3.8~4.8])のいずれにおいても上昇したが、2022年の半ばまでにベースラインの状態に戻った。 全体のICU在室期間中央値は2.1日(IQR:1.1~4.2)であり、パンデミック期にはCOVID-19陰性例(2.1日)に比べ同陽性例(4.1日)で延長していた(差:2.0日[95%CI:2.0~2.1])。また、パンデミック後のICU在室期間中央値は2.2日(IQR:1.1~4.3)と、パンデミック前と比較して長かった(差:0.1日[95%CI:0.1~0.1])。機械換気の使用割合はベースラインよりも低下 侵襲的機械換気の使用割合は、パンデミック前の23.2%(95%CI:23.1~23.2)から、パンデミック期には25.8%(25.8~25.9)に上昇し、その後は22.0%(21.9~22.2)とパンデミック前のベースラインの値よりも低くなった。一方、ICU在室中の昇圧薬の使用率は、2014年の7.2%から2023年には21.6%へと大幅に増加した。 ICU在室中に昇圧薬も侵襲的機械換気も使用しなかった患者の割合は、パンデミック前に72.5%(95%CI:72.4~72.5)であったのに対し、パンデミック期には65.1%(65.0~65.2)に低下し、その後も66.7%(66.5~66.8)と低下した状態が続いた。 著者は、「本研究の結果は、COVID-19のパンデミック期におけるICU患者の死亡率は、COVID-19への罹患の有無にかかわらず増加し、とくにCOVID-19罹患の急増期に顕著であったことを示しているが、これにはさまざまな潜在的な原因が考えられる。また、これらの結果は、特定の地域やメディケア受給者ではパンデミック期にCOVID-19陰性例の院内死亡率が上昇したとの先行研究の知見を広げるものである。これは、ICU治療の恩恵を受けられたはずの入院患者のICU治療へのアクセスが低下したためと推測されているが、本研究ではICU治療を受けた陰性例でも死亡率が上昇していた」と考察している。

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帯状疱疹ワクチンで認知症リスク20%低下/Nature

 帯状疱疹ワクチンは、痛みを伴う発疹の予防だけでなく、認知症の発症から高齢者を守る効果もあるようだ。新たな研究で、英国のウェールズで帯状疱疹ワクチンが利用可能になった際にワクチンを接種した高齢者は、接種しなかった高齢者に比べて認知症の発症リスクが20%低いことが示された。米スタンフォード大学医学部のPascal Geldsetzer氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に4月2日掲載された。 帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスでもある水痘・帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる。このウイルスは、子どもの頃に水痘に罹患した人の神経細胞内に潜伏し、加齢や病気により免疫力が弱まると再び活性化する。帯状疱疹ワクチンは、高齢者の水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫反応を高め、潜伏中のウイルスが体表に現れて帯状疱疹を引き起こすのを防ぐ働きがある。しかし、最近の研究では、特定のウイルス感染が認知症リスクを高める可能性が示唆されていることから、Geldsetzer氏らは、帯状疱疹ワクチンにも脳を保護する効果があるのではないかと考えた。 このことを検討するためにGeldsetzer氏らは、2013年9月1日に高齢者に対する帯状疱疹ワクチンの接種が開始されたウェールズに目を向けた。当時はワクチン(Zostavax)の供給量が限られていたため、このときの接種対象者は1933年9月2日以降に生まれた79歳の人に限定され、接種可能な期間も1年間に限られていた。開始時点で80歳以上だった人は、生涯にわたって接種対象外とされた。しかし、この規制が、ワクチンの影響を検証するランダム化比較試験の条件を自ずと生み出したと研究グループは指摘する。Geldsetzer氏らは、帯状疱疹ワクチン接種開始の直後に80歳に達した接種対象者(接種群)とワクチン接種直前に80歳に達した接種対象外の高齢者(1933年9月2日より前に生まれた人、対照群)を7年間追跡し、認知症の発症について比較した。 その結果、接種群では対照群に比べて、追跡期間中に新たに認知症の診断を受ける確率が3.5パーセントポイント低いことが示された。これは、接種群では対照群と比較して、認知症の相対的なリスクが20%低下したことに相当する。この効果は、教育レベルや糖尿病、心臓病、がんなどの慢性疾患など、認知症リスクに影響を与え得る因子を考慮した解析でも変わらず認められた。ワクチン接種のこのような保護効果は、男性よりも女性で顕著だった。さらに、イングランドとウェールズの合算人口を対象にした別のデータを使った検討でも同様の結果が確認された。 Geldsetzer氏は、「本研究で確認された兆候は非常に強力かつ明確な上に、持続的でもあった」と話す。ただし、なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症を予防するのかは明らかになっていない。研究グループは、ワクチンが免疫システム全体を強化するか、あるいは特に水痘・帯状疱疹ウイルスが脳の健康に及ぼす未知の影響を防ぐことで、脳を保護する可能性があると推測している。 さらに、研究グループは、現時点では米国でのみ入手可能な最新のワクチンであるShingrixが、今回の研究で検討されたZostavaxと同様の認知症予防効果をもたらすのかどうかも不明だと話す。Zostavaxは弱毒化された水痘・帯状疱疹ウイルスを用いた生ワクチンであるのに対し、Shingrixはウイルスの特定のタンパク質のみを利用した遺伝子組み換え不活化ワクチンである。研究グループによると、Shingrixは水痘・帯状疱疹ウイルスに対してZostavaxより効果的だが、認知症リスクへの影響はZostavaxと異なる可能性があるという。 Geldsetzer氏は、本研究で得られた知見がきっかけとなって、Shingrixの認知症予防効果を検討する研究が実施されるようになることに期待を示している。同氏は、「少なくとも、今持っている資源の一部を使って帯状疱疹ワクチンと認知症との関連に関して研究を進めることで、治療と予防の面で画期的な進歩につながる可能性がある」と話している。

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百日咳ってどんな病気?

百日咳ってどんな病気?• 「百日咳菌」への感染によって起こり、飛沫感染や接触感染が主な感染経路です• 名前のとおり激しい咳を伴う病気で、いずれの年齢でもかかりますが、1歳以下、とくに生後6ヵ月以下の乳児では重症化や、まれに死に至ることもあり注意が必要です主な症状予防するには?経過は3期に分けられ、全体で約2~3ヵ月で回復するとされていますワクチン接種により、罹患リスクを80~85%程度減らすことができると報告されています1.カタル期(約2週間持続):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります5種混合ワクチン:0~1歳児の定期接種として導入されている5種混合ワクチンは、百日咳を含む5つの感染症を予防するワクチンですけいがい2.痙咳期(約2~3週間持続):特徴的な発作性けいれん性の咳(短い咳が連続的に起こり、息を吸う時にヒューという音が出る)になります(夜間に悪化することが多い)。乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ(顔や唇、爪の色が紫色に見えること)、けいれん、呼吸停止と進展することがあります3.回復期:激しい咳は次第に減衰します。成人では咳が長期にわたって持続する場合がありますが、やがて回復に向かいます初回接種:生後2~7ヵ月に至るまでの間を標準的な接種期間として20日以上(標準的には20~56日まで)の間隔をおいて3回接種します追加接種:初回接種終了後6ヵ月以上(標準的には6~18ヵ月まで)の間隔をおいて1回接種します※ワクチンによる予防効果は4~12年で減弱すると報告されており、接種から時間が経つことで感染することがあります。ワクチン未接種の新生児・乳児の感染源とならないよう注意が必要です出典:厚生労働省HP「百日咳」「5種混合ワクチン」JIHS感染症情報提供サイト「百日咳」Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第240回 百日咳感染者、過去最多を更新 10代と乳幼児中心に拡大/厚労省

<先週の動き> 1.百日咳感染者、過去最多を更新 10代と乳幼児中心に拡大/厚労省 2.2週間以上咳なら早期受診を、マンガ喫茶で結核集団感染の注意喚起/千葉県 3.肺がん検診指針19年ぶり改訂、重喫煙者には低線量CTを推奨/国立がん研究センター 4.無床診療所の高利益にメス、2026年度報酬改定に向けて提言/財政審 5.病床削減支援、民間優先へ方針転換 自治体病院は対象外に/厚労省 6.大学病院への財政支援強化へ、医師養成・研究支援策を整理/文科省 1.百日咳感染者、過去最多を更新 10代と乳幼児中心に拡大/厚労省百日咳の流行が全国で急拡大している。国立健康危機管理研究機構(JIHS)と厚生労働省によると、4月7~13日の1週間で全国の感染者数は1,222人に達し、現在の統計(2018年~)開始以降で最多を記録している。10代が694人、0~9歳が350人と、若年層中心に広がっている。今シーズンの累積患者数は7,084人となり、すでに昨年(4,054人)を大幅に上回った。百日咳は、激しいけいれん性の咳が特徴。とくに生後6ヵ月未満の乳児では無呼吸や肺炎、脳症を併発し、致死率は0.6%と高い。3月以降感染者数は急増し続け、全国で耐性菌(MRBP株)の報告も増加。中国、韓国などで流行中の株と類似しており、コロナ後の国際往来再開が一因とみられる。地域別では新潟県(99人)、東京都(89人)、兵庫県(86人)などで多発。新潟や大阪、福岡でも過去最多水準を更新している。新潟県ではすでに年間最多だった2019年(499人)を超え、今年550人を報告。大阪府では1週間で110人、福岡県でも102人と、感染拡大が止まらない。対策としては、生後2ヵ月からの定期ワクチン接種の徹底に加え、11~12歳での追加接種が推奨される。日本小児科学会は、乳児への感染を防ぐため、兄姉や家族、とくに妊婦のワクチン接種も勧めている。妊婦が接種すれば胎児に抗体が移行し、生後数ヵ月間は防御効果が期待できる。感染対策はワクチンに加え、手洗いやマスク着用、咳エチケットの徹底が基本となる。長引く咳症状があれば、早期受診を促し、適切な診断と対応が求められる。耐性株による感染拡大にも注意が必要であり、今後も動向を注視した上で地域の流行状況に応じた柔軟な対応が望まれる。 参考 1)百日せき 感染状況MAP(NHK) 2)百日せき患者数 4月13日までの1週間1,222人 3週連続で過去最多(同) 3)「百日ぜき」急増 乳児死亡例も 妊婦や家族はワクチン接種も選択肢(毎日新聞) 4)「百日せき」の感染者数、3週連続で過去最多 直近は1,222人 中国からの流入か(産経新聞) 2.2週間以上咳なら早期受診を、マンガ喫茶で結核集団感染の注意喚起/千葉県千葉県は4月25日、習志野保健所管内の漫画喫茶において、利用者と従業員計6人が結核に感染し、うち4人が発病した集団感染事例を確認、厚生労働省に報告した。発端は昨年7月、長期利用していた40代男性が肺結核と診断されたことに始まる。その後、接触者15人を対象に健康診断を実施したところ、今年1月以降に感染者5人、発病者3人が確認された。さらに調査を拡大し、新たに感染者1人、発病者1人がみつかり、合計6人の感染、4人の発病に至った。発病者のうち1人は救急搬送され、現在も入院中であるが、全員適切な治療を受け、快方に向かっている。結核は、同一感染源により2家族以上、または20人以上に感染が広がった場合、発病者1人を感染者6人分と換算して集団感染と認定される。今回の事例はこの基準に該当した。千葉県内では令和6年に493人が新規に結核登録されており、集団感染は昨年に続き2年連続となる。県では、結核の初期症状が風邪に似ているため、2週間以上咳が続く場合には速やかな医療機関受診を呼びかけている。 参考 1)漫画喫茶で結核の集団感染、長期利用の40代男性ら5人確認…千葉・習志野保健所管内(読売新聞) 2)千葉で結核集団感染 昨年に漫画喫茶で広がり6人感染 2週間以上続く咳は医療機関へ(産経新聞) 3)漫画喫茶で結核集団感染 習志野保健所管内、利用者と従業員の計6人(千葉日報) 3.肺がん検診指針19年ぶり改訂、重喫煙者には低線量CTを推奨/国立がん研究センター国立がん研究センターは2025年4月25日、19年ぶりに改訂した「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン 2025年度版」を公表した。改訂では、喫煙指数600以上(1日平均喫煙本数×喫煙年数)の50~74歳の重喫煙者を対象に、年1回の低線量CT検査を推奨、従来の胸部X線検査と喀痰細胞診の併用は、任意型検診も含め非推奨とされた。改訂の背景には、欧米でのランダム化比較試験(RCT)やメタ解析により、低線量CT検査が肺がんによる死亡リスクを約16%低下させる効果が確認されたことがある。一方、被曝によるがんリスク増加は否定され、標準体型の被験者に対しては線量2.5mGy以下と定義された。胸部X線検査は引き続き、40~79歳の非喫煙者、および40~49歳・75~79歳の重喫煙者に推奨される。なお、喀痰細胞診については、標的である肺門部扁平上皮がんの罹患率が国内で低下していることや、死亡率減少への寄与が証明できなかったため、検診としての併用は推奨されない。ただし診療行為としての喀痰細胞診は否定されていない。加熱式たばこについても、カートリッジ1本を紙巻きたばこ1本と換算して喫煙指数に加算される。禁煙して15年以内の者も対象とする。なお、非重喫煙者に対する低線量CT検診は、死亡率低減効果が不明確なため対策型検診では推奨されず、個人の判断による任意型検診に委ねることとされた。国立がん研究センターは、今後、低線量CT検診の導入にはマニュアル整備、検診体制(読影医や機器確保)、過剰診断・過剰治療への対応策が必要と指摘している。厚生労働省はこのガイドラインを踏まえ、市町村が行う住民検診への反映を検討する予定。肺がんは国内で年間約12万人が診断され、約7万5千人が死亡しており、がんによる死因の中では最多。 参考 1)有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン(2025年度版)(国立がん研究センター) 2)「重喫煙者」は年1回低線量CT検査を…国立がん研究センター、肺がん検診の指針改訂(読売新聞) 3)喫煙者は低線量CT推奨 肺がん検診指針を改定 死亡率減、06年度版以来(共同通信) 4)国がん「肺がん検診ガイドライン 2025年度版」を公開、50~74歳の重喫煙者に低線量CT検査を推奨(日経メディカル) 4.無床診療所の高利益にメス、2026年度報酬改定に向けて提言/財政審財政制度等審議会は4月23日、2026年度の診療報酬改定に向けた議論を行い、医師の都市部集中を是正するための報酬体系見直しを提言した。診療所が過剰な地域では、診療報酬を減額する一方、医療機関が不足する地域では加算措置を講じる「メリハリある改定」を求めた。とくに、無床診療所の利益率が8.6%と高水準にある点を指摘し、病院との経営状況の違いを踏まえた適正化を強調した。また、慢性疾患患者を継続的に診療する「かかりつけ医」機能を持つ医療機関への報酬体系も見直し、より質の高い医療提供を評価する仕組みを構築するよう求めた。現在一律に算定できる機能強化加算についても、廃止を含めた見直しを検討すべきと提言している。さらに、外来診療医師が過剰な地域で新規開業を希望する医師に対し、都道府県が要件を課す仕組みの強化や、要請に従わない場合の診療報酬減額措置も視野に入れる。医薬分業についても、医療機関内で薬を受け取る方が薬局より高くなる現行制度の見直しや、薬剤師による減薬提案など対人業務の評価拡充を求めた。人材紹介会社については、医療機関が高額手数料を負担している実態に懸念を示し、紹介会社の選別・規制強化も提言。持続可能な社会保障制度構築のため、限られた財源下で医療・介護費用の効率化と適正化を強く求めた。 参考 1) 財政制度等審議会財政制度分科会(財務省) 2) 財政制度等審議会 来年度の診療報酬改定に向けて議論(NHK) 3) 医師偏在「診療報酬改定で対応を」 財制審、都市部は報酬減も(日経新聞) 4) 診療所に照準、財務省「無床の利益率8.6%」めりはりある診療報酬改定求める(CB news) 5) 不適正な人材紹介会社の「排除を徹底」財務省提言 同一建物減算の強化も(同) 5.病床削減支援、民間優先へ方針転換 自治体病院は対象外に/厚労省厚生労働省は、病床削減を行う医療機関に対する医療施設等経営強化緊急支援事業(病床数適正化支援事業)において、申請数が想定(約7,000床)の7.7倍に当たる5万4,000床に達したことを受け、支援対象の条件を急遽厳格化する内示を通知した。1床当たり410万4,000円が支給されるこの制度は、地域医療の効率化を目指して病床削減を促すもので、当初は広範な適用を予定していたが、財源不足を背景に民間医療機関を優先する方針に転換し、公立病院など一般会計から繰り入れを受ける医療機関は対象外とされた。厚労省は第1次内示として7,170床分(約294億円)の配分を決定。1医療機関当たり50床を上限とし、経常赤字が続く民間医療機関を支援対象とした。公立病院などの自治体病院は大半が対象外となり、北海道では143医療機関・4,862床の申請のうち、採択は352床に止まった。留萌市立病院や室蘭総合病院など、補助金を前提に病床削減を計画していた自治体病院では、財源確保に向けた再検討が迫られている。自治体側からは「はしごを外された」「地域医療軽視だ」との反発が相次ぎ、支援対象からの排除が地域医療体制に深刻な影響を及ぼす懸念が広がっている。厚労省は6月中旬を目処に第2次内示を予定しているが、補助対象の拡大は不透明な状況だ。医療経済に詳しい識者からは「制度設計の甘さ」と「自治体病院の補助金依存体質」の両方に問題があると指摘され、地域医療のあり方を再考する契機とするべきとの声も上がっている。 参考 1) 令和7年度医療施設等経営強化緊急支援事業(病床数適正化支援事業)の内示について(厚労省) 2) 5万床超の返上申請に対して病床削減の支援対象は7,170床(日経メディカル) 3) 病床削減の申請5.4万床、想定の7.7倍に 福岡厚生労働相(日経新聞) 4) 病床減への補助 支給条件を厳格化 全国から応募殺到で厚労省 自治体病院、実質対象外に(北海道新聞) 5) 「はしごを外された」 国の唐突な補助金方針転換 憤る北海道の自治体病院(同) 6.大学病院への財政支援強化へ、医師養成・研究支援策を整理/文科省文部科学省は、4月23日に「今後の医学教育の在り方に関する検討会」を開き、大学病院の位置付けを明確化し、財政的支援を検討する整理案を示した。物価高騰による経営悪化や建設費増大に対応するため、大学病院の診療・教育・研究機能の重要性を改めて位置付け、これに応じた財政措置を求めた。また、特定機能病院の承認要件見直しに関し、地域医療を支える医師の養成・派遣体制の整備が重要と提言した。さらに、総合的な診療能力を持つ医師養成を推進するため、モデル・コア・カリキュラムの改訂により「総合的に患者・生活者をみる姿勢」を新たに資質・能力項目に追加した。一方、日本医学会連合は、大学病院教員の研究時間減少に危機感を示し、研究支援制度の拡充を求める要望書を文科省に提出した。医師の働き方改革により診療や教育の負担が増え、研究時間がさらに削減されていると指摘。バイアウト制度活用による研究時間確保や、研究補助員の充実などの支援策強化を求めた。加えて、医学生や若手医師が研究に取り組みやすくするため、早期大学院進学促進と給与保障、海外留学制度の柔軟化・拡充も提案された。これらの議論を受け、文科省は、大学病院を中心とした医師養成・地域医療強化、医学研究基盤の再構築に向けた支援策の具体化を進める方針。持続可能な医療提供体制と国際競争力ある医学研究体制の構築が急務となっている。 参考 1)第13回 今後の医学教育の在り方に関する検討会 配布資料(文科省) 2)大学病院、「位置付け明確化し財政支援」文科省が整理案(MEDIFAX) 3)大学病院での研究時間大幅減少 支援制度の整備を要望「働き方改革で拍車」医学会連合が指摘(CB news) 4)わが国の医学研究力の向上へ向けての要望書(日本医学会連合)

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熱中症の重症度が尿でわかる?

 昨年、5~9月に熱中症で搬送される人の数は過去最多を記録した。熱中症の重症度は、搬送先施設で血液検査により評価される。しかし、尿中の肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)も熱中症の重症度と相関するという研究結果が報告された。L-FABPは熱中症の生理学的重症度や予後を予測するツールになり得るという。日本医科大学救急医学教室の横堀將司氏、関西医科大学総合医療センター救急医学科の島崎淳也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月12日掲載された。 熱中症は、高温多湿環境下で体内の水分・塩分量のバランスが崩れ、体温調節機能や循環機能が破綻して発症する。熱中症に対する適切な介入と転帰の改善には重症度の迅速な評価が不可欠だが、救急外来(ER)であっても、血液検査では結果の確認に長い時間がかかる。このような背景から、熱中症の重症度の判断には、よりアクセスしやすい簡易迅速検査の開発が待たれていた。 L-FABPは、脱水による腎虚血性機能障害を反映する有望なバイオマーカーだ。近年、医療用検査キットにより、短時間でのL-FABP測定が可能になった。重度の熱中症では内臓の血流低下による虚血が伴うことから、研究グループは、その重症度を予測する指標としてこのL-FABPが適用できると考え、L-FABPの検査キットを用いた多施設の前向きコホート研究を行った。 研究には全国の三次救急医療センター10施設が参加し、2019~2021年の夏季に日本救急医学会の熱中症基準に従って「重症」と診断された、18歳以上の患者78名が組み入れられた。敗血症または感染症の疑われる患者は除外した。ERに搬送された78名の熱中症患者は、意識を取り戻す前に採血・採尿が行われた。血清サンプルは臨床検査値の測定に用いられ、多臓器不全評価(SOFA)スコア(0~24でスコアが高いほど重症度が高い)が決定された。尿サンプルは、検査キットを使用し半定性的なL-FABPの測定に用いられた。患者の転帰については、mRSスコア(0~6でスコアが高いほど予後が悪い)が用いられ、退院時、発症1カ月、発症3カ月で計測が実施された。 組み入れ時の患者の年齢は中央値で76歳、SOFAスコアは5.0(四分位範囲 IQR3.0~9.0)だった。患者はL-FABPの濃度に応じて、陰性群(N群;L-FABP<12.5ng/mL)、陽性群(P群;L-FABP≧12.5ng/mL)の2群に分けられた。 初期SOFAスコアはN群で4.0(2.0~7.0)、P群で6.0(4.0~9.3)であり、尿中L-FABP濃度が高かった群では初期SOFAスコアも高くなっていた(U検定、P=0.013)。退院時の転帰については、良好な転帰を示すmRS(0~2)の割合が、N群で62.1%、P群で38.8%であり、N群で有意に良好な転帰を示した(P=0.046)。発症後3カ月後には両群には有意な差は認められなかった(P=0.227)。なお、ROC解析により長期的な転帰を予測するためのカットオフ値は28.6ng/mL(AUC=0.732)と決定された。また、尿中L-FABP濃度と、脈拍数(r=0.300)および乳酸値(r=0.259)の間には弱い正の相関が認められた(各P<0.01)。 研究グループは、本研究について、「L-FABPの検査キットは、熱中症の重症度を予測するとともに、患者の転帰を反映するツールであることが示唆された。この検査キットは保険収載されており、侵襲性が低いことから、その有用性は高いのではないか」と述べた。また、想定される運用方法については、「搬送前に検査結果を特定することで、患者を三次救急医療センターに搬送するか否かの決定をタイムリーに行うことができるようになるだろう」と言及した。 本研究の限界点については、重症の症例に限定したこと、サンプルサイズ、高齢者が多かったことから一般化できない点などを挙げている。

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高齢糖尿病患者へのインスリン イコデク使用Recommendation公開/糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])は、4月18日に「高齢者における週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendation」(高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会作成)を公開した。 週1回持効型インスリン製剤インスリン イコデク(商品名:アウィクリ注)は、注射回数を減少させ、持続的なインスリン作用をもたらすことから、ADLや認知機能の低下により自己注射が困難な高齢患者に血糖管理が可能になると期待される。 その一方で、週1回投与という特徴から、投与調節の柔軟性には制限があり、一部の患者では低血糖が重篤化する懸念がある。 学会では使用に際し、高齢者における使用に際してはカテゴリー分類を行った上で「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」に基づき目標値を設定すること、さらに高齢者では低血糖の症状が乏しく重症低血糖を来しやすいことから『高齢者糖尿病治療ガイド』『インスリン イコデク投与ガイド』などを参考に、下記の5つの事項に留意するように示している。【高齢糖尿病患者への使用でのRecommendation】(1)適切な治療目標を設定する ADLや認知機能が低下した高齢者においては、高血糖緊急症や低血糖を避けることが優先的な目標となる。低血糖になった場合、遷延することが予想されるため、HbA1c値の治療目標は厳格すぎないよう柔軟に設定する。(2)適切なタイミングで血糖モニタリングを実施する 安全性の確保のため何らかの血糖測定が必要である。家族や介護者への教育を徹底し、低血糖時の対応や投与スケジュールの管理を習得してもらう。投与量が安定するまでの期間や、シックデイなど血糖の変動が予想される場合には持続血糖測定(CGM)や遠隔血糖モニタリングも検討する。投与後2~4日目の食前血糖値が最も下がりやすいことから、この日の血糖測定は用量調整の参考になる。(3)訪問看護や介護環境では慎重に計画する 週1回~数回の訪問看護などに依存する患者では、血糖変動を把握する機会が限られるため、慎重な投与計画が必要である。訪問看護師や介護者との連携を強化し、緊急時の対応手段を準備する。(4)感染症、術前の血糖管理など 適宜(超)速効型インスリンを併用する。連日投与のBasalインスリンに変更する場合、最後にイコデクを打ってから1~2週間の間で、朝食前血糖が180mg/dLを超えた時点でイコデクの1/7量を開始する。(5)低血糖予防の注意事項と対応 低血糖時の対応方法に習熟してもらう(必要に応じグルカゴン投与も含む)。予定外の運動をした後は低血糖に注意する。低血糖症状が1度おさまっても再発や遷延の可能性がある。食事量や質にむらがある高齢者では慎重に適応を検討する。持効型インスリンからの切り替え投与時のみ1.5倍に増量することが推奨されているが、この場合は2回目以降も増量を続けないよう注意する。高齢者においては1.5倍の初回投与を必ずしも行わない、という選択肢も考慮される。

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PPI投与量とC. difficile感染症リスクの関係~用量反応メタ解析

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用者は非使用者と比べClostridioides difficile感染症(CDI)リスクが上昇することが報告されているが、これまでのメタ解析では、用量反応的な関係についての検討は行われていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMatilda Finke氏らによる用量反応メタ解析の結果、PPI投与量とCDIリスクとの関連は、正の相関を示すことが明らかになった。Journal of Infection誌オンライン版4月14日号掲載の報告。 本研究では、PubMed、Embase、Web of Science、およびCochrane Libraryを用いて、PPIとCDIに関する縦断研究を検索した。収集されたデータは、1日当たりのPPI投与量(DDD:defined daily doses)およびPPI治療期間に基づく2つの2段階ランダム効果用量反応メタ解析にそれぞれ組み入れられた。PPI非使用者と比較した補正相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)が推定された。 主な結果は以下のとおり。・全体で15件の観察コホート研究および症例対照研究が対象となり、投与量(DDD)に基づくメタ解析に7件(n=48万3,821)、治療期間に基づくメタ解析に7件(n=51万6,441)が組み入れられた。・バイアスリスクは中程度と評価された。・プールされた用量反応推定値は線形傾向を示し、DDD10mg増加当たりのRRは1.05(95%CI:0.89~1.23)、PPIによる治療1日増加当たりのRRは1.02(95%CI:1.00~1.05)であった。・両解析において残存異質性が認められたが(I2=91.4%/DDD、I2=99.4%/治療期間)、その要因の特定には限界があった。 著者らは、リスク上昇に関与する基礎的なメカニズムやCDIリスクが増加するPPI投与量の閾値については明らかになっていないとし、PPIとCDIの用量反応関係に関する、より多くのデータを基にした研究が必要としている。

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高齢の大動脈弁狭窄症、TAVI後のダパグリフロジン併用で予後を改善/NEJM

 重症の大動脈弁狭窄症で経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を受け、心不全イベントのリスクが高い高齢患者において、標準治療単独と比較してSGLT2阻害薬ダパグリフロジンを併用すると、全死因死亡または心不全悪化の発生率が有意に改善することが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIのSergio Raposeiras-Roubin氏らDapaTAVI Investigatorsが実施した「DapaTAVI試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年4月10日号に掲載された。スペインの無作為化対照比較試験 DapaTAVI試験は、TAVIを受けた大動脈弁狭窄症の高齢患者におけるダパグリフロジン併用の有効性と安全性の評価を目的とする医師主導型の無作為化対照比較試験であり、2021年1月~2023年12月にスペインの39施設で参加者の無作為化を行った(Instituto de Salud Carlos IIIなどの助成を受けた)。 重症大動脈弁狭窄症でTAVIを受け、心不全の既往歴に加え腎不全(推算糸球体濾過量[eGFR]25~75mL/分/1.73m2)、糖尿病、左室駆出率(LVEF)<40%のうち少なくとも1つを有する患者1,222例(平均[±SD]年齢82.4±5.6歳[72%が80歳以上、7%以上が90歳以上]、女性49.4%)を対象とした。これらの患者をTAVI施行後に、標準治療に加えダパグリフロジン(10mg、1日1回)の経口投与を受ける群(605例)、または標準治療のみを受ける群(618例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、追跡期間1年の時点における全死因死亡または心不全の悪化(心不全による入院または心不全で緊急受診し利尿薬静脈内投与を受けたことと定義)の複合とした。主要アウトカムを有意に改善 全体の43.9%が糖尿病、17.0%がLVEF<40%、88.6%がeGFR 25~75mL/分/1.73m2で、平均eGFRは56.2±16.4mL/分/1.73m2であった。追跡期間中にダパグリフロジン群の103例(17.0%)が投与中止となり、標準治療単独群の43例(7.0%)が心不全以外の理由でダパグリフロジンの投与を開始した。標準治療単独群の1例が追跡不能となり主解析から除外された。 主要アウトカムのイベントは、標準治療単独群で124例(20.1%)に発生したのに対し、ダパグリフロジン群では91例(15.0%)と有意に減少した(ハザード比[HR]:0.72[95%信頼区間[CI]:0.55~0.95]、p=0.02)。 全死因死亡はダパグリフロジン群47例(7.8%)、標準治療単独群55例(8.9%)(HR:0.87[95%CI:0.59~1.28])、心不全悪化はそれぞれ57例(9.4%)および89例(14.4%)(サブHR:0.63[95%CI:0.45~0.88])で発生した。性器感染症、低血圧症の頻度が高い 非外傷性四肢切断(ダパグリフロジン群0.8%vs.標準治療単独群0.6%、p=0.72)、重症低血糖症(0.7%vs.1.3%、p=0.26)、がん(5.0%vs.3.6%、p=0.23)の発生率は両群で同程度であった。両群とも糖尿病性ケトアシドーシスの報告はなかった。 一方、性器感染症(1.8%vs.0.5%、p=0.03)および低血圧症(6.6%vs.3.6%、p=0.01)はダパグリフロジン群で高頻度だった。ダパグリフロジン群の37例(6.1%)が、有害事象により投与中止となった。 著者は、「これらの結果は、高齢患者においてSGLT2阻害薬は安全で、臨床的有益性をもたらすことを裏付けるものと考えられ、高齢患者へのSGLT2阻害薬の処方が少ない現状を考慮すると重要な知見といえるだろう」としている。

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敗血症性ショックにおけるバソプレシンの最適な開始時期(OVISS強化学習研究)(解説:寺田教彦氏)

 敗血症性ショックは「急性循環不全により細胞障害・代謝異常が重度となり、ショックを伴わない敗血症と比べて死亡の危険性が高まる状態」と定義される(『日本版敗血症診療ガイドライン2024』)。早期診断のためのスコアリングやバンドルの整備、知識の広報などのキャンペーンにより、徐々に死亡率は改善しているものの、今でも重篤な病態である。 敗血症性ショックの初期蘇生では、蘇生輸液のみで目標血圧を維持できない場合、並行して血管収縮薬の投与も行われる。世界的な診療ガイドラインを参考にすると(Evans L, et al. Crit Care Med. 2021;49:1974-1982.)、第一選択薬としてノルアドレナリンが使用されているが、ノルアドレナリンのみで血圧が保てない場合に、第二選択薬としてバソプレシンが使用されている。本邦のガイドライン『日本版敗血症診療ガイドライン2024 』においても、「CQ3-7:敗血症性ショックに対して、血管収縮薬をどのように使用するか?」に対して、ノルアドレナリン+バソプレシンと第二選択薬としてバソプレシンの使用が弱く推奨されている。バソプレシンは、高価な薬剤ではなく国内でも広く使用されているが、使用開始のタイミングについては明確な基準がなく、現場では医師や医療機関ごとに判断されているのが実情である。 世界的にもバソプレシン使用開始のタイミングに関するコンセンサスはなく、本研究では、敗血症性ショック患者の電子カルテデータを用い、強化学習によりバソプレシンの最適な開始時期を導出し、外部データセットでその有効性と死亡率低下との関連を検証した。この強化学習は、医療におけるAI応用の中でも、動的な意思決定を必要とする分野で注目されており、与えられた環境内での「行動」と「報酬」の関係を学習して最適な行動方針を導出する手法である。 本研究結果の要約は、ジャーナル四天王「敗血症性ショック、強化学習モデルのバソプレシン投与で死亡率低下/JAMA 」に記載されている。 筆者らも指摘しているとおり、バソプレシンを早期に投与することで、カテコラミンの使用量を減少させ、頻脈性不整脈や心筋虚血のリスクを軽減できる可能性があり、また、バソプレシンの相対的欠乏の補正や糸球体濾過圧の改善といった理論的な利点も期待される。本研究結果は、敗血症性ショックに対してより早期にバソプレシンを併用することで予後が改善する可能性を示唆しており、今後のRCT(Randomized Controlled Trial)による検証が期待される。さらなるエビデンスが蓄積されれば、本研究で示唆されたような「より早期の併用」が新たな治療戦略として確立される可能性がある。 加えて、敗血症性ショックに対してノルアドレナリンとバソプレシンを併用した場合、血行動態が改善すれば昇圧薬の漸減が行われる。現時点では、両薬剤を併用中の患者において、ノルアドレナリンを先に漸減することで低血圧の発生頻度が低いとされており、これに関する系統的レビューとメタアナリシスが報告されている(Song JU, et al. J Korean Med Sci. 2020;35:e8.)。今後、昇圧薬の離脱戦略においても同様の機械学習を用いた最適化手法が提示されることで、現場の診療判断をさらに支援することが期待される。

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海外番組「セサミストリート」(続編・その3)【だから男性はこだわり女性は共感するんだ!だから人差し指の長さが違うんだ!(自閉症と情緒不安定性パーソナリティ障害の起源)】Part 2

(2)女性に進化する心理―共感性一方で、男性に選ばれるのは、プレゼントを毎回あげたくなるような女性でしょう。もちろん、無事に子供を産んでもらうために、見た目や肌が美しい(感染症の兆候がない)という身体的な特徴は重要です。これに加えて、必要な女性の心理とは、どんなものでしょうか?たとえば、以下です。男性の機嫌を察知する(感受性)。男性の声や動きをまねして合わせる(同調性)。男性にスキンシップをして気を惹く(操作性)。相手にされないと涙を見せる(操作性)。相手にされないと不安になる(見捨てられ不安)。相手にされないと嫌いになる(理想化と幻滅)。相手にされないと自分の頭や体を叩くなど、なりふり構わない行動をする(自傷を含む逸脱行動)。これらは、男性からのプレゼントをより確実にもらうためのアピール行動です。そして、そのための感受性です。つまり、女性に進化した心理とは、共感性であることがわかります。この共感性とは、同調性など気に入られるためのポジティブな共感です。不安・恐怖や嫌悪感など危険を避けるためのネガティブな共感は、約3億年前に哺乳類が誕生してから子供を守るために生まれ、約2千年前に類人猿が誕生してから群れでお互いを守るためにさらに進化しました。逆に言えば、共感性が高くない女性は、プレゼントをあげたいと思われないために男性から選ばれることはなく、性淘汰されます。プレゼントをあげたいと男性から思われる原始の時代の女性たちの子孫である現代の女性たちは、当然ながら無意識にも男性からプレゼントをもらいたがります。逆に、男性は女性ほど異性からプレゼントをもらいたがりません。だからこそ、共感性はもともと女性に備わっている心理であり能力なのです。そして、男性ホルモンが低いと、相対的に女性ホルモンが高くなり、共感性が高くなるのです。逆に言えば、女性はプレゼントをもらう側なので、男性ほどシステム化を高くする必要はなかったのです。以上より、プレゼントをあげる男性とプレゼントをもらう女性は、それぞれシステム化と共感性を性選択(性淘汰)によって進化させたと結論づけることができます。逆に言えば、1つの脳に両方とも進化させる必要がなかったのでした。そもそも、脳機能(脳容量)には限度があり、空間としてだけでなく性差として局在化したと捉えることができます。だからこそ、この両者は、主に男性ホルモンをパラメーターとしてトレードオフの関係になっていることがわかります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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臓器の生物学的老化の加速は疾患リスクに影響する

 臓器の生物学的年齢(臓器年齢)は人によって異なり、臓器の老化の加速により、その臓器だけでなく、他の臓器に関連した疾患のリスクも予測できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMika Kivimaki氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Digital Health」3月号に掲載された。 Kivimaki氏らは、特定の臓器年齢の加速は、1)その臓器の疾患リスクを高めるのか、2)他の臓器に関連する加齢関連疾患や、それらの疾患の同時発症のリスクも高めるのか、を検討した。対象は、35年以上にわたり1万人以上の英国成人を追跡したホワイトホールII研究のデータから抽出した、45〜69歳の6,235人とした。対象者の血漿プロテオームの解析により9つの臓器(心臓、血管、肝臓、免疫系、膵臓、腎臓、肺、腸、脳)の年齢を推定し、同年代の人の臓器年齢との差を算出した。その後、対象者を平均19.8年間追跡し、45種類の加齢関連疾患とマルチモビディティ(多疾患併存)の発症について調査した。 年齢、性別、人種、解析対象外の臓器における年齢差を調整して解析した結果、臓器年齢の差が大きい人では、30種類の疾患のリスクが高いことが明らかになった。また、6種類の疾患は、それぞれが関連する特定の臓器の生物学的老化の加速とのみ関連していた。具体的には、臓器年齢の差が1標準偏差増加するごとに、肝臓では肝不全リスクが2.13倍、心臓では拡張型心筋症リスクが1.65倍、慢性心不全リスクが1.52倍に、肺では肺がんリスクが1.29倍に、免疫系では無顆粒球症が1.27倍、リンパ節転移リスクが1.23倍の上昇を示した。さらに、臓器年齢の差が大きいほど、複数の臓器に関連した疾患が同時に発症するリスクも上昇を示し、臓器年齢の差が1標準偏差増加するごとに同リスクは、動脈で2.03倍、腎臓で1.78倍、心臓と脳で1.52倍、膵臓で1.43倍、肺で1.37倍、免疫系で1.36倍、肝臓で1.30倍に上昇していた。 意外なことに、認知症のリスクが最も高かったのは、脳ではなく免疫系の生物学的老化の加速が見られた人だった。研究グループは、「この結果は、重度の感染症にかかりやすい人は老年期に認知症になるリスクも高いという、これまでの研究結果を裏付けるものだ」と述べている。また、「この研究結果は、炎症プロセスが神経変性疾患の発症に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆するものだ」との見方も示している。 研究グループは、「この研究は、臓器特異的な血液検査が早期の疾患リスクの特定に役立つ可能性があることを浮き彫りにしている」と述べている。Kivimaki氏は、「このような検査により、将来的には、特定の臓器に対する適切なケアが必要かどうかのアドバイスや、特定の疾患を発症するリスクが高い可能性があるとの早期警告を提供できる可能性がある」と話している。

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HBc抗体、単独陽性の解釈【1分間で学べる感染症】第24回

画像を拡大するTake home messageHBc抗体が単独で陽性である場合には、1)ウインドウ期、2)既感染(遠隔期)、3)慢性感染(潜伏HBV感染)、4)偽陽性の4つの可能性を考えよう。B型肝炎ウイルス(HBV)感染の血清学的マーカーのうち、単独のHBc抗体陽性に遭遇することがたびたびあります。一見解釈が難しそうに思えるこの結果ですが、次の4つのシナリオを考えることでしっかり理解することができます。1. ウインドウ期急性B型肝炎の回復過程で、HBs抗原が消失し、HBs抗体がまだ出現していない時期です。このHBs抗原の消失とHBs抗体の出現までの間は「ウインドウ期」と呼ばれ、HBc抗体のみ陽性となる可能性があります。この場合は、IgM型HBc抗体が陽性となることが多いです。2. 既感染(遠隔期)過去にHBVに感染し、時間の経過と共にHBs抗体が抗体価の低下によって陰性化する場合があり、HBc抗体のみが陽性となる状態です。とくに高齢者や免疫力が低下した人でみられることがあります。一度HBVに感染しているため、抗がん剤や免疫抑制薬の種類による再活性化のリスクを考慮し、HBV DNAの定期的モニタリングが推奨されます。3. 慢性感染(潜伏HBV感染)HBVに感染し、肝組織内に存在している状態です。HBs抗原が検出されない場合、通常のスクリーニングでは見逃されることがあります。HBV DNAが血清中で検出限界以下または低力価で検出されることがあります。慢性肝疾患や肝がんのリスクが増加する可能性があるため、長期的なフォローアップが必要です。4. 偽陽性近年の酵素免疫測定法(EIA)の精度向上により偽陽性率は低下していますが、自己免疫疾患での交差反応を中心に、一定の割合で発生することがあります。再検査、ほかのHBVを組み合わせることにより、次のステップにつなげることができます。以上、HBc抗体が単独陽性となった場合は、1)ウインドウ期、2)既感染(遠隔期)、3)慢性感染(潜伏HBV感染)、4)偽陽性の4つのうちのいずれかの可能性があります。患者のリスクを踏まえて適切に解釈できるよう心掛けましょう。1)Wang Q, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2017;2:123-134

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DNRを救急車で運んだの?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第5回

DNRを救急車で運んだの?PointDNRは治療中止ではない。終末期医療の最終目標は、QOLの最大化。平易な言葉で理知的に共感的に話をしよう。適切な対症療法を知ろう。症例91歳男性。肺がんの多発転移がある終末期の方で、カルテには急変時DNRの方針と記載されている。ところが深夜、突如呼吸困難を訴えたため、慌てて家族が救急要請した。来院時、苦悶様の表情をみせるもののSpO2は97%(room air)だった。研修医が家族に説明するが、眠気のせいか、ついつい余計な言葉が出てしまう。「DNRってことは、何も治療を望まないんでしょ? こんな時間に救急車なんて呼んで、もし本物の呼吸不全だったら何を期待してたんですか? 大病院に来た以上、人工呼吸器につながれても文句はいえませんよ。かといって今回みたいな不定愁訴で来られるのもねぇ。なんにもやることがないんだから!」と、ここまでまくしたてたところで上級医につまみ出されてしまった。去り際に垣間見た奥さんの、その怒りやら哀しみやら悔しさやらがない交ぜになった表情ときたらもう…。おさえておきたい基本のアプローチDo Not Resuscitation(DNR)は治療中止ではない! DNRは意外と限定的な指示で、「心肺停止時に蘇生をするな」というものだ。ということはむしろ、心肺停止しない限りは昇圧薬から人工呼吸器、血液浄化法に至るまで、あらゆる医療を制限してはならないのだ。もしわれわれが自然に想像する終末期医療を表現したいなら、DNRではなくAllow Natural Death(AND)の語を用いるべきだろう。ANDとは、患者本人の意思を尊重しながら、医療チーム・患者・家族間の充分な話し合いを通じて、人生の最終段階における治療方針を具体的に計画することだ。それは単なる医療指示ではなく、患者のQuality of Life(QOL)を最大化するための人生設計なのである。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「延命しますか? しませんか?」と最後通牒を患者・家族につきつけるのはダメ医療を提供する側だからこそ陥りやすい失敗ともいえるが、「延命治療を希望しますか? 希望しませんか?」などと、患者・家族に初っ端から治療の選択肢を突きつけてはならない。家族にしてみれば、まるで愛する身内に自分自身がとどめを刺すかどうかを決めるように強いられた心地にもなろう。患者は意識がないからといって、家族に選択を迫るなんて、恐ろしいことをしてはいないか? 「俺が親父の死を決めたら、遠くに住む姉貴が黙っているはずがない。俺が親父を殺すなんて、そんな責任追えないよぉ〜」と心中穏やかならぬ、明後日の方向を向いた葛藤を強いることになってしまうのだ。結果、余計な葛藤や恐怖心を抱かせ、得てして客観的にも不適切なケアを選択してしまいがちになる。家族が親の生死を決めるんじゃない。患者本人の希望を代弁するだけなのだ。徹頭徹尾忘れてはならないこと、それはANDの最終目標は患者のQOLの最大化だということだ。それさえ肝に銘じておけば、身体的な側面ばかりでなく、患者さんの心理的、社会的、精神的側面をも視野に入れた全人的ケアに思い至る。そして、治療選択よりも先にたずねるべきは、患者本人がどのような価値観で日々を過ごし、どのような死生観を抱いていたのかだということも自ずと明らかになろう。ANDを実践するからには、QOLを高めなければならないのだ。Point最終目標はQOLの最大化。ここから焦点をブレさせない「患者さんは現在、ショック状態にあり、昇圧剤および人工呼吸器を導入しなければ、予後は極めて厳しいといわざるを得ません」いきなりこんな説明をされても、家族は目を白黒させるばかりに違いない。情報提供の際は専門用語を避けて、できるだけ平易な言葉遣いで話すべきだ。また、人生の終末を目前に控えた患者・家族は、とにかく混乱している。恐怖、罪悪感、焦り、逃避反応などが入り組んだ複雑な心情に深く共感する姿勢も、人として大切なことだ。だが、同情するあまりにいつまでも話が進まないようでは口惜しい。実は、患者家族の満足度を高める方法としてエビデンスが示されているのは、意外にも理知的なアプローチなのだ。プロブレムを浮き彫りにするためにも、言葉は明確に、1つ1つの問題を解きほぐすように話し合おう。逆に、心情を慮り過ぎて言葉を濁したり、楽観的で誤った展望を抱かせたり、まして具体的な議論を避ける態度をとったりすると、かえって信頼を損なうことさえある。表現にも一工夫が必要だ。すがるような思いで病院にたどり着いた患者・家族に開口一番、「もはや手の施しようがありません」と言おうものなら地獄へ叩き落された心地さえしようというもの。何も根治を望んで来たわけではないのだから、「苦痛を和らげる方法なら、できることはまだありますよ」と、包括的ケアの余地があることを伝えられれば、どれだけ救いとなることだろう。以上のことを心がけて、初めて患者・家族との対話が始まるのだ。こちらにだって病状や治療方針など説明すべきことは山ほどあるのだが、終末期医療の目的がQOLの向上である以上、患者の信念や思いにしっかりと耳を傾けよう。もし、その過程で患者の嗜好を聞き出せたのならしめたもの。しかしそれも、「うわー、その考え方にはついていけないわ」などと邪推や偏見で拒絶してしまえば、それまでだ。患者の需要に応えられたときにQOLは高まる。むしろ理解と信頼関係を深める絶好の機会と捉えて、可能な限り患者本人の願いを実現するべく、家族との協力態勢を構築していこう。気持ちの整理がつくにつれ、受け入れがたい状況でも差し引きどうにか受容できるようになることもある。そうして徐々に歩み寄りつつ共通認識の形成を試みていこう。その積み重ねが、愛する人との静かな別れの時間を醸成し、ひいては別離から立ち直る助けともなるのだ。Point平易かつ明確な言葉で語り掛け、患者・家族の願いを見極めよう「DNRでしょ? ERでできることってないでしょ?」より穏やかな死の過程を実現させるためにも、是非とも対症療法の基本はおさえておこう。訴えに対してやみくもに薬剤投与と追加・増量を繰り返しているようでは、病因と戦っているのか副作用と戦っているのかわからなくなってしまうので、厳に慎みたい。その苦痛は身体的なものなのか、はたまた恐怖や不安など心理的な要因によるものなのか、包括的な視点できちんと原因を見極めるべきだ。対症療法は原則として非薬物的ケアから考慮する。もし薬剤を使用するなら、病因に対して適正に使用すること。また、患者さんの状態に合わせて、舌下錠やOD錠、座薬、貼付剤など適切な剤型を選択しよう。続くワンポイントレッスンと表で、使用頻度の高い薬剤などについてまとめてみた。ただし、終末期の薬物療法は概してエビデンスに乏しいため、あくまでも参考としていただけるとありがたい。表 終末期医療でよく使用する薬剤PointERでできることはたくさんある。適切な対症療法を学ぼうワンポイントレッスン呼吸困難呼吸困難は終末期の70%が経験するといわれている。自分では訴えられない患者も多いので、呼吸数や呼吸様式、聴診所見、SpO2などの客観的指標で評価したい。呼吸困難は不安などの心理的ストレスが誘因となることも多いため、まずは姿勢を変化させたり、軽い運動をしたり、扇風機で風を当てたりといった環境整備を試すとよいだろう。薬剤では、オピオイドに空気不足感を抑制する効果がある。経口モルヒネ30mg/日未満相当ならば安全に使用できる。もし不安に付随する症状であれば、ベンゾジアゼピンが著効する場合もある。口腔内分泌物口腔内の分泌物貯留による雑音は、終末期患者の23〜92%にみられる。実は患者本人にはほとんど害がないのだが、そのおぞましい不協和音は死のガラガラ(death rattle)とも呼ばれ、とくに家族の心理的苦痛となることが多い。まずは家族に対し、終末期に現れる自然な経過であることを前もって説明しておくことが重要だ。どうしても雑音を取り除く必要がある場合は、アトロピンの舌下滴下が分泌物抑制に著効することがある。ただし、すでに形成した分泌物には何の影響もないため、口腔内吸引および口腔内ケアも並行して実践しよう。せん妄せん妄も終末期患者の13〜88%に起こる頻発症状だ。ただし、30〜50%は感染症や排尿困難、疼痛などによる二次的なものである。まずは原因の検索とその除去に努めたい。薬剤投与が必要な場合は、ハロペリドールやリスペリドンなどの抗精神病薬を少量から使用するとよいだろう。睡眠障害睡眠障害はさまざまな要因が影響するため、慎重な評価と治療が不可欠である。まずは昼寝の制限や日中の運動、カフェインなどの刺激物を除去するといった環境の整備から取り掛かるべきだろう。また、睡眠に悪影響を及ぼす疼痛や呼吸困難などのコントロールも重要である。薬物は健忘、傾眠、リバウンドなどの副作用があるため、急性期に限定して使用する。一般的には非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロンやラメルテオンなどが推奨される。疼痛疼痛は終末期患者の50%が経験するといわれている。必ずしも身体的なものだけではなく、心理的、社会的、精神的苦痛の表出であることも多いため、常に包括的評価を心掛けるべきだ。このうち、身体的疼痛のみが薬物療法の適応であることに注意しよう。まずは潜在的な原因の検索から始め、その除去に努めよう。終末期の疼痛における環境整備やリハビリ、マッサージ、カウンセリングなどの効果は薬物療法に引けを取らないため、まずはこのような支持的療法から試みるとよいだろう。薬物療法の際は、軽度ならば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、そうでなければオピオイドの使用を検討する。ちなみに、かの有名なWHOの三段階除痛ラダーは2018年の時点でガイドラインから削除されているから注意。現在では、患者ごとに詳細な評価を行ったうえで、痛みの強さに適した薬剤を選択することとなっている。たしかに、あの除痛ラダーだと、解釈次第ではNSAIDsと弱オピオイドに加えて強オピオイドといったようなポリファーマシーを招きかねない。末梢神経痛に対しては、プレガバリンやガバペンチン、デュロキセチンなどが候補にあがるだろう。勉強するための推奨文献日本集中治療医学会倫理委員会. 日集中医誌. 2017;24:210-215.Schlairet MC, Cohen RW. HEC Forum. 2013;25:161-171.Anderson RJ, et al. Palliat Med. 2019;33:926-941.Dy SM, et al. Med Clin North Am. 2017;101:1181-1196.Albert RH. Am Fam Physician. 2017;95:356-361.執筆

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セフトリアキソンで腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症を治療できるか

 セフトリアキソン(CTRX)は尿路感染症における選択薬の1つであるが、他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較して尿中排泄率が低いという欠点がある。わが国では2023年にセフォチアム(CTM)が不足したことから、尿路感染症に対するCTRXの需要が高まっている。今回、愛知医科大学の柴田 祐一氏らが、腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症に対するCTRXと他のβ-ラクタム系抗菌薬の有効性を比較したところ、30日全死亡率は同様であった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2025年4月9日号に掲載。 本研究では、2014年7月~2024年2月に愛知医科大学病院で血液および尿培養で大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属が検出されたβラクタム系抗菌薬投与患者を後ろ向きに登録した。登録した計123例をCTRX群(CTRXを5日間以上投与)とその他のβ-ラクタム系群(アンピシリン、セファゾリン、CTM、またはセフォタキシムを5日間以上投与)に分け、年齢、チャールソン併存疾患指数、静脈内抗菌薬投与期間、経口抗菌薬への切り替え患者数、アルブミン値、白血球数、C反応性蛋白、体温、ICU入室必要について傾向スコアマッチングした。主要評価項目は、副作用、転帰、30日および90日時点の死亡率だった。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、各群26例が選出された。・30日全死亡率は両群とも3.8%であった。・再感染や腎盂腎炎による再入院は認められなかった。 著者らは「CTRX治療は腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症患者の予後に影響を与えなかった。尿中排泄率が低いという理由で尿路感染症に対するCTRXの使用を避ける必要はない」と考察している。

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65歳未満の市中肺炎、GL推奨の短期治療の実施率~日本人約2万5千例の解析

 肺炎診療ガイドライン2024では、市中肺炎治療において、初期治療が有効な場合には1週間以内の短期抗菌薬治療を実施することが弱く推奨されている1)。しかし、その実施率は高くないことが示された。酒井 幹康氏(名城大学/豊田厚生病院)らの研究グループが、65歳未満の成人市中肺炎における短期治療の実施状況について、大規模レセプトデータベースを用いて検討した結果をJournal of Infection and Chemotherapy誌2025年5月号で報告した。 研究グループは、JMDCのレセプトデータベースを用いて、2013~22年に初めて市中肺炎と診断され、抗菌薬治療を開始した18~64歳の患者のデータを抽出した。主要評価項目は治療期間とし、入院患者と外来患者に分けて解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者は2万5,572例であり、年齢中央値は入院患者が51歳、外来患者が44歳であった。・1週間以内の短期抗菌薬治療が実施された割合は、入院患者が32%(1,087/3,367例)、外来患者が70%(1万5,614/2万2,205例)であった。10年間の年次推移の範囲は入院患者が31~35%、外来患者が67~72%であり、大きな変動はなかった。・併存疾患のない患者を対象としたサブグループ解析においても、1週間以内の短期抗菌薬治療が実施された割合は、入院患者が32%(403/1,274例)、外来患者が70%(7,089/1万191例)であり、全体集団と同様であった。 本研究結果について、著者らは「とくに入院患者では、治療期間の最適化を進めるため、抗菌薬による治療期間を再検討する必要性があるだろう」とまとめている。

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新型コロナパンデミックが園児の発達に影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、園児の発達をさまざまな面で遅らせているとする研究結果が報告された。パンデミック発生後(2021〜2023年)の園児は、パンデミック発生前(2018〜2020年)の園児と比べて、言語・認知発達、社会的コンピテンス、コミュニケーション能力、一般知識の平均スコアが有意に低いことが明らかになったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院社会福祉学分野のJudith Perrigo氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に3月10日掲載された。 この研究でPerrigo氏らは、2010年から2023年にかけて米国の園児47万5,740人(平均年齢6歳、男児51.1%)を対象に反復横断パネル研究を実施し、COVID-19パンデミックが園児の発達に与えた影響を調査した。発達状況は、Early Development Instrument(EDI)により、1)身体的健康およびウェルビーイング、2)社会的コンピテンス、3)感情的成熟度、4)言語・認知発達、5)コミュニケーション能力・一般知識の5領域について評価された。 その結果、2018〜2020年のパンデミック前コホート(11万4,359人)と比較して、2021〜2023年のパンデミック後コホート(8万5,827人)では、言語・認知発達(平均変化−0.45、95%信頼区間−0.48~−0.43)、社会的コンピテンス(同−0.03、−0.06~−0.01)、コミュニケーション能力・一般知識(同−0.18、−0.22~−0.15)が有意に低下していた。その一方で、感情的成熟度は有意に上昇していた(同0.05、0.03~0.07)。身体的健康およびウェルビーイングについては、有意な変化は見られなかった。 Perrigo氏らは、「言語と認知発達、コミュニケーション能力・一般知識の領域については特に影響が深刻だった。これはおそらくCOVID-19の公衆衛生対策によって必要となった学校閉鎖とオンラインでの学習環境が原因と考えられる。こうした措置により、子どもが、仲間や保護者ではない大人と日常的に関わる機会も制限された。このことが、本研究で観察された社会的コンピテンスのわずかな低下の説明になるかもしれない」と述べている。 その一方で、パンデミック中に園児の感情的成熟度は高まっていた。この点について研究グループは、「パンデミック中に、COVID-19による死者数、経済的負担、健康不安、ニュース報道などの大人にとってのストレス要因にさらされることが増えたことが、本研究で認められた感情的成熟度の上昇の原因かもしれない」と述べている。 研究グループは、こうしたネガティブな発達の傾向の多くはパンデミックが発生する前から存在していたが、その一部はパンデミック中に低下のペースが減速した」と指摘。「パンデミック発生後、コミュニケーション能力や一般知識、言語・認知発達、身体的健康の変化率は依然として低下しているものの、パンデミック発生前の期間よりも低下率が緩やかになった」と述べる。その上で、「これらの結果は、既存の課題とパンデミックによってもたらされた新たなストレス要因に幼児が対処するための政策の必要性を強調している」と結論付けている。

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呼吸器病の漢方治療ガイド プライマリ・ケアで役立つ50処方

呼吸器疾患の漢方がわかると診察力が大幅アップ外来医師必携の漢方処方ガイド。総論として、漢方の概念や考え方、診察方法、漢方薬の成り立ちと副作用、西洋薬と漢方薬の違い、呼吸器疾患に頻用する漢方薬の特徴、各論では、かぜ症候群、インフルエンザ、COVID-19などのウイルス感染症の急性期や遷延期治療、喘息、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔気管支症候群、逆流性食道炎、嚥下性肺炎、非定型抗酸菌症、肺癌に関する漢方治療を解説。さらに本書で解説のある50処方の適応イラストを掲載。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する呼吸器病の漢方治療ガイド プライマリ・ケアで役立つ50処方定価3,850円(税込)判型A5判(並製)頁数136頁(写真・図・表:119点)発行2025年4月著者加藤 士郎(筑波大学附属病院臨床教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第238回 新型コロナ定期接種、秋から自己負担増加、低所得者は無料継続へ/厚労省

<先週の動き> 1.新型コロナ定期接種、秋から自己負担増加、低所得者は無料継続へ/厚労省 2.長崎県の民間医療ヘリ事故で3人死亡、全国に再点検要請/厚労省 3.「患者だから仕方ない」に終焉を、医療現場における暴力・ハラスメント/看護協会 4.後発薬の供給不足、薬局の8割が「支障」改善はわずか6%/厚労省 5.最大7.2億円を無利子融資、物価高で医療・介護事業者支援へ/厚労省 6.47人の懲戒処分の報道発表なし、情報公開に疑問の声/国立病院機構 1.新型コロナ定期接種、秋から自己負担増加、低所得者は無料継続へ/厚労省厚生労働省は、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある60~64歳を対象とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種に対する国の助成(1回当たり8,300円)を、2025年度から終了する方針を決定し、都道府県に通知した。2024年度に始まった定期接種制度では、全額公費の「特例臨時接種」からの移行に伴う、急な自己負担増を避けるため、基金を活用した助成が行われていた。2025年度の定期接種は秋に開始予定だが、助成終了によって接種費用の自己負担額は増加するが、一部自治体は独自の補助を検討している。なお、低所得者に対しては無料接種を継続する方向で調整中。今後、定期接種の対象外となる人は、原則、全額自己負担での任意接種となる。新型コロナ対策における他の公費支援も、すでに2024年3月末で終了している。 参考 1) コロナワクチン定期接種 国助成取りやめへ 自己負担増の可能性(NHK) 2) 新型コロナワクチン助成終了へ 高齢者ら向け定期接種、低所得者無料は残す予定(産経新聞) 3) 厚労省、コロナワクチン助成終了へ 高齢者らの定期接種(日経新聞) 2.長崎県の民間医療ヘリ事故で3人死亡、全国に再点検要請/厚労省2025年4月6日、長崎県対馬市から福岡市の病院へ患者を搬送中の民間の医療搬送用ヘリコプターが壱岐島沖で墜落、転覆し、搭乗していた6人のうち、患者(86歳)と付き添いの家族(68歳)、男性医師(34歳)の3人が死亡した。機体は離陸から約17分後に着水した可能性があり、搭載されていたGPSは午後1時47分に発信を停止。救難信号を発信する航空機用救命無線機も作動が確認されず、国土交通省は信号を受信していなかった。機体は民間病院の福岡和白病院が運用し、佐賀県のエス・ジー・シー佐賀航空が委託運航していた。同社は過去にも複数の死亡事故を起こしており、運輸安全委員会が事故原因を調査している。この事故を受けて、厚生労働省は7日に全国のドクターヘリ運航会社および関係医療機関に対し、安全点検を求める通知を発出。操縦士による常時の気象確認や整備士による待機中の機体点検を義務付け、再点検や一時的な運航停止の検討も要請された。今回の事故で浮き彫りになったのは、離島における医療搬送の脆弱性である。対馬市など長崎県の離島では、高度医療を提供する三次救急施設が存在せず、ヘリ搬送が命綱となっている。2023年度の県内ドクターヘリ搬送実績(232件)のうち、離島由来は85件を占めていた。事故機は「ドクターヘリ」ではなく、柔軟な搬送を可能にする民間の医療用ヘリであり、全国には同様の運用機が4機存在する。こうした機体は、ドクターヘリ体制の補完的役割を果たすが、安全性の担保とコスト負担が課題とされる。事故を受け、福岡和白病院は当面のヘリ搬送を停止。関係者は再発防止と信頼回復を誓っており、安全性向上と離島医療の継続性が急務となっている。 参考 1) 厚労省 ドクターヘリ運航会社など安全点検通知 長崎の事故受け(NHK) 2) 医療ヘリ事故 離島医療「最後の砦」 救急搬送継続に危惧(毎日新聞) 3) 離島救急搬送の“命綱”不在で募る不安 壱岐沖事故の影響 長崎県ドクターヘリ、点検で運用を休止(長崎新聞) 4) 長崎ヘリ事故 病院の運航は無期限休止 学会「同型機の再点検を」(毎日新聞) 3.「患者だから仕方ない」に終焉を、医療現場における暴力・ハラスメント/看護協会先日、俳優の広末 涼子氏が交通事故後、搬送先の病院で看護師に対し暴力をふるったとして現行犯逮捕された事件や、大阪の訪問看護師に対する患者による暴行事件が報道され、これを契機に医療現場における患者・家族からの暴力やハラスメント、いわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」問題が注目されている。報道に対して、医療従事者からは「ようやく患者による暴力が報じられた」といった声が上がり、現場の切実な実態が明らかにされた。看護職に対するハラスメントは日常的であり、日本看護協会の調査では、身体的暴力を受けた非管理職スタッフ22%のうち93%が患者によるものだった。また、性的言動(77%)や精神的攻撃(40%)も多数報告されている。医療従事者が声を上げにくい背景には、患者の病状や精神状態への配慮、組織文化、認識の甘さがある。実際、暴力を受けても警察に通報されることはまれで、看護師による患者への暴力は報道されても、その逆はほとんど報じられていない。その一方で、医療現場における暴力・ハラスメントは、医療者の離職、精神疾患、地域医療の崩壊につながる深刻な問題となっている。厚生労働省も医療職の確保や職場環境改善の一環として、訪問看護師向けに防犯機器導入費の補助制度を開始するなど、対策を強化しており、東京都ではカスハラ防止条例が施行され、静岡県も同様の条例制定を検討している。こうした社会的動向を踏まえ、医療機関にはハラスメント対策マニュアル整備や研修の実施、ポスター掲示などによる啓発活動が求められている。患者側にいかなる事情があろうと、医療従事者に対する暴力やハラスメントは許されるものではなく、病院としても毅然とした対応と再発防止策の構築が求められる。「患者だから許される」という認識を改め、安心・安全な医療提供体制の確立が急務となっている。 参考 1) 2019年 病院および有床診療所における看護実態調査報告書(看護協会) 2) 訪問看護において「看護師等が暴力・ハラスメントを受ける」ケースが散見され、防犯機器の購入費用などを補助-厚労省(Gem Med) 3) 広末涼子逮捕の裏で噴出した医療従事者の「切実な訴え」長年耐え忍んだ患者からの暴力の実態(東洋経済) 4) 広末涼子さん逮捕、医療現場のカスハラに注がれる厳しい目「いかなる場合も許されない」離職の原因にも(弁護士ドットコム) 5) 広末涼子容疑者を逮捕 傷害容疑、看護師に暴行か-静岡県警(時事通信) 6) 訪問看護の20代女性を包丁で切り付け、殺人未遂容疑で86歳男を逮捕(産経新聞) 4.後発薬の供給不足、薬局の8割が「支障」改善はわずか6%/厚労省厚生労働省は、4月9日に開かれた中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会で、ジェネリック医薬品(後発薬)の供給状況に関する最新調査結果を明らかにした。全国の薬局や医療機関を対象とした調査では、供給体制の逼迫が依然として深刻であることが浮き彫りとなった。保険薬局では84.1%が「支障を来している」と回答し、「供給が悪化した」との回答も43.1%に上った。病院では63.3%、診療所では53.4%が供給悪化を報告しており、医療現場全体に影響が広がっている。この背景には、2020年以降の後発薬メーカーによる品質不正や生産停止の影響がある。中小企業が多数品目を小規模ロットで製造する非効率な構造が、長年にわたり放置されており、現場では納品の遅延、処方変更などの業務負担が常態化している。実際に希望通りの納品がなされた薬局は1%未満に止まった。政府は、2024年度診療報酬改定で後発薬の使用促進を進めており、調剤割合90%以上の薬局は66.1%に達した。一方、供給が追いつかない現状に対し、医療機関からは安定供給体制の構築が最重要課題とされ、病院の90.8%、診療所の65.8%がそれを最も必要な対応として挙げている。厚労省はこうした状況を打開するため、品目統合や企業連携を後押しする基金の創設を盛り込んだ薬機法改正案を今国会に提出。出荷量と需要量の「見える化」による需給バランスの把握、電子処方箋データ活用による増産促進も目指す。一方、現場では医薬品供給状況を共有する民間データベースが活用され始めている。 参考 1) 後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査報告書[概要](厚労省) 2) 後発薬の供給「悪化した」病院の6割超 診療所は5割超(CB news) 3) 4年も続く「薬不足」、ジェネリック産業構造足かせ 品目統合や企業連携後押しに基金設立(産経新聞) 5.最大7.2億円を無利子融資、物価高で医療・介護事業者支援へ/厚労省厚生労働省は、物価高騰の影響で経営が悪化している医療機関や介護施設を対象に、無利子・無担保で最大7億2,000万円の優遇融資を行う支援策を発表した。融資は独立行政法人・福祉医療機構(WAM)を通じて実施され、4月8日から申請が受け付けられている。とくに病院に対する貸付上限額は、従来の500万円から大幅に引き上げられ、2年間無利子で、最大5年間は元本返済猶予となる。対象は前年同期比で収支が悪化し、職員の処遇改善加算を届け出ている施設で、2年以内の経営改善計画の提出が条件となっている。また、病床削減や地域医療構想に基づく再編に協力する場合は、さらに優遇される。介護老人保健施設などについても、無担保融資の上限が500万円から1億円に拡大される。この措置は、病院団体が「地域医療が崩壊寸前」と訴え、国に支援を求めたことが背景にある。調査によれば、2024年度に経常赤字を計上した病院は全体の61.2%に上り、経営状況は深刻だ。診療報酬などの公定価格では物価や人件費の高騰に対応しきれず、多くの医療機関がコスト増に苦しんでいる。WAMでは、2024年12月から優遇融資制度を実施しており、今回の拡充はコロナ禍以降で最大規模の支援となる。政府はこの制度を通じて、医療・介護現場の資金繰りを下支えし、事業継続を図る方針を示している。 参考 1) 物価高騰の影響を受けた施設等に対する経営資金又は長期運転資金のお知らせ(福祉医療機構) 2) 最大7.2億円の無利子融資=医療事業者へ物価高対策で-政府(時事通信) 3) 物価高対策の無担保融資、上限7億円超に拡充 病院向け(日経新聞) 4) 物価急騰によるコスト増等で「収支差額の減少」や「経常赤字」となっている医療機関や介護施設などに優遇融資を実施-福祉医療機構(Gem Med) 6.47人の懲戒処分の報道発表なし、情報公開に疑問の声/国立病院機構独立行政法人・国立病院機構(本部・東京)が2024年度に下した全国計47人の懲戒処分について、報道機関への発表を一切行わず、自機構のホームページに短期間掲載するに止めていたことが判明した。処分内容には懲戒解雇2件、停職22件を含む重大事案が含まれていたが、いずれの地域グループでも記者発表は行われなかった。たとえば東海北陸グループでは、職務上の立場を悪用して部下に性的関係を強要した理学療法士が懲戒解雇となり、鈴鹿病院では障害患者への虐待で看護師ら5人が停職や戒告処分を受けた。また、九州グループでは盗撮や勤務中の飲酒などにより看護師や医師が停職処分を受けていたが、いずれも報道発表されていない。処分はホームページ内の「情報公開」欄に約3週間のみ掲載されており、閲覧には複数の操作を要していた。かつては報道発表を行っていた地域も含め、2023年度以降は原則非公表方針に転換されており、報道基準も明確に定められていない。機構本部は「今後の対応を検討中」としているが、情報公開の不透明さと組織の説明責任の欠如に対し、専門家からは「信頼性を損なう」と懸念の声が上がっている。 参考 1) 国立病院機構が懲戒処分の47人を報道発表せず、ホームページのみ掲載…「公表のあり方について検討」と担当者(読売新聞) 2) 盗撮などの懲戒処分、国立病院機構九州グループが報道機関に発表せず…2023年7月~25年3月で17人(同) 3) 国立病院機構、悪質セクハラで1人懲戒解雇 東海北陸管内、2024年度の処分10件(中日新聞)

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