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エボラ、赤道アフリカと西アフリカは別種/NEJM

 西アフリカで大規模に広がり続けるエボラウイルス病(EVD)の流行の一方で、赤道アフリカのコンゴ民主共和国で7回目のEVDアウトブレイクが報告されたのは、2014年7月26日のことだった。ガボン共和国・世界保健機関(WHO)研究協力センターのGael D Maganga氏らは、これら近接する2つの地域における同時期のアウトブレイクの関連を調査した。その結果、赤道アフリカのエボラウイルスは西アフリカとは異なることが判明したという。NEJM誌オンライン版2014年10月15日号掲載の報告より。サルから感染した妊婦と接触した医療者が感染源に 研究グループは、標準的なWHOのウイルス性出血熱臨床調査票を用いて、コンゴ民主共和国における疫学および臨床データを収集した。患者は、EVDに関して、「感染が疑われる(suspected)」「感染の疑いが濃厚(probable)」「感染確定(confirmed)」「非感染(non-EVD)」のいずれかに分類された。 個々の患者の接触者を追跡することで感染源の同定を試みた。また、採取された血液サンプルを用いて、特異的なRT-PCR法による診断を行い、ウイルス単離、ゲノム・シーケンシング、系統樹解析を実施した。 今回のEVDアウトブレイクは、同国Equateur州Boende市(人口約4万5,000人)近郊のInkanamongo村(首都キンシャサから直線距離で北西に約700km)で始まり、この地域に限定されていた。最初の感染例(index case)は同村に住む妊婦で、夫が見つけたサル(種は不明)の死体を解体したところ、2014年7月26日に発症し、8月11日に死亡した。 その後、1名の医師を含む4名の医療従事者が、妊婦と胎児を別個に埋葬するという現地の慣習に基づき、死亡した妊婦の帝王切開を行ったところ全員が感染し、死亡した。これらの医療従事者が、その後の感染源となっていた。死亡率74%、潜伏期間16日、迅速な対応で早期終息か 2014年7月26日~10月7日までに、感染疑い3例、感染濃厚28例、確定38例の69例(医療従事者8例を含む)が報告された。男性が33例、女性は36例で、21~60歳が80%を占めた。感染疑いの3例は、のちに非感染であることが判明している。感染濃厚例と確定例のうち49例(男性21例、女性28例、5歳未満の3例を含む)が死亡し、死亡率は74%(49/66例)だった。 EVD患者との接触から発症までの期間中央値は16日(3~27日)で、西アフリカの状況と類似していた。死亡例のうち32例の解析では、発症から死亡までの期間中央値は11日(1~30日)であった。8例の医療従事者(感染濃厚4例、確定4例)はすべて死亡している。 非感染例に比べ感染濃厚例および確定例で頻度の高い症状として、発熱、頭痛、下痢、悪心・嘔吐、疲労感、食欲不振、筋肉痛、嚥下困難、結膜炎、血便および血液の混じる吐瀉物が認められた。 index case以外は、すべてヒト-ヒト感染であった。アウトブレイクの最初の24日間にEVDと診断された29例のうち21例は、index caseと身体的またはその体液に接触していた。6回の発生のピークがみられ、8月17~24日の週の報告例数が最も多く、その後は急速に減少。10月7日の時点で、10月4日を最後に感染の報告はない。 また、index caseと接触した21例を除いた場合の平均再生産症例数(reproduction number、1人の感染者が再生産する2次感染者数)は0.84であり、感染持続の閾値である1を下回ったことから、今後、感染は終息に向かうと予測された。 一方、ゲノム・シーケンシングでは、今回のアウトブレイクの原因ウイルスは1995年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)のKikwit地区で発生したアウトブレイクの原因ウイルスとの遺伝学的同一性が99.2%で、現在西アフリカで進行中のアウトブレイクで同定されたウイルスとの遺伝学的同一性は96.8%であったことから、これらは別種のウイルスであると考えられた。 著者は、赤道アフリカのアウトブレイクが西アフリカよりも小規模であった理由のうち最も説得力のある要因として、(1)西アフリカとは対照的に、遠隔の森林地帯であり、人口密度が低く、交通機関が未発達でヒト間の接触が少なく時間もかかる地域であること、(2)過去6回のEVD流行の経験があり準備が整っていたため、対応が迅速で効果的であった点を挙げている。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も

 現在、エボラ出血熱が西アフリカを中心に蔓延している。厚生労働省検疫所は、WHOの情報として10月27日の段階で世界のエボラウイルス病について、疑い例を含む感染者が1万3000人を超え、そのうち死者が5,000人近くにのぼっていることを報告している。 最近では、西アフリカのマリで初めてとなるエボラウイルス病の確定症例が報告された。この患者は2歳の女児でギニアからの移動中に発症し、マリにあるFousseyni Daou病院を受診したが助からなかった。WHOのチームはすでにマリに配置されており、感染予防と制御、接触者の追跡、医療従事者の訓練に関して人的支援を続けている。 9月30日に初めての感染が報告されたアメリカでは、現在4例の感染が発生し、うち1例が死亡している。2例は、すでに退院しているが、残る1例は、ニューヨークで隔離され治療を受けている。接触可能性のある人については現在も監視が続けられている。 WHOが感染リスクの高い集団として挙げている医療従事者でも感染および死亡数が増加している。10月27日現在で、医療従事者におけるエボラウイルス病の感染は500名を超え、270名以上が死亡している。WHOは感染原因の調査を実施するとともに、全ての医療従事者が暴露リスクを最小限にとどめるための訓練準備、および個人用防護具を十分に確保すべく徹底した努力を続けている。 感染が広がる一方で、セネガルとナイジェリアでは、感染発生後の対策に成功し、それぞれ10月17日、19日に終息が宣言された。スペインでもただ一人の患者が検査の結果、1回目、2回目とも陰性であったため、このまま42日間新たな感染が発生しなければ終息が宣言される、とWHOは伝えている。詳しくは厚生労働省検疫所HPをご参照ください。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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発見者ピーター ピオットが語るエボラの今

 2014年10月30日、都内にて公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)メディアセミナーが開催され、エボラウイルス発見者の1人であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏が「エボラ出血熱やその他の感染症への対応と課題」について講演した。記事の続編はこちら(エボラ熱“最後の1人まで終わらない”と発見者ピオット氏)。予測できなかった今回のアウトブレイク エボラ出血熱は、1976年に発見されて以来25の集団発生を起こしているが、すべて数ヵ月で完全に封じ込められている。その多くはコンゴ、ウガンダなどの中央アフリカでの発生であった。今回の西アフリカで起こった最大の集団発生はすべてが異なっており、誰も予測できなかったという。 今回のアウトブレイクの始まりは、昨年(2013年)12月 。その3ヵ月となる3月25日、WHOがギニアでエボラ集団発生が報告されたとの声明を発表。国際NGO、国境なき医師団などが急遽、発生地ギニアに入り、隔離ユニットによる診療を開始した。しかし、ギニアにおける状況はさらに悪化し6月には首都でも発生。この時点で流行は加速し、隣国リベリア、シエラレオネでも発生している。その後、さまざまな拡大防止策を実行しているが、今日に至っても集団発生は継続しており、シエラレオネ、リベリアそしてギニアの一部で発生が多い。西アフリカの制圧が唯一の予防策 発生地から遠く離れたスペイン、米国でもエボラによる死者が出ている。グローバルな時代の今日、流行を防止する策として国境閉鎖、渡航者のスクリーニングがあるが、科学的には有効とはいえない。唯一の予防策は、西アフリカで封じ込めることであると、ピオット氏はいう。 しかし、ここにきて国際的な動きが始まった。今回の初めての集団発生の報告から5ヵ月を要しているものの、8月にはWHOがPublic Health Emergency of International Concern(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を宣言した。それに伴い、各国政府も活動を開始。米・英国も軍、関係者を派遣し、発生地における病院の建設、物流サポートを開始した。アウトブレイク制圧は初動がカギ この予想外の流行の背景には、初動の対応の不備があるという。ナイジェリアの数十年にわたる内戦、ギニアの政治腐敗、リベリアの医療サービスの崩壊(多くの医師が国外に去り、2010年には10万人に1人以下の医師しかいない)。これらのことが対応を遅らせ、流行がコントロールできない状態に陥らせてしまった。 このようななか、明るい兆しもある。セネガル、ナイジェリア、コンゴでは自国でエピデミックを制圧している。これは隔離、ケア提供、接触者の検疫という非常に単純な方法によるものである。つまり、初期対応が良ければ制圧は難しくないのである。 今日のようなグローバル世界では、いや応なく感染症の流行は台頭する。日本のような感染症の少ない国でも、流行の危険にさらされている。そのため、感染症には今後も注目し続けて欲しいと、ピオット氏は述べた。関連記事 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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今シーズンのタミフル供給計画を発表

 中外製薬株式会社は29日、スイスのF. ホフマン・ラ・ロシュ社から輸入し、製造・販売している抗インフルエンザウイルス剤「タミフルカプセル75」「タミフルドライシロップ3%」(一般名:オセルタミビルリン酸塩)(以下、タミフル)について、2014-2015年シーズン(以下、今シーズン)に向けての供給計画を発表した。 今シーズンのタミフル供給計画(2014年10月29日時点)は以下のとおり。 タミフルカプセル75約400万人分 タミフルドライシロップ3%約300万人分 合計約700万人分 同社は、インフルエンザウイルスの流行拡大の状況に応じて追加供給も検討しているという。詳細は中外製薬のプレスリリースへ

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米J&J エボラワクチン生産拡大を発表 2億ドル投入

 米国ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、米J&J)は22日(現地時間)、同社の医薬品部門であるヤンセンファーマシューティカル(以下、米ヤンセン)で開発中のエボラワクチン計画の加速と生産の大幅拡大に向けて最高2億ドルの投入を決定したと発表した。日本のヤンセン ファーマ株式会社が30日に報告した。米J&Jは、世界保健機関(WHO)、国立アレルギー感染病研究所(NIAID)をはじめとする米国の主な関係機関、政府、公共衛生機関と、ワクチン製剤の臨床試験、開発、生産、配布で協力体制にある。 ワクチン製剤はアメリカ国立衛生研究所(NIH)との共同研究で発見されたもので、米ヤンセンの予防ワクチンとデンマークのバイオ企業Bavarian Nordic社のワクチンを混合したもの。この混合ワクチンは前臨床試験で有望な結果が得られ、現在、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカの健康な被験者を対象として安全性と免疫原性を調べる試験が1月初旬から予定されている。米ヤンセンは、2015年に100万回分以上のワクチン製剤の生産を目指しており、そのうち25万回分は2015年5月までに幅広く臨床試験で用いられる予定とのこと。詳細はヤンセン ファーマのプレスリリースへ

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髄膜炎ワクチン、費用対効果は?/BMJ

 英国・ブリストル大学のHannah Christensen氏らは、髄膜炎菌血清群Bワクチン「Bexsero」接種導入の費用対効果について、英国民0~99歳を接種対象としたモデル研究の再評価を行った。結果、乳児への定期接種が最も効果がある短期的戦略であり低費用で費用対効果があるとしたうえで、長期的戦略の可能性として、乳児と青年への接種プログラムが大幅な症例削減につながることを報告した。同ワクチンは欧州で2013年1月に承認され、英国では同年7月にJoint Committee on Vaccination and Immunisationが、先行研究から費用対効果があるとして導入を助言。それに対し、導入を呼びかけてきた慈善団体や臨床医、研究者や政治家から費用対効果について十分な再検証を求める声が上がり本検討が行われたという。BMJ誌オンライン版2014年10月9日号掲載の報告。モデル研究で、ワクチン導入の費用対効果を検証 研究グループは、Bexsero接種導入の疫学的および経済的影響の予測と、英国ワクチンポリシーに情報を提供するため、数学・経済モデルを用いた検討を行った。 0~99歳の英国民集団を対象に、伝播力モデルを使ったシミュレーションによりワクチン戦略の影響を調べた。モデルには最新エビデンスのワクチン特性、疾病負荷、治療コスト、訴訟コスト、疾患により損失したQOLをパラメータとして含み、また家族やネットワークメンバーへの影響なども含んだ。ワクチン接種の健康への影響は、回避症例および獲得QALYにより評価した。 主要評価項目は、ワクチン接種導入による、回避症例と獲得QALY当たりのコスト。QALY獲得に要する接種プログラムの費用が2万ポンド未満の場合に費用対効果があるとした。乳児定期接種は5年で26.3%減、乳児・青年接種は30年後に51.8%減の可能性も 結果、短期的には、乳児への定期接種が最も症例の減少が大きかった(最初の5年間で回避症例は26.3%)。この戦略は費用対効果も認められ、接種にかかる費用は1回3ポンドで、良好な仮定(接種率88%の場合、保菌に対する効果は30%、疾患に対する効果は95%など)およびQOL調整因子がもたらされる可能性があった。 長期的には、乳児および青年への組み合わせ接種プログラムが、接種により髄膜菌伝播を阻害できれば、より多くの症例を予防できることが示された(30年後に51.8%)。接種にかかる費用は1回4ポンドで費用対効果も認められた。 なお、保菌率を30%まで減らした場合、青年期の予防接種のみで良好な戦略的経済効果が得られるが、十分な症例減少には20年以上を要することも示されたという。 これらの結果を踏まえて著者は、「乳児の定期接種が最も有効な短期的戦略であり、費用も低く費用対効果がある」としたうえで、「もしワクチン接種が思春期の保菌を減少すれば、乳児と青年へのワクチン接種の組み合わせが長期的には大幅な症例の減少をもたらすものとなり、費用対効果も他と負けない可能性がある」と述べている。

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brodalumab、中等度~重度乾癬への長期効果確認

 尋常性乾癬に対する、ヒト抗インターロイキン17受容体Aモノクローナル抗体brodalumabの、長期(120週)安全性と有効性の検討結果が報告された。中等度~重度の同患者に対し試験期間中、持続的な臨床効果と良好な安全性プロファイルが示されたという。カナダ・Probity Medical ResearchのKim Papp氏らが報告した。中等度~重度尋常性乾癬に対するbrodalumabの有効性は、同氏らが行った12週間の用量範囲探索のためのプラセボ対照試験で示されていた。本検討は、同試験の延長試験として行われた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年10月10日号の掲載報告。 本検討において被験者は、brodalumab 210mgを2週間ごとに投与されていた。また、プロトコルについて、体重100kg以下の患者については、用量を140mgに減量し、その後、効果が不十分な患者については210mgに増量すると改められていた。 有効性は、静的総合評価指標(sPGA)を用いて測定し、PASIスコアで75%以上(PASI-75)、90%以上(PASI-90)、100%改善(PASI-100)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者181例のうち、144例が120週の治療を完了した。・sPGA評価スコアの達成が「明らか/ほぼ明らか」および「明らか」であった患者は、12週時点ではそれぞれ90%、63%であり、120週時点では72%、51%であった。・12週時点の各奏効率、PASI-75(95%)、PASI-90(85%)、PASI-100(63%)は、120週時点まで持続していた(それぞれ86%、70%、51%)。・最も頻度が高かった有害事象は、鼻咽腔炎(26.5%)、上気道感染症(19.9%)、関節痛(16.0%)、腰痛(11.0%)であった。・4例の患者で、グレード2の好中球減少症が報告された。・なお、本検討は非盲検下での延長で対照群が設定されず、結果は限定的であった。

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結核性心膜炎に対するプレドニゾロンおよび免疫補助療法(解説:小金丸 博 氏)-268

結核性心膜炎は、医療資源の限られたアフリカやアジアの国々において重大な問題となっている。とくにHIV感染者では合併頻度が高く、死亡率も高い。グルココルチコイドを併用することで炎症反応が弱まり、心タンポナーデや収縮性心膜炎による死亡のリスクが低下するとの報告もあるが、その有効性は確立しておらず、米国と欧州のガイドラインでは相反する勧告が示されている。 本研究は、結核性心膜炎を疑う患者に対するプレドニゾロン、またはMycobacterium indicus praniiによる免疫療法の有効性と安全性を調べるためにアフリカで行った、2×2 要因デザインのプラセボ対照ランダム化比較試験である。 1,400例の成人患者をプレドニゾロン投与群とプラセボ投与群に割り付けし、さらにそれぞれM. indicus pranii注射群とプラセボ注射群に割り付けした。死亡、心膜穿刺を要する心タンポナーデ、収縮性心膜炎の3項目のいずれか1つ以上の発生率を主要評価項目とした。M. indicus praniiは非病原性の迅速発育抗酸菌であるが、免疫付与による抗炎症効果を期待して投与された。本試験に参加した患者の3分の2がHIV感染者であった。 主要評価項目に関して、プレドニゾロン投与群とプラセボ投与群、M. indicus pranii注射群とプラセボ注射群は、ともに有意差を認めなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.77~1.18、およびハザード比:1.03、95%信頼区間:0.82~1.29)。 ただし、プレドニゾロン投与群ではプラセボ投与群と比較して、二次評価項目である収縮性心膜炎の発生率と、入院率を有意に低下させた(ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.36~0.87、およびハザード比:0.79、95%信頼区間:0.63~0.99)。安全性に関しては、プレドニゾロン投与群とM. indicus pranii注射群では、両群ともプラセボ群と比較してがんの発生率が有意に増加した。これらは主にカポジ肉腫などHIV感染症に関連したがんだった。 本研究では、心嚢液の抗酸菌塗抹検査、培養検査、あるいは核酸検査が陽性、心膜組織で乾酪性肉芽腫の存在あるいは核酸検査が陽性、のいずれかを満たした症例を“確定例”と定義しているが、確定例は17.1%に過ぎず、多くは“疑い例”だった。 そのため、“疑い例”の中に結核性心膜炎以外の疾患が紛れ込んでいる可能性は否定できない。しかしながら、“疑い例”の診断基準が妥当と思われること、結核性心膜炎の確定診断は難しく、臨床の現場でも“疑い例”に対して治療していることのほうが多いと思われることから、本試験の結果は実臨床の参考にすることができると考える。 主要評価項目では有意差を認めなかったものの、プレドニゾロン投与群で収縮性心膜炎の発生率や入院率が有意に減少した点は、臨床的に意義あることだと考える。しかし、HIV感染者ではプレドニゾロン投与によりがんの発生率が増加するため、結核性心膜炎患者に一律に投与するのではなく、収縮性心膜炎を起こすリスクが高い患者に選択的に投与できれば理想的である。大量の心嚢液貯留や、心嚢液中の炎症マーカー高値などが参考になるかもしれない。 M. indicus praniiによる免疫療法は、結核性心膜炎に対する抗炎症効果の機序もわかっておらず、本試験の結果からも、現時点では有効な治療法ということはできない。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第13回

第13回:潜在性結核感染症について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの現場では、結核の診断は悩まされるテーマの1つです。私も、年に数回結核と遭遇しますが、結核を疑わないと診断できないため、リスクの高い患者さんでは意識して診療するようにしています。世界的には潜在性結核感染症に対する治療の必要性についての認識が高まっており、今回American Family Physicianに潜在性結核感染症についてのまとめが掲載されたため、紹介します1) 。 なお、アジアは結核感染率が高いと紹介されていますが、本文中の図によるとアジアの中では日本と中東では感染率が低いとのことで意外でした。ちなみに、日本の新規登録結核患者数は毎年約2万人で推移し、そのうち新規登録潜在性結核感染症は平成25年で7,147人でした2) 。 以下、American Family Physician 2014年6月1日号1) より要旨(抜粋、意訳)潜在性結核感染症は、結核菌に感染しているが症状がなく、他者への感染力も持たない状態である。活動性結核へ進展する生涯リスクは5~10%であり、このうちの半分は初感染から2年以内に発症する。米国では、活動性結核の80%以上が潜在性結核感染症からの発症であるため、潜在性結核感染症へのスクリーニングと早期治療が必要と考えられている。潜在性結核感染症のスクリーニングは、高リスクグループにのみ推奨される。米国における高リスクグループとは、感染率の高い国(アフリカのほとんどの国、アジア、東ヨーロッパ、中米、南米)からの過去5年以内の移民、医療従事者、収容施設の入居者や労働者、ホームレスなどである。とくに、アジアからの移民は、非ヒスパニック系白人の25倍とリスクが高い。低リスクグループでは、仕事や旅行等で高リスク集団に入る者にのみスクリーニングが必要となる。スクリーニングに際しては、まず高リスク者を問診票で識別する。スクリーニング検査としては、ツベルクリン皮膚試験(tuberculin skin test;以下TST)と、IFN-γ刺激試験(interferon-gamma release assay;以下IGRA)がある。TSTは、評価のために再診が必要となること、BCG接種者(とくに接種後10年未満)や環境中の抗酸菌曝露者では偽陽性となるおそれがあるなど、いくつか限界がある。IGRAはこれらの欠点をカバーするが、費用と血液採取を要する点で制約される。また、5歳未満の小児では結果が不安定となるためTSTが望ましい。潜在性結核感染症に対しては、TSTとIGRAの有用性を比較した研究が乏しい。潜在性結核感染症の治療は、活動性結核を除外(患者の病歴、身体診察、胸部レントゲン撮影し、レントゲン異常があった場合は3回の喀痰塗抹検査)してから行うべきである。標準治療のイソニアジド9ヵ月投与は、効果は高いが完遂率が低いため、期間や薬剤の異なる複数のレジメンがある。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Hartman-Adams H, et al. Am Fam Physician. 2014; 89: 889-896. 2) 厚生労働省. 平成25年結核登録者情報調査年報集計結果(概況).

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事例26 細菌培養同定検査の査定【斬らレセプト】

解説事例では左下肢の蜂窩織炎の患者に、D018細菌培養同定検査を実施したところC事由(医学的理由による不適当)で査定となった。レセプトには静脈採血があり、D018「3」細菌培養同定(血液)にて請求されている。血液に対して細菌培養同定を行う必要性のある病名が病名欄に表示されていない。嫌気性培養加算も算定されているが、血液に対して行う場合は、2ヵ所からの血液採取が奨励されており2回算定できる。事例では1回の算定であることと、診療報酬では「血液又は穿刺液」と記載されていることから、同一区分の穿刺液の入力誤りも考えられる。しかし、この区分の穿刺液は「胸水、腹水、髄液及び関節液」と規定されているので、蜂窩織炎の穿刺液に対しては適用されない。D018 「5」その他の部位からの検体の区分が適用される。いずれの理由にしても、レセプト上からは、医学的に不適当であることに変わりがないためC事由で査定となったものであろう。この事例では、蜂窩織炎からの穿刺液に対して検査が行われていた。医師が選択を迷わないように電子カルテの表示を変更した。

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新たな鳥インフルエンザワクチン Anhuiの免疫原性/JAMA

 米国・ワシントン大学医学部のRobert B. Belshe氏らは無作為化試験にて、最新の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス株であるA/Anhui/01/2005(安徽株)を抗原株とした不活化インフルエンザワクチンの免疫原性と安全性を評価した。被験者は、米国FDAが新型インフルエンザのパンデミックワクチンとして承認している、A/Vietnam/1203/2004(ベトナム株)ワクチン(90μg、アジュバント非添加、2回接種)を1年前に接種した人であった。また同ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチン(MF59アジュバント添加・非添加)の評価を行った。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。ベトナム株接種者に安徽株を接種、また未接種者へ安徽株を接種し評価 アジュバント非添加のインフルエンザA(H5N1)ワクチンであるベトナム株ワクチンは、免疫原性が低いことが示されていた。しかし、その接種により接種者に免疫プライミング(免疫記憶を誘導する効果)がもたらされ、新たなH5型鳥インフルエンザワクチンの単回接種により二次抗体反応(ブースター効果)を示す可能性が示唆されていた。そこで本検討では、安徽株ワクチンの追加接種による接種免疫プライミングを評価すること、そしてベトナム株ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチンの用量反応効果を調べることを目的とした。 試験は米国内8クリニックにて、1年前にベトナム株ワクチンを接種した72例と、未接種の565例の健康成人(18~49歳)を対象に行われた。被験者登録は2010年6月に開始され、2011年10月まで追跡した。 ベトナム株ワクチン接種者72例は、ベトナム株接種回数1回または2回の2群を、安徽株ワクチン(3.75μg)のMF59アジュバント添加・非添加別に分けた計4群に無作為に割り付けられ評価された。 一方、ベトナム株ワクチン未接種群565例は、5種の安徽株ワクチンの抗原用量設定に加えMF59アジュバント添加の有無、およびプラセボの合計10接種群に無作為に割り付けられ評価された(安徽株3.75μg、7.5μg、15μg、45μgは各々アジュバント添加・非添加群、90μgはアジュバント非添加群のみ)。 主要免疫原性アウトカムは、最終接種後1ヵ月(28日)時点および6ヵ月(180日)時点の赤血球凝集抑制反応(HI)検査による抗体価であった。主要安全性アウトカムは、0日、7日時点で評価した局所および全身性の有害事象と、重大有害事象とした。ベトナム株の免疫プライミングを確認 ベトナム株ワクチン接種者は、安徽株ワクチンによる1回接種で二次抗体反応を示したことが確認された。28日時点で1:40以上のHI抗体価を示したのは21~50%であった。しかし、HI抗体価達成者(1:40以上)が、ベトナム株1回接種群ではアジュバント添加群で高率だったのに対し、2回接種群ではアジュバント非添加群で高率であるなど、アジュバント添加の効果については、関連性が確認されなかった。 ワクチン未接種者への検討からは、アジュバント添加安徽株ワクチンは7.5μg量が適量であることが示された(幾何平均抗体価[GMT]:63.3、95%信頼区間[CI]:43.0~93.1)。アジュバント非添加の同ワクチンでは用量依存的に抗原反応は高まり、最大用量90μg群で最も高かったものの、GMTは28.5(95%CI:19.7~41.2)であった。 局所または全身性反応は、安徽株ワクチン7.5μgアジュバント添加群でそれぞれ78%(40/51例)、49%(25/51例)であったのに対し、同90μg群アジュバント非添加はそれぞれ88%(50/57例)、51%(29/57例)であった。 なお、概して抗体半減期は短く、全接種群のHI抗体価は180日時点までに1:20未満に低下していた。

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HALLMARK-DUAL 試験:C型慢性肝炎に対する治療法の開発は最終段階へ!―IFN freeのアスナプレビル・ダクラタスビル併用療法の報告―(解説:中村 郁夫 氏)-266

C型慢性肝炎のうち、1型高ウイルス量の患者に対する現時点での標準治療はペグインターフェロン(PEG-IFN)とリバビリン・プロテアーゼ阻害薬(シメプレビル、バニプレビル、テラプレビル)の併用療法(24週)である。この治療法により、Sustained Virological Response(SVR:治療終了後6ヵ月の時点での血中HCV陰性化)を得られる頻度は、初回治療例で約85~90%とされている。 さらなる治療効果の向上・患者の負担軽減のために、さまざまな取り組みが進められている。その一つが、IFN freeの経口薬のみの併用療法の開発である。有用な薬剤として、(1)NS3プロテアーゼ阻害薬、(2)NS5Bポリメラーゼ阻害薬(核酸型・非核酸型)、(3)NS5A阻害薬が挙げられる。 本論文は、日本から発信された1b型のC型慢性肝炎に対するアスナプレビル(NS3プロテアーゼ阻害薬)・ダクラタスビル(NS5A阻害薬)併用療法を、18ヵ国116施設で行った第III相の国際マルチコホート試験(HALLMARK-DUAL)に関する報告である。 本試験は、未治療例、前治療無効例および不適格・不耐容症例(計747例)を対象として行われ、治療終了後12週時点のSVR(SVR12)は82~90%と高率であった。 一方、経口薬の併用療法の問題点の一つとして、薬剤に対する耐性変異の出現がある。本邦での検討により、治療前にダクラタスビルの耐性変異(L31,Y93)を有する症例ではSVR24が40%以下となることが知られている。さらに、同治療の無効例の中に、NS5Aに対する変異のみでなくNS3 プロテアーゼ阻害薬に対する耐性変異(D168)が生じる例があることが報告されている。 今後、SVR がさらに高率で、しかも、耐性ウイルスの出現率が低いとされるソホスブビル(NS5Bポリメラーゼ阻害薬)・ダクラタスビル(NS5A阻害薬)併用療法の承認が見込まれる現在、アスナプレビル・ダクラタスビル併用療法の適応は慎重に検討する必要があると考えられる。日本肝臓学会および厚生労働省研究班から出されている治療ガイドラインを熟知したうえでの治療方針の決定が必要であると思われる。

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バンコのMIC上昇、死亡リスクと関連せず/JAMA

 黄色ブドウ球菌(S aureus)血流感染(SAB)患者では、バンコマイシン(VCM)の最小発育阻止濃度(MIC)の高値例と低値例で死亡リスクに差はないことが、米国・ネブラスカ大学医療センターのAndre C. Kalil氏らの検討で示された。50歳以上の黄色ブドウ球菌感染患者に対しVCMは第一選択の治療薬とされるが、近年、VCMのMICが上昇傾向にあることが複数の研究で明らかにされている(MIC creepと呼ばれる)。また、3件のメタ解析では、VCMのMIC上昇は不良な転帰と関連する可能性が示唆されているが、死亡との関連や、MIC高値の場合はVCMを回避すべきかなどの問いへの解答は明確ではないという。JAMA誌2014年10月15日号掲載の報告。MIC高値と死亡の関連をメタ解析で評価 研究グループは、SAB患者におけるVCMのMIC上昇と死亡との関連を評価するために、系統的なレビューとメタ解析を実施した。2名の研究者が別個に、2014年4月までに5つの医学データベースに登録された文献を検索し、関連論文を選出した。 全体の解析ではVCM MICのカットオフ値を1.5mg/L(μg/mL)に設定し、≧1.5μg/mLを高MIC群、<1.5μg/mLを低MIC群とした。試験の質はNewcastle-Ottawaスケールで評価し、8~9点を最上質と定義した。主要評価項目は全死因死亡とし、ランダム効果モデルを用いて全データを統合した。 前向き試験8件および後ろ向き試験30件(日本の2試験を含む)の合計38試験に登録された8,291件のSABエピソードが解析の対象となった。全体の全死因死亡率は26.1%であった。死亡リスクの上昇、必ずしも排除できないが… SAB患者の推定死亡率は、高MIC群(2,740例)が26.8%、低MIC群(5,551例)は25.8%であり、両群間に差を認めなかった(補正リスク差[RD]:1.6%、95%信頼区間[CI]:-2.3~5.6%、p=0.43)。 最上質の試験(22件、6,486例)における推定死亡率は、高MIC群(2,318例)が26.2%、低MIC群(4,168例)は27.8%であり、やはり両群で同等であった(RD:0.9%、95%CI:-2.9~4.6%、p=0.65)。 メチシリン耐性菌(MRSA)感染に限定した解析(7,232例)でも、推定死亡率は高MIC群(2,384例)が27.6%、低MIC群(4,848例)は27.4%と差はみられなかった(RD:1.6%、95%CI:-2.3~5.5%、p=0.41)。 全死因死亡のサブグループ解析では、試験デザイン(前向き、後ろ向き、症例対照、症例集積)、薬剤感受性試験(微量液体希釈法、Etest)、MICのカットオフ値(1.5、2.0、4.0、8.0μg/mL)、臨床転帰(院内死亡、30日死亡)、菌血症の罹患期間、過去6ヵ月のVCM投与量、VCM治療歴の有無のいずれにおいても、高MIC群と低MIC群の間に差はみられなかった。 研究グループは、これらの知見の実臨床および公衆の保健上の意義として、(1)米国の臨床検査標準協会(CLSI)のVCM MICの標準値を低く設定する必要はほとんどない、(2)MICが1~2μg/mLの場合は通常、その差に意味はない、(3)MICの上昇がみられるが感受性の範囲内にある場合は、他の抗菌薬への変更は不要と思われる、を挙げている。 著者は、「本試験の結果は、MIC高値例における死亡リスクの上昇を明確に排除するものではないが、VCMの感受性の解釈や、MICが上昇するも感受性がある場合の薬剤変更の決定の際に考慮すべきである」と指摘している。

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股部白癬、体部白癬の治療エビデンスは?

 オランダ・ライデン大学医療センターのE J van Zuuren氏らは、股部白癬と体部白癬の局所治療の有効性および安全性のエビデンスを評価するコクラン系統的レビューを行った。129試験、被験者1万8,086例を包含し分析した結果、薬剤塗布による積極的治療はいずれも大半は効果的であることが示されたが、臨床意思決定に役立つエビデンスを示すには、さらに質の高い無作為化試験の必要性が判明したと報告している。股部白癬、体部白癬は一般開業医、皮膚科医がいずれも最もよく遭遇する真菌感染症である。British journal of dermatology誌オンライン版2014年10月7日号の掲載報告。 股部白癬、体部白癬の大半は、さまざまな外用抗真菌薬による治療が行われている。 検討は、Cochrane Skin Group Specialised Register、CENTRAL in The Cochrane Library、MEDLINE、EMBASE、LILACSなどを2013年8月時点で検索して行われた。 主な結果は以下のとおり。・129試験、被験者1万8,086例が参加した無作為化試験を包含して介入評価を行った。・介入の大半は、アゾール系薬によるものであった。・プールできたアウトカムのデータは、2つの治療についてのみであった。・テルビナフィン(商品名:ラミシールほか)は5試験におけるデータから、プラセボと比較して統計的に有意な臨床的治癒率が認められた(RR:4.51、95%CI:3.10~6.56)。・真菌別の治療データは、不均一性が大きくプールすることができなかった。・真菌学的治癒率は、ナフチフィン1%含有薬(国内未発売)がプラセボと比較して良好であることを支持するデータであった(3試験、RR:2.38、95%CI:1.80~3.14)。しかし、エビデンスの質は低かった。・アゾール+コルチコステロイド系薬は、アゾール系薬単独よりもわずかではあるが効果的であった。しかし、真菌学的治癒率に関する統計的な有意差は認められなかった。・65試験が「不明」であるとの評価を、また64試験は「バイアスリスクが高い」との評価をしていた。被験者は大半が20歳超であり、試験デザインが不十分で、報告も不十分であった。

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H7N9ワクチン、安全性と効果/JAMA

 鳥インフルエンザA/上海/2/13(H7N9)ワクチンの安全性と免疫原性について、MF59アジュバント有無の4つの抗原用量を比較した第II相多施設共同二重盲検無作為化試験の結果が発表された。米国・エモリー大学医学部のMark J. Mulligan氏らによる検討の結果、最小用量3.75μg+MF59アジュバントの2回接種(0、21日)群において、42日時点の抗体陽転率は59%であったことが報告された。鳥インフルエンザH7N9は、2013年に中国で確認された新型の鳥インフルエンザウイルスで、家禽には問題なかったが、ヒトでは重症肺炎を引き起こし、同国では入院率67%、死亡率33%に達した。WHOには2014年6月27日時点で、検査確認症例450例のうち165例の死亡(36.6%)が報告されているという。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。7つの接種群を設定し検討 H7N9不活化ウイルスワクチンの安全性と免疫原性を評価した試験は、米国内4施設で19~64歳700例を登録して行われた。2013年9月に開始され、フォローアップは6ヵ月間であり、2014年5月に完了した。 被験者は、抗原用量、MF59アジュバント有無別に設定された7つの接種群(接種回数は2回[0、21日])に割り付けられ評価を受けた。(1)3.75μg+MF59アジュバント(100例)、(2)7.5μg+MF59アジュバント(99例)、(3)15μg+MF59アジュバント(100例)、(4)15μg+1回目のみMF59アジュバントあり(101例)、(5)15μg+2回目のみMF59アジュバントあり(100例)、(6)2回とも15μgのみ(101例)、(7)2回とも45μgのみ(99例)。 主要評価項目は、42日時点の赤血球凝集抑制反応(HI)検査法による抗体価40以上または抗体陽転(定義:抗体価40以上への増大率が4倍以上)の達成割合とした。ワクチン関連の重大有害事象は13ヵ月間、接種後症状は7日間調べた。3.75μg+MF59アジュバント2回接種が有望 HI抗体価は、非アジュバント接種群はいずれも低値であった。 一方、42日時点の、3.75μg+MF59アジュバントのH7N9ワクチン2回接種群の抗体陽転率は59%(95%信頼区間[CI]:48~68%)であった。抗体陽転率のピークは29日時点で62%(95%CI:52~72%)だった。また同接種群の42日時点のGMTは33.0(95%CI:24.7~44.1)であった。 抗原用量が増えても、免疫獲得効果の増大は認められなかった。 中和抗体価分析では、3.75μg+MF59アジュバント接種群の42日時点の抗体陽転率は82%(95%CI:73~89%)、GMTは81.4(95%CI:66.6~99.5)であった。 一方、抗原用量15μg+MF59アジュバントあり群について、42日時点の抗体陽転率は、接種1回目のみアジュバントあり群35%、2回ともアジュバントあり群47%で、両群間の統計的有意差は認められなかった(p=0.10)。 季節性インフルエンザワクチン接種者および高齢者については、弱毒化が認められた。 ワクチン関連の重大有害事象は報告されなかった。接種後7日間に報告された症状は概して軽度なもので、最も多かったのはアジュバントあり群の被験者で認められた接種部位に関する症状であった。 なお今回の結果について著者は、3.75μg+MF59アジュバント2回接種の潜在的価値を評価した上で、試験は42日以降の抗体価データがないこと、また臨床アウトカムの報告がないことから限定的なものであるとまとめている。

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アビガン錠、エボラ出血熱向けに生産

 富士フイルム株式会社(社長: 中嶋 成博)は、海外での使用を目的とし、エボラ出血熱対策として抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠200mg」(一般名:ファビピラビル)を追加生産すると決定した。 アビガン錠は、富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が開発した抗インフルエンザウイルス薬であり、エボラウイルスに対して抗ウイルス効果を有するとのマウス実験の結果が公表されている。すでに、日本政府と協議のうえ、緊急搬送先の政府機関および医療機関から提供の要請に応え、西アフリカや欧州に搬送されたエボラ出血熱患者複に対し投与されている。 フランス政府とギニア政府はギニアにおいて、11月中旬よりエボラ出血熱に対するアビガン錠の臨床試験を始める予定。同社は、現時点で2万人分の錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有している。また、今後のさらなる臨床使用に備え、エボラ出血熱向けとしてのアビガン錠の生産を11月中旬より行う。 日本政府は、感染が広がるエボラ出血熱に対して、日本の企業が開発した治療に効果の見込める薬を提供する準備があることを表明しており、同社は日本政府と協議しながら、各国からの要請に応えていくという。富士フィルムのプレスリリースはこちら

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世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見

 今夏、日本国内で、海外渡航歴がないにもかかわらずデング熱を発症した患者が発見された。日本国内での感染は1940年代前半の流行以来、実に約70年ぶりであり、患者数は158人に上った(2014年10月14日現在)。全世界では、現在25億人以上がデング熱流行地で生活している。そして、年間5,000万人以上がデング熱を発症しており、近年急速な広がりをみせている。 今回、デング熱に関する世界中の最新知見を、キューバのペドロ・コウリ熱帯医学研究所のMaria G Guzman氏らがまとめた。Lancet誌オンライン版2014年9月12日号の掲載報告。●世界中で急速な広がりをみせるデング熱 デングウイルスは過去20~30年間で、国内そして国境を越えて急速な広がりを見せており、今日では、蚊が媒介するウイルス性疾患の中で、最も流行し急速に拡大する疾患と考えられている。 デングウイルスは4つの抗原型(DENV1-4)に分類され、ヒトスジシマカを媒介として感染する。感染地域の広がりや感染例の増加、疾患の重症化に伴い、デング熱は社会的・経済的に重大な影響を持つ公衆衛生上の問題に発展してきた。●デング熱の発生率は過去50年で30倍に デング熱は、南アジアやアメリカ、大西洋、アフリカ、東地中海沿岸地域など100以上の国でみられる風土病であり、その発生率は過去50年間で30倍にも増加している。2013年の研究結果によると、年間3.9億人の感染者が発生し、そのうち、はっきりとした症状がみられたのは9,600万人であった(感染者数は2012年WHO予測の3倍以上)。●世界ではどのような策が講じられているか 現在、デング熱には有効な治療薬が存在しないため、対症療法を行っているのが現状である。そのため、世界各国で、デングウイルス学・病因学・免疫学の研究、抗ウイルス薬・ワクチンの研究・開発が行われてきた。さらに、デング熱のコントロールと予防に対して明らかに効果がある新たなベクターコントロール戦略が立案されるなど、各国で対策が進められている。しかし、このような対策が世界中で行われているにもかかわらず、実用化には至っていないのが現状である。●デング熱流行阻止に向け国際的な結束を 世界中でデング熱の予防・治療に対する基礎研究や橋渡し研究が行われてきた結果、確かに情報は蓄積されてきた。しかし、その一方で、デング熱の流行は依然として世界的な広がりをみせている。今後の流行を阻止するためにも、さらなる努力が求められる。 WHOによるデング熱予防・コントロールの世界的戦略では、2012年から2020年にかけて、少なくとも罹患率を25%、死亡率を50%減らすことを目標としている。しかし、この目標を達成するためには、デング熱の重大さを世界各国が真摯に受け止め、政府機関・地域社会・国際組織などが結束する必要がある。 以上が著者らによりまとめられた、デング熱の最新知見である。わが国でも、政府が定期的な情報発信や、徹底した予防・制御に努めたこともあり、次第にデング熱の流行は収まりを見せている。しかし、世界中でデング熱が急増している現状を鑑みると、来年も流行する可能性は否定できない。今後、デング熱に対し、国を挙げて何らかの対策を講じていく必要があるであろう。

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日本初かつ唯一の医療用まつ毛育毛剤が発売

 2014年10月15日、睫毛貧毛症治療薬「グラッシュビスタ外用液剤0.03%5mL(一般名:ビマトプロスト)」の発売記者発表会が都内にて行われた。 アラガン・ジャパン株式会社と塩野義製薬株式会社の担当者、および東京ミッドタウン皮膚科形成外科Noage(ノアージュ)院長 今泉 明子氏により製品概要が紹介された。 本剤は、アラガン・ジャパン株式会社が医療用医薬品として製造販売承認を受けた、国内初かつ唯一の睫毛貧毛症治療薬で、9月29日に発売された。共同販売契約を締結している塩野義製薬株式会社は10月20日より発売を開始する。睫毛貧毛症とは 睫毛貧毛症とは、睫毛が不足または不十分な状態であることを特徴とする疾患である。原因は多岐にわたるが、加齢などの特発性要因、アトピー性皮膚炎などの眼周囲の皮膚炎や感染症、自己免疫疾患、抗がん剤などの薬剤により誘発されて生じる。 これまで、日本国内では適応を有する医療用医薬品はなく、個人輸入などによって未承認の薬剤を購入して使用することがあった。承認を取得した睫毛育毛剤 グラッシュビスタは保険適用外医薬品となるが、医師の処方箋が必要な医療用医薬品である。価格は各医療機関で設定できる。 有効成分であるビマトプロスト(Prostaglandin F2α誘導体)が睫毛の毛包に作用し、毛周期における成長期を延長することにより、睫毛の成長を促進する。その結果、睫毛の長さ、太さ、濃さを改善すると考えられている。 ただし、発毛可能な毛包が存在しない場合は、本来の効果が得られない。 なお、このビマトプロストは緑内障・高眼圧症治療薬の開発中に、有害事象として睫毛の成長が報告されたことから、睫毛貧毛症治療薬として着目、開発された。臨床試験●国内第III相試験デザイン 方法:多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験 対象:特発性睫毛貧毛症患者(173例) 評価:GEA-J評価(日本人用画像数値化付き総合的睫毛評価スケール)による睫毛の全般的な「際立ち度」、デジタル画像による長さ・太さ・色の濃さの解析、9項目の睫毛満足度質問票(ESQ-9)●有効性(4ヵ月時点) GEA-J評価:1段階以上の改善の割合は、ビマトプロスト群77.3%、プラセボ群17.6%(p<0.01) デジタル画像解析:長さ/太さ/濃さの変化量は、ビマトプロスト群1.62mm/0.35mm2/-12.02(明度単位※)、プラセボ群-0.04mm/-0.03mm2/1.38(明度単位)(各々p

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皮膚症状関連の死亡率 ―過去20年間のデータ比較

 米国・ジョージタウン大学のLindsay N. Boyers氏らは、過去約20年間の発展途上国137ヵ国と先進国50ヵ国における皮膚症状に関連した死亡率を調べた。その結果、発展途上国と先進国では皮膚症状関連の死亡負荷が異なり、メラノーマ、はしか、梅毒の格差が最も大きいことが明らかにされた。著者は、「この結果は、予防や治療において何を優先かつ最適化すべきかについて役立つだろう」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年10月2日号の掲載報告。 疾病負荷研究は、系統的に編集された動態統計情報や疫学研究論文、政策および各種リソースなどを含むデータベース研究である。 研究グループは、1990~2010年の発展途上国137ヵ国と先進国50ヵ国における皮膚疾病に関連した死亡率を調べた。 断面調査にて、10カテゴリーの皮膚症状について対象国の平均年齢標準化死亡率(10万人当たり)を算出。同皮膚障害からの死亡格差を1990年と2010年で比較し、また発展途上国と先進国で比較した。 主な結果は以下のとおり。・メラノーマの死亡率は、発展途上国と比べて先進国は、1990年時点では5.6倍、2010年時点では4.7倍高かった。・一方で、はしかの死亡率は、先進国と比べて発展途上国が1990年時点で345倍、2010年時点で197倍高かった。・また梅毒の死亡率は、発展途上国がそれぞれ33倍、45倍高かった。・本検討は、患者、医療提供者、地理的レベルの交絡因子補正に限界があり、結果の精度および普遍化には限りがある。

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