サイト内検索|page:185

検索結果 合計:5552件 表示位置:3681 - 3700

3681.

急性期脳梗塞に対する神経保護薬nerinetideの有効性と安全性/Lancet(解説:中川原譲二氏)-1212

 nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95)を阻害するエイコサペプチドで、虚血再灌流の前臨床脳梗塞モデルで有効性が確認されている神経保護薬である。この試験では、急性期脳梗塞患者での迅速血管内血栓回収療法(EVT)に随伴する虚血再灌流におけるnerinetideの有効性と安全性を評価する目的で、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(ESCAPE-NA1)が行われた。 対象は、年齢18歳以上、脳主幹動脈閉塞後12時間以内の急性期脳梗塞で、無作為割り付け時に機能障害を伴う脳梗塞がみられ、発症前は地域で自立して活動しており、脳卒中早期CTスコア(ASPECTS)が>4点、多相CT血管造影で中等度~良好な側副路充満が示されている患者であった。被験者はすべてEVTを施行され、適応がある場合は通常治療としてアルテプラーゼの静脈内投与よる血栓溶解療法が行われた。次いで、nerinetide 2.6mg/kg(最大270mg)を静脈内に単回投与する群、またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、90日時の良好な機能的アウトカム(mRSスコア:0~2点)とした。副次評価項目は、神経学的障害(NIHSS:0~2点)、日常生活動作の機能的自立(mBI:95~100点)、きわめて良好な機能的アウトカム(mRSスコア:0~1点)、死亡などであった。nerinetideは、急性期脳梗塞のEVT後の転帰を改善せず 2017年3月~2019年8月の期間に、8ヵ国の48の急性期治療病院で1,105例が登録され、nerinetide群に549例(年齢中央値71.5歳、女性48.8%)、プラセボ群には556例(70.3歳、50.5%)が割り付けられた。アルテプラーゼは、nerinetide群が549例中330例(60.1%)、プラセボ群は556例中329例(59.2%)に投与された。 90日時のmRSスコア0~2点は、nerinetide群が549例中337例(61.4%)で、プラセボ群は556例中329例(59.2%)で達成され、両群間に有意な差は認められなかった(補正後RR:1.04、95%CI:0.96~1.14、p=0.350)。NIHSS 0~2点の達成(nerinetide群58.3% vs.プラセボ群57.6%、補正後RR:1.01、95%CI:0.92~1.11)、mBI 95~100点の達成(62.1% vs.60.3%、1.03、0.94~1.12)、mRSスコア0~1点の達成(40.4% vs.40.6%、0.98、0.85~1.12)および死亡(12.2% vs.14.4%、0.84、0.63~1.13)にも、有意な差はなかった。nerinetideは、アルテプラーゼ非投与のEVT施行例で転帰を改善 アルテプラーゼ非投与例での90日mRSスコア0~2点の達成は、nerinetide群が219例中130例(59.3%)と、プラセボ群の227例中113例(49.8%)に比べ有意に良好であった(補正後RR:1.18、95%CI:1.01~1.38)。また、死亡もnerinetide群で有意に少なかった(0.66、0.44~0.99)。一方、アルテプラーゼ投与例では、このような差はみられなかった(90日mRSスコア0~2点達成の補正後RR:0.97[95%CI:0.87~1.08]、死亡の補正後RR:1.08[0.70~1.66])。 重篤な有害事象の発生は両群でほぼ同等であった(nerinetide群33.1% vs.プラセボ群35.7%、RR:0.92、95%CI:0.79~1.09)。また、進行性脳梗塞(stroke-in-evolution)、新規または再発脳梗塞、症候性頭蓋内出血、肺炎、うっ血性心不全、低血圧、尿路感染症、深部静脈血栓症/肺塞栓症、血管性浮腫の発生にも差はなかった。 以上より、nerinetideは、プラセボ群と比較して、急性期脳梗塞患者でのEVT施行後の良好な機能的転帰の達成割合を改善しなかったが、アルテプラーゼによる血栓溶解療法を併用しなかった集団では、これを改善するとともに、死亡を抑制する可能性があることが示された。EVTでは、アルテプラーゼ併用の有無で、nerinetide導入を選別すべきか? 一般に、急性期脳梗塞に対する早期の血流再開と神経保護の併用療法には、相加的・相乗的効果が期待される。しかし、今回のESCAPE-NA1試験では、アルテプラーゼ非併用群においてのみ、この効果が確認されたとされている。EVTでのアルテプラーゼ併用には、機械的な血栓回収時に末梢に飛散する血栓の溶解などにより、組織灌流を改善させる効果が期待されるが、その神経毒性が、nerinetideの神経保護効果を相殺する可能性も考えられる。今後、EVTが選択されたがアルテプラーゼは併用しない脳梗塞患者の治療へのnerinetide導入に関するさらなる知見が待たれる。

3682.

医師向けの投資マンガ【Dr.倉原の“俺の本棚”】第29回

【第29回】医師向けの投資マンガ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、世界のマーケットがぶっ壊れてしまいました。そのため、リーマンショック以降の株価がほとんど吹っ飛んでしまった企業もあります。赤字ではなく黒字を続けて、地道に内部留保をため込んできた企業もある中で、これはいくらなんでもやりすぎです。内部留保しすぎな日本もどうかと思いますが、今回はその財務体質の良さがCOVID-19による景気後退に耐えうる“盾”になったわけです。COVID-19の動向が今後どうなっていくかはわかりません。自然に収束していくのか、あるいは収束せずに共生の道をたどるのか。いずれにしても、人間が経済活動をしないという選択肢はないので、どこかでこの不景気を株価指数に織り込んでいくのだろうと思っています。今回の騒動により、景気後退は避けられないと思いますが、大手金融機関が信用リスクから破綻するという事態はなさそうですし、国をあげて金融緩和と財政出動を進めていることから、いずれ景気も戻ってくると私は信じています。楽天証券では、2月の証券口座開設数が初めて10万を超え、3月は2月比で3割程度増えるようです。今がチャンスとばかりに、多くの株式投資初心者が参入し始めたことを意味しています。私も、興味がある医師は今、株式投資を始めるべきだと思っています。逆に今始めないでいつ始めるんだ、と!『マンガでわかる Dr.Kの株式投資戦術―忙しい医師でもできるエビデンスに基づく投資―』Dr.K/著. 中外医学社. 2020年今日紹介するのは、医師向けの株式投資のマンガです。Dr.Kの新作になりますが、もともとある『株式投資戦術』という本をわかりやすくマンガ化したものです。初心者向きとはいえ、割安株にどう投資するかというところに踏み込んでいるため、レベルは中級者と言っても過言ではないかもしれません。とはいえ、どこぞの経済学の教科書みたいに、ワケワカメな内容が書いてあるわけではないので、株式投資を始めたい人にとってはベストブックと言えるでしょう。マンガと本文が4:6くらいの割合で、ちょうどよい感じです。主人公は大学病院の小児科医(なぜ小児科医なのかは不明)。さて、株式投資を勉強して、彼の人生はいったいどうなっていくのでしょうか。『マンガでわかる Dr.Kの株式投資戦術―忙しい医師でもできるエビデンスに基づく投資―』Dr.K /著出版社名中外医学社定価本体2,400円+税サイズA5判刊行年2020年

3683.

主要な学術集会の開催予定

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、今春開催の多くの学術集会が延期または開催方式の変更を余儀なくされている。COVID-19終息の道筋が見えない状況の中、夏以降に開催が予定されている学術集会も軌道修正が余儀なくされ、会合方式の変更からWEB開催に移行した学術集会もある。CareNet.com編集部では、主要な臨床系医療学会の学術集会をピックアップ。現在の各学術集会の開催概要をまとめた。今後、参加予定の学会などがあれば参考にしてもらいたい(内容は7月3日現在)。主要な学術集会の開催予定第117回 日本内科学会会期 8月7日(金)~9日(日)会場 東京国際フォーラム ホールA第60回 日本呼吸器学会学術講演会会期 9月20日(日)~22日(火)会場 神戸コンベンションセンター第84回 日本循環器学会学術集会会期 7月27日(月)~8月2日(日)(オンライン開催)第50回 日本心臓血管外科学会学術総会会期 8月17日(月)~19日(水)(オンライン開催)第106回 日本消化器病学会総会会期 8月11日(火)~13日(木)(オンライン開催)第63回 日本腎臓学会学術総会会期 8月19日(水)~21日(金)会場 パシフィコ横浜アネックスホール・ノースおよびオンライン開催の併用第63回 日本糖尿病学会年次学術集会会期 10月5日(月)~16日(金)(オンライン開催)第54回 糖尿病学の進歩会期 9月2日(水)~3日(木)(オンライン開催)第93回 日本内分泌学会学術総会会期 7月20日(月)~8月31日(月)(オンライン開催)第82回 日本血液学会学術集会会期 10月9日(金)~11日(日)(オンライン開催)第42回 日本血栓止血学会学術総会会期 6月18日(木)~20日(土)(オンライン開催)第94回 日本感染症学会学術講演会会期 8月19日(水)~21日(金)会場 グランドニッコー東京(台場)ほかオンライン開催と併用第18回 日本臨床腫瘍学会学術集会会期 2021年2月18日(木)~20日(土)会場 国立京都国際会館ほか※2020年は開催予定なし第58回 日本癌治療学会学術集会会期 10月22日(木)~24日(土)会場 国立京都国際会館・グランドプリンスホテル京都第69回 日本アレルギー学会学術大会会期 9月17日(木)~20日(日)会場 国立京都国際会館第64回 日本リウマチ学会総会・学術集会会期 8月17日(月)~9月15日(火)(オンライン開催)第61回 日本神経学会学術大会会期 8月31日(月)~9月2日(水)岡山コンベンションセンターほかオンライン開催と併用第116回 日本精神神経学会学術総会会期 9月28日(月)~30日(水)会場 仙台国際センターほかオンライン開催と併用第25回 日本心療内科学会総会・学術大会2020年は開催せず、2021年に下記にて開催会期 2021年10月23日(土)・10月24日(日)会場 東北大学大学院医学系研究科星陵オーディトリウム緩和・支持・心のケア合同学術大会2020会期 8月9日(日)・10日(月)(WEB開催のみ)日本脳神経外科学会 第79回学術総会会期会場開催 10月15日(木)~17日(土)Web開催 10月15日(木)~11月末予定会場 岡山コンベンションセンターほかとオンライン開催の併用第120回 日本外科学会定期学術集会会期 8月13日(木)~15日(土)(オンライン開催)第28回 日本乳癌学会学術総会会期 10月13日(火)~15日(木)会場 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)第93回 日本整形外科学会学術総会会期 6月11日(木)~8月31日(月)(オンライン開催)第108回 日本泌尿器科学会総会会期 12月22日(火)~25日(金)会場 神戸ポートピアホテルほか第123回 日本小児科学会学術集会会期 8月21日(金)~23日(日)会場 神戸コンベンションセンターほかオンライン開催と併用第121回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会会期 10月6日(火)・7日(水)会場 岡山コンベンションセンターほか第67回 日本麻酔科学会年次学術集会会期 7月1日(水)~8月末日(WEB開催、詳細は検討中)第48回 日本救急医学会総会・学術集会会期 11月18日(水)~20日(金)会場 長良川国際会議場ほか第57回 日本リハビリテーション医学会学術集会会期 8月19日(水)~22日(土)会場 国立京都国際会館第11回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会会期 7月23日(木・祝)〜 8月31日(月)オンデマンド配信 7月23日(木・祝)〜8月31日(月)ライブ配信 8月29日(土)・30日(日)第20回 日本抗加齢医学会総会会期 9月25日(金)〜9月27日(日)会場 浜松町コンベンションホールおよびオンライン開催

3684.

第2回 “緊急事態宣言”賛否、基本再生産数がものを言う

日本での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延は、ついに4月7日、政府が7都府県に対し、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく「緊急事態宣言」を発令するに至った。報道を見ていると、今回の緊急事態宣言は東京都を中心とする感染者急増に対し、医療崩壊を懸念する日本医師会や日本看護協会などの危機意識表明に背中を押されたようにも見える。実際、この緊急事態宣言に至った舞台裏を報じた朝日新聞の「『経済ガタガタに…』揺れた政権、緊急事態宣言に動く訳」でも、政権がこうした医師会などの姿勢に根負けしたことが赤裸々につづられている。歴代内閣総理大臣の中で最長在職日数記録(第1~4次内閣)を達成し、かつての佐藤 栄作氏の最長連続在職日数記録に迫りつつある安倍 晋三氏の看板政策が、大胆な金融政策に代表される経済政策「アベノミクス」。その成果については賛否両論があるものの、安倍氏就任以降、一貫してこの中で成功していたのが株価である。2018年1月には日経平均株価が約26年ぶりの2万4,000円台を回復し、2019年末から2020年1月にかけても2万4,000円台に2度達成するなど一番目に見えた成果が、今回のCOVID-19騒動で一時は1万6,000円台まで急落した。緊急事態宣言で最も全国民に影響する外出自粛要請により、それに伴う企業活動・消費の低下は必至で、日経平均株価の1万6,000円割れも視野に入る。安倍政権の焦りは分からないわけではない。もっとも、公開データを基に感染症病床の病床使用率の参考値を公表しているサイト「新型コロナウイルス対策ダッシュボード」の最新データ(4月6日時点)を見ると、既に感染者数が特定感染症病床、一種感染症病床、二種感染症病床の合計数を超える自治体が東京都をはじめとして5都県、病床使用率70%以上100%未満が7県あるという状況では、経済重視が行き過ぎればまさに全国的な医療崩壊が現実のものになってしまう。しかし、今回の外出自粛要請がどの程度感染拡大スピードの抑止につながるか未知数なのは、誰もが承知していることだろう。ちょうど本稿執筆時点の4月8日、今回のCOVID-19の震源地となった中国湖北省・武漢市は1月23日から2ヵ月半続いた都市封鎖が解除された。解除の理由は3月の第4週に新規感染者発生がほぼゼロになったことを受けたものだが、この都市封鎖は厳しい移動制限や商業施設の閉鎖など強制力を伴うもの。また、中国ほどではないものの3月10日から全土封鎖と罰則を伴う外出禁止令を出していたイタリアでも、ようやく4月に入り感染者報告が減少し始めている。日本はこれよりも緩い措置であるため「感染抑止効果が薄いのでは?」との指摘もあるが、そもそも感染症の感染力を示す「基本再生産数」は、単純なウイルスの感染力だけでなく、流行地域の人口密度、各国の医療レベルや国民の行動様式、個人の感染防御対応などにも左右される。その意味で今回の日本での外出自粛の効果を占うなら、最短時期は東京都の小池百合子知事が初めて外出自粛を訴えた3月最終週の週末に今回のウイルスの最大潜伏期間14日間を足した4月13日以降の都内での感染者報告となるだろう。

3685.

新型コロナの嗅覚・味覚障害、主症状前に出現か

 嗅覚障害および味覚障害がウイルス感染と関連するのは周知の事実である。2020年3月、米国で新型コロナウイルス感染症における味覚・嗅覚障害の報告がなされた。その後、この症状を訴える患者が日本でも確認され、症状出現に敏感になっている患者も多いのではないだろうか。新型コロナウイルス感染症入院患者の20.3%は入院前に味覚障害または嗅覚障害の症状 今回、伊・ミラノの保健所ASST-FBF-SaccoのAndrea Giacomelli氏らが伊・L.Sacco病院で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と診断された患者の一部に、嗅覚および味覚障害(OTDs:olfactory and taste disorders)が出現したことを明らかにした。また、研究者らは「OTDsはSARS-CoV-2感染患者で頻繁に見られ、本格的な臨床症状(発熱、咳嗽など)の発症に先行する可能性がある。非特異的ではあるが、パンデミックの状況では病院に入院していない感染患者の臨床的スクリーニングツールになる」としている。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版3月26日号掲載の報告。 研究者らはSARS-CoV-2感染症患者のOTDsの有病率を調べるため、2020年3月19日、SARS-CoV-2陽性で入院していたすべての患者に対しOTDsの有無や欠如についての質問を含む簡単なアンケートを実施。発症した症状のタイプなどのインタビューを行った。 新型コロナウイルス感染症患者の味覚障害および嗅覚障害の有病率を調べた主な結果は以下のとおり。・入院患者88例中、59例から回答を得た(非回答の29例の内訳は、認知症:4例、言語バリア:2例、非侵襲的換気実施:23例)。・20例(33.9%)は1つ以上の味覚障害または嗅覚障害を、そのうち11例(18.6%)は味覚障害と嗅覚障害の両方の症状を訴えた。・12例(20.3%)は入院前に味覚障害または嗅覚障害の症状を示したのに対し、8例(13.5%)は入院中に症状が出現した。・女性(10/19例[52.6%])のほうが男性(10/40例[25%])よりも嗅覚および味覚障害を強く訴えた(p=0.036)。・1つ以上味覚障害および嗅覚障害を訴えた患者(中央値56歳、四分位範囲[IQR]:47~60)は、訴えなかった患者(同:66歳、IQR:52~77)よりも若かった(P = 0.035)。・すべての患者が味覚障害および嗅覚障害の持続性を報告した。

3686.

COVID-19重症患者へ、ルキソリチニブによる臨床試験開始/ノバルティス

 2020年4月2日、ノバルティスファーマ株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者のサイトカインストーム治療におけるルキソリチニブ(商品名:ジャカビ)投与の評価を目的とし、インサイト社と共同で行う第III相臨床試験計画について発表した。 この試験では、 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によって重篤なCOVID-19肺炎を発症した患者において、 標準治療(SoC:Standard of Care)とルキソリチニブ+SoC併用療法を比較、評価する予定。 サイトカインストームは重篤な免疫過剰反応の一種であり、COVID-19患者の呼吸障害の一因になりうる可能性がある。現在、非臨床エビデンスや予備的臨床エビデンスにおいて、 ルキソリチニブ投与によって集中治療や人工呼吸器を必要とする患者数を低減させる可能性が示唆されている。 ルキソリチニブはJAK1およびJAK2を阻害する経口薬であり、日本では血液内科領域の疾患(骨髄線維症、真性多血症[既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る])治療薬として承認されている。

3687.

診療情報とポケットカルテ(R)連携でオンライン診療推進へ

 2020年4月8日、医療情報のネットワーク化を推進するメディカル・データ・ビジョン株式会社(東京都千代田区、代表 取締役社長 岩崎博之氏、以下「MDV」)と「ポケットカルテ」を運営する特定非営利法人日本サスティナブル・コミュニティ・センター(京都市、代表理事 新川達郎氏、以下「SCCJ」)は、一生涯の健康・医療情報を自ら管理するPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を活用して、新型コロナウイルス感染拡大に伴い時限的に規制緩和されるオンライン診療を推進するため、ポケットカルテ®とカルテコが連携するサービスを開発・提供し、連携強化を図ることを発表した。 今後、両社はオンライン診療に携わる医療者に対して、PHRがエビデンスに基づいた患者情報を入手する最適なツールであることを周知するとともに、患者がオンライン診療をより容易に受けられるよう、さらなる機能強化を図っていく。 MDVが開発した「カルテコ」は、医用画像や健診結果のほか、自分で計測した血圧などのバイタルデータの保管・閲覧が可能。現在、全国7病院でサービスが稼働し、利用者は約2万2,000人(2019年12月末時点)。 「ポケットカルテ®」は、北岡 有喜氏(京都医療センター医療情報部長)が考案・開発した個人向け健康情報管理サービス基盤で、2008年6月にサービスを開始。現在の利用者は約6万1,500人(2020年1月末時点)。

3688.

岡田正人のアレルギーLIVE

第1回 食物アレルギー第2回 臨床免疫第3回 アナフィラキシーショック第4回 鼻炎第5回 薬物アレルギー第6回 アトピー性皮膚炎第7回 蕁麻疹第8回 好酸球増加 岡田正人が帰ってきた!2007年にリリースされた名作『Dr.岡田のアレルギー疾患大原則』を最新の知見を踏まえて全面刷新。白熱教室さながらの熱いレクチャーをご体感ください。外来でよく遭遇するが悩ましい食物アレルギーや即座の対応を必要とするアナフィラキシーはもちろん、花粉症、蕁麻疹、喘息、薬剤アレルギーなど、アレルギー疾患の基本を世界標準の診療を知り尽くしたDr.岡田が圧倒的なわかりやすさでお届けします。第1回 食物アレルギーどの科の医師でも必ず知っておくべきアレルギー診療。その基本をわかりやすくレクチャーします。初回は外来で出会うことも多い食物アレルギーについて。症例ベースに詳しく解説します。第2回 臨床免疫自然免疫と獲得免疫、免疫系のそれぞれの細胞の働き、またそれに伴う疾患、薬剤についてなど‥。免疫についてこんなにわかりやすく解説した番組はこれまでになかったといっても過言ではありません!第3回 アナフィラキシーショックアナフィラキシーショックは、時間との勝負!わずかなためらいや判断の遅れが患者の命にかかわります。即座に判断、対応するための知識をわかりやすく解説します。なぜ、アナフィラキシーが起こるのか、なぜその対応が必要なのかまで、しっかりとカバー。アナフィラキシーに関する疑問や悩みを解決します。第4回 鼻炎今回はアレルギー性鼻炎についてです。アレルギー性鼻炎は、鼻漏、鼻閉、かゆみ、結膜炎などさまざまな症状があります。実は、出る症状(とくに鼻漏と鼻閉)によって、処方する薬が異なってきます。患者の症状に合わせた治療薬と処方方法についてそれぞれの薬の特徴も踏まえ、詳しくわかりやすく解説します。また、効果のある飲み方とその理由など、患者に説明することによって、より効果を高めることができます。次回の花粉症シーズン前に知識を整理してみませんか。第5回 薬物アレルギー今回は薬物アレルギーについて解説します。薬物アレルギーは、100%防ぐことは不可能です。発症したときにできるだけ早く、そして重症化しないように対処しなければなりません。医原性である薬物アレルギーの対処法は、すべての医療者にとって必要なことです。しっかりと理解しておきましょう。一方で、近年、抗菌薬アレルギーに対するオーバーダイアグノーシス(過剰診断)が問題となっています。それにより、本来使うべき薬剤を使用できず、薬剤の効果や耐性菌など、実際の治療への影響を及ぼしています。ならば、どうすればよいのか。岡田正人がわかりやすくお教えします。第6回 アトピー性皮膚炎「アトピー性皮膚炎」当然のように使われるこの言葉ですが、本来の意味だと、実はちょっとおかしいのでは?そう、アトピーで皮膚炎が起こるのではありません。なぜ皮膚炎が起こるのか、起こさないためにはどうすべきか、起こったときの治療方法は、そしてなぜその方法なのか。そのことを患者が理解することが、治療への近道となります。ステロイド・保湿剤の選択、患者への説明の仕方、ステロイドが嫌だという患者への対応など、実際の臨床で行われているDr.岡田のシンプルかつ詳細な治療方法をわかりやすくお教えします。第7回 蕁麻疹今回のテーマは蕁麻疹。蕁麻疹には、抗ヒスタミン薬。それだけ処方すればいいと思っていませんか?確かに抗ヒスタミン薬は有効ですが、それが効かない患者さんもいます。なぜ効かないのかを知っておくと、その後の対応がぐっと楽になります。問診や検査はどうするか、かゆみの鑑別診断は?そして薬剤の処方のしかたや患者さんの納得する説明など、蕁麻疹の診療のノウハウを岡田正人がわかりやすくお教えします。第8回 好酸球増加好酸球が増加する原因はアレルギー、薬剤、寄生虫感染症、膠原病、HES、悪性腫瘍など多岐にわたります。現在では、好酸球の遺伝子異常の検査もできますが、医療経済的なことを考えると、最初から行うものではありません。診察、問診によって、まずは明らかな原因がないかどうかを確認し、そのうえで必要な検査を行うようにしましょう。好酸球の働きや特性を知っておけば、その症状を引き起こす原因と理由がはっきりと理解できるようになります。

3689.

新型コロナウイルス、高温多湿でも集団感染が発生か

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が高温多湿の環境でも広がり、感染を引き起こす可能性を示唆する報告が発表された。これまでの研究では、高温多湿の環境ではウイルスの感染率が大幅に低下することが示されている。今回、中国・江蘇省の公衆浴場におけるSARS-CoV-2のクラスター事例において、SARS-CoV-2感染者が健康人8人に感染させた可能性があることを中国・南京医科大学のChao Luo氏らが報告した。JAMA Network Open誌2020年3月30日号に掲載。プール、シャワー、サウナを備えた公衆浴場での新型コロナウイルスの感染事例 著者らは江蘇省の淮安(武漢の北東700km)にある淮安第4病院からデータを収集した。同じ公衆浴場を訪れた感染患者9例が2020年1月25日~2月10日に入院した。咽頭スワブ検体を収集して定量的逆転写PCR法によりSARS-CoV-2を検出、補助診断としてCTと血液検査を実施した。データをPrism version 7.00(GraphPad)で分析した。 公衆浴場における新型コロナウイルス感染のクラスター事例の主な分析結果は以下のとおり。・男性用の公衆浴場の広さは約300m2、温度は25〜41℃、湿度は約60%で、プール、シャワー、サウナがある。・最初の患者(患者1)が武漢に旅行後、2020年1月18日に公衆浴場に行きシャワーを浴びた。19日に発熱し、25日に新型コロナウイルス感染症と診断された。他の7例は同浴場においてシャワー、サウナ、プールを利用した(患者2、3、4は19日、患者5は20日、患者6、7は23日、患者8は24日に利用)。公衆浴場を訪れてから6〜9日後に新型コロナウイルス感染症に関連する発熱、咳、頭痛、胸部うっ血などの症状が現れた。患者9は公衆浴場で働いており、30日に発症した。・患者の年齢中央値(四分位範囲)は35(24~50)歳であった。・8例(89%)が発熱(平均期間[SD]:5.78[2.99]日)、7例(78%)が咳を報告した。衰弱は3例[33%]、胸苦しさは2例[22%]、食欲不振は1例[11%]でみられた。下痢、筋肉痛、鼻漏、頭痛はみられなかった。CRPは9例(100%)で上昇した(平均[SD]:3.34 [3.18] mg/dL)。リンパ球減少症は3例(33%)にみられ、LDHは3例(33%)で増加した(225.56 [85.33] U/L)、GOTは2例(22%)で増加した(30.22 [13.94] U/L)。・CT画像は全例ですりガラス陰影がみられた。・2月10日時点で呼吸サポートが必要な患者はいない。

3690.

3次医療機関でのがん患者の新型コロナ感染率/JAMA Oncol

 がん患者は治療やモニタリングのために通院機会が多いことから、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染するリスクが高い。さらに化学療法や放射線療法は免疫を抑制する。今回、中国・武漢大学中南病院のJing Yu氏らが、武漢の3次医療機関のがん患者においてSARS-CoV-2感染率と転帰を調査した結果、がん患者の入院および通院がSARS-CoV-2感染の潜在的なリスク因子であることが示唆された。とくに高齢患者(60歳以上)と非小細胞肺がん(NSCLC)患者に感染者が多かったという。JAMA Oncology誌オンライン版2020年3月25日号に掲載。 著者らは、2019年12月30日~2020年2月17日(データカットオフ)に、武漢大学中南病院の放射線・腫瘍科に入院したがん患者1,524例の人口統計学的、臨床的、および治療のデータなどの診療記録を調査した。 主な結果は以下のとおり。・この施設におけるがん患者のSARS-CoV-2感染率は0.79%(1,524例中12例、95%CI:0.3~1.2%)と推定され、同期間に武漢市で報告されたCOVID-19例全体の累積発症率(0.37%、1,108万1,000人中4万1,152人、2020年2月17日のデータカットオフ時点)よりも高かった。・感染患者の年齢中央値は66歳(範囲:48〜78歳)で12例中8例(66.7%)が60歳以上、12例中7例(58.3%)がNSCLCであった。・5例(41.7%)は、化学療法(3例、免疫療法併用/非併用)または放射線療法(2例)のいずれかで治療されていた。・3例(25.0%)がSARSを発症し、1例は集中治療を必要とした。・2020年3月10日時点で、6例(50.0%)が退院し、3例(25.0%)が死亡した。・スクリーニングを受けたがん患者1,524例中228例はNSCLCで、60歳以上のNSCLC患者では、COVID-19の発症率が60歳以下よりも高かった(4.3% vs.1.8%)。

3692.

新型コロナショックで株暴落!投資家はどう立ち向かうべき?【医師のためのお金の話】第31回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。新型コロナウイルス感染症に端を発した2020年2月24日の株価下落はその後も続き、歴史的な暴落となりました。百年に一度といわれた2008年のリーマンショックを上回るペースで株価下落が進行したため、肝を冷やした方も多かったのではないでしょうか?今回の暴落に際して、嵐が過ぎ去るまで静観する人、恐怖に駆られて所有株式を売却した人、絶好の買い場と判断して暴落に買い向かった人など、いろいろな投資判断がありました。私は自他共に認める「超長期逆張り投資家」なので、今回の暴落に対して買い向かっていきました。2008年のリーマンショック以来の本格的な投資だったので、まさに12年ぶりの大勝負です。短期的に順張り戦略で利益を出すのは易しいが…株式投資で利益を得るためには投資戦略が重要です。一般的に人気なのは、上昇相場に乗って投資する順張り戦略でしょう。順張り投資は精神的な負担が少なく、利益も簡単に出せる場合が多いので、多くの人が選ぶ戦略です。順張り投資は、相場が上り調子だと面白いように利益を得られます。あまりに勝ち過ぎて「自分は投資の天才なのではないか?」と勘違いしてしまうこともしばしばです(笑)。しかし、順張り投資の最大の問題点は、いつ相場から降りるかが難しい点です。相場が永遠に上昇し続けることはありません。必ず、どこかの時点で上昇から下落に転じるポイントがあります。後から見れば相場の転換点を見つけることは簡単ですが、市場にどっぷりつかっている時にはそれを知ることはきわめて難しいのです。ちょっと下落しても「再び上がるのでは?」と思ってずるずると損失を出し続け、やがて身動きが取れなくなってしまうのです。上昇相場で積み上げた利益をすべて吐き出し、失意のうちに株式市場から退出する人の何と多いことでしょう。個人投資家のほとんどはこのパターンを経験しているのではないでしょうか。暴落に買い向かうことは並大抵のことではない!一方で、逆張り戦略はどうでしょうか。実際に暴落の中に身を投じてみると、簡単に実践できることではないことを、身をもって経験します。下落が数日であれば、精神的にも投資資金的にも余裕があるため、買い向かうことは比較的簡単です。しかし、下落が数週間から数ヵ月続くと、精神的に追い詰められます。同時に投資資金も枯渇するため、非常に厳しい状況に追い込まれます。数ある投資戦略の中でも、暴落に買い向かっていく逆張り戦略は、精神的に最も負担のかかるものといえます。しかも、逆張り戦略の場合は市場が反転しない限り、利益を得ることができません。このため、投資してから利益を得るまでの期間が長くなる傾向があります。それでは、なぜ私が精神的な負担があり、投資成果を得るまで時間のかかる逆張り戦略を選ぶのでしょうか? それは、計画的に買い向かった場合に、利益を得ることができる確率が高いからです。その理由はとても単純で、暴落して二束三文で投げ売りされている株式を購入しているから、です。暴落局面で買い向かっていると安価な株式を大量に購入することになるため、一旦相場が上昇しはじめれば、利益は雪だるま式に増えていきます。この相場が反転して利益が増えはじめる時の感覚を一度経験すると、すっかり病みつきになって逆張り戦略のファンになってしまいます。逆張り投資を成功に導く2つのポイントこう説明すると、逆張り投資は素晴らしいので自分もやってみよう、と思う方がいるでしょう。しかし、そうは問屋が卸しません(笑)。繰り返しになりますが、暴落に買い向かっていく精神的負担が並大抵ではないことと、資金管理が難しいため途中で挫折してしまうことが多いからです。暴落の途中で挫折して損切りしてしまっては戦略が台無しで、目も当てられません。途中の挫折を完全に回避することは難しいでしょうが、ここでは2つのポイントを伝授します。1つ目は、買い向かう投資対象を、倒産可能性がきわめて低い銘柄にすることです。私はJ-REITや電力株を好んでいますが、TOPIXや日経225の指数ETFでも問題ないでしょう。絶対に破綻しないと信じることができれば、暴落に買い向かう際の大きな力になります。2つ目は、ユニット数(株数)を増やすことに注力することです。買い向かっていると含み損がどんどん大きくなるため鬱になります。しかし、投資の目的は「価値のある株式」をたくさん所有することです。暴落しているからといって、いきなり株式の本質的価値が下がるわけではありません。あくまでも表面上の価格が下がっているだけなので、安く仕入れる絶好の機会だ、と心の底から思えればしめたものです。とはいえ、私も完全にその境地に達しているわけではありません。このギャップを埋めるための追加ポイントとして、J-REITや電力株などの高配当株を選択しています。つまり、「自分は配当を得る権利をたくさん買っているんだ」と思うことで、心が折れそうになったときでも頑張って買い向かうための原動力にするのです。

3693.

第2回 全国の麻酔科教室が肝を冷やしただろう事件

不正報酬1億9000万円!こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件について、あれやこれや書いていきたいと思います。東京は新型コロナ感染症で益々大変なことになっています。あろうことかメキシコのコロナビールも生産停止となってしまいました。私も各方面から取材依頼を断られています。曰く、「東京からいらっしゃるならお断りします!」。一部の取材は電話やネットを使って行うようになりました。私はこれまでできる限り取材先に赴く現場主義でやってきたのですが、これからの記者は、現場に行って対面でじっくり話を聞いたりせず、さらりとネットで済ませてしまうようになるかもしれません。さて、今週気になったのは、昨年末、旭川医科大学の麻酔科教授が不正報酬を受け取ったことから懲戒解雇になったニュースです。この40代男性の元教授は、2019年11月、医師派遣を巡って複数の医療機関から不正に報酬を受け取ったとして懲戒解雇処分になり、地元の北海道では大きなニュースとして扱われました。地元紙の北海道新聞は旭川医大に情報公開を請求し、その結果として、先月の3月31日に不正に受け取っていたとされる金額が開示されました。今回開示された資料は元教授に対する懲戒説明書などで、それによると元教授は2018年10月~2019年9月の間に、医師派遣に関わる「確認作業」の名目で1病院から月12~15万円の計165万円、また2011年6月~2019年9月の間に「待機料」の名目で少なくとも7病院から計1億8733万円を受け取っていた、とのことでした。合計で約1億9000万円という金額です。元教授は医局員に金融機関の口座を開設させ、その口座の通帳を保管し、自ら使用していたそうです。札幌地検特別刑事部は任意で元教授を事情聴取したほか、昨年12月に旭川医大を家宅捜索して不透明な資金の流れの解明を進めている、とのことです。大学医局ですら麻酔医不足に苦しむ状況「待機料」というのは、関係する方以外には聞き慣れない用語でしょう。報道によれば、この事件における待機料の仕組みはこうです。平日午後5時から翌日午前8時までと土曜・日曜日に、元教授や医局のほかの医師が旭川市内で待機します。依頼元の病院で緊急手術などが入ると待機中の麻酔医が派遣されます。「待機料」は時給1,200円(一晩1万8,000円)で、大半は元教授が待機していました。待機を要請した病院からは月40万〜50万円が支払われていたとのことです。旭川医大は、元教授が大学の許可を得ずに多額の報酬を受けとっていたこと、さらに同じ日時に複数の病院から待機料を得ており実際には対応できない状態だったこと、などを解雇理由としています。この事件の報を受け、全国の大学医学部の麻酔科教室は肝を冷やしたのではないでしょうか。麻酔科医不足は今に始まったことではなく、とくに地方の急性期院のなかには、何らかの形で地元や中央の大学医学部の麻酔科教室からの派遣等に頼っているところが少なくないからです。大学医局ですら麻酔医不足に苦しむ状況のなか、単なる善意で地方の病院に麻酔医を派遣している医局ばかりとも言えません。大学当局への届け出、報酬管理の透明化、税金面の対策などの指示を、この事件を機にすぐさま行った麻酔科の教授が多くいたことでしょう。一方、「待機料」などを払っていた病院側も痛し痒しです。昼間の定期の手術は大学医局からの派遣やフリー麻酔医に頼るにしても、事件後に夜間の緊急手術の麻酔にどう対応しているのか、気になるところです。夜間にフリー麻酔医を確保するとしたら日給10万円以上を覚悟しなければなりません。それでは到底割に合いませんので、考えれられる方策は「緊急手術をしない」です。しかし、そうなるといわゆる「患者のたらい回し」が発生します。そう考えると、先のニュースに対しても「もう少し“うまく”できなかったのか…」という思いが湧いてきます。事は地域の医療提供体制に影響を及ぼします。自分の欲は二の次にして、地域のことをまず考えた待機システムにしておけば、元教授も大学を辞めなくて済んだかもしれないのです。

3694.

COVID-19、軽症者の増悪時にみられた所見―自衛隊中央病院

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から搬送された、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者104例について、2020年3月24日、自衛隊中央病院がその経過と得られた知見をホームページ上で公開した。CT検査所見の特徴、重症化や他疾患との鑑別におけるマーカーとしての各検査値の有用性など、これまでに報告されている事項をふまえ、自院での症例について考察している。<症例の特徴>平均年齢:68歳(48.75~75)、男性:45.2%国籍:東アジア52.9%を含む、17の国と地域基礎疾患:あり48.1%(心血管系31.7%、内分泌系[甲状腺疾患等]8.7%、糖尿病6.7%、呼吸器系6.7%、がん3.8%)喫煙歴:あり17.3%観察期間:2月25日まで※全例が船内の検疫における咽頭スワブPCR検査でSARS-CoV-2陽性軽症者の多くが症状に変化なく軽快、しかし異常影有の3分の1で増悪 観察期間を通して全く症状や所見を認めなかった症例は全体の31.7%で、軽症例が41.3%、重症例は26.9%。無症候性陽性例が多く、軽症例でも、そのほとんどが一般診療の基準に照らし合わせれば、医療機関を受診するような病状ではなかったと考察している。 しかしこれまでの報告でも指摘されているように、無症候性および軽症例でも、約半数に胸部単純CT検査での異常陰影を認めた。陰影は両側末梢胸膜下に生じるすりガラス様陰影が特徴で、胸部単純レントゲン写真では異常を指摘できない症例が多かった(画像も公開中)。無症候性および軽症例で、CT検査で異常影を認めたうち、約3分の2はそのまま症状が変化することなく軽快し、約3分の1は症状が増悪した。増悪する場合の画像変化は、経過とともにすりガラス様陰影の範囲が広がり、徐々に濃厚なair-space consolidationを呈することであった。<重症度、主な臨床症状(ともに入院時/全観察期間)>重症度無症状:41.3%/31.7%軽症:39.4%/41.3%重症:19.2%/26.9%臨床症状(一部抜粋)発熱:28.8%/32.7%咳嗽:27.9%/41.3%呼吸困難:6.7%/18.3%頻呼吸:15.4%/23.1%SpO2<93%:2.9%/13.5%高齢者ではSpO2低下、若年者では頻呼吸が出現する傾向 無症状あるいは軽微な症状にもかかわらずCT検査で異常陰影を認める病態を「Silent Pneumonia」とし、「Silent Pneumonia」から「Apparent」になる際は、発熱や咳嗽の増悪や呼吸困難の出現ではなく、高齢者ではSpO2の低下、若年者では頻呼吸の出現で気づくことが多かった、としている。症状増悪は初発から7~10日目であることが多く、比較的病状はゆっくりと進行。このため疾患の増悪に気づきにくいおそれがあり、このことが、高齢者の死亡率上昇に関係している可能性がある、と指摘している。 酸素投与が必要となった症例は全体の13.5%であり、そのうちの約半数がいわゆるネーザルハイフローやNPPVなどの高流量酸素投与を必要とした。気管挿管による人工呼吸管理を必要としたのは1例。観察期間中の死亡例はなく、3月24日時点で全員退院している。中等症~重症化しても、適切な酸素投与を実施するなどの対応をとれれば救命可能な症例は多いと考えられるとし、重症例では抗ウイルス薬の投与も実施している。 また血液生化学検査所見について、COVID-19症例ではCRP、LDH、AST、eGFR、Naに有意な差があり、リンパ球減少が観察されるとの報告がある。同院の症例では、無症状あるいは軽症例では検査値異常を認めないことが多かったが、重症例ではリンパ球減少が認められた。多くは陰圧機能のない一般病室に収容、ゾーニングを徹底 多数の患者を受け入れたため、陰圧室は不足し、患者の多くは陰圧機能のない一般病室に収容された。ウイルス量が多く、ネーザルハイフローや人工呼吸器などのエアロゾル発生機器・手技を多く必要とするであろう重症例から陰圧室を使用し、ゾーニングを徹底した。主な予防策は下記の通り:・原則N95マスクを使用・アイガードの徹底に加えて脱衣に熟練を要するワンピース型PPEは用いず、アイソレーションガウン使用を標準とした・挿管時にはPAPR(電動ファン付呼吸用保護具)を装着・平素、感染症診療に携わっていないスタッフに対しては、N95マスクフィットテストやPPE着脱訓練を実施・ゾーニング要領を徹底

3695.

世界のICU患者、1日の感染症有病率は50%以上/JAMA

 世界88ヵ国の同じ1日における集中治療室(ICU)入室患者の感染症有病率は54%と高く、その後の院内死亡率は30%に達し、死亡リスクも実質的に高率であることが、ベルギー・エラスム病院のJean-Louis Vincent氏らが行った点有病率調査「EPIC III試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年3月24日号に掲載された。ICU入室患者は感染症の頻度が高い。感染症の種類、原因となる病原菌、アウトカムに関する情報は、予防や診断、治療、医療資源配分の施策の策定に役立ち、介入試験のデザインの一助となる可能性があるという。同氏らは、これまでに、同様のデザインに基づく研究(EPIC試験[1995年]、EPIC II試験[2009年])の結果を報告している。88ヵ国1,150施設で、24時間の点有病率を調査 研究グループは、88ヵ国1,150施設の参加の下、世界中のICUにおける感染症の発生とそのアウトカム、および利用可能な医療資源に関する情報を得る目的で、24時間の点有病率を調査する観察横断研究を行った。 解析には、2017年9月13日午前8時(現地時間)から24時間の期間に、ICUで治療を受けたすべての成人(年齢18歳以上)患者が含まれた。患者の除外基準は設けなかった。最終フォローアップ日は2017年11月13日だった。 主要アウトカムは、感染症有病率、抗菌薬投与(横断的デザイン)、院内全死因死亡(縦断的デザイン)とした。抗菌薬投与率は70%、VREは死亡率が2倍以上 1万5,202例(平均年齢61.1[SD 17.3]歳、男性9,181例[60.4%])が解析の対象となった。試験当日に、44%が侵襲的機械換気、28%が昇圧薬治療、11%は腎代替療法を要した。試験開始前のICU入室期間中央値は3日(IQR:1~10)、総ICU入室期間中央値は10日(3~28)だった。 感染症のデータは1万5,165例(99.8%)で得られた。ICU感染1,760例(22%)を含め、感染症疑い/確定例は8,135例(54%)であった。1万640例(70%)が1つ以上の抗菌薬の投与を受けた。このうち28%が予防的投与、51%は治療的投与で、それぞれセファロスポリン系(51%)およびペニシリン系(36%)の抗菌薬が最も多かった。 地域別の感染症疑い/確定例の割合には、オーストララシアの43%(141/328例)からアジア/中東地域の60%(1,892/3,150例)までの幅が認められた。また、感染症疑い/確定例8,135例のうち、5,259例(65%)が少なくとも1回の微生物培養で陽性を示した。このうち3,540例(67%)がグラム陰性菌、1,946例(37%)がグラム陽性菌、864例(16%)は真菌であった。 感染症疑い/確定例の院内死亡率は30%(2,404/7,936例)であった。ICU感染は、市中感染に比べ院内死亡リスクが高かった(オッズ比[OR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.10~1.60、p=0.003)。 また、抗菌薬耐性菌のうち、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)(2.41、1.43~4.06、p=0.001)、第3世代セファロスポリン系およびカルバペネム系抗菌薬を含むβ-ラクタム系抗菌薬に耐性のクレブシエラ属(1.29、1.02~1.63、p=0.03)、カルバペネム系抗菌薬耐性アシネトバクター属(1.40、1.08~1.81、p=0.01)は、他の菌による感染症と比較して死亡リスクが高かった。 著者は、「今回の感染症疑い/確定例の割合(54%)は、EPIC試験(45%、1992年に評価)およびEPIC II試験(51%、2007年に評価)に比べ高かった。プロトコルの変更や技術的な改善による検出率向上への影響は除外できないが、培養陽性例の割合はEPIC II試験よりも低かった(65% vs.70%)。ICU感染例の割合(22%)はEPIC試験(21%)と同等だった」としている。

3696.

COVID-19の診療情報特設サイトを開設/日本プライマリ・ケア連合学会

 日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)は、4月1日に同連合学会のホームページ上で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療所・病院におけるプライマリ・ケアのための情報サイト」を開設した。 特設サイトでは、COVID-19に関する臨床診療で必要な最新情報が網羅されている。 主な内容は下記の通りであり、診療の合間などに参照していただきたい。■主な掲載内容・新型コロナウイルスCOVID-19について 感染経路、潜伏期間、主に国内の患者数について・診療に役立つ情報〔診療の手引き・ガイド〕新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き ほか〔臨床診断サポートツール〕DynaMed、UpToDate ほか〔患者さん・一般の方への啓発〕新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)/3つの密を避けましょう!(厚生労働省)、やってみよう! 新型コロナウイルス感染症対策 みんなでできること(文部科学省) ほか・感染予防と対策 感染症対策専門家会議、高齢者・介護施設、透析、海外渡航、妊婦、こども、学校、保育園・関連情報国内 厚生労働省、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター(NCGM)/国際感染症センター(DCC)、内閣官房 ほか・関連情報海外 世界保健機関(WHO)、European Centre for Disease Prevention and Control(欧州CDC) ほか・文献

3697.

COVID-19重症患者に対する人工呼吸管理に関する注意点/日本集中治療医学会

 4月6日、日本集中治療医学会が『COVID-19重症患者に対する人工呼吸管理に関する注意点』を発出。集中治療医学会ならびに日本呼吸療法医学会では、COVID-19重症患者に対する人工呼吸管理が増加している現状を踏まえ、日常的に重症呼吸不全の呼吸管理を行っていない施設やグラフィクモニターが搭載されない人工呼吸器を使用せざるを得ない場合に呼吸管理が行われる場合を想定し、海外の情報と本邦における経験に基づき、COVID-19患者の特徴に合わせた人工呼吸療法の対策を総括した。 ※ガイドラインなどのようにエビデンスレベルを検討して作成したものではない。 概要は以下のとおり。1. COVID重症患者の特徴 a)呼吸困難感出現から数時間で重症化する場合がある b)放射線画像と肺酸素化能はしばしば乖離する c)病態として中等度から重度のARDSを呈する d)死腔換気の増加により分時換気量が大きい(10~14L/分) e)呼気が延長しCO2排出に難渋する症例がある f)吸気努力が亢進している(とくに人工呼吸開始早期) g)鎮静薬に対し抵抗性を示す症例がある h)経過中喀痰分泌物が増加し気道閉塞をきたす症例がある2. 上記特徴を踏まえた対策 a)~h)の8項目3. 2.のc)~f)の対策で換気が維持できない場合 c)~f)の4項目 人工呼吸療法に行き詰まったときやECMOを考慮する場合は「日本COVID-19対策ECMO-net」のコールセンターが利用できる。(参考)ECMO相談窓口の開設について4.その他の留意点 一般に人工呼吸管理ではガス交換を維持することだけでなく、人工呼吸に関連する合併症を防止することが重要である。症例によっては、ガス交換がある程度改善すれば合併症回避を優先することも必要となる。重症患者の人工呼吸に慣れないスタッフが接触を減らすためにいたずらに深鎮静による無動化を継続すると、人工呼吸器関連合併症を起こし生命予後を悪化させる。また、積極的な早期経腸栄養開始や、カテーテル関連血流感染防止などにも留意する。肺以外の臓器障害がある場合は、治療方針につき専門医に相談することを推奨する。

3698.

疲れを巡る最新研究(前編)…エナジードリンク頼みの疲労回復法がとても怖い理由

講師紹介長年の研究で判明した、ウイルスと疲労の「深い関係」近藤なぜ、ウイルスを専門とする私が疲労の研究をしているのか、最初はいつも不思議がられます。私の所属はウイルス学講座で、長年ヒトヘルペスウイルス(HHV)を研究してきました。研究を進めるうちに、疲労・ストレスとヘルペスウイルスの間に深い関係があることがわかってきたのです。性器ヘルペスが知られているので、ヘルペスというとちょっと下ネタ的なイメージもありますが(笑)、私の専門は赤ちゃんの突発性発疹を起こすHHV-6とHHV-7です。3大生体アラームなのに研究が進んでいない「疲労」近藤そもそも、疲労の研究は世界的にマイナーです。日本では「疲労はうつや過労死といった疾患の要因になる」ということが一般的に受け入れられていますが、海外ではそうした認識自体がなく、慢性疲労症候群など「疾患の症状」としての認識しかありません。「疲労」は、「痛み」や「発熱」と並ぶ3大生体アラームです(図1)。それなのに、その原因・伝達物質も回復因子もまったくと言っていいほど解明されてこなかったのです。痛みや発熱は、その原因物質を見つけた人がノーベル賞を取っているほどなのに…。画像を拡大する「疲労感」と「身体の疲れ」は異なるもの近藤そもそも、まず知っておいていただきたいのが「疲労感」と「身体の疲れ」は別のもの、ということです。図1の右上にある炎症性サイトカインが、疲労研究のカギとなる存在です。炎症性サイトカインは、風邪などのウイルスが体内に侵入したときなどに、免疫細胞が出すことが知られている物質です。この炎症性サイトカインが脳に作用して「疲れた」と感じる、いわゆる「疲労感」を生み出します。風邪などの病気のときに疲れを感じるのはこのためです。一方で、健康な人も仕事や運動によって疲れを感じますが、この場合、免疫細胞は攻撃対象がいないはずですよね? では、なぜ疲れを感じるのでしょう?ここで、私の専門「ヘルペス」の登場です。ヘルペスウイルスは、感染しても多くの場合は症状が出ず、感染者はウイルスを潜ませたまま普通に生活しています(潜伏感染)。しかし、感染者が何らかの異常事態に見舞われると潜んでいたウイルスはそれを察知し、爆発的に数を増やして別の宿主に移ろうとします(再活性化)。私の専門のHHV-6やHHV-7は疲労を「異常事態」と見なして再活性化することを見いだしたのです。また、私たちは、HHV-6が危険を察知する信号となるのが「elF2α」という因子であることも発見しました。身体に疲労の負荷がかかると、このelF2αがリン酸と結合して「リン酸化elF2α」となり、その割合が一定を超えるとHHV-6がそれを察知して再活性化するのです。通常、elF2αはタンパク質を合成する役割があるのですが、リン酸化することでこの仕事ができなくなり、結果として臓器の働きが低下したり、機能障害が起きたりします。これが身体の疲労の原因です(図2)。画像を拡大する最初に出てきた疲労感の要因となる炎症性サイトカインも、このリン酸化elF2αの増加が引き金になって作られるので、疲労のカギとなる物質としてリン酸化elF2αのことを「疲労因子」と呼んでいます(図3)。画像を拡大する「エナジードリンク飲み過ぎ」が怖い理由近藤疲労感と身体の疲労が別物だと知っておくことの大切さは、身近なところにあります。多くの方は、疲労回復のために「エナジードリンク」を飲んだことがあるのではないでしょうか? 多くのエナジードリンクには「抗酸化作用」のある物質が入っています。私たちはこの抗酸化作用を持つ物質の代表格である「N-アセチルシステイン(NAC)」をマウスに注入し、疲労との関係を調べる研究を行いました。その結果、NACは肝臓における炎症性サイトカインの産生を低下させ、疲れを身体に伝えるアラームとなる疲労感を減少させることがわかりました。これが「疲れがとれた」と感じる理由です。しかし、ほかの臓器では疲労因子が増え続け、タンパク質合成が抑制されて臓器組織の機能低下が起こり続けることもわかりました。結果として、疲労感がないために無理をし続けて身体を壊す、ひどい場合は突然死につながる、などといったことが起こる可能性があるのです。近藤突然死とまでいかなくとも、「エナジードリンクを飲み続けて、いきなりやめたらぐったりした」という経験をされた方はいないでしょうか? これも「疲労感をまひさせる」抗酸化物質の影響です。まひする効果が切れたために、それまで蓄積していた疲労を一気に感じるのです。エナジードリンクは「緊急時に疲れをまひさせるもの」と認識し、摂り過ぎないようにすることが重要です。同様の働きをするものにカフェイン、抗酸化剤入りサプリ、ニンニクなどがあり、これらも摂り過ぎに注意が必要です。さらに、日本では薬機法に触れるために販売されていませんが、海外のエナジードリンクには大量の「タウリン」を含むものがあります。タウリンも抗酸化作用を持つ物質であり、上記のようなメカニズムで疲労感をまひさせてしまう可能性があります。実際、海外のエナジードリンクでは、過剰摂取した若者が死亡に至る事故も報告されています。一般に、このような事故は「カフェインの過剰摂取が原因」と解説されることが多いのですが、カフェインに加えて抗酸化物質が作用することで、疲労感がまひし、身体の異常に気付かず手遅れになった、という側面が大きいと考えています。後編へ書籍紹介『疲労ちゃんとストレスさん』にしかわたく(漫画・原作)・近藤一博(監修・原作)河出書房新社近藤氏の長年の研究成果と疲労に関する複雑な仕組みを、漫画家のにしかわ氏がストーリー&漫画化。疲労がどのように起きるのか、どのように回復するのか、擬人化されたキャラクターたちでわかりやすく解説した一冊。

3699.

組織でCOVID-19危機に対応するドイツ【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第7回

かかりつけ医が主役のドイツの体制ドイツでコロナ騒ぎが収まる気配がありません。3月27日現在、ドイツの患者数はうなぎ登りですが、それでも致死率は0.5%前後で食い止められています(図)。イタリア・スペインなどの近隣国と比較し、なぜドイツの医療はうまくいっているのか?最近は日本の知人から聞かれることがしばしばあります。「ドイツは検査をたくさんやっているらしいけど、それがうまくいっているの?」が最も聞かれる質問なのですが…。確かにドイツではひたすらPCR検査を行なっています。早期に感染者を特定していることが功を奏している、と言うのが政府の見解です。ただ、以前このコーナーで書かせてもらったことがあるのですが、ドイツはかかりつけ医制度が確立されています。患者は診察をかかりつけ医の下で受診して、検査のためだけに病院へ行くわけです(数週間前から近所の大学病院ではドライブスルー検査をやっています)。その後、検査結果と全身状態を踏まえた上でかかりつけ医が治療方針を決定します。必要な場合の入院指示も、かかりつけ医が行います。初診を診ることがないために病院に負担がかかりにくいシステムになっています。これはドイツの医療システムに合わせてやっていることなので、一言で「これが正解」と言えるわけではないと思いますが…。図 ドイツでの感染状況私が住む地域はドイツの北東部になり、色は薄目です。ドイツは西部と南部に感染者が多く、現地の友人の話を聞くと、病院はかなり大変な状況です。先頭に立つロベルト・コッホ研究所そもそもドイツも先行きはまだまだわからないし、これから急激に致死率が悪化する可能性も十分にあると思っています。患者数の増加が予想以上に速いので、「イタリアの二の舞になる」と危惧する専門家も多いです。良し悪しは別として、この緊急事態におけるドイツの対応について自分が感じたことを書いてみます。ドイツには、世界に誇るロベルト・コッホ研究所(RKI)と言う感染症研究機関があります。RKIがドイツ国内の各病院で使用すべき感染症対策マニュアルなどを作成し、RKIの決定にしたがって政治家が感染対策の方針を決めるようになっています。私が住んでいるのはドイツの最も田舎の地域で、感染者数はまだかなり少ない状態です。そんな田舎でも、徐々に緊張感が高まってきていることを感じます。3月22日にはドイツ全土で接触制限措置がとられ、レストランも閉鎖されました。パーティなど開けば、警察に取り締まられて罰則が科せられます。ただ家族での散歩は「必要なこと」と認定されていますので、公園周辺では変わらず散歩やランニングする人の姿が見られます。もちろん暗黙の了解で、すれ違うときはお互いにかなりの距離をとるようになっています。地域が1つの医療機関に私の所属する病院は循環器と糖尿病の専門病院なのですが、行政からの指示の下に手術を制限して、1つの病棟を丸々空けることになりました。当院はグライフスヴァルト大学を中心とした医療圏にあって、グライフスヴァルト大学の後方支援の形式で病棟を空けて待っている状態です。その他の近隣の施設の情報も飛び交っています。「〇〇病院は週明けにイタリアからの重症患者を引き受けるらしくて、ICUの空きがほとんどないみたい」とか、「大学病院で手術が回せないから、呼吸器外科の先生がウチで手術することになった。今から肺がんの患者来るから、入院枠取っておいてね」とか。地域の病院全体が1つの施設のように機能しています。病棟を空ける、そのために手術件数を減らす、と言う話をする際に、部長は「行政からの指示で」と言っていました。これも以前書かせてもらったのですが、ドイツでは診療所の数も行政によって定められていて、原則的に新しく開業することはできません。診療科としての心臓外科の数も、日本が600以上あるのに対し、ドイツではわずかに82、それも人口の分布に応じてうまく分散されています。もちろん新しい心臓外科を新設することもできません。つまりドイツの医療は、行政の強いコントロール下にあると言えます(一方で、行政が医師を抑圧しすぎないために医師会や医師の労働組合を通じて、医師は行政と闘うことができるわけなのですが…)。今回も行政がそれぞれの病院に役割を分担させることで、地域の医療資源が最大限に生かせるように工夫していることが感じられます。個人頼りになるのではなく、システムで闘おうとするのは、いかにもドイツらしいな、と感じます。3月18日に、メルケル首相がドイツ国民に対して理解と協力を求める演説を行いました。ゆっくりと、丁寧で、はっきりしたドイツ語で。それは、不安を煽るわけでもなく、ただ今すべきことを伝える内容でした。なぜそうしなければならないのか、メッセージはとてもシンプルで力強いものでした。この演説を聞いて、不安が和らいだ人は大勢いると思います。政治家ってすごいなーと感じました。強いリーダーの下、ドイツも何とか現状を乗り切ろうと頑張っています。日本も大変な状況だと思いますが、お互い頑張っていきましょう!

3700.

第2回 皮膚に貼って一押しするだけのCOVID-19ワクチン、臨床試験が近々開始

2012年にサウジアラビアで初めて見つかり、27ヵ国に広まり、同国をはじめとする中東で依然として蔓延する、致死率34.4%の中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)。MERS-CoV感染症ワクチン開発で手応えを掴んでいたピッツバーグ大学研究チームが、その経験を糧に取り急ぎ開発した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの有望な抗体誘導性能がマウス実験で早速確認されました。指先ほどの大きさの一切れを皮膚に束の間押し当てるだけで投与が済む、室温保管可能なそのワクチン・PittCoVacc(Pittsburgh CoronaVirus Vaccine)のヒトへの投与試験が、早くも数ヵ月以内に始まる見込みです1)。PittCoVaccには細かな針が400本並んでおり、皮膚に押し当てることで実質的に痛みなくSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の一部(S1サブユニット)を皮内に投与します。マウスに投与したところ、2週間以内にSARS-CoV-2に対する抗体が増加しました2)。研究者らは、米国FDAへの治験開始申請の準備を進めており、今後数ヵ月以内に第I相試験を開始することを目指しています。「通常なら臨床試験は少なくとも1年はかかるが、これまで経験したことがない今回のような事態で試験にどれだけの期間がかかるかはなんとも言えず、最近の通知によるとより早く済む可能性がある」とピッツバーグ大学の研究リーダーの1人Louis Falo教授は言っています。MERS-CoVや2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)での研究成果は、PittCoVaccのようなワクチンのみならず、現存薬をSARS-CoV-2感染症(COVID-19)治療に役立てる取り組みにも生かされており、たとえばデンマークのオーフス大学による先週金曜日(4月3日)開始の膵炎治療薬カモスタット(フオイパン)の試験はその1つです3)。SARS-CoVやMERS-CoVと同様にSARS-CoV-2も細胞侵入にヒトタンパク質(セリンプロテアーゼ)TMPRSS2を必要とし、それを阻害する小野薬品起源のカモスタットがSARS-CoV-2の細胞侵入を阻止すること4)や、コロナウイルス感染マウスの死亡を減らすことが示されたことを受けて、オーフス大学の研究者はCOVID-19患者への同剤の試験開始にこぎ着けました5)。この試験はデンマークを代表する製薬会社Lundbeck(ルンドベック)のほとんど(70%)を所有する同国製薬研究助成財団Lundbeck Foundationから寄贈された500万デンマーククローネ(約8,000万円)を使って実施されます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者180人を募り、それらの3分の2はカモスタット服用群、残り3分の1はプラセボ投与群に割り振られます。カモスタットを生んだ日本でも、別のTMPRSS2標的薬によるCOVID-19治療試験が間もなく始まる予定です6)。2016年の研究7)でTMPRSS2依存ウイルス感染を阻止しうることが示されている別の膵炎治療薬ナファモスタットもカモスタットと同様にSARS-CoV-2の細胞侵入を防ぐことを、東京大学の井上純一郎教授/山本瑞生助教のチームが見出しており8)、先月中旬の成果発表時に、臨床試験を向こう1ヵ月以内に始めうるとの見解が示されています。また、SARS-CoV-2が感染に利用するらしいヒトタンパク質/因子はTMPRSS2の他にも見つかっており、たとえば査読前論文掲載サイトbioRxivに3月22日に発表された報告では、米国FDA承認済みか開発段階の69の薬が標的としうる67のSARS-CoV-2相互作用成分が同定されています9)。参考1)COVID-19 Vaccine Candidate Shows Promise in First Peer-Reviewed Research / University of Pittsburgh2)Kim E, et al. eBioMedicine. April 02, 20203)These drugs don’t target the coronavirus - they target us / Science4)Hoffmann M, et al. Cell. 2020 Mar 4. [Epub ahead of print]5)Does a Japanese medication for heartburn work on corona patients? / Aarhus University6)Japanese Researchers to Test Blood Thinner For Virus Treatment / Bloomberg7)Yamamoto M,et al. Antimicrob Agents Chemother. 2016 Oct 21;60:6532-6539.8)新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入過程を阻止、効率的感染阻害の可能性がある薬剤を同定 / 東京大学9)A SARS-CoV-2-Human Protein-Protein Interaction Map Reveals Drug Targets and Potential Drug-Repurposing. bioRxiv. March 22, 2020

検索結果 合計:5552件 表示位置:3681 - 3700