サイト内検索|page:252

検索結果 合計:5541件 表示位置:5021 - 5040

5021.

小児のアトピー性皮膚炎とイボは、感染症の増加に影響するか

 先行研究において、アトピー性皮膚炎は、皮膚および皮膚以外の感染症の素因となる異常な免疫反応との関連が示唆されている。米国セント・ルークス・ルーズベルトホスピタルセンターのJonathan I .Silverberg氏らにより、小児のアトピー性皮膚炎がイボ、皮膚以外の感染症、その他のアトピー性疾患のリスク増加に影響するかどうか調査、報告された。その結果、小児のアトピー性皮膚炎、その他のアトピー性疾患、イボと皮膚以外の感染症との関連から、バリア機能の破壊や異常な免疫反応(どちらかまたは両方)が、イボと皮膚以外の感染症の感受性に影響することが示唆された。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2013年10月3日掲載報告。 調査には、2007年国民健康インタビュー調査の代表サンプルが用いられた。対象は、0歳から17歳までの9,417例であった。 主な結果は以下のとおり。・アトピー性皮膚炎に加え、何らかのアトピー性疾患を有する小児では、イボを有する割合が高かった。・一方で、何らかのアトピー性疾患の有無にかかわらず、少なくともアトピー性皮膚炎を有する小児では、皮膚以外の感染症(連鎖球菌性咽頭炎、他の咽頭炎、鼻風邪、咳風邪、インフルエンザ/ 肺炎、副鼻腔感染症、再発性中耳炎、水痘、尿路感染症を含む)を有する割合が高かった(p<0.0001)。・アトピー性皮膚炎に加え、何らかのアトピー性疾患を有する小児では、どちらか一方のみを有する小児に比べて、罹患した感染症の数が多かった(p<0.0001)。・イボの保有は、皮膚以外の感染症(再発性中耳炎を除く)の増加に影響していた(p<0.0001)。・イボとアトピー性皮膚炎の両方を有する小児では、どちらかのみを有する小児に比べて、罹患した感染症の数が多かった(p<0.0001)。また、喘息の現症または既往歴、過去1年間の喘息の悪化、花粉症、食物アレルギーを有する割合が高かった。・イボとアトピー性皮膚炎の両方を有する小児では、イボを有しないアトピー性皮膚炎の小児に比べ、喘息、花粉症、食物アレルギーを有する割合が高かった。

5022.

シスチン尿症〔cystinuria〕

1 疾患概要■ 定義シスチン尿症は、腎近位尿細管と小腸上皮における二塩基性アミノ酸のシスチン、リジン、オルニチン、アルギニンの先天性吸収障害で、常染色体劣性の遺伝性疾患である。■ 疫学発生頻度は、日本では1.6万人に1人1)、欧米諸国では0.1~1.7万人に1人であり、人種差がある。シスチン尿症は、全尿路結石の1~2%を占めるシスチン結石の原因疾患である。■ 病因前述の吸収障害のため、尿中に多量のシスチン、リジン、オルニチン、アルギニンが排泄され、尿中の濃度が上昇する。このなかでもとくに溶解度の低いシスチンが、結晶化し、結石を形成する。■ 症状シスチン尿症の臨床症状は尿路結石のみであり、症状は結石が形成されてから出現するため、結石に伴う肉眼的血尿や腰背部痛などが挙げられる。また、結石に伴う尿路感染症や腎不全を認めることもある。最初に結石が診断されるまでの平均年齢は12.2歳と比較的若年者である2)ことから、若年者の尿路結石を診察した場合は、シスチン結石を念頭に置く必要がある。■ 分類1966年以降、Rosenbergによってアミノ酸の排泄量や取り込み率で分類したタイプI~IIIが広く用いられている3)。I型は小腸上皮からのシスチン、リジン、オルニチン、アルギニンの吸収が完全に阻害されており、II型は小腸上皮でのシスチンの吸収はわずかに認められるが、リジン、アルギニンの吸収は認められない。III型は小腸上皮でのアミノ酸吸収がわずかに低下しており、アミノ酸負荷により血中シスチン濃度が上昇する。その後1999年にスペインのバルセロナ大学を中心にICC(International Cystinuria Consortium)が設立され、表に示すような遺伝子分類が提唱されている4)。画像を拡大する1)A型:第2染色体上にあるrBAT遺伝子の両アレルの変異(rBAT:2q 16.3のSLC3A1 geneで約78kDaの1回膜貫通型の蛋白質)2)B型:第19染色体上にあるBAT1遺伝子の両アレルの変異(BAT1:19q 13.1のSLC7A9 geneで約40kDaの12回膜貫通部位を持つ蛋白質)3)AB型:rBAT遺伝子とBAT1遺伝子の変異■ 予後シスチン尿症の発見が遅れたり、再発性難治性の経過をとった場合は腎不全を来すことがあり、約17%に腎機能障害を認めたという報告もある5)。そのため、シスチン結石の再発予防や薬物療法が重要な予後決定因子と考えられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)シスチン尿症は、家族歴や既往歴を聴取し、尿pH測定で継続する酸性尿の存在や尿沈渣での正六角形(ベンゼン環)のシスチン結晶の存在、尿シスチン定性反応をみることが診断の第一歩となる。正常人の尿中シスチン排泄量は30mg/日程度であるが、同型遺伝子接合体では400~500mg/日となる。また、24時間尿中アミノ酸定量でシスチン以外のアミノ酸(リジン、オルニチン、アルギニン)の異常排泄の有無を確認して病型分類を行うが、その間冷所保存し、遮光が必要など注意を要する。画像診断では、X線で透過性がある結石として知られているが、淡い陰影として描出されることもある。CTはほぼ100%検出可能(図1)であり、CT値が700HU前後であればシスチン結石と考えられる。最終的には、排石された結石を成分分析に提出し、確定診断する必要がある(図2)。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)外科的治療、飲水指導、食事指導に加え、薬物治療も積極的に行う6)。■ 保存的治療シスチン結石は丸みを帯びていることからサイズの大きな結石も自然排石する傾向があるため、薬物療法と鎮痛薬や鎮痙薬の使用と飲水指導を先行する。薬物療法は尿のアルカリ化を目的とした尿アルカリ化薬であるクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物(商品名:ウラリット)を使用する。ただし、過度のアルカリ化はリン酸カルシウム結石形成の危険因子となるため尿pHを7.0~7.5に調整することが望ましい。また、チオプロニン(同:チオラ)やペニシラミン(同:メタルカプターゼ)、カプトプリル(同:カプトリルほか)なども使用される。これらは尿中でシスチンと易溶性の複合体を形成し、シスチンの結晶化を抑制する。小児の場合は、副作用や内服のコンプライアンスが低いため、後述の飲水指導を中心とし、薬物投与を行わないことも少なくない。■ 外科的治療大きい結石やサンゴ状結石の場合は、外科的治療として体外衝撃波結石砕石術(extracorporeal shock wave lithotripsy:ESWL)や経尿道的尿管砕石術(transurethral ureterolithotripsy:TUL)も適応となりうる。ESWLの場合、シスチン結石は一般に硬く、複数回行っても砕石できない場合があるが、大まかに砕石できれば、薬物療法によって溶解が可能となる7)。■ 再発予防飲水は1日尿量が、2,500mL以上を維持できるように指導する。十分な飲水により尿量を増やし、尿中のシスチン濃度を飽和溶解度の250mg/L未満にすることが重要である。水分補給源としての清涼飲料水、甘味飲料水の摂取は避ける。食事は尿の酸性化を助長する食べ物(砂糖や動物性蛋白質)の制限は有効である。動物性蛋白質は、尿中クエン酸排泄を減少させるため、1.0g/kg/日、動物性/植物性蛋白質の比率を1にすることが理想である。4 今後の展望現在、シスチン尿症の責任遺伝子がrBAT/SLC3A1、BAT1/SLC7A9と判明し、さらなる解析が行われている。シスチン尿症の診断は、尿中のアミノ酸量の測定や排石された結石の成分分析にて行われ、治療は現段階では、結石ができてからの外科的治療や薬物療法のみである。今後は、遺伝子レベルでの早期発見や遺伝子治療による早期治療が期待される。5 主たる診療科泌尿器科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報The International Cystinuria Foundation(ICF)(英文サイト)(医療従事者向けの情報)1)Ito H, et al. J Urol. 1983; 129: 1012-1014.2)Akakura K, et al. Urol Int. 1998; 61: 86-89.3)Rosenberg LE, et al. J Clin Invest. 1966; 45: 365-371.4)Palacin M, et al. Physiology(Bethesda). 2005; 20: 112-124.5)Dello Strologo L, et al. J Am Soc Nephrol. 2002; 13: 2547-2553.6)日本泌尿器科学会、日本Endourology・ESWL学会、日本尿路結石症学会編.尿路結石症診療ガイドライン. 金原出版; 2002.7)長島政純ほか. 泌尿器科紀要. 2007; 53: 809-812.日本尿路結石症学会編. 尿路結石症のすべて. 医学書院; 2008.日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本尿路結石症学会編. 尿路結石症診療ガイドライン第2版. 金原出版; 2013.

5023.

非定型病原体は慢性副鼻腔炎の原因となりうるか

 肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジアといった非定型病原体は、慢性副鼻腔炎における鼻腔粘膜の持続的な感染を引き起こす原因とはいえなかったことがクロアチアのNenad Pandak氏らにより報告された。European Archives of Oto-Rhino-Laryngology誌オンライン版2013年10月6日の掲載報告。 慢性副鼻腔炎は少なくとも12週間続く、鼻や副鼻腔粘膜の症候性の炎症である。 非定型病原体である肺炎クラミジアや肺炎マイコプラズマは、人間の呼吸器感染症の重大な原因となっている。また、これらの病原体はCOPDや喘息を有する患者の気管支上皮でも検出されている。unified airwayの概念を念頭に置けば、これらの病原体は慢性副鼻腔炎を有する患者の鼻腔粘膜の持続的な感染を引き起こしうるとされている。 本研究は、薬物療法では難治のため、機能的内視鏡下副鼻腔手術(functional endoscopic sinus surgery: FESS)を受けた慢性副鼻腔炎患者60例を対象に行われた。手術中、副鼻腔を無菌の0.9%塩化ナトリウム溶液で洗浄後、すぐに吸引し、リアルタイムPCRを用いて、吸引液中の肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジアの遺伝子を調べた。その結果、これらの遺伝子はサンプルから検出されなかった。

5024.

経口CMX001、造血細胞移植患者のCMV感染症予防効果は/NEJM

 サイトメガロウイルス(CMV)感染症の予防的治療薬として有望視されている経口CMX001について、米国・ダナファーバーがん研究所のFrancisco M. Marty氏らが造血細胞移植レシピエントを対象に、用量効果と安全性を評価する無作為化試験を行った。その結果、100mg週2回量が有意にイベント発生率を低下させることが示された。CMX001は当初、天然痘薬として開発されたが、in vitroでCMVやその他の二本鎖DNAウイルスに対して強い抗ウイルス活性があることが示され、また動物モデルにおけるCMV感染症治療薬としての効果はシドフォビル(国内未承認)の約400倍であることが示されていたという。NEJM誌2013年9月26日号掲載の報告より。プラセボ対照で用量効果と安全性を評価 同種異系造血細胞移植を受けた患者におけるCMX001の安全性と抗CMV活性について調べることを目的に、研究グループは、2009年12月~2011年6月に評価可能であったCMV血清陽性の成人レシピエント患者230例を全米27施設から登録した。 試験はこれらの患者を3対1の割合で、経口CMX001投与群またはプラセボ群に割り付け行われた。またCMX001投与群は、用量漸増二重盲検デザインに即した5つのコホート(40mg週1回、同100mg、同200mg、100mg週2回、同200mg)に割り付けられた。無作為化は、急性移植片対宿主病およびCMV DNAの有無によって層別化して行われた。 試験薬の投与は、生着後9~11週後とし、移植後13週間までとした。血漿CMV DNAのPCR法を毎週行い、治療が必要と判断されるレベルのCMV DNA値が検出された患者には、試験薬の投与中止と抗CMVの先制治療(preemptive therapy)を行った。 主要エンドポイントはCMVイベントの発生で、CMV感染症または試験薬中止時の血漿CMV DNA値が200コピー/mL超の場合と定義した。100mg週2回投与がイベント発生を有意に低下 結果、CMVイベントの発生は、プラセボ群(37%)との比較で、CMX001の100mg週2回投与群(10%)において有意に低下した(絶対リスク差:-27ポイント、95%信頼区間[CI]:-42~-12ポイント、p=0.002)。その他の投与群では有意差はみられず、40mg週1回群の絶対リスク差は15ポイント(p=0.23)、同100mg群は-15(p=0.22)、同200mg群は-6(p=0.53)、200mg週2回群は-14(p=0.24)だった。 CMV感染症は9例で発生がみられた。そのうち2例はプラセボ群で、投与群は7例(40mg週1回群が3例、同100mg群が3例、100mg週2回群が1例)だった。 また、感染症の発症または保菌状態の進行(CMV DNA>1,000コピーと定義)を評価した結果、ベースラインで感染が検出された患者は、200mg週1回超の投与でコントロールできること、同非検出者には100mg週1回超投与が有意に有効であることが示された。 一方、安全性については、200mg週1回超投与患者において、下痢が高頻度に認められ、200mg週2回が用量制限であることが示された。骨髄抑制と腎毒性は認められなかった。

5025.

ゲノム解析で判明、C. difficile感染の伝播経路は複数存在/NEJM

 主として医療施設内で伝播すると考えられていたクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染について、ゲノム解析(配列決定)の結果、多様な遺伝子が特定され、感染源はさまざまであることが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らが、3年間のオックスフォードシャーでの発生症例を解析した結果、45%は、既往症例とは遺伝的に異なることが判明したという。NEJM誌2013年9月26日号掲載の報告より。一地域内の病院、地域の有症者から分離株を集めゲノム解析 C. difficile感染は主に医療施設内で伝播すると考えられてきたが、地域への蔓延により、正確な感染源の特定、および症状を発現した人に集中していた従来の介入の効果が阻害されるようになってきた。 そこで研究グループは、有症者が伝播において果たした役割を特定し、その伝播経路が時間とともにどのように変化したかを調べるため、一定地域内の全有症者から分離株を入手し、ゲノム解析を行った。 解析は、2007年9月~2011年3月に、英国・オックスフォードシャーの医療施設または地域で感染が特定されたすべての有症者から採取された分離株を入手して行われた。評価は、C. difficileの進化速度を指標とし、分離株間の一塩基多様体(single-nucleotide variant:SNV)を比較するというもので、予測した進化速度は、採取期間124日未満でSNVは0~2個、124~364日未満で0~3個であった。また、SNVの比較後に、入院施設および地域ごとに入手した遺伝的に関連した症例間との疫学的関連の同定を行った。遺伝的関連が認められたのは35% 評価された1,250例のC. difficile症例のうち、1,223例(98%)がゲノム解析に成功した。 2008年4月~2011年3月に採取された検体957例について、それ以前の2007年9月~2008年3月に採取された検体と比較した結果、少なくとも1つの初期検体と遺伝的関連があることを示すSNVが2個以下を示した分離株は333例(35%)だった。一方で428例(45%)は、SNVが10個以上であった。 2つの期間群における症例の発症は、時間とともに同程度に減少した。このことは、曝露から感染への移行をターゲットとした介入の効果を示唆するものであった。 SNVが2個以下だった333例(伝播整合群)のうち、126例(38%)は病院で他の患者との接触が確認されたが、一方で120例(36%)は、病院または地域における他の患者との接触は認められなかった。また試験を通じて、異なるサブタイプの感染症が継続的に認められた。このことから、C. difficile保有者が相当数存在することが示唆された。 以上を踏まえて著者は、「3年間のオックスフォードシャーにおけるC. difficile症例のうち、45%は過去の症例と遺伝的に異なっていた。有症者に加えて、遺伝的に多様な感染源もC. difficile伝播の重要な役割を担っている」とまとめた。また、今回用いたゲノム解析について「新たな伝播ルートの解明のために、疫学的に関連のない遺伝的関連症例に集中した研究を可能とするもので、不可解とされているC. difficile感染源の解明の光明となりそうだ」と評価している。

5026.

日本人へのトホグリフロジン投与、単剤・併用での長期試験成績が発表

高選択的SGLT2阻害薬※トホグリフロジン(承認申請中)について、日本人における長期安全性と有効性を検討した成績が、山口大学の谷澤 幸生氏らにより報告され、トホグリフロジンの単独および併用における忍容性と有効性が確認された。演題では、食事療法・運動療法のみで血糖管理不十分な2型糖尿病患者に本剤を単独投与したMONO試験(安全性解析対象191例)、および既存の経口糖尿病治療薬(OAD)6種類のうちいずれかと併用したCOMBO試験(同593例)の結果が発表された。いずれもトホグリフロジン20mg群または40mg群にランダム化され、投与52週時の安全性と有効性が検討されている。主要評価項目は安全性、副次評価項目は52週時における、ベースラインからのHbA1c変化量、体重変化量を含むさまざまな代謝関連指標の変化量である。トホグリフロジンは、最も高選択的にSGLT2を阻害するとされる新しい経口血糖降下薬であり、現在国内で2型糖尿病を適応症として承認申請段階にある。結果は以下のとおり。総有害事象の頻度は単独・併用の両試験の合計で664例(84.7%)観察されたものの、重篤な有害事象は54例(6.9%)、投薬中止に至った有害事象は35例(4.5%)であった。5.0%以上の有害事象として、口渇、頻尿、低血糖、血中ケトン体増加などがあったが、臨床症状を伴うケトン体増加やケトアシドーシスはみられなかった。SU薬との併用時に他の経口薬との併用時と比べて低血糖頻度がわずかに高くなっていること、およびSU薬併用時のみで中等度の事象が3例起きていることに留意する必要があるものの、単剤・併用で重度の低血糖の報告はなかった。膀胱炎・尿路感染症の頻度は0.5%~4.7%、性器感染症の頻度は0.0%~3.4%であり、ほとんどが軽度かつ一過性なものであった。52週時のHbA1c変化量は、MONO試験で-0.67%、-0.66%(20mg、40mg)、COMBO試験で-0.77%、-0.87%(同)であり、COMBO試験ではいずれの経口薬と併用した場合においても同等の低下作用が確認された。体重変化量は、MONO試験で-3.06g、-3.44kg(同)、COMBO試験で-2.51kg、-2.98kg(同)で、体重低下は併用薬ごとに違いがあり、とくに40mg群ではαGIやメトホルミンとの併用時にわずかに強かった。その他、ウエスト周囲径の減少やアディポネクチンの増加、収縮期血圧の低下、HDL-C上昇などのメタボリックシンドローム関連因子やインスリン抵抗性指標であるHOMA‐IRが有意に改善していた。以上の結果より、トホグリフロジンの忍容性が確認され、トホグリフロジンは単独および既存の経口血糖降下薬との併用において2型糖尿病の新たな治療オプションとなることが示唆された。※高選択的SGLT2阻害薬は、腎尿細管において糖の再吸収に関与するトランスポーターのナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害し、血糖値依存的に尿糖排泄を促すことで血糖低下作用を発揮する。低血糖のリスクは低く、体重減少作用を有すると注目されている。

5027.

GLP-1受容体作動薬「Albiglutide」、BG薬への上乗せ効果

長時間作用型GLP-1受容体作動薬であるAlbiglutideの長期有効性と安全性を検討した試験HARMONY3について、グラクソ・スミスクラインのM.Stewart氏らにより報告された。本試験は、メトホルミン単剤で血糖管理不十分な2型糖尿病患者にAlbiglutideを3年間投与する第III相二重盲検ランダム化比較試験。米国と欧州で実施されており、今回は2年間までの中間報告である。プラセボ群(104例、週1回)、シタグリプチン群(313例、100mg/日)、グリメピリド群(317例、2mg/日~4mg/日まで漸増)、Albiglutide群(315例、30mg/週~50mg/週まで漸増)の約1,000例が対象となっている。結果は以下のとおり。各群のベースラインから104週後のHbA1c変化量は、プラセボ群に比較していずれの実薬3群においても、低下が認められたが、Albiglutide群での低下作用が最も大きかった。プラセボ群(n=100):2.95(95%CI:0.55~5.47)シタグリプチン群(n=300):-3.06(同:-4.48~-1.64)グリメピリド群(n=302):-3.94(同:-5.36~-2.62)Albiglutide群(n=297):-6.89(同:-8.31~-5.57)また、体重ではAlbiglutide群は、プラセボ群より-0.2kg[95%CI:-1.1~0.7]、およびシタグリプチン群より-0.4kg[同:-1.0~0.3]と同等の体重減少が確認され、グリメピリド群との比較において-2.4kg[同:-3.0~-1.7]と有意な減少が示された。要救助高血糖状態の発生率は、プラセボ群59%、シタグリプチン群36%、グリメピリド群33%、Albiglutide群26%と、Albiglutide群において最も低頻度であった。その他、Albiglutide群での主な有害事象は、上気道感染症、下痢、吐き気などGLP-1受容体作動薬として既知の内容であった。以上のことから、Albiglutideの週1回投与は、シタグリプチンおよびグリメピリドよりもHbA1c低下効果に優れており、また同剤の高い忍容性も示唆された。

5028.

ストレス潰瘍予防目的のPPI、術後肺炎リスクを増大/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)を受ける患者に対してストレス潰瘍の予防目的でしばしば投与される胃酸分泌抑制薬について、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のほうがH2ブロッカーよりも、術後肺炎リスクが1.19倍とやや高いことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrian T Bateman氏らが、全米約500病院からの患者データが集積されているPremier Research Databaseを用いた後ろ向きコホート研究の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2013年9月19日号掲載の報告より。CABG患者2万例超についてPPI対H2ブロッカーの術後肺炎発生を調査 術後肺炎は、心臓手術後によくみられる(2~10%)死亡リスクの高い(20~50%)合併症である。これまでPPIおよびH2ブロッカーの院内肺炎リスクとの関連を比較検討した報告はあるものの相反する結果が示されてきた。また心臓手術後患者を対象とした検討については、単施設対象の後ろ向き研究で、PPIのほうが2.7倍高かったという報告があるが、その一報にとどまっていたという。 今回研究グループが検討したPremier Research Databaseには、2004~2010年にCABGを受けた2万1,214例が登録されていた。 そのうち9,830例(46.3%)がPPIを、1万1,384例(53.7%)がH2ブロッカーを、術後間もなく投与開始されていた。 主要評価項目は、診断コードが付いた術後肺炎の発生とした。PPI群の相対リスク1.19、1,000患者当たり8.2例増大 入院期間中の術後肺炎の発生は、PPI群5.0%(492/9,830例)、H2ブロッカー群4.3%(487/1万1,384例)であった。 傾向スコア(患者特性)補正後も、PPI群の術後肺炎発生リスクはH2ブロッカー群よりも高率のままだった(相対リスク:1.19、95%信頼区間[CI]:1.03~1.38)。 また、操作変数(病院がどちらの薬を好んでいるか)について補正解析後、PPI使用はH2ブロッカー使用と比べて、1,000患者当たり8.2例(95%CI:0.5~15.9)の術後肺炎リスク増大と関連していた。 著者は、「ストレス潰瘍予防目的のPPI使用は、H2ブロッカー使用と比べて術後肺炎リスクがやや高い。同リスクは、さまざまな方法による交絡因子で補正後も変わらなかった」とまとめている。

5029.

MRSA感染症が原因で心臓手術から6日後に死亡したケース

感染症最終判決判例時報 1689号109-118頁概要心臓カテーテル検査で冠状動脈3枝病変が確認され、心臓バイパス手術が予定された63歳男性。手術前に咳、痰、軽度の咽頭痛が出現し、念のため喀痰を培養検査に提出したが、検査結果を待たずに予定通り手術が行われた。術後から38℃以上の発熱が続き、喀痰やスワンガンツカテーテルの先端からはMRSAが検出された。集中治療にもかかわらずまもなくセプシスの状態となり、急性腎不全が原因で術後6日目に死亡した。なお、術後に問題となったMRSAは術前の喀痰培養で検出されたものと同一であった。詳細な経過患者情報既往症として脳梗塞、心筋梗塞を指摘されていた63歳男性経過1991年1月近医の負荷心電図検査で異常を指摘された。2月18日某大学病院外科を紹介受診。ニトロールRを処方され外来通院開始(以後手術まで胸痛はなく病態は安定)。3月4日~3月6日心臓カテーテル検査のため入院。■冠状動脈造影結果左冠状動脈前下行枝完全閉塞左回旋枝末梢の後側壁枝部分で閉塞右冠状動脈50~75%の狭窄心拍出量3.84L左心室駆出率56%左室瘤および心尖部の血栓(+)以上の所見をもとに、主治医はACバイパス手術を勧めた。患者は仕事が一段落するのを待って手術を承諾(途中で海外出張もこなした)。5月28日大学病院外科に入院、6月12日に手術が予定された。6月4日頭部CT検査で右大脳基底核、右視床下部の脳梗塞を確認。神経内科の診察では右上下肢の軽度知覚障害、右バビンスキー反射陽性が確認された。6月8日(手術4日前)咳と喉の痛みが出現。6月9日(手術3日前)研修医が診察し、咳、痰、軽度の咽頭痛などの所見から上気道炎と診断し、イソジンガーグル®、トローチなどを処方。6月10日(手術2日前)研修医の指示で喀痰の細菌培養を提出(研修医から主治医への報告なし)。6月12日09:00~18:00ACバイパス手術施行。6月13日00:00~4:00術後の出血がコントロールできなかったため再開胸止血術が行われた。09:00体温38.7℃、白血球5,46013:00手術前に提出された喀痰培養検査でMRSA(感受性があるのはゲンタマイシン、ミノマイシン®のみ)が検出されたと報告あり。主治医は術後の抗菌薬として(MRSAに感受性のない)パンスポリン®、ペントシリン®を投与。6月14日体温38.6℃、白血球12,900、強い腹痛が出現。6月15日体温38.9℃、白血球11,490、一時的な低酸素によると思われる突然の心室細動、心停止を来したが、心臓マッサージにより回復。6月16日体温39.5℃と高熱が続く。主治医はMRSA感染をはじめて疑い、感受性のあるゲンタマイシンを開始。再度喀痰培養を行ったところ、術前と同じタイプのMRSAが検出された。6月17日顔面、口角を中心としたけいれんが出現し、意識レベルが低下。また、尿量が減少し、まもなく無尿。カリウムも徐々に上昇し最高値8.1となり、心室細動となる。スワンガンツカテーテル先端からもMRSAが検出されたが、血液培養は陰性。6月18日12:30腎不全を直接死因として死亡(術後6日目)。当事者の主張患者側(原告)の主張1.培養検査の結果を待たずに手術を行った過失今回の手術は緊急性のない待機的手術であったのに、喀痰検査の結果を確認することなく、さらにMRSAの除菌を完全に行わずに手術に踏み切ったのは主治医の過失である2.術後管理の過失手術直後からMRSA感染が疑われる状況にありながら、MRSAに効果のある薬剤を開始するのが4日も遅れたために適切な治療を受ける機会を逸した3.死亡との因果関係担当医の過失によりMRSA感染症による全身性炎症反応症候群からショック状態となり、腎不全を引き起こして死亡した病院側(被告)の主張1.培養検査の結果を待たずに手術を行った点について入院病歴から判断して狭心症重症度3度に該当する労作性狭心症であり、左冠状動脈前下行枝完全閉塞、右冠状動脈75%狭窄、心筋虚血のある状態ではいつ何時致命的な心筋梗塞が発症しても不思議ではなかったので、速やかに手術を行う必要があったまた、一般にすべての心臓手術前に細菌培養検査を実施する必要はないので、本件でも術前に行った喀痰培養の結果が判明するまで手術を待つ必要はなかった。確かに術前の喀痰検査でMRSAが陽性であったが、術前はMRSAの保菌状態にあったに過ぎず、MRSA感染症は発症していない2.術後管理について心臓手術後は通常みられる術後急性期の経過をたどっており、MRSA感染症を発症したことを考えるような臨床所見はなかった。そして、MRSAを含めた感染症の可能性を考えて、各種培養検査を行い、予防的措置として広域スペクトラムを持つ抗菌薬を投与するとともに術前の喀痰培養で検出されたMRSAに感受性を示す抗菌薬も開始した3.死亡との因果関係死亡に至るメカニズムは、元々の素因である脳動脈硬化性病変によりけいれん発作が出現し、循環動態が急激に悪化して急性腎不全となり、心停止に至ったものである。MRSAは喀痰およびスワンガンツカテーテルの先端から検出されたが、血液培養ではMRSAが検出されていないのでMRSA感染症を発症していたとはいえず、死亡とMRSA感染症は関係ない裁判所の判断緊急性のない心臓バイパス手術に際し、上気道炎に罹患していることに気付かず、さらに喀痰培養の検査中であることも見落として検査結果を待つことなく手術を行ったのは主治医の過失である。さらに術後高熱が続いているのに、術前の喀痰培養でMRSA、が検出されたことを知った後もMRSA感染症を疑わず、MRSAに感受性のある抗菌薬を投与したのは症状がきわめて悪化してからであったのは術後管理の明らかな過失である。その結果MRSA感染症からセプシスとなり、急性腎不全を併発して死亡するという最悪の結果を迎えた。原告側合計3億257万円の請求に対し、1億5,320万円の判決考察MRSAがマスコミによって大きく取り上げられ社会問題化してからは、多くの病院で「院内感染症対策マニュアル」が整備され、感染症対策委員会を設けて病院全体としてMRSAをはじめとする院内感染に細心の注意を払うようになったと思います。今回の大学病院でも積極的に院内感染症対策に取り組み、緊急の場合を除いて感染症の所見があれば(たとえ軽症であっても)MRSA感染の有無を確認し、もしMRSA感染が判明すれば侵襲の大きい手術は行わないという原則が確立していました。こうしたMRSAに対する十分な配慮が行われていたにもかかわらず、なぜ今回のような事故が発生したのでしょうか。その答えとして真っ先に思い浮かぶのが、「院内のコミュニケーション不足」であると思います。今回の手術に際して、患者さんと頻繁に接していたのはネーベンである研修医であったと思います。その研修医が患者さんから手術の3日前に「喉が痛くて咳や痰がでる」という症状の申告を受けたため、イソジンガーグル®によるうがいを励行するように指導し、トローチを処方しました。そして、「念のため」ではあると思いますが、痰がでるという症状に対し細菌感染を疑って喀痰培養を指示しました。以上の対応は、研修医としてはマニュアル化された範囲内でほぼ完璧であったと思います。ところが、この研修医はオーベンである主治医に培養検査を行ったことを報告しなかったうえに(実際には報告したのにオーベンが忘れていたのかもしれません)、おそらく培養検査を提出したこと自体を失念したのでしょうか、検査結果がでるのを待たずに予定通り手術が行われてしまいました(通常の培養検査は結果が判明するまでに3~4日はかかりますので、手術の2日前に培養検査を提出したのであれば、培養結果の報告は早くても手術当日か手術直後になることを当然予測しなければなりません)。その背景として、複数の患者を受け持つ一番の下働きである研修医は、日常のオーダーを出すだけでもてんてこ舞いで、寝る時間も惜しんで働いていたであろうことは容易に想像できます。そのためにたかが風邪に対する喀痰培養検査に重きを置かなかったことは、同じ医師としてやむを得ない面はあると理解はできます。一方で、研修医に間違いがないかどうかをチェックするのがオーベンの重要な仕事であるのに、今回のオーベンは術前に喀痰培養検査が行われたことなどつゆ知らず、ましてや手術の翌日に「術前喀痰培養でMRSA陽性」と判明した後も何ら対策をとりませんでした。おそらく、「MRSAが検出されたといっても、院内に常在する細菌なので単なる「保菌状態」であったのだろう、術前には大きな問題はなかったのでまさかMRSA感染症にまで発展するはずはない」と判断したのではないかと思います。つまり本件では、「術前に喀痰培養を行ったので、手術をするにしても培養結果がでてからにしてください」とオーベンにいわなかった研修医と、「研修医が術前に喀痰培養を行った」ことをまったく知らなかった(普段から研修医の出す指示をチェックしていなかった?)オーベンに問題があったと思います(なお裁判では監督責任のあるオーベンだけが咎められて、研修医は問題になっていません)。心臓手術のように到底一人の医師だけではすべてを担当できないような病気の場合には、チームとして治療に当たる必要があります。つまり一人の患者さんに対して複数の医師がかかわることになりますので、医師同士のコミュニケーションをなるべく頻繁にとり、たとえ細かいことであってもできる限り情報は共有しておかなければなりません。そうしないと今回の事例のような死角が生じてしまい、結果として患者さんはもちろんのこと、医師にとってもたいへん不幸な結果を招く可能性があるという、重要な教訓に与えてくれるケースであると思います。感染症

5030.

RSウイルス急激な増加/ 国立感染症研究所

 RSウイルス感染症の小児科定点医療機関からの報告数は、例年冬期にピークがみられ、夏期は報告数が少ない状態が継続していたが、2011年以降、7月頃から報告数の増加傾向がみられるようになった。 2013年の報告数は第25週から徐々に増加傾向がみられ、とくに第34週(1,281)から第35週(2,004)にかけて急激な増加がみられた。2013年第36週(9月2日~9月8日)の報告数は2,551例となり、都道府県別の報告数をみると、福岡県(316)、東京都(212)、大阪府(208)、新潟県(135)、山口県(112)、鹿児島県(112)、宮崎県(101)、熊本県(91)の順となっている。37の都道府県で前週の報告数よりも増加がみられている。http://www.nih.go.jp/niid/ja/rs-virus-m/rs-virus-idwrc/3972-idwrc-1336-01.html

5031.

A群髄膜炎の新ワクチン、集団接種で罹患率94%低下/Lancet

 A群髄膜炎菌-破傷風トキソイド結合型ワクチン(PsA-TT)の集団接種は、A群髄膜炎の罹患率を9割以上減少させ非常に有効であることが、チャド・Centre de Support en Sante InternationalのD. M. Daugla氏らにより報告された。PsA-TTは、サハラ砂漠以南のワクチン開発プロジェクトにより開発された。2009年にインドで承認され2010年にはWHOによる安全性と免疫原性の事前承認を得て、現在“アフリカ髄膜炎ベルト地帯”で、本研究にも資金を提供しているビル&メリンダ・ゲイツ財団などの支援の下、接種キャンペーンが展開されているという。Lancet誌オンライン版2013年9月12日号掲載の報告より。PsA-TT接種キャンペーン実施地域で髄膜炎罹患率94%減少 Daugla氏らは、2009年1月~2012年6月のチャドの全国データから、PsA-TT接種キャンペーンの前後におけるA群髄膜炎の罹患率について調べ、同接種の効果について分析した。ワクチン接種キャンペーンを実施した地域では、より綿密な調査を行った。髄膜炎菌は脳脊髄液または中咽頭スワブから採取し、通常微生物・分子法で検査を行った。 2011年12月に10日間にわたって行われたPsA-TT接種キャンペーン中に同接種を受けた人は、チャドの首都N’Djamena周辺の3地域で約180万人(1~29歳)に上った。 分析の結果、2012年の髄膜炎流行期間の髄膜炎罹患率は、大規模なPsA-TT接種プログラムを実施しなかった地域では、10万人当たり43.8(人口870万人中3,809人)だったのに対し、同接種キャンペーンを行った3地域では、10万人当たり2.48(人口230万人中57人)と、粗罹患率で94%の減少(p<0.0001)、罹患率比は0.096(95%信頼区間[CI]:0.046~0.198)と、大幅な減少が認められた。接種都市ではA群血清型髄膜炎の報告例なし、周辺農村地域でも有意に減少 また同3地域ではA群血清型髄膜炎の報告例はなく、さらに首都に近い農村地域では、A群血清型髄膜炎が、ワクチン接種2~4ヵ月前には4,278人中32人(0.75%)に認められたが、ワクチン接種4~6ヵ月後には5,001人中わずか1人だった(補正後オッズ比:0.019、95%CI:0.002~0.138、p<0.0001)。 同研究グループは、「PsA-TTはA群血清型の侵襲性髄膜炎に対し非常に高い効果が認められた」と結論したうえで、「効果の持続期間についてさらなる研究が必要だ」とまとめている。

5032.

RSウイルス増加の兆しか

 「RSウイルス・オンライン・サーベイ +hMPV(運営管理・開発責任者 西藤なるを氏 西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニック 滋賀県守山市)」の報告によると、ここ数週間RSウイルスが増加している傾向がみられるという。 先週(第38週:2013年9月16日~9月22日)の同メーリングリストへのRSウイルスの報告は42件。その前週である第37週は50件、第36週も40件以上の報告があり、ここ数週間にわたり多数の報告が続いているという。運営責任者の西藤氏は、「乳幼児で、顕著な咳嗽や喘鳴のお子さんはRSウイルスの感染も疑ってほしい」と同サイトのメールマガジンで述べている。 「RSウイルス・オンライン・サーベイ +hMPV」は、日本全国の有志医師からの自主的な報告を集計している。集計報告の地域分布や定量性については、実際の流行と乖離している可能性があるものの、同システムを用いている「MLインフルエンザ流行前線情報DB(ML-flu)」は国立感染症研究所のデータとの相関性が認められている。http://rsv.children.jp/rsdata/index.php

5033.

エキスパートQ&A

プライマリ・ケア医はどの範囲まで、がん患者さんを診るべきなのでしょうか?プライマリ・ケア医の定義がなかなか難しいところですが、地域の開業医の先生方であれ病院勤務の一般内科の先生方であれ、がん患者さんを診るべきだと思います。サブスペシャリティががんとは無関係の領域(循環器、神経、内分泌、腎臓、膠原病、感染症など)であったとしても同じことです。理由は単純です。患者さんは多いのに診る医者が少ないからです。がんは日本人の2人に1人が罹患し、3人に1人が亡くなるという非常にコモンな病気です。がん患者の診療において、専門医数(全国でがん薬物療法専門医<1000人、緩和医療専門医<100人)が少ないなどインフラの問題もありますが、一番大きい問題は患者さん側と医師側が日本のがん医療や一般診療に対してそれぞれが持つ固定観念だと思います。患者さん側は「大きな病院で専門医の先生にずっと診てもらわないと心配だ」、医師側は「がん診療は高度に専門化していて難しい。患者や家族の対応にもストレスを感じることが多い。治らずに亡くなっていく患者を診るのもつらいし、しんどい」といった気持ちがお互いにあるのではないでしょうか。これを少しずつでも変えていかないことには、がん対策基本法の理念である「すべてのがん患者さんに等しく適切な医療を提供する」を実現することは困難だと思います。がん診療はやりがいがあります。患者さんにとって一度は死を意識せざるを得ない疾患ですから、その患者さんや家族との対応の中で自分なりのさまざまな思索を巡らすことになります。また、自分や家族も将来罹患する可能性が高い疾患を目の前の患者さんを通じて経験し、人間の永遠のテーマである「生と死」について深く考えることができるのです。プライマリ・ケア医にできる身体的なケアにはどのようなものがあるでしょうか?がん患者さんの何を診るかについては議論のあるところですが、患者さんのQOL維持・向上のため少なくとも支持療法(緩和医療)についてはカバーすべきと考えています。支持療法の範囲は広く、緊急事態(オンコロジック・エマージェンシー)への対応、疼痛を含む症状コントロール、がん治療による有害事象対策、栄養療法、リハビリ、無再発患者の定期的フォロー(再発の有無、二次がんのチェック、骨粗鬆症、不妊、一般内科的マネジメント)などプライマリ・ケア医であればある程度対応可能な分野と考えています。抗がん薬治療はご自身のサブスペシャリティと、置かれている環境(開業医か病院勤務医か、地方か都市部か)で異なると思いますが、開業医の先生方が抗がん薬治療を扱うのは現状ではなかなか難しいかもしれません。基幹病院への紹介の仕方や、うまく機能しているシステムがあれば教えていただけますか?具体的に機能しているシステムはわかりませんが、病病連携や病診連携において大切なのはやはり「顔の見える関係」です。紙だけのやり取りでは関係が希薄になりがちですので、研究会等で基幹病院の先生と会って良い関係を築くことが重要ですし、いろいろな情報や知識も得られると思います。また紹介患者さんが基幹病院に入院したら、その病院に会いに行くことも重要だと思います。患者さんが喜ぶのはもちろん、基幹病院の医療スタッフも信頼を寄せますので、患者さんを逆紹介していただきやすくなると思います。可能であれば、基幹病院、地域の開業医、訪問看護ステーション、ケアマネージャーなどで症例を通じた多職種カンファレンスを開くのもよいと思います。日常診療でがんを早期発見するためには、どこに気を付ければよいですか?有症状か無症状かで考え方が異なります。有症状の場合、そのがんはすでに早期がんである確率は低いので、ご質問そのものに対する回答にはなっていませんが、個人的には以下のような症状があった場合には、がんを疑うことにしています。すなわち、体重減少、リンパ節腫脹、原因不明で夜間に増悪する腰痛・背部痛、不明熱、嚥下困難、下血・血便・タール便、黄疸、血痰、血尿などです。また過去のがんの既往があれば、より検査閾値を下げて精密検査を進めることになると思います。無症状のがんを診断するためには、基本的にはがん検診を定期的に受けていただくことだと思います。私はがん以外で診ている患者さんに「がんについては検診を受けてください。残念ながら、あなたががんになっていないかどうかについてまでは診られていないのです」と説明しています。高血圧や糖尿病で診ている患者さんでも、患者さん側からすればがんも含めて診てもらっていると思っている方がいらっしゃいます。しかし、がんでない患者さん全員にがんが無いかどうかを診ていくのは大変だと思います。ただ、がん検診については注意すべき点があります。がん検診は早期発見のみを目的にしているのではなく、早期発見を通じてがんによる死亡を減らすことを目標としていますし、その点についてある程度コンセンサスがあるがん種についてがん検診が行われているのです。したがって、がん検診の内容に満足できない患者さんには、賛否両論あるにせよ、人間ドックを受けていただく以外にないと考えています。また、がんをスクリーニングする方法としての腫瘍マーカー測定は勧められません。スクリーニングには高い感度が求められますが、腫瘍マーカーで感度の高い検査はないからです(PSAは前立腺がんのスクリーニングには適していますが、早期診断することで死亡割合を低下させるかどうかが専門家の間で見解が異なるため現時点でがん検診に用いられてはいません)。症状もないのに患者さんの希望のみで、安易に腫瘍マーカーを測定し少しでも異常があった場合には、患者側も医師側も必要以上にがんを心配することになってしまいます。健診受診を促していますが、嫌がる人が多いです。どうすべきでしょうか?どうして嫌がるのかその理由によると思います。がんが見つかるのが怖いのか、それともがんになっても構わないし、早期発見が重要と考えていないなど、いろいろ理由があると思います。まずは患者さんの考え方を十分に把握することから始めてみてはいかがでしょう。CKDにおける抗がん治療の注意点を教えてください。腎障害の程度や、抗がん薬が腎排泄か肝代謝・肝排泄かなどによって、投与量は変わってきますので一般化できません。また、透析患者さんの場合はまた別の因子(透析性、分布容積、蛋白結合率、投与するタイミングなど)を考慮する必要が出てきます。詳しくは各抗がん薬の添付文書をご覧ください。高齢患者さんの治療に関する注意点を教えてください。一般的に抗がん治療の治療目標は二つあります。すなわち、生存期間の延長とQOLの改善・維持です。高齢患者さんの場合、抗がん治療により得られるメリットは非高齢患者さんのそれに比して小さくなります。つまり、生存期間の延長も小さくなるでしょうし、QOLも低下する可能性が十分あります。大切なことは、何を治療目標にして個々の患者さんを治療しているのかについて主治医と患者さん・家族が十分話し合い、認識を共有しておくことだと思います。個々の抗がん治療(手術、抗がん薬、放射線)の注意点については紙面の関係でここでは割愛します。食欲不振に対する対処法を教えてください。食欲不振の原因によります。原疾患によるものか、抗がん薬治療によるものか、あるいはうつ病などの内因性精神疾患によるものか、など多岐にわたります。認知症患者におけるがん治療について教えてください。がん治療に関して、その患者さんに自己意思決定能力があるかどうかが最大の問題になります。認知症のために本人に意思決定ができない場合は、家族や友人などに代理意思決定をしていただく必要があります。その際に大切なのは、代理者の意向ではなく、患者さん本人の意思を代弁する(または推定する)ことです。あくまでも患者さんが主体です。また、認知症患者の抗がん治療自体も難しいものになります。認知症の患者さんは脳の脆弱性のため、せん妄を起こしやすく、脳以外の身体の脆弱性も伴っていることが多いことから、その他の合併症(肺炎など)も起こしやすいのです。前立腺がんにおける高濃度ビタミンCの有用性について教えてくださいマルチビタミン(ビタミンCを含む)とミネラル補充療法の前立腺がん発症や進行予防との関連についてはメタ解析により現時点では否定されています(Stratton J,et al. Family Practice. 2011; 28:243–252)。上部消化管検診においてペプシノゲンがBaや内視鏡に代行できるという考え方はもう一般的になっているのでしょうか?日本のガイドラインでは現時点においても胃透視を推奨しており、ペプシノゲンはピロリ抗体や胃内視鏡と共に胃透視に比べてエビデンスレベルは下位に位置づけられています(Hamashima C, et al. Jpn J Clin Oncol 2008;38(4)259–267)。したがって、一般的にペプシノゲン測定はほかの検査の代用にはならないと考えられます。ただ、ABC検診と言って、血液検査でH. pylori感染とペプシノゲン値を調べ、胃がんのリスク評価を行う検診があり、リスクに応じて胃内視鏡検査による胃がんのスクリーニングを推奨する動きもあります。

5035.

クッシング病〔CD : Cushing's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義クッシング症候群は、副腎からの慢性的高コルチゾール血症に伴い、特異的・非特異的な症候を示す病態である。高コルチゾール血症の原因に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が関与するか否かで、ACTH依存性と非依存性とに大別される。ACTH非依存性クッシング症候群では、ACTHとは無関係に副腎(腺腫、がん、過形成など)からコルチゾールが過剰産生される。ACTH依存性クッシング症候群のうち、異所(非下垂体)性ACTH産生腫瘍(肺小細胞がんやカルチノイドなど)からACTHが過剰分泌されるものを異所性ACTH症候群、ACTH産生下垂体腺腫からACTHが過剰分泌されるものをクッシング病(Cushing's disease:CD)と呼ぶ。■ 疫学わが国のクッシング症候群患者数は1,100~1,400人程度と推定されているが、その中で、CD患者は約40%程度を占めると考えられている。発症年齢は40~50代で、男女比は1:4程度である。■ 病因ACTH産生下垂体腺腫によるが、大部分(90%以上)は腫瘍径1 cm未満の微小腺腫である。ごくまれに、下垂体がんによる場合もある。■ 症状高コルチゾール血症に伴う特異的な症候としては、満月様顔貌、中心性肥満・水牛様脂肪沈着、皮膚線条、皮膚のひ薄化・皮下溢血や近位筋萎縮による筋力低下などがある。非特異的な徴候としては、高血圧、月経異常、ざ瘡(にきび)、多毛、浮腫、耐糖能異常や骨粗鬆症などが挙げられる(表)。一般検査では、好中球増多、リンパ球・好酸球減少、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、高カルシウム尿症、高血糖、脂質異常症などを認める。■ 分類概念・定義の項を参照。■ 予後治療の項を参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)高コルチゾール血症に伴う主症候が存在し、早朝安静(30分)空腹時採血時の血中コルチゾール(および尿中遊離コルチゾール)が正常~高値を示す際に、クッシング症候群が疑われる。さらに、同時採血時の血中ACTHが正常~高値(おおむね10 pg/mL以上)の場合は、ACTH依存性クッシング症候群が疑われる(表)。次にACTH依存性を証明するためのスクリーニング検査を行う。(1)一晩少量(0.5 mg)デキサメタゾン抑制試験にて翌朝の血中コルチゾール値が5μg/dL以上を示し、さらに、(2)血中コルチゾール日内変動の欠如(深夜睡眠時の血中コルチゾール値が5μg/dL以上)、(3)DDAVP試験に対するACTH反応性(前値の1.5倍以上)の存在(例外:異所性ACTH症候群でも陽性例あり)、(4)深夜唾液中コルチゾール値(わが国ではあまり普及していない)高値(1)は必須で、さらに(2)~(4)のいずれかを満たす場合は、ACTH依存性クッシング症候群と考えられる。ここで、偽性クッシング症候群(うつ病・アルコール多飲)は除外される。次に、CDと異所性ACTH症候群との鑑別のための以下の確定診断検査を行う。(1)CRH試験に対するACTH反応性(前値の1.5倍以上)の存在(例外:下垂体がんや巨大腺腫の場合は反応性欠如例あり、一方、カルチノイドによる異所性ACTH症候群の場合は反応例あり)(2)一晩大量(8mg)デキサメタゾン抑制試験にて、翌朝の血中コルチゾール値の前値との比較で半分以下の抑制(例外:巨大腺腫や著明な高コルチゾール血症の場合は非抑制例あり、一方、カルチノイドによる異所性ACTH症候群の場合は抑制例あり)(3)MRI検査にて下垂体腫瘍の存在以上の3点が満たされれば、ほぼ確実であると診断される。しかしながら、CDは微小腺腫が多いことからMRIにて腫瘍が描出されない症例が少なからず存在する。その一方で、健常者でも約10%で下垂体偶発腫瘍が認められることから、CDの確実な診断のためにさらに次の検査も行う。(4)選択的静脈洞血サンプリング(海綿静脈洞または下錐体静脈洞)を施行する。血中ACTH値の中枢・末梢比が2以上(CRH刺激後は3以上)の場合は、CDと診断される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 外科的療法CD治療の第一選択は、経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術(trans-sphenoidal surgery:TSS)であるが、手術による寛解率は60~90%と報告されている。完全に腫瘍が摘出されれば術後の血中ACTH・コルチゾール値は測定感度以下となり、ヒドロコルチゾンの補充が6ヵ月~2年間必要となる。術後の血中ACTH・コルチゾール値が高値の場合は腫瘍の残存が疑われ、正常範囲内の場合でも再燃する場合が多いために注意が必要である。術後の非寛解例・再発例は、各々10%程度存在すると考えられている。手術不能例や術後の残存腫瘍に対しては、ガンマナイフやサイバーナイフを用いた定位放射線照射を行う。効果発現までには長期間かかるため、薬物療法との併用が必要である。また、従来の通常分割外照射ほどではないが、長期的には下垂体機能低下症のリスクが存在する。■ 薬物療法薬物療法は、下垂体に作用するものと副腎に作用するものに大別される。1)下垂体に作用する薬剤下垂体腺腫に作用してACTH分泌を抑制する薬剤としては、ドパミン受容体作動薬[ブロモクリプチン(商品名:パーロデル)やカベルゴリン(同:カバサール)]、セロトニン受容体拮抗薬[シプロヘプタジン(同:ペリアクチン)]、持続性ソマトスタチンアナログ[オクトレオチド(同:サンドスタチンほか)]やバルプロ酸ナトリウム(同:デパケンほか)などが使用されるが、有効例は20%未満と少ない。2)副腎に作用する薬剤副腎に作用する薬剤としてはメチラポン(同:メトピロン)やミトタン(同:オペプリム)が用いられる。とくに11β‐水酸化酵素阻害薬であるメチラポンは、高コルチゾール血症を短時間で確実に低下させることから、術前例も含めて頻用される。以前、同薬剤は、診断薬としてのみ認可されていたが、2011年からは治療薬としても認可されている。ミトタンは80%以上の有効性が報告されているが、効果発現までの期間が長く、副腎皮質を不可逆的に破壊することから、使用には注意が必要である。初回のTSSで寛解した場合の予後は良好であるが、腫瘍残存例や再発例は、高コルチゾール血症に伴う感染症、高血圧、糖尿病、心血管イベントなどのため、長期予後は不良である。4 今後の展望CD患者の長期予後改善のためには、下垂体に作用する新規薬剤の開発・実用化が急務と考えられる。近年、5型ソマトスタチン受容体に親和性の高い新規ソマトスタチンアナログSOM230(pasireotide)が開発されたが、わが国では治験中であり、まだ使用開始となっていない。また、最近では、レチノイン酸の有効性も報告されており、今後の臨床応用が期待される。5 主たる診療科内分泌代謝内科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター クッシング病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)

5036.

エキスパートに聞く!「プライマリケア医が診るがん」

プライマリケア医として、どういった基準(タイミング)で専門医へ紹介するべきでしょうか?がんの既往があるか、ないかで分ける必要があります。がんの既往がない患者さんの場合は、諸検査を行い、がんの疑いがある時に、紹介してくださると思います。時々、腫瘍マーカー高値で紹介してくださることがあります。腫瘍マーカーというのは、がんのスクリーニングには推奨されておりませんが、一般検診などで取入れられている場合があります。その場合は、偽陽性であることがありますが、まずは、専門医に紹介してくださってかまいません。がんの既往がある患者さんの場合には、治療後の場合と、治療中の場合に分けられます。手術などの治療後、つまり経過観察している場合には、再発の有無を見極める必要があります。患者さんは、ちょっとした症状で「再発ではないか?」と不安になることが多いのですが、実際患者さんの自覚症状・特に痛みなどの症状から再発が発見されるケースは稀です。がんの再発の多くは無症状のことが多いです。表在リンパ節腫大で発見されることもありますので、身体所見を取っていただきたいです。実際のところ、2~3日で軽快する症状であれば、がんの再発の症状とは考えにくいです。がんの再発を疑う自覚症状としては、持続する症状、徐々に悪化する症状かという2点だと思います。現在がんの治療中の場合:放射線治療を行っている患者さんは、放射線肺臓炎などの放射線有害事象、薬物治療を行っている方では抗がん剤有害事象に注意する必要があります。抗がん剤有害事象では、発熱性好中球減少症が最も注意すべき副作用です。発熱性好中球減少症は、エマージェンシーとなります。また、抗がん剤の最も頻度が高い副作用は、悪心・嘔吐ですが、まずは、一般的な吐き気止めで対処していただければよいと思います。嘔吐が強く脱水が懸念される場合などが紹介のタイミングといえるかも知れません。肺がんの低線量CTを検診に用いると発見率が上がるとの報告を聞きますが、エビデンスはあるでしょうか?ドラフトの段階ではあるもののUS Preventive Task Force(USPSTF:米国予防医学専門委員会)で、Grade Bのrecommendation を出しており、おそらく日本でも推奨グレードは上がってくると思われます。しかしながら、低線量CTが、全ての人に推奨されるのではありません。低線量CTを推奨するきっかけとなった、ランダム化比較試験の対象は、年齢が、55~74歳、喫煙歴が30 pack-year以上(1日喫煙本数x 喫煙年数 ÷20)、または、15年以内に止めているが、それまで喫煙歴があるような、ハイリスクの方に対してのみに有効であったということは覚えておいていただきたいと思います。スパイラルCTのデメリットは偽陽性が出やすいことです。偽陽性が出てしまうとさらなる無駄な検査のみしてしまうことになるという訳です。今後もこの点については検討が必要だと思います。遺伝子検査はなぜ普及しないのでしょうか? 最近話題の乳がんのBRCA1/2遺伝子など一部の遺伝性がんの検査について、欧米諸国では保険適応となっています。この点は、日本は欧米諸国に比べ遅れている点と思います。この背景には認可の問題もあると思いますが、がん遺伝子カウンセラーの育成など体制が整っていないこともあげられるでしょう。在宅医療におけるネットワーク構築について、有効な手段とは?急性期病院と在宅ケアとで密な連携をはかっていくことは、今後のがん診療で最も重要なことと思います。がん緩和ケアの領域では、海外では、ホスピスや緩和ケア病棟は、急性期の症状緩和を担当する緩和ケアのICUのような役割を果たし、症状緩和が得られた時点で、地域の在宅ホスピスと連携をとっています。日本では、在宅で最期を迎える確率は10%、ホスピスが7%ですが、欧米先進諸国での、70~80%(在宅+ホスピスで死亡する割合)と比べると圧倒的に低い数字です。日本では、まだまだ急性期病院で終末期を迎える患者さんが多いことを意味しています。今後、急性期病院と在宅ケア、ホスピスとのさらなるネットワーク作りが必要になってくると思われます。最近の流れとしては、余命告知は行う方向へ向かっているのでしょうか。がんの診断を伝えることに関しては、我が国でもかなりの割合で、診断を伝えるようになってきたと思います。余命告知とは、がんの診断の告知とは大きく異なるものということを認識しなければなりません。余命告知で大きな問題は、多くの医者が、median survival(生存期間中央値)の値を余命と勘違いし、あなたの余命は○ヵ月ですと言っている場合が多いように思います。この数値については大いに注意するべきです。中央値とはご存知の通り、データを小さい順に並べたとき中央に位置する値であり、100人患者さんがいたら、50番目に亡くなった方の生存期間です。がんの生存期間は、患者さんによって非常にバラつきが大きく、正規分布をなさないために平均値ではなく、中央値を使っているだけです。裏を返せば、ある患者集団の生存期間中央値が6ヵ月であった場合、数ヵ月で亡くなる患者さんもいれば、ある患者さんは数年経過しても生きておられるということです。従って、生存期間中央値を患者さん個人の“余命”として当てはめることは、医学的にも間違っているのです。それだけでなく、患者には相当な誤解を与えます。余命6ヵ月と言われれば、患者さんは6ヵ月で自分は死んでしまうと考えます。ある患者さんは、自分は、死亡宣告をされたと、死亡推定日まで、自分の余命はあと、○日と指折り数えていました。中央値ではなく、最悪値としての余命を言う臨床医もいますが、やはり数字を言うことは、患者さんはかなり数字にとらわれてしまいがちですし、誤解も生じやすいため、数字を言うことは慎重にすべきです。可能性・確率を言わない断定的な余命告知することは患者さんを傷つけるだけだと思います。残念ながら、未だがん専門施設でも断定的な余命告知をしている現状があります。大切なことは余命告知ではありません。海外では、余命告知ということはあまり議論にはなっていません。余命というものが、不正確であり、予測不可能なことが多いからです。余命を患者さんに告げることよりも、end of life discussionと言って、どのように最後を迎えるか、どのように生きるかということについて、医療者と患者が話し合いをすることを、ASCO(米国臨床腫瘍学会)でも勧めています。日本でも、このことが必要だと思います。参考:腫瘍内科医 勝俣範之のブログ がん患者さんの食事について。生ものを避けるようにいわれますが、実際にはどのようにアドバイスしたらよいでしょうか?生ものについてのエビデンスなどはあるのでしょうか?生ものを摂取して感染症の発症率が上昇するというエビデンスはありません。ASCOでも、抗がん剤の最中に生ものを避ける必要はないと述べています。血液腫瘍など抗がん剤による強力な免疫抑制が懸念されるのでない限り、生ものでもなんでも好きなものを食べてください、と患者さんへアドバイスすべきでしょう。生ものを避けるより、口腔内に発生する細菌を考慮した口腔ケアの方が重要だと思います。なお、マスクの着用に関しても実はエビデンスはありません。自分の病原菌を周囲に散布しないようにすることはできますが、他人からの感染を予防できるというエビデンスはないのです。

5037.

新規抗α4β7インテグリン抗体、クローン病には?/NEJM

 クローン病に対する新規抗α4β7インテグリン抗体vedolizumabの有効性と安全性について、米国・カリフォルニア大学のWilliam J. Sandborn氏らが行ったGEMINI2試験の結果が報告された。活動期クローン病成人を対象とした検討で、6週時点で寛解を達成していた割合は14.5%でプラセボ投与群より有意に高率であったが、クローン病活動指数(CDAI)スコアが100ポイント以上減少(CDAI-100)の達成は有意差がなかった。また、寛解導入が有効であった患者について、治療を継続した群はプラセボに切り替えた群と比べて、52週時点に寛解であった割合が有意に高率であったことが示された。NEJM誌2013年8月22日号掲載の報告より。なお、vedolizumabの潰瘍性大腸炎に体する有効性と安全性を検討したGEMINI1試験では、その有用性が示されている(ジャーナル四天王2013年9月2日配信号)。活動期クローン病成人患者を対象にvedolizumab 300mg静脈内投与療法について評価 GEMINI2試験は、クローン病に対するvedolizumabの有効性と安全性について、寛解導入試験と寛解維持試験を別々に行い評価した統合的研究の第3相無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照試験であった。39ヵ国285施設から参加した、活動期のクローン病成人患者(期間3ヵ月以上、CDAIスコア[範囲:0~600]が220~450)を対象に、vedolizumab 300mg静脈内投与療法について評価した。 寛解導入試験は、vedolizumab(220例)またはプラセボ(148例)の投与群に無作為に割り付けられたコホート1(368例)と、非盲検下でvedolizumabの投与を受けたコホート2(747例)について検討した。両コホートとも投与は0、2週に行われ、6週時点で疾患の状態について評価した。 寛解維持試験は、vedolizumabが有効だった461例を、引き続きvedolizumabを8週間ごとに投与する群、または同4週間ごとに投与する群、プラセボに切り替える群に無作為に割り付け、52週まで投与を行い評価した。6週時点のCDAI-100達成は、vedolizumab群31.4%、プラセボ群25.7% 寛解導入試験について、無作為に割り付けられたコホート1において、6週時点でCDAIスコア150以下の臨床的寛解であった患者の割合は、vedolizumab群14.5%、プラセボ群6.8%だった(p=0.02)。CDAI-100の達成は、それぞれ31.4%、25.7%だった(p=0.23)。 コホート1および2の患者で導入療法が有効だった患者で52週時点において臨床的寛解だったのは、プラセボ投与群21.6%であったのに対し、vedolizumabの8週ごと投与群は39.0%(対プラセボp<0.001)、同4週ごと投与群は36.4%だった(同p=0.004)。 安全性に関する評価では、抗vedolizumab抗体が発現した患者は4.0%だった。vedolizumab投与群はプラセボ投与群と比べて、鼻咽頭炎の発生頻度が高かった。一方で頭痛と腹痛の発生頻度は低かった。またvedolizumabはプラセボと比較して、重篤な有害事象(24.4%対15.3%)、感染症(44.1%対40.2%)、重篤な感染症(5.5%対3.0%)の発生率が高かった。

5038.

喫煙が死亡に及ぼす影響は、人種差でこんなにも違う/Lancet

 南アフリカにおける喫煙死亡リスクは、白人・黒人の混血“カラード”において最も高く、非喫煙者・元喫煙者との比較でおよそ5割増に上ることが明らかにされた。最もリスクが低いのは黒人で、同2割弱増であった。オーストラリア・Cancer Council NSWのFreddy Sitas氏らが、南アフリカの中高年50万人弱について行ったケースコントロール研究の結果、報告した。Lancet誌2013年8月24日号掲載の報告より。35~74歳で死亡した48万1,640人についてケースコントロール研究 研究グループは、南アフリカで1999~2007年の間に、35~74歳で死亡が確認された48万1,640人について、ケースコントロール研究を行い、カラード、白人、黒人それぞれの喫煙関連死亡率を調べた。被験者の性別、教育レベル、5年前の喫煙の有無、基礎疾患などについて情報を得て分析を行い、喫煙関連の疾患による死亡と、それ以外の原因による死亡を比較した。なお、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症や肝硬変、外的要因、精神障害が原因の死亡は除外した。喫煙関連死亡率はカラード男性27%、同女性17% その結果、カラードにおける喫煙率は男女共に高く、カラード喫煙者の全死亡率は、非喫煙者・元喫煙者との比較において、男女共に約50%高いことが認められた(男性の相対リスク:1.55、95%信頼区間:1.43~1.67、女性の相対リスク:1.49、同:1.38~1.60)。白人も、男性のリスクはカラードを下回ったが同様の傾向が認められた(男性の相対リスク:1.37、同:1.29~1.46、女性の相対リスク:1.51、同:1.40~1.62)。一方、黒人では、喫煙者の死亡リスクの増大は20%未満だった(男性の相対リスク:1.17、同:1.15~1.19、女性の相対リスク:1.16、同:1.13~1.20)。 喫煙関連死亡率は、男性では、カラード27%(2万767人中5,608人)、白人14%(2万8,951人中3,913人)、黒人8%(26万4,011人中2万398人)、女性では、カラード17%(1万5,593人中2,728人)、白人12%(1万7,899人中2,084人)、黒人2%(20万5,623人中4,038人)だった。 アフリカでは数十年前から喫煙者の存在が認められているが、現状の喫煙パターンがもたらす最大かつ最終的な影響については不明である。今回の検討において、南アフリカ中高年の喫煙パターンと死亡との関連、およびそのリスクの大きさが明らかになったことから、著者は、同様のリスクがアフリカ全体の若い喫煙者にもたらされることが暗示されると結論している。

5039.

ピロリ菌感染に対する順次療法のメタ解析とシステマティックレビュー(コメンテーター:上村 直実 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(128)より-

ピロリ菌感染に対する世界的な標準的除菌治療として使用されている3剤併用療法(プロトンポンプ阻害薬:PPI+amoxicillin:AMPC+clarithromycin:CAMまたはmetronidazole:MNZ)の除菌率が80%以下に低下していることが、大きな問題となっている。 今回のイタリアからの報告では、PPI+AMPCの2剤併用5日間施行後に、PPI+CAM+ニトロイミダゾール誘導体の3剤併用を5日間投与する順次療法の有効性を評価するために、無作為化比較試験46試験(n=13,532)を対象として、文献を系統的にレビューしメタ解析を行った結果、順次療法(5,666例)の除菌率は84.3%(95%CI:82.1-86.4)であり、7日間ないしは10日間の標準的3剤併用療法よりも有意に高率(RR:1.21、95%CI:1.17-1.25、RR:1.11、95%CI:1.04-1.19)で、1次除菌療法としての順次療法の有用性が示唆されている。 わが国の保険診療では、ピロリ菌感染胃炎に対する除菌治療が2013年2月に承認され、除菌治療の適用が大幅に拡大されている一方、ピロリ菌感染に対する1次除菌治療として承認されているのはPPI+AMPC+CAM(PAC療法)のみである。本邦でもCAM耐性率が20%を超え、PAC療法の除菌率が70%台に低下しているが、2次治療に承認されているPAM療法(CAMをMNZに変更したレジメン)の除菌率は90%以上に保たれている。 すなわち、医療保険ではカバーされない3次治療を必要とする症例は、現時点ではまだ少ないが、今後、2次除菌失敗例の増加を考慮した3次除菌治療に関するエビデンスの構築が重要となっている。

5040.

インフルエンザのリスク因子、エビデンスが弱い/BMJ

 インフルエンザ関連合併症のリスク因子を定義するエビデンスのレベルは低いことが、カナダ・マックマスター大学のDominik Mertz氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかにされた。インフルエンザ発症において一部の患者集団では合併症の併発や重症化するリスクが報告され、ハイリスク集団にワクチン接種を優先する勧告がWHOおよび世界各国で行われている。しかし、これまで同集団を定義するエビデンスの質について包括的かつシステマティックなレビューは行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年8月23日号掲載の報告より。234論文61万例データをメタ解析 研究グループは、季節性またはパンデミック・インフルエンザ患者における重症アウトカムのリスク因子の評価を目的にシステマティックレビューを行った。 Medline、Embase、CINAHL、Global Health、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをデータソースに、2011年3月までに公表された論文について検索し、インフルエンザの罹患者でリスク因子とアウトカム(死亡、人工呼吸器装着、入院、ICU入室、肺炎、複合アウトカムなど)の組み合せについて興味深い報告がされていた観察研究を選定した。 エビデンスの評価は、バイアスリスクを評価するNewcastle-Ottawaスケールによる評価と、GRADEフレームワークを用いて行った。 検索の結果、6万3,537論文の中から、包含基準を満たした234論文、61万782例分のデータを特定し解析に組み込んだ。いかなるリスク因子もエビデンスレベルが低い 解析の結果、インフルエンザの重症アウトカムに関するリスク因子のエビデンス支持は、Newcastle-Ottawaスケール評価で限界値から0の範囲であった。これはとくに、2009H1N1パンデミック以外のデータおよび季節性インフルエンザの研究データが、相対的に不足していたことと関連していた。 また、公表論文は、検出力の不足と交絡因子についての補正の不足などが広範囲に及んでおり、解析には限りがあった。たとえば、補正後推定リスク値が得られたのは260試験のうち39例(15%)で、そのうちリスク因子とアウトカムの比較のデータが得られたのは5%のみにとどまった。 エビデンスのレベルは「いかなるリスク因子」においても低かった。死亡のオッズ比は、パンデミック・インフルエンザ2.77(95%信頼区間[CI]:1.90~4.05)、季節性インフルエンザ2.04(同:1.74~2.39)だった。同様に、肥満症については、パンデミック2.74(同:1.56~4.80)、季節性30.1(同:1.17~773.12)、心血管疾患は同2.92(1.76~4.86)と1.97(1.06~3.67)、神経筋疾患は同2.68(1.91~3.75)と3.21(1.84~5.58)だった。 その他のすべてのリスク因子に関してもエビデンスレベルは非常に低かった。よく言われる妊娠や民族性の性質をリスク因子として同定することはできなかった。一方で、分娩後4週未満の女性において、パンデミック・インフルエンザの死亡リスクが有意に高いことが認められた(4.43、1.24~15.81)。 上記の結果を踏まえて著者は、「インフルエンザ関連の合併症に関するリスク因子を支持するエビデンスレベルは低く、よく言われる妊婦や民族性のリスク因子もリスク因子として確認することはできなかった。厳密で十分検出力のある研究が必要である」と結論している。

検索結果 合計:5541件 表示位置:5021 - 5040