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南アジア新生児の重症市中感染症、原因と罹患状況/Lancet

 年間50万人以上の新生児が、重症細菌感染症が疑われる病態(possible serious bacterial infections:pSBI)により死亡しているが、その原因はほとんど知られていないという。バングラデシュ・Dhaka Shishu HospitalのSamir K. Saha氏らは、南アジアの新生児における市中感染症の罹患状況を、原因病原体別に調査するコホート研究「ANISA試験」を行い、Lancet誌2018年7月14日号で報告した。南アジア3国で、生後0~59日の新生児を調査 本研究は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成によって行われ、2011~14年の期間に、バングラデシュ、インド、パキスタンの5施設で、地域住民ベースの妊娠調査を通じて新生児が同定された。 コミュニティ・ヘルス・ワーカーが、最多で10回、生後0~59日までの新生児の自宅を訪問した。WHOのpSBIの定義を満たす徴候がみられる新生児と、ランダムに選択された健康な新生児を解析に含めた。 血液培養および血液と呼吸器のサンプルの分子アッセイによる解析で、特異的な感染原因の評価を行った。多くが原因不明、死亡例の原因は細菌が多い、RSウイルスの予防が重要 6万3,114例の新生児が登録された。このうち6,022例にpSBIのエピソードがみられ(95.4例/生児出生1,000人)、2,498例が早発型(<3日)、3,524例は遅発型(3~59日)だった。 エピソードの28%で感染原因が同定され、細菌が16%、ウイルスが12%であった。最も頻度が高かったのはRSウイルス(6.5%[95%確信区間[CrI]:5.8~7.6])で、次いでウレアプラズマspp(2.8%[1.9~3.8])であり、1%超にみられた病原体は肺炎桿菌、大腸菌、エンテロウイルス/ライノウイルス、サルモネラspp、肺炎連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌であった。 細菌感染症の平均罹患率は13.2例(95%CrI:11.2~15.6)/生児出生1,000人、ウイルス感染症の平均罹患率は10.1例(9.4~11.6)/生児出生1,000人であった。最も平均罹患率の高い病原体は、RSウイルス(5.39例[4.84~6.31]/生児出生1,000人)で、次いでウレアプラズマspp(2.38例[1.62~3.17]/生児出生1,000人)であった。 全生児出生7万1,361例のうち、3,061例(4%)が生後60日までに死亡し、このうち1,377例(45%)が非登録新生児(7日以内に死亡:1,284例、7日以降に死亡:93例)であり、登録新生児は1,684例(55%)だった。 死亡したpSBIの新生児の46%で原因が同定され、生存新生児の27%に比べ高率であった。死亡したpSBI罹患新生児の92%が細菌感染であり、大腸菌(8.70%[95%CrI:5.23~13.36])とウレアプラズマspp(8.26%[4.10~12.27])の割合が高かった。 これらの結果に基づき、著者は以下のようにまとめている。1)患者の多くで原因が不明であったことから、pSBIのエピソードの多くが感染によるものではない可能性が示唆される。2)死亡した新生児では細菌が原因となる割合が高く、新生児死亡率には、適切な予防措置や管理が実質的に影響を及ぼす可能性がある。3)非定型菌が優勢で、RSウイルスの罹患率が高かったことから、治療および予防のための管理戦略は、変更を要することが示された。4)疾病の負担を考慮すると、RSウイルスの予防が、全体的な保健システムと「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goal:SDG)」の達成に大きな効果をもたらすと考えられる。

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抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ高リスク患者にも良好な成績(CAPSTONE-2)/シオノギ

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功)は、重症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつインフルエンザ患者を対象としたバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の第III相臨床試験(CAPSTONE-2)において、主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(インフルエンザ症状が回復するまでの時間)がプラセボに対する優越性を示し、本試験の主要目的を達成したと発表。また、主要副次評価項目である抗ウイルス効果(ウイルス排出期間の短縮や体内ウイルス量の減少効果など)においても、プラセボおよびオセルタミビルに対する優越性を示した。さらに、インフルエンザ関連合併症の発現率をプラセボに対して有意に低下させた。一方,本試験での本薬の忍容性は良好であり、安全性について懸念は示されなかった。本試験の詳細な結果は、今後学会にて発表する予定。 バロキサビル マルボキシルは、新しい作用機序であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用を有し、これによりインフルエンザウイルスの増殖を抑制する。すでに実施した、重症化および合併症のリスク要因をもたないインフルエンザ患者を対象とした第III相臨床試験(CAPSTONE-1)においても、インフルエンザ罹病期間がプラセボに対して有意に短縮し、ウイルス排出期間および体内ウイルス量などの抗ウイルス効果においても、プラセボおよびオセルタミビルに対する優越性を示している。 同薬は、2018年2月23日に日本国内で製造販売承認を取得し、成人および小児におけるA型およびB型インフルエンザウイルス感染症を対象に販売されている。米国では、2018年4月24 日に、12歳以上の急性の合併症のないインフルエンザウイルス感染症を適応症として、米国食品医薬品局(FDA)に新薬承認申請を行い、受理されている。■関連記事新規抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」発売

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開発進む、新たな結核菌ワクチン/NEJM

 結核を発症させやすく、世界的な感染症による死亡の主因となっている近年の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する、開発中のワクチン「H4:IC31」の第II相試験の結果が発表された。南アフリカ共和国結核ワクチンイニシアチブ(SATVI)のElisa Nemes氏らによる検討で、伝播率の高い環境においてワクチン接種の効果を示す所見が得られたという。著者は「今回の結果は、新規ワクチン候補の臨床的開発を示すものといえるだろう」と述べている。H4:IC31はサブユニットワクチンの候補で、前臨床モデルでは結核発症への防御効果が示された。また観察研究において、カルメット-ゲラン菌(BCG)の初回ワクチン接種が、結核感染への部分的防御効果がある可能性が示唆されていた。NEJM誌2018年7月12日号掲載の報告。H4:IC31ワクチン vs.BCGワクチン再接種 vs.プラセボ 第II相試験は、新生児期にBCGワクチン接種を受けていた高リスク環境にある青少年990例を対象に行われた。被験者をH4:IC31ワクチン接種群、BCGワクチン再接種群、プラセボ接種群に無作為に割り付けて追跡評価した。なお被験者は全員、QuantiFERON-TB Gold In-tubeアッセイ(QFT)での結核菌感染検査、およびヒト免疫不全ウイルス検査の結果が陰性であった。 主要アウトカムは、ワクチン接種の安全性と、結核菌感染(6ヵ月ごと2年の間に行ったQFT検査での初回陽転で定義)とした。副次アウトカムは、免疫原性、QFT持続陽転(陰転を伴うことなく陽転後3、6ヵ月時の検査で陽転を確認)とした。ワクチンの有効性は、Cox回帰モデルからのハザード比(HR)に基づき推算し、各ワクチンについてプラセボと比較した。BCG、H4:IC31接種群はいずれも免疫原性を示す BCGワクチン再接種群、H4:IC31ワクチン接種群はいずれも免疫原性が認められた。QFT陽転は、H4:IC31群44/308例(14.3%)、BCG群41/312例(13.1%)、プラセボ群49/310例(15.8%)であった。陽転持続の割合は、それぞれ8.1%、6.7%、11.6%。 H4:IC31群、BCG群はいずれも初回陽転を防御できず、有効性推定値は、それぞれ9.4%(p=0.63)、20.1%(p=0.29)であった。BCGワクチンではQFT陽転持続率を低下したことが認められ、有効性は45.4%であった(p=0.03)。一方、H4:IC31の有効性は30.5%であった(p=0.16)。 重篤有害事象の発現頻度は、群間で臨床的有意差がみられなかったが、軽度~中等度の注射部位反応は、BCGワクチン再接種群で最も頻度が高かった。

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コンゴで新たにエボラが流行、疫学的特色は?/Lancet

 コンゴ民主共和国・保健省のOly Ilunga Kalenga氏らThe Ebola Outbreak Epidemiology Teamは、2018年5月8日に同国北西部のEquateur Province(赤道州)で発生が報告されたエボラウイルス性疾患のアウトブレイクについて疫学的調査を行った。その結果、「現在も継続中のコンゴ民主共和国におけるエボラウイルスアウトブレイクは、以前のアウトブレイクと疫学的特色が似ている。早期の検出、速やかな患者の隔離、接触者の追跡およびワクチンプログラムの継続で、アウトブレイクをきちんとコントロールすることが必要である。予想される症例数は、疫学的状況が変化しなければ現状の対応能力を上回ることはない」と報告し、「情報は予備的なものであるが、継続調査および今回のアウトブレイク対応への基本的ガイドである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年6月29日号掲載の報告。複雑でリスクの高いアウトブレイクが発生 今回のエボラアウトブレイクは、大規模な発生が遠隔地で起きていることや、首都および周辺国に近接の都市での発生関与といった点で、これまでに同国が経験した中で最も複雑でリスクの高いものとなっていた。 研究グループは、発生例について、同国保健省の症例定義を用いて、疑い・疑い濃厚・確定例に分類するとともに、すべての入手症例について、人口統計学的特性、可能性がある曝露の確認、徴候・症状の記録を調べ、21日間の接触者を特定した。また、2018年5月25日~6月21日の4週間の、再生産数(reproduction number)の推定および症例数を算出した。致命率は2014~16年の西アフリカでの発生と一致 2018年5月30日現在での発生報告例は、ザイール・エボラウイルス50例(確定37例、疑い濃厚13例)であった。21例(42%)はBikoro保健医療圏で、25例(50%)はIboko保健医療圏で、4例(8%)がWangata保健医療圏での発生であった。Wangata保健医療圏は、赤道州の中心都市であるMbandakaの一部であり、主要な国内および国際輸送道路にも通じている。 2018年5月30日までに、エボラウイルス性疾患による死亡は25例で、打ち切りによる補正後の致命率は56%(95%信頼区間[CI]:39~72)であった。この致命率は、2014~16年の西アフリカで流行したエボラウイルス性疾患の推定値と一致していた(p=0.427)。 確定/疑い濃厚例の患者の年齢中央値は40歳(範囲:8~80)で、男性は30例(60%)であった。 確定/疑い濃厚例の患者に最もよくみられた徴候・症状は、発熱(40/42例[95%])、強度の全身疲労(37/41例[90%])、食欲不振(37/41例[90%])であった。消化器系症状の報告頻度は高く、出血性症状の報告は14/43例(33%)であった。発症および入院から検体検査までの時間は、徐々に短縮していた。 2018年5月30日までに、特定された接触者は1,458例で、そのうち746例(51%)が、継続してフォローアップを受けていた。 伝播が不均一と想定(負の二項モデルを用いて検討)した場合の、2018年6月21日までのアウトブレイクに関する推定再生産数は1.03(95%確信区間[CrI]:0.83~1.37)、累積発生は確認症例で78例(37~281)と算出された。

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天然痘の治療薬登場か/NEJM

 1980年、天然痘の撲滅が宣言されたが、天然痘ウイルス(VARV)は依然として存在する。米国・SIGA Technologies社のDouglas W. Grosenbach氏らは、天然痘の治療薬として経口tecovirimatの検討を行い、2つの動物モデルにおける有効性と、ヒトでの安全性を確認したことを、NEJM誌2018年7月5日号で報告した。天然痘に対する有効な治療はないため、tecovirimatの開発が進められている。天然痘が自然に発症する状況での臨床試験は実施できないことから、有効性と安全性を評価する他の開発法が必要とされていた。非ヒト霊長類、ウサギ、ヒトで有用性を評価 研究グループは、非ヒト霊長類(サル痘)およびウサギ(ウサギ痘)モデルにおけるtecovirimatの有効性を検討し、ヒトにおける同薬の臨床試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 本研究は、専門家諮問委員会が天然痘の治療用に解釈した、米国食品医薬品局(FDA)の動物における有効性の評価規則に従い行われた。また、成人ボランティア449例において、プラセボを対照とした薬物動態と安全性の試験を実施した。天然痘に有効な抗ウイルス薬となる可能性 サル痘モデルで90%以上の生存を達成するのに要するtecovirimatの最低用量は、10mg/kg体重の14日間投与であった。ウサギ痘モデルで同程度の効果を得るのに要する用量は、40mg/kgの14日間投与であった。 体重1kg当たりの有効用量の値はウサギのほうが高かったが、曝露量は低かった。定常状態の最高濃度(Cmax)、最低濃度(Cmin)、平均濃度(Cavg)の平均値は、ウサギではそれぞれ374ng/mL、25ng/mL、138ng/mL、非ヒト霊長類では1,444ng/mL、169ng/mL、598ng/mLであった。また、24時間の濃度-時間曲線下面積(AUC0-24hr)は、ウサギが3,318ng×時間/mL、非ヒト霊長類は14,352ng×時間/mLだった。 これらの知見から、ヒトで必要な薬物曝露量を推定するには、非ヒト霊長類のほうが、より保守的なモデルであることが示唆された。 ヒトでの試験(年齢中央値:39.0歳[範囲:18~80]、男性:41%)には、600mgの1日2回、14日間投与が選択され、非ヒト霊長類を上回る曝露量がもたらされた(定常状態のCmax:2,209ng/mL、Cmin:690ng/mL、Cavg:1,270ng/mL、AUC0-24hr:30,632ng×時間/mL)。 試験期間中に、tecovirimat群の134例(37.3%)に318件の重篤でない有害事象が発現し、このうち71例(19.8%)、176件が試験薬関連であった。試験薬とは関連しない肺塞栓症で1例が死亡した。問題となる有害事象のパターンは認められなかった。 著者は、「これら動物およびヒトに関する試験結果は、全体として、天然痘の抗ウイルス薬としてのtecovirimatの有用性を支持するものである」としている。

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潰瘍性大腸炎にはチーム医療で対抗する

 2018年7月2日、ファイザー株式会社は、同社が販売するJAK阻害剤トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)が、新たに指定難病の潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)への適応症追加の承認を5月25日に得たのを期し、「潰瘍性大腸炎の治療法の現在と今後の展望について」と題するプレスカンファレンスを行った。カンファレンスでは、UC診療の概要、同社が全世界で実施したUC患者の実態調査「UC ナラティブ(Narrative)」の結果などが報告された。※トファシチニブは、2013年に関節リウマチの治療薬として発売されている治療薬は特定標的を対象にした免疫抑制のステージへ はじめに「もはや“難病”ではない炎症性腸疾患の治療法の進歩とチーム医療の役割」をテーマに日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療[IBD]センター長)が、UC診療の概要とチーム医療の重要性を説明した。 患者実数では20万人を超えるとも言われているUCは、若年発症が多く、炎症が慢性に持続するため患者のQOLを著しく低下させる。また、UCは現在も根治する治療法がなく、患者の多くは再燃と寛解を繰り返しつつ、再燃の不安を持ち日常生活を送っている。 UCの病因は現在も不明で遺伝、腸内細菌、環境因子などの要因が指摘されている。発症すると粘血便、下痢、腹痛が主症状として見られる。 治療では、従来5-ASA製剤、副腎皮質ステロイドなどを使用して寛解導入が行われ、同じく5-ASA製剤、6MP/AZA製剤などを使用して寛解維持が行われてきた。現在も5-ASA製剤が第1選択薬であることには変わりないが、近年では疾患の免疫抑制を主体とした抗TNFα抗体、抗IL12/23抗体、抗α4β7抗体、JAK阻害剤などの新しい治療薬も登場している。とくに炎症を起こすサイトカインを標的する抗TNFα抗体やJAK阻害剤などの新しい治療薬は、「初めて特定標的に対する治療となり、治療にパラダイムシフトをもたらす」と同氏は期待を寄せる。 また、治療に際しては、「速やかな寛解導入と長期間の安全な寛解維持のためにチーム医療が重要だ」と同氏は提案する。患者を中心に医師、看護師、薬剤師による治療の提供はもちろん、家族、友人、患者の社会関係者(会社や学校など)などもチームに取り込み、疾患への理解とサポートを行う必要があるという。実際にチーム医療の成果として、当院では「医療職種の特性を生かした分担と連携によるきめ細かな治療のため、難治性UCやクローン病は激減した」と同氏は自身の体験を語る。 今後、治療薬として「サイトカインを標的にしたもの」「免疫細胞の接着・浸潤を抑制するもの」「腸内微生物を調節するもの」「再生・組織修復をするもの」などの研究開発が求められるとした上で、「こうした治療薬が、患者の寛解導入・維持をより容易にし、患者が普通の日常生活を送ることができるようになる。そのためにも患者個々に合わせた手厚いチーム医療が必要で、結果としてUCが難病ではなくなる日が来る」と同氏は展望を語り、レクチャーを終えた。UC患者は医療者に遠慮している 続いて、渡辺 憲治氏(兵庫医科大学 腸管病態解析学 特任准教授)が、「潰瘍性大腸炎実態調査『UCナラティブ』の結果について」をテーマに、結果の概要を解説した。 「UCナラティブ」とは、UC患者とUCの診療をしている医師を対象に、UCに罹患している人々がどのような影響を疾患から受けているかを調査する活動。今回、全世界10ヵ国より患者2,100例、医師1,454例にオンライン調査を実施し、その結果を報告した(調査期間:患者は2017年11月21日~2018年1月9日、医師は2017年11月29日~12月20日)。 患者は、UCと確定診断され、過去12ヵ月以内に医師の診察を受け、UCの治療薬として2種類以上を服用している患者が選ばれたほか、医師では消化器専門の内科医・外科医で、毎月5人以上のUC患者を診察(同時に10%の患者に生物学的製剤を投与)している医師が対象とされた。 アンケート結果について、患者に「UCを患っていなければもっと成功したか」と聞いたところ、68%が「そう思う」と回答。医師に「UCを発症していなければ担当患者は人間関係のアプローチが違ったか」と聞いたところ63%が「そう思う」と回答し、同様に「別の仕事や進学を選んでいたか」を聞いたところ51%が「別の仕事や進学の選択をした」と回答し、UCは患者の人生などに影を落とす疾患であると認識していることがわかった。 患者から医師に理解して欲しいUCの経験については「生活の質への影響」(35%)「日常の疲労感」(33%)「精神衛生面への影響」(30%)の順で多く、医師が患者と話し合うトピックスについては「治療オプションの利益とリスク」(75%)「副作用への懸念」(75%)「患者のアドヒアランス」(69%)の順で多く、両者の間にギャップがあることが明らかになった(いずれも複数回答)。また、患者から医師に「気兼ねなく心配や不安を話すことができるか」との質問では、81%が「できる」と回答しているものの、その内の44%の患者は「医師に多くの質問をすると、扱いにくい患者と見られて、治療の質に悪影響を及ぼすのではないかと心配」とも回答している。 最後に同氏は、「今回のアンケート結果を踏まえ、患者と医師の視点、意識の違いを知ることで、今後の日常臨床に活かしていきたい。UCは、患者に身体的・精神的影響を及ぼし、社会に機会損失をもたらす。患者には、周囲のサポートと理解が必要である。また、医師との間では、十分なコミュニケーションが大切であり、患者を中心にしたチーム医療を推進することで、患者の人生を満足させるべく、患者と医師が同じ目標に向かう協力者となってもらいたい」と思いを語った。トファシチニブの概要 トファシチニブは、炎症性サイトカインのシグナル伝達を阻害し、炎症を抑える薬剤。効果として第III相国際共同試験(1094試験)では、プラセボ群とトファシチニブ群(10mg1日2回)の比較で、寛解率がプラセボ群8.2%に対し、トファシチニブ群は18.5%と優越性が示された。安全性では、重篤な副作用、感染症などの発現はないものの、アジア人には帯状疱疹の発現がやや高い傾向があった。なお、本剤に起因する死亡例はなかった。注意すべき副作用としてリンパ球数減少、好中球数減少、貧血などが示されている。【効能・効果】 中等症から重症のUCの寛解導入および維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)【用法・容量】・導入維持療法では、通常、成人に1回10mgを1日2回8週間にわたり経口投与。 効果不十分な場合はさらに8週間投与。・寛解維持療法では、通常、成人に1回5mgを1日2回経口投与。効果減弱など患者の状態により1回10mgを1日2回投与にすることもできる。【その他】 適応症追加後3年間、全例調査を実施■参考ニュースリリース ファイザー株式会社ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎の適応症を追加潰瘍性大腸炎患者さんの生活実態調査■関連記事希少疾病ライブラリ 潰瘍性大腸炎

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ペニシリンアレルギー、MRSAやC. difficileリスク増大と関連/BMJ

 「ペニシリンアレルギー」の記録はMRSAおよびC. difficileのリスク増大と関連しており、その背景にβラクタム系代替抗菌薬の使用増加が関与していることを、米国・マサチューセッツ総合病院のKimberly G. Blumenthal氏らが明らかにした。ペニシリンアレルギーは、薬物アレルギーでは最もよくみられ、患者の約10%を占めると報告されている。アレルギーに関する記録は処方行動に影響を及ぼすが、「ペニシリンアレルギー」と記録にあっても、必ずしもアレルギーすなわち、即時型過敏反応とは限らない。先行研究では、特定の抗菌薬の使用がMRSAおよびC. difficileのリスクを増大していることが判明しており、研究グループは、ペニシリンアレルギーとMRSAおよびC. difficile発生の関連を調べた。BMJ誌2018年6月27日号掲載の報告。ペニシリンアレルギーの記録に注目し、MRSAやC. difficile発生との関連を調査 検討は集団ベースマッチドコホート研究にて、英国の一般医が関与するHealth Improvement Networkに、1995~2015年に登録された、MRSAおよびC. difficileの既往がない成人30万1,399例を対象に行われた。対象のうち6万4,141例がペニシリンアレルギーを有しており、年齢、性別、登録時期で適合した23万7,258例が比較対照群として設定された。 主要アウトカムは、MRSAおよびC. difficileの発生リスク。副次アウトカムは、βラクタム系抗菌薬およびβラクタム系代替抗菌薬の使用であった。背景に、βラクタム系代替抗菌薬の使用増加 平均追跡期間6.0年において、MRSA発生は1,365例(ペニシリンアレルギー群442例、対照群923例)、C. difficile発生は1,688例(それぞれ442例、1,246例)。ペニシリンアレルギー患者のMRSA発生に関する補正後ハザード比(HR)は1.69(95%信頼区間[CI]:1.51~1.90)、C. difficile発生については1.26(1.12~1.40)であった。 ペニシリンアレルギー患者の各抗菌薬使用に関する補正後発生率比は、マクロライド系使用では4.15(4.12~4.17)、クリンダマイシン使用3.89(3.66~4.12)、フルオロキノロン系使用2.10(2.08~2.13)であった。βラクタム系代替抗菌薬の使用増加によって、MRSAは約55%、C. difficileは約35%、それぞれリスクが増大したことが示唆された。 著者は今回の結果を受けて、「ペニシリンアレルギーへの系統的な対処が、ペニシリンアレルギー患者におけるMRSAおよびC. difficile発生を抑制するための、重大なパブリックヘルス戦略になる」と述べている。

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大腸を旅した歯ブラシ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第118回

大腸を旅した歯ブラシ いらすとやより使用 歯ブラシをくわえたまま遊んでいる子供がいると「ケガするよ!」と怒鳴ったりします。咽頭の奥に刺さったりしたらタイヘンですからね。しかし世の中には、とんでもない歯ブラシ論文が存在するのだ。論文タイトルもなかなか文学的です。「飲み込んだ歯ブラシ、大腸への旅」。映画化しそう。 Kim IH, et al.Journey of a swallowed toothbrush to the colon.Korean J Intern Med. 2007;22:106-108.13年来の統合失調症のある31歳の男性が、1週間続く上腹部痛を訴えて来院しました。激痛というほどではなく、中等度の痛みで、軽い嘔気を伴っていました。かかりつけのドクターに診てもらったところ「軽い胃炎ですね」とでも言われたのか、制酸薬などを処方されただけでした。薬では痛みが治まらず、次第に熱も出るようになりました。来院時の体温は38.1℃。血液検査で白血球が上昇しており、トランスアミナーゼも軽度上昇していました。膵炎を示唆するような逸脱酵素の上昇はありませんでした。はて、この腹痛と熱の原因は何だろう?腹部画像検査を行いました。主治医は腹部CTを見て、驚きました。上行結腸に、何か異物がある!しかも、異物のせいで腹腔内感染症を起こしているようでした。これはいかん、大腸内視鏡で見てみよう、ということでカメラを入れると、モニター画面にとんでもないものがあらわれました。大腸壁を突き破った歯ブラシ。上行結腸だから、さすがに肛門から入れたわけではないだろうし、あれ? この歯ブラシはどこから来たんだ? そう思いながら、処置を進める主治医。術後、患者によくよく尋ねてみると、歯ブラシを飲み込んだことがあることを告げられました。へー、やっぱり口から飲み込んだんだね、じゃあいつ頃それを飲み込んだのか。1年前。なんと、1年前に彼は歯ブラシを飲み込んでしまっており、近くの病院で「こりゃあかん、手術やで!」と強く説得されたことがあるらしいのです。彼はそれをかたくなに拒否し、1年後腹痛を起こして来院したのでした。

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チオ硫酸Na、シスプラチン誘発難聴予防に有効/NEJM

 標準リスク肝芽腫の小児において、チオ硫酸ナトリウムをシスプラチンによる化学療法終了後に追加投与することで、全生存と無イベント生存に影響することなく、シスプラチン誘発難聴の発生率が低下した。英・Great Ormond Street HospitalのPenelope R. Brock氏らが、シスプラチンによる聴覚障害に対するチオ硫酸ナトリウムの予防効果を検討した評価者盲検無作為化第III相臨床試験(SIOPEL6試験)の結果を報告した。標準リスク肝芽腫の小児に対するシスプラチンと外科手術は有効な治療法であるが、多くの患者に不可逆的な聴覚障害を引き起こすことが知られていた。NEJM誌2018年6月21日号掲載の報告。シスプラチン単独投与とチオ硫酸ナトリウム追加投与で、最小可聴値を評価 研究グループは、2007~14年に12ヵ国52施設において、生後1ヵ月超~18歳未満の標準リスク肝芽腫(肝病変3区域以下、転移なし、α-フェトプロテイン値>100ng/ml)小児116例を登録し、シスプラチン単独投与群(80mg/m2体表面積を6時間以上かけて投与)と、チオ硫酸ナトリウム追加併用投与群(シスプラチン投与終了6時間後に、20g/m2体表面積を15分以上かけて静脈内投与)に無作為に割り付け、いずれも術前4クールおよび術後2クール投与した。 主要評価項目は、最低年齢3.5歳時における純音聴力検査による最小可聴値で、聴覚障害はBrockグレード(0~4、グレードが高いほど聴覚障害が重度)で評価した(中央判定)。主な副次評価項目は、3年全生存および無イベント生存などであった。チオ硫酸ナトリウムの追加投与により、聴覚障害の発生率が半減 登録された116例中113例が無作為化され、不適格症例を除く109例(チオ硫酸ナトリウム追加併用群57例、シスプラチン単独群52例)が解析対象(intention-to-treat集団)となった。 絶対聴覚域値の評価可能症例101例において、Brockグレード1以上の聴覚障害の発生率はチオ硫酸ナトリウム追加併用群33%(18/55例)、シスプラチン単独群63%(29/46例)であり、チオ硫酸ナトリウム追加併用により聴覚障害の発生が48%低下することが確認された(相対リスク:0.52、95%信頼区間[CI]:0.33~0.81、p=0.002)。追跡期間中央値52ヵ月における3年無イベント生存率は、チオ硫酸ナトリウム追加併用群82%(95%CI:69~90)、シスプラチン単独群79%(95%CI:65~88)、3年全生存率はそれぞれ98%(95%CI:88~100)および92%(95%CI:81~97)であった。 重篤な副作用は16例に認められ、このうちチオ硫酸ナトリウムと関連があると判定されたのは8例(Grade3の感染症2例、Grade3の好中球減少2例、Grade3の輸血を要する貧血1例、腫瘍進行2例、Grade2の悪心嘔吐1例)であった。

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第2回 「抜歯したら抗菌薬」は本当に必須か【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 先日、歯科医師の友人から、抜歯後に抗菌薬を処方しなかったことで薬剤師からクレームを受けた、という話を聞きました。次のような経緯だったようです。・某日午前、ある女性患者さんの上顎第3大臼歯(親知らず)の残根を抜歯し、術後疼痛対策としてアセトアミノフェンを処方したが、抗菌薬は処方しなかった。・同日夕方、救急外来にこの女性患者さんの旦那さんである薬剤師からクレームの電話が入り、「抜歯したのになぜ抗菌薬を処方しないのか」と言われた。はたして抜歯をする際は感染症を予防するための抗菌薬は必須なのでしょうか。今回は、抜歯時の抗菌薬の有用性について検討したコクランのシステマティックレビューを紹介します。Antibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.論文では、「抜歯処置を受ける患者さんが、術前あるいは術後に抗菌薬を服用すると、抗菌薬なしまたはプラセボ服用に比べて、感染症の発生リスクが下がるか」という疑問が検討されています。本論文で組み入れられた研究では、主にアモキシシリン(±クラブラン酸)、エリスロマイシン、クリンダマイシンなどが投与されています。なお、日本感染症学会、日本化学療法学会による「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2016―歯性感染症―」でも、歯性感染症ではペニシリン系、リンコマイシン系、マクロライド系などが推奨されています。日本ではルーティンで第3世代セフェム系薬を処方する歯科医師が多いと感じていますが、これらは必ずしも歯性感染症に適するわけではないですし、概して吸収率も高くはありません。抗菌薬を服用すると12例中1例で感染予防さて、システマティックレビューの評価ポイントはいくつかあります。過去の研究を網羅的に集めているか、集めた研究の評価が適切になされているか、それらの研究の異質性は検討されたか、出版バイアスはないか、情報は適切に統合されたか、などの点を確認することが大切です。本論文では1948年~2012年1月25日までにMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CHSSSといったデータベースに登録されている関連論文を網羅的に集めています。集められた試験のデザインはランダム化比較試験で、うち1件はインターバルが6週間以上のクロスオーバーランダム化比較試験です。クロスオーバーは同じ被験者がウォッシュアウト期間を十分に設けた後に、異なる介入を受けることを意味します。そう何回も抜歯をやるの? という疑問もあるかもしれませんが、スプリットマウスデザインという、同一被験者の口内の左右では条件差がさほどないことを利用して、左右の歯でウォッシュアウト期間をおいて抜歯を行ったものと考えられます。出版バイアスの有無はファンネルプロットを用いて検討されていますが、術後および術前・術後におけるプロットが少ないため判定がやや難しいところです。なお、コクランのハンドブックによれば、一般的にプロットの数が10個以下だとファンネルプロットの左右対称性から出版バイアスを見極めることは難しいとされています。集められた各研究の評価は、2人のレビュアーにより独立して行われ、解釈に食い違いが生じた場合には議論のうえで合意を形成しているため、一定の客観性があると考えてよさそうです。なお、レビュアー名を検索したところ、両名とも歯科医師のようです。最終的に、集められた研究のうち、18件(患者合計2,456例)の研究が採用され、15件がメタ解析されています。システマティックレビューの結果は、通常Summary of Findings(SoF)テーブルとフォレストプロットにまとめられているので、ここを真っ先に見るとよいでしょう。エンドポイントに関する結果を紹介します。抗菌薬を投与した場合、プラセボと比較して抜歯後の局所感染症を約70%減らす(相対リスク:0.29、95%信頼区間:0.16〜0.50)とあり、エビデンスの質としては中程度の確信となっています(p<0.0001)。これは、約12例で抗菌薬を服用すれば、1例は感染症を予防できるという割合です。痛み、発熱、腫れには有意差はありませんでした。有害事象に関しては、抗菌薬投与でほぼ倍増(相対リスク:1.98、95%信頼区間:1.10~3.59)しますが、軽度かつ一時的ということ以外の具体的な内容は本文献ではわかりません。抗菌薬の必要性は侵襲性の程度や患者要因で変わりうるシステマティックレビューは既存の知見を網羅的に集めて質的評価を行い、統計学的に統合することから、しばしばエビデンスの最高峰に位置付けられますが、統合することで対象患者などの細かいニュアンスが省略されるため、その結果を応用する際は外的妥当性を十分に考えねばなりません。本結果を素直に解釈すれば、感染予防のベネフィットがややあるものの、抜歯処置の侵襲性の程度や感染症リスクによっては抗菌薬が処方されないことも十分考えられます。もし服用を検討するのであれば、アレルギーや副作用歴がない限りはペニシリン系やクリンダマイシンなどが比較的妥当な選択となりそうです。現実には下痢の頻度や抗菌薬アレルギーのリスク、冒頭の例であれば歯科医師と患者の関係なども抗菌薬が必要かどうかの考慮事項となりうるでしょう。いずれにせよ、短絡的に抜歯=抗菌薬と断定するのではなく、患者の状態や歯科医師の意図をくみ取ったうえで適切なアクションをとりたいものです。画像を拡大するAntibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.

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第3回 意識障害 その3 低血糖の確定診断は?【救急診療の基礎知識】

72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+10のルールのうち低血糖に注目この症例は前回お伝えしたとおり、左中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症でした。誰もが納得する結果だと思いますが、脳梗塞には「血栓溶解療法(rt-PA療法)」、「血栓回収療法」という時間に制約のある治療法が存在します。つまり、迅速に、そして正確に診断し、有効な治療法を診断の遅れによって逃すことのないようにしなければなりません。頭部CT、MRIを撮影すれば簡単に診断できるでしょ?! と思うかもしれませんが、いくつかのpitfallsがあり、注意が必要です。今回も“10’s Rule”(表1)にのっとり、説明していきます1)。今回は5)からです。画像を拡大する●Rule5 何が何でも低血糖の否定から! デキスタ、血液ガスcheck!意識障害患者を診たら、まずは低血糖を除外しましょう。低血糖になりうる人はある程度決まっていますが、緊急性、簡便性の面からまず確認することをお勧めします。低血糖の時間が遷延すると、低血糖脳症という不可逆的な状況となってしまうため、迅速な対応が必要なのです。低血糖によって片麻痺や失語を認めることもあるため、侮ってはいけません2)。低血糖の診断基準:Whippleの3徴(表2)をcheck!画像を拡大する低血糖と診断するためには満たすべき条件が3つ存在します。陥りがちなエラーとして血糖は測定したものの、ブドウ糖投与後の症状の改善を怠ってしまうことです。血糖を測定し低いからといって、意識障害の原因が低血糖であるとは限りません。必ず血糖値が改善した際に、普段と同様の意識状態へ改善することを確認しなければなりません。血糖低値と低血糖は似て非なるものであることを理解しておきましょう。低血糖の原因:臭いものに蓋をするな!低血糖に陥るには必ず原因が存在します。“Whippleの3徴”を満たしたからといって安心してはいけません。原因に対する介入が行われなければ再度低血糖に陥ってしまいます。低血糖の原因は表3のとおりです。最も多い原因は、インスリンやスルホニルウレア薬(SU薬)など血糖降下作用の強い糖尿病薬によるものです。そのため使用薬剤は必ず確認しましょう。画像を拡大するるい痩を認める場合には低栄養、腹水貯留やクモ状血管腫、黄疸を認める場合には肝硬変(とくにアルコール性)を考え対応します。バイタルサインがSIRS(表4)やqSOFA(表5)の項目を満たす場合には感染症、とくに敗血症に伴う低血糖を考えフォーカス検索を行いましょう(次回以降で感染症×意識障害の詳細を説明する予定です)。画像を拡大する画像を拡大する低血糖の治療:ブドウ糖の投与で安心するな!低血糖の治療は、経口が可能であればブドウ糖の内服、意識障害を認め内服が困難な場合には経静脈的にブドウ糖を投与します。一般的には50%ブドウ糖を40mL静注することが多いと思います。ここで忘れてはいけないのはビタミンB1欠乏です。ビタミンB1が欠乏している状態でブドウ糖のみを投与すると、さらにビタミンB1は枯渇し、ウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群を起こしかねません。ビタミンB1が枯渇している状態が考えられる患者では、ブドウ糖と同時にビタミンB1の投与(最低でも100mg)を忘れずに行いましょう。ビタミンB1の成人の必要量は1~2mg/日であり、通常の食事を摂取していれば枯渇することはありません。しかし、アルコール依存患者のように慢性的な食の偏りがある場合には枯渇しえます。一般的にビタミンB1が枯渇するには2~3週間を要するといわれています。救急外来などの初療では、患者の背景が把握しきれないことも少なくないため、アルコール依存症以外に、低栄養状態が示唆される場合、妊娠悪阻を認める患者、さらにはビタミンB1が枯渇している可能性が否定できない場合には、ビタミンB1を躊躇することなく投与した方が良いでしょう。ウェルニッケ脳症はアルコール多飲患者にのみ発症するわけではないことは知っておきましょう(表6)。画像を拡大するそれでは、いよいよRule6「出血か梗塞か、それが問題だ!」です。やっと頭部CTを撮影…というところで今回も時間がきてしまいました。脳卒中や頭部外傷に伴う意識障害は頻度も高く、緊急性が高いため常に考えておく必要がありますが、頭部CTを撮影する前に必ずバイタルサインを安定させること、低血糖を除外することは忘れずに実践するようにしましょう。それではまた次回!1)坂本壮. 救急外来 ただいま診断中!. 中外医学社;2015.2)Foster JW, et al. Stroke. 1987;18:944-946.コラム(3) 「くすりもりすく」、内服薬は正確に把握を!高齢者の多くは、高血圧、糖尿病、認知症、不眠症などに対して定期的に薬を内服しています。高齢者の2人に1人はポリファーマシーといって5剤以上の薬を内服しています。ポリファーマシーが悪いというわけではありませんが、薬剤の影響でさまざまな症状が出現しうることを、常に意識しておく必要があります。意識障害、発熱、消化器症状、浮腫、アナフィラキシーなどは代表的であり救急外来でもしばしば経験します。「高齢者ではいかなる症状も1度は薬剤性を考える」という癖を持っておくとよいでしょう。また、内服薬はお薬手帳を確認することはもちろんのこと、漢方やサプリメント、さらには過去に処方された薬や家族や友人からもらった薬を内服していないかも、可能な限り確認するとよいでしょう。お薬手帳のみでは把握しきれないこともあるからです。(次回は7月25日の予定)

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こどもとおとなのワクチンサイトが完成

 2018年6月17日に乳児から高齢者まで、全年齢向けのワクチン・予防接種の総合情報サイト「こどもとおとなのワクチンサイト」(http://vaccine4all.jp/)が公開された。このサイトは、日本プライマリ・ケア連合学会の内部組織であるワクチンプロジェクトチーム(リーダー:中山 久仁子氏[マイファミリークニック蒲郡 理事長・院長 ]、担当理事:岡田 唯男氏[亀田ファミリークリニック館山 院長])に所属するワクチン・予防接種に関心が深い家庭医・総合診療家庭医が中心となり、執筆・編集したもの。 同サイトの設置・公開については、6月16日より開催されていた同学会の第9回学術大会(三重県津市)内で正式に発表された。不足する全世代に渡るワクチン情報を網羅 ワクチンプロジェクトチーム(以下「PT」と略す)は、家庭医・総合診療医で構成され、ワクチンで予防できる病気(ワクチン予防可能疾患:vaccine preventable disease[VPD])を減らすことを目的に、ワクチンと予防接種の普及啓発を行っている。 今回、サイト設置の背景には、先進国並みに近付いたわが国のワクチンの認可数、定期接種数の増加に伴い、臨床現場の医療従事者のみならず保護者や一般市民にとっても深く広いワクチンの知識が求められる時代となったことを指摘。また、定期接種化される前の世代への追加予防接種(キャッチアップ)の必要性、海外渡航前のワクチン接種の重要性など定期接種以外の知識や技能も欠かせないと説明する。 こうした環境の中、全世代のワクチン・予防接種について包括的に網羅した情報源はいまだ乏しいとされ、PT活動の一環として同サイトが設置・公開された。小児のみならず成人のワクチンスケジュール情報も記載 同サイトは、「ワクチンと病気について」「ワクチンのおはなし」「こども、おとな、全年齢での接種スケジュール」「最近のトピックス」で構成され、たとえば「ワクチンと病気について」では、B型肝炎、ロタウイルスをはじめ24種が現在紹介されているほか、詳細なワクチン情報として医療従事者、妊娠可能女性・妊婦、渡航者、特別な状況(HIV感染者など)、年齢で見る・不足しているワクチンの5つに分類して記載されている。 また、同サイトは、次の方針で運営される。・一般市民と医療従事者の双方をターゲットユーザとする・乳児期から高齢世代まで、海外渡航前や妊娠・授乳中など、あらゆる世代や人口集団を対象とした、包括的なワクチン・予防接種の情報源となる・ワクチン・予防接種に関する良質な医学的エビデンスに基づき、科学的に妥当な情報発信を行う・一般市民と医療従事者の、ワクチン・予防接種についての心配や疑問などを軽減ないし解消すべく、ワクチンコミュニケーションに関する情報提供や普及啓発も行う PTでは、このサイトを通じて「一般市民と医療従事者の双方に、全世代向けワクチン・予防接種の的確な情報を幅広く伝え、VPDがさらに減少することを目指し、適切なサイト運営と情報発信を続けていく」とコメントしている。■参考「こどもとおとなのワクチンサイト」

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オゼノキサシン1%クリーム、膿痂疹に有効

 オゼノキサシンは、グラム陽性菌への強い殺菌的な抗菌作用を示す新規局所抗菌薬で、接触感染で広まる皮膚の細菌感染症である膿痂疹に対する治療薬として、1%クリーム剤が開発された。米国・ベイラー医科大学のTheodore Rosen氏らは、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、オゼノキサシン1%クリームが生後2ヵ月以上の膿痂疹患者に有効で、安全性と忍容性も良好であることを報告した。著者は、「オゼノキサシンクリームによる治療は、膿痂疹の新しい治療の選択肢となる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。 研究グループは、膿痂疹におけるオゼノキサシン1%クリームの有効性、安全性および忍容性を評価する目的で、2014年6月2日~2015年5月30日に6ヵ国で登録された患者に対し無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。この結果は、2015年7月9日~22日に解析された。 対象は、膿痂疹に感染した生後2ヵ月以上の乳幼児を含む小児および成人患者411例(男性210例[51.1%]、平均年齢18.6[SD 18.3]歳)で、オゼノキサシン群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、1日2回5日間塗布した。有効性、安全性および忍容性は、Skin Infection Rating Scaleと微生物培養を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・5日後の臨床的な治療成功率は、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(206例中112例[54.4%]vs.206例中78例[37.9%]、p=0.001)。・2日後の微生物学的な治療成功率もまた、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(125例中109例[87.2%]vs.119例中76例[63.9%]、p=0.002)。・オゼノキサシン群は忍容性が高く、206例中8例で有害事象が報告されたが、オゼノキサシンによる治療と関連があったのは1例のみで、重篤な有害事象はみられなかった。

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医療従事者へのインフル予防接種の効果は

 インフルエンザ予防接種は、医療従事者におけるインフルエンザ感染予防、スタッフや患者へ伝染防止のための一般的な介入である。長崎大学の今井 智里氏らは、医療従事者間の季節性インフルエンザ予防接種の疫学的および経済的な有効性の最新のエビデンスを統合するため、系統的レビューとプール解析を行った。その結果、インフルエンザワクチンが感染症発症減少と欠勤期間短縮に効果があることが示された。PLOS ONE誌2018年6月7日号に掲載。 著者らは、MEDLINE/PubMed、Scopus、Cochrane Central Register for Controlled Trialsにおける1980~2018年の論文を系統的に調査し、ワクチン接種群と非接種群(プラセボまたは非介入)を比較したすべての研究を抽出した。ただし、患者関連アウトカムのみ、インフルエンザA(H1N1)pdm09ワクチンにフォーカスした研究は除外した。2名のレビュアーが独立して論文を選択しデータを抽出し、検査で確定したインフルエンザ、インフルエンザ様疾患(ILI)、欠勤を含む罹患のアウトカムについて、プール解析を行った。また、経済学的研究は「方法」と「結果」の特性について要約した。 主な結果は以下のとおり。・13報の論文が適格基準を満たしていた(3報は無作為化比較研究、10報はコホート研究)。・プール解析では、検査で確定したインフルエンザの罹患率に有意な効果が認められたが、ILIでは有意ではなかった。・欠勤の発生率は予防接種によって変化しなかったが、ILIによる欠勤は有意に減少した。・欠勤期間も予防接種により短縮した。・公表された経済的評価はすべて、予防接種で回避された欠勤の粗推定値により、医療従事者の予防接種が費用節減となることを一貫して示した。しかしながら、健康アウトカムとワクチン接種プログラムの費用の両方を包括的に評価し費用対効果を調べた研究はなかった。

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JAK1阻害薬upadacitinibが関節リウマチ再発例の症状改善/Lancet

 疾患活動性が中等度~重度の関節リウマチ再発例の治療において、選択的JAK1阻害薬upadacitinibの12週、1日1回経口投与により、症状が著明に改善することが、米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らが行った「SELECT-BEYOND試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年6月13日号に掲載された。upadacitinibは、他のJAKファミリーのメンバーに比べJAK1に高い選択性を持つように遺伝子改変されたJAK阻害薬であり、第II相試験でメトトレキサートやTNF阻害薬の効果が不十分な患者の関節リウマチ徴候や症状を改善することが報告されている。26ヵ国153施設に499例を登録 SELECT-BEYONDは、26ヵ国153施設が参加した国際的な二重盲検無作為化対照比較試験である(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、活動性の関節リウマチを発症し、生物学的製剤(bDMARD)の効果が不十分または不耐となり、同時に従来型抗リウマチ薬(csDMARD)の投与も受けている患者であった。 被験者は、upadacitinib徐放薬15mgまたは30mgまたはそれぞれのプラセボを12週間、1日1回経口投与した後、同薬15mgまたは30mgをさらに12週間投与する群に2対2対1対1の割合でランダムに割り付けられた。 主要エンドポイントは、以下の2つとした。1)12週時に、米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善を達成した患者の割合(ACR20)、2)12週時に、C反応性蛋白(CRP)で評価した28関節の疾患活動性スコア(DAS28[CRP])≦3.2点を達成した患者の割合。有効性と安全性の解析は、修正intention-to-treat集団(試験薬の投与を1回以上受けた患者)で行った。 2016年3月15日~2017年1月10日の期間に、499例(upadacitinib 15mg群:165例、同30mg群:165例、プラセボ→同15mg群:85例、プラセボ→同30mg群:84例)が登録され、15mg群の1例が治療開始前に脱落した。12週時ACR20達成率は約2倍、DAS28(CRP)≦3.2点達成率は約3倍に 全体の平均罹患期間は13.2(SD 9.5)年で、bDMARDの投与歴は1剤が47%(235/498例)、2剤が28%(137例)、3剤以上が25%(125例)であり、12週の治療を完遂したのが91%(451例)、24週の治療の完遂例は84%(419例)であった。平均年齢はupadacitinib 15mg群(164例)が56.3(SD 11.3)歳、同30mg群(165例)が57.3(SD 11.6)歳、プラセボ群(169例)は57.6(SD 11.4)歳であり、女性がそれぞれ84%、84%、85%だった。 12週時のACR20達成率は、15mg群が65%(106/164例)、30mg群は56%(93/165例)であり、プラセボ群の28%(48/169例)に比し、いずれの用量群も有意に高かった(いずれもp<0.0001)。DAS28(CRP)≦3.2点の達成率は、15mg群が43%(71/164例)、30mg群は42%(70/165例)と、プラセボ群の14%(24/169例)に比べ、いずれの用量群も有意に優れた(いずれもp<0.0001)。 12週時の有害事象の発生率は、15mg群が55%(91/164例)、プラセボ群は56%(95/169例)と類似したが、これに比べ30mg群は67%(111/165例)と頻度が高かった。最も高頻度の有害事象は、上気道感染症(15mg群:8%[13例]、30mg群:6%[10例]、プラセボ群:8%[13例])、鼻咽頭炎(4%[7例]、5%[9例]、7%[11例])、尿路感染症(9%[15例]、5%[9例]、6%[10例])、関節リウマチの増悪(2%[4例]、4%[6例]、6%[10例])であった。 重篤な有害事象は、15mg群の5%(8例)に比べ30mgは7%(12例)と、多い傾向がみられ、プラセボ群では発現を認めなかった。重篤な感染症、帯状疱疹、治療中止の原因となった有害事象も、15mg群やプラセボ群よりも30mg群で多かった。プラセボ対照期間中に、upadacitinib投与例で肺塞栓症が1例、悪性腫瘍が3例、主要有害心血管イベントが1例、死亡が1例にみられた。 著者は、「これらのデータは、再発例におけるJAK阻害薬治療のエビデンスを拡張し、upadacitinibによる治療は臨床的、機能的なアウトカムや患者報告アウトカムを大幅に、かつ迅速に改善する可能性を示すもの」としている。

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ProACT試験-プロカルシトニン値を指標とした抗菌薬使用(解説:小金丸博氏)-877

 抗菌薬の過剰な使用は、医療費の増加や薬剤耐性菌の出現に関連する公衆衛生上の問題である。プロカルシトニンは、ウイルス感染よりも細菌感染で上昇しやすいペプチドであり、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善とともに経時的に低下する。いくつかの欧州の試験において、抗菌薬を投与するかどうかをプロカルシトニンの結果に基づいて決定することで抗菌薬の使用を抑制できることが示されており、2017年、米国食品医薬品局(FDA)は下気道感染症が疑われる場合に抗菌薬の開始または中止の指標としてプロカルシトニンを測定することを承認した。しかしながら、プロカルシトニン値を日常臨床へ適用できるかは明らかでなかった。 本研究は、プロカルシトニン値に基づく抗菌薬処方ガイドラインを用いて抗菌薬の投与を決定することで、抗菌薬の使用を減らすことができるかどうかを検討したランダム化比較試験である。下気道感染症疑いで受診し、抗菌薬を投与すべきかどうかはっきりしない患者を対象とし、プロカルシトニン使用群と通常治療群に無作為に割り付けた。プロカルシトニン使用群の診療医には、プロカルシトニンの測定値に応じた推奨治療が記載された抗菌薬使用ガイドラインが提供された。その結果、intention-to-treat(ITT)解析では、30日までの平均抗菌薬投与日数はプロカルシトニン使用群が4.2日、通常治療群が4.3日であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-0.05日、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.5、p=0.87)。また、ITT解析による有害なアウトカムを発症した患者の割合は11.7%と13.1%であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-1.5ポイント、95%CI:-4.6~1.7、非劣性:p<0.001)。 本試験の結果は過去の研究と異なり、下気道感染症疑いの患者に対してプロカルシトニン値を指標として抗菌薬投与の適応を決定しても、指標としない群と比較して抗菌薬の使用を抑制できなかった。その理由として、通常治療群の臨床医はプロカルシトニン値の結果を知らないにもかかわらず、プロカルシトニン高値例に比べ、低値例での抗菌薬処方が少なかった点が挙げられている。プロカルシトニン値が低い患者では感染症の臨床症状を呈することが少なく、通常の臨床判断で十分抗菌薬の適応を決定できたと考えられる。 プロカルシトニンは抗菌薬を投与すべきかどうか判断するのに有用な指標となりうるが、プロカルシトニンの値だけで治療方針を決定できるわけではない。まずは注意深い問診と診察から正しく臨床情報を整理することが重要であり、そのうえでプロカルシトニン値を用いることが適切な抗菌薬使用につながると考える。

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JAK1阻害薬upadacitinibが難治性リウマチに有効/Lancet

 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)で効果不十分の中等度~重度活動性関節リウマチ患者において、JAK1阻害薬upadacitinibの15mgまたは30mgの併用投与により、12週時の臨床的改善が認められた。ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のGerd R. Burmester氏らが、35ヵ国150施設で実施された無作為化二重盲検第III相臨床試験「SELECT-NEXT試験」の結果を報告した。upadacitinibは、中等度~重度関節リウマチ患者を対象とした第II相臨床試験において、即放性製剤1日2回投与の有効性が確認され、第III相試験のために1日1回投与の徐放性製剤が開発された。Lancet誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。upadacitinib 15mgおよび30mgの有効性および安全性をプラセボと比較 SELECT-NEXT試験の対象は、csDMARDを3ヵ月以上投与され(試験登録前4週間以上は継続投与)、1種類以上のcsDMARD(メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド)で十分な効果が得られなかった18歳以上の活動性関節リウマチ患者。双方向自動応答技術(interactive response technology:IRT)を用い、upadacitinib 15mg群、30mg群または各プラセボ群に2対2対1対1の割合で無作為に割り付けし、csDMARDと併用して1日1回12週間投与した。患者、研究者、資金提供者は割り付けに関して盲検化された。プラセボ群には、12週以降は事前に定義された割り付けに従いupadacitinib 15mgまたは30mgを投与した。 主要評価項目は、12週時における米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を達成した患者の割合、ならびに、C反応性蛋白値に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)が3.2以下の患者の割合である。有効性解析対象は、無作為化され少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた全患者(full analysis set)とし、主要評価項目についてはnon-responder imputation法(評価が得られなかった症例はノンレスポンダーとして補完)を用いた。upadacitinibは両用量群で主要評価項目を達成 2015年12月17日~2016年12月22日に、1,083例が適格性を評価され、そのうち661例が、upadacitinib 15mg群(221例)、upadacitinib 30mg群(219例)、プラセボ群(221例)に無作為に割り付けられた。全例が1回以上治験薬の投与を受け、618例(93%)が12週間の治療を完遂した。 12週時にACR20を達成した患者は、upadacitinib 15mg群(141例、64%、95%信頼区間[CI]:58~70%)および30mg群(145例、66%、95%CI:60~73%)が、プラセボ群(79例、36%、95%CI:29~42%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。DAS28-CRP 3.2以下の患者も同様に、upadacitinib 15mg群(107例、48%、95%CI:42~55%)および30mg群(105例、48%、95%CI:41~55%)が、プラセボ群(38例、17%、95%CI:12~22%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。 有害事象の発現率は、15mg群57%、30mg群54%、プラセボ群49%で、主な有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は、悪心(15mg群7%、30mg群1%、プラセボ群3%)、鼻咽頭炎(それぞれ5%、6%、4%)、上気道感染(5%、5%、4%)、頭痛(4%、3%、5%)であった。 感染症の発現率は、upadacitinib群がプラセボ群より高かった(15mg群29%、30mg群32%、プラセボ群21%)。帯状疱疹が3例(各群1例)、水痘帯状疱疹ウイルス初感染による肺炎1例(30mg群)、悪性腫瘍2例(ともに30mg群)、主要心血管イベント1例(30mg群)、重症感染症5例(15mg群1例、30mg群3例、プラセボ群1例)が報告された。試験期間中に死亡例の報告はなかった。

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世界の健康・福祉はどこへ向かうのか?(解説:岡慎一氏)-875

 健康や福祉を維持、向上させるためにはお金がかかる。当然経済の発展とともに、健康・福祉関連の予算も増え、世界の健康・福祉は改善されてきた。Sustainable Development Goal(SDG)とは、国連に加盟するすべての国が賛同し、2015年から2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、17項目の持続可能な開発の目指すべき達成目標を掲げたものである。その中で健康・福祉はSGD-3に掲げられている。 この論文は、SDGが掲げられる前の1995年から2015年までの世界188ヵ国の健康・福祉のために使われた予算の推移をまとめたものである。また、その中から世界共通の問題であるHIV/AIDSに投入された各国の予算の推移も集計している。研究論文というより、膨大な資料を盛り込んだ国連の報告書という感じである。この報告書では、それぞれの国の収入により、high-、upper-middle-、low-middle-、low-income国に分けて解析を行っている。 2015年における世界全体での1人当たり医療費は1,332 USドルであったが、high-income国の平均が5,551 USドルであったのに対し、日本は4,286 USドルと米国(9,839 USドル)の約半分であった。これに対し、日本のHIV/AIDS対策費を患者1人当たりに割り直した費用は、17,479.9 USドルと米国の2,969.3 USドルの6倍にも上る。この費用の中には、検査費用なども含まれるため、純粋な治療費ではないが、有効な予算の使い方を考える必要もあろう。 この論文の強調している点は、医療・福祉に投下された予算は、2005年頃をピークに低下傾向にあり、2030年のゴールに向けた取り組みが、HIV/AIDS対策も含め、達成困難になってきているのではないかと警鐘を鳴らしていることにある。分量といい、内容といい、重厚な論文である。

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デング熱ワクチンの有効性・リスクが明らかに/NEJM

 四価デング熱ワクチン(CYD-TDV)の有効性について、ワクチン接種前のウイルス曝露者には5年の間、重症型デング熱の発症(virologically confirmed dengue:VCD)やデング熱での入院に対する保護効果が認められたが、非曝露者では、反対に重症型VCDやデング熱による入院のリスクをより高めるとのエビデンスが確認されたという。フランス・サノフィ社サノフィパスツール(ワクチン部門)のSaranya Sridhar氏らが、有効性に関する3試験のデータを再解析し報告した。CYD-TDVの有効性試験では、ワクチン接種を受けた2~5歳児においてデング熱による過剰な入院が観察されていた。NEJM誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。有効性に関する3試験のデータを再解析 研究グループは有効性に関する3試験のデータを用いて、ケースコホート研究を行った。ベースラインで収集した検体数に限りがあり、デング熱の血清状態を確認して正確なリスクを推定することができなかったため、デング熱NS1抗原IgG抗体ELISAを開発するとともに、月齢13ヵ月児の血清状態を確認した検体を用いて安全性と有効性の事後解析を行った。 主要解析では、50%プラーク減少中和検査(PRNT50)によるベースライン測定値(入手できた場合)と、13ヵ月齢の抗NS1アッセイの結果など共変量を用いて補完した力価(入手不可の場合)に基づき確認した、ベースライン血清状態を用いた。 加重Cox回帰法および標的最小損失ベースの推定による、VCD入院、重症型VCD、デング熱抗体有無別の症候性VCDのリスクを推算した。ウイルス血清陽性者には有効、陰性者にはリスク デング熱血清反応陰性であった2~16歳児において、VCD入院の5年累積発生率は、ワクチン接種群3.06%、非接種(対照)群1.87%で、データカットオフ時のハザード比(HR)は1.75(95%信頼区間[CI]:1.14~2.70)であった。血清反応陰性の9~16歳児において同発生率は、ワクチン接種群1.57%、対照群1.09%で、HRは1.41(95%CI:0.74~2.68)であった。また、重症型VCDについても同様に、血清反応陰性者では、ワクチン接種群のほうが対照群よりもハイリスクの傾向がみられた。 一方、血清反応陽性の2~16歳児においては、VCD入院の5年累積発生率は、ワクチン接種群0.75%、対照群2.47%で、HRは0.32(95%CI:0.23~0.45)であった。9~16歳児においても各群の同発生率は0.38%、1.88%で、HRは0.21(95%CI:0.14~0.31)であった。重症型VCDについても同様に、血清反応陽性者では、ワクチン接種群のほうが対照群よりも低率であった。

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