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●今回のPoint1)咽頭痛の鑑別疾患を理解しよう!2)危険な咽頭痛を疑うサインを知ろう!3)心血管疾患も忘れずに鑑別しよう!【症例】65歳男性咽頭痛を主訴に救急外来を独歩受診した。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧108/74mmHg脈拍52回/分(整)呼吸18回/分SpO297%(RA)体温35.9℃瞳孔3.5/3.5mm+/+既往歴高血圧内服薬詳細不明だが降圧薬を1剤内服している咽頭痛の鑑別喉の痛みを訴え来院した患者さんではどのような疾患を考えるでしょうか。頻度が高いのはウイルス性咽頭炎です。細菌性では、A群溶血性レンサ球菌(group A Streptococcus:GAS)による咽頭炎が代表的です。その一方で、見逃してはいけないものとして、急性喉頭蓋炎などの“killer sore throat”が挙げられます1)。また、頻度は決して高くはありませんが、初診時に必ず意識しておいてほしいのが心血管疾患です2)(表1)。急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の放散痛(関連痛)は有名ですね。表1 咽頭痛の鑑別疾患画像を拡大する心筋虚血では、前胸部痛だけでなく、頸部、顎、肩、上肢、背部、上腹部の痛みや不快感が生じることがあります。咽頭の痛み、締めつけ感、灼熱感、詰まり感として自覚されることもあります。これは、心臓からの内臓感覚入力と体性知覚入力が中枢神経系で収束するために生じる関連痛と考えられています。危険な咽頭痛の見極め方:発症様式、姿勢、痛みの程度に注目危険な咽頭痛と聞くと、表1のkiller sore throatがパッと思いつくでしょう。もちろんそれらも重要なのですが、心血管疾患も忘れずに意識するようにしましょう。初療では、“Hi-Phy-Vi”(History,Physical examination,Vital signs)を評価する必要があります。なかでも、まずは以下の3点に注目するとよいでしょう。(1)突然発症か否か感染症が突然発症することはありません。数時間から数日かけて症状が進行するのが一般的です。それに対して、心筋梗塞や大動脈解離は秒から分の単位で発症します。そのため、発症様式、とくに突然発症か否かを意識して確認することが重要です。「痛みが生じていたときに何をしていたのか」を確認し、発症時の様子が頭に浮かぶように確認しましょう。(2)姿勢に注目患者さんの姿勢に注目しましょう。患者さんは自身が最も呼吸がしやすい姿勢を自然ととっているはずです。座位で前傾姿勢、頸部を伸展させ、顎を突き出すような姿勢をとっていたら要注意です。これは、腫脹した喉頭蓋や周囲の組織による気道狭窄を代償しようと、上気道をなんとか開通させようとしているものであり、気道緊急ととらえ迅速な対応が求められます。“tripod position”や“sniffing position”と呼ばれますよね。(3)痛みで唾が飲み込めなかったら要注意咽頭痛のために固形物を飲み込みにくいことは、通常の咽頭炎でも起こります。しかし、「飲水も難しい」「唾液を飲み込めない」「口から唾液が垂れている」という場合には要注意です。唾液を処理できないほどの嚥下痛や流涎に加えて、含み声、嗄声、呼吸困難、吸気性喘鳴(stridor)などを認める場合には、急性喉頭蓋炎など急を要する病態を考える必要があります。表2の急性喉頭蓋炎の症状は頭に入れておきましょう3)。表2 急性喉頭蓋炎の症状バイタルサインはもちろん重要です。ただし、SpO2は酸素化の指標であり、上気道の開存性を直接示すものではありません。急性喉頭蓋炎などでは、SpO2が保たれていても気道狭窄が進行している可能性があります。呼吸数やSpO2だけで安心せず、呼吸仕事量、吸気性喘鳴、声の変化、姿勢、流涎、唾液を嚥下できるかといった所見を重視しましょう。咽頭痛の注意点「喉はあまり腫れていないので大丈夫そう」と判断してはいないでしょうか。咽頭といっても上咽頭・中咽頭・下咽頭が存在し、扁桃炎などで異常所見が認められる口蓋扁桃など中咽頭の所見は確認できても、その奥の喉頭蓋は目視することは困難です。つまり、かなり痛がっているのに喉が腫れていない、そのような場合にはむしろ安心するのではなく、焦らないといけないのです。今回の症例では、発症様式を確認すると仕事中に数分でピークに達する咽頭痛であり、嚥下にはとくに問題はありませんでした。ACSも考慮し胸部症状を聞いてみると、「胸部に違和感がある」と訴え、心電図を確認すると前胸部誘導でST上昇が認められました。ST上昇型心筋梗塞(ST-elevation myocardial infarction:STEMI)だったのです。咽頭痛を訴える患者さんは、感染症の流行期には救急外来を数多く受診します。本症例も、トリアージの段階で心筋虚血が鑑別に挙がらなければ、心電図が記録されないまま待合室で待つことになったかもしれません。今回の症例では、トリアージナースの素晴らしい判断により早期に心電図が記録され、STEMIの診断と迅速な再灌流治療につなげることができた1例でした。 1) Miller JM. et al. Clin Infect Dis. 2024:ciae104. 2) 坂本壮. それって本当に咽頭炎?!見逃せない救急・見逃さない救急.プライマリ・ケア. 2022;Vol.7:No.1. 3) Sideris A, et al. Laryngoscope. 2020;130:465-473.