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高齢者への抗菌薬投与の有害性と安全性、3~7日vs.8~14日

 地域在住の66歳以上の高齢者において、アモキシシリン、セファレキシン、シプロフロキサシンの投与期間が長期(8〜14日)となった場合、短期(3〜7日)の場合と比較して、副作用やClostridioides difficile感染症(CDI)などの有害性アウトカム発現に差は認められなかった。カナダ・トロント大学のBradley J Langford氏らは、10万例以上の高齢患者を対象としたコホート研究の結果を、Clinical Infectious Diseases誌2025年4月号で報告した。 本研究では、カナダ・オンタリオ州の行政医療データが用いられた。対象はアモキシシリン、セファレキシン、シプロフロキサシンのいずれかまたは複数の処方を受けた66~110歳の外来患者で、処方期間は短期(3〜7日)または長期(8〜14日)に分類された。主要アウトカムは副作用、CDI、抗菌薬耐性を含む抗菌薬関連の害の複合、副次アウトカムは、抗菌薬の再処方、通院、死亡を含む安全性指標の複合であった。バイアスリスクを低減するため、抗菌薬投与が長期の患者の割合を元に操作変数法による解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者11万7,682例において、抗菌薬投与期間が長期の患者と短期の患者の間で、主要有害性アウトカムに差はみられなかった(以下、調整オッズ比[95%信頼区間])。 アモキシシリン:0.99[0.84~1.15] セファレキシン:1.11[0.90~1.38] シプロフロキサシン:0.94[0.74~1.20]・抗菌薬投与期間が長期の患者と短期の患者の間で、副次安全性アウトカムに差はみられなかった(以下、オッズ比[95%信頼区間])。 アモキシシリン:1.01[0.94~1.08] セファレキシン:1.06[0.97~1.17] シプロフロキサシン:0.99[0.85~1.15]

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COVID-19は糖尿病患者の院内死亡率を高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は高齢者や基礎疾患のある人で重症化しやすいことが知られているが、今回、治療中の糖尿病がCOVID-19による院内死亡率や人工呼吸器使用、血液透析といった腎代替療法の重大なリスク因子である、とする研究結果が報告された。研究は東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科の諏訪内浩紹氏、鈴木亮氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に3月19日掲載された。 COVID-19は多臓器障害を伴い、重症化した場合は、急性呼吸窮迫症候群、急性腎障害、その他の臓器不全を引き起こすことが多い。日本ではCOVID-19による死亡率は比較的低いが、糖尿病患者の場合では死亡リスクの上昇が報告されている。一方で、糖尿病患者におけるCOVID-19の治療と転帰を検討する包括的な研究は依然として限られている。そのような背景から、著者らはCOVID-19が糖尿病患者に及ぼす影響を評価するために、多施設の後ろ向きコホート研究を実施した。本研究では、院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICUへの入院、血液透析(HD)、持続的血液濾過透析(CHDF)、医療リソースの利用状況に関する影響が検討された。 研究には、千葉県内38医療機関の診断群分類包括評価(DPC)データより、2020年2月1日~2021年11月31日までの間にCOVID-19と診断された1万1,601人が含まれた。この中から、18歳未満、妊娠中、糖尿病未治療の症例など計825人が除外され、最終的な解析対象を1万776人(対照群7,679人、糖尿病群3,097人)とした。連続変数とカテゴリ変数の比較には、それぞれスチューデントのt検定とフィッシャーの正確確率検定を使用した。 糖尿病群の患者は対照群の患者よりも平均年齢とBMIが高かった(67.4歳 vs 55.7歳、25.6kg/m2 vs 23.6kg/m2、各P<0.001)。糖尿病の治療に関しては、インスリン使用率は88.4%、経口血糖降下薬は44.2%であり、インスリン療法の割合が高かった。 COVID-19による平均入院日数は、糖尿病群で17.8±15.3日であり、対照群(10.2±8.5日)と比べて有意に延長された(P<0.001)。院内死亡率は、糖尿病群と対照群でそれぞれ、12.9%と3.5%であり、糖尿病群で高くなっていた(オッズ比OR 4.05〔95%信頼区間3.45~4.78〕、P<0.001)。また、年齢別のサブグループ解析を行った結果、50~59歳にORのピークがみられ(同12.8〔3.71~44.1〕、P<0.01)、この年齢層がCOVID-19による院内死亡の強いリスク因子であることが示唆された。 次に、糖尿病がアウトカム(院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICU入院、HD、CHDF)に及ぼす影響を検討するため回帰分析を行ったところ、糖尿病群の全てのアウトカムのORは対照群と比較して有意に高かった。また、年齢、性別、BMI、救急車の利用で調整した重回帰分析を行った場合でも、全てのアウトカムのORは有意なままであったことから、糖尿病がこれらのアウトカムの独立した因子であることが示された。 本研究について著者らは、「2020~2021年のDPCデータの解析から、糖尿病はCOVID-19における院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICU入院、HD、CHDFの独立したリスク因子であることが示された。院内死亡率に関しては特に18~79歳の糖尿病群で対照群より高く、働き盛りの50~59歳で最もオッズ比が高かったことから、以降の若年世代に対してのワクチン接種勧奨や行動制限は有効だったのではないか」と述べている。 また、本研究の強みとして、レセプトデータをベースとしており、患者の使用している糖尿病治療薬などの臨床情報や、かかった医療費に関しての情報が含まれていた点を挙げており、「本研究はCOVID-19と糖尿病の臨床的特徴を明らかにし、将来の治療の改善に役立つものと考えている」と付け加えた。 本研究の限界点として、今回使用したDPCデータには、入院前の情報、臨床検査値やCOVID-19の重症度分類に関する情報、ワクチン接種に関する情報が含まれていないことを挙げている。

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バロキサビル単回投与による家庭内インフルエンザ伝播予防効果(解説:寺田教彦氏)

 ウイルス性上気道炎に対する抗ウイルス薬の伝播抑制効果は従来注目されてきたが、臨床研究においてその有効性を明確に示すことは困難であった。そうした中、2025年にNew England Journal of Medicine誌に掲載された本研究は、メーカーからの後援を受けた研究ではあるものの、インフルエンザ発症者に対して発症後48時間以内にバロキサビルを単回投与することで、家庭内でのウイルス伝播が有意に抑制されることを示した。 バロキサビルは日本で開発された新規抗インフルエンザ薬であり、以下のような特徴を有する。【長所】・単回経口投与で治療が完結する。・ウイルス力価の迅速な低下が期待される。・臨床効果はオセルタミビルなどのノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)と同等であり、とくにインフルエンザB型に対して優れているとする報告がある(Ison MG, et al. Lancet Infect Dis. 2020;20:1204-1214.)。【懸念点】・投与後にPA/I38X変異を有するウイルスが一定頻度で検出されており、バロキサビルの使用が増加すると耐性ウイルスの拡大が懸念されうる(Hayden FG, et al. N Engl J Med. 2018;379:913-923.)。・妊婦、免疫不全者、重症入院患者に対する有効性に関するエビデンスが現時点では不足している。・他の抗インフルエンザ薬と比較して薬価が高い。 本研究は、インフルエンザ発症から48時間以内の指標患者(index case)にバロキサビルを単回投与し、家庭内接触者へのインフルエンザ伝播抑制効果を検討した無作為化比較試験である。指標患者に重篤な合併症リスクのある者は含まれておらず、また家庭内接触者に2歳未満児、妊婦、免疫不全者といったインフルエンザ感染症の重症化リスクが高い者がいる場合も除外されていた。 主な結果として、無作為化から5日目までの家庭内接触者の感染率はバロキサビル群で9.5%、プラセボ群で13.4%と有意に低く(相対リスク低下29.0%)、インフルエンザ伝播に対する抑制効果が確認された。一方で、有症状インフルエンザの発症率はバロキサビル群5.8%、プラセボ群7.6%であり、統計学的有意差は認められなかった。 本研究結果は、バロキサビル投与により、インフルエンザ伝播率は有意に抑制されたが、有症状のインフルエンザ発症の抑制は限定的であることを示唆している。抗インフルエンザ薬の役割を「他者への伝播抑制」とした場合、指標患者の周囲に健常者のみがいる状況では、薬の内服による追加的なメリットは限定的であろう。だが、同居家族に高リスク者がいる場合には、バロキサビルの投与は、感染拡大とインフルエンザ重症化を予防することが期待されうる。 さらに、公衆衛生的観点からは、2020年のCOVID-19のようなパンデミックがインフルエンザで発生した場合、ワクチン展開以前の初期対応としてバロキサビルを活用する戦略も理論的に検討されうる。 なお、本研究では次の2点も注目された。 第1に、副作用の頻度である。バロキサビル群における有害事象発現率は4.6%、プラセボ群では7.0%であり、いずれも軽度(Grade1または2)であった。これまでの報告と同様に、本剤の忍容性は良好と考えられる。 第2に、バロキサビル投与に伴う耐性変異の出現である。バロキサビルを投与された指標患者においてPA/I38X変異は7.2%で認められたが、家庭内接触者では耐性ウイルスに感染した症例はなかった。これは、耐性ウイルスが患者体内でのみ発生したことを意味するのではなく、家庭内接触者は指標患者がバロキサビルを服用する前にすでに感染していたと考えられる。 バロキサビルは、インフルエンザ治療における重要な薬剤の1つであり、今後も耐性ウイルスの出現状況を注視しつつ、適正使用が求められる抗微生物薬である。[結論]バロキサビルは、インフルエンザの家庭内伝播を有意に抑制する効果を示し、とくに高リスク者の保護という観点で臨床的意義を持つ可能性がある。一方で、耐性ウイルスの出現や、重症例・免疫不全患者への有効性など、今後さらに検証を要する課題もある。

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心血管イベント高リスクのASCVD/FHヘテロ接合体、obicetrapibが有効/NEJM

 最大耐用量の脂質低下療法を受け、心血管イベントのリスクが高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)または家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体の患者において、プラセボと比較してCETP阻害薬obicetrapibはLDLコレステロール(LDL-C)値を有意に低下させ、安全性プロファイルは大きな差はないことが、オーストラリア・Monash大学のStephen J. Nicholls氏らBROADWAY Investigatorsが実施した「BROADWAY試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月7日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照比較試験、84日目までのLDL-C値の変化率を評価 BROADWAY試験は、心血管イベントのリスクが高い患者におけるobicetrapibの脂質値に及ぼす効果を評価し、安全性と副作用プロファイルを明らかにすることを目的とする無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年12月~2023年8月に、中国、欧州、日本、米国の188施設で患者の無作為化を行った(NewAmsterdam Pharmaの助成を受けた)。 年齢18歳以上、FHヘテロ接合体またはASCVDの既往歴を有し、最大耐用量の脂質低下療法を受けている患者を対象とした。LDL-C値≧100mg/dLまたは非HDLコレステロール(非HDL-C)値≧130mg/dLの患者、あるいはLDL-C値55~100mg/dLまたは非HDL-C値85~130mg/dLで少なくとも1つの心血管リスク因子を持つ患者を適格とした。エゼチミブ、bempedoic acid(ベムペド酸)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬の使用の有無は問わなかった。 これらの患者を、obicetrapib(10mg、1日1回)を経口投与する群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、365日間投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから84日目までのLDL-C値の変化率とした。365日目までの変化率も良好 2,530例(平均年齢65歳、女性34%)を無作為化の対象とし、obicetrapib群に1,686例、プラセボ群に844例を割り付けた。全体のベースラインの平均LDL-C値は98mg/dL、平均HDL-C値は49mg/dL、平均BMIは29であり、糖尿病が38%、ASCVDが89%、FHヘテロ接合体が17%であった。91%がスタチン(70%が高強度スタチン)、27%がエゼチミブ、4%がPCSK9阻害薬の投与を受けていた。 ベースラインから84日目までのLDL-C値の最小二乗平均変化率は、プラセボ群が2.7%(95%信頼区間[CI]:-0.4~5.8)であったのに対し、obicetrapib群は-29.9%(95%CI:-32.1~-27.8)と有意な差を認めた(群間差:-32.6%ポイント[95%CI:-35.8~-29.5]、p<0.001)。84日目の平均(±SD)LDL-C値は、obicetrapib群が62.8(±37.3)mg/dL、プラセボ群は92.3(±35.1)mg/dLであった。 また、84日目にLDL-C値<40mg/dLを達成した患者の割合は、obicetrapib群27.9%、プラセボ群1.1%、<55mg/dL達成率はそれぞれ51.0%および8.0%、<70mg/dL達成率は68.4%および27.5%だった。 ベースラインから4つの評価時点までのLDL-C値の最小二乗平均変化率(副次エンドポイント)は、30日目(群間差:-36.6%ポイント[95%CI:-39.1~-34.2])、180日目(-32.7%ポイント[-36.0~-29.4])、270日目(-30.2%ポイント[-33.6~-26.8])、365日目(-24.0%ポイント[-27.9~-20.1])のいずれにおいてもobicetrapib群で良好であった(すべてp<0.001)。 また、ベースラインから84、180、365日目までのアポリポ蛋白B、非HDL-C値、HDL-C値の最小二乗平均変化率もobicetrapib群で優れた(すべてp<0.001)。有害事象は両群とも約6割、重症度などにも差はない 試験期間中の有害事象は、obicetrapib群で59.7%、プラセボ群で60.8%に発現した。有害事象の重症度、試験レジメンとの関連、投与中止の理由に関して両群間に明確な差を認めず、頻度の高い有害事象(COVID-19、高血圧症、上気道感染症、上咽頭炎、関節痛、尿路感染症など)の発現率も両群で同程度だった。 心血管イベント(冠動脈心疾患死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術)はobicetrapib群で4.2%、プラセボ群で5.2%に発生した。血圧には、両群ともベースラインからの明らかな変化はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、心血管イベントのリスクが高い患者において、obicetrapibが脂質低下療法の補助薬として有用である可能性を示唆する」「本薬が、ASCVDの予防に有用な治療薬となるかについては、さらなる臨床試験で検討する必要がある」としている。

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帯状疱疹ワクチンで認知症の発症リスクを低減できる可能性(解説:小金丸博氏)

 「帯状疱疹ワクチンの接種が、認知症の発症リスクを低減する可能性がある」。この仮説は近年の観察研究で示唆されてきたが、2025年になってそれを強く支持する2つの高品質な準実験的研究がNature誌およびJAMA誌に相次いで報告され、大きな注目を集めている。 まず、先行研究としてウェールズでの研究結果が2025年4月2日号のNature誌に報告された。2013年にウェールズで導入された帯状疱疹ワクチン接種プログラムでは、1933年9月2日以降に生まれた人が接種対象となり、それ以前に生まれた人は対象外とされた。この明確な誕生日による区分を利用し、年齢のみがわずかに違うと推定される2つの集団を比較することで、交絡因子の影響を最小限に抑えた。その結果、ワクチン接種者では、7年間の追跡期間中に認知症と診断されるリスクが20%低下(3.5%ポイントの絶対リスク減少)し、この効果はとくに女性で顕著であった。 続いて今回、オーストラリアでの研究結果がJAMA誌オンライン版2025年4月23日号に報告された。2016年にオーストラリアで導入された帯状疱疹ワクチン(商品名:Zostavax)の無料接種プログラムに基づき、誕生日による接種適格性を利用して接種群と非接種群を比較した。その結果、ワクチン接種適格者では、7.4年間の追跡期間中に新たに認知症と診断される確率が1.8%ポイント低下した。ワクチン接種者と非接種者の間で、教育歴、既往歴、他の予防医療サービスの利用状況に大きな差がなかったことから、健康意識の違いによるバイアスの影響は最小限と考えられた。また、この研究では、性別による効果の差異は明確に示されなかった。先行研究では女性でより強い予防効果が観察されていることから、今後の研究での検討が期待される。 これら2つの研究の特徴は、どちらも回帰不連続デザイン(regression discontinuity design)を用いている点にある。これは、自然ルールではない人為的なルールによって生まれる境界線を利用した統計的因果推論の手法の1つである。両研究共に、ワクチン接種の適格性を外的要因に基づいて決定することで交絡因子の影響を最小限に抑えており、従来の観察研究よりも因果関係の推定に信頼性が高いと評価されている。 今回の研究の対象となったのは主に生ワクチン(Zostavax)であり、不活化ワクチン(商品名:Shingrix)ではなかった。現在、日本を含む多くの国ではShingrixが主流となっている。Shingrixは免疫応答がより強力であるとされる一方で、Zostavaxと同様の神経保護効果が得られるかは不明である。今後、Shingrixを用いた研究や他国での再現性の確認が進むことで、より確固たるエビデンスが構築されることが期待される。 帯状疱疹ワクチン接種が認知症リスクを低減させるメカニズムとして、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化抑制や、ワクチンによる免疫系の調節効果などが考えられている。VZVの再活性化が神経炎症や神経変性を惹起する可能性があり、慢性的な神経炎症が認知機能の低下に関与しているという仮説が考えられている。また、ワクチン接種が免疫老化の進行を遅らせることも、間接的な効果として議論されている。 日本においては、50歳以上を対象に帯状疱疹ワクチンが適用となっており、帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の予防目的での接種が徐々に広がりつつある。認知症予防効果が確立されれば、高齢者医療におけるさらなる付加価値として期待される。ただし、現時点では認知症予防を明確な適応とは規定しておらず、あくまで副次的な効果として受け止めるべきである。 高齢化社会の進展と認知症の増加が避けられない中、帯状疱疹ワクチンが神経変性疾患のリスクにも影響を及ぼす可能性を持つことは、予防医療の新たな可能性を提示している。今後のさらなるエビデンスの蓄積が期待される。

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人工関節感染疑い、培養が陰性である原因は?【1分間で学べる感染症】第26回

画像を拡大するTake home message人工関節感染(Prosthetic joint infection:PJI)疑いで培養が陰性である場合、先行する抗菌薬、培養が難しい微生物、検体採取の問題、非感染性疾患の4つの原因を考えよう。皆さんが目の前の患者さんの人工関節感染(PJI)を疑った際は、まず関節穿刺で関節穿刺液を採取して培養検査を提出すると思います。培養で何らかの原因微生物が検出されると思いきや、培養結果が陰性である状況に遭遇した場合、解釈とそのマネジメントに頭を悩まされることになります。単に「培養陰性だから感染ではない」と結論付けず、ここでは培養が陰性となる4つの原因を考えていきたいと思います。1)先行する抗菌薬の影響最も頻度の高い原因です。検体採取前に抗菌薬が投与されていた場合、培養結果が陰性となることがあります。患者さんの状態によりますが、状態が安定している場合にはいったん抗菌薬を中断し、抗菌薬を使用しない状況での培養提出が推奨されます。2)培養が難しい・培養されない微生物特殊な環境だけで増殖する微生物や、発育に時間がかかる微生物は、通常の培養法では検出が困難です。Cutibacterium acnesは発育に時間がかかるため、10~14日間の延長培養が推奨されます。非結核性抗酸菌や真菌も時間を要します。また、まれながらMycoplasma、Coxiella、Brucella、Ureaplasmaなどの報告もあります。3)検体採取の問題採取する検体数が不十分であったり、適切でない検体(例:スワブ)が使用されたりする場合、また保存や搬送過程に問題があると、培養感度が低下します。複数部位からの適切な量と種類の検体を、適切な条件で処理することが重要です。4)非感染性疾患関節痛や炎症を呈する非感染性疾患が、感染と間違えられることがあります。代表的なものに、痛風、偽痛風、メタローシスなどがあり、これらはPJIと類似した臨床像を示すため、診断に悩むことがたびたびあります。この4つの枠組みを念頭に置きながら、追加検査と初期治療に進むようにしましょう。1)Parikh MS, et al. J Infect Public Health. 2016;9:545-556.2)Goh GS, et al. J Arthroplasty. 2022;37:1488-1493.3)Tan TL, et al. JB JS Open Access. 2018;3:e0060.4)Tsai SW, et al. J Clin Orthop Trauma. 2024;52:102430.

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術前PD-1阻害薬療法、広範なdMMR固形腫瘍で手術を回避/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の局所進行直腸腫瘍では、免疫チェックポイント阻害薬を用いた術前補助療法により高率に手術の必要性がなくなったとの報告があり、これを腫瘍部位を問わずにあらゆる早期dMMR固形腫瘍に適用可能ではないかとの仮説が提唱されている。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのAndrea Cercek氏らは、根治手術が可能な早期dMMR固形腫瘍患者において、PD-1阻害薬dostarlimabを用いた術前補助療法が、高い割合で当該臓器の温存をもたらすことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月27日号に掲載された。米国の2つのコホートの第II相試験 研究グループは、早期dMMR固形腫瘍の非手術的管理の根拠を検証する目的で、治癒切除可能な広範な部位の早期MMR固形腫瘍におけるdostarlimabによる術前補助療法の有効性と安全性を評価する第II相試験を行った(Swim Across Americaなどの助成を受けた)。 米国の3施設でスクリーニングを受け、新たに診断されたI、II、III期の固形腫瘍で、治癒を目的とする手術が可能であり、免疫組織化学染色でMLH1、MSH2、MSH6、PMS2の発現がないdMMRの患者を対象とした。 これらの患者に対し、術前補助療法としてdostarlimab(500mg)を3週ごとに6ヵ月間(9サイクル)静脈内投与し、2つのコホート(コホート1:dMMR局所進行直腸がん、コホート2:直腸以外のdMMR固形腫瘍)で評価を行った。臨床的完全奏効が得られた患者は非手術的管理による治療の継続を選択することができ、残存病変を有する患者は切除術を受けることとした。 コホート1の主要エンドポイントとして、手術を受けなかった患者または手術を受け病理学的完全奏効を達成した患者におけるdostarlimab療法(±化学放射線療法)終了から12ヵ月の時点での持続的な臨床的完全奏効を評価し、コホート2では探索的解析を行った。解析には、2019年12月~2025年4月に得たデータを使用した。治療終了患者の臨床的完全奏効は82%、80%で手術回避 117例を解析の対象とした。コホート1が50例(年齢中央値51.0歳[範囲:26~78]、女性56%)、同2が67例(67.0歳[28~87]、43%)であった。103例が治療を終了した(コホート1:49例、コホート2:54例)。コホート2の主な腫瘍の部位は、結腸(33例)、胃(15例)、尿路上皮(7例)、食道(3例)、胃食道接合部(3例)などであった。 コホート1では、治療を終了した49例のすべてが臨床的完全奏効を達成し、全例が非手術的管理による治療継続を選択した。12ヵ月の時点で、37例が持続的な臨床的完全奏効を維持しており、有効性の基準を満たした。 コホート2では、治療を終了した54例中35例(65%)が臨床的完全奏効を得て、このうち33例(61%)が非手術的管理による治療継続を選択した。残りの2例(胃がん1例、尿路上皮がん1例)は手術を選択し、いずれも切除検体にがんの証拠は認めなかった。 両コホートを合わせた治療終了患者103例では、84例(82%[95%信頼区間[CI]:72~88])で臨床的完全奏効が得られ、このうち82例(80%[70~87])が手術を受けなかった。また、原発腫瘍が治療中または治療後に進行したり、切除不能となった患者はなく、死亡例の報告もなかった。 全117例における2年時の無再発生存率は92%(95%CI:86~99)で、再発までの期間中央値は20.0ヵ月(範囲:0~60.8)であった。コホート1の50例では、それぞれ96%および30.2ヵ月、同2の67例では、85%および14.9ヵ月だった。全体で再発は5例のみで、1例は原発腫瘍(直腸)の再増殖であったが、残りの4例はリンパ節に限局した再発であった。有害事象発現率は65%、可逆性のGrade1、2が60% dostarlimabの投与を少なくとも1回受けた患者の65%に有害事象が発現した。60%は可逆性のGrade1または2の有害事象であった。最も頻度の高いGrade1または2の有害事象は、疲労感(全体の23%)、皮疹または皮膚炎(同21%)、そう痒(同19%)であった。Grade3の有害事象として、糖尿病、肺感染症、甲状腺機能低下症、脳炎、好中球減少症を各1例に認めた。Grade4の発熱性好中球減少症が1例にみられた。 著者は、「免疫チェックポイント阻害薬の効果は、腫瘍の原発部位よりもdMMRの表現型に主に依存していると思われた」「今後の大きな課題は、腫瘍反応を監視する最良の方法を確立することである」「本研究は、早期dMMR固形腫瘍の従来の治療パラダイムに変更をもたらし、多くの患者において手術や他の治療の必要性をなくすための基礎を提示するものである」としている。

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モデルナのコロナワクチン、生後6ヵ月からの追加免疫の一変承認を取得

 モデルナ・ジャパンは5月19日付のプレスリリースにて、新型コロナウイルスワクチン「スパイクバックス筋注」について、生後6ヵ月以上4歳以下を対象とした追加免疫に関する承認事項の一部変更を厚生労働省から取得したと発表した。 これまで「スパイクバックス筋注」は、生後6ヵ月以上5歳未満に対して初回免疫のみ承認されており、追加免疫は5歳以上が対象であったが、今回の承認により、生後6ヵ月から追加免疫としても接種できるようになる。 COVID-19は、高齢者や免疫不全を有する高リスク者だけでなく、乳幼児においても重症化のリスクが高く、肺炎などの入院を要する疾病を引き起こす可能性がある。同社は、今回の承認が、幅広い世代のCOVID-19感染症予防に貢献すると期待を示している。

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治療法もワクチンもない伝染性紅斑

治療法もワクチンもない伝染性紅斑(リンゴ病)とは●原因と感染経路伝染性紅斑(リンゴ病)は、子供を中心に流行するヒトパルボウイルスB19を原因とする感染症で、患者の咳やくしゃみなどのしぶきに触れることで感染(飛沫・接触感染 )します。●主な症状約10日間の潜伏期間の後、両頬に紅い発疹が出現し(下図)、続いて体や手・足に網目状の発疹が出現、1週間程度で消失します。発疹が淡く、他疾患との区別が難しい場合もあります。多くの場合、両頬に発疹が出現する7~10日前に、微熱や風邪様の症状があることが多く、この時期が1番人に感染させやすくなります。発疹出現期には、感染力はほぼ消失します。●治療や予防法特別な治療方法はなく、対症療法が行われます。予防ワクチンもありません。このウイルスはアルコール消毒の効果が乏しいため、流水と石けんによる手洗いが大切です。また、感染拡大防止のために患者さんはマスクをしましょう 。●とくに注意が必要な人妊娠中あるいは妊娠の可能性がある女性は注意が必要です。胎児にも感染し、胎児水腫などの重篤な状態や、流産のリスクとなる可能性があります。周囲で患者発生がみられた場合 、感冒様症状の人や患者との接触をできる限り避けるよう注意をしてください。国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 伝染性紅斑より引用(2025年5月14日閲覧)https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/5th-disease/010/5th-disease.htmlCopyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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英語で「髄膜炎」、「脳炎」と区別して伝えるには…【患者と医療者で!使い分け★英単語】第18回

医学用語紹介:髄膜炎 meningitis患者さんに説明する際に、専門用語であるmeningitisは通じない場合が多いでしょう。「髄膜炎」と伝えるには、どのような一般用語を使えばよいでしょうか?講師紹介

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コロナ入院患者の院内死亡リスク、オミクロン後もインフルの1.8倍超/感染症学会・化学療法学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン株流行以降、重症度が低下したとする報告がある一方、インフルエンザと比較すると依然として重症度が高いとの報告もある。国内の死亡者数においても、5類感染症移行後、COVID-19による死亡者数はインフルエンザの約15倍に上ると厚生労働省の統計で報告されている。こうした背景から、長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究グループは、COVID-19患者の入院中の死亡リスクをインフルエンザ患者と比較評価した。本結果は、5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、前田氏が発表した。 本研究は、徳洲会メディカルデータベースを用いた後ろ向きコホート研究として実施された。DPCシステムに加入する50施設のデータから、18歳以上で入院契機病名がCOVID-19またはインフルエンザである患者を対象とした。解析対象期間は、インフルエンザ患者が2018年1月~2022年12月、COVID-19患者が2020年3月~2022年12月。両検査陽性者、入院時病名と検査結果の不一致例、COVID-19患者における抗体投与目的と考えられる短期入院例、転帰不明例は除外された。統計解析には、競合リスクを考慮した原因別ハザードモデルを使用し、インフルエンザ患者と比較したCOVID-19患者の院内死亡ハザード比を算出した。年齢、性別、チャールソン併存疾患指数(CCI)、高齢者施設入所の有無、入院医療機関を調整因子とした。90日超の入院は90日で打ち切りとした。また、COVID-19の流行時期による臨床状況の変化を考慮し、以下の3期間に分けて解析を行った。・I期:流行開始~ワクチン導入前(2020年3月~2021年2月)・II期:ワクチン導入後~オミクロン株流行前(アルファ株、デルタ株流行期)(2021年3月~2021年12月)・III期:オミクロン株流行期(2022年1月~2022年12月) 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、COVID-19入院患者1万8,336例、インフルエンザ入院患者2,657例。年齢中央値は、COVID-19患者のI期(3,695例):65歳(四分位範囲:48~78)、II期(5,959例):55歳(44~71)、III期(8,682例):80歳(68~88)、インフルエンザ患者:82歳(74~88)。・院内死亡割合は、インフルエンザ患者で5.9%に対し、COVID-19患者ではIII期(オミクロン株流行期)が9.1%であった。I期は6.3%、II期は5.5%であった。・人工呼吸器やHFNC/NPPVの使用割合は、アルファ株やデルタ株が流行したII期が最も高かった。 -人工呼吸器の使用:COVID-19 II期 7.8%vs.インフルエンザ 3.5% - HFNC/NPPVの使用:COVID-19 II期 8.8%vs.インフルエンザ 0.6%・入院期間は、COVID-19の全期間とインフルエンザでほぼ同様の約10日であった。・インフルエンザと比較したCOVID-19の院内死亡ハザード比は、I期:1.51(95%信頼区間[CI]:1.16~1.96)、II期:2.21(1.73~2.83)、III期:1.85(1.53~2.24)であり、II期が最も高かった。・入院時に酸素投与が必要であった患者に限定した場合も、I期:1.76(95%CI:1.18~2.64)、II期:2.17(1.50~3.14)、III期:2.01(1.53~2.65)となり、同様の傾向が認められた。 前田氏は本研究の結果について「COVID-19入院患者は、インフルエンザの入院患者と比較して、全期間を通じて院内死亡リスクが高いことが明らかになった。入院時に酸素投与を受けた患者に限定した解析でも同様の結果であり、入院時点で一般に入院適応があると考えられる患者に限定しても、COVID-19の死亡リスクが高いことが示唆された。新型コロナワクチン導入後の期間においては、入院患者が若年であり、入院時点でワクチン接種が完了していない集団であった可能性が考えられるが、本研究ではワクチン接種歴のデータが含まれていないため、今後の検討課題としたい」と結論付けた。

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10~18歳へのBCGワクチン再接種は有用か?/NEJM

 QuantiFERON-TB(QFT)検査陰性・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性の思春期児において、カルメットゲラン菌(BCG)ワクチン再接種により、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の持続感染に対する防御効果は得られなかった。米国・Gates Medical Research InstituteのAlexander C. Schmidt氏らBCG REVAX Study Teamが第IIb相の二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。先行研究の第II相試験で、BCGワクチン再接種による、結核菌の初回感染に対する防御効果は示されなかったが、副次エンドポイントである持続感染(初回QFT検査で陽転、さらに3ヵ月時点および6ヵ月時点の陽転持続で定義)予防へのワクチン効果(有効性45%、95%信頼区間[CI]:6~68)が観察されていた。NEJM誌2025年5月8日号掲載の報告。プラセボと比較し、結核菌の持続感染に対する防御効果を評価 試験は南アフリカ共和国5施設で、QFT検査陰性・HIV陰性の思春期児(10~18歳)を対象に、プラセボと比較したBCGワクチン再接種の結核菌の持続感染に対する防御効果(主要エンドポイント)を評価した。被験者は、BCGワクチン(Danish 1331)またはプラセボを皮内接種するよう1対1の割合で無作為に割り付けられた。BCGワクチンにはQFT検査で用いられる抗原が含まれておらず、71日時点のQFT検査陰性者は、ワクチンの有効性評価のための修正ITT集団に組み入れ可能であった。 有害事象は副次解析で、免疫原性は探索的解析にて評価した。ワクチンの有効性は修正ITT集団で評価した。集団には、無作為化されBCGワクチンまたはプラセボを接種され、接種後10週時のQFT検査が陰性(本基準は接種時に結核菌に感染していた被験者を除外するために追加された)であった全被験者を組み入れた。 層別Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%CIを推定して評価した。追跡期間中央値30ヵ月後の陽転持続、BCGワクチン群7.1%、プラセボ群7.0% 2019年10月16日~2021年7月22日に、1,836例が無作為化された(BCGワクチン群918例、プラセボ群917例)。 修正ITT集団(BCGワクチン群871例、プラセボ群849例)において、追跡期間中央値30ヵ月後、QFT検査に基づく陽転持続はBCGワクチン群で62/871例(7.1%[95%CI:5.4~8.8])、プラセボ群で59/849例(7.0%[5.2~8.7])に認められた(片側p=0.58)。BCGワクチン群vs.プラセボ群のQFT検査に基づく陽転持続のHRは1.04(95%CI:0.73~1.48)で、ワクチン有効率のポイント推定値は-3.8%(95%CI:-48.3~27.4)であった。 有害事象の発現頻度は、BCGワクチン群がプラセボ群よりも高かったが、ほとんどは注射部位反応(疼痛、発赤、腫脹、潰瘍形成)であった。BCGワクチン再接種は、サイトカイン陽性の1型CD4ヘルパーT細胞を誘導した。

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アトピー性皮膚炎への新規外用薬、既存薬と比較~メタ解析

 アトピー性皮膚炎に対する治療薬として、2020年1月にデルゴシチニブ、2021年9月にジファミラストが新たに承認された。長崎大学の室田 浩之氏らは、これらの薬剤と既存の標準的な外用薬について、臨床的有効性および安全性を評価するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施し、結果をDermatology and Therapy誌2025年5月号で報告した。 Medline、Embase、Cochrane、ならびに医中誌から対象となる文献を選定し、有効性の評価項目として、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアおよびInvestigator Global Assessment(IGA)スコアを使用した。安全性の評価項目には、重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症が含まれた。 固定効果モデルを用いたベイジアン多重処理ネットワークメタ解析が実施され、アトピー性皮膚炎に対する各種外用薬(プラセボを含む)の転帰を比較するために、オッズ比(OR)および95%信用区間(CrI)が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・アトピー性皮膚炎の成人患者(重症度は異なる)を対象とした、11件の無作為化比較試験がネットワークメタ解析に組み入れられた。・システマティックレビューの結果、ジファミラスト0.3%および1%、タクロリムス0.1%においてEASIスコアの改善が認められた。また、ジファミラスト1%、デルゴシチニブ3%、およびタクロリムス0.1%でIGAスコアの改善が認められた。・ネットワークメタ解析の結果、4週時点において、ジファミラスト1%(1日2回投与、BID)はプラセボと比較して、IGAスコアおよびベースラインからのEASIスコア変化率のいずれにおいても有意な改善を示した。一方で、ほかの治療薬との比較においては、点推定値は数値的にはジファミラスト1%に有利であったものの、統計学的な有意差は認められなかった。・ジファミラスト1%(BID)は、デルゴシチニブ0.3%(BID)と比較して、ざ瘡の発生率が有意に低かった。・重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症の発生率において、プラセボやほかの治療薬との間で統計学的に有意な差は認められなかった。

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慢性C型肝炎、ソホスブビル/ダクラタスビルvs.ソホスブビル/ベルパタスビル/Lancet

 慢性C型肝炎患者において、ソホスブビル/ダクラタスビルのソホスブビル/ベルパタスビルに対する非劣性が示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのGraham S. Cooke氏らが、ベトナムの公立病院2施設で実施した2×4要因デザインの無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。WHOは、C型肝炎ウイルス感染症に対して3種類の抗ウイルス薬の併用療法のいずれかを8~12週間行うことを推奨しているが、これらのレジメンを比較した無作為化試験はなく、より短い治療期間で高い治癒率を達成できる可能性が示唆されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「新たな戦略で高い有効性が認められたことから、治療へのアクセスが困難な集団への治療アプローチに役立つ可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年5月7日号掲載の報告。ソホスブビル/ダクラタスビル vs.ソホスブビル/ベルパタスビルで、4つの治療戦略を検討 研究グループは、軽度~中等度の肝線維化を有する18歳以上の慢性C型肝炎患者を、施設およびウイルス遺伝子型(1~5型vs.6型)で層別化し、ソホスブビル400mg+ダクラタスビル60mg(ソホスブビル/ダクラタスビル群)またはソホスブビル400mg+ベルパタスビル100mg(ソホスブビル/ベルパタスビル群)の各配合錠群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 同時に、それぞれ次の4つの治療戦略に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。(1)12週間連日投与(標準治療)、(2)4週間連日投与+週1回ペグインターフェロン アルファ-2a皮下注(計4回)、(3)2週間連日投与後、平日5日間投与10週間(導入・維持療法)、(4)7日目のウイルス量に基づき治療期間(4・8・12週間)を調整する治療反応性ガイド(RGT)療法。 主要アウトカムは、治療終了後12週時のウイルス学的著効(SVR)とし、実際に受けた治療にかかわらず主要アウトカムを評価できるすべての患者を解析対象集団とした。非劣性マージンは、薬剤比較では5%、治療戦略比較では10%とし、安全性は無作為化された全患者で評価した。ソホスブビル/ダクラタスビルはソホスブビル/ベルパタスビルに対し非劣性 2020年6月19日~2023年5月10日に624例が無作為化された。患者背景は、年齢中央値42歳(四分位範囲:37~51)、男性470例(75%)、女性154例(25%)で、遺伝子型1~5型は328例(53%)、遺伝子型6型は296例(47%)であった。 主要アウトカムを評価できた患者は609例(98%)で、SVRの達成率はソホスブビル/ダクラタスビル群で97%(294/302例)、ソホスブビル/ベルパタスビル群で95%(292/307例)、両群のリスク差は2.2%(90%信用区間[CrI]:-0.2~4.8)であり5%の非劣性マージン内であった(ソホスブビル/ダクラタスビルがソホスブビル/ベルパタスビルより有効である確率93%)。 治療戦略別では、SVRの達成率は、標準治療群で99%(148/150例)、4週間+インターフェロン群で94%(143/152例)(対標準治療のリスク群間差:-4.5%、90%CrI:-8.3~-1.3)、導入・維持療法群で99%(151/152例)(0.6%、-1.1~2.7)、RGT群で93%(144/155例)(-5.7%、90%CrI:-9.6~-2.3)であり、すべて10%の非劣性マージン内であった。 重篤な有害事象は、ソホスブビル/ベルパタスビル群で11例(4%)、ソホスブビル/ダクラタスビル群で6例(2%)に認められたが、両群間に差はなかった(リスク群間差:-1.6%、95%CrI:-4.2~0.8、p=0.90)。一方、副作用は、標準治療群3%(5/154例)、4週間+インターフェロン群70%(109/156例)、導入・維持療法群4%(6/156例)、RGT群3%(5/158例)に発現し、4週間+インターフェロン群で多く認められた(標準治療群とのリスク群間差:66.8%、95%CrI:59.2~74.0、p<0.0001)。

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子宮頸がんワクチンの接種率は近隣の社会経済状況や地理に関連か

 子宮頸がんはほとんどの場合ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により発症する。HPVにはワクチンが存在していることから、子宮頸がんは「予防できるがん」とも呼ばれる。この度、HPVワクチンの接種率が近隣地域の社会経済状況、医療機関へのアクセスに関連するという研究結果が報告された。近隣地域の社会経済状況が高く、医療機関へのアクセスが容易なほどHPVワクチンの接種率が高かったという。大阪医科薬科大学総合医学研究センター医療統計室の岡愛実子氏(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室)、同室室長の伊藤ゆり氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に3月13日掲載された。 子宮頸がんは女性で4番目に多く、ステージが上がるほどその予後は悪くなる。よって、早期のHPVワクチンの接種が必要とされるが、日本におけるHPVワクチンの接種率は高所得国の中で最も低い。これは、厚生労働省がメディアの報道を受けて、2013~2021年にかけて接種勧奨を停止していたことに起因する。2022年度より接種勧奨を再開し、停止期間に接種を受けられなかった女性に対して、無料のHPVワクチン接種(キャッチアップ接種)を行ってきたが、接種率は勧奨停止前のレベルまで回復していない。 これまでの海外の研究で、裕福な地域や都市部に住む女性でHPVワクチンの接種率が高いことが報告されている。一方で、日本のHPVワクチンの接種率を向上させるには、国内の接種状況や、それに影響を及ぼすと考えられる地域要因に関する研究が必要とされていた。このような背景から、岡氏らはワクチンの定期接種プログラムが導入された2013年からのデータが保管されている大阪市のデータを用い、累積接種率と地域ベースの社会経済指標およびアクセス指標との関連を調査した。 調査には、大阪市から提供された2013~2022年度の定期接種およびキャッチアップ接種データを含む個別のHPVワクチン接種データを利用した。対象は、1997年度から2010年度に生まれ、大阪市でHPVワクチン接種を受けた女性とした。地域の社会経済指標(Areal Deprivation Index: ADI)を近隣地域の社会経済状況の指標、各地域の代表地点から500mの範囲内にあるHPVワクチン接種を提供する医療機関の数をアクセス指標として、それぞれ用いた。HPVワクチン接種の累積率とADIおよび医療施設へのアクセスとの関連は、ロバスト誤差分散を用いたポアソン回帰モデルによって評価した。 大阪市では18万5,373人の女性がHPVワクチンの接種対象であり、そのうち1万8,688人(10.1%)が接種を受けた。最も貧困度の高い地域に住む女性(2万8,078人中2,539人〔9.0%〕)と比較して、最も貧困度の低い地域に住む女性(4万2,170人中5,862人〔11.6%〕)の累積HPVワクチン接種率は高かった(Prevalence Ratio PR1.25〔95%信頼区間1.16~1.34〕)。さらに、医療施設へのアクセスが低い地域に住む女性(5万5,055人中5,128人〔9.3%〕)と比較して、アクセスが良好な地域に住む女性(5万4,740人中5,862人〔10.7%〕)で累積ワクチン接種率は高くなっていた(PR1.09〔1.03~1.16〕)。 累積HPVワクチン接種は、定期接種ではADIと有意に関連していたが(最富裕層 vs 最貧困層:PR1.46〔1.33~1.61〕)、キャッチアップ接種では関連していなかった(最富裕層 vs 最貧困層:PR1.01〔0.92~1.11〕)。 本研究について著者らは、「今回の横断研究では、社会経済状況が高く、医療施設へのアクセスが高いほど、累積HPVワクチンの接種率が高くなることが示された。これらの知見はHPVワクチン接種の不平等を減らすために、社会環境アプローチを含むさらなる戦略が必要であることを示唆している」と総括した。 本研究の限界点として、対象者の健康リテラシーやHPVワクチンに対する認識などの潜在的な交絡因子を調整していないこと、政府が接種勧奨を停止する前にワクチンを受けていた1994~1996年度生まれの対象者を含む2012年度までの接種者が除外されていたため、大阪市の累積接種率が過小に評価された可能性があることなどを挙げている。

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静注鎮静薬―機械呼吸管理下ARDSの生命予後を改善(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 成人呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)の概念が提唱されて以来約70年が経過し、多種多様の治療方針が提唱されてきた。しかしながら、ARDSに対する機械呼吸管理時の至適鎮静薬に関する十分なる検討結果は報告されていなかった。本論評では、フランスで施行された非盲検無作為化第III相試験(SESAR試験:Sevoflurane for Sedation in ARDS trial)の結果を基に成人ARDSにおける機械呼吸管理時の至適鎮静薬について考察するが、その臨床的意義を理解するために、ARDSの病態、薬物治療、機械呼吸管理など、ARDSに関する臨床像の全体を歴史的背景を含め考えていくものとする。ARDSの定義と病態 ARDSは1967年にAshbaughらによって提唱され、多様な原因により惹起された急激な肺組織炎症によって肺血管透過性が亢進し、非心原性急性肺水腫に起因する急性呼吸不全を招来する病態と定義された(Ashbaugh DG, et al. Lancet. 1967;2:319-323.)。ARDSの同義語としてacute lung injury(ALI:急性肺損傷)が存在する。ALIは1977年にMurrayらによって提唱された概念で、ALIの重症型がARDSに相当する(Murray JF. Am Rev Respir Dis. 1977;115:1071-1078.)。 ARDS発症1週以内は急性期と呼称され、肺胞隔壁の透過性亢進に起因する肺水腫を主体とするびまん性肺組織損傷(DAD:diffuse alveolar damage)を呈する。発症より1~2週が経過すると肺間質の線維化、II型肺胞上皮細胞の増殖が始まる(亜急性期)。発症より2~4週以上が経過すると著明な肺の線維化が進行し、肺組織破壊に起因する気腫病変も混在するようになる(慢性期)。本論評では、ARDS発症より2週以内をもって急性期、2~4週経過した場合を亜急性期、4週以上経過した場合を慢性期と定義する。 ARDSにおける肺の線維化は特発性間質性肺炎(肺線維症)の末期像に相当するものであり、10年の経過を要する肺線維症の病理像がわずか数週間で確立してしまう恐ろしい病態である(急性肺線維症)。急性期ARDSの主たる死亡原因が急性呼吸不全(重篤な低酸素血症)であるのに対して、慢性期のそれは急性肺線維症に起因する慢性呼吸不全に関連する末梢組織/臓器の多臓器障害(MOF:multiorgan failure)である。以上のように、ARDSにおける急性期病変と慢性期病変は質的に異なる病態であり、治療方針も異なることに留意する必要がある。急性期ARDSの薬物治療―歴史的変遷 新型インフルエンザ、新型コロナなど、人類が免疫を有さない新たな感染症のパンデミック時期を除いて、ARDSの年間発症率は2~8例/10万例と想定されており、急性期の致死率は25~40%である。ARDS発症に関わる分子生物学的病態解明に対する積極的な取り組み、それらを基礎とした多種多様の急性期治療が試みられてきた。しかしながら、ARDSの急性期致死率は上記の値より少し低下してきているものの、2025年現在、明確な減少が確認されていないのが現状である。 世界各国において独自のARDS診療ガイドラインが作成されているが、本邦でも、日本呼吸療法医学会(1999年、2004年)、日本呼吸器学会(2005年、2010年)ならびに、日本集中治療医学会、日本呼吸器学会、日本呼吸療法医学会の3学会合同(2016年、2021年)によるARDS診療ガイドラインが作成された。これらの診療ガイドラインにあって2021年に作成された3学会合同のガイドラインには、成人ARDSに加え小児ARDSの治療、呼吸管理に関しても項目別にコメントが示されており臨床的に有用である(ARDS診療ガイドライン2021作成委員会編. 日集中医誌. 2022;29:295-332.)。 以上のARDS診療ガイドラインの臨床現場における有用性は、2020年3月~2023年5月の約3年間にわたる新型コロナパンデミックに起因する中等症II(呼吸不全/低酸素血症を合併)、重症(ICU入院、機械呼吸管理を要する)のARDSを基に検証が進められた。新型コロナ惹起性重症ARDSに対する薬物治療にあって最も重要な知見は、免疫過剰抑制薬としての低用量ステロイドによるARDS発症1ヵ月以内の生命予後改善効果である(RECOVERY Collaborative Group. N Engl J Med. 2021;384:693-704.)。以上に加え、低用量ステロイド併用下で免疫抑制薬であるIL-6拮抗薬トシリズマブ(商品名:アクテムラ)が新型コロナ関連ARDSの早期生命予後を改善することが報告された(RECOVERY Collaborative Group. Lancet. 2021;397:1637-1645.)。さらに、抗ウイルス薬レムデシビル併用下で免疫抑制薬JAK-STAT阻害薬であるバリシチニブ(商品名:オルミエント)が新型コロナによる早期ARDSの生命予後を改善することも示された(RECOVERY Collaborative Group. Lancet. 2022;400:359-368.)。 以上の結果を踏まえ、本邦における中等症II以上の重篤な新型コロナ感染症に対する急性/亜急性期の基本的薬物治療として上記3剤の使用が推奨されたことは記憶に新しい。しかしながら、以上の結果は、早期の新型コロナ感染に対する知見であり、感染後1ヵ月以上経過した慢性期(肺線維症形成期)に対するものではない。 ARDSの慢性期においてステロイドを持続的に投与すべきか否かに関する確実な検証(投与量、期間)はなされておらず、ARDSの慢性期を含めた長期生命予後に対してステロイドがいかなる効果をもたらすかは今後の重要な検討課題の1つである。さらに、ARDSの病態を呈しながら中/高用量のステロイド投与の効果が証明されているARDSも存在することを念頭に置く必要がある(脂肪塞栓、ニューモシスチス肺炎、胃酸の誤飲、高濃度酸素曝露、異型性肺炎、薬剤性、急性好酸球性肺炎などに起因するARDS)。一方、グラム陰性桿菌の敗血症に起因する重症ARDSに対しては、新型コロナ感染症の場合と同様に低用量ステロイド投与を原則とする(Bone RC, et al. N Engl J Med. 1987;317:653-658.)。以上のように、重症ARDSに対する初期ステロイドの投与量はARDSの原因によって異なることに留意する必要がある(山口. 現代医療. 2002;34(増3):1961-1970.)。ARDSの呼吸管理―静注鎮静薬による生命予後の改善 重症ARDSの呼吸管理は、非侵襲的陽圧換気(NPPV:non-invasive positive pressure ventilation)や高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC:high flow nasal cannula)など、気管挿管なしの非侵襲的呼吸補助から始まる。しかしながら、気管挿管の遅れはARDSの死亡リスクを上昇させる危険性が指摘されている。非侵襲的手段で呼吸不全が管理できない場合には、気管挿管下の呼吸管理に早期に移行する必要がある。 気管挿管下の呼吸管理は、一回換気量(TV:tidal volume)を抑制したlow tidal ventilation(L-TV、TV=4~8mL/kg)に比較的高い呼気終末陽圧呼吸(PEEP:positive end-expiratory pressure、PEEP=10cmH2O以上)を加味して開始される(肺保護換気)。L-TVはARDSで損傷した肺組織のさらなる損傷悪化を抑制すると同時に生体内CO2貯留を許容する換気法でpermissive hypercapniaとも呼称される。L-TVの効果を上昇させるものとして腹臥位呼吸法がある(肺の酸素化効率を上昇)。急性期ARDSに対するpermissive hypercapniaの臨床的重要性(早期の生命予後改善効果)は1990年から2000年代初頭にかけて世界で検証が試みられたが、確実に“有効”と結論できるものではなかった(cf. Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med. 2000;342:1301-1308.)。人工呼吸器管理で酸素化が維持できない場合に、肺保護の一環として体外式膜型人工肺(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)が適用される。ECMOによる肺保護治療が注目されたのは、2009年の新型インフルエンザパンデミックの発生時であった。その教訓を生かし、2020年における本邦のECMO設置率は50病床に1台と、世界有数のECMO保有国に成長した。しかしながら、高額医療であるECMO導入によって急性期ARDSの生命予後が真に改善するかどうかに関する臨床データは不十分であり、今後の検証が望まれる。 以上のように、現在のところ、呼吸管理法としていかなる方法がARDSの生命予後改善に寄与するかを確実に検証した試験は存在しない。今回論評するSESAR試験は、フランス37ヵ所のICUで施行された侵襲的機械呼吸施行時における吸入鎮静薬(セボフルラン、346例)と静注鎮静薬(プロポフォール、341例)の比較試験である。SESAR試験は、新型コロナ感染症が猛威を振るった2020~23年に施行されたもので、試験対象の50%以上が新型コロナに起因する中等症以上の成人ARDSであった。しかしながら、敗血症、誤飲、膵炎、外傷など、他の原因によるARDSも一定数含まれ、ARDS全体の動向を近似的に反映した試験と考えてよい。本試験において、ARDSの重症度、抗菌薬、ステロイド、機械呼吸の内容を含め、鎮静薬以外の因子は両群でほぼ同一に維持された。primary endpointとして試験開始28日以内の機械呼吸なしの日数、key secondary endpointとして試験開始90日での死亡率が検討された。その結果、28日以内の機械呼吸なしの日数、90日での死亡率はともに、静注鎮静薬プロポフォール群で有意に優れていることが判明した(90日目の死亡率:プロポフォール群でセボフルラン群に比べ1.3倍低い)。以上の内容は、ARDS発症後の慢性期(ARDS発症後4週以上で肺線維症形成期)に対しても静注鎮静薬による急性期呼吸管理が有利に働くことを示したものであり、ある意味、驚くべき結果と言ってよい。 以上、静注鎮静薬による初期呼吸管理がARDS慢性期の生命予後を有意に改善することが示されたが、今後、多数の侵襲的呼吸管理法の中でいかなる方法が急性~慢性期のARDSの生命予後改善に寄与するかに関し、組織的な比較試験が施行されることを望むものである。

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入院させてほしい【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第6回

入院させてほしいPointプライマリ・ケアの適切な介入により入院を防ぐことができる状態をACSCsという。ACSCsによる入院の割合は、プライマリ・ケアの効果を測る指標の1つとされている。病診連携、多職種連携でACSCsによる入院を減らそう!受け手側は、紹介側の事情も理解して、診療にあたろう!症例80歳女性。体がだるい、入院させてほしい…とA病院ERを受診。肝硬変、肝細胞がん、2型糖尿病、パーキンソン病などでA病院消化器内科、内分泌内科、神経内科を受診していたが、3科への通院が困難となってきたため、2週間前にB診療所に紹介となっていた。採血検査でカリウム7.1mEq/Lと高値を認めたこともあり、幸いバイタルサインや心電図に異常はなかったが、指導医・本人・家族と相談のうえ、入院となった。内服薬を確認すると、消化器内科からの処方が診療所からも継続されていたが、内容としてはスピロノラクトンとカリウム製剤が処方されており、そこにここ数日毎日のバナナ摂取が重なったことによるもののようだった。おさえておきたい基本のアプローチプライマリ・ケアの適切な介入により入院を防ぐことができる状態をAmbulatory Care Sensitive Conditions(ACSCs)という。ACSCsは以下のように大きく3つに分類される。1:悪化や再燃を防ぐことのできる慢性疾患(chronic ACSCs)2:早期介入により重症化を防ぐことのできる急性期疾患(acute ACSCs)3:予防接種等の処置により発症自体を防ぐことのできる疾患(vaccine preventable ACSCs)2010年度におけるイギリスからの報告によると、chronic ACSCsにおいて最も入院が多かった疾患はCOPD、acute ACSCsで多かった疾患は尿路感染症、vaccine preventable ACSCsで多かった疾患は肺炎であった1)。実際に、高齢者がプライマリ・ケア医に継続的に診てもらっていると不必要な入院が減るのではないかとBarkerらは、イギリスの高齢者23万472例の一次・二次診療データに基づき、プライマリ・ケアの継続性とACSCsでの入院数との関連を評価した。ケアが継続的であると、高齢者において糖尿病、喘息、狭心症、てんかんを含むACSCsによる入院数が少なかったという研究結果が2017年に発表された。継続的なケアが、患者-医師間の信頼関係を促進し、健康問題と適切なケアのよりよい理解につながる可能性がある。かかりつけ医がいないと救急車利用も増えてしまう。ホラ、あの○○先生がかかりつけ医だと、多すぎず少なすぎず、タイミングも重症度も的確な紹介がされてきているでしょ?(あなたの地域の素晴らしいかかりつけ医の先生の顔を思い出してみましょう)。またFreudらは、ドイツの地域拠点病院における入院患者のなかで、ACSCsと判断された104事例をとりあげ、紹介元の家庭医にこの入院は防ぎえたかというテーマでインタビューを行うという質的研究を行った。この研究を通じてプライマリ・ケアの実践現場や政策への提案として、意見を提示している(表)。地域のリソースと救急サービスのリンクの重要性、入院となった責任はプライマリ・ケアだけでなく、病院なども含めたすべてのセクターにあるという合意形成の重要性、医療者への異文化コミュニケーションスキル教育の重要性など、ERの第一線で働く方への提言も盛り込まれており、ぜひ一読いただきたい。ACSCsは高齢者や小児に多く、これらの提言はドイツだけでなく、世界でも高齢者の割合がトップの日本にも意味のある提言であり、これらを意識した医師の活躍が、限られた医療資源を有効に活用するためにも重要であると思われる。表 プライマリ・ケア実践現場と政策への提言<プライマリ・ケア実践チームへの提言>患者の社会的背景、服薬アドヒアランス、セルフマネジメント能力などを評価し、ACSCsによる入院のリスクの高い患者を同定すること処方を定期的に見直すこと(何をなぜ使用しているのか?)。アドヒアランス向上のために、読みやすい内服スケジュールとし、治療プランを患者・介護者と共有すること入院のリスクの高い患者は定期的に症状や治療アドヒアランスの電話などを行ってモニタリングすること患者および介護者にセルフマネジメントについて教育すること(症状悪化時の対応ができるように、助けとなるプライマリ・ケア資源をタイミングよく利用できるようになるなど)患者に必要なソーシャルサポートシステム(家族・友人・ご近所など)や地域リソースを探索することヘルステクノロジーシステムの導入(モニタリングのためのリコールシステム、地域のリソースや救急サービスのリンク、プライマリ・ケアと病院や時間外ケアとのカルテ情報の共有など)各部署とのコミュニケーションを強化する(かかりつけ医と時間外対応してくれる外部医師間、入退院支援、診断が不確定な場合に相談しやすい環境づくりなど)<政策・マネジメントへの提言>入院となった責任はプライマリ・ケア、セカンダリ・ケア、病院、地域、患者といったすべてのセクターにあるという合意を形成すべきであるACSCsによる入院はケアの質の低さを反映するものでなく、地理的条件や複雑な要因が関係していることを検討しなければならないACSCsに関するデータ集積でエキスパートオピニオンではなく、エビデンスデータに基づいた改善がなされるであろう医療者教育において異文化コミュニケーションスキル教育が重視されるだろう落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls紹介側(かかりつけ医)を、責めない!前に挙げた症例のような患者を診た際には、「なぜスピロノラクトンとカリウム製剤が処方されているんだ!」とついつい、かかりつけ医を責めたくなってしまうだろう! 忙しいなかで、そう思いたくなるのも無理はない。でも、「なんで○○した?」、「なんで△△なんだ?」、「なんで□□になるんだよ」などと「なんで(why)」で質問攻めにすると、ホラあなたの後輩は泣きだしたでしょ? 立場が違う人が安易に相手を責めてはいけない。後医は名医なんだから。前医を責めるのは医師である前に人間として未熟なことを露呈するだけなのである。まずは紹介側の事情をくみ取るように努力しよう。この症例でも、病院から紹介になったばかりで、関係性もあまりできていないなかでの高カリウム血症であった。元々継続的に診療していたら、血清カリウム値の推移や、腎機能、食事の状況など把握して、カリウム製剤や利尿薬を調節できたかもしれない。また紹介医を責めると後々コミュニケーションが取りにくくなってしまい、地域のケアの向上からは遠ざかってしまう。自分が紹介側になった気持ちになって、診療しよう。Pointかかりつけ医の事情を理解し、診療しよう!起きうるリスクを想定しよう!さらにかかりつけ医の視点で考えていきたい。この方の場合はまだフォロー歴が短いこともあって困難だったが、前医からの採血データの推移の情報や、食事摂取量や内容の変化でカリウム値の推移も予測可能だったかもしれない。糖尿病におけるsick dayの説明は患者にされていると思うが、リスクを想定し、かつ対処できるよう行動しよう。いつもより体調不良があるけど、なかなかすぐには受診してもらえないときには、電話を入れたり、家族への説明をしたり、デイケア利用中の患者なら、デイケア職員への声掛けも有効だろう! そうすることで不要な入院も避けられるし、患者家族からの信頼感アップも間違いなし!!「ERでは関係ない」と思わないで、患者の生活背景を聞き出し、患者のサポートシステム(デイケア・デイサービスなど)への連絡もできるようになると、かっこいい。かかりつけ医のみならず、施設職員への情報提供書も書ける視野の広い医師になろう。Point「かかりつけ医の先生とデイケアにも、今回の受診経過と注意点のお手紙を書いておきますね!」かかりつけ医だけに頑張らせない!入院のリスクの高い患者は、身体的問題だけでなく、心理的・社会的問題も併存している場合も少なくない。そんな場合は、かかりつけ医のみでできることは限られている。患者に必要なソーシャルサポートシステムや地域リソースを患者や家族に教えてあげて、かかりつけ医に情報提供し、多職種を巻き込んでもらうようにしよう! これまでのかかりつけ医と家族の二人三脚の頑張りにねぎらいの言葉をかけつつ(頑張っているかかりつけ医と家族を褒め倒そう!)、多くの地域のリソースを勧めることで、家族の負担も減り、ケアの質もあがるのだ。「そんな助けがあるって知らなかった」という家族がなんと多いことか。医師中心のヒエラルキー的コミュニケーションでなく、患者を中心とした風通しのよい多職種チームが形成できるように、お互いを尊重したコミュニケーション能力が必要だ! 図のようにご家族はじめこれだけの多職種の協力で患者の在宅生活が成り立っているのだ。図 永平寺町における在宅生活を支えるサービス画像を拡大するPoint多職種チームでよりよいケアを提供しよう!ワンポイントレッスン医療者における異文化コミュニケーションについてERはまさに迅速で的確な診断・治療という医療が求められる。患者を中心とした多職種(みなさんはどれだけの職種が浮かぶだろうか?)のなかで、医師が当然医療におけるエキスパートだ。しかし、病気の悪化、怪我・事故は患者の生活の現場で起きている。生活に目を向けることで、診断につながることは多い。ERも忙しいだろうが、「患者さんの生活を普段支えている人たち、これから支えてくれるようになる人たちは誰だろう?」なんて想像してほしい。ERから帰宅した後の生活をどう支えていけばよいかまで考えられれば、あなたは超一流!職能や権限の異なる職種間では誤解や利害対立も生じやすいので、患者を支える多職種が風通しのよい関係を築くことが大事だ。医療者における異文化コミュニケーション、つまり多職種連携、チーム医療は、無駄なER受診を減らすためにも他人ごとではないのだ。病気や怪我さえ治せば、ハイ終わり…なんて考えだけではまだまだだ。もし多職種カンファレンスに参加する機会があれば、積極的に参加して自ら視野を広げよう。ACSCsへの適切な介入とは? ─少しでも防げる入院を減らすために─入院を防ぐためには、単一のアプローチではなかなか成果が出にくく、複数の組み合わせたアプローチが有効といわれている2)。具体的には、患者ニーズ評価、投薬調整、患者教育、タイムリーな外来予約の手配などだ。たとえば投薬調整に関しては、Mayo Clinic Care Transitions programにおいても、皆さんご存じの“STOP/STARTS criteria”を活用している。なかでもオピオイドと抗コリン薬が再入院のリスクとして高く、重点的に介入されている3)。複数の介入となると、なかなか忙しくて一期一会であるERで自分1人で頑張ろうと思っても、入院回避という結果を出すまでは難しいかもしれない。そこで先にもあげたように多職種連携・Team Based Approachが必要だ4)。それらの連携にはMSW(medical social worker)さんに一役買ってもらおう。たとえば、ERから患者が帰宅するとき、患者と地域の資源(図)をつないでもらおう! MSWと連絡とったことのないあなた、この機会に連絡先を確認しておこうね!ACSCsでの心不全の場合は、専門医やかかりつけ医といった医師間の連携はじめ、緩和ケアチームや急性期ケアチーム、栄養士、薬剤師、心臓リハビリ、そして生活の現場を支える職種(地域サポートチーム、社会サービス)との協働も必要になってくる。またACSCsにはCOPDなども多く、具体的な介入も提言されている。有症状の慢性肺疾患には、散歩などの毎日の有酸素トレーニング30分、椅子からの立ち上がりや階段昇降、水筒を使っての上肢の運動などのレジスタンストレーニングなどが有効とされている。家でのトレーニングが、病院などでの介入よりも有効との報告もある。「家の力」ってすごいよね。理学療法士なども介入してくれるとより安心! 禁煙できていない人には、禁煙アドバイスをすることも忘れずに。ERで対応してくれたあなたの一言は、患者に強く響くかもしれない。もちろん禁煙外来につなぐのも一手だ! ニコチン補充療法は1.82倍、バレニクリンは2.88倍、プラセボ群より有効だ5)。勉強するための推奨文献Barker I, et al. BMJ. 2017:84:356-364.Freud T, et al. Ann Fam Med. 2013;11:363-370.藤沼康樹. 高齢者のAmbulatory care-sensitive conditionsと家庭医. 2013岡田唯男 編. 予防医療のすべて 中山書店. 2018.参考 1) Bardsley M, et al. BMJ Open. 2013;3:e002007. 2) Kripalani S, et al. Ann Rev Med. 2014;65:471-485. 3) Takahashi PY, et al. Mayo Clin Proc. 2020;95:2253-2262. 4) Tingley J, et al. Heart Failure Clin. 2015;11:371-378. 5) Kwoh EJ, Mayo Clin Proc. 2018;93:1131-1138. 執筆

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第11回 コロナ感染で“脳の老化”が2年分進む?

「コロナ感染で2年分“脳の老化”が進む」――そんなことを示唆する研究報告がありました。今回はその研究の詳細をご紹介していきます。見えない敵が進行させる脳の老化今回取り上げる研究は、英国の大規模なデータ「UK Biobank」から、コロナに感染した626例と、年齢・性別・人種などを厳密にマッチングしたコロナに感染していない626例の計1,252例を対象にしています1)。その方たちからパンデミックの前後で採取した血液を比較しました。注目したのはアルツハイマー病に関連する「バイオマーカー」です。この研究で用いられた検査では、脳内に溜まるアミロイドβの前駆物質である「Aβ42」と「Aβ40」、そして「pTau-181」という値を測定しています。COVID-19感染がこれらの値にどう影響するかを調べたのです。簡単に補足をしておくと、Aβ42とAβ40は、どちらもタンパク質を切り出した産物なのですが、このAβ42とAβ40の比が小さいほど、すなわち後者の比率が多いほど、脳でタンパク質の異常な沈着が進んでいる(すなわち、アルツハイマー病で起こる変化が脳で起こっている)と解釈できることがわかっています。また、pTau-181は神経細胞内でタウ蛋白が過剰にリン酸化されたもので、こちらもアルツハイマー病の初期から上昇することが知られています。血液が教える認知機能への警告サイン本研究では、感染後にこのAβ42とAβ40の比率が平均で2.0%低下し、年齢による変化でいえば約4年分に相当することを明らかにしました。さらに、入院を要した重症例では非入院例の2倍以上(5.5%)の低下を示していました。加えて、pTau-181の増加も同様に見られており、とくに高齢者や高血圧がある方など、脳のダメージを受けるリスクの高い人ほど、感染後のpTau-181増加やAβ42とAβ40の比率の減少が顕著でした。こうした変化は、実際の認知機能にも現れています。UK Biobankの認知テストから算出された「全般的認知能力スコア」は、感染していない人と比べコロナ感染者で平均1.99%低下しており、これは年齢による低下に換算すると、約2年分に相当していました。また、自己申告による「全体的な健康状態」の評価も感染者で2.39%悪化していました。こうした研究結果は、コロナ感染とアルツハイマー病の因果関係を保証するものではありませんが、帯状疱疹ワクチンの認知症予防に関する最近の研究などとともに、「感染症が認知症を近づけ、ワクチンがそれを遠ざける」という仮説をさらに強固にするものだと思います。私たちにできること私たちが知っておくべき重要な点は、たとえ軽症や中等症のCOVID-19であっても、こうした「目に見えにくい脳の老化プロセス」が加速するリスクがある点、そしてそれが重症なほど、より認知症が近づくかもしれないという点です。それを防ぐのは、ワクチンの定期接種やマスク着用、こまめな手洗いといった感染症予防です。それが感染予防だけでなく、認知症予防にもつながる可能性があるのです。これを読んでいる多くの人にとって、認知症は「将来のことで現実味がない」かもしれません。しかし、「脳の健康」は日々のパフォーマンスの要でしょう。私たちにできることは、パンデミック後も持続可能なセルフケア・感染予防を1つでも多く取り入れ習慣にしていくことです。 1) Duff EP, et al. Plasma proteomic evidence for increased β-amyloid pathology after SARS-CoV-2 infection. Nat Med. 2025;31:797-806.

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インフル・コロナ混合ワクチン、50歳以上への免疫原性・安全性確認/JAMA

 インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の混合ワクチン「mRNA-1083」の免疫原性と安全性を、50歳以上の成人を対象に評価した第III相無作為化観察者盲検試験の結果が報告された。開発中のmRNA-1083は、推奨されるインフルエンザワクチン(高用量、標準用量)およびCOVID-19ワクチンと比較して非劣性基準を満たし、4種すべてのインフルエンザ株(50~64歳)、SARS-CoV-2(全年齢)に対して高い免疫応答を誘導したことが実証され、許容可能な忍容性および安全性プロファイルが示された。米国・ModernaのAmanda K. Rudman Spergel氏らが報告した。JAMA誌オンライン版2025年5月7日号掲載の報告。4価ワクチン+COVID-19併用接種群と比較 試験は、2023年10月19日~11月21日に米国146施設で50歳以上の成人を登録して行われた。データ抽出は2024年4月9日に完了した。 被験者は年齢で2コホート(65歳以上、50~64歳)に分けられ、mRNA-1083+プラセボを接種する群、承認済みの季節性インフルエンザ4価ワクチン(65歳以上:高用量4価不活化インフルエンザワクチン[HD-IIV4]、50~64歳:標準用量IIV4[SD-IIV4])とCOVID-19ワクチン(全年齢:mRNA-1273)を併用接種する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 本試験の主要目的は、29日時点におけるmRNA-1083接種後の体液性免疫応答の対照ワクチンに対する非劣性の検証、mRNA-1083の反応原性および安全性の評価であった。副次目的は、29日時点におけるmRNA-1083接種後の体液性免疫応答の対照ワクチンに対する優越性の検証などであった。mRNA-1083の免疫原性の非劣性、高い免疫応答の誘導を確認 全体で8,015例がワクチンを接種された(65歳以上4,017例、50~64歳3,998例)。年齢中央値は65歳以上のコホート70歳、50~64歳のコホート58歳、女性はそれぞれ54.2%と58.8%、黒人またはアフリカ系は18.4%と26.7%、ヒスパニックまたはラテン系は13.9%と19.3%であった。 mRNA-1083の免疫原性は、すべてのワクチン適合インフルエンザ株およびSARS-CoV-2株に対して非劣性が検証された。すなわち、幾何平均抗体価比の97.5%信頼区間(CI)下限値は0.667を上回り、セロコンバージョン/血清反応率の差の97.5%CI下限値は-10%超であった。 mRNA-1083は、4種すべてのインフルエンザ株に対してSD-IIV4(50~64歳に接種)よりも高い免疫応答を誘導し、3種のインフルエンザ株(A/H1N1、A/H3N2、B/ビクトリア)に対してHD-IIV4(65歳以上に接種)よりも高い免疫応答を誘導した。また、SARS-CoV-2(全年齢にmRNA-1273を接種)に関しても高い免疫応答を誘導した。 mRNA-1083接種後の依頼に基づく非自発的に報告された副反応は、両年齢コホートにおいて対照ワクチン群と比較し、頻度および重症度ともに数値的には高かった。頻度は、65歳以上ではmRNA-1083接種群83.5%、HD-IIV4+mRNA-1273接種群78.1%であり、50~64歳ではmRNA-1083接種群85.2%、SD-IIV4+mRNA-1273接種群81.8%であった。重症度は大半がGrade1または2であり短期間に消失した。以上から、安全性に関する懸念は認められなかった。

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