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ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 1

今回のキーワード教育格差収入格差行動遺伝学ゼロサムゲーム教育効果「遺伝格差」前編では、ドラマ「ドラゴン桜」を通して、学歴ブランド化の問題点を明らかにして、教育のビジネス化という不都合な真実に迫りました。今回は、引き続きこのドラマを通して、昨今問題視されている教育格差が、実は問題にならないという衝撃の根拠をご説明します。そして、問題になる別のある「格差」を解き明かします。教育格差が問題にならない根拠とは?第1シリーズに登場する矢島は、父親が抱えた借金のせいで、高校を中退して、日雇いの建設作業員になろうとしていました。しかし、桜木先生に借金を肩代わりしてもらうことで、一念発起して東大特進クラスに入り、最後は東大に合格するのです。当初の矢島のように、生まれ育った環境によって、受けることのできる教育に格差があることは、教育格差と呼ばれています。この一番の問題は、「教育格差という機会の不平等よってその後に収入格差が生まれてしまう」こととされています。簡単に言えば、親にお金がある人がより良い教育を受け、より良い学歴を手に入れ、より良い収入を得ているというロジックです。しかし、果たしてそうでしょうか?実は、この主張には、3つの見落しがあります。ここから、その3つの見落としを通して、実は教育格差によって収入格差が生まれる訳ではないことを明らかにします。(1)収入への遺伝の影響度の大きさ1つ目の見落としは、収入への遺伝の影響度の大きさです。教育格差を問題視する学者のなかには、遺伝について触れる人もいます。しかし、それはもっぱら知能に限ったもので、収入への直接的な影響や、その影響度の経時的な変化にまで踏み込んでいません。そのために、遺伝の影響は限定的であるとされてしまい、教育格差はやはり問題であると結論づけています。ここで、行動遺伝学の研究の結果をご紹介します。なお、行動遺伝学の詳細については、この記事の3ページ目に【参照】として詳しく解説しました。男性の収入への遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度の経時的な変化をグラフ化すると、グラフ1のようになります2)。このグラフから、20歳を境に、年齢が上がっていくにつれて遺伝と家庭外環境の影響がどんどん増えていく一方、家庭環境の影響がどんどん減っていき、ほとんどなくなっていることがわかります。つまり、親が教育にかけるお金や親のコネの程度(家庭環境)の違いによって生まれる収入格差は、最初はあるのですが、最後はなくなっていくということです。そして、結局、本人の実力(遺伝)といろいろな人との出会い(家庭外環境)による相互作用が大きくなっていくということです。ちょうど矢島が分かりやすい例です。彼は東大に合格しましたが、結局、入学しませんでした。しかし、第2シリーズでは、独学で司法試験に合格して、弁護士になっているのです。そして、桜木先生の窮地を救う立て役者の1人として活躍するのです。彼の収入への影響は、最終的に彼の実力(遺伝)が大きいことを描いています。もちろん、桜木先生をはじめとする人生でのいろいろな出会い(家庭外環境)も大きいでしょう。逆に、矢島に元々実力(遺伝的な資質)がなかったとしたら、いくら桜木先生の受験勉強のテクニックを教わっても、東大には合格していなかったでしょう。実際に、知能(認知能力)への遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度の経時的な変化をグラフ化すると、グラフ2のようになります3)。やはり、遺伝の影響は元々かなりあり、それがさらにどんどん大きくなっていくことが分かります。この点で、前編でご紹介した学歴による収入の割り増し(シープスキン効果)は、あくまで全体として見た場合の話であり、個人として見た場合は、家庭環境の違いによってのばらつきや経時的な変化が出てくることが推定できます。現実的には、大部分で順当に、知能の高い人が大学に進学して、知能の高くない人が高卒で就職していることが考えられます。そして、一部分で不当にも、知能の高い人が高卒で就職したとしてもその後に挽回し、その一方で知能の高くない人が何とか大学に進学したとしてもその後に伸び悩んでいることが考えられます。なお、グラフ1のような逆転現象は、欧米と比べてとくに日本で際立って見られることが分かっています。その訳は、欧米では、家庭環境の影響が元々小さいからです。このことからも、日本では子どもの人生に学歴をはじめとする親の影響力が、大人になるまでかなりあることが伺えます。また、女性の収入についての結果は、遺伝の影響がほぼ0のままであることがわかっています。この結果の違いの原因は、男性と比べて女性の就労状況は正社員が少なく、パートや無職が多いからであるといわれています。もしも女性が男性と同じくらい就労していれば、男性と同じように遺伝の影響が出てくると考えられています。以上より、結局、遺伝の影響力が大きいため、生まれ育った環境によって受けることのできる教育に格差があったとしても、それだけで最終的な収入に格差が生まれる訳ではないと結論付けることができます。教育格差を問題視する関係者は、当初の矢島のような不遇な人が多いと思い込んでいます。しかし、もしそうだとしたら、先ほどのグラフで家庭環境の影響が残り続けるはずです。家庭環境の影響が最終的に残らないということは、教育格差はあったとしても最終的な結果には影響を与えておらず、問題にならないということです。次のページへ >>

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ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 2

(2)高収入の就職先の数の限度2つ目の見落としは、高収入の就職先の数の限度です。教育格差を問題視する学者は、教育格差が縮まれば、大卒者が増えるので、その分、高収入の人が増えると主張しています。確かに、前編でご紹介したシープスキン効果により、大卒であることによる収入の割り増しはあります。しかし、これは、大学進学率が50%強の現時点での話です。もしも少子化なのに大学を増やし続けて大学進学率が100%に近づいていったら、どうなるでしょうか?前編でも触れた学歴インフレが激化するだけです。大卒であるだけでなく、東大をはじめとする有名大卒かどうかが新たに価値付けされるようになります。なぜなら、東大の合格者の定員と同じように、高収入の就職先の数は最初から決まっているゼロサムゲームだからです。つまり、大学全入になってしまったら、大卒であるだけではシープスキン効果が働かなくなることが予測できます。これを象徴するのが、最近の「Fランク大学」「学歴フィルター」という言葉でしょう。以上より、教育(正確には学歴)の格差を是正しようとしたとしても、限られた就職先(階級)を取り合う仕組み自体は変わらないため、結局、収入の格差は変わらないと結論付けることができます。むしろ、受験生たちは、より偏差値の高い大学に入ろうと、「受験戦争」が激化します。これは、「学歴の軍拡競争」とも例えることができます。もはや教育は、それ自体が目的ではなくなり、ますます学歴を手に入れるための手段になってしまうでしょう。(3)教育効果の妥当性3つ目の見落としは、教育効果の妥当性です。教育格差を問題視する学者は、教育自体がそのまま職業的に役に立つと主張しています。確かに、専門職や研究職は当てはまるでしょう。しかし、これらは世の中の仕事のごく一部であり、その就職先の数に限りがあります。よくよく考えると、それ以外のほとんどの一般職は、実は中学校までの教育の効果で十分ではないでしょうか? 高校教育は、学力とは別に、社会性(社会適応能力)を高める場所として必要があるとしても、少なくとも大学教育の効果そのものが一般職にあえて必要な理由を証明することは逆に難しいのではないでしょうか?もちろん、それぞれの職場において個別に求められるスキルを学ぶ必要はあります。しかし、それは職場教育で十分です。語学力や論理的思考能力が必要ならば、働きながら語学学校やビジネススクールに通うこともできます。大学教育である必要がないのです。むしろ、大学教育で実践的なスキルを教えるほうが難しいです。以上より、教育(学歴)の格差を是正しようとしたとしても、その教育(大学教育)の効果がそもそも一般職に必要とされていないため、是正する意味がないと結論付けることができます。もっと言えば、多くの人がその教育を積極的に受けたいとも思っていないため、言い換えれば大卒という学歴を手に入れるためにしょうがなく学んでいるため、ますます意味がないことが分かります。もちろん、教育は単なる効果だけでなく、人生を豊かにするという教育哲学も別にあるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、教育の中身そのものを考えれば、この情報化が進んだ現代社会において、それがあえて大学である必要がなくなっているということです。この点で、もはや教育格差(学歴差)が、そのまま教育における機会の不平等を生んでいるとも言えないでしょう。じゃあ何が収入格差を引き起こしているの?これまでをまとめると、収入への遺伝の影響度の大きさ、高収入の就職先の数の限度、教育効果の妥当性を直視することによって、教育格差が収入格差を引き起こすというロジックが成り立たないことが分かりました。つまり、実は教育格差は幻だったと言えます。それでは、何が収入格差を引き起こしているのでしょうか? 教育格差ではないとしたら、多くの人は、努力と運だと答えるでしょう。しかし、行動遺伝学の視点に立てば、それだけでは不十分です。収入に影響を与えているのは、努力や運だけでなく、元々の素質、つまり遺伝も挙げられます。これは、先ほどのグラフ1と2が証明しています。運は、いろいろな人との偶発的な出会い(家庭外環境)が当てはまります。努力については、努力を好むと言う点で、性格として捉えることができます。そして、この性格に影響を与えるのは、グラフ3のように、遺伝と家庭外環境です4)。なお、この詳細については、関連記事1をご覧ください。以上より、収入格差を引き起こしている本質として目を背けてはならないのは、遺伝の違い、つまり「遺伝格差」であるということです。なお、この遺伝をはじめとする行動遺伝学の詳細に興味のある方は、次の3ページ目をご覧ください。2)日本人の9割が知らない遺伝の真実」P106-P107:安藤寿康、SB新書、20163)「遺伝マインド」P58-59:安藤寿康、有斐閣、20114)「『心は遺伝する』とどうして言えるのか」P182:安藤寿康、創元社、2017<< 前のページへ | 次のページへ >>■関連記事ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 2ドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】

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ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 3

【参照】行動遺伝学とは?(1)原理一卵性双生児(遺伝子一致率100%)と二卵性双生児(遺伝子一致率50%)の行動(心理的・行動的形質)が、それぞれにどのくらい一致するかを比較する双生児法を主に用います。簡単に言うと、一卵性双生児の行動の一致率が100%にならない場合、その差し引かれた分(それだけ似させまいとする要素)が家庭外環境(非共有環境)の影響となります。また、一卵性双生児の行動の一致率に二卵性双生児の一致率が50%を超えて迫ってきている場合、その迫ってきている分(それだけ似させようとする要素)が家庭環境(共有環境)の影響となります。ここから、ある行動における遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度を算出することができます。たとえば、日本語と英語を両方話すという行動(語学力)について、日本語と英語が同じように飛び交っている家庭では、一卵性双生児も二卵性双生児も同じように日本語も英語も話す可能性は高まります(一卵性に二卵性の一致率が迫ってくる)。そのため、語学力は、家庭環境の影響があると言えます。実際に、語学力における双生児の一致率は、一卵性で75%、二卵性で50%であることが分かっています(単純にするために端数を調整)。遺伝子の影響だけで考えれば、一卵性が75%なら、二卵性はその半分の37.5%であるはずです。つまり、37.5%から50%にまで増えて75%に迫ってきている分、それだけ似させようとする要素、つまり家庭環境の影響があると考えられる訳です。(2)影響度の算出方法ここで、語学力における遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度を、実際に算出します。まず、家庭外環境は、一卵性双生児の行動を似させまいとする要素であるため、その影響度は一致しないように差し引かれた分、つまり100%から75%を引いた25%になります。単純な引き算です。一方、遺伝と家庭環境の影響度については、次のような連立方程式で求められます。遺伝の影響度をX、家庭環境をYとすると、これらが行動を似させようとする要素であるため、一卵性双生児の一致率の式は、X+Y=75・・・〔1〕二卵性双生児の遺伝の影響度は、遺伝子一致率が50%であることから0.5X。家庭環境は同じくY。すると、二卵性双生児の一致率の式は、0.5X+Y=50・・・〔2〕〔1〕〔2〕から、X=50、Y=25が導き出されます。つまり、語学力は、遺伝、家庭環境、家庭外環境の影響度がそれぞれ50%:25%:25%であると算出することができます。(3)注意点なお、この家庭(親)が子どもを通わせるインターナショナルスクールは、家庭外環境と考えて良いでしょうか? よくよく考えると違います。なぜなら、親の経済力や教育方針が反映されている点で、家庭環境の影響もあります。家庭環境とは、必然的に一緒にいる親(共有環境)からの影響があるという意味です。一方で、家庭外環境とは、偶然的に出会う親以外(非共有環境)からの影響があるという意味です。物理的な家庭の内か外かという意味ではありません。つまり、行動遺伝学において、家庭環境と家庭外環境がそれぞれ影響している割合は算出できるのですが、その中身が具体的に何かについては個別の解釈が必要になります。<< 前のページへ

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摂食障害患者における境界性パーソナリティ障害症状

 オーストラリア・St Vincent's HospitalのPrudence Vivarini氏らは、摂食障害(ED)外来患者における境界性パーソナリティ障害(BPD)症状の有症率を調査し、BPD症状とその重症度、苦痛、機能との関連を評価した。その結果、ED外来患者はBPD症状の有症率が高いことが示唆され、著者らはED患者に対するBPDスクリーニングの必要性を報告した。Personality and Mental Health誌オンライン版2022年8月29日号の報告。 対象は、ED外来患者119例。境界性パーソナリティ障害のMcLeanスクリーニング尺度(MSI-BPD)を用い(カットオフ値:7)、BPD症状が高い群(高BPD群)と低い群(低BPD群)に分類した。ED診断、ED発症年齢、評価時の年齢、罹病期間、BMI、ED症状、心理的苦痛、心理社会的機能について両群間で比較した。BPD症状とこれら変数との関係を評価するため、相関分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・MSI-BPDスコアが7以上の患者は54例(45.4%)であり、BPDと診断された(高BPD群)。・高BPD群と低BPD群(65例)との間に、ED発症年齢、評価時の年齢、罹病期間、BMI、ED診断率の差は認められなかった。・高BPD群は、ED症状、心理的苦痛が有意に大きく、心理社会的機能の有意な低下が認められた。・MSI-BPDスコアとこれら変数との間に正の相関が認められた。

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認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。・肥満とうつ病は、糖尿病と密接に関連している。・認知症の発症は、ライフスタイルの改善、植物性食品ベースの食事(地中海式食事など)への変更、身体活動の増加により予防可能である。・予防のために利用可能ないくつかの外科的および薬理学的介入がある。・新たな治療法には、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストsetmelanotideやPdia4阻害薬が含まれる。・これらの各分野における現在および今後の研究は保証されており、新たな治療選択肢やそれぞれの病因に関する理解を深めることが重要である。

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統合失調症や双極性障害の興奮症状に対するデクスメデトミジン舌下投与の有用性

 米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、統合失調症または双極性障害に関連する興奮症状を伴う成人患者において、デクスメデトミジンの臨床的有効性および忍容性を評価するため、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)、likelihood to be helped or harmed(LHH)を用いた評価を行った。その結果、統合失調症または双極性障害に関連する急性興奮症状に対し、デクスメデトミジン舌下投与は良好なベネフィット-リスクプロファイルを有する治療であることが確認された。Advances in Therapy誌オンライン版2022年8月24日号の報告。 統合失調症または双極性障害の成人患者を対象にデクスメデトミジン舌下投与を評価した、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のデータの事後分析を行った。治療反応は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)-Excited Component(PANSS-EC)のベースラインからの変化量40%以上と定義した。忍容性の評価は、有害事象の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症または双極性障害患者に対するデクスメデトミジン舌下投与後2時間において、プラセボと比較したPANSS-ECによる治療反応のためのNNTは、それぞれ以下のとおりであった。【統合失調症】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:3、95%CI:3~4、129例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、125例)【双極性障害】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:4、95%CI:3~6、126例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、126例)・プラセボと比較したNNHは、眠気を除くすべての有害事象において10を超えていた。・統合失調症および双極性障害におけるいずれの用量においても、NNHは7(95%CI:5~10)であった。・有効性と忍容性のアウトカムについて、すべてのケースにおいてLHHは1を超えていた。

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薬剤誘発性QT延長とトルサードドポアント~日本のリアルワールドデータ分析

 新規作用機序を有する薬剤が次々と開発されているが、前臨床および承認前の臨床試験において、該当医薬品がQT延長やトルサードドポアント(TdP)を誘発するかどうかを把握することは困難である。東京慈恵会医科大学のMayu Uchikawa氏らは、日本のリアルワールドデータベースを用いて、各薬剤の薬剤誘発性QT延長/TdPを評価した。その結果、抗不整脈薬、カルシウム感知受容体アゴニスト、低分子標的薬、中枢神経系用薬が、QT延長やTdPと関連する薬剤群であることが示唆された。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2022年8月22日号の報告。 医薬品副作用データベース(JADER)を用いて、QT延長およびTdPを検索した。報告オッズ比(ROR)を算出し、潜在的な薬剤誘発性QT延長/TdPの特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・432万6,484件のデータのうち、薬剤と共に報告されたQT延長/TdPは3,410例であった(QT延長:2,707件、TdP:703件)。・これらの患者における女性の割合は、53.9%であった。・年齢層別に最も発生率が高かったのは、70代の高齢者(24.7%)であった。・QT延長/TdPに最も関連する薬剤群は、心血管薬、中枢神経系用薬、抗がん剤、抗感染症薬であった。なお、過量投与の割合は、1.6%と非常に低かった。・調整済みRORが高かった薬剤は、以下のとおりであった。 ●ニフェカラント(ROR:351.41、95%CI:235.85~523.59) ●バンデタニブ(ROR:182.55、95%CI:108.11~308.24) ●エボカルセト(ROR:181.59、95%CI:132.96~248.01) ●ベプリジル(ROR:160.37、95%CI:138.17~186.13) ●三酸化二ヒ素(ROR:79.43、95%CI:63.98~98.62) ●グアンファシン(ROR:78.29、95%CI:58.51~104.74)・過去10年間に日本で上市された薬剤の中では、バンデタニブの調整済みRORが最も高かった。

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事例007 高齢者への不眠症治療薬投与時の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、強度の不眠を訴える68歳の患者に不眠症治療薬2種を投与したところ、告示・通知の要件に合致していないものとしてD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)が適用され、スボレキサント(商品名:ベルソムラ錠)が15mg 1錠へ、エスゾピクロン(同:ルネスタ錠)が0.7錠へ査定となりました。D事由査定の理由を調べるため、それぞれの添付文書を参照しました。スボレキサントの添付文書には、「成人には1回20mg、高齢者には15mgを就寝直前に投与する」、エスゾピクロンの添付文書には、「成人では1回3mg、高齢者では1回2mgを超えないこととする」と記載がありました。査定内容からみると高齢者の用量に減量されたことが推測できます。添付文書の「高齢者」については年齢では区切られていません。「一般に高齢者では生理機能が低下していることも考慮し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること」とされています。事例では医師の裁量による投与ではありましたが、レセプトからは慎重投与が読み取れずに、健康保険法の高齢者の基準である65歳以上が適用されたものとも推測できます。エスゾピクロンが0.7錠に査定となった理由は、3mgから2mgへ力価のみ変更すると、0.6666…となるために小数第2位で四捨五入されています。2.1mgが認められたものではないと考えられます。2mg錠よりも安価になるために、このような査定となったものでしょう。査定防止のために、処方システムに制限をかけ、制限を超えるようであれば医師に注記をお願いすることにしています。

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日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。 2019年、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の待機時間を利用し、新潟県・糸魚川市の糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で、65歳以上の高齢者を対象にアンケート調査を実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。慢性連日性頭痛は、1ヵ月に15日以上の頭痛発生と定義した。K-means++法を用いて、クラスタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効回答者2,858例における有病率は、頭痛11.97%、片頭痛0.91%、慢性連日性頭痛1.57%、薬物乱用頭痛0.70%であった。・鎮痛薬の併用や非オピオイド鎮痛薬の使用頻度が高かった。・予防薬を使用していた片頭痛患者は1例のみであった。・K-means++法を用いて薬物乱用頭痛患者332例を4つのクラスターに分類したところ、各クラスターの頭痛に下記の特徴が認められた。 ●クラスター1:緊張型頭痛様 ●クラスター2:薬物乱用頭痛様 ●クラスター3:脳卒中・脂質異常症・うつ病などを既往に持つ重症な頭痛 ●クラスター4:光恐怖症や音恐怖症を持つ片頭痛様

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ドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】Part 1

今回のキーワード東大ブランド知能の高さ性格の望ましさシープスキン効果学歴ブランド化学歴階級社会学歴インフレ教育ビジネス皆さんは、学歴にこだわりますか? 自分の子どもをなるべく高学歴にさせたいと思いますか? ただ大卒であるだけでなく、有名大卒にさせたいですか?その象徴として、東大があります。それでは、あえて考えてみましょう。なぜ東大に入りたい(入れたい)のでしょうか? 学歴へのこだわりは、個人の自由かもしれませんが、社会としてはどうでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、ドラマ「ドラゴン桜」を取り上げます。このドラマに登場する桜木先生の発言を通して、学歴ブランド化の問題点を明らかにして、その不都合な真実に迫ります。なんで東大に入りたいの?舞台は、いわゆる教育困難校。主人公の桜木は、元暴走族上がりの弁護士で、一風変わった受験コンサルタントです。このドラマは、彼の方法論によって、もともと勉強が好きではなかった生徒たちが次々と東大に合格していくというサクセスストーリーです。ある学校の職員会議で、教頭先生が言い出します。「この経営難を脱却するには…東大合格者の輩出です」「日本最高学府のトップである東大合格者を複数人出せば、わが学園の名は全国的に広まることでしょう」「東大ブランドにあやかり生徒数を増やす。これしか生き残るすべはありません」と。そして、桜木先生が招かれていくという展開です。まず、東大に入りたい(入れさせたい)一番の理由は、東大ブランドが手に入るからであることが分かります。このブランドによって、出身高校は有名になるというアドバンテージを得ることができるわけです。そして、何より、本人がその後により良い仕事、より良い収入という人生のアドバンテージを得ることができると考えられているからです。もちろん、東大に入りたいほかの理由として、「東大に入ってあの先生の講義を受けたい」「この研究をしたい」などがあります。これらは、東大での教育そのものを理由にしていますが、けっして多数派ではありません。その理由として、東大生の多くが、入学後にはなるべくスムーズに単位を取って卒業することに重きを置いているからです。東大ブランドが証明するものは?それでは、東大ブランドによって、なぜより良い仕事、より良い収入が得られるのでしょうか? ここから、東大ブランドが証明するものを、主に2つ挙げてみましょう。(1)知能の高さドラマでは、たびたび偏差値というワードが飛び交います。そして、東大は、学力偏差値が最も高い大学であることから、最も優秀な人が集まるところとされています。1つは、知能の高さ(認知能力)です。ちなみに、東大に合格するために必要な知能指数(IQ)は120以上と言われています。(2)性格の望ましさもう1つは、性格の望ましさ(社会適応能力)です。その望ましさとは、主に真面目さと協調性です。よって、真面目さの資質を測るために、受験科目は多ければ多いほど良いです。そして、協調性の資質を測るために、大学の授業はむしろ難解で癖があればあるほど好都合です。なぜなら、それでも適応できる性格であることを証明できるからです。逆に、受験科目を減らしたり、分かりやすい授業をするなどの革新的なことをやり過ぎてしまったら、真面目さや協調性が測れなくなってしまう点で、そのブランドの価値を下げてしまうでしょう。だからこそ、伝統と実績が強調されるのです。この点で、東大を中退する人は、東大に見切りをつけて自分で起業するくらいとんでもなく仕事能力の高い人か、逆に東大の教育環境についていけないくらい実は仕事能力の低い人という両極端の評価をされてしまいます。この点で、東大ブランドは、知能テストだけでは代用できないことが分かります。次のページへ >>

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ドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】Part 2

東大ブランドの不思議な点は?桜木先生は、全校生徒の前で「東大に行け!」と力説します。すると、ある生徒が「そういう(東大のように)偉そうなところ、みんな嫌いだよ」と言い放ちます。おもむろに、桜木先生は「俺もだ。東大みたいなブランド、ありがたがっている連中見るとヘドが出る。てめえが東大行ったってだけで人生成功したと思ってるやつら、目の前の相手が東大出たと知った瞬間に卑屈になるやつは、みんなゲス野郎だ」と言い返すのです。ここで、東大ブランドの不思議な点が見えてきます。それは、東大卒というだけで優遇されることです。実は、東大ブランドの価値は、東大での教育そのもの(内容)ではなく、東大での教育が修了したという結果(形式)であるということです。その理由として、東大で受けた教育が直接一般職(専門職や研究職を除く)の仕事に貢献するのは、実際にはごく一部であるからです。もちろん、一般教養が仕事に貢献することは多少あります。語学力や論理的思考能力が培われるという意見もあります。しかし、あえて東大(もっと言えば一般の大学)の教育である必要はないでしょう。なぜなら、世の中には、語学学校やビジネススクールがたくさんあります。そして、現在の情報社会では、インターネットの動画やオンライン講座でいくらでも教養を身に付けることができるからです。そして、これらのほうが厳しい競争原理が働いているため、もっと分かりやすくて楽しく、効率的に学ぶことができるからです。この点を企業側も学生側も、最初から見越しています。だからこそ、企業側も学生側も大学での成績に重きを置いていないのです。こうして、東大生(もっと言えば一般の大学生)の多くが入学後にはなるべくスムーズに単位を取って卒業することに重きを置くのです。応用経済学では、これをシープスキン効果と呼んでいます。シープスキンとは羊皮のことです。古くは卒業証書がこのシープスキン(羊皮紙)に印字されていたことに由来します。つまり、卒業証書(学歴)があるかないかで、受けた教育が同じであっても、収入が違ってしまうことです。シープスキン効果はどれくらいあるの?このシープスキン効果は、とくに東大に限った話ではありません。OECD(経済協力開発機構)の報告書[2018]によると、日本人の大卒の平均収入は、高卒の1.4倍強です。40%増えた内訳は、もともとの知能の高さ、もともとの性格の望ましさ、大学における教育効果、そしてシープスキン効果が考えられます。ここで、知能テストと性格テストによる調査の結果から、この内訳を数値化したいところですが、日本ではこの研究が進んでいません。そこで、アメリカの研究を参考にします。まず、アメリカ人の大卒の平均収入は、高卒の1.7培です。70%も増えており、学歴による収入格差が大きい点で、実はアメリカは日本よりも学歴社会であることが分かります。そして、知能テストと性格テストの補正によって、知能の高さは70%のうちの20%分、性格の良さは10%分を占めていることが分かっています1)。これらを足した30%分が本人の実力になります。そして、残りの増え幅の40%分が教育効果とシープスキン効果になるわけです。教育効果とシープスキン効果の割合については、算出することは難しいです。ただ、推定されるシープスキン効果の割合が大きくなるのは、就いた仕事が教育効果の不要な一般職である場合と言えます。逆に、シープスキン効果が小さくなるのは、就いた仕事が教育効果の必要な専門職や研究職である場合と言えます。なお、アメリカの研究では、知能テストと性格テストの補正をしても、高校中退は高卒の0.85倍、大学中退は大卒の0.78倍(高卒の1.1倍弱)になってしまうことも分かっています。これらを含めた格差からも、知能と性格が同じであっても、学歴があるというだけで収入が割り増しになっていくことが分かります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

1972.

ドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】Part 3

学歴ブランド化の問題点は?学歴は、手に入れた場合に優遇されるという個人としての恩恵があることが分かりました。一方で、社会全体としてはどうでしょうか? ここから、東大に限らず、学歴ブランド化の社会的な問題点を、桜木先生のセリフをヒントに大きく3つ挙げてみましょう。(1)学歴がないと搾取される側になってしまう-学歴階級社会桜木先生が、全校生徒の前でいきなり挑発するシーン。彼は言います。「おまえらにその(東大に入る)価値があるとは思えない。見るからにぐずでのろま。勉強も学校生活もみんな中途半端。1日中、やれスマホだ、ゲームだ。毎日何となくぼけーとした日を送ってやがる。バカばっかりだ! バカなだけなら、まだいい。無関心、無気力、甘ったれ、根性なし。そんなおまえらがこのまま何となく世の中に出てみろ。あっという間に、薄汚い社会の渦に飲みこまれ、知らず知らずに搾取され、騙され、カモにされ、こき使われる。一生社会の奴隷となって、もがき続け死んでいくんだ」と。1つ目の問題点は、学歴がないと搾取される側になってしまうことです。これは、学歴があると優遇されるシープスキン効果を逆から言い表しています。学歴が、職業の単なるふるい分けの役割を果たすだけでなく、シープスキン効果によって生活レベルの格差(収入格差)を生み出すように働いています。これは、ひと言で言えば、学歴階級社会です。(2)みんなが学歴を高くしようとする-学歴インフレ桜木先生は、全校生徒を鼓舞するシーン。彼は言います。「東大なんてのはなあ、やり方次第で簡単に入れる」「賢いやつはだまされずに得して勝つ。バカはだまされて損して負け続ける。これが、今の世の中の仕組みだ。だから、おまえら。だまされたくなかったら、損して負けたくなかったら、おまえら勉強しろ! 手っ取り早い方法を教えてやる。東大に行け!」と。2つ目の問題点は、みんなが学歴を高くしようとすることです。学歴がなければ搾取されることを知ったら出てくる当然の発想です。彼の東大特進クラスには数人集まりました。しかし、よくよく考えると、もしも全校生徒全員が東大を目指したらどうなるでしょうか? 東大の合格者は最初から定員が決まっているわけで、全員東大に入ることはできません。いわゆるゼロサムゲームです。競争率が上がって、ますます東大の価値が高まります。これは、ひと言で言えば、学歴インフレです。(3)教育関係者の既得権が増える-教育ビジネス桜木先生は、全校生徒の前でさらに続けます。「社会にはルールがある。その上で生きていかなきゃならない。だがな、そのルールってやつは、すべて頭の良いやつが作っている。それはつまり、どういうことか(というと)、そのルールは、すべて頭の良いやつに都合の良いように作られてるってことだ!」と。そして、実は、その「頭の良いやつ」の中に、教育関係者も含まれます。3つ目の問題点は、教育関係者の既得権が増えることです。学歴インフレによって、彼らの需要が必然的に増えます。大学への入学希望者が増えれば、大学の価値が高まります。実際に、少子化になって数十年経っているにもかかわらず、現在まで大学の数は増え続けています。すると、大学に関係する雇用が増えます。とくに、もともと就職先が限られていて学歴過剰になりがちな大学院卒の人たちの打って付けの受け皿になります。また、塾や予備校などの受験教育に関係する雇用も増えます。そして、実は桜木先生もその1人であると言えます。一方で、受験生や大学生(専門職や研究職を目指す学生を除く)の多くは、大卒という学歴を得るために、仕事や生活にあまり役に立たないうえに必ずしも楽しくない教育を受けるようにさらに駆り立てられます。そして、卒業後は受けたその教育のほとんどを忘れてしまうのです。これは、もはや時間とお金と労力の壮大な無駄づかいに思えてきます。旧ソ連に「国は給料を払うふりをして国民は働くふりをする」というジョークがあります。同じように、学歴インフレが進んだ学歴階級社会では「学校は教えるふりをして学生は学ぶふりをする」というジョークが生まれてしまいそうです。つまり、学歴ブランド化によって一番恩恵を受けるのは、教育を受ける側ではなく、実は教育をする側であるということです。これは、教育のビジネス化、つまり教育ビジネスという不都合な真実です。1)「大学なんか行っても意味はない?」P106:ブライアン・カプラン、みすず書房、2019<< 前のページへ

1973.

青年期の学力向上と抑うつ症状との関連

 シンガポール国立大学のRyan Y. Hong氏らは、青年期の学力向上と抑うつ症状との長期的な関連性を調査した。その結果、学力構築の維持を目的とした介入が、抑うつ症状の悪化を予防する可能性が示唆された。Development and Psychopathology誌オンライン版2022年8月12日号の報告。 対象は、シンガポールの青年741人。学業成績と抑うつ症状に関する過去の研究を拡張し、1学年度にわたる3-wave縦断的研究を行い、学力低下仮説(学力構築における過去の問題がその後の抑うつ症状に影響を及ぼす)および適応浸食仮説(過去の抑うつ症状がその後の能力構築に悪影響を及ぼす)の2つの競合する仮説を検証した。高次能力構築因子(複数の構成要素の動機付け変数を用いて操作可能)と抑うつ症状との関連性を評価するため、ランダムインターセプトとクロス遅延パネルモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・個人の能力構築の減少が、その後の個人の抑うつ症状を予測することが示唆されたが、逆の関係は認められなかった。・個人の能力構築の変動は、学年度末の成績と教師が報告した適応の問題を予測した。・全体として、学力低下仮説が支持された。

1974.

認知症の興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性~メタ解析

 子供の主体性や尊厳を尊重する幼児教育理論であるモンテッソーリ教育を、高齢者や認知症介護に取り入れたモンテッソーリケアは、西欧諸国において興奮症状の治療に有用な非薬理学的介入であることが報告されている。しかし、アジア人を対象とした研究のほとんどはサンプルサイズが小さく一貫性が認められていないため、その結果の信頼性は制限されている。中国・The Third Hospital of QuzhouのLingyan Xu氏らは、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、アジア人認知症患者に対するモンテッソーリケアは、標準ケアと比較し、とくに身体的攻撃性による興奮症状を減少させる可能性が示唆された。しかし著者らは、本研究では、身体的非攻撃行動や言葉による攻撃行動に対する有効性が認められなかったことから、身体的攻撃性に対する効果の信頼性についても、今後のさらなる検討が求められるとしている。Medicine誌2022年8月12日号の報告。 プロスペクティブランダム化臨床研究(RCT)より、利用可能なデータを抽出した。身体的攻撃行動、身体的非攻撃行動、言葉による攻撃行動のアウトカムをプールした。データソースは、Medline、Embase、Cochrane Library、China National Knowledge Infrastructure(CNKI)、WanFang、China Science and Technology Journal Database(VIP)。適格基準は、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため実施されたプロスペクティブRCTとした。独立した2人の研究者が、該当文献より利用可能なデータ(ベースライン特性およびアウトカム)を抽出した。モンテッソーリケアと標準ケアの有効性を比較するため、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)およびNurses’ Observation Scale for Inpatient Evaluation(NOSIE)を含む測定尺度を用いた。加重平均差を用いたプール分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、合計460例が含まれた。・モンテッソーリケアによる興奮症状のプールされた平均差は、標準ケアと比較し、-3.86(95%CI:-7.38~-0.34、p=0.03)であった。・モンテッソーリケアによる各症状のプールされた平均差は、以下のとおりであった。 ●身体的攻撃行動:-0.82(95%CI:-1.10~-0.55、p<0.00001) ●身体的非攻撃行動:-0.81(95%CI:-1.68~0.55、p=0.07) ●言葉による攻撃行動:0.38(95%CI:-0.92~1.68、p=0.57)

1975.

不安症やうつ病の心理的再発予防介入~メタ解析

 不安症またはうつ病から寛解した患者に対する介入として、抗うつ薬の継続または中止と組み合わせた、心理的再発予防介入の有効性を評価するため、オランダ・アムステルダム自由大学のEsther Krijnen-de Bruin氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、寛解期うつ病患者では、心理的再発予防介入により、再発/再燃リスクの有意な減少が確認された。PLOS ONE誌2022年8月12日号の報告。 心理的再発予防介入と通常ケアを比較したランダム化比較試験(RCT)において再発/再燃の割合や期間を臨床アウトカムとして評価した研究を、PubMed、PsycINFO、Embaseより検索した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、36件のRCTを含めた。・寛解期うつ病患者に対する心理的再発予防介入により、24ヵ月の再発/再燃リスクの有意な減少が認められた(RR:0.76、95%CI:0.68~0.86、p<0.001)。・この効果はフォローアップ期間が延長しても持続していたが、これらの結果はそれほど強くはなかった。・抗うつ薬の継続治療に心理的再発予防介入を併用することにより、24ヵ月間の再発リスクの有意な減少が認められたが(RR:0.76、95%CI:0.62~0.94、p=0.010)、フォローアップ期間が長くなると有意な差は消失した。・不安症の再発予防に焦点を当てた研究は2件のみであったため、メタ解析は実施できなかった。

1976.

第128回 承認済のホルモン薬でダウン症候群患者の認知機能が改善

新生児800人当たり1人に生じるダウン症候群は21番染色体が1つ余分になることを原因とします。ダウン症候群の不調はさまざまで、若くしてのアルツハイマー病様病態に起因する認知機能低下、性成熟前の嗅覚障害、生殖困難などをもたらします。高齢の女性ほどダウン症候群の子を出産することが多く、たとえば45歳の女性の30に1つの妊娠でダウン症候群が生じます。出生前診断を機会にダウン症候群の妊娠を断つことを選べますが、米国の多くの州では中絶の方針を最近変えており、もう間もなく何百万人もの女性がその選択が不可能になります。高齢出産も増えていることから、今後ダウン症候群で生まれてくる子が増えることは間違いないようです。より多くのダウン症候群患者が自立生活を営めるように学習や意思疎通を改善する治療薬の検討が試みられてきましたがまだ成功していません。マウスでは有望な結果が得られた薬は数多くあれども、臨床試験で認知機能を改善することが示されたことはこれまでありませんでした。しかしとうとう小規模ながらある薬が臨床試験で効果を発揮しました。それは不妊治療に広く使われているホルモン・ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)です。視床下部の神経から間欠的に放出されるGnRHは哺乳類の生殖制御の元締めの役割を担います。生涯に渡ってGnRHは下垂体に放出されて黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの放出を促し、それらが男性の精巣や女性の卵巣に作用します。下垂体ではなく学習や記憶に必要な海馬や大脳皮質に伸びるGnRH生成神経もあることが知られていますが、その生理的な役割はこれまでよくわかっていませんでした。臨床試験を実施した研究チームはまずはマウスの実験で海馬や大脳皮質に伸びるそれらGnRH生成神経の働きを調べました1)。その結果、ダウン症候群を模すマウスはGnRH発現に難があり、小さなポンプでGnRHを間欠的に投与するか海馬や皮質などの認知中枢に伸びるGnRH生成神経の機能を回復させたところ物体認識記憶や嗅覚が回復しました。アルツハイマー病もGnRH神経機能障害を特徴の一つとします。果たして間欠的なGnRH投与はアルツハイマー病を模すマウスの認知機能も改善しました。マウスに投与されたGnRHはヒトにすでに広く使われている薬剤Lutrelefです。日本では性腺機能低下症の治療薬(商品名:ヒポクライン)として販売されています。20~50歳の男性のダウン症候群患者7人を募って実施された下調べの臨床試験でもLutrelefが投与されました。マウス実験のときと同様に被験者には小さなポンプが皮下に植え込まれ2)、そのポンプから2時間ごとにLutrelefが投与されました。6ヵ月後、嗅覚は改善しなかったものの1人を除く6人の認知機能が改善し、作業記憶(ワーキングメモリー)、注意、言語の理解が向上しました。また、MRI造影で脳を調べたところ海馬や皮質などの認知に携わる脳領域の神経連結が増えていました。その下調べ試験結果を受けてLutrelefの開発はすでに次の段階に進んでおり、ダウン症候群の男女32人を募るプラセボ対照試験が進行中です3)。今回発表された試験での認知機能改善は僅かですが、親に様子を尋ねたところ変化が実感されています3)。たとえばある親は電話で息子と話しやすくなったと報告しています。街で目当ての場所を目指すなどの日常生活を助けうる物覚えや注意持続が改善したとの報告もありました。研究者が目指すのはダウン症候群患者が日々を暮らしやすくなるようになることです。GnRHの可能性は広く、アルツハイマー病などの神経変性疾患への効果を調べる臨床試験も必要と研究者は示唆しています4)。参考1)Manfredi-Lozano M,et al. Science. 2022 Sep 2;377:eabq4515.2)Boosting cognition with a hormone / Science3)Restoring a key hormone could help people with Down syndrome / Science4)A therapy found to improve cognitive function in patients with Down syndrome / Eurekalert

1977.

統合失調症患者のメタボリックシンドロームリスクに対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬が統合失調症患者のメタボリックシンドローム(MetS)発症に影響していることが、多くの研究で示唆されている。セルビア・クラグイェバツ大学のAleksandra Koricanac氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者におけるMetSの発症リスクおよび発症しやすい患者像を明らかにするため、検討を行った。その結果、リスペリドン治療患者およびクロザピン治療患者は、アリピプラゾール治療患者よりも、MetS発症リスクが高い可能性が示唆された。また、リスペリドン治療患者は、健康対照群と比較し、TNF-αとTGF-βの値に統計学的に有意な差が認められた。Frontiers in Psychiatry誌2022年7月25日号の報告。 安定期統合失調症患者60例を対象に、単剤使用の各抗精神病薬に応じて3群(リスペリドン群、クロザピン群、アリピプラゾール群)に分類した。また、健康な被験者20例を対照群とした。最初に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価し、その後プロラクチン値、脂質状態、血糖値、インスリン値、サイトカイン値(IL-33、TGF-β、TNF-α)、C反応性タンパク質(CRP)を測定した。BMI、HOMA指数、ウエスト/ヒップ比(WHR)、血圧も併せて測定した。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドン群は、対照群およびアリピプラゾール群と比較し、プロラクチン値に有意な差が認められた。・クロザピン群は、対照群と比較し、HDLコレステロールおよびグルコースのレベルに有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、対照群と比較し、BMIの有意な差が認められた。・統計学的に有意な関連は、リスペリドン群ではTNF-αとグルコースおよびHOMA指数(IL-33とグルコース、TGF-βとグルコース)、クロザピン群ではTNF-αとBMI(IL-33とBMI、TGF-βとインスリンおよびHOMA指数)において認められた。・アリピプラゾール群のTGF-βとLDLコレステロールにおいて、統計学的に有意な負の関連が認められた。

1978.

COVID-19パンデミック中のスマホ依存症とその後の自殺リスク

 COVID-19パンデミックによるロックダウン中、青少年のスマートフォン依存症や自殺率の増加が認められた。しかし、スマートフォン依存症と自殺リスクとの関係、その根底にある心理的メカニズムについてはよくわかっていない。中国・四川大学のGangqin Li氏らは、ロックダウンの最初の1ヵ月間における青少年のスマートフォン依存症と、その後5ヵ月間の自殺リスクとの関連を評価した。その結果、スマートフォン依存症の青少年における自殺リスクを減少するためには、日中の眠気や抑うつ症状の改善を目的とした介入プログラムがとくに有用である可能性が示唆された。BMC Public Health誌2022年8月12日号の報告。 中国の高等学校の生徒1,609人を対象に、Webベースの短期縦断調査を実施した。第1段階(T1)の調査では、2020年2月24日~28日(パンデミックのピーク時)に中国・四川省で、スマートフォン依存症の重症度および基本的な人口統計学的データを収集した。第2段階(T2)の調査では、T1の5ヵ月後に当たる7月11日~23日に、過去5ヵ月間のスマートフォン依存症、日中の眠気、抑うつ症状、自殺傾向を測定した。 主な結果は以下のとおり。・回帰分析により、隔離期間中のスマートフォン依存症は、抑うつ症状や日中の眠気で調整した後においても、その後5ヵ月間の自殺傾向の直接的な予測因子であることが明らかとなった。・一方、T1でのスマートフォン依存症は、T2での自殺傾向も間接的に予測し、抑うつ症状や日中の眠気はこの関連性を仲介していた。

1979.

超加工食品の摂取と認知症リスク

 超加工食品の摂取が、うつ病、心血管疾患、すべての原因による死亡といった健康への悪影響と関連することを示唆するエビデンスが増加している。しかし、超加工食品が認知症と関連しているかは、よくわかっていない。中国・天津医科大学のHuiping Li氏らは、UK Biobankのデータを用いて、超加工食品と認知症発症との関連を調査した。その結果、超加工食品の摂取量が多いほど認知症リスクが上昇し、超加工食品の一部を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えることで、認知症リスクが低下することを報告した。Neurology誌オンライン版2022年7月27日号の報告。 ベースライン時に認知症でない55歳以上の参加者7万2,083人を対象に、2回以上の24時間食事評価を行い、2021年3月までフォローアップした。超加工食品の定義は、NOVA分類に従った。アルツハイマー病および血管性認知症を含むすべての原因による認知症は、病院と死亡の電子記録を連携させることにより確認した。食事の超加工食品の割合とその後の認知症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。超加工食品を同等の割合で未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合の認知症リスクを推定するため、代替分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間(71万7,333人年、中央値:10.0年)に認知症を発症した参加者は518例であり、そのうちアルツハイマー病は287例、血管性認知症は119例で認められた。・完全調整モデルでは、超加工食品の摂取と認知症リスクとの関連が認められた。 ●すべての原因による認知症(超加工食品の摂取量が10%増加した場合のハザード比[HR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.14~1.37) ●アルツハイマー病(HR:1.14、95%CI:1.00~1.30) ●血管性認知症(HR:1.28、95%CI:1.06~1.55)・食事の超加工食品の10%に当たる量を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合、認知症リスクが19%低下すると推定された(HR:0.81、95%CI:0.74~0.89)。

1980.

日本人高齢者におけるうつ病と道路接続性との関係~JAGES縦断研究

 高齢者において、メンタルヘルス対策は重要であり、近隣環境がうつ病の保護因子として注目されている。これまでの調査では、近隣環境の重要な指標である道路接続性が高齢者の健康と関連していることが示唆されている。しかし、道路接続性とうつ病との関連については、不明なままであった。千葉大学のYu-Ru Chen氏らは、高齢者のうつ病と道路接続性との関係について調査を行った。その結果、道路接続性と高齢者のメンタルヘルスとの関連が示唆された。著者らは、本調査結果が今後の健全な都市計画の検討に貢献する可能性があるとしている。Scientific Reports誌2022年8月8日号の報告。 日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)2013-2016のデータを用いて、2013年にうつ病でなかった高齢者(老年期うつ病評価尺度スコア5未満)2万4,141人を対象に評価を行った。アウトカム変数は、2016年のうつ病診断とした。説明変数は、対象者の近隣800m圏内の交差点密度および空間構文によって算出した道路接続性とした。2016年のうつ病の新規診断に対するオッズ比および95%信頼区間を算出するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・交差点密度が高い地域に住んでいる高齢者は、交差点密度が低い地域に住んでいる高齢者と比較し、3年後の新規うつ病発症率が17%低かった。・道路接続性が高い地域に住んでいる高齢者は、道路接続性が低い地域に住んでいる高齢者と比較し、3年後の新規うつ病発症率が14%低かった。・身体活動や社会的相互作用で調整した後でも、これらの関連は認められた。

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